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1 日本語版 Addenbrooke`s Cognitive Examination Revised (ACE

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1 日本語版 Addenbrooke`s Cognitive Examination Revised (ACE
日本語版 ACE-R
施行および採点の手引き
日本語版 Addenbrooke’s Cognitive Examination Revised (ACE-R)
施行および採点の手引き
ACE-R は 5 つの認知領域、すなわち注意/見当識、記憶、言語流暢性、言語、視空間認知を評価する簡易認知機
能検査である。総得点は 100 点で、より高い得点がより良い認知機能を示す。ACE-R の施行時間は平均して 15 分
である。採点には約 5 分必要である。この手引きの目的は質問および採点法を検者に明確に示すことである。検査の
施行前に熟読していただきたい。
可能であれば、テストが終わるまで採点はしないのが望ましい。なぜなら被験者は、検者が今何をしているのか(正
しい答えに丸を付けているのか、それとも間違った答えにバツを付けているのか)分からないため不安になるかもしれ
ず、そのためテスト成績が悪くなる可能性があるからである。
見当識 10 点
被験者に 「今年は何年ですか」、「季節は何ですか」、「何月ですか」、「今日は何曜日ですか」、「今日は何日です
か」 とひとつずつ質問する。続けて被験者に 「今、私たちはどこにいますか」 と尋ねた後、「ここは何地方ですか」、
「何県ですか」、「何市(区、郡)ですか」、「この建物の名前あるいは種類は何ですか」、「何階(部屋の種類、あるいは
番地)ですか」 とひとつずつ質問する。回答を記録し、それぞれの正答に対し 1 点を与える。
年、月、日、曜日は正確な答えのみ正答とする。年(西暦)の最後の 2 桁のみ回答した場合は 「省略せずに言うと何
年ですか」 と促す。年または季節の変わり目に近い場合で、被験者が間違えた際は 「間違いありませんか」 と尋ね
て正確な回答を促しても良い。
季節に関しては以下の方法で質問しても良い: 季節の変わり目、例えば 8 月の終わりに被験者が「秋」と回答した場合、「別の季節で言うと何で
すか」 と質問する。回答が 「夏」 であれば 1 点を与える。回答が 「冬」 や 「春」 であれば得点を与えない。(季節:春 3, 4, 5 月 夏 6, 7, 8 月
秋 9, 10, 11 月 冬 12, 1, 2 月)
地方(東北、関東、中部、近畿、中国、四国、九州のうち当てはまる地方名)、県(都、道、府)、市(区、郡)、階 は正
確な答えのみ正答とする。北海道と沖縄では、「地方、県、市」 のかわりに 「県、市、町」 を尋ねる。「建物の名前あ
るいは種類」 は明らかな間違いでなければ、略称・通称も正答とする (「岡山大学病院」 に対して「病院」、「総合病
院」 と種類を答える、あるいは 「岡大病院」、「附属病院」 は正答。「赤十字病院」、「岡山診療所」 は誤答)。被験者
の自宅で検査する場合、および平屋建ての建物で検査する場合は、「何階」 のかわりに「部屋の種類」(台所、寝室、
あるいは第一診察室) もしくは「番地」(市より後の住所)を尋ねる。
記銘 3 点
被験者に 3 つの単語を復唱し覚えるように言う。ゆっくりと教示する(それぞれの単語の後に 1 秒間の休止を置く)。
3 つすべてを覚えるまで教示を繰り返す(最大 6 回)。被験者に後でこれらの名前について尋ねることを告げる。施行
回数を記録する。最初の施行のみを採点する。
注意および集中 5 点
計算 : 被験者に 100 から 7 を連続して引き算するように教示し、回答を記録する。計 5 回の引き算を行う。誤答をし
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日本語版 2008 年 8 月 翻訳および改変, 2011 年 2 月 改訂 吉田英統, 寺田整司 ©2000, John Hodges
日本語版 ACE-R
施行および採点の手引き
た場合でもそのまま続けさせる。各段階で正しい計算が出来ていれば 1 点を与える(例えば 92(
), 85, 79(
), 72,
65 は 3 点になる)。
