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分科会K2 - 日本教育情報化振興会

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分科会K2 - 日本教育情報化振興会
分科会K2
一人一台のタブレットと学習ポータルサイトで大きく変化する生徒の学び
同志社中学校 図書・情報教育部主任 反田 任
キーワード:タブレット,教育クラウド,主体的な学び,デジタル教材
1.従来の課題
本校は各教科が専用教室を持つ「教科センター方式」
をとっており、すべての教室にプロジェクター、電子
黒板をなどのICT機器が設置導入されている。授業
ではICTを活用しながら「より興味深くわかりやす
い授業」をめざしてきた。また電子黒板等を活用して
生徒がグループ発表やプレゼンテーションを行う機会
も多く設け、知的好奇心や思考力、創造力を高める工
夫をしてきた。しかし、どちらかといえば講義型の活
用が多く、教員と生徒、生徒同士の双方向的なやりと
りを充実させるICT環境が必要であった。
2.目的・目標
分科会K2
2.
1 一人一台のiPadの導入と学習ポータルサイ
トの構築により「主体的な学び」をめざす
本校では2014年度新入生より、「ICTを主体
的に活用できる生徒の育成」をめざして、一人一台の
iPadを導入し、学習活動、クラス活動に活用して
いる。またiPadの導入とあわせて教材や授業説明
動画の配信、課題提出などの機能を持つ学習ポータル
サイトを構築し、タブレットをより効果的に使える学
習環境の充実をめざした。
2.2 Thinking Tool としてのiPadの活用
本校のiPad導入のコンセプトは「iPad×A
BC」(【図1】)で、「ABC」とは「学びの初歩、
基礎」を表すとともに、ABCの文字がそれぞれ、
「 Active Learning( 能 動的な 学習) 」「 Blended
Learning ( e ラ ー ニ ン グ を 取 り 入 れ た 学 習 ) 」
「Collaborative Learning(協働的な学習)」のそれ
ぞれの頭文字となっている。基礎学力と思考力・創造
力をしっかりと身につけ、これから求められるグロー
バルな視野と21世紀型学力を養うための Thinking
(思考) ツールとして、学習の中でiPadをうまく
活用し、「主体的に学ぶ」生徒の育成をめざすことを
ねらいとした。【図1】
作品の評価は「英語の発音」「内容・構成」「伝え
たいことが伝わっているか」「全体的な印象」の4項
目を生徒同士で相互評価し、優秀作品を選ぶ。授業支
援ソフトを用いれば、他のクラスの優秀作品も簡単に
紹介することができる点が便利である。
(2)音読教材を配信、正しい発音とイントネーショ
ンで読み上げ録音したものを提出する。
従来、授業で一人一人チェックしていた音読テスト
を授業支援ソフトで提出させることにより、以下のメ
リットがあった。
①一人一人の音声が録音され個別指導が充実する。
②生徒がベストの状態を録音しようとするため、練
習回数が増え、その結果発話回数が多くなるとい
う効果が見られた。
3.2 学習ポータルサイトの活用
iPadの導入にあたっては、教材を受け渡しする
ためのクラウド型の教材配信を行うシステムが必要で、
そのための環境整備として本校では「学習ポータルサ
イト」をオープンソースのコンテンツ・マネージメン
ト・システム(CMS)を用いて構築した。学習ポータ
ルサイトでは、教員が教材プリントやデジタル教材作
成ソフトで作成した教材などを配信している。生徒の
ページ毎のアクセス数や教材のダウンロード数が把握
できるため、生徒の学習傾向の分析ができ、授業へフ
ィードバックすることができ、授業改善や授業デザイ
ンにも反映することができるので、ポータルサイトの
導入は大きな効果をもたらしている。さらに「反転学
習」などにも活用でき、授業で発展的な学習を行い、
思考力や創造力を養うための基盤ともなるものである。
図2 学習ポータルサイトの教材配信フォルダ
【図1】
3.実践内容
3.1 中学1年生の英語授業実践例
(1)授業支援ソフトを使って、事前に作成した自己
紹介の英文にもとづきスライドを作成し、音声を録音
して提出、授業でお互いの作品を交流し、評価する。
図3 自作デジタル教材の例
写真1 授業支援ソフトを用いた授業の様子
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JAPET&CEC成果発表会
写真2 国語の授業(左)と英語の辞書引き指導(右)
(3) 創造力、思考力を身につける工夫
グローバル化が進む中、自分の考えや調べてまとめ
たことを、英語で相手に上手く伝えるスキルは大切で
ある。習った表現を用いて、英語で自己表現ができる
機会を数多く持つため、簡単な操作で自分の考えをま
とめ、発信や情報共有がスムーズにできるようなアプ
リを選定している。
(4) 教職員向け研修の実施
