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目次 - コマツ

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目次 - コマツ
4.22-コマツ環境報告書-3章 00.5.9 1:39 PM ページ 1
目次
3 自然と共存する商品、サービスの提供 ………………………………………………………………14
3.1
お客さまの環境活動へのソリューションの提供 …………………………………………………15
3.1.1 環境を保全する建設機械・技術の提供 ………………………………………………………15
3.1.2 環境改善技術 ……………………………………………………………………………………21
3.2
製品とサービスの環境負荷の低減 …………………………………………………………………22
3.2.1 燃費の向上 ………………………………………………………………………………………23
3.2.2 排気エミッションの低減 ………………………………………………………………………24
3.2.3 騒音・振動の低減 ………………………………………………………………………………25
3.2.4 環境負荷物質の低減 ……………………………………………………………………………26
3.2.5 リサイクル可能率の向上 ………………………………………………………………………27
3.2.6 バイオオイルの開発 ……………………………………………………………………………28
3.2.7 ゴムシュー履帯のリサイクル …………………………………………………………………28
3.2.8 リマン ……………………………………………………………………………………………30
4.22-コマツ環境報告書-3章 00.5.9 1:39 PM ページ 14
3 自然と共存する商品、サービスの提供
コマツは、環境保全の一つの進め方として、建設廃棄物をリ
コマツの技術は「EcologyとEconomyの両立」を実現
サイクルしてお客さまのコスト負担を減らす「環境保全型建設
機械」を積極的に開発・提案しています。またすべての環境対
策に対して、技術革新によってコスト負担を抑える努力をして
Ecology
います。この「EcologyとEconomyの両立」という発想により、
コマツは環境保全に関する技術開発を推進しています。
環境保全技術
&
Ecology と Economy の両立
コスト
地球温暖化、オゾン層破壊、廃棄物の不法取り扱いといった
Economy
地球規模の環境問題の多発にともない、環境対策は緊急の課題
とされています。また、環境問題そのものも変化し、たとえば
従来排気ガスの課題であった窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素
(CO)
、炭化水素(HC)
、パティキュレート(粒子状排出物)対策に
加えて、現在は二酸化炭素(CO2)対策も優先度の高い課題です。
このように刻々と変化する環境問題への対応として、速やか
コマツならではの技術で活動を推進
に環境対応製品を導入・使用することが求められています。し
Ecology と Economy の両立の代表的な一例が、「環境保全型建
かし、環境対応製品がお客さまのコスト負担を増やすものであっ
設機械」の提供です。たとえば、コマツが関わる建設工事の分
ては、普及に時間がかかり地球環境への貢献は限られたものと
野では、多くの建設廃棄物や建設発生土が生じます。これをど
なってしまいます。たとえば、CO2 低減であれば環境対策とお
のように処理するかについては、建設関係者にとって環境とコ
客さまの燃料コスト低減が直結し、適切な省燃費装置を開発す
ストの両面で非常に大きな課題となっています。
れば速やかに普及します。しかし、NOx 対策のように、従来の
この課題への一つのソリューションとして、コマツは「現場で
技術対応ではお客さまのコスト低減につながらない事象、ある
破砕しできるだけ現場内で再利用する」ことを提唱しています。
いは相反する事象については、そのままでは経済的に普及しに
現場で発生した伐採材、転石、不良土は現場で破砕あるいは改質
くく、技術革新にチャレンジすることによってはじめて、環境
し、現場で再利用する。このもっともシンプルなリサイクルシス
負荷とコストを同時に低減することが可能になります。
テムが、建設工事と環境との関わりを変えようとしています。
このように技術革新によって、EcologyとEconomyの両立する
また、コマツでは、汚染土壌の処理、採石場における廃棄物
領域を拡げ、地球規模での環境改善に役立つ環境対応製品の導
リサイクルなど、コマツならではの技術を生かした環境保全シ
入を進めようとするのが、コマツの「Ecology と Economy の両
ステムを導入または開発し、お客さまの環境活動へのソリュー
立」のポリシーです。
ションを提供しています。
Ecology と Economy を生み出す環境フォーラム
環境に配慮した商品の開発にあたっては、生産コストを上げな
コマツでは、多岐にわたる専門知識をもった人々の視点・知恵・
いことが重要なテーマとなります。どんなに優れた製品でも、あま
知識・アイデアを集め、つなげ、発展させていくことを目的に、
りにも高価であればお客さまは導入できません。継続的な環境対
1999年度から社内のネットワーク上に「環境フォーラム」という
応を実施するためには、環境保全と競争力強化の両方を同時に満
全社共通のデータベースを設けました。
たすことのできる「技術」を新たに生み出すことが必要となります。
「環境フォーラム」では、
「環境に優しい」と思われることであ
そうした「技術」を生み出すには、従来と全く異なった視点で
れば、どんなアイデアや考え方でも気楽に書き込んでいくことが
物事を見つめ、求められていることの本質を知り、新たな発想で
できます。コマツの「EcologyとEconomy の両立」は、このよう
研究開発に取り組むことが重要です。しかし、従来のものの考え
にネットワーク上のブレーンストーミングで多くの分野の専門家
方の延長線上ではなかなか解決が困難なことも事実です。そこで
の知恵を結集した結果だともいえます。
