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自ら探究を深め、 くるめを愛する子どもを育てる「くるめ学」
研究主題 自ら探究を深め、 くるめを愛する子どもを育てる「くるめ学」 ~地域の人々との協同参画活動を通して~ 久留米市立山川小学校 代表 - 72 - 校長 堀 民子 要旨 久留米市第Ⅰ期教育改革プランでは,くるめ学は「郷土愛」「人間性」を重視してきた。これを 受け,久留米市第Ⅱ期教育改革プランでは,「学力の充実」も重視することを述べている。そこ で,本校では,久留米市教育委員会より研究指定を受け,生活・総合的な学習の時間にくるめ 学を位置づけ,平成23年度から平成25年度の3年間研究を行ってきた。 そこで,研究主題を 自ら探究を深め,くるめを愛する子どもを育てる「くるめ学」 ~地域の人々と協同参画活動を通して~ とし,くるめ学の充実を図ってきた。くるめ学を充実させるための取り組みの視点として次の 5点が挙げられる。 ○ 地域の特性を生かした教材化の工夫 ○ 単元構成の工夫と教師の支援 ○ 整理・分析活動の工夫 ○ 他教科との関連の工夫 ○ 言語活動の充実と評価 この5つの視点から本実践を行い,主題に掲げた子ども像を目指してきた。本研究の成果と して,子ども達がくるめ学に対して高い意欲をもち,くるめを愛する子どもが育ってきている。 また,各教科で学んだことを活用する場面を意図的に設定したことで,学力の向上が見られる。 さらに,地域の人々と問題を共に解決していこうという活動を仕組んだことで,課題をなんと か自分で解決しようとする姿勢が見られるようになり,学力テストの無答率も減っている。た だし,くるめ学で活用した思考ツールの他教科での活用や新たなカリキュラムの更新が課題と して挙げられる。 - 73 - 自ら探究を深め,くるめを愛する子どもを育てる「くるめ学」 ~地域の人々との協同参画活動を通して~ -目次- 1 主題の意味 3 (1) 「自ら探究を深め,くるめを愛する子ども」とは 3 (2) 「自ら探究を深め,くるめを愛する子ども」に身に付けさせたい資質・能力 3 (3) 「自ら探究を深め,くるめを愛する子どもを育てるくるめ学」とは 4 2 副主題の意味は 5 (1) 「地域の人々との協同参画活動」とは 5 (2) 協同参画活動の段階 5 (3) 「地域の人々との協同参画活動を通して」とは 6 3 主題設定の理由 7 (1) 学習指導要領解説「総合的な学習の時間編」から 7 (2) 久留米市第Ⅱ期教育改革プランから 7 (3) 学校の教育目標及び児童の実態(二年次)から 7 4 研究の目標 8 5 研究の仮説 8 6 研究の具体的構想図 8 (1) 地域の人々との協同参画させるための,地域の特性を生かした教材化の工夫 8 (2) 子どもが必然的に協同参画を行うための,単元構成の工夫と教師の支援 9 (3) 整理・分析活動(生活科では交流活動)の工夫 10 (4) 他教科との関連の工夫 10 (5) 地域の人々や友達とのコミュニケーションを充実させる,言語活動の充実と評価11 7 研究構想図 12 8 実践例 13 (1) 教材科の工夫について 13 (2) 単元構成と整理・分析活動の工夫について 13 (3) 他教科の関連と言語活動の充実について 15 9 成果と課題 16 (1) 成果 (2) 課題 16 参考文献 16 ※ 16 - 74 - 自ら探究を深め,くるめを愛する子どもを育てる「くるめ学」 ~地域の人々との協同参画活動を通して~ 1 主題の意味 (1)「自ら探究を深め,くるめを愛する子ども」とは 子どもが強い目的意識を持って,久留米市のひと・もの・ことに繰り返し働きかけな がら,問題解決を図り,自分づくり,人・社会・自然とのかかわりづくりを高めていき ながら,自己の生き方を見いだすこと 「探究」とは,問題解決を繰り返す中で物事の本質を見極めようとする一連の営みのこと である。その探究の活動の基礎となるのは,子どもが「何を解決しようとするのか」「何の ために解決しようとするのか」という目的意識がはっきりしていることである。つまり, 「自 ら探究を深める」とは,強い目的意識のもとに,子どもが,目的を明確にして,物事の本質 を見極めようと問題解決を連続発展的に行うことである。 図 1 は,縦軸に自分づくりを,横軸には人・社会・自然とのかかわりづくりを位置づけ, 自己の生き方との関係を探究のサイクルにのせて説明したものである。縦軸は学習を進めて いくことによって,友達とのかかわり方や学習の進め方といった「自分づくり」の高まりで ある。横軸は,対象の工夫や思いをとらえ,共感や尊敬といった感情をもつという「他者と のかかわりづくり」の高まりである。そして,自分づくりをアクセル,他者とのかかわりづ くりをブレーキとしながら,両方のバランスをとりつつ久留米市のひと・もの・ことに対し ての自己の生き方を見いだしていく。 図1 探究を深め,くるめを愛する子ども (2)「自ら探究を深め,くるめを愛する子ども」に身に付けさせたい資質・能力 表1のように,自分づくりでは学習をどのように進めていくのかという学び方としての「問 題解決能力」が育つ。