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講演内容 - 静岡市
基調講演: 「まちづくりと交通の連携による都市のイノベーション」 望月 明彦 京都大学客員教授(前国土交通省大臣官房技術審議官) ただいまご紹介をいただきました望月でございます。 このお話をいただいたのは昨年の秋口だったと思いますが、そのときにはまだ国土交 通省の人間でございましたので、国の政策なり、あるいは仕事柄、富山で出向して仕事 をしたこともございますので、富山のお話などをしてくれということでしたので、今日 お受けをしてお話をすることにいたしました。 皆様のお手元にパワポがございますので、それに基づいてお話をしていきたいと思い ます。 我が国の都市は、人口減少や高齢化により、今後大きな変化が予想されます。昨年は 日本創生会議の人口減少問題検討分科会が 2040 年の人口の予測をもとにして「消滅可 能性都市」という都市を約 900 発表いたしまして大きな話題となりました。また国で は、昨年、人口減少や高齢化に対応しまちづくりを進めるための施策を創設いたしまし た。 本日は、そのような背景をもとにして、今後の都市のあり方としてどのようなまちづ くりを目指すことが重要なのかということをお話ししたいと思います。2 つ目に、今申 しました私もこのまちづくりに関わりましたけれども、ここで申しておりますまちづく りを先導的に実施している富山市の取り組みをお話しして、最後に、静岡市の現状と課 題についてと題して私の感じたことを若干お話ししたいと思います。 まず、人口動態についてでございます。左のほうに全国の人口の将来予測が書いてご ざいますが、これについては皆様よくご存じだと思いますが、我が国の人口は今後 30 年で約 2 割減少すると言われております。その中で、65 歳以上の高齢者が全体で 900 万人増えていく、高齢化率も現在の 23%から 36%に高まっていく、こういうことが言 われております。 この人口動態は、地方と大都市圏で大きく様相が異なっています。地方都市では、今 後 30 年で人口の減少が非常に激しくて、2 割から 3 割減少すると言われております。 高齢化については、先行的に高齢化が進んでいるということもございまして、高齢者の 人口の増はそれほど大きくはありませんが、しかし、生産年齢人口が大きく減少するこ とから、結果として高齢化率は 30%~40%という非常に高い状況になっていく、こう いう状況でございます。 ここには人口 10 万人クラス、5 万人クラス、その前のページには県庁所在地のグラ フが書いてございますが、今申しましたような状況は都市の規模が小さくなればなるほ ど顕著に出てくる、こういう状況でございます。 地方都市は、地方都市に限らず全国の都市でございますが、我が国の都市は 1960 年 代から人口が急激に増加をしていきました。ここには県庁所在地の平均の人口の推移が 書いてございますが、1970 年から 2010 年までに人口がこのような形で伸びたわけで すが、その方々が住んでおられる既成市街地の面積はそれ以上のペースで拡大をしてい って、1970 年と 2010 年を比べますと、市街地の面積は倍増しました。 これが現在の既成市街地と言われている面積ですが、そこにお住まいの人口がこれか ら 30 年かけて 1970 年の数字にまで落ちていくということですので、現在の既成市街 地の密度が大きく低下をしていくということになります。そうなりますと、まちの中に あるさまざまな機能が人口密度が落ちていくことによって十分に維持していくことが できないということが出てくる。そうなりますと、まちの中で今まであったいろいろな 機能がなくなっていく。居住者を支えるサービスが地域で提供できなくなるということ がこれからいろんな都市で発生してくるのではないかということが懸念されます。 例えば、静岡のような規模の都市ではありませんが、人口 10 万、5 万の都市に行き ますと、まちの真ん中に行きますとコンビニすらないという、こういうまちがあちこち にあるということをお感じになっていると思いますが、こういう状況がこれから全国的 に深刻になるということを考えますと、都市全体の観点からの取り組みを強力に進めて いくということが必要になってまいります。 一方で、大都市の状況は大きく変わっております。