14
4.22-コマツ環境報告書-3章 00.5.9 1:39 PM ページ 15
3 自然と共存する商品、サービスの提供
3.1 お客さまの環境活動へのソリューションの提供
コマツでは、工事現場での廃棄物を現場内でリサイクルする
一方、このような廃棄物を埋め立てる最終処分場も残余年数
現場循環型工法を実現するために「自走式破砕機ガラパゴスシ
が少なくなってきており、新規設置も難しい状況下にあるため、
リーズ」を商品化し、建設工事にともなう環境保全と工事のトー
従来の方法にとらわれないリサイクルの方法を確立することが
タルコスト削減の両面に貢献しています。
求められています。そこで建設省などでは工事発注者へのリサ
イクルを義務づけるなど、早くからリサイクルの推進を提言し
3.1.1
てきました。
環境を保全する建設機械・技術の提供
廃棄物の動向
建設業界の動向
建築物の解体工事や道路工事など、私たちが社会基盤を整備
昨今、建設業界に対する工事費削減の圧力は強くなっていま
していく建設工事からも廃棄物は発生しています。このような
す。このような状況下で、廃棄物処分コストの増大は各社の収益
建設工事から発生するコンクリートガラや廃木材などの廃棄物
を圧迫することにつながります。そのため、現場からの廃棄物量
は、一般に建設廃棄物(建設副産物)と呼ばれ、産業廃棄物全
を削減しコストを抑制するための、合理的でコストの安い廃棄物
体の中でも大きな比重を占め、不法投棄問題として報道される
処理方法の導入が、建設業界から強く求められています。
ことも多い厄介ものです。また油圧ショベルで掘削された土も、
その大部分は軟弱な建設発生土であるため、そのままでは再利
用できず、廃棄物として処理しなければなりません。
建設廃棄物種類別発生量(1995年度)
産業廃棄物発生量(1994年度)
飲料・飼料・たばこ製造業
7,377(1.8%) 食料品製造業
11,856(2.9%) その他の業種
36,657(9.0%)
建設業
化学工業
17,928(4.4%) 76,931
(19.0%)
窯業・土石製品製造業
19,425(4.8%) 全国計
405,455 農業
74,878
千t
(18.5%)
パルプ・紙・紙加工品製造業
24,917(6.1%) 建設発生土量(1995年度)
その他(廃プラスチック・
紙くず・金属くず)
100(1%)
建設発生木材
600(6%)
民間土木
1,800(4%) 建築
4,300
(10%)
建設混合廃棄物
1,000(10%)
建設汚泥
1,000(10%)
アスファルト・
コンクリート塊
3,600(36%)
全国計
9,900
万t
コンクリート塊
3,600(37%)
鉄鋼業
30,081(7.4%) 全国計
44,600万
m3
公共土木
38,400(86%)
鉱業
30,793(7.6%) 電気・ガス・熱供給・水道業
74,610(18.4%)
出典:総合的建設副産物対策
出典:建設省・建設副産物実態調査
出典:建設省・建設副産物実態調査
建設工事のコスト構成変化(イメージ)
最終処分場残余年数
3.5
3.0
3.0
残
余 2.5
年
数 2.0
︵
年
︶ 1.5
工事単価の低下
3.1
2.7
2.6
粗利
2.3
2.0
1.6
金
額
処分費
処分費の増加
1.0
0.5
0
直接
工事費
1993
1994
1995
1996
1997
1998
1999
年度
出典:日経コンストラクション2000.1
1990
年度
1999
15
4.22-コマツ環境報告書-3章 00.5.9 1:39 PM ページ 16
現場循環型工法の導入(ゼロエミッション型建設工事へ)
け小規模な段階で破砕処理することができれば、環境への影響
道路の新設工事は、伐採や掘削によって伐根・伐採材、転石
を抑えることができるだけでなく、工事のトータルコスト削減
や不良土などが大量に発生します。従来は、これらの建設廃棄
に効果があるからです。そのため、
「現場内リサイクル機」は次
物や建設発生土を搬出・廃棄していましたが、コマツでは、現
のような基本構造としました。
場で再資源化し再利用する「現場循環型工法」の導入を考えま
①自走できるクローラ式走行装置(履帯など)
した。その基本となったのは、
「現場で破砕しできるだけ現場内
②破砕装置(クラッシャーなど)
で再利用する」ための「現場内リサイクル機」の開発です。
③破砕対象物を破砕機に運ぶ供給装置(ホッパ・フィーダ)
現場にリサイクル機を持ち込むことができれば、現場内でリ
サイクルが効率的に行えます。具体的には、伐根・伐採材はチッ
④破砕物の排出装置(ベルトコンベア)
⑤パワーユニット(エンジン)
プ化しマルチング材や吹き付け材に、転石は路盤材に、不良土
そして1992年度には、
「家屋の解体工事から発生するガラを現
は改良し路床材に再利用できます。その結果、廃棄物の発生量
場で破砕し、現場内で盛土材として再利用する」というニーズに
そのものを削減できるだけでなく、新材(資源)の節約や運搬
対応するインパクトクラッシャー搭載の「ガラパゴスBR60」を
のための物流エネルギーの節約など環境面で保全に大きく寄与
商品化。続いて、シリーズ化を進め、1999年度には自走式木材
することができます。また、コスト面においても廃棄物処分費、
破砕機「ガラパゴスリフォレBR200T」を商品化しています。い
新材購入費、物流費を低減できるため、工事のトータルコスト
ずれも、リサイクル推進の流れを受けて非常に高い評価を得てい
を大幅に下げることが可能となります。
ます。
コマツは、この現場循環型工法を実現する現場処理型リサイ
現場循環型リサイクル機械「自走式破砕機ガラパゴスシリーズ」
クル機械を、
「自走式破砕機ガラパゴスシリーズ」と名づけてい
現場循環型工法を考える場合、廃棄物の発生現場へ持ち込む
ます。ダーウィンの進化論で有名なガラパゴス島から命名した
ことが可能で、しかも処理能力のあるコンパクトな機械が必要
このシリーズ名称には、地球環境の保全に貢献するという願い
です。廃棄物発生の源流(発生現場)にさかのぼり、できるだ
が込められています。
1992年度に初めて商品化されたガラパゴスBR60
16
1999年度に商品化されたガラパゴスリフォレBR200T