綴り : 被験者に 「“セカイチズ” という単語を後ろから言ってください」 と教示する。被験者が教示を再度するように
求めたり、困惑しているように見える場合は教示を繰り返す。被験者が一度答えた後でもう一度答えることを求めた場
合は、追加の回答をしてもよい。最終回答の音節を記録する。正答の各音節につき 1 点を与える。例えば 「ズ-チ-カセ」 の回答は、正しい位置にある 「ズ」 と 「チ」 が正答で 2 点、「チ-イ-カ-セ」 は位置がずれており 0 点となる。
両課題を行い、点数の良い方を採用する。
想起 3 点
被験者に、復唱し覚えてもらった単語を思い出すように言う。回答を記録する。それぞれの正答に 1 点を与える。回
答の順番は問わない。
前向性記憶 7 点
被験者に「ある人の住所と名前を言います。私が言った後に繰り返してください。3 回同じことを言いますので、その
間に覚えてください。後で尋ねます」と教示する。検者が住所と名前を言い終わらないうちに被験者が復唱しようとし
たら、検者が言い終わるまで待つように言う。施行ごとに回答を記録する。3 回目の施行のみを採点する(0 から 7
点)。
逆向性記憶 4 点
被験者に、現在の日本の総理大臣の名前、その前の日本の総理大臣の名前(2 代前まで正答とする)、現在のアメ
リカ大統領の名前、1960 年代に暗殺されたアメリカ大統領の名前 を尋ねる。それぞれの正答に 1 点を与える。
2011 年 2 月時点では、・菅(直人) ・鳩山(由紀夫) もしくは 麻生(太郎) ・(バラク)オバマ ・(ジョン・F)ケネディ
が正答である。
言語流暢性 14 点
文字 7 点
被験者に 「これから五十音の中の 1 つを言いますので、その文字で始まる単語をできるだけたくさん言ってください。
ただし人や場所の名前はいけません。用意はいいですか? 時間は今から 1 分間で、はじめの文字は “ か ” です」
と教示する。
回答時間は 1 分間とする。回答が同じ言葉の繰り返しや他の文字から始まる言葉であってもすべて記録するが、誤
答とし正答数には入れない。人名、地名のような固有名詞は誤答とする。複合語、派生語などは最初の回答のみ正
答とし、他は誤答とする(「買い物、買い物かご、買い物袋」、「悲しみ、悲しさ」 は最初の 1 個のみ正答。「堅さ、堅苦
しい」は 2 個正答)。同じ言葉の繰り返しと同音異義語(紙と髪、亀と瓶など)の判別が難しい場合は、被験者に確認し
別の言葉であればそれぞれ正答とする。
動物 7 点
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日本語版 2008 年 8 月 翻訳および改変, 2011 年 2 月 改訂 吉田英統, 寺田整司 ©2000, John Hodges
日本語版 ACE-R
施行および採点の手引き
被験者に「今度は動物の名前をできるだけたくさん言ってください。はじめの文字は何でも構いません」と教示する。
回答時間は 1 分間とする。回答が同じ言葉の繰り返しや他のカテゴリーの言葉であってもすべて記録するが、誤答
とし正答数には入れない。品種が異なる場合(テリア、ブルドッグ)、雄雌などが異なる場合(雄牛、雌牛、仔牛)、種の
中で次元が異なる場合(犬、テリア)はそれぞれ正答とする。鳥、魚、爬虫類、昆虫も認める。架空の動物(龍、河童な
ど)は誤答とする。干支(子、丑、寅など)を列挙する場合は、それぞれを普通の名称で言うように促す。
●両課題とも教示から 15 秒たっても被験者が無反応であったり、「何も思いつきません」と言うようなとき、被験者が
希望するとき、あるいは教示を理解していないとき(動物の課題に対し “か” から始まる単語を答えようとするなど)は、
再教示を行ってもよい。ただし回答時間は最初の教示から 1 分間とする。それぞれの正答数から換算表に基づき得
点を与える。
言語 理解 1 点
理解(目を閉じてください)
被験者に文章を示し 「これを読んで、書いてある事をやって下さい」 と教示する。文を読むだけでなく、それに従う
必要があることをもう一度教えても良い。被験者が指示に従い目を閉じれば 1 点を与える。読むだけで指示に従わな
い場合は 0 点とする。
言語 理解 3 点
理解(3 段階命令)
紙を机の上において、被験者の正中に位置するようにして、「ある事をしてもらうように頼みますから、よく聞いて下さ
い。紙を右手にとって(休止)、それを半分に折り(休止)、床に置いてください」と教示する。教示を完全に終えるまで
