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かん せん
医療関係者用 かん せん 監修:東京慈恵会医科大学 皮膚科学講座 教授 中川 秀己 先生 かん せん 乾癬の種類と症状 じん じょう せい かん せん かん せん せい かん せつ えん 尋常性乾癬(乾癬性関節炎は伴わない) 乾癬性関節炎 患者さんの約80∼90%がこのタイプ。 炎 症 性の関 節 炎を伴う乾 癬です。 多くの場合、 乾癬の皮膚症状がみられます。 手足や指、腰のほか、アキレス腱付着部や足 の裏 (足底筋膜) などに腫れや痛みが出ます。 治療しないと徐々に関節が変形してきます。 リウマチ因子は通常陰性です。 皮膚が赤くなる、盛り上がる、フケのようなものが剥がれ落ちる、 などの症状がみられます。外からの刺激が加わりやすい部位に 生じます。約60%の患者さんは爪にも症状がみられます。 てき じょう かん せん 滴状乾癬 小さな水滴程度の大きさの皮疹が全身に出現 します。鼻、のど、歯など、体のどこかに細菌の 感染病巣が存在し、それが悪化する時に起こ ることがあります。とくに扁桃腺炎がきっかけ となることが多いと言われています。 かん せん せい こう ひ しょう 乾癬性紅皮症 尋常性乾癬がほぼ全身に広がり、潮紅状態 (赤みを帯びること)になります。 のう ほう せい かん せん 膿疱性乾癬(汎発型) 発熱、倦怠感を伴い、急激に全身の皮膚が潮 紅し、膿疱(膿を持った状態)が多発します。 放置すると、全身衰弱などにより重篤な状態 になることがあります。 かん せん 乾癬の原因 外からの影響 ●皮膚への刺激 ●薬 ●飲酒、喫煙、 不規則な食生活 など 内からの影響 ●ストレス ●メタボリックシンドローム 乾癬治療の目標 (肥満・脂質異常症・高血圧・糖尿病)など 症状が 良くなっている 期間を長くする 悪化 遺伝的な要因 軽快 ●炎症の生じやすさ など 慢性の炎症・角化異常 悪 化させる原 因(外 、内 からの影 響)をできるだ け避け、病気と上手に付 き合っていきましょう。 かん せん 乾癬と併存疾患 乾 癬患者さんでは、さまざまな病 気を併 存しやすいとされています。 併 存する病 気の治 療や、生 活 習 慣の見 直しを心 掛けましょう。 り かん 併存疾患の罹患率 (%) 45 42.9 40 乾癬患者( n = 556,944 ) 36.0 罹患率 35 調査対象患者全体( n =1,087,079 ) 30 25 20 21.4 方法:(株)日本医療データセンター(JMDC)が提供する 被保険者約100万人のレセプト情報から、2011年 7月より1年間の乾癬患者のデータを抽出し、罹患 率(診断患者数÷JMDC母集団) を算出した。 24.8 19.8 15 11.2 10 5 4.3 8.8 8.6 4.5 2.5 3.3 4.5 3.2 0.1 0.0 クローン病 0.6 0.2 潰瘍性大腸炎 アテローム性 動脈硬化症 乾癬患者さんではうつ症状の合併も多いこと が近年明らかになっています。 7.7 心不全 狭心症 脳梗塞 不整脈 糖尿病 脂質 異常症 本態性 高血圧 0 8.1 Cohen BE et al.: JAMA Dermatol, 2015 [Epub] 照井 正 ほか:臨床医薬 30(3) ;279-285, 2014 かん せん 乾癬の病態 かん りん せつ ひ こう 鱗屑・肥厚 炎症 表皮の角化異常 せん 乾癬の皮膚 4∼5 日 で表皮が生まれかわる 通常の 約10 倍 のサイクル 健康な皮膚 表皮 炎症細胞 (免疫担当細胞) の集合・活性化 真皮 血管 表皮角化 細胞 かん せん 乾癬の病態 各治療の作用ポイント 外用療法 ビタミン D3 外用療法 注射・点滴療法 ステロイド 生物学的製剤 ( (表皮の角化異常を抑える) (炎症を抑える) 内服療法 内服療法 光線療法 シクロスポリン レチノイド 紫外線の照射 乾癬を引き起こす炎症性の サイトカイン [たんぱく質] を抑える ( 健康な皮膚 表皮 真皮 血管 (過剰な免疫反応を抑える) (表皮の角化異常を抑える) (過剰な免疫反応を抑える) かん せん 乾癬の治療法と治療目標 より 積極的な 治療 高 注射・ 点滴療法 [ 生物学的製剤 ] 内服療法 [ シクロスポリンなど ] 光線療法 0 50% 25 50 3ヵ月後 2ヵ月後 ※全ての患者さんにあてはまるとは限りません [ 活性型ビタミン D3、ステロイド ] 100 1ヵ月後 低 外用療法 治療開始前 基本 となる 治療 改善 75% 75 改善 コスト [ レチノイド ] (%) 改善度 ※ 3ヵ月程度の治療で どの程度良くしたいですか? 飯塚 一:日臨皮会誌 23(5) ;438-442, 2006 より一部改変 高 額 療 養 費 制 度をうまく活 用することで負 担を軽 減できることがあります。 詳しくは医療機関のソーシャルワーカーやご加入の医療保険にご相談ください。 (イメージ図) 治療目標を設定しましょう 特に体のどの部分を良くしたいですか? 