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ガラパゴスによる現場循環型工法
法面緑化
伐 採
掘 削
伐採材
盛 土
転石
舗 装
再資源化
不良土
伐採材
自走式木材破砕機
マルチング材
転石
自走式破砕機
路盤材
不良土
自走式土質改良機
路床材
従来の工法
伐 採
掘 削
伐採材
法面緑化
現場外へ移動処理
運 搬
転石
不良土
盛 土
舗 装
廃 棄
現場外で採取し搬入
運 搬
新材採取
17
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ガラパゴスのシリーズ化
このガラパゴスシリーズは、1999 年度までに国内で通算約
私たちは、現場循環型工法需要の拡大に合わせてさらに商品
1,400台、海外で約150台が販売され、現場循環型工法のキーマ
を拡充し、現在ではシリーズ全体で16機種を自社開発。機械単
シンとして国内外の工事現場で環境保全活動に貢献しています。
体として、あるいは周辺機器とのシステム化によるミニプラン
さらに廃家電製品や廃タイヤなど、工事現場以外の処理場への
トとして、現場に最適な形態で稼働を続けています。
導入にも関心が高まっています。
リサイクル建設機械のラインアップ
自然石
コンクリートガラ
アスファルトコンクリートガラ
混合廃棄物
粗大ゴミ
建設発生土
(残土)
木質系廃棄物
ガラパゴス
BR200T
ガラパゴス
BZ200など
ガラパゴス
BR300S など
ガラパゴス
リフォレ
BR210JGなど
ガラパゴス
リテラ
BR1600JG
(受注生産)
BR250RG など
BR500JGなど
すべてのガラパゴスを現場でサポート
自走式ベルコンBM 2014C
18
自走式ふるい機 BM3618S
4.22-コマツ環境報告書-3章 00.5.9 1:39 PM ページ 19
ガラパゴスの導入①:コンクリートガラ、アスファルトコンクリートガラ、
ガラパゴスの導入②:木質系廃棄物分野
従来、建設工事から発生する伐採樹木は、そのほとんどが野
自然石分野
コンクリートガラやアスファルトコンクリートガラはその大
焼き処分されていました。しかし、野焼き禁止の法規制化とダ
部分が石からできているため、鉄筋や木くずなどの異物を除去し
イオキシン問題発生にともない、近年そのあり方が大きくクロ−
破砕・選別すれば、道路の下層路盤材や構築物の裏込材、埋め戻
ズアップされています。
し材などとしてリサイクルできます。また最近では、150∼250mm
その解決策として、コマツは伐採樹木のチップ化を提案して
程度の中塊に破砕・選別し、河川の護岸工事などにも使用され始
います。チップ化した破砕材には、伐採斜面への散布マルチン
めています。
グ材、燃料といったそのままの利用方法と、堆肥やボード類へ
の材料といった利用方法があります。
建設省富士砂防工事事務所 富士山「大沢崩れ」溶岩土石流発生現場除石工
事(静岡県)
除石作業で発生した溶岩土石を破砕しスクリーンでふるい分けることにより、
0∼50mmの細かい土石は道路の路盤材や住宅などの盛土材として、50∼150mm
の粗い石は海岸の浸食防止養浜工事材としてリサイクルされています。
▼
大沢扇状地に堆積した
溶岩土石
50∼150mmの砕石を
養浜工事材として使用
土地造成工事での伐採材処理工事
従来、野焼き処分していた土地造成時に伐採した樹木の枝葉や根株などを、
現場で細かくチップ状に破砕することで、植林地へ撒いたり、チップや堆肥
原料としてリサイクルすることが可能となります。
▼
破砕後のチップ
マルチング材として
利用
19
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ガラパゴスの導入③:建設発生土分野
そのためコマツでは、発生土をその場で固化材と混合し改良
現場で掘削された土は含水率が高いため、従来はこれを定置
する現場循環型土質改良工法を開発し、ガラパゴスシリーズの
改良プラントに運搬し改質処理していました。しかし、定置改
一環として商品化しました。これにより、現場で採取した土は
良プラントの絶対数が慢性的に不足している現状では、発生現
現場でリサイクルされ、盛土材として再度現場で活用すること
場からプラントまでの運搬距離が長くなり、環境面と工事トー
が可能となります。
▼
タルコストの両面で問題が生じています。
日本道路公団中国支社 中国横断自動車道地盤改良工事(島根県)
現場で掘削された土は含水率が高くそのままでは使用できないため、発生土
をその場で固化材と混合し改良することで、盛土材としてリサイクルしてい
ます。従来の工法に比較して、混合品質に優れ作業効率も向上しています。
完成した地盤改良工事
ガラパゴスシリーズの受賞実績
ガラパゴスシリーズは、環境保全に貢献する建設機械として、
各方面より評価され、表彰を受けています。
商品
表彰名
受賞
名称
ガラパゴス
平成7年度 再資源化開発事業等表彰
通商産業大臣賞
自走式破砕機(ガラパゴス) (財)クリーン・ジャパン・センター
開発事業
ガラパゴス
第21回優秀環境装置表彰
日本産業機械工業会
会長賞
自走式解体ガラリサイクル車 (社)日本産業機械工業会
(ガラパゴス)
ガラパゴスリテラ
平成10年度 再資源化開発事業等表彰
通商産業環境立地局長賞
自走式土質改良機
「ガラパゴスリテラ」の開発
ガラパゴスリテラ
平成11年度 日本建設機械化協会会長賞
奨励賞
ガラパゴスリテラ
平成11年度 優秀省エネルギー機器
日本機械工業連合会
会長賞
ガラパゴスリテラ
エネルギー・資源学会第13回技術賞
(東京ガスと共同申請)
20
JGA技術賞
自走式土質改良機
リテラBZ200の開発
自走式土質改良機
(リテラBZ200)
主催
(財)クリーン・ジャパン・センター
(社)日本建設機械化協会
(社)日本機械工業連合会
移動式改良土プラントによる (社)日本ガス協会
発生土のリサイクル
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3.1.2
□
硬い鉱物結晶となって安定化します。また、
「セメント固化」な
環境改善技術
どの方法に比べ、土壌などの処理対象物の特性もほとんど変化
重金属汚染土壌処理技術「アパタイト処理」
しません。
コマツ・ゼネラルアトミックス・エンジニアリング*は、1998
