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分裂酵母における G0 期の導入•維持に 必須な遺伝子の同定と解析

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分裂酵母における G0 期の導入•維持に 必須な遺伝子の同定と解析
分裂酵母における G0 期の導入•維持に
必須な遺伝子の同定と解析
佐二木
健一
沖縄科学技術研究基盤整備機構
大学院大学先行研究プロジェクト
(柳田 充弘
教授)
奈良先端科学技術大学院大学
バイオサイエンス研究科 遺伝子発現制御学講座
(別所 康全
教授)
本研究は沖縄科学技術研究基盤整備機構で実施された。
目次
要旨
1
序論
2-18
G0 期の重要性
2
G0 期研究のさきがけ
2
G0 期に重要な遺伝子群
4
モデル生物としての分裂酵母
8
分裂酵母の細胞周期
8
分裂酵母における G0 期研究
9
本研究の目的
15
実験の戦略
16
材料と方法
19-25
結果
26-78
leu1-32,eat1-GFP は G0 期導入後の窒素源再添加において増殖遅延を引き起こす 26
1015 株のライブラリーから 610 株のニトロソグアニジンによる変異だけを持つ
ライブラリーを作製した
26
610 株の中で 13 株が窒素源枯渇 24 時間後に生存率を 35%未満に低下させ、
その中から 7 種類の責任遺伝子を決定した
29
ストレス応答の MAP キナーゼ経路の変異株は窒素源枯渇後、
細胞成長を停止することが出来ない
33
窒素源枯渇後、wis1-982、sty1-989 では
細胞周期制御分子 Rum1, Cdc13 の発現異常が起こる
35
小胞膜融合に関わる遺伝子 vps11,vam6,ypt5 変異株では窒素源枯渇後、
細胞分裂が起こらず、G0 期細胞の形成に欠陥が見られた
38
vps11-319,vam6-532,ypt5-909 では窒素源枯渇後、
細胞質に小胞の蓄積が観察される
42
エンドサイトーシスに関わる遺伝子 wsp1 と end4 の変異株の窒素源枯渇後の
表現型は野生株と類似しており、end4-507 は窒素源枯渇下での
長期培養により生存率を回復させる
wsp1-318 と end4-507 は窒素源枯渇後に浸透圧の変化に対し感受性になる
45
45
G0 期維持時に生存率を 50%未満に落とす株は 164 株あり、
その中の 34 株から 26 種類の責任遺伝子を決定した
50
細胞周期の制御分子 cdc2, cdc13, ssp1 の変異株は窒素源枯渇後も
円筒状の形態のまま、生存率を低下させる
55
コヒージョンとクロマチンリモデリングの関わる変異株 mis4-450 と
mis16-33 は窒素源枯渇後生存率を低下させる
57
ATP 代謝に関わる変異株 pyk1-64 と cts1-901 は窒素源枯渇後の
温度シフトにより生存率を低下させる
57
小胞輸送経路と細胞壁合成に関わる変異株は窒素源枯渇後の
温度シフトにより生存率を低下させる
58
RNA 合成•代謝に関わる変異株は窒素源枯渇後の
温度シフトにより生存率を低下させる
59
fcp1-452 の変異により多くの遺伝子の転写パターンが変動し、
変動する転写物は増殖期と G0 期において大きく異なっている
59
考察
79-85
G0 期導入時に必須な遺伝子群
79
G0 期維持時に必須な遺伝子群
82
RNA ポリメラーゼⅡCTD と Fcp1 の役割
82
super housekeeping
遺伝子
84
謝辞
86-87
参考文献
88-100
図表目次
図 1.
G0 期の制御に関わると報告のある経路と分子。
5
図 2.
分裂酵母のライフサイクル。
10
図 3.
窒素源の枯渇と再添加による細胞成長と細胞周期の制御。
11
図 4.
窒素源枯渇後の分裂酵母野生株。
12
図 5.
分裂酵母野生株、増殖期と G0 期細胞の電子顕微鏡観察像。
13
図 6.
G0 期の生存が阻害される変異株選別の方法。
17
図 7.
ランダムスポア法によるマーカー遺伝子除去の方法。
20
図 8.
窒素源枯渇後の野生株, leu1-32, eat1-GFP 株,mts3-1 変異株の生存率の変化。
27
図 9.
leu1-32, eat1-GFP 株は生存率測定の際、コロニー形成が遅延する。
28
図 10. 1015 株の温度感受性ライブラリーからマーカー遺伝子 leu1-32, eat1-GFP を取り除き、
表 1.
610 株の新ライブラリーを作製した。
30
610 株の窒素源枯渇後の生存率(%)
。
31
図 11. 窒素源枯渇 24 時間後に生存率を落とす 8 株とその責任遺伝子。
32
図 12. wis1 と sty1 の変異株は窒素源枯渇後細胞成長を停止せず円筒状のまま、
生存率を低下させる。
34
図 13. 野生株, wis1-982, sty1-989 は窒素源枯渇後、細胞長を長いまま保っているが
蛋白質量は野生株と同程度になっている。
36
図 14. wis1-982, sty1-989 は窒素源枯渇後、核が肥大化する。
37
図 15. wis1-982, sty1-989 は窒素源枯渇後、細胞周期制御分子の発現異常が見られた。
39
図 16. rum1 破壊株、atf1 破壊株、atf1,pcr1 二重破壊株、atf1,atf21,pcr1 三重破壊株は
窒素源枯渇 24 時間後での生存率を維持し、小さく丸い細胞形状となる。
40
図 17. vps11-319, vam6-532, ypt5-909 は窒素源枯渇後、細胞数を増加せずに生存率を低下させる。
また、窒素源枯渇 24 時間後の DNA 含有量は 2C のままである。
41
図 18. vps11-319, vam6-532, ypt5-909 は窒素源枯渇後、細胞周期制御分子の
発現異常が見られた。
図 19. vps11-319, vam6-532, ypt5-909 は窒素源枯渇後、細胞質に小胞の蓄積が観察される。
43
44
図 20. wsp1-318, end4-507 は窒素源枯渇後、形状的に野生株と差がないまま生存率を低下させる。
また、窒素源枯渇 24 時間後の DNA 含有量も 1C になっている。
46
図 21. 窒素源枯渇後、 wsp1-318 は細胞膜にアクチン局在が見られず、
end4-507 は細胞膜にきのこ状の構造物が観察された。
48
図 22. 窒素源枯渇後の wsp1-319, end4-507 の細胞は浸透圧ストレス感受性を示す。
49
表 2.
51
窒素源枯渇後温度シフトにより生存率を落とす株の中から 26 責任遺伝子を同定した。
図 23. G0 期維持時に重要と考えられる 26 遺伝子産物を機能により分類した模式図。
52
図 24. 増殖期、制限温度(36℃)での温度感受性変異株 34 株と野生株の DAPI 染色像。
53
図 25. 窒素源枯渇 24 時間後または更に温度シフト(37℃) 72 時間後での野生株と
温度感受性変異株 34 株の DAPI 染色像。
54
図 26. 窒素源枯渇 24 時間後または更に温度シフト(37℃) 72 時間後での野生株と
責任遺伝子を決定した温度感受性変異株の DNA 含有量。
56
図 27. fcp1-452 は脱リン酸化活性に必須なアミノ酸に変異がある。fcp1-452 において
Fcp1 蛋白質の局在、量は野生株と変わらない。
60
図 28. 増殖期での fcp1-452 は、36℃に温度シフトすると完全に増殖を停止し、
4 時間後には形態の異常を見せる。
62
図 29. 窒素源枯渇 24 時間後の温度シフトで fcp1-452 は生存率を低下する。
63
図 30. 野生株と fcp1-452 の遺伝子発現解析の方法。
64
図 31. 増殖期(VE)と G0 期(G0)それぞれで fcp1-452 は、制限温度下(37℃)における
転写パターンを大きく変化させる。
65
図 32. fcp1-452, 37℃で野生株, 37℃に比べ 4 倍以上変動する転写物は
増殖期(VE)と G0 期(G0)の間で大きく異なっている。
66
表 3.
増殖期(VE)において fcp1-452, 37℃で野生株, 37℃に比べ 4 倍以上変動する転写物。
68
表 4.
G0 期(G0)において fcp1-452, 37℃で野生株, 37℃に比べ 4 倍以上増加する転写物。
69
表 5.
G0 期(G0)において fcp1-452, 37℃で野生株, 37℃に比べ 1/4 以下に減少する転写物。
70
表 6.
増殖期(VE)または G0 期(G0)において fcp1-452, 37℃で野生株, 37℃に比べ
4 倍以上変動する転写物でストレスに応答するもの。
表 7.
増殖期(VE)または G0 期(G0)において fcp1-452, 37℃で野生株, 37℃に比べ
4 倍以上変動する転写物で細胞周期によって転写量が制御されているもの。
表 8.
72
増殖期(VE)または G0 期(G0)において fcp1-452, 37℃で野生株, 37℃に比べ
4 倍以上変動する転写物で遺伝子発現抑制に関わるもの。
表 9.
