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平成 26 年度化学物質安全対策 (OPCW 化学分析データ

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平成 26 年度化学物質安全対策 (OPCW 化学分析データ
平 成 26 年 度 化 学 物 質 安 全 対 策
(OPCW 化 学 分 析 デ ー タ 評 価 等 )報 告 書
平 成 27 年 3 月
一般財団法人化学物質評価研究機構
平成 26 年度化学物質安全対策 (OPCW 化学分析データ評価等) 報告書
目
次
はじめに
第1章
目的と概要 ................................................................................................ 1
第 2 章 表剤関連物質の物性データの採取及びその OPCW への提供
第1節 目的と概要 ............................................................................................... 4
第2節 OPCW 中央分析データベースへのデータ提供 ......................................... 5
第 3 章 OCAD に登録すべき物性データの評価に関する調査・研究
第1節 平成 26 年度評価データの概要 ............................................................... 32
第2節 バリデーショングループ会合報告 .......................................................... 35
第3節 OPCW 中央分析データベースに係る今後の動向 ................................... 40
第 4 章 海外調査による化学分析技術の情報収集
第1節 調査の概要 ............................................................................................. 42
第2節 「CWC 検証分析セミナー」報告 ........................................................... 42
第3節 国内外の論文等文献調査 ........................................................................ 46
第 5 章 化学兵器禁止条約の指定試験機関の分析技術維持等に係る情報収集
第1節 調査の概要 ............................................................................................. 50
第2節 OPCW 関連分析機関からの情報 ............................................................ 53
添付資料 1: OPCW 中央分析データベース・バリデーショングループ
会合レポート ...................................................................................... 60
添付資料 2: GCRI データの評価結果一覧 .............................................................87
添付資料 3: OCAD 提供 MS データ ......................................................................92
添付資料 4: OCAD 提供 GCRI データ ...................................................................97
はじめに
化学兵器の廃絶を目的とした化学兵器禁止条約(以下「条約」という)は、平成 9 年 4 月 29 日
に発効した。本条約で設立された化学兵器禁止機関(以下「OPCW」という)は、条約の附属書
に基づき、附属書に掲げられた化学物質(以下「表剤」という)を取り扱う施設において、当該
化学物質が化学兵器生産へ転用される等の条約違反が行われていないかを検証するため、産業
検査を行う。この検査に伴って化学分析を行うことがあり、分析によりサリン等の表1剤が存
在しないこと、また、OPCW への申告情報が適正であることを科学的に検証する。そのため、
OPCW では化学分析に不可欠な「OPCW 中央分析データベース」(以下「OCAD」という)の
構築が進められており、
OPCW は各締約国に対して表剤及び関連物質の物性データ提供等の協
力を要請している。我が国は、産業検査を受け入れていることから、それに伴う化学分析につ
いても関心を有しており、また国際貢献の意味でも、OPCW の上記の要請に対し、技術的貢献
(物性データの提供・評価)を積極的に行っていく必要がある。そこで本事業においては、こ
の国際貢献を円滑に進めるために、OCAD に登録すべき表剤及びその関連物質の物性データの
採取・提供、評価、海外分析機関等の調査及び分析技術の収集を行った。
OCAD に向けてデータを提出するため、表剤関連物質を 40 種を独自で合成し、ガスクロマ
トグラフ・リテンション・インデックス(以下「GCRI」という)及びマススペクトル(以下「MS」
という)データを採取し、OPCW に提出した。The Validation Group for the Updating of
OCAD(以下「バリデーショングループ」という)のデータ評価メンバーとして、各締約国の研
究機関などから、バリデーショングループ会合に先駆けて提供された表剤及びその関連物質の
物性データについて OCAD に登録することが適当か否かを評価した。更に、平成 26 年 9 月及
び平成 27 年 3 月に OPCW で開催されたバリデーショングループ会合に職員を派遣し、評価対
象の物性データの登録可否等について検討した。また、条約に係る国内の検証分析能力の維持・
向上、並びに最新の分析・検出方法の技術動向調査のため、バリデーショングループ会合出席
の機会に OPCW 技術事務局及びデータ提供国の分析機関から情報収集を行うとともに、オン
ラインによる文献検索等を行った。また、本年度は平成 27 年 3 月 18 日及び 19 日にフィンラ
ンドのヘルシンキにおいて開催された Seminar on Verification analysis of the Chemical
Weapons Convention (the CWC)に参加し化学剤分析等に関する情報収集を行った。
我が国にとって多様な化学物質の分析を信頼性高く行う能力の維持は重要であるため、
OPCWの指定試験機関であるThe Defence Science and Technology Laboratory :DSTL (英国)
及び Spiez Laboratory (スイス)を訪問し、その設備、技術能力、組織運営等に関する意見交換
及び情報収集を行った。
本報告書は、上記の研究調査についてまとめたものである。本調査研究を実施するに当たり、
ご協力をいただいた関係者の方々に深謝する次第である。
平成 27 年 3 月
第1章
目的と概要
第1章
1. 目
目的と概要
的
化学兵器の廃絶を目的とした CWC は、平成 9 年 4 月 29 日に発効した。本条約で設
立された OPCW は、条約の附属書に基づき、附属書に掲げられた化学物質(以下「表剤」
という)を取り扱う施設において化学兵器生産への転用等の条約違反が行われていない
かを検証するため、産業検査を行う。この検査に伴って化学分析を行うことがあり、こ
こでは、サリン等の条約の表1剤が存在しないこと、また、表 1 剤以外の表剤が表 1
剤生産に転用されていないことを科学的に実証しなければならない。そのため、OPCW
では検証分析に不可欠な OCAD の構築が進められており、OPCW は各締約国に対して
データ提供等の協力を要請している。我が国は、産業検査を受け入れていることからそ
れに伴う化学分析についても関心を有しており、また国際貢献の意味でも、OPCW の
上記の要請に対し、技術的貢献(物性データの提供・評価)を積極的に行っていく必要が
ある。OPCW では、検証分析に利用する分析データベースの拡充を図るため、平成 10
年 5 月に OCAD アップデートのための分析化学専門家によるバリデーショングループ
が設立された。また、検証分析を実施するための指定分析機関に必要な技術的能力を評
価する目的で、年間 2 回の公式プロフィシエンシーテスト(Official Proficiency Test: 以
下「技能試験」という)が実施されている。
このような背景のもと、我が国は、表剤関連化合物の迅速かつ信頼性の高い分析技術
の確立を行ってきた。また、バリデーショングループ会合への専門家の派遣、分析デー
タを提供することで OPCW への技術的貢献を行ってきた。
本事業では、上記貢献を円滑に進めるために、OCAD に登録すべき表剤及びその関
連物質の物性データの採取・提供、評価、海外分析機関等の調査及び分析技術の収集を
行った。
2. 事業内容
化学兵器禁止条約産業検証関連調査の内容を以下に述べる。
1)
表剤関連物質の物性データの採取及びその OPCW への提供
OCAD に GCRI 及び MS データを提供することを目的に、表 2 剤(2.B.04) を合
成した。2.B.04 剤は、りん原子に炭素数 3 までのアルキル基が一つ結合し、それ
以外の炭素原子がりん原子に直接結合していない化合物で、表剤の中でも理論上
最も多くのパターンが考えられるものの一つである。りん原子に直接結合するア
ルキル基はメチル、エチル、イソプロピル及びプロピル基に限られ、その他に酸
素又は硫黄原子及び二つの O-アルキル基又は S-アルキル基が結合したものが多い。
1
これまでも我が国は OCAD 未収録の化合物のうち、比較的炭素数が少ない O-アル
キル基を有する表 2.B.04 剤を選択して合成してきた。平成 26 年度も OCAD に未
収録の新規表 2.B.04 剤 40 物質を合成し、MS データ及び GCRI データを収集し
提出した。
2)
OCAD に登録すべき物性データの評価に関する調査・研究
平成 25 年度に引き続きバリデーショングループのメンバー(評価者)として
GCRI データの評価を行いバリデーショングループ会合に出席した。
同会合では、
各メンバーが事前に締約各国の分析機関から提供された分析データを OCAD に登
録することが適当か否かを評価し、その結果をもとにデータ採用の可否を科学的
に判断し、分析データベースに関連する課題についての検討を行った。本委託業
務では技術事務局より配布された GCRI データの精細な解析、評価を行った。平
成 26 年度内には、これら一連の作業を 2 回行い、157 物質の GCRI データについ
て評価を行った。
また、
第 40 回及び第 41 回バリデーショングループ会合が各々平成 26 年 9 月、
平成 27 年 3 月に開催され、これらの会合に出席して OCAD に係る情報の収集を
行った。
3)
海外調査による化学分析技術の情報収集
平成 27 年 3 月 18 日及び 19 日にフィンランドのヘルシンキにおいて開催され
た Seminar on Verification analysis of the Chemical Weapons Convention (the
CWC)に参加し、化学剤分析等に関する情報収集を行った。また、オンライン文献
検索サービスを用い化学兵器に関連した最新の文献調査を行った。
4)
化学兵器禁止条約の指定試験機関の分析技術維持等に係る情報収集
我が国にとって多様な化学物質の分析を信頼性高く行う能力の維持は重要であ
るため、OPCW によって認証された指定試験機関のうち、英国の DSTL 及びスイ
スの Spiez Laboratory を訪問し、その技術能力、研究者等の人材育成、組織運営
等に関する意見交換及び情報収集を行った。
3. 調査研究体制
業務監督者
久米 猛
業務全体の監督、専門家としてのアドバイス
主任研究者
和田丈晴
データ提供関連業務の取りまとめ、OPCW バリデー
ショングループ GCRI 評価、会合参加、報告書作成、
事業の統括
2
業務主担当者
栗原
勇
主任研究者不在時の代理、表剤合成、データの評価、
海外調査等
業務担当者
長澤英子
表剤合成、GCMS 測定、データ評価確認 、文献調査
霜島雅明 表剤合成、GCMS 測定、データ評価確認 、文献調査
瀨戸遼也
GCRI、MS データの取得、データ評価確認、文献調
査等
岩﨑
圭
GCRI、MS データの取得、データ評価確認、文献調
査等
坂本典子 GCRI、MS データの取得等
3
第2章
表剤関連物質の物性データの採取
及びその OPCW への提供
第2章
第1節
表剤関連物質の物性データの採取及びその OPCW への提供
目的と概要
化学兵器禁止条約では化学物質の基本構造によって対象物質が定義され、包括的に
規制されているため、様々な置換基の組合せによって非常に多くの化学物質が規制対
象となる。当然のことながら、これらの表剤のほとんどは標準物質がないか、入手困
難である。しかしながら実試料中の未知の表剤を同定するためには何らかの対照が必
要である。そこで OPCW 中央分析データベース(OCAD)の構築は特にオンサイトにお
いて表剤を同定するために有効な表剤の分析データを収録することを目的としている。
検査に伴って行われる化学分析では主に可搬型のガスクロマトグラフ質量分析計
(GC-MS)が用いられるが、表剤の同定には 2 つの科学的データにおいてデータベース
と試料の分析結果が一致する必要がある。したがって検査に伴って行われる分析にお
ける表剤同定の精度を向上させるためには特に GC リテンションインデックス(GCRI)
データ及びマススペクトル(MS)データの双方が必要である。このため、我が国は国際
貢献の一環として、平成 25 年度までに合計 9 回に渡り OCAD へのデータ提供を行っ
てきた。これまでに我が国は主にサリン等の神経剤の前駆物質として重要視されてい
る表 2.B.04 剤に分類されるアルキルホスホン酸ジエステルを中心に合成し、データを
提供してきた。表 2.B.04 剤は炭素数が 3 までのアルキル基、すなわちメチル基、エチ
ル基、イソプロピル基及びプロピル基が直接結合しているが、その他の炭素原子とは
直接結合していないリン原子を有する化学物質と定義されている。このため極めて多
くの化合物が対象となり、実際に OCAD における収録数も最も多い。平成 25 年度ま
でに我が国が提出した表 2.B.04 剤の GCRI データの多くが OCAD への登録が承認さ
れたが、一部の MS データは化学物質の構造から想定されるフラグメントイオンのピ
ークが欠落している、あるいは説明不可能なピークが含まれているという理由により
承認されなかったものもあった。これらは合成・精製方法及び測定・解析技術を改善
し、平成 26 年度に再提出を行った。先述したように OCAD においては一つの化合物
について GCRI データ及び MS データの双方が揃って収録されることにより有効性が
発揮される。そこで平成 26 年度は OCAD において GCRI 及び MS のいずれのデータ
も未登録である表 2.B.04 剤を選定して合成し、
データを収集して OPCW に提出した。
試薬として入手可能なメチルホスホン酸ジクロライド、エチルホスホン酸ジクロラ
イド及びイソプロピルホスホン酸ジクロライド及び自家合成したプロピルホスホン酸
ジクロライドの 4 種類のアルキルホスホン酸ジクロライドを原料とし、この両塩素基
末端に各種アルコールを求核置換反応させて表 2.B.04 剤の合成を試みた。アルキルホ
スホン酸ジクロライドの塩素と置換した後の O-アルキル基はメチル基、エチル基、プ
ロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、シクロペンチル基、1-エチルプロピル基、
2-メトキシエチル基、1,2-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、2-メトキシ
-1-メチルエチル基、2-エトキシ-1-メチルエチル基、3-メチルブチル基 1-エチル-2-メチ
4
ルプロピル及び 2-イソプロポキシエチル基である。これらを組み合わせて合成した表
2.B.04 剤の GCRI 及び MS データの中から十分な質を有すると思われるデータを選択
して提出した。
第 2 節 OPCW 中央分析データベースへのデータ提供
1.アルキルホスホン酸ジクロリドの合成
合成中間体の一つであるプロピルホスホン酸ジクロリドは合成を行った。以下に手順
等を示す。
(1) 試薬等
・プロピルホスホン酸ジブチル
和光純薬工業株式会社
・五塩化リン
東京化成工業株式会社
(2) 器
具
4 つ口セパラカバー、丸底セパラフラスコ、キャピラリー管、温度計、冷却管、
テフロン攪拌シール、テフロン被覆攪拌棒、簡易型攪拌機、塩化カルシウム管、
デュワーフラスコ、セパラブル用クランプ、リアクションバイアル、パスツー
ルピペット、蒸留装置、マイクロシリンジ及びビーカーを用いた。ガラス製の
器具は内面をアセトンで洗浄して用いた。
(3) プロピルホスホン酸ジクロラドの合成方法
以下にプロピルホスホン酸ジクロライドの合成方法を示す。
① 攪拌棒、温度計、滴下ロート及び冷却管を装着した 4 つ口反応フラスコに無
五塩化リン(16.48 g, 0.08 mol)を入れ、外部を水浴で冷却し、撹拌しながらプ
ロピルホスホン酸ジブチル(9.44 g, 0.04 mol)を滴下した。この反応によりプロ
ピルホスホン酸ジクロライド及び副生成物として 1-クロロブタン及び塩化ホ
スホリルが生じた。
O
O
P
Cl
O
+
Cl
P
O
Cl
Cl
Cl
P
O
Cl
+
Cl
②
+
Cl
P
Cl
Cl
Cl
次に反応液を蒸留器の梨型フラスコに移し、ゆるやかに減圧しながら砂浴
で 100℃に加熱し蒸留した。排気は氷冷したバブラー及び水酸化ナトリウム溶
液の入ったバブラーを通し真空ポンプに供した。沸点の比較的低い 1-クロロ
ブタン及び塩化ホスホリルは蒸留装置の受器に回収され、梨型フラスコ内に
目的物質であるプロピルホスホン酸ジクロライドが得られた。
5
2.表 2.B.04 剤合成
OPCWへ分析データ(MS 及び GCRI)の提供を行うためアルキルホスホン酸ジクロラ
ドと各種アルコールを反応させ、表 2.B.04 に分類される化合物を合成した。アルキル
ホスホン酸ジクロライドとしては、メチルホスホン酸ジクロライド、エチルホスホン
酸ジクロライド、イソプロピルホスホン酸ジクロライド及びプロピルホスホン酸ジク
ロライドの 4 種類を用いた。アルコールについては比較的高純度である試薬を入手し、
検討の結果取捨選択をした。なお、基本的に合成する化合物は OCAD にデータが未登
録のものを優先的に選択した。
(1) 試 薬
・メチルホスホン酸ジクロライド(95%)
東京化成工業株式会社
・エチルホスホン酸ジクロライド
Alfa Aesar
・イソプロピルホスホン酸ジクロライド
Alfa Aesar
・プロピルホスホン酸ジクロライド
一般財団法人化学物質評価研究機構
・ジクロロメタン
関東化学株式会社
・トリエチルアミン
和光純薬工業株式会社
・1-メトキシ-2-プロパノール
和光純薬工業株式会社
・メタノール(超脱水)
和光純薬工業株式会社
・エタノール(超脱水)
和光純薬工業株式会社
・1-プロパノール(超脱水)
和光純薬工業株式会社
・2-プロパノール(超脱水)
和光純薬工業株式会社
・2-イソプロポキシエタノール
シグマアルドリッチジャパン
・2-メトキシエタノール
Fluka(シグマアルドリッチジャパン)
・1-エトキシ-2-プロパノール
東京化成工業株式会社
・1-ブタノール(超脱水)
和光純薬工業株式会社
・3-メチルブタノール
シグマアルドリッチジャパン
・DL-3-メチル-2-ブタノール
シグマアルドリッチジャパン
・3-ペンタノール
シグマアルドリッチジャパン
・シクロペンタノール
シグマアルドリッチジャパン
・2-メチル 3-ペンタノール
シグマアルドリッチジャパン
・2,2-ジメチル-1-プロパノール
和光純薬工業株式会社
・無水硫酸ナトリウム
関東化学株式会社
・ジエチルエーテル
関東化学株式会社
・超純水
和光純薬工業株式会社
(2)アルキルホスホン酸ジクロリド及びアルコールを用いた表 2.B.04 剤の合成手順
合成及び精製手順を以下に示す。
① 反応バイアルにアルキルホスホン酸ジクロライドを200 µL(約0.0025 mol)量り
取り撹拌子(マグネチックスターラー)で攪拌した。メチルホスホン酸ジクロライ
6
ドは室温で固体であるため0.1 gを量り取った。
② 求核置換反応させる2種類のアルコール各0.3 mLを容量1 mLのガスタイトシリ
ンジを用いて順次分取し、シリンジ内で十分に混合した後、ニードルをミニ反応
キットのセプタム部分から挿入してバイアル内に混合液を注入した。メチルホス
ホン酸ジクロライドの場合は溶解するまで十分に攪拌を行った。
③ トリエチルアミン0.2 mLをマイクロシリンジに分取し、同様にバイアル内に注入
した。この際、トリエチルアミンの塩酸塩(白色固体)が析出した。
④ 反応物に超純水3 mLを加え、析出したトリエチルアミン塩酸塩を溶解した。
⑤ ジクロロメタン1 mLを加え撹拌子により激しく攪拌し、反応生成物を抽出した。
⑥ 攪拌を停止し、静置後水相を除去し、ジクロロメタン層に超純水3 mLを加えて
攪拌し、再び静置後水層をパスツールピペットを用いて除去した。
⑦ 無水硫酸ナトリウムを加えて脱水し、上清を別のバイアルに移して表2.B.04剤の
ジクロロメタン溶液を得た。
⑧ ジクロロメタン溶液をジクロロメタンで500倍に希釈してGC/MSで分析した。
(3) 合成反応(表 2.B.04 剤)
本業務で実施した合成反応を以下に示す。
アルキルホスホン酸ジクロライドと1種類又は2種類のアルコールを求核置換反
応させることによりジアルキル アルキルホスホナートを得た。合成反応の一例と
してEthyl 2-methoxy-1-methylethyl isopropylphosphonateの例を下式に示す。
O
P
Cl
Cl
+
OH
+
O
P
O
OH
O
O
O
O
+
P
O
O
O
+
O
P
O
O
O
合成反応で得られた化合物のうち、OCADにデータが未収録かつ十分な質を有するMS
データ及びGCRIデータを提供することとした。表2-1に合成した表2.B04剤と原料であ
るアルキルホスホン酸ジクロリド及びアルコールの組合せを示す。
表2-1 合成した化合物名及び合成原料
化合物名(表 2.B.04 剤)
Ethyl
2-methoxy-1-methylethyl
isopropylphosphonate
Isopropyl 2-methoxy-1-methylethyl
isopropylphosphonate
2-Methoxy-1-methylethyl
propyl
isopropylphosphonate
Butyl
2-methoxy-1-methylethyl
アルキルホスホン
酸ジクロリド
Isopropylphosphonic
