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メートルF sの
1章 学習時間 60 分 速度 ZQG1A1-Z1J1-01 本章 の 目標 速さと速度の違いを理解する。 速さや速度に関する計算ができるようになる。 要点 1 - 1 速さ ⇒教科書対応ページ〔 〕15 分 ☆ 速さとは,移動の 激しさ を表す物理量である。 ☆ 速さは,次のように定義される。 [㋑ [速さ] = [ ㋺ ] ] (速さの定義) ☆ 上式より,速さは単位時間(1 秒や,1 時間など)当たりの移動距離を表すものであること がわかる。また,単位には,] m/sg( 「メートル毎秒」と読む)や,]km/h g( 「キロメートル毎 時」と読む)などが用いられる。 補1 補1 ] m g(メートル) は距離を表す単位であり, ] s g は時間を表す単位で「秒」を意味する。つまり, ]m/sg は,1 秒間 に進む距離を, ] m g を単位として表したものである。たとえば,10 m/s は,1 秒間当たり 10 m 移動するような速さ である。 また, ]kmg(キロメートル)は距離を表す単位で,1 km=1000 m である。 ] h g は時間を表す単位で(1 時間,2 時間 などの) 「時間」を意味する。 ㋑ 移動距離( 「道のり」なども可) ㋺ 経過時間 (「時間」や「所要時間」なども可) 解答 例題 1 - 1 速さに関する計算をしよう 以下では,すべての運動は直線上で起こり,各物体の速さや運動の向きは一定であるものと する。なお,有効数字は考慮しなくてよい (有効数字については,4 章の後に説明する)。 問1 5 s で 10 m 移動した物体 A の速さ v 1 は何 m/s か。 問2 24 m 移動するのに 8 s 要した物体 B の速さ v 2 は何 m/s か。 問3 問1の物体 A と問2の物体 B ではどちらの方が速いか,答えよ。 問4 物体 C が,時間 t の間に,距離 x だけ移動した。この場合の物体 C の速さ v を求めよ。 問5 x 軸上を一定の速さで運動する物体 D がある。物体 D は,時刻 t=3 s の瞬間に x=3 m の位置を通過し,時刻 t=7 s の瞬間に x=35 m の位置を通過した。物体 D の速さを求めよ。 補2 補2 「時間」と「時刻」の違いを説明できるだろうか。 「時刻」は点(い つ)を表すものであり,「時間」は 2 つの時刻(点)の間の 長さ を 表すものである。 たとえば,右図のように,ある人が点 A を 1 時に通過し,点 B を 3 時に通過する場合については,1 時や 3 時は「時刻」である。 また,この人が点 A から点 B まで要する「時間」は 2 時間である。 1章 ZQG1A1-Z1J1-02 うめてみよう ] m ] s 移動距離の単位として ] m g ,時 間の単位として ] s g をそれぞ れ用いる場合,速さの単位は ]m/sg である。 ▼ [移動距離] [㋩ = v1= [時間] [㋥ =[㋭ ]m/s 問2 速さの定義より,v 2 は ] =[㋠ ] ] 問1と同様に考える。ただし, 問 2以 降は,必要であ れば, [ ] 内に単位も記入するこ と。 ▼ [㋬ v2= [㋣ 要点 問1 速さの定義より,v 1 は 問3 問1の結果,および問2の結果より v 1{㋷ 2 , 1 }v 2 上式より,A,B のうち速いのは{㋦ A , B }である。 問4 速さの定義より,v は ] ] 問題文で,x,および t の後ろ には,単位がついていないので, 答にも単位をつける必要はない。 この場合,文字 (x,および t) に単位が含まれていると考えて よい (解答解説編のコラムも参 照)。 ▼ [㋸ v= [㋾ 問5 時刻 t=3 s から時刻 t=7 s までの 4 s 間における D の移動距 離を L とすると L=[㋻ ] 上式,および速さの定義より,求める速さは L =[㋕ ] 4s 解答 ㋩ 10 ㋥ 5 ㋭ 2 ㋬ 24 m ㋣ 8 s ㋠ 3 m/s ㋷ 1 ㋦ B ㋸ x ㋾ t ㋻ 35 m-3 m(あるいは 32 m) ㋕ 8 m/s コラム F1 マシン vs. 