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こちら - 岡山白陵中学校・岡山白陵高等学校
平成22年度 岡山白陵中学・高等学校 人権教育講演会について 2月24日(木)ピーター・フランクル先生をお迎えし、「21世紀は人権の世紀になる か」を演題に人権教育講演会を開催しました。 ピーター先生はユダヤ系の医師夫妻の子息としてハンガリーにお生まれになりました。1 8歳で国際数学オリンピック金メダルを獲得、 大道芸人としても活躍されている数学者です。 1975年にはハンガリーからパリ大学へ国費留学され、博士号を取得。78年にはハンガ リーで、サーカス芸人国家試験に合格。翌年には当時社会主義体制をとっていたハンガリー から自由に憧れフランスに亡命され、その後東京大学に招かれて来日。親切で真面目に仕事 をこなす日本人が大好きになり、ユダヤ人差別のない日本に定住することになりました。こ れまで訪問した国は80か国以上。母語のハンガリー語を始め、ドイツ語、フランス語、ス ペイン語、ロシア語、ポーランド語、スウェーデン語、英語、日本語、中国語、韓国語など の言語を巧みに操るという驚異の語学力も持たれています。 「人間の財産は頭と心」という信 念のもとで過ごしてきた半生を振り返り、NHK 教育テレビ「マテマティカ」 、TBS「世界ふ しぎ発見」などのテレビ出演とともに、講演活動で全国各地を駆けめぐりながら、時間が許 す限り路上で得意の大道芸を披露されています。 〔ピーター先生の大道芸(ジャグリング)〕 〈日本各地の路上でもやっているそうです。 〉 講演はいきなりジャグリングの大道芸の披露から始まり、生徒・保護者・教職員の度肝を 抜き、拍手喝采を受けました。その後、母国ハンガリーの話、異文化理解、ユダヤ人差別、 日本の被差別部落差別、グローバリーゼーション化された世界経済、政変の続くエジプト、 リビアなどの政治情勢など話題は多方面に渡り、講演の途中には専門にされている数学の問 題(かなりの難問です)を出題され、それを正しく解答した中学3年生たちとの交流もあり ました。 〔ピーター先生の出題した数学の難問を解く生徒たち〕 〈全問正解。彼らの持つ数学的才能に感動しました。 〉 人権に関わる話では、特に印象に残ったのがピーター先生の御両親が第2次世界大戦中ナチ スドイツの迫害にあい、強制収容所に送られ九死に一生を得たこと。でも、祖父母や親族の 多くは、ユダヤ人に対するホロコースト(大量虐殺)の対象にされたこと。戦後、ピーター さんが生まれた時に、お父さんはアーロンという名を付けたかったが、この名前はユダヤ人 しか使わないのでお母さんが反対し、差別されないようにキリスト教圏ではどこにでもある 名前のピーターと名付けたこと。小学校1・2年生のころまで自分の出生について知らなか ったのが、学校で友達から心ないユダヤ人差別の言葉を投げかけられ、心が傷ついたこと。 民族差別的言動は「罵り」 「卑しめ」から始まり、そのような差別意識は祖父母、両親から子 どもへと受け継がれていくことなどが心に残りました。われわれの身近な生活の中でも、人 に対して人を馬鹿にすることを含めて心ない言動をしているのではないかと、深く考えさせ られました。 〔講演中のスナップ〕 人権の本質をつく話の中に、時にユーモアを交えた話で生徒の表情もなごみます。 「差別は昔からあったもので結局世の中は変わらないという意見もあるが、若い君たちは 絶えず向上心を持って差別問題に対する考え方、 行動を改めていってほしい。差別は100% 差別する側が悪い。被差別側は何もできないのだから」という話も生徒たちが差別・偏見の 本質を考える上で非常に示唆に富んでいる内容でした。 また、戦争は歴史的に国家権力が民族の違い、宗教の違いを大義名分に行ってきたが、経 済情勢が悪いなど、 国家がうまくいかない場合に誰かをやり玉にあげて行うのが戦争である。 一番簡単なのは外国のせいにすることだという話もあり、先生の戦争やそれに関連する民族 問題に対する世界観がうかがえました。 これから21世紀も世界各地で、残念ながら地域紛争が続くかもしれないが、君たちは男 女差別(スウェーデンなどと比較すると日本は非常に遅れている)、被差別部落問題、在日韓 国・朝鮮人に対する差別など日本国内の差別問題を真剣に考え、そして行動していってほし いという話で講演を締めくくられました。 最後の大道芸の披露では、そのサーカス技の中に人を楽しませることはもちろん、その芸 を見ながら数学も、深いところでは人権も絡んでいるのではないかと感じました。あっとい うまに90分の講演時間が過ぎました。その短い時間の中でピーターさんの自由を求める人 間としての生き方も生徒たちに十分伝わったのではないかと思います。 〔講演最後のパフォーマンス〕 〈非常に難易度の高い技に体育館内が静まりかえりました。〉 最後に生徒たちが書いた感想文(一部抜粋)をいくつか紹介します。 見かけだけで色々なことを言ったりするのもある意味で差別だと思う。 (中1) ピーターさんの家族の悲惨な話は想像を絶する程だった。 (中2) 差別とは人間の心の闇というか弱さがそのまま出ている問題だと思った。(中3) 差別は人が作り出してしまったものであり、自然に存在するものではありません。(高1) 果たして人間は差別や偏見などをすっかり消し去ることは可能なのだろうか。しかし、消し 去ろうという努力こそが肝心なのだ。その努力こそが国際人への第一歩なのだ。 (高2) 文責:多田武志