...

国立大学附属病院 取組事例 【訪問調査概要】 vol.4

by user

on
Category: Documents
6

views

Report

Comments

Transcript

国立大学附属病院 取組事例 【訪問調査概要】 vol.4
独立行政法人国立大学財務・経営センター
経営相談室
病院経営支援研究会編
発行日 2011.3
国立大学附属病院 取組事例
【訪問調査概要】 vol.4
調査・相談員による訪問調査報告概要
国立大学財務・経営センターでは、各国立大学法人の経営
の改善に資することを目的に、平成18年9月から経営相談
事業を展開しており、その活動の一環として各大学の経営改
善等にかかる取組事例等について情報の収集、情報の提供を
行ってきているところです。
ここで紹介する取組事例は、平成22年度に各大学附属病
院から推薦のあった取組事例のうち、参考となりうる取組に
ついて、当センター経営相談室病院経営支援研究会の取組事
例ワーキンググループ企画委員(国立大学附属病院の職員)
が、訪問調査を行い、その概要をまとめたものです。
大学病院名
群馬大学医学部附属病院
富山大学附属病院
取り組み事例
掲載ページ
事業用借地権設定契約によるアメニティモール整備・運営事業
2~3
医薬品SPDの導入
4~5
電子媒体による診療情報提供システムの運用開始
6~7
ユビキタス医療機器見守りシステムによる医療安全管理
8~9
福井大学医学部附属病院
名古屋大学医学系・バイオ知財フェア
10~11
病棟等ESCO事業
12~13
リボンズハウスの設置
14~15
外科系外来診療の動線整備
16~17
全職種横断的なプロジェクトチームによる人材確保
18~19
病院情報システムシンクライアント端末の導入
20~21
汚水排水量測定による下水道料金の削減
22~23
入院総合相談室設置による早期退院支援
24~25
看護部における物流管理システムを活用した医療消耗材料のコスト管理
26~27
情報シートを用いた看護師長による部署管理の取り組み
28~29
名古屋大学医学部附属病院
三重大学医学部附属病院
鳥取大学医学部附属病院
島根大学医学部附属病院
鹿児島大学病院
Page 2
事業用借地権設定契約による
アメニティモール整備・運営事業
実施の目的(経緯)
昭和62年度から着手した病院再開発計画による整備計画が平成18年8月をもって 完了した。
外来診療棟(S62.6)、南病棟(H2.6)、北病棟(H13.6)、中央診療棟(H18.8)
旧放射線部棟の改修、外来棟・病棟の一部改修
患者、家族、学生及び教職員のニーズに適応した物品販売及びその他のサービスを充実し福利厚生の一層充実
を図ることを目的とした病院アメニティーモール整備計画を策定。
これについて、新たな整備手法による、事業用定期借地権設定契約に基づく事業計画として公募を実施。
実施方法等
大学が提示する諸条件に従い、売店等サービス部門の企画立案及び当該事業運営と建物建設について企画提
案方式(事業プロポーザル)により募集を実施し運営事業者を決定。
事業者に対し事業対象の土地に事業用定期借地権を設定し、賃貸借契約を締結。
(1)借地権等設定の条件
・対象土地に事業用借地権を公正証書により設定
・借地期間は20年
(2)施設建設及び建築後の維持管理、運営業務
入居者等の賃貸借料(管理費等を含む)の収入及び事業者自らの資金により施設の建設、
維持管理及び運営業務を実施
具体の成果など
大学側への負担軽減
~自己財源を投入しない建物整備
事業者自らの資金による施設の建設及び維持管理
患者サービスの向上
患者や家族等に対し、より一層の充実したサービスの提供
今後の課題
売店等の位置が今までよりも外来棟から遠くなったため、外来正面より入った患者さん等への周知
調査・相談員のコメント
資金繰りが非常に厳しい中で、自己財源を投資せずに患者の療養環境を向上させる先進的な取組事例である。
第
Page 3
1巻 第1号
群馬大学医学部附属病院
病院アメニティモール
■ 理 ・美 容 室
La Juno(ラ・ジュー ノ)
■ カフェテ リア
プ ラン タン
■ レス トラン
イタリア食 堂 Cinem a(チ ネ マ )
■ コン ビ ニ エン ス ス トア
■ サ ー ビ ス セ ン ター
■ イベン トコー ナー
ロ ー ソン 群 大 病 院 店
アゼ リア
Page 4
医薬品SPDの導入
実施の目的(経緯)
経費削減の一方策として医薬品の値引率を上げようと北陸3大学で共同購入を行
い一定の成果を挙げたものの、満足する数字に及ばず、そこで、他の方策を検討し
ていたところ、医薬品のSPD化の存在を知り、1社一括購入というスケールメリットに
期待し導入しようという機運が高まった。
そのことにより、医薬品の過剰・不動在庫を削減及び値引率アップによる医薬品
購入費の大幅な削減を図り、また、病棟・各科外来および中央診療部門等において
薬剤師及び看護師が本来の職務に専念できるよう業務の省力化を図ることができる
と考えた。
実施方法等
1)管理対象範囲:院内で採用されている全ての医薬品類
2)業 務 概 要 :病院全体の医薬品類の供給と物流管理
3)業務委託内容:
①薬剤部門の発注・入庫・払出、注射セット補助、カート搬送・回収、品質管理、棚卸し
②病棟・中央診療部門・各科外来等の定数配置の搬送・格納、品質管理、棚卸し
③日次・月次の払出状況等と半期に一度の棚卸集計表の作成
4)本院所有の電算システムを利用した請求伝票処理・出庫処理・調達請求・棚卸処理・保守・在庫管理・注射薬個
人セット補助・薬品マスター管理
医薬品SPD運用(患者セット)
Page 5
富山大学附属病院
1)管理運営体制は平日(月~金)の8:30~17:30
とし、搬送に関しては20:00まで対応する。
実施体制
2)土曜、日曜、国民の祝日は原則として業務は行
わない。ただし年末年始及び休日が4日以上継
続する場合は臨時の供給体制をとる。
具体の成果など
1)医薬品の契約単価の減額及び不動在庫
の減少により医薬品費が削減し、物流管
理業務費に充当した。
2)従来、薬剤師が行っていた発注・棚卸・品
質管理業務などや看護師が行っていた請
求・搬送業務などが逓減され、本来の業務
を拡大することができた。(薬剤師:病棟業
務の拡大(服薬指導,抗がん剤混注業務
など),看護師:看護ケアの充実)
3)払出請求と同時に業者からの請求が発生
するため、未開封の不動在庫は基本的に
請求されず廃棄薬品が減少した。
4)1社一括による複数年契約のため契約及
び支払い業務の量が減少し、事務の負担
が軽減した。
今後の課題等
1)平成23年度は契約更新時期であり、医療材料SPDと統合して契約するか別々に契約するか検討中であり、メリッ
ト・デメリットを洗い出しているところである。今後、取り扱う業者を調査(納入体制など)のうえ仕様内容等を検討して
いく。
2)現契約の仕様にある「医薬品の標準化」が思うように進んでいない。
3)1社一括契約のスケールメリットが生かされていない。(1社一括複数年契約のため、薬価改定(マイナス改定)時は
契約期間中であり競争性がないため、契約単価の交渉が難しい。)
調査・相談員のコメント
・診療科(特に病棟)の在庫(定数)が、自身の病院と比べ少ないのには驚きました。(器が小さい→沢山買うと溢れる
→購入額削減)
・在庫が少ない分、使用したらすぐ補充で賄っていますが、当然、搬送に係る人件費が発生するのも事実。しかし、な
かなか面白いスキームだと思います。
・なお、医薬品SPDは、山形大学でも平成22年度から実施(こちらは医療材料も含めた1社契約)しており、是非、効
果を伺いたいです。
Page 6
電子媒体による診療情報提供システムの運用開始
実施の目的(経緯)
福井大学医学部附属病院(以下「福井大病院」と略す)に紹介されて来た患者の診療内容等を紹介元である地域医療
