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わが国の貸出市場構造 --都市銀行と地方銀行との貸出金利を中心

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わが国の貸出市場構造 --都市銀行と地方銀行との貸出金利を中心
<分析2>
わ が 国 の 貸 出 市 場 構 造
--都市銀行と地方銀行との貨出金利を中心として--
浜 田 宏 一
石
山
行
忠
岩
田
一
政
出収益関数の決定要因に関しては,貸出しの取
1.序
扱い費用が逓増的であると仮定したけれども,
貸出金利の決定に関しては,いくつかの代替的
わが国の金融制度のきわだった特徴は,貯蓄
仮定の中から貸出金利が公定歩合と連動して動
主体である家計から投資主体である企業への資
く要因が最も強く働いているのではないかとい
金の移転が主に銀行を通じて行なわれるところ
う暫定的な結論を導いたにすぎない。
にある。すなわち,家計は普通預金,定期預金
本稿は,このように前稿において十分に検討
等の形でその資金余剰を銀行に預け入れ,それ
するに至らなかった貸出市場の性格について,
を銀行が資金不足主体である企業に融通すると
多角的な観点からそのメカニズムを明らかにし
いう経路が,信用仲介経路の中で最も大きなチ
ようとするものである。すなわち,単に平均金
ャンネルとなっている。これが,
「間接金融の
利の推移をみるのみならず,銀行側からみた貸
優位」と呼ばれる現象であり,さまざまな問題
出の金利別構成,規制内金利と平均金利との関
点をはらみながらも,ともかく戦後の経済成長
係,期間別構成等のデータを検討するとともに,
を支えた金融のメカニズムであった。したがっ
貸出先の企業を規模別にみたときに支払金利に
て,銀行が企業に資金を貸出す市場の性格を明
どのような特徴があるかを詳しくみていこうと
らかにすることは,日本の金融メカニズムを理
するものである。そして,このようなfact find-
解する上で必要不可欠なことである。
ingが,わが国の銀行の対企業貸出市場の性格
われわれは,前稿「金融政策と銀行行動」
(
『経済分析』第56号)において,銀行行動を日本
づけに関してどのような光をなげかけるかをも
明らかにしようと試みるものである。
ところで,日本の貸出市場の性格については,
銀行や政府のコントロールの下にある制約条件
付の合理化行動として定式化し,その定式化の
すでに多くの論者の秀れた研究がある。
もつ理論的,政策的意味を明らかにしようと試
山下邦男を中心とする経済企画庁経済研究所
みた。しかし,そこでは日本銀行の都市銀行に
のスタッフによる研究(1964)は,都市銀行の
対する信用供与の効果に関して詳細な分析を行
資金供給サイドと預金獲得面を中心として,わ
なったけれども,都市銀行や地方銀行の対企業
が国の銀行行動を分析したものである。
貸出しの市場に関しては,二,三の代替的な仮
この研究における貸出行動の分析では,銀行
定を設けるにとどまり,詳細な検討を行なうに
の貸出市場の特性として,実勢以下の水準に固
は至らなかった。つまり,銀行の貸出収益関数
定された低金利と,恒常的資金需要超過とを背
が所与のものとして分析を進めたのである。貸
景として,資金供給者側の力が強いこと,また
*
本研究にあたり,中央大学教授の川口弘氏に有益
資金需給は金利による調整よりむしろ信用割当
な示唆を頂いたことに心から感謝したい。しか
によって調整されていることを指摘している。
し,本稿の意見・誤謬に対する責任はわれわれの
また,銀行の貸出行動パターンを,都市銀行
みが負うものである。
を中心として分析し,貸出増加率の著しい銀行
- 20 -
わが国の貸出市場構造
ほど借用金依存度が高いこと,すなわち都市銀
行の貸出が単純に預金に対応していないことを
明らかにしている。さらに,貸出増加率の著し
い銀行ほど資本利益率が低く,また利益の伸び
率も低いという現象より,銀行の貸出拡張が必
ずしも当面の収益性を重視したものではないと
いうのである。しかし,一方,貸出増加率の著
しい銀行ほど預金の伸びが大きいという訳では
ないので,銀行にとって貸出行動がただちに預
金量増大を志向しているとはいい難いこととな
る。そこで,これらの現象を統一的に把握する
ため,
「預金シェア維持」という観点を導入す
る。そして,都市銀行は,長期的経営視点にも
とづき,ある程度の利潤(いわば必要最低利潤)
が確保されている限り,ときとして預金シェア
維持のため,当面の収益低下を甘受することも
あり得るというのである。
川口弘(1965)は,わが国経済の基本的特徴を
二重構造として捉えている。この特徴と金融と
の関係を考えるとき,金融機関の構造が経済の
二重構造を反映し,また金融の側からも二重構
造を再生産する作用を果しており,中小企業へ
の金融的「シワ寄せ」がみられるというのであ
る。この現象を,いわゆる高度成長期以降昭和
38年頃までについて,まず企業統計により検討
すれば,中小企業については,短期負債の比重
が大きいこと,長期借入金が少ないこと,過度
の歩留り保持を強制され実質金利格差が大きい
こと等の特徴がみられ,これは川口によれば量
的側面にとどまらず,質的側面においても中小
企業が「シワ寄せ」をうけていることを示して
いる。また金融統計により,金融逼迫期には中
小企業向け融資の増分が大企業向融資の増分に
おしのけられ,大企業資金需要の循環的変動に
応ずるクッション的立場におかれていることが
主張される。また金融機関別にみた場合,地方
銀行は大企業向け貸出市場では,限界供給者の
立場にあることなどに表われるように,金融機
関側にも二重構造がみられることが指摘されて
いる。さらに,企業間信用の構造を金融的側面
から接近すれば,金融逼迫期には,大企業が増
減額ベースでみた場合受信超過に変わり,中小
企業への企業信用面での「シワ寄せ.」が行なわ
れている現象を川口は明らかにしている。
貝塚啓明・小野寺弘夫(1974)は,昭和47年
頃までの信用割当をめぐる議論を概観し,信用
割当の概念の明確化と,わが国の貸出市場にお
いて,どの様な形の信用割当が成立しているか
を実証的に分析している。すなわち,まず信用
割当の概念を明確にするため,実効金利段階で
みても信用割当が生ずる場合を厳格な意味での
信用割当とよび,名目金利では信用割当がある
ように見えるが,実効金利段階でみると信用割
当がない場合を擬似的な信用割当と整理する。
また,信用割当が恒久的に存在する場合と,一
時的に生ずる場合とを分けて,均衡的信用割当
と,動学的信用割当とよんでいる。
貝塚・小野寺は,ホッジマン,ミラー,フラ
ィマー:ゴードン,ジャフィー:モジリアーニ
の信用割当に関する理論的分析のサーベイの
後,わが国における信用割当の実証分析を行な
っている。そこでは,実効金利,期限別貸出構
成,担保別貸出残高構成,標準金利以下での貸
出割合等の金融指標を使用して,厳格な意味で
の信用割当の可能性があること,また信用割当
に関しては,都市銀行と地方銀行との間に顕著
な差異がないこと等を指摘している。
寺西重郎(1974)は,戦後わが国の貸出市場
において,銀行の短期貸出額が大規模の企業に
対しては好況期に多く,不況期に少ないのに対
して,中小規模の企業に対しては逆に,不況期
に多く好況期に少ないという融資循環の二重性
を,中・長期資金市場との関連で検討している。
すなわち,銀行からの短期借入金は,長期資金
の代替財としての性格を持つ。そして銀行と企
業との間の貸出市場は相対取引の場であり,
その市場を需要独占,または銀行独占の場合と
して取扱いうるという立場を寺西はとるのであ
る。融資循環の二重性は,長期資金市場におい
て,大規模企業ほど社債・株式,長期借入金面
での利用可能性が大きく,小規模企業ほど長期
借入金に対して「充たされざる需要」
(unfilled
- 21 -
demand)が存在する。従って,短期貸出市場
において,小規模企業ほど交渉力が小さくなる
ため,融資循環の二重性を生むというものであ
る。
われわれは,以上の研究の成果をふまえ,今
まで提出されてきた諸仮説の検証に関係すると
思われる貸出量,貸出金利に関するデータを昭
和49年に至るまで,新しく整理することを努め
た。それのみならず,現在まで,どちらかとい
うとマクロ的な貸出総額や金利の平均値に関し
て行なわれてきた議論をその構成要素にさかの
ぼって,より立体的に,つまり銀行の種類,貸
出期間の長短,貸出先の規模別,さらに景気循
環や金融の繁閑等の要素によって構造的に捉え
ようと試みるものである。
より具体的にいって,貸出市場に関してわれ
われが興味を持ち,少なくとも部分的に明らか
にしたいと思うのは次のような問題である。す
なわち
(i)わが国の銀行の貸出市場においては,金
利の需給調整機能が十分に働いているか。
(ii)もし金利が需給調整を行なうに十分なだ
け伸縮的に動いていないものとすると,金利
はどのようなメカニズムで決まってくるか。
(iii)金利に硬直性があるとすれば,それはど
ういう形の信用割当を生んでいるのか。
(iv)金利決定のあり方,そして信用割当があ
りうるときには信用割当のあり方は,与信側
の都市銀行と地方銀行とでどう異なり,また
受信側の企業の規模によってどう異なるか。
(v)金利決定とともに,信用供与の条件,態
様すなわち貸出の期間構成,拘束預金比率な
どがどういう機能をはたしているか。
(vi)金利をはじめとするもろもろの条件が時
間的に,そして景気変動の局面によってどの
ように変わってくるか。
(vii)そして,以上のような諸条件の差異が,
