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平成26年第7回臨時教育委員会会議録(別紙)【8月5日(火)】
平成26年第7回臨時教育委員会会議録(別紙)【8月5日(火)】 〔音楽〕 (研究調査結果の報告) 柴田研究員代表 前回、質問があった学習指導要領で指定されている共通教 材、およびその他の採用曲、特に児童が楽しく音楽への興味・ 関心を高める曲の掲載について、歌唱を中心に説明する。 1年生の共通教材は、 「ひらいたひらいた」 「かたつむり」 「う み」 「ひのまる」の4曲である。 「きみがよ」 「さんぽ」 「こぶた ぬきつねこ」「しろくまのジェシカ」「ぶんぶんぶん」「あいあ い」 「おちゃらかほい」は、共通教材ではないが、両社が掲載 している。 2年生の共通教材は、 「かくれんぼ」 「春がきた」 「虫のこえ」 「夕やけ小やけ」の4曲です。「君が代」「子犬のビンゴ」「か っこう」 「かえるのがっしょう」「子ぎつね」「あの青い空のよ うに」は、両社が掲載しています。2年生でも、音楽に親しむ ことを重視してある。 3年生の共通教材は、 「うさぎ」 「茶つみ」 「春の小川」 「ふじ 山」の4曲である。「君が代」「パフ」は両社が掲載している。 「ゴーゴーゴー」は、運動会の歌として親しまれている曲で、 赤組の歌と白組の歌を重ねて歌う曲である。合奏曲として「ミ ッキーマウスマーチ」を両社とも掲載している。 4年生の共通教材は、「さくらさくら」「とんび」「まきばの 朝」 「もみじ」の4曲である。 「君が代」 「まきばの朝」 「ゆかい に歩けば」「とんび」 「子どもの世界」を両社が掲載している。 教育芸術社では、「いろんな木の実」「友達シンドバッド」「い つだって」などが、特に児童の興味が高まる曲と予想される。 教育出版では、「さんぽ」や、リコーダーの曲なので一覧表に は掲載していないが、 「もののけ姫」が掲載されている。 5年生の共通教材は、「こいのぼり」「子もり歌」「スキーの 歌」 「冬げしき」の4曲である。「君が代」「ほたるの光」を両 社が掲載している。教育芸術社では、 「Believe」 「あり がとうの花」「世界がひとつになるまで」合奏曲の「生命のい ぶき」、教育出版では、「レッツテイクアチャンス」「君をのせ て」 「さんぽ」、合奏曲の「ルパン3世」が掲載されている。 6年生の共通教材は、「越天樂今様」「おぼろ月夜」「ふるさ と」 「われは海の子」の4曲です。「君が代」「つばさをくださ い」 「越天楽今様」「あおげばとうとし」「箱根八里」を両社が 掲載している。教育芸術社では、 「旅立ちの日に」 「明日という 日が」 「この星に生まれて」、合奏曲の「ALLWAYS3丁目 1 平成26年第7回臨時教育委員会会議録(別紙)【8月5日(火)】 の夕日」、教育出版では、 「U&I」 「花は咲く」 「さんぽ」が掲 載されている。 両社とも、児童の音楽に対する興味・関心を高めるために、 楽しく歌ったり演奏したりできる教材を掲載しており、採用曲 に関しての差はない。 したがって、前回の説明通り、目標及び内容の達成、基礎的・ 基本的な知識・技能の着実な習得、主体的な学習という点から も、教育芸術社の教科書が本市の児童が学ぶために適している という結論である。以上で補足報告を終了する。 〔社会科〕 (研究調査結果の報告) 書川研究員代表 前回の報告で不十分だった、郷土を愛する学習について、学 力についての2点について報告を行う。 1点目の郷土学習について、調査の観点9にあたる内容であ る。伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷 土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に 寄与するという観点である。郷土を愛するということは、地元 熊本を学習するということで、主に3、4年生の地域学習に関 連する。教科書で扱う事例は他地域であるので本市では、「わ たしたちの熊本」という副読本を上巻、下巻と使用している。 上巻が3年生、下巻が4年生である。実質的な教科書として、 副読本を熊本市内すべての学校で使用している。 教科書と副読本の使い方については、2点ある。 