は被験者に紙を取らせてはいけない。被験者が教示を繰り返すことを求めた場合は、検者は教示を 1 回だけ繰り返し
てもよいが、教示全体を繰り返さなければならない。身体的障害のため右手が使えないとき、あるいは床に手が届か
ない場合には、「紙を左手にとって」 あるいは 「机の上に置いてください」と教示する。
それぞれの命令に従えれば 1 点を与える。被験者は両手を使って紙を折っても良い。例えば、紙を右手に取りそれ
を折らずに床に置けば 2 点、紙を右手にとりそれを複数回折って机に置けば 1 点、となる。
言語 書字 1 点
被験者に鉛筆を渡し、 「文を書いてください」 と教示する。被験者が反応しない場合は、「天気について書いて下
さい」 と促す。検者が文を言って、被験者に書き取りをさせてはいけない。文は自発的に書かなければいけない。
理にかなった文で、主語と動詞を備えている場合 1 点を与える(天気に関する文章でなくてもよい)。文法、漢字、送
り仮名および句読点は正しい必要はなく、採点の対象にならない。文に主語はないが、主語を暗に示す文(「ドアを閉
めて下さい」 という文は主語が書かれていないが、主語として 「あなた」 が考えられる)は正答とする。検者が文を判
読できない場合は、採点のために被験者にその文を声に出して読むように教示する。
言語 復唱 2 点
被験者に 「いくつか単語を言いますから、同じように繰り返してください」 と教示する。一度に 1 単語を復唱させる。
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施行および採点の手引き
回答を記録する。最初の回答のみを採点し、言い直しは不可とする。すべて正答で 2 点、3 つ正答で 1 点、正答が 2
つ以下なら 0 点を与える。
言語 復唱 2 点
被験者の注意を促し、「私がこれから言うことを、同じように繰り返して言ってください。よろしいですか? “うえに、む
こうに、したに”
さあ、言って下さい」と教示する。教示は 1 回のみとする。次に 「つべこべ言ってもだめ」 を同様に
教示する。部分的に正しい回答(例えば「うえに、したに」、「つべこべ言ってはだめ」)は誤答とする。完全に正しい回
答にそれぞれ 1 点を与える。
言語 呼称 2 点
呼称(腕時計と鉛筆)
被験者にそれぞれの絵の名前を言わせる(「これは何ですか?」)。ヒントを与えてはいけない。正答:えんぴつ、うで
どけい(とけい)
言語 呼称 10 点
呼称(動物 5 つと物品 5 つ)
被験者にそれぞれの絵の名前を言わせる。ヒントを与えてはいけない。正答:右上から、カンガルー(ワラビー)、ペ
ンギン、いかり、ラクダ(ヒトコブラクダ)、トランペット(らっぱ)、サイ、でんきゅう(はくねつ電球、はだか電球)、おうかん
(かんむり)、ワニ、アコーディオン(てふうきん)。それぞれの正答に 1 点を与える。呼称課題中に回答を自ら訂正する
ことは許容される。次の ”言語 理解” の課題中に被験者が正しい名称を答えても本課題の正答とはならない。
言語 理解 4 点
理解
質問を読み上げそれに合致する絵を指すように教示する。一度指した後自ら訂正することは許容される。複数の絵
をさす場合、「どれが一番当てはまりますか」 と促す。正答:おうかん、ワニ、ペンギン、いかり。それぞれの正答に 1 点
を与える。
言語 読字 1 点
被験者に漢字単語を声に出して読むように教示する。正答:すもう、たばこ、むすこ、いなか、やおや。回答を記録し、
すべて正答であれば 1 点を与える。回答が不明瞭であれば繰り返し尋ねてもよいが、ヒントは与えない。
視空間認知 重複五角形 1 点
正確に模写するように被験者に求める。図を消すことは認めない。2 つの五角形が重なっていて、重なっている部分
が四角形になっている場合に 1 点を与える。下の例を参照。 以下の 3 つの描画課題において、被験者が描いた図
に満足していない様子の場合や描き直すことを求めた場合、もう一度だけ描き直すことを認め、2 つのうち得点の良い
方を採用する。
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視空間認知 透視立方体 2 点
立方体が 12 の辺で構成されていれば、全体の形が崩れていても 2 点を与える。辺の数が 12 より少ないが、全体的
な形が保たれていれば 1 点を与える。下の例を参照。
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視空間認知 時計描画 5 点