dichloride
Isopropylphosphonic
dichloride
Isopropylphosphonic
dichloride
Isopropylphosphonic
7
アルコール 1
アルコール 2
1-Methoxy-2-propanol
Ethanol
2-Propanol
1-Methoxy-2-propanol
1-Propanol
1-Methoxy-2-propanol
1-Butanol
1-Methoxy-2-propanol
化合物名(表 2.B.04 剤)
isopropylphosphonate
1,2-Dimethylpropyl
2-methoxyethyl
isopropylphosphonate
Bis(1,2-Dimethylpropyl)
isopropylphosphonate
1-Ethylpropyl
isopropyl
isopropylphosphonate
1-Ethylpropyl
propyl
isopropylphosphonate
3-Methylbutyl
propyl
isopropylphosphonate
Cyclopentyl
2-methoxy-1-methylethyl
isopropylphosphonate
1,2-Dimethylpropyl
propyl
isopropylphosphonate
2-Ethoxy-1-methylethyl
methyl
isopropylphosphonate
2-Ethoxy-1-methylethyl
ethyl
isopropylphosphonate
2-Ethoxy-1-methylethyl isopropyl
isopropylphosphonate
2-Ethoxy-1-methylethyl
propyl
isopropylphosphonate
Bis(2-Ethoxy-1-methylethyl)
isopropylphosphonate
2-Isopropoxyethyl
methyl
isopropylphosphonate
Ethyl
2-isopropoxyethyl
isopropylphosphonate
2-Isopropoxyethyl
isopropyl
isopropylphosphonate
2-Isopropoxyethyl
propyl
isopropylphosphonate
Bis(2-isopropoxyethyl)
isopropylphosphonate
2-Methoxy-1-methylethyl
propyl
propylphosphonate
Isopropyl 2-methoxy-1-methylethyl
propylphosphonate
1,2-Dimethylpropyl
2-methoxyethyl
methylphosphonate
1,2-Dimethylpropyl
2-methoxyethyl ethylphosphonate
Cyclopentyl
2-methoxy-1-methylethyl
methylphosphonate
2,2-Dimethylpropyl
isopropyl
methylphoshonate
2,2-Dimethylpropyl
isopropyl
ethylphoshonate
2,2-Dimethylpropyl
isopropyl
isopropylphoshonate
2,2-Dimethylpropyl
isopropyl
propylphoshonate
アルキルホスホン
酸ジクロリド
アルコール 1
アルコール 2
dichloride
Isopropylphosphonic
dichloride
Isopropylphosphonic
dichloride
Isopropylphosphonic
dichloride
Isopropylphosphonic
dichloride
Isopropylphosphonic
dichloride
Isopropylphosphonic
dichloride
Isopropylphosphonic
dichloride
Isopropylphosphonic
dichloride
Isopropylphosphonic
dichloride
Isopropylphosphonic
dichloride
Isopropylphosphonic
dichloride
Isopropylphosphonic
dichloride
Isopropylphosphonic
dichloride
Isopropylphosphonic
dichloride
Isopropylphosphonic
dichloride
Isopropylphosphonic
dichloride
Isopropylphosphonic
dichloride
Propylphosphonic
dichloride
Propylphosphonic
dichloride
Methylphosphonic
dichloride
Ethylphosphonic
dichloride
Methylphosphonic
dichloride
Methylphosphonic
dichloride
Ethylphosphonic
dichloride
Isopropylphosphonic
dichloride
Propylphosphonic
dichloride
8
3-Methyl-2-butanol
2-Methoxyethanol
3-Methyl-2-butanol
2-Propanol
3-Pentanol
1-Propanol
3-Pentanol
3-Methylbutanol
1-Propanol
Cyclopentanol
1-methoxy-2-propanol
3-Methyl-2-butanol
1-Propanol
1-Ethoxy-2-propanol
Methanol
1-Ethoxy-2-propanol
Ethanol
1-Ethoxy-2-propanol
2-Propanol
1-Ethoxy-2-propanol
1-Propanol
1-Ethoxy-2-propanol
―
2-Isopropoxyethanol
Methanol
2-Isopropoxyethanol
Ethanol
2-Isopropoxyethanol
2-Propanol
2-Isopropoxyethanol
1-Propanol
2-Isopropoxyethanol
―
1-Propanol
1-Methoxy-2-propanol
2-Propanol
1-Methoxy-2-propanol
3-Methyl-2-butanol
2-Methoxyethanol
3-Methyl-2-butanol
2-Methoxyethanol
Cyclopentanol
1-Methoxy-2-propanol
2,2-Dimethylpropanol
2-Propanol
2,2-Dimethylpropanol
2-Propanol
2,2-Dimethylpropanol
2-Propanol
2,2-Dimethylpropanol
2-Propanol
化合物名(表 2.B.04 剤)
アルキルホスホン
酸ジクロリド
2,2-Dimethylpropyl
propyl
methylphoshonate
2,2-Dimethylpropyl
propyl
ethylphoshonate
2,2-Dimethylpropyl
propyl
isopropylphoshonate
2,2-Dimethylpropyl
propyl
propylphoshonate
Bis(2-methoxy-1-methylethyl)
isopropylphoshonate
1-Ethyl-2-methylpropyl
propyl
isopropylphoshonate
Butyl
1-ethyl-2-methylpropyl
methylphosphonate
Butyl
1-ethyl-2-methylpropyl
ethylphosphonate
Butyl
1-ethyl-2-methylpropyl
isopropylphosphonate
Butyl
1-ethyl-2-methylpropyl
propylphosphonate
Methylphosphonic
dichloride
Ethylphosphonic
dichloride
Isopropylphosphonic
dichloride
Propylphosphonic
dichloride
Isopropylphosphonic
dichloride
Isopropylphosphonic
dichloride
Methylphosphonic
dichloride
Ethylphosphonic
dichloride
Isopropylphosphonic
dichloride
Propylphosphonic
dichloride
アルコール 1
アルコール 2
2,2-Dimethylpropanol
1-Propanol
2,2-Dimethylpropanol
1-Propanol
2,2-Dimethylpropanol
1-Propanol
2,2-Dimethylpropanol
1-Propanol
1-Methoxy-2-propanol
―
2-Methyl-3-pentanol
1-Propanol
1-Butanol
2-Methyl-3-pentanol
1-Butanol
2-Methyl-3-pentanol
1-Butanol
2-Methyl-3-pentanol
1-Butanol
2-Methyl-3-pentanol
3.GC/MS 分析によるデータ収集
前項の合成反応で得られた生成物をGC/MSで分析した。
GC/MS分析条件
装
置:
6890型ガスクロマトグラフ及び5973型質量分析計
いずれもアジレント・テクノロジー株式会社
カ
ラ
ム:
HP-5MS UI (30 m×0.25 mm,膜厚0.25 µm)又は
アジレント・テクノロジー株式会社
カ ラ ム 温 度:
40℃(1 min)-10℃/min-280℃(10 min)
注 入 口 温 度:
250℃
注 入 方 法:
スプリットレス
注
1 µL
入
量:
キ ャ リ ア ガ ス:
He 0.9 mL/min
イ オ ン 化 方 法:
電子衝撃イオン化法(ポジティブ)
イ オ ン 化 電 圧:
70 eV
測 定 方 法:
スキャン(m/z=30~600)
ス キ ャ ン 速 度:
2.58回/秒
定流量モード
4.MS データのレポーティング
OPCWへ提供したデータの作成方法は次に示す通りである。まずGC/MSで測定して
得られたデータ処理装置(Chemstation)形式のMSデータを米国NISTのAutomated
9
Mass Spectral Deconvolution and Identification System(AMDIS)で開いた。次に
AMDISで自動解析を行い、クロマトグラム上の全てのピークについてデコンボリュー
ションされたマススペクトルを得た。これらのマススペクトルから目的物質のマスス
ペクトルを選択してNISTのMSPファイル形式でファイルを保存した。NISTから供給
されているMS Searchというソフトウェアを用いて当該化合物のスペクトルファイル
を開き、ノイズや明らかに無関係なピークを除去するなどマニュアル補正を行った後、
フラグメントイオンの帰属を確認し、別途用意した化学構造式のファイル(MOLファ
イル形式)及び化合物名、OPCWコード番号等の情報を追記した。40物質について異性
体も含めて得られたスペクトルの数は60である。
合成した各目的化合物のマススペクトルを図2-1~図2-60に示す。なお、括弧内は
OPCW コード番号を示す。
125
100
153
151
O
O
P
O
O
50
138
107
43
86
58
41 45
0
31
39
47
55
97
179
111
65
69
63
81
83
73
75
166
91
94
135
99
149
113
図 2-1
195
163
30
40
50
60
70
80
90
100
110
120
130
140
150
160
(Spec. Edit) Component at scan 1602 (15.442 min) [Model = +125u] in H:\12Zp\Zp\_L\1_\CW\OPCW\f[^
\2015\2015OPCW_C\2015031208.D\DATA.MS
170
180
190
223
200
210
220
230
240
250
Ethyl 2-isopropoxyethyl propylphosphonate のマススペクトル(16-2-0208r)
153
100
O
P
O
O
O
179
125
50
107
135
65
151
72
45
93
41
181
113
39
0
31
47
53
57
63
67
83
85
91
95
110
99
141
115
30
40
50
60
70
80
90
100
110
120
130
140
(Spec. Edit) Component at scan 1310 (13.554 min) [Model = +153u] in H:\12Zp\Zp\_L\1_\CW\OPCW\f[^
\2015\2015OPCW_C\2015031209.D\DATA.MS
図2-2
149
150
163 167
160
209
192
177
170
180
190
200
210
223
220
Ethyl 2-methoxy-1-methylethyl isopropylphosphonateのマススペクトル
(16-2-0238)
10
230
125
100
151
O
P
O
O
O
50
149
73
43
107
153
41
113
0
31
179
65
167
193
39
37
47
53
59
91
79 83 87
95 99
62
115
131
139
181
164
30
40
50
60
70
80
90
100
110
120
130
140
150
160
(Spec. Edit) Component at scan 1348 (13.799 min) [Model = +125u] in H:\12Zp\Zp\_L\1_\CW\OPCW\f[^
\2015\2015OPCW_C\2015031210.D\DATA.MS
170
180
197
190
206
200
223
210
220
230
240
250
Isopropyl 2-methoxy-1-methylethyl isopropylphosphonate (異性体a)のマ
図2-3
ススペクトル (16-2-0239a)
125
100
151
O
P
O
O
O
50
149
43
73
41
107
179
65
167
153
113
0
31
39
37
47
53
59
79 83 87 91
63
96 99
115
131
139
155
30
40
50
60
70
80
90
100
110
120
130
140
150
160
(Spec. Edit) Component at scan 1352 (13.828 min) [Model = +125u] in H:\12Zp\Zp\_L\1_\CW\OPCW\f[^
\2015\2015OPCW_C\2015031210.D\DATA.MS
181
164
170
180
193
195
190
206
200
223
210
220
230
240
250
Isopropyl 2-methoxy-1-methylethyl isopropylphosphonate (異性体b)のマ
図2-4
ススペクトル (16-2-0239b)
125
100
O
P
O
151
O
O
50
167
149
107
43
65
45
193
73
41
153
113
195
179
0
31
39
37
47
53
57
63 67
83
79
85
91
96 99
115
131
139
30
40
50
60
70
80
90
100
110
120
130
140
150
160
(Spec. Edit) Component at scan 1485 (14.689 min) [Model = +125u] in H:\12Zp\Zp\_L\1_\CW\OPCW\f[^
\2015\2015OPCW_C\2015031211.D\DATA.MS
図2-5
197
181
170
180
190
200
206
223
210
220
230
240
2-Methoxy-1-methylethyl propyl isopropylphosphonate (異性体a)のマスス
ペクトル (16-2-0240a)
11
250
125
100
O
P
O
O
O
151
50
167
107
43
45
41
65
149
193
72
153
113
0
31
39
47
53
57
79
63 67
83
85
91
96 99
179
115
131 135
139
195
197
181
155
30
40
50
60
70
80
90
100
110
120
130
140
150
160
(Spec. Edit) Component at scan 1492 (14.729 min) [Model = +125u] in H:\12Zp\Zp\_L\1_\CW\OPCW\f[^
\2015\2015OPCW_C\2015031211.D\DATA.MS
170
180
190
206
200
2-Methoxy-1-methylethyl propyl isopropylphosphonate
図2-6
223
210
220
230
240
250
(異性体b)のマス
(16-2-0240b)
スペクトル
125
100
O
P
O
O
O
151
50
181
163
73
41 45
107
65
57
207
153
113
209
179
0
31
39
47 51
55 59
62
79
67
83
91
96 99
115
133
139
197
145
220
30
40
50
60
70
80
90
100
110
120
130
140
150
160
(Spec. Edit) Component at scan 1653 (15.770 min) [Model = +125u] in H:\12Zp\Zp\_L\1_\CW\OPCW\f[^
\2015\2015OPCW_C\2015031212.D\DATA.MS
170
180
190
200
210
Butyl 2-methoxy-1-methylethyl isopropylphosphonate
図2-7
220
237
230
240
250
260
(異性体a)のマス
スペクトル (16-2-0241a)
125
100
O
P
O
50
O
O
151
181
163
73
41 45
107
65
207
57
153
113
0
31
39
55 59
47 51
62
67
79
83
91
96 99
109
115
133
139
145
179
155
30
40
50
60
70
80
90
100
110
120
130
140
150
160
(Spec. Edit) Component at scan 1661 (15.824 min) [Model = +125u] in H:\12Zp\Zp\_L\1_\CW\OPCW\f[^
\2015\2015OPCW_C\2015031212.D\DATA.MS
192
170
180
190
197
200
209
220
210
220
237
230
240
図2-8 Butyl 2-methoxy-1-methylethyl isopropylphosphonate (異性体b)のマスス
ペクトル (16-2-0241b)
12
250
165
100
125
O
P
O
O
O
50
59
43
139
41 45
31
39
47
0
71
55
53
183
152
79
81
113
91 95
121
150
177
30
40
50
60
70
80
90
100
110
120
130
140
150
160
170
(Spec. Edit) Component at scan 1634 (15.649 min) [Model = +165u] in H:\12Zp\Zp\_L\1_\CW\OPCW\f[^
\2015\2015OPCW_C\2015031213.D\DATA.MS
209
194
180
190
200
210
220
230
240
250
260
270
280
1,2-Dimethylpropyl 2-methoxyethyl isopropylphosphonate (異性体a)のマ
図2-9
ススペクトル (16-2-0242a)
165
100
125
O
P
O
O
O
50
59
43
139
41 45
71
55
183
152
79
121
113
39
31
91 95
150
53
47
81
177
0
30
40
50
60
70
80
90
100
110
120
130
140
150
160
170
180
(Spec. Edit) Component at scan 1634 (15.649 min) [Model = +165u] in H:\12Zp\Zp\_L\1_\CW\OPCW\f[^
\2015\2015OPCW_C\2015031213.D\DATA.MS
209
194
190
200
210
220
230
240
250
260
270
280
図2-10 1,2-Dimethylpropyl 2-methoxyethyl isopropylphosphonate (異性体b)のマ
ススペクトル (16-2-0242b)
125
100
151
O
71
P
O
O
50
43
55
165
41
179
65
107
221
0
40
50
60
70
80
90
100
110
120
130
140
150
160
170
(Spec. Edit) Component at scan 1634 (15.648 min) [Model = +151u] in H:\12Zp\Zp\_L\1_\CW\OPCW\f[^
\2015\2015OPCW_C\2015031214.D\DATA.MS
180
190
200
210
220
230
240
250
260
図2-11 Bis(1,2-Dimethylpropyl) isopropylphosphonate (異性体a)のマススペクト
ル (16-2-0243a)
13
270
125
100
151
O
71
P
O
O
50
43
55
41
179
39
45
53
65
83 87 91
0
107
30
40
50
60
70
80
90
100
110
120
130
140
150
160
170
(Spec. Edit) Component at scan 1646 (15.726 min) [Model = +125u] in H:\12Zp\Zp\_L\1_\CW\OPCW\f[^
\2015\2015OPCW_C\2015031214.D\DATA.MS
221
195
177
136
97
180
190
200
210
220
230
240
250
260
270
図2-12 Bis(1,2-Dimethylpropyl) isopropylphosphonate (異性体b)のマススペクト
ル (16-2-0243b)
125
100
151
O
71
P
O
O
50
43
55
41
179
39
45
65
83
