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Science Signaling 日本語版ダイジェスト vol.10
オリジナル論文を掲載
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科学情報を電子媒体で毎週お届けします
Science Signalingは、ダイナミックな細胞情報伝達分野において画期的な研究と論評に関する最新情報を研
究者に提供しています。基礎科学から治療開発、分子からネットワークおよびシステム設計まで、研究者、教
細胞制御の分野で
影響力の大きな
研究:
• 生化学
• 生命情報科学
• 細胞生物学
• 開発
• 免疫学
• 微生物学
• 分子生物学
• 神経科学
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• システム生物学
発行元
American Association for the
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発行日 2011 年 7 月
員、学生の方々に毎週最新の情報をお届けします。
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内容
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最近発表された研究と方法についての科学者による見解
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細胞情報伝達における最新の研究成果を要約した専門家によるレビュー論文
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細胞情報伝達用語と定義の用語集
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編集者が紹介する論文記事
使いやすいツールとリソース
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コミュニティーセクションには、オンラインフォーラム、イベントカレンダー、デジタルミーティング
によるプレゼンテーション、細胞情報伝達コミュニティ・ディレクトリ、電子レターなどが含まれ、著
者、研究者、専門家、学生を結びつけます。
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るガイダンス、仕事検索ツール、シグナリングをテーマにしたポッドキャストなどが含まれます。
」は、検索、引用文献、キーワード、または著者アラートなどの保存、情報管理
』の情報源をより効率的に使用するためのツールを個人向けに提供します。
編集委員会
Michael B. Yaffe, M.D., Ph.D.:学術編集主任、David H. Koch Institute for Integrative
Cancer ResearchおよびMassachusetts Institute of Technology生物学准教授
Nancy R. Gough, Ph.D.:米国科学振興協会(AAAS)編集者
編集委員会、レビュー編集者委員会、バイオインフォマティクス委員会の一覧表については、
次のウェブサイトをご覧ください。http://www.ScienceSignaling.org/about/edboard.dtl
サイトワイド法人向け年間購読
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週刊オンライン版、毎週火曜日発行、年間51回刊行 ISSN: 1937-9145
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月刊プリント版(オンデマンド印刷) ISSN: 1945-0877
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にも準拠しています。
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+1-202-326-6730(米国外)
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発行日 2011 年 7 月
2 Science Signaling 日本語版ダイジェスト vol.10
ScienceSignaling.org
Editorial Guide
Focus Issue:代謝シグナル
Focus Issue: Metabolic Signals
Wei Wong1*
代謝には、巨大分子や細胞、組織を作り上げる同化過程と、細胞または組織の
がん細胞は、無秩序な代謝の特別な一例である。酸素の存在下で、細胞は通常、