機関の医師が,迅速かつ詳細に把握することにより,地域医療機関と連携した安全で質の高い医療を患者に提供するこ
とを目的とし,診療情報をインターネットを通じて地域医療機関に提供できるようにした。
実施方法等
地域医療機関がインターネット
を通じて,福井大病院に紹介され
た患者の福井大病院での診療内
容等(処方・検体検査・画像・紹介
状及び報告書)を閲覧するシステ
ムを構築し,平成22年12月現在
88病院と協定を締結して,227名
の医師を登録し運用を実施してい
る。
実施にあたっては,福井大病院
と地域医療機関が協定に基づい
て契約を締結する。そして病院毎
に登録申請を行い各病院の医師
毎に利用者IDの登録をする。利
用者には、初期パスワードを発行
し利用者IDとパスワードで閲覧す
ることができる。
日々の運用にあたっては,福井
大病院医師が連携病院へ返書を
書いた場合に,利用者が閲覧で
きるように許可の設定をする。
インターネットによる診療情報提供に係る登録申請書
実施体制
システムの運用は,医療サービス課
パート職員1名が管理している。
<職務内容>
地域医療機関との協定締結手続き、
各病院の医師毎の登録・廃止届手続
き、利用者に初期パスワード発行、
利用者が閲覧できるような許可設
定、利用者からの電話対応、利用者
への事務連絡等をメール及び郵送で
通知、システムのトラブル対応(業
者との連絡等)、利用者リスト(利
用者ID・パスワード等)及び閲覧管
理
Page 7
福井大学医学部附属病院
具体の成果など
●地域医療機関との迅速な患者情報の共有化が図
られる。
●紹介元の主治医が大学病院の検査結果等で患者
がどのような状態か把握できるため,紹介元に戻っ
た場合にも,迅速に対応できる。
●連携医師が診療情報提供書以外の詳細な情報を
迅速に把握することにより,安全で質の高い医療を
患者に提供することができる。
●24時間いつでも閲覧することができる。
今後の課題
●提供する診療情報に退院サマリーを追加できるよう検討中。
なお、退院サマリー等を提供する場合には,他の医療機関
からの閲覧を前提とした記載となっているかを検証する。
●閲覧できる情報をどの範囲まで拡大するのかを検討する。
●閲覧管理を簡素化する。
●現在は,インターネットを通じて情報を閲覧するだけなので,
今後両方向で患者に関する情報交換(相談)が行えるように
出来ないか検討する。
調査・相談員のコメント
●大学病院へ紹介した医師が、紹介先で患者がどのような診療を受けたのかがつぶさに分かる画期的なシステム
だと感じました。
●他病院でも十分実現できるシステムだと思います。
Page 8
ユビキタス医療機器見守りシステムによる
医療安全管理
実施の目的(経緯)
医療用ポンプ,心電図モニター,人工
呼吸器等のアラーム音が物理的に聞こ
えない状況や聞き逃しが起こり得るた
め,聴覚に著しく偏った従来の警報発信
方法に加えて高度化した発信方法が求
められている。また,医療用ポンプの医
療事故の分析では,流量設定間違いに
よる警報など,ポンプ単体ではアラーム
が出せない警報情報が必要であること
が明らかになった。しかし,このような通
信機能を持った機器及び医療用ポンプ
は,日本では販売が認可されていないこ
とから,福井大学医学部附属病院では
自主開発を行うこととした。
【設計のプロセス】
実現方法として,アラーム信号出力機能を備えた医療機器等に無線通信機能を有する電池駆動の超小型端末を取
り付け,従来のアラーム情報に加え,電子カルテのオーダと機器の設定の比較を行い,異常があれば即座にナースス
テーションなどに設置した集中表示装置や個人用端末にアラームを発報することで,医療事故を未然に防ぐための迅
速な警報対応行動をとることが可能になるシステムを開発した。
実施方法・実施体制等
院内の様々な部門が一丸となり,ZigBee無線通信機能を有する超小型無線端末を自主開発することで,アラーム情報の
収集と利用を可能とした。輸液ポンプ,シリンジポンプの外部通信端子にバッテリー駆動の小型無線端末を取り付け,機
器の異常や動作状況をナースステーションに設置した集中表示装置にてモニタするシステムを開発し,これによりナース
ステーションから離れた病室において輸液ポンプのアラームが発生した場合,患者からのナースコールを押される前に看
護師がアラームを察知することが可能になった。また,薬液の残り時間がリアルタイムで表示されるため,予め余裕をもっ
た行動が可能になり,看護師の負担が軽減できる。平成22年度は,病棟にて約20台のポンプに取り付け病棟レベルの
中規模実証試験を行い,医療事故を未然に防ぐための迅速な警報対応行動をとることが可能になるかを検討した。
画面の一例
「機器一覧」画面
シリンジポンプの「残量」
アラームの警告表示画面
「流量表示」画面
Page 9
福井大学医学部附属病院
具体の成果など
●患者・現場の声
患 者:自分でナースコールを押せない場合でも素早く看護師が来てくれるようになった。
付添者:病室から一時離れる時の不安感がなくなった。
看護師:エラー内容が病室に行く前に分かるようになったので,あらかじめ準備して段取り良く作業が進むようになった。
シリンジポンプが低流速の設定であっても正確な残り分が表示されるので,次の輸液の準備を先に済ませて
おくことで,無駄なナースステーションと病室との往復が減らす事ができた。
ME部門:機器の稼働状況の記録データが,機器内のメモリ量に左右されず記録できるので,機器の管理を効果的に行
う事ができた。
●第4回医療の質・安全学会学術集会で発表し,ベストプラクティス賞を受賞した。
●平成22年度厚生労働科学研究費補助金(地域医療基盤推進研究事業)にユビキタス医療機器見守りシステムが採択
された。
●医療機器モニタリング装置「有」の場合,アラーム対応までの時間が平均1分42秒短縮した。
●輸液ポンプ・シリンジポンプのアラーム情報を看護師が知ることで,アラーム発生から対応までの時間が減少し,看護師
の余裕を持った対応や患者・家族の安心・信頼に繋がることが示唆された。
今後の課題
【展望】
●病院内電子カルテと連携して,入力の手間をなくし,より使いやすいシステムの構築を行う。
●ユビキタス通信インフラを拡充し,患者が安心して院内を歩けるユビキタス見守り環境を整備する。
●各種データと連携させることで,医療安全の分野のみならず,医療機器の管理にも役立て,トータルコストの低減を目
指す。
●院内全体へシステムを拡充するには,財源確保が必要である。
●医療機器等のアラームに加えて稼動データや人の位置情報が自動的に記録できるため医療版フライトレコーダーとし
ての利用も可能になり,このデータを解析することで,迅速で正確な医療事故調査に役立ち医療の透明性確保が可能
になる。その結果,信頼性の向上に繋がり医療の質と安全を高めることが出来る。
【現場の声より(運用面)】
●実証試験中に本システムに慣れた患者や介助者の一部では,ナースコールを押さなくても看護師がすぐに来てくれる
ので,安心してナースコールをアラーム発生直後に押さなくなる傾向が見られた。
●集中表示装置のアラーム音は,患者が勝手にポンプを操作し警報を解除しても,ナースステーション側で保持され鳴り
続けるので,看護師が装置の解除をナースステーションに戻って行う必要がある。安全を考えてこの様に設定したが,
看護師が発生源近くに居た場合は,無駄鳴りとなるので改良する必要がある。
調査・相談員のコメント
●アラームを「聴覚」以外に、「視覚」でも認識できるようにした事
は素晴らしいと思います。
●海外では標準的な機能も、国内では認可の問題からできなか
ったところ、自主開発で実現したことも価値があると思います。
●どこの病院でも真似できる代物ではありませんが、国内の多く
の病院でも実用化されることを望みます。
ユビキタスとは?