71
73
増殖期(VE)または G0 期(G0)において fcp1-452, 37℃で野生株, 37℃に比べ
4 倍以上変動する転写物でシグナルペプチドを持つもの。
74
表 10. 増殖期(VE)または G0 期(G0)において fcp1-452, 37℃で野生株, 37℃に比べ
4 倍以上変動する転写物でトランスメンブレンドメインを持つもの。
75
表 11. 増殖期(VE)または G0 期(G0)において fcp1-452, 37℃で野生株, 37℃に比べ
4 倍以上変動する転写物でミトコンドリアに関係するもの。
76
図 33. fcp1-452 は制限温度において、増殖期では細胞質に膜系構造物が減少しており、
G0 期では ER 様構造が発達していた。
78
図 34. G0 期導入時に必須な 3 つの遺伝子群。
80
要旨
生命体にとって細胞を増殖するか、増殖を停止して G0 期に入るかを決定するのは
非常に重要な選択である。G0 期での細胞は細胞周期を停止するのみならず、分化やア
ポトーシス、老化の前段階にあると考えられ、G0 期の研究は生物学的、医学的に大き
な重要性を持っている。しかしながら、これまでの細胞周期の研究は増殖期に重点が
置かれ、G0 期導入や維持の機構や、そこに関わる遺伝子はほとんど明らかにされてこ
なかった。私達は分裂酵母が、培養液中から窒素源を枯渇させる事で容易に G0 期に
誘導される点に注目し、このモデル系を使って G0 期の導入や維持に必須な遺伝子を
同定する事とした。そのために本研究では 610 株の温度感受性変異株ライブラリーを
作製し、その中で G0 期導入時または維持時の生存率を低下させる株を選別した。そ
して選別した株の責任遺伝子を決定する事により、G0 期の導入または維持に必須な
33 遺伝子を同定した。
G0 期導入時には 7 遺伝子を同定し、これらの遺伝子はその報告されている機能によ
り 3 つのグループに分ける事が出来た。1つ目はストレス応答 MAP キナーゼ経路に関
わる遺伝子、wis1, sty1 であり、これらの変異株の解析からストレス応答 MAP キナー
ゼ経路は G0 期導入時に細胞成長と細胞周期の両方を制御している事が示唆された。2
つ目は小胞膜融合に関わる遺伝子、vam6, vps11, ypt5 で、これらの変異株の解析か
ら G0 期導入時には活発な小胞合成が起きている可能性が示唆され、小胞を融合して
処理する経路の重要性が示された。
3 つ目はエンドサイトーシスに関わる遺伝子、end4,
wsp1 でこれらの変異株の解析からエンドサイトーシスが浸透圧の変化に対する耐性
獲得に必須ではないかと考えられた。
また、G0 期維持時には 26 遺伝子を同定した。その機能は細胞周期制御、コヒージ
ョンとクロマチンリモデリング、ATP 代謝、小胞輸送、細胞壁合成、RNA 合成•代謝等、
多岐に渡っており、この事からも G0 期維持時にも活発な細胞内活動は起きており、
積極的に G0 期が維持されている様子が想像された。本研究では、その中から特に Fcp1
に注目した。Fcp1 は RNA ポリメラーゼⅡ、CTD の脱リン酸化酵素であり、転写機構そ
のものに作用するため、その影響は転写全般に及ぶものと予測された。しかしながら、
トランスクリプトーム解析を行うと、この変異株中では遺伝子によって発現の変動が
様々であり、遺伝子特異的に影響が出ている事が確認された。更に、増殖期と G0 期
で影響を受ける遺伝子の種類が全く異なっていた。変異株中での遺伝子の発現量の変
化が表現型にも反映されていた事から、Fcp1 が増殖期と G0 期の差異を転写レベルで
制御している可能性が示された。
1
序論
G0 期の重要性
生命体において細胞を増殖するか、増殖停止するかを決定するのは非常に重要な選
択である。この選択を間違えると、増殖停止が出来なくなる癌細胞のように重篤な病
気を引き起こすのみではなく、無秩序な細胞増殖は多細胞生物の個体形成自体を不可
能にする。全ての多細胞生物は1つの細胞が成長、分裂を繰り返して形成されている
が、それぞれの細胞が特徴を持った器官を形成するためには分化やアポトーシス、老
化といった現象が必要である。こうした現象の第一歩として細胞周期を停止して休止
期である G0 期へ導入することが必要であると考えられている。事実、成熟個体の大
部分の細胞は成長、分裂を停止し、G0 期に入っている。ヒトの成熟個体は約 60 兆個
の細胞からなっているが、細胞周期が回り続けているのは、胸腺、生殖腺、腸管、肝
臓、皮膚、骨髄等の一部の細胞のみである。逆に最終分化を遂げた神経細胞や心筋細
胞は二度と増殖サイクルに戻る事が出来ないため、一度損傷を受けると修復不能とな
ってしまい、脳卒中や心筋梗塞等の虚血性疾病の治癒を困難にしている。また G0 期
は環境変化に対応した細胞状態を維持している期間であるとも考えられるが、その維
持が確実に行われていないと変性蛋白質が蓄積する、ハンチントン病、パーキンソン
病、アルツハイマー病等に繋がっていく可能性がある。このように G0 期の理解は個
体形成における重要な制御を解明し、私達の体の大多数の細胞の状態を把握するとい
う生物学的観点のみならず、癌を始めとする様々な疾病の治療、再生医療の実現、老
化の原理の解明といった病理学的観点からも非常に重要である。しかしながら、これ
までの細胞周期研究の主流は CDC 遺伝子に代表される様に増殖期にあり、G0 期の研究
は大きく立ち遅れていた。発生段階において、細胞周期が停止する時期は分かってい
ても、G0 期導入や維持の機構は殆ど明らかになっていない。また、いまだに G0 期の
存在自体に対して異議を持ち G1 期停止との違いを疑う声が出ていることもこの分野
の理解がいかに遅れているかを表している。本研究は G0 期の導入や維持時に必須な
遺伝子を同定し、G0 期における役割を解析する事を目的としている。
G0 期研究のさきがけ
G0 期の概念自体は 1960 年代からあったようで、1963 年の Lajtha の論文中では細
胞が複製を止め G1 期の DNA 含有量で停止している状態を G0 として紹介しているよう
2
である。また、1974 年に Pardee の論文が発表されるまでには、G0 期から増殖期に復
帰する際には必ず分裂の前に複製がおこることから、G0 期は M 期と S 期の間に存在す
る事が分かっていたようである。Pardee のこの論文(Pardee, 1974)では、様々な条件
下で休止期に導入した細胞集団を調べ、それぞれが G1 期中のどの場所で止まってい
るかを調べている。そのためにシリアンハムスター由来の BHK21/C13 細胞の培養液か
らイソロイシン、グルタミン、血清を様々な組み合わせで除去する方法、リン酸を除
去する方法、cAMP レベルを上げる方法、細胞分離を阻害する cytochalasin B を添加
する方法等の多様な手段で休止期導入を試みている。その後、再び完全栄養培地で増
殖期に戻した際の DNA 複製までの時間を[3H]チミジンの取り込みを測定することによ
り調べ、G1 期上での休止場所を特定した。測定の結果、全ての条件で複製までの時間
が 8 時間であったことから、休止期の細胞はすべて G1 期の特定の場所で止まってい
ることが考えられた。彼はこの場所を Restriction point(R−ポイント)と命名して
いる。同時期、同様のポイントが他の種でも発見され、出芽酵母では Hartwell が G1
期において細胞周期への進行を決定するポイントを
start
と名付けて発表してい
る(Hartwell, 1974)。
こうした報告により細胞は R−ポイントや start と名付けられた G1 期の特定の場所
で増殖を停止していることが明らかになったが、さらに踏み込んでこのポイントでは
増殖を停止しているだけではなく G0 期という別の状態になっている事を実験的に示
したのが Zetterberg と Larsson の 1985 年の論文(Zetterberg and Larsson, 1985)で
ある。この論文ではマウス胎児線維芽細胞由来の Swiss3T3 細胞を使って実験を行っ
ている。細胞周期の様々な時期において、培養液からの一時的な血清除去が細胞周期
や蛋白質合成にどう影響するかをビデオ撮影や[3H]ロイシンの取り込みで観察して
いる。結果では、全ての時期の細胞において一時的な血清除去で蛋白質合成が低下し
た。しかし、注目すべきは G1 初期 (M期後 3-4 時間まで)の細胞のみで、一時間の血
清除去により細胞周期が 8 時間延長されたことである。この結果は、G1 初期において
血清除去後一時間で細胞は細胞周期を停止し、再び細胞周期を開始する際には停止し
た場所から速やかに増殖サイクルに戻るのではないことを示している。この血清再添
加後 8 時間という遅延は細胞が R−ポイントで単に細胞周期を停止しているだけでは
なく、G0 期という特殊な形態に入っており、G0 期を脱出するために一定の時間を要
している事を強く示唆した。
これらの実験から G0 期が単なる概念ではなく、実在する可能性が示されたのだが、
その導入時期に関しては、1960 年台、はっきりと区別出来る G1 期がない Chinese
hamster 由来の V79 細胞(Robbins and Scharff, 1967)や粘菌の一種であるモジホコリ
(Nygaard et al., 1960)やアメーバ(Ron and Prescott, 1969)が、G2 期から休止期に
入ることが観察されている。このことから G0 期には G1 期以外からも導入出来ること
3
が示唆されていた。その後、1993 年に酵母の G1、S、G2、M 期それぞれで細胞周期を
停止する変異株を用いた栄養源枯渇の実験により、すべての期から可逆的な G0 期に
導入出来る事が報告されている(Wei et al., 1993)。
G0 期に重要な遺伝子群
これまでの報告では G0 期に重要な遺伝子群として、高等生物の研究からは ERK 経
路に、酵母の研究からは TOR 経路に関わるものが示されている(図 1)。
ERK 経路
MAPK ファミリーの ERK 経路は、進化的に保存されており、成長因子による外部シグ
ナルを細胞内に伝え、細胞周期開始の鍵となることが知られている(Assoian and
Schwartz, 2001; Lewis et al., 1998; Meloche and Pouyssegur, 2007; Robinson and
Cobb, 1997; Treisman, 1996)。ERK は成長因子により活性化された MEK によりリン酸
化され、Elk-1 といった核内の標的をリン酸化し、c-fos 等の immediate-early genes
の発現を促進する。これらの発現は Cyclin D を含む delayed early genes を発現誘
導し、CyclinD-CDK4/6 複合体を形成する(Brown et al., 1998; Kerkhoff and Rapp,
1998; Roovers and Assoian, 2000)。形成された CyclinD-CDK4/6 複合体は癌抑制因
子である Rb をリン酸化する。Rb は S 期への進行に必要な E2F 転写因子と結合し、E2F
の活性を抑制しているが、リン酸化によりその制御が外れ、CyclinE といった標的遺
伝子が発現誘導される。CyclinE は CDK2 と複合体を作り、更に Rb をリン酸化する事
によって E2F の活性が新たな転写を起こし、S 期へと移行する(Sherr and Roberts,
1999)。これらの知見は G1-S 期の移行を制御するために Rb が重要な役割を担う事を
示しており、Rb の過剰発現により細胞が G1 期で停止することや、Rb の欠失細胞は DNA
損傷等の G1 期停止シグナルに応答出来ず、S 期に侵入することが報告されている
(Classon and Harlow, 2002)。
Rb をリン酸化して、S 期移行に必要とされるものとしては、CyclinD-CDK4/6、
CyclinE-CDK2 複合体が報告されていたが、更に G0 期脱出のために必要な Cyclin-CDK
複合体として CyclinC-CDK3 が同定された(Ren and Rollins, 2004)。CyclinC は G0
脱出期に転写が活性化され、CDK3 と複合体をつくり、Rb の S807/811 をリン酸化し、
このリン酸化が G0-G1 期移行に必須な事が示された。
また、Rb が制御するとされる E2F ファミリー分子の中には転写促進分子(E2F1, E2F2,
E2F3a)と抑制分子(E2F3b, E2f4, E2F5, E2F6, E2F7, E2F8)があり(Blais and Dynlacht,
2004; Cam and Dynlacht, 2003; Dimova and Dyson, 2005; Frolov and Dyson, 2004;
4
Fbxw7
M
R-ポイント
START
G2
抑制型
E2F
c-Myc etc.
G0
G1
サイクリンC
+CDK3
サイクリンD
+CDK4/6
S
サイクリンE
+CDK2
p27
RAF/MEK/ERK
サイクリンC
+CDK3
P
サイクリンD
+CDK4/6
P P
KPC1/KPC2
P P P
Rb
Rb
促進型
E2F
サイクリンE
+CDK2
Rb
促進型
E2F
促進型
E2F
サイクリンE etc.
S期誘導.