大都市におきましては、人口の減 少は地方都市ほど顕著ではなく、全体で言いますとここ 30 年で 10%減少するのでは ないかと言われております。 大都市の大きな問題は、高齢者人口が急激に増えるということでございます。東京圏、 中京圏、近畿圏の 3 大都市圏の中心部と郊外部、2 つを分けておりますが、全体で 65 歳以上の人口が 250 万と 350 万ですから合わせて 600 万人ぐらいこれから 30 年で増 えていくということが予想されております。この高齢者の増大ということが大都市圏で はこれからまちづくり、地域に与える影響が大きいのではないかと思います。 その中でも、特に 65 歳以上の人口が 600 万増えると申しましたけれども、戦後のベ ビーブーム世代が高齢化するということもございまして、85 歳以上の高齢者の方が急 速に増えていくということが顕著でございます。ここの下にありますけれども、65 歳 から 75 歳までの人口の増加に比べて 85 歳以上の人口の増加というのが非常に顕著で あるということが見て取れると思います。 今、高齢者が増えるということで、医療だとか、福祉だとか、さまざまな問題点が指 摘されておりますが、65 歳以上の方々、健常者も方も多くいらっしゃいます。しかし 85 を過ぎますと、やはり体のどこかしらにいろんな問題を抱えておられる。医療だと か介護ということのサポートをしていかなければいけないという方がこれから急速に 増えていくということになりますが、一方で、そういう介護の施設などを見ていきます と、これから急速に伸びるだけの需要に十分に対応するという、こういう施設が賄って いけないということが大きな課題であります。 このような問題に対応するために、医療や介護、看護などの生活支援サービスを日常 生活圏で提供して、在宅で安心して生活できる、こういう環境を確保していく。さらに 寿命ではなくて、健康寿命ですね。健康に暮らせる、こういう期間を延ばしていくとい うことに積極的に取り組むということがこれからの医療、福祉の方向でございます。こ れを実現するためには、医療、福祉分野だけの施策ではなくて、まちづくりと一体的な 対応がまさに必要になってくるわけであります。 このような課題に対応するために、これからのまちづくりを大きく転換していかなけ ればいけないと考えておりまして、具体的には、まちの中心部、あるいは交通結節点と いうようなエリア、ちょうど赤い丸がございますが、こういうエリア、拠点エリアに医 療や福祉等のサービス機能の集約立地を誘導していく。併せて、その周辺で徒歩や公共 交通を利用してそういうサービスが受けられる地域に居住を誘導していく。 こういうことによって日常的なサービスが身近に存在する、こういう集約型の都市構 造、こういう構造を目指すまちづくりを積極的に進めていくという方向に舵を切ること が必要ではないかと考えております。 この考え方を具体化する施策として、昨年、都市再生特別措置法の一部を改正いたし まして、昨年の 8 月に施行いたしました。内容といたしましては、市町村が都市全体の 観点から居住機能や福祉、医療、商業等の都市機能の立地、公共交通の充実に関する包 括的なマスタープランを作成して、そのマスタープランに基づいてまちづくりが実現で きるように民間の都市機能への投資、あるいは居住を効果的に誘導するための施策を展 開していく、こういう中身でございます。 具体的に申しますと、先ほど見ていただいたまちづくりの大きな概念図ですが、中心 部でありますとか、公共交通の結節点等、あるいは昔、合併した市町村であれば、旧町 のいろいろな施設があったような既存の中心部、そういう赤いエリアをイメージしてお りますが、そういうエリアを都市機能誘導区域というふうに指定をいたします。 そのエリアにサービス施設を誘導していくということでございますが、そのエリアと、 そこにどういう機能を誘導するのかということを決め、それを実施するために、ここに あります民間のいろいろな機能の立地を促進するための税制でありますとか、財政上、 あるいは金融上の支援が可能になるような、こういう制度をパッケージで今年度、26 年から活用できるように国として用意をいたしました。 また、併せて、例えばそういう施設が中心部に入りやすいように、容積率を緩和する でありますとか、逆にこの赤いエリアの外側に都市機能の立地を行うことを緩やかにコ ントロールしていくような仕組み、こういう仕組みを作りました。