中小企業等に対してどのような差別的取扱い
となって現われてくるのか。
という問題である。
本論に入る前に,われわれが用いたデータの
出所について簡単にまとめてみることにしよ
う。
貸出市場における量的側面と価格(金利)の
側面とを把握するためのデータのよりどころ
は,主として「経済統計年報・月報」と「法人
企業統計季報」に求められる。
これらのデータには,次の様な性格がある。
すなわち,
「経済統計年報・月報」は,日本銀
行(統計局)が作成したもので,主に金融機関
側よりみたデータである。従って,金融機関の
種別に,月次ないし四半期別に簡略化された形
ではあるが,貸借対照表を中心として,資産内
容や貸出残高を知ることが出来る。また,諸金
利の推移や,マネー・サプライの動向なども
知ることが出来る。さらに,半年ベースである
が,金融機関別の損益状況や利鞘の推移が把握
出来る。
一方,
「法人企業統計季報」は,大蔵省が作
成したもので,企業側よりみたデータである。
従って,企業規模別に簡略化された形ではある
が,貸借対照表・損益計算書を中心として,四
半期別に企業の資産内容や,損益状況が把握出
来るものである。
この二つのソース以外のデータは,ほとんど
一般的な入手の可能性という面での制約があ
る。
従って,本稿では,基本的にこれら二つのデ
ータ源のみを使用しているため,次のような限
界がある。例えば,
「経済統計年報・月報」で
は金融機関の種別に諸統計はあるものの,借り
入れ先である企業との接点でのデータが非常に
少ないため,貸出市場を金融機関種別と企業規
模別との交叉した点での現象を把握することが
難しい。また新規貸出に限った期間別貸出額や
金利のデータがないため,限界的に金融機関が
どの様に行動しているかの分析が出来ず,平均
量での考察を行なわざるを得ない面があること
等である。
なお,貸出市場の構造を立体的に捉える一端
として,貸出金の金利別貸出残高の構成比の検
討を行なったが,その際「経済統計年報・月報」
- 22 -
わが国の貸出市場構造
には,金融機関の種別のデーダがないため,地
方銀行協会作成の都市銀行・地方銀行別の「貸
出金の金利別構成」
(半年データ)を使用し
た。
一方,
「法人企業統計季報」によれば,借り
入れ先である企業の規模別に,貸借対照表・損
益計算書を基に種々分析が可能であるが,各勘
定科目についての詳細な記載がないため,近似
注1)
的な分析に留まってしまうおそれがある。 さら
に,金融機関別に借り入れ額が把握出来ないの
で,都市銀行・地方銀行別に,その貸出先であ
る企業を規模別にみた貸出市場で,どの様な行
動をとってきたかという分析は困難であるとい
った制約である。
本稿の構成を簡単に述べると,2.では,貸
出金利の構造の分析を行なう。わが国の貸出金
利が硬直的であることはしばしば指摘されると
ころであり,われわれの前稿「金融政策と銀行
行動」においても,貸出金利決定が市場の資金
需給のみによっては決定されていないのではな
いかという想定を行なった。ここでは,都市銀
行と地方銀行とでは,貸出金利の構造にどの様
な相違があるのか,また景気変動の過程で貸出
金利変動の型にどの様な差があるかを明らかに
する。すなわち,貸出金利別貸出割合の分布図
を画き,その分布図を公定歩合,臨時金利調整
法に基づく規制金利の上限値,預金コストにそ
の他の費用を加えた銀行の平均費用,さらにコ
ール・レートとの関連で捉えることにより,わ
が国の貸出市場における貸出金利の構造を明ら
かにしようとするものである。
3.では,このような金利構造の変動がどの
ような要因によって生まれるかの分析を行な
う。貸出金利が銀行の利潤最大化行動にもとづ
く市場の需給要因で決まっているとすれば,貸
出金利はコール・レートないしその加重平均と
注1)例えば,損益計算書における「支払利息・
割引料」には,金融機関に対する支払利息・
割引料のみならず,社債の利子や,関連会社
もっとも強く関係して動くであろうし,これが
鈴木淑夫(1975)の分析の論理的帰着である。
これに対して,前稿で想定したように,貸出金
利の多くの割合は公定歩合との連動によって支
配されると考える見方もあるし,または貸出金
利は預金コストにその他の費用を加えた銀行の
平均費用に一定のマージンを加えた,一種のフ
ル・コスト原理で決まると考える見方もあり得
よう。そして,貸出金利として名目金利をとる
のか,拘束預金の存在を考慮した実効金利をと
るのかで,以上の諸仮説の当否が変わってくる
かもしれない。3.では,名目・実効貸出金利
のそれぞれについて,コール・レート,公定歩
合,銀行の平均費用等と相関分析,回帰分析を
行なうことによってこの問題を考察しようとす
るものである。
4.では,都市銀行・地方銀行別に貸出と預
金の期間構造を時系列的に分析するとともに,
それが景気変動とどのような関係にあるかを検
討する。
ところで,貸出金利に硬直性があるとする
と,その結果貸出量に量的制約が存在する可能
性がある。そこで,5.ではその一つの証左と
して,間接的な形ではあるが中小企業向貸出市
場における量的制約の可能性を検討することと
する。すなわち「経済統計年報」により,都市
銀行・地方銀行別に中小企業向貸出しの比率
や,中小企業向設備資金貸出しの比率を分析
し,中小企業が景気循環の過程で貸出量に量的
制約を受けているかどうかを検討する。
結びでは以上の実証的な結果をふまえると,
わが国の銀行の貸出市場をどう性格づけたらよ
いかという問題を考察する。データの制約や,
分析用具の制約のため,この難問に決定的な解
決を与えることは困難であるけれども,多角的
な見地から金利構造や貸出量の構成を検討する
ことによって,わが国の貸出市場のメカニズム
の輪郭をより明らかにすることができるものと
信ずる
への支払利子等も一括計上されており,これ
らを分別することは不可能である。
- 23 -
た(図2参照)。
A 都市銀行
まず,都市銀行の貸出金利の分布図を昭
和30年代後半以降,時間的にながめること
としよう。
37年9月期の分布図をみると,
公定歩合と
同率の貸出金利(日歩2銭)の処に1ヤマ(全
貸出額に占めるその貸出金利による貸出額
の割合は21.9%)がみられる。またその右
側に臨時金利調整法による規制内金利の上
限値(「その他の手形の割引ならびに貸
付」
)と同率の貸出金利(日歩2銭3厘)の
処にも1ヤマ(貸出ウェイトは17.0%)が
みられる。従って,全体としては2ヤマを
画いていることがみてとれよう。なお,こ
の時期の貸出金利の平均値はこの2ヤマの
間にあり,若干規制内金利の上限値に偏っ
た処に位置する。
38年3月期の分布図は,公定歩合の引下
げに伴ないヤマが左に移動する。分布図
は,前期と同様に公定歩合とほぼ同率(公
定歩合は,
37年11月に1銭9厘から1銭8厘に,
さらに,38年3月に1銭7厘に変更)の貸出
金利である日歩1銭8厘の処に1ヤマ(貸出
ウェイトは17.7%)が出来ている。さらに
規制内貸出金利の上限値と同率の2銭1厘
の処に1ヤマ(貸出ウェイトは14.9
%)がみられる。すなわち,前期と同様に
公定歩合と規制金利の上限値の処にヤマが
出来,2ヤマを画くのである。この現象は,
貸出金利が,公定歩合ないし金利規制の影
響を受ける可能性を示唆するものであると
いえよう。この時期の特徴的なことは,分布
図が2ヤマとも低くなり,全体的に平坦に
なることである。このヤマの低下は,公定
歩合ないし規制金利適用による貸出しの全
貸出しに占める割合が低下したことを意味
する。貸出金利の平均値は,公定歩合の低
下に伴ない若干低下したものの,公定歩合
の引下げ率や規制内金利の上限値の引下げ
率の低下に比し小さく,硬直性がみられ
2.貸出金利の構造
前稿「金融政策と銀行行動」において明らか
にしたように,わが国の貸出市場における金利
決定は単に資金の需要供給のみに依存せず,金
利になんらかの意味で硬直性が存在すると考え
てよい。本節は,貸出金利の構造を景気循環の
局面において,また公定歩合や臨時金利調整法
に基づく規制金利,預金金利およびその他の費
用を加えた銀行の平均費用,コール・レートな
どとの関係においてより多面的に観察すること
によって,貸出市場の性格をより明確にしよう
との試みである。
(1) まず,諸金利が過去どの様に推移してきた
かの概観を行ない,その後,貸出金利の構造
が,どの様なものであり,またどんな要因に
よりその構造が変わると考えられるかを,貸
出金利の分布図を中心にして浮き彫りにする
ことにしよう。
諸金利についての一般的な認識の再確認の
ために,まず,諸金利の時系列別推移を図示
した(図1参照)。
多くの論者(例えば鈴木(1974)
)によって
指摘されているように,コール・レートに比
し,貸出金利,公定歩合,預金金利に硬直性
が強いことが見てとれよう。
ところで,貸出金利の実態を明らかにする
ためには,どのような金利でどれだけの割合
が貸出されているかという分布,すなわち貸
出金利の分布構造が,景気循環や金融政策の
動向においてどのような変動パターンをとる
かを明らかにする必要がある。
そこで,都市銀行・地方銀行別に,地方銀
行協会作成の「貸出金の金利別構成」を使用
し,横軸に貸出金利を取り,縦軸にある貸出
金利適用の貸出額が全貸出額に占める割合を
とって,分布図を作成した。そしてそれが時
間的(6カ月毎)にどの様なパターンを画く
か,また貸出市場における資金需給の繁閑に
応じてどの様に変化してきたかの検討を試み
- 24 -
わが国の貸出市場構造
図 1 諸金利の推移
(資料)経済統計年報(日本銀行)
図2-(1)貸出利率別貸出構成比
37 年 9 月期
注)1.実線:都市銀行
点線:地方銀行
2.