Nutrients
PI3K→Akt→
TSC1/2
Rhb1/Rheb
リボソーム合成
蛋白質合成
転写
アクチン編成 他
TORC
LST8
TORC1
Mip1/raptor
LST8
TORC2
Ste20/rictor
図1. G0期の制御に関わると報告のある経路と分子。
ERK経路で働くRbはCDK-サイクリン複合体によりリン酸化され、E2Fの抑制が解除され、G0期
の脱出に関わっていると考えられている。Fbxw7, p27, KPC1/KPC2もG0期からの脱出を制御に関
わっているとの報告がある(上)。またTOR経路は外部の栄養に応じた細胞状態を構成するために
重要な経路である(下)。
5
Maiti et al., 2005)、抑制分子の E2F3b, E2f4, E2F5, E2F6 は G0 期に発現している
こ と がわ かった (Leone et al., 1998; Ogawa et al., 2002; Ren et al., 2002;
Takahashi et al., 2000b; Trimarchi and Lees, 2002)。中でも、E2F6 は PcG(ポリ
コーム)蛋白質等の複合体と結合して Myc や他の E2F の標的遺伝子のプロモーター領
域に結合し、G0 期特異的に抑制していることが報告されている(Ogawa et al., 2002)。
更にこの E2F6 複合体はヒストン H3 リジン 9 のメチル化能を持つ事から G0 期特異的
なヘテロクロマチン構造が作られている可能性も示唆された。ただし、E2F6 のノック
アウトマウスでは骨格で軽微な異常が見られた以外はほぼ正常であり、またノックア
ウト細胞では細胞周期の各期の割合や血清添加後の G0 期から増殖期への移行は野生
型と違いが見られていない事から G0 期における E2F6 の役割は確立されていない
(Storre et al., 2002)。おそらく抑制型 E2F 間での相補機構があるのではないかと
考えられている。実際、E2F7 と E2F8 は同じの組織内で発現し、それぞれダイマー形
成能があり、また共に強制発現により細胞増殖が阻害されることから相乗的に作用し
ていることが示唆されている(Maiti et al., 2005)。
近年では c-Myc, CyclinE, Notch, c-Jun といった増殖サイクルを回す蛋白質の分
解に働くユビキチンリガーゼのサブユニットである Fbxw7 の T 細胞特異的コンディシ
ョナルノックアウトマウスにおいて、G0 期にいるべき DP 細胞の細胞周期が止まらず、
SP 細胞に分化後に p53 により強制的に細胞周期が止められている報告や(Onoyama et
al., 2007)、G0 期で高い発現が見られ細胞周期進行を阻害する CDK インヒビターであ
る p27 が、G0/1 移行期に KPC1,KPC2 という E3 ユビキチンリガーゼにより分解されて
いる報告(Kamura et al., 2004)など G0 期で重要な役割をする分子が少しずつ明らか
になって来ている。
TOR 経路
90 年代からは、G0 期における重要な経路として出芽酵母の研究から TOR 経路が報
告されている(Barbet et al., 1996; Heitman et al., 1991; Kunz et al., 1993)。
TOR は免疫抑制剤ラパマイシンの標的とされ、酵母からヒトまで幅広く保存されてい
るセリン/スレオニンキナーゼで、この経路は環境中の栄養源に応答し、Rheb を介し
て TOR 複合体にシグナルを伝達し、細胞成長と代謝を制御する中心的な役割を担って
いる(Martin and Hall, 2005; Wullschleger et al., 2006)。TOR は N 末端から蛋白
質結合に必要な HEAT リピート(Kunz et al., 2000; Perry and Kleckner, 2003)と FAT
リピート(Alarcon et al., 1999; Bosotti et al., 2000)、FKBP12-ラパマイシン結
合ドメイン(FRB)(Zheng et al., 1995)、キナーゼ活性ドメイン、そして C 末端にキ
ナーゼ活性に必須な FATC ドメイン(Peterson et al., 2000; Takahashi et al., 2000a)
を持つ。
6
TOR は細胞内で 2 つの複合体、TOR Complex 1(TORC1)、TOR Complex 2(TORC2)とし
て存在しており、TORC1 はラパマイシン感受性を示し、蛋白質合成や細胞増殖を制御
する一方、TORC2 はラパマイシンに対する感受性は比較的弱く、Akt やアクチン骨格
形成を制御する(Jacinto et al., 2004; Sarbassov et al., 2005)。それぞれの複合
体には共通する分子(Lst8)、TORC1 特異的な分子(raptor)、TORC2 特異的な分子
(rictor)が存在する(Hara et al., 2002; Jacinto et al., 2004; Kim et al., 2002;
Loewith et al., 2002; Sarbassov et al., 2004)。
高等生物では TOR は 1 つしかないが、酵母では 2 つの TOR (TOR1,TOR2)が存在する。
出芽酵母では、TOR1,TOR2 が共に TORC1 を構成出来るが、TORC2 は TOR2 のみが構成し、
TOR1 は生存に不要だが、TOR2 は必須である(Heitman et al., 1991; Helliwell et al.,
1994)。しかし出芽酵母には TOR 経路において Rheb を負に制御する TSC1/TSC2 が存
在しない事や Rheb ホモログの RHB1 の変異が TOR 抑制時と表現型が違うこと(Urano et
al., 2000)から高等動物まで共通したメカニズムを探るのには不向きであることがわ
かった。そこで重要性を増したのが、tor1, tor2 を始め、rhb1(Rheb), TSC1,TSC2,
mip1(raptor), sin1(Avo1), ste20(rictor)等、哺乳類 TOR 経路で明らかにされた分
子全てのホモログを持つ分裂酵母である(Hilti et al., 1999; Kawai et al., 2001;
Kemp et al., 1997; Mach et al., 2000; Matsumoto et al., 2002; Ochotorena et al.,
2001; Shinozaki-Yabana et al., 2000; van Slegtenhorst et al., 2004; Weisman and
Choder, 2001; Wilkinson et al., 1999)。
分裂酵母においては Tor1 が TORC2 を構成し Tor2 が TORC1 を構成している(Hayashi
et al., 2007; Matsuo et al., 2007)。tor1 は生存に不要だが、破壊株は種々のスト
レス下において感受性を示す他、窒素源枯渇下で細胞周期を停止する事が出来ず、接
合出来なくなる事が報告されている(Kawai et al., 2001; Weisman and Choder, 2001)。
分裂酵母の tor2 は生存に必須であり、温度感受性株の表現型を調べた報告では制限
温度下において、完全栄養培地中でも、tor2 変異株は細胞サイズを縮小し、1C の DNA
含有量を持つ細胞が増加する等、窒素源枯渇時と同様の表現型を示した(Uritani et
al., 2006)。この事は tor2 が窒素源を感知する鍵となる分子であることを示唆して
いる。またマイクロアレイ解析によって窒素源枯渇に応答して発現する遺伝子群が
tor2 の働きを抑制することによっても発現が上昇することが報告された(Matsuo et
al., 2007)。近年では TORC1 と TORC2 と結合する新たな分子、Toc1、Tco89(TORC1 の
み)、Bit61(TORC2 のみ)、Tel2、 Tti1、Cka1/Orb5(共通)が明らかになり、Tel2 が
Tra1, Tra2, Rad3 といった PIK 関連キナーゼと結合する事や TORC を構成する殆どの
分子がリン酸化を受けている事から TORC には幅広い制御機構が存在する事が示唆さ
れている(Hayashi et al., 2007)。
7
モデル生物としての分裂酵母
分裂酵母は G0 期を研究するために優れた長所を多数備えている。最初に挙げられ
るのは、ゲノムサイズが約 12 メガベース、染色体 3 本からなる最もシンプルな真核
生物ということである。複雑な高等生物の制御機構を解明する際、最も単純な系を用
い、そこから得た知見を複雑な系に適応していくやり方は科学における常套手段であ
り、真核生物の中で最も単純な生物である事は大きな利点となる。また、分裂酵母は
ゲノムプロジェクトも完了しているため、約 5000 遺伝子の情報が明らかになってお
り(Wood et al., 2002)、ゲノムワイドの網羅的な解析が可能である。そして、株同
士の掛け合わせが簡単であり、様々な遺伝学的な手法を適応する事ができる。
また、将来的にこの研究をヒトの医療に還元するためには、生物学的にヒトの細胞
とどこまで類似しているかが重要となってくるが、細胞周期の点では分裂酵母で明ら
かになった M 期導入のメカニズムは全ての真核細胞で共通であることが確認されてい
る(Nurse, 1990)。更に分裂酵母で解明された細胞分裂時における染色体分離の機構
もヒトを含めた多くの真核生物に共通する(Yanagida, 2005)。減数分裂における分子
制御機構やミトコンドリアの形成も高等生物に類似している(Harigaya et al., 2006;
Schafer, 2003)。また高等生物で利用されている RNAi によるサイレンシングといっ
た実験手法も分裂酵母で有効である事が証明されている(Volpe et al., 2002)。
これらの遺伝的背景やヒトを始めとする高等生物との類似点、また何よりも最もシ
ンプルでコンパクトである分裂酵母は真核生物の生命原理を追求するための理想的
なモデルとされている。さらに分裂酵母は G0 期を研究する上でも理想的な生物種で
ある。分裂酵母は G0 期への導入が非常に簡便かつ明確である。分裂酵母の G0 期細胞
は単一接合型の株の培地から窒素源を抜くだけで形成され、増殖期の円筒形と異なり
縮小して球形となる G0 期の細胞は形状だけで区別する事も可能である。こうした利
点から本研究では窒素源枯渇後の分裂酵母をモデル系として G0 期の研究を行った。
分裂酵母の細胞周期
分裂酵母には h+と h-という2種類の接合型が存在するが、増殖期では無性的に成
長と分裂を繰り返している。増殖期での分裂酵母は円筒形をしており、円筒の両端で
伸長し、十分な長さまで成長すると円筒の長辺をちょうど二分する場所に隔壁が出来
て分裂する。この特徴のため、分裂酵母の細胞成長は細胞長で測る事が出来る。分裂
酵母の G1 期は非常に短く、M 期の終了後すぐに S 期が始まり、増殖期の細胞の殆どが
8
2C の DNA を含んでいる(図 2)。また、増殖期の細胞は 3−4 時間で一周期を回る(図 3)。
分裂酵母は通常では一倍体として増殖しているが、栄養源から窒素を枯渇させると
即座に伸長を止める。この時、異なる接合型の細胞が存在すると接合して二倍体を形
成し、減数分裂を経て胞子を作る(図 2)。胞子は全く栄養源のない過酷な環境条件下
でも生命を維持できる特殊な状態である。胞子中では殆ど全ての細胞内代謝が停止し
ているものと考えられる。
しかし、もし窒素源枯渇後、異なる接合型の細胞が存在しない場合は、分裂酵母の
細胞は成長を伴わない二回の分裂を経て小さく丸い細胞となる(図 2-4)。窒素源枯渇
後、成長は迅速に停止するが分裂は起こる事から、この時期、細胞成長と細胞周期は
別々の制御を受けている事が考えられる。窒素源枯渇後数時間、細胞は接合能を維持
した G1 期停止の状態でいると考えられるが、窒素源枯渇 24 時間後には異なる接合型
の細胞と出会っても、もはや接合出来ない停止状態に入る。この状態の細胞は、細胞
内の窒素源をオートファジー等(Kohda et al., 2007)の細胞内活動を経てリサイクル
しながら最低限のエネルギーで生命活動を維持しており、G0 期の細胞と定義される。
G0 期の細胞は1ヶ月以上の長期にわたり、培地中の糖、ミネラル、ビタミンのみで生
存が維持され、細胞内では細胞壁が厚くなり、細胞質の液胞や脂質の密度が上がり(図
5)、熱等のストレスに対する抵抗性も上がっている(Su et al., 1996)。この増殖停
止は可逆的であり、培地に窒素源を再添加することで約 4 時間のタイムラグ後、ゆっ
くりと伸長を開始し、添加後約 12 時間で最初の分裂を起こした後に、通常の増殖周
期に戻る(図 2,3)(Shimanuki et al., 2007)。
分裂酵母における G0 期研究
分裂酵母においては 1970 年代後半に、増殖期では殆ど観察出来ない G1 期が、栄養