情報通信の利用を拡大させる中で出てきた言葉。それが何であるかを意識させず(見えない)、しかも「いつでも、どこでも、誰で
も」が恩恵を受けることができるインターフェース、環境、技術のこと。
あらゆる情報端末(医療機器も含む)がICチップを登載した有線・無線の多様なネットワークにより接続され、いつでもどこから
でもさまざまなサービスが利用できるようになる。
Page 10
名古屋大学医学・バイオ系知財フェア
実施に至った経緯
未公開特許
大学病院の使命3本柱は「教育」「研究」「診療」である。名古屋大学では
法人化後、研究活動の中で、多数の論文を発表したり、医学・バイオ系特
許を250件近く出願するなどしているが、経営改善係数対応に追われるあ
まり、「研究」機関としての大学病院についてアピール不足である面は否
めなかった。
そこで、企業などに研究内容・特許内容をアピールするとともに、新たな
共同研究や製品開発に繋がっていくことを期待し、医学・バイオ系の未公
開特許情報の公開をメインとした「名古屋大学医学・バイオ系知財フェア」
を開催することとした。平成20年度に第1回目を開催し、22年度で第3回目
となる。
特許出願はされているが、まだ
公開されていない発明のこと。通
常、特許出願の内容は出願から
1年半で公開されるため、出願か
ら、1年半未満の発明を指す。未
公開特許については特許調査を
することはできないが、早期の技
術移転などを目指して、独自に
未公開特許を公開する大学・研
究機関が増えている。
実施内容
講演者や展示方針などを検討する委員会を立ち上げ、開催までに4回
の委員会を開催した。
委員会の中で、3回目となる今年度は東海地区の医学・薬学系大学(7
大学)に呼びかけ、新たに創出された特許(47件)および技術移転可能
な成果有体物などを展示することとした。
【概要】
開催日時:平成22年12月17日(金)14:00-18:00
開催場所:医学部附属病院内 講堂
開催内容:講演の部(医療・創薬研究の成果、企業から医薬品研究開
発の問題点など)
展示説明・個別相談
交流会
【実施に伴う予算】
総額 約240万円
内訳
会場費・看板装飾費
電気工事費
印刷費
講演謝金など
その他
91万円
75万円
48万円
8万円
18万円
委員会メンバー
病院長
研究科長
産学連携担当教員
名大産学連携推進本部
知財部
TLO関係者
関係事務職員
Page 11
名古屋大学医学部附属病院
具体的な成果
第3回知財フェアの参加者は医薬品メーカー
等の研究者・研究企画担当者を中心に254名
であり、非常に盛会であった。
しかし、受託研究・共同研究契約締結などに
至った事例は開催から日が浅く、まだ具体的な
成果としては表れてはない。しかし、知財フェア
で紹介した特許等に関する企業からの問い合
わせは数件来ており、今後、受託研究・共同研
究契約締結や特許の実施許諾契約に至ること
が期待される。
なお、これまでの知財フェアの結果として、受
託研究・共同研究の契約が4件締結され、研究
に着手している。
上記のほか、産学連携の成功事例などを踏
まえた講演を実施することにより、研究者と企
業側の双方に産学連携に向けた意識付けを
行っている。特に研究者に対し、“出口”を見据
えた研究という意識付けることは、今後の産学
連携の発展にとって大きなプラスになると考え
られる。
実施に伴う問題点・今後の課題
●
●
●
●
“名古屋”からの情報発信にこだわり名古屋大学医学部附属病院内での開催としているが、企業側の
研究者、研究企画担当者の多くは首都圏勤務の例が多く、参加者をより一層の増加させていくための
工夫が必要である。
平成22年度で3回目となり、マンネリ感を出さないよう、新しい魅力ある知的財産の発掘が必要である。
また、毎年新しい未公開特許情報を発信していることをより一層PRする必要がある。
上記の通り、毎年の知財フェア開催後、研究シーズに対する企業からの照会は多数あるが、最終的に
受託研究・共同研究、特許実施許諾にまで至る件数は少数である。今後、知財フェア開催後のフォロー
アップに力を入れていく必要がある。
コストなどの観点から病院内講堂を会場としているが、通常診療中であるため、誘導ルートなどにおい
て、診療の妨げとならないように工夫が必要である。また、その講堂自体がこのような展示用のもので
はないため、スペースが狭く、講演および展示を同じ講堂内で行うため、スケジュールの遅れが発生す
ると全体の進行に影響を及ぼし、運用方法など見直しを行う必要がある。
実施に伴う問題点・今後の課題
企業に未公開特許等を知ってもらい共同研究や製品開発に繋げていくことは今後研究活動を更に発展さ
せていく上で肝要である。研究活動を世の中にしってもらい活性化させていくためには、このような取組・
連携が今後益々必要となってくる。
Page 12
病棟等ESCO事業
実施に至った経緯
シェアード・セイビングス契約
利用者
金融機関
債務返済
融資・
リース
省エネ効果保証
サービス料支払い
エネルギーの使用の合理化に関する法律(省エネ法)による第1種指定
管理工場に指定され、年1パーセントのCO2削減が義務付けられたが、
省エネの啓発や既存設備の運用改善では達成困難であることが予想さ
れた。また、ガス単価の高騰により、既存のコージェネレーションシステム
の省エネ・低コスト効果が低下していたこともあり、新規設備導入の予算
措置が難しい中でESCO事業の導入に至った。
ESCO
事業者
【利点】
実施方法
募集要項策定委員会・提案審査委員会を設置し、各内容を委員会で審
議し、最優秀提案者決定後、補助金(国土交通省:住宅・建築物省CO2
推進モデル事業)確定後に正式にESCO契約に至る。
【事業概要】
契約形態:シェアード・セイビングス契約
施工期間:09年8月‐10年2月
※熱源交換を伴うため、施工時期が限定される
・ESCO事業者が資金調達を行うた
め、金融上のリスク及び初期投資
が不要。
・設備や工事に伴う費用(サービス
料)は 光 熱 水 料 削 減 分 で 賄 う た
め、直 接 の 支 出 は 発 生 せ ず、
サービス料を支払った残りは利用
者の利益となる。
⇔ギャランティード・セイビングス契約
事業体制
名古屋大学
事業期間:9年(10年4月より開始)
省エネルギー率:20.6%
CO2削減率:21.0%
本事業におけるESCO事業体の役割
●事業資金調達
●省エネルギー設備導入工事
●エネルギー削減保証
●設備運転、監視、点検、計測・記録
●設備の維持管理
●施設の運転管理
三菱UFJリース株式会社
(事業代表者・資金調達担当)
三機工業株式会社
(設計・建設担当)
ESCO事業体
株式会社トヨタエンタプライズ
(施設管理担当)
パッシブリズミング空調
省エネルギー手法
1.冷却排熱回収システムの導入
(改修前)冷水・温水・給湯を個別に製造、冷却排熱は大気に放熱
(改修後)冷水・温水・給湯を総合的に製造、排熱の大気放熱ゼロ
2.高効率熱源設備の導入
室内環 境測定(温度・炭酸 ガ ス)を
行いながら、室内の快適性を損なう
ことがないよう空調機を周期的に運
転・停止させて搬送動力を低減する
システム。動力の大きい空調機ほど
導入効果が大きい。
高効率チラー・ボイラを導入し、負荷に応じた台数制御を実施
3.ポンプ類インバーター制御の導入
自動自然換気システム
ポンプをインバーター制御にすることで搬送動力を低減
4.建築的省エネ手法などの導入
自動自然換気システム、パッシブリズミング空調、遮熱フィルムの導入
5.コージェネレーションの停止
メンテナンスコストも含めた運用見直しの結果、システムを停止
6.ESCO事業者による建物全体施設管理
既存設備も含めた建物全体の施設管理をESCO事業者へ委託することで、
トータル的な省エネルギー管理が可能に
中診棟西面の吹き抜け階段室の窓
ガラスを改修。上部および下部に電
動窓を設置し、温度センサー・風雨
センサー制御およびタイマー制御に
て開閉させる。ドラフト効果により上
昇気流が発生し、自然換気が行わ
れ、温度の上昇を抑制する。
(改修前)50℃→(改修後)35℃
Page 13
名古屋大学医学部附属病院
