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市政2月号 - 全国市長会館

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市政2月号 - 全国市長会館
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•• • • • • • •
•• • • • • • •
•• • • • • • •
6
FEBRUARY 2016 市政
特集
境港市長●中村勝治
•• • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • •
函館市長●工藤壽樹
•• • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • •
観光庁国際観光課
•• • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • •
東洋大学国際地域学部国際観光学科准教授●矢ケ崎紀子
•• • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • •
インバウンドを促進させる
都市のおもてなし戦略
[寄稿1]
都市におけるインバウンド観光戦略
[寄稿2]
インバウンドの現状と今後の施策の方向性
[寄稿3]
外国人観光客の誘致を目的とした取り 組み
長崎市長●田上富久
•• • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • •
[寄稿4]
環日本海オアシス都市のおもてなし戦略
•• • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • •
[寄稿5「
] 交流の産業化」
•
〜人を呼んで栄えるまちへ〜
■とっておき! 美しい都市の景観
「
室蘭市
(北海道)
旧室蘭駅舎」
紘
ジャーナリスト●松本克夫
東京大学大学院教授●伊藤元重
時事通信社元解説委員長●金重
■こだわりの食材で Smart Life• • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • •
山芋 ──心と体の老化を防ぐ「山の恵み」
動き
■世界の動き /「慰安婦」で日韓が合意 ■経済の動き /大交流の時代を目指して ■自治の動き /狭められた地域の自主性 表紙イラスト:山本 陽
本文イラスト:川名 京
市政ルポ……………………………………32
vol.65
CITY GOVERNMENT
9
10
13
16
19
22
3
4
30 28 26
February
2
2016
魚沼市(新潟県)
地域資源活用を推進力に
新たなステップへ
魚沼市長●大平悦子
■これぞ! イチオシ(八戸市)
………………………………………………64
•• • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • •
■全国市長会の動き─ Mayors' Action… …………………62
■海外都市行政調査団報告
徹
大町市長●牛越
•• • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • •
地方自治体の経営 ─イタリア・オーストリア─ 全国市長会欧州都市行政調査団 団長 三島市長●豊岡武士
■マイ・プライベート タ
・イム
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ふるさと信濃大町に暮らす 北アルプス一番街
■『日本百街道紀行』
街道とまちづくり
久
美馬市長●牧田
••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••
豊かな自然と悠久の歴史に培われた文化が薫る
「まほろば」
の道 ■風は海を越えて 海外見聞録
洋
作家●出久根達郎
••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••
城西大学経営学部教授●伊関友伸
•••••••••••••••••••••••••••••••••
阿久根市長●西平良将
泉佐野市長●千代松大耕
伊勢崎市長●五十嵐清隆
二本松市長●新野
•• • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • •
都市交通計画を通してみたフランスの行政 ⑥ 「日仏異文化マネジメント」
コンサルタント● ヴァンソン藤井由実
■わが市を語る
◆観光立市としてブランド力を高め、 元気な二本松づくりを進める ◆「夢ふくらみ 安心して暮らせる 元気都市 いせさき」を目指して ◆財政健全化団体から脱却した力をバネに未来へ躍進 ◆新しさの中に懐かしさが感じられる
笑顔あふれるまちづくり ■アスクレピオスの杖を探して 地域医療再生への道
看護師不足を考える
■時代を駆け抜けた偉人たち
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お奉行日和 民政家 川路聖謨⑪ 正月
■編集後記
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市政 FEBRUARY 2016
7
■市政ギャラリー 都市の素顔
「
京都加茂川べり」(京都府)
■都市のリスクマネジメント………………………………………48
自治体における災害対策の標準化 ─アメリカの失敗から学ぶ
明治大学名誉教授、日本自治体危機管理学会会長●中邨 章
38
42
44
46
50
58
60
65 64
特集
インバウンドを促進させる
都市のおもてなし戦略
2015年の訪日外客数はおよそ1974万人。過去最高であった2014年を600万人余り上回りまし
た。円安やビザの発給要件緩和などの効果で、アジア諸国を中心に日本を訪れる観光客は増えています。
このような中、外国語での案内やおもてなし、情報発信、自治体連携による誘致策などはもちろん
のこと、LCCの活用等、独自のインバウンド戦略を講じている都市自治体も増えています。
今回の特集では、最新の国際観光の動向や訪日観光客増加の恩恵を全国各地に広げるため、都市自治
体に求められる課題などを紹介するとともに、独自のインバウンド戦略に取り組む都市事例もご紹介します。
寄稿 1
都市におけるインバウンド観光戦略
寄稿 2
インバウンドの現状と今後の施策の方向性
寄稿 3
外国人観光客の誘致を目的とした取り組み
寄稿 4
環日本海オアシス都市のおもてなし戦略
寄稿 5
東洋大学国際地域学部国際観光学科准教授 矢ケ崎紀子
観光庁国際観光課
函館市長 工藤壽樹
境港市長 中村勝治
「交流の産業化」
〜人を呼んで栄えるまちへ〜
長崎市長 田上富久
9
市政 FEBRUARY 2016
都市におけるインバウンド観光戦略
や が さ き の り こ
東洋大学国際地域学部国際観光学科准教授 矢ケ崎紀子
先や宿泊先が一部の地域に集中している実態
現実のものとなってきたが、訪日外客の訪問
昨年の観光関連の話題はインバウンド観光
に終始した。いよいよ、2000万人時代が
サービスの移出である。
外からの消費を呼び込むことであり、地域の
りする効果もある。日本人の国内旅行は、域
を通じて自己研鑽をしたりリフレッシュした
サイトでの評価を上げたりなど、多様な手段
ンを充実させたり、権威ある第三者や口コミ
を活用したり、SNS系のコミュニケーショ
人旅行者の誘致には、現地で人気の旅行番組
団体旅行の誘致であれば送客事業者である
旅行事業者との関係構築が第一であるが、個
れるが、海外旅行をした日本人が異文化体験
もある。政府は、来年度に観光庁の予算を倍
②インバウンド観光振興の手法
国内旅行
(ドメスティック)
がある。インバウ
観光には、訪日外客誘致(インバウンド)、
日本人海外旅行
(アウトバウンド)、日本人の
①観光の3分野
身 で 行 う た め、 エ ク ス ペ デ ィ ア や ブ ッ キ ン
トなどを参考にしながら旅程の手配を自分自
旅行者の多くは、ガイドブックや口コミサイ
の関係構築が不可欠である。特に、欧米豪の
集客力を持つ外資系のホテルチェーンなどと
業者、航空会社やクルーズ船会社、世界的な
商品の商材を提供するランドオペレーター事
りやすさや利便性の方が重要である。
も、一つの交通パスで周遊できるなどの分か
ても障壁になることは少ない。時間距離より
れば、国内での移動時間が数時間あったとし
外国人旅行者にとって、その地域に魅力があ
要はない。飛行機に長時間乗ってやってくる
最寄りの国際空港への航空路線誘致も重要
な施策である。空港から遠い地域も諦める必
けんさん
増させ、地方誘客を推進する施策に重点を置
ンドは、地域から動かせないものによって外
グ・ドット・コムなどのオンライン・トラベ
を用いる必要がある。
く。地方都市は、どのようなインバウンド観
インバウンド観光振興には、日本政府観光
局(JNTO)、海外の旅行事業者、訪日旅行
貨を獲得することで、地域のサービス産業が
ル・エージェンシー(OTA)を利用すること
①訪日外客数
光戦略を進めていけばよいのだろうか。
輸出の効果をもたらす。同時に、日本滞在に
が多い。アジアにおいても、初回訪問者が多
現地での自由度の高いスケルトン型の旅行商
SARSや新型インフルエンザなどの感染症
はじめに
満足すれば、訪日外客は日本や訪問地のファ
い中国以外は、個人で手配するか、あるいは、
向上する。アウトバウンドは日本円を海外に
品を購入して訪日する傾向にある。
インバウンド観光の動向
ンとなり、わが国や訪問地のソフトパワーが
訪日外客誘致事業が開始された平成 年の
訪日外客数は521万人であった。その後、
持ち出すことであり、国富の減少ととらえら
15
1
寄稿
10
FEBRUARY 2016 市政
特集 インバウンドを促進させる都市のおもてなし戦略
年に1036万人を達成した。
の流行、リーマンショック、東日本大震災を
経て、平成
(
・
・ 2 %)、
・ 2 %)、 宿 泊 費 が 6 0 9 3 億 円(
0 %)、 飲 食 費 が 4 3 0 7 億 円(
交通費が2179億円( ・7%)などである。
入れや委託関係で協力したり、サービスの付
加価値を高めるための加工機能を持つことに
訪 日 外 客 の 割 が ア ジ ア か ら で あ る。 韓
国、中国、台湾、香港がわが国への大票田で
2014年対比2倍増の中国人旅行者であ
見 通 し だ。 消 費 額 を 押 し 上 げ て い る の は、
1900万人超となる平成 年の訪日外
客による旅行消費は3兆円を大きく超える
あり、政府は農水産物をお土産として持ち帰
アにおけるコールドチェーン網を拡充しつつ
戦略も考えられる。民間の物流事業者はアジ
は、地域の農水産物の輸出などの、その先の
よって、外需が域内循環する仕組みをつくっ
あり、これに、距離は遠いが国家間の紐帯が
る。欧米豪からの旅行者に比べて、アジアか
ることができるよう、また、輸出を伸ばすこ
年には1341万人となり、昨年の
月の実績を見る
らの旅行者はお土産にお金を掛ける傾向にあ
とができるよう施策を整備し始めている。
強い米国が続く。昨年1〜
と、訪日外客数全体では前年同期比
上の増加を見せているのが、韓国(
増)
、中国(109・4%増)
、香港(
・4%
・7%
・ 1 % 増 )、 ベ ト ナ ム
地方都市に求められる
国際情勢に大きなマイナス要因がなけれ
ば、今年は2000万人を超える訪日外客を
インバウンド観光戦略の方向性
点から、“爆買い”を検証する必要もある。電
の中で観光庁関係予算は前年度対比2・
倍
年度政府予算案
らうことは全国の経済活性化に資するが、地
の245億円であり、平成
迎えることとなろう。平成
初回訪問の割合は人口の多い中国や距離の
遠い欧米が多いが、国内旅行のように頻度高
域経済にとっては、地場産品を購入してもら
化製品、化粧品や一般薬品などを購入しても
技術の維持発展にどう貢献するのかという視
もっとも、彼らの消費がどれだけ地域経済
に歩留まるのか、地元企業が大切にしてきた
27
く訪日している国・地域もある。平成 年の訪
( ・5%増)
である。
ていける分野である。さらに、飲食について
・5%
る。その中でも、消費意欲が旺盛な中国人旅
平成
30
増であり、ロシアを除く各国・地域とも前年
10
行者数が大幅に伸びている。
月 日時点で1900万人を突破した。
21
35
同期比プラスであった。その中でも、4割以
12
25
8
増)
、 フ ィ リ ピ ン(
47
年度補正予算と
28
・ 7 %、
合が4割を切っており、訪日回数が4〜9回の
香港、シンガポールでは初回訪問の観光客の割
日外国人消費動向調査を見ると、韓国、台湾、
の傍に置き、見るたび、使うたびに、日本を
のもある。お土産は、自国に持ち帰って自分
ザイン性を高め、訪日外客に選ばれているも
産品の製造の現場に若者や女性が参入してデ
家具、包丁や曲げわっぱなどのように、地場
うことがより重要である。漆器、鉄器、和紙、
①マーケティング
誘客を目指す内容である。
のある観光地づくりを進めて訪日外客の地方
て、地域における受入環境整備や国際競争力
Oによるプロモーション事業の強化に加え
ンバウンド観光振興に充てられるが、JNT
合わせると301億円となる。この大半がイ
・7%、シンガポールは
回以上の訪日
うことができる。お土産についても、地域に
関する好イメージを広げるために戦略的な視
②訪日外客による旅行消費額
ある。これらの国・地域では
香港は
・ 7 %、 台 湾 は
・4%で
思い出させる効能が期待できる。友人知人に
観光客は韓国で
経験のある観光客が1〜2割もいる。観光客
見せて、購入した地域の思い出を語ってもら
18 26
点を持ちたい。
また、宿泊や飲食は、地域の企業同士が仕
国内観光需要の補完、のいずれであ
A
入れないという判断もある。
ろうか。もちろん、訪日外客を積極的に受け
B
17
訪日外客数が1341万人であった平成
年の外国人旅行者による旅行消費は約
こと、
は近くから人数多く、頻度高くやってくる。
27
皆さんの地域がインバウンド観光に求める
ものは、 国内観光とともに観光の柱とする
25
36
45
66 44
11
10
31
2 兆 円 で あ り、 買 い 物 代 が 7 1 4 2 億 円
市政 FEBRUARY 2016
11
26
19
50
26
り方を導入して活性化させたいなら、若手経
点も重要だ。地域の観光ビジネスに新しいや
を取りやすい国・地域をターゲットとする観
入れたいのであれば、その時期に休暇・休日
る。日本人観光客の少ない時期に訪日外客を
観光で補完したいのかを明確にする必要があ
の場合には、まず、主力である国内観光
需要をしっかり分析し、どこをインバウンド
済を活性化するのかのシナリオも必要である。
光消費がどのような利益をもたらし、地域経
日外客数と消費額はもちろん、地域が得る観
体的に記述できるよう練り上げてほしい。訪
討する必要がある。成果目標は、冷静かつ具
地)
としての評価が高い地域との広域連携を検
が低ければ、デスティネーション(観光目的
得コストの軽減につながる。国際的な知名度
地域としてのブランドを形成し、新規顧客獲
ビスの品質向上の積み重ねが、最終的に観光
るターゲットへの訴求活動と受入れ時のサー
トを選ぶことがポイントである。統一感のあ
件であるから、これと親和性の高いターゲッ
げていく司令塔が必要になる。観光資源は与
いる必要があり、一連の取り組みをまとめ上
確にする。その目標は関係者間で合意されて
競合相手を知り、自身が目指すべき目標を明
の場合には、本格的なマーケティングを
行 う ことに な る。 誘 客のタ ー ゲット を 決 め、
ことによって初めて自分ごととして考 え、メ
ない。地域の明日を描いたビジョンに共感する
なって動くことができるが、地域はそうはいか
明確な指揮命令系統と責任体系の下で一丸と
デスティネーションとしてのブランド形成に
は、地域のまとまりが不可欠である。企業は
③推進体制の構築
む中間層がやってくる段階である。
過ぎ、各国から安心・安全で楽しい旅行を望
観光はそうしたフロントランナー層の時期を
が多くやってくるが、わが国のインバウンド
あっても未知の世界を楽しもうとする旅行者
外客が増加し始めた時期には、多少の不便が
時の対応など、さまざまな課題がある。訪日
の体験型アクティビティの充実、急病や災害
をあげるための通訳・ガイドの充実、現地で
対応のサービスの向上、地域の魅力の説明力
向上、十分な供給量の宿泊施設と外国人受入
レジャー施設での外国語表示や接遇レベルの
報の提供、二次交通の整備、飲食店・小売店・
補を量産することである。滞在中に必要な情
にし、また日本に来たいと思うリピーター候
ジャーなどの一連の行動が快適に行えるよう
この要諦は、旅行者にとって、入国してか
ら出国するまでの間の移動・飲食・宿泊・レ
②受入環境整備
してもらうのもよい。
る国・地域との取引を増やすようチャレンジ
だければ幸いである。
いて、都市における観光戦略を検討していた
ことも可能である。こうした構造を念頭にお
く、観光を活用して他産業を元気にしていく
野を持って地域経済を元気にするだけでな
りを持つことに役立つ。経済活性化について
よって、地域住民が自地域に対して愛着と誇
パワーの強化は、他者から評価されることに
観光振興には、経済活性化とソフトパワー
の強化という2つのメリットがある。ソフト
基幹産業へと脱皮していく道筋が見えてくる。
果、雇用機会が創出され、観光産業が地域の
者が生産性を高めていく必要もある。その結
くっていくことが重要である。観光関連事業
経 済 波 及 効 果 の 裾 野 を 広 げ てい く 実 態 をつ
取 引 関 係 を強 化 し、観 光 消 費 が域 内 循 環 し、
させるとともに、域内については、企業間の
光資源を磨き上げて国際観光市場にデビュー
る。こうした組織が中心となって、地域の観
財源を工夫するなどの支援が必要になってく
タッフを配置したり、成果報酬のような自主