源の一部を培養液から除去すると出現することが示されていた(Fantes and Nurse,
1978; Nasmyth et al., 1979; Nurse and Thuriaux, 1977)。また 1981 年、Nurse と
Bissett は培地から窒素源を枯渇させる事によって、細胞が増殖サイクルから脱出し、
減数分裂、接合を経て胞子形成に誘導されることを報告した(Nurse and Bissett,
1981)。しかし、実際に G0 期の研究として先鞭をつけた報告としては 1986 年の
Costello らの発表があげられる。この論文(Costello et al., 1986)では培地中の窒
素源濃度を下げる事により分裂酵母は G1 期、または G2 期中に休止状態になる事を、
flow cytometry で測定した DNA 含有量(1C または 2C)を使って示している。また、休
止状態の細胞は熱に対して耐性を持つ、長期に渡り生存を維持する、完全栄養培地の
再添加で増殖期に戻るといった G0 期の基本的な特徴を報告している。これらの特徴
9
Vegetative Growth
(+N medium)
DAPI staining
DNA contents
1C
2C
Entry into G0
(-N medium)
Uncommitted G1
Sexual partner, YES
(+N)
Sexual partner, NO
Mate &
Meiosis
Maintenance of G0
DAPI staining
DNA contents
1C
2C
図2. 分裂酵母のライフサイクル。
増殖期の円筒状の分裂酵母は培地中から窒素源を枯渇する事によって2回の成長を伴わない分
裂を経て小さく丸い形状になる。この時、接合型の違う相手がいる場合は接合して胞子を形成する
が、いない場合はG0期に入る。G0期の細胞は大部分が1CDNA含有量の細胞で、窒素源の再添
加により再び増殖期に戻る事が出来る。
10
Arrest to G0
Re-entry into Cell Cycle
10µm
Cell Length (mm)
Vegetative
Cell Cycle
mitosis
Time (h)
Entry
G0
Exit
-N
+N
mitosis
mitosis
Time (h)
Cell
growth
G0
DNA
replication
Time (h)
VE
図3. 窒素源の枯渇と再添加による細胞成長と細胞周期の制御(島貫瑞樹博士提供)。
増殖期、窒素源枯渇後、窒素源再添加後の分裂酵母の成長曲線。増殖期の分裂酵母は3-4時
間毎に成長と分裂を繰り返している。窒素源枯渇後には成長を伴わない2回の分裂を経てG0期に
入る。また、窒素源を再添加し、G0期の脱出時には約4時間のタイムラグの後、成長を再開し、約
12時間後に分裂し、増殖期に戻る。
11
0h
4h
8h
1h
5h
9h
2h
6h
10h
3h
7h
11h
図4. 窒素源枯渇後の分裂酵母野生株。
増殖期の細胞をガラス底プレートにのせ、上からEMM2-N寒天培地片で固定し、位相差顕微鏡のタ
イムラプスモードで撮影した。窒素源枯渇後、細胞は成長を伴わない2回の分裂を行い、小さく丸い形
状となる。数字は窒素源枯渇後の時間。
12
増殖期
G0期
L
V
図5. 分裂酵母野生株、増殖期とG0期細胞の電子顕微鏡観察像。
対数増殖期の細胞とG0期(窒素源枯渇24時間後)の細胞を過マンガン酸固定して、透過型電子顕
微鏡で観察した。G0期の細胞は細胞壁が厚くなり、細胞質に液胞(V)や脂質(L)が混合って存在す
る。バーは1µm。
13
は 1C、及び 2C で停止している細胞間において共通するものであった。
その後、1996 年の Su らの発表時には、EMM2 と呼ばれる合成培地(Mitchison, 1970)
から窒素源を枯渇させた状態(EMM2-N)で、胞子形成を阻害するため片方のみの接合型
を培養する G0 期導入の手法が確立されている。この論文中(Su et al., 1996)では窒
素源に加え、EMM2 から糖、ビタミン、ミネラルをそれぞれ枯渇させた培地で G0 期で
の生存を維持出来るか調べているが、窒素源枯渇の状態において、これらの栄養源は
どれが欠けても生存を維持出来ない事から、G0 期の細胞は細胞内に残る窒素源を再利
用し、培地中の糖、ビタミン、ミネラルを代謝する事によって長期にわたる生存を維
持していることがわかった。また窒素源枯渇により G0 期に導入された細胞は増殖期
の円筒状(細胞長 7-15μm)から 2 回分裂し、小さく丸い形状(細胞長
5μm)に変
化するが、電子顕微鏡の写真から G0 期の細胞は形状のみでなく、その構造も大きく
変化している事が示された。G0 期の細胞では増殖期に比べ、細胞壁が厚く、核が縮小
し、細胞質は肥大化した液胞や脂質に覆われていた。さらに長期間(24 日)G0 期に
置かれた細胞は短期間(1 日)のものよりも窒素源再添加の際、G0 期脱出に倍の時間
がかかる事も報告している。また、24 日 G0 期に置かれた細胞は 1 日置かれたものよ
りも更に細胞サイズが縮小し、細胞内の総蛋白質量が約 1/4 になっていることから G0
期に置かれた期間により休止状態が更に深まっていく事も示唆されている。
窒素源枯渇による分裂酵母の G0 期細胞を使って研究していく上で一番の問題とな
るのが、この細胞は高等生物の G0 期のモデル系として本当に使えるのかという点で
ある。高等生物の神経細胞や心筋細胞のように細胞内活動が機能して生存を維持して
いる状態ならモデル系として成り立つが、胞子の様に殆どの細胞活動が停止している
休眠状態では適用出来ない。90 年代の研究により、分裂酵母 G0 期の外観は明らかに
なったが、はたしてこの G0 期の細胞内では活動が起こっているのか、あるいは全く
停止しているのかといった問題は残されていた。そんな状況の中、2006 年に窒素源枯
渇により G0 期導入された分裂酵母の細胞内活動を調べた研究結果が報告された
(Mochida and Yanagida, 2006)。この報告では、G0 期の分裂酵母に DNA 損傷を起こし、
その修復能力を調べている。結果によると、UV によるチミジンダイマーの除去は G0
期でも増殖期同様に迅速に起こっており、窒素源枯渇により G0 期導入された細胞で
も細胞内活動が活発に起こっている事が示された。一方で、γ線による double strand
breakage (DSB)の修復には増殖期の約 2,3 倍の時間がかかっていた。これは G0 期細
胞の大部分が 1CDNA 含有量のため、DSB の修復には、普段使われる相同組み替え(HR)
が使えず、切断された断片同士を直接的に結合する非相同性末端結合(NHEJ)という異
なった機構を利用しているためと考えられた。これらの結果により、窒素源枯渇によ
って得られる分裂酵母の G0 期では、増殖期とは異なる機構であるものの細胞内活動
14
は活発に働いており、胞子の様に完全な休眠状態である細胞とは異なることが証明さ
れた。
その後、2007 年には、このモデル系を用いて G0 期を理解するための網羅的なトラ
ンスクリプトーム解析が報告された(Shimanuki et al., 2007)。報告された実験では
48 時間 EMM2-N 培養液で培養された G0 期の細胞に 4 倍の EMM2 を加える事で窒素源を
再添加した後、0, 1 , 2, 3.5, 6 時間の細胞をサンプリングして転写の変化をマイク
ロアレイで調べている。その結果、この過程で約 55%の転写物が 2 倍以上の変動を示
していた。増殖期において、細胞周期の進行に伴い 2 倍以上の変動を示す転写物は 3%
弱(Rustici et al., 2004)であることから G0 期と増殖期の間では大規模な変化が起
こっている事が示された。また変化は、窒素源再添加直後と約 3-4 時間後の二段階で
大規模に起こっており、約 3-4 時間後という時間は細胞が伸長を再開する時期と一致
していた。G0 期で増加している転写物にはアミン異化に関わる酵素、液胞、オートフ
ァジー、ミトコンドリアに関わるものが有意に多くあり、窒素源添加後や増殖期に増
加する転写物にはリボソーム、蛋白質合成、核、RNA 合成に関わるものが多かった。
また基本的な転写因子のうち、Pol Ⅰ, Pol Ⅲ 関連分子の転写量は G0 期で減少して
いるが、mRNA を合成する Pol Ⅱ 関連のものはあまり変動が見られなかった。更に報
告では G0 期で転写量の多いものを中心に G0 期制御の候補分子として遺伝子破壊株を
作製し、G0 期での生存率を測定している。その結果 9 遺伝子が G0 期の生存に必要で
ある事が示され、その中には C2H2 タイプの Zn フィンガーモチーフをもつ転写因子
klf1 と rsv2、RNA pol Ⅱ の C 末端ドメインをリン酸化するキナーゼに結合するサイ
クリンの ctk2、CBS (cystathionine-b-synthase)ドメインを持つ sds23, 同じく CBS
ドメインを持ち、AMP-activated kinase(AMPK)のサブユニットと見られている cbs2
があった。これらの結果は分裂酵母において G0 期細胞の遺伝子発現の全体像を網羅
的に研究した最初の報告であった。またこの報告と先に報告されていたヒト線維芽細
胞の G0 期の実験報告(Iyer et al., 1999)を比べると、G0 期では細胞形態が変化する、
CDK インヒビターの発現量が上昇する、リボソームの合成が抑制される、G0 期脱出時
に細胞が成長を開始するまでに 3-4 時間のタイムラグがある等の共通点が多数見られ、
窒素源を枯渇させた分裂酵母の G0 期細胞が高等生物の G0 期を研究する上で非常に優
れたモデル系である事が証明された。
本研究の目的
細胞周期を停止することが生物学的にも医学的にも重要である事が認識されて、よ
うやく G0 期の機構が注目され始め、これまでに断片的だが ERK や TOR といった経路
15
が、G0 期の特性を維持するために重要である事がわかって来た。そして、真核生物の
G0 期の包括的な理解に、窒素源を枯渇させた培地中で培養した分裂酵母の細胞が最適
なモデル系となる事がわかったため、そのコンパクトなゲノムサイズを生かした網羅
的な研究が始まっている。しかし、現在行われている網羅的な解析の大部分が G0 期
と増殖期の細胞内での量的な比較となっている。これらの解析では、G0 期と増殖期の
細胞内の違いを明らかにし、G0 期細胞の特徴を捉える事が出来るが、変動した分子が
本当に G0 期に必須であるかは直接的には判断出来ない。私達は、網羅的かつ直接的
に G0 期での生存に必須な分子を同定したいと考えた。そのために、本研究室で所有
する 1015 株からなる温度感受性変異株ライブラリーを用いる事にした。このライブ
ラリーは本研究室において作製されたもので、h- leu1-32 eat1-GFP の遺伝子型を持
つ株に、N-メチル-N
-ニトロソグアニジン(150μg/mL)によりランダムに点変異が加
えられている(Hayashi et al., 2004)。leu1-32 は栄養要求性のマーカーであり、eat1
は核のクロマチン領域に局在する分子で、GFP との融合で核の観察が容易となるため、
ライブラリー作製当初の実験に有用であったこの株が用いられたようである。点変異
が加えられ形成された約 20 万コロニーは、富栄養培地である YPD プレート上で 26℃
または 36℃で培養され、26℃では増殖出来るが 36℃では増殖出来ない 1015 株が温度
感受性株として樹立された。この温度感受性株ライブラリーのそれぞれの株の培養液
から窒素源を枯渇させて G0 期に導入し、高温にシフトした際、変異が入った遺伝子
が G0 期の構築に必須であれば、異常を示し、G0 期での生存が維持出来なくなること
を予測した。そして、これらの遺伝子を同定し、その G0 期での機能を解析すること
により、網羅的かつ直接的に G0 期構築に必須な機能を解明出来ると考えた。また、
これら G0 期で生存を維持出来なくなる株は、もともと増殖期で温度感受性を示した
株のライブラリーから始まっているため、G0 期でも増殖期でも必要な遺伝子に変異が
入っていると言える。よって、これらの遺伝子の同定により super housekeeping
ともいうべき生命の維持において核となる機能が見えて来る事も期待出来る。本研究
ではこれらの予測に基づき、実験を行った。
実験の戦略
G0 期で生存率を落とす変異株を選別するために、温度感受性変異株ライブラリーの
それぞれの株において、窒素源枯渇前と枯渇 24 時間後、さらに G0 期導入後温度を 37℃
にシフトアップしたものとそのままの状態(26℃)で 72 時間培養後の生存率を測定
した(図 6)。野生株では窒素源枯渇 24 時間後には G0 期へ導入されているため、窒素
源枯渇 24 時間後に生存率を落とす株は G0 期導入時に必要な遺伝子に変異が入ってい
16
G0
entry
G0
maintenance
EMM2
EMM2-N
37°C
610 ts
mutants
-N
Temp.