構 成 要 素 を 分 解 す る 異 化 過 程 が 含 ま れ る。
酸化的リン酸化によって ATP という形でエネルギーを産生する。しかしがん細胞
で は、代 謝 と、
オートファジーや細胞ストレス応答、免疫応答、がんなどのさまざまな細胞過程
は、解糖によってグルコースからエネルギーを抽出し、得られたピルビン酸を、
および疾患を調節するシグナル伝達経路とのつながりが取り上げられている。
好気条件下でも副生成物として、乳酸に変換する。この現象はワールブルク効果
さまざまなシグナル伝達分子と経路が、栄養素の利用可能性の変化を、代謝
として知られる。
経路の出力の変更に結びつける。たとえば、Archives 内の Marshall の Review と
や解糖などの代謝経路を調節するシグナル伝達経路を説明し、これらの構成要素
Chan らの Meeting Report で報告されている通り、インスリンとインスリン様
のいくつかをコードする遺伝子の変異または不活性化によってワールブルク効果
増殖因子 1(IGF-1)経路は、対応する受容体への結合により、細胞増殖などの
が促進される仕組みを述べている。Archives 内の Research Article では Hitosugi
異化過程を促進する。しかし Boucher らは、インスリン受容体と IGF-1 受容体の
らが(Dang の Perspective も参照)
、糖分解キナーゼ PKM2(ピルビン酸キナーゼ
予 想 外 の 正 反 対 の 機 能 を 解 明 し、本 号 の Research Article で 詳 述 し て い る。
M2)の活性がチロシンリン酸化によって阻害されることを示していた。さらに
Boucher らは、これらの受容体が、リガンド非結合状態でプログラム細胞死すな
Hitosugi らは、このリン酸化事象が通常は、発がん性のチロシンキナーゼによっ
わちアポトーシスを促進することを見いだした。付随する Mehlen の Perspective
て触媒され、したがってワールブルク効果を誘導し腫瘍増殖を促進することを
の Review で Levine と Puzio-Kuter は、酸化的リン酸化
では、依存性受容体(dependence receptors)という新しい概念が論じられ、
示した。
リガンドの非存在下でアポトーシスを促進するその他の栄養受容体の例が示され
れるような代謝状態の乱れが、シグナル伝達経路などの調節因子に相互に影響を
ている。
及ぼすと McKnight が主張している。
の他の論文でも、代謝センサーとして機能し、栄養素
の利用可能性の変化に対する細胞の適切な反応を可能にする、シグナル伝達分子
と経路が取り上げられている。本号の Perspective において、Ktistakis は、リン
脂質ホスファチジン酸が、グルコース代謝によって引き起こされた pH 変化を、
の Perspective では、がん細胞におけるワールブルク効果でみら
代謝と細胞シグナル伝達経路の相互作用は、系統レベルでも明らかである。
の Review では、Bass と Takahashi が、代謝状態と概日時計の連関を論じ、
栄養素シグナル伝達経路の構成要素[サーチュイン SIRT1、AMPK(AMP 活性化
リン脂質生成の転写調節に結びつける仕組みを説明している。Archives 内の
プロテインキナーゼ)など]と代謝に関与する核内受容体(PPARγなど)に
Perspective において Hengge は、病原菌
よる概日時計の調節を説明している。代謝は免疫系を調節することもある。
の病原遺伝子と推定
さ れ る 遺 伝 子 に 存 在 す る リ ボ ス イ ッ チ(mRNA の 二 次 構 造 に 変 化 を 起 こ し
た と え ば、Archives 内 の Research Article で は、飢 餓 マ ウ ス が、対 応 す る 摂 食
スプライシング事象を変化させる短い調節領域)が、シグナル伝達分子としても
マウスに比べ、細菌性リポ多糖(LPS)に対して有効性の低い免疫応答を開始し、
作用する代謝物の環状 di-GMP を感知するセンサーとなる仕組みを詳細に説明し
この欠損は、マウスにアミノ酸のアルギニンを与えることによってレスキューさ
ている。Archives 内の別の Perspective では、連続的な細胞間ウェーブが、どの
れることが、Mieulet らによって示されていた(Morris の Perspective も参照)
。
ようにしてグリアのニューロン活性への反応を可能にし、活性ニューロンに乳酸
マイコバクテリアは、アルギニンと免疫の関連を利用するようである。マイコ
をエネルギー源として供給しているのかを Charles が論じている。
バクテリアはアルギニンを分解する酵素の産生増加につながるシグナル
代謝経路は、細胞ストレスによっても調節される可能性がある。重要な異化
伝達経路を刺激し、細胞から抗菌性化合物である一酸化窒素の供給源を奪うこと