し、 能 力 の あ る リ ー ダ ー と や る 気 の あ る ス
実際の事業や取り組みは、インバウンド観
光 振 興の 受 益 者 が 率 先 して 担 うべきである。
リットを見出したときに動くことができる。
は、観光消費そのものが広い経済波及のすそ
ここがエンジンとなって動けるよう組織化を
営者が中心となって、学び取りたいものがあ
A
B
12
FEBRUARY 2016 市政
インバウンドの現状と今後の施策の方向性
は3兆4771億円となった。訪日外国人旅
に伴い、昨年の訪日外国人による旅行消費額
録した。こうした訪日外国人旅行者数の増加
勢いで増加し、過去最大の1974万人を記
500万人もの増加をみた。昨年はさらなる
1 3 4 1 万 人 に ま で 増 加 し、 わ ず か 2 年 で
年には
訪 日 外 国 人 旅 行 者 数 は、 平 成 年 に は
836万人であったが、平成 年には史上初
は、まさにこのような観点から、さまざまな
平成 年6月に策定した「観光立国実現に
向けたアクション・プログラム2015」で
ことが大事であると考えている。
現のためには、多くの外国人に訪れてもらう
こと」が観光立国の一つの姿であり、その実
開かれた国、活気ある地域社会を築き上げる
解して闊達に交流することを通じて、世界に
の旅行者が地域を行き合い、互いの文化を理
効果をもたらすようになった状態」「海外から
の交流規模が拡大をして、国際経済に一定の
じゅうに広まっているということ」「諸外国と
域 が 連 携 し て 広 域 の 観 光 ル ー ト を 形 成 し て、
訪日外国人を地方に呼び込むためには、各
地の魅力ある観光資源を磨き上げ、複数の地
旅行者を全国津々浦々に呼び込み、さまざま
寄与していくためには、これらの訪日外国人
き渡らせ、地域経済活性化および地方創生に
ンバウンド観光の効果を地方の隅々にまで行
人に日本を訪れてもらうとともに、好調なイ
シーズンに集中している。さらに多くの外国
た、訪問シーズンについても、夏や春の桜の
ゆ る ゴ ー ル デ ン ル ー ト に 集 中 し て お り、 ま
現在、訪日外国人旅行者の訪問地は、東京
から富士山を通って京都・大阪に至る、いわ
観光庁国際観光課
行者数が増加した要因としては、各国の経済
インバウンド施策を盛り込んでいる。以下、
点から線、線から面へとネットワーク化して
魅 力 が 海 外 の 人 々 に 多 く 知 れ 渡 っ て、 世 界
成長や円安の継続のほか、ビザ発給要件の緩
アクション・プログラム2015に基づいた
海外に積極的に発信していくことが重要であ
はじめに
和、消費税免税制度の拡充や航空ネットワー
訪日外国人誘客に関する取り組み、および、
る。 こ の た め、「 広 域 観 光 周 遊 ル ー ト 形 成 促
たものといえる。
め て 1 0 0 0 万 人 を 突 破 し、 平 成
クの拡大、継続的なプロモーションなどが挙
今後の観光立国の推進に向けた施策の方向性
進事業」を創設し、昨年6月に全国で7つ(北
「 住 ん で よ し、 訪
観 光 立 国 の 基 本 理 念 は、
れてよしの国づくり」
を実現することにある。
そして、観光立国を一律に定義づけることは
インバウンド推進に関する取り組み
27
1)地方への誘客・新たな季節需要の創出
トの形成や地域資源の磨き上げの取り組みに
九州)のルートを認定した。今後、モデルルー
海道、東北、中部北陸、関西、瀬戸内、四国、
な季節に訪れてもらう必要がある。
げられ、政府一丸となった取り組みが奏功し
について紹介する。
24
26
難 し い が、 観 光 庁 と し て は、
「 日 本 の よ さ、
市政 FEBRUARY 2016
13
25
2
寄稿
特集 インバウンドを促進させる都市のおもてなし戦略
対して必要な支援を行っていく。
また、さまざまな季節に訪日してもらうた
めには、日本の四季折々の魅力を海外に向け
て強力に発信する必要がある。春の桜のシー
年に集中的な取り組みを実
ズンについては、継続的な訪日プロモーショ
ンに加え、平成
26
訪日外国人旅行者数の推移
対前年(2014年)比
47.1%増
(万人)
2000
1900
1800
1700
1600
1500
1400
1300
1200
リーマン
ショック
1100
1000
900
800
700
1341
600
500
施したことにより、新たな訪日シーズンとし
て定着させることに成功した。今後も、引き
続き春の桜について魅力を発信するほか、秋
の紅葉、冬の雪の魅力も発信し、年間を通し
た訪日需要を創出する。
あわせて、地方空港へのLCC等の新規就
300
614
521
200
835
733
673
835
679
861
836
622
1036
100
0
2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年
注) 2014年以前の値は確定値、2015年1月~ 10月の値は暫定値、2015年11月~ 12月の値は推計値
出典:
JNTO
(日本政府観光局)
訪日外国人旅行消費額と1人当たり旅行支出の推移
(億円)
176,168
40,000
35,000
34,771
30,000
151,174
20,000
(円)
180,000
170,000
160,000
150,000
25,000
133,426
15,000
10,000
136,693
130,819
2010年
130,000
120,000
10,846
8,135
0
140,000
20,278
129,763
14,167
11,490
5,000
110,000
2011年
2012年
旅行消費額(億円)
・左目盛
2013年
2014年
2015年
100,000
1人当たり旅行支出額(円/人)
・右目盛
注)2015年は速報値
出典:観光庁「訪日外国人消費動向調査」
FEBRUARY 2016 市政
航の促進やドライブ
観 光、 国 内 ク ル ー ズ、
鉄道旅行等に関する
海外への魅力発信を
行 う こ と で、 魅 力 あ
ふれる地方へ実際に
訪れようとする意欲
を一層刺激していく。
2)
観光
旅行消費の一層
の拡大等
26
訪日外国人旅行者
による日本国内での消
費は、平成 年に初め
て2兆円を超え、昨年
は、訪日外国人旅行者
数の増加に伴い、過去
最高の3兆4771億
円となった。
地域経済活性化を
図 る た め に は、 多 く
の訪日外国人旅行者
を地方に呼び込むこ
と と 併 せ、 そ れ ら の
訪日外国人旅行者による地方での観光消費を
一層拡大させることにより、急成長するイン
月の消費税免税制度の拡充を契機
バウンド観光の経済効果を全国津々浦々に波
年
及させていくことが重要である。そのため、
平成
に、業界団体と連携し、日本におけるショッ
10
1974
ビジット・ジャパン
開始
400
26
1000万人
達成
東日本
大震災
14
特集 インバウンドを促進させる都市のおもてなし戦略
も、外国人旅行者への消費税免税制度につい
よ る 旅 行 消 費 の 拡 大 に 寄 与 し て い る。 今 後
ピングの魅力を海外に発信し、訪日外国人に
本の歴史・文化・芸術を深く理
また、日本が真の観光立国を実現するため
には、量的拡大のみならず、日
3)質の高い観光交流の促進
地方における消費の拡大につなげていく。
地方での免税店拡大を進め、外国人旅行者の
た 中、 次 の 時 代 の 新 た な 目 標 の 設 定 と そ の
課 題 が 浮 き 彫 り に な っ て き て い る。 そ う し
対 応、 通 訳 ガ イ ド の 育 成 な ど、 さ ま ざ ま な
境の整備、CIQ(出入国管理など)の強化、
泊 施 設 の 容 量 不 足、 各 地 域 に お け る 受 入 環
り、 今 ま で 見 え て こ な か っ た、 大 都 市 の 宿
②
②「日本の奥の院・東北探訪ルート」
(東北観光推進機構)
④
⑤
※申請のあった広域観光周遊ルート形成計画について骨太な観光動線及び広域観光周遊を構成するルート例を概略的にイメージ化したもの。
月には安倍総理を議長とする「明日の
具体的には、能や歌舞伎、茶道
ることが重要である。このため、
り、質の高い観光交流を推進す
の高い観光客層の呼び込みを図
日本の歴史・文化・芸術に関心
政府全体で推進していく施策について検討
る よ う、 中 長 期 観 点 か ら 総 合 的・ 戦 略 的 に
満 足 度 を 高 め、 リ ピ ー タ ー と な っ て も ら え
あ げ た。 本 会 議 で は、 訪 日 外 国 人 旅 行 者 の
日本を支える観光ビジョン構想会議」を立ち
からの旅行者中心に訴求するよ
域もある。地域活性化のためには、訪日外国
日本においては、人口減少・少子高齢化が
進んだことにより、過疎化が進行している地
おわりに
う観光資源化する等の取り組み
人旅行者の誘致や日本人の国内旅行の活性化
により、交流人口を増大させることがますま
す重要になってきている。そのためには、観
訪日外国人旅行者数2000万
人の達成が視野に入ってきたこ
魅力あふれる国・社会づくりを推進していく
く総力を挙げて改革に取り組み、世界に誇る
光サービスを質・量ともに抜本的に改善すべ
と を 踏 ま え、 ま た、 昨 今 の 訪 日
必要がある。
今後の施策の方向性
を推進する。
歴史・文化に関心の高い欧米等
地の特色ある地域文化を日本の
伝統工芸体験や伝統芸能など各
することとなっている。
11
体験、社寺観光、また、地域の
年
宿泊施設や観光施設におけるインバウンド
て免税対象金額の引き下げを行うとともに、
解し、体験を通じて日本や日本
③
「昇龍道」
(中部(東海・北陸・信州)広域観光推進協議会)
⑦
①
④「美の伝説」
(関西広域連合、関西経済連合会、関西地域振興財団)
⑤「せとうち・海の道」
(瀬戸内ブランド推進連合、瀬戸内観光ルート誘客促進協議会)
⑥「スピリチュアルな島~四国遍路~」
(四国ツーリズム創造機構)
⑦「温泉アイランド九州広域観光周遊ルート」
(九州観光推進機構)
光 交 流 機 会 を 創 出 す る こ と で、
た め に 必 要 な 対 応 の 検 討 を 行 う た め、 平 成
③
⑥
①
「アジアの宝悠久の自然美への道ひがし北・海・道」
(
「プライムロードひがし北・海・道」推進協議会)
骨太な観光導線
広域観光周遊を構成するルート例
凡例
27
外国人旅行者の急激な増加によ
市政 FEBRUARY 2016
15
人の本質に触れられるような観
広域観光周遊ルート形成計画(認定)位置図
外国人観光客の
誘致を目的とした取り組み
はこだて
く ど う と し き
万6000人と過去最高、平成
函館市長(北海道) 工藤壽樹
る。 さ ら に は、 函 館 観 光 の 一 大 転 機 と な る
年度上期
万4000人と好調に推移し
道 新 幹 線 開 業 を 見 据 え た、 北 関 東 以 北 へ の
人観光客に多く来ていただいていることを考
ており、例年、下期の寒い時期の方が、外国
も過去最高の
プ ロ モ ー シ ョ ン を は じ め、 道 南 圏・ 青 函 圏
慮すると、平成
年3月の北海
函館市は、日本最初の貿易港の一つとして
発展してきた「歴史」
、異国情緒あふれる「街
の 広 域 連 携 強 化 を 図 っ て お り、 そ れ と 同 時
るだろうと予測している。
ものと期待されている平成
並み」
、四季を通じてさまざまな表情を魅せ
に 東 ア ジ ア や 東 南 ア ジ ア な ど、 海 外 に 向 け
万人を確実に超え
る
「自然」
、豊かな海と爽やかな気候に育まれ
た プ ロ モ ー シ ョ ン な ど に よ り、 外 国 人 観 光
年度は
た多彩な
「食」
など、多くの観光資源に恵まれ
し、これまでにも数多くの観光客を温かく迎
え入れてきた。
27
40
の各地域におけるキャンペーンやイベント
が あ る。 こ う し た 認 識 の も と、 近 年、 全 国
観光振興に力を入れて取り組んでいく必要
望 を 背 負 っ た 分 野 で あ り、 こ れ ま で 以 上 に、
化 の 原 動 力 と し て、 市 民 の 大 き な 期 待 と 希
る。 そ う し た 意 味 で も、 観 光 は、 地 域 活 性
さ せ る た め に は、 交 流 人 口 の 拡 大 が 鍵 と な
日 旅 行 を 牽 引 す る 要 素 に 加 え、 平 成
少したが、アジアの経済成長、円安などの訪
ろから増え始め、東日本大震災により一時減
外国人観光客数の状況であるが、平成
年ご
も現実味を帯びている。こうした中、本市の
2000万人」という政府目標の前倒し達成
「東京五輪のある2020年までに訪日客
なっている。
を補っていただいている有り難いお客さまと
が少ないので、外国人観光客は下期の閑散期
である。日本人観光客は、上期が多く、下期
が、下期の寒い時期に来ていただいている点
観光客に関し特徴的な点は、先ほども述べた
年に
21
年度は
年に中国との間に定期
24
26
北 海 道 人 気 が 高 い 理 由 は、 大 き く 2 点 あ
北海道人気が高い理由
台 湾、 さ ら に 平 成
ている。東アジアや東南アジアからの外国人
シンガポール、タイといった国々などが続い
観光客で5万1000人、これに香港、韓国、
以上を占めている。次に多いのが中国からの
22
の 実 施、 ま ち あ る き 観 光 の 推 進 な ど に よ る
わが国を訪れる外国人の数は急増して
お り、 平 成 年 に は 1 0 0 0 万 人 を 超 え、
26
便 が 就 航 し た こ と な ど か ら、 平 成
国内人口の減少が本格化することが予想
さ れ て い る こ れ か ら の 時 代、 地 域 を 活 性 化
インバウンドの現況
国別では、台湾からの観光客が最も多く、
平成 年度は、 万9000人で全体の6割
はじめに
27
客の誘致にも力を入れ取り組んでいる。
18
34
た ま ち で あ る。 こ れ ら の 豊 富 な 資 源 を 生 か
28
滞在型観光の取り組みなどを行ってきてい
25
27
3
寄稿
16
FEBRUARY 2016 市政
特集 インバウンドを促進させる都市のおもてなし戦略
回ものトッププロモー
憧れであり、本市では、冬の間、坂道や通り
南アジアから来ている観光客にとって「雪」は
香港など東アジアの暖かい地域や、熱帯の東
り、北海道はいずれも充実している。台湾や
「温泉」
「食」の四つの要素は非常に人気があ
あるコンテンツが多く、とりわけ「雪」「花」
ニセコ、洞爺、登別などの観光地があり、北
る エ リ ア だ け で も、 本 市 以 外 に 札 幌、 小 樽、
もう一つは、北海道内に観光地が数多く存
在するということである。道央から道南に至
ただける環境にもある。
ンやスイーツなど多彩な「食」にも満足してい
幸を満喫できる寿司や刺身をはじめ、ラーメ
を有しているほか、近海で獲れる新鮮な海の
温泉をはじめ、市内各所にさまざまな「温泉」
んでいただくことができる。さらに、湯の川
公園の桜をはじめ、ツツジ、紅葉などを楽し
折々の「花」も人気がある。本市では、五稜郭
る。 ま た、 暖 か い 国 で は、 見 ら れ な い 四 季
さらに、外国人観光客の利便性の向上のた
め、観光案内所への外国語対応可能な人員の
いる。
つなげるプロモーション活動なども展開して
ルートを視察していただき、旅行商品の造成
ディアを招請し、本市や周辺地域の広域観光
信 を 行 っ て い る ほ か、 海 外 の 旅 行 会 社 や メ
また、最近では、職員が各国で開催される
旅行博や商談会へ参加し、函館観光の情報発
にも訪問している。
やシンガポールといった東南アジアの国々
香 港、 天 津 な ど 東 ア ジ ア の 国 や 地 域、 タ イ
ションを行っているほか、韓国、上海、広州、
最も多く、これまで
をイルミネーションで彩り、冬の函館ならで
海道だけで3泊4日、4泊5日の旅行商品を
配置、公式観光情報サイトや観光パンフレッ
でいただくさまざまな取り組みを行ってい
はの幻想的な夜を満喫できる「はこだてイル
造成することが可能である。一般的に一つの
ト等の多言語対応などの受入環境整備も行っ
る。その一つは、訪日外国人にとって魅力の
ミネーション」
を開催しているほか、「はこだ
県だけで3泊4日、4泊5日という旅行商品
てきており、今年度は、飲食店における指差
年
年度から平成
年度まで8年連続
年6月には、大韓
年9月にトラ
月から現在に至るまで運休となってい
た。ソウル線については、残念ながら、平成
航空が本市とソウルとの間に定期便を就航し
一位であったほか、平成
て、平成
一方、こうした活動の成果であるが、台湾
からのチャーター便の運航便数が国内におい
の整備にも取り組んでいる。
や、雑誌やウェブなどの各種媒体でのPRに
てクリスマスファンタジー」
、
「函館海上冬花
を造成することは、なかなか難しく、北海道
しメニュー表の作成促進のための啓発パンフ
火」といったイベントも開催し、冬を楽しん
だけで旅行商品を造成することが可能な環境
レットや単語シートの配布、Wi─Fi環境
これまでの取り組みと成果
1990年代後半から台湾において日本
観 光 ブ ー ム が 始 ま り、 北 海 道 人 気 も 同 じ こ
年 か ら 市 や 経 済、 観
ろ に 始 ま っ て い る が、 こ の よ う な 背 景 の も
と、 本 市 で は、 平 成
光 関 係 団 体 が 一 丸 と な り、 海 外 の 航 空 会 社
18 23
月にはエバー航空が
るが、それに代わって、平成
や 行 政 機 関 な ど を 訪 問 し、 観 光 P R や 航 空
16
路線就航の要請を行う海外トッププロモー
11
ンスアジア航空、同年
24
24
12
シ ョ ン を 実 施 し て い る。 国 別 で は、 台 湾 が
市政 FEBRUARY 2016
17
16
は、北海道の強みだと言える。
函館のクリスマスを艶やかに彩る「はこだてクリスマスファンタジー」
10