shift
26°C
26°C
4
3
26°C
VE
Viability
measurement
-N 24h
1
-N 96h
2
YPD plate
26ºC
図6. G0期の生存が阻害される変異株選別の方法。
610株の温度感受性株は窒素源枯渇前、窒素源枯渇24時間後、更に72時間37℃または26℃で培
養した後の生存率を測定した。詳細は本文中に記載。
17
るものと考えられる。また、窒素源枯渇 24 時間後の生存率は維持されているが、温
度シフトアップ 72 時間後に生存率を落とす株は G0 期の維持に必要な遺伝子に変異が
入っているものと考えられる。このようにして G0 期導入時と維持時に欠陥のある変
異株が選別された後は、責任遺伝子を決定し、G0 期における機能の解析を行った。
18
材料と方法
菌株および培地
増殖期で温度感受性(ts)を示す変異株 1015 株のライブラリーは以前、本研究室
においてニトロソグアニジン(150μg/ml)によるランダムミュータジェネシスにより
作製され、保存されていた(Hayashi et al., 2004)。これらの株は富栄養培地 YPD (2%
[w/v] polypepton, 1% [w/v] yeast extract, 2% [w/v] glucose)において 26℃では
増殖するが、36℃では増殖出来ないものとして単離されてきた。このライブラリーの
親株は、野生株に eat1-GFP と leu1-32 が含まれている株であったが、結果で述べる
様に、これらマーカー遺伝子が今回のスクリーニングで行う生存率測定でのコロニー
形成を阻害するため、これらのマーカー遺伝子を除去した(図 7)。マーカー遺伝子を
除去するために、まずライブラリーそれぞれの株と野生株を掛け合わせ、接合用培地
MEA プレート上(3% [w/v] malt extract, 2% [w/v] agar)において 26℃で約 48 時間
培養し、胞子を形成させた。この後、テトラッド法の場合は合成培地 EMM2(Mitchison,
1970)プレート上にシンガーMSM システム 300(シンガー)を用いて胞子を並べた。ラ
ンダムスポア法の場合は形成された接合子を 1.5mL チューブ中で 0.5%βグルクロシ
ダーゼと一晩反応させた後、EMM2 プレート上に反応液を撒いた。βグルクロシダーゼ
はカタツムリの消化酵素で、胞子嚢や胞子になっていない細胞を消化する。EMM2 プレ
ートはロイシンの含まれない合成培地であるためこのプレート上で leu1-32 の変異を
持たないコロニーが選別される。ここで生えて来たコロニーを富栄養培地 YPD にフロ
キシン B (Wako)を加えたプレートを使ってレプリカを 2 枚作製した。フロキシン B
はマグダラレッド(MR)とも呼ばれ、死細胞に取り込まれてコロニーを赤く染め、ま
た毒性もないことから、生存判定を簡便にするために用いた(Kucsera et al., 2000)。
このレプリカプレートを 1 枚は 26℃、もう 1 枚は 36℃で 48 時間培養し、温度感受性
を調べた。生えて来たコロニーの中で、26℃では正常な白いコロニーで、36℃では赤
か全く生えてこないコロニーを選び、そのコロニーを蛍光顕微鏡下(Zeiss
Axiovision2)で GFP 蛍光を観察した。核に GFP 蛍光が見られない、eat1-GFP が入って
いないコロニーを選んだ。こうして得られたコロニーは ts- leu+ GFP-であるが、最
後にもう一度 YPD-MR プレートにプレーティングし、26℃と 36℃で培養し温度感受性
を確認した。以上の操作により本研究で行うスクリーニングに必要な新たなライブラ
リーを完成させた。
19
WT
温度感受性変異株
レプリカ作製
(YPD+MRプレート)
26℃/36℃,2日
TS- 選別
26℃
β-glucurosidase処理
一晩
接合
2days
EMM2+Nにプレーティング
Leu+ 選別
36℃
蛍光顕微鏡観察
GFP- 選別
温度感受性の再確認後、保存
(YPD+MRプレート)
T
W
GFP+
GFP26℃
36℃
図7. ランダムスポア法によるマーカー遺伝子除去の方法。
本研究室で保有する温度感受性変異株ライブラリーからleu1-32, eat1-GFPのマーカー遺伝子を除
去した。詳細は本文中に記載。
20
窒素源枯渇と生存率測定
新たなライブラリー中の各株は窒素源枯渇前と枯渇 24 時間後、更に 72 時間後の生
存率を測定した(図 6)。窒素源枯渇は報告されている方法(Su et al., 1996)を用いた。
要約すると、EMM2 液体培地下で対数増殖期にある細胞を 2
106 個/mL の濃度までウォ
ーターバス内で震盪培養した後、ニトロセルロース膜(0.45μm ポアサイズ)を使って
vacuum filtration により回収した。EMM2 から窒素源である塩化アンモニウムを除去
した EMM2-N 液体培地で2回洗浄した後、EMM2-N 液体培地中に懸濁した。懸濁後の培
養液は 24 時間、26℃で培養した後、2 分割し、片方は 26℃、もう一方は 37℃に設定
したウォーターバス内で 72 時間震盪培養した。生存率の測定点では Sysmex CDA-500
細胞数計測器を用いて細胞濃度を計測し、その値から 1 プレート 300 個ずつとなるよ
うに培養液を希釈し、YPD プレート上にプレーティングした。プレーティングされた
YPD プレートは 26℃で約6日間培養した後、形成されたコロニー数を計測した。生存
率はプレーティングした細胞数に対する形成されたコロニー数の割合として、パーセ
ンテージで示した。
責任遺伝子の同定
以前に、この変異株ライブラリーの多くの株において、ゲノムライブラリーを用い
た形質転換により温度感受性を抑制するプラスミドが得られており、プラスミドに挿
入されている遺伝子群が明らかにされていた(Hayashi et al., 2004)。このプラスミ
ド情報を基に近隣にマーカー遺伝子をもっている株と掛け合わせ四分子解析により
温度感受性表現型とのリンケージを調べる他、DNA シークエンシングによる変異場所
決定により、各株の責任遺伝子を同定した。四分子解析は本研究室の畠中内子博士の
協力によりシンガーMSM システム 300(シンガー)を用いて行われた。DNA シークエン
シングは各株のゲノムを採取し(Gen とるくん、Takara), 標的とする遺伝子の読み枠
に前後約 50 ベースを含めた部分を読むためのプライマーを設計し、PCR (KOD-plus,
東洋紡)で増殖し、PCR purification kit (QIAGEN)を用いて精製した。精製産物を 1
μL 用い、20μL スケールで試薬に Big Dye v.3.1 (Applied Biosystems)を用い、3120
Genetic Analyzer (Applied Biosystems)で塩基配列の解読を行った。各株 3 サンプ
ルずつ独立に解読を行い、野生株の配列と比較する事によって変異場所を決定した。
21
遺伝学的手法
基本的に Gutz et al.(Gutz et al., 1974)に従った。分裂酵母の形質転換にはリチ
ウム法(Ito et al., 1983)を用いた。
FACS による DNA 含有量の測定
方法は以前の報告(Costello et al., 1986)に従った。要約すると、1
107 個の細
胞を集菌し、蒸留水で洗浄後、50%エタノールに懸濁し、4℃で半日以上固定した。遠
心してエタノールを除去し、細胞を 50mM クエン酸ナトリウム溶液 (pH7)で 2 回洗浄
後、1mg/mL の RNaseA を含むクエン酸ナトリウム溶液に懸濁し、37℃, 3 時間保温し
て RNA を分解した。懸濁液の一部をシース液 (Becton Dickinson)で希釈し、12.5μ
g/mL のヨウ化プロピジウムで DNA 染色した。測定前に超音波処理をした後、
FACSCalibur (Becton Dickinson)で DNA 含有量の測定を行った。
顕微鏡による形態観察
核の観察では DAPI 染色を行った。まず酵母培養液に 1/10 量の 20%グルタルアルデ
ヒドを添加し、氷上で 10 分間固定した後、PBS で 3 回洗浄を行った。その後、スライ
ドグラス上で DAPI (25μg/ml)を添加して蛍光顕微鏡で観察した。
液胞の観察は液胞膜を染色する N-(3-triethylammoniumpropyl)-4-(6-(4-(diethyl
-amino) phenyl) hexatrienyl) pyridinium dibromide (FM4-64; Invitrogen)(Higgs
and Pollard, 2001)を用い、Gachet らの方法に従って行った(Gachet et al., 2005)。
アクチンの観察にはローダミン•ファロイジン(Wieland, 1986)を用いて行った。酵
母培養液に 1/10 量の 30%パラフォルムアルデヒドを添加し、26℃,1 時間の震盪培養
にて細胞を固定した。その後、細胞を 3 回、PEM バッファー (100mM Pipes, 1mM EGTA,
1mM MgSO4)で洗浄した後、1% Triton を加えた PEM バッファーに懸濁した後、再度 3
回 PEM バッファーで洗浄した。洗浄後の細胞に 1.5μM のローダミン•ファロイジン
(Invitrogen)を加え、4℃で 30 分間、遮光して回転培養を行った後、蛍光顕微鏡で観
察を行った。
蛍光顕微鏡観察には 100W ハロゲンランプと位相差照明装置、および 100 倍位相差
対物レンズを備えた AxioVision2 顕微鏡(Zeiss)、または DeltaVison Spectris
restoration 顕微鏡(Applied Precision LLC)を用いた。撮影には CH350L CCD カメラ(浜
22
松ホトニクス)を使用し、得られた画像は付属のコンピューターによりデジタル化さ
れ、Adobe Photoshop ソフトウェアを用いて、情報の線形性を失わない様に注意して
コントラスト補正、疑似着色を行った。
映画撮影
映画は DeltaVison Spectris restoration 顕微鏡(Applied Precision LLC)と CH350L
CCD カメラ(浜松ホトニクス)を使用して撮影した。撮影に使用した細胞はガラス底の
カルチャーディッシュ(MatTek)に乗せ、上から目的に沿った寒天培地片を乗せて細胞
を固定した。寒天培地片は窒素源枯渇後の細胞を観察する場合には EMM2-N,窒素源再
添加後の細胞を観察する場合には YPD を使用した。撮影はタイムラプスモードを使い、
10 分間隔で経時的に行い、15 または 20 時間行った。画像は QuickTime7 Pro ソフト
ウェアを用いて映画化し、60 分/秒のプレイバック率で再生した。本報告では映画の
一部を抜き出して図として示した。
透過型電子顕微鏡
電子顕微鏡写真は吉田智子技術員の協力により撮影された。まず酵母培養液は 2%
グルタルアルデヒドを含む 100mM リン酸バッファー(pH7.2)で 26℃、2 時間の震盪培
養により固定され、更に 2%の potassium permanganate で 4℃、一晩の固定がされた。
その後、Epon812(TAAB)で包埋され、ミクロトーム(EM UC6, Leica)により超薄切片を
作製した。超薄切片は 2% urasyl acetate と Raynold
s lead citrate で染色され、
TEM JEM1230R(JEOL)により 100kV で観察した。
蛋白質量測定
蛋白質の抽出には TCA(Trichloroacetic acid)沈殿法を用いた。酵母培養液に 20%
になるように TCA を加えて固定後、遠心にてペレット化して、10%TCA で洗浄の後、
液体窒素で急速冷凍した。遠心用チューブ内で再度 10%TCA に懸濁後、グラスビーズ
(直径 0.5mm)を加え、マルチビーズショッカーMB601U(安井器械)で激しく混合する
事により細胞を破砕した。破砕後、遠心用チューブの底に針(20G)で穴をあけ、1.5mL
チューブを下に重ねて遠心することによりグラスビーズを除去し、細胞抽出液を回収
23
した。抽出液は更に遠心し、細胞壁や油分等の debris を取り除いた後、1/40 量の 2メルカプトエタノールを加えた 1
LDS サンプルバッファー(Invitrogen)に懸濁後、
70℃、10 分で変性させた。蛋白質量はブラッドフォード法(Protein Assay, Bio-Rad)
を用い、595nm の吸光度から測定した。
ウエスタンブロット
12%SDS ポリアクリルアミドゲルの各ウェルに蛋白質量が 20μg ずつになるように
のせ、電気泳動を行った。泳動後のゲルからニトロセルロース膜に Trns-Blot
(Bio-Rad)を用いて電気泳動的に蛋白質を転写した。Trans-Blot を用いる際、60mM
Tris, 127mM グリシン, 20%エタノールをバッファーとして定電圧 75V で 2 時間転写し
た。転写後のニトロセルロース膜は 5%スキムミルクに 4℃、一晩浸してブロッキン
グ処理を施した後、スキムミルクで希釈した一次抗体と室温で 1 時間反応させた。一
次抗体には抗 Rum1 抗体 (S.Moreno 博士からの贈物), 抗 Cig2 抗体 (H.Yamano 博士か
らの贈物), 抗 Cdc13 抗体, 抗 PSTAIR 抗体 (Y.Nagahama 博士からの贈物), 抗
α-tubulin 抗体 (K.Gull 博士からの贈物), 抗 GFP 抗体をそれぞれ用い、PBS+0.2%
tween20 で洗浄後、二次抗体として、horseradish peroxidase で標識した抗マウス、
または抗ラビット IgG 抗体と室温で1時間反応させた。PBS+0.2% tween20 で洗浄後、
ELC chemiluminescence システム(Amersham)による化学発光法を用いて、LAS3000
(Fuji Film)により蛋白質を検出した。