△印:公定歩合
×印:臨時金利調整法による規制内(
「その他の
手形の割引ならびに貸付」)金利の上限値
※印:コール・レート(6ヵ月平均値)
○印:貸出利率の平均値(都市銀行)
(6ヵ月平均値)
●印:貸出利率の平均値(地方銀行)
(6ヵ月平均値)
□印:銀行の平均費用(都市銀行)
(6ヵ月平均値)
■印:銀行の平均費用(地方銀行)
(6ヵ月平均値)
なお,銀行の平均費用
(預金利息 + 債券利息 + 借用金マネー利息 + 経費)
(預金平均残高 + 債券発行平均残高 + 借用金マネ
× 2 一平均残高)
=
(資料)1.貸出金の金利別構成(地方銀行協会)
2.経済統計年報(日本銀行)
- 25 -
図 2-(2)
38 年 3 月期
38 年 9 月期
- 26 -
わが国の貸出市場構造
図 2-(3)
39 年 3 月期
39 年 9 月期
- 27 -
図 2-(4)
40 年 3 月期
40 年 9 月期
- 28 -
わが国の貸出市場構造
図 2-(5)
41 年 3 月期
41 年 9 月期
- 29 -
図 2-(6)
42 年 3 月期
42 年 9 月期
- 30 -
わが国の貸出市場構造
図 2-(7)
43 年 3 月期
43 年 9 月期
- 31 -
図 2-(8)
44 年 3 月期
44 年 9 月期
注)以降貸出利率は%表示に変更
- 32 -
わが国の貸出市場構造
図 2-(9)
45 年 3 月期
45 年 9 月期
- 33 -
図 2-(10)
46 年 3 月期
46 年 9 月期
- 34 -
わが国の貸出市場構造
図 2-(11)
47 年 3 月期
47 年 9 月期
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図 2-(12)
48 年 3 月期
48 年 9 月期
- 36 -
わが国の貸出市場構造
図 2-(13)
49 年 3 月期
49 年 9 月期
- 37 -
る。この貸出金利下げ渋りの現象は,貸出
平均金利と預金利息にその他の費用を加え
た銀行の平均費用との差が前期と同様にほ
ぼ3厘であることより,決定的なことはいえ
ないにせよ,貸出金利に影響を与える1つの
要因として,銀行の平均費用もみのがせな
いものであるということを示唆しているの
かもしれない。
38年9月期の分布図は,引き続く公定歩合
の低下により,公定歩合と同率の貸出金利
のヤマが規制内金利の上限値に比し小さく
なり全体的に一層平坦となる現象がみられ
る。公定歩合と規制内金利の上限値にヤマ
が出来ることには変わりはない。しかし金
融緩和が続くと公定歩合に比し,規制内金
利の上限値がより大きな意味を持ってくる
ということが出来よう。なお,この期も貸
出平均金利と銀行の平均費用との差は前期
と同様にほぼ3厘を保持している。
39年3月期の分布図は,39年3月に公定歩合
が1銭8厘に上昇したにもかかわらず(それ以
前の公定歩合は,38年4月に決定された1銭6
厘)変更後の公定歩合の処に1ヤマがみられ,
金融政策の引締期における貸出金利調整速
度の速さを表わしている。なお,もう1つの
ヤマは変更前の規制内金利の上限値の処に
位置し,比較的高い金利による貸出しの調
整速度は公定歩合周辺の調整速度に比し速
くはない。ここで特徴的なことは,金融緩
和期には貸出平均金利が規制内金利の上限
値より右側に位置していたが,金融が引締
められると,規制内金利の上限値の左側に
位置することである。すなわち,公定歩合
のヤマとの間に移動するのである。
その後,39年9月期から40年3月期には公定
歩合と規制内金利の上限値のヤマの間に小
さなヤマがみられるものの,ほぼ前述の現
象と同様であるといえよう。なお,この中
間にある小さなヤマは,引上げ以前の規制
内金利の上限値と同率であり,若干の未 調
整部 分 を 残 して い る こ とを 示 し て いる 。
40年9月期には,引き続く公定歩合の引下
げに伴ない,公定歩合の処にヤマが位置せ
ず,公定歩合プラス1厘の処に小さなヤマが
みられる。また,大きなヤマも規制内金利
の上限値プラス1厘の処に位置する。この時
期は必ずしも前述の現象と斉合的でない。
貸出金利に硬直性がみられるのである。
41年3月期は,公定歩合の変更はない。し
かし超緩和傾向が続いたため,平均貸出金
利の低下がみられ,平均貸出金利は規制内
金利の上限値の左側に位置する。
41年9月期から44年3月期にもほぼ同様の
現象がみられる。
44年9月期は,公定歩合の表示が日歩から
年利建ての%に変更されたため,%建てへ
の調整の時期でもあり,分布図に乱れがみ
られる。
その後,45年3月期,45年9月期は,標準金
利の処に1ヤマがみられ,さらに規制内貸出
金利の上限値に1ヤマが出来,ほぼ前述の如
く2ヤマを画く。
46年3月期は,緩和傾向が続き3ヤマを画
く。この時期は,引下げ後の規制内金利の
処にヤマがみられないことが特徴的である。
すなわち,左端の標準金利の処に1ヤマは出
来るものの,右端のヤマは,44年9月に決め
ら れ た 規 制 内 金 利 の 上 限 値 ( 44 年 9 月 :
8.25%,45年10月:8.00%,46年1月:7.75%)
の処であり,規制金利の引下げに追随しな
い。さらに,その中間に1ヤマがあり,引下
げ後の規制内金利の上限値は,2ヤマ目と3
ヤマ目との間に位置し,引下げ後の規制内
金利の上限値の処にヤマが出来ていないの
である。金融緩和期における,貸出金利調
注2)
整速度の鈍さを表わしてい る 。
46年9月期は,さらに公定歩合が低下し,
全体的に平坦となる
- 38 -
わが国の貸出市場構造
影響力を持っことを示唆している。
以上要約すると,まず30年代後半以降の都
市銀行における貸出金利の分布図を時間的
にながめた場合,超緩和・超引締期でない
限りほぼ2ヤマを画く時期が多いというこ
とが出来よう。すなわち,1つのヤマは公
定歩合ないし標準金利と同率の処に,もう
1つのヤマは臨時金利調整法に基づく規制
内貸出金利の上限値と同率の処に出来るこ
とが多いということが判明した。この現象
は,貸出金利が公定歩合ないし規制金利に
影響を受けている可能性を示唆するもので
ある。そのため貸出金利に規制がない場合
に比し,その分布図にゆがみが生まれてい
47年3月期には,金融緩和傾向が続き,こ
の時期から短期の標準金利,規制内貸出金
利の上限値のヤマの他に,長期の標準金利
と同率の処にも1ヤマがみられる。これは,
貸出期間の長期化を反映していることを
示唆している可能性がある。(この点につ
いては,4で検討することとする。)
47年9月期から,48年3月期までは,超低金
利政策がとられたため,標準金利の処に大
きなヤマが出来,他にも多くのヤマが出来
る。(必ずしも前述の現象と斉合的でない
時期もある。)
その後,詳細な説明は省くが,49年3月期
に至り強力な引締め政策がとられ,標準金
利にほぼ1ヤマが出来る。大幅な金融引締期
には公定歩合が貸出金利規定に大きな
注3)
るといえるかもしれな い 。
次にこれを金融政策の局面別においてと
らえた場合,それぞれのヤマの高さが金融
注2) 金融緩和期・引締期における貸出金利調整
政策の緩和や引締に伴ない変化をするとい
速度の非対称性の原因には次のことが考えら
うことである。すなわち,金融政策の緩和
れよう。すなわち,市場の調整がワルラス的
期には引締期に比し,平坦な分布図となる
な調整過程に従って行なわれていくと仮定し
ことが特徴的である。超緩和・超引締期で
よう。さらに(図a)の如く資金に対する超過
ない限り,公定歩合が引下げられる時期に
需 要 (AB)が 発 生 し て い る 市 場 を 想 定 し よ う 。
この様な仮定を置けば,金融の引締期には公
定歩合の引上げに伴ない貸出金利の引上げが
は規制内金利の上限値の処のヤマが公定歩
注3)
合の処のヤマよりも高くな り ,平均貸出金
容易である。ところが,金融の緩和期には,
利が規制金利の上限値の右側に位置し,全
公定歩合やコール・レートの低下につれて,
体的に平坦となる傾向がある。なおこの場
供給曲線が右側にシフトするが,シフトした
合,平均貸出金利と銀行の平均費用との差
結果の供給曲線がS´S´の場合には,なお 資
をほぼ一定に保持しようとする行動が働く
金 に 対 す る 超 過 需 要 ( CB) を 残 し , 貸 出金
利の引下げが行なわれにくい。S´´S´´にシフ
トして始めて,貸出金利が低下することとな
るということも考えられよう。
(図a)
可能性もある。従って,決定的なことはい
えないにせよ平均貸出金利の低下が公定歩
合の低下に比し鈍く,全体的に貸出金利に
下方硬直性がみられる。金融緩和期には,
貸出金利に影響を与える要因として,銀行
の平均費用も見逃せない要因となるかもし
れない。
一方,引締期には公定歩合の処のヤマが
高くなり,平均貸出金利も公定歩合と規制
金利の上限値との間に位置することが多い
ため,一般的には尖った形をとることとな
注3)
る 。引締期には,貸出金利に影響を与える
要因として,公定歩合の影響力が強く作用
- 39 -
する可能性がある。
また貸出金利調整の速度も緩和期に比し
速いということが出来よう。ところで,超
緩和期が続くと,公定歩合の処のヤマが高
くなり,貸出金利に影響を与える要因とし
て,公定歩合の影響力が高まる。
B.次に地方銀行の貸出金利分布図の検討に
移ろう。分布図を時間的に詳述することは