授業でICTを上手く活用するためには、教職員研
修が欠かせない。ICT機器の特徴や操作、活用法な
どを授業者に理解してもらうために、春休み、夏休み
の校内研修会や自由参加の研修を数多く開催し、教職
員の活用スキルを高め、iPadや学習ポータルサイ
トを効果的に活用するための情報交換や授業例の紹介
を行っている。
(5)iPad専用Wi-Fiアクセスポイントの整
備
2014年度に約300台のiPadそして完成年
度(2016年度)には校内で約900台のiPad
が稼働するため、その使用に耐える無線LAN環境を
整備することが必須であった。また個人所有のiPa
dを接続するために本校では、iPad専用回線を整
備し、授業を行うすべての教室と生徒が自主学習に利
用する図書・メディアセンターでもタブレットの使用
が可能なように校内全域にWi-Fiアクセスポイン
トを設置した。
従来の校内ネットワークとは独立した専用回線とす
ることで、独自のフィルタリングも可能となり、セキ
ュリティ面にも配慮したものとなっている。
4.成果
生徒にとって一人一人が自分のiPadを持つこ
との意味は大きい。自分の物であるが故に、iPad
の画面や教材を使いやすいようにアレンジするな
ど生徒の「学び」がいろいろな場面で主体的になって
きた様子がうかがえる。
iPad導入の大きな効果として現時点で以下の点
があげられる。
(1) 授業時の生徒のモチベーションがあがり、授業
に集中できる。また一斉授業の中で個々の生徒の理解
度に応じたスピードで個別学習ができ、授業内容の理
解が向上してきている。
(2)iPadが One-to-One になり、生徒は必要に
応じて学習ポータルサイトから教材をダウンロードし
て保存し、
「いつでも、どこでも」教材を利用できる。
「学習」に必要な教材をインターネットで探したり、
iPadで学習のまとめをするなど、自ら学ぶ姿勢が
養われ、
また教材の活用方法なども生徒同士で交流し、
教え合う姿が見られるようになった。またプレゼンテ
ーションで「相手にうまく伝えるにはどうすればよい
か」という視点が生まれ、スライドの作成に工夫がみ
られるようになった。
(3) 書物、インターネット検索の併用でアナログと
デジタルを使い分けながら、ノートに自分の考えをま
とめるという作業がどの授業でも可能になり、情報活
用のスキルが向上してきている。またタブレットのデ
ジタル教材を使って授業のまとめをするなど、様々な
形で生徒が自分に合った学習する方法を見出してきて
いる様子がうかがえる。
5.今後に向けて
一人一台のタブレットを持つことと学習ポータル
サイトで、生徒の学習環境はもとより、学びのスタイ
ルが大きく変化した。
今後の課題としては、
(1)タブレットの活用を効果的に高めることができ
るように研究を進め、Active Learning や
Collaborative Learning に結びつくような活用もめざ
す
(2) 学習ポータルサイトの教材を充実させ、生徒の
個別学習のサポートの充実を図る
(3)タブレットや学習ポータルサイトをデジタルポ
ートフォリオとして活用する
等があげられる。
今後も様々な実践を重ねていく中でICTを上手
く活用し、
「主体的に学ぶ」生徒の育成をめざしたい。
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分科会K2
3.3 ICT活用において工夫した点
iPad一人一台の導入、学習ポータルサイトの構
築に際して工夫した点は以下のとおりである。
(1)アプリや配信教材を用いて生徒が主体的に学ぶ
ための工夫
英語を例にとれば、
「聞く」ことは動画や音声ファイ
ルを学習ポータルサイトからダウンロードして利用し、
学習ポータルサイトやデジタル教材作成ソフトとの組
み合わせで内容の理解を確かめ、
「話す」ことはアプリ
を用いて発音をチェックしたりしている。
「読む」こと
は各自のタブレットで録音した音声ファイルを提出し、
教員がチェックするなど、従来講義型の授業で行って
いた多くの部分がiPadを活用することにより個別
学習で可能になる。授業で用いた文法解説のスライド
もあとで復習に活用できるようにしている。このこと
により、授業ではペアワークやグループワークでまと
めたものを英語で発表する時間を徐々に増やすよう工
夫している。
(2)アナログとデジタルの双方の利点を生かす工夫
ICTを活用する際に、アナログとデジタルのいず
れかに偏ることなく、両方の良い点を上手く活用して
いくことをめざしている。英語の授業においては、タ
ブレットの電子辞書と紙の辞書を併用したり、表現練
習や内容理解においてもデジタル教材やノートやプリ
ントを併用しながら、生徒にとって最良と思われる方
法で授業をデザインしている。また国語の授業におい
ては教科書の内容についてiPadの辞書アプリやイ
ンターネットで調べたことをノートにまとめたりして
いる。
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