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がん患者におけるうつ状態のみきわめと臨床評価
クリニカルトライアルワークショップ【Ⅲ】 がん患者におけるうつ状態のみきわめと臨床評価(森下 茂) 第14回CSPOR・CRCセミナ―(2007/3/3∼4) 精神疾患の分類 精神症状 がん患者におけるうつ状態 の見きわめと臨床評価 ♦ 内因性:統合失調症、躁うつ病 心理社会因性:神経症 京都十条リハビリテーション病院 うつ予防医療センター 森下 茂 ♦ 外因性 身体因性:脳腫瘍 1 2 うつ病とは 「恐怖と苦悩の長く続くものがあれば、それは メランコリーである」 Hippocrates メランコリーの患者は「落ち着きなく悲しみ 落胆し不眠である」「もっと進んだ段階にお いては無数のたわいのないことを訴え死を 望む」「しかしこれは知的機能を害さない」 Areteus 3 うつ病とは 4 うつ病の精神症状 ♦ 抑うつ気分(ゆううつ) ♦ 19世紀フランス:循環精神病 ♦ 19世紀ドイツ(Kraepelin)早発性痴呆(今日 ♦ 意欲低下(おっくう) の統合失調症)に対比して間歇期に何ら 後遺症を残さず改善し同一人において躁 状態とうつ状態を呈する病像を躁うつ病と してまとめた。 ♦ 不安・焦燥感(イライラ) ♦ 集中力低下 ♦ 取越し苦労 ♦ 自責感増強(申し訳ない) ♦ 日内変動 5 使用目的を研究者の自己学習用に限り,その他への転用を禁じる 6 1 クリニカルトライアルワークショップ【Ⅲ】 がん患者におけるうつ状態のみきわめと臨床評価(森下 茂) うつ病の精神症状(Kielholz) 第14回CSPOR・CRCセミナ―(2007/3/3∼4) うつ病の身体症状 ♦ 睡眠障害 ♦ 抑制型 ♦ ♦ 食欲不振 焦燥型 イライラ,不安 ♦ 嘔気嘔吐 ♦ 頭痛・頭重感 ♦ メランコリー型 ♦ もの悲しい ♦ (抑うつ気分) ♦ めまい 精神運動抑制型 意志発動性低下 (意欲低下) ♦ 痛み ♦ 動悸 肩こり 下痢 発汗 呼吸困難 発熱 しびれ 倦怠感 7 うつ病の経過 8 病前性格 ♦ クレッチマーの循環気質 症状の重症 重 ① 身体症状 食欲不振 不眠 口渇 痛み 便秘 軽 ② 精神症状 ♦ 1.人付き合いがよく、気がいい、親切で 感情の抑うつ 精神運動抑制 自殺念慮 親しみやすい。 ♦ 2.ユーモアに富む、元気、激しやすい、 おおらか。 ♦ 3.静か、落ち着いている、物事を苦に する、感じやすい。 時間経過 自殺企図の多い時 6∼8ヶ月 9 病前性格 10 病前性格 ♦ クレッチマーの循環気質 2.元気、激しやすい ♦ 下田の執着気質 ♦ 徹底性と熱中性 3.静か、 落ち着いている ♦ テレンバッハのメランコリー親和型性格 ♦ 秩序と配慮、押しに弱い 1.気がいい、親切 11 使用目的を研究者の自己学習用に限り,その他への転用を禁じる 12 2 クリニカルトライアルワークショップ【Ⅲ】 がん患者におけるうつ状態のみきわめと臨床評価(森下 茂) うつ病の原因 第14回CSPOR・CRCセミナ―(2007/3/3∼4) うつ病の自然寛解経過(下田) ♦ 1.睡眠、食欲などの身体の症状が改善 ♦ うつ病の発症に精神的なショックとか してくる. 心理的な直前の葛藤などは必要ない。 (精神的理由でうつ病にはならない) ♦ ただし発症の引き金になるような事 柄は存在する事もある。 ♦ 2.不穏な情緒が沈静し、落ち着いて考 える事ができるようになる. ♦ 3.病識がつくようになる. 治癒の兆し. ♦ 4.メランコリーは比較的長く残る. ♦ 5.全身倦怠感などの意欲面はさらに時 間を要する事が有る. 13 14 うつ病の治療 薬物による寛解経過(笠原) ♦ 持続睡眠療法(ズルフォナール) ♦ ショック療法 ♦ 1.不安・焦燥寛解期 ♦ 2.うつ気分寛解期(メランコリー) ♦ 3.心理的抑制寛解期(意欲低下) ♦ カルジアゾル痙攣療法 電気ショック療法 ♦ マラリア療法 ♦ 薬物療法 ♦ 三環系 四環系 SSRI SNRI ♦ 認知療法 ♦ 15 16 神経症としてのうつ状態 ♦ メランコリーは無い ♦ 了解可能な原因がある うつ病の評価 ♦ 身体症状を欠くか不一致 ♦ うつ病の生物学的リズムに不一致 ♦ 他罰的傾向がある(敵をつくる) ♦ 症状の増減推移が大きい 17 使用目的を研究者の自己学習用に限り,その他への転用を禁じる 18 3 クリニカルトライアルワークショップ【Ⅲ】 がん患者におけるうつ状態のみきわめと臨床評価(森下 茂) うつ病の評価尺度 第14回CSPOR・CRCセミナ―(2007/3/3∼4) Hamilton Depression Rating Scale (HAM-D) ♦ Hamilton Depression Rating Scale (HAM- D) ♦ Montgomery Asberg Depression Rating Scale (MADRS) ♦ CPRGうつ病評価尺度 ♦ Newcastle Depression Diagnostic Scale (NDDS) ♦ Bech-Rafaelesen Melancholia Scale (BeRaMeS) ♦ うつ病の診断を行うものでは無く、既にうつ病と 診断された患者の重症度を評価するものである. (Hamilton, 1967) ♦ 17項目と21項目があり、どちらでも重症度評価は 可能. ♦ 31以下軽度, 32∼39中等度, 40以上重症 19 HAM-D ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ 1.