は2社乗り入れとなっている。さらに、平成
台北との間に定期便を就航し、現在、台北線
一方、台湾については、既に多くのお客さ
まに来ていただいており、他の国や地域と状
なげていきたいと考えている。
P R を 行 い、 旅 行 目 的 地 と し て の 選 択 に つ
の招請事業などによる函館観光の積極的な
行 博 へ の 参 加、 現 地 の 旅 行 会 社、 メ デ ィ ア
含 め た 道 南 へ 誘 致 す る た め、 引 き 続 き、 旅
訪 れ て い る 多 く の 観 光 客 を、 さ ら に 本 市 を
港 に 定 期 便 が 就 航 し て お り、 道 央 を 中 心 に
道 人 気 が 高 く、 両 国 か ら は、 既 に 新 千 歳 空
て は、 特 に タ イ や マ レ ー シ ア に お け る 北 海
と も 検 討 し て い る。 東 南 ア ジ ア 地 域 に つ い
する観光PRを目的とした説明会を行うこ
送 客 を 要 請 す る ほ か、 現 地 の 旅 行 会 社 に 対
を 訪 問 し、 現 在 の 定 期 便 の 維 持 や さ ら な る
次年度もトッププロモーションで航空会社
本 市 の 知 名 度 向 上 に 努 め て い る。 中 国 に は、
の 卓 上 カ レ ン ダ ー を 旅 行 会 社 な ど に 配 布 し、
て、 函 館 の 観 光 地 を 写 真 で 紹 介 し た 中 国 語
る た め、 現 在、 プ ロ モ ー シ ョ ン の 一 環 と し
中 国 に つ い て は、 定 期 便 の 就 航 を 追 い 風
に、 本 市 を 訪 れ る 観 光 客 の 増 加 を 加 速 さ せ
入れていきたいと考えている。
ため、これまで以上にプロモーションに力を
地域における本市の知名度は、まだまだ低い
を航空会社や旅行会社などにしっかりと売り
も連携しながら、新たな魅力ある観光ルート
森から1時間と大幅に時間が短縮されるが、
平成 年3月に北海道新幹線が開業し、東
京から4時間、仙台から2時間半、そして青
ていきたいと考えている。
に努めるなど、受入環境の整備にも力を入れ
税店の情報、テーマ別の観光情報などの発信
ジットカードが利用可能な施設やATM、免
フォン対応への切り替え、電子マネーやクレ
イトの外国人観光客向けのページのスマート
こうした活動と並行して、Wi─Fi環境
の整備エリアの拡大のほか、公式観光情報サ
ただく事業も予定している。
函館から青森に至る観光ルートを体験してい
旅行会社を招請し、実際に新幹線に乗って、
しており、北海道新幹線開業後には、現地の
トで旅行商品を造成していただくようお願い
京と函館を結ぶルートなど、新たな観光ルー
活用して東北や函館を周遊するルートや、東
は、従来の旅行商品に加え、北海道新幹線を
までのような観光客の増加は期待できない。
泊、5泊するという旅行商品だけでは、これ
であることを考えると、従来の北海道内を4
月には中国東
北海道人気が高い一方で、台湾以外の国や
今後の取り組み
に定期便を就航している。
中国国際航空が北京線、同年
年3月に天津航空が天津線、同年7月には
方航空が杭州線を就航し、現在、中国につい
況が異なるところは、何度も北海道を訪れて
込み、さらなる外国人観光客の誘致につなげ
そこで台湾の航空会社や旅行会社に対して
ては、3つの航空会社が中国の3都市との間
いるリピーターが多いという点である。この
ていきたいと考えている。
台湾の航空会社へのトッププロモーション
点に加え、台湾の総人口が2300万人程度
このメリットを最大限生かすため、他地域と
28
12
27
18
FEBRUARY 2016 市政
環日本海オアシス都市の
おもてなし戦略
さかいみなと
なかむら か つ じ
境港市長(鳥取県) 中村勝治
港」の3つの「みなと」がある。
「境漁港」の平成 年の水揚量は全国第3
位、 水 揚 金 額 は 第 8 位 で、 過 去 に は 5 年 連
㎞の大砂州である「弓浜半島」の北端
中 海 に よ り、 三 方 が 海 に 開 け て い る。 ま た、
続 で 水 揚 量 が 日 本 一 に な る な ど、 全 国 屈 指
さ約
中 国 地 方 最 高 峰 の「 大 山 」 を 背 景 に、 風 光
の漁港である。
に位置しており、美保湾(日本海)、境水道、
明 媚 な 白 砂 青 松 の 海 岸 線 を 有 し て お り、 東
めいび
なかうみ
西、 南 北 と も に 直 線 距 離 が 約 4 〜 5 ㎞、 面
「 境 港 」は 、 平 成 年 に 日 本 海 側 拠 点 港 の
指 定 を 受 け、 ま た リ サ イ ク ル ポ ー ト に も 選
㎢という非常にコンパクトなまちで
人 口 は 約 3 万 5 0 0 0 人 で、 古 く か ら 天
然 の 良 港 と し て、 対 岸 諸 国 と の 貿 易 や 漁 業
もある。
人口は約
で 構 成 す る「 中 海 ・ 宍 道 湖 ・ 大 山 圏 域( 圏 域
定 さ れ る な ど、 本 市 を は じ め 鳥 取 県 米 子
万 人 )」の 発 展 に 欠 か す こ と の で
市、 島 根 県 松 江 市、 出 雲 市、 安 来 市 の 5 市
が 盛 ん で あ り、 近 世 は 北 前 船 の 寄 港 地 で も
積は
27
23
しげるロード」には国内外から多くの観光客
の妖怪ブロンズ像153体が立ち並ぶ「水木
は本市出身の漫画家故水木しげる氏の作品
あ っ た。 基 幹 産 業 は 水 産 業 で あ る が、 近 年
船 航 路 が 週 1 便 運 航 さ れ て お り、 平 成
現 在、 中 国 へ 週 1 便、 韓 国 へ 週 4 便 の 定
期 コ ン テ ナ 航 路 に 加 え、 環 日 本 海 定 期 貨 客
ている。
き な い「 港 」と し て 、 大 変 重 要 な 役 割 を 担 っ
年
でにぎわう全国有数の観光地でもある。
から年間のコンテナ取扱貨物量は2年連続
で 2 万 T E U を 超 え て い る。 ま た、 港 湾 施
化 に 対 応 す る「 中 野 地 区 国 際 物 流 タ ー ミ ナ
設 の 整 備 は、 原 木 輸 入 の 増 大 や 船 舶 の 大 型
、特定第3種漁港「境漁港」、重
本市には
さかいこう
要港湾「境港」、そして、全国で初めて漫画
年度に完成する。さらにロシア・
ル」が平成
3つの「みなと」の現状と背景
25
さかなと鬼太郎のまち境港市
境 港 市 は、 鳥 取 県 の 西 北 部 に 位 置 す る 長
20
29
の主人公の名前を愛称とした「米子鬼太郎空
市政 FEBRUARY 2016
19
66
28
Ⓒ水木プロ
鬼太郎と乗船客との記念撮影
4
寄稿
特集 インバウンドを促進させる都市のおもてなし戦略
「米子鬼太郎空港」は、1日6便の羽田便
と 週 3 便 の ソ ウ ル 便 が 就 航 し て い る。 平 成
向け進んでいる。
年度の完成に
船の専用岸壁を整備する「竹内南地区貨客船
ズフェリー)や国内外からの大型クルーズ客
港を結ぶ環日本海定期貨客船(DBSクルー
ウ ラ ジ オ ス ト ク、 韓 国・ 東 海( ト ン ヘ )、 境
月の香港との国際定期便就航も視野に入れ
で あ る こ と か ら、 鳥 取 県 を 中 心 に、 本 年 3
便 就 航 も 相 次 い で お り、 そ の 搭 乗 率 も 好 調
て、 香 港、 台 湾 な ど か ら の 国 際 チ ャ ー タ ー
な ど、 安 定 し た 運 航 が 行 わ れ て い る。 加 え
今ではインバウンドがおよそ7割を占める
一 体 と な っ た 利 用 促 進 の 取 り 組 み に よ り、
を 乗 り 越 え、 鳥 取 県 を は じ め、 圏 域 の 官 民
情不安による利用客減少などの幾多の困難
ポ ー タ ー) 制 度 を 設 け て い る。 圏 域 住 民 へ
ほ か 、お も て な し の た め の ボ ラ ン テ ィ ア( サ
境 港 管 理 組 合 と 境 港 市 観 光 協 会 は、 岸 壁
で の 観 光 案 内 や 通 訳、 郷 土 芸 能 披 露 な ど の
の設置などを行っている。
シ ャ ト ル バ ス の 運 行、 臨 時 観 光 案 内 ブ ー ス
か ら J R 境 港 駅、 市 内 観 光 施 設 を 結 ぶ 無 料
遣 や ポ ス ト カ ー ド な ど の 記 念 品 配 布、 岸 壁
するキャラクター(着ぐるみ)の岸壁への派
客らを出迎えているゲゲゲの鬼太郎に登場
応については、港湾管理者である鳥取県、島
いる。このような状況の中、クルーズ客船対
超えるオファーがあり、5万人が見込まれて
域の特産品や飲食物販売などは圏域の市長
両 替 サ ー ビ ス な ど を 行 っ て い る。 ま た、 圏
た 墨 字 色 紙 の 贈 呈、 無 料 W i ─F i の 整 備、
や 着 付 け 体 験、 漢 字 で 外 国 人 氏 名 を 表 記 し
さかいこう
根県両県で組織する「境港管理組合」が中心と
会 や 商 工 会 議 所 が 調 整 を 行 い、 客 船 の 規 模
12
米 子 ソ ウ ル 便 は 週 3 便、 国 際 定 期 貨 客 船
米子鬼太郎空港でのおもてなし
国際定期貨客船と
ブース程度を出
なって、両県や県境をまたいだ5市で構成す
観光協会、商工会議所、観光施設関係者など
で構成する「境港クルーズ客船環境づくり会
議」が連携してクルーズ客船の誘致や寄港時
のおもてなしを行っている。
本 市 で は、 普 段 水 木 し げ る ロ ー ド で 観 光
店している。
に合わせて3ブースから
50 23
る「中海・宍道湖・大山圏域市長会」、圏域の
1万9000人、そして本年は、既に
19
ターミナル整備事業」が平成
年に就航した米子ソウル便は日韓間の政
た積極的な利用促進の取り組みを展開して
り、 さ ま ざ ま な 場 面 で 活 躍 し て い た だ い て
いる。
マーチングバンドの演奏などを行うととも
お出迎えとお見送り時には圏域内の多彩
な 郷 土 芸 能、 キ ッ ズ ダ ン ス の 披 露、 高 校 生
「境港」へのクルーズ客船の寄港は平成 年
が 回、乗客数9000人、平成 年が 回、
26
に、 外 国 人 乗 客 向 け に は、 ド ジ ョ ウ す く い
27
回を
寄港に対するおもてなし
クルーズ客船の
広 く 呼 び 掛 け、 現 在 3 5 6 名 が 登 録 し て お
漢字で外国人氏名を表記した墨字色紙のプレゼント
いる。
13
31
20
FEBRUARY 2016 市政
特集 インバウンドを促進させる都市のおもてなし戦略
や 空 港 お よ び タ ー ミ ナ ル か ら 倉 吉 市、 鳥 取
個 人 旅 行 客 向 け に は、 鳥 取 県 が タ ー ミ ナ
ルからJR境港駅までの無料シャトルバス
て実施している。
案内と両替サービスを鳥取県の委託を受け
て、 韓 国 語、 ロ シ ア 語 に 対 応 し た 臨 時 観 光
が空港および貨客船専用ターミナルにおい
は 週 1 便 の 運 航 で あ る が、 境 港 市 観 光 協 会
に よ る 音 声 ガ イ ド 案 内、 外 国 語 案 内 可 能 な
料 W i ─F i の 整 備 、 免 税 店 対 応 、 多 言 語
ジ ッ ト カ ー ド 等 の 決 済 シ ス テ ム の 導 入、 無
商 品、 メ ニ ュ ー な ど の 多 言 語 表 記、 ク レ
て な し 対 策 と し て 、歓 迎 の ぼ り や フ ラ ッ グ 、
ス ポ ッ ト が あ る が、 主 な 外 国 人 観 光 客 お も
こ の 他 市 内 に は、 水 木 し げ る 記 念 館、 夢
み な と タ ワ ー、 水 産 物 直 売 施 設 な ど の 観 光
している。
いきたい。
み、 新 た な「 み な と 」の に ぎ わ い を 創 出 し て
てさまざまなインバウンド対策に取り組
内 ガ イ ド 養 成 へ の 支 援 等、 関 係 者 と 協 力 し
替 機 能 の 充 実 や 外 国 語 で の 接 客・ 外 国 語 案
本 に 据 え な が ら、 現 在 不 足 し て い る 外 貨 両
情報 発 信 や 魅 力 度 ア ッ プ に 努 め 、3 つ の「 み
な っ て い る 中、 本 市 が 将 来 都 市 像 と し て 掲
となったおもてなしの継続とさらなる質の
なと」を最大限に生かした観光客誘致を基
市行きのリムジンバスを運行している。
いは連携して行っている。
全 国 的 に 訪 日 外 国 人 数 が 年 々 増 加 し、 東
京、 大 阪 な ど の ゴ ー ル デ ン ル ー ト 以 外 の 地
環日本海オアシス都市の実現に向けて
人 材 の 雇 用 な ど、 民 間 と 行 政 が 独 自 に あ る
ま た、 平 成 年 7 月 か ら 随 時 催 行 さ れ
る香港EGL社のチャーター便利用ツ
ア ー に お い て は、 鳥 取 県 お よ び 圏 域 の 官
民 関 係 団 体 で 組 織 す る「 米 子 空 港 利 用 促 進
よ る 空 港 で の 歓 迎 や 写 真 撮 影 サ ー ビ ス、
方都市への外国人観光客の来訪が顕著と
懇 話 会 」と 連 携 し 、 キ ャ ラ ク タ ー 複 数 体 に
世紀梨など
の 圏 域 産 品 の 試 食・ 販 売、 J R が 運 行 す
げ る、 砂 漠 の 中 の オ ア シ ス の よ う に 人 や 物
多 言 語 観 光 マ ッ プ の 配 布、
る「 鬼 太 郎 列 車 」に キ ャ ラ ク タ ー が サ プ ラ
が寄り集まる活気あふれるまち「環日本海オ
アシス都市」の実現には、国内外から訪れる
イズ乗車するなどの特徴を生かしたおも
てなしに取り組んでいる。
す べ て の 方 に 境 港 に 来 て 良 か っ た、 ま た 是
非 訪 れ た い、 と 思 っ て い た だ く こ と が 欠 か
JR境港駅から商店街を貫く約800m
の目抜き通りに妖怪ブロンズ像や鬼太郎た
向上を目指さなければならない。
水木しげるロード等でのおもてなし
ちが年中無休でお客様をお迎えする水木し
せ な い。 そ の た め に は、 民 間 と 行 政 が 一 体
げ る ロ ー ド は ク ル ー ズ 客 船、 国 際 定 期 便 等
ま た、 県 境 を 越 え た 中 海・ 宍 道 湖・ 大 山
圏域での更なる連携の強化と圏域全体での
市政 FEBRUARY 2016
21
20
を利用して訪れる外国人観光客が年々増加
地元少年野球チームによるお見送り風景
25
「交流の産業化」
〜人を呼んで栄えるまちへ〜
ながさき
た う え とみひさ
する国際交流のまちとして、多様な文化や風
されている。
長崎市長(長崎県) 田上富久
習、まち並みを残している。
観光振興に取り組む意義は、交流人口の増
加・にぎわいの創出を図り、経済の活性化に
年の観
キリスト教関連遺産」の世界遺産登録を目指
し て い る。 さ ら に 今 年 は、「 長 崎 の 教 会 群 と
ディアに大きく取り上げられ、観光客が増加
い、端島(通称:軍艦島)を中心に国内外のメ
飲食、土産品販売などさまざまな地域産業に
くるためには、インバウンドが、宿泊、輸送、
その比率は年々増加している。強い長崎をつ
GDP)約1・5兆円の約7・7%に当たり、
光消費額は1154億円と、総生産額(名目
つなげることにある。長崎市の平成
しており、観光客受入の準備を進めていると
もたらす経済効果は極めて大きい。
昨年は、「明治日本の産業革命遺産」がユネ
スコの世界文化遺産に登録されたことに伴
ころである。
重点プロジェクトとしての取り組み
大夜景」に選ばれた美しい夜景、離島・半島
高を記録し、今後も引き続き、円安・ビザ緩
万5000人の中核市で
方 で、 九 州 の 西 端 に 位 置 す る 地 方 都 市 と し
る。現在、人口約
年時点で
あるが、国立社会保障・人口問題研究所によ
る と、 今 後 市 内 の 人 口 は、 平 成
万人規模の減少が推計
52
万4543人と、中国をはじめと
27
を更新し続けている。今年は約190隻の入
する東アジアクルーズの増加に伴い最高記録
43
43
10
乗務員数
和を背景に増加が見込まれている。
の豊かな自然など多種多様な魅力を有する一
平成 年の長崎市の外国人延宿泊者数は、
万2524人(前年比 ・0%増)と過去最
これら2つの世界遺産(候補)や歴史・文化、
平成 年 月香港・モナコと並び「世界新三
24
て、少子・高齢化をはじめ、離島・半島にお
19
ける地域振興などさまざまな課題も抱えてい
26
10
また、日本有数のクルーズ客船の寄港地と
して、平成 年の入港数は131隻、乗客・
21
24
万1000人と約
33
インバウンドに取り組む意義
長崎市は開港以来440年以上の歴史を有
長崎港とクルーズ客船
5
寄稿
22
FEBRUARY 2016 市政
特集 インバウンドを促進させる都市のおもてなし戦略
定するとともに、宿泊・観光施設、交通事業
本市は、インバウンド対策を市の重点プロ
ジ ェ ク ト の 一 つ に 位 置 付 け、
「 ア ジ ア・ 国 際
港が予定されている。
年度)」を策
税免税手続き一括カウンターの整備、飲食店
る取り組みとして、商店街等と連携した消費
境を整備したほか、地域消費の拡大につなが
特に平成 年度においては、主要観光施設
および路面電車の全電停に公衆無線LAN環
化している。
目的地まで同行して道案内するなど市民一人
の壁があっても身振り手振りで、あるときは
いう内容のお礼状だ。老若男女問わず、言葉
なしを受け大変感動した。また訪れたい。」と
るのが、国内外から届く「素晴らしいおもて
長崎人は人情が厚くいい意味で「おせっか
い」であると、よく言われる。これを証明す
者、商店街、金融機関等関係団体で構成する
における多言語メニューの導入を進めるとと
ひとりがまちを代表する「ガイド」となって、
〜
「アジア・国際観光推進に係る官民連携協議
もに、県と連携し民間事業者に対する受入態
観光客に接していただいている。