被験者に 「時計の文字盤を書いてください。文字盤の数字もすべて書き込んでください」 と教示する。描き終わっ
たら、「5 時 10 分を指すように時計の針を書いてください」と指示する。外枠、数字、針のそれぞれを採点し合計する。
四角い時計面を書こうとした場合などは、「普通の時計」を書くように指示する。
外枠(1 点)
ほぼ正円が描けていれば 1 点。円は閉じていなくても良い。
数字(2 点)
数字がすべて含まれ、枠の中に均等に配置されていれば 2 点。
数字がすべてあっても、枠の中に均等に配置されていなければ 1 点。
数字がすべて揃っていなければ 0 点。
針(2 点)
針が 2 本あり、長さがそれぞれ異なり、正しい数字(短 - 5, 長 - 2)を指していれば 2 点
(被験者にどちらが長針でどちらが短針か尋ねても良い)
針 2 本が正しい数字を指しているが、長さが間違っていれば 1 点。
針 2 本のうち 1 本が正しい長さで正しい数字を指していれば 1 点。
針が 1 本のみ描かれ、正しい数字(5 もしくは 2)を指していれば 1 点
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日本語版 2008 年 8 月 翻訳および改変, 2011 年 2 月 改訂 吉田英統, 寺田整司 ©2000, John Hodges
日本語版 ACE-R
施行および採点の手引き
視知覚 4 点
点の計数
被験者に 「4 つの枠の中に黒丸が描かれています。それぞれの枠の中に何個の黒丸があるか、図を指ささずに数
えてください」 と教示する。正答は左上から時計回りに 8, 10, 9, 7。それぞれの正答に 1 点を与える。
視知覚 4 点
文字の同定
被験者に 「カタカナが 4 つ書かれていますが、文字の一部が欠けています。それぞれ何と読みますか。指で文字を
なぞっても構いません」 と教示する。正答は左上から時計回りにケ, マ, ナ, ム。それぞれの正答に 1 点を与える。
想起 7 点
想起
被験者に「はじめに繰り返してもらった住所と名前を思い出して言ってください」と教示する。想起できたそれぞれの
項目に対し 1 点を与える。想起する項目の順番は問わない。住所の “県”、“市”、“町”、“の” を省略することは認める
が、誤用は誤りとみなす。解答が曖昧な場合は被験者に確認しても良い。
山口県
宇部市
松島町
中村
7
の3
太郎
例 1a
1
山口県
1
宇部
---
松本町
中村
3
0 + 0 + 1
1 + 0
次郎
4 / 7点
例 2a
0
山口市
---
0
松島
3
の7
中野
太郎
1 + 0 + 0
0 + 1
2 / 7点
7
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日本語版 ACE-R
施行および採点の手引き
再認 5 点
再認(想起課題で 1 つ以上誤答した場合のみ行う)
想起課題で 1 つ以上失敗すれば以下の再認を行う。すべて想起できていればこの項目を省略し 5 点を与える。ま
ず想起できた項目(姓と名は両方正答で想起できたと見なす。2 つの数字も同様)に対し右端の 「想起」 の欄にチェ
ックする。それから想起できなかった項目に関して 「今からヒントを言います。県名は岡山県、山口県、山梨県のうち
どれでしたか?」 のように質問する。想起できていなければ、市の名前、町名、番地、名前も同様に質問する。「想
起」欄のチェック 1 つにつき 1 点、その後再認できた項目 1 つにつき 1 点を与える。
例 1b (例 1a にもとづく)
検者は “県”、“市” の 想起 の欄にチェックする。それから以下のよ
被検者の答え
得点
- 町名は まつだ町、なかしま町、まつしま町 のうちどれでしたか?
まつしま町
1
- 番地は 3 の 7、7 の 3、7 の 6 のうちどれでしたか?
3の7
0
- 名前は 中村太郎、中山太郎、中村太一 のうちどれでしたか?
中村太郎
1
うに尋ねる:
+ 2 (県、市)
4 / 5 点
例 2b (例 2a にもとづく)
検者は “町” の 想起 の欄にチェックする。それから以下のように尋
被検者の答え
得点
- 県名は 岡山県、山口県、山梨県 のうちどれでしたか?
山口県
1
- 市の名前は 岩国市、宇部市、萩市 のうちどれでしたか?
岩国市
0
- 番地は 3 の 7、7 の 3、7 の 6 のうちどれでしたか?
3の7
0
- 名前は 中村太郎、中山太郎、中村太一 のうちどれでしたか?