省くが,一般的には地方銀行においても都
市銀行と同様に2ヤマを画くということが
出来る。しかし,左側のヤマは公定歩合な
いし標準金利(超緩和期にはコール・レー
トの処にヤマが出来ることがあり,この点
は都市銀行に比し相違する。)とほぼ同率の
処にみられることは,都市銀行でみられた
現象と大略似ているが右側のヤマは都市銀
行でみられた様に常に規制内金利の上限値
の処と一致するのではない。すなわち,金
融が引締められる時期には,規制内金利の
上限値の処にヤマが出来ることが多い。と
ころが,緩和期には地方銀行の貸出平均金
利の処にヤマがみられることが多いという
ことが特徴である。さらに,地方銀行では
左側のヤマが,コール・レートと同率の処
に出来る時期もあることが,都市銀行に比
し特徴的なことである。
地方銀行の貸出金利の典型的な分布図
は,金融緩和期には左側の公定歩合ないし
プラスαの利率の処のヤマを無視すると,
ほぼ正規分布に近いパターンを画くともい
えよう。しかし,金融が引締められると,
規制金利に偏ったパターンをとるのであ
注3)
どの様な貸出金利における貸出でも銀行の効
これを景気局面別に考えた場合,引締期に
は下限の動きが上限のそれよりも大きいと仮
定すると全体的に分布パターンは尖った形を
とる(図c参照)ということが想定出来る。
用は同じであると考えよう。すなわち,危険
度の高い企業には高い金利をつけ,危険度の
低い企業には低い金利をつけ,そのどちらか
ここで貸出金利になんらかの規制がある場
を多く選択するという行動をとらないものと
合を想定しよう。公定歩合ないし規制金利の
仮定する。
上限 値 が rl1 と rl 2 と の 間 で あ る と す る と ,
この仮定に基づくと,貸出金利の分布図は
公定歩合以下の貸出金利による貸出部分と,
規制 金 利 の 上 限 値 以 上 の 部 分 と が そ れ ぞ れ
BDに収束すると考えられる。従って2ヤマを
画くということが出来よう。
なだらかな,一山を画くunimodalな形をとる
といえよう。ここでは簡単のためそれが一様
分布で近似できるものとしょう。さて左端は
あまり貸出金利が低いと銀行が他の市場で資
なお , 引 締 期 に は rl1 と 公 定 歩 合 と の 差 が
産を運用する可能性があり,また右端はあま
り高い金利では借入れ先の企業側で借入れを
規制金利の上限値と rl 2 の差に比し大きいと
手控えることが考えられる。従って,貸出金
仮定すればBの部分はDの部分に比し大きく
なり,緩和期にはその逆となることが考えら
れ得る。
利に規制がない場合は,貸出金利の下限値
を rl1 とし上限値を rl 2 とすると(図b)の実
線のパターンを画くことが想定出来る。
- 40 -
わが国の貸出市場構造
図
3
景気局面別貸出金利の典型的分布図
(緩 和 期)
(引 締 期)
注)△等の印は図2の注参照
資料)図2と同じ
る。なお,地方銀行では分布パターンが,
めに,短期貸出金利に焦点を紋り,その変
金融政策に伴ないあまり変化をしないこと
動を検討することとする。
にも特徴がある。すなわち,都市銀行に比
その際,(1)で試みた様な,各貸出金利に
較して,地方銀行の貸出金利に硬直性が強
ついての貸出割合を示す適当なデータがな
くみられるということである。
いため,貸出金利別貸出割合を示す分布パ
なお,景気局面別にみた典型的な貸出金
利の分布パターンは図3の如くである。
(2)
(1)では,都市銀行・地方銀行について,
ターンは画けない。そこで,「経済統計年
報」を使用し,縦軸に規制内金利をとり,
横軸に時間(4半期別)をとって,名目上
長期・短期を含めた貸出金利別貸出構成比
の自主規制金利等の上下に応じ,これがど
の分布パターンを検討したが,ここで,公
の様に変化をしてきたかの検討を試みた。
定歩合との関係をより明らかにするた
ここでは規制内金利の名目上の中心値 と ,
注4)
- 41 -
4
図
注)1
規制内金利等の推移(都市銀行)
rl1 :規制内金利(都市銀行)
2
rl p :プライム・レート
3
rl a :「その他の手形の割引ならびに貸付」金利の上限値
4
rl m : 1 / 2(rl p + rl a )
資料)
「経済統計年報」
注)1
図
5
規制内金利等の推移(地方銀行)
rl 2 :規制内金利(地方銀行)
2
rl p :プライム・レート
3
rl a :「その他の手形の割引ならびに貸付」金利の上限値
4
rl m : 1 / 2(rl p + rl a )
資料)
「経済統計年報」
- 42 -
わが国の貸出市場構造
実際の規制内金利の平均値とを比較してみる
こととする(図4,5参照)。
貸出金利の平均値が中心値を上まわること
は,大略的にいつて金利の分布が中心値より
大きな側,右側に片寄っていることを意味
し,平均値が中心値を下まわることは,分布
が中心値より小さな側,左側に片寄っている
ことを意味する。たとえば,金利の下降の際
に平均値と中心値との差が拡大することは,
間接的な金利硬直性の一つの指標といって良
いであろう。
なお,金利の中心値はいわゆる限界ベース
の金利であり,金利の平均値は平均ベースの
金利である。従って,time lag の問題があ
るため,中心値の変動に即応する形で平均値
が動かないことは当然のことであるが,それ
にもかかわらず,図より次のことが読みとれ
る。
都市銀行にあっては,まず昭和39年の引締
期を除けば,引締期には平均値が中心値を下
まわっており,金利の分布が左側に偏ってい
ることを示している。また,緩和期には平均
値が中心値を上まわっており貸出金利の分布
が右側に偏っている。さらに,緩和期に,貸
出金利の平均値と中心値との差が拡大するこ
とが多く,短期貸出金利にも硬直性があるこ
とが伺えよう。
次に,引締期の貸出金利調整速度と,緩和
期のそれとを比較した場合,引締期の調整速
度が緩和期の調整速度より早いことが読みと
れる。
一方,地方銀行にあっては,常に平均値は
中心値を上まわっており,恒常的に金利の分
注4)規制内金利とは,主に1年未満の短期貸出金
利をいう。また,名目上の規制内金利の上限
を「その他の手形の割引ならびに貸付け」の
金利とし,下限をプライム・レートとした。
従って現在では,上限レートがプライム
・レート+1.75%であるから,プライム・レ
ート+0.875%(=公定歩合+1.125%)のレー
トを名目上の中心値とした。
布が右側に偏っている。また,金利下降の際
に,平均値と中心値との差が一層拡大すること
があり,下方硬直性が強いことを示している。
3.貸出金利の決定要因
われわれは前節において,貸出金利構造がど
のような特徴をもっており,一般に金利の硬直
性と呼ばれているものが具体的にどのような形
をとるのかについて観察してきた。それでは,
このように硬直的と見られる貸出金利は一体ど
んな要因によって決定されているのであろう
か。そこで本節では,貸出金利の決定に関与す
ると思われるいくつかの要因,特に公定歩合,コ
ール・レート,預金金利を基礎とする銀行の平
均費用等の変数と貸出金利がどのような相互関
係にたっているかを定量的に検討することにし
よう。
そもそも,貸出金利決定のメカニズムとして
はいくつかの代替的な仮説が想定し得る。第一
の仮説は,標準金利の制度・慣行にあらわれて
いるように,貸出金利が公定歩合と連動して動
く,具体的には公定歩合プラス0.25%とか,プ
ラスαとして動く要因が支配的であるという仮
説である。もしこの仮説が正しければ,貸出金
利は公定歩合と一番良く連動して変化すること
になるであろう。第二の仮説は,鈴木淑夫(19
74)の主張するように銀行も利潤極大原理,い
いかえれば限界原理によって貸出行動を行なっ
ているとする仮説である。この仮説の意味する
ところは,資金貸出の限界費用は,比較的自由
に金利形成が行なわれている銀行準備の市場で
あるコール市場の利子率,つまりコール・レー
トに反映されるので,貸出金利はコール・レー
トと,もつとも密接に連動するということであ
る。とくに,鈴木淑夫の主張するように地方銀
行やその他の銀行への金融政策の波及過程がコ
ール市場の金利メカニズムを通じてなされると
すれば,地方銀行の貸出金利に対して,コール
・レートの影響が強く働くということになろ
う。第三の仮説は,日本の銀行は利潤極大原理
- 43 -
によって行動しているのではなく,シエア拡大
(1)都市銀行,地方銀行別貸出金利の特色
原理,あるいは規模拡大原理によって行動して
まず,各仮説に基づいて,都市銀行・地方
いるという仮説である。この定式化にはさまざ
銀行別に貸出金利と各仮説の行動要因を現わ
まな可能性があるが,その中で一番単純な行動
す近似値との回帰分析を行なおう。
原理は,銀行はフル・コストないしマーク・ア
ここで,各仮説の行動要因の近似値として
ップ原理によって決定されるという行動原理で
次のデータを使用する。すなわち,Iの制度的
ある。この定式化に従えば,貸出金利は銀行の
要因には公定歩合を,IIの限界原理にはコー
預金その他債務に対する支払利息を主体とする
ル・レートを,またIIIのフル・コスト原理に
銀行の平均費用と,もっとも密接に連動すると
は(預金利息+債券利息+借用金マネー利息
いうことになる。
+経費)/(預金平均残高+債券発行平均残高
なお,貸出金利が銀行の平均費用と密接に連
注 6 )
+借用金マネー平均残高)
(以下,銀行の平
注 7 )
動するからといって,必ずしも銀行がフル・コ
