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デンマークのエネルギー政策と 北方都市への教訓
デンマークのエネルギー政策と 北方都市への教訓 吉田文和 北海道大学名誉教授 CHP普及の目的:デンマーク • 1973年の石油危機が出発点、1979年の熱供給法が 基礎をつくる、石油・石炭から天然ガスとバイオマスへ、 地域暖房からCHPへ、消費者価格の低減、地域暖房 会社へのメリット、CO2,NOX低減、自治体が接続義務 を決める、 • 経済的インセンティブ、CHP電力への補助、CO2税、そ の税収で補助する。低利有利、地域暖房110年の歴 史、自治体の保証、2011年には熱の62%が地域暖房 による(1980年31%)、1次エネルギー消費の17%を 占める、地域暖房は76%がCHPから。電力の63%が CHPから。 • 「エネルギー2020」を決定し(2012年3月)、 2020年まで に1次エネルギー(電力や都市ガス等に転換前のエネ ルギー)供給中の再生可能エネルギー比35%目標 デンマーク熱供給法(1979年) 第1条: 第1項 本法の目的は、環境に優しく、 最も社会経済的に、建造物の暖房と温水供給 のエネルギー利用を促進すること、そして、この 領域におけるエネルギー供給の際の化石燃料 依存を減少させることである。 第2項 熱供給の計画は、第1項中で述べた目 的に一致して、できる限り熱と電力の併合生産 の向上を配慮して図られるべきである。 CHP: From Cities to Nationwide Coverage Changes in the electricity generation layout during the last 25 years CHP-efficiency has lowered DK’s Gross Energy Demand by 11% CHP電力の買取保証:デンマーク • • • • 現存する分散型天然ガスCHP=0.08DKK/kWh 産業用天然ガスCHP=0.07DKK/kWh,6年間 バイオガスCHP=0.60DKK/kWh,20年間 2013年からは0.793DKKか0.431DKK/kWhかを選 択、0.26DKK追加、6kW以下は1.30DKK/kWh • 木質バイオマス、麦わらCHP=0.60DKK/kWh 20年間(2004年4月21日以前稼働) 2013年からは0.15DKK/kWh追加 ・天然ガス・バイオガスCHPは両方加算 集中型CHPが半数、残りを小規模、自立型CHP バイオガス及びバイオマスのガス化ガスによって生産される 電力価格構成モデル (現行、補助金財源:電力PSO, 交付対象:電力生産者) モデル2 (FIP) モデル1 (FIT) 補助金A (固定:0.26 kr./kWh) 補助金B (固定:0.10 kr./kWh) 0.802 kr./kWh 補助金C(変動する) 変 動 天然ガス価格と基礎価格 の差に応じて毎年1月1 日調整。(ref. §43e-2) 変 動 補助金A (固定:0.26 kr./kWh) 2016~19年 毎年1月1日0.02 kr./kWh 減額。 (ref. §43e-4) 価格指数調整 (ref.§43a-6) 市場価格と0.802 kr./kWhとの差。 補助金B (固定:0.10 kr./kWh) 補助金D (固定:0.436 kr./kWh) (ref.§43a-1) 市場価格(変動する) Nord Poolスポット・プ ライス。(ref.§51-2-1) 市場価格(変動する) モデル1(FIT)からモデル2(FIP)に移行するように規制を調整。 (エネルギー2020合意) 高井久光作成 6 デンマークのCHP促進策 • 暖房燃料への税金施策:暖房設備のCHP 化を促進するた め、発電用の燃料には税金をかけず、暖房に使う燃料に かかる税金を高くすることとした。 • 購入義務付け:2005 年まで、需要家は、最寄りのCHP ユ ニットで発電された電力の購入が義務付けられた(現在は 廃止)ので、大型で集中型のCHP プラントを含め、すべて のCHP 事業者は、その恩恵を受けた。 • バイオマスおよびバイオガス CHP のプレミアム:バイオマ スおよびバイオガスを燃料とする(元来発電所だった)集 中型CHP プラントは、すべての需要家が支払う電気代の 中からプレミアムを受ける。 • DHの半分はバイオマスかバイオガスを燃料にしている。 District Heating in Denmark 230 DH plants and 670 CHP plants 地域暖房網の所有、管理、 接続義務(デンマーク) 接続/接続され続ける義務:地方自治体に、すべ ての住民が、天然ガス供給あるいは地域暖房ネッ トワークのいずれかに接続することを要求する権 限を持たせた。 