53
107
92
0
195
177
30
40
50
60
70
80
90
100
110
120
130
140
150
160
170
(Spec. Edit) Component at scan 1658 (15.808 min) [Model = +125u] in H:\12Zp\Zp\_L\1_\CW\OPCW\f[^
\2015\2015OPCW_C\2015031214.D\DATA.MS
180
190
221
200
210
220
230
240
250
260
270
図2-13 Bis(1,2-Dimethylpropyl) isopropylphosphonate (異性体c)のマススペクト
ル (16-2-0243c)
125
100
O
P
O
O
165
50
43
41
39
0
31
45
55 59
53 57
151
65
107
71
83
87
92
101
167
207
177
119
30
40
50
60
70
80
90
100
110
120
130
140
150
160
(Spec. Edit) Component at scan 1355 (13.847 min) [Model = +125u] in H:\12Zp\Zp\_L\1_\CW\OPCW\f[^
\2015\2015OPCW_C\2015031215.D\DATA.MS
170
図2-14 1-Ethylpropyl isopropyl isopropylphosphonate
(16-2-0244)
14
180
190
200
210
220
のマススペクトル
230
240
250
125
100
O
P
O
O
50
165
43
207
167
0
39
31
107
65
41
45
55 59
50 53
61
71
73
78
149
83
85 89 92 96
109
131 135 139
151
177
159 163
30
40
50
60
70
80
90
100
110
120
130
140
150
160
(Spec. Edit) Component at scan 1483 (14.673 min) [Model = +125u] in H:\12Zp\Zp\_L\1_\CW\OPCW\f[^
\2015\2015OPCW_C\2015031216.D\DATA.MS
170
196
180
190
221
200
210
220
230
240
250
図2-15 1-Ethylpropyl propyl isopropylphosphonateのマススペクトル (16-2-0245)
125
100
O
P
O
O
50
167
43
41
0
39
31
51
55
65
58
63
71
73 77
151
83
107
85 89 92 96
111
119
135
139
149 153
195
179
30
40
50
60
70
80
90
100
110
120
130
140
150
160
(Spec. Edit) Component at scan 1533 (14.995 min) [Model = +125u] in H:\12Zp\Zp\_L\1_\CW\OPCW\f[^
\2015\2015OPCW_C\2015031217.D\DATA.MS
170
180
図2-16 3-Methylbutyl propyl isopropylphosphonate
190
221
200
210
220
230
240
250
260
270
のマススペクトル
(16-2-0246)
125
100
O
P
151
O
O
O
50
73
67
153
41
45
179
65
113
0
40
50
60
70
80
90
100
110
120
130
140
150
160
170
(Spec. Edit) Component at scan 1891 (17.313 min) [Model = +125u] in H:\12Zp\Zp\_L\1_\CW\OPCW\f[^
\2015\2015OPCW_C\2015031218.D\DATA.MS
180
190
200
210
220
230
240
250
図2-17 Cyclopentyl 2-methoxy-1-methylethyl isopropylphosphonate (異性体a)の
マススペクトル(16-2-0247a)
15
125
100
O
151
P
O
O
O
50
73
179
67
41
45
65
107
113
175
0
40
50
60
70
80
90
100
110
120
130
140
150
160
170
(Spec. Edit) Component at scan 1903 (17.391 min) [Model = +151u] in H:\12Zp\Zp\_L\1_\CW\OPCW\f[^
\2015\2015OPCW_C\2015031218.D\DATA.MS
180
190
200
210
220
230
240
250
260
270
図2-18 Cyclopentyl 2-methoxy-1-methylethyl isopropylphosphonate (異性体b)の
マススペクトル(16-2-0247b)
125
100
O
P
O
O
50
151
43
193
167
65
41
149
107
71
55
0
31
39
37
45
53
83
63
79
87 91
96
109
179
177
137
117
30
40
50
60
70
80
90
100
110
120
130
140
150
160
(Spec. Edit) Component at scan 1437 (14.373 min) [Model = +125u] in H:\12Zp\Zp\_L\1_\CW\OPCW\f[^
\2015\2015OPCW_C\2015031219.D\DATA.MS
170
180
207
190
200
210
221
220
230
240
250
図2-19 1,2-Dimethylpropyl propyl isopropylphosphonate (異性体a)のマススペク
トル (16-2-0248a)
125
100
O
P
O
O
50
151
43
193
167
41
65
149
107
71
55
0
39
37
45
53
83
59 63
79
87 91
96
109
179
177
139
30
40
50
60
70
80
90
100
110
120
130
140
150
160
(Spec. Edit) Component at scan 1457 (14.505 min) [Model = +125u] in H:\12Zp\Zp\_L\1_\CW\OPCW\f[^
\2015\2015OPCW_C\2015031219.D\DATA.MS
170
180
221
190
200
210
220
230
240
図2-20 1,2-Dimethylpropyl propyl isopropylphosphonate(異性体b)のマススペクト
ル (16-2-0248b)
16
250
125
100
O
P
O
O
O
50
43
167
65
41
149
83
109
59
151
96
0
220
210
200
190
180
170
160
150
140
130
120
110
100
90
80
70
60
50
40
\2015\2015OPCW_C\2015031220.D\DATA.MS
(Spec. Edit) Component at scan 1242 (13.112 min) [Model = +125u] in H:\12Zp\Zp\_L\1_\CW\OPCW\f[^
230
図2-21 2-Ethoxy-1-methylethyl methyl isopropylphosphonateのマススペクトル
(16-2-0249)
153
100
O
O
P
O
O
125
179
50
86
107
65
43
135
151
59
93
41
31
139
45
39
47
0
81
55
69 73
165
99
91
110
96
79
149
193
177
30
40
50
60
70
80
90
100
110
120
130
140
150
160
(Spec. Edit) Component at scan 1434 (14.355 min) [Model = +153u] in H:\12Zp\Zp\_L\1_\CW\OPCW\f[^
\2015\2015OPCW_C\2015031221.D\DATA.MS
170
180
190
209
200
210
223
220
230
240
250
250
260
図2-22 2-Ethoxy-1-methylethyl ethyl isopropylphosphonateのマススペクトル
(16-2-0250)
125
100
O
O
151
P
O
O
50
149
43
41
31
0
39
86
59
107
65
45
47
75
83
165
193
139
91
96 99
105
119
195
135
30
40
50
60
70
80
90
100
110
120
130
140
150
160
(Spec. Edit) Component at scan 1474 (14.613 min) [Model = +125u] in H:\12Zp\Zp\_L\1_\CW\OPCW\f[^
\2015\2015OPCW_C\2015031223.D\DATA.MS
170
180
190
208
200
210
220
230
240
図2-23 2-Ethoxy-1-methylethyl isopropyl isopropylphosphonate のマススペクト
ル (16-2-0251)
17
125
100
O
P
O
O
O
167
151
50
86
43
59
41
149
107
65
193
165
139
31
83
45
39
91
67 70 73 76
54
0
96
99
131 135
141
153
195
181
160
150
140
130
120
110
100
90
80
70
60
50
40
30
\2015\2015OPCW_C\2015031224.D\DATA.MS
(Spec. Edit) Component at scan 1606 (15.469 min) [Model = +125u] in H:\12Zp\Zp\_L\1_\CW\OPCW\f[^
206 211
210
200
190
180
170
237
223
220
250
240
230
260
図2-24 2-Ethoxy-1-methylethyl propyl isopropylphosphonateのマススペクトル
(16-2-0252)
165
100
125
O
O
P
O
O
O
59
50
87
211
193
31
41
43
65
45
71 75
55
0
91
83
99
107
110
138
151
181
206
30
40
50
60
70
80
90
100
110
120
130
140
150
160
170
180
190
(Spec. Edit) Component at scan 1904 (17.395 min) [Model = +165u] in H:\12Zp\Zp\_L\1_\CW\OPCW\f[^
\2015\2015OPCW_C\2015031224.D\DATA.MS
200
239
225
210
220
230
252
240
250
260
270
280
290
300
310
図2-25 Bis(2-Ethoxy-1-methylethyl) isopropylphosphonate (異性体a)のマススペ
クトル (16-2-0253a)
165
100
125
O
O
P
O
O
O
59
50
87
211
193
31
41
43
65
0
45
47
55
67 71
83
91
99
107
139
151
206
185
30
40
50
60
70
80
90
100
110
120
130
140
150
160
170
180
190
(Spec. Edit) Component at scan 1917 (17.482 min) [Model = +165u] in H:\12Zp\Zp\_L\1_\CW\OPCW\f[^
\2015\2015OPCW_C\2015031224.D\DATA.MS
200
210
237
220
230
240
250
260
270
280
290
300
図2-26 Bis(2-Ethoxy-1-methylethyl) isopropylphosphonate(異性体b)のマススペク
トル (16-2-0253b)
18
310
139
100
O
P
O
O
O
110
50
79
165
43
124
86
58
41
39
65
47
91
73
152
121
97
137
113
105
31
99
68
51 55
0
140
130
120
110
100
90
80
70
60
50
40
30
\2015\2015OPCW_C\2015031225.D\DATA.MS
(Spec. Edit) Component at scan 1409 (14.193 min) [Model = +139u] in H:\12Zp\Zp\_L\1_\CW\OPCW\f[^
149
181
163
209
210
200
190
180
170
160
150
220
230
図2-27 2-Isopropoxyethyl methyl isopropylphosphonate のマススペクトル
(16-2-0254)
125
100
153
O
P
151
O
O
O
43
50
65
138
86
58
41 45
96
166
107
179
91
83
135
109
73
39
99
47
149
31
69
37
63
75
0
30
40
50
60
70
80
90
100
110
120
130
140
150
160
(Spec. Edit) Component at scan 1510 (14.846 min) [Model = +125u] in H:\12Zp\Zp\_L\1_\CW\OPCW\f[^
\2015\2015OPCW_C\2015031226.D\DATA.MS
195
177
170
180
190
223
200
210
220
230
240
250
250
260
図2-28 Ethyl 2-isopropoxyethyl isopropylphosphonateのマススペクトル
(16-2-0255)
125
100
O
151
P
O
O
O
50
43
138
96
41
58
45
86
65
110
91
0
31
39
47
55
63
69 73
83
99
167
123
149
155
30
40
50
60
70
80
90
100
110
120
130
140
150
160
(Spec. Edit) Component at scan 1549 (15.100 min) [Model = +125u] in H:\12Zp\Zp\_L\1_\CW\OPCW\f[^
\2015\2015OPCW_C\2015031227.D\DATA.MS
169
170
195
179
180
190
211
200
210
237
220
230
240
図2-29 2-Isopropoxyethyl isopropyl isopropylphosphonateのマススペクトル
(16-2-0256)
19
125
100
O
P
O
O
O
50
151
139
167
43
58
45
0
31
39
47
55
153
96
86
41
65
69
63
83
73
107
109
91
99
79
149
123
165
133
169
181
179
193
211
237
220
210
200
190
180
170
160
150
140
130
120
110
100
90
80
70
60
50
40
30
\2015\2015OPCW_C\2015031228.D\DATA.MS
(Spec. Edit) Component at scan 1677 (15.926 min) [Model = +125u] in H:\12Zp\Zp\_L\1_\CW\OPCW\f[^
250
240
230
260
図2-30 2-Isopropoxyethyl propyl isopropylphosphonate のマススペクトル
(16-2-0257)
151
100
125
O
O
P
O
O
O
169
43
50
211
139
86
45
58
91
41
65
0
69 73
71
47
31
96
107
79 83
165
99
115
179
195
30
40
50
60
70
80
90
100
110
120
130
140
150
160
170
180
190
(Spec. Edit) Component at scan 2048 (18.328 min) [Model = +151u] in H:\12Zp\Zp\_L\1_\CW\OPCW\f[^
\2015\2015OPCW_C\2015031228.D\DATA.MS
237
225
200
210
220
230
281
253
240
250
260
270
280
290
300
310
図2-31 Bis(2-isopropoxyethyl) isopropylphosphonateのマススペクトル
(16-2-0258)
125
100
O
O
P
O
O
151
107
50
167
149
72
43
193
41
65
0
31
39
37
47
57
63 67
179
97
79 82
85
91
99
109 113
115
123
139
131 136
153
30
40
50
60
70
80
90
100
110
120
130
140
150
160
(Spec. Edit) Component at scan 1565 (15.202 min) [Model = +125u] in H:\12Zp\Zp\_L\1_\CW\OPCW\f[^
\2015\2015OPCW_C\2015031229.D\DATA.MS
165
197
181
170
180
190
200
206
223
210
220
230
図2-32 2-Methoxy-1-methylethyl propyl propylphosphonateのマススペクトル
(16-2-0259)
20
240
250
125
100
151
O
O
P
O
O
50
107
73
149
45
43
41
179
167
0
31
65
39
47
53
57
79 82
63
87
91
96
109
94
113
115
131 135
164
139
181
155
160
150
140
130
120
110
100
90
80
70
60
50
40
30
\2015\2015OPCW_C\2015031230.D\DATA.MS
(Spec. Edit) Component at scan 1430 (14.330 min) [Model = +125u] in H:\12Zp\Zp\_L\1_\CW\OPCW\f[^
170
193
197
223
206
220
210
200
190
180
230
240
250
図2-33 Isopropyl 2-methoxy-1-methylethyl propylphosphonate のマススペクト
ル (16-2-0260)
137
100
O
97
P
O
O
O
50
93
58
43
124
41
31
79
55
39
47 50 53
0
63
67 70 73
77
87
91
104
111
109 113
155
135
30
40
50
60
70
80
90
100
110
120
130
140
(Spec. Edit) Component at scan 1429 (14.322 min) [Model = +137u] in H:\12Zp\Zp\_L\1_\CW\OPCW\f[^
\2015\2015OPCW_C\2015031231.D\DATA.MS
149
166
157
150
160
181
170
209
180
190
200
210
220
230
図2-34 1,2-Dimethylpropyl 2-methoxyethyl methylphosphonate (異性体a)のマス
スペクトル (16-2-0261a)
137
100
O
P
97
O
O
O
50
93
58
45
31
41
39
155
124
55
71
79
111
91
47 50 53
63 67
73 77
87
104 109 113
135
0
30
40
50
60
70
80
90
100
110
120
130
140
(Spec. Edit) Component at scan 1449 (14.456 min) [Model = +137u] in H:\12Zp\Zp\_L\1_\CW\OPCW\f[^
\2015\2015OPCW_C\2015031231.D\DATA.MS
181
166
150
160
170
180
209
190
200
210
220
図2-35 1,2-Dimethylpropyl 2-methoxyethyl methylphosphonate (異性体b)のマス
スペクトル (16-2-0261b)
21
230
151
100
111
O
P
O
O
O
50
58
107
43
31
169
138
71
55
41
39
65
63
93
79
113
125
123
136
76
47 50 53
82 85
149
163
0
30
40
50
60
70
80
90
100
110
120
130
140
150
160
(Spec. Edit) Component at scan 1574 (15.263 min) [Model = +151u] in H:\12Zp\Zp\_L\1_\CW\OPCW\f[^
\2015\2015OPCW_C\2015031232.D\DATA.MS
181
170
195
180
190
223
200
210
220
230
240
250
図2-36 1,2-Dimethylpropyl 2-methoxyethyl ethylphosphonate (異性体a)のマスス
ペクトル (16-2-0262a)
151
100
111
O
P
O
O
O
50
59
107
169
43
138
41
39
71
55
93
125
123
65
31
79
113
47 50 53
76
82 85
62
149
163
0
30
40
50
60
70
80
90
100
110
120
130
140
150
160
(Spec. Edit) Component at scan 1595 (15.395 min) [Model = +151u] in H:\12Zp\Zp\_L\1_\CW\OPCW\f[^
\2015\2015OPCW_C\2015031232.D\DATA.MS
181
170
195
180
190
223
200
210
220
230
240
250
図2-37 1,2-Dimethylpropyl 2-methoxyethyl ethylphosphonate (異性体b)のマスス
ペクトル (16-2-0262b)
97
100
123
O
P
O
O
O
50
73
151
45
41
69
39
0