マイクロアレイ解析
トータル RNA の抽出には 5
106 個/mL の濃度の酵母培養液 100mL を遠心により集菌
し、直ちに液体窒素で凍結した。凍結したペレットからは Acid phenol 法によりトー
タル RNA を抽出した。Acid phenol 法は Lyne et al.(Lyne et al., 2003)に記載され
ている方法に従った。トータル RNA は Oligotex-dT30 <super> mRNA purification kit
(Takara)を使って polyA RNA を精製した。精製された polyA RNA (>2μg)は、cDNA に
逆転写を行った後、再度、Oligo dT プライマーを用いて IVT ラベルを付加しながら転
写を行った(GeneChip reagents, Affymetrix)。ラベルされたターゲッ ト RNA は
GeneChip Yeast2.0 (Affymetrix)に付加した後、45℃で 16 時間回転しながらハイブ
リダイゼーションを行った。その後、Fluidics Station 450 (Affymetrix)を使って
洗浄を行った後、GeneChip Scanner 3000 (Affymetrix)を用いてスキャニングを行っ
24
た。スキャンされたデータは GeneSpring 7.3.1 ソフトウェア (Agilent)で解析を行
い、計測された蛍光輝度は RMA (robust multi-array)ノーマライズ法により補正した。
25
結果
leu1-32, eat1-GFP は G0 期導入後の窒素源再添加において増殖遅延を引
き起こす
温度感受性変異株ライブラリーを使用するにあたって、その親株に入っている
leu1-32 や eat1-GFP の遺伝子型が生存率測定の障害にならないかを検討した。親株の
培養液から窒素源を枯渇し、24 時間毎に生存率を測定したが、窒素源枯渇 24 時間後
(以降、全ての実験で窒素源枯渇 24 時間後までは 26℃で培養している)には生存率
が 40%以下に低下していた(図 8)。26℃で培養を続けると生存率は更に低下し、96
時間後には 20%近くまで減少していた。一方、24 時間後 37℃に温度シフトすると生
存率は 100%近くまで回復した。これらの実験ではプレーティング後 6 日間、26℃で
培養後にコロニーカウントを行って生存率を測定していたが、マイクロコロニーが存
在していた事から、更に 6 日後に再度コロニーカウントを行った。その結果、温度シ
フトしていない 26℃のものはコロニー数が 3 倍以上に増えた(図 9)。37℃と 42℃に
温度シフトして 3 時間培養したものも同様に調べたが、プレーティング後の長期培養
で若干のコロニー数の増加を観察したものの 26℃ほどの増加は見られなかった。野生
株ではこのような現象は見られない事から、leu1-32, eat1-GFP が 26℃培養において
コロニー形成の遅延を引き起こしていると考えられた。この特性は、コロニー形成能
による生存率測定を基にしたスクリーニングを行う上での障害となるため、leu1-32,
eat1-GFP の背景を野生株とのバッククロスにより取り除き、ニトロソグアニジンによ
って加えられた変異のみを持つライブラリーを作り直した。
1015 株のライブラリーから 610 株のニトロソグアニジンによる変異だけ
を持つライブラリーを作製した
先にも述べた様に、1015 株は、これまでに温度感受性を相補するプラスミド上の遺
伝子群が明らかになっていた。本研究では G0 期で欠陥を示すそれぞれの株の責任遺
伝子を決定する事を念頭に置いているため、この情報は非常に重要であった。もし、
ここで温度感受性を相補するプラスミドが獲得されていない場合、責任遺伝子を決定
するのは困難な事が予測されたため、そのような株はバッククロスから除外した。ま
た既に責任遺伝子が決められており、その遺伝子が G0 期の生存率維持に不要である
事が分かっている株も除外した。こうした株を除外した 669 株を用いて、野生株とバ
26
26℃
26℃
37℃
図8. 窒素源枯渇後の野生株, leu1-32, eat1-GFP株,mts3-1変異株の生存率の変化。
各株の窒素源枯渇前(0h)と窒素源枯渇24, 48, 72, 96時間後26℃(上)または37℃(下)の生存率
を測定し、グラフ化した。mts3-1変異株は26Sプロテアソームの変異株で窒素源枯渇後の温度シフト
により生存率低下が確認されているためコントロールとして用いた。 leu1-32, eat1-GFP株は窒素源
枯渇後、26℃で生存率を低下させる。しかし長期培養で生存率は回復している(詳細は本文中に記
載)。
27
プレーティング
6日後
プレーティング
12日後
コロニー数
コロニー数
54
185
26℃
37℃
180
215
220
230
42℃
図9. leu1-32, eat1-GFP株は生存率測定の際、コロニー形成が遅延する。
leu1-32, eat1-GFP株を窒素源枯渇24時間後さらに、26,37,42℃で3時間培養し、YPDプレートに
300細胞を撒いて、コロニー形成数を測定した。コロニーはプレーティング6日後では生え揃わず、コ
ロニー形成の遅延が観察された。野生株では6日後には撒いた細胞のコロニーが生え揃う。
28
ッククロスを行った。このうち 90 株についてはテトラッド法により、残りの 579 株
についてはランダムスポア法によりバッククロスを行い、600 のニトロソグアニジン
による変異のみを持つ株が得られた。約 10%に当たる 69 株は胞子形成能が無いため
バッククロスが出来ない、責任遺伝子がマーカー遺伝子に近いためマーカー遺伝子を
外す事が出来ない等の理由でニトロソグアニジンによる変異のみを持つ株が樹立出
来なかった。得られた 600 株に、既に本研究室でバッククロスされていた 10 株を加
え、計 610 株のニトロソグアニジンによる変異のみを持つ新しいライブラリーを樹立
した(図 10)。
610 株の中で 13 株が窒素源枯渇 24 時間後に生存率を 35%未満に低下さ
せ、その中から 7 種類の責任遺伝子を決定した
(この実験中の四分子解析は畠中内子博士によって行われた)
610 株、それぞれの株の生存率を測定し、窒素源を枯渇させて 24 時間後とそれから
更に 72 時間培養後、測定した生存率を表 1 に示した。野生株では窒素源枯渇 24 時間
後には G0 期に入っている。610 株の変異株も 9 割近くが窒素源枯渇 24 時間後、70%
以上の生存率を維持しており、多くが小さく丸い G0 期細胞様の形態をしていた。し
かしながら、窒素源枯渇 24 時間後に生存率を落とす株も存在し、これらの株は温度
シフトなしでも窒素源枯渇のみで生存率の低下を起こす重篤な変異が入っているこ
と、更に変異が入っている遺伝子が G0 期の導入時に必要であることが疑われた。そ
の中でも生存率を 35%未満に落とす特に重篤な株が 13 株あった(#318, 319, 342, 507,
532, 558, 601, 626, 642, 805, 909, 982, 989)。これらの株の責任遺伝子を特定す
るために、既にプラスミドライブラリーによる相補実験で挙がっていた候補遺伝子を
参考に、四分子解析と DNA シークエンシングを行った。このうち、#642 はミトコンド
リア局在の valine-tRNA リガーゼである vas1 の 523 番目のトリプトファンがストッ
プコドンに変異した nonsense mutation であることが分かったが、窒素源枯渇前から
生存率が 40%以下しかない株であったため、G0 期導入時に欠陥が現れたと考えにく
いため以降の解析から除外した。また、#342 も vas1 が, #601,805 はプロテインキ
ナーゼ C の受容体と考えられている cpc2、#626 は脱リン酸化酵素である ptc1 がそれ
ぞれ責任遺伝子の候補となっていたが、DNA シークエンシングの結果、変異は入って
おらず、これらは多コピーサプレッサーであることがわかった。これら 5 株を除いた
8 株については責任遺伝子を決定する事が出来た(図 11A)。#558, 982 は共にストレ
ス応答の MAP キナーゼキナーゼである Wis1 のそれぞれ 461 番目のグリシンがアスパ
ラギン酸に、307 番目のフェニルアラニンがセリンに変わっていた。また#989 は同じ
29
ts library 1015 strains
Tetrad
90 strains
Stocked
Not stocked
76 strains
14 strains
No or few spore
6 strains
No ts-,GFP- colony 8 strains
Random Spore
579 strains
Stocked
524 strains
Not stocked
No or few spore
No ts- colony
No GFP- colony
No record
55 strains
14 strains
31 strains
2 strains
8 strains
Not Back Crossed
376 strains
No Suppressor Plasmids
229 strains
Suppressed by known genes (eg. cut1) 137 strains
Already Back Crossed
10 strains
New library 610 strains
図10. 1015株の温度感受性ライブラリーからマーカー遺伝子leu1-32, eat1-GFPを取り除き、
610株の新ライブラリーを作製した。
30
strain #
24h(26ºC)
96h(26ºC)
96h(26!"37ºC)
strain #
24h(26ºC)
96h(26ºC)
96h(26!"37ºC)
strain #
24h(26ºC)
96h(26ºC)
96h(26!"37ºC)
strain #
24h(26ºC)
96h(26ºC)
96h(26!"37ºC)
strain #
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96h(26ºC)
96h(26!"37ºC)
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表1. 610株の窒素源枯渇後の生存率(%)。
strain#は元のライブラリーに対応した番号。24h(26℃)は26℃で窒素源枯渇24時間後、
96h(26℃)はさらに72時間後、 96h(26℃,37℃)は37℃に温度シフトして72時間後の生存率。
31
A
Strain
No
Mutant
genes
Mutation
sites
Products
Wild type
(WT)
Viability (%)
0h
24 h
Cell N
increase
Shape
DNA
100
100
3.5
1C
558
wis1
MAP kinase kinase
G461D
98
31
4.2
2C
982
wis1
MAP kinase kinase
F307S
88
<1
4.0
2C
989
sty1
Stress-activated MAP kinase
Q169→
Stop
93
2
4.4
2C
909
ypt5
(RAB5)
Rab5 GTPase homolog
C209R
87
1
1.4
2C
532
vam6
Guanyl-nucleotide exchange factor
Splicing
site
87
3
1.2
2C
319
vps11
Zinc finger ubiquitin ligase
W324→
Stop
75
19
1.2
2C
318
wsp1
(WASP)
WASP homolog
W44R
100
14
3.2
1C
507
end4
(Sla2)
Huntingtin-interacting protein
homolog
G73D
100
1
2.4
1C
B
ストレス応答
MAPキナーゼ経路
小胞膜融合
エンドサイトーシス
P
Wis1
MAPKK
Sty1
MAPK
Ypt5
RAB5
Vam6
VPS39
HOPS
Vps11
PEP5
Wsp1
LAS17
End4
SLA2
Actin
図11. 窒素源枯渇24時間後に生存率を落とす8株とその責任遺伝子。
(A)
8株の変異場所、生存率、窒素源枯渇24時間後の細胞数の変化(倍)、窒素源枯渇
24時間後の形状とDNA含有量を示す。
(B)
7種類の責任遺伝子を報告されている機能により3つに分類した。
32
くストレス応答の MAP キナーゼで Wis1 にリン酸化される Sty1 の 169 番目のグルタミ
ンの nonsense mutation であった。#909 は Rab5 GTPase ホモログである Ypt5 の 209
番 目 のシ ステイ ン がアル ギニ ンに 変 異し ており、#532 は小胞 膜融合に 関わる
GEF(Guanyl-nucleotide exchange factor)である vam6 のイントロン中のイントロン
アクセプターである 397−8 番目の塩基 AG が AA に変わっていた。また#319 も小胞膜融
合に関わる Zinc finger ドメインを持つ Vps11 の 324 番目のトリプトファンが
nonsense mutation になっていた。#318 は WASP ホモログの Wsp1 の 44 番目のトリプ
トファンがアルギニンに変わっており、#507 は Huntingtin-interacting protein ホ
モログの End4 の 73 番目のグリシンがアスパラギン酸に変わっていた。これらの 8 株
の責任遺伝子は生存率を落とす時期から G0 期の導入時に必要な遺伝子と予想され、
G0 期導入時におけるそれぞれの遺伝子の役割を解析することにした。解析にあたり、
これら 8 株の責任遺伝子産物の報告されている機能から 3 つのグループに大別した