1点目は、副読本で学習して、教科書の他地域の事例と比較 して共通点などを考えるという使い方である。事例は違うが、 それぞれの地域の開発にいろいろな願いがあり、解決する方法 は同じだという共通点を理解したり、相違点を発見したりする という、ある意味では発展的な内容として取り扱う。 2点目は、教科書と副読本の同時活用という使い方で、調べ 方やまとめ方などの学び方を学ぶために併用して使っている。 具体的にいうと、「わたしたちの熊本」上巻の3年生の内容で あるが、熊本市の土地の様子ということで、カラー刷りで紙面 が構成されている。下巻の4年生では、熊本市のゴミ収集につ いて、具体的なことを記載している。通潤橋についても、11 ページカラー刷りで詳しく記載している。 これまでに、熊本県小学校教育研究会社会科部会をはじめ、 通潤橋の学習には蓄積がある。この副読本には、地域を開発し 2 平成26年第7回臨時教育委員会会議録(別紙)【8月5日(火)】 た事例として、通潤橋以外に県下31か所の事例が紹介されて いる。 東京書籍では、通潤橋について18ページ記載しており、内 容的にはとても充実している。東京書籍3、4年下の104頁 を確認いただきたい。カラーの写真やイラストがあり、108 頁には等高線、109頁には鳥瞰(ちょうかん)図があり、歴 史学習の入門として121頁まで詳しく記述されている。しか し、これまでも通潤橋について副読本で学習してきたし、副読 本を活用することで、教育出版を使用しても十分だと考える。 郷土に関する記述については、3、4年生は、東京書籍が2 2ページ、教育出版が0ページ、日本文教が1ページである。 東京書籍の22ページの内容については、副読本で十分補完で きると、研究員全員で判断した。 5、6年生の郷土に関する学習は、それぞれ各学年で差はあ っても、ほぼ同じページ数となっている。このデータの元は、 熊本県教育委員会「小学校教科用図書選定資料」及び各研究員 で一つ一つ確認した。 郷土を愛する態度を養う工夫について、どのような構成にな っているか、内容について簡単にふれたい。 東京書籍の3、4年下の102頁に、犬童球渓が載っている。 東京書籍は、郷土の発展に尽くすということで、まず全体像を 見せて、地域の発展に貢献した人はどういう人がいるかという ことを初めに紹介している。犬童球渓、北里柴三郎、中村汀女、 林又七のあとに、通潤橋を紹介するという構成になっている。 教育出版の3、4年下の86頁に、横浜の吉田新田といって海 沿いの土地を埋め立てることで開発した事例がある。84、8 5頁を開けていただきたい。東京書籍と違うところは、まずは、 1つの資料から入るところである。祭がずっと続いている理由 を子どもたちが学習する中で、いろいろな聞き取りを通して、 祭が新田開発につながっているというところから入って、地域 の発展に尽くす人物の働きを学習する構成になっている。 続いて、日本文教の3、4年下の106頁に、道徳の本にも 出てくる、浜口梧陵という人物が津波から村を救い、堤防を築 いたという事例が載っている。104、105頁を開けていた だきたい。教育出版同様に、安政南海大地震という1つの絵か ら話し合い、人物の働きに展開するという構成になっており、 東京書籍とはちょっと違う。 各社、それぞれよさがある。東京書籍を採用した場合は、副 3 平成26年第7回臨時教育委員会会議録(別紙)【8月5日(火)】 読本に補完する資料として扱う。教育出版の場合は、同じ田ん ぼを開発したときに、台地と海とで共通点が見られると思う。 浜口梧陵を取り上げた日本文教を採用した場合は、地域の開発 がわかる。3、4年で地域学習のページ数が東京書籍22ペー ジと教育出版0ページとなっているが、副読本の資料で十分に 郷土学習が可能だと考える。 次に、前回説明した6年生の人物学習について説明する。熊 本に関する人物ということで、東京書籍は6人、教育出版は3 人である。 東京書籍は熊本城関係で加藤清正と小西行長、そして夏目漱 石を取り上げている。郷土に関する記述については、教育出版 が9ページ。具体的には、鞠智城を取り上げている。 教科書は、全国の歴史の流れを扱うが、その補完として、郷 土熊本の人物のかかわりということも、いろいろな時代の中で おさえていく必要がある。