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第52回 香港雑感

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第52回 香港雑感
第五十二
五十二回
回:香
港 雑 感
常陽銀行上海駐在員事務所
経済成長に伴う所得水準の上昇により、生活にゆとりがでてきた人々が増加していることや、
春節(旧正月)、国慶節の長期休暇に加えて清明節、端午節、中秋節などが新たに祝日となり休
日が増えたことを背景に、旅行しやすい環境が整いつつあり、中国でも旅行がブームとなってい
ます。
なかでも香港はショッピング、グルメ、100万ドルの夜景を持つ街として有名であり、1997年
の返還後もますますその魅力が高まっていることから中国本土の人々にとっても旅行で行ってみ
たい人気の場所となっています。
今回は旅行を通して感じた香港の印象について上海の楊さんが紹介します。
1.香港は国内旅行ではなく、海外旅行?!
旅行会社のパンフレットやホームページなどでは、香港旅行は海外旅行とみなされています。
香港は返還されたとはいえ1国2制度地域なので、中国本土から見た場合、海外という位置づけ
となっています。海外ということなので、空港も当然ながら、香港行きは国内線ではなく、国際
線となっています。更に中国本土に住む中国人が香港に行く場合、
「港澳通行証」
(通行証)と「往
来港澳 注」(ビザに相当)が必要となります。この「港澳通行証」は、中国人がその他の海外
に行く際必要となるパスポー
トとは別なもので香港、マカ
オに行く際に必要となるもの
です。ちなみに、
「港澳通行証」
は香港・マカオ用の通行証と
なっており、台湾へ行く際に
は「台湾通行証」を申請しな
ければなりません。
ホテルの予約や航空券の購
入も個人でインターネット経
由で簡単にできるようには
なっていますが、
「港澳通行証」
および「往来港澳
海外に行く際必要となるパスポート(左)
、香港・マカオに行
く際必要となる通行証(右)
注」の番
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号入力が必要です。ホテルチェックイン時も、身分証明書として「港澳通行証」の提示が求めら
れます。
2.香港と上海、こんなところに違いが
香港は1997年に中国に返還されるまでは、英国統治のもと東アジアを代表する国際都市とし
て発展してきました。中国本土とは違う政治・経済体制が取られてきた背景があるため、上海人
の目から見ると、街の雰囲気から市民の日常生活まで、違うと感じるところがたくさんあります。
(1)日常会話は基本的に広東語でコミュニケーション
香港では、返還後の標準語(いわゆる中国語)普及政策によって、標準語を話せる人が増え
てきていますが、日常的には広東語が使われています。新聞や雑誌もすべて標準語に使われる「簡
体字」ではなく広東語等に使われる「繁体字」を使って書かれており、テレビやラジオのニュー
スでも大半が広東語で話されていました。上海でも日常会話では上海語が多く使われていますが、
テレビ番組等はさすがに標準語が使われています。
(2)同じ額面の香港ドル紙幣なのにデザインが異なっている
香港には紙幣を発行する中央銀行(中国では中国人民銀行)がありません。額面20香港ドル
以上の紙幣については、中央銀行的機能を持つ香港金融管理局の監督の下、香港上海銀行
(HSBC)、スタンダードチャータード銀行、中国銀行(香港)の3行により発行されています。
額面により印刷色は統一され
ているものの、紙幣の図柄に
ついては発行銀行に委ねられ
ている為、同じ額面の紙幣で
もデザインが大きく異なって
います。普段、図柄も印刷色
見 本
も統一されている人民元紙幣
を使っている方からすれば、
分かりにくく感じますが、そ
れが香港ドルのおもしろいと
ころでもあるように感じます。
中国銀行(香港)により発行されている香港ドル札
(3)香港の街は歩きにくい
中国本土は右側通行ですが、香港は英国領であったことから今でも左側通行となっています。
歩行者も左側通行が基本なので、地下鉄駅の通路でつい無意識に右側を歩いてしまうと、反対か
ら来た人たちにぶつかってしまうので注意が必要です。
また、香港は土地の高低差が大きく坂道が多いので、坂道がなくほとんど平坦な土地柄で育っ
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た上海人には歩くのがとても大
変だという印象を受けました。
(4)地下鉄の乗り換えがと
ても便利
地下鉄の乗り換えも、同じ
ホームの両側に止まった列車
相互で乗り換えできることが
多いなど、最小の移動距離・
乗り換え時間となるよう利用
者が使いやすいように設計さ
れているように感じます。そ
香港は坂道が多いので、旅行にあたって履きやすい靴が一番だ
と思う
れに対して、上海では、一旦
改札口を出たり、長い連絡通路を歩かなければならないなど、まだまだ改善の余地があるように
思います。
(5)狭い場所にたくさん詰め込んだ街
香港の街は、平地だけでは
なく丘陵地にも高層ビルがた
くさん建てられており、また、
店舗の看板も上海の有名な繁
華街「南京東路」をはるかに
しのぐようにひしめき合って
掲げられており、狭い場所に
たくさんのものを詰め込んで
いるという感じです。
また、同じく近代化が進ん
でいる上海ではアパートの建
て替えが急速に進んでいるの
目の前に広がる高層ビル群
に対して、香港では、街の中
心部に老朽化したアパートが数多く残っており、その街並みに欠かせないように溶け込んでいる
のが印象的です。
(6)観光客にやさしい街
香港では観光客のために分かりやすい案内板が地下鉄の駅や街の至る所に設置してあるので、
観光客はたとえ手元に地図がなくても、道に迷うことなく散策ができます。一方、上海は案内板
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が少なく(充実はしてきてい
ますが)
、観光客にとっては不
便かもしれません。
(7)香港ドルへの両替が簡単
街中に両替店が非常に多い
ことにも気がつきました。もち
ろん、両替レートは銀行より若
干見劣りしますが、店舗数が
多くて夜間・休日も営業してい
るのでとても便利です。また、
中国銀行(香港)のATMでは、
観光客にとても分かりやすい案内板がたくさん設置してあるの
で、道に迷う心配がない
中国本土の銀行キャッシュ
カードで香港ドルが下ろせま
すので、事前に両替すること
も必要ありません。上海も国
際金融都市を目指しているの
であれば、もっと外国人観光
客に対する便利なサービスを
提供できるようにしなけなれ
ならないと思います。
3.終わりに
2泊3日という短い旅行で
したが、上海人である私の目か
ら見た、同じく国際都市と呼ば
街 中 の あ ち こ ち に 見 か け る 両 替 店。 看 板 に は「MONEY
TRANSFER」
「MONEY EXCHANGE」と書いてあったり、
「$」
「¥」
などのマークもあった。
れている香港と上海との違うと
ころ、また、印象に残った香港の街並みについて紹介しました。
上海は万博を機に更に発展を遂げていくのは間違いないと思いますが、国際都市として恥ず
かしくないよう、香港のように観光客にも快適な、やさしい街づくりを進めることが課題だと感
じました。
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