人工衛星 1 周 4.2#10 4 km の軌道 (地球の表面は 1 周 4#10 4 km 程度)を 1 時間半 (=5.4#10 3 s)で 1 周する人工衛星の速さは,速さの定義より [ 1 周の距離] 4.2#10 4 km = ]7.8 km/s]2.8#10 4 km/h [ 1 周に要する時間] 5.4#10 3 s これは,F1 マシンの速さ (300 km/h)の 100 倍に近い。つま り,地上で最速のレースをしている車は,優雅に地球を周回 しているように見える衛星の足元にもおよばないのである。 ZQG1A1-Z1J1-03 要点 1 - 2 速度 ⇒教科書対応ページ〔 〕15 分 ☆ 速度とは,速さに運動の[㋑ ]の要素を加えた物理量である。運動の [㋑ ]は,符号 (+,−) によって表す場合が多い。 補1 ☆ 速度(速さと運動の向きの両方) が変化しない運動を[㋺ ]という。 ☆ 位置の変化量を変位という。 補2 等速直線運動をしている物体の速度は,次の式で定義される。 [速度] = [ ㋩ [変位] ] (速度の定義) ☆ 同一の(あるいは平行な)直線上で,物体 a と物体 b が,それぞれ一定の速度 v a ,v b で運 動しているとき,a に対する b の相対速度 v ab(a とともに運動する観測者から見た b の速 度) は,次のように定義される。 v ab =v b -v a (相対速度の定義)補3 補1 たとえば,右向きを正の向きとする場合,左向きに速さ 5 m/s で運動する物体の速度は -5 m/s と表される。 補2 たとえば,x 軸上で,x=3 m の位置から x=-2 m の位置まで移動した物体の変位は,(-2 m-3 m=)-5 m である (一般に, [変化量]= [変化後の量] -[変化前の量]である)。 補3 たとえば,v a =3 m/s,v b =-2 m/s のとき,v ab =v b -v a =-2 m/s-3 m/s=-5 m/s である。これは,a ととも に運動する観測者からは,b が負の向きに速さ 5 m/s で運動しているように見えることを表している。 解答 ㋑ 向き ㋺ 等速直線運動 (「等速度運動」も可) ㋩ 経過時間( 「時間」や「所要時間」でも可) 例題 1 - 2 速度に関する計算をしよう 以下では,すべての物体は等速直線運動しているものとする。 問1 北向きに 5 s で 10 m 移動した物体 A の速度 v A は何 m/s か。ただし,北向きを正とする。 問2 物体 B は,南向きに 24 m 移動するのに 8 s 要した。次の問いに答えよ。 ⑴ B の速度 v B は何 m/s か。ただし,北向きを正とする。 ⑵ 問1の A と B とでは,どちらが速いか,答えよ。 問3 物体 E と物体 F が,x 軸上を運動している。物体 E は,時刻 t=3 s の瞬間に x=5 m の 位置を通過し,時刻 t=8 s の瞬間に x=-15 m の位置を通過した。また,物体 F は,時刻 t=2 s の瞬間に x=10 m の位置を通過し,時刻 t=6 s の瞬間に x=20 m の位置を通過した。 次の問いに答えよ。ただし,物質量は,+x 向きを正とする。 ⑴ 時刻 t=3 s から時刻 t=8 s の間の物体 E の変位は何 m か。 ⑵ 物体 E の速度 v E は何 m/s か。 ⑶ 物体 F の速度 v F は何 m/s か。 ⑷ 物体 E に対する物体 F の相対速度 v EF は何 m/s か。 10 1章 ZQG1A1-Z1J1-04 うめてみよう 速さの定義は, 要点 1 - 1 参照。 要点 ▼ 問1 速さの定義より,A の速さは 10 m =2 m/s 5s このことと,A の運動の向きは{㋥ 正 , 負 }の向きであ ることより,v A は v A ={㋭ + , - }2 m/s 問2⑴ 速さの定義より,B の速さは ] =[㋠ ] ] このことと,B の運動の向きは{㋷ 正 , 負 }の向きであ ることより,v B は 問1と同様に考える。ただし, 問 2以 降は,必要であ れば, [ ]内に単位も記入する こと。 ▼ [㋬ [㋣ v B =[㋦ ] ⑵ 問1の結果より,A の速さは 同様に,問2⑴の結果より,B の速さは | v B |=[㋾ ] これらのことより, {㋻ A , B }の方が速い。 Dx=[㋕ ] -[㋵ ] =[㋟ ] 物理では,物理量の変化量を表 す際に D(ギリシア文字の大文 字のデルタ)を用いることが多 い。 ▼ 問3⑴ この間の E の変位を Dx とすると 速さは速度の大きさであるから, 速度の絶対値に等しい。 なお,| x | は, 「x の絶対値」 という意味の記号である。 ▼ | v A |=[㋸ ] ⑵ 問3⑴の結果,および速度の定義より,v E は vE= [㋹ Dx =[㋞ ] ] ⑶ 速度の定義より,v F は [㋡ vF= [㋧ ] =[㋤ ] ] ⑷ 問3⑵,問3⑶の結果,および相対速度の定義より,v EF は v EF ={㋶ v F -v E , v E -v F }=[㋰ ] 解答 ㋥ 正 ㋭ + ㋬ 24 m ㋣ 8 s ㋠ 3 m/s ㋷ 負 ㋦ -3 m/s ㋸ 2 m/s ㋾ 3 m/s ㋻ B ㋕ -15 m ㋵ 5 m ㋟ -20 m ㋹ 8 s-3 s(あるいは 5 s) ㋞ -4 m/s ㋡ 20 m-10 m(あるいは 10 m) ㋧ 6 s-2 s(あるいは 4 s) ㋤ 2.5 m/s ㋶ v F -v E ㋰ 6.5 m/s 11 ZQG1A1-Z1K1-01 練習問題 問題 1 - 1 ⇒解答解説冊子 p.2 30 分 ★★★ 車で,216 km の道のりを一定の速さで 6 時間かけて移動した。次の問いに答えよ。 ⑴ この車の速さは何キロメートル毎時か。 ⑵ ⑴で求めた速さは何 m/s か。 問題 1 - 2 ★★★ 傾きが一定の斜面がある。ここでは,速度は,斜面に沿って上向きを正とする。 斜面に沿って上向きに,速さ 2 m/s で運動する物体 A の速度を求めよ。また,斜面に沿って 下向きに,速さ 1 m/s で運動する物体 B の速度を求めよ。 問題 1 - 3 ★★★ 一直線上に,点 A,点 B,点 C がこの順に並んでいる。この直線に沿って等速直線運動をし ている物体 D があり,D が点 A を通過してから点 B を通過するまでに要した時間は 5 s であっ た。次の問いに答えよ。ただし,AC 間の距離は 54 m であり,BC 間の距離は 24 m である。 ⑴ 物体 D の速さを求めよ。 ⑵ 物体 D が点 B を通過してから,点 C を通過するまでに要する時間を求めよ。 問題 1 - 4 ★★★ 直線状の線路の上を,電車が速さ 60 km/h で走行している。次の問いに答えよ。ただし,⑴, ⑵では,速度は電車の進んでいる向きを正とする。 ⑴ この線路と平行な道路上を,自動車 A が,電 車と同じ向きに速さ 40 km/h で走行している。 電車内の人が見た場合の自動車 A の速度を求め よ。 ⑵ この線路と平行な道路上を,自動車 B が,電 車と逆向きに速さ 30 km/h で走行している。電 車内の人が見た場合の自動車 B の速度を求めよ。 ⑶ この線路に対して垂直な道路上を,自動車 C が,図の向きに速さ 45 km/h で走行している。 電車内の人が見た場合の自動車 C の速さを求めよ。 12 1章 ZQG1A1-Z1K1-02 ヒント 練習問題 問題 1 - 1 ⑴ 速さの定義を用いる ( 要点 1 - 1 参照)。「道のり」とは,移動距離のことである。 ⑵ ⑴とは異なる単位で答えることに注意。1 km=1000 m,1 時間 (=1 h) =3600 s である。 問題 1 - 2 問題の設定が「斜面」であることは問題を解く上では考慮する必要はない。 問題 1 - 3 現象や設定を自分で図に表すことは,理解の助けになる。 問題演習の際に図を描く習慣を,早めにつけておこう。 ここでは,点 A,点 B,点 C の位置関係,および AC 間, BC 間の距離は右図のように表される。 問題 1 - 4 ⑴ [電車内の人が見た場合の自動車 A の速度] =[自動車 A の速度]-[電車の速度]である ( 要点 1 - 2 参照)。そこで,まずは,符号に注意して[自動車 A の速度]と[電車の速度]を それぞれ表そう。 ⑵ ⑴と同様に考えるとよい。 ⑶ 本問の内容は,物理基礎の範囲外である (電車と自動車 C の運動の方向が異なるため)。また, 本問に解答するには,数学で学ぶベクトルの知識を必要とする。余裕があれば,取り組んでみ よう。 コラム 相対速度 速さ 80 m/s で走行中の新幹線内の通路を歩いている X さんの運動は,同じ新幹線の席に座 っている Y さんにとっては,速さ 1 m/s 程度のゆっくりとした運動にすぎない。