観光戦略(計画期間:平成
会」を立ち上げ、外国人観光客の受入環境整
勢整備支援を実施している。
的な取り組みを行ってきた。
平成 年度から 年度の3年間において
は、まず、外国人観光客がストレスを感じる
32
的に実施した。
主な取り組みとして、多言語表記案内板・
ピクトグラムの整備、宿泊施設やタクシーへ
の指差し会話シートの配布、スマートフォン
アプリ等ICTを活用した着地情報発信の充
実や消費を促す決済環境の改善などが挙げら
れる。
平成 年3月「訪日外国人旅行者の受入環
境整備に係る地方拠点」に認定されたことに
より、国の支援において、多言語コールセン
年4月からは本格稼働さ
ターを整備し
「外国人専用ダイヤル」の実証実
験を行った。平成
せ、現在も年中無休で外国人からの問い合わ
せに対応している。
さらに平成 年度からは、多言語対応など
基 本 的 な 取 り 組 み に 加 え、 滞 在 満 足 度 を 高
27
市民が中心になって行う取り組みもある。
市内在住の外国人留学生も活躍している。
平成 年度から継続して「留学生モニター
ツアー」を実施し、観光客目線で交通機関・
して印象深く残るはずだ。
民の姿は、観光客の中にその土地の想い出と
らも、コミュニケーションを積極的にとる市
「おもてなし」を推進している。慣れないなが
しんだいく
備および誘致活動・情報発信について、継続
新
大工市場では、外国人が買い物を楽しめ
るよう語学学習に取り組むなど、地域全体で
市民によるクルーズ客船お見送り
おもてなしを高める市民力
23
ことなく滞在を楽しむ環境整備について重点
25
25
め、地域消費の拡大につながる取り組みを強
観光施設等の多言語表記、パンフレット等の
分かりやすさなどをチェックしてもらい改善
に生かしている。
このような住民による地道な活動は、お金
にはかえることができない、まちの魅力その
ものにつながっていくに違いない。
平和都市の知名度を生かした
プロモーション
観光客の増加には、積極的かつ効果的な誘
致活動と情報発信が欠かせない。
ナガサキは「被爆都市」として世界に知られ
市政 FEBRUARY 2016
23
26
25
23
24
特集 インバウンドを促進させる都市のおもてなし戦略
た。 さ ら に、
ていく必要がある。
ンドを推進し、交流人口と消費拡大に向けた
こ れ ま で 以 上 に、 資 源 を 磨 き、 受 入 態 勢
を 整 え、 世 界 中 か ら 観 光 客 を 呼 び 込 む サ イ
ク ル の 中 で、 新 た な 起 業 や 既 存 事 業 の 拡 大
を 促 し、 雇 用 創 出 と 所 得 向 上 に つ な げ て い
く こ と が 求 め ら れ て い る。 さ ま ざ ま な 試 行
や実験的施策にトライしていく中で、「新た
な価値」を生み出していく。これを繰り返す
ことで、さまざまな分野の交流を促進し、「人
を呼ぶまち」から「人を呼んで栄えるまち」へ
の転換を図り「交流の産業化」を推進してい
く必要がある。
東京オリンピック・パラリンピックが開催
される2020年は、被爆 周年を迎える。
長崎ならではの個性を世界に発信し、「長
崎だからこそ平和について考えることができ
る」、「日本の産業革命は長崎だからこそ知る
ことができる」というような、長崎にしかで
きない役割を果たすことで、きらりと個性輝
く世界都市を目指して邁進したい。
24
FEBRUARY 2016 市政
月にはベルギーでの平和首
長 会 議 理 事 会 の 開 催 に 合 わ せ、 オ ラ ン ダ・
ている。しかし、その一方で
「観光都市」とし
ての魅力は、まだまだ知られていない。
軍艦島の映像を使ったデジタルサイネージ
交流の産業化
本市は、長崎空港および九州のゲートウェ
イである福岡空港に直行便が就航する国・地
によるPRと航空会社へのトップセールス
ずつ現れてきた。経済界においてもインバウ
アムステルダムのスキポール空港において
域を主な誘致ターゲットとして、市場の成熟
を行った。
気運が高まっており、官民が連携した取り組
月観光庁の認定を受け、九州観光推進機構が
進める「温泉アイランド九州
これまで行ってきた地道な準備や小さな取
り組みの一つひとつが、今、成果として少し
度およびニーズに即した誘客を行っている
欧米をはじめとする海外メディアから注目
が高まっている中、この機を逃すことなく、
みが加速しつつある。
年6
平和都市としての知名度を生かし、観光都市
が、単独で売り込むのではなく、平成
広域観光周遊
の多様な魅力を世界中に発信し
NAGASAKI
11
ルート(
)
」と連携したルート
Relax
&
Rejoice
提案や、世界遺産
(候補)
を切り口に近隣自治
体との連携強化に努めている。
韓 国、 台 湾、 香 港、 タ イ、 シ ン ガ ポ ー ル
の旅行社とタイアップしたプロモーション
やメディアを活用した情報発信も実を結び
年度に支援した若手人気俳優が
宿 泊 者 数 も 伸 び て い る。 特 に タ イ に お い て
は、 平 成
出演する軍艦島を舞台にしたホラー映画
「 Hashima Project
」によるPR効果が継続す
る と と も に、 平 成 年 度 に 人 気 ポ ッ プ バ ン
功 を 奏 し、 タ イ 人 の 延 宿 泊 者 数 は、 前 年 の
2・5倍に増加した。
平 成 年 度 は、「 明 治 日 本 の 産 業 革 命 遺
産 」 の 世 界 文 化 遺 産 登 録 を 機 に、 軍 艦 島 4
Kプ ロ モ ー シ ョ ン 映 像 製 作 と ド イ ツ・ フ ラ
タイポップバンドLa ONG FONGプロモーションビデオ(眼鏡橋)
27
ド La ONG FONG
(ラ・オン・フォン)を観
光大使に任命して行ったプロモーションが
26
ンスにおけるメディア向けPRを実施し
75
25
27
う お ぬ ま
魚沼産コシヒカリが象徴する魚沼地域の
「食」に関するブランド力は全国区レベルだ。
もなっている。
地域資源活用を推進力に
新たなステップへ
財政改善に努めた新市発足後の 年
年 に 民 間 調 査 会 社・
ブランド総合研究所が実施した「食」に関す
特 に 魚 沼 市 は、 平 成
平成の大合併では広大な面積を有する都
市 が い く つ も 誕 生 し た。 新 潟 県 北 魚 沼 郡 の
る《地域ブランド調査》によれば、「地元産の
食材が豊富と思われる市町村」部門で全国2
思われる市町村」部門で全国1位にそれぞれ
門で全国9位、「農林水産業が盛んなまちと
2代市長就任・2期目)は、今後の市政運営
ある大平悦子・魚沼市長(平成
タ ー ト に 当 た り、 新 潟 県 初 の 女 性 首 長 で も
位、「食事がおいしいと思われる市町村」部
ラ ン ク イ ン。 全 市 町 村 中 の 総 合 ト ッ プ・ 函
に つ い て、 将 来 に 目 を 向 け た 方 向 へ と 舵 を
月に第
館 市 に 次 い で、 魚 沼 市 お よ び 魚 沼 地 域 の 総
切 る 旨 の 所 信 表 明 を 行 っ た。 そ の 重 点 施 策
録 す る 世 界 有 数 の 豪 雪 都 市( 特 別 豪 雪 地 帯 )
20
12
周 年 の 節 目 を 迎 え た。
ていた各種の課題も合併時にそのまま合算
「魚沼市はご承知のように地域資源の非常
に 豊 富 な ま ち で す が、 旧 6 町 村 時 代 に 抱 え
ある。
は「人口減少問題への対策」
「地域資源を活用
年
広さだ。
合的な好感度の高さが改めて証明された。
した産業おこし」
「第一次総合計画の仕上げ」
位に相当する
市域の %が森林地帯に覆われた魚沼市
は、 毎 年 の よ う に 2 m か ら 3 m の 積 雪 を 記
さらに市域の一部が尾瀬国立公園や越後三
山只見国定公園の域内にあるように、美しい
「将来に向けたまちづくりの推進」の4点で
㎢は全国813市区中の第
で も あ る。 豪 雪 は さ ま ざ ま な 弊 害 を も た ら
景観も魚沼市の重要な地域資源といえる。
月に市制
す 半 面、 豊 か な 伏 流 水 を は ぐ く ん で く れ る。
年
豊富で清冽な水の恵みは文字通りの天然資
大平悦子
魚沼市長
このように優れた地域資源の数々を擁し
て ス タ ー ト し た 新 設 合 併 市・ 魚 沼 市 は、 平
おおだいらえつこ
年度のス
年目となる平成
10
の 代 表 的 な 事 例 の 一 つ で、 面 積 9 4 6・
25
源 で、 コ シ ヒ カ リ を は じ め と す る 農 産 物 や
月 に 発 足 し た 新 設 合 併 市・ 魚 沼 市 も そ
神村、守門村、入広瀬村)が合併し、平成
旧6町村(小出町、堀之内町、湯之谷村、広
10
成
年
16
山里の恵みなど、高品質で知られる「魚沼ブ
そして市制
27
11
25
ランドの食(食材・食品類)」を生み出す源と
11
26
85
76
11
魚沼市
ポ
ル
政
市
(新潟県)
32
FEBRUARY 2016 市政
は、震災復興からのスタートとなってしまっ
前 に は 新 潟 県 中 越 地 震 が 発 生。 新 市 の 船 出
問 題 を 抱 え て い ま し た。 さ ら に 合 併 1 週 間
さ れ、 特 に ス タ ー ト 当 初 は 財 政 的 に 大 き な
魚 沼 市 の 財 政 改 善 状 況 の 進 ち ょ く 度 は、
例えば新市スタート翌年に当たる平成 年
のです」(大平市長)
題解決への意気込みとともに示したものな
る 状 況 に な っ た と い う こ と を、 具 体 的 な 課
% が、 合 併
た の で す。 し か し、 職 員 一 丸 に よ る 努 力 の
・
度の実質公債費比率
9
年
年度には9・9%に低下している
26
化は着実に進んで
行政運営のスリム
な 取 り 組 み に よ り、
革も含めた多角的
どの痛みを伴う改
にせよ、人員削減な
の伸び悩みはある
化などによる税収
年々進む人口減
や、事業所進出の鈍
ことなどからもうかがえる。
目の平成
積 み 重 ね で、 何 と か 市 政 運 営 を 切 り 盛 り し、
年
将来に目を向けたまちづくりを意識するこ
と が で き る よ う に も な り ま し た。 平 成
度の所信表明で挙げた4つの重
年間で
点 施 策 は、 最 大 の 懸 案 だ っ た 財
政 問 題 に つ い て、 こ の
27
21
いるといえる。
対照的な展開の庁舎再編と医療再編
行政運営のスリム化は、やはり合併以来の
懸案となっている市庁舎の統合・再編問題が
解決すれば、より一層進むものと思われる
(魚
市政 FEBRUARY 2016
33
11月からはじまる雪囲いは冬の風物詩
(小出庁舎)
玄関がかさ上げされた豪雪地帯ならではの住宅様式
(高床式住宅)
それなりの成果を挙げることが
で き、 よ う や く 少 し は 夢 を 語 れ
保存した雪3万tを活用する「うおぬま夏の雪まつり」
(大湯・銀山平)
10 17
黄金色に輝く稲穂と純白な魚沼産コシヒカリのおにぎり
10
沼市の市庁舎は現在、実質的に旧6町村時代
を前提とする統合・再編は時期尚早として、
大平市長は新市のスタート当初、魚沼市議
会議員を務めており、
「庁舎の即時的な建設
が、耐震問題への対応などもあり、それは無
する形での一本化を図れれば一番いいのです
私は考えています。本当は既存の施設を活用
舎の統合・再編は行うべき時期に来ていると
開を待つしかないが、もう一つの重要な懸案
新市スタート当初からの懸案の一つだった
市庁舎の統合・再編問題は、さらに今後の展
になっている。
庁舎の建設予定地も数カ所選定し、後は
事項だった医療再編については、全国的に見
年が経過した現
魚沼地域(魚沼市・南魚沼市・十日町市・
小 千 谷 市・ 津 南 町・ 湯 沢 町 ) の 医 療 再 編 は、
年)の定例会に議案として提出してい
可決されれば、すぐにでも動き出せる状態な
魚沼市・南魚沼市の市町村合併などによる地
る『魚沼市役所の位置を定める条例』の制定が
のです。しかし、この件につきましては各地
域再編の動きと併せて、新潟県および関係市
進められてきた。
域間の調整を含めて、今もさまざまな立場や
なところですね」(大平市長)
町の協働(連携・協力)によって計画立案され、
市をはじめとする魚沼地域で進みつつある。
理だということも分かりました。そのため本
掛かるなど、不合理な局面が随所に現れつつ
平成 年 月初頭の取材時に大平市長はこ
のように語っていたが、その後、同年 月の
年1月現在も、継続審査事項のまま
定例会では可決されず、この稿を作成してい
あるという。
ゴール後に地元産のスイカと魚沼産コシヒカリのおにぎりが待つ真
夏の人気イベント「枝折峠ヒルクライム」
(毎年8月開催)
る平成
12
「ほかに克服すべき懸案が多かった合併当
時と違い、今やいろいろな意味において、庁
12
当時は反対を表明する立場にあった」と語る。
の庁舎に機能が分散、本庁舎の建設と機能の
27
28
意見があり、なかなか難しいというのが正直
(平成
12
統合・集約化が大きな課題になっている)
。
食べ物付き情報誌として各地で人気の「食べる通信」の魚沼版「魚沼
食べる通信」
(平成27年11月〜)
ても稀なほどのダイナミックな改革が、魚沼
旧県立小出病院のプライマリケアを引き継いだ魚沼市立小出病院
月
しかし、魚沼市になって約
在、財政改善が進み、職員や市民の一体化も
年間の市政の積み重ねを経て、市
かなり進展するなど、事情は大きく変わりつ
つある。
庁舎方式をさらに続ける意味はほとんどな
分も
い。例えば会議一つ招集するにも、遠方の庁
舎から本庁舎
(小出庁舎)
まで車で片道
30
27
10
役所業務もより高度化・複雑化しており、分
10
34
FEBRUARY 2016 市政
るために、新潟県および関係各市町は地元医
足がより顕著だった。こうした状況を打破す
は少子高齢化が急速に進む魚沼地域の医師不
もともと新潟県は 都道府県のうち医師不
足がかなり目立つ地域とされ、さらに県内で
育の場として機能するものだが、同時に魚沼
に研修医や医療スタッフが集う地域医療の教
センターも併設された。同教育センターは主
字通りの基幹病院で、新潟大学地域医療教育
を有し、地域の三次救急と高度医療を担う文
を核にして、地域の医療機関と連携する病診
院が担う役割分担がありました。さらに両者
種の高度医療をやはり新設された魚沼基幹病
新設された魚沼市立小出病院が引き継ぎ、各
ち、主に地域医療(プライマリケア)の部門を
た新潟県立小出病院が担っていた機能のう
年には「魚沼基幹病院基本計画」を策
医療再編後の地域医療圏におけるマグネッ
トホスピタルとしての役割を果たす魚沼基幹
床)が、そして平成
年
月には南魚沼
11
之内病院(魚沼市、
床)など旧来の公立病院
和病院(南魚沼市、239床)、内科専門の堀
病院も次々に開業した。さらに、ゆきぐに大
市民病院(140床)が開院するなど公立総合
27
る)が指定管理者として実施している。
会など各関連団体や機関の代表が理事を務め
新潟県・新潟大学・北里大学・小千谷市医師
た一般財団法人・魚沼市医療公社(魚沼市・
ちなみに魚沼市内に立地する公立病院の運
営はすべて、今回の医療再編に伴い設立され
備も着々と浸透し始めている。
群と地域の診療所群による病診連携体制の整
も再整備された。付随して魚沼地域内の病院
50
また医療再編の課題の一つ「周産期医療の構
築」については、魚沼基幹病院をセンターに、
動きが今後期待されてきます」(大平市長)
療水準の向上や、医師不足の解消に向けての
圏の再構築がなされました。このような体制
ると、大きくは魚沼市に以前から立地してい
師会、地域の各医療機関、新潟大学および北
地域の医師不足を補うための交流サロン的な
連携体制の構築および周辺地区も含めた医療
平成
年6月1日に開業。454床
里大学保健衛生専門学院などと手を携え、平
役割も期待されているようだ。
が魚沼地域全体に及ぶことで、地域全体の医
年度地域医療再生基金を活用し
27
134床になる予定)と南魚沼市立六日町病
定。 平 成
病院は、平成
成 年に「地域の医療高度化の基本方針」を、
魚沼基幹病院の開業と同日に、魚沼市立小
出 病 院( 床、 今 後、 療 養 病 棟 と 合 わ せ て
47
て、魚沼基幹病院(管轄は新潟県、南魚沼市
24
院(
日本のミケランジェロと称される石川雲蝶が制作した欄間
(永林寺)
17
23
に立地)
の整備をまず開始したのだった。
90
健康増進・病気予防にも
資する
「食まち」
発信
市政 FEBRUARY 2016
35
20
「今回の医療再編を魚沼市の側の視点で見
1797年に建築された豪農の館
「旧目黒邸」
(国指定重文)
ポ
ル
政
市
魚沼市 (新潟県)
使い勝手のいい公立病院の在り方をさまざま
さらに市立小出病院では開業以来、毎週木
曜日を
「夕暮れ診療の日」
として、通常 時ま
心感を与えることのできる体制が整った。
出産を計画する地元出身の子育て世代にも安
取ることで、市内在住の子育て世代や里帰り
魚沼市立小出病院でも外来診療ができる形を
気」
をもたらす体制づくりへの試みである。
な意味でのにぎわい
(活性化)を、つまりは「元
質な食の提供を通じて地域に健康といろいろ
まち うおぬま」(正式名称は
『魚沼市の食でつ
ながる元気なまちづくり』
)事業の計画は、良
くりともいえるが、魚沼の
「食」
を発信する
「食
このようにして着々と進む医療再編は地域
に暮らす人々に大きな安心をもたらす体制づ
ないだろうか。
に大別できます」(大平市長)
光等の振興》《食のイベントの実施・情報発信》
の定着》《魚沼ブランドの拡充》《体験交流型観
内容は《食育による健康なまちづくり》
《生産
の設置から始まりましたが、取り組みの主な
る元気なまちづくり)の計画づくりは平成
オール魚沼体制で行われつつあるところに、
りあげていく」
( 大 平 市 長 ) た め の 努 力 が、
流活動を通じて、
「みんなで地域医療をつく
とともに常に地域への情報発信や積極的な交
能を再編するだけでなく、施設の拡充・再編
う代表的な事例になることが予測される。