31
37
57
43 47
50 53
65
79
111
85
93
103 107
113 117
136
129
147
153
30
40
50
60
70
80
90
100
110
120
130
140
150
(Spec. Edit) Component at scan 1704 (16.101 min) [Model = +97u] in H:\12Zp\Zp\_L\1_\CW\OPCW\f[^
\2015\2015OPCW_C\2015031233.D\DATA.MS
165
160
169
170
191
180
190
205
200
210
220
230
240
図2-38 Cyclopentyl 2-methoxy-1-methylethyl methylphosphonate (異性体a)のマ
ススペクトル (16-2-0263a)
22
250
97
100
123
O
P
O
O
O
50
73
151
45
41
69
39
0
31
57
43 47
50 53
37
79
111
85
65
93
103 107
136
113 117
129
147
153
165
30
40
50
60
70
80
90
100
110
120
130
140
150
(Spec. Edit) Component at scan 1704 (16.101 min) [Model = +97u] in H:\12Zp\Zp\_L\1_\CW\OPCW\f[^
\2015\2015OPCW_C\2015031233.D\DATA.MS
160
169
191
170
180
205
190
200
210
220
230
240
250
図2-39 Cyclopentyl 2-methoxy-1-methylethyl methylphosphonate (異性体b)のマ
ススペクトル (16-2-0263b)
110
100
97
O
P
O
O
50
123
151
80
43
55
71
139
57
39
45
53
59
65
73
91
121
119
94
137
69
98
31
37
77
85
103
133
0
30
40
50
60
70
80
90
100
110
120
130
140
(Spec. Edit) Component at scan 1040 (11.805 min) [Model = +110u] in H:\12Zp\Zp\_L\1_\CW\OPCW\f[^
\2015\2015OPCW_C\2015031234.D\DATA.MS
193
167
149
150
160
170
180
190
200
210
220
220
230
図2-40 2,2-Dimethylpropyl isopropyl methylphoshonate のマススペクトル
(16-2-0264)
111
100
124
O
P
O
O
50
96
165
137
43
41
71
55
93
57
39
153
65
45
82
91
135
108
53
59
76
31
87
98
105
119
0
30
40
50
60
70
80
90
100
110
120
130
140
(Spec. Edit) Component at scan 1204 (12.869 min) [Model = +111u] in H:\12Zp\Zp\_L\1_\CW\OPCW\f[^
\2015\2015OPCW_C\2015031235.D\DATA.MS
151
150
181
160
図2-41 2,2-Dimethylpropyl isopropyl ethylphoshonate
(16-2-0265)
23
170
180
207
190
200
210
のマススペクトル
125
100
O
P
O
O
50
138
43
96
179
71
41
151
55
65
57
39
0
45
31
59
53
167
110
79
63
83
87 91
149
195
105
213
30
40
50
60
70
80
90
100
110
120
130
140
150
160
(Spec. Edit) Component at scan 1282 (13.372 min) [Model = +125u] in H:\12Zp\Zp\_L\1_\CW\OPCW\f[^
\2015\2015OPCW_C\2015031236.D\DATA.MS
170
180
190
200
210
221
236
220
230
240
250
240
250
図2-42 2,2-Dimethylpropyl isopropyl isopropylphoshonateのマススペクトル
(16-2-0266)
125
100
O
P
O
O
50
138
96
43
0
31
179
110
151
71
41
55
107
57
39
37
45
53
167
65
59 62
149
80
69
87 91 94
133
161
30
40
50
60
70
80
90
100
110
120
130
140
150
160
(Spec. Edit) Component at scan 1362 (13.890 min) [Model = +125u] in H:\12Zp\Zp\_L\1_\CW\OPCW\f[^
\2015\2015OPCW_C\2015031237.D\DATA.MS
195
177
170
180
190
212
200
210
221
220
230
図2-43 2,2-Dimethylpropyl isopropyl propylphoshonate のマススペクトル
(16-2-0267)
111
100
97
O
P
O
O
50
80
139
55
41
39
0
31
137
57
47
50 53
151
71
59 62
65
123
94
69
77
82 85
103
133
30
40
50
60
70
80
90
100
110
120
130
140
(Spec. Edit) Component at scan 1182 (12.726 min) [Model = +111u] in H:\12Zp\Zp\_L\1_\CW\OPCW\f[^
\2015\2015OPCW_C\2015031238.D\DATA.MS
150
図2-44 2,2-Dimethylpropyl propyl methylphoshonate
(16-2-0268)
24
167
149
160
193
179
170
180
190
200
のマススペクトル
210
220
111
100
97
O
P
O
O
50
80
139
55
41
137
57
39
0
47
31
50 53
151
71
59 62
123
94
65
69
77
85
103
133
167
149
30
40
50
60
70
80
90
100
110
120
130
140
(Spec. Edit) Component at scan 1182 (12.726 min) [Model = +111u] in H:\12Zp\Zp\_L\1_\CW\OPCW\f[^
\2015\2015OPCW_C\2015031238.D\DATA.MS
150
160
図2-45 2,2-Dimethylpropyl propyl ethylphoshonate
193
179
170
180
190
200
210
220
230
のマススペクトル
(16-2-0269)
125
100
139
O
P
O
O
50
43
167
96
41
71
55
57
39
37
179
65
83
107
149
79
221
195
47 50 53
59 63
31
85 90 93
133
161
0
30
40
50
60
70
80
90
100
110
120
130
140
150
160
(Spec. Edit) Component at scan 1412 (14.215 min) [Model = +125u] in H:\12Zp\Zp\_L\1_\CW\OPCW\f[^
\2015\2015OPCW_C\2015031240.D\DATA.MS
170
180
190
207
200
210
236
220
230
240
250
230
240
250
図2-46 2,2-Dimethylpropyl propyl isopropylphoshonate のマススペクトル
(16-2-0270)
125
100
139
O
P
O
O
50
97
167
43
41
39
0
31
55
107 111
57
47 50 53
179
71
59 62
65
69
80 83
87 91 94
99
113
123
121
133
149
165
153
図2-47 2,2-Dimethylpropyl propyl propylphoshonate
(16-2-0271)
25
221
195
161
30
40
50
60
70
80
90
100
110
120
130
140
150
160
(Spec. Edit) Component at scan 1494 (14.744 min) [Model = +125u] in H:\12Zp\Zp\_L\1_\CW\OPCW\f[^
\2015\2015OPCW_C\2015031242.D\DATA.MS
170
180
190
207
200
210
220
のマススペクトル
73
100
179
O
O
P
O
125
O
O
50
45
197
41
43
153
113
0
31
39
57
47
79
65
69
83
91
107
95
139
121
151
136
225
167
30
40
50
60
70
80
90
100
110
120
130
140
150
160
170
(Spec. Edit) Component at scan 1690 (16.014 min) [Model = +179u] in H:\12Zp\Zp\_L\1_\CW\OPCW\f[^
\2015\2015OPCW_C\2015031210.D\DATA.MS
192
180
190
205
200
237
210
220
230
240
250
260
270
280
図2-48 Bis(2-methoxy-1-methylethyl) isopropylphoshonate (異性体a)のマススペ
クトル (16-2-0272a)
179
73
100
O
O
125
P
O
O
O
50
45
197
41
43
0
31
39
47
53
57
79
65
83
113
91
95 99
107
153
139
121
136
151
167
30
40
50
60
70
80
90
100
110
120
130
140
150
160
170
(Spec. Edit) Component at scan 1699 (16.069 min) [Model = +179u] in H:\12Zp\Zp\_L\1_\CW\OPCW\f[^
\2015\2015OPCW_C\2015031210.D\DATA.MS
192
180
190
225
205
200
210
220
237
230
240
250
260
270
280
図2-49 Bis(2-methoxy-1-methylethyl) isopropylphoshonate (異性体b)のマススペ
クトル (16-2-0272b)
73
100
179
O
125
O
P
O
O
O
50
45
197
41
43
0
31
39
47
57
65
67
79
83
113
91
94
100
107
139
121
133
153
151
167
30
40
50
60
70
80
90
100
110
120
130
140
150
160
170
(Spec. Edit) Component at scan 1706 (16.115 min) [Model = +73u] in H:\12Zp\Zp\_L\1_\CW\OPCW\f[^
\2015\2015OPCW_C\2015031210.D\DATA.MS
190
225
206
192
180
200
210
220
237
230
240
250
260
270
図2-50 Bis(2-methoxy-1-methylethyl) isopropylphoshonate (異性体c)のマススペク
トル (16-2-0272c)
26
280
125
100
O
P
O
43
50
O
165
41
207
167
65
107
69
39
57
63 67 71
79
151
100
89
221
191
141
105 109
47 50 53
31
179
149
85
55
185
163
0
30
40
50
60
70
80
90
100
110
120
130
140
150
160
(Spec. Edit) Component at scan 1590 (15.365 min) [Model = +125u] in H:\12Zp\Zp\_L\1_\CW\OPCW\f[^
\2015\2015OPCW_C\2015031243.D\DATA.MS
170
180
190
200
210
220
230
240
250
260
図2-51 1-Ethyl-2-methylpropyl propyl isopropylphoshonate (異性体a)のマススペ
クトル (16-2-0273a)
125
100
O
P
O
O
165
50
43
207
167
41
107
65
179
85
69
47
31
53
59
221
149
55
39
67
109
96
139
151
0
30
40
50
60
70
80
90
100
110
120
130
140
150
160
170
(Spec. Edit) Component at scan 1601 (15.437 min) [Model = +125u, -387u] in H:\12Zp\Zp\_L\1_\CW\OPCW\f[^
\2015\2015OPCW_C\2015031243.D\DATA.MS
180
190
200
210
220
230
240
250
260
図2-52 1-Ethyl-2-methylpropyl propyl isopropylphoshonate (異性体b)のマススペ
クトル (16-2-0273b)
97
100
O
P
137
O
O
50
151
153
41
57
43
0
31
39
47 50 53
59
193
79
65
85
69
73 77
87 91
207
123
103
111
117 121 125
135
30
40
50
60
70
80
90
100
110
120
130
140
150
(Spec. Edit) Component at scan 1561 (15.177 min) [Model = +97u] in H:\12Zp\Zp\_L\1_\CW\OPCW\f[^
\2015\2015OPCW_C\2015031244.D\DATA.MS
163
160
179
170
180
221
190
200
210
220
230
240
図2-53 Butyl 1-ethyl-2-methylpropyl methylphosphonate (異性体a)のマススペク
トル (16-2-0274a)
27
250
97
100
O
137
P
O
O
50
193
151
41
57
55
43
0
31
39
59
47 50 53
79
65
85
69
73 77
123
87 91
111
103
207
117 121 125
163
30
40
50
60
70
80
90
100
110
120
130
140
150
(Spec. Edit) Component at scan 1569 (15.232 min) [Model = +97u] in H:\12Zp\Zp\_L\1_\CW\OPCW\f[^
\2015\2015OPCW_C\2015031244.D\DATA.MS
160
221
170
180
190
200
210
220
230
240
250
図2-54 Butyl 1-ethyl-2-methylpropyl methylphosphonate (異性体b)のマススペク
トル (16-2-0274b)
111
100
O
P
O
O
151
50
207
165
93
41
43
0
31
39
57
45
53
59
65 69
73 77
63 67
85
87 91
101
119
125
137
131 135 139
221
149
177
30
40
50
60
70
80
90
100
110
120
130
140
150
160
(Spec. Edit) Component at scan 1697 (16.057 min) [Model = +111u] in H:\12Zp\Zp\_L\1_\CW\OPCW\f[^
\2015\2015OPCW_C\2015031245.D\DATA.MS
170
180
193
190
235
200
210
220
230
240
250
260
図2-55 Butyl 1-ethyl-2-methylpropyl ethylphosphonate (異性体a)のマススペクト
ル (16-2-0275a)
111
100
O
P
O
151
O
50
207
0
31
39
167
165
93
41
43
57
45
53
59
65
69
63 67 71 74 77
85
87 91
101
119 123
137
131 135 139
221
149
30
40
50
60
70
80
90
100
110
120
130
140
150
160
(Spec. Edit) Component at scan 1707 (16.120 min) [Model = +111u] in H:\12Zp\Zp\_L\1_\CW\OPCW\f[^
\2015\2015OPCW_C\2015031245.D\DATA.MS
177
170
180
235
190
200
210
220
230
240
250
図2-56 Butyl 1-ethyl-2-methylpropyl ethylphosphonate (異性体b)のマススペクト
ル (16-2-0275b)
28
260
125
100
O
P
O
O
50
165
221
181
43
65
55
39
59
53
69
107
85
67
235
163
109
92 96
151
139
0
30
40
50
60
70
80
90
100
110
120
130
140
150
160
170
(Spec. Edit) Component at scan 1753 (16.416 min) [Model = +125u] in H:\12Zp\Zp\_L\1_\CW\OPCW\f[^
\2015\2015OPCW_C\2015031246.D\DATA.MS
180
190
200
210
220
230
240
250
260
270
図2-57 Butyl 1-ethyl-2-methylpropyl isopropylphosphonate (異性体a)のマススペ
クトル (16-2-0276a)
125
100
O
P
O
50
165
221
181
43
41
65
55
39
0
O
53
31
59
179
69
67
107
85
83
163
109
89 92
149
141
30
40
50
60
70
80
90
100
110
120
130
140
150
160
170
(Spec. Edit) Component at scan 1764 (16.492 min) [Model = +125u] in H:\12Zp\Zp\_L\1_\CW\OPCW\f[^
\2015\2015OPCW_C\2015031246.D\DATA.MS
180
235
205
185
190
200
210
220
230
240
250
260
270
図2-58 Butyl 1-ethyl-2-methylpropyl isopropylphosphonate (異性体b)のマススペ
クトル (16-2-0276b)
125
100
O
P
O
O
50
165
221
43
57
0
31
39
181
107
45 48
53
59 62
65 69
67
73 77 80
85
87 90 93
97
99
235
163
109
137
145
151
30
40
50
60
70
80
90
100
110
120
130
140
150
160
170
(Spec. Edit) Component at scan 1823 (16.870 min) [Model = +125u] in H:\12Zp\Zp\_L\1_\CW\OPCW\f[^
\2015\2015OPCW_C\2015031247.D\DATA.MS
191
180
190
209
200
210
249
220
230
240
250
260
図2-59 Butyl 1-ethyl-2-methylpropyl propylphosphonate (異性体a)のマススペク
トル (16-2-0277a)
29
270
125
100
O
P
O
50
O
165
221
181
43
41
107
57
0
31
39
45 48
53
59
62
97
85
65 69
67
73 77 80 83 87 90 93
99
179
163
109
137
145
235
151
191
30
40
50
60
70
80
90
100
110
120
130
140
150
160
170
(Spec. Edit) Component at scan 1831 (16.923 min) [Model = +125u] in H:\12Zp\Zp\_L\1_\CW\OPCW\f[^
\2015\2015OPCW_C\2015031247.D\DATA.MS
180
190
249
200
210
220
230
240
250
260
270
図2-60 Butyl 1-ethyl-2-methylpropyl propylphosphonate (異性体b)のマススペク
トル (16-2-0277b)
5.データの提供
1 項の合成方法により得られた物質の GCRI データ及び MS データを測定し、提供デ
ータフォーム及び電子化データの作成を行った。同データは平成 27 年 3 月に開催され
た第 41 回バリデーショングループ会合出席の際に OPCW 技術事務局へ提出した。提
供した表 2.B.04 剤及び各々の GCRI の一覧を表 2-2 に示す。
GC/MS 分析より得られた GCRI データ及びマススペクトルは、Procedure for the
evaluation
of
data
to
be
included
in
the
OPCW
central
analytical
database(S/969/2011)と整合するようにフォームを作成し OPCW 技術事務局に提供し
た。MS データの提供フォーマットには必須の情報として OPCW コード、化合物名、
表剤番号、化学構造式(MOL フォーマット)、分子式、その他一連のデータに共通する
情報として提供者名と所在地、提供者の署名、分析装置のメーカー、型式、インレット
システム(GC)、カラムのサイズ、温度プログラム、キャリアガス、注入口温度、イオ
ン源温度、イオン化エネルギー、スキャン範囲、標準物質及び精度情報として標準偏差
を記載した。クロマトグラム中に複数の異性体ピークが存在する場合はその数に応じて
各ピークのマススペクトルの OPCW コードに a、