そのために、 「郷土読本 夢の実現を」 が各学校にあるので、これで人物学習を補完することができる と考えている。中村汀女さんを例に挙げているが、このように 一人一人について熊本とのかかわりについて記述がされてい る。 郷土学習については、3、4年生では、副読本による補完と 教科書の活用、5、6年生については、教育出版と東京書籍と で人物の取り上げ方に差はないし、郷土読本の活用で郷土学習 に十分耐えうる。 2点目は児童の学力についてである。前回、グラフ、図、表 などの資料を読み取る力が弱い、基本的知識の定着率が低いと 説明したが、具体的内容について委員長から質問があったの で、資料で説明する。 資料の21頁を開けていただきたい。25年度のNRTの分 析である。問題番号の21番までが、5年生の学習内容である。 レタスの出荷量と値段、生産調整の理由、漁獲量と消費量、上 越市と那覇市の雨温図の読み、日本海側の気候の特徴が弱い部 分である。雨温図というのは、降水量と気温のグラフのことで ある。このようなグラフの読み取りが不十分で、26年度も同 じような傾向がみられる。 22頁をご覧いただきたい。21、22頁ともに、同じよう なところが弱い。グラフに対する指導に適する教科書はどれか という視点から研究員で話し合った。 資料を読み取る力を付ける工夫ということで、再度確認をした 4 平成26年第7回臨時教育委員会会議録(別紙)【8月5日(火)】 い。教育出版の5年上68、69頁を開けていただきたい。前 回は、色が見やすい、作業がしやすい、グラフの読み取り方が 丁寧に書かれているということを説明した。比較するために、 東京書籍5年上68頁を開けていただきたい。教育出版同様、 東京書籍もグラフの読み取り方が書かれており、教育出版は 「学びのてびき」、東京書籍は「学び方コーナー」となってい る。教育出版は「⑤これからの変化はどうなるか、予想する。」 という記述があるが、東京書籍にはない。 このような、グラフを具体的に読み取って、どのように変化 するか考えるところが、グラフの読み取り方としてはとても重 要であると研究員は評価した。 学力検査で低かった雨温図についても、降水量と気温の読み 取り方について、「学びのてびき」が位置付けてある。 手持ち資料の23頁を開けていただきたい。県学力調査の結 果である。5、6年生の内容で我が国の歴史についての「無答」 と「×」が35.4%。知識についての項目で、 「無答」と「×」 が32.3%という実態である。 ただし、県学力調査は調査対象が市内児童の2割なので、一 概にはいえないが、全体的な傾向はわかる。また、研究員の日 頃の授業の様子から、歴史の学習の定着が厳しいという話が出 ている。 次に、知識の確実な定着を図る工夫である。教育出版では、 人物学習を中心として、どういう時代で何を学習するかという ことが精選されて配置されている。 室町時代の最初のページで確認するが、本時の学習問題、単 元を通した学習問題、そして学習する時代の年表での位置付け が掲載してある。知識の定着のために、単元の最後にまとめと して関係図を書くことは、知識の関係性を深めるために必要で ある。 教育出版のように、基礎的・基本的な学習を位置付けて、段 階的なまとめを定着させながら、関係図などを並行して学習し ていくことが、本市の子どもたちの学力定着のために必要だと 判断した。 知識の定着を図るための工夫の3番目は、学習方法のわかり やすさである。社会科をどう学ぶかということが、わかりやす く示してある。 以上、それぞれの教科書に一長一短があるが、本市の学力の 定着に関して、研究員の総意で教育出版がよいのではないかと 5 平成26年第7回臨時教育委員会会議録(別紙)【8月5日(火)】 判断したので、改めて推薦する。 〔国語科〕 (研究調査結果の報告) 熊本市学力偏差値年度比較の資料から、本市児童の学力の概 要を説明する。本市の児童の国語の学力は、低下傾向にある。 例えば、平成21年度に2年生だった児童の平均は、52.3 →51.5→51.9→51.1→51.4である。また、平 成21年度に4年生だった児童の平均は、52.6→51.9 →51.8→51.5と、低下している。 このことに私たちは危機感をもたなければならない。