ESCO事業者による建物全体施設管理について
通常では、ESCO事業により導入した機器について、運転管理者は置かず、運転指導を行いながら計測検
証を行うのが一般的である。
しかし、既存設備を含めた建物全体の施設管理をESCO事業者で行うことで、既設部分を含めたトータル
的な省エネルギー管理の実現、およびそれに基づく省エネルギー・CO2削減に関する包括的なPDCAサイク
ルの確立を目指した。このような管理運用型ESCO事業の取り組みは国内初となる。
ESCO事業者とは毎月、計測検証結果の定例報告会を開催し、進捗状況の把握にとどまらず、異常処置の
工数把握など、施設管理全体の見える化を推進する。
施設運営
・日常管理
・チューニング
・設備保全
遠隔管理システム
機能強化
・エネルギーの使用
・コストの発生
◎エネルギー計測システムの最大活用
◎ESCO事業者による最適運転管理
フィードバック
BEMS
internet
ESCO事業者
による
状態監視
実 施
施設運用変更
省エネルギー手法実施
計 画
施設運用改善
追加省エネルギー手法の立案
解 析
現状解析
改善点の抽出
※BEMS:Building and Energy Management Systemの略。センサー・メーターなどによりエネ
ルギー使用状況や設備機器の運転状況を自動的・一元的に把握するシステム。
具体の成果など
本事業によるCO2削減予定量は7,090t/年であり、初年度となる平成22年度の達成率は90%前後となる見込
みであり(猛暑の影響による)、一方、光熱水料については、21年度ベースで、削減達成分よりESCOサービス
料を除いても2000万円程度の経費削減となる見込みである。
さらに、契約満了後にはESCO事業で導入・更新した設備は大学所有となる予定であり、自己資本の支出なし
で設備の更新・取得を行ったことになる(導入設備の耐用年数は15年程度)。
また、ESCO事業者による施設管理を導入したことで、省エネ推進の役割が強く表れ、実際に定例報告会の
中で省エネルギー・施設管理の両面から多くの改善提案がなされ、省エネルギー改修による効果以上の削減
が期待されている。
実施に伴う問題点・今後の課題
●
●
●
●
●
●
ESCO事業そのものが浸透しておらず、学内各部署への説明や理解を得るのに多大な労力を費やした。
既存のエネルギー計測ポイントが少なかったため、詳細な現状把握ができていなかった。このため、ベー
スライン設定や削減の計画、試算に時間を要した。
補助金獲得の有無でESCOサービス料に影響が生じるため、補助金獲得がESCO事業のカギに。(獲得し
た「住宅・建築物省CO2推進モデル事業」は設備投資にかかる費用の1/2を補助)
熱源交換を行うため、空調利用が比較的少ない中間期に交換を実施。また、病院機能を止めずに導入・
調整を行う必要があり、時間を要した。
エネルギー源を電力中心へシフトすることになったため、複数年契約を締結していたガス会社との間で契
約変更に伴う精算が発生することになった。
大学全体での削減目標引き上げに伴い、さらなる削減策が必要になる。管理運用型ESCO事業として、さ
らなる副次的効果を生み出すことができるようPDCAサイクルの継続に今後の期待がかかる。
調査・相談員のコメント
本事業は、新規導入設備の予算措置が厳しいなか、ESCO事業者に資金を調達してもらい、光熱水料削減
分で導入コスト分の支払いと運転管理業務が行える画期的な手法である。(補助金獲得も大きな要素となる)
Page 14
リボンズハウスの設置
実施に至った経緯
がん診療連携拠点病院には、「院内外のがん患者およびその家族並びに地域の住民および医療機関な
どからの相談等に対応する体制を整備する」ことが求められている。また、がん対策基本計画では、相談員
に関して「がん患者の生活には療養上の様々な困難が生じることから、適切な指導助言を行うため(中略)
十分に経験のある相談員と患者団体等との連携について検討すること、また患者本人はもとより家族に対
する心のケアが行われる相談支援体制を構築すること、当事者が、心の悩みや体験を語り合うような自主
的な活動を促進することを検討すること」が望まれると明文化されている。
三重大学医学部附属病院では、三重大学がんセンターの中に患者支援部門がおかれ、医療ソーシャル
ワーカー、がん看護専門看護師、臨床心理士などによるがん相談や、患者家族による自主的な活動を促進
するために患者会「なごみサロン」を企画実施するなどしてきたが、そのような活動の中で、患者家族が自由
に気軽に集える場所も病院内に必要であるという声が高まっていた。
このような状況の中で、病院長が理事を務めている関係で“治療と生活をつなぐ”をテーマにリボンズハウ
スの開室を全国的に展開しているNPO法人キャンサーリボンズの活動を知ることとなり、がんセンターの患
者支援部門としてリボンズハウスを開室することとした。三重大学でのリボンズハウス開室が国立大学とし
ては初めてのものである。
キャンサーリボンズ
実施内容
外科系外来の動線整備のための診察室改修の一環として、リボンズハ
ウスのスペースを捻出し、外科系外来の一角に平成22年1月26日に開
室。開室に係る費用は外科系外来の動線整備に係る診察室改修に含む
(自己収入)。
後述のイベントなどに使用するほか、外来通院時の休憩や患者同士の
交流などの場としてスペースを提供している。間接照明や木製家具、
BGMの導入など、診療業務の中心として機能性が重視される診察室とは
全く趣の異なる環境にし、来室者がくつろげるような雰囲気作りを行って
いる。また、三重大学病院の通院患者・入院患者に限定せず、広く開放
を行っている。
開室時間:月曜日~金曜日 9:00~16:00
人員配置:事務職員1名常駐
症状や副作用のケアなど治療に関
わるケアにとどまらず、精神面での
ケア、美容面でのケア、さまざまな
リラクゼーションなど、がん患者さん
が「少しでも心地よい自分らしい生
活」を送れるような「治療と生活をつ
な ぐ」情 報 の 提 供 や 具 体 的 な サ
ポートを目的としたNPO法人。平成
20年6月発足。
キャンサーリボンズHP
→http://www.ribbonz.jp/
Page 15
三重大学医学部附属病院
情 報 提 供
国立がんセンター等からのパンフレット類、市民向け公開講座などのチラシ、
相談窓口案内など、がん患者・家族にとって有用と思われる情報を常備する。
また、インターネット環境を用意し、自由にネットワーク上の情報にもアクセス
できるようにしている。加えて、信頼できる情報源を用意・推奨することで、患者
の混乱を招かないよう注意するとともに、パソコン操作に不慣れな方のために
操作を手伝うことができる人員も配置している。
この他にも約200冊の図書を設置し、貸し出しを行っている。自らの病気を知
りたいというニーズに応えるためのがん関連書籍だけでなく、気軽に読める一般
図書も常備する。
“治療と生活を繋ぐ”
イベントなど
が ん 相 談
患者・家族の交流の場として以前より開催していた
「なごみサロン」をリボンズハウスで開催し、患者・家
族同士で語り合い、支え合うことを目指す場となって
いる。
また、「岩手ホスピスの会」から取り寄せたタオル
帽子(抗がん剤治療による脱毛がある患者さん用の
タ オ ル 地 の 帽 子)の 型 紙
をもとに職員・ボランティア
でタオル帽子を作成し、リ
ボンズハウスにて配布し
ている。また、「おしゃべり
しながらタオル帽子を作ろ
う会」といったイベントも開
催している。
来室者より相談した
い旨の申し出があった
場合に、内容に応じて
医療ソーシャルワー
カー、がん看護専門看
護師、臨床心理士など
の適切な職種へ繋い
で相談に応じている。
また、毎月1週間、緩
和ケアチームメンバー
の協力を得て、日替わ
り相談週間を設定して
いる。
具体的な成果
利用者数などは以下の通り。
利用者数:2376人(月200人前後)
図書貸出件数:176件(月15件)
タオル帽子利用数:520個(月44個)
タオル帽子寄附数:553個(月47個)
各種イベント:コンスタントに参加者あり
利用者の方々からはリボンズハウス来室およびイベ