細胞過程の 1 つは、多サブユニットのタンパク質複合体であるプロテアソームに
によって、感染を促進することが、Research Article で Qualls らによって示され
よるユビキチン化タンパク質の分解である。本号の Research Article で Wang ら
ている(Morris の Perspective も参照)
。
は、酵母細胞において酸化ストレスによってプロテアソームの分解が誘発され、
Archives 内の Editorial Guide で Yaffe が指摘したように、我々はかつて、技術
それにより、細胞が酸化タンパク質を分解し過剰な活性酸素種に対処する能力が
の進歩により細胞、組織、生物のレベルで代謝とシグナル伝達経路の予想外の
向 上 す る 仕 組 み を 説 明 し て い る。Archives 内 の Research Article で は Qiu ら が
関連が明らかにされるまで、代謝について知るべきことはすべて知っていると
(Eizirik と Cnop の Perspective も 参 照)
、膵β細 胞 に お い て、足 場 タ ン パ ク 質
思っていた。これらのつながりを説明する論文にスポットを当てることにより、
RACK1 との会合によって、細胞内ストレスセンサー IRE1α
(inositol-requiring
その他のシグナル伝達経路やそれらの代謝との関連をさらに検討する契機が生ま
enzyme 1α)の急性または慢性のグルコース刺激に対する反応が決定される
れたことを願う。
機構を示している。膵臓から肝臓へと移り、Rutkowski は Perspective において、
転 写 活 性 化 補 助 因 子 CRTC2 が、小 胞 体 で の 小 胞 体 ス ト レ ス 応 答 を、糖 新 生
Citation:Sci. Signal., 7 December 2010 Vol. 3, Issue 151, p. eg12
[DOI: 10.1126/scisignal.3151eg12]
(糖質代謝)の調節に結びつける仕組みを取り上げている。細胞構成要素の損傷
または飢餓状態は、凝集タンパク質または細胞内小器官がリソソーム内で分解さ
れる過程であるオートファジーを誘発する。飢餓時には、オートファジーによっ
て栄養素の再利用が可能となる。
の Review では Rabinowitz と White が、
オートファジーを調節するシグナル伝達経路、オートファジーによる代謝の調節、
オートファジーによって変性疾患が予防されるが逆に腫瘍増殖が促進される仕組
み に つ い て 論 じ て い る。実 際 に、Archives 内 の Eng ら の Research Article で は
(Mariño と Kroemer の Perspective も参照)
、グルタミノリシスの呼ばれる代謝
Wei Wong
*1 Associate Editor of Science Signaling, American Association for the
Advancement of Science, 1200 New York Avenue, N.W.,
Washington, DC 20005, USA.
* Corresponding author. E-mail, [email protected]
過程の揮発性副生成物として生じたアンモニアが、どのようにしてオート
フ ァ ジ ー を 誘 発 し、が ん 細 胞 の 生 存 を 促 進 で き る の か が 説 明 さ れ て い る。
Archives 内で Shi と Kehrl は、タンパク質 Beclin-1 のユビキチン化状態を制御する
内容については細心の注意を払っていますが、情報の正確性、専門性について、発行者は
いかなる責任を負うものではありません。正確な情報は必ず原文でご確認ください。
と、炎症促進性刺激によるオートファジー誘導が調節される仕組みを示している。
Science Signaling 日本語版ダイジェスト vol.10 3
Research Articles
A compilation of editors’ summaries of research published from March - May
Sci. Signal., 15 March 2011
Sci. Signal., 22 March 2011
予想外のパートナー
腸で感じる確かな手ごたえ
Vol. 4, Issue 164, p. ra15
[DOI: 10.1126/scisignal.2001464]
Unexpected Partner
Vol. 4, Issue 165, p. ra16
[DOI: 10.1126/scisignal.2001338]
Gut Feelings
副甲状腺ホルモン受容体 1(PTH1R)などの、ホルモンに応答する
慢性腸炎は、正常な腸上皮細胞の恒常性が乱れた衰弱状態である
ヘテロ三量体グアニンヌクレオチド結合タンパク質(G タンパク質)
