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2003年レポート(PDF:164KB)
アイキャンプ報告書 柏瀬 光寿 2003 年 12 月 に 行 わ れ た イ ン ド ・ ダ ラ ム サ ラ で の ア イ キ ャ ン プ に 参 加 し ま し た 。A O C A と 波 百 流 か ら 派 遣 に よ り 、一 年 間 、現 地 に 滞 在 し 、2 0 0 3 年 7 月 に 離 れ てから最初のアイキャンプであった。離印の際に多くの不安を感じていたが、 今回、再び現地に足を踏み入れ、私が実際に感じた事を報告します。 テンジン(OA)の成長 昨 年 7 月 に ダ ラ ム サ ラ を 離 れ 、そ の 後 テ ン ジ ン が ど の く ら い モ チ ベ ー シ ョ ン を維持して日常の診療に臨んでいるか不安に感じていたが、実際に彼の言動や 診察、周囲の人たちの言葉より、私の心配は無用であったようだ。まずは診察 の 基 本 で あ る ス リ ッ ト ラ ン プ の 使 い 方 。2 0 0 2 年 に 赴 任 し た 当 初 は 両 眼 視 も で き ず 単 眼 視 で 診 察 を 行 っ て い た た め 、ス リ ッ ト ラ ン プ 下 で の 睫 毛 抜 去 や 異 物 除 去 、 抜糸などは行えずにいた。その後、両眼視の必要性を説明し日々訓練すること により数週間で両眼視ができるようになり、様々な処置も確実に施せるように なった。今回、彼の診察風景をみたところ、スリットランプの使い方について は 熟 練 度 が 増 し て お り 、彼 が 確 実 に 進 歩 し て い る こ と が 伺 え た 。ま た 9 0 D を 用 い た 眼 底 検 査 も 行 え る よ う に な っ て い た 。こ れ は D r . P u r i で さ え 使 い こ な せ ず 、 彼が「これはどうやって使うのか?」とテンジンに使用法を尋ねたらしい(彼 の 日 常 診 療 は 懐 中 電 灯 を 用 い て お り 、 VIP 患 者 の み ス リ ッ ト ラ ン プ で 診 察 を し て い る )。ま た 倒 像 鏡 を 用 い た 眼 底 検 査 も 、以 前 は ブ レ の あ っ た レ ン ズ を 持 つ 左 手 は し っ か り と 安 定 し 、 眼 底 所 見 も 的 確 に 捉 え て い た 。 昨 年 の 10 月 に は 院 長 Dr. Tsetan か ら 、 あ る 患 者 の 眼 底 検 査 の 依 頼 が あ っ た そ う だ 。 テ ン ジ ン が ど の 程 度 、 眼 底 所 見 を 捕 ら え ら れ る の か 、 を チ ェ ッ ク す る Dr.Tsetan の テ ス ト だ っ たようで、彼は自分の持っているテクニックおよび知識を駆使して、こと細か く 書 い た レ ポ ー ト を 提 出 し た 。 そ の 結 果 に Dr.Tsetan は 大 変 満 足 し 、 そ の 後 は 糖尿病や高血圧患者の眼底検査を頻繁に依頼するようになってきた、と喜んで 話していた。また海外からのボランティア・ドクターも眼科診察の見学に来た り 、疾 患 に 対 す る 相 談 を 持 ち か け て く る よ う に な っ た そ う だ 。 D e l e k h o s p . で の 彼の信頼度は明らかに増したようだ。 そ れ に 対 し イ ン ド 人 ド ク タ ー Dr.Puri の 信 頼 度 は 残 念 な が ら 落 ち て き て い る ( Delek hosp.の ス タ ッ フ は 2000 年 に 初 め て 行 わ れ た ア イ キ ャ ン プ 当 初 か ら 彼 の 事 は あ ま り 信 用 し て い な か っ た )。 原 因 は 週 1 回 の D e l e k h o s p . で の 診 察 を 約 束 し て お い た に も 関 わ ら ず 、 私 が ダ ラ ム サ ラ を 離 れ た 2003 年 7 月 か ら 12 月 の 間 に 結 局 5 回 し か 来 ず 、 彼 の 来 院 を 期 待 し て い た Dr.Tsetan や テ ン ジ ン 、 さ ら には待ちぼうけを食らった多くの患者からの信頼を失ってしまったようだ。確 か に 自 分 の 病 院 Sonar hosp が あ る た め 融 通 が 利 か な い と き が あ る の は 致 し 方 な い が 、 そ れ で も 30% く ら い し か 約 束 を 果 た せ な い の で は ・ ・ ・ ・ Dr.Tsetan も す っ か り 諦 め て お り 、「 他 の 医 師 を 探 さ な く て は 。 た だ し E y e c a m p の た め に も Dr.Puri と の 関 係 は 保 っ て い か な く て は ・ ・ ・ 」 と 困 っ た 顔 を し て い た 。 