さら に、小問別正答率の全国との比較を見てみても、3年、4年、 5年と学年が上がっていくにつれて全国と比べてマイナスに なる項目が増えていっている。これを見ても、本市の子どもた ちの国語の学力を何とかして向上させていかなければならな いと思う。 国語の学力は、話したり聞いたり書いたり読んだりする言語 活動をきちんと行うこと、また、学習を充実させていくことが 大切である。国語の学力は教え込めば向上するかというと、そ うではない。何を勉強していけばよいのか、どんな力が付いた のかを児童が自覚できる、つまり、学び方をしっかり身に付け て、自分で勉強していけるようにすることが大事である。 そういう意味で、児童が見通しをもって、ふり返りができる ような配慮がしてある教科書でなければならない。現在使われ ている教科書と比べると、どの教科書会社もそのような点で は、配慮がみられる。前回の会議で報告した「一年間の見通し をもつ」という部分も今回の教科書で新たに取り入れられた部 分である。 私たち調査研究員は、「見通し」と「ふり返り」がきちんと できて、児童が主体的に学習を進めていくことができるという 点に重点を置いて比較していった。内容としては、本市の児童 の課題(1長い文章を読み取る。2複数の資料が組み合わされ た資料を読み取り、それをもとに内容をまとめたり、自分の考 えを書く。3漢字の読み書き、言葉の意味、言葉のきまりにつ いての定着が不十分)が克服できるような点について比較を行 った。 5社の教科書について、単元名からてびきまでが一貫した学 習になっているかという点で、比較してみる。 6 平成26年第7回臨時教育委員会会議録(別紙)【8月5日(火)】 学校図書の6年6~15頁では、単元名は「意見文を書こう 『読む』 」になっている。学習活動は、「書こう」なのに、「読 む」領域での扱いになっている。また、学習のてびきには、 「筆 者の提案を理解し、吟味して考えを深めよう」と書いてあり、 「国語のカギ」というまとめには、「意見文の書き方」として まとめてある。このように、読む活動でこんな力を付けていこ うというめあて、学習活動、身に付けた力に一貫性が見られな い。 教育出版の6年10~29頁、単元名は「物語の世界を想像 して書こう『読む』」になっており、こちらも「書こう」とい う学習活動なのに、「読む」領域での活動である。学習のてび きは、 「登場人物になって想像したことを書こう」 「ここが大事」 というまとめでは、「構成の工夫を読む」になっており、学校 図書同様、一貫性がない。 このようなことから、単元を通じて、学習活動と学習のポイ ントが一貫していないという点で、学校図書と教育出版は配慮 が足りなかったため、3社に絞った。 次に3社の教科書の巻末にまとめてある学習のてびきのま とめを比較した。東京書籍6年、250~259頁「言葉の力」 のまとめでは、領域ごと、単元ごとに学習内容とポイント、さ らに、前学年で学習したポイントまで示されている。 三省堂は6年、254~255頁「覚えておきましょう」の まとめでは、単元ごとの具体的ポイントが示されていない。 光村図書6年、238~241頁「たいせつ」のまとめでは、 領域ごとに学習内容とポイントが示されている。 学習の成果が1番丁寧にまとめてあるのが、東京書籍であ り、2番目が光村図書であった。 また、新出漢字についても、三省堂は単元の学習に入る前に 新出漢字を練習することになっており、その後は脚注などで新 出漢字の読み方などは出てこない。しかし、東京書籍と光村図 書は各教材の脚注に新出漢字の読み方が書いてあり、本市児童 は漢字の力が弱いという実態を考慮すると、この2社の教科書 の方が適していると思われる。 次に東京書籍と光村図書、2社について比較する。 冒頭にも述べたように、本市児童は「比べ読み」に課題があ った。この点で、光村図書は5年時に新聞を読み比べる教材が 入っているが、東京書籍は2年から6年まで系統的に教材が取 り入れられている。くり返し学習して力を付けていくという点 7 平成26年第7回臨時教育委員会会議録(別紙)【8月5日(火)】 で、本市の児童にとって、東京書籍は、より適した教科書であ ると言える。 前回は、読む領域で説明文を取り上げたが、今回は、物語文 のどの教科書にもある有名な4年「ごんぎつね」で東京書籍と 光村図書を比較してみる。 