炎 症 性 腸 疾 患(inflammatory bowel disease:IBD)を 引 き 起 こ す
共役受容体(GPCR)によるシグナル伝達は、幅広く特徴付けられて
可 能 性 が あ る。炎 症 性 サ イ ト カ イ ン の 腫 瘍 壊 死 因 子α(tumor
い る。特 定 ク ラ ス の GPCR に 対 す る リ ガ ン ド 結 合 は、Gαs
necrosis factor‒α:TNF-α)は、IBD に関連し、細胞におけるアポトー
サブユニットを含有する G タンパク質の活性化をもたらし、それ
シス促進反応と生存促進反応の両方を引き起こすきっかけとなる。
により、エフェクターであるアデニリルシクラーゼ(AC)の活性化
Lau ら は、マ ウ ス 小 腸 に お け る 全 身 性 TNF-αの 作 用 に つ い て、
が 促 進 さ れ、セ カ ン ド メ ッ セ ン ジ ャ ー(cAMP)が 産 生 さ れ る。
系 統 に 基 づ く 解 析 を 行 っ た。こ の 小 さ な 領 域 内 に お い て さ え、
Wan らは、細胞膜において LRP6 を介して Gαs 含有 G タンパク質
TNF-αに依存する作用のタイミングと位置はさまざまであり、十二
が受容体に動員される機構を通して、PTH1R を含む様々な GPCR
指腸ではアポトーシスが引き起こされ、回腸では増殖がみられた。
により Gαs を介した cAMP シグナル伝達が効率的に活性化される
タンパク質のリン酸化の程度に関する解析とともにモデリングを
には、Wnt タンパク質の膜貫通型共受容体である低比重リポタン
行ったところ、TNF-αに対する応答を仲介する際に細胞外シグナル
パク質受容体関連タンパク質 6(LRP6)が必要であることを示した。
制御キナーゼ(extracellular signal‒regulated kinase:ERK)経路が
cAMP により活性化されるキナーゼである PKA は、LRP6 をリン酸
重要な意味をもつことが予測された。実際に、TNF-αで処理された
化し、それにより、Gαs に対する結合が促進された。AC は様々な
マウスの ERK シグナル伝達を薬理学的に阻害すると、TNF-αに
ホルモン性疾患の治療における治療標的である。Wan らのデータ
誘導される反応に差動的に影響した。この研究は、系統レベルでの
から、LRP6 活性を調整することで、さらなる戦略が得られるかも
シグナル伝達の解析が、
しれない。
応を表現する目的にも、検証可能な仮説を作成してモデル予測から
におけるアポトーシス反応と増殖反
考えうる治療ターゲットを同定する目的にも利用できることを示し
ている。
Citation:K. S. Lau, A. M. Juchheim, K. R. Cavaliere, S. R. Philips, D. A. Lauffenburger, K. M.
Haigis, In Vivo Systems Analysis Identifies Spatial and Temporal Aspects of the Modulation of
TNF-α–Induced Apoptosis and Proliferation by MAPKs. Sci. Signal. 4, ra16 (2011).
Sci. Signal., 29 March 2011
Vol. 4, Issue 166, p. ra19
[DOI: 10.1126/scisignal.2001556]
自身の抑制が解かれたら
Losing Your Inhibitions
抗悪性腫瘍薬シスプラチンは、活発に複製する DNA に直接結合す
ることで、DNA 損傷を引き起こし、ひいてはがん細胞を死に至ら
しめる。他方、腫瘍性タンパク質 c-MYC を過剰発現するがん細胞
はシスプラチン耐性を獲得するが、詳しい分子機構は不明だった。
今回、Pyndiah らは、興味深い知見を見出した。先ず、c-MYC の抑
制分子として知られている BIN1 というタンパク質が、DNA 修復酵
素ポリ(ADP- リボース)ポリメラーゼ 1(PARP1)に直接結合し、
その酵素活性を阻害した。結果、シスプラチンによって傷つけられ
た DNA は修復されないまま放置され、がん細胞のシスプラチン感
受性が高まった。一方、c-MYC の過剰発現は、BIN1 遺伝子そのも
のの発現を阻害し、BIN1 のタンパク量を押さえ込んだ。自分自身
の抑制因子 BIN1 から解放された c-MYC は、更に自らを異常に活
性化し(すなわち、ポジティブフィードバックループを形成し)
、
結果として(PARP1 酵素活性を高め)シスプラチンのような DNA
損傷性抗がん剤に対するがん細胞の耐性を昂進するというのだ。
Citation:M. Wan, J. Li, K. Herbst, J. Zhang, B. Yu, X. Wu, T. Qiu, W. Lei, C. Lindvall, B. O.