(図 11B)。最初のグループはストレス応答に関わる MAP キナーゼ経路の wis1 変異株 2
株(#558 と#982)と sty1 変異株(#989)とした。wis1 変異株 2 株のうち、窒素源枯渇 24
時間後の生存率は#558 と#982、それぞれで 31%と 1%以下であり、この後の解析には生
存率の低下がより激しい#982 を wis1 変異株の代表として使った。2 つ目のグループ
は小胞膜融合に関わる遺伝子 vps11,vam6,ypt5 のそれぞれ変異株である#319, 532,
909 とした。3 つ目のグループはエンドサイトーシスに関わる遺伝子 wsp1 と end4 の
変異株である#318 と#507 とした。それぞれのグループごとに G0 期導入時の特徴を解
析した。
ストレス応答の MAP キナーゼ経路の変異株は窒素源枯渇後、細胞成長を
停止することが出来ない
(この実験中の電子顕微鏡の部分は吉田智子技術員によって行われた)
DNA シークエンシングにより変異場所を特定した結果、wis1-982 はキナーゼ活性ド
メインと報告されている 326-567 番目のアミノ酸配列(Nguyen et al., 2002)から 19
アミノ酸上流のフェニルアラニンがセリンに変わる点変異であり、sty1-989 は 169
番目のグルタミンがストップコドンに変わりキナーゼ活性ドメインの後半を失った
nonsense mutation であった。窒素源枯渇 24 時間後の wis1-982 と sty1-989 の様子を
DAPI 染色で観察したところ、細胞形態は増殖期と同様な円筒状であり、小さく丸い
G0 期特有の形状になっていなかった(図 12A)。そこで、分裂出来ないために円筒状
のままである事を疑い、窒素源枯渇後 3 時間毎に細胞数を測定した。しかし、変異株
の細胞数は野生型と同様に増加し、24 時間後には 4 倍以上と野生型以上の増加を示し
33
A
B
WT
wis1-558
sty1-989
WT
# of Cells
(10E6 cells)
wis1-982
10
8
sty1-989
wis1-982
4
2
1
C
wis1-982 sty1-989
0
Viability (%)
WT
wis1-982
sty1-989
0
Time after -N (h)
3
D
3
WT
6
wis1-982
sty1-989
6
24h
9
21
9
18
15
12
12
12
9
6
15
3
15
0
1C 2C
1C 2C
1C 2C
図12. wis1とsty1の変異株は窒素源枯渇後細胞成長を停止せず円筒状のまま、生存率
を低下させる。
(A)
野生株, wis1-558, wis1-982, sty1-989の窒素源枯渇24時間後のDAPI染色像。
(B)
野生株, wis1-982, sty1-989の窒素源枯渇後3時間毎の細胞数(上)と生存率
(下)の変化。
(C)
wis1-982, sty1-989の窒素源枯渇後3時間毎の微分干渉像。細胞は成長を止め
ていない。
(D)
野生株, wis1-982, sty1-989の窒素源枯渇後3時間毎のDNA含有量。
34
ていたため、細胞分裂は起こっている事がわかった(図 12B 上)。そこで、窒素源枯
渇後の細胞形態の変化を 10 分間隔で位相差顕微鏡を使って撮影し、映画を作製した
ところ、wis1-982 と sty1-989 共に細胞が増殖期同様に成長と分裂を繰り返していた
(図 12C に一部を示す)。野生株では窒素源枯渇直後に成長を止め、成長を伴わない 2
回の分裂を経て G0 期に進行するが(図 4)、これらの変異株では成長を止める事が出
来ていなかった。また、窒素源枯渇後の細胞の DNA 含有量の変化を 3 時間毎に測定す
ると、窒素源枯渇 24 時間後も増殖期同様に 2C ピークが高く、野生株の G0 期に見ら
れる 2C ピークから 1C ピークへの推移は殆ど見られなかった(図 12D)。更に窒素源枯
渇後の生存率の変化を 3 時間毎に測定した結果、これらの変異株は細胞が 2 回目の分
裂を終了する 12 時間後から生存率を低下している事がわかった(図 12B 下)。
細胞形態は窒素源枯渇前と枯渇後共に円筒状と類似しているが、2 回分裂後には生
存率を落としていたため、窒素源枯渇前と枯渇後の相違を検討した。まず、窒素源枯
渇前と枯渇 24 時間後の細胞長と蛋白質量を wis1-982 と sty1-989 それぞれで測定し、
野生株と比較したところ、窒素源枯渇前では変異株は細胞長で野生株の 1.5 倍、蛋白
質量は野生株の約 2 倍であった(図 13A)。しかし、窒素源枯渇後の変異株は細胞長で
野生株の約 2 倍あったものの、蛋白質量は野生株とほぼ同量となっていた(図 13B)。
この結果から wis1-982 と sty1-989 は窒素源枯渇により蛋白質の合成が不十分なまま
細胞成長を起こすため、細胞内の蛋白質濃度が低下していることが考えられた。十分
な窒素源を確保出来ない状態にも関わらず、増殖を止められない事が生存率を落とす
原因であると推測される。
更に wis1-982、sty1-989 の細胞内の様子を観察するために窒素源枯渇 24 時間後の
細胞を電子顕微鏡で観察した。変異株の中では核が肥大している様子が示されていた
(図 14A)。そこで、窒素源枯渇後の変異株細胞を DAPI 染色し、経時的に核形態の変
化を観察すると核の肥大化は窒素源枯渇 12 時間後頃から起こっていた(図 14B)。こ
れは変異株が 2 回分裂し生存率を減少させる時機と一致した。そのため、核の肥大化
と生存率の低下の関連が考えられるが、詳しい因果関係は今回の研究ではまだ良く分
かっていない。
窒素源枯渇後、wis1-982、sty1-989 では細胞周期制御分子 Rum1, Cdc13
の発現異常が起こる
序論でも述べた様に、窒素源枯渇後の野生株細胞は迅速に成長を停止するが、細胞
分裂は停止せず、2 回行われる事から細胞成長と細胞周期の制御は別々に行われてい
る事が考えられた。変異株では細胞成長の制御に異常がある事が確認されたが、細胞
35
A 増殖期
Ave.=11.3µm
WT
細胞数(100個中の分布)
蛋白量比
WT
wis1-982
Ave.=17.1µm
sty1-989
Ave.=17.9µm
B G0期(窒素源枯渇24時間後)
細胞長
蛋白量比
Ave.=5.5µm
WT
図13. 野生株, wis1-982, sty1-989は窒素
源枯渇後、細胞長を長いまま保って
いるが蛋白質量は野生株と同程度
になっている。
(A)
増殖期での野生株、wis1-558,
wis1-982, sty1-989の蛋白質量比
(左)と各株100個の細胞長の分布
(右)。
(B)
窒素源枯渇24時間後での野生株、
wis1-558, wis1-982, sty1-989の蛋
白質量比(左)と各株100個の細胞
長の分布(右)。
細胞数(100個中の分布)
WT
wis1-982
Ave.=10.8µm
sty1-989
Ave.=12.2µm
細胞長
36
A
wis1-982
sty1-989
Time after -N (h)
B
0(VE)
WT
3
6
9
12
15
18
21
24
wis1-982
sty1-989
図14. wis1-982, sty1-989は窒素源枯渇後、核が肥大化する。
(この実験中の電子顕微鏡の部分は吉田智子技術員によって行われた。)
(A)
wis1-982, sty1-989の窒素源枯渇24時間後の電子顕微鏡観察像。バーは1µm。
(B)
野生株, wis1-982, sty1-989の窒素源枯渇3時間毎のDAPI染色像。12時間後付近
から核の肥大が観察される。
37
周期の制御に異常がないかを確認するために、細胞周期制御分子の発現をウエスタン
ブロットで検出した(図 15)。野生株では CDK インヒビターである Rum1 の発現量が窒
素源枯渇 6 時間後に急激に増加し、それと対応して M 期サイクリンである Cdc13 の発
現量が減少する。この事から窒素源枯渇後約 6 時間で CDK の働きは失われるものと考
えられる。一方で wis1-982、sty1-989 の場合、窒素源枯渇後、Rum1 の増加は全く見
られず、また Cdc13 の発現量は高いまま維持されていた。Rum1 の増加は通常の G1 期
停止で起こる事が報告されている事から(Labib and Moreno, 1996; Moreno and Nurse,
1994)、これらの変異株は窒素源枯渇後も、G1 期での停止が機能しておらず、細胞周
期が回り続けている状態である事が示唆された。そこで、wis1-982、sty1-989 の窒素
源枯渇後の表現型の原因が Rum1 の発現異常にあることを検証するために、rum1 破壊
株を作製し、窒素源枯渇後の表現型を観察した。窒素源枯渇 24 時間後の rum1 破壊株
の生存率は約 60%と高く維持されており、細胞数は約 3.3 倍と野生株と遜色無く増加
していた。また細胞形態は小さく丸い G0 期特有の形態を示していたが、細胞当たり
の DNA 含有量は 2C ピークが高くなっていた(図 16A)。これらの特徴のうち、wis1-982、
sty1-989 の表現型と共通していたのは DNA 含有量であり、MAP キナーゼ経路の変異株
の中で細胞周期制御の異常が核の肥大化に繋がっている可能性が考えられる。しかし、
DNA 含有量以外の表現型は wis1-982、sty1-989 と異なっており、これらの異常は Rum1
以外に主な原因があると考えられる。
そこで、sty1 の標的分子であり、Wis1-Sty1 経路の転写因子である atf1 破壊株の
窒素源枯渇 24 時間後の表現型を調べた(図 16B)。atf1 破壊株の細胞を観察すると、
完全に丸い状態まで縮小してはいないものの小さくなっており、また生存率も 90%以
上と高く維持されていた。そこで sty1 の他の標的分子である pcr1, atf21 も破壊し
た、atf1, pcr1 二重破壊株と atf1, atf21, pcr1 三重破壊株についても同様に調べた
が、これらも同様に細胞は完全に丸い状態まで縮小してはいないものの小さくなって
おり生存率も維持されていた(図 16B)。これらの事実は、atf1, atf21, pcr1 といっ
た sty1 下流の転写因子が、wis1-982、sty1-989 の窒素源枯渇後の生存率低下の直接
の原因ではない事を示している。
小胞膜融合に関わる遺伝子 vps11,vam6,ypt5 変異株では窒素源枯渇後、
細胞分裂が起こらず、G0 期細胞の形成に欠陥が見られた
vps11-319, vam6-532, ypt5-909 の 3 株も窒素源枯渇 24 時間後に生存率を落とすグ
ループであるが、 ypt5-909 は窒素源枯渇直後から生存率を低下させたのに対し、
vps11-319, vam6-532 は 9 時間目以降から緩やかに低下させた(図 17A 下)。また興味
38
Time after -N (h)
0 3 6
WT
9 12 15 18 21 24
Time after -N (h)
0 3 6
9 12 15 18 21 24
wis1-982
Time after -N (h)
0 3 6
9 12 15 18 21 24
sty1-989
Rum1
Cdc13
Cig2
PSTAIR
TUB
図15. wis1-982, sty1-989は窒素源枯渇後、細胞周期制御分子の発現異常が見られた。
窒素源枯渇3時間毎に野生株, wis1-982, sty1-989の蛋白質抽出液を調整し、抗Rum1,
抗Cdc13,抗Cig2,抗PSTAIR,抗α-tubulin(TUB)の各抗体によるウエスタンブロットにより
各蛋白質を検出した。Rum1はCDKインヒビターであり、Cdc2による細胞周期の進行を阻
害する。Cdc13はG2/M期移行時のBタイプサイクリン。Cig2はG1/S期移行時のBタイプサ
イクリン。PSTAIRはCdc2に含まれるPSTAIRへリックス。α-tubulinはコントロールとして検
出した。窒素源枯渇後、野生株ではRum1の発現量が増加し、Cdc13の発現量が減少す
るが、wis1-982, sty1-989ではRum1の発現が殆ど起こらず、Cdc13の発現量は減少しな
かった。
39
A
∆rum1
増殖期
生存率
G0
-N, 24h
26ºC
細胞数
3.3倍
1C 2C
1C 2C
-N 24h, 26ºC
B
-N 96h, 26ºC
-N 24h
Δatf1
生存率
%
Δatf1, pcr1
Δatf1, atf21, pcr1
図16. rum1破壊株、atf1破壊株、atf1,pcr1二重破壊株、atf1,atf21,pcr1三重破壊株は
窒素源枯渇24時間後での生存率を維持し、小さく丸い細胞形状となる。
(A)
rum1破壊株の増殖期とG0期(窒素源枯渇24時間後)の微分干渉像、DAPI染色
像、DNA含有量と生存率。
(B)
atf1破壊株、atf1,pcr1二重破壊株、atf1,atf21,pcr1三重破壊株のG0期(窒素源
枯渇24時間後)のDAPI染色像と生存率。
40
A
B
# of Cells
(10E6 cells)
10
8
WT
4
vps11-319
2
ypt5-909
vps11-319
vam6-532
1
vam6-532
Viability (%)
WT
vam6-532
vps11-319
ypt5-909
1C 2C
ypt5-909
Time after -N (h)
図17. vps11-319, vam6-532, ypt5-909は窒素源枯渇後、細胞数を増加せずに生存率を
低下させる。また、窒素源枯渇24時間後のDNA含有量は2Cのままである。
(A)
野生株, vps11-319, vam6-532, ypt5-909の窒素源枯渇後3時間毎の細胞数(上)
と生存率(下)の変化。
(B)
野生株, vps11-319, vam6-532, ypt5-909の窒素源枯渇24時間後のDNA含有量
(左)とDAPI染色像(右)。
41
深い事にこれら 3 株は窒素源枯渇 24 時間後も殆ど細胞数の増加が見られず、細胞分