ント参加などを通じて、「治療に前向きになれた」、「気
持ちが和んだ」といった声が寄せられている。
また、地元メディアに取り上げられるなどした結果、
院外からの利用者もあり、がん診療連携拠点病院と
しての役割を果たすのに一役買っている。
実施に伴う問題点・今後の課題
●
●
リボンズハウスに立ち寄れば気軽に相談できるとい
うメリットはあるものの、相談対応スタッフは通常業
務を行いながらの対応となるため、突然の相談希望
にはタイムリーに対応できないこともある。対応でき
ても通常業務を中断しての対応となっている。これ
から、予定された相談週間以外での相談対応体制
の整備は今後の検討課題である。他のリボンズハ
ウスではウィッグ説明会や音楽療法、セルフエステ
といった多彩なプログラムを実施しており、それらを
参考にプログラムを増やしてきたいと考えている。
一方、予算やボランティア確保といった問題は今後
の課題である。
他のリボンズハウスとは報告会などの連携体制は
あるが、その強化も今後の課題である。
調査・相談員のコメント
がん診療連携拠点病院の整備として先駆的な取組だといえる。がん患者本人、家族に対する心のケアを実施
するスペース、悩みを語り合う、自主的活動を推進する場所を提供することは非常に大事な取組であり、今後病
院再開発でがん診療棟に移転し益々発展することを期待する。
Page 16
外科系外来診療の動線整備
実施に至った経緯
外科系外来においては、診察室が各診療科に割り当てられ、受付・診療を各診療科で行っていた。このよ
うな状況の中で臓器別外来診療を導入したこともあり、診察室不足に加え、看護師・クラークの効率的な配
置ができず、動線も非常に複雑なものになっていた。
さらに、建設から30年が経過した外来診療棟には中待合がある構造になっており、個人情報保護等の観
点から中待合の使用を中止したため、そのスペースの活用について課題となっていた。
そこで、隣接するフィルムライブラリーの改修による健診センター設置とあわせて、外科系外来診察室の
改修を検討することとし、その運用の在り方を見直すこととした。
実施内容
まず、外科系外来在り方委員会を立ち上げ、6回におよぶ委員会開催
の末に、以下の方針を決定し、工事を行うこととなった。
【概要】
● 受付窓口は一本化
各科で看護師対応→外科系外来窓口とし、クラーク3名を配置
クラークだけでは対応が難しい場合は看護師がヘルプ
● 診察室は共有化
各診察室に対し、曜日毎に使用者を割り当て
● 患者動線とは別にスタッフ動線を確保
診察室奥にスタッフ用スペースを整備
● 看護師は診療科別とせず、「外科系外来」で配置
● 工事・改修に伴う費用は自己収入で賄う(約1億円)
外科系外来在り方委員会
委員長:病院長
各科代表者1名
看護部
施設部
病院事務部経営管理課
医療サービス課
実施の工程としては、外来診療を休診せずに改修することとし、工期を
平成21年9月11日~12月25日とし、6回に分けて改修を行った。改修期間
中の診察室を確保するという観点から、第1期工程にてフィルムライブラ
リー跡を仮設診察室(5室)に改修した後に、そこを基盤として、順次引っ
越しと既存診察室の改修を繰り返し、最終工程で仮設診察室を健診セン
ターに改修した。
【改修イメージ】
改修前
改修後
廊下
14
14
14
廊下(幅広に)
廊下
25
診察室
診察室
22
診察室
診察室
10
診察室
診察室
11
診察室
診察室
11
廊下
診察室
14
中待合
スタッフ動線
14
※数値は㎡(概数)
Page 17
三重大学医学部附属病院
診察室案内表示
番号制にした診察室に対し、曜日
ごとの使用医師一覧を掲示。出張
などに伴う一時的な使用医師の
変更にも柔軟に対応できるように
マグネットによる掲示となってい
る。手前の柱は従前の廊下と中
待合を隔てる壁の名残。
廊下の様子
番号表示された診察室が並ぶ。また、改修により
廊下が広くなったこと、待合スペースを増加させた
ことにより、待合者の混雑が解消された。
具体的な成果
本改修に際し、健診センターやリボンズハウスの設置もあり、診察室数は21室から20室へ減少した。しかし、
診察室を共有化し、曜日毎に使用者を割り当てる方式をとったことで、手術日に空き部屋となることがなくな
り、診察室不足の問題も解消された。また、窓口の一本化、全診察室の案内表示の設置などによる患者動線
の整備により、患者案内がスムーズになった。
さらに、診察室改修による動線整備の結果、一人の看護師が複数の診察室を担当できるなど、看護師をより
効果的に配置することが可能となった。これに伴い、看護師を各診療科付から「外科系外来」付にし、現在は
11名の看護師で外科系外来を担当している。あわせて、各看護師には専門となる診療科に加え、ローテーショ
ンで他の診療科の看護も担当することとし、看護師の能力向上の一助にもなっている。
実施に伴う問題点・今後の課題
●
●
通常通りの診療体制を維持したまま改修を行ったため、診察室の変更が相次ぎ、改修期間中は患者さん
に迷惑をかけることとなった。また、21室の診察室に対し、5室の仮設診察室を基盤に順次改修を行った
ため、工期が長期化してしまった。
診療科別の看護師がいなくなったため、医師との連絡調整が困難という課題が発生した。医師の協力・理
解を求めつつ、看護師やクラークの増員といった対策を検討する必要がある。
調査・相談員のコメント
中待合を無くしスタッフ動線をつくり外科系の受付を1本化させることで、看護・事務スタッフが効率的に配置
でき有効に活用できる。診療を行いながらの改修工事は工期も要するが、問題を抱え診療している該当大
学等にとっては、ハード面、人的配置面の改善手法となる。
Page 18
全職種横断的なプロジェクトチームによる人材確保
実施の目的(経緯)
人材確保については、これまで職種ごとの採用、縦割り対応型で実施してきた。特に、地元に養成学校のな
い薬剤師、臨床工学技士、診療放射線技師については、全国公募を行ってきたが、その確保に苦慮してい
た。このため、これまでの職種ごとに縦割りで行っていた職員採用活動を見直し、病院全体で横断的に募集
活動を行うこととした。
平成23年4月に向け、募集のある医師(研修医)、看護師・助産師、薬剤師、臨床検査技師、診療放射線技
師、臨床工学技士の採用について、平成22年2月に「きらり輝く人材確保プロジェクト」を立ち上げ、横断的
チームを組織した。
病院全体で一元的、横断的な募集採用活動を行うことにより、効率的、効果的な情報発信と広報活動を展開
することが可能となった。この取り組みにより、職員一丸となって全国規模で質の高い人材の確保を目指し
た。
実施方法等
1.プロジェクト会議を開催
・H22.2月~9月 週一回 合計21回開催
・構成メンバー:病院長、副病院長、病院長特別補佐、事務部長、医師、卒後臨床研修センター専任教員、
看護部長、看護部副部長、薬剤部長、検査部技師長、放射線部技師長、MEセンター長及び技士長、
リハビリテーション部長及び療法士長、栄養管理部副部長、総務課長、経営企画課長、
人事・労務管理専門職、広報係長、人事係長、経営分析係長、卒後臨床研修センター主任
2.パンフレット作成
「医師(研修医)」、「看護師・助産師」、「コメディカル」の3分
冊のパンフレットを作成。パンフレットは各3000部、合計
9000部作成し、各大学・養成学校・医療機関の約1000カ所
に送付した。
3.養成学校訪問
鳥取、島根、岡山、広島及び兵庫県内の養成学校の効率的
訪問を各部門の要望を踏まえ計画、実施した。
4.PR活動
①募集要項・ポスター作製
②駅構内にポスター掲示
:大阪駅、岡山駅、岡山県新見駅に掲示(7/19~8/6)
③新聞折り込みチラシ作成
④テレビスポット(15秒)CM
:地元テレビ1日平均2回(7/21~8/12)
⑤サイネージ(電子看板)放映:地元百貨店に設置
⑥ホームページに情報掲載
⑦鳥取大学サテライトオフィス訪問(東京・大阪)
Page 19
鳥取大学医学部附属病院
5.合同説明会
平成23年4月採用に向け研修医、看護師・助産
師、薬剤師、臨床検査技師、診療放射線技師、
臨床工学技士を対象に「全職種合同説明会」を