なお、1998 年度に環境庁の委託業務として実施した「土壌汚
年より米国から重金属汚染土壌処理技術を導入し、事業展開し
染浄化技術確立・実証調査」の結果、これまでの重金属汚染処
ています。
理方法「化学的不溶化」に対し、
「アパタイト処理」の優位性が
この重金属汚染土壌処理技術は、汚染土壌中の有害な重金属
を水に溶けない鉱物結晶「アパタイト」に変化させ、外部に漏
示されました。また、1999 年度は、東京都内において汚染土壌
の無害化処理に適用されました。
れ出さないよう固定・無害化するというもの。代表的なアパタ
イトとしては、水酸化アパタイトCa5(PO4)3OHがあり、たとえ
ば、鉛(Pb)などの+イオン金属の場合、水酸化アパタイトの
Ca と置換され、分子式は、Ca5-nPbn(PO4)3OH(ただし、n は 5
以下)となります。
置換された同形構造アパタイトも、もちろん鉱物結晶として
のアパタイトの基本特性をもっています。そのため、いわゆる
従来から行われてきた「化学的不溶化」処理とは異なり、酸性
からアルカリ性の広い範囲で溶出しないばかりでなく、非常に
ガラパゴスリテラとの組み合わせによる六価クロム汚染土壌の浄化事例
採石場廃棄物のリサイクル で商品化しました。この添加剤は中性なため、従来のアルカリ
これまで採石場から発生する無機汚泥は、廃棄物として処分
されていました。しかしコマツは、この無機汚泥に簡単な改良
性の添加剤に比べて環境に優しく、地下水への影響がないこと
が証明されています。
を加えることで、優れた粘土特性と良好な水への溶解性が得ら
さらに1999年度には、新たに水の多い地盤で止水性と排土性
れることを発見。このリサイクル粘土の特性を活用して、地下
を著しく向上させる、掘削添加剤「グラベルコート」を商品化
掘削機械用添加剤をコマツアイエムエンジニアリング*と共同
しました。
添加剤注入サイクル
クリーンダンパー
ムルティ プランタ
水ホースまたは
泥漿ホース
水と添加剤を撹
拌し、ポンプで
圧送する
プラグゾーン 撹拌・プラグ形成
添加剤の注入を
調整
添加剤作液状況
注入
コマツ・ゼネラルアトミックス・エンジニアリング(株)は危険物・有害廃棄物・汚染土壌物質
などの処理、および処理技術や機器の開発・製造・販売を行っています。
コマツアイエムエンジニアリング(株)は、管推進機械の施工指導および掘削添加剤などの製
造・販売を行っています。
21
4.22-コマツ環境報告書-3章 00.5.9 1:39 PM ページ 22
3 自然と共存する商品、サービスの提供
3.2 製品とサービスの環境負荷の低減
コマツの主力製品である建設機械は、資源開発や土木・農業
LCAに基づく中期環境技術開発目標(1999年度設定)
など人類の快適な生活を実現するために役立っています。コマ
2005年度
目標値
2010年度
ツではその考え方を一歩進め、人類だけではなく地球そのもの
(1)CO2排出量
に対しても優しい機械づくりの開発に取り組んでいます。製品
の環境への影響については大部分が設計段階で決まるといって
(2)リサイクル可能率
1998年度 PC200-6 … 81%
WA100-3…92%
も過言ではありません。そのためコマツは、建設機械のライフ
(3)環境負荷物質
△50%(1998年度比) △75%(1998年度比)
サイクルアセスメント(LCA)を行い、4項目の「LCAに基づく
(4)ライフサイクルコスト
△20%(1998年度比)
△5%(1998年度比) △10%(1998年度比)
97%以上 99.5%以上
中期環境技術開発目標」を設定、その達成に努力しています。
LCA の導入
0.7m3 油圧ショベルのライフサイクルCO2 排出量
素材
製造
コマツは、1998 年度より社内に研究会をつくり、ライフサイ
クルアセスメント(LCA)への取り組みを開始しました。そして、
使用(10,000h)
廃棄
1
すでに公表されている各分野でのLCA事例を参考に、コマツとし
て実行しやすい方法を構築するための簡易計算方法を標準化して
きました。1999年度は、これをもとに主な製品について、CO2 を
0
100
200
300
400
500
コマツ技術標準に基づく計算結果
600
(t CO2)
対象にしたインベントリー分析を実施し、環境に与える負荷レベ
ルの認識を深めるとともに、4項目の「LCAに基づく中期環境技
術開発目標」を設定し負荷低減のための指針としました。
また、LCAによって判明した圧倒的な比率を占める使用段階の
CO2 排出量については、エンジンだけでなく車体コンポーネント
環境負荷物質
環境負荷物質に関しては、2005年度に半減、2010年度にさら
に半減することを目標としています。そのために不凍液のノン
アミン化、ハンダの鉛使用廃止などを進めています。
を含めた総合的なアプローチにより、低減のための研究開発を推
進しています。コマツは、今後も「Ecology と Economy の両立」
を旗印に、環境保全と製品ライフサイクルコストの低減を同時に
追求し、お客さまに喜ばれる環境対応を進めていく予定です。
ライフサイクルコスト
EcologyとEconomyの両立を実現するため、以下のような技術
開発で、お客さまのライフサイクルコストを下げながら地球環
境に優しい製品を提供していきます。
中期環境技術開発目標
CO2 排出量
CO2 については、国全体の目標値を上まわる10%削減を2010
●オイル・フィルター等の使用寿命の延長による部品費・設備
費用の低減や、再生ゴムシューを低価格で提供するなどの活
動を進めています。
年度までに実施することを目標としています。現在は、2005年度
●リマン事業の展開により再生コンポーネントをリーズナブル
の目標値である5%以上削減を目標に製品の多くを開発していま
な価格で提供すると同時に、コンポーネントの寿命を延長す
す。
るための技術開発に注力します。
● CO2 低減、すなわち燃料費の低減活動を重点的に続けていき
リサイクル可能率
ます。
建設機械のリサイクル率は、自動車や家電製品に比べると従
来から高い値を示しています。そのため、2010 年度のリサイク
消耗品廃棄物量
ル可能率目標値は、完全リサイクルをめざして 99.5 %としまし
消耗品廃棄物についても同様に、2005年度に半減、2010年度