均費用という。)を使用することとする。なお,
スト原理に基づいた行動をとっていると速断す
銀行の平均費用のデータが半年ベースのもの
注5 )
ることは出来ない。しかしながら,限界費用が
であるため,他の説明変数及び被説明変数も,
価格決定に影響力を持たない時期に,平均費用
比較を容易にするために,すべて,半年ベー
が影響力を持つことがあれば,フル・コスト原
スで回帰分析を行なった。本来金利変動の分
理により価格決定がなされているということも
析のためには,月次ないし,4半期ベースが
可能であろう。以下で,フル・コスト原理と呼
適当であろうが,銀行の平均費用のデータが
ぶのは,限界費用よりも平均費用がより強く影
半年ベースであるため,やむを得まい。さ
響力を持っている場合を総称するのであって,
て回帰分析結果は,表1~7に示されている。
銀行が厳密にマーク・アップ率を定めて行動し
A.まず,規制内貸出金利(1年未満,1件100
ているという狭義のフル・コスト原理ではない
万円以上の貸出)に関し,都市銀行・地方
ことを注意しておきたい。
銀行別に,主に短期(1年以内)貸出金利
がどの様な要因により決定されているかを,
そこで貸出金利が,I.制度的要因により決
定されているのか,また,II.銀行が限界原理
貸出金利の一期ラグを説明変数に加えた回
により行動して決定されているのか,あるい
帰分析(表1参照)の結果を中心と
はIII.銀行が「平均費用プラス必要な利潤」と
いう,いわゆるフル・コスト原理に基づいて
注6)独占的市場を想定した場合,コール・レー
決定されているのか,という3つの貸出金利決
ト が 価 格 決 定 に 与 え る 影 響 は ,間 接 的 な も の
定要因の仮説のうちどれが現実の貸出市場に照
と な り ,需 要 曲 線 の 形 状 が 大 き な 意 味 を 持 つ
こととなる。
らして適切なものであるかを,「経済統計年
注7)ここでは,経常支出を構成する主な勘定科
目を考慮しているが,外国為替関係損,手数
料等を除外しており,すべての経常支出を網
羅しているものではない。また,経常外の臨
時的な費用項目も考慮しておらず,厳密には
銀行の平均費用とはいえない。計算上の簡略
化の問題を別にしてフル・コスト原理という
とき,これらの費用をどう考えるかは重要な
問題であるが,その十分な分析のためには経
営体としての個別銀行の行動に対するより詳
細な研究を必要とするで あ ろ う 。
報」を使用して検討してみることにする。
注5)たとえば,完全競争下で限界原理に従って
いる企業を考えると,長期的均衡下では,平
均費用と限界費用とが等しくなり,平均費用
と製品の価格とは密接に関係することになろ
う。あるいは,不完全競争の下でも,チェン
バレンの言うような独占的競争下では均衡状
態で価格と平均費用は等しくなる。この時,
価格は限界費用よりも平均費用とのつながり
がより直接的となるのである。
- 44 -
わが国の貸出市場構造
1
表
x
I
都
市
II
銀
定数項(a)
III
0.7054
(10.26)
(15.85)
1.3622
0.6348
0.2680
( 2.67)
(13.36)
( 3.05)
4.4660
0.3185
(12.24)
( 7.28)
2.2030
0.2547
0.3973
( 2.07)
( 5.30)
( 2.24)
1.5325
1.3043
(Δ2.61)
(14.64)
1.6949
1.2444
0.07937
(Δ2.43)
( 9.90)
( 0.62)
4.5405
0.4961
(17.88)
(11.95)
1.2247
0.4314
0.4977
( 3.14)
(19.58)
( 8.83)
5.6414
0.2333
(21.83)
( 7.53)
2.0927
0.1886
0.5228
( 2.19)
( 7.02)
( 3.81)
2.6630
0.7489
( 1.85)
( 3.39)
0.08797
0.3551
0.6866
( 0.05)
( 1.40)
( 2.49)
Δ
I
地
方
II
銀
行
III
x の係数(b) rl ( −1) の係数(c)
2.7930
Δ
行
規制内貸出金利の回帰分析結果
-
-
-
-
-
-
R
S
d.w.
0.955
0.224
1.41
0.967
0.192
1.86
0.827
0.426
0.87
0.860
0.387
0.96
0.948
0.241
1.13
0.945
0.249
1.26
0.925
0.209
0.92
0.984
0.0989
0.80
0.836
0.302
0.84
0.903
0.237
0.63
0.551
0.458
0.51
0.661
0.415
0.52
注) 1.計測期間は昭和37年4月から昭和49年9月まで
2.回帰式は, rl = a + bx または
ここで
rl = a + bx + crl( −1)
rl :規制内貸出金利,(-1)は一期前の値
x:説明変数
I:公定歩合
II:コール・レート
III:
預金利息 + 債券利息 + 借用金マネー利息 + 経費
預金平均残高 + 債券発行平均残高 + 借用金マネー平均残高
3.カッコ内はt-value
- 45 -
表
x
都
市
銀
行
地
方
銀
行
注)
2
規制内貸出金利の回帰分析結果(差分ベース)
定数項(a)
x の係数(b)
0.02838
0.6876
I
(
II
III
I
0.02855
(
III
0.35)
(8.91)
0.2734
(4.95)
0.007958
1.2756
( Δ0.15)
(9.28)
0.02373
0.5003
Δ
(
II
0.51)
0.57)
0.02226
(
0.39)
0.03164
(
0.47)
(8.61)
0.2079
(5.36)
0.9002
(3.80)
R
S
d.w.
0.879
0.270
2.11
0.711
0.399
1.42
0.887
0.262
2.20
0.872
0.203
0.93
0.740
0.280
0.87
0.608
0.330
1.35
1.計測期間は昭和37年4月から昭和49年9月まで
2.回帰式は, rl − rl ( −1) = a + b(x − x ( −1) )
ここで
rl :規制内貸出金利,(-1)は一期前の値
x:説明変数
I:公定歩合
II:コール・レート
III:
預金利息 + 債券利息 + 借用金マネー利息 + 経費
預金平均残高 + 債券発行平均残高 + 借用金マネー平均残高
3.カッコ内はt-value
して検討することとする。
定というようも,マーク・アップの率を固
都市銀行では,各回帰式の相関係数間に
定するという形で動いていることを示唆
顕著な差がなく,特に公定歩合を説明変数
ししている。ところで公定歩合の係数は,予
とした場合と,銀行の平均費用を説明変数
想されるように,コール・レートの係数よ
とした場合の相関係数はほぼ同じである。
り高い。また,ラグ付の推定式をみればこ
従って,ある仮説を強力に支持し得るとい
れも予想されるように貸出金利のコール・
う結果を得た訳ではないが,強いて各仮説
レートに対する調整速度が遅いことを示唆
間に差を認めるとすれば,公定歩合を説明
している。
注 8 )
変数とした場合の相関関係が最も良いとい
次に,ダービン・ワトソン比をみると公
うことがいえよう(説明変数を公定歩合と
定歩合を説明変数とした場合以外には誤差
し た 場 合 の R= 0.967, 銀 行 の 平 均 費 用 の
に正の自己相関が存在することを示してい
場 合 は R= 0.945, コ ー ル ・ レ ー ト の 場 合
る。そこで,被説明変数及び説明変数の差
はR=0.860)。なお,説明変数の係数をみる
分ベースで回帰分析を行なったのが表2で
と,まず銀行の平均費用が最大で,1をか
ある。その結果,ダービン・ワトソン比は
なり越えている。これは,もしフル・コス
2に近ずいた。ところで,ここでも回帰式
ト原理がかりに正しいものとすると,フル
の相関係数は,特に公定歩合を説明変数と
・コスト原理は,どちらかといえば利鞘一
した場合と銀行の平均費用を説明変数とし
- 46 -
わが国の貸出市場構造
た場合のそれがほぼ同じであり,どの仮説
を支持し得るかという結論を下すことは難
かしい。しかしわずかに,銀行の平均費用
が公定歩合よりも説明力が高くなる。この
結果からみれば都市銀行の短期貸出金利
は,必ずしも制度的要因のみで決定されて
いると一概には断定出来ず,銀行行動にフ
ル・コスト原理的色彩が働いている可能性
を全く否定することは出来ないことを示し
ているといえよう。
次に,地方銀行では(表1参照),まず都
市銀行に比し,各説明変数の係数が小さい。
そして,一期ラグ付の被説明変数の係数が
大きく,また,ダービン・ワトソン比も都
市銀行に比較して,より正の系列相関を示
注9)
す値をとっている 。このことは,都市銀 行
に比 し ,地方銀行の貸出金利に一層硬直性
が高いことを示しているといえよう。とこ
ろで,各説明変数との相関関係は,公定歩
合を説明変数とした場合が最も良く(R=
0.984),コール・レート(R=0.903),銀
行の平均費用(R=0.661)という順である。
また,被説明変数及び説明変数の差分べー
スの回帰分析結果も,公定歩合を説明変数
とした場合の相関係数が最も良い。従って,
地方銀行の短期貸出金利は,公定歩合と連