8月13日(金)に開催した。当日は、県内のみな
らず、東北、北陸、関東、中部、中四国、九州か
ら研修医3人を含む82名の参加者があった。ま
た、テレビ3社、新聞3社と多くの報道各社が来
院した。
6.院内における周知活動
・進捗状況を院内の諸会議で報告
・進捗状況を全職員に随時メール通知、協力依頼
・プロジェクトニュース発行:計4回、全職員に送付
具体の成果など
全職種合同説明会には、全国から82名の参加者があり、これまで確保が困難であった職種にも採用人数を全て上回
る参加者があり、優秀な人材確保に向けて大きな成果があった。参加者アンケート結果から、「直接説明をきけたこと
で不安や心配が解消された」「院内の様子が分かり理解が深まった」等の感想があったことで、参加者のニーズにも
応じることができたことが伺える。さらに、今回の取り組みを契機として院内の各部門間が連携強化を図ることができ
たことも重要な成果の一つにあげられる。
職 員の 意識 改 革
プ ロジェ クト チー ム
での 活動
モチベ ー ション、 帰
属 意識 の高 ま り
部 門間 の 連携 強化
病 院全 体
での
募 集活 動
全 職種 合同 説 明会
全 国 規模 での
募 集 活動
優秀 な人 材 の確 保
参 加者 ニー ズ
の把 握・対 応
調査・相談員のコメント
・この取組における成功の鍵は、病院長、プロジェクトチームを中心として、目標を明確にし、鳥取大学医学部附属病
院が組織一丸となって取組を行ったことによることが大きいと思われる。他の組織において実施の場合も、この「組織
一丸」ということが鍵になるのではないだろうか。
・部署によっては新たな付加業務になるため、それらの部署をフォローしてゆく体制も重要である。
Page 20
病院情報システムシンクライアント端末の導入
実施の目的(経緯)
医療情報の電子化は病院業務を遂行する上で必要不可欠となっており、
鳥取大学医学部附属病院においても2003年1月から、ほぼ全ての診療
背景:増え続けるコストとリスク
科・部門にてオーダリングシステム、電子カルテシステムが稼動している。
これら病院情報システムはPC端末、約1100台で運用しているが、年々増
加する保守、調達費用・情報漏洩の危険性が大きな課題となっていた。そ
こで、これらの問題を一元的に対応すべく、PC端末にシンクライアント端
末を導入することとした。シンクライアント端末は、ハードディスクなどの記
憶装置を必要とせず、簡易なCPUやMemoryデバイスで構成される安価な
PC端末であり、近年、民間企業を中心に採用が広まっている技術であ
る。しかしながら、医療分野におけるシンクライアント端末の導入は、大規
○業務のIT依存度の増大
○端末数の増加
・約1000台(2003~07年)
⇒それでもなお端末は不足
○保守費用の増加
○情報漏えいのリスク増加
模医療機関では実績がなく、設計の手法が求められていた。
実施方法等
病院情報システムの更新時期に合わせてSBCの全面導入を
計画し2008年1月よりシステムの約1,100台の端末において
実運用を開始した。稼働後に明らかとなった課題についても
検討を重ね、ソフトウェアの追加開発を行った。シンクライア
ント端末の設計は、医療情報部の教員、事務職員、システム
ベンダーでワーキング形式で、およそ4ヶ月間(週一回間隔)
協議した。より現場の意見を反映させるために、シンクライア
ントのデモ機を用意し、看護部による評価をおこなった。これ
らの設計は、電子カルテベンダーではなく、地域のシステム
ベンダーなどから情報提供を受け行ったため、特定のハード
ウェアで構成されることはなく、より公正な評価を行うことがで
きた。
SBC方式を用いた
シンクラインアント
システムの構築
病院情報システムにシンクライアントを採
用する手法は複数あるが、コスト面を考慮
しServer-Based Computing(以下、SBC)
方式を用いた。このSBCの手法は、従来、
PC端末が実行していたアプリケーション処
理を中間サーバで一元的に処理し、その
描画命令のみをクライアント端末に送信す
る方式をとる。
SBC実装のメリット
○Thin Client の利用が可能
・HDDが不要なためPCデータが残らない
・ウイルス・セキュリティホール対策が容
易
○SBCサーバにアプリの一元管理
・クライアント側でアプリの管理が不要
○端末の管理コスト削減
・故障率が格段に低い
・価格が安い(低性能のPCが利用可能)
なぜSBCがいままで使わ
れない?
○多様なデータ形態への
対応
○アプリケーションの検証
方法
○ベンダーの協力
○導入実績
Page 21
鳥取大学医学部附属病院
システムの構成
1)周辺接続デバイス
SBC方式ではクライアントからサーバーへの入出力制御は、キーボード・マウス情報を中間サーバへ伝達する方式をと
る。システムを利用する既存のクライアント端末では、パラレルプリンタ、バーコードリーダー、ペンタブレットなどの周辺
デバイスがあり、個々のデバイスの再設計が必要であった。プリンタはネットワーク型、バーコードリーダーはキーボード
エミュレートタイプのものに変更することにした。特に1台の端末に複数のモニタを接続している場合には、個々のモニタ
に対応する表示領域の境界がシステム上で認識されている必要がある(例:画面中央へのウインドウの配置、ウインドウ
の最大化)。鳥取大学医学部附属病院で採用のSBCソフトウェアでは、この認識ができなかったため、やむなく表示領域
を固定する方式を取った。
2)シンクライアントの調達
クライアント端末は、劣化が激しいもの以外、調達を行わないこととした。2008年度から病院情報システム用クライアント
端末は中古再生品デスクトップ用PC、シンクライアントPCを各500台ずつ採用することとした。今後デスクトップ型PCが故
障した場合は随時シンクライアントに交換するなどの措置をとることとした。
具体の成果など
・一年間の端末故障率が50%程度減少した。故障内容とし
ては、旧システムにおいては、OSの不具合やハードディスク
の障害など修理に多くの時間が必要とされたがシンクライア
ントにおいては、バッテリー交換など対応が容易なもので、
運用コストの軽減が見込まれた
・システムに関する年間の電気使用量が10%程度減少し
た。
今後の課題等
シンクライアントの全面採用は、他の医療施設においても
事例が少なく、システムやアプリケーションの障害や不具合
の対応方法が十分に確立していない。今後は、これらの課
題を整理し、障害対応マニュアルや運用マニュアルを整備
する必要があると考える。
Page 22
汚水排水量測定による下水道料金の削減
実施の目的(経緯)
島根大学医学部附属病院では、従来、下水道料金は給水量から
【汚水量の算出方法】
汚水控除施設として認定されている施設(中央機械室クーリング
タワー、焼却施設・排ガス処理冷却塔、病院玄関前防火用水池、
プールの4施設)の使用量を差し引いた水量を汚水量と見做し
(以下「見做し汚水量」と言う。)、その見做し汚水量に条例で定め
られた単価を乗じて下水道料金が算定されていた。この見做し汚
水量には、飲用、散水等により事実上、下水道に流入しない水量
・見做し汚水量=上水+井水-既存減免水量-新規減免水量
が相当量含まれているため、その下水道料金の削減を図るもの
・減量水量=見做し汚水量-実測汚水量
である。
実施方法等
事前に汚水量を実測調査し削減見込額をシミュレーションしたところ、削減メ
【業務委託料の算出方法】
リットがあったため、実測汚水量による下水道料金の請求などについて、市水
・減量金額=減量水量×下水道料金単価
道局へ請負業者から打診を行い、合意を得た。
-初期投資費用
また、下水道管の経年劣化により雨水等が流入し汚水量が増加する懸念が
(※減量金額が0円未満の場合は、不足額を請負業者
あったため、削減効果率の向上を目的として、雨水混入が懸念される箇所へ
が負担)
の色水投入やファイバースコープを使った亀裂調査など下水道管内の事前調
・業務委託料
査行い、管内補修工事等の初期投資を行った。最終汚水排水口に設置する
1)減量金額
計測機器は5年間リースで導入した。
