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ICANNの出発 荒野高志/NTTコミュニケーションズ株式会社
インフラストラクチャー 第 4章 第 4 部 ドメインと IP アドレス ICANNの出発 gTLD登録業務のオープン化を実現 インターネットガバナンスは第二ステージへ 1998年秋に誕生したICANN(Internet 年3月現在、NSIも含め100程度のレジス されている。UDRPでは、ICANNが紛争 Corporation for Assigned Names and トラが認定され、そのうち30程度が運用 解決プロバイダーを認定し、このプロバ Numbers)は、この1年で組織的、体制 を開始している。なお、NSIはまだこの2 イダーが決められた手続規則に基づき、 的に大きな発展をとげるとともに、長年 つの機能を完全に分離経営していないが、 紛争解決の仲介を行うことになっている。 の 懸 案 で あ っ た gTLD( generic Top 契約書によれば18か月を目途に分離を目 2000年3月現在、3つの機関が紛争解決 Level Domain:一般トップレベルドメイ 指している。 プロバイダーとして認定されており、実際 ン)のオープン化について一定の決着を 日本からは2000年3月現在、3社が認 に異議申立てに従って業務を遂行している。 えた。地理的な公平分散性は至るところ 定レジストラとなっている。これらのレジ ICANNでは、インターネットのさらな で考慮されており、会議開催地(表1)や委 ストラには日本語による登録手続きや紛 る発展のために、新しいgTLDの導入に 員構成(表2)などに反映されている。 争解決の充実などが期待できる。競争に ついて検討している。ドメイン名を管 よるサービス向上を期待するには、より 理 ・ 運 用 す る ICANNの 組 織 DNSO 多くの日本のレジストラが認定されるの (Domain Name Supporting Organization) 以 前 は 歴 史 的 な 経 緯 か ら 、 NSI (Network Solutions, Inc.)が.com、.net、 .orgなどのgTLDの登録業務を一手に引 き受けていた。だが近年、インターネッ が望ましい。 レジストラのオープン化にあたっては、 の議論では、 「gTLDを増やしていくこと」 「まずは少数のgTLDを追加し、評価を行 トのビジネス利用が本格化してきたこと NSIと初期レジストラとの間で、テストベ などから、 NSIの独 占 状 態 を解 消 し、 ッドを用いて分散登録に関する技術的な 「著名商標の保護を考慮していくこと」な gTLDを広くオープンにするべきだという 検証が行われた。レジストリとレジストラ どが、ほぼ合意されている。2000年 7月 声が高まっていた。ICANNはこの問題に、 の 間 の や り と り に 関 し て は 、 RRP の横浜会議をターゲットに、決着を図っ 創設当初から1つの大きな課題として取 (Registry-Registrar Protocol)として、 り組み、1999年 11月にNSI、米国商務 IETF(Internet Engineering Task Force) 省と契約書を交わした。 において草案が提出されている。 いつつ、徐々に数を増やしていくこと」 ていく予定である。 ポリシーを提 示 、 実 務 は RIR 基本的な考え方として、NSIの持って いた機能のうち、ドメイン名のデータベー 統 一 紛 争 解 決 ポリシーを制 定 機能と、データベースへの登録を行うい IPアドレスの割り振りに関しては、従 来から、以下の3つの地域レジストリ スやネームサーバーを管理するレジストリ ドメイン名のもつ意味が重要になるに わゆるカスタマーインターフェイスである つれて、ドメイン名の売買が行われたり、 レジストラ機能を分離した。レジストリ ドメイン名をめぐるトラブルが起こるよう (RIR: Regional Internet Registry)が実 務を担当している。 に関しては、技術的な面で分散管理が難 になってきている。特に投機目的で多く ①A P N I C(A s i a P a c i f i c N e t w o r k しい点や安定運用が必要な点から当面は のドメイン名を不正に登録しておくこと Information Center、アジア太平洋地 NSIが全面的に請け負うことになってい をサーバースクワッティング(ドメイン名 る。レジストラに関しては、資格を満た の不法占拠)という。 してICANNの認定さえ受ければ誰でもオ インターネットの国際的な特質を考え ープンに業務を行えるようにした。2000 ると、これらの紛争解決に際しては、各 国の国内法を中心とした既存の法体系の 枠組みだけでは不充分である。gTLDの 表1 ICANNの会議 開催時期 1999年 5月 1999年 8月 1999月11月 2000年 3月 2000年 7月 2000年 9月 2000年11月 2001年 3月 216 開催地 ベルリン(ドイツ) サンチャゴ(チリ) ロスアンジェルス (アメリカ) カイロ (エジプト) 横浜(日本) ヨーロッパ マリナ・デル・レイ (アメリカ) 年次会議 オセアニアなど(未定) インターネット白 書 2 0 0 0 域担当) ②R I P E N C C ( R e s e a u x IP Eurpeans Network Coordination Centre、ヨーロッパ担当) ③A RIN( American Registry for Internet Numbers、アメリカ大陸担当) オープン化および後述する新gTLDの導入 に伴い、紛争解決の世界共通の仕組みが 必要とされていた。 ICANNでは1999年10月に、統一紛争 ICANNでは 1999年 8月 にこの 3つの RIRと覚書を締結し、IPアドレスの管 理 ・ 運 用 す る ICANNの 組 織 ASO 解決ポリシー (UDRP: Uniform Dispute (Address Supporting Organization)は、 Resolution Policy)を制定した。これは RIRベースで構成されることになった。覚 ICANN認定レジストラの間ですでに採用 書ではICANNがグローバルなアドレス管 理ポリシーを決定し、RIRがその実施を ホームページ上 で誰でも簡単に登 その解決策として、世界のさまざまな企 行っていくことなどを確認した。 録できる。