アイキャンプ 今 回 の ア イ キ ャ ン プ に 対 す る D e l e k 側 の 準 備( ほ と ん ど 全 て テ ン ジ ン が 一 人 でやったと思われる)は、完璧とは云えないが我々を十分に満足させる もので あった。オペ患者に対する麻酔も自信を持って行っており、その手技も問題な く、手術の最後まで麻酔効果は持続していた。 病院スタッフのヘルプも年を追うごとに確実かつ緻密になり、アイキャンプ で誰が何をすればいいのか分担がしっかりとでき、敢えてこちらから云わなく ても自主的に動けるようになってきた。今回、アイキャンプ中にチベット暦の 祝日があった(公休日)にも関わらず、オペや外来をすることを賛成してくれ た(以前なら間違いなく彼女らは休みを主張し、我々も中休みを せざるを得な かっただろう)のも、彼らのアイキャンプに対する協力体制の向上に伴うもの だと思う。 テンジンは私がダラムサラを離れた後もしっかりと努力し日々の診療を行っ ているようで、とても頼もしくみえた。アイキャンプのための白内障患者をみ つけるべく行いたいアイキャンプ前のスクリーニングに関して、テンジンには そ の 能 力 が 備 わ り つ つ あ る と 思 わ れ る 。た だ し O A の 認 識 度 が 高 い ネ パ ー ル と は 違いインドでは、患者は診察するのがドクターでないとなかなか信用してくれ ない、という現状があるため、我々が「スクリーニングをやれ」といっても現 状は厳しいと思う。 小川君のヘルプ 今 回 も 小 川 君 が 通 訳 と し て 大 活 躍 し て く れ た 。 彼 は Men-tsee khang( チ ベ ッ ト伝統医学占星術学校)の学生としてだけでなく通訳としても現地で活躍して おり、ほぼ完璧(本人談)なチベットを話す。チベット語から英語への通訳、 さらに英語から日本語への翻訳は英語力に問題のある我々にはいつも大きな障 害となっていた。しかし前回に続いて今回も彼が直接、日本語に訳してくれた お陰で、私だけでなく岡田先生も坂本さんも大いに助かったと思う。また彼の 働 き か け に よ り 、 初 め て Men-tsee khang の 生 徒 が 西 洋 医 学 ( 手 術 )を 見 学 す る チ ャ ン ス が 生 ま れ た 。表 面 的 に は De l e k も M e n - t s e e k h a n g も 仲 は 良 い こ と に な っているが現状は異なり、今まで両院の交流はほとんどなく、小川君は 「 Men-tsee Khang、 否 、 ダ ラ ム サ ラ 始 ま っ て 以 来 の こ と だ ! 」 と 興 奮 し て 話 し て い た 。ま た Men-tsee khang の ト ッ プ に な ら れ た ダ ワ 先 生( 一 昨 年 、富 山 医 科 大 で 客 員 教 授 と し て 一 年 間 、日 本 に 滞 在 )も 今 回 の 試 み を 大 変 評 価 さ れ て い た 。 特に実際に見学をした生徒には初めて見る手術はとても衝撃的だった(良い意 味で)らしく、その生徒達の話を聞きつけ希望者が多くいたとのことだ。生徒 は教科書を寄附してくれ、しかも手術を見学させてくれた波百流にとても感謝 していた。そして「是非、来年も」との声も聞かれた。 恒 例 の ロ ー タ リ ー 主 催 の パ ー テ ィ ー で は 、 Dr.Tsetan が ス ピ ー チ の 中 で 「 Ogawa は と て も よ く 働 い て く れ 、 感 謝 し て い る 」 と 、 名 前 を 挙 げ て 賞 賛 し て い た 。 彼 は 今 、 Men-tsee khang の 3 年 生 で 、 あ と 3 年 間 は ダ ラ ム サ ラ に い る 。 アイキャンプの時期はちょうど試験が終わった直後であるため時間を作りやす く、ヘルプを頼めば嫌とは云わないと思われる。ただあくまで彼は個人的に手 伝ってくれており、今後も通訳をお願いする場合には何らかのお礼が必要だと 思われる。 Vimar の 存 在 顕 微 鏡 を レ ン タ ル し た M e d i c a i n t e r n a t i o n a l の V i m a r も 昨 年 同 様 、と て も い い働きをしてくれた。彼の性格はとても素晴らしく、常に「アイキャンプのた め に 、 Japanese team の た め に 」 と 一 生 懸 命 働 い て く れ 、 今 回 、 顕 微 鏡 レ ン タ ル延長の件でも自ら率先してプレジデントにネゴシエーションをしてくれ、大 いに我々の力になってくれた。今までの実績と彼の性格は多くの人から認めら れ 、 ロ ー タ リ ー の メ ン バ ー も Dr.Tsetan も ス ピ ー チ の 中 で 絶 賛 し て い た 。 今 後 も彼の力は大いに必要である。