しかし,新 幹線の外の地面に立っている Z さんにとっては,X さんは 81 m/s (=80 m/s+1 m/s) という かなりの速度で運動している (新幹線が透明だったら,実際にそのように見えるだろう) 。 このように,同じものを観測していても,観測される運動の様子は,観測者の状況によって 異なる。したがって,厳密にいえば, 「運動 (速度)」は観測者の状況を指定しないと表すこと はできない。ただし,物理の問題では,とくに断りがない場合は,「速度」とは「地面に静止 した観測者から見た速度」である。 13 1章 速度 ZQG1A1-Z1L1-01 練習問題 ⇒テキストp.12 問題 1 - 1 ⑴ 36 キロメートル毎時 ⑵ 10 m/s 解説 ▼ ⑴ 求める速さを v とすると,速さの定義より 要点 1 - 1 参照。 216 km v= (=36 km/h) (答) =36 キロメートル毎時 6h 216 km=216#1000 m ⑴で求めた 36 km/h を,1 h で ▼ ⑵ 216 km を ] m g を単位として表すと 36 km 進むような速さと考え また,6 時間(=6 h) を ] s g を単位として表すと 36 km/h= 以上のことより,v は = 6 h=6#3600 s v= 研究 36 km 1h 36#1000 m 1#3600 s =10 m/s 216#1000 m (答) =10 m/s(=10 メートル毎秒) 6#3600 s と求めてもよい。 単位の変換 ある単位で表された物理量を別の単位で表す場合,解説のように計算するのが常套手段だが, 次のように定数のかけ算として扱うこともできる。 問題 1 - 1 の車の速さを例に考えると v= 216 km 216#1000 m 216 1 # = = m/s 6h 6#3600 s 6 3.6 = 1 #36 m/s=10 m/s 3.6 つまり,ある速さを ]km/h g を単位として表した場合の数値に 1/3.6 をかけて得られた値が, 同じ速さを ]m/sg を単位として表した場合の数値である。 このように,物理量をある単位での表記から,別の単位での表記に変換する場合,数値には 定数をかければよい(ただし,定数の値は単位の組合せによって異なる)。 問題 1 - 2 物体 A:+2 m/s 物体 B:-1 m/s 解説 +2 m/s (答) 物体 B の速度の向きは負の向きである。よって,物体 B の速度は -1 m/s (答) 本問では,速度は,斜面に沿っ て上向きを正としている。 ▼ 物体 A の速度の向きは正の向きである。よって,物体 A の速度は 問題 1 - 3 1章 ZQG1A1-Z1L1-02 解答解説 ⑴ 6 m/s ⑵ 4 s 解説 ⑴ 点 A,点 B,点 C の位置関係,および AC 間,BC 間の距離は, 右図のように表される。これより,AB 間の距離は 54 m-24 m=30 m ⑵ ⑴の結果より,求める時間は 要点 1 - 1 参照。 D の運動については,問題文 に「点 A を通過してから点 B を通過するまでに要した時間は 5 s であった」と述べられている。 ▼ 30 m =6 m/s (答) 5s ▼ よって,D の速さは,速さの定義より 24 m =4 s (答) 6 m/s 問題 1 - 4 ⑴ -20 km/h ⑵ -90 km/h ⑶ 75 km/h 解説 ⑴ 地面に静止している人から見た,電車,および自動車 A の速 度は,それぞれ : +60 km/h 自動車 A: +40 km/h ▼ ここで,相対速度の定義より 本問では,速度は,電車の進ん でいる向きを正としている。 ▼ 電車 要点 1 - 2 参照。 [電車内の人が見た場合の自動車 A の速度] =[自動車 A の速度]-[電車の速度] であるから,求める相対速度は (+40 km/h)-(+60 km/h)=-20 km/h (答) ⑵ 地面に静止している人から見た自動車 B の速度は -30 km/h よって,⑴と同様に考えると (-30 km/h)-(+60 km/h)=-90 km/h (答) ▼ この設問の解法については次ペ ージの「研究」参照。 なお,⑶の内容は物理基礎の 範囲外だが,科目「物理」まで 履修する人は,後々学習するの で,考え方の感触だけでもつか んでおくとよい。 ⑶ 電車の速度ベクトル,および自動車 C の速度ベクトルは,そ れぞれ右図の黒い矢印のように表される。したがって,求める速 さを v とすると,三平方の定理より v 2 =(60 km/h) 2 +(45 km/h) 2 =5625(km/h) 2 =(75 km/h) 2 ∴ v=75 km/h (答) ZQG1A1-Z1L1-03 研究 ベクトル量について 問題 1 - 4 ⑶で用いた解法について説明しておこう(以 下の内容は,数学あるいは物理の授業でベクトルを学習 した後で読むと理解が十分に深まる) 。 速度のように,大きさと向きをもつ量を,ベクトル量 という。ベクトル量は,大きさを矢印の長さに,向きを 矢印の向きにそれぞれ対応させることで,矢印を用いて 表すことができる。たとえば, 問題 1 - 4 の電車,自動 車 A,B,C の速度は,矢印を用いて,それぞれ図1の ように表すことができる。 次に,これらの矢印を用いて,相対速度を求める方法 を説明する。 まず,図2のように,電車の速度を表す矢印と自動車 A の速度を表す矢印を,始点を一致させて描く。次に, 電車の速度を表す矢印の先端から自動車 A の速度を表 す矢印の先端に向かって,新たな矢印 (図2の青い矢印) を描く。この矢印が,電車内の人が見た場合の自動車 A の速度(電車に対する自動車 A の相対速度)を表す矢 印である。この場合,得られた矢印は左向き (負の向き) で,その長さは,電車の速度を表す矢印の長さと自動車 A の速度を表す矢印の長さの差に等しい(⑴で求めた値 と一致する)。 同様に,電車内の人が見た場合の自動車 B の速度も, 作図によって求めることができる (図3参照)。この場合, 得られる矢印(図3の青い矢印) は左向きで,その長さは, 電車の速度を表す矢印の長さと自動車 B の速度を表す 矢印の長さの和に等しい (⑵で求めた値と一致する) 。 さらに,このことは,2 つの矢印が平行でない場合に も応用できる。上述の方法と同様に考えれば,電車内の 人が見た場合の自動車 C の速度に対応する矢印として, 図4の青い矢印が得られる。つまり,電車内の人が見た 場合の自動車 C の速度の大きさは,図4の (3 つの矢印 によってつくられる)直角三角形の斜辺の長さに相当す る。三平方の定理より,この速度の大きさは ]60 km/h g 2 +]45 km/h g 2 =75 km/h 1章 ZQG1A1-Z1L1-04 解答解説 コラム 記号が表すもの 物理では,棒の長さの文脈において, 「長さ x の棒 A…」と表現される場合と,「長さ X ] m g の棒 A…」と表現される場合がある。後者には単位 ] m g がついているが,前者にはつ いていない。実はこれらには次のような違いがある。 x …単独で「長さ」という物理量そのものを表す記号 X…単独では数値しか表さない記号 別の例を挙げておこう。 「Z さんの身長 l は,l=177 cm である。 」 という表現において,Z さんの“身長”という量は,記 号 l 単独で表される。一方, 「Z さ ん の 身 長 ll ]cmg は,ll ]cmg =177 cm である。 」 という表現において,Z さんの“身長”という量は,記 号 ll と,それに付記された単位 ]cmg を並べた「ll ]cmg」 によって初めて表される。極端にいえば,記号 ll は 「177」という単なる数値を表すのであり,Z さんの “身長”そのものを表してはいない。すなわち ll=177 であり, 「ll=177 cm」という表現は,この場合,誤りである (なお, 「ll ]cmg =177 cm」とい う等式は,上の「ll=177」の両辺に,長さの単位「1 cm」 (あるいは,単に ]cmg )をかけた等 式と考えればよい)。さらに,この場合,「l=1.77 m」という表現は正しいが,「ll=1.77 m」 という表現は誤っている。ただし, 「ll ]cmg =1.77 m」という表現は正しい(各辺とも,Z さん の“身長”という量を表している) 。 これらのことは,物理の本質的な部分ではないが,余裕があれば注意しながら問題を解き進 めて欲しい。 なお,問題によっては,記号に単位が含まれているか否かがあいまいになっている場合もあ る。臨機応変に対応できるようになろう。