また、それを取り囲 むような青いエリアをイメージしておりますが、居住誘導区域と称しまして居住を誘導 して、一定の人口密度を維持していくようなエリアを設定いたしまして、やはりそれを 実現するためのさまざまな制度というものを今回用意をしております。 さらに、そういうものを結ぶ公共交通の政策としては、地域公共交通活性化及び再生 に関する法律という法律がございまして、その法律を昨年、この都市再生特別措置法と 併せて改正をいたしました。 この中身は、公共団体が中心になって、地元の公共交通事業者と地域交通網形成計画 というものをこの立地適正化計画と調和しながら作成する。その計画に基づいた公共交 通の立地について支援をしていく、こういう中身でございます。 今回の法律改正によって、公共交通とまちづくりを一体的に考えて実現をしていくと いう具体的な制度が今回初めてできたというふうに言えます。まさにまちづくりと公共 交通を合わせて、今後の、先ほど申しましたような集約型の都市構造を実現するための まちづくりを進めていただく、こういう土俵ができたのではないかと考えています。 現在、全国の市町村では、この立地適正化計画の策定の準備が進められておりますし、 国土交通省もその策定をサポートしている、こういう状況でございます。 次に、2 点目の富山市の取り組みについてお話ししたいと思います。 私は先ほど申しましたように、平成 14 年から 16 年まで富山市に出向しておりまし て、コンパクトなまちづくりの構想づくりに従事をいたしました。それから 12 年がた ちまして、当時考えていたプロジェクトが次々に実現し、コンパクトなまちづくりの効 果もやっと表れてきたのかなと思っております。 その概要を富山市からいただいた資料を中心にして紹介をしていきたいと思います。 まず富山市でございますが、ここに日本地図がございますが、ここが静岡ですから、 ちょうど本州の対称に位置しているような、そういう位置にございます。 地形的には静岡に似ているところがございまして、静岡は駿河湾に面して海抜 0 メー トルから南アルプスの 3000m 級の山まで市域に持っております。富山市は富山湾に面 しておりまして、同じく 0 メートルから、今度は北アルプスの 3000m 級の山まで持つ ような、こういうエリアが市域になっております。 私が出向したのは旧の富山市でございましたが、平成 17 年 4 月に周辺の町村と合併 いたしまして現在の富山市になっております。人口、それから一般会計の予算は静岡市 の大体 6 割でございます。面積は静岡市の 9 割ぐらいの面積になっている、こういう まちでございます。 これが空から見た富山の状況でございますが、旧富山市を中心にして、平地の部分と いうのは富山湾にそそぐ神通川の扇状地でございます。物理的な制約がなく、どこでも 土地利用ができるという土地柄でありました。また、道路の整備率は日本一ですし、自 動車の保有台数もトップクラスでございます。 典型的な分散型の都市でございまして、車利用者にとっては非常に暮らしやすいまち でありますが、ひとたび車が利用できなくなると本当に暮らしにくいまちだなというの が私の富山の第一印象でございました。 一方で、地方都市にしては例外的に鉄軌道が残っておりました。したがいまして、こ れからのまちづくりを考えたときに、公共交通を軸にした拠点集約型のコンパクトなま ちづくりを目指すほうがいいのではないかということで、コンパクトなまちづくりとい うものをまちづくりの構想に据えて具体的なまちづくりが本格化したというところで ありました。 具体的にやることは 3 つ。公共交通の活性化をすること。それから公共交通の沿線地 域への居住を促進すること。3 つ目が中心市街地の活性化を図ること、ということでご ざいました。 私がいたときにはここまで具体的な話になっておりませんでしたが、その後、市町村 が合併をして新しい富山市になって、そのような施策を展開する上で具体的な目標を定 めるということでできたものがこれでございます。 この絵にございますように、青い中心市街地の基本計画で認定をした 400ha 弱と、 それから、鉄道や軌道、路面電車ですね。それから主要な幹線のバスルートのバス停の 周辺 300m でありますとか、あるいは駅の周辺 500m のエリアをこのように括りまし て、これを公共交通の沿線地域というふうに称しまして、これが全体で 3500ha ぐら いございましたけれども、この 2 つのエリアに居住する人口を 2005 年の段階で 11 万 7500 人を 2025 年、20 年後には 16 万人にしていこうと。 