また,他者とのかかわりづくりでは,久留米市のひと・もの・ことの 工夫や思いをとらえ,共感や尊敬という感情をもつために,自ら他者とのかかわりを求めて いく「コミュニケーション能力」が育っていく。そして,問題解決能力やコミュニケーショ ン能力をもとに,自己の生き方を決める「意思決定能力」が育っていくのである。 表1 資 学び方 子どもに身に付けさせたい資質・能力 自らの課題解決に向けて,自らの学習計画を作成したり,友達と協力したり 質 他者と交流したりしていきながら,学習を進めていくことができる。(問題 ・ 解決能力) 能 他者との 他者と交流し,対象の工夫や努力,苦労,思いや願いについてとらえ,その - 75 - 力 かかわり ことについて,共感や尊敬といった快の感情を持つことができる。(コミュ ニケーション能力) 生き方 他者についてわかったことや感じたことをもとに,自分にとってのくるめに ついて考え,くるめを大切にしようとすることができる。(意思決定能力) ただし,生活科においては,総合的な学習の時間の基礎という位置づけで,指導要録の観 点をもとに「関心・意欲・態度」「技能・表現」「気づき」という資質・能力とする。その つながりや,各学年ごとの高まりは表2のようになる。 表2 資質・能力の高まり 低学年(生活科) 中学年(総合的な学習の時間) 高学年(総合的な学習の時間) 関心 自分と身近な人々,社 学び方 自分が解決したい問題 自分が解決すべき問題 ・ 会及び自然とのかかわ (問題解 を設定し,その解決に を設定し,その解決に 意欲 りに関心をもち,様々 決能力) 向けて,友達と協力し 向けて,友達や他者と ・ な活動に意欲的に取り たり地域の人から教え 協同しながら,学習を 態度 組み,自信を持って生 てもらったりすること 自ら進めることができ 活しようとすることが ができる。 る。 できる。 技能 身近な人々,社会及び 他者との 地域の人・もの・こと 久留米市のひと・もの ・ 自然に関する活動を通 かかわり とかかわっていく事 ・こととの交流を通し 表現 して,自分たちの遊び (コミュ で,対象の工夫や努力, て,対象の工夫や努力, や生活を工夫したり, ニケーシ 苦労,思いや願いにつ 苦労,思いや願いにつ そのことを絵や言葉で ョン能 いてとらえたり,対象 いてとらえ,久留米市 表現したりすることが 力) に対して共感したりし のひと・もの・ことに ていくことができる。 対して,共感や尊敬と できる。 いった快の感情をもつ ことができる。 気づ 身近な人々,社会及び 生き方 地域のひと・もの・こ かかわってきた久留米 き 自然に関する活動を通 (意思決 とについてわかったこ 市のひと・もの・こと して,地域のよさや自 定能力 とや感じたことをもと についてわかったこと 然のすばらしさ,自分 に,対象とのかかわり や感じたことをもと のよさや可能性に気付 方について考えること に,くるめを大切にす くことができる。 ができる。 るための自らの考え方 や行い方を明らかにす ることができる。 (3)「自ら探究を深め,くるめを愛する子どもを育てるくるめ学」とは 生活科,総合的な学習の時間において,意図的・計画的に久留米のひと・もの・ことに 対しての問題解決を発展的に繰り返していくことで,これから対象とどのようにかかわ っていこうとするのかという生き方を見いだす子どもを育てること 「くるめ学」とは,自分の生活圏や久留米市において,地域の人たちが解決したいと願っ ている課題を自分たちも解決しようと積極的に取り組む事を通して,地域や久留米への愛着 を育てる学習である。そのため,「くるめ学」とは,久留米市のひと・もの・ことを取り扱 うことだけでなく,次の3つの内容が必要になる。一つ目は,かかわったひと・もの・こと の現状や工夫・苦労がわかることである。二つ目は,かかわったひと・もの・ことへの恩恵 ・共感・尊敬を感じることである。3つ目は,かかわったひと・もの・ことが抱えている課 - 76 - 題の解決に向けて,自ら行動ができることである。久留米市のひと・もの・ことにかかわり ながら,この3つの内容を押さえることを通して,子ども達は,ひと・もの・ことのよさを 体感し,納得するようになる。つまり,「くるめ学」と は,この「わかる」「感じる」「できる」内容を意図的 ・計画的に単元に位置づけ,子ども達が問題解決を発展 的に繰り返し,自分の生き方を見出すものなのである。 生活科と総合的な学習の時間は,自立や自己の生き方 という目指す子ども像や自ら課題を更新していこうとす る学習の仕方については共通点が多い。そこで,生活科 と総合的な学習の時間にくるめ学を位置づけ,図2のよ うに6年間系統的に行う。 図2 くるめ学の位置づけ 具体的には,図2のように低学年においては自分の生活の場の,そして,中・高学年では 久留米市のひと・もの・ことへのかかわりを通して「くるめ学」を展開していく。 2 副主題の意味 (1)「地域の人々との協同参画活動」とは 子どもの学習対象となる人々と課題解決の目的を共有化し,立場に応じた役割を分担 し,コミュニケーションを繰り返し図りながら問題を解決していく活動のことである。 この活動には,子どもにとって次の三つの価値がある。 ① 多様な情報の収集(地域独自性・専門性・立場に応じた多面性)につながること ② 異なる視点(地域の人の思いや悩み)から検討できること ③ 地域への相手意識を生み出し,学習活動のパートナーとしての仲間意識を生み出す こと 一つ目の「多様な情報の収集」については,一人で情報を集めるより,多数で同じ問題の もと情報を収集する方が多様で,質の高い情報が集まりやすい。また,地域独自の多様性の ある情報,専門性のある情報など,それぞれの立場に応じた多面的な情報を,子どもが集め ることができるのである。 二つ目の「異なる視点からの検討」については,集め た情報を友達やかかわった人と交換していくことによっ て,自分が集めた情報と比較したり,分類したり,関連 付けたりすることができる。その集めた情報を整理する 事によって,対象に対して「わかる」ことができたり, 新たな問題を見いだしたりすることへとつながっていく のである。 三つ目の「相手意識」であるが,地域の人たちと自分 が同じ課題について考え,その立場によって解決すべき 問題を分け,役割を分担していく事で,その他者に対し 図3 協同参画活動の構造 て何らかの「感じる」ことができる。そのことが,自らも何かをしていこうとする行動意欲 へとつながり,それが「できる」子どもへとつながっていくのである。 (2)協同参画活動の段階 「地域への協同参画活動」は,目的の共有化,役割の分担,継続したコミュニケーション の三つで成り立つ。しかし,その活動には段階がある。特に,大人主体で行う参画と,子ど もが主体となって行う参画の仕方で分けられる。それぞれの段階については,次のページの 通りである。 - 77 - 大人主体の段階 大人が企画・運営していることがある。それについて,少しでもその内容が 改善するように,子どもが意見を出していくという参画の仕方 大人・子どもが 大人が企画・運営していることを参考にして,子どもが似たようなことを地 同じ立場の段階 域のために行う参画の仕方 子ども主体の段階 子どもが地域の発展などのために企画・運営し,その企画に大人も参加して いく参画の仕方 生活科では,地域の人たちと一緒に活動することの楽しさや,自分たちが知りたいことを 聞いて教えてもらう活動を「協同参画活動」として位置づける。 また,右の図は,協同参画の段階を各学年の発達段階 に応じて位置づけたものである。各学年ごとに,子ども 主体と大人主体の共同参画は位置付いているが,学年の 発達段階に応じて子ども主体の協同参画の割合が増えて いく。また,この割合は,各学年の単元ごとの共同参画 のさせ方の割合である。つまり,この単元は全て大人主 体といったものではなく,さぐる段階では大人主体,深 める段階では子ども主体というように,一つの単元の中 に,大人主体の地域参画活動も,子ども主体の地域参画 活動も入ってくる。 図4 共同参画活動の位置付け (3)「地域の人々との協同参画活動を通して」とは 学習段階のさぐる・深める段階に,地域の人々との協同参画活動を位置づけることに よって,自分づくりや他者とのかかわりづくりを自ら進んでおこなうことができるよう にすることである。 本校では,下記の図5のように,「つかむ」「さぐる」「深める」「生かす」の四つの学習 段階で生活科と総合的な学習の時間に取り組む。特にさぐる・深める段階に,地域の人々と の共同参画活動を位置づけて学習を進めていく。 さぐる段 階では,地 域の人たち と目的を共 有化し,そ の目的達成 のために, コミュニケ ーションを とっていき ながら,自 分の課題を 解決してい 図5 地域の人との協同参画活動を組み込んだ学習過程 くことを通して,対象に対して分かったり,共感や尊敬といった感情を持つようにする。深 める段階では,さらに,地域の人との目的を再確認し,さぐる段階で「わかったこと」や「感 じたこと」をもとに,地域の人たちと一緒に課題の解決に向けてコミュニケーションをとり ながら役割に応じた行為をできるようにする。 - 78 - この際,各探究のサイクルでは,「課題の設定」「情報収集」「整理分析」「まとめ・表現」 の過程を経ていくようにする。もちろん,こうした探究の過程は,いつも順序よく繰り返さ れるわけではなく,順番が前後することもあるし,一つの活動の中に複数のプロセスが一体 化して同時に行われる場合もある。そのような弾力的な学習活動を通していくことによって, 「自ら探究を深め,くるめを愛する」子どもを育てていくものである。 3 主題設定の理由 (1) 学習指導要領解説「総合的な学習の時間編」から 学習指導要領解説書「総合的な学習の時間編」の改訂の経緯にこれからの社会の動向につ いて以下のように述べられている。 21世紀は,新しい知識・情報・技術が政治・経済・文化をはじめ社会のあらゆる領 域での活動の基盤として飛躍的に重要性を増す,いわゆる「知識基盤社会」の時代であ ると言われている。 そこで,総合的な学習の時間においては,教科の枠を超えた横断的・総合的な学習,探究 的な活動を行うことを明確にするとしている。その探究活動の過程の質を高めるために,様 々な教科で学んだことを生かしていきながら他者と協同して問題を解決する学習活動を行う ことが大切である。この他者と協同して自分の問題解決を図っていくことは,生活科におい ても同様であり,気づきの質を高めるために,専門家や地域の人たちと一緒に学習すること が求められる。