た。また、2005 年度の目標値である 97 %を達成するためには、
にさらに半減することを目標としています。たとえば、オイル、
たとえばパワーショベルではコンクリートカウンタウェイト、ゴ
フィルタ、不凍液については、寿命延長や廃棄量削減、廃棄容
ムシューをリサイクルできるようにする必要があります。2010
易化を進めています。同時に、ホース、ゴムシューなどのリサ
年度の目標値である99.5%を達成するためには、さらに10項目
イクル技術や再生技術により、廃棄物を再資源化するための開
のリサイクル技術開発が必要です。
発にも取り組んでいます。
22
4.22-コマツ環境報告書-3章 00.5.9 1:39 PM ページ 23
3.2.1
□
燃費の向上
建設機械のCO2 の発生量は、燃料消費量にほぼ比例します。し
たがって、エンジンの燃料消費量を低減させることは、次の3つ
の効果をもたらす重要なテーマとなります。
①有限な地球資源を守る
②地球温暖化の原因となるCO2 を削減する
③お客さまに対しても、大きな経済的な効果をもたらす
コマツが建設機械などに使用しているディーゼルエンジンは、
ガソリンエンジンに比べて熱効率が高いため、もともとCO2 の発
生を抑制するうえでは有利な内燃機関です。しかしその一方で、
排気ガス中の規制物質の一つである窒素酸化物(NOx)を削減す
新開発の6D170系エンジン
る方策は、一般的には燃料消費率の悪化を招く傾向があります。
そのため、排ガス対策と燃料消費率低減を両立させることが、今
日のエンジン製造者にとっての最大の課題となっています。
次世代建設機械用エンジン制御システム
燃料消費率の低減には、車両トータルでの効率を上げること
コマツは、これまでもディーゼルエンジンの燃料消費率とし
も、非常に有効な手段となります。IPAでは、コマツグループの
ては世界最小レベルを維持してきました。しかし今後は、ます
一員として、コマツの車体特性を理解している強みと、グルー
ます厳しくなるエンジンへの要求に応えるためにもさらなる技
プ内にエレクトロニクス技術をもっていることの強みを生かし
術革新が要求されます。そのためコマツは、1998 年 1 月に世界
て、車両の実作業の中で、エンジンが常に最大効率で働けるよ
最大のディーゼルエンジン専門メーカーであるカミンズ(Cummins)
うな制御システムを開発しています。
社(米国)と共同で、新しい開発会社としてアイ・ピー・エー
*を設立しました。IPA は、常に燃料消費率が世界最小と
(IPA)
なるエンジンを開発し続けることを社是としており、1999 年度
は排ガス対策をする一方で、燃料消費量を低減させるため、以
下に示すような新しい噴射システムの開発などを実施しました。
バリアフリー対応の省エネルギー型
オートマチックトランスミッション
コマツでは、建設機械用エンジン以外でも、燃費の向上に取り
組んでいます。路線バスのバリアフリーに対応した低床型ノン
ステップバスが急速に普及しつつありますが、低床にするため
超高圧噴射システムの開発
2001 年から始まるオフロード機械に対する第二次排ガス規制
エンジンとオートマチックトランスミッションを車両後部に横
置き可能とし、さらに燃費向上のため、アイドリング時にはエ
では、規制値が一段と厳しくなり、従来の燃料噴射システムで
ンジンをストップさせる
達成できる噴射圧では、燃料消費率の低減と排ガス対策の両立
アイドリング・ストッ
は困難となってきます。これを解決するための有効な手段の一
プ・システム対応可能な
つに、燃料を高圧噴射し、燃料と空気の混合を促進して燃料消
省エネルギー型オートマ
費率を低減する方法があります。
チックトランスミッショ
コマツが 2000 年より量産を開始する 6D170 系エンジンには、
ン(ZF-ECOMAT)をコ
テムHPI(High Pressure Injection System)を搭載し、クラス最小
マツ・ゼットエフ・オー
トモーティブ*が生産、
燃費188g/kWhを達成しています。
販売しています。
クラス世界最大の噴射圧 196MPa を可能とした独自の噴射シス
ZF-ECOMAT(ノンステップバス用オートマ
チックトランスミッション)
(株)アイ・ピー・エーは小山工場内に活動拠点をおき、ディーゼルエンジンの開発・研究を行
っています。
コマツ・ゼットエフ・オートモーティブ(株)は大型バス、トラック用オートマチックトランス
ミッションを製造・販売しています。
23
4.22-コマツ環境報告書-3章 00.5.9 1:39 PM ページ 24
3.2.2
□
燃費向上技術でもある高圧噴射システムの採用により、パティ
排気エミッションの低減
キュレートの増加や燃費の悪化を防止しています。また、これ
建設機械用エンジンについても1996年から本格的な排ガス規
以外にも、排気エミッション低減のために以下のような開発に
制が始まっていますが、コマツでは他のエンジンに比べて熱効
取り組んでいます。
率の優れたディーゼルエンジンが今後も主力になると考え、そ
のエミッション低減を最優先で進めてきました。なかでも NOx
空冷アフタクーラの採用
とパティキュレート(粒子状排出物)については、一般に、どち
ターボチャージャ付きエンジンでは、加圧により給気が、出
らか一方をよくすると、他方が悪化してしまうという背反関係
力によっては150℃をこえるような高温になってしまいます。こ
にあり、これらの低減を両立させることが技術上の課題となっ
の結果、燃焼温度の高温化によるNOx増加を招くばかりでなく、
ています。
吸入空気密度の低下により、圧力上昇分ほどには性能の改善が
NOx 低減には、燃料の噴射時期を遅延させる方法が広く採用
得られないという問題がありました。
されていますが、これだけでは燃焼が悪化し、パティキュレー
これに対してコマツは、第一次排ガス規制に対しては、エン
トの増加や燃費の悪化を招いてしまいます。そこでコマツでは、
ジンの冷却水を利用する水冷式アフタクーラを採用し、給気温
建設機械の排ガス規制と
ディーゼルエンジンの現状
コマツの低エミッション・ディーゼルエンジン
空冷アフタクーラ
対策前
0.6
パ
テ
ィ
キ
ュ
レ
ー
ト
ターボチャージャ+給気冷却
*1
USEPA 第1段階規制
(1996∼)
0.4
︵
g