中山太郎
0
ねる:
+ 1 (町)
2 / 5 点
MMSE 30 点
MMSE の得点は影付きの四角の中の点数を合計する。
標準データ
岡山大学病院 精神神経科 もの忘れ外来を受診した患者およびその同伴者 計 242 名で検証した: 認知症群
130 名、軽度認知障害群 39 名、正常群 73 名。
表 1: 軽度認知障害および認知症検出における日本語版 ACE-R の至適カットオフ値と、その感度、特異度、陽性(陰性)的中率
ACE-R
軽度認知障害 / 正常
様々な有病率における陽性(陰性)的中率
カットオフ値
感度
特異度
1%
5%
10%
20%
40%
88 / 89
0.87
0.92
0.10 (1.00)
0.36 (0.99)
0.54 (0.98)
0.73 (0.97)
0.88 (0.91)
認知症 / 正常
82 / 83
様々な有病率における陽性(陰性)的中率
感度
特異度
1%
5%
10%
20%
40%
0.99
0.99
0.42 (1.00)
0.79 (1.00)
0.89 (1.00)
0.95 (1.00)
0.98 (0.99)
8
日本語版 2008 年 8 月 翻訳および改変, 2011 年 2 月 改訂 吉田英統, 寺田整司 ©2000, John Hodges
日本語版 ACE-R
施行および採点の手引き
表 2:各年齢群(50-59、60-69、70-79、80-86 歳)と全正常群の日本語版 ACE-R 総得点および下位項目得点の平均(標準偏差)
年齢群
教育年数
50-59 歳
総得点
注意/見当識
記憶
流暢性
言語
視空間
(100 点)
(18 点)
(26 点)
(14 点)
(26 点)
(16 点)
13.6
95.0
17.9
24.4
11.7
25.5
15.4
(3.9)
(0.2)
(1.6)
(2.1)
(0.5)
(0.9)
13.0
94.7
18.0
24.2
11.4
25.5
15.6
(2.9)
(0.0)
(1.7)
(1.9)
(0.7)
(0.7)
12.1
91.5
17.8
23.0
10.2
24.9
15.7
(2.9)
(0.5)
(1.7)
(1.9)
(1.2)
(0.8)
11.9
89.4
17.6
21.3
9.5
25.0
16.0
(4.5)
(0.5)
(1.7)
(2.7)
(0.8)
(0.0)
93.3
17.9
23.6
11.0
25.3
15.6
(3.9)
(0.4)
(1.9)
(2.2)
(0.9)
(0.8)
(18 名)
60-69 歳
(26 名)
70-79 歳
(21 名)
80-86 歳
(8 名)
12.7
全正常群
(73 名)
参考文献: Yoshida H, et al. Validation of Addenbrooke’s Cognitive Examination Revised (ACE-R) for detecting mild cognitive
impairment and dementia in a Japanese population. Int Psychogeriatr. 2011 (in press)
補足: 上記と同じ対象者を 非認知症群(正常群+軽度認知障害群、112 名)と 認知症群(130 名)に分け、認知症
検出のための至適カットオフ値と、種々の ACE-R 得点における認知症の陽性尤度比を検証した。
表 3: (非認知症に対する)認知症検出における日本語版 ACE-R の至適カットオフ値と、その感度、特異度、陽性(陰性)的中率
認知症 / 非認知症
ACE-R
様々な有病率における陽性(陰性)的中率
カットオフ値
感度
特異度
1%
5%
10%
20%
40%
78 / 79
0.95
0.94
0.13 (1.00)
0.44 (1.00)
0.63 (0.99)
0.79 (0.99)
0.91 (0.96)
表 4: 種々の日本語版 ACE-R 得点における(非認知症に対する)認知症の陽性尤度比
ACE-R 得点
88
87
86
85
84
83
82
81
80
79
78
陽性尤度比
2.8
2.9
3.4
3.9
4.5
4.9
5.3
6.8
8.3
9.7
15.1
日本語版 付記
この手引きは “Addenbrooke’s Cognitive Examination Revised (ACE-R) Administration and Scoring
Guide - 2006” および “Australian Administration and Scoring Guide - 2010”を翻訳し、日本語版 ACE-R に
合わせて翻訳者が改変したものである。
日本語版 ACE-R テスト用紙(バージョン A, B)および本手引きは原著者のウェブページ <http://www.ftdrg.org>
から入手できる。
文 字 、 図 の 呈 示 に は 教 示 用 別 紙 ( ACE-RJ_Appendix1.pdf ) を 、 書 字 ・ 描 画 課 題 の 記 入 に は 記 入 用 別 紙