Williams, H. Ma, F. Zhang, X. Cao, LRP6 Mediates cAMP Generation by G Protein–Coupled
Receptors Through Regulating the Membrane Targeting of Gαs. Sci. Signal. 4, ra15 (2011).
4 Science Signaling 日本語版ダイジェスト vol.10
Citation:S. Pyndiah, S. Tanida, K. M. Ahmed, E. K. Cassimere, C. Choe, D. Sakamuro,
c-MYC Suppresses BIN1 to Release Poly(ADP-Ribose) Polymerase 1: A Mechanism by Which
Cancer Cells Acquire Cisplatin Resistance. Sci. Signal. 4, ra19 (2011).
Research Articles
A compilation of editors’ summaries of research published from March - May
Sci. Signal., 5 April 2011
Sci. Signal., 12 April 2011
細胞死の経過における PAR の位置づけ
エストロゲン受容体の腫瘍形成促進および抑制リガンド
Vol. 4, Issue 167, p. ra20
[DOI: 10.1126/scisignal.2000902]
Scoring a PAR on Death s Course
Vol. 4, Issue 168, p. ra22
[DOI: 10.1126/scisignal.2001551]
Pro- and Antitumorigenic Ligands for Estrogen Receptor
DNA修復酵素 PARP-1[ ポリ(ADP リボース)
(PAR)
ポリメラーゼ‒1]
前立腺がんは高齢男性の主な死因の一つである。前立腺腫瘍は、
の過活性化により「パータナトス:parthanatos」が生じる。これ
はじめ男性ホルモンであるアンドロゲン依存的に増殖するため、
はアポトーシスや壊死とは異なる細胞死の 1 形態で、ミトコンド
ア ン ド ロ ゲ ン 除 去 療 法 に よ っ て 進 行 を 遅 ら せ る こ と が で き る。
リ ア か ら の ア ポ ト ー シ ス 誘 発 因 子(apoptosis-inducing factor:
しかし、やがてこれらのがんはアンドロゲン非依存性となる場合が
AIF)の放出に依存している。今回 Wang らは、PAR が AIF に直接
多い。ICI 182,780(ICI)などの抗エストロゲン剤はアンドロゲン
結合し、AIF とミトコンドリアの結合を乱し、その核への移行を
非依存性の前立腺がんの進行を阻止することができる一方、エスト
許して細胞死を媒介することを明らかにした。さらに著者らは、
ロゲンはこれらのがんの増殖を促進し得る。Nakajima らはエストロ
AIF の PAR 結合部位を突然変異させることで、パータナトスにお
ゲンおよび抗エストロゲン剤が前立腺腫瘍増殖に対して相反する
ける AIF の役割をミトコンドリア呼吸におけるその働きと区別す
影響を及ぼす機序を検討した。その結果、エストロゲン受容体β
ることができた。PAR 結合タンパク質としての AIF を明確化する
(ERβ)は、転写因子 KLF5 との結合を介して前立腺がん細胞の細胞
ことで、この相互作用を抑制しパータナトスから防御するような
死を促進するタンパク質をコードする
の転写を亢進させるこ
化合物、またはこれを模倣して悪性腫瘍細胞死の誘導剤として
とを見出した。ICI は ERβを介して、共役転写活性化因子の KLF5 へ
パータナトスを促進する化合物を開発することが可能となるかも
のリクルートを増加させることにより
しれない。
た。一方、エストロゲンは、ユビキチンリガーゼと KLF5-ERβ複合
の転写をさらに促進し
体の結合を惹起し、プロテアソームによる KLF5 の分解を誘導した。
これらの機構を介して、ICI やエストロゲンはアポトーシスを制御す
ることにより、腫瘍形成を抑制又は促進させることが前立腺がん
細胞移植マウスを用いた実験により示された。さらに、前立腺がん
患者の病理組織において、ERβと KLF5 の共発現と生存期間の長さ
お よ び 低 悪 性 度 と の 相 関 が 確 認 さ れ た。Leung お よ び Ho は
Perspective において、エストロゲンの前立腺がんにおける作用に
ERβの転写活性は必要ではないかもしれないという興味深い可能性
を含め、本研究の生物学的および臨床的意義を考察している。
Citation:Y. Wang, N. S. Kim, J.-F. Haince, H. C. Kang, K. K. David, S. A. Andrabi, G. G.