市全体で言いますと、市全体の人口は減っていきますので、全体の 4 割ぐらいの方に このエリアに住んでもらうということを政策目標にして、先ほど申しました 3 つの施策 を総合的に展開をしていこうということでここ 10 年やってきているということでござ います。 1 つは、公共交通の活性化でございます。 先ほど申しましたように、富山市では黄色の路面電車、あるいは緑色の市内の、都市 内といいましょうか、都市間に近い私鉄が存在をしておりました。 こういう鉄道の利便性を高めいくということなのですが、1 つは、富山ライトレール というものの整備。それから、既存の路面電車網を延長して、都心で環状線を作るとい うこと。さらには今年の 3 月に北陸新幹線ができますが、合わせてこの北陸線が静岡の ように連続立体交差ですね。 立体化するということを契機に、北と南の路面電車をつないで、駅のところで、ちょ うど駅のコンコースのところに路面電車を入れまして南北を連結する。こういう大きな 3 つのプロジェクトを今進めています。 1 つ目の富山ライトレールの整備でございますが、これは以前、これが富山駅ですが、 富山駅から海岸線の岩瀬浜というところまで JR 西が運行していました富山港線という 線路がございました。これを廃止いたしまして、一部鉄道の施設を利用しながらまちの 中は路面電車の軌道を新設して、こういう形の運行ですね。全体で 7.6km の運行をす ることになりました。平成 18 年 4 月 29 日に開業しております。 ここの特徴は、単に JR の持っている鉄道を路面電車にしたということではなくて、 それまでどこの地方鉄道でも同じなのですが、利用者が減って、採算を取るために本数 をどんどん減らして、利便性が落ちていくとさらにお客さんが減るという負のスパイラ ル、これを負のスパイラルと言っておりますが、そういうことが起こっているわけです が、今回はそれを逆回しにしようということで、利便性を高めて皆さんに利用していた だくような交通システムとして再生しようということでプロジェクトを組んだことが 大きな特徴であります。 ここの運行サービスの向上というところに書いてございますように、運行間隔や始 発・終電の時間を延ばし、新駅も設置しましたし、車両なども右上にありますようにバ リアフリーにいたしまして、車いすや乳母車、あるいはお年寄りの方々も安心して利用 できるような交通手段として再生をいたしました。 結果として、この青い棒グラフが JR 時代の利用者でございました。先ほど申しまし たようにどんどんお客さんが減っていく。お客さんが減っていくことで運行本数もどん どん減るという悪循環であったわけですが、これをサービス水準を上げることで利用者 が劇的に増えました。平日で 2.5 倍、休日で 3.4 倍ぐらいお客さんが増えたわけでご ざいます。 それだけではなくて、その中身が問題であります。通勤の方々は以前からも使ってお られた。そういう方が増えたということなのですが、平日のオフピークの時間帯、左の グラフの赤い枠ですが、そこのお客さんが非常に増え、それを利用しておられる方が高 齢者の方であると。 ここにはありませんが、高齢者の中でも特に女性の方が非常に多かったということが あります。まさにこういう利便性の高い公共交通を整備することで、沿線の高齢者の 方々が自由に移動できる足を確保して、それでこの公共交通を使っていろいろなところ に出かけられる。こういう行動が発生したということが大きな特徴ではないかと思いま すし、こういう取り組みをしたということで、各方面で非常に評価をいただいている、 こういうプロジェクトであります。 次のプロジェクトは環状線でございます。 これは平成 21 年に開通いたしましたが、真ん中にありますように、既存の路面電車 がこういう形で走っておりましたが、そこの間を新設いたしまして、こういう形の時計 とは反対回りの環状線の路面電車を運行する、こういうことをスタートいたしました。 この中が本当の富山の中心部でございます。ここに県庁があり、市役所があり、ここ が既存の中心市街地になっております。主要なものがあるわけですが、それを取り囲む ような形で移動ができる、こういう移動の利便性を確保するということであったり、将 来的に見ますと、ここが富山駅でございまして、これから北陸新幹線が入ってきますと、 ここの駅の周辺にいろいろなものが立地してきます。 