b 及び c などと記号を付して識別し、
個別に報告した。これらのハードコピー及び MOL 形式の構造式ファイルを技術事務局
に提出した。実際に提出した MS データを添付資料 3 に、GCRI データを添付資料 4
に示す。
30
表 2-2 第 41 回バリデーショングループ会合で提出した表 2.B.04 剤の GCRI データ
OPCW コード
表 2.B.04 剤の化合物名
16-4-0272
Ethyl 2-methoxy-1-methylethyl isopropylphosphonate
Isopropyl
2-methoxy-1-methylethyl
isopropylphosphonate
2-Methoxy-1-methylethyl propyl isopropylphosphonate
Butyl 2-methoxy-1-methylethyl isopropylphosphonate
1,2-Dimethylpropyl
2-methoxyethyl
isopropylphosphonate
Bis(1,2-Dimethylpropyl) isopropylphosphonate
1-Ethylpropyl isopropyl isopropylphosphonate
1-Ethylpropyl propyl isopropylphosphonate
3-Methylbutyl propyl isopropylphosphonate
Cyclopentyl
2-methoxy-1-methylethyl
isopropylphosphonate
1,2-Dimethylpropyl propyl isopropylphosphonate
2-Ethoxy-1-methylethyl methyl isopropylphosphonate
2-Ethoxy-1-methylethyl ethyl isopropylphosphonate
2-Ethoxy-1-methylethyl isopropyl isopropylphosphonate
2-Ethoxy-1-methylethyl propyl isopropylphosphonate
Bis(2-Ethoxy-1-methylethyl) isopropylphosphonate
2-Isopropoxyethyl methyl isopropylphosphonate
Ethyl 2-isopropoxyethyl isopropylphosphonate
2-Isopropoxyethyl isopropyl isopropylphosphonate
2-Isopropoxyethyl propyl isopropylphosphonate
Bis(2-isopropoxyethyl) isopropylphosphonate
2-Methoxy-1-methylethyl propyl propylphosphonate
Isopropyl 2-methoxy-1-methylethyl propylphosphonate
1,2-Dimethylpropyl 2-methoxyethyl methylphosphonate
1,2-Dimethylpropyl 2-methoxyethyl ethylphosphonate
Cyclopentyl
2-methoxy-1-methylethyl
methylphosphonate
2,2-Dimethylpropyl isopropyl methylphoshonate
2,2-Dimethylpropyl isopropyl ethylphoshonate
2,2-Dimethylpropyl isopropyl isopropylphoshonate
2,2-Dimethylpropyl isopropyl propylphoshonate
2,2-Dimethylpropyl propyl methylphoshonate
2,2-Dimethylpropyl propyl ethylphoshonate
2,2-Dimethylpropyl propyl isopropylphoshonate
2,2-Dimethylpropyl propyl propylphoshonate
Bis(2-methoxy-1-methylethyl) isopropylphoshonate
1-Ethyl-2-methylpropyl propyl isopropylphoshonate
Butyl 1-ethyl-2-methylpropyl methylphosphonate
Butyl 1-ethyl-2-methylpropyl ethylphosphonate
Butyl 1-ethyl-2-methylpropyl isopropylphosphonate
Butyl 1-ethyl-2-methylpropyl propylphosphonate
16-4-0273
16-4-0274
16-4-0275
16-4-0276
16-4-0277
16-4-0278
16-4-0279
16-4-0280
16-4-0281
16-4-0282
16-4-0283
16-4-0284
16-4-0285
16-4-0286
16-4-0287
16-4-0288
16-4-0289
16-4-0290
16-4-0291
16-4-0292
16-4-0293
16-4-0294
16-4-0295
16-4-0296
16-4-0297
16-4-0298
16-4-0299
16-4-0300
16-4-0301
16-4-0302
16-4-0303
16-4-0304
16-4-0305
16-4-0306
16-4-0307
16-4-0308
16-4-0309
16-4-0310
16-4-0311
31
GCRI
1340
1358, 1361
1426, 1429
1511, 1516
1501, 1513
1500, 1507, 1514
1362
1425
1450
1642, 1649
1401, 1411
1307
1399
1420
1487
1649, 1657
1388
1438
1458
1524
1733
1466
1398
1397, 1407
1471, 1481
1539, 1548
1216
1290
1327
1365
1280
1356
1389
1430
1531, 1536, 1540
1478, 1484
1464, 1468
1535, 1540
1565, 1571
1603, 1608
第3章
OCAD に登録すべき物性データの
評価に関する調査・研究
第3章
OCAD に登録すべき物性データの評価に関する調査・研究
第1節 平成 26 年度評価データの概要
平成 25 年度に引き続き OPCW への技術的貢献として OCAD アップデートのための
バリデーショングループ会合へのメンバーの派遣及びそれに伴う GCRI データの評価
作業を実施した。
バリデーショングループは、各国分析研究機関から派遣された専門家により構成され、
各国から提供されたスペクトルデータ及び GCRI データが OCAD に登録するために十
分な品質であるか否かを Procedure for the evaluation of data to be included in the
OPCW central analytical database(S/969/2011)に従って評価すると共に分析データベ
ースに係わる懸案課題について検討を行い、事務局及び執行理事会に対し、専門家とし
ての見解や提案を行う役割を担っている。同グループメンバーとしての主な作業として
は、核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance: 以下「NMR」という。)、赤外分光
(Infrared Spectrometry: 以下「IR」という。)、MS、GCRI のいずれかのサブグルー
プに所属し、そのサブグループごとに配布された該当データを次回会合までに各メンバ
ーが評価を行い、これを評価結果レポートにまとめ、各グループのコーディネーターに
提出する。さらに OPCW 本部で開催される同グループ会合に出席し、メンバーによる
最終評価を実施、採用するデータを決定する。これらの一連の作業を会合の毎に繰り返
すと共に、各会合において事務局或いは各メンバーから提案された検討課題について議
論し、グループの決定事項としてこれをまとめる。本事業では、OPCW への技術的貢
献として平成 10 年度より継続しているバリデーショングループ会合へのメンバーの派
遣、それに伴う GCRI サブグループにおけるデータの評価作業を実施した。
平成 26 年度の調査に係る 2 回の会合で評価を行ったデータ数を表 3-1 に示す。平成
26 年度に提供された GCRI データ数は再提出も含め 157 で、そのうち承認されたデー
タ数は 88 であった。表 3-3 に国別、機関別のデータ提供実績(平成 27 年 3 月現在)を示
す。
表 3-1 平成 26 年度評価データ数(GCRI)
評価会合
評価データ
承認データ
第 40 回会合(平成 26 年 9 月開催)
33
33
第 41 回会合(平成 27 年 3 月開催)
124
55
平成 26 年度合計
157
88
32
平成 26 年度に評価した GCRI データ数の内訳を表 3-2 に示す。
表 3-2
OPCW
機
Lab. No.
4
16
28
関 名
国
Military Technical Institute of
Protection
7
8
平成 26 年度 提供機関別評価データ数(GCRI のみ)
SPIEZ Laboratory
Defense Science and Technology
Laboratory(DSTL)
Chemicals Inspection and Research
Institute,
Japan
Defence Chemical Research
Lab.(DCRL)
名
新規提供
データ数
チェコ
5
スイス
44
英国
63
日本
33*
イラン
12**
157
合計
*平成 25 年度に提出されたもの。第 41 回バリデーショングループ会合で提出した 40
物質のデータは第 42 回バリデーショングループ会合において評価される予定。
**全て再提出データ
表 3-3 国別、機関別のデータ提供実績(GCRI)
Lab. No
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
国 名
フランス
ドイツ
スペイン
チェコ
フィンランド
オランダ
スイス
英国
インド
米国
中 国
スウェーデン
ポーランド
日本
オランダ
チェコ
チェコ
チェコ
ロシア
米国
米国
機 関 名
Centre d’etudes du Bouchet
German Armed Forces Scientific Institute for Protection (WIS)
NBQ
Military Technical Institute of Protection
Finnish Institute for Verification of the CWC
TNO-PML
SPIEZ Laboratory
Defense Science and Technology Laboratory(DSTL)
Defence Research & Development Establishment
National Institute of Standards and Technology(NIST)
Research Institute of Chemical Defense
FAO Defense Research Establishment
Military Institute of Chemistry and Radiometry
Chemicals Inspection and Research Institute, Japan
OPCW Central Laboratory
Research Institute for Organic Syntheses, Czech
Civil Protection Institute, Czech
Institute of Chemical Technology, Czech
Laboratory of Military University of CBR Defense
Edgewood Chemical & Biological Forensuc Analytical Center
Lawrence Livermore National Laboratory
33
データ数
69
0
0
380
152
123
3153
96
84
0
0
0
141
238
306
101
20
2
0
56
3
24
25
26
27
28
29
南アフリカ
シンガポール
インド
ベルギー
イラン
中国
Protechnik Laboratory of South Africa
Verification Laboratory DSO National Laboratories
Indian Institute of Chemical Technology
Defence Laboratories Department (DLD)
Defence Chemical Research Lab.(DCRL)
Academy of Millitary Medical Sciences
合計
27
0
0
0
176
10
5137
Lab.11 及び 12 は欠番
これまでに同グループで承認されたデータ数(OCAD への登録対象外の表剤以外の化
合物は除く)を表 3-4 に示す。
表 3-4 OCAD 承認状況(予測データ以外)
バリデーショングループ会合
MS
IR
NMR
第 6 回会合迄
1096
402
1058
第 7 回会合
71
20
-
第 8 回会合
4
134
101
第 9 回会合
155
26
96
第 10 回会合
166
88
-
第 11 回会合
253
-
-
第 12 回会合
164
-
-
第 13 回会合
231
-
52
第 14 回会合
227
43
84
第 15 回会合
243
第 16 回会合
215
第 17 回会合
203
47
第 18 回会合
209
第 19 回会合
147
42
第 20 回会合
78
第 21 回会合
35
48
第 22 回会合
73
26
第 23 回会合
45
44
53
第 24 回会合
91
第 25 回会合
68
18
第 26 回会合
76
第 27 回会合
150
8
第 28 回会合
103
1
第 29 回会合
166
10
第 30 回会合
193
40
第 31 回会合
143
10
第 32 回会合
101
第 33 回会合
193
18
12
第 34 回会合
104
1
第 35 回会合
30
10
第 36 回会合
143
8
第 37 回会合
158
6
第 38 回会合
103
5
第 39 回会合
21
3
第 40 回会合
50
第 41 回会合
57
4
承認データ総数
5565
996
1552
34
GC
588
125
94
141
529
155
282
-
64
306
293
249
154
87
10
50
56
11
14
29
124
36
135
153
118
96
153
111
43
119
129
73
56
33
55
4671
我が国が平成 25 年度に提出した GCRI データは第 40 回バリデーショングループ会
合において評価対象となった。
平成 27 年 1 月に新しいバージョンの DVD 版 OCAD(v.17_2015)が発行され、第 41
回会合の際にバリデーショングループメンバーに配布された。
次に平成 26 年度にバリデーショングループ会合で議論、検討された主な課題を以下
に挙げる。

OCAD のための MS/MS データベース構築について

OCAD への非表剤データの収録について

化合物の命名法について
これらの内容については、本章 2 節の各会合報告で詳述する。
また、バリデーショングループ会合のレポート及び GCRI グループのサマリーレポー
トを添付資料とした。
第2節 バリデーショングループ会合報告
平成 26 年度は下記のバリデーショングループ会合に出席した。
会合名
開催日程
開催場所
第 40 回バリデーショ 平成 26 年 9 月 9 日及び 9 月 OPCW 技術事務局
ングループ会合
10 日(2 日間)
内会議室
第 41 回バリデーショ 平成 27 年 3 月 24 日及び 3 OPCW 技術事務局
ングループ会合
月 25 日(2 日間)
内会議室
出張者
和田丈晴
和田丈晴
1. 第 40 回バリデーショングループ会合報告
(1)
平成 26 年 9 月 9 日及び 9 月 10 日、オランダのハーグにある OPCW 本部にお
いて第 40 回 OPCW 中央分析データベース・バリデーショングループ(VG)会合
が開催された。今回の会合には議長の James Riches 氏を含め 12 カ国(英国、米
国、スウェーデン、スイス、フィンランド、オランダ、南アフリカ、ドイツ、
中国、チェコ、イラン及び日本)から 15 名のメンバーが参加した。その他、事務
局として OPCW 研究所所長の Hugh Gregg 氏及び Alex 氏、オブザーバーとし
て元議長の Eric Wils 氏が参加した。初日の前半に全体会議が行われ、次いで
MS 及び GCRI のサブグループでデータの評価が行われた。2 日目はディスカッ
ション内容の確認及び報告書の作成作業が行われた。同会合の最終報告書を本
35
報告書に添付した (添付資料 1)。
(2)
OCAD の新しいバージョン(v.17_2015)がリリースに向けて準備中である。
(3)
新たなメンバーとしてイランから Mohammad Taghi Naseri 氏が GCRI グルー
プに加わることになった。一方 MS グループのイランの Mozaffar Eslami 氏は
辞任することとなった。
(4)
第 38 回及び第 39 回バリデーショングループ会合までで承認された表剤の分析
データは 2014 年 7 月 7 日に開催された EC-76 に提出され承認された。
(5)
OCAD における MS/MS データベース構築の進捗
チェコ、スウェーデン及び英国の 3 機関から提出された MS/MS データにつ
いての評価はスウェーデンの Sten-Åke Fredriksson 氏によって継続されてお
り、データ例とクライテリアの提出は次回の会合に持ち越された。
(6)
データベースの利用が推奨される化学物質について
前回の会合で米国ローレンスリバモア国立研究所 Armando Alcaraz 氏によ
り提案されたワーキングデータベースに有用な化学物質のリストに、その後さ
らに Eric Wils 氏が関連する化学物質を追加した(資料 2 及び 3)。
(7)
Chemical ID の利用について
前回の会合で事務局から Chemical ID の試験的な利用について提案があった。
これはこれまで IR、MS、NMR 及び GCRI において各々個別に OPCW コード
が付されていたものについて、一つの化合物につき一意の共通番号を設けると
いうものである。バリデーショングループにおいてはデータの管理目的におい
てこの ID の利用が有効であるという意見で一致した。
(8)
暴動鎮圧剤のデータについて
SAB S/1177/2014 により、これまでに OCAD に収録されていない暴動鎮圧剤
が新たに定義された。具体例を以下に示す。
(d) Oleoresin capsicum (OC) [CAS 8023-77-6]
(e) 8-Methyl-N-vanillyl-trans-6-nonenamide (capsaicin) [CAS 404-86-4]
(f) 8-Methyl-N-vanillylnonamide (dihydrocapsaicin) [CAS 19408-84-5]
(g) N-Vanillylnonamide (pseudocapsaicin, PAVA) [CAS 2444-46-4]
(h) N-Vanillyl-9-methyldec-7-(E)-enamide (homocapsaicin) [CAS 58493-48-4]
(i)
N-Vanillyl-9-methyldecanamide
(homodihydrocapsaicin)
[CAS
20279-06-5]
(j) N-Vanillyl-7-methyloctanamide (nordihydrocapsaicin) [CAS 28789-35-7]
(k) 4-Nonanolylmorpholine (MPA) [CAS 5299-64-9]
(l) 2'-Chloroacetophenone [CAS 2142-68-9]
(m) 3'-Chloroacetophenone [CAS 99-02-5]
(n) α-Chlorobenzylidenemalononitrile [CAS 18270-61-6]
36
(o) Cis-4-acetylaminodicyclohexylmethane [CAS 37794-87-9]
(p)
N,N'-Bis(isopropyl)ethylenediimine
[CAS
E,E
28227-41-0
Z,Z
185245-09-4]
(q) N,N'-Bis(tert-butyl)ethylenediimine [CAS 30834-74-3; E,E 28227-42-1]
(9)
GCRI データの提出方法について
事務局から GCRI データ取得のための機器分析条件及び AMDIS を用いた GCRI
算出方法などの詳細を含む GCRI データ提出方法を記述した文書案が提出され
た。
(10)
化合物名の変更について
すでに OCAD に登録されている化合物のうち命名法に適合しないものについて
訂正を行うこととした。
(11)
データの評価結果
GCRI グループは今回コーディネーターの Martin Söderström 氏及びチェコの
Josef Košata 氏が欠席であり、我が国はデータ提供者であるため、オランダの Leo
de Reuver 氏、南アフリカの Ferdinand Visser 氏及び Gary Mallard 氏の 3 名で
新規データとして Lab.16(CERI:日本)から提出された 33 データについて評価を
行った。臨時のコーディネーターは Gary Mallard 氏が務めた。複数のデータに
ついて過去に提出されたものと重複があったが 6 データが B 評価、27 データが A
評価で全て承認された。
MS グループは Lab.16 が提出した 33 物質の 50 データを評価した。11 データ
が B 評価、39 データが A 評価で全てが承認された。このうち過去に提出したデ
ータと重複するものは新しいデータに置き換えられることになった。
(12)
入手資料
① Report of the Fortieth Meeting of the Validation Group for the Updating of the
OPCW Central Analytical Database, 9 and 10 Sep. 2014
② List CW related chemicals
③ Export control List: Chemical Weapons Precursors
④ Note by the technical secretariat. Declaration of riot control agents: Advice
from the Scientific advisory board.