このような探究の過程の質を高めることが,知識基盤社会を担う子ども達に 必要とされている。これは OECD の,PISA テストでも求められている主要能力でもある, 「学習方法に関すること」「他者や社会とのかかわりに関すること」「自分自身に関するこ と」を育てる上からも重要視されるのである。 そこで,子どもの生活圏の人々とのかかわりを繰り返しながら,自ら探究的に学習を進め, 自立の基礎やこれからの生き方を見いださせようとする本主題・副主題は意義がある。 (2) 久留米市第Ⅱ期教育改革プランから 久留米市の第Ⅰ期教育改革プランによるくるめ学は,「郷土愛」「人間性」を重視した意味 合いが強かった。このことを受けて第Ⅱ期では,子どもの心情を育てるだけでなく,学力の 充実としてくるめ学を位置づけている。 「くるめ学」は,久留米の自然や文化,歴史を築いてきた先人や久留米に生きる人々を 学ぶことによって,子どもがふるさと久留米を郷土として親しみや誇りをもち,地域づ くりへかかわろうとする動機付けを図るための学習活動です。また,身近なものを材料 にして探究的な学習を行うことで,学習意欲の喚起や様々な知識を複合的に活用する能 力の育成を目指しています。(久留米第Ⅱ期教育改革プランより抜粋) このように,本市における「くるめ学」は,学習意欲の向上や知識を活用する力を高め, 学力を向上させようとする取り組みの一つとして位置づけられていることに特徴がある。そ して,自分の生活圏での対象と繰り返しかかわっていくことを通して,学習することへの意 欲や教科で学んだ様々な知識を活用することができる力を育成しようというのである。 このことは,自ら課題解決を発展的に繰り返していくことによって,くるめのひと・もの ・ことへかかわっていき,地域の一員として参画していく過程を通して,「問題解決能力」 「コミュニケーション能力」「意思決定能力」という資質・能力を育てようとする本研究は 意義深い。 (3) 学校の教育目標及び児童の実態(二年次)から 次のページの図6は平成24年度の本校の3年生から6年生までの久 留米市への意識度 のアンケート結果である。「久留米市が好きか」の設問に対して,「とても好き」もしくは, - 79 - 「まあまあ好き」と回答した児童が,95%を超えている。その内容は,地域の人たちと触 れ合ったことで,その人のようになりたいというあこが れ感を持つ児童や,久留米の自然や文化などのよさに目 をつけているものが多かった。このことは,くるめ学に 取り組み,地域の人たちと共に久留米市のひと・もの・ ことにかかわり続けていった成果だと言える。 しかも, 平成23年度と平成24年度の久留米市学力実態調査の 結果を比較すると,国語科では 全学年で非常に大きな 伸びが見られた。図7の様に4年生,5年生,6年生に 図6 久留米市への愛着 関しては15ポイント以上というとても高い伸びが見ら れる。同じような傾向が算数科でも見られ,高学年ほど 大きく伸びている。国語科の中でも特に高い伸びを示し たのが,「話す・聞く」の内容である。くるめ学では地 域や久留米市の課題を,多くの人たちに知らせるという 提案や発表という学習を行ってきた。その際に,今まで 学習した国語科の内容を生かして,自分たちの提案や発 表に活かしていったからであると考えられる。つまり, 他教科や領域で学んだ事をくるめ学の中で活かしたこと で,教科や領域の学力を高めると言える。くるめ学の中 で,子どもが地域の人たちとのコミュニケーションをさ らに充実させたり,友達と一緒に協力しながら,久留米 の課題を探究的に解決していくことを通していけば,言 語活動を更に充実することができ,「話す・聞く」だけ 図7 総合的な学習の時間と学力の関係 でなく「書く」や「読む」といった点の学力も向上すると考えられる。このことは,学校経 営方針の一つ目である,自ら学ぶ力と思考力・判断力・表現力の育成へとつながり,自ら学 び,たくましく生きる児童を育てる上からも意義深い。 4 研究の目標 自ら探究を深め,くるめを愛する子どもを育てるために,課題解決を発展的に繰り返 し,地域の人と協同参画しながら自らの生き方を見いだしていくための生活科・総合的 な学習の時間の学習活動のあり方を究明する。 5 研究の仮説 生活科・総合的な学習の時間でのくるめ学において,次の三つの工夫を行うことで,自 ら探究を深め,くるめを愛する子どもを育てることができるだろう。 6 ⅰ 地域の人々との協同参画させるための,地域の特性を生かした教材化の工夫 ⅱ 子どもが必然的に協同参画を行うための,単元構成の工夫と教師の支援 ⅲ 整理・分析活動の工夫 ⅳ 他教科との関連の工夫 ⅴ 地域の人や友達とのコミュニケーションを充実させる,言語活動の充実と評価 研究の具体的構想 (1) 地域の人々との協同参画させるための,地域の特性を生かした教材化の工夫 教材の開発・選定は,表4のように「本質性」 「関与性」 「多様性」の三つの視点から吟味する。 