そうしますと駅の周辺の拠点と既存の中心商店街、2 極できるわけで、よくいろいろ な都市で問題になっています 2 つの極の足の引っ張り合いと言ったらおかしいのです が、二極化といいますか、そういう問題があるわけですが、この 2 つを結んで非常に頻 度の高い交通を運行することで、水平方向のエレベーターができたような形の、空間は 離れておりますが、あたかも一体的な拠点のように機能できる、こういうツールとして これを使っていくということが大きな目論見なのですが、こういう形で環状線ができま した。 利用は、19 歳以下の人と 65 歳以上の方々の利用が増えている、こういう状況でご ざいます。まだ利用が顕著に増えたということではございませんが、将来ここがつなが りますと北から南まで路面電車の運行が可能になりますので、そうなると多分劇的にこ こら辺の利用者は増えてくるのではないかと思っております。 路面電車ができたことの非常に面白い効果といたしまして、1 つは、路面電車で都心 に来られる方は車で中心部に来られる方よりも滞在時間が長い。滞在時間が長いと、1 つのお店に来てさっと帰るのではなくて、2 つ以上立ち寄るような、こういう行動も結 構多そうだとか、あるいは路面電車ですから、車ではありませんので、飲食も増えてお りまして、もしかするとお酒も飲んでいるのではないかというデータが若干見えてきて いるということであります。 いずれもこれは市の作ったデータでありまして、若干手前味噌的なデータでもありま す。もう少し分析してみなければいけませんが、大事なことは、こういう便利な公共交 通を作ることで利用者の方のライフスタイルが変わってきている。 それが地域の活性化にどうも役立ちそうだということが見えてきたというのが非常 に面白い効果ではないかなと思っております。 2 つ目の公共交通沿線への居住誘導でございますが、先ほど申しましたエリアに居住 を誘導するために、ここにありますように、中心市街地では戸建て住宅を建てたり、あ るいはマンションに入るという場合に、戸当たり 100 万円とか 50 万円を市が支援する という制度を作っておりますし、公共交通の沿線はその 6 割から 7 割ぐらいの額です が、同じように支援をすることでこういう色のついたエリアに居住を誘導する、こうい う施策を行っておりますし、そこそこの実績が出てまいっております。 こういう施策を展開することで、これが先ほど環状道路のところの中心部でございま すが、民間の投資なども結構活発化して、ここにあるようなさまざまな商業施設だった り、あるいは公共施設だったり、マンション等の再開発とか民間の開発が非常に活発化 している、こういう状況になっております。市としても、こういう中心部の再開発事業 などを積極的に支援していくことで、中心部にさまざまなものが立地する、こういうこ とを支援しております。 また、中心部の魅力づけをするということでは、グランドプラザというのが有名でご ざいます。これは先ほどありましたここの再開発がありまして、これは地元のデパート が入っている再開発。こちらが駐車場が入っているのですが、この 2 つのビルを結ぶと ころにこういうガラス張りの全天候型の広場を作りました。 富山はご存じのように冬は雪が降りますので、冬でも活動ができるような形にしよう ということでガラス張りの屋根をつけたこういう広場を作っております。 面積は幅 21m、長さ 65m の広さでございますが、ここのコンセプトは、とにかくこ の広場を作る目的は何かといいますと、要するにまちに賑わいを作るというのを大きな 目的にしています。具体的に言いますと、この広場で年間何人の人間を集められるかと いうことがアウトカムです。 したがって、ここで行うイベント、活動については民間の方々に面白い活動をしてい ただかなければいけないということから、その利用については規制はかけずに、とにか く自由に利用していただくということを旨としております。 もう 1 つは、人が集まるということは何らかの魅力があるということですから、その ためにはきちんと利用料も払っていただく。その利用料を回収できるような活動をここ で積極的に展開していただくということで、この運営のマネジメントというものが非常 に特徴的ではないかなと思っております。 