Poirier, V. L. Dawson, T. M. Dawson, Poly(ADP-Ribose) (PAR) Binding to
Apoptosis-Inducing Factor Is Critical for PAR Polymerase-1–Dependent Cell Death
(Parthanatos). Sci. Signal. 4, ra20 (2011).
Citation:Y. Nakajima, K. Akaogi, T. Suzuki, A. Osakabe, C. Yamaguchi, N. Sunahara, J.
Ishida, K. Kako, S. Ogawa, T. Fujimura, Y. Homma, A. Fukamizu, A. Murayama, K. Kimura, S.
Inoue, J. Yanagisawa, Estrogen Regulates Tumor Growth Through a Nonclassical Pathway that
Includes the Transcription Factors ERβ and KLF5. Sci. Signal. 4, ra22 (2011).
Science Signaling 日本語版ダイジェスト vol.10 5
Research Articles
A compilation of editors’ summaries of research published from March - May
Sci. Signal., 19 April 2011
Sci. Signal., 26 April 2011
分化における ERK の働き
酸化による反発
細胞が分化する際には、細胞周期が停止することから、分化と
軸索ガイダンス分子セマフォリン 3A(Sema3A)は、コラプシン
増殖のプロセスは相互に排他的であると考えられる。そして、
反 応 媒 介 タ ン パ ク 質 2(collapsin response mediator protein 2:
これらの事象を実行させる転写プログラムは、細胞外からの異な
CRMP2)のリン酸化を起こし、抑制シグナルとして作用して成長
る刺激により起動することが多い。細胞外シグナル調節キナーゼ
円錐を崩壊させる。本稿で Morinaka らは、グリコーゲン合成酵素
(ERK)のシグナル伝達経路は免疫細胞など多種の細胞の増殖を
キナーゼ 3(glycogen synthase kinase‒3:GSK-3)による CRMP2
促進する役割を担っているため、ERK は細胞分裂している細胞の
のリン酸化を引き起こす基礎となる分子機構を解明し、リン酸化
み で は た ら く と 考 え ら れ て き た(Allman お よ び Cancro に よ る
で起こると考えられてきた過程の中で酸化還元反応が重要である
Perspective 参照)
。一方、B 細胞では増殖中の細胞の転写プログラム
こ と を 発 見 し た。彼 ら は、Sema3A が フ ラ ボ タ ン パ ク 質 MICAL
は、転 写 抑 制 因 子 Blimp-1 に よ り 負 に 制 御 さ れ る。Blimp-1 は、
(molecule interacting with CasL、CasL と 相 互 作 用 す る 分 子)を
B 細胞が分化の最終形態である抗体産生細胞(形質細胞)に分化す
介して H2O2 の産生を刺激し、CRMP2 の酸化とそれによる CRMP2
るために必要な因子である。保田らは、B 細胞の ERK1 と ERK2 の
のジスルフィド結合ホモ二量体の形成を引き起こすことを示した。
両方を欠損したマウスを用いた実験により、ERK シグナル伝達が
また、CRMP2 の酸化は、酸化還元酵素チオレドキシンとの一過的
Blimp-1 の発現を誘導し、形質細胞へ分化するために必須である
な複合体形成を促し、GSK-3 による CRMP2 のリン酸化とそれに
ことを明らかにした。これらのデータは、B 細胞における ERK シグ
よる成長円錐の崩壊を引き起こした。
Vol. 4, Issue 169, p. ra25
[DOI: 10.1126/scisignal.2001592]
Differential Role for ERKs
Vol. 4, Issue 170, p. ra26
[DOI: 10.1126/scisignal.2001127]
Repulsed by Oxidization
ナル伝達の新規の役割を明らかにするとともに、他の細胞種の
分化においても ERK タンパク質が関わっている可能性について、
検証を進めていくきっかけとなるはずである。
Citation:A. Morinaka, M. Yamada, R. Itofusa, Y. Funato, Y. Yoshimura, F. Nakamura, T.