⑤ Analytical & bioanalytical chemistry, vol.406, No.21, August 2014
2. 第 41 回バリデーショングループ会合報告
(1) 平成 27 年 3 月 24 日及び 3 月 25 日、オランダのハーグにある OPCW 本部におい
て第 41 回 OPCW 中央分析データベース・バリデーショングループ(VG)会合が開催
された。今回の会合には議長の James Riches 氏を含め 11 カ国(英国、米国、スウ
ェーデン、オランダ、フィンランド、南アフリカ、ドイツ、中国、チェコ、イラン
37
及び日本)から 16 名のメンバーが参加した。その他、事務局として OPCW 研究所所
長の Hugh Gregg 氏、オブザーバーとして元議長の Eric Wils 氏が参加した。初日
の前半に全体会議が行われ、次いで IR、NMR、MS 及び GCRI のサブグループで
データの評価が行われた。2 日目はディスカッション内容の確認及び報告書の作成
作業が行われた。同会合の最終報告書を本報告書に添付した(添付資料 1)。
(2) OCAD の新しいバージョン(v.17_2015)が利用可能になり、バリデーショングループ
メンバーに配布された。
(3) 第 40 回会合までにバリデーショングループによって承認された表剤のデータの
OCAD への収録及び第 40 回会合で OCAD からの削除が推奨されたデータの削除は
EC-78 で承認された。
(4) 技術事務局の Alex 氏の後任がまだ決まっていないため、Gary Mallard 氏が当面評
価者と兼任で事務局を勤めることになった。
(5) OCAD における MS/MS データベース構築の進捗
チェコ、スウェーデン及び英国の 3 機関から提出された MS/MS データにつ
いての評価はスウェーデンの Sten-Åke Fredriksson 氏によって行われた。これ
を受けてバリデーショングループは MS/MS データを OCAD に収録するに当た
っての技術的及び管理上の見解について議論を行った。データは検索可能なフ
ォーマットであることが求められる。Mallard 氏はプリカーサーイオンとの関
連性を含む場合及び含まない場合の両方で MS/MS データの検索を行うための
フォーマッティングについて協力することとなった。MS/MS データは 5 番目
のデータとして OCAD に追加することで合意した。
(6) データベースの利用が推奨される化学物質について
Alcaraz 氏及び Wils 氏が提唱した IAU (使用疑惑の検証:investigations of
alleged use)のための関連化学物質を作業用リストに追加することについてバ
リデーショングループにコメントが求められた。塩素ガス及び工業用化学物質
について議論がなされた結果、物理化学的性質のためこれらの化学物質のデー
タを収集することはどの化学分析の方法論においても困難であることが予想さ
れるが、リストに追加することについては特に問題ないという認識で合意した。
(7) 非表剤の拡大について
バリデーショングループは過去において評価を行った非表剤と化学兵器禁止条
約との関連性について議論を行った。各々の登録のために正当性の意見陳述を
行うこととした。次回のミーティングまでにその対象となる物質のリストにつ
いてディスカッションすることとし、VGWD に収録された非表剤のリストを配
布した。また、今後非表剤のデータを提出する際は表剤との関連性から、その
正当性を含むこととすることで合意した。
(8) 化合物名の変更について
38
すでに OCAD に登録されている化合物のうち命名法に適合しないものについて
訂正を行うこととした。これは例えば Methyl methylphosphonate-TMS のよう
な も の で 、 こ の 場 合 は 命 名 法 に 従 っ て Methyl trimethylsilyl
methylphosphonate に訂正する。
ただし、Methyl methylphosphonate は一般的には Methyl methylphosphonic
acid などとも呼ばれるが、OCAD においては従来どおり変更せず、別名の項目
を設けて今後このような場合には併記してデータを提出することで合意した。
(9) データの評価結果
GCRI グループは今回コーディネーターの Martin Söderström 氏が欠席したた
め、日本、イランの Taghi Naseri 氏、チェコの Josef Košata 氏、オランダの Leo
de Reuver 氏、南アフリカの Ferdinand Visser 氏及び Gary Mallard 氏の 6 名で
新規データとして Lab.4(チェコ)、Lab.7(スイス)、Lab.8(英国 DSTL) 及び
Lab.28(イラン)から提出された合計 124 データについて評価を行った。臨時のコ
ーディネーターは Gary Mallard 氏が務めた。Lab.4 は GCRI データそのものに
ついては問題がなかったものの、
QC サンプルのうちステアリン酸メチルの GCRI
が OCAD のデータよりも 100 少ない値であったため、5 つのデータ全てを保留と
した。Lab.7 から提出された 45 データのうち 16 のデータについて過去に提出さ
れたものと重複があったがデータの全ては B 評価で承認された。B 評価となった
理由は化合物名を修正する必要があるためである。Lab.8 からはいずれも非表剤
ではあるが、暴動鎮圧剤のクロロベンジリデンマロノニトリル(CS)及びその関連
化合物とマスタードガス関連化合物の誘導体のデータが提出された(63 データ)。
CS 関連物質の GCRI データは CS 分子のベンゼン環に様々な官能基が結合したも
のであったが、
官能基の種類及び位置と GCRI データの関連性に疑問があるため、
全てのデータを保留とした。マスタードガスの関連化合物については既に OCAD
に収録されたものもあり、化合物名を修正する必要があるものもあったが、4 つ
全てが B 評価で承認された。Lab.28 から提出された 11 データはいずれも再提出
されたものであるが、このうち 6 つが A 評価で承認された。再提出が不要であっ
たデータも含まれた。承認されなかったデータは異性体による複数のピークが生
じるにもかかわらず、1 つのピークのデータのみが提出されたものである。総合
的に A 評価が 6 データ、B 評価が 49 データで合計 55 データが承認された。
IR グループは Lab.4(チェコ)から提出された 4 つの表 1.A.03 剤を A 評価で承認
した。MS グループは Lab.4(チェコ)から提出された 5 つの表 1.A.03 剤を A 評価
で、Lab.7(スイス)から提出された 44 の表 2.B.04 剤を B 評価で、Lab.28(イラン)
からでたのうち 5 データを B 評価、3 データを A 評価で承認した。また、Lab.8
から提出された暴動鎮圧剤のクロロベンジリデンマロノニトリル(CS)及びその関
連化合物とマスタードガス関連化合物の誘導体のデータ(いずれも非表剤)につい
39
ては 55 データが B 評価で承認された。
(10)
今回の会合の際に表 2.B.04 剤 40 物質について GCRI データ及び MS データ(異
性体を含めて 60 スペクトル)を提供した。
(11)
入手資料
① Report of the Fourty-first Meeting of the Validation Group for the Updating of
the OPCW Central Analytical Database, 24 and 25 Mar. 2015
② Analytical data and accompanying information (Tandem mass spectrometry)
第3節 OPCW 中央分析データベースに係る今後の動向
1. バリデーショングループの活動
平成 25 年度も例年通り会合は 2 回開催されたが、ここ数年の傾向と同様で新規のデ
ータ提供数は多くなかった。また、既に OCAD に収録されているデータの再提出及び
OCAD に登録されない非表剤のデータの提出が目立った。GCRI は比較対照となる物質
のデータが存在しない場合、数値の妥当性を評価するのが非常に困難となる。また、一
連の関連化合物のデータが同時に提供されたとしても、構造との整合性がない場合も評
価が困難になる。このように評価が困難となるケースは主に環状の化合物や 2 量体のよ
うな複雑な構造を有するものであることが多い。このような複雑な化合物について構造
と GCRI の関連性を見出し、提供されたデータの評価を効率よく行うこと及び予測値の
充実を図ることが GCRI グループに課せられた課題といえる。
LC-MS/MS データについてはデータベースの構築方法、すなわちデータ提供要領が
過去数年来継続的に検討されてきたが、近年ガスクロマトグラフタンデム質量部析計
(GC-MS/MS)が急速に普及し始めているため、バリデーショングループとしては双方を
含む形で第五番目のデータベースとして MS/MS データの構築を推奨することで合意
し、提供要領を作成した。
提供数の低迷が今後も続く傾向があるか否かは現時点では不明であるが、これまでに
最も多くデータを提供している Spiez Laboratory がデータの提供を再開したため、今
後活性化されることを期待される。また、提供される化合物が複雑になる傾向があり、
命名法が継続的に改訂されている。今後も MS 及び GCRI データを中心に同グループ
の活動が継続される見込みで、平成 27 年度は既に 9 月に第 42 回バリデーショングル
ープ会合が予定されており、年度内に 2 回程度の会合が開催される見込みである。
2. 我が国からのデータの提供
OCAD には既に数多くの化合物についてデータが提供されており、未登録物質は原
料が入手困難なものなど、合成困難な化合物が多くなっているため、新たにデータを提
供するためには、従来よりもさらに高度な有機合成技術が必要となっている。特に高品
40
質の表剤を合成するためには、合成中間体の質を向上させる必要がある。昨年度まで我
が国では三塩化リンを出発物質としてアルキルホスホン酸ジクロリドを合成してきた
が、今年度はアルキルホスホン酸ジエステルの O-アルキル基を五塩化りんで塩素に置
換し、蒸留による副生成物を除去する合成経路を検討した。
平成 25 年度はこれまでにいずれの研究所からも提出されていない新規の表 2.B.04
剤を合成し、MS データ及び GCRI データを収集し、提出した。今後も表 2.B.04 剤を
中心とした有機合成を行うが、ジアルキルアミノエチル基を有する表剤のデータ提供を
検討する。また、各種置換基に対応したアルコールのトリメチルシリル誘導体について
GCRI の測定を行い、提供されるデータの妥当性評価等に活用する。
41
第4章
第4章 海外調査による
化学分析技術の情報収集
第4章
海外調査による化学分析技術の情報収集
第1節
調査の概要
我が国は、平成 7 年度から継続している経済産業省からの受託事業「化学物質安全確
保・国際規制対策推進等(OPCW 化学分析データ評価等)
」における海外調査研究の一
環として、技能試験に係る情報収集及び検証分析に係る情報の収集等を行ってきた。情
報収集の場としては主に化学兵器禁止条約機関(OPCW)本部で開催される中央分析デ
ータベースバリデーショングループ会合を利用しているが、近年は最新の情報が得られ
にくい状況にある。そこで平成 26 年度は、化学兵器禁止条約の指定試験機関である
VERIFIN(フィンランド)主催の“CWC 検証分析セミナー”に参加し、最新の化学剤分
析・検出方法の技術動向等に関する情報収集を行った。
日
時:
平成 27 年 3 月 18 日(水) ~ 3 月 19 日(木)
場
所:
ChemBio 2015 Exhibition ( Messukeskus コンベンションセンター)
フィンランド ヘルシンキ
参 加 者:
栗原
勇
第 2 節 「CWC 検証分析セミナー」報告
1. 概要
2015 年 3 月 18 日~19 日の 2 日間、フィンランドのヘルシンキで開催された
ChemBio 2015 Exhibition の一環で実施された Seminar on Verification analysis
of the Chemical Weapons Convention (CWC 検証分析セミナー)に参加した。この
セミナーは、化学兵器禁止条約の指定試験機関の一つである VERIFIN (Finnish
Institute for Verification of the Chemical Weapons Convention:フィンランド)
が OPCW と共に主催しており、その他の国の指定試験機関の関係者も数多く参加
していた。
今回の CWC 検証分析セミナーのトピックは、以下の 4 項目であった。
・Biomedical sample analysis (バイオメディカルサンプル分析)
・Sea-dumped chemical weapons (化学兵器の海洋投棄)
・Biological toxins (生物由来の毒素)
・Threat to the CWC beyond conventional CWs (想定外の CWs による CWC
への脅威)
42
2. 化学剤分析に関する発表
今回の CWC 検証分析セミナーで発表された化学剤分析関連の主な発表内容を以
下に示す。
タ イ ト ル:The OPCW’s programme for Biomedical Sample Analysis
発
表
者:Murty Mamidanna
発表者の所属:Senior Analytical Chemistry, OPCW Laboratory, The Netherlands
発 表 概 要:バイオメディカルサンプルとしては、血漿、血液、尿及び生物組織
(tissue)等があるが、生物組織については保存安定性等の面で問題が
あるため対象としていない。対象物質としては化学剤自体と、バイ
オマーカーとしてそれらの代謝物と DNA あるいはタンパク質の付
加体等がある。環境試料は ppm レベルであるのに対し、バイオメデ
ィカルサンプルは ppb レベルであるため分析が難しい。バイオメデ
ィカルサンプルに関する指定試験機関はまだないが、プロフィシエ
ンシーテストの実施に向けて関連試験機関と準備・訓練を進めてい
る。これまでにバイオメディカルの訓練試験を 4 回行っており、現
在 5 回目(2015 年)を進行中である。4 回目(2014 年)では、ヒト血漿
が対象試料であり、対象物質は神経ガスのタンパク質付加体であっ
た。その濃度は 1~10 ng/mL であり、参加した 19 試験機関のうち
正解した機関は 10 機関で正答率は 52%であった。
タ イ ト ル:Analysis of sediment samples in the Baltic sea-ROP methods
and results
発
表
者:Martin Söderström
発 表 者 の 所 属 : VERIFIN, Depertment of Chemistry, University of Helsinki,
Finland
発 表 概 要:第二次世界大戦直後に莫大な量の化学兵器がバルト海に投棄されて
おり、EU 支援の下で CHEMSEA(Chemical Munitions Search and
Assessment)プロジェクトを立ち上げて 2011~2014 年に渡ってそ
れらの調査を行った。化学剤関連物質の分析では海洋底質試料が対
象であり、遠心分離を行って、間隙水と湿底質に分けてそれぞれ分
析している。対象物質は、硫黄マスタード、Clark I 及び Adamsite
等の化学剤と共にそれらの分解物を対象とした。湿底質については、
極性物質用のアセトニトリル抽出とそれ以外のジクロロメタン抽出
を行い、それぞれ対象物質に適した誘導体化処理等を行い、GC-MS、
GC-MS/MS、LC-MS 及び LC-MS/MS 測定を行っている。間隙水に
43
ついては、ジクロロメタン抽出やカチオン交換抽出あるいは濃縮の
み行い、湿底質と同様な誘導体化処理及び測定している。調査の結
果、硫黄マスタードは分解物と共に、微量であるが 1 試料のみ 30
ng/kg 検出された。Clark I 等の砒素化合物については、プロパンチ
オール誘導体化処理と過酸化水素による酸化処理の違いにより検出
結果に違いが認められた。Adamsite では酸化処理が適していたが、
Clark I では誘導体化処理と酸化処理は同程度の結果が得られた。い
ずれの調査海域においても化学剤関連物質が検出されたが、最も汚
染された海域は Bormholm Deep であり、調査した海洋底質試料の
うち 86%が汚染されていた。なお、これらの調査結果は“Summary
of chemical analysis of sediment samples”として CHEMSEA プロ
ジェクトの Web 上で公開されているとのこと。
タ イ ト ル:Metabolites of chloropicrin
発
表
者:Mia Halme
発表者の所属:VERIFIN, Depertment of Chemistry, University of Helsinki,
Finland
発 表 概 要:クロロピクリンは化学兵器禁止条約の表 3 剤であるクロロピクリン
は、土壌燻蒸剤としても広く使用されている揮発性化合物である。
また水道水の塩素消毒の際にも微量副生されることが知られている
が、その代謝作用や毒性についてはよく分かっていない。そこで本
研究では、クロロピクリンの代謝物であるニトロメタンについて、
同位体希釈法を用いたヘッドスペース-GC-MS(HS-GC-MS)測定法
を確立し、ヒトや豚の肝臓組織を用いた in vitro 代謝試験を行った。
その結果、ニトロメタンの HS-GC-MS 測定法は、0.1~0.6 g/mL
の濃度範囲において高い直線性が得られた。in vitro 代謝試験につ
いては、一部の肝臓組織画分においてニトロメタンの生成が認めら
れたが、添加したクロロピクリンとのマスバランス (物質収支)が合
わなかったため、他の代謝物の生成が考えられた。
タ イ ト ル:Analysis of biomedical samples from a UN inspection of alleged
use of chemical weapons in Syria
発
表
者:Jenny Rattfelt Nyholm
発表者の所属:Swedish Defence Research Agency (FOI), CBRN Defence and
Security, Sweden
発 表 概 要:2013 年 8 月にシリアのダマスカス近郊グータ地区において化学兵
44
器(サリン)使用の疑いがあり、国連査察団がその地域において環境試
料と共にバイオメディカルサンプル(ヒト血液及び尿等)を採取し、ス
ウェーデン等の OPCW 指定検査機関が分析を行った。それらの分析
はこれまでに OPCW が確立した分析方法で実施し、尿試料はサリン
の分解物である Isopropyl methylphosphonic acid (IMPA)を分析し
た。血液及び血漿試料については、コリンエステラーゼやアルブミ
ン等のタンパク質が付加したサリンを分析した。これら対象物質は、
高分解能ガスクロマトグラ質量分析計(GC-HRMS)、ガスクロマトグ
ラフ-タンデム質量分析計(GC-MS/MS)、液体クロマトグラフ-タンデ
ム質量分析計(LC-MS/MS)及び炎光光度検出器付きガスクロマトグ
ラフ(GC/FPD)で測定した。その結果、グータ地区被害者の血漿や尿
試料からサリンの分解物や付加体が検出され、暴露 33 日後に採取し
た試料からも検出できたことから、遡及調査においても有効である
ことが示された。
タ イ ト ル:On-board analysis of mustard gas residues in sediment samples
during investigation of chemical weapons dumpsite
発
表
者:Roger Magnusson
発表者の所属:FOI, CBRN Defence & Security, Umea, Sweden
発 表 概 要:バルト海における化学兵器の海洋投棄調査において、海上移動時に
船上でマスタードガス関連物質の分析を行うために、ポータブル質
量分析計(Hapsite)と Tenax 吸着管を用いたダイナミックヘッドスペ
ース法を組み合わせた分析法を確立した。対象試料は海洋底質で、
対象物質として、マス タードガス分解物であ る 1,4-dithiane、
1,4-oxathiane 、 1,3-dithiolane 、 1,4,5-oxadithiephane
及 び
1,2,5-trithiephane の 5 物質とした。ダイナミックヘッドスペース法
により Tenaxa 管に対象物質を捕集する際、水分も大量に保持される
ため、捕集後にドライパージで吸着管を乾燥させる必要があった。
本分析法による対象物質の下限値は、約 10~60 ppb であった。
45
第 3 節 国内外の論文等、文献調査
1. 文献検索に使用した情報サービス
CAS(Chemical Abstracts Service)が提供する科学情報のオンライン情報サービス
STN(the Scientific and Technical Information Network)を利用し、3,300 万以上の
科学論文や特許情報等を含む CAS が作成したデータベース CAPLUS に含まれる文
献を検索した。同データベースには 1808 年から現在まで、55 ヶ国と 4 国際機関の
特許情報、2 技術公開誌、世界中の 10,000 誌以上の主要科学雑誌の論文記事、学会
会議録等が収録されている。毎日約 2,000 件の新規特許及び文献情報を追加して更
新されている。
2. 検索条件
① 期間:2014 年 1 月 22 日以降の更新情報
② キーワード:CHEMICAL
③ キーワード:WARFARE(S)又は WEAPON(S)
①、②及び③を全て満たす条件の論文を検索し、154 件がヒットした。これらの表題、
著者、著者の所属及び掲載雑誌及びアブストラクトを出力し、内容を確認した。
今回の調査ではヒットした文献の中から、化学剤のリアルタイムモニタリング、質
量分析における化学剤のフラグメンテーションメカニズム、新たなイオン化法を用い
た化学剤の質量分析、化学剤の抽出方法、蛍光検出器及び新たな検出機構を用いたマ
スタードガスの高感度検出等に関する研究、中国に遺棄された旧日本軍の化学兵器に
関する分析など、9 件の文献を入手した。これらの中には我が国からの報文も複数見
受けられた他、OPCW バリデーショングループのメンバーであるインドの Deepak
Pardasani 氏のグループによる論文も含まれており、今後 OCAD へデータを提供す
る上で大変有用な情報が得られた。
3.主な最新の文献
173 件の検索結果から特に検証分析能力の維持・向上及び最新の検出・分析技術に
係る内容を含む文献のオリジナル論文を入手した。また、有用な論文を多数含むジャ
ー ナ ル と し て Analytical &Bioanalytical Chemistry, Analysis of Chemicals
Relevant to the Chemical Weapons Convention, Volume406, Number21,
August2014 を入手した。入手した文献の表題、著者、著者の所属及び掲載雑誌を以
下に示す。
表題 Real-Time Air Monitoring of Mustard Gas and Lewisite 1 by Detecting Their
In-Line Reaction Products by Atmospheric Pressure Chemical Ionization Ion
46
Trap Tandem Mass Spectrometry with Counterflow Ion Introduction
Analytical Chemistry.