当初5000人を目標と考えてい 業や機関からの寄付や無利子のローンに また覚書では、RIRは年1回以上のオー たが、予想を大きく上回り、登録者が10 より資金を調達するとともに、資金調達 プンなポリシー会議を開くことを謳ってい 日ほどでたちまち5000人を超した。3月 のためのタスクフォース(TFF: Task る。これに基づきAPNICでは、2000年3 のカイロ会議では、この一般会員の選挙 Force on Funding)を設置した。TFFは 月にアドレスポリシーに関するオープンな により、2000年11月にまず5地域から各 10月にレポートを発表し、ICANN の活 会議を初めて実施した。APNIC以外から 5名の理事を、さらに翌年2001年の11月 動から直接恩恵を得ているドメインネー の多数のアドレスポリシーの提案を含め、 に残り4名の理事を選出することが決定 ムレジストリ/レジストラやRIRが経費を 3時間超におよぶ議論が行われ、従来と された。 分担すべきだとして、2000年度の各組織 はまったく異なるボトムアップ的なアドレ 5000人の登録者数の内訳は、その大多 スポリシー決定のプロセスは画期的なで 数が米国であり、アジア太平洋地域から RIR10%)について勧告を行った。TFF きごとといえる。 の分 担 率 ( gTLD55% 、 ccTLD35% 、 の登録はその10分の1にも満たない。今 そのものは解散したが、今後の資金調達 2000年3月現在、アフリカ、南アメリカ 後日本からの声をICANN運営に反映さ については同様の組織を作って検討をす 地域もそれぞれのRIRを立ち上げ中であ せるためには、より多くの人の関心と参 る。それに伴いICANNでは、RIR認定の 加が必要となる。JPNIC(日本ネットワ ためのクライテリアを議論している。この ークインフォメーションセンター)では、 1年以内に5つのRIRが出揃う予定である。 この啓蒙活動のためインターネットガバナ 1999年8月のサンチャゴ会議では、モ ンス研究会およびメーリングリストを開設 バイルインターネットなど、将来のアドレ している すめる予定である。 Jump 01 また、一般会員制度のコンセプト、構 因をリストアップするための臨時組織 造、手続きなどについては、今後具体的 Adhoc WGの結成が決定された。現在パ な検討が予定される。この検討結果は、 ブリックフォーラムを開設して議論が行わ 2001年の第 2四半期に行われるICANN れており、2000年7月の横浜会議で中間 理事会で明らかになるだろう。 表2 ICANN理事一覧(2000年3月現在) 暫定理事 Esther Dyson(会長) Michael Roberts(事務総長兼CEO) Geraldine Capdeboscq George Conrades Greg Crew Frank Fitzsimmons Hans Kraaijenbrink 村井純 Eugenio Triana Linda S. Wilson Amadeu Abril i Abril(欧州) Jonathan Cohen(北米) Alejandro Pisanty(ラテンアメリカ) Pindar Wong(アジア太平洋) Robert Blokzijl(欧州) Ken Fockler(北米) Jean-Francois Abramatic(欧州) Vinton G. Cerf(北米) Philip Davidson(欧州) 設立からこれまでの道のりは、財政面 DNSO選出理事 ではICANNは決して楽ではなかった。き パラメーター割 り当 ての責 任 http://members.icann.org http://www.nic.ad.jp 。 スポリシーに影響を与えるような技術要 報告がなされる予定である。 (荒野高志 NTTコミュニケーションズ株式会社/ICAAN ASOアドレス評議委員) ちんとした枠組み作りが遅れていること ASO選出理事 で、一時的に資金が不足してマスコミや プロトコルを管理・運用するICANNの 米国議会などで批判されたこともあった。 PSO選出理事 組 織 PSO( P r o t o c o l S u p p o r t i n g Organization)は、当初はIAB(Internet Architecture Board)を中心にIETFをベ ースに考えられていた。しかし結局1999 年7月に、 インターネット関連の4つの標準 化団体と覚書を結ぶこととなった。4つの (World Wide 団体とは、①IETF、②W3C Governmental Advisory Committee 助 言 含:郵政省、通産省 Independent Review Advisory Committee Web Consortium) 、③ ITU (International Telecommunication Union)、 ④ ETSI Task Force on Funding (European Telecommunication Standards 含:丸山直昌 (JPNIC) 助 言 Board (理事会) 助 言 Chair:村井純 (慶応) CEO+9名 (一般会員選出) +9名 (各SOから3名) 助 言 助 言 含:慶応.村井純(暫定理事) 人 提言 人 提言 Root Server Advisory Committee Membership Advisory Committee 含:会津泉 (APIA) 人 人 提言 Institute)である。ここでは、従来IANA (Internet Assigned Numbers Authority) が行っていた各種インターネットプロトコ ルのパラメーター割 り当 てに関 して、 ICANNが責任を持つことを確認した。 ICANNでは2000年 2月に、一般会員 (At-Large Members)の受付を開始した。 一般会員 At-Large Members IPアドレス管理・運用 ASO ( ) ドメイン名管理・運用 DNSO プロトコル管理・運用 PSO Domain Name Supporting Organization ( ) Protocol Supporting ( ) Organization 評議会(9名) 評議会(19名) 評議会(12名) 含:荒野高志 (NTT Com) 含:堀田博文、加藤幹之 (NTT) (富士通) Address Supporting Organization 図 1 ICANNの組織と日本からの貢献 インターネット白 書 2 0 0 0 217