動する制度的要因により,もっぱら影響を
受けているということが出来よう。
なお,地方銀行の各説明変数との相関関
係の順位は,公定歩合,コール・レート,
銀行の平均費用であるが,都市銀行では,
顕著な差がある訳ではないが,公定歩合,銀
行の平均費用,コール・レートという順で
あった。この相違は,地方銀行の金利決定
に際し,コール・レートの影響が都市銀行
に比し強いことを示すといえよう。すなわ
ち,鈴木淑夫の主張するような,地方銀行
が,コール市場を通じた金融政策の波及効
果を受けているという政策連鎖の存在の可
能性を示す一つの間接的な証拠であるとい
えるかもしれない。
B.次に,規制外貸出金利(1年以上1件100
万円未満の貸出)を考察しよう。ここでは
都市銀行・地方銀行別に,主に長期貸出金
利が,どの様な要因により決定されている
かを回帰分析で検討する。貸出金利には,
一種の惰性があると考えられ,またラグ付
の被説明変数を加えたときの回帰方程式の
フイットの改善が強いので一期ラグ付の被
説明変数を加えた場合の回帰分析の結果に
おけるあてはまりの良さが一つの目安とな
るであろう。(表3参照)
都市銀行では,各回帰式の相関係数はほ
ぼ同じであり,どの仮説を支持し得るかは
決め難い。この様に各相関係数間に顕著な
差異がない場合は,各相関係数間の若干の
相違によりある仮説を支持することは危険
なことであるが,強いてその間に差を求め
れば,相関関係の順は,公定歩合を説明変
数とした場合が最も良く(R=0.972)銀行
の平均費用(R=0.944),コール・レート
(R=0.932)である。従って,一期ラグ付
の回帰分析の相関関係でみた場合は,決定
的なことはいえないが都市銀行の長期貸出
金利も制度的要因により決定されている可
能性が強いということが出来よう(しかし
ながら,ラグ付でないと平均費用との相関
が高い)。ところで,被説明変数,説明変
数の差分べ一スでは(表4参照)
,公定歩合を
説明変数とした場合と,銀行の平均費用を
説明変数とした場合とでは,相関係数がほ
ぼ同じであるが,銀行の平均費用を説明変
数とした場合が若干よいことに注意しよう。
つまり,都市銀行の長期貸出金利は,短期
貸出金利よりも,より,フル・コスト原理
的色彩がかなり影響力をもつことが判
注9)な お , 地 方 銀 行 で は, 一 期 ラ グ 付の 被 説 明
注8)定数値がゼロでないため,厳格にはマーク
変数を加えても都市銀行に比しダービン・ワ
・アップ一定とはいえない。
トソン比は2に近づかない。
- 47 -
3
表
x
I
都
市
銀
II
定 数 項 (a)
x の 係 数 (b)
6.5131
0.2772
(25.70)
(
1.3398
0.2374
0.6640
(
(13.89)
(11.34)
2.86)
7.0724
0.1373
(
(
行
I
地
方
銀
II
行
R
S
d.w.
-
0.804
0.209
0.47
0.972
0.0817
1.28
0.767
0.225
0.63
0.932
0.126
1.07
0.867
0.175
0.45
0.944
0.114
1.47
0.574
0.235
0.27
0.989
0.0407
1.25
0.576
0.234
0.35
0.952
0.0847
0.97
0.721
0.198
0.42
0.854
0.144
0.63
-
5.93)
0.1115
3.03)
(
0.6220
8.31)
(
6.79)
4.5374
0.5545
(10.64)
(
1.3087
0.4400
0.4878
(
(
(
1.99)
-
8.58)
9.38)
7.3472
0.1667
(25.78)
(
5.55)
-
3.58)
0.5558
0.1585
0.8197
(
2.11)
(18.96)
(26.53)
7.6512
0.08654
(38.12)
(
1.5642
0.07177
0.7428
(
(
(11.47)
2.92)
5.1166
III
rl(- 1)の 係 数 (c)
6.69)
(36.66)
2.2006
III
規制外貨出金利の回帰分析結果
(
-
3.59)
8.17)
0.4976
8.20)
(
-
5.20)
2.1076
0.2755
0.5323
(
(
(
2.29)
3.09)
3.79)
注)1.計測期間は昭和 37 年 4 月から昭和 49 年 9 月まで
2.回帰式は rl=a+bx または
rl = a + bx + crl ( −1)
ここで rl:規制外貸出金利
x:説明変数
I:公定歩合
II:コール・レート
III:
3.カッコ内は
預金利息+債券利息+借用金マネー利息+経費
預金平均残高+債券発行平均残高+借用金マネー平均残高
t-value
- 48 -
わが国の貸出市場構造
表
x
4
規制外貨出金利の回帰分析結果(差分ベース)
x の 係 数 (b)
0.001973
0.2898
(
0.07)
(6.98)
都
定 数 項 (a)
市
I
銀
II
行
III
地
方
I
銀
II
行
III
0.000879
0.1218
(
0.02)
(4.86)
△
0.01557
0.5710
(△ 0.63)
(9.12)
△
0.01133
0.1717
(
△
0.45)
(4.88)
△
0.01196
0.07206
(△ 0.42)
(3.75)
△
0.01175
0.4115
(
△
0.44)
(4.46)
R
S
d.w.
0.822
0.145
0.96
0.705
0.181
0.97
0.884
0.119
1.72
0.706
0.123
0.77
0.602
0.139
0.74
0.671
0.129
1.39
注)1.計測期間は昭和 37 年 4 月から昭和 49 年 9 月まで
2.回帰式は
rl − rl( −1) = a + b(x − x
( −1)
)
ここで rl:規制外貸出金利,(-1)は一期前の値
x:説明変数
I:公定歩合
II:コール・レート
III:
3.カッコ内は
預金利息+債券利息+借用金マネー利息+経費
預金平均残高+債券発行平均残高+借用金マネー平均残高
t-value
るが,大略としては,公定歩合連動を中心
とする,制度的要因により強く影響を受け
ているということが出来よう。
一方,地方銀行では,公定歩合を説明変
数とした場合とコール・レートを説明変数
とした場合とでは,その相関係数間に顕著
な差はないものの,相関関係の順は,公定
歩合を説明変数とした場合が最も良く(R
=0.989),次にコール・レート(R=0.952)
銀行の平均費用(R=0.854)である。
また,被説明変数及び説明変数の差分ベー
スの回帰分析でも,顕著な差ではないが,
公定歩合が最も良い。従って,地方銀行の
長期貸出金利は,公定歩合連動という制度
的要因に影響を受けているという仮説を支
持することが出来るであろう。
C.さらに,規制内と規制外とを総体として
みた貸出平均金利を使用し,都市銀行・地
方銀行別に平均的にとらえた銀行行動とし
てどの仮説を支持し得るかを検討すること
とする(表5,6参照)。
都市銀行では,ラグ付でない場合や差分
べースの回帰式のフイットは平均費用が良
い結果を示す。しかし,総じてラグ付きの
被説明変数を加えたときの回帰方程式のフ
イットの改善が強いので,一期ラグ付きの
被説明変数を加えた場合で貸出金利規定要
因を検討すると,各回帰式間の相関関係は
ほぼ同じであるが,わずかに公定歩合を説
明変数とした場合のそれが良い。従って,
大略としては貸出金利が公定歩合連動を中
心とする制度的要因により影響を受けてい
るということが出来よう。しかし,ラグ付
でない場合や,差分べースの回帰式では平
- 49 -
5
表
x
I
都
市
銀
II
行
III
定 数 項 (a)
x の 係 数 (b)
4.1154
0.5380
(14.37)
(11.49)
0.81209
0.4570
0.5209
(
1.90)
(17.13)
(
5.3170
0.2521
(18.45)
(
1.6541
0.2022
0.5563
(
(
(
地
方
銀
II
行
III
1.86)
r l ( - 1 ) の 係 数 (c)
R
S
-
0.919
0.236
0.90
0.980
0.120
0.51
0.828
0.336
0.74
0.911
0.247
0.46
0.953
0.181
0.69
0.968
0.149
1.03
0.823
0.236
0.78
0.983
0.0757
0.76
0.762
0.269
0.80
0.912
0.169
0.64
0.648
0.316
0.54
0.709
0.290
0.48
-
7.29)
7.30)
4.24)
1.0370
(
1.22)
(15.47)
0.7516
0.9018
0.2984
(△1.39)
(13.49)
(
5.8194
0.3354
(20.34)
(
0.5124
0.3023
0.7065
(
1.32)
(19.26)
(14.18)
6.5334
0.1615
(28.38)
(
1.7465
0.1358
0.6392
(
(
(
2.03)
-
7.62)
0.6530
(
(
3.44)
-
5.85)
3.5962
3.62)
-
7.17)
5.66)
-
4.29)
1.2958
0.4248
0.4835
(
(
(
0.88)
2.40)
d.w.
