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E08 46 歳、アレルギー性鼻炎と動悸・不眠
E08 46 歳、アレルギー性鼻炎と動悸・不眠 46 歳、女性。身長 156 ㎝、体重 53 ㎏。 <主訴> アレルギー性鼻炎。鼻流清涕、鼻閉、くしゃみ、目痒。症状はほぼ通年性であるが特に冬 に好発。花粉には反応しない。また動悸と不眠のためソラナックストベンザリンを使用し ている。 <全身症状> 寒熱:冷え症で、冬はアンカ使用。冷えのぼせ(-) 二便:大便 1 日 1 行。 小便 1 日 10~行、夜間 0 行、色(平)、量(少)。 飲食:食欲(平)、飲水(平) 全身:疲倦乏力(+) 浮腫:下肢(+) 睡眠:不眠傾向 心神:ストレスや坂道・階段で動悸が起こることがある。また動悸が起こるとなんとも落 ち着かなくなる。 汗:平 頭項:頭痛(コメカミ) 胸腹:胃痛(ストレス性・軽微) 経行:周期(約 40 日) 、経期(7 日間) 、経痛(-)、経血(色平、量少) 、帯下(白粘、多) 面・舌:面色:色白でぽっちゃりとした面立ち。舌質胖・嫩・有歯痕、舌苔微白。 体型:平 皮膚:色白 嗜好:飲酒(-) 、煙草(-) 。 血圧:125~66 脈拍:54 <分析及び治療方針> アレルギー性鼻炎の直接的な原因は痰飲によるものであるが、同時に頭痛・不眠・心悸な どの気上衝を兼ねていると思われる。このような場合、痰飲の治療だけではだめで、両者 を同時に治療する必要がある。 そこで痰飲に当帰芍薬散、気上衝に柴胡桂枝乾姜湯とし、両者を合方として用いることに する。 Rp1)当帰芍薬散(3/9)+柴胡桂枝乾姜湯(2/6) 14 日分 <経過・結果> 服用翌日から下利となる。そこで「食後服用」とするとすぐに回復。 鼻炎は服用 7 日目ごろから非常によくなる。同時に頭痛・動悸も改善。 1 服用 1 か月ほどで主訴であるアレルギー性鼻炎はほとんど出なくなったが、服用している と全身的に調子が良いとのことでしばらく続けることにする。 服用開始 7 か月後、ベンザリンとソラナックスを漸減し、廃薬に成功。 こののちも Rp1)を継続し、都合 14 か月服用ののち廃薬。 【考察】 アレルギー性鼻炎の原因はさまざまである。最も多いのが痰飲型で、その治療薬のファー ストチョイスとして当帰芍薬散を好んで用いている。この場合、男女を問わない。今回の 場合は「冷え症」 「尿頻数」 「下肢浮腫」 「ぽっちゃりとした面立ち(茯苓面)」 「舌質胖・嫩・ 有歯痕、舌苔微白」といった症状が痰飲に相当する。気上衝は「心悸及びそれに伴う不安 感」 「頭痛」 「不眠」など。基本に「桂枝体質」があるものと思われる。その治療法剤は当 然桂枝配合剤であるが、今回は当帰芍薬散と相性抜群の柴胡桂枝乾姜湯を選択した。幸い、 この二剤合方で著効を得たが、無効の場合さらに苓桂朮甘湯を合することも多い。当帰芍 薬散合柴胡桂枝乾姜湯はもともと苓桂朮甘湯を内包しているわけであるから、痰飲・気上 衝への対応を強化したことになる。当帰芍薬散合柴胡桂枝乾姜湯合苓桂朮甘湯は、湯本求 真先生の皇漢医学に同様の症例があり、これに倣ったものである。 2