ここの広場については、土日は 1 年先まで予約が入っているというようなことですし、 毎日のようにいろんなイベントをやっています。これは休日ですが、こんな具合でいろ んなイベントをやる。例えば冬は人工スキー場を作っていたり、あるいはコンサートを したり、結婚式をしたり、外車の新車のディーラーがここでショーをしたり、結婚式の 披露宴をやるなんていうこともあります。 また、頭のいい人がいて、これは子どものフットサルの大会なのですが、横がデパー トです。デパートの開業前にフットサルの大会をやるんですね。そうすると、孫の活躍 を見におじいさんおばあさんがいっぱい集まるわけです。試合が終わってから、自分の かわいい孫がよく頑張ったというので、孫を連れてデパートに行って、何かお土産を買 ってあげたり、あるいは食事をするということでデパートは売上が上がる。こんなこと を考えながらこういうイベントをするとか、さまざまなことでこの地域の活性化のため にこの空間が利用されているということであります。 先ほど言いました個人の家を作るのにお金を出すとか、あるいは特定の地域に税金を 使うということで、ほかのエリアに住んでおられる住民の方から何でこのエリアにそれ だけ税金を使うんだということの批判が富山市でもありましたが、それに応える意味と してはこういうことがあります。 市の税収の内訳ですが、固定資産税と都市計画税、これは固定資産税に一定の割合を 掛けていますから同じようなものですが、全体の 45%です。これは静岡市でも大きく 変わりません。独自財源としては非常に大きな役割になっています。 市民税がもう 1 つありますが、これは景気によってかなり左右されますが、こちらは 結構安定的な財源としてあります。 この財源がどこから出されているかというと、中心市街地、市域で言うと面積的には 0.4%しかありません。市街化区域も 6%しかないのですが、その 6%の市街化区域で 4 分の 3、たった 0.4%の中心市街地で 22%固定資産税と都市計画税が市の税収として 入っています。 ですから、このエリアの建築投資を活発にする。あるいは地価の下落を押さえていく という施策は市税の安定収入には非常に大きな影響があるわけで、こういうことにお金 を使って、税金がきちんと入れば、そのお金を使って市域全体のいろんな施策が展開で きる。こういう意味合いがあるんだということで市の中では説明をされています。 私も同じように思っておりまして、静岡市でも多分同じようなことが言えるのではな いかと思います。 結果として、公共交通の利用者は、平成 18 年を境にして増加をしております。また、 沿線の居住者ですが、中心部につきましては社会増減でいいますと転入超過になってお ります。沿線地域につきましてはまだ若干減少しておりますが、減少幅は少なくなって きているということが言えます。 ただ、中心部等の、例えばマンションなどをよく調べてみますと、市内にお住まいの 方が買っているんですね。2 つ目の住宅として買っている。あるいは県内の方が買って いるので、住民票を移さずにそこに住んでいるということもありまして、住民票をベー スにしたこういう統計以上に中心部に実際には生活している人が増えているというこ とが言えるのではないかと思います。 それから、これは中心市街地の小学校の児童数でございます。市全体としては若干減 少しておりますが、中心部の学区の小学校の生徒数は増加をしております。ですから、 お子様を持っている若い人も中心部にお住まいだと。 そのような結果を背景にして、これは中心部の地価でございますが、先ほど言いまし た環状線があるこのエリアについては地価は若干上回っている。 中心市街地はまだ地価は下落をしておりますが、市の市街地全体の下落に比べればそ れほど大きな影響はないという、そういう状況になっておりまして、こういう中心部、 あるいは沿線に、公共交通の利便性を高めて、そしてそこに居住を誘導するというこう いう施策は、少し時間はかかりましたが、やっと今地価のところにまで反映するような、 こういう形にできてきているのではないかと思っています。 これが富山の取り組みということでございますが、ほかのまちでも富山をきっかけに していろいろなところでこういう取り組みがスタートしているという意味では非常に 参考になるのではないかと思っています。 ただ、公共交通を作ってから、実際に地価に反映するまでは少し時間がかかるわけで す。