光村図書の学習のてびきの流れは、「読んで考えたことを話 し合おう」 「登場人物の行動や気持ちの変化を読もう」 「感じ方 の違いを知る」になっている。登場人物の行動や気持ちの変化 の読み取り方について話し合いをしながら力を付けていくと いう学習活動をしていくが、てびきのまとめとしての「たいせ つ」には、 「感じ方のちがいを知る」ということで、 「物語の感 じ方は、十人十色である。」などのまとめ方がしてあり、一貫 性という点では、少し弱いように思う。 東京書籍の学習のてびきは、「人物の気持ちの変化と、中心 となる人物とほかの人物との関わりを考えながら読む」という めあてで、「兵十に対するごんの気持ちを考えながら読み、最 後の場面のごんと兵十について感想を伝え合う」という学習活 動を進めていくことが丁寧に説明してある。「言葉の力」とい うまとめにも、「中心となる人物とほかの人物との関わり」と いうことで物語を読む際のポイントを詳しく示してあり、一貫 した学習活動になっている。ほかの教材を読むときにも、この ような手順で読み進めていけばよいことがわかるようになっ ている。 このように、物語文の「てびき」での、学習内容、学習活動、 読み取るための具体的なポイントが子どもにわかりやすいと いう点で、東京書籍の教科書の方が、本市の児童にとって適し ていると思われる。 展示会での意見に物語文の挿絵についての意見が多数あっ たため、2社を比較してみた。1年「おおきな かぶ」4年「ご んぎつね」5年「大造じいさんとがん」6年「海の命」の挿絵 は、それぞれ次のようになっている。 物語文を読み進めていく際に、挿絵は大変重要な役割をして いる。 場面割りや挿絵がどのような場所にどのように示されてい るかということを見ていくと、東京書籍の挿絵はとても効果的 に配置されている。印象的な山場の場面から次の場面に移ると き、ページをめくった次のページに来るように場面割りがして あり、その場面に応じた挿絵が入れられている。児童の想像を 8 平成26年第7回臨時教育委員会会議録(別紙)【8月5日(火)】 広げ、物語の中に、スーッと入っていけるような配慮がなされ ている。 挿絵や場面割りなど、小さなことのように思えるが、児童に とっては、とても大きい要素であると考える。 以上のことから、調査研究員としては、本市児童の学力の課 題への配慮や、意欲をもって学習に臨むための配慮が最もよく なされている東京書籍の教科書が本市の教科書として、最適で あると判断したことを報告する。 〔理科〕 (研究調査結果の報告) 一井研究員代表 はじめに、小学校理科に関する調査分析を井上指導主事が報 告し、その後、前回の補足を行う。 井上指導主事 小学校理科に関する調査結果の分析について報告する。本市 の児童の課題が3点あった。1点目が観察・実験の計画を立て るのが苦手であること。2点目が日常生活と関連付けて捉える のが苦手であること。3点目が天体を取り扱う単元の正答率が 低いということ。この3点が本市の児童の課題であると説明し た。この根拠を説明する。分析したのは、平成24年度 全国 学力・学習状況調査、平成25年度 熊本県学力検査、平成2 4、25年度NRTである。 まず、平成24年度全国学力・学習状況調査において、正答 率が40%未満の問題が3問あった。 1問目は、スイカの受粉と結実の関係を調べる実験につい て、適切な実験方法を選び、選んだ理由を書くという問題であ ったことから、実験の計画を立てることが苦手であると判断し た。 2問目は、方位磁針の適切な操作方法を選び、その時の太陽 の方位を書くという問題であった。ここから、方位磁針の正し い使い方が身に付いていないと判断した。 3問目は、天気の様子と気温の変化とを関係付けて、気温の 変化を表したグラフを選び、選んだわけを書くという問題であ った。一日の天気で、午前中は晴れ、午後は曇りのときの気温 の変化のグラフであった。ここから、日常生活と関連付けて捉 えることが苦手であると判断した。 次に、熊本県学力検査からである。定着率が低く30%以下 の問題が、 「太陽と地面のようす」 「月と太陽」という天体に関 9 平成26年第7回臨時教育委員会会議録(別紙)【8月5日(火)】 するところである。