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講義5(補) 事業継続
工業システム概論 講義5(補) 事業継続 1 製造業のシステムの特質 1 自社だけではモノ造りができない 多くの企業が協力企業に部品製造や原料資材供給を委託 販社や販売代理店が販売を担当 2 生産はグローバル化している 国際的なサプライチェーンマネジメント 3 グローバルレベルでの国内外の会社と連携し 生産、調達、物流、販売のシステム化が必須 トヨタのWARP (Worldwide Automotive Real-time Purchasing) 1 2 トヨタ等のグローバル化の流れ 日経新聞記事(2011年1月4日) 排出ガス規制や原油高の影響で米国で日本車の販売が急増 貿易摩擦の深刻化 輸出から現地生産に切り替える 1982年:日本メーカーとして初めて米国で乗用車生産 1984年:トヨタとGMが合弁生産 85年プラザ合意を受けて、円高 競争力維持のため、東南アジア、中国へ工場移転 中国、インド等の経済発展で購買力向上 多くの製造業が地産地消でコストを下げるために海外進出 グローバル化の加速 2 3 サプライチェーンマネジメント 1 情報システムを活用し、営業拠点や取引先から需要に関する情報を 収集し、最適な生産量や部材メーカーへの発注量を決定する。 2 製品を顧客に迅速に供給する一方で、在庫を適正に保つ。 3 在庫の過剰を防止し、コスト理由で極力削減するので、地震等の災害で 部品や材料の供給が停止すると完成品メーカーの生産が停止する。 情報システム 情報 顧客 販売店 部品 納入先 素材 物流 完成品メーカー 部品 jy 3 4 バリューチェーンにおける公正な事業遂行 将来の方向性 ISO26000(社会的責任)で企業は公正な事業遂行を求められて いる。 影響力(バリューチェーン)の範囲で 組織は自らの活動や関係先の活動によってもたらされる マイナスの影響を特定し、対処するプロセス(デューデリジェンス) を推進することにより公正な事業を遂行する必要がある。 4 5 事業継続(事前の備え) 1 規格BS25999 Guideline 評価改善 リスク 分析 行動計画書 作成 教育訓練 ギャップ 分析 対策戦略の決定 BCM推進体制整備 ビジネス 影響度分析 PDCA サイクル 対策 実施 5 6 グローバルなサプライチェーン(アップルの場合)(1) 日経新聞記事(2011年1月4日) 1 アップル:世界サプライチェーンの実力ランキング (米国AMRリサーチ) 圧倒的な実力で1位 2 アップルの戦略商品(2010年出荷額) iPad (約1800万台) iPhone4 (約3300万台) AppleTV(約100万台) 3 世界共通仕様 低消費電力プロセッサーA4 アップルが設計 サムソン電子に生産委託 6 6 グローバルなサプライチェーン(アップルの場合)(2) 日経新聞記事(2011年1月4日) 4 アップルの戦略商品の心臓部A4の大量調達 iPad iPhone4 AppleTV 5 在庫積み上がりのリスクの最小化 6 在庫管理システム Global Demand Vigibility 7 世界中の販売店を網羅し、ケーブルなどのアクセリー品も 含め、店頭在庫や配送中製品も1個単位で把握 7 6 アップルと東日本大震災 COMPUTERWORLD.jp記事(2011年4月11日) 米国調査会社Barron’sは4月7日、アナリストであるラジェシュ・ ガイ氏の話として、「一部メディアでは、Appleは東日本大震災 の影響によってiPad部品不足に直面すると報じられている。しか し、同社の製造事情に最も詳しい情報ソースの話としてコンポー ネント不足は起こらないと述べ、代わりのサプライヤーもすでに 生産準備に入ったことを明らかにした」と伝えている。 Barron‘sは、「Appleはタッチ・パネルの全在庫のおよそ60% をおさえており、高い需要に対処できる」と説明している。 