および「将来に向けたまちづくりの推進」を担
当たるとしたら、
「食まち うおぬま」事業は
近い将来、
「地域資源を活用した産業おこし」
策」
のうち「第一次総合計画の仕上げ」
の一環に
用の場の拡大、観光振興などを図り、総合的
える。併せて食を通じた市民の健康増進、雇
る「魚沼の食」のさらなる発信を行うものとい
が、「食まち うおぬま」はそれらの個々の動
きをオーガナイズし、統一したイメージによ
間企業などによる個々の発信は既に盛んだ
ルで非常に高い。魚沼ブランドを活用した民
者と消費者のマッチング、地産地消システム
年4月の『魚沼市食のまちづくり推進チーム』
26
「『食まち うおぬま』(魚沼市の食でつなが
の医療教室などもその一環だが、単に医療機
時まで延長するなど、より
17
魚沼地域医療再編の大きな特質があるのでは
11
での診療時間を
に模索している。例えば不定期的に実施され
1月〜 2月には雪室は雪でいっぱいに
前述したように、魚沼市および魚沼地域の
「食」に関するブランドイメージは全国区レベ
1500tの雪が入るJA北魚沼の利雪型米穀低温貯蔵施設(写真は平成
27年12月現在。この写真に写っている雪は平成27年2月の雪)
ている、小出病院院長による地域住民が対象
酒造会社(玉川酒造)の雪室
市庁舎の統合・再編や医療再編が、市制
年目(平成 年度以降)から始まった「重点施
雪の冷風が送られるJA北魚沼の低温貯蔵庫
27
19
36
FEBRUARY 2016 市政
でもある。
な観点からの
「元気」
を醸成しようとする試み
ていく可能性を感じさせる話であり、
「食まち
うおぬま」の今後の展開や地産食材の六次産
による「魚沼メイド」の食品が大規模に流通し
う。近い将来、全国区レベルの食品加工業者
続く食品関連会社の誘致を強化していくとい
興、にぎわいの創出などを通じて、いつか人
実を結んでいけば、雇用の場の拡大、観光振
「地域資源を活用した産業おこし」が少しずつ
る豊かな水や食材、雪そのものをも利用する
も地域資源の一つととらえ、そこから生まれ
長)ともなっているのは否めない。だが豪雪
将来に目を向けた
まちづくりの芽吹き
業化などとの相乗効果がとても楽しみだ。
だろうか。
手の「テーブルマーク(株)
」が早速進出したこ
い工業団地「水の郷工業団地」があり、食品大
魚沼基幹病院と水無川を挟んで立地する新し
な取り組み開始はこれからだが、魚沼市には
月に雪室に貯蔵した雪(約1500t)をコシ
設を見学させていただいた。毎年1月から2
取材ではJA北魚沼の利雪型米穀低温貯蔵施
業が雪冷熱エネルギーの活用事業だ。今回の
特質を生かしたものが多い。その典型的な事
ら始まった「『ふるさと力』を生かした学校づ
ニティ力」が自然に培われてきた。2年前か
してきたからこその「絆を大切にするコミュ
し て 含 ま れ る な ど、 厳 し い 自 然 環 境 に 暮 ら
ま た、 魚 沼 市 の 地 域 包 括 ケ ア に は 高 齢 者
や病弱者宅の雪下ろし支援も当然のことと
口減少化の抑止力ともなっていくのではない
魚沼市の重点施策「地域資源を活用した産
業おこし」には、ほかにも魚沼市ならではの
とで話題になった。水無川と魚野川の合流部
ヒカリの低温貯蔵に活用している。環境に優
きずな
にも近いこの地区はとりわけ伏流水が豊富な
度〜
くり」も、魚沼市の多彩な自然環境や伝統芸
奥只見湖から船で向かう
「魚沼から行く尾瀬」
(毎年6月開通式)
しい自然の冷気(雪冷房)が広大な低温貯蔵庫
「食まち うおぬま」事業(事業実施期間は
平成 年度〜 年度までの 年間)の具体的
10
場所で、魚沼市では今後、テーブルマークに
37
能・ 文 化 な ど を 活 用 し た、 独 自 の 次 世 代 育
28
度に保ち、食味品質
の室温を5度、
年目に始まっ
た 魚 沼 市 の「 将 来 に 目 を 向 け た ま ち づ く り 」
成(人づくり)施策だ。市制
な魚沼産コシヒカリが、このような貯蔵法を
存続が危ぶまれる只見線を盛り上げるため、魚沼市
では
「只見線に手を振ろう条例」
を策定
月1日)
の芽吹きは、こんなところにも感じ取れる。
年
取ることでより一層の食味向上が得られると
%も削減されることが分かってい
豪雪地帯であるがゆえのこうした自
然 環 境 は、「 一 方 で 魚 沼 地 域 の 止 ま ら
用されている。
然クーラーなど、さまざまな場所で活
あるユリの芽伸ばし調整、住宅用の天
社の大吟醸酒保存用倉庫や、特産品で
る。雪室を活用した低温貯蔵は酒造会
が
を 使 用 し た 低 温 倉 庫 な ど に 比 べC O 2
(取材・文 遠藤 隆/取材日 平成
ごとに区分保管する施設だ。もともと高品質
15
いう。また省エネルギーの観点からも、電気
11
13
ない人口減少化の要因の一つ」
(大平市
市政 FEBRUARY 2016
37
76
27
12
ポ
ル
政
市
魚沼市 (新潟県)
オーストリア
はじめに
地 方 自 治 体の経 営
│ イ タ リア・オ ースト リア│
みしま
日まで半年間にわたって開
知見と示唆を得ることができました。
に貢献すること等、また、サブメッセージは、
ン・メッセージは、「日本食」や「日本食文化」
に囲まれた美しい日本館を訪問。加藤館長に
私は、図らずも団長を仰せつかりました。
それらしき働きはできませんでしたが、団員
「いただきます」
「ごちそうさま」
「もったいな
平成 年 月 日から 日まで、私たち
名の海外行政調査団は、ミラノ万博と農業、
各位のご協力をいただく中で無事帰国するこ
い」
「おすそわけ」の日本精神が世界を救うと
「農と食、食文化」に関するダイバーシティの
景、スマートフォンにダウンロードして見る
マッピングを使い日本の美しい四季と農村風
を 表 現 す る た め、 最 新 の プ ロ ジ ェ ク シ ョ ン
いうものでした。館内では、このメッセージ
に込められた知恵や技が人類共通の課題解決
とができ、心から感謝いたしております。以
下、行政調査の概要をご報告します。
イタリアにて
(1)
ミラノ国際博覧会
した。
と よ お か た
け
豊岡武士
し
食に関するパフォーマンス等が行われていま
滝、レストランスタイルのダイニングでは和
全国市長会欧州都市行政調査団 団長 三島市長(静岡県)
月
広 い 会 場、 多 く の 国 等 の パ ビ リ オ ン に よ
り、「地球に食糧を、生命にエネルギーを」を
テーマに、
31
催されたミラノ国際博覧会の中の立体木格子
10
お目にかかり、概要を伺いました。日本館の
13
エネルギー、まちづくりを学ぶべくイタリア
25
人気は大変高く、6〜7時間待ちとのこと。
18
とオーストリアの都市を訪問し、これからの
10
日本館のテーマは「共存する多様性」。メイ
イタリア
地方自治体の経営に当って貴重かつ有意義な
27
ギュッシング市
グラーツ市
トリノ県
ミラノ
ピネロロ地区
カルマニョーラ市
ミラノ博会場 日本館前
38
FEBRUARY 2016 市政
海外都市行政調査団報告
ついて大きなヒントを得ることができました。
る「食」によるおもてなしや、農産物の輸出に
わが国の各地域において外国人観光客に対す
*東京オリンピック、パラリンピックに向け、
(副市長)から、「FIATの工場撤退が契機
調査しました。医師である女性市長と評議員
長い歴史を持つカルマニョーラ市を訪問。
農業政策、イベント、ツーリズム(観光)等を
(3)カルマニョーラ市
なければならなかった。改革に着手したのは
最も貧しい地域となってしまい、まちを変え
ングと言われているが、元は産業もなく出稼
年間市長を務めたバダッシュ氏とエンジニ
ぎのまち。1988年には、オーストリアで
(2)
トリノ県ピネロロ地区
農家ほどブランド化が必要、ニッチもの、こ
の農作物を生産している地区であり、小さい
品目
ティングに関する調査をしました。県のコー
食の博物館を訪問。館内の料理教室等を見
学しながら、地域農業のブランド化とマーケ
は、「 出 荷 す る 農 産 物 に メ イ ド・ イ ン・ カ ル
に発信している」こと。また、ブランド化で
リアを代表するバラエティ豊かな食品を世界
わけ温室を使った農業が地域一となり、イタ
チーズ、牛肉、野菜等のブランド化や、とり
みが開始された。今では、主な特産品である
となり、この地域では農業の本格的な取り組
年に、小さな設備で木片を燃やし地域暖房を
していることが分かった。そこで、1996
やされるものが多く、この支出が市外へ流出
民の支出は、灯油、電気等のエネルギーに費
はないかと考え現状を分析した。すると、住
このまちが、どこかで発展方法を誤ったので
占め、晴れの日が300日という資源のある
アのコッホ氏。彼らは、市域の
%を森林が
こでしかできないものを守るEUの法律があ
マニョーラのシールを貼っている、一方、イ
始めた。当初、この取り組みは笑われ、電気
行っている」
等の説明を受けました。
ディネーターから「300戸の農家が
る、また、行政はマーケティングの手助けを
ベントとプロモーションでは、多くの農業ま
会 社 は 反 対、 市 民 か ら も 疑 問 視 さ れ て い た
25
つりの実施や、ウェブサイトを立ち上げたほ
のハウスを
か、アグリツーリズムを実施している」等の
説明を受けました。その後、4
持つパプリカ農場、ピクルス等の6次化に取
り組む農家等を視察しました。
*これらの取り組みは、TPP問題がのしか
かるわが国の地域農業の今後の発展方向に
とって示唆に富むものでありました。
オーストリアにて
(1)ギュッシング市
オーストリアの最東部、ハンガリーと国境
を接するギュッシング市を訪問。ここでは、
市政 FEBRUARY 2016
39
バイオマスエネルギーの活用を調査しまし
た。 市 長 か ら、「 今 で こ そ モ デ ル・ ギ ュ ッ シ
太陽光温水器と木質ボイラーの熱供給施設(ウアバウスドルフ村)
ha
40
カルマニョーラ市訪問(左から藤井・取手市長、須藤・富士宮市長、筆者、カルマニョー
ラ市長および農業担当職員、豊田・北茨城市長、吉村・備前市長、小田木・高萩市長、
鈴木・行方市長)
50
海外都市行政調査団報告
草等を原料にバイオ発電を開始。現在では、
協力が得られ始め、2001年には牧草、雑
が、このモデルでお金が残ることが分かり、
ン ト 等 に つ い て、 ま た、「 今 後 は、 特 に 水 素
長 か ら、 研 究 概 要 や 多 く の バ イ オ マ ス プ ラ
を 訪 問。 シ ュ ト レ ー ム 市 長 で も あ る 研 究 所
エネルギーヨーロピアンセンター(研究所)」
考となるものでした。
水素利用への転換を予測させ、その推進の参
交通の在り方、また、エネルギーの電気利用、
ざんさ
鶏糞、食品残渣等も加え、牛糞由来の醗酵菌
の生産に向かっていく」との説明を受け、そ
ま ち は、 緑 の ド ロ ッ プ 球 を シ ン ボ ル と し て
ここでは都市行政調査の概要のみの報告で
すが、私たち、地方自治体の、今後取り組む
おわりに
を使ってメタンを生産し、バイオガスとして
社の企業が立地し、1100人以上の雇用が
いました。
べき課題について、多くの事を学ぶことがで
の 後、 数 カ 所 の バ イ オ マ ス 発 電 所 等 を 視 察。
創出され貧乏を感じなくなった」等の説明を
*これらの取り組みはわが国のエネルギー確
車のエネルギー等に使用している。また、
受けました。
きました。なお、現在のEUは難民問題とテ
あることも垣間見ました。一日も早く平穏な
保に当って早急に研究検討すべきものと思わ
るプラスチック類をバイオエネルギーに変換
日々が訪れることを願って止みません。
ロの恐怖により、都市は極めて難しい状況に
するプラント建設をこの研究所の指導で行っ
れ、既に長崎県対馬市では、対岸から漂着す
ているとのことでした。
は
万 人 で あ る が、
万人がいるまち」、ま
50
*これらの取り組みは、わが国における公共
乗車体験をしました。
促 進 を し て い る 」 等 の 説 明 を 受 け、 そ の 後、
乗 り 入 れ が 厳 し い こ と か ら、 L R T の 利 用
が 世 界 遺 産 で 構 成 さ れ、 道 路 が 狭 隘 で 車 の
きょうあい
た、「国内で電気自動車が最も多く、市街地
20
1 億 7 0 0 万 人 の 利 用 が さ れ て い る。 住 民
2 8 0 0 人 が 働 い て い る。 交 通 部 門 で は、
た。 現 在、 エ ナ ジ ー・ 空 港・ 上 下 水 道 等 で
ビ ス 業 は ホ ー ル デ ィ ン グ・ グ ラ ー ツ に 入 っ
「2011年グラーツ市役所のすべてのサー
問。 交 通 施 策 を 調 査 し ま し た。 幹 部 か ら
持続可能なまちづくりを推進するオース
トリア第2の都市グラーツ市の交通局を訪
(2)グラーツ市
結びに、団員各位をはじめ、関係の皆さま
に大変お世話になり厚くお礼申し上げます。
続いて、2009年に発足した「再生可能
50
バイオマス発電所(ギュッシング市)
緑のドロップ球を模ったギュッシング市のシンボル
ギュッシング市長と筆者
40
FEBRUARY 2016 市政
ふるさと信濃大町に暮らす
北アルプス一番街
はじめに
町市は長野県の北西部、北アルプスの
ふ大
もと
麓に広がる高原の街です。標高3180m
案 内 者 組 合 が 創 設 さ れ て い ま す。 現 在 は、
もあり、また、大正6年には日本初の登山
ま す。 特 に 家 の 窓 か ら 仰 ぎ
に日々感動を新たにしてい
前 に 帰 郷 し、 大 町 の 美 し さ
市街地越しに見る北アルプスの峰々
山祭慎太郎祭は、後立山の開拓者故百瀬慎
行く幸運もあります。毎年6月第1週の開
はできませんが、まれに仕事がらみで山に
暇の時間が少ない今は、なかなか登ること
て就職してからも山に登ってきました。余
答えます。中学に始まり、高校大学、そし
慢にもなりません。高校時代に国体に出場
ポーツのメッカ信州ではこれしきの腕は自
み 1 級 は 取 得 し ま し た。 し か し、 冬 季 ス
どではありませんが、小さいころから親し
キーは板を履いて生まれてきた、というほ
道、 ソ フ ト ボ ー ル に 勤 し ん で い ま す。 ス
私 は4趣4味 が 多 い 方 で、 読 書 や 日 曜 大 工、
日曜土木のほか、スポーツではスキー、弓
はかま
し た 弓 道 は、 今 は 年 に 数 回 稽 古 す る に 留
チームが盛んに覇を競い合っていて、私も
42
FEBRUARY 2016 市政
語 る と き、 こ の ふ る さ と の
大自然に触れない訳にはい
きません。
黒部ダム、立山黒部アルペンルートの玄関
見 る、 四 季 折 々 の ア ル プ ス
大学進学で故郷を離れ長
野県庁での勤務を経て 年
口として年間300万人ものお客さまを迎
の 秀 麗 な 姿 は、 は っ と 息 を
の名峰槍ヶ岳をはじめ、日本百名山が4座
える国際山岳観光地です。
し
の山行で北アルプスの最奥を烏帽子岳まで
ぼ
をまとった峰々が深紅の朝焼けに染まるモ
縦走する至福の時を過ごしました。
え
市立大町山岳博物館は、特別天然記念物
ライチョウ、カモシカの飼育研究や、鹿島
ルゲンロートは、早起きした時にだけ出会
太郎の名を冠していますが、翁は「山を想
まっていますが、幸い袴を逆さまに着けた
の む ほ ど で、 冬、 純 白 の 雪
槍ヶ岳カクネ里雪渓の氷河の学術調査で知
える絶景です。
ひ
られており、豊かな自然に惹かれ、子育て
えば人恋し 人を想えば山恋し」で歌人と
しても知られています。安全祈願の式典が
り、隣の的を射抜くようなことは今のとこ
しんたろさい
終わると、私も針ノ木岳の大雪渓を登り詰
ろありません。
けいこ
め、 雪 が た っ ぷ り 残 る 春 山 を 楽 し み ま す。
蓮華岳で山岳サミットが開催され、3日間
れんげ
の 呼 び 掛 け で、 市 域 の 境 に 鎮 座 す る 三 俣
みつまた
6年前にはお隣の富山市 森雅志市長さん
気持良い汗を流す
中の若い世代の移住も目立ちます。自分を
こうした環境ですから、周囲には山好き
が多く、私も趣味はと問われれば山登りと
10
現在一番身近なのはソフトボールで、市
内では地域ごとにリーグが結成され、約
烏帽子岳(2628m)を背に至福のひと時の筆者
40
牛越 徹
大町市長
(長野県)
とおる
うしこし
おおまち
Toru Ushikoshi
場しています。もちろん試合前の準備運動
地区のチームに所属して都合の許す限り出
良いのかもしれません。
れますが、こうした気分転換が身と心には
激務でストレスが大変でしょうとよく言わ
て努力の跡が目に見えるからです。毎日の
が求められたのです。
チームが実力どおりの力を発揮できる運営
プ競技では番狂わせは許されず、力のある
れます。冬季オリンピックを飾る歴史の現
たちが抱き合って喜ぶ感動の姿が映し出さ
には念を入れてはいますが ・・・
。
長野オリンピックの思い出
今でも長野オリンピックが話題になると
ジャンプの映像が流れ、原田、船木両選手
ーツが盛んで、
本市ではさまざまなスポ
おくはら の ぞ み
バドミントンの世界覇者奥原希望さんや空
うがいみずき
手の世界ジュニア選手権優勝の宇海水稀さ
んは、将来を嘱望されており市を挙げて応
木の雪囲いに汗を流します。玄関先の椿や
染めていて、毎年暮れも押し迫る一日、庭
や、庭木、山野草などの庭いじりにも手を
考えてみますと、私は体を動かすのが好
き な よ う で、 家 の 脇 の 3 坪 農 園 の 手 入 れ
でした。厳冬期の屋外競技で最大の課題は
整えており、残るのは本番の危機管理だけ
ドカップなどで競技や会場の運営は準備を
とができません。大会の前々年からワール
めた白馬ジャンプ会場の日々は、忘れるこ
した6年半の経験で、特に会場責任者を務
て元気の源だと思うのです。
汗し、明日に向かって生きる私たちにとっ
偲べば昔が懐かしいという感慨は、今日に
に、昔のことを想えば人を思い出し、人を
百 瀬 翁 の、 山 を 想 え ば 人 恋 し の 歌 の よ う
ティアの皆さんは生涯忘れえぬ仲間です。