表4 本質性 教材開発の視点 ・久留米の特徴がわかったり,単元のねらいを達成したりすることができ,子 - 80 - ども達がこれからの生き方を見いだすことができるもの 関与性 ・子ども達の生活に直接的にかかわっていて,好奇心や探究心を示し,調査や 体験を行いやすく,何度もかかわることができるもの 多様性 ・子どもが様々な調査や体験が行うことができ,それを通して多様な考えを創 り出すことができるもの 「本質性」に関しては,様々なくるめのひと・もの・ことの中から「何がわかる」「何を 感じる」 「何ができる」という内容から考えていくこと事が大切となる。その内容をもとに, 各学年の発達段階に応じた教材を開発・選定していく。「関与性」に関しては,子ども達の 興味・関心や生活実態を基に考えていく必要がある。他教科で学んだこと,遊びでかかわっ たことがあること等から考えるだけだなく,調査・体験のしやすさという点からも教材を 開発・選定していく。「多面性」に関しては,追究していく事によって様々な考えがつくり 出されることが予想されるひと・もの・ことから教材を開発・選定していく。 これらの三つの視点から教材を開発・選定し,学習内容をつくりだす。特に,本質性にか かわる総合的な学習の時間の指導事項である学習内容は以下の通りである。 表5 わかる 総合的な学習の時間の学習内容 かかわった対象(人・社会・自然)の現状や,問題を解決するに当たっての取 り組みの工夫や苦労についてとらえることができること 感じる 「わかったこと」をもとに,そのことで自分たちが支えられていることに対す る恩恵やかかわった対象への共感,尊敬といった感情をもつことができること できる 「わかったこと」「感じたこと」をもとに,自分もかかわった人物や対象の問 題解決に向けて何らかの行動をとることができること (2) 子どもが必然的に協同参画を行うための,単元構成の工夫と教師の支援 単元構成は,「つかむ」「さぐる」「深める」「生かす」の4段階で,それぞれの内容や教 師の支援を下記のように構成する。 生活科の単元構成 段 階 つかむ 内 容 教師の支援 ・直接体験を重視し,子どものやってみ たいという思いをもとに,自らの思い や願いをつくる段階 さぐる る直接体験 ・したいことを見いだす場面設定 ・自分の思いや願いの実現に向けて,友 ・専門家,地域の人等のGTの招聘 達や他者とかかわりながら,試行錯誤 ・試行錯誤していく活動時間の保障 したり,整理・分析をしたりして対象 ・友達と比較をすることで気づきを に対しての気づきを見つけていく段階 深める ・自分もしたいという思いをもたせ ・新たな思いや願いのもとで,更に友達 や地域の人とかかわりながら,思いや 願いの実現に向けて活動をおこない, そのことを整理・分析して新たな気づ 生み出させる交流の工夫 ・あらたな課題を生み出すための, 交流などによる場面設定 ・多様な活動を行うことができるよ うな場の工夫 きを生み出す段階 生かす ・自分たちの学習を振り返ったり,まと めたりしながら,自分ができるように なったことや学習でのがんばりに目を 向け,自分の成長に気づく段階 - 81 - ・今までの学習を振り返ることがで きる場や具体物の設定 ・学習での自分の成長を振り返るこ とができる学習物の蓄積 総合的な学習の時間 段 階 つかむ 内 容 教師の支援 ・直接体験を重視し,子どもに認識面の ・感情に訴えかけるような直接体験 ズレや感情面からの思いをもとに,自 ・体験をもとにした思いについての らの課題を作る段階 さぐる 交流する場面設定 ・探究のサイクルが始まり,地域の人々 と協同的に学習を進めていき,調査し ・専門家や地域の人々との目的を共 有化する場面設定 たことを整理・分析していくことを通 ・インタビュー,副読本「わがふる して,対象に対して「分かる」「感じ さと久留米」等調査方法の多様化 る」ことができる段階 ・活動で集めた情報の種類に応じた 思考ツールを用いての整理・分析 の活動の工夫 深める ・探究のサイクルが続き,他者と協同的 に学習を進めていきながら,体験や調 査したことを再度整理・分析し,対象 に対して何か「できる」ことを見いだ し,実際に行っていく段階 ・専門家や地域の人たちとの目標を 再確認する場面設定 ・多様な活動を行うことができるよ うな場の工夫 ・活動で集めた情報の種類に応じた 思考ツールを用いての整理・分析 の活動の工夫 生かす ・自分たちの学習を振り返ったり,まと めたりしながら今までかかわってきた 対象に対してこれからどのようにして いこうとするのか,生き方を見いだす ・今までの学習を振り返ることがで きる場や具体物の設定 ・自分のかかわり方を振り返ること ができるシートの工夫 段階 (3) 整理・分析活動(生活科では交流活動)の工夫 より効果的な整理・分析活動にするためには,情報の種類によって自分たちが整理・分析 する方法を変える必要がある。当然,思考方法によっても変わってくるため,そこに対して の整理・分析の方法を支援していくことが大切である。整理・分析の手法は学年に応じて以 下の例がある。また,下記の整理・分析を効果的に行うための「情報収集」「整理・分析」 の手立ては図8の通りである。 (低学年~中学年) ・仲間分け ・グラフ ・地図 (中学年) ・ベン図 ・ランキング ・座標軸 ・Yチャート・ピラミッド ・原因から結果までの時間軸 (高学年) ・メリット・デメリットの視点 ・「ビフォー・アフター」の視点 ・ホワイトボードの活用 (4) 図8 情報収集,整理・分析での手立て 他教科との関連の工夫 総合的な学習の時間の大きな目標の1つとして,「他教科との関連」があげられている。 - 82 - これは,教科で学んだことが,教科の中だけで終わるのではなく,学んだことを活用して総 合的な学習の時間での課題解決を目指していくものである。そこで,図9のようなカリキュ ラムを作成し,各教科と総合的な学習の時間の関連を示していく。 図9 各教科との関連を位置づけたカリキュラム このように,教師が総合的な学習の中で子どもが活用できるであろう他教科の内容を意識 した上で,総合的な学習の時間の学びの中に,子どもが自ら活用したいと思わせるようにし 向けるのである。そのために,下記のような方法で他教科・領域で身に付けた学習内容と方 法を子どもが使いこなせるようにしておく。 ○ 子どもが学習の積み上げを意識できるような教室環境 (例) ○ 学び方・学んだ内容に関する教室環境のコーナーの設置 学習の積み上げを意識した計画の作成 ・年間の積み上げを意識した学級経営案の作成 ○ (5) 身に付けた内容・方法を使い課題解決できるような学習計画案の作成 地域の人々や友達とのコミュニケーションを充実させる,言語活動の充実と評価 生活科や総合的な学習の時間において地域の人々や友だちとのコミュニケーションを充実 させるためには,各教科等で学ぶ言語活動を意識して話したり,聞いたり,まとめたり表現 させたりすることが重要である。そこで,昨年度の教科との関連をいかし,特に国語科での 「話す・聞く」「書く」という言語活動との関連を重点化していくことで,生活科や総合的 な学習の時間の言語活動がより充実したものになる。 そのためには,子どもがいつでも言語活動の行い方を使いこなすことができるような,環 境づくりが大切となる。また,その活動を通すことによって,自分の伸びを実感できるため の評価のあり方が必要となる。評価の方法としては,言語活動と関連させて「目的を達成す るために,どんな場面で,どんな言語活動ができればよいか」という評価項目を指導案に明 確に位置づけておくこと,評価項目をもとに教師側で観察して見取ること,学習の振り返り の感想を書かせる際に,「言語活動についての振り返り」という視点を与えて,自分ができ ていたかという自己評価や友達の良かった点という他者への評価を書かせることである。そ のような言語活動と評価を一体化することによって,他者とのコミュニケーションが更に高 まっていくと考える。つまり,下記の2点を大切にすることで,言語活動を充実させていこ うというのである。 ○ 子どもが学習の積み上げを意識できるような教室環境 - 83 - (例) ○ 国語科で学んだ学び方・学んだ言語活動の仕方に関する教室環境づくり 言語活動の評価のあり方 ・単元における言語活動の評価の具体化 ・評価項目による教師の見取り ・感想による言語活動の自己評価と他者への評価 7 研究構想図 - 84 - 8 実践例 (1) 教材化の工夫について 実践事例1 第3学年単元「チャレンジ☆野菜作り名人」 子ども達は,1学期の総合単元「山川名物大発見!」で,地域のために尽力している人物や 地域にある豊かな自然,伝統的な行事を発見し,自分の住む地域に目を向けるようになってき ていた。2学期の総合単元では,1学期に発見した名物の中から,地域で安全な食を提供して いる人物を教材化することにした。教材化の視点の1つ目は,校区内で身近な人物であること から,調査や体験が行いやすく,理科や会科で,植物を育てたり畑ではたらく人々について調 べたりした学習経験が生き,子どもが関心をもちやすいという「関与性」があることである。 2つ目は,その人物が消費者の立場に立って,野菜の生産や販売をされていることから,消費 者・生産者・販売者のそれぞれの立場に立って子どもが多様な考えを作り出せるという「多様 性」があることである。3つ目は,その人物が安全でおいしいものを地域の人に食べてほしい という思いをもち,こだわりをもって野菜を作っていることから,課題追究をする中で,育て 方の工夫や努力,愛情など野菜作りに大切なことが分かり,人々のためにという思いや自分達 の生活を支えてくれることへの感謝の念をもちやすいということ,そして,分かったことや感 じたことを生かして,自分達で安全でおいしい野菜作りを行い,野菜作りのよさを広げていく という自分の生き方を見出すことができるという「本質性」があることである。この3つの視 点に立って,教材の選定・開発を行い,本単元の学習を進めていった。 考察 以下の文は,A児,B児の学習後の感想である。(一部抜粋) A児 野村さんの畑は,わたしたちよりよく育っていてざっそうもなかったです。虫に もくわれてないし,ちゃんと心をこめていっしょうけんめい育ているのが分かりま した。食べている人のえがおを楽しみにして作っていました。すごいと思いました。 B児 野村さんは,野さいを大切に育てていると思います。野村さんの野さいはしんせ んだし,おいしいから自分でもみんなの役に立つおいしい野さいを作りたいです。 わたしも大きくなったらもう1回育ててみたいです。 教師が子ども達にとらえさせたい内容を明確にして3つの視点から単元を構成していったこ とで,子どもが課題意識をもって,意欲的に課題解決活動に取り組み,多様な見方や考え方が できるようになったり自分の生き方を見い出させたりする上で有効であった。 (2) 単元構成と整理・分析活動の工夫について 実践事例2 第2学年単元「レッツゴー!町たんけん」 単元の導入時に,山川町の様子について知っていることを話し 合った。子ども達からは建物やお店,友達の家など自分の生活圏 内にある建物を中心としたものしか出てこなかった。そこで,他 の山川町のすてきなところを見つけようという単元のめあてを立 て,町探検での調査と整理・分析活動を行った。町探検では,自 資料1 発表カード 分が気がついたことを資料1の発見カードにメモし,沢山の情報 を収集することができた。その後,集めた情報を整理して山川町 のよさを明らかにしようというめあてのもと,教師が子ども達と 一緒にどのように仲間わけをしたらよいかを話し合いながら, 「人」「自然」「もの」に仲間わけするという整理の視点を見出し た。写真1のように,子ども達はどの仲間に分けられるかを話し 写真1 仲間分けの様子 合いながら,仲間わけを行った。以下は,各グループで仲間分けをし,交流したものである。 - 85 - 【自然】竹の林・モンシロチョウ・ヘビのぬけがら・かに・ねこじゃらし・カエル 【人】畑で働いている人・幼稚園の先生と子ども・駅を掃除している人・筑水高校のおに いさんおねえさん・車屋さんで働いている人 【もの】さかたのたね・筑水高校・純心幼稚園・白峯保育園・コンビニ・本屋さん・踏切 のところで列車が通っていった 発表カードの仲間分けでの整理・分析活動を通して,子ども達は,山川には自然やお店がた くさんあることや色々な人が住んでいることをとらえたり,自分の知らない場所がたくさんあ ることに気づいたりする様子が見られた。 考察 町探検をし,発見カードに気づいたことを書いて沢山の情報を集めて仲間わけをさせたこと は,山川町には,自分達の生活を支える様々な人がいることやたくさんの自然や様々なお店や 建物があるなど「人」「自然」「もの」といった視点から山川町のよさを明確にし,とらえさ せる上で有効だった。また,自分が知らなかったことについて,もっと詳しく調べてみたいと いうさらなる課題への追究の意欲をもたせる上でも有効であった。 実践事例3 第5学年「伝えよう!くるめのエジソン 田中久重」 単元の構成を以下の4段階で設定し,学習を進めた。 「つかむ段階」・・・写真2のように,久重の作ったからくり人形の実 物の見学から久重がどんな人物かや発明品の仕組みや種類などの 疑問から,久重やからくり人形のひみつについて調べたいという 課題意識をもたせる。 「さぐる段階」・・・久重について情報収集を行い,思考ツールで整理 ・分析し,久重のよさを焦点化してとらえさせ,久重のことを広 めたいという振興会の方に共感させ,目的を共有化して古里祭り 写真2 からくり人形の見学 で地域の人に発表して伝える。 「深める段階」・・・発表会の評価の情報を収集し,目標が達成できたかを思考ツールで整理し, 目標が達成出来ていないことを分析してとらえた後,不十分な点を付加・修正し,からくり儀 右衛門展で発表して伝える。 「生かす段階」・・・単元を通して学んだことを振り返り,自分の今後の生き方を考えさせる。 特に,「さぐる段階」と「深める段階」の整理・分析について述べていく。 「さぐる段階」では,インターネット,図書資料,振興会の方へのイン タビューで,沢山の情報を収集した。収集した情報を付箋に1枚1枚書 き出し,総合の学習で何度も活用してきた KJ 法やイメージマップをグ ループで選択し,久重のすごさをタイトル化して整理していった。全体 交流する中で「高い創造力」「科学への向上心」「久留米や日本の産業へ の貢献」が久重のすごさであることをとらえることができた。 資料2 KJ法による整理 「深める段階」では発表会で「久重への関心を高める」「久重のよさを十分伝える」という振 興会の方と共有した2つの目的が達成できているかを確認するため,評価の情報収集や整理・ 分析活動を行った。発表会の評価に関する情報収集では,約100人へのアンケート調査,写 真や動画での見ている人の動きや表情の観察,保護者やからくり振興会の方へのインタビュー で行った。整理では,アンケート結果を中心に表やグラフにまとめ,写真や動画,インタビュ - 86 - ーで分かったことを加味しながら,2つの目標の達成度を表現した。資料3は,それぞれのグ ループで整理した目標の達成度を交流した結果である。 この結果から,久重への関心を高めることができたが, よさを十分に伝えることができなかったことを分析して とらえていた。そこで,からくり振興会の方から発表に ついての評価と目的を達成したいという思いがあるなら 発表の場を設定するという話をしてもらった。その話を 聞き,子ども達は「学習を続けて,もう一度発表したい」 資料3 目標達成度の交流結果と達成の分析 ということを発言し,発表内容を修正し,からくり儀右衛門展での発表へとつなげていった。 考察 単元構成において,導入で本物のからくり人形に出会 わせるという感動的な活動を取り入れたりからくり振興 会の方と情報収集,課題設定,評価の場面で何度も関わ る場面を単元に位置づけたことは,子どもの学習意欲を 継続してもたせ,自ら課題を更新しながら解決を促して 資料4 整理・分析後の子どもの感想 いく上で有効だったと考える。