この問題から、日陰と太陽の位置関係を理 解することに課題があると判断した。 県平均と本市平均の差が最も大きく定着率が低かった問題 が、5年生の受粉させない実験に用いる花を選択しその根拠を 言葉で表現するというものである。ここから、実験の計画を立 てることが苦手であると判断した。 また、6年生の5日間の観察による月の動きと満ち欠けの様 子が理解できていないことから、実際に継続して月を観察して いないということがわかった。 最後に、平成24、25年度NRTからである。小問別で正 答率が50%以下、全国比で-1%以下だったところで特に注 目したのが2問ある。1問目は、はさみをてこの原理で説明で きるという設問が低くなっており、日常生活と関連付けて捉え ることが苦手と判断した。2問目は、三日月に見えるときの太 陽・月・地球の位置関係を、光源・ボール・自分の位置関係で 類推するという問題で、月を観察して、ボールの見え方と比較 することが苦手であると判断した。 以上のことをまとめて、各調査結果から本市の児童の課題を 3点とした。 一井研究員代表 今、報告した本市の児童の課題を踏まえて、昨日は6年生「月 と太陽」の単元で各社の教科書を比較した。本日は、3、4年 生で補足の報告をする。 まず、3年生の「太陽と地面のようす」では、影の向き、太 陽の見える方向、影の動きが出てくる。大日本図書では、観察 1で、自由に影の向きや太陽の見える方向を体感させる。観察 2では、影が1時間後にどのように変化するか比べるように位 置付けられている。 一方、啓林館では、観察1で影ができるときの太陽の位置を 自由に観測させて捉えさせている。次の観察で、大日本図書で は、観察3で地面の方位を方位磁針で確定した後、午前10時、 正午、午後2時の影と太陽の方位を観測するようになってい る。つまり、観察1~3までの3段階でじっくり観測するよう になっているということである。 一方、啓林館の方は、観察2で影と太陽の方位の観測を午前 10時、正午、午後2時で行うようになっている。観察のてい ねいさを比べたときに、大日本図書の方にていねいさがあると 判断する。 10 平成26年第7回臨時教育委員会会議録(別紙)【8月5日(火)】 次に、先ほど本市の課題として報告した方位磁針の取り扱い については、全国でも3割に満たない定着率である。指先をき ちんと伸ばして、方位磁針の針と指を平行にして方位を決定し ていく。4年生では太陽の方位を、6年生では月の方位を指先 の方向で決定していく。啓林館でも同じように指を向けてい る。4年生「月と星」でも、方位磁針を使って月と星の時間に よる位置の変化を捉えさせる観察がある。最初の観察方法その ものは、大日本図書も啓林館も変わらない。次の観察で、方位 磁針を手に持って、指先の方向で月や太陽の方位を示すとき に、斜めから見てしまうことがある。特に、啓林館の方は、方 位磁針を持った手の図が斜めになっている。児童に方位を判断 させるときに、教科書の図の正しい見方が難しくなる。つまり、 啓林館では、3、4年生で方位の使い方を習得していくときに、 方位磁針を斜めに持ったり、指が曲がっていたりしているとい う課題があると思う。 以上で、3、4年生での天体単元について比較した報告を終 了する。 次に、昨日質問のあった理科ノートについて紹介する。各委 員に資料として配布している理科ノートは、現在、本市で使用 している県版の啓林館の理科ノートである。 県内で、啓林館を採択している地区は啓林館版を、大日本図 書を採択している地区は大日本図書版の理科ノートをそれぞ れ使っている。県内で、大日本図書版と啓林館版の2社を熊本 県小学校教育研究会理科部会が作成している。本市は、本年度 3年~6年生の児童が1万6千冊使用しており、採用率でみる と58.4%である。 県版のノートの他に、業者が作成した理科ノートを使用して いる学校もある。ほとんど教科書と併用して、教科書に準拠し た理科ノートを使って学びを進めたり深めたりしていること を申し上げたい。 市販の普通のノートや方眼ノートなどだけを使って授業を 行っている教員は実際は少ないと思う。 以上、大きく3点、本市の児童の理科における課題の根拠に ついて、課題と思われる天体の3、4年生の観察について、現 在使われている理科ノートについての報告をした。 11