(ACE-RJ_Appendix2.pdf)を用いてもよい。教示用・記入用別紙は岡山大学 精神神経病態学教室 老年精神疾
患研究グループのウェブページ <https://sites.google.com/site/okayamaneuropsy5> から入手できる。
テスト用紙、教示用別紙、記入用別紙はそれぞれ A4 用紙に印刷する。
原版では同一患者への再試行時に別バージョンを用いる(例えば初回に Version A で評価した患者の半年後の再
検査は Version B で行う)ことを推奨しているが、日本語版のバージョン間の同等性はまだ検討されていない。
9
日本語版 2008 年 8 月 翻訳および改変, 2011 年 2 月 改訂 吉田英統, 寺田整司 ©2000, John Hodges
日本語版 ACE-R
施行および採点の手引き
以下の「臨床的解釈」と「ACE-R よくある質問」は、それぞれ “Australian Administration and Scoring Guide
- 2010 CLINICAL INTERPRETATION” と “ACE-R Frequently asked questions” を翻訳したものであり、日
本語版には必ずしも当てはまらないことに留意されたい。
臨床的解釈
カットオフ値
スクリーニング目的には 88 点、研究目的には 82 点の二つのカットオフ値が推奨されている。
認知症への感度
低いカットオフ値(82 点)では ACE-R は非常に高い感度(84%)と優れた特異度(100%)をもち、広範囲の認知症
有病率において非常に良好な診断的中率を示す [1]。カットオフ値 88 点ではより良い感度(94%)を示すが、その代
わりに特異度は低くなり、いくらかの偽陽性を生じる(=正常者が 88 点以下になることはあるが 82 点よりは上である)。
二つのカットオフ値の間のグレーゾーンに関して、尤度比の表が作られている(表 3)。88 から 82 点の間のそれぞれ
の得点に対して、認知症の尤度比が与えられる。例えば 88 点の被験者が認知症である確率は 8.4%であるが、82 点
の場合は 100%である(訳注:この記載は誤り。原著論文では「82 という得点が認知症のない患者よりも認知症患者か
ら 100 倍得られやすいことを意味する」と説明されている [1]。例えば認知症の検査前確率が 10%の場合、検査後確
率は 88 点の場合に 48%、82 点の場合に 92%になる)。しかしこの解釈は標準的な臨床評価、および以前の機能レ
ベルから進行性に低下していることを情報提供者から確認することと組み合わせて行わなければいけない。
軽度認知障害(MCI)患者を含む研究では、ACE が早期認知症に対して非常に感度が良く、将来認知症を発症す
る患者も予測できることが示されている [2, 3]。最近の研究 [3] では、ベースラインで 88 点より上の患者はその後 2
年間の経過観察中に認知症を発症しないことが示されている。
表 3: 種々の ACE-R カットオフ値における認知症の確率に対する尤度比 [1]
ACE-R 得点
認知症の尤度比
88
8.43
87
11.5
86
14.2
85
18.9
84
27.6
83
52.5
82
100
鑑別診断
ACE は複数の認知領域(cognitive domain)を評価するため、そこから示される被験者の認知機能障害プロフィー
ルをもちいて鑑別診断を行うことが可能である。以下にいくつかプロフィール解釈の例を示す。
アルツハイマー病と前頭側頭型 認知症(FTD)の鑑別
ACE は簡単な下位項目得点の比、VLOM ratio [言語流暢性+言語 / 見当識+記憶(住所と名前の想起のみ)]
10
日本語版 2008 年 8 月 翻訳および改変, 2011 年 2 月 改訂 吉田英統, 寺田整司 ©2000, John Hodges
日本語版 ACE-R
施行および採点の手引き
をもちいて、アルツハイマー病(AD)と FTD の鑑別を行うことができる。典型的 AD では言語流暢性と言語の項目で
比較的高得点であり、見当識と記憶の項目で低得点のため、この比は高くなる。FTD ではその逆になる(VLOM
ratio が低くなる)(詳細は [4] を参照)。ACE-R では VLOM ratio < 2.2 で AD から FTD を分離でき(感度 58%、
特異度 95%)、VLOM ratio > 3.2 で FTD から AD を分離できる(感度 74%、特異度 85%) [1, 4]。
ACE は行動障害型 FTD(behavioural variant FTD, bvFTD)とそれに似た症候を示す精神医学的症候群
(bvFTD フェノコピーと名付けられた亜群) [5-8] を区別することもできる。ある研究では真の bvFTD(初回の MRI
で脳萎縮を示し、その後施設入所のレベルまで悪化した群)は ACE において明確な認知機能の進行性低下を示し、
