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ダイズシストセンチュウ対応策
2 ダイズシストセンチュウ対応策 【1】 士別地域での状況 ① 士別地域では、転換 畑の大豆栽培が定着し ていますが、過作化や 連作に伴いダイズシス トセンチュウの発生被 図4 経営面積に占める戸別の豆類作付比率(H24、士別地域) 害が見られるようになってきました。 ② 士別地域の作付状況をみると、経営面積に占め る豆類の作付比率が3割を超えている戸数が34% あり ( 図4)、とりわけ剣淵町で作付が多い傾向 にあります。 ③ 平成18年~20年に、上川農試が上川・留萌地方 の大豆・小豆ほ場を75カ所調査した結果、その 20%のほ場で発生が確認されました(図5) 。 また、品種によりセンチュウに対する抵抗性が 異なりますが、抵抗性品種を侵す新しいレースも 現れてきました(レース1・3抵抗性、適応品種 なし) 。 図5 ダイズシストセンチュウの発生状況 (平成20年 中央農試 平成21年 上川農試) ○ダイズシストセンチュウとは? 大豆、小豆、菜豆に寄生するセンチュウ。 土中のシスト(写真1)と呼ばれる殻中の卵で越冬する。畑に大豆、小 豆、菜豆等の寄主作物が栽培されると、根から分泌される物質の刺激によっ てふ化が始まる。ふ化した幼虫は2期幼虫で根に侵入して養分を摂取する。 雌は成虫になると次第にレモン状に肥大し、頭部を残して根の外側に乳白色 の虫体を露出する。雌成虫は数百個の卵を体内に保持した状態で死亡する。 死亡した雌成虫はシストと呼ばれ、栗色に変わり根から離れ土中に残る(図 6) 。 写真1 大豆の根に 寄生しているシスト 通常7月中旬以降に被害症状が現れる。大豆では生育が停止して 草丈が低く、茎葉が黄変する(写真2) 。小豆では黄化症状ははっ きりしないが、生育 は初期から抑制され る。密度の高いほ場 では着莢数、百粒重 が減少し大きく減収 する。根粒菌による 根粒は激減する。 写真2 センチュウ発生ほ場 23 図6 シストセンチュウの生活環模式図 (西澤務氏原図) 【2】 被害軽減対策 ① 適正なほ場管理(センチュウを持ち込まない、持ち 出さない、ほ場出入りでの洗浄(写真3) ) ダイズシストセンチュウは環境耐性が高く、ほ場内 に持ち込んでしまうと、シストの状態で10年近く生存 し続けます。一度発生すると根絶が難しいので、未発 生のほ場へ持ち込まないことが大切です。作業順とし ては、発生ほ場を最後にするなど工夫しましょう。 写真3 ほ場の出入りで洗浄 ② 緑肥の導入(秋まき小麦への間作アカクローバ、ク リムソンクローバの休閑緑肥) クローバ類(捕獲植物)は、卵のふ化を促進し幼虫 の侵入を許すが、その後成虫まで生育できないので密 度が低下します。秋まき小麦へのアカクローバ間作で 翌年には7割程度低下しています(図7) 。 ③ 適正な輪作(4年輪作の例:大豆→緑肥など / 秋 まき小麦→秋まき小麦 ( アカクローバ間作 ) →てん菜) 非寄主植物 ( 豆類以外 ) を栽培することで、自然ふ 図7 クローバ間作、非間作下の線虫密度推移 クローバは種時密度を100とした時の 各調査時密度指数 化した幼虫が寄生できず、密度は60%程度低下します。 しかし、短期の輪作や、連作をすると密度が極端に高まり減収するので、4年程度の輪作 でセンチュウ密度を低下し豆類を作付けしましょう。 ④ 抵抗性品種の作付け センチュウはレースの分化が早く、現在レース3から分化した3種類とレース1が中心 ですが、不明なレースもあります。それぞれのレースに抵抗性のある品種を作付けると幼 虫が成虫に成育できないため、シストの密度が低下します(表5) 。しかし、高密度ほ場 では、ふ化した幼虫が一度は根に入るため減収します。 抵抗性品種作付であっても、短期の輪作はさける必要があります。 表5 センチュウレースに対応した抵抗性品種 レース分類 レース3 レース1or 3 レース種類 R3 R3 R3g R3 R3g R3p Rgp 抵抗性品種 ユキホマレ トヨコマチ トヨムスメ ユキシズカ ユキホマレR ユキホマレR ユキホマレR(スズヒメ) 抵抗性ランク 強 強 極強 極強 ※昨年の調査では士別支所管内でR3、R3gのレースが確認されており、ユキホマレの抵抗性では不十分なほ場が出てきている。 ⑤ 薬剤処理 大豆・小豆では、オキサミル粒剤 30kg/10a 全層土壌混和と、6kg/10aの作条土壌混和 で使用できます。センチュウの密度が高い場合は全層で、密度が低い場合は作条で実施し ましょう。 根系内に速やかに浸透移行し、センチュウが根部に侵入するのを阻止または遅延させ、 植物の根を守る効果があります(制センチュウ作用) 。 24