著者 Okumura, Akihiko; Takada, Yasuaki; Watanabe, Susumu; Hashimoto,
Hiroaki; Ezawa, Naoya; Seto, Yasuo; Sekiguchi, Hiroshi; Maruko, Hisashi;
Takayama, Yasuo; Sekioka, Ryoji; Yamaguchi, Shintaro; Kishi, Shintaro;
Satoh, Takafumi; Kondo, Tomohide; Nagashima, Hisayuki; Nagoya, Tomoki
所属 Central Research Laboratory, Hitachi, Ltd., Kokubunji, Tokyo, 185 8601,
Japan
雑誌 Analytical Chemistry (Washington, DC, United States) (2015) Ahead of Print
表題 Fragmentation mechanisms in mass spectrometry of organophosphorus
compounds: implications for analysis in chemical weapons convention
framework.
著者 Saeidian, Hamid; Sarabadani, Mansour
所属 Department of Science, Payame Noor University (PNU), Tehran, Iran
雑誌 Journal of the Iranian Chemical Society (2014) Ahead of Print
表題 Direct Quantification of Chemical Warfare Agents and Related Compounds
at Low ppt Levels: Comparing Active Capillary Dielectric Barrier Discharge
Plasma
Ionization
and
Secondary
Electrospray
Ionization
Mass
Spectrometry.
著者 Wolf, Jan-Christoph; Schaer, Martin; Siegenthaler, Peter; Zenobi, Renato
所属 Department of Chemistry and Applied Bioscience, ETH Zurich, Zurich,
CH-8093, Switz.
雑誌 Analytical Chemistry (Washington, DC, United States) (2015), 87(1), 723-729
表題 Simultaneous detection and identification of precursors, degradation and
co-products of chemical warfare agents in drinking water by ultra-high
performance
liquid
chromatography-quadrupole
time-of-flight
mass
spectrometry.
著者 Tak, Vijay; Purohit, Ajay; Pardasani, Deepak; Goud, D. Raghavender; Jain,
Rajeev; Dubey, D. K.
所属 Defence Research and Development Establishment, Vertox Laboratory,
Gwalior, 474002, India
雑誌 Journal of Chromatography A (2014), 1370, 80-92
47
表題 Study on the extraction of arsenic in destruction residues of arsenical
chemical weapons.
著者 You, Lijuan; Zhou, Ting; Wang, Xuefeng; Xu, Yong; Rao, Gang; Meng, Xin
所属 Institute of Chemical Defense, Beijing, 102205, Peop. Rep. China
雑誌 Advanced
Materials
Research
(Durnten-Zurich,
Switzerland)
(2014),
955-959(Advances in Environmental Technologies III), 2874-2879
表題 A highly selective and sensitive "turn-on" fluorescence chemodosimeter for
the detection of mustard gas.
著者 Raghavender Goud, D.; Purohit, Ajay Kumar; Tak, Vijay; Dubey, Devendra
Kumar; Kumar, Pravin; Pardasani, Deepak
所属 Defence Research and Development Establishment, Vertox Laboratory,
474002, India
雑誌 Chemical Communications (Cambridge, United Kingdom) (2014), 50(82),
12363-12366
表題 An electronic nose for the detection of Sarin, Soman and Tabun mimics and
interfering agents.
著者 Olguin, Cristian; Laguarda-Miro, Nicolas; Pascual, Lluis; Garcia-Breijo,
Eduardo; Martinez-Manez, Ramon; Soto, Juan
所属 Centro de Reconocimiento Molecular y Desarrollo Tecnologico (IDM), Unidad
Mixta Universidad Politecnica de Valencia - Universidad de Valencia,
Valencia, Spain
雑誌 Sensors and Actuators, B: Chemical (2014), 202, 31-37
表題 Real-time detection of chemical warfare agent simulants in forensic samples
using active capillary plasma ionization with benchtop and field-deployable
mass spectrometers.
著者 Dumlao, Morphy; Sinues, Pablo Martinez-Lozano; Nudnova, Maryia; Zenobi,
Renato
所属 Department of Chemistry and Applied Biosciences, D-CHAB, ETH Zurich,
Zurich, CH-8093, Switz.
雑誌 Analytical Methods (2014), 6(11), 3604-3609
表題 Sensitive and Comprehensive Detection of Chemical Warfare Agents in Air
by Atmospheric Pressure Chemical Ionization Ion Trap Tandem Mass
48
Spectrometry with Counterflow Introduction.
著者 Seto, Yasuo; Sekiguchi, Hiroshi; Maruko, Hisashi; Yamashiro, Shigeharu;
Sano, Yasuhiro; Takayama, Yasuo; Sekioka, Ryoji; Yamaguchi, Shintaro;
Kishi, Shintaro; Satoh, Takafumi; Sekiguchi, Hiroyuki; Iura, Kazumitsu;
Nagashima, Hisayuki; Nagoya, Tomoki; Tsuge, Kouichiro; Ohsawa, Isaac;
Okumura, Akihiko; Takada, Yasuaki; Ezawa, Naoya; Watanabe, Susumu;
Hashimoto, Hiroaki
所属 National Research Institute of Police Science, Kashiwa, 277-0882, Japan
雑誌 Analytical Chemistry (Washington, DC, United States) (2014), 86(9),
4316-4326
49
第5章
化学兵器禁止条約の指定試験機関における
分析技術維持等に係る情報収集
第5章
化学兵器禁止条約の指定試験機関における分析技術維持等
に係る情報収集
第 1 節 調査の概要
OPCW は ISO/IEC170251)に準拠したシステムで運営され、技能試験に合格するなど
の一定の技術的要件を満たし、毒性物質等の分析、解析能力が高いと認められた試験機
関を指定試験機関と位置付けている。2014 年 8 月 27 日現在で 17 カ国の 21 機関が
OPCW からその指定を受けている(表 5-1 及び下記 URL 参照)。
https://www.opcw.org/index.php?eID=dam_frontend_push&docID=17582
指定試験機関は 1 年に 2 回開催される OPCW 主催の技能試験のうち 1 回は最低受験
しなくてはならない。また、受験した直近の 3 回の技能試験のうち A 評価が 3 回又は
A 評価が 2 回及び B 評価が 1 回という成績を収めなければ指定が停止される。技能試
験では試料に添加された複数の表剤のうち全てを検出して報告すれば A 評価、添加さ
れた物質のうち 1 つが擬陰性であった場合は B 評価、2 つ以上が擬陰性であった場合及
び擬陽性があった場合は C 評価とされている。
全ての表剤を同定し報告したとしても、
その根拠を明確に示すことができなければ A 評価は与えられない。このため、指定試
験機関には試料に添加された未知の表剤を化学分析によって得られたデータから推定
し、実際にその化合物を合成して対照物質として試料から検出された化合物との照合を
行う能力を有することが必須とされている。また、指定試験機関は定期的に技能試験の
試料調製及びテストレポートの評価を担当しなくてはならないことから、指定を受け、
維持するためには非常に高度な分析技術と組織運営能力が要求される。
我が国にとって多様な化学物質の分析を信頼性高く行う能力の維持は重要であるた
め、OPCW の指定試験機関の中から過去の技能試験において常に優秀な成績を収めて
いる英国の Defence Science and Technology Laboratory, Chemical and Biological
Systems, Porton Down(DSTL)及びスイスの Spiez Laboratory, Swiss NBC Defence
Establishment を訪問先として選択し、その技術能力、研究者等の人材育成、組織運営
等に関する意見交換及び情報収集を行った。
1) ISO/IEC17025:試験所及び校正機関の能力に関する一般要求事項
50
表 5-1 OPCW の指定試験機関(2014 年 8 月 27 日現在)
No.
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
指定試験機関名
Defence Laboratories Department
The
Laboratory
of
Analytical
Chemistry,Research Institute of Chemical
Defence
Laboratory of Toxicant Analysis, Institute of
Pharmacology and Toxicology, Academy of
Military Medical Sciences
VERIFIN, Finnish Institute for Verification of
the Chemical Weapons Convention
DGA Maîtrise NRBC, Départementd’analyses
chimiques
Bundeswehr Research Institute for Protective
Technologies and NBC Protection
Vertox Laboratory, Defence Research &
Development Establishment
Council of Scientific and Industrial Research,
Centre for Analysis of Chemical Toxins, Indian
Institute of Chemical Technology
Defense Chemical Research Laboratory
TNO Defence, Security and Safety
Chemical Analysis Laboratory, CB Department,
Agency for Defence Development
The Chemical Defence Research Institute
Chemical Analysis and Testing Laboratory,
Scientific Research Center for CBRN Defense
and Ecology
Laboratory for Chemical and Analytical Control,
Military Research Centre
Verification Laboratory, Defence Medical and
Environmental
Research
Institute,
DSO
National Laboratories
Laboratorio de Verificación de Armas Químicas
( LAVEMA), Instituto Tecnológico“La Marañosa”
FOI, CBRN Defence and Security, Swedish
Defence Research Agency
Spiez
Laboratory,
Swiss
NBC
Defence
Establishment
Defence Science and Technology Laboratory,
Chemical and Biological Systems, Porton Down
締約国名
Belgium
China
China
Finland
France
Germany
India
India
Iran (Islamic Republic of)
Netherlands
Republic of Korea
Republic of Korea
Romania
Russian Federation
Singapore
Spain
Sweden
Switzerland
United Kingdom of Great
Britain and Northern
Ireland
Edgewood Chemical and Biological Forensic United States of America
Analytical Center
Lawrence Livermore National Laboratory
United States of America
51
第2節
OPCW 関連分析機関からの情報
1. Defence Science and Technology Laboratory
DSTL の職員(Technical Lead Analytical Chemistry)であり、OPCW のバリデーショ
ングループのメンバーにして会議の議長を務める James Riches 氏の案内で DSTL
(Porton Down 地区)の施設及び設備の見学、技術的なディスカッションを行い、同組織
の組織運営及び化学剤分析等に関する情報収集を行った。
1.1
CWC 検証分析のための組織と施設
1)
組織及び施設の概要
DSTL は英国防衛省管轄下にある防衛及びセキュリティに関する研究を行う執
行機関である。職員は約 3500 人で、そのうち 2000 人がグレートブリテン島(イ
ングランド)の南西部にある Porton Down 地区の施設に勤務している。この施設
の敷地は東西に約 8 km、南北に約 4 km という広大な面積を有しており、多数の
弾薬庫及び研究棟が配置されている。DSTL は CBRN すなわち化学(Chemical)、
生物(Biological)、放射性物質(Radiological)及び核(Nuclear)の全てを研究対象と
しているが、この地区の研究施設では主に化学及び生物に関する研究が行われて
いる。
OPCW のプロフィシエンシーテストを担当するメンバーは約 20 名である。
2)
設備
主な研究棟は化学兵器に関する施設、生物兵器に関する施設及び動物実験に関
する施設である。今回見学したのは、このうちの化学兵器に関する施設である。
生物兵器に関する施設はバイオセーフティーレベルが高く、DSTL の職員であっ
ても関係者以外は立入りできない。動物実験の施設ではサルとモルモットが飼育
されており、化学剤の代謝物分析等の研究に利用されている。
分析化学棟は 3 階建で 1 階には分析機器が配置され、2 階には事務室、3 階に
は有機合成のための設備が配置されている。
分析機器としては一部コンベンショナルな高速液体クロマトグラフ(HPLC)も
用いられているが、最新のテクノロジーが搭載された高性能なガス及び液体クロ
マトグラフ質量分析計が導入されており、いずれも種類と台数が豊富である。こ
れらの分析機器のデータはサーバーによって一元管理されている。以下に主な装
置を示す。

りん及び硫黄の同時検出が可能な炎光光度検出器(FPD)を備えたガスクロ
マトグラフ質量分析計(GC-MS)
保持指標とマススペクトルに加え、その化合物がりん原子及び硫黄原子
を有しているか否かという情報が得られるため、試料マトリックスの影響
が大きい場合に表剤を同定する非常に強力なツールとなる。

ガスクロマトグラフタンデム質量分析計(GC-MS/MS)
従来の GC-MS と比較して選択性が高く高感度であるため、極微量の低
52
極性な表剤を検出、定量するために用いられている。

二次元ガスクロマトグラフ飛行時間型質量分析装置(GC×GC-TOF/MS)
本装置は複雑な試料マトリックス中の目的物質の検出に有効である。こ
のため、プロフィシエンシーテストにおいてオーガニックサンプル中のマ
スタードガス関連物質(1,4-ジチアンなど)及び底質試料中のマスタードス
ルホン及びマスタードスルホキシドの分析に用いられている。

イオンクロマトグラフ
暴動鎮圧剤の代謝物分析用として用いられている。

液体クロマトグラフタンデム質量分析計(LC-MS/MS)
比較的高極性な表剤の分解物の高感度分析用として用いられている。

四重極とフーリエ変換イオントラップ ハイブリッド型質量分析計(Q
Exactive Plus)
高分解能であることから、主に表剤代謝物の構造解析(分子式推定)に用い
られている。

マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析装置
(MALDI-TOF/TOF MS)
生体内のタンパク等と結合した表剤のアダクト解析に用いられている。

核磁気共鳴(NMR)装置
400 MHz が 2 台と 600 MHz の計 3 台であり、そのうちの 1 台は LC-NMR
として利用可能である。また、固体 NMR 及び MR イメージング(NMR 顕
微鏡としての利用)に対応した装置もある。多くの場合、サンプルは特別な
前処理を経ずに NMR 装置に導入される。プロフィシエンシーテストにお
いては必要不可欠な装置である。
合成のための試験室には 4 台のドラフトチャンバーが設置されており、各々に
担当者が決められている。これは合成担当者によって使い勝手のよい機材等のレ
イアウトが異なるためである。合成した化学物質の精製にはシグマアルドリッチ
(SPELCO)の Versa Flash というカートリッジタイプのカラムを用いる液体クロ
マトグラフィーによる精製システムが利用されている。カートリッジタイプのカ
ラム(Versa Pak)は順層クロマトグラフィー用のシリカゲルと逆相クロマトグラ
フィー用のオクタデシルシリル化シリカゲル(ODS)の 2 種類があり、用途に応じ
て使い分けられている。プロフィシエンシーテストでは推定される化合物を合成
して分析データを照合する必要があるため、様々な表剤の合成に対応できる体制
が構築されている。
別棟で燃焼試験施設が 2 つある。この中には内壁がステンレススチールで覆わ
れたチャンバーがあり、軽油等を燃料とした化学剤の燃焼試験が行われている。
53
燃焼試験の頻度は非常に高く、1 年間に 18000 試料を処理する。そのうち 5000
試料がマスタードガスである。チャンバーに隣接して設けられたエアーロックを
通じて入退室する。チャンバーから退室する際には次亜塩素酸ナトリウム溶液と
ベントナイトによる除洗が義務付けられている。
また、違う別棟には類似したチャンバーがあるが、これは化学防護服の性能評
価を行うための設備である。DSTL における化学防護服の研究開発の歴史は古く、
現在も継続して行われている。チャンバー内には「Porton man」と名づけられた
可動式のマネキンがあり、これに化学防護服を着せて動かし、化学剤の漏洩をチ
ェックするものである。マネキンの体表には多数のサンプラー設置箇所がある。
サンプラーはパッシブタイプのもので、内径 1 cm、長さ 2 cm 程度の円筒状のス
テンレスチューブに捕集剤を充填したものである。化学剤はガラス製の丸底フラ
スコに入れ、空気または窒素を流量制御して導入しながら加熱し、フラスコ上部
に取り付けられた蒸留塔の上端から蒸散させる。蒸散した化学剤は垂直方向に設
置された大型のファンによってマネキンにばく露されるとともに、チャンバー内