一方 bvFTD フェノコピーは長期間にわたって ACE 得点に変化がなく正常群と同等だったことが示されている [9]。
さらに ACE は簡単なアルゴリズム、Semantic index をもちいて AD と意味性認知症(SD)を判別することができる。
呼称、読字、時の見当識の下位項目で有意な群間差があったことが Semantic index の理論的根拠となっている。
Semantic index は(呼称+読字)−(Serial 7s+時の見当識+図形模写)で算出され、その得点の範囲は+14 点
から −15 点である (訳注:0 点より下を SD とした場合に感度 88%、特異度 90%) [10]。この指標は ACE-R ではま
だ検証されていないが、特に SD 患者が言語的記憶テストで低得点を示すために AD と誤診されるという状況におい
ては、AD と SD の鑑別にこの指標を臨床応用しうる。
非定型パーキンソン症候群における異なった認知プロフィー ル
最近の研究では、大脳皮質基底核変性症(CBD)や進行性核上性麻痺(PSP)といった非定型パーキンソン症候群
患者の評価において ACE が有用であり、それら疾患に特徴的な認知プロフィールを示すことが報告されている。
Bak は CBD 患者が ACE の全ての下位項目で AD 患者と同程度の全般的な低成績を示すことを報告した [11, 12]。
PSP 群は流暢性の項目で障害を示したが CBD 群よりは良好であった(詳細は [11] を参照)。この研究で MMSE と
ACE の感度、特異度が比較されたが ACE の方が優位であった。MMSE は皮質下症候群における認知障害を検出
するには不十分であった。
認知症と気分障害
ACE は気分障害と認知症の鑑別にも役立つ。「純粋な」気分障害患者の成績は AD もしくは FTD 患者よりも優位
に高い。さらに興味深いことに、ACE は気分障害患者群から将来認知症を発症しうる患者を予測できる。Dudas は
最初に気分症状を呈し(おそらく進行性変性疾患の初期症状として、あるいは気分障害を併発した認知症患者も含
む) 最終的に認知症を発症した患者は、ベースラインの ACE 得点で区別できることを報告した [13]。後に認知症を
発症した全ての患者は、神経変性疾患の明らかな発症の 2 年前から 88 点より下の成績であった。
結論
ACE のような認知機能検査の得点を解釈するときには以下の点に留意することが重要である。検査の得点はそれ
のみで使用してはいけない。ACE は認知症の最終的な診断テストではなく、むしろ認知症の診断および認知症疾患
の鑑別において臨床医の助けになる道具である。様々な状態が認知障害を引きおこすので、診断においては臨床的
判断が優先されるべきである [14]。認知症の診断基準は、患者が認知障害をもち日常生活に支障をきたしているこ
とである。それゆえ認知症を疑う場合には、認知機能低下の程度を調べるのと同様に、日常生活動作(ADL)の障害
11
日本語版 2008 年 8 月 翻訳および改変, 2011 年 2 月 改訂 吉田英統, 寺田整司 ©2000, John Hodges
日本語版 ACE-R
施行および採点の手引き
を確認することが必須である。AD において日常生活機能の変化と認知障害が関連することは確立されているが
[15-17]、FTD においては認知機能評価のみでは能力を過大評価する可能性がある [18-19]。
他の重要な留意点は、カットオフ値と病前の教育歴についてである。多くの国でそれぞれ独自の集団を対象に
ACE を検証しているので、それに応じてカットオフ値は変動する。インドでの ACE をもちいた大規模研究では教育レ
ベル毎に著しい得点差があった [20]。解釈においては有病率にも注意する必要がある。現在までの ACE および
ACE-R の研究は、すべて認知症の有病率が高い環境で行われている。ACE を地域住民にたいして使用する際に
は、専門センターに比べてはるかに低い有病率であることに留意する必要がある。ACE の重大な欠点は、現時点ま
で地域住民における検討がなされていないことである [21]。
ACE-R は現在までに 40 を超える国々(アルゼンチン、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、ボスニア-ヘルツェゴ
ビナ、ブラジル、カナダ、チリ、中国、キューバ、チェコ共和国、デンマーク、エジプト、イギリス、フランス、ドイツ、ギリシ
ア、オランダ、香港、ハンガリー、インド、インドネシア、イラン、アイルランド、イスラエル、イタリア、日本、メキシコ、ニュ
ージーランド、北アイルランド、パラグアイ、ポーランド、ポルトガル、カタール、ルーマニア、サウジアラビア、スコットラ
ンド、スロベニア、南アフリカ、韓国、スペイン、スイス、タイ、トルコ、ウルグアイ、アメリカ)と 28 の言語において使用さ
れている。
参考文献
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19.