この接続義務は新規および既存の家屋ともに発生 するが、既存の家屋に関しては、(接続までの時間 的猶予を与えるために)、住人への通知後9 年以 内に接続するものとした。 この接続義務が、DH システムの拡張を促し、DH ビジネスが商業ベースで成り立つことを保証し、そ のための資金調達も容易にした。 デンマーク事例:Assens 地域暖房調査 • 3150人のメンバー、1961年設立、はじめは石油 だき、1984年に石炭ボイラー追加、1988年に木 質CHPへ転換(チップはデンマーク75%、バルト3 国25%)、5km,天然ガスパイプはない。設備補 助金はないが、政府の買取保証60オーレ(12円 /kWh),借金保証、地域暖房ネットの安さ(1m2-3 万円)、non-profit なので、利益上げたら借金返 す。木質チップは、自動化挿入。全体の熱効率 は、90%。固定価格買取のために電気を多く生 産したい。 • 1家庭当たり20万円程度・年間かかる Supply Zones Established in 1980-90’s 280 Biomass Plants in Denmark Wood or straw: • 200 district heating plants • 15 CHP plants Biogas: • 33 CHP Municipality Solid Waste: • 24 CHP plants • 8 district heating plants 12% of the electricity consumption and 26% of space heat consumption from biomass, incl. organic waste. Many large-scale CHP’s around major cities will convert to biomass in next 10 years, as many large cities adopt low carbon or zero carbon climate strategies 制度上の教訓と課題(デンマーク) • 教訓①風力の出力に応じてCHPをコントロールする。ヒート プンプをCHPユニットに追加する、 • 教訓②電力貯蔵への投資はしすぎない、しかしCHP、ヒー トプンプ、運輸ユニットを安定的にグリッドに含めることが 大切。 • 教訓③CHP,ヒートプンプ、運輸のクローズドシステムのフレ キシブル運用で、利益があがる。 • 教訓④再生可能エネルギーの利用として、バイオマスは 限られているので、風力電気などで再生可能エネルギー のガスと液体に替える。 • 100%再生可能エネルギーには、スマートエネルギーシス テムが必要である。 • 第4世代のDH(地域暖房)計画:①世代は蒸気、②世代は 高温高圧、③世代現在、④世代はバイオ燃料を運輸に使 い、風力発電でメタノール、バイオ燃料をつくり、自動車用 燃料にする。そのコスト、雇用効果を検討する。 デンマークCHPの見学から ・無理に電力を貯蔵することを考えずとも、CHPの場合熱(=熱 水)で貯める方が効率的である。 ・時間帯別の電力市場があれば、市場価格がインデックスに なって、電力供給の逼迫度に応じて電力と熱生産のどちらを重 点に運転するか、最適運転が実現できる。 ・必ずしも施設を所有していなくても、適切な契約さえ結べれば、 他主体の所有するCHPを電力需要に応じて遠隔操作で運転で きる。 ・同様に、時間帯別の電力市場があれば、設備投資を最小限 のシンプルな構造にして、電力需給が逼迫=市場価格が高値 のときにだけ稼動するバックアップ火力の会社が存立しうる。 内村鑑三の教え Lesson of Kanzo Uchimura (Independent Evangelist) • 「デンマーク国の話」(1911年)『岩波文庫』 • デンマークはドイツに負けて、人の教育と国土の再開 発で国の危機を乗り越える • 再生可能エネに言及、足元から資源を探す、地元学 • Use of local RE • 人の再教育、職業訓練 Development of human resource and Local resource • みんなで議論、民主主義 Democracy and Discussion • 「危機」はチャンス、電力危機をきっかけに省エネと再 生可能エネルギーで地域再生に Crisis is a chance for the change まとめ:北方都市への教訓 ・CHP普及の目的を明確にする⇒気候変動対策、 エネルギー効率向上 ・CHP電力の買取保証制度、設備投資の補助 金制度などの枠組み制度の確立 ・DH地域暖房網の所有、管理、接続義務⇒デ ンマークの高普及率の背景 ・規制緩和(道路占有・パイプ施設基準など)の 必要性 ・電力自由化、電力価格の変動影響の検討が 必要