8.22)
0.5386
△
I
貨出約定平均金利の回帰分析結果
2.03)
注)1.計測期間は昭和 37 年 4 月から昭和 49 年 9 月まで
2.回帰式は rl=a+bx または
rl = a + bx + crl ( −1)
ここで rl:貸出約定平均金利,(-1)は一期前の値
x:説明変数
I:公定歩合
II:コール・レート
III:
3.カッコ内は
預金利息+債券利息+借用金マネー利息+経費
預金平均残高+債券発行平均残高+借用金マネー平均残高
t-value
- 50 -
わが国の貸出市場構造
表
x
6
貸出約定平均金利の回帰分析結果(差分ベース)
x の 係 数 (b)
0.02225
0.5271
都
定 数 項 (a)
市
I
(
0.48)
(
銀
0.01943
II
(
行
△
III
0.2262
0.32)
(
地
1.05358
( △ 0.33)
(13.03)
方
(
0.3277
0.25)
(
銀
0.009409
II
(
行
(
5.40)
0.1395
0.19)
(
0.01118
III
5.60)
0.01066
0.01095
I
8.11)
4.15)
0.7518
0.23)
(
4.47)
R
S
d.w.
0.859
0.227
0.97
0.754
0.292
0.77
0.938
0.154
1.83
0.742
0.213
0.86
0.643
0.243
0.74
0.673
0.234
1.31
注)1.計測期間は昭和 37 年 4 月から昭和 49 年 9 月まで
2.回帰式は
rl − rl( −1) = a + b(x − x
( −1)
)
ここで rl:貸出約定平均金利
x:説明変数
I:公定歩合
II:コール・レート
III:
3.カッコ内は
預金利息+債券利息+借用金マネー利息+経費
預金平均残高+債券発行平均残高+借用金マネー平均残高
t-value
均費用が最もフイットが良いことなど銀行
行動にフル・コスト原理的色彩が働いてい
ることを否定出来ないことを示している。
他方,地方銀行でも,各仮説間に顕著な
差はないが,短期金利・長期金利と同様に,
公定歩合連動という制度的要因により最も
強く影響を受けているということが出来よ
う。なお,都市銀行に比して,地方銀行の
場合は,貸出金利規定に際して,公定歩合
の影響力が小さいことに留意する必要があ
る。すなわち,ラグ付きでない場合の公定
歩合との相関係数,また一期ラグ付の被説
明変数を加えた場合の公定歩合の係数が,
都市銀行のそれに比し小さいのである。
(2) 企業規模別金利の特色
今までは,都市銀行・地方銀行別に貸出金
利をみてきたが,次に企業の側からみた貸出
金利の決定要因を検討しよう。ここでは,企
業規模別に,
「法人企業統計季報」における
企業の財務諸表のデータを使用し,企業規模
別にみた場合,金利決定が,前述したどの仮
説に基づき行なわれていると判断し得るかを
検討することとする。
なお,回帰分析にあたっては,(1)で述べた
ように銀行の平均費用が半年ベースのデータ
しか入手出来ない。従って比較を容易にする
ために他の説明変数及び被説明変数とも,や
むを得ず,半年ベースに統一して分析せざる
を得なかった。
まず,名目支払金利と各説明変数との相関
関係を分析したのが表7-1~7-3である。こ
こで指摘出来ることは,企業規模が小さけれ
ば小さい程,各説明変数との相関関係が低い
ことである。これは,企業規模が小さい
- 51 -
企業規模別支払金利の回帰分析結果(資本金 200 万円以上 1,000 万円未満の企業)
7-1
表
定 数 項 (a)
x
名
I
目
金
II
利
III
x の 係 数 (b)
d.w.
-
0.392
0.381
1.78
0.08894
0.39 )
0.341
0.389
2.01
-
0.323
0.392
1.69
0.295
0.396
2.17
実
効
金
0.2640
2.19 )
8.2293
( 3.42)
(
0.2545
2.03 )
9.9133
(24.24)
(
0.09556
1.86 )
8.0032
( 3.25)
(
0.09556
1.84 )
5.05760
( 3.65)
(
0.8640
4.04 )
-
0.650
0.315
2.86
6.5551
( 3.27)
(
0.9813
4.06 )
△0.2108
(△ 1.03 )
0.651
0.314
2.45
0.09979
(△ 0.36)
-
0.208
0.870
2.39
0.1445
( 0.52)
0.2103
(△ 0.93)
0.225
0.873
1.76
0.009863
(△ 0.09)
-
0.223
0.873
2.37
0.3244
( 0.27)
0.2038
(△ 0.89)
0.247
0.878
1.77
(
(
0.1783
0.79 )
△
△
△
△
15.5640
(17.08)
△
18.8939
( 4.89)
利
III
S
(
19.5795
( 4.76)
II
R
9.1268
(13.00)
16.06544
( 10.02)
I
r l ( - 1 ) の 係 数 (c)
△
△
△
10.4743
( 2.85)
(
0.7736
1.36)
-
0.199
0.835
2.66
13.6071
( 3.11)
(
0.9497
1.65)
△0.2761
(△ 1.27)
0.262
0.822
1.89
注)1.計測期間は昭和 37 年 4 月から昭和 48 年 3 月まで
rl=a+bx または
2.回帰式は
ここで rl:支払金利
x;I:公定歩合
III:
3. 名目金利=
rl = a + bx + crl ( −1)
rl (-1):支払金利の一期前の値
II:コール・レート
⎛ 都市銀行,地方銀 ⎞
預金利息+債券利息+借用金マネー利息+経費
⎜
⎟
⎟
預金平均残高+債券発行平均残高+借用金マネー平均残高 ⎜⎝ 行の平均値
⎠
名目金利-εT・rT
支払利息・割引料
,実効金利=
1-ε
借入金平均残高+受取手形割引平均残高
⎛ 実効金利は概 ⎞
⎜
⎟
⎜ 算値である ⎟
⎝
⎠
ここで,ε:預金歩留率,εT:定期性預金歩留率,rT:定期預金金利
4.カッコ内は
t-value
資料)法人企業統計季報(大蔵省)および経済統計年報(日本銀行)
(いずれも季節調整前の半年ベースの値)
- 52 -
表
7-2
わが国の貸出市場構造
企業規模別支払金利の回帰分析結果(資本金 1,000 万円以上 10 億円未満の企業)
定 数 項 (a)
x
名
I
金
実
I
金
d.w.
-
0.496
0.530
0.92
(
1.6447
1.07 )
0.3430
(4.39)
0.6342
(4.47)
0.766
0.392
3.02
(
8.5914
20.07 )
0.1838
(3.58)
-
0.574
0.500
1.06
(
2.8752
2.02 )
0.1814
(4.61)
0.5712
(4.14)
0.779
0.383
3.06
(
3.1102
2.60 )
1.0654
(5.83)
-
0.761
0.396
1.28
(
0.5120
0.35 )
0.9223
(5.36)
0.3520
(2.62)
0.815
0.354
2.61
(
11.2842
10.26 )
0.1747
(0.97)
-
0.483
0.905
0.67
(
0.8224
0.39 )
0.3574
(2.81)
0.7623
(5.26)
0.732
0.616
2.76
(
11.1524
14.88 )
0.1462
(1.63)
-
0.253
0.875
0.68
(
1.6384
0.91)
0.2073
(3.41)
0.7345
(5.50)
0.767
0.581
2.97
(
4.6422
2.03 )
1.1758
(3.37)
-
0.549
0.756
0.82
0.7678
0.63)
0.9526
(3.53)
0.5597
(4.23)
0.773
0.574
2.65
利
III
S
0.3130
(2.97)
効
II
R
8.1936
12.73 )
利
III
r l ( - 1 ) の 係 数 (c)
(
目
II
x の 係 数 (b)
△
(△
注)1.計測期間は昭和 37 年 4 月から昭和 49 年 9 月まで
2.回帰式は
rl=a+bx または
rl = a + bx + crl ( −1)
ここで rl:支払金利 rl (-1):支払金利の一期前の値
x;I:公定歩合
III:
3. 名目金利=
II:コール・レート
⎛ 都市銀行,地方銀 ⎞
預金利息+債券利息+借用金マネー利息+経費
⎜
⎟
⎟
預金平均残高+債券発行平均残高+借用金マネー平均残高 ⎜⎝ 行の平均
⎠
名目金利-εT・rT
支払利息・割引料
,実効金利=
1-ε
借入金平均残高+受取手形割引平均残高
⎛ 実効金利は概 ⎞
⎜
⎟
⎜ 算値である ⎟
⎝
⎠
ここで,ε:預金歩留率,εT:定期性預金歩留率,rT:定期預金金利
4.カッコ内は
t-value
資料)法人企業統計季報(大蔵省)および経済統計年報(日本銀行)(いずれも季節調整前の半年ベースの値)
- 53 -
7-3
表
x
企業規模別支払金利の回帰分析結果(資本金 10 億円以上の企業)
x の係数( b )
rl (−1) の係数( c )
6.9138
( 17.47 )
0.4157
( 6.42 )
-
0.792
0.326
0.93
0.5791
0.56 )
0.3775
( 9.42 )
0.7015
( 6.27 )
0.927
0.199
0.81
7.8434
( 24.40 )
0.1946
( 5.05 )
-
0.711
0.375
0.89
(
0.9841
0.74 )
0.1781
( 6.72 )
0.7472
( 5.23 )
0.877
0.256
0.69
(
2.6317
3.14 )
1.0376
( 8.12 )
-
0.855
0.277
0.83
(
0.5641
0.41 )
0.9063
( 6.44 )
0.3127
( 1.85 )
0.869
0.263
0.80
7.4200
( 13.30 )
0.2960
( 3.25 )
-
0.533
0.459
0.76
0.3878
(△ 0.26 )
0.3222
( 5.25 )
0.8385
( 5.39 )
0.823
0.308
1.76
8.0259
( 19.95 )
0.1455
( 3.02 )
-
0.502
0.469
0.76
(
0.1064
0.07 )
0.1627
( 4.96 )
0.8527
( 5.30 )
0.811
0.318
1.57
(
3.1372
2.86 )
0.9274
( 5.54 )
-
0.743
0.363
0.94
0.2606
( 0.17)
0.7651
( 4.56 )
0.4317
( 2.36 )
0.792
0.332
1.33
名
定 数 項 ( a )
I
目
(
金
II
利
III
実
I
△
効
II
金
利
III
注) 1.