に充満する。チャンバー内の除染作業は毎週月曜日と木曜日に行われている。
3)
組織運営のための予算
軍の研究施設であることから、指定検査機関であることを維持するため、ある
いはプロフィシエンシーテストのための予算は明らかにされていない。しかしな
がら組織運営のための予算は年々減少する傾向があるとのことである。研究成果
の論文投稿は組織の客観的な評価指標として重視されており、予算額に大きく影
響するシステムになっている。
4)
英国における化学剤分析に係る DSTL の役割
DSTL にはハザードアセスメントデパートメントという組織があり、国内で化
学及びバイオテロが発生した際に現場検知を行うための緊急車両が 3 台配備され
ている。このうち 2 台はポリスカーと呼ばれる化学及び生物剤を検知するための
検知器及び除染剤、防護服を搭載した車両と主に通信機材を搭載した車両であり、
これらは一対になって機能する。もう一台はヘリコプターで運搬が可能な日本製
の 4 輪駆動車で化学剤検知器などが搭載されている。いずれの車両にも機材の電
源としてバッテリーと発電機の双方が搭載されている。化学剤の検知器としては
一酸化炭素、アンモニア、低酸素状態を検知するパーソナルガスモニター、フラ
ンス製の炎光光度検出器(FPD)を原理とする AP2C 及び可搬型のガスクロマトグ
ラフ質量分析計の HAPSITE が用いられる。緊急車両には化学者と生物学者が搭
乗する。これらの機材を用いた訓練は 1 年間に 20 回という頻度で行われる。訓
練の一部として、シーンアナリシスというものが行われる。これはテロリストの
兵器製造拠点等を想定したセットの状況証拠から、化学兵器あるいは生物兵器の
いずれが製造されたものかを判断する訓練である。
54
5)
他の OPCW 指定試験機関との関係
フィンランドの VERIFIN と協力関係にあり、セミナーの講師を派遣するなど、
人的交流がある。
6)
バイオメディカルサンプルの分析法について
DSTL はこの分野の分析に関する研究に注力しており、人の血液及び尿などの
サンプルに含まれる化学剤ばく露のマーカー物質の分析に関する研究を進めてい
る。このための分析機器として液体クロマトグラフ質量分析計の種類及び台数が
充実しており、これらを駆使して分析が行われる。アジレントテクノロジー社の
6490 型 LC-MS/MS は非常に高感度であり、VX の定量下限値は 1 pg/mL である。
ガスクロマトグラフ質量分析計もまた最新の装置が複数導入されており、直接導
入が可能な装置では毛髪や衣服に付着した化学剤の直接分析が可能である。この
他に化学剤の代謝物のマーカー探索用として同位体比質量分析計が用いられてい
る。
7)
緊急時の対応等について
化学剤に暴露された場合のためにアトロピンなどの解毒剤のオートインジェク
ターが用意されている。
8)
表剤の管理について
DSTL には数キロ単位、あるいはそれ以上の化学剤が保管されているが、今回
の訪問ではその施設を見学することはできなかった。しかし、分析に用いる標準
品については数 g 単位で各試験室に設置された保冷庫に保管されていた。保冷庫
は複数あり、いずれも施錠されていた。
9)
OCAD についてのディスカッション
OCAD には既に多くの分析データが収録されているが、意外に収録されていな
い基本的なデータが多数ある。今回の訪問ではこれらについてのディスカッショ
ンを行った。DSTL は化学剤の中でも VX などの V 剤についての研究を重視して
いる。この観点からすると、現在の OCAD にはいくつかの V 剤についてはトリ
メチルシリル(TMS)誘導体及び tert-ブチルジメチルシリル(TBDMS)誘導体のデ
ータが不足している。また、いくつかのシクロアルキルメタノールについても同
様に誘導体のデータがない。
びらん剤についてもマスタードガス及び関連物質の誘導体のデータが不足して
いる。
これらはいずれも表 1 剤そのものではないが、その合成過程で表 1 剤が中間体
として生成する場合は製造のための許可が必要になる。また、これまでにデータ
が提供されていない理由の一つとしては技術的に困難であることが考えられる。
例えば、マスタードガスの片方の塩素が TMS 誘導体化されたものなどは、通常
の方法では合成困難である。
55
表剤分子を構成する原子の一部が重水素や
13C
といった安定同位体で置換され
た安定同位体標識化合物については、それが表剤の定義に当てはまるか否かは別
として、毒性の程度が非標識化合物と同等であることが想定されるため、Riches
氏はデータベースに収録すべきであるとの認識を示した。しかし、例えば神経剤
の場合はりん原子に直接結合した炭素数が 3 までのアルキル基が重水素又は
13C
を含むものに置換されたものなどがこれに相当するが、その合成は比較的難易度
が高いものである。
2. Spiez Laboratory
2.1 CWC 検証分析のための組織と施設
平成 27 年 3 月 4 日、スイスの Spiez (シュピエツ)にある Spiez laboratory を訪
問し、同研究所の Organic Chemistry, Detection, Decontaminaton Branch の
Christophe Curty 氏及び Analytical Chemistry Branch の Peter Siegenthaler 氏
より案内及び説明を受けた。
1)
組織
Spiez laboratory はスイス連邦における市民保護に係る政府機関の一部門であ
る。基本理念は「A world without weapons of mass destruction(大量破壊兵器の
ない世界)」である。同研究所は Physics(物理)、Biorogy(生物)、Chemistry(化学)、
NBC Protection(核、
生物及び化学兵器に係る防御)及び Logistics, Quality, Safety
and Security(兵站、品質、安全及びセキュリティ)の 5 つの部門から構成される。
CBRN すなわち化学(Chemical)、生物(Biological)、放射性物質(Radiological)及
び核(Nuclear)の全てを研究対象としているが、化学及び生物に関する研究は
Spiez 地区の研究施設のみで行われている。
2)
OPCW 技能試験の実施
OPCW のプロフィシエンシーテストは Peter Siegenthaler 氏を含む Analytical
Chemistry Branch の 7 名のメンバーで対応する。
3)
施設及び設備
Spiez laboratory の敷地は 2 分されており、片側は研究施設、もう一方は軍の演
習等を行うエリアとなっている。主な研究施設は化学棟、高毒性棟及び生物棟で
ある。今回見学したのはこのうちの化学棟及び高毒性棟である。いずれも 1981
年竣工とのことである。生物棟は比較的新しく、バイオセーフティーレベ ル
4(BSL4)の仕様となっている。化学棟は 4 階建で 1 階には Organic Chemistry,
Detection, Decontaminaton Branch のオフィスと研究室が配置され、2 階には
Analytical Chemistry Branch のオフィスと研究室が配置されている。
分析機器としては分子を構成する原子を検出することが可能な原子発光検出器を
備えたガスクロマトグラフ(GC-AED)、りん及び硫黄の同時検出が可能な炎光光
56
度検出器(DFPD)を備えたガスクロマトグラフ、時間飛行型の質量分析計を備えた
ガスクロマトグラム(GC-Q-TOF/MS)及び液体クロマトグラフ(LC-Q-TOF/MS)、
液体クロマトグラフタンデム質量分析計(LC-MS/MS)及び核磁気共鳴(NMR)装置
などが主な機器である。
LC-MS/MS はエービーサイエックス社の API3200Q trap
で、高感度な装置ではないが、リニアイオントラップタイプであるため、定性能
力は高い。LC-Q-TOF/MS は Bruker 社の maXis 4G Plus という非常に分解能が
高いタイプである。GC-Q-TOF/MS はアジレントテクノロジーの 7200 型で電子
イオン化(EI)と化学イオン化の両方で分析することが可能である。NMR は
600MHz のタイプ(Ascend Aeon600)が 1 台のみで、サンプルを分析する際には自
動的に精製を行う固相抽出装置(LC-SPE)を接続して使用する。その他に試料等の
分取に便利なツールとして、Gilson Microman の Positive Displacement Pipette
が用いられていた。これは通常のマイクロピペットとは異なり、チップ自身がシ
リンジとなっているため、粘性の高い試料やクロロホルムやジクロロメタンのよ
うに樹脂を溶かす液体の分取に有用である。また、ダイオネクス社の高速溶媒抽
出装置も試料の前処理に用いられている。誘導体化を行う試料は溶媒及び水分の
除去のため、Zymark 社の TurboVapII という遠心エバポレータ及び Eppendorf
社の Concentrator Plus というエバポレータが用いられる。Spiez Laboratory で
はアルキルシリル誘導体化の試薬として BSTFA の他に MTBSTFA を使用する。
GC-MS で表剤等の分析を行う際には分析試料の前後で必ず OPCW で指定された
QC サンプルの測定を行う。標準溶液も含めて全ての測定試料のリストを印刷し
てログブックと呼ばれる使用記録簿に貼り付ける。カラムは一本ごとに独自のシ
リアル番号が付けられ、ログブックに記録される。Analytical Chemistry Branch
は 1984 年から化学兵器が関連した海外の戦争や事件の現場において採取された
試料の分析を行っている。我が国において発生した地下鉄サリン事件の試料や最
近ではシリアで採取された試料の分析も行った。シリアの件では 49 サンプルが
オランダの OPCW 研究所を経由して持ち込まれ、3 日後には分析結果を速報した
という。この施設で分析対象とするのは神経剤及びびらん剤並びにそれらの分解
物であり、生物由来のサキシトキシン及びリシンといった毒素の分析は生物部門
が担当する。
化学棟における有機合成のための研究室には通常のドラフトチャンバーが設置さ
れており、表 2.B.04 などの高毒性物質の前駆物質及び分解性生物の合成が行われ
る。合成した化学物質の確認用として 1 台の GC-MS が設置されている。一方高
毒性棟では表 1 剤が年間 10 kg 程度合成されている。ただし、マイクロリアクタ
ーを用いるため、1 回につき合成可能な量は数 mg~数 g である。高毒性棟内部は
HT-1~HT-4 の 4 つの区域に分けられている。HT-1 は暴動鎮圧剤のような比較的
毒性の低い化合物の合成に用いられる。HT-2 は神経剤及びびらん剤のような毒性
57
の極めて高い化合物の合成に用いられる。HT-3 は新たな合成技術の研究等、HT-4
は化学剤の検出及び除染等の研究に用いられる。各々の区域にはコントロールル
ームが隣接しており、内部をモニターすると共に照明、ガスの供給、空調及び内
部の機器の操作等を遠隔操作できるようになっている。HT-2 の内部には 3 つの
ドラフトチャンバーと 1 つのグローブボックスが設置されている。グローブボッ
クスは作業者の身長に応じて高さが調節できるようになっており、内部にはリア
クター(反応用のフラスコ)、エバポレータ、減圧蒸留装置、クーゲルロール蒸留
装置が配置されている。リアクターとエバポレータは内部に不活性ガスのアルゴ
ンが供給される仕組みになっている。リアクターはウォータージャケット付きの
タイプで、反応によって冷却することも加温することも可能である。各種蒸留装
置は 1 台のドラフトチャンバー内に設置されたメンブランポンプ及びディフュー
ジョンポンプによって減圧される。万が一配管内に高毒性物質が吸い込まれたと
しても、液体窒素を用いた冷却トラップがあるためポンプまで到達することはな
い。原料はドラフトチャンバー内に設置された天秤で秤量してリアクターに仕込
まれる。
クーゲルロール蒸留装置による精製で純度 99%以上の表 1 剤が得られる。
これらの合成装置の操作はコントロールルームのコンピュータから Systag 社の
FlexySys というソフトウェアを用いて行う。グローブボックスの下には AP4C
型の化学剤検知器が設置され、神経剤(GV)、シアン、ヒ素化合物及び硫黄化合物
の漏洩を常時モニターしている。合成した表 1 剤は角型のボトル(容量 3 g 程度)
に入れて保存される。このボトルは金属製のフォルダーにはめることで、片手で
キャップの開閉ができ、倒れても転がらないというメリットがあるため採用され
たものである。合成した表 1 剤の確認用として GC-MS が 1 台とオートサンプラ
ー付きの 400MHz タイプの NMR が 1 台設置されている。これらの分析機器は
Analytical Chemistry Branch が使用することもあるという。
化学防護服及び防毒マスクなどの性能評価は Logistics, Quality, Safety and
Security 部門で実施されているとのことである。
4)
組織運営のための予算
組織全体の予算は不明であるが、一つのプロジェクトの予算としては 40~50
万ドル(US ドル)程度が当てられるとのことである。表剤の合成及び OPCW への
提供、あるいはプロフィシエンシーテストのための予算は特に設けられないとの
ことである。
5)
スイスにおける化学剤分析に係る Spiez laboratory の役割
主に欧州と米国の多数の研究機関と協力関係にあり、その中にはフィンランド
の VERIFIN などの指定試験機関も含まれる。アジアでは唯一シンガポールの
DSO と国際的な提携を行っている。Spiez laboratory は定期的に軍の関係者に対
して化学剤の検知等に関するトレーニングを実施している。国内で化学兵器を用
58
いたテロリズムが生じた際には訓練を受けた兵士が現場での検知、サンプリング、
除染等の作業を行う。また、Spiez laboratory は採取された試料の詳細な分析(オ
フサイト分析)を行うほか、自身も専用車両を有する Rapid Intervention Team を
現地に派遣する。
6)
他の OPCW 指定試験機関との関係.
主に欧州と米国の多数の研究機関と協力関係にあり、その中にはフィンランド
の VERIFIN などの指定試験機関も含まれる。アジアでは唯一シンガポールの
DSO と国際的な提携を行っている。
7)
バイオメディカルサンプルの分析法について
Spiez laboratory がこの分野の分析に取り組み始めたのは 1 年前と比較的最近
であるが、既に VX ガス等の神経剤にばく露されたことを示すマーカー物質を合
成し標準物質として用いる分析技術を確立している。これは有機リン系の神経剤
がアセチルコリンエステラーゼのセリン残基に特異的に結合することから、VX
とセリンをまず結合させ、VX が結合した状態のアセチルコリンエステラーゼ固
有のポリペプチドを固相ペプチド合成法によって合成するものである。得られた
マーカー物質は 99%以上の純度であるという。実際のバイオメディカルサンプル
については酵素(ペプシン)でタンパクであるアセチルコリンエステラーゼをペプ
チド断片に消化し LC-MS/MS を使用して VX 結合ペプチドを検出する。
8)
緊急時の対応について
高毒性棟の合成用区域(HT-2)には化学剤に暴露された場合のためにジアゼパム
及び解毒剤であるアトロピンのオートインジェクターが用意されている。また、
HT-1 及び HT-2 共用で設置された除染室には次亜塩素酸塩を含むデコパウダー、
除染液を含むスポンジ状の RSDL が設置されている。ベンチレーションルームを
通って廊下に抜けた先にはエマージェンシールームがあり、簡単な治療を行うた
めの薬物等が設置されている。さらにエマージェンシールームの横には救急車が
横付けできるようになっている。
59
添
付
資
料
1. OPCW 中央分析データベース・バリデーショング
ループ会合レポート
2. GCRI データの評価結果一覧
3. OCAD 提供 MS データ
4. OCAD 提供 GCRI データ
添付資料 1
OPCW 中央分析データベース・
バリデーショングループ会合レポート
1)
第 40 回バリデーショングループ会合レポート
2)
第 41 回バリデーショングループ会合レポート
添付資料 1 バリデーショングループ会合報告書
60
添付資料 1 バリデーショングループ会合報告書
61
添付資料 1 バリデーショングループ会合報告書
62
添付資料 1 バリデーショングループ会合報告書
63
添付資料 1 バリデーショングループ会合報告書
64
添付資料 1 バリデーショングループ会合報告書
65
添付資料 1 バリデーショングループ会合報告書
66
添付資料 1 バリデーショングループ会合報告書
67
添付資料 1 バリデーショングループ会合報告書
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添付資料 1 バリデーショングループ会合報告書
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添付資料 1 バリデーショングループ会合報告書
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添付資料 1 バリデーショングループ会合報告書
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添付資料 1 バリデーショングループ会合報告書
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添付資料 1 バリデーショングループ会合報告書
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添付資料 1 バリデーショングループ会合報告書
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添付資料 1 バリデーショングループ会合報告書
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添付資料 1 バリデーショングループ会合報告書
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添付資料 1 バリデーショングループ会合報告書
77
添付資料 1 バリデーショングループ会合報告書
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添付資料 1 バリデーショングループ会合報告書
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添付資料 1 バリデーショングループ会合報告書
80
添付資料 1 バリデーショングループ会合報告書
81
添付資料 1 バリデーショングループ会合報告書
82
添付資料 1 バリデーショングループ会合報告書
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添付資料 1 バリデーショングループ会合報告書
84
添付資料 1 バリデーショングループ会合報告書
85
添付資料 1 バリデーショングループ会合報告書
86
添付資料 2
GCRI データの評価結果一覧
1) 第 40 回バリデーショングループ GCRI 評価結果
2) 第 41 回バリデーショングループ GCRI 評価結果
添付資料 2
GCRI データの評価結果一覧
Summary of the GC(RI) evaluation for the 40th meeting of the Validation Group
87
添付資料 2
GCRI データの評価結果一覧
Summary of the GC(RI) evaluation for the 41st meeting of the Validation Group
88
添付資料 2
GCRI データの評価結果一覧
89
添付資料 2
GCRI データの評価結果一覧
90
添付資料 2
GCRI データの評価結果一覧
91
添付資料 3
OCAD 提供 MS データ
添付資料 3
OCAD 提供 MS データ
92
添付資料 3
OCAD 提供 MS データ
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添付資料 3
OCAD 提供 MS データ
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添付資料 3
OCAD 提供 MS データ
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添付資料 3
OCAD 提供 MS データ
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添付資料 4
OCAD 提供 GCRI データ
添付資料 4
OCAD 提供 GCRI データ
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添付資料 4
OCAD 提供 GCRI データ
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添付資料 4
OCAD 提供 GCRI データ
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添付資料 4
OCAD 提供 GCRI データ
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添付資料 4
OCAD 提供 GCRI データ
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添付資料 4
OCAD 提供 GCRI データ
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添付資料 4
OCAD 提供 GCRI データ
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添付資料 4
OCAD 提供 GCRI データ
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