8 7 震災の自動車メーカーへの影響 サプライチェーンのクリティカルパス 1 新潟県中越沖地震(2007年7月16日) マグニチュード6.8 リケン柏崎工場が被災したことにより、トヨタ、ダイハツ等 国内自動車メーカーの生産停止等につながった。 2 東日本大震災(2011年3月11日) マグニチュード9.0 ルネサスエレクトロニクス那珂工場が被災したことにより トヨタ等の国内自動車メーカーの生産に大きな影響が出た。 9 8 中越沖地震におけるリケンのケース 1 リケンは自動車メーカーのサプライチェーンのボトルネック 油漏れ防止用シール材 7割のシェア ピストンリング 4割のシェア 2 リケンの代替部品メーカはなかった。 中越地震発生 国内自動車メーカーの生産の遅れ:計13万台 10 8 リケンへのトヨタとホンダの対応 1 トヨタやホンダの社員が被災したリケンの操業再開を 支援した。 自動車会社は事業継続のレジリエンシーResilency (しなやかで強いこと、回復力)の重要性を再認識 2 国連国際防災戦略(ISDR)の報告 2007年に世界で発生した災害のうち最も大きな 経済被害をもたらした。 11 8 リケンのその後の対応 日経新聞記事(2008年7月13日) 製品供給体制の抜本的見直し 製品在庫の保管施設の新設(愛知県と埼玉県) 競合他社との製品仕様の統一 サプライチェーンマネジメントの目的; 生産流通分野の総効率の向上 正確な重要予測による作りすぎや欠品を防止する リケンは自動車メーカーのサプライチェーンの中で 事業を継続する(供給責任を果たす)経営判断をした。 12 9 東日本大震災のトヨタへの影響(1) 1 朝日新聞(2011年3月14日)記事 トヨタ自動車は14日、東日本大震災の影響で生産を中 止している国内工場について、15、16両日も操業を 中止することを決めた。 調達が困難な部品があるため。トヨタは「地域の復興支 援と、従業員や家族の安全を優先する」(広報)として いる。 対象は愛知県内の12工場、日野自動車やダイハツ工場、 トヨタ自動車九州などグループの車体組み立て工場。1 7日以降の対応については未定。 また、東北にある系列車体メーカーの関東自動車工業岩 手工場(岩手県金ケ崎町)やセントラル自動車の宮城工 場(宮城県大衡村)は操業再開のめどが立っていない。 13 9 東日本大震災のトヨタへの影響(2) 1 日本経済新聞(2011年3月25日)記事 トヨタ自動車は24日、東日本大震災の影響で生産を中 止している完成車生産を28日再開することを決めた。 部品調達に一定のめどが立ち、プリウスなどハイブリッ ド車3車種に限ってラインを稼働する。 世界的に販売している車種で、調達できた部品を燃費性 が優れる車種に振り向ける。 14 10 ルネサスエレクトロニクス(1) 1 日本経済新聞記事(2011年4月28日、5月18日) 1 ルネサスエレクトロニクス マイコン世界シェア 30% 車種ごとに自動車用制御マイコンを開発 トヨタプリウスの数十種類のマイコン等に採用 2 那珂工場の被害 壁や天井が崩落 装置倒壊 空気清浄装置、水処理設備停止 3 復旧プロジェクト「絆」 取引先の自動車メーカーが応援要員を送り込む 最大1日2500人 15 10 ルネサスエレクトロニクス(2) 1 日本経済新聞記事(2011年4月28日、5月18日) 1 那珂工場の復旧予定 在庫 5月末 7割供給 200ミリライン 6月15日生産再開 8月15日製品供給開始 300ミリライン 7月生産再開 9月製品供給開始 代替生産 5月から 他工場の代替生産 海外メーカーへの委託 2 滋賀工場新設備稼働、鶴岡工場閉鎖設備の再稼働 16 11 サプライチェーンの復旧 1 経済産業省「サプライチェーンの復旧に向けた産業界の取り組み(2011年4月) 別紙 被災した企業によるサプライチェーンへの影響について 17