/
HPh
︶
0.2
高圧燃料噴射ポンプ
量産中
USEPA第2段階規制
(2001∼)
開発中
燃料促進型FCDピストン
空気流動促進
0
2
4
6
8
*1 USEPA は米国環境保護庁の略です。
24
10
NOx
(g/HPh)
4.22-コマツ環境報告書-3章 00.5.9 1:39 PM ページ 25
度を下げて NOx の低減をはかりました。さらに、現在は第二次
排ガス規制に向けて、よりいっそう効果の大きい空冷アフタクー
ラ付きエンジンを開発中です。
3.2.3
□
騒音・振動の低減
コマツでは、騒音を低減するために従来から積極的に開発に
空冷アフタクーラは、エンジンの冷却水よりも低温な外気を
取り組み、すでに従来車よりも10dBも静かな超低騒音の研究車
利用して給気を冷やすため、NOxを低減できるだけではなく、パ
(油圧ショベルPC128UU)を開発しました(周囲7m地点で、従
ティキュレートや燃費の低減にも効果が期待できます。コマツ
来車の騒音値は70dBでしたが、研究車の騒音値は60dB)
。これ
では、すでに一部の機種に空冷アフタクーラの搭載を開始し、第
は人間が聴覚でとらえる騒音を 10 分の 1 まで減らす効果をもつ
二次排ガス規制段階では、多くの機種に空冷アフタクーラを採
ことを意味します。この技術を油圧ショベルに限らず広く適用
用する予定です。
するため、ブルドーザ、ダンプトラックなどのあらゆる量産モ
デルに採用可能な低騒音デバイスの開発を行うとともに、設計
FCDピストンを利用した燃焼室形状の最適化
の標準化を進めています。
パティキュレートを低減するには、燃焼室内での燃料と空気
具体的な対策では、エンジンルームへの空気口からの騒音を下
の混合を促進する必要があります。コマツでは、高強度の FCD
げる吸音ブレード、吸音ベンチレータ、高性能吸音材の採用、排
ピストン採用による燃焼室形状の最適化と、吸入通路形状の工
気管の高性能化などにより、建設機械の低騒音化を推進してい
夫による空気流動促進の組み合わせにより、パティキュレート
ます。1999 年度は、低騒音化デバイスを油圧ショベルの 2 機種
の低減を達成しています。
に採用するとともに、リサイクル化推進のため、建設機械とし
ては初めてPET 繊維の吸音材を採用しました。
第三次排ガス規制への対応準備
2005 年からさらに厳しい第三次排ガス規制が予定されていま
す。コマツでは、第三次規制をクリアするための技術の先行研
究に積極的に取り組んでいます。
規制に適合したエンジンの生産・出荷
エンジン生産部門のある小山工場内に、エンジン環境グルー
プを設立。定期的なエンジン排ガスレベルの検査などにより、常
超低騒音の研究車
(油圧ショベル
PC128UU)
に規制に適合したエンジンが生産・出荷されていることを自主
的に監査しています。
主な騒音対策例
排気口騒音対策
・高性能吸音
ベンチレータ
・多重液路吸音ダクト
排気騒音対策
・大容量2ウェイ
排気マフラー
・サイレンサー内蔵尾管
高性能
複合吸音材
FCD ピストン
吸気口騒音対策
・高性能吸音プレード
エンジン騒音対策
・高剛性シリンダーブロック
・軽量FCDピストン
・吸音材遮音カバー
25
4.22-コマツ環境報告書-3章 00.5.9 1:39 PM ページ 26
3.2.4
□□
環境負荷物質の低減
リサイクル困難なプラスチック材料
FRP、塩化ビニール、ハロゲン系難燃処理材の新規用途の使用
コマツは 1988 年にはアスベスト製品の廃止、MSDS*整備な
制限を実施します。特にFRPは、他のリサイクル性のよい材料へ
ど、OSHA*勧告に基づき、いち早くこれらに対応してきました。
の積極的な代替を進めていきます。また、ダイオキシン発生の恐
また、1992 年にはプラスチック部品の分別回収記号刻印を全社
れのある塩素を含む材料に関しても、購買部門、部品メーカーと
で開始するなど、早期に環境対応を心がけてきました。
共同で、塩素フリーな材料に代替する活動を推進しています。
そして1992年の「コマツ地球環境憲章」制定以降、環境保全
に関する意識はさらに高まり、1999 年には、コマツは建設機械
その他のリサイクル困難な材料
の環境負荷を全体的にとらえて評価し、企業として総合的に低
グラスウール、複合材料部品の代替を推進します。吸音、断
減していく活動を開始しました。これにともない、環境負荷物
熱用途で使用しているグラスウールは、ウレタン、PET 材への
質に関しても技術分科会で以下の方針を立て、開発部門に徹底
代替を進めています。複合材料であるゴムシューは、部分補修
することとしました。
の容易なロードライナーのようなリサイクルしやすい構造への
変更や、リサイクル方法自体を検討しています。
全面禁止を明確にする物質
PCB、アスベスト、特定フロンの3物質を特定しました(すで
に禁止済みであるが再確認の意味で設定)
。
コマツは、これらの方針の徹底と標準化(KES*)を 1999 年
度中に実施しました。なお、購入部品に対しても同様な処置が
必要なため、1999 年に発行した『グリーン購買ガイドライン』
使用を限定する物質
重金属などの環境負荷物質(水銀、鉛、カドミウム、ひ素、セ
に「グリーン購買規制対象物質一覧表」という項目を設け、梱
包、包装などの副資材も含めて規制物質を記載しています。
レン、六価クロム、代替フロン、トリエタノールアミン)は、ど
うしても代替の困難な現在の用途(たとえばハンダなど)以外
の用途は使用不可とします。現在の用途に関しても、使用を削
減する努力を鋭意継続します。
環境 KES について
KES(コマツ技術標準)は、コマツの社規、技術標準基本則に
環境 KES は、環境に関する各種標準類の内容を全社で審議し
基づいて社内の技術標準委員会で審議され、技術部門の長により
KESの形に仕上げ、正式にコマツの標準としてコマツグループに
公布されるコマツグループ共通の社内規格です。ISO、JISなどの
公布された独自の標準です。
規格で規定されていない項目や内容についてコマツ独自の技術を
環境KESが制定されるということは企業の目的に環境が位置づ
標準化したものです。これは企業の目的に沿ってつくられるもの
けられることであり、かつ具体的な技術作業の「拠り所」
「守るべ
で、繰り返し行われる技術作業に対し、製品の品質向上・原価低
