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2013年9月号掲載
経済広報センター活動報告 経済広報センター活動報告 メコン経済圏および ラオス・カンボジア概況 ■メコン経済圏 ボジア、ラオス共に製造業 (縫製、電気電子・自動 車部品など)の投資が増えており、特に日系企業に よる投資は製造業が多いのが特徴だ。カンボジアは 製造業に加え、製造業の周辺サポートを担う建設、 設備工事、物流、金融、税務、会計などの企業も増 アセアン10カ国のうち、いわゆる大陸組と呼ばれる5カ国(タイ、ベトナム、カンボジア、ラオス、ミャ えている。ラオスは縫製業が中心だが、電気電子・ ンマー)から成る広域経済圏であるメコン経済圏には、物流インフラ整備やミャンマーの経済開放に伴い製造 自動車部品の生産も少しずつ出てきている。ラオ 業のさらなる進出が見られ、これら5カ国のそれぞれの特徴を生かした生産分業体制が進展している。 ス、カンボジアへの日系企業からの投資の増加は、 経済広報センターは6月14日、日本貿易振興機構(ジェトロ)・アジア経済研究所の梅﨑創経済統合研究グ 中国、タイ、ベトナム、インドネシアなど、近隣諸 ループ長およびジェトロの小野澤麻衣海外調査部アジア大洋州課課長代理を講師とする講演会「アセアンの動 国の賃金上昇などが背景にあり、ハードインフラ整 向と今度の見通し~メコン経済圏およびラオス・カンボジア概況~」 を開催した。参加者は約180名。 備なども相まって、メコン地域はチャイナプラスワ 60 ~ 70%程度と認識している企業が多い。賃金水 ン、タイプラスワンの受け皿となっている。 準は近隣諸国と比べ相対的に低いが、法定最低賃金 経済共同体を目指すアセアンの動向と 今後の見通し:メコン経済圏を中心に う め ざ き そ う 梅﨑 創 日本貿易振興機構 アジア経済研究所 新領域研究センター 経済統合研究グループ長 日系企業のラオス、カンボジアへの進出事例の傾 が上昇しており、今後の賃金レベルが見通せないと 撤廃する。貿易円滑化のためのナショナル・シング 向として、周辺国との分業・連携を目指すものが多 いうリスクがある。カンボジアは必要電力の多くを ル・ウィンドウについて、ブルネイを除くアセアン い。 輸入に頼っていることもあり、電力料金が割高と 6は、程度の差はあるものの、すでに運用を開始し ①ベトナムとカンボジアの連携の事例では、ベトナ なっている。一方ラオスでは、実質的に入居できる ムの港湾から部材の調達・輸入を行い、これをベ 工業団地が2カ所と少なく、その整備がカンボジア 今後の見通しとして、貿易円滑化、サービス自由 トナムとの国境に近いカンボジアのタイセンSE に比べまだ不十分である。 ている。 化、交通分野協力などで、各国の国内制度の整備や Z(特別経済区)に運び、安い人件費および投資優 このようにカンボジア、ラオスはまだまだ問題は AEC(アセアン経済共同 資金調達など難しい課題が残されており、域内外か 遇措置などを活用して製品を生産する。完成品を 多いが、現地進出日系企業の多くは、事業を拡大し 体)は関税削減・撤廃だけで らの協力強化が望まれる。これまでの進捗から、ア 再びベトナムの港湾まで輸送し、日本などに向け たいという意向を持っており、可能性を秘めた国々 なく、貿易円滑化、サービス セアン経済共同体設立を宣言する予定である2015 て出荷・輸出を行っている。 であるといえる。 自由化などを含む、より深い 年末時点までに、ビジネス環境が劇的に変わること ②タイとカンボジアでの生産分業の事例では、タイ 経済統合を目指している。メ は期待できないが、経済統合の深化に向けた動きは の主力生産拠点から中間製品をカンボジアに輸送 コン地域経済回廊開発は、単 今後も継続される見通しである。 し、カンボジアにおいて安い労働力を利用した労 働集約的な工程を行う。この製品を再びタイの生 なる広域交通のみならず、越境交通の円滑化、貿易 展段階の異なる地域を結んでいるため、生産ネット カンボジアとラオスの投資環境、 企業動向 ワークの拡張・再編を促進する効果が高く、経済成 小野澤麻衣 の自由化、沿線の産業インフラ開発が含まれる。発 長および地域間格差の是正効果が期待される。 アセアン事務局が作成したAECスコアカードに お の ざ わ ま い 産拠点に輸送し最終製品化を行っている。 ③タイとラオスでの生産分業は、②と同様の形態で 生産分業を行っている。 日本貿易振興機構 海外調査部アジア大洋州課 課長代理 ④タイ・ラオス・ベトナムの三国間輸送における物 流拠点の事例では、ラオスに物流拠点を設置しラ 質疑応答 Qメコン地域は多民族国家であるが、ひとつの市場 として見ることができるのか。 A日系企業の多くは現地市場の開拓段階で、ター ゲットは首都にいる中間層であり、少数民族はほと んど含まれない。少数民族も含めた市場の一体性を 考える段階ではないというのが現状。 Q越境交通協定の批准に向け、日本から働き掛ける 方法はあるのか。 よれば、「枠組み合意」づくりなど比較的達成しやす ラオス、カンボジアへの投 オスのトラックで三国間輸送を行うことで、タイ いものは計画通り進捗している一方、付属文書作 資は、これまで中国、韓国、 (バンコク)~ベトナム(ハノイ)間の輸送時間を短 Aアセアン各国の投資環境改善に関しては、日本は 成、合意、各国での批准、関連制度の改正など時間 タイ、ベトナムといった国が 縮するサービスを提供している。 (タイのトラック 進出企業の要望を取りまとめて各国政府に要望をあ を要する作業が今後の計画として残っている。 主 要 国 で あ っ た。 そ の 業 種 は、隣国ラオスは走行できるがベトナムを走行で げていくというプロセスを踏んできた。アセアン全 は、カンボジアは観光(ホテ きないので積み替えが必要。逆も同様) 体の越境交通協定については、日本政府のアセアン ル建設、リゾート開発)など、 課題として、カンボジア、ラオス共に中間管理 代表部などを通じてアセアン事務局に働き掛けてい 貿易自由化は、センシティブ・リストなどに含ま れる品目以外のものについて、アセアン6は2010 20 多く、貿易額全体は増加傾向にある。昨今は、カン 年 に 開 始 さ れ、 C L M V( カ ン ボ ジ ア・ ラ オ ス・ ラオスは水力発電、鉱山開発などが多い。貿易を見 職、マネージメント職、エンジニアなどが不足して ミャンマー、ベトナム)は原則2015年までに関税を ると、カンボジアは縫製品、ラオスは鉱物の輸出が いるとともに、一般労働者の生産性も、中国に比べ 〔経済広報〕2013年9月号 くことが方法として考えられる。 k (文責:国際広報部主任研究員 土田進一) 2013年9月号〔経済広報〕 21