抑うつ気分 2.罪業感 3.自殺 4.入眠障害 5.熟眠障害 6.早朝睡眠障害 7.仕事と活動 8.精神運動抑制 9.激越 10.精神的不安 20 HAM-D ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ 11.身体的不安 12.消化器系症状 13.一般的身体症状 14.生殖器症状 15.心気症 16.体重減少 17.病識 18.日内変動 19.離人症 20.妄想症状 21.強迫症状 1.抑うつ気分 2.罪業感 3. 4. 5. 6. 7.仕事と活動 8.精神運動抑制 9.激越 10.精神的不安 ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ 11. 12. 13. 14. 15. 16. 17. 18. 19. 20. 21. 21 1. 抑うつ気分(メランコリー) ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ 22 ファジー的評価 悲哀感の程度 0.なし 1.これらの感情状態は質問によりはじめて述 べられる 2.これらの感情状態は自発的に言葉で告げら れる 3.例えば顔の表情、姿勢、声、泣く傾向など、 非言語的に感情状態が伝えられる 4.患者は質問に応ぜず、これらの感情状態は 実質的に患者の任意な言語及び非言語的伝 達でのみ表現される 0 なし 23 使用目的を研究者の自己学習用に限り,その他への転用を禁じる 1 2 3 4 ひどい 24 4 クリニカルトライアルワークショップ【Ⅲ】 がん患者におけるうつ状態のみきわめと臨床評価(森下 茂) ファジー的評価 第14回CSPOR・CRCセミナ―(2007/3/3∼4) ファジー的評価 悲哀感の程度 悲哀感の程度 態度 0 1 なし 2 3 4 0 ひどい なし 1 2 3 4 ひどい 25 2. 罪業感 ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ 26 ファジー的評価 自責感の程度 0.なし 1.自責感、他人に申し訳ない事をしたと感じ る 2.罪業念慮もしくは過去の失敗や罪深い行為 について思いをめぐらす 3.この病気は何かの罰かもしれない、罪業妄 想 4.非難や脅迫的な声が聞こえる、または威嚇 的幻視の体験 0 1 2 妄想 幻聴 3 4 ひどい なし 27 7. 仕事と活動 ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ 28 ファジー的評価 意志発動性低下の程度 0.困ることはなし 1.仕事や趣味の活動に関する無能力、疲労、 無気力な感じ 2.仕事や趣味の活動に興味をなくする-患者が 直接告げるか、間接的に大儀、優柔不断、 気迷いから知れる(仕事や活動に自分をか りたてねばならないと感じる) 3.活動に費やす時間が減少するか能率が低下 する 4.この病気のため職業を放棄する 現実的支障 0 なし 1 2 3 4 ひどい 休んでいる 29 使用目的を研究者の自己学習用に限り,その他への転用を禁じる 30 5 クリニカルトライアルワークショップ【Ⅲ】 がん患者におけるうつ状態のみきわめと臨床評価(森下 茂) 第14回CSPOR・CRCセミナ―(2007/3/3∼4) 8. 精神運動抑制 ファジー的評価 ♦ 0.正常な会話と思考 ♦ 1.面接に際して僅かに遅滞 ♦ 2.面接に際して明らかに遅滞 ♦ 3.面接がほとんど不可能 ♦ 4.全くの昏迷 会話を通じての疎 通性と思考の程度 0 1 まとまり の欠如 2 3 4 ひどい なし 31 9. 激 越 32 ファジー的評価 落ち着きの態度の程度 ♦ 0.なし ♦ 1.そわそわする ♦ 2.手、髪などさわる ♦ 3.歩き回ってじっと座っていられない ♦ 4.手を握りしめる、爪をかじる、髪を ♦ ひっぱる、唇をかむ 0 1 2 3 4 ひどい なし 33 10. 精神的不安 34 ファジー的評価 不安,心配,恐怖の程度 ♦ 0.なし ♦ 1.主観的な緊張と焦燥感 ♦ 2.些細なことに対する心配 ♦ 3.表情や会話にみられる気ずかいの 態度 0 態度 ♦ 4.一見してわかる恐怖の表情 なし 35 使用目的を研究者の自己学習用に限り,その他への転用を禁じる 1 2 3 4 ひどい 36 6 クリニカルトライアルワークショップ【Ⅲ】 がん患者におけるうつ状態のみきわめと臨床評価(森下 茂) 第14回CSPOR・CRCセミナ―(2007/3/3∼4) うつ病の自己評価尺度 Beck ♦ Beck depression Inventry (BDI) ♦ Zung Self-rating Depression Scale (SDS) ♦ Center for Epidemiological Studies ♦ 21項目満点63点. ♦ 0~13点はほぼ正常範囲. ♦ 14~24点は軽度から中等度うつ病範疇 ♦ 25点以上は重度うつ病. ♦ 17点以上では他の精神疾患の可能性が Depression Scale (CES-D) ♦ Children’s Depression Inventry (CDI) ♦ CPRG患者用評価尺度 (CPRG-PT) ある. ♦ 他覚的評価尺度との相関はそれほど高く 無い. 37 38 39 使用目的を研究者の自己学習用に限り,その他への転用を禁じる 7