きもの」として、環境対応へのガイドラインが引かれたことを意
減または技術作業の合理化のための「拠り所」となるものである
味しているといえます。
と同時に「守るべきもの」でもあります。
MSDS: Material Safety Data Sheet 化学物質の安全性に関するデータシート
OSHA:Occupational Safety & Healthy Administration 職業安全衛生局
KES:Komatsu Engineering Standard コマツ技術標準
26
4.22-コマツ環境報告書-3章 00.5.9 1:39 PM ページ 27
3.2.5
□
そして、コマツの主力商品である建設機械においても、機械
リサイクル可能率の向上
のライフサイクルに「3つのR」を位置づけ、リサイクル活動を
プラスチック部品に材質識別記号を表示
徹底しています。
1980 年代後半より建設機械の都市土木向け需要が増大し、外
観の意匠性や運転室内の居住性などへの要望が強くなり、これ
リサイクル可能率の向上をめざして
に対応してプラスチック部品が多く使われるようになりました。
さらに1998年には、リサイクル可能率のさらなる向上をめざ
コマツはこの時点で、これらが廃棄されるときを想定して、プ
して以下の「リサイクル可能の定義基準」を設け、社内での認
ラスチック部品に材質識別記号をつけることを、1992年業界に
識の共通化をはかっています。
先駆けて開始しました。
①リサイクルしやすい材料を使用する
②リサイクルしやすい構造を採用する
リサイクルコンセプトを構築
③リサイクルされた材料を活用する
また1993年度には、地球環境保全、資源保護の観点から、コ
④環境負荷物質の使用を削減する
マツのリサイクル活動の基本的な考え方を「3つのR」という表
現でまとめました。
開発部門の取り組み
① Reduce:捨てるものを減らす
開発部門では、この定義基準を具現化するための設計基準を
・消耗品:使用量を減らす
整備する一方で、現在発売中の機種についても試算を行い問題
・耐久財:長寿命化をはかる
点の把握をしています。そして、コマツと関係する材料・部品
②Reuse:そのまま製品、部品として再利用する
専門メーカーにコマツのリサイクルの考え方や現状の問題点を
・中古市場での商品価値向上
説明し、理解と支援を得ながら共同でその解決をめざしていま
・コンポーネント、部品のリビルド拡大
す。今後は、よりいっそうリサイクル実行率を向上させていく
③Recycle:形態を変化させて再資源化する
ために、解体容易化などの改善に取り組んでいきます。
・Material Recycle:材料、原料としての再利用
・Thermal Recycle:熱エネルギー源としての再利用
主な製品のリサイクル可能率
建設機械のライフサイクルと
「3つのR」
Recycle
車両
工程内リサイクル
(材料・エネルギー)
Reuse
販売・サービス
中古車
リサイクル可能
81%
製造
(メーカー)
使用
(お客さま)
Reduce
・長寿命化
・使用量減
Recycle
材料
油圧ショベルの例
(PC200-6)
Reuse
中古部品
使用済み車両
再生部品
エネルギー
解体
(処理業)
鉄・非鉄金属
ゴム・
プラスチック
リサイクル可能
92%
車体
ホイールローダの例
(WA100-3)
27
4.22-コマツ環境報告書-3章 00.5.9 1:39 PM ページ 28
3.2.6
3.2.7
□
□
バイオオイルの開発
ゴムシュー履帯のリサイクル
建設機械の特殊性とバイオオイル
使用済み部品の中でも、ミニ∼中型油圧ショベルなどで広く
建設機械は屋外で稼働することが多く、高圧ホース破損やオ
使われているゴムシュー履帯は、その数量、廃棄処理費用など
イル交換などで油漏れが起こった場合、周辺環境の汚染につな
の影響が大きいため、優先度の高い課題としてリサイクルに取
がります。こうした状況に配慮して、1980年代に欧州では、水
り組んでいます。
源地や森林の汚染を防ぐ目的で、一部の環境保護区域内で作業
する建設機械に対し、生分解性作動油(バイオオイル)を使用
使用済みゴムシューの処理
することを行政指導しました。バイオオイルは通常のオイルと
使用済みゴムシューは、年間約14,000 本発生しています。ディ
は違って天然油脂を原料としているため、地面にこぼれた場合
ストリビュータでは、次のような方法でその処理を行っています。
でも、土中のバクテリアにより自然に分解されてしまう性質が
①再生
あります。
②電炉リサイクル
③焼却(焼却後、鉄部のみスクラップ処理)
④産業廃棄物処理(マニフェスト管理)
コマツの対応
このバイオオイルを、現在稼動している最新の建設機械でも
使用することを目的に、コマツは「コマツ純正バイオ作動オイ
ル BO46-G4」を世界に先駆けて開発しました。この製品は、従
来のバイオオイルがもつ環境安全性に、建設機械の能力を損な
わない機能を加えたもので、次のような特徴を備えています。
①生分解性をもち、環境負荷が少ない
②過酷な条件で稼働する建設機械の耐久性を損なわない
③設計変更や専用部品が不要
④従来のバイオオイルに比べ十分なブレーキ力を保有
⑤オイル交換時に前の油と混ざっても問題を起こさない
⑥飛散しても回収しやすく、しかも環境に影響を与えない
これらの高い品質・性能が認められ、1997 年度には日本建設
機械化協会奨励賞を、また1998年度には日本機械学会奨励賞(技
術)を受賞することができました。1999年度には、従来よりも厳
加硫プレスによる再生作業
しくなった新しいエコマークを取得しています。
バイオオイル
28
収集場での再生不可能品積み込み作業
4.22-コマツ環境報告書-3章 00.5.9 1:39 PM ページ 29
このうち、焼却、産業廃棄物処理は環境へ影響をおよぼす可
能性が高いため、コマツでは再生可能なゴムシューに関しては、
再生を処理方法として推奨しています。
開発段階からの対応
さらにコマツでは、リサイクル性に優れたロードライナー方
式ゴムシューを開発し、採用を進めています。ロードライナー
方式ゴムシューは、従来の一体型ゴムシューに比べ、分割式で
再生への取り組み
破損箇所だけの交換が可能であり、また廃却時の解体性に優れ