業務委託料=リース料+(減量金額-リース料)×50%
削減額から初期投資費用の月割り額と機器の月額リース料を引いた額のう
2)減量金額
>
<
リース料
リース料
の場合
の場合
ち2分の1は請負業者の成果報酬とするが、新たな汚水控除施設の使用量を
業務委託料=減量金額
考慮した削減額を算出することや、削減額が初期投資費用の月割り額や機
(※減量金額が0円未満の場合は0円)
器の月額リース料を下回った場合は不足額を請負業者が負担するなど、本
学の負担等が発生しないこととした委託契約を平成22年1月22日付けで締
結した。また、排水流量計の管理について、1ケ月に1回の定期清掃を実施し
ている。
実施体制
従前から、上下水道料の担当を行っている係にて対応を行っている。上
下水道料は隔月支払であるため、2ケ月に一度、以下の処理を行ってい
る。
1.「排水量報告書」を請負業者から受取る。
2.データ検針し、「排水量報告書」を記入し返送する。
3.「導入効果計算書」及び「汚水量申告書」を請負業者から受
取る。
4.「排水量報告書」及び「汚水量申告書」を出雲市へ提出する。
5.リース会社から業務委託料の請求書を受取る。
6.業務委託料の支払を行う。
Page 23
島根大学医学部附属病院
具体の成果等
平成22年1月22日から平成22年11月19日までの10ケ月間において、給水量139,056㎥に対して、見做し汚水量は1
22,318㎥、計測器による実測汚水量は94,486㎥で差し引き27,832㎥の削減があり、金額に換算すると10ケ月で2,
114,690円の削減効果があった。
今後の課題等
システムの導入に当たり、地中に埋設している下水道管の管内を調査し、20ケ所の管内補修工事を行ったが、下水道
管が老朽化しており、先々雨水が混入する恐れがあるため、削減効果が減少した場合には雨水流入防止策等を検討す
る必要がある。
調査・相談員のコメント
他大学病院でこの取組を実施する場合、島根大学医学部附属
病院では、最終汚水排水口が一つであったため、水量計測機
器が単一で済んだが、最終汚水排水口が複数である場合、機
器も複数になるため、削減効果が薄くなる。
また、この排水メーターで下水道料金を算定する「実測管理」
の適用に当たっては、各大学病院がある地方自治体の認可が
必要となる。
Page 24
入院総合相談室設置による早期退院支援
実施の目的(経緯)
入院診療計画書により患者さんへ入院期間や検査、手術日程等が通知されているが、具体的な退院の計画を立てる段階に
なって、患者さんが早期退院を阻害する各種の問題を抱えていることが判ることが多くあり、退院が遅くなる原因となってい
る。このため、早い段階で支援の必要性を把握し、患者さんの不安解消、在院日数の短縮、病院の収入増を図ることを目的
として、退院支援の強化を行うこととした。その取組みとして、患者個別の退院支援プログラムを作成するための平均的な退
院支援パス「退院支援フロー図」の作成と、待合ホールの一角に「入院総合相談室」を新たに設置し、入院患者さんに対し
「入院前スクリーニング」を開始した。
実施方法等
1.入院前スクリーニングの実施に当たり、看護部と地域医療連携センターで退院支援パス「退院支援フロー図」
を作成し、入院前から始まる退院調整の共通認識を図った。
2.医師が患者に入院を説明し、入院予約を行ったらMSW(医療ソーシャルワーカー)への連絡メモが発行されるシステム
を構築した。 また、手書きによる連絡メモも可能とした。
3.スクリーニング用に退院支援問診票を患者自身で記入してもらい、MSWがスクリーニングシートにより聴き取りを行っ
た。
4.緊急入院患者に対しては、当初地域医療連携センターが48時間以内に聴取を行っていたが、その後、病棟看護師が
聴取することにした。
5.退院支援必要性の判断は,退院支援スクリーニングシートの項目のうち7項目を要支援項目とし、そのうち1つでも該当
すれば「要退院支援」とした。
問診票(改善前)
問診票(改善後)
退職支援スクリーニングシート
実施体制
1.実施は地域医療連携センターが行う。実施要員はMSWが7名、看護師2名が担当した。
2.電子カルテへの入力はMSW7名で分担して行った。
3.要退院支援の患者は、退院支援フロー図に基づき、病棟看護師、病棟師長、病棟主治医、地域医療連携セン
ター退院調整看護師長、MSWが「退院支援チーム」として役割分担による退院支援を行った。
Page 25
島根大学医学部附属病院
具体の成果等
1.入院前スクリーニングと併せて、リスクの高い緊急入院の場合は翌日にスクリーニングを行い即日患者デ
ータベースに反映させ、「要退院支援」の患者さんかどうかの情報を主治医と共有することで、院内にお
ける退院支援の開始時期が早まった。
2.患者さんを取り巻く諸問題に対し、早い段階で 関わり支援していくことで「退院支援依頼書」の件数が
増加し、支援患者に対する在院日数が短縮した。
一般病棟平均在院日数の推移(平成20年4月~平成22年12月)
20
19.8
19
18.9
18.5
18.4
18
17.9
17.8
17.7
17.3
17
17.3
16.7
17.3
17.1
17
16.7
16.5
16.7
16.5 16.6
16
15.9
16
15.1
15.3
15.6
15.3
15.5 15.4
16.1
16.3 16.2
15.6 15.5
入院前スクリーニング開始
14
今後の課題等
1.入院患者全員をスクリーニングすることは費用対効果が伴わないため、効率的なスクリーニングの方法や、患者さ
んとMSWにとって負担が少なく、また、抵抗なく受けてもらえるスクリーニング方法などを検討する必要がある。
2.スクリーニング結果や退院支援に関するデータの活用がまだ不十分であるため、データの一元的管理システムを
構築する必要がある。
3.スクリーニングでは、プライバシーを確保する必要があるため、相談室のスペースの効率的な利用法や拡充を検
討する必要がある。
4.スクリーニング結果を医師が電子カルテ上で必ず確認する方策や,電子カルテ閲覧時に見落とさないようなインタ
ーフェースを検討する必要がある。
5.スクリーニング実施率が5割程度に留まっているため、実施率の向上を図る。
6.退院後の受入れ先となる後方病院との連携を強化し,退院支援の円滑化を図る。
7.院外との連携を取り入れた退院支援フロー図の改善とその活用を推進する。
Page 26
看護部における物流管理システムを活用した
医療消耗材料のコスト管理
実施の目的(経緯)
鹿児島大学病院では、平成3年度から物流管理システムを稼働させ、医療消耗材料を標準化し、経費削
減に取り組んできたが、コスト管理意識の低さやベッドコントロールが推進されたことにより、各部署が同じ
医療材料を個々に抱え込み、デッドストックや材料の廃棄が多数発生していた。
このような状況に対し、副看護部長業務担当や業務・経営改善委員会を中心に、以下の2点に取り組んで
いる。
①使用数量の少ない医療消耗材料のキーステーション化
②部署ごとの医療消耗材料の使用状況の徹底的なモニタリングと原因分析
①使用数量の少ない医療消耗材料のキーステーション化
・使用頻度の少ない医療消耗材料を特定の病棟にストックする「キーステーション化」を実施。
これにより、病棟ごとで在庫を抱えることによる余剰在庫(デッドストックに繋がる)となることを阻止している。
・キーステーション化する医療消耗材料は、管理基準を設け設定。材料一覧をリストにしたうえで各病棟に配布
している。キーステーション方式で扱う品目は年々増加しており、現在は46品目である。
<キーステーション化実施>
平成19年5月:部署毎の医療消耗材料の使用頻度別(年単位・月単位・週単位)請求品目調査実施
平成19年8月:請求頻度の少ない品目(15種類46品目)のキーステーション化を検討
平成19年11月~:キーステーション化に伴う部署・基準・手順の検討を行い、キーステーション化実施
以後毎年、キーステーション実施後の部署保有医療消耗材料の調査を継続実施
・キーステーション方式の導入により、医療消耗材料の品目数、金額とも削減が進んでおり、病院経営への貢