超 え る 競 技 役 員 や 運 営 ス タ ッ フ、 ボ ラ ン
場に立会い、苦楽を共にした1000人を
山茶花は大町の厳しい冬には勝てそうにな
天候で、気象条件だけはどうにもなりませ
これ までの人 生で 最 も 印 象 に 残 るのは、
長野冬季オリンピック組織委員会に勤務
く、 素 人 な が ら 藁 や 縄 を 使 っ て 形 を 整 え、
ん。その上、冬の大会では国内最大となる
援しています。
見よう見まねでも上手にできた年には一人
万9000人もの観客を迎えたジャンプ
構な重労働ですが、意外にやりがいのある
会場の運営は極度の緊張を強いられました。
悦に入っています。また、冬の雪かきも結
マイイベントです。片付けた後が形となっ
時すぎに小康状態になる
渡りの試練となりました。刻一刻と変化す
る天候の下で、
に競技を進め、ようやく
時すぎ、最後の
れ、テストジャンプを繰返し挟みつつ果敢
れる中で2本目を開始。中断を余儀なくさ
はこの時点でなんと4位。天候の回復が遅
ンドを強行したものの、最強の日本チーム
との精密な予報システムを信じて第1ラウ
10
12
船木選手の見事なジャンプで日本が優勝を
ジャンプ会場の仲間たちと(五輪旗の中央付近に筆者)
17
飾り幕を閉じることができました。ジャン
市政 FEBRUARY 2016
43
'98
17
特に2月 日のジャンプ団体戦は、一日
おき5回の競技の中、唯一猛吹雪となり綱
雪囲いに冬が迫る
第
回
15
撫養街道
き
た
ひさし
れており、清らかな水と豊かな緑
である。吉野川の北岸を通るため
整備された「阿波の五街道」の一つ
藩の藩祖である蜂須賀家政により
「うだつの町並み」は、脇城の城
下町として成立し、藍の集散地と
た位置にある。
に面するため舟運の利用にも適し
ま
に囲まれた自然環境に恵まれたま
川北街道とも呼ばれ、現在の徳島
して繁栄したもので、現在は明治
ま
ちである。
県鳴門市から吉野川北岸を西走
時代頃のものを中心として江戸中
み
美馬市長(徳島県) 牧田 久
さらに、歴史的な資源も豊富で、
江戸から明治にかけて藍で栄えた
し、阿波池田を経由して、愛媛県
うだつの町並み
美馬市は、徳島県の西部に位置
しており、市のほぼ中央を東西に
「四国三郎」
の別名を持つ
「吉野川」
当 時 をしのばせる家々が軒 を連
棟の伝統的建造
物が建ち並んでおり、近世・近代
期〜昭和初期の
ある。
・3㎞の街道で
的建造物群保存地区に選定されて
の景観がそのまま残されている。
の川之江までの
が、また、南北には、日本百名山
月に国の重要伝統
ね、昭和
とする日本一の清流
「穴吹川」
が流
いる「うだつの町並み」をはじめ、
吉野川流域を東西に結ぶ四国東
部 の 重 要 な 道 で あ り、 古 来 よ り、
本市の東側に位置する脇町の
「うだつの町並み」は、撫養街道と
讃岐(香川県)への街道が交差する
交通の要衝にあり、さらに吉野川
この町並みの大きな特徴は、町
古都の趣を感じさせる山門がそび
人・物・技術などが盛んに行き来
こおざとはいじ
む や
これらは、撫養街道沿いに位置
しており、こうした街道が地域の
歴史や文化をはぐくみ、人々の営
みに大きな影響を与えている。
「撫養街道」
撫養街道は、江戸時代に、徳島
かつての繁栄を物語る
「うだつの町並み」
え、堂々たる伽藍が建ち並ぶ「寺
85
し、四国の玄関口として栄えた街
67
町」のほか、国指定史跡の「段の塚
12
道である。
63
穴」「郡里廃寺跡」
などがある。
年
の一つに数えられる
「剣山」
を源流
はじめに
豊かな自然と悠久の歴史に培われた
文化が薫る
「まほろば」の道
街道とまちづくり
日 本 百街 道 紀 行
郡里廃寺跡の出土鎧瓦
44
FEBRUARY 2016 市政
象徴となったと考えられている。
強くなり、次第に富や成功の証の
用を要したことから装飾の意味が
的で造られたが、設置に多額の費
り、
「うだつ」
は、当初、防火の目
「うだつ」
が多くみられることであ
家の両端に本瓦葺きで漆喰塗りの
良時代にかけて地元の窯で焼かれ
などあり、これらは白鳳期から奈
出土物として、瓦(素弁蓮華文、
単 弁 蓮 華 文 等 )、 須 恵 器、 青 銅 器
となっている。
寺式伽藍配置であることが明らか
り、塔と金堂を東西に並べた法起
跡、 金 堂 跡 や 寺 域 が 判 明 し て お
ある。これまでの発掘調査で、塔
きたい。
力ある地域づくりに取り組んでい
交流による、共創と協働による魅
れる人」と「迎える地域」の豊かな
今後も、地域資源である多様で
豊かな景観・自然・歴史・文化を
ものである。
り、地域の活性化には欠かせない
や史跡は、本市の貴重な財産であ
しっくい
また、司馬遼太郎著の「街道を
ゆく」
において、
「阿波
(徳島県)
の
たと考えられている。
段の塚穴(四国では最大級の横穴式石室を持つ)
企画協力 全
: 国街道交流会議「街道交流首長会」
て重要な役割を果たしていた。
んでおり、阿波国北部の主要道路とし
ど大小複数の峠道が伸びて各地とを結
撫養街道からは、讃岐国へ抜ける宮
河内越えや日開谷越え、曽江谷越えな
あった。
の渡し場は撫養林崎の1カ所だけで
あった。伊予街道と合流するまでの間
予 国 境 に 至 る、 阿 波 国 の 基 幹 道 路 で
に移ってから、伊予街道と合流して伊
この街道は撫養(鳴門市)から出発
し、州津の渡し(三好市池田町)で南岸
つである。
の鷲の門を起点とした阿波五街道の一
撫 養 街 道 は、 土 佐 街 道、 伊 予 街 道、
讃岐街道、淡路街道とともに、徳島城
阿波藍の交易路 撫養街道
一口メモ
大切に継承し、街道を通じた、
「訪
よさは、ひょっとすると脇町に尽
きるのでは」と「うだつの町並み」
辺には、
また、「郡里廃寺跡」周
ぐんが
郡を治める役所である郡衙を示唆
する地名である「郡里」や交通の要
衝である駅家の存在を示唆する
撫養街道
が紹介されている。
いにしえ
今も息づく古の文化
「駅」「馬次」といった地名が存在し
ている。
「郡里廃寺跡」のすぐ近くには、
いくつもの寺院が建ち並び歴史情
緒にあふれる「寺町」があり、その
寺院の一つである願勝寺の本堂裏
には、南北朝時代に作られた四国
最古級の枯山水の庭園がある。
また、周辺には古墳時代に築か
れた「段の塚穴」といわれる2つの
古墳(太鼓塚古墳、棚塚古墳)もあ
り、古の文化や歴史が身近に楽し
める。
「魅力ある地域づくり」
こうした撫養街道沿いの文化財
市政 FEBRUARY 2016
45
本市の西側の撫養街道沿いに位
置する
「郡里廃寺跡」
は、白鳳時代
に建てられた県内最古の寺院跡で
願勝寺の枯山水(四国では最古級の池泉式枯山水の庭園)
都市交通計画を通してみた
フランスの行政 ❻
推 進 し て き た。 最 初 か ら 完 璧 な 都 市 空 間
歩 行 者 専 用 空 間 を 整 備 し、 自 転 車 利 用 を
力 を 失 っ て い た が、 公 共 交 通 を 導 入 し、
に 伸 び、 都 心 の 商 店 街 は す っ か り そ の 魅
な か っ た。 人 口 が ス プ ロ ー ル 化 し て 郊 外
年前はクルマがなければ何処にも行け
に 素 晴 ら し く 美 し く な っ た。 フ ラ ン ス も
公共交通を導入して都心のにぎわいを
取 り 戻 し た フ ラ ン ス の 地 方 都 市 は、 本 当
はない。これから庭付きの一軒家を求めて
誘導することがコンパクトシティの目的で
るが、決して現在の郊外住民を都心に居住
住居の拡散を避けようとすれば、ある程
度の都市の過密化と高層化の容認につなが
してLRT車輌コストを下げた。
ばディジョンとブレストなどは共同発注
換 を 通 じ て の 経 験 値 の 共 有 が 進 み、 例 え
き た。 そ の た め に、 各 自 治 体 間 の 情 報 交
に応じて改善してゆく」方法を取り入れて
で は な く、「 と り あ え ず 導 入 して みて 現状
ルを数多く想定して「結局何もしない」の
た。 フ ラ ン ス で は 最 初 か ら 失 敗 や ト ラ ブ
が責任を取るのか」というご質問があっ
ズを満たす都市」という意識が益々高まっ
ンパクトに配置されたまちが、市民のニー
能、仕事、学校、消費行動の場所などがコ
置 す る こ と が 必 須 条 件 だ。「 生 活 の 主 要 機
ういったスーパーは公共交通の結節点に位
た と い う 社 会 背 景 も 手 伝 っ て、 ハ イ パ ー
パーの経営に乗り出した。単身所帯が増え
以下のフロアーで住まいに身近な小型スー
チェーンも4年前から、市街地の180㎡
の動きが始まった。郊外型だった大型店舗
いる。つまり市民の方から、都心部回帰へ
都心での住居を求める動きが加速化されて
いフラットなマンション生活」を求めて、
「何でも歩いて出来る便利さ」と「階段のな
ヴァンソン藤井由実
を 目 指 し て き た の で は な く、 要 所 か ら 少
郊外への移動を考える若い世代、地方税や
てきている。「そしてある程度の高層建造物
コンパクトシティとは、
「住みやすいまちづくり」の追求
年 か け て 行 っ て き た。 日 本 か ら
固定資産税を支払い、消費活動が盛んな現
をまちなかに建てれば、都心の余った土地
しづつ
15
一つの共通正解はない
の訪問者にライジングボラードを紹介す
役 人 口 を 都 心 に 引 き 留 め る こ と だ。 ま た、
にグリーンスペースを確保できる」と、環
%の顧客が移った。当然こ
ると(日本国内では新潟市にソフトボラー
フランスでは高齢化に伴い、かつては郊外
境保全にもプラスだと考えられている。
マーケットの
ド が 設 置 さ れ て い る )、「 も し ト ラ ブ ル で
の一軒家に住んでいた市民が、まちなかの
©The Yomiuri Shimbun
ボラードが降りず救急車が入れないと誰
20
30
第6回
海外見聞録
46
FEBRUARY 2016 市政
の生活観と努力による。だからフランスは
快適な都市空間は万人に与えられたチャ
ンスの平等だ。そこでどう生きるかは個人
国策として採用し、また中央政府から天下
性の職場復帰を労働法で保護」等の施策を
支給」「保育所充実等のハード整備」「就労女
て所帯への減税」「子ども手当てなどの現金
会」ではないが、人々はまだ地域の朝市で
単に多くのものが手に入る超便利な消費社
使い方の違いだ)。日本のように「何でも簡
ジできる環境が整っている(これも税金の
お金をかけず新しい活動に楽しくチャレン
ポーツ施設が充実、何歳になってもあまり
結果の平等には日本ほどこだわらない。そ
年代の国有企業のトップも、企業
に ま で 減 少 し た が、 そ の 後、「 子 育
れよりも大学間競争、企業誘致合戦等にお
りした
1・
いて、いかに地域を魅力的にして人を呼び
込むかの工夫を自治体が行っている。
に ま で 回 復 し た。
の重い社会保障負担を共有してきた結果、
地域活動を通じて友人たちとあるいは家族
野菜や果物を求め(地産地消)、さまざまな
統計をみるとよく言われる「移民家族の子
大切にしている(フランスは日曜日は商店
と日曜日にはゆっくりと食事をする習慣を
現 在 で は 出 生 率 は 2・
だくさん」ではなくて、フランス国籍の家
は閉まる)。そこには「スローフード」
「絆」
フランスの地方の
庭に子どもが2人から3人が平均した家族
といった言葉は氾濫しないが、ただシンプ
きずな
像となっている。まちの活性化には子育て
ルな生活の喜びを美しい景観の中で堪能す
25
各地に居住し通訳として活動。2003年からフラ
「日仏異文化研修」を企画。
『トラムとにぎわい
ンス政府労働局公認の社員教育講師として、
の地方都市・ストラスブールのまちづくり』
(2012
年度土木学会出版文化賞受賞・学芸出版社)
、
翻訳監修書『ほんとうのフランスがわかる本』
(在
まちづくりを支えたもの
しかしこういった都市の発展は人口増加
を前提とした住民誘致を目的に行われてい
所帯の存在が不可欠だが、東京の目黒区で
はんらん
る。フランスも1980年代には出生率が
年間のフランスの「快適なまちづくり」を
大阪出身。1980年代より、パリを中心に欧州
追 求 し て き た、 国 や 地 方 政 治 の リ ー ダ ー、
「日仏異文化マネジメント」コンサルタント
に対する社会の温かい目」が最も大切で、
ヴァンソン藤井由実
誰 か が 助 け て く れ る 社 会 の 空 気 と、「 公 共
交通におけるベビーカー利用に関する審議
会」を必要とする人々の意識との差は大き
日フランス大使館推薦書・原書房)
い。しかし、どの国にも増して「他人への
㎞移動し、
交通ブログ www.fujii.fr/blog/
思いやりや配慮」に長けた日本社会。これ
からの展開に期待している。
パリ、東京、ロンドンにも家族で住んだ
が、フランスの地方都市で子ども 人を育
3
てて本当に「住みやすい」と感じた。職住接
近で(フランス人は一日に平均
(VINCENT-FUJII Yumi)
それを支えてきた行政の人たちだと思う。
30
筆者プロフィール
公共交通でベビーカーを押していれば必ず
なった。少子化対策には「子育て中の家族
る姿がある。それを支えてきたのが、この
01
分を費やす)ワークアンドライフバラン
56
スを実現しやすく、また文化イベントやス
市政 FEBRUARY 2016
47
86
80
騒音に対する苦情で、保育園設立が中止に
いつも家族連れや若い人たちでにぎわっている小都市の中心地に整備されている歩行者
専用空間(クリスマス間近のアンジェ市)
都市の
リスクマネジメント
自治体における災害対策の標準化
─アメリカの失敗から学ぶ
中邨 章
に対応できる普遍性の高い制度を考案しよう
げ、各地の自治体が同じような仕組みで災害
害対策は整理されると同時に即応性や実効性
化したマニュアルにまとめると、自治体の災
に変えることを目的にしている。単一の定型
化すると同時に、それを全方位性の高い中身
( All Hazard Approach
)と呼ばれる試みに注
目が集まる。これは自治体の災害対策を簡素
従来の問題を念頭に、現在、いろいろな災
害に単一の方式で臨む「全災害対応型施策」
はほとんど読まれない文書とも言われてきた。
消火活動にほとんど役に立たなかったことを
彼女は各地から災害援助に参集した消防車
の放水ノズルが、自治体によってまちまちで
舞われた。
自宅にも火が及び全焼という不幸な結果に見
当時、この地域に住宅を構えていた。女史の
町のヒル( Hill
)と通称される住宅街で山火事
が発生した。現在、ピッツバーグ大学で危機
にバークレーと呼ばれる大学町がある。この
明治大学名誉教授、日本自治体危機管理学会会長 としている。現在のところ最終報告はまだ出
の高い制度に切り替わる。新しいアプローチ
目撃している。災害対策の非整合性が女史の
災害対策の標準化
ていないが、災害対策の標準化は都道府県や
は、自治体の規模や財力に関係なく浸透する
自 宅 を 全 焼 に 導 い た 最 大 の 原 因 に な っ た が、
月に「災害対策標準化検討会議」を立ち上
ことに決め、その専門家になる道に進んだ。
管理を教えるルイス・コンフォート教授は、
基礎自治体でこの先、重要な課題になる可能
可能性も高い。標準化対策で全災害対応型施
以後、コンフォート氏は危機管理を専攻する
「標準化」
という課題に関心
今、災害対策の
が集まる。内閣府では2013年(平成 年)
性が高い。
策が注目される所以である。
対して、自治体はこれまで地域防災計画など
で災害の種類に応じ個別に対策マニュアルを
応標準化マニュアル( SEMS Guidelines
)を作
成 し、 州 内 各 地 の 自 治 体 に そ の 採 用 を 促 し
1991年の経験をもとに、カリフォルニ
ア州政府は4年後、1995年3月に災害対
災害対策の標準化は、1991年にアメリ
カ・ カ リ フ ォ ル ニ ア 州 で 発 生 し た 山 火 事 を
た。それが以後、アメリカで本格化する災害
標準化の先駆け
─アメリカの試み─
備してきたのが、従来の姿である。その結果、
きっかけにしている。サンフランシスコ郊外
作成してきた。台風への備え、風水害への対
地域防災計画は膨大な資料になった。一部で
策、地震対応など、災害別にマニュアルを準
ゆえん
災害にはさまざまな種類がある。地震、津
波、台風、風水害など多種多様に及ぶ災害に
25
第 70回
10
48
FEBRUARY 2016 市政
Risk Management
対策標準化の節目になった。こうして始まっ
れ、組織はやがて国土安全保障庁の一部に格
準化は、そうした区々とした状況を改め、全
改革である。もう一つ、標準化に関連する項
国で統一のとれた合理性と効果に優れた新し
3つの経験を背景に出現したこの制度は、
アメリカ国内では評判が良くない。分権の国
目に限度がないことに留意しなければならな
下げされた。イメージ回復を企図し、起死回
アメリカでは、イメージダウンの著しいFE
い。災害はさまざまな形を取る。同様に対策
た標準化は、2005年にアメリカ南部、ル
MAの意向を自治体が唯々諾々と承諾するは
の窓口も極めて広い。標準化が多様な施策を
い制度を構築しようとする計画である。
ずがない。そこでFEMAは、自治体に補助
取り込むと、やがて動けない肥満型に仕上が
生の妙手とFEMAが考案したのが、他でも
理庁(FEMA)は同年、
「全米災害対策管理
金を付けNIMSの採択を奨励する施策を
るかも知れない。標準化が対象とする項目は
ないNIMSである。
基準」
(NIMS)と呼ばれる標準化策を作成
取っている。実はこれも期待通りの成果を挙
最小限度に限定することが必要である。それ
イジアナ州を襲ったハリケーン カ
・トリーナ
に よ る 災 害 で 大 き な 転 換 期 を 迎 え た。 こ の
し、それを全米の自治体に普及する対策を始
げていない。理由は、FEMAからの補助金
らの点を含め日本版の災害対策標準化案につ
この試みが成功するためには、いくつか大
きな問題が残る。一つは、首長と職員の意識
めた。
をNIMSの採択ではなく、他の事業に流用
いては、次回、説明する。
(B.A.)