また,資料4は整理・分析後の子どもの感想である。このよう に,集めた多大な情報を思考ツールを活用し,可視化させていったことは,教師のねらいを子 どもにとらえやすくさせる上で有効だったと考える。 (3) 他教科の関連と言語活動の充実について 実践事例4 第4学年単元「ごみ減量作戦にチャレンジしよう」 社会科「ごみのしまつと活用」で家庭ごみの調査や給食の残量調 査,クリーンセンターの見学を行ったことで,生活の中で大量のご みが出ている現状を子ども達は知り,ごみを減らすために自分達が できることはないかという課題意識をもった。課題について話し 資料5 国語科学習内容の掲示物 合う中で,子ども達は「ごみを減らす取り組みの1つにマイバックを使 うことがあるけど実際はどうなのか」という疑問をもった。予め調査か ら分かったことをもとに,自分達がどんなことができるのかを考え,友 達に伝えるという学習の見通しをもたせておき,マイバック使用につい てのアンケート調査を行った。事前に国語科「読書生活について考えよ う」でアンケート結果を統計にまとめ,報告文を作るという学習を行い, 写真4 グラフでの整理 資料5のような学習内容をまとめたものを教室内に掲示しておいた。 子ども達はその掲示物を見て,既習内容を活用できることに気づき, 掲示物に書いてある手順をもとに,写真4のようにアンケートの結 果を表やグラフにして見やすくまとめたり,友達と話し合いながら 表やグラフから分かることと考えたことを資料6のように文でまと めたりすることができた。また,これまでの国語科で学んだ「話し 合い方」や「発表の仕方」を掲示したり,朝の時間でのスピーチ活 資料6 文でのまとめ 動の積み上げを行ったりしたことで,声の大きさや速さに気をつけ,分かったことと考えたこ とをはっきりと伝えることができ,相手にも分かりやすいスピーチができた。 考察 導入では,社会科と関連させたことで,自然な流れで総合的な学習の時間の単元につながり, ごみの問題をより身近な問題として意識し,課題をもたせることができた。また,国語科の内 容を活用できる場を単元計画に位置づけたことで,学んだことを活用する機会をもち,さらな - 87 - る力の定着を図ることができた。教師自身もその国語科単元でどんな力を子ども達に身につけ させたいかを明確にし,単元の構成を工夫したことで学習内容の充実を図ることができたと考 える。さらに,子ども達が学んだことを教室内に掲示し,これまでの学習の積み上げを意識で きる教室環境を整えることで,自ら活用していこうという思いをもたせることができた。 9 本研究の成果と課題 (1) ○ 成果 本年度の2学期末に児童にとった「生活科・総合的な学習の時間は好きか」というアン ケートでは,4段階中3.6という結果がでた。この結果から,子どもは生活科・総合的 な学習の時間に高い意欲をもっていることが分かる。さらに,学習後に次のような感想を 書いていた。 この学習をするまで,久留米のことを知ろうと意識していませんでした。でも,久留 米のことを知って行くにつれて,楽しくなってきました。どうして今まで自分が住ん でいる所なのに,知らなかったのだろうと思いました。そして,この単元でわかった ことは,人々に喜んでもらえることは嬉しいことだと言うことです。 つまり,子ども達は,様々なひと・もの・こととかかわることで,何かがわかるだけ でなく,自分たちの考えまで変化したことを理解している。そして,自分たちの久留米市 へのかかわりで人が喜んだことをうれしく思っている。このことは,今後,さらに久留米 にかかわっていこうという態度の現れであり,くるめを愛する子どもが着実に育ってきて いるといえる。 ○ 資料1の通り,全国学力テストの結果については, 特に B のような活用問題があがってきた。これは, 国語科で学んだ「話す・聞く」「書く」といった言語 活動を,単元の「つかむ」「さぐる」「深める」「生か す」段階で活用できるように意図的に取り入れたこと で,自分の考えを言語化することができたり話し合い を建設的に行うことができたりと各段階での活動の質 資料1 全国学力テストの結果 を高めることができたからである。また,他教科で学 んだことを,総合的な学習の時間でも活用したことが 有効であったといえる。 ○ 地域の人々と,自分の生活圏や久留米の問題を一緒 に解決しようとしたことで,子ども自身が自ら問題を 解決しようとする意欲を高めていくことができた。し かも,それが総合的な学習の場だけではなく,ほかの 資料2 無答率の変化 面にも広がってきている。資料2は,全国学力テストの無答率の変化を示したものである。 難しい問題に当たったときでも,どうにかして答えを導き出そうとする子どもが増えてき たことがわかる。 (2) ● 課題 くるめ学で培った思考ツールの活用方を,他教科や領域でも活用することで,授業その ものの充実をはかっていくこと ● 「本質性」「関与性」「多様性」の視点から新たな素材を開発し,新たなカリキュラム を更新していくこと 参考文献 「小学校学習指導要領解説 総合的な学習の時間編」 ※平成 25 年度久留米市教育委員会研究指定研究発表会 - 88 - 文部科学省 山川小研究紀要より一部引用