2.
S
d . w.
計測期間は昭和 37 年 4 月から 49 年 9 月まで
rl= a+ b x
回帰式は
ここで
r l : 支払金利
x; I: 公 定 歩 合
III:
3.
R
名目金利=
または
rl = a + b x + c rl ( −1)
r l ( - 1) : 支払金利の一期前の値
II:コール・レート
預金利息+債券利息+借用金マネー利息+経費
⎛ 都市銀行,地方銀 ⎞
⎜
⎟
預金平均残高+債券発行平均残高+借用金マネー平均残高 ⎝ 行の平均
⎠
名目金利-εT・rT
支払利息・割引料
, 実効金利=
1-ε
借入金平均残高+受取手形割引平均残高
⎛ 実効金利は概 ⎞
⎜
⎟
⎝ 算値である ⎠
ここで,ε:預金歩留率,εT:定期性預金歩留率,rT:定期預金金利
4.
カッコ内は
t- value
資料) 法人企業統計季報(大蔵省)および経済統計年報(日本銀行)(いずれも季節調整前の半年ベースの値)
- 54 -
わが国の貸出市場構造
注12)
と,リスクその他の攪乱要因あいは貸出先の
く働いてお り ,一方,企業規模が大きくなる
個別性に基づく要因が多いことによると解釈
と,制度的要因により影響を受けている可能
出来よう。大企業に貸出す金利は安定的でし
性があるといえよう。
かも経済計算にのっとった恒常的な部分であ
さらに,実効支払金利でみた場合に,どの
るとすると,中小零細企業向貸出が,銀行の
様なことがいえるかも興味あることである。
全貸出量の限界部分であるということも関係
そこで,実効金利ベースの検討に移るが,ま
注10)
しているかもしれな い 。
ず実効金利算出にあたっては,表7の注3)の
また,ダービン・ワトソン比をみると,次
算式により計算した。この計算は,たとえば,
の様な興味ある傾向が読みとれる。すなわち
拘束預金の把握が出来ないことなどのデータ
企業規模が小さければ小さいほど,ダービン
の制約から次の如く近似計算をしているた
・ワトソン比は2に近く誤差の系列相関がな
め,概算値であることを指摘しておきたい。
いことを示唆しているのに対し企業規模が大
すなわち,①預金歩留率=(現預金平均残
きいほど誤差に正の系列相関がある傾向を示
高)/(借入金平均残高+受取手形割引平均残
注11)
してい る 。これは,企業規模が大きいほど支
高)
払金利に硬直性があることの表われであると
②
も考えられる。この一つの要因としては,企業
残高/全法人の預金平均残高
③ 定期預金金利=1年モノの定期預金金利
従って,預金歩留率は,現金及び拘束預金
でない部分の預金だけ過大評価となっている
ので,実効金利算出式の分母は過少評価であ
る。一方,分子も拘束預金の歩留率を定期預
金の歩留率で近似させ,またその利息も一年
モノの定期預金金利を使用している。
ところで,実効支払金利で検討した結果
は,表 7- 1 ~ 7- 3の如くであり,総体的に
各説明変数との相関関係は低くなり,また各
回帰式間の相関係数はほぼ同じであるものの
名目支払金利と同様に,企業規模が小さいと,
貸出行動にフル・コスト原理的色彩が働いて
おり,一方企業規模が大きいと,制度的要因
により影響を受けている傾向があることが読
みとれる。
なお,以上の企業の側からみた貸出金利決
定要因が,名目支払金利でも実効支払金利で
も同じ結果であるということは,貝塚・小野
規模が小さい程,短期借り入れの割合が多
いこともあげられよう。
ところで,企業規模別に,支払金利決定要
因を,主に支払金利の一期ラグ付被説明変数
を加えた場合の回帰分析により検討すると,
各回帰式の相関係数間に顕著な差がないた
め,決定的なことはいえないが,中小・零細
企業においては銀行の平均費用との相関関係
が高いが,一方,大企業では公定歩合との相
関関係が高いことがみられる。すなわち,資
本金200万円以上1,000万円未満の企業の各説
明変数との相関係数は,銀行の平均費用0.65
1,公定歩合0.341,コール・レート0.295とな
っており資本金1,000万円以上10億円未満の企
業の各説明変数との相関係数は,銀行の平均
費用0.815,コール・レート0.779,公定歩合
0.766である。しかし,資本金10億円以上の企
業の各説明変数との相関係数は,公定歩合
0.927,コール・レート0.877,銀行の平均費
用 0.869なのである。従って,名目支払金利
でみた場合,企業規模が小さい場合には,
銀行行動にフル・コスト原理的色彩が強
定期預金歩留率=全法人の定期預金平均
注11)なお,一期ラグ付きのときの回帰式におけ
るダービン・ワトソン比は,系列相関の存否
を判断する材料とはならない。この点につい
ては森口親司著「計量経済学」を参照された
注10)本稿の分析では,需要曲線をシフトさせる
い。
要因を考慮していないことにも起因しよう。
- 55 -
寺の厳格な意味での信用割当の存在の可能性
というファクト・ファインデイングと類似し
た結果を得たということが出来るかもしれな
い。
ところで,名目ベースと実効ベースの支払
金利の標準偏差,変動係数と,公定歩合,コ
ール・レート,銀行の平均費用のそれらとの
変動の度合いを比較したのが表 8である。こ
れから貸出金利の硬直性及び信用割当の存否
の議論に,とりあえず次のことがいい得るで
あろう。すなわち,名目支払金利と実効支払
金利との変動度合いを,標準偏差でみれば小
企業のそれが大きく,一方変動係数でみれば
大企業のそれが大きい。企業行動が相対的な
動きに反応すると考えるのか,それとも絶対
的な動きに反応すると考えるのかは断定し難
い。しかし,暫定的な結論としては,小企業
においても,それほど実効金利の変動の割合
が,大きくないと考えることが出来るかもし
れない。貸出市場における信用割当の存否自
体は将来の研究にまたねばならないが,貸出
金利が,貸出市場と直接的な関係がなく,外
生的に与えられる公定歩合と連動しているこ
とから,信用割当が存在する可能性が強いと
いえるであろう。
注12)中小・零細企業における平均費用と貸出金
利との相関の高さと,中小・零細企業向貸出
額の多い地方銀行における平均費用と貸出金
利との相関の低さとは,相矛盾する現象であ
表 8
名目ベースと実効ベースの支払金利
の標準偏差と変動係数
標 準 偏 差
企業
規模
資本金
200 万~
1,000 万円
未満
資本金
1,000 万
~10 億円
未満
資本金
10 億円
以 上
名目支払 実効支払
利
金
利 金
変 動 係 数
名目支
払金利
実効支
払金利
0.013774
0.019759
0.12926
0.12758
0.017291
0.021047
0.17151
0.17059
0.016161
0.016306
0.12320
0.17714
注)1.支払金利の計算方法は表 7 の注) 3 参照
2.(1)公定歩合の変動係数=0.37198
(2)コール・レ一トの変動係数=0.38473
(3)銀行の平均費用の変動係数=0.22498
3.いずれも半年ベースの値
4. 貸出しと預金における期間(満
期構造)の変化
銀行にとって貸出しと預金における期間構成
や満期構造は重要な意味をもっている。そし
て,貸出市場の性格を明らかにし,また金利に
関するデータの,特に平均金利のデータの解釈
のためにも,貸出しや預金の期間構成がどうな
っているかを把握することが必要となる。そこ
で,ここでは,銀行の与信・受信両面の期間に
ついて,その最近に至るまでの動向とその変動
の様相を明らかにしておくことにする。
まず,
「経済統計年報」を使用し,都市銀行・
地方銀行別に,与信面については,縦軸に全貸
るかのようにみえる。この現象は,一つには
出しに占める2カ月未満,2カ月以上3カ月未満,
データのカバーする範囲の相違によるもので
3カ月以上1年未満,および1年超の貸出残高構
ある。企業側よりみた回帰分析には地方銀行
成比を取り,横軸に時間(4半期別)をとって,
以外の相互銀行等のその他金融機関が含まれ
時系列でみてこれらの構成比にどの様な変化
ている。従って,地方銀行以外のその他金融
があったのかを示したのが図6,7である。また
機関が,地方銀行と異なる貸出金利決定行動
受信面では,縦軸に全貸出しに占める当座預金,
をとっているとすれば,企業側よりみた場
定期預金,普通預金他の構成比をとり,横軸に
合,中小・零細企業向貸出にフル・コスト的
時間(四半期別)をとって,過去どの様な変化
原理が働くという可能性もある。
を遂げてきたかを示したのが図8,
- 56 -
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