。1973年南カリフォルニア大学大学院政治学部博士
課程卒業。政治学博士(Ph.D.)
。カリフォルニア州立大学講
師、ブルッキングス研究所研究員、カナダ・ビクトリア大学特任
現在、日本自治体危機管理学会会長、自治大学校特任教
教授などを経て、明治大学名誉教授。
授。危機管理関連の著書に『危機発生後の72時間』
『 行政
事件を契機にアメリカ合衆国連邦緊急事態管
NIMSが出現した背景には、3つの理由
が あ っ た。 一 つ は、 被 災 地 の 知 事、 そ れ に
する自治体が絶えないからである。FEMA
1966年カリフォルニア大 学バークレー校 政 治 学 部 卒 業
いいだくだく
ニューオリンズ市の市長の行政能力が不足し
にはルール違反の多発を抑制する力はなく、
1940年大阪生まれ。1963年関西学院大学法学部卒業。
「全米災害対策管理基準」と政治
て い た こ と で あ る。 カ ト リ ー ナ が 襲 来 し た
実効性の乏しい補助金バラマキ機関と揶揄さ
中邨 章(なかむらあきら)
ゆ
際、知事も市長もともに災害対応についてほ
れるのは、そのためである。
日本では各地の自治体は、それぞれ個別に
災害対策に取り組んできた。そのため、対応
日本版災害対策の標準化
と噂された。
う弊害が出てきた。危機管理監という職制を
筆者プロフィール
や
とんど知識がなかった。加えて、共和党系の
知事とニューオリンズの民主党系市長とはそ
りが合わず、確執を深めたことが知られてい
さらに、FEMA自体のイメージダウンが
N I M S の 登 場 を 促 し た と も 噂 さ れ る。
例に取ると、このポストを部長クラスとする
の危機管理システム』などがある。
る。市長は共和党のブッシュ大統領とも不仲
2001年初頭に登場したブッシュ政権は、
自治体がある。それを課長待遇とするところ
は自治体間でバラバラ、内容も千差万別とい
月 日に外敵からテロによる攻撃を受
も多い。部長クラスの危機管理監が、課長レ
同年
けた。この奇襲攻撃にFEMAは早期警報を
混乱が生じる。既に東日本大震災でこれに似
ベルの自治体に派遣されると指揮命令系統に
無 視 し、 ワ ー ル ド ト
・レードセンターの崩落
やペンタゴンの損傷を招いた。結果、FEM
たケースが散見されている。関心を集める標
11
Aは政権から役に立たない機関として批判さ
市政 FEBRUARY 2016
49
9
を語る
に ほ ん ま つ
二本松市(福島県)
1
して明治維新に至りました。
また、二本松城跡は日本さくら
名所100選、日本100名城に
きたいと考えております。
し
ん
の
ひろし
洋
二本松市長 新野
同一個所で城郭が営まれ、その痕
跡が現存する極めて貴重な遺跡で
あることが最大の特色であるた
め、こ の「 歴 史 公 園 」へ の 転 換 は、
二本松城跡を市民一人一人が貴重
な遺跡であることを認識し、自信
を持って全国に紹介できる「たか
らもの」としての意識を大いに育
ま た、現 在「 歴 史 公 園 」へ の 転
換と併せて二本松城跡周辺に二本
てるものと期待しております。
二本松城跡を有する霞ヶ城県立
自然公園には、復元された本丸石
松城や二本松の歴史を紹介できる
歴史公園への転換と
観光拠点づくり
年、世界最大の旅行口コミサイト
垣、箕 輪 門、茶 亭 な ど の 歴 史 的 遺
ような資料の展示、ガイドによる
も 選 ば れ て お り ま す が、平 成
まれた豊かな自然と、奥州二本松
「トリップアドバイザー」の「口コ
構や、江戸時代に作られた安達太
歴史解説、二本松城跡を中心とし
「 あ れ が 阿 多 多 羅 山、あ の 光 る
のが阿武隈川」と智恵子抄にも詠
藩 万700石の城下町として歴
ミで選ぶ 行ってよかった! 日
本 の 城 ラ ン キ ン グ 2 0 1 5」で、
㎞にわたる用水
27
城下町 にほんまつ
観光立市としてブランド力を高め
元気な二本松づくりを進める
わが 市
松市です。
路を巧みに利用し、滝や池を配し
て本市のご当地特産品の販売など
た市全域の観光情報の発信、そし
年)
、織田信長公の下、織田四天王
年( 1 6 4 3
600年目を迎えた国指定史跡で
時 代 に 築 城 さ れ、一 昨 年 で 築 城
おります。城そのものは遠く室町
長聰様からも喜びのお言葉を頂戴
二本松藩主丹羽家第
代当主丹羽
の み で あ り ま す。受 賞 発 表 で は、
森の弘前城がランクインしている
関東以北では二本松城跡のほか青
が二本松城跡の重要性を認識する
来へ継 承 するため、市 民 それぞれ
継いだこの歴 史 遺 産 を 保 護 し、将
ております。今後も、先人から受け
有する景観や樹木が多く継承され
きたいと考えております。
の誘客に波及するよう目指してい
の注目と関心を高め、市内全域へ
を計画しています。これが本市へ
城など全国の名だ
と云われ勇猛で知られた丹羽長秀
したところであります。この素晴
ことができる「歴史公園」への転換
良山麓からの約
た。現存天守
た回遊式庭園、樹齢350年を超
を行い得る機能を有した年間を通
位にランクインしまし
ま ち の シ ン ボ ル 二 本 松 城 跡 は、
霞ヶ城県立自然公園の中に所在し
たる城が選ばれている中、県内で
えるイロハカエデや樹冠幅東西約
しての観光拠点となる施設の整備
万
らしい城跡は本市の宝であり、市
を進めているところであります。
18
20
公の孫に当たる丹羽光重公が
10
も あ り ま す。寛 永
700石で入封し、城内の石垣な
内外に広く情報を発信し、観光交
「観光立市」を目指す本市は、本
さらなる観光交流を
目指して
どの修築を行うとともに城下町整
二本松城跡は中世から近世まで
18
流の本丸としてさらに整備してい
13
備 を 行 い、以 後、丹 羽 氏 の 居 城 と
12
全国第
市民の憩いの場として親しまれて
は唯一のランクインとなり、また
mの傘マツなど、歴史 的 価 値 を
史と伝統を誇るまち、それが二本
10
14
50
FEBRUARY 2016 市政
開されるアフターDCでは「桜と
して本年4月から6月に本県で展
その重点事業として、大型観光
企 画 ふ く し ま D C( ※ )の 後 継 と
高めていきたいと考えております。
を挙 げて取 り 組み、ブランド 力 を
年をインバウンド元年として全力
番組を制作し、4週連続で放送す
台湾の人気タレントが出演する旅
映 像 を 大 型 モ ニ タ ー で 流 す ほ か、
店舗のセブン‐ イレブンで本市の
用するとされる台湾の約5000
市では、1日に約200万人が利
広がっております。これを受け本
る台湾からの誘客を目指す動きが
対策」
「地域の均衡ある発展」
「健
を 策 定 し ま し た の で、
「人口減少
本 松 を 元 気 に! 新 五 ヵ 年 プ ラ ン 」
果 と な り ま し た。ま た 新 た に「 二
り、県内自治体の中でトップの結
観光客入込数は前年比
などの記念事業を行い、期間中の
「二本松!お祭り三昧!大集合!」
主要な4つの祭りを一堂に集めた
ネ ー シ ョ ン キ ャ ン ペ ー ン の 略。地 元 観
※ふくしまDC:ふくしまデスティ
り、元気な二本松づくりに取り組
項として、積極的な事業運営を図
康寿命の延伸」の3つを最重点事
客が、インターネットなどで観光
現在、海外から日本への旅行の
傾向は、団体旅行で来日した観光
ルの所 属 するユニットによるファ
度アップ を 図 る とと もに、ア イド
トのフェイスブックで発信し、知名
◆ 面積 344・ ㎢
◆ 人口
5万7080人
◆ 世帯数 1万9705世帯
〔観光〕安達太良山、日山、羽山、合戦
場のしだれ桜、木幡の大スギ、杉沢の大
スギ、霞ヶ城公園、智恵子の生家、岳温
泉、塩沢温泉、名目津温泉、安 達ヶ原
ふるさと村、二本松市大山忠作美術館
芸 品( 二 本 松 万 古 焼 )
、 家 具( 箪 笥 )、
仏壇・仏具
行う国内最大級の観光キャンペーン。
はじめ全国の旅行会社などと連携して
光 関 係 者 と 自 治 体 が、J R グ ル ー プ を
んでまいります。
いえば二本松市!」をテーマに掲
ることを計画しております。
地を探して個人旅行をする、いわ
ンミ ー テ ィン グ を 本 市 で 開 催 し、
〔 ま ち の 特 徴 〕 西 に「 智 恵 子 抄 」 で 詠
われた安達太良山を擁し、中央の平坦
部を阿武隈川が北流、東部には阿武隈
山系が連なる風光明媚な自然環境に恵
まれたまち
〔 イ ベ ン ト 〕 二 本 松 の 提 灯 祭 り、 二 本
松の菊人形、小浜の紋付祭り、針道の
あばれ山車、木幡の幡祭り、石井の七
福神と田植踊、東和ロードレース大会
※ 面積は国土地理院「全国都道府県市区町村別面積調」に、
人口・世帯数は「住民基本台帳」による。
%増とな
げ、台湾からの新たな誘客に取り
ゆ る「 F I T 」で の 来 日 が 多 い よ
同行ファンを通じて本市の魅力発
プロフィール
組みます。
さらには、制作した映像を「フォ
ロワー」が 万人以上というタレン
う で す。ま た、全 国 的 に 親 日 的 で
信につなげる予定であります。
現在、台湾政府は原発事故に伴
い、酒類を除き福島県産品の輸入
を 停 止 し て お り、誘 客 に 向 け た
〔 市 町 村 合 併 〕 平 成 年 月 1 日、 二
本松市、安達町、岩代町、東和町が合
併して二本松市となる
二本松市
42
24
12
〔特産品〕清酒、ワイン、農産物(きゅ
う り、 ト マ ト )
、 菓 子、 和 紙、 民・ 工
福島市
ハ ー ド ル は 高 い で す が、声 高 に
「 安 心!」と 叫 ぶ よ り も、
「来て良
かった」と思っていただけること
新野 洋
が 最 大 の ア ピ ー ル で あ る と 考 え、
二本松市長
さまざまなことにチャレンジして
いきたいと考えております。
市政 FEBRUARY 2016
51
結びに
10
平成 年は、合併 周年・ふく
しまDC本番の年でした。市内の
27
17
10
来日観光客数が安定的に増えてい
二本松城跡「二本松少年隊群像と箕輪門」
を語る
い
せ
さ
き
伊勢崎市(群馬県)
2
はじめに
伊勢崎市は、平成 年の市町村
合併、平成 年の特例市への移行
「伊勢崎銘
本 市 は、明 治 以 降、
仙」を名産として全国に知られた
織 物 の ま ち で す。現 在 で も、織 物
業を支えた建物や大型養蚕農家群
世界遺産を活用した
まちづくり
い
が
ら
し き よ た か
伊勢崎市長 五十嵐清隆
の中での交流も生まれています。
さらに、田島弥平旧宅をはじめ
とする本市の魅力を多くの方に認
知していただけるよう、田島弥平
旧 宅 P R デ ザ イ ン「 く わ ま る 」を
活用した情報発信を展開していま
す。こ の く わ ま る は、市 の 職 員 が
考案した田島弥平旧宅を応援する
年
月に本市や田島弥平旧宅
ために生まれた桑の妖精です。平
成
をより積極的にPRするためにく
本 市では、世界 遺産 登録を踏ま
え た ま ち づく り を 推 進 す る た め、
田島弥平旧宅のある境島村におい
わまるの着ぐるみを製作し、イベ
が残っており、かつて織物業や養
蚕業が盛んであったことをうかが
て地元の皆さまによるまちづくり
万都市として日々発展を
続けています。群馬県の南東部に
い 知 る こ と が で き ま す。ま た、平
ントなどでのPR活動を展開して
を経て
位置し、前橋市、高崎市、桐生市、
推 進 会 議 を開 催 していま す。この
部には利根川
地で あ り、南
内はほぼ平坦
す。ま た、市
位置していま
主要都市に囲まれ、その中央部に
こうしたことから、平成 年3
月に策定した第2次伊勢崎市総合
が訪れています。
なった建物であり、多くの観光客
に位置する近代養蚕農家の原型と
田島弥平旧宅は、市南部の境島村
「 富 岡 製 糸 場 と 絹 産 業 遺 産 群 」の
旧宅から
もその中の一つであり、田島弥平
地元の皆さまが観光客におもて
なしを行う境島村おもてなし広場
働しながら施策を実施しています。
ジョンに基づいて行 政と市 民が協
まちづくりビジョンを策定し、同ビ
度、内閣府が募集していた地域再
する資産を周遊していただきたい
だけでなく、市内の絹産業に関連
います。
が 流 れ、そ の
計画には、目指すまちの姿となる
ほっと一休みできる空間は、観光
生 計 画 に、本 市 が「 世 界 遺 産 等 歴
年 3月に 境 島 村
支流である広
将来都市像「夢ふくらみ 安心して
客 に も 好 評 を い た だ い て い ま す。
史的資源の活用による地域再生計
会 議では、平 成
瀬 川、粕 川、
暮 ら せ る 元 気 都 市 い せ さ き 」を
また、地元の皆さまが観光客への
27
年
年3
と考えています。そこで平成
田島弥平旧宅へお越しいただい
た観光客には、田島弥平旧宅周辺
市内の関連資産との連携
早 川、韮 川 な
定め、世界遺産を活用したまちづ
画 」を 応 募 し た 結 果、平 成
月に認定を受けました。
50
まざまな地域の方との交流や地域
26
27
mの場所に開設された
どの河川や沼
おもてなしを行うことにより、さ
世界遺産「田島弥平旧宅」
す。
推進しているところです。
くりなど、さまざまな取り組みを
26
池がありま
27
年6月に世界遺産登録された
11
17
成
20
太田市、みどり市といった県内の
27
19
「夢ふくらみ 安心して暮らせる
元気都市 いせさき」を目指して
わが 市
52
FEBRUARY 2016 市政
地域再生法に基づく地域再生計
画の認定制度は、地域が行う地域
持っていただくことが重要である
と 考 え て い ま す。今 後 は、田 島 弥
田 島 弥 平 旧 宅 が あ る 境 島 村 は、
埼玉県の本庄市や深谷市に隣接し
の実現に向けて、魅力ある観光の
て暮らせる 元気都市 いせさき」
第2次伊勢崎市総合計画に定め
た将来都市像「夢ふくらみ 安心し
を 図 る こ と に よ り「 伊 勢 崎 銘 仙 」
有する近隣都市とネットワーク化
世に伝えるとともに、関連資産を
が築いた歴史的・文化的遺産を後
おわりに
支援するもので、地方公共団体は
て い ま す。両 市 に も、田 島 弥 平 旧
振興を図るためには、観光資源が
などの織物や養蚕に関する本市
平旧宅をはじめとする本市の先人
地域再生計画を作成し、内閣総理
宅や絹産業に関連する資産が残っ
活用され、市内外の人の交流など
の魅力の発信に取り組んでまいり
本庄市、深谷市の
関連資産との連携
大臣の認定を受けることで、地域
ていることから、隣接する両市と
により地域活性化が進むこと、そ
再生のための自主的・自立的な取
再生計画に基づく事業に対し特
の連携を図りつつ、観光客の周遊
ます。
り組みを国が総合的かつ効果的に
別な支援を活用できるというもの
して市民に地域への誇りと愛着を
〔 観 光 〕 田 島 弥 平 旧 宅、 伊 勢 崎 市 華 蔵
寺公園遊園地、華蔵寺公園、いせさき
市民のもり公園、いせさき明治館
〔 特 産 品 〕 伊 勢 崎 銘 仙、 焼 き 饅 頭、 も
んじゃ焼き、おっきりこみ、下植木ね
ぎ、きゅうり、なす、ごぼう
性を高める取り組みを進めてい
プロフィール
◆ 面積
139・ ㎢
◆ 人口
万1698人
◆ 世帯数
万4998世帯
〔将来都市像〕夢ふくらみ 安心して暮
らせる 元気都市 いせさき
〔 イ ベ ン ト 〕 い せ さ き 初 市、 い せ さ き
七 夕 ま つ り、 い せ さ き ま つ り、 い せ
さ き 花 火 大 会、 い せ さ き イ ル ミ ネ ー
ション
※ 面積は国土地理院「全国都道府県市区町村別面積調」に、
人口・世帯数は「住民基本台帳」による。
ます。
本庄市 内には、かつて繭や生糸
を貯蔵するために建てられた旧本
今後は、この地域再生計画に基
づく取り組みとして、田島弥平旧
宅の整備を進めるとともに、かつ
す。また、深谷市内には、富岡製糸
庄商業銀行煉瓦倉庫があり、現在、
る境赤レンガ倉庫をまちづくりの
場建設に携わった渋沢栄一の生地
て蚕の繭の集積や保管などで使用
拠点として整備するなど、観光客
や記念館、富岡製糸場初代場長で
耐 震 改 修 工事 が 進められていま
が市内にある関連資産を周遊して
あった 尾 高 惇 忠の生 家 が あ り ま
された東武伊勢崎線境町駅前にあ
いただけるような取り組みを推進
〔まちの特徴〕古くから織物の里とし
て栄え、近年は県内有数の産業都市と
して発展しているまち
1
す。こうした本庄市や深谷市の関
17
していきたいと考えています。
連 資 産については、案 内 所や駐車
場に設置している総合案内板で紹
8 21
〔 市 町 村 合 併 〕 平 成 年 月 日、 伊
勢崎市、佐波郡赤堀町、東村、境町に
よる市町村合併により、新しい伊勢崎
市が誕生
五十嵐清隆
1
伊勢崎市長
介することにより、観光客が周遊
前橋市
しやすくなるようにしています。
今後は、関連資産を有する本庄
市や深谷市との連携をより一層深
めることにより観光客の周遊性を
高め、より多くの方に満足してい
市政 FEBRUARY 2016
53
ただけるよう努めていきたいと考
えています。
伊勢崎市
44
です。
ゆるキャラ“くわまる”を活用したPR活動
を語る
関空のあるまち
関西国際空港に着陸すると、そ
こが私たちのまちです。
万人
泉佐野市は大阪府の南部にあ
り、
「 関 空 」と「 大 阪 で 唯 一 の 温 泉
郷犬鳴山温泉」がある人口
い ず み さ の
泉佐野市(大阪府)
チェンジがある高速道路が3本あ
分で
よ
ま
つ ひ ろ や す
府 初 の 重 要 文 化 的 景 観( 文 化 庁 )
ち
泉佐野市長 千代松大耕
で 修 業 を し て い ま す。ま た、犬 鳴
ら、イ ヌ ナ キ ン も 温 泉 好 き で、常
山は温泉でも有名であることか
行けるなど、交通の利便性にも恵
に選定されました。
「ええもん」
いっぱいのまち
に本市の特産品である泉州タオル
ひねのしょう
を腰に巻いています。
日根荘は、鎌倉時代から戦国時
代にあった荘園で、日根荘遺跡は
ら、臨海部には、関
さ ん 残ってい な が
かしい風 景 がたく
里山に囲まれた美しい景観と懐
り、
「行者の滝」では行者が滝に打