裂が起こっていない事がわかった(図 17A 上)。また DAPI で観察した細胞形態は洋梨
状で小さく丸い G0 様の形態になっておらず、FACS で測定した DNA 含有量も 2C ピーク
が高いままであった(図 17B)。そこで、細胞周期の制御因子である Rum1, Cdc13 等の
発現量をウエスタンブロットで検出したところ、Rum1 の発現は見られず、Cdc13 のレ
ベルは高いまま維持されていた(図 18)。よってこれら変異株の細胞状態は窒素源枯
渇後も、分裂が起こらず、G0 期細胞様の小さく丸い形態をとれずに、増殖期の特徴を
多く残したまま生存率を落としている事がわかった。
vps11-319,vam6-532,ypt5-909 では窒素源枯渇後、細胞質に小胞の蓄積が
観察される
(この実験中の電子顕微鏡の部分は吉田智子技術員によって行われた)
vps11-319, vam6-532, ypt5-909 の 3 株は小胞膜融合に関わると報告のある遺伝子
の変異株である。 vps11 と vam6 の遺伝子産物はそれぞれ GTP exchange factor
(GEF),(Wurmser et al., 2000),Ring-finger ubiquitin ligase(Rieder and Emr, 1997)
と報告されており、共に小胞膜融合に必須である HOPS 複合体の構成分子である
(Starai et al., 2008)。ypt5 は Rab5 のホモログである small GTPase であり、小胞
膜融合に必須とされる(Armstrong et al., 1993)。ypt5 の変異場所は C 末端の 209
番目のシステインがアルギニンに変わっている。Ypt 蛋白質 C 末端の CXC はゲラニル
ゲラニル化修飾を受けるために必須な場所であり、ypt5 の 209 番目のシステインは
CXC の最初の C に当たる。そのため、この変異は small GTPase の活性化に必要なゲラ
ニルゲラニル化修飾を阻害していると考えられる。近年の報告では Rab5 と HOPS 複合
体は phagosome が成熟する経路に属し、Rab5 が HOPS 複合体の上流に位置する事が報
告されている(Kinchen et al., 2008)。そこで、変異株の特徴をより詳しく把握する
ために、FM4-64 による液胞膜の染色を行った。野生株では大きな丸い液胞が観察され
たが、vps11-319 と vam6-532 では小さな粒状になっていた(図 19A)。ypt5-909 では
野生株でみられたサイズと小さい粒状の液胞の両方が存在していた。また、電子顕微
鏡を使い、細胞内を観察すると、vps11-319 と vam6-532 では細胞質に無数の小胞が溜
まっていた(図 19C,D, 野生株コントロールは図 19B)。また ypt5-909 でもこれらの
小胞が見られたが、数は vps11-319 と vam6-532 に比べて少なく、液胞の縁に隣接し
て存在していた(図 19E)。これら細胞質の小胞は、融合出来ずに粒状に残った液胞、
液胞の precursor、または、小胞中にオルガネラを含むものも観察されることから、
液胞と融合する前の autophagosome である可能性が高い。これらの観察からは、
42
Time after -N (h)
0 3
WT
6
9 12 24
Time after -N (h)
0 3 6 9 12 24
vps11-319
Rum1
Cdc13
Cig2
PSTAIR
TUB
vam6-532
ypt5-909
Rum1
Cdc13
Cig2
PSTAIR
TUB
図18. vps11-319, vam6-532, ypt5-909は窒素源枯渇後、細胞周期制御分子の発現異常
が見られた。
窒素源枯渇3時間毎に野生株, vps11-319, vam6-532, ypt5-909の蛋白質抽出液を調
整し、抗Rum1,抗Cdc13,抗Cig2,抗PSTAIR,抗α-tubulin(TUB)の各抗体によるウエスタ
ンブロットにより各蛋白質を検出した。窒素源枯渇後、野生株ではRum1の発現量が増加
し、Cdc13の発現量が減少するが、 vps11-319, vam6-532, ypt5-909ではRum1の発現
が殆ど起こらず、Cdc13の発現量はほとんど減少しなかった。
43
WT
vps11-319
vam6-532
ypt5-909
FM4-64
A
B
WT
C
vps11-319
V
N
L
D
vam6-532
E
ypt5-909
図19. vps11-319, vam6-532, ypt5-909は窒素源枯渇後、細胞質に小胞の蓄積が観察さ
れる。(この実験中の電子顕微鏡の部分は吉田智子技術員によって行われた。)
(A)
野生株, vps11-319, vam6-532, ypt5-909の窒素源枯渇24時間後のFM4-64(液胞)
染色像。
(B-E) 野生株(B), vps11-319 (C), vam6-532 (D), ypt5-909(E)の窒素源枯渇24時間後の
電子顕微鏡観察像。N:核、V:液胞、L:脂質。バーは1µm。
44
ypt5-909 の方が vps11-319 や vam6-532 に比べ、生存率低下が激しく起こるにも関わ
らず、液胞の形態異常や小胞の蓄積が穏やかであることがわかった。これは窒素源枯
渇後の ypt5-909 の急激な生存率低下が、増殖期の特徴を多く残す結果となっている
可能性が考えられる。
これらの株の変異遺伝子が小胞膜融合に関わっているという報告から小胞が融合
出来ずに細胞質に蓄積する表現型は理解しやすいものであった。しかしここで非常に
興味深いのは、制限温度に上げる事なく、窒素源の枯渇のみでこのような表現型が見
られた事であり、この事は窒素源枯渇後、非常に活発な小胞の合成が起こっている事
を示唆している。これらの変異株内では窒素源枯渇後の急激な小胞の蓄積により、細
胞分裂等他の細胞内活動が阻害され、細胞死に追い込まれている事が考えられる。
エンドサイトーシスに関わる遺伝子 wsp1 と end4 の変異株の窒素源枯渇
後の表現型は野生株と類似しており、end4-507 は窒素源枯渇下での長期
培養により生存率を回復させる
窒素源枯渇のみで生存率を低下する株の最後のグループはエンドサイトーシスに
関わると報告がある wsp1-318 と end4-507 である。これら 2 株の培養液から窒素源を
枯渇させ 24 時間後に DAPI で形態を観察したところ、細胞は小さく丸い G0 期細胞様
になっており、また FACS による DNA 含有量も 1C ピークが高くなっていた(図 20A)。
更に細胞数も野生株と同等に増加していた(図 20B 上)。そこで窒素源枯渇後、詳し
く生存率を調べてみると、wsp1-318 は 12 時間後から急激に生存率を低下したのに対
し、end4-507 では窒素源枯渇直後から生存率を落としている事が分かった(図 20B
下)。しかしながら、end4-507 は 26℃で 24 時間培養し、更に 72 時間後に生存率を測
定した際には生存率が 40%以上に回復していた。そこで再実験を行い窒素源枯渇 144
時間後までの生存率を測定したところ、窒素源枯渇 48 時間までは生存率がほぼ 0%で
あったにもかかわらず、その後、生存率は回復し、144 時間後には 80%を越え野生株
と同等になる事が分かった(図 20B 下)。 end4-507 は窒素源を枯渇させた環境に長時
間置かれる事で
適応
している可能性が考えられる。
wsp1-318 と end4-507 は窒素源枯渇後に浸透圧の変化に対し感受性にな
る
(この実験中の電子顕微鏡の部分は吉田智子技術員によって行われた)
45
B
wsp1-318
10
8
# of Cells
(10E6 cells)
A
WT
wsp1-318
4
end4-507
2
1
1C
2C
end4-507
Viability (%)
WT
wsp1-318
end4-507
Time after -N (h)
1C
2C
図20. wsp1-318, end4-507は窒素源枯渇後、形状的に野生株と差がないまま生存率を
低下させる。また、窒素源枯渇24時間後のDNA含有量も1Cになっている。
(A)
wsp1-318, end4-507の窒素源枯渇24時間後のDAPI染色像とDNA含有量。
(B)
wsp1-318, end4-507の窒素源枯渇後3時間毎の細胞数(上)と生存率(下)の変
化。 end4-507の生存率は窒素源枯渇96時間以降回復している。詳細は本文中。
46
wsp1-318 と end4-507 は共に N 末端の種間で保存されている領域に変異が見つかっ
た。wsp1-318 は EVH1/WH1 ドメイン(Higgs and Pollard, 2001)中の W44R の、end4-507
は ANTH ドメイン(Kay et al., 1999)中の G73D のそれぞれ点変異である。wsp1(出芽
酵母では Las17)はヒトにおいて免疫不全と血小板減少による出血で骨髄移植がなけ
れば幼少で死に至る Wiskott-Aldrich 症候群(Notarangelo et al., 2005)の原因遺伝
子 WASP のホモログで、この疾病の患者は EVH1/WH1 ドメインに変異が入っている。ま
た end4(出芽酵母では Sla2)はハンチントン病の原因遺伝子である Huntingtin と相互
作用する蛋白質として報告されている(Engqvist-Goldstein et al., 1999; Kalchman
et al., 1997)。
また、wsp1 と end4 の生理的作用としてはエンドサイトーシスの際、共に細胞膜に
局在し、wsp1 はアクチンを招集し、細胞膜に局在化させる(Sirotkin et al., 2005)。
アクチンの伸長と共に、細胞膜が細胞内に陥入してエンドソームの前駆体が作られ、
最終的に end4 を含む複合体が細胞膜からエンドソームを切り離している事が報告さ
れている(Kaksonen et al., 2003)。この報告を裏付ける様に、窒素源枯渇 24 時間後
の細胞内のアクチン局在をローダミン•ファロイジンで染色して確認したところ、野
生株と end4-507 の中では細胞膜にアクチン局在を観察出来たが、wsp1-318 では細胞
膜へのアクチン局在が殆ど見られなかった(図 21A)。次に同時期の細胞内の構造を電
子顕微鏡で観察した。すると今度は wsp1-318 の細胞内は野生株と比較して目立った
変化はみられなかったが、end4-507 の細胞中には細胞膜付近にきのこ状の構造物が観
察された(図 21B, C)。この構造物は窒素源枯渇 24 時間後のほとんどの細胞に観察さ
れたが、生存率が回復する 96 時間後の細胞では見られなかった(写真は示さない)。
またきのこ状の構造の頭部分は多くの場合液胞と接合していることも観察された。こ
のきのこ状の構造は報告されている様にエンドソームの切り離しに欠陥があるため
見られたと推測され、生存率の低下と深く関係しているものと考えられる。
そこで、これらの変異株の死因を突き止めるため、窒素源枯渇 24 時間後の細胞を
富栄養培地である YPD プレートに移し、映画を撮影した。その結果、wsp1-318 では
13 時間以降、end4-507 では 9.5 時間以降から破裂や収縮によって、細胞が物理的に
壊れている様子が観察された(図 22A, B 左)。しかしながら、end4-507 の細胞を 96
時間窒素源枯渇状態に置き 適応 させてから YPD プレートに移した場合では、物理
的な破壊は見られず増殖サイクルを再開させた(図 22B 右)。しかし、興味深い事に
end4-507 は一極的な成長から増殖サイクルを再開し、野生株の両極的な成長とは対照
的であった(図 22C)。end4 が変異している事で両極的な成長が阻害されていると考
えられる(Castagnetti et al., 2005)。
映画によって見られた破裂や収縮の現象から私達はこれらの細胞が浸透圧の変化
により給水して破裂していると疑い、ソルビトールを加え、培地中の浸透圧を高めて
47
A
B
WT
wsp1-318
wsp1-318
C
end4-507
end4-507
図21. 窒素源枯渇後、 wsp1-318は細胞膜にアクチン局在が見られず、 end4-507は細胞膜
にきのこ状の構造物が観察された。 (この実験中の電子顕微鏡の部分は吉田智子技
術員によって行われた。)
(A)
野生株, wsp1-319,end4-507の窒素源枯渇24時間後のローダミン•ファロイジン(アクチ
ン;赤)とDAPI(核;緑)の二重染色像。
(B-C) wsp1-319 (B), end4-507 (C) の窒素源枯渇24時間後の電子顕微鏡観察像。end4507では細胞膜にきのこ状の構造物(赤矢印、拡大図)が観察された。バーは1µm。
48
A
wsp1-318 -N 24 h → YPD
00
B
12
end4-507 -N 24 h → YPD
00
14
13
14
-N 96 h → YPD
C
20
WT
-N 24 h → YPD
00
00
09
10
18
03
07
04
05
08
06
09
16
10
13
20
11.5
WT
D
wsp1-318
end4-507
-N +1.2M sorbitol
-N liquid for 24 h liquid for 24h
Plated on YPD Plated on YPD
-N+1.2M sorbitol
-N liquid for 24 h liquid for 24h
Plated on YPD Plated on YPD +
+1.2M sorbitol 1.2M sorbitol
図22. 窒素源枯渇後のwsp1-319, end4-507の細胞は浸透圧ストレス感受性を示す。
(A)
窒素源枯渇24時間後のwsp1-319を富栄養培地であるYPD寒天培地片に置いた後の
様子を撮影した微分干渉像。細胞が破裂または収縮している(白矢印)。数字は時間。
(B)
窒素源枯渇24時間後(左2列