Yoshimura, K. Kaibuchi, Y. Goshima, M. Hoshino, H. Kamiguchi, H. Miki, Thioredoxin
Mediates Oxidation-Dependent Phosphorylation of CRMP2 and Growth Cone Collapse. Sci.
Signal. 4, ra26 (2011).
Sci. Signal., 3 May 2011
Vol. 4, Issue 171, p. ra27
[DOI: 10.1126/scisignal.2001791]
良好な環境が不可欠である
A Good Environment Is Crucial
雄の不妊症は、精子の産生量低下または機能障害が原因で起こりう
る。Ca2+ シグナル伝達は、精子の機能において重要な役割を果たし
ており、本稿で Weissgerber らは、精巣上体管腔内の Ca2+ 濃度の
制 御、お よ び 精 子 の 運 動 と 生 存 に お い て、Ca2+ 選 択 的 TRPV6
チャネルが果たす役割を明らかにした。運動性の獲得などの精子の
成熟は、精巣を出たあとに、精巣上体で起こる。不活性型 TRPV6
を有する雄トランスジェニックマウスは、生殖能の低下を示し、
精巣上体尾部から単離された精子の運動性、生存率、
で
卵を受精させる能力は損なわれていた。TRPV6 は精巣上体上皮
細胞には存在するが、精子自体には存在せず、トランスジェニック
マウスの精巣上体管腔内の Ca2+ 濃度は、野生型マウスよりも 10 倍
高かった。さらに、同程度の細胞外 Ca2+ 濃度にさらされた精子は、
細胞内 Ca2+ 濃度の上昇を示した。このため著者らは、TRPV6 チャ
ネルが精巣上体管腔内の液中 Ca2+ 濃度を低下させる機能を果たし
ていると結論づけ、トランスジェニックマウスの精子の機能障害
および生存障害は精巣上体液中の微小環境の乱れによるものである
と提唱している。
Citation:T. Yasuda, K. Kometani, N. Takahashi, Y. Imai, Y. Aiba, T. Kurosaki, ERKs Induce
Expression of the Transcriptional Repressor Blimp-1 and Subsequent Plasma Cell Differentiation.
Sci. Signal. 4, ra25 (2011).
6 Science Signaling 日本語版ダイジェスト vol.10
Citation:P. Weissgerber, U. Kriebs, V. Tsvilovskyy, J. Olausson, O. Kretz, C. Stoerger, R.
Vennekens, U. Wissenbach, R. Middendorff, V. Flockerzi, M. Freichel, Male Fertility Depends on
Ca2+ Absorption by TRPV6 in Epididymal Epithelia. Sci. Signal. 4, ra27 (2011).
© 2011 American Association for the Advancement of Science (AAAS). All Rights Reserved.
PRIMARY CELL Co., Ltd.
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