利便性の高い公共交通を作って、それを利用して生活するというライフスタイルを 変えるまでには少し時間がかかりますし、その沿線が非常に魅力的だなと思って、そこ に住もうとか、そこにお店を構えようという行動が起こるまでにも少し時間がかかりま す。またそういう行動が起こると、最終的には地価に跳ね返ってきて、地価が上昇する とか、あるいは下落が下がるということですから、富山でもいろいろな施策を展開して 10 年かかってここまで来ているということでございます。 したがって、10 年単位で物を見ながらいろんなことをしていかなければいけないと いうのがこれでも見えるのかなという気がいたします。 最後に、静岡市の現状と課題ということで、若干お話をしたいと思います。 詳細はこの後のトークバトルで地元の状況を熟知した方々のお話があると思います し、地元のことも私、静岡出身ということでございますが、長らく地元にも来ておりま せんので、十分詳細なことがよくわからないので、本当に簡単な私見を述べたいと思い ます。 まず、これは静岡市の人口の推移をまとめたものであります。 一番上には、今ありました富山市、それからちょうど静岡県が全国で人口規模で言う と 10 番目です。11 番目が茨城県、12 番目が広島県なので、広島県、茨城県、それか らその県庁所在地の広島市と水戸市もついでに並べた表を作ってみました。 静岡市のところに色をつけておりますが、静岡市で一番目立つのは、とにかく人口減 少が非常に激しいなと。これは厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所の予測をも とにして持ってきておりますので静岡市の推計と若干違うかもしれませんが、現状のま まで言うとこういう状況です。 これはなぜかというと、地形上の制約から新たな人間を静岡市に呼び込むということ が少なかったということがあるんだと思いますし、人口、2010 年と 2040 年の年齢別 の伸び率がどうなるかということを見ますと、静岡市はいずれも全体が減少しますから 減少率は非常に高くて、65 歳以上の伸び率があまり伸びていないということを考える と、今現状でもかなり成熟した都市だと。平均年齢が高いということなのだろうと思い ます。 そういう状況になっています。静岡市のこの状況は、例えば県庁所在地の富山や水戸 などと比べても人口減少が非常に激しいですし、横にほかの都市規模別で並べてみまし たが、地方都市圏の人口 10 万クラスの都市と同じような挙動を示しているというのが 静岡の特徴ではないかと思います。新たな人口を受け入れていくということ、新規の住 民を増やしていくということが大きな課題ではないかと思います。 もう 1 つは、これは市街化区域の人口密度を示したものです。先ほど富山で利便性の 高い公共交通を作るとか、沿線に人を住まわせるような施策をやっていると言いました が、富山というのは非常に薄く広く広がったまちでして、人口密度はこんなものなんで す。 静岡は片や 61 人/ha、広島市が 70 人ですから、広島とそれほど遜色ない形の非常 にコンパクトで密度の高い市街地がまだ静岡では形成しているということが言えると 思います。これは何が言えるかというと、利便性の高い公共交通を整備すれば、周辺に は多くの方がお住まいですから、それを利用していただけるという可能性が非常に高い、 こういう地域ではないか。ですから、公共交通政策というのがやりやすい、そういう都 市ではないかなとか思います。 もう 1 つ、静岡市の大きな構造は、東海道線とか国道 1 号線に沿って 3 つの大きな 拠点が形成されています。またそれに並行したような形で静鉄が存在する。これは大き な強みでありますので、この拠点を中心にして公共交通網を拡充していくということの 可能性は十分あるのではないかと思います。 ですから、公共交通とまちづくりを一体的に行っていくということが非常に実現しや すい、全国的にも非常に恵まれた条件を持っている都市だと思います。さらに、そうい う政策を進めながら、結節点周辺の魅力を高めて、居住人口を積極的に受け入れていく、 こういう施策をこれからぜひ展開をしていただければなと思います。 以上、非常に雑ぱくではございましたが、国の施策、それからコンパクトなまちづく りを実践している富山市の取り組み、それからその富山市などと比べた静岡市の現状と 課題ということについてお話をいたしました。 御清聴ありがとうございました。