頭 足 顔 腕 体幹 陰部・臀部 爪 かん せん 外用療法−乾癬治療の基本 (全ての治療法と組み合わせることが可能) 薬の主な作用 表皮の角化異常 炎症細胞の集合・活性化 りん せつ 鱗 屑(表 皮 が 剥 が れ 落ちる) 肥厚(表皮が盛り上がる) ひ こう 炎症(皮膚の赤み) 抑制 抑制 ビタミン D3 外用薬 ステロイド外用薬 皮疹が広範囲におよぶ場合やレチノイドを服用し ている場合、皮膚が菲薄化している場合、腎機能 が 低 下している場 合には、高カルシウム血 症 の 副作用に注意が必要です。 長 期 間 の 使 用により皮 膚 萎 縮 や 毛 細 血 管 拡 張 などの副作用が生じることがあります。 時間 悪い 症状 外用薬を 用いた 治療の一例 良い状態の期間 良い ステロイド外用薬 ビタミン D3 外用薬 主に炎症を抑えます 主に表皮の角化異常を抑えます (イメージ図) 2 つの薬を上手に 併用しましょう。 2つの薬が一つになった 配合薬もあります。 内服療法(飲み薬) 光線療法(紫外線の照射) 皮膚症状の比較的重い方や 皮疹面積の広い方に適しています。 過剰な免疫反応を抑える治療法です。 1週間に1-3回程度の通院または入院が必要です。 シクロスポリン PUVA療法 免疫担当細胞(リンパ球)に対して作用し、過剰な免疫反応 光 に 対 する 感 受 性 を 高 め るお 薬 を 内 服 あるい は 外 用して U V A( 長 波 長 紫 外 線 )を照 射します。 を抑える働きがあります。主な副作用として血圧上昇、腎機 能 障害、多 毛などが生じることがあるため、定 期 的な血 圧 測定、血液検査が必要です。 レチノイド(エトレチナート) UVB 療法 表皮の角化異常を抑え、正常な表皮を再形成します。主な U V B( 中 波 長 紫 外 線 )を照 射します。 また、U VB の 中 でも治 療 効 果 が 高 く、狭 い 領 域 の 波 長 を 照 射 するナ ローバンドUVB 療 法や、治りにくい 部 位 に 対して 部 分 的 に 照 射 できる ターゲット型エキシマランプも普及し ています。 副作用として、手足の落屑、口唇炎が生じることがあります。 また、胎児に影響を与えるおそれ があるため、服用中止後も、男性 は 6ヵ月、女性は 2 年間の避妊が 必要です。 治 療に伴い日焼けや 色素沈着の副作用が 生じることがあります。 注射・点滴療法(生物学的製剤) 乾癬を引き起こす炎症性のサイトカイン (たんぱく質) を直接抑制し、乾癬の症状を抑える治療です。 投与できる患者さん 投与できない患者さん ●今までの治療法で十分な効果がみられない ●重い感染症のある患者さん ●皮膚の症状が全身の10%以上(およそ手のひら10個分) におよぶ 患者さん ●治療が必要な結核、B型肝炎のある患者さん ●難治性の皮膚の症状または関節の症状がある患者さん ●生物学的製剤の成分に対して過去にアレルギー反応を起こした ことのある患者さん など 乾癬の あるときは… 生物学的製剤を 投与すると… 免 疫 担 当 細 胞 から 放 出される炎 症 性の サイトカイン が 症 状 の発 現・悪 化に関 係 しています。 炎症性のサイトカイン の 働 き が 抑 え ら れ、 症 状の改 善に寄 与し ます。 免 疫 が 抑 えられ るた め 、感 染 症 に か かりや すくな る 可 能 性 が あります 。 日ごろから体調管理に気を配り、風邪などの感染症には気をつけましょう。 日常生活で注意すること 乾癬の症状は治療によって良くなりますが、環境やストレス、体調によって悪化する こともあります。治療と並行して生活習慣や体調管理に注意することが大切です。 皮膚への刺激を避けましょう 乾燥に注意しましょう 衣服でこすれたり、皮膚を掻いたりする ことなど の 刺 激 で 症 状 が 悪 化します。 衣 服はなるべく柔らかい 素 材のものを 選びましょう。 一般的に、乾癬は夏に良くなり、冬に悪化します。 冬は皮膚が乾燥するので注意しましょう。 食生活に注意しましょう 日光浴をしましょう 乾 癬 は 日 光 に あ た る と 良 くな る こと が 多 い の で、 なるべく日光浴をしましょう。 適度な運動を こころがけましょう 肥満と乾癬の関連が指摘されてい ます。リラックスやストレス解消にも なりますので、適度に体を動かすこと が大切です。 カロリーの高い食事(肉類・脂肪分)は症状を 悪化させ、カロリーの低い食事(野菜・魚)は 症状を改善させると言われています。香辛料 など刺激の強い食べ物やお酒はかゆみを増す のでできるだけ控えた方がいいでしょう。 感染症に注意しましょう 風邪・扁桃腺炎などの感染症にか かると症状が悪化することが多いの で、なるべく風邪をひかないように 気をつけることが大切です。 ストレスを ためないようにしましょう 肉体的・精神的ストレスは症状悪化の原因 になります。スポーツや趣味などで気分転 換してストレスを発散させましょう。 こんな症状に心当たりはありませんか? 乾癬性関節炎の可能性があります。 症 状 足の裏やアキレス腱付着部の痛み 日常の生活場面 腰やおしりの痛み 朝が最も調子が悪い 階段の昇降が困難 時計や指輪の装着が困難 手足の指全体の腫れ 手先や足先の関節炎 朝の手のこわばり