ACE-R よくある質問
なぜ検査をダウンロードするのに登録する必要があるのか?
我々は全ての使用者に、検査内容、標準データ、関連文献の変更および改訂について情報提供したいと考えてい
る。また検査がどの程度広く使われるようになっているかを追跡するためにも登録を継続している。
なぜ3つの異なるバージョン(A, B, C)があるのか?
それぞれのバージョンは住所と名前の想起課題の項目が異なっている。それらは初回の検査から次回検査への学
習効果を避けるようにデザインされている。経過中数年にわたり住所と名前を覚えている患者もおり、その場合に検査
が無効になるのを防ぐためである。(訳注:日本語版はバージョン A と B があり、上記課題に加え MMSE の記銘-想
起課題もバージョン間で異なっている)
ACE-R を用いて再評価するにはどのくらい期間を空ければよいか?
想起課題の学習効果を避けるために、理想的には 6 ヶ月空けるべきである。(訳注:日本語版ではバージョン A を 4
週間空けて施行した場合の試験・再試験信頼性を確認している)
ACE-R の得点 にもとづ いて認知 症 の診 断 ができるか?
できない。ACE-R の得点は臨床評価の一部分であり、それのみで診断してはならない。患者が低得点(例えばカッ
トオフ値より下)をとった場合は、さらに全般的な神経心理学的評価を行うか、専門医に照会した方がよい。低得点は
低い教育レベル、文化的背景の違い、または抑うつによることもあるのを覚えておくのは重要である。しかし我々の経
験では、そのような要因によって 82 点より低い点数をとることはまれである。
ACE-R の得点 で認 知症の重症 度 評 価 (例えば 軽 度 、中 等 度 、重 度)ができるか?
できない。認知症の重症度評価は、介護者や家族からの情報や日常生活動作の評価をふくむ包括的な臨床評価
による。現在我々は様々な疾患での認知症重症度評価における ACE-R の意義について検討している。
どの医療従事者でも ACE-R の施 行は可 能 か?
可能である。我々は ACE-R 施行の手引きとこの「よくある質問」を読み、数人の被験者(友人、親、祖父母など)で練
習して慣れておくことを推奨している。
ACE-R の使用 にあたって料金支 払 いの必 要 はあるか?
ない。ACE-R の著作権は John Hodges 教授が所有しているが、臨床及び研究目的でだれでも使用できる。
75 歳以上の標準 データがあるか?
現時点では無い。年齢範囲を拡大したデータの収集を現在行っており、標準データが確立されれば登録使用者に
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日本語版 ACE-R
施行および採点の手引き
通知する予定である。(訳注: “Australian Administration and Scoring Guide - 2010” に 79 歳までの標準デー
タが記載されている)
VLOM ratio はどのように算出するのか?
VLOM = 言語流暢性(最高 14 点) + 言語(最高 26 点) / 見当識(最高 10 点) + 記憶(最高 7 点)
見当識は最初の 2 項目、記憶は最後の住所と名前の想起の項目のみを計算する。(訳注:日本語版での VLOM
ratio の意義は未検討)
ACE-R に semantic index は適用できるか?
直接的にはできない。Semantic index は ACE を用いて検討されたため、この指標を用いたい場合は semantic
index を算出するのに必要な項目を ACE-R に補完しなければいけない。
「古い」ACE を用いているが、ACE-R に変 更 すべ きか?
できればそうするべきである。ケンブリッジ大学での長年の使用の後、John Hodges の研究グループは ACE に多く
の欠点を見つけたため、改訂版の作成・検証を行った経緯がある。
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日本語版 2008 年 8 月 翻訳および改変, 2011 年 2 月 改訂 吉田英統, 寺田整司 ©2000, John Hodges
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