す。全 国 か ら 行 者 が 修 行 に 集 ま
で あ り、真 言 宗 犬 鳴 派 の 本 山 で
ています。犬鳴山は修験道の霊場
の多くが中世の日根荘に由来する
や 水 路、農 地、寺 社 堂 な ど は、そ
地区に現在も存在しているため池
に、本市の山間部に位置する大木
栽培されている歴史があります。
い泉州たまねぎは、明治時代から
評価を受けており、甘くて柔らか
泉州産の水なすは、全国から高い
で、江戸時代から栽培されている
本市には、泉佐野ならではの豊
かな自然の恵みから産まれた「え
西でも有数の観光
たれる姿が見られることもありま
もので、地域の人々が長い歴史の
全国でも数少ない中世荘園の国史
ス ポ ッ ト「 り ん く
す。この滝行を含む修験体験は本
中でその時代や暮らしの変化に合
また、本 市は日 本のタオル産 業
発 祥の地でも あ り、タオルの国 内
犬鳴山は命を懸けて主人を大蛇
から守った義犬の伝説から、そう
う タ ウ ン 」が あ り、
市のふるさと納税のお礼品として
わ せ な が ら 受 け 継 い で き ま し た。
生産量の2分の1を誇っています。
え も ん 」が た く さ ん あ り ま す。特
橋 を 渡ると世 界へ
注目されています。
自然豊かな景観が広がり、歴史的
跡 と し て 寺 社、お 堂、た め 池 な ど
つながる関 空があ
変遷をたどることができる重要な
呼ばれるようになったと伝えられ
る という 近 代 的 な
本市の公式キャラクターである
「一生犬鳴!イヌナキン」は、伝説
に、水 な す、泉 州 た ま ね ぎ が 有 名
エリアもあります。
日 に は、
と も に「 さ の 」の 名 称 で、同 資
本のアウトレットが立地するなど
月
地 域 で、平 成
年
と な っ た 犬 鳴 山 の 義 犬 の 末 裔 で、
まつえい
ア ク セ ス 面 で は、
共 通 点 が 多 い 栃 木 県 佐 野 市 と は、
「 日 根 荘 大 木 の 農 村 景 観 」が 大 阪
カ 所 が 指 定 さ れ て い ま す。特
歴史とともに歩むまち
まれた暮らしやすいまちです。
るほか、電車で大阪 市 内へ
市の公式キャラクター
いっしょうけんめい
超自然的な力を得るために犬鳴山
余りのまちです。
30
市内にインター
10
「一 生犬鳴!イヌナキン」
3
財政健全化団体から脱却した力を
バネに未来へ躍進
わが 市
臨海部に広がる観光スポット「りんくうタウン」
25
10
17
16
54
FEBRUARY 2016 市政
急増に伴い、ホテル不足などが課
い状況でした。私は、任期の4年
した。
月 に「 特 産 品 相 互 取
間で財政健全化団体から脱却する
これからも行政運営の基本的な
考え方として、
「できない」のでは
年
題となっていることもあり、本市
ことを公約とし、平成
平成
扱協定」を締結し、東西「さの」の
が通過都市に陥らないよう、また
年に市長
「 え え も ん 」を 相 互 に P R し て い
きます。
地域への経済波及効果が薄れない
全化のスピードアップを図るた
に就任しました。就任後、財政健
うことからスタートさせ、次なる
な く「 ど う す れ ば で き る か 」と い
年
月議会におい
よ う、平 成
ステップとして「未来に躍進する
います。日本への玄関口である関
バウンド観光の推進に取り組んで
本市は、関西国際空港の玄関都
市としての地の利を生かし、イン
た、観光客の皆さまに本市の魅力
施 設 を 誘 致 し て ま い り ま す。ま
年 4 月 1 日 施 行 )、積 極 的 に 宿 泊
整 備 に 関 す る 条 例 )を 制 定 し( 本
おける滞在促進と受け入れ環境の
脱却という大きな目標を達成しま
をもって財政健全化団体からの
を策定し、そして平成
年度決算
標とした「財政健全化実施プラン」
健全化団体から脱却することを目
まいります。
極的に実行力をもって取り組んで
力を生むまちづくり」の推進に積
会にも負けない、
「ひとが集い、活
泉 佐 野 」を 目 指 し、人 口 減 少 化 社
て、お も て な し 条 例( 泉 佐 野 市 に
西国際空港第2ターミナル国際線
をもっと知っていただくため、日
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51
〔 特 産 品 〕 水 な す、 泉 州 た ま ね ぎ、 タ
〔まちの特徴〕高層ホテルやアウトレッ
ト、関西国際空港という近代的なまち
がある一方、伝統的な風景が残された
まち
〔将来都市像〕賑わいと歴史ある迎都
泉 佐 野 ― ひ と を 育 み ひ と に や さ
しく ―
10 56
25
◆ 面積 ・ ㎢
◆ 人口
万1134人
◆ 世帯数 4万5153世帯
プロフィール
到着口に市のアンテナショップで
曜日、祝日に限り市内観光地を巡
海外の方へのおもてなし環境を今
修験道の霊場として有名な犬鳴山(中央が市長)
〔 イ ベ ン ト 〕 大 井 関 桜 ま つ り、 ま く ら
祭り、夏まつり(ふとん太鼓)
、ゆ祭り、
りんくう花火、泉佐野郷土芸能の集い、
ザ・まつり、秋まつり(だんじり、や
ぐら、担いだんじり)
、泉州 YOSAKOI
ゑぇじゃないか祭り
〔観光〕犬鳴山七宝滝寺、犬鳴山温泉、
国史跡日根荘遺跡、りんくう公園、泉
佐野漁協青空市場、りんくうタウン
オル、泉ダコ、わたりがに
あ る「 関 空 ま ち 処 」を 開 設 し、訪
年
る無料の観光周遊バスを平成
図 っ て き ま し た。し か し な が ら、
後も充実させていきます。
月 か ら 運 行 を 開 始 さ せ る な ど、
国際空港の玄関都市という立地条
件でありながら、訪日外国人客の
未来に躍進するまち
本 市 は、平 成 年 度 の 決 算 で
「連結赤字比率」と「将来負担比率」
の2つの指標が早期健全化基準を
超 え た た め「 財 政 健 全 化 団 体 」と
年2月に「財政健全化計
泉佐野市
なりました。財政健全化法に基づ
き平成
画 」を 策 定 し、 年 間 を 掛 け て 財
12
政健全化団体からの脱却を目指し
大阪市
27
年には
千代松大耕
の向上および情報発信の強化を
日外国旅行者へのホスピタリティ
め、平成
年度決算において財政
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11
おもてなしのまち
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20
19
ま し た。そ の 後、平 成
市政 FEBRUARY 2016
55
22
年間に短縮しましたが、飛躍を遂
泉佐野市長
12
げるための財政措置が打ち出せな
※ 面積は国土地理院「全国都道府県市区町村別面積調」に、
人口・世帯数は「住民基本台帳」による。
26
27
27
を語る
あ
く
ね
阿久根市(鹿児島県)
に し ひ ら よ し ま さ
阿久根市長 西平良将
年5月に阿久根駅を「にぎわい交
流館阿久根駅」としてリニューア
九州」
ル オ ー プ ン し ま し た。こ れ は、ク
ルーズトレイン「ななつ星
し て 栄 え、東 は 紫 尾 山 系、西 は 東
鹿児島県の北西部に位置する阿
久根市は、古くから漁業のまちと
れ、阿久根沖に漂着した中国船か
大伴旅人により万葉集にも詠ま
し て 名 高 い 黒 之 瀬 戸 は、長 田 王、
す。ま た、北 部 に 位 置 す る 急 潮 と
て広く県内外に知られておりま
は、見る人の心を和ます場所とし
おいても薩摩川内〜阿久根間の整
た南九州西回り自動車道の整備に
し て、新 幹 線 の 停 車 駅 も な く、ま
が厳しい状況となっています。そ
たが、利用者の減少などから経営
じ鉄道が開業することとなりまし
線自治体を株主とする肥薩おれん
ま で 集 え る“ 公 民 館 ”と し て、多
た地元の子どもたちからお年寄り
を 出 迎 え る“ 迎 賓 館 ”と し て、ま
は、他所からお越しいただく方々
ル し た も の で す。そ の イ メ ー ジ
舎の面影を残しながらリニューア
ちの玄関口である阿久根駅を旧駅
氏に協力をいただいたもので、ま
のデザインを手掛けた水戸岡鋭治
シナ海に囲まれており、東シナ海
ら伝わったとされる文旦(ボンタ
備計画は白紙のまま、地域の活力
くの皆さまに愛される駅を目指し
はじめに
に沈む夕日と目の前に点在する美
ン)は阿久根の代表的な特産品に
が衰微していく中で地元の活性化
本市においては、厳しい財政状
況の改善を図るため、平成8年度
う雰囲気が広がりつつあります。
り、ふるさとを何とかしたいとい
26
歳とい
60
う節目の年に母校の小学校の運動
行事があります。これは
50
し び さ ん
しい島影が醸し出す癒しの空間
なるなど、文化・産業ともに海の
て 整 備 し た も の で す。最 近 で は、
地元の有志たちが阿久根駅を中心
が大きな課題となっていました。
た自然豊かなまちであります。
とした駅前商店街の活性化やまち
済を支えていた水産業の不振によ
からさまざまな改革を実施し、行
づくりを行おうと計画を重ねてお
り、水揚げ額が大幅に落ち込むな
財政の健全化に努め、ようやく各
そのような風土を基本とする本
市ですが、少子高齢化や地域の経
ど、地域経済の疲弊は進む一方で
種事業を展開できる状況になって
本市には、昭和 年から 年以
上 続 く「 華 の 歳 組 」と い う 伝 統
地域の資源を生かす
あ り ま し た。そ う し た 中、追 い 打
ぎわいをつくり出したいとの思い
点ともいえるべき施設を起点にに
き ま し た。そ う し た 中、観 光 の 拠
年に鹿児島本線
川内〜八代間がJR九州から経営
から、県の事業を活用して平成
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分離され、鹿児島・熊本両県の沿
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50
備に伴い、平成
ちを掛けるように九州新幹線の整
駅を起点ににぎわいを
恩恵を受けながらはぐくまれてき
“迎賓館”
“公民館”としての機能を持つ「にぎわい交流館阿久根駅」
in
4
新しさの中に懐かしさが感じられる
笑顔あふれるまちづくり
わが 市
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FEBRUARY 2016 市政
大 将 季、紅 甘 夏 と い っ た 柑 橘 類、
だいまさき
会に参加するのを機会に同窓生が
毎年
縮による新鮮な食材の提供も可能
となるなど、明るい兆しも見られ
が、わ が ふ る さ と を 改 め て 見 直
いったんふるさとを離れた方々
歳 組 」は、進 学 や 就 職 な ど で
か ら 帰 郷 す る の で す。こ の「 華 の
歳 組 」の た め に 全 国 各 地
生のおよそ3分の2の方がこの
な っ て い ま す。驚 く こ と に、卒 業
窓会として市を挙げて行う慣習と
て旧交を温め、連帯感を深める同
もに、童心に返って競技に参加し
び、亡師・亡友の慰霊を行うとと
源 の 価 値 を 自 分 た ち で 再 認 識 し、
ま す。そ こ で、そ の よ う な 地 域 資
ることに驚かれることが多々あり
と、価値の高いものがたくさんあ
思っていても、他所の方から見る
いて地元の私たちは当たり前と
て い ま す。し か し、こ の 価 値 に つ
育む風土豊かな自然環境に囲まれ
があり、併せてそういった産物を
牛などさまざまな特産品や農産品
ジビエ料理、A5ランクの華鶴和
コ、有害鳥獣を捕獲して加工する
れ、交 流 人 口 の 増 加、搬 送 時 間 短
間近に感じさせる環境が整備さ
もようやく高速交通体系の到来を
されてきたように思えたこの地域
このことにより、これまで取り残
は 新 規 事 業 化 が 決 定 さ れ ま し た。
画 決 定、さ ら に、平 成
年4月に
車道の阿久根・川内道路の都市計
平成 年7月、これまで整備計
画が遅れていた南九州西回り自動
阿久根市をつくってまいります。
しさの中にどこか懐かしさのある
出を目指して市民一丸となり、新
か 味 わ え な い「 あ く ね 時 間 」の 創
が笑顔になれるような、ここでし
住んでいる人も訪れた人もみんな
ま ち づ く り 」を 目 指 し て い ま す。
も元気に過ごせる「笑顔あふれる
今、本 市 で は、多 く の 人 た ち が
安心して子育てができ、お年寄り
月に出荷が始まるタケノ
一 堂 に 会 し、お 互 い の 無 事 を 喜
し、自分が生まれ育ったまちに誇
映像言語で情報運用できる人材を
ます。
りを持てる取り組みとして、今後
育てる、地域メディアプロデュー
「笑顔あふれるまちづくり」
を目指して
の地方創生の中でもキーワードに
サー育成講座を実施し、人材育成
「華の
なるのではないかと思わせる伝統
に取り組み各分野で成果を上げて
プロフィール
◆ 面積 134・ ㎢
◆ 人口
2万1947人
◆
世帯数 1万419世帯
〔将来都市像〕自然と人が共生するまち
〔まちの特徴〕温暖な気候と豊かな海
に育まれた良質な食材が揃う食のまち
〔 イ ベ ン ト 〕 阿 久 根 み ど こ い 祭 り、 あ
くねボンタンロードレース大会、阿久
根はな・HANA・華まつり、あくね
新鮮おさかな祭り
〔 観 光 〕 黒 之 瀬 戸、 阿 久 根 大 島、 牛 之
浜海岸、にぎわい交流館阿久根駅、肥
薩おれんじ鉄道
グローブ、焼酎、タケノコ、実えんど
う、黒毛和牛
行事になっています。
います。
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このようなことから、今の地方
に必要なことは、古
くから根付く地域
の資源は外から見る
※ 面積は国土地理院「全国都道府県市区町村別面積調」に、
人口・世帯数は「住民基本台帳」による。
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〔 特 産 品 〕 文 旦、 大 将 季、 紅 甘 夏、 文
旦 漬、 タ カ エ ビ、 ウ ニ、 塩 干 加 工 品、
西平良将
と大変な価値があ
阿久根市長
ることを再認識する
鹿児島市
ことではないかと私
は考えています。例
え ば、本 市 に は、季
節ごとに水 揚 げさ
市政 FEBRUARY 2016
57
れる旬の魚や水 産
阿久根市
28
50
加 工 品、ボ ン タ ン、
童心に返る「華の 50歳組」
50
政策推進委員会を開催
年
月 日、「政策推進委員会」を開催。森会
長からあいさつの後、総務省の内藤・大臣官
房審議官(財政制度・財務担当)から平成
28
度地方財政対策等について、青木・自治税務
年度地方税制改正等について
それぞれ説明を聴取するとともに、当面する
年度地方財政対策等についての
[企画調整室]
主要課題について意見交換を行った。
平成
共同声明
月 日、地方六団体は「平成 年度地方
財政対策等についての共同声明」を発表した。
関係市長が、高市・総務大臣、
森会長をはじめ政策推進委員会の
[財政部]
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#1
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局長から平成
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宮沢・自由民主党税制調査会会長、
山口・公明党代表等と面談
月 日に開催された政策推進委員会終了
後、森会長をはじめ、副会長の能登・富良野
総務審議官に面会し、平成
年度の地方税制
総務大臣、土屋正忠・総務副大臣、佐藤文俊・
野・飯田市長は、総務省において高市早苗・
長の神谷・安城市長、経済委員会委員長の牧
国支部長の黒田・玉野市長、財政委員会委員
東金市長、近畿支部長の谷畑・湖南市長、中
市長、栗林・大仙市長、関東支部長の志賀・
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動き
全国市長会の
#2
12
#3
12
改正および地方財政対策についてお礼を述べ
28
Mayors' Action
Mayors' Action
12月24日〜1月22日
詳細につきましては、全国市長会ホームページ
( http://www.mayors.or.jp/ )
をご参照ください。
62
FEBRUARY 2016 市政
るとともに、地方行財政対策の諸課題につい
て意見交換を行った。また、議員会館におい
て、 宮 沢 洋 一・ 自 由 民 主 党 税 制 調 査 会 会 長、
第2回「そうだ、地方で暮らそう!」
国民会議が開催され、松浦・防府市長
及び小田木・高萩市長が出席
月 日、第 回「そうだ、地方で暮らそ
う!」国民会議が開かれ、松浦・防府市長(ま
2
会議では、石破・地方創生担当大臣の挨拶
の後、各界から参加した委員が、それぞれの移
援に関する研究会座長代理)が出席した。
び小田木・高萩市長(少子化対策・子育て支
ち・ひと・しごと創生対策特別委員長)およ
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野田毅・同調査会最高顧問、山口那津男・公
年度の地方税制改正およ
明党代表、桝屋敬悟・公明党税制調査会副会
長に面会し、平成
#4
住・交流に関する取り組みや国の地方 創生に
小田木・高萩市長
び地方財政対策についてお礼のあいさつを
行った。
[財政部]
高市総務大臣(中央)と森会長をはじめとする政策推進委員会の関係市長
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1
関する取り組みについての意見交換を行った。
市政 FEBRUARY 2016
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[行政部]
松浦・防府市長
Mayors' Action
Mayors' Action
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