献が目に見える形で表れている。
<管理基準>
ア.使用頻度が少なくかつ複数の部屋で保有している品目
イ.1箱単位の個数が多く期限切れになりやすい品目
ウ.コストの高い品目
Page 27
鹿児島大学病院
②部署ごとの医療消耗材料の使用状況の徹底的なモニタリング
・医療材料は目覚ましいスピードで進化し続けており、適切なコントロールなしではすぐにデッドストックと化
してしまう。そこで、看護部では副看護部長業務担当を中心に、物流管理システムから抽出したデータを
最大限活用し、 業務・経営改善委員会とも連携のうえ医療消耗材料のデッドストックをなくすことに力を
入れている。
・部署ごとの医療消耗材料の使用金額・前月比・品目別使用量について業務・経営改善委員会を通じ院内
に配信。2ヶ月連続で使用量が増加した場合、原因分析を行っている。
・数値による厳密な管理と原因分析を徹底することで、やりっぱなしではない、確実な改善に繋げている。明
確なタイムスケジュールと目標管理が奏効しているものと思われる。
・データは院内の統計システムを活用して抽出している。事務部門との連携も行われており、事務部門もス
ピード感を持ってデータの提供を行っている。看護師による棚卸しが毎月実施されており、この結果、ある
部署で不要在庫(=使用期限3ヶ月未満の材料あるいは今後使用予定のないもの)となった材料は、業務
・経営改善委員会を通じて 必要部署へ早期移管を行っている。SPDシステムのないなか、毎月の棚卸し
を実施し、上記改善努力を続ける労力は相当なものと思われる。
具体の成果
●平成20年度の8月から棚卸後の月別不要在庫の報告は0
●医療消耗材料使用金額:19年度比588万円の節減(H19年1~12月と20年の同時期の比較)
●部署保有延べ品目数減少:7530(H19.5)⇒6732(H20.1)
●使用頻度の少ない年単位請求延べ品目減少:1502(H19.5)⇒1271(H20.1)
問題点、今後の課題等
・キーステーション化によるリスクについても認識がされている。すなわち、キーステーション病棟では看護
師が常に最新の材料に関する知識を有する一方、キーステーション以外の病棟看護師は当該材料につ
いて知識不足・理解不足となりやすくそもそも使用頻度の少ない材料がキーステーション化により、接す
る機会がさらに少なることが一因。)、医療消耗材料の取扱いにおいて安全上の問題が生じる危険性が
あることが認識されている。
⇒新商品に対する(取り扱い説明など)情報の共有化、安全に対するシステム作りが必要
・本取り組みには否定的な意見もある。煩雑な医療消耗材料の管理を、何故看護部門が引き受けなけれ
ばならないのか(病院全体として取り組むべきではないか)という意見である。モチベーションの低下を見
せる病棟もあるとのことであった。
・データ・情報提供は充分あるが、それらを分析しマネジメントを行う管理者の能力をさらに向上させてゆく
必要がある。
Page 28
情報シートを用いた看護師長による
部署管理の取り組み
実施の目的(経緯)
鹿児島大学病院では、2003年からSWOT分析を用いた目標管理を開始し、褥瘡発生率、インシ
デント発生率、病床街道率、在院日数などの個々の情報を、部署の管理者(看護師長・副師長)
が把握できるようになった。しかしながら、次のステップとして、部署の管理者の総合的なアセス
メント評価ができる能力、マネジメント能力の向上という課題が新たに浮上した。
そこで、「部署管理者のマネジメント能力を高める」ことを看護部目標に掲げ、部署管理に必要
と思われる様々な指標を盛り込んだ「情報シート(病棟運用状況表)」を作成し、部署管理者がそ
れに記入、分析することによりマネジメント能力の向上を目指した。
情報シート
・指標は大きく「人員配置」「病床管理」「質管理(安全)」「質管理(感染)」
「質管理(褥瘡)」「患者管理(看護度)」「設備・物品管理」「患者満足度」
などのカテゴリに分かれ、その中に複数の指標が置かれている。
・情報シートにはコアとなる共通指標に加え、病棟ごとに個別に設けられ
た指標も存在する(よって指標の数は病棟により異なる)。
病院としての目標、看護部としての目標のほか、各病棟がその年に重
点を置く目標が指標化されている。指標の数は病棟により60~80程度
ある。
実施体制
・部署の管理者グループ(師長1名・副師長3~4名)が一ヶ月ごとにデーター収集し記載する。
・1回目のヒアリングで管理室(看護部長・副看護部長4名)が参加し、情報シートの分析を行
い、年度の目標と照らし合わせて部署の課題を明確にし、部署目標を確認する。不足の情
報がある場合情報シートに追加を行う。
・情報シートは、カンファレンスや掲示板等で掲示し、全職員が目標や現状認識を共有できる
ようにしている。
・師長会や年2回実施する目標管理発表などを通じ、モデルとなる事例を全部署に知らせてい
る。
Page 29
鹿児島大学病院
具体の成果など
・データ・数字をまとめるだけでなく、そこから何を読み取り、何を工夫する
かが看護管理部門から看護師長に期待されている(マネジメント能力の
向上)。かつてはこの点について師長ごとの取り組みに温度差が見られ
たようであるが、2010年度より、全病棟でアセスメント評価ができるよう
になった。
・情報シートの作成は看護師長のマネジメント力の向上が第一義であった
が、病院全体の取り組みにも活用されるようになってきている。例えば、
病院の収入増のため在院日数短縮に向け、医師も参加する病棟会議で
情報シートは活用されることとなった。情報シートのデータを共通言語に、
医師と協力しながら平均在院日数短縮のための対策を検討することが可
能となっている。情報シートが当初意図した以上の機能を果たすことにな
り、一部門の取り組みが病院全体へと拡がっていることは好ましいことと
思われる。
調査・相談員のコメント
・この取り組みを通じ、病院長から表彰・インセンティブ付与がなされたとのことであった。病院
長から看護部門が評価・表彰されることに至ったことは、取り組みを進めてきた中で非常に大
きなことであったとの看護部長のコメントがあった。きちんと仕事をしたことに対し褒めることは
重要であろう。
・一方、指標の数がやや多く、細かすぎるのではないかとの印象を受けた(指標は年を追うごと
に増加傾向にあるのではないか。)。また、指標が一律に扱われているようであった。必要な
情報を網羅することのメリットから、今後は全ての指標を同じように扱うのではなく、優先度を
つけていくことが、「情報シートを用いた看護師長による部署管理の取り組み」を進めるうえで
必要ではないかと感じた。
「看護部における物流管理システムを活用した医療消耗材料のコスト管理」「情報シートを用
いた看護師長による部署管理の取組」の訪問調査を通じて、鹿児島大学病院においては、看
護部門および業務・経営改善委員会を中心に、これを支える各部署の取り組み・システムが有
機的に結びついて、病院経営・運営を進めている状況が確認できた。なかでも、看護部の貢
献度、経営への意識の高さがよくわかる訪問調査であった。
◎病院経営支援研究会
○調査・相談員(取組事例担当)
櫛山 博
(東京大学副理事・医学部附属病院副院長・事務部長)
國友 陵一
(福井大学病院部経営企画課長)
○取組事例ワーキンググループ企画委員
三上 智之
(筑波大学病院総務部経営企画室専門職員)
荘野 典文
(東京大学医学部附属病院事務部経営戦略課経営企画チーム主任)
橋本 直樹
(東京医科歯科大学医学部管理課専門員)
永家 清考
(名古屋大学医学部・医学系研究科経営企画課経営分析主幹)
齋藤 英雄
(愛媛大学医学部経営管理課総務チームリーダー)
国立大学財務・経営センター
〒101-0003
東京都千代田区一ツ橋2-1-2
学術総合センター10F
電 話:03(4212)6311、6312
FAX :03(4212)6600
Email [email protected]
経営相談室
スタッフ
室 長 伊東
係 長 関根
係 員 中野
係 員 松本
陽子 (経営支援課長)
克利 (経営支援課経営情報係長)
聖一郎(経営支援課経営情報係)
望
(経営支援課経営情報係)
Fly UP