使用済みゴムシューの再生にあたっては、次の2つのポイント
ています。
が重要となります。
①良質な再生用パーツの回収
②安価な物流コストの実現
コマツではこれを解決するために、コマツ部品*と共同で独自
の再生ルートを確立。他社に先駆けてゴムシューの再生・販売
再生前ゴムシュー
事業を開始し、全国2カ所の再生センターでは年間約 3,000本の
使用済みゴムシューを再生しています。
再生不可能品の電気炉でのリサイクル
ゴムシューの状態が不良な場合は、鉄の原料として電気炉で
処理します。これは、建設機械工業会主導によるリサイクル活
動で、現在、東北・関東・関西/中部の3地区で実施しています。
再生後ゴムシュー
1999年度の処理実績は約 200t。今後この方法を推進していくた
めには、全国のメーカーとの協力、運送費の低減化などのこま
めな対応が必要となってきます。
使用済みゴムシューの処理方法
再生
ゴムシューに再生
電炉リサイクル
鉄のリサイクル
使用済みゴムシュー
環境負荷
鉄スクラップ
焼却
最終処分場の減少・遠方化
産廃処理
マニフェスト管理
コマツ部品(株)は、部品・用品の販売政策、商品企画の統括、商流・物流などの活動を行って
います。
29
4.22-コマツ環境報告書-3章 00.5.9 1:39 PM ページ 30
3.2.8
□
リマン
リマンとは
リマン(Reman)とは「再製造」を意味する「Remanufacturing」
の略語です。
コンポーネントを、下記ポスターに示すように、さまざまな
工程を経て新品同等の品質によみがえらせ、不具合の修理や定
期オーバーホールなどの際に載せ替えます。また、この載せ替
えた古いコンポーネントはリマンセンタで再製造し、リマン商
品として再び市場へ供給します。これがコマツの「リマン事業」
の考え方です。
リマンと似た考え方に、リビルド(Rebuild=再組み立て)が
リマンの特徴
コマツのリマン事業には、次のようなメリットがあります。
①新品同等の品質・性能を保有・保証しているので安心し
て使用できる(Quality)
②新品コンポーネントに比べて割安で、機械のランニング コストを低減できる(Cost)
③適正に在庫されたリマン品をすぐ載せ替えることにより、
機械の休車時間を短縮できる(Delivery)
④コンポーネント・部品のリユース・リサイクルによる資
源の節約と廃棄物の削減ができる(Ecology)
このように、コマツのリマン事業はお客さまにとって多くのメ
リットのある事業であり、しかも環境保全にも寄与しています。
あります。このリビルドとは、基本的にお客さまが要望する部
分だけに補修を加えることをいいます。リビルドの場合、それ
リマン事業の展開
ぞれのコンポーネントの品質が異なってくるため、新品同等の
コマツは、世界6地域にリマンセンタを設置し、事業の拡大を
保証ができる場合と、できない場合が出てきます。また、コン
推進しています。日本ではコマツリマン*が、エンジン、トラン
ポーネントを修理する間、機械を止める必要もあります。この
スミッション、トルクコンバータ、油圧シリンダーなどの建設機
ようにリマンのほうがリビルドよりも優れた考え方といえます。
械の主要コンポーネントを対象として「CRユニット」という名
称で取り扱い、リマン事業を推進しています。ここでは、資源節
約という観点から日本のエンジンの事例を主に紹介します。
リマンの工程を示すポスター
30
4.22-コマツ環境報告書-3章 00.5.9 1:39 PM ページ 31
エンジン部品の寿命延長
リサイクル
関連するコマツ各社が共同で、エンジンの耐久性を高めるた
これまでは、使用できなくなったコンポーネントはお客さま
めの取り組みと同時に、リマン性の高い製品の開発に努めてい
やディストリビュータなどで廃棄してきました。しかし、現在
ます。リマン性を高めるために必要とされるのは、エンジンにど
は再使用のためにリマンセンタに返却しています。1999年現在、
れくらいの耐久性をもたせるか、オーバーホールの時期をどう
エンジンの返却率は98%をこえています。
設定するか、最終耐久性目標をどこにおくかなどの項目です。そ
コマツリマンでは、それらコンポーネントを加修・リユース
のため、世界 6 地域のリマンセンタと共同で建設機械の稼働デー
し、CRユニットを製造しますが、加修・リユースできない鋳造
タを収集し、各部品ごとに具体的な目標を設定のうえ、耐久性・
部品についてはコマツキャステックス*小山製造部へ返却。同工
リマン性の高い製品を開発しています。
場で溶解されて再び新品の部品に生まれ変わります。
リユース
リマンマニュアルの作成
リマン事業では、お客さまより返却されたコンポーネントを
部品のリユース率の向上をはかるために、部品の再使用可否
分解し、部品の一点一点について厳格なリユース可否基準と照
基準の設定、部品の加修要領などについて、開発部門、製造工
らし合わせ、リユース可能部品を選別しています。リユース可
場とコマツリマンと共同でリマンマニュアルを作成しています。
能部品を増やすということは、資源の節約、廃棄物の削減と同
また、環境に優しい洗浄液を海外リマンセンタへ紹介するなど、
時にコストの低減にも結びつきます。
海外での環境対応にも考慮しています。
たとえば、12V140系エンジンでは、検査、選別、加修の技術
を向上することによって、事業開始当初に比べ1999年度では部
品のリユース率は26%向上しました。
世界のリマンセンタ
英国/ニューカッスル
KEISA リマンセンタ
★
日本/コマツマリン
総合研修所
■
★
★
南アフリカ/ヨハネスブルグ
KSA リマンセンタ
★
★
コマツ
米国/レキシントン
コマツリマン
ノースアメリカ
インドネシア/バリクパパン
P.T. コマツリマニファクチャリングアジア
★
豪州/ブリスベン
NSK イーストコーストリマンセンタ
豪州/パース
NSK ウエストコーストリマンセンタ
コマツリマン(株)は、リマン事業によりエンジン、トランスミッション、油圧機器などの再生
販売を行っています。
コマツキャステックス(株)は、建設機械や産業機械に使われる鋳物を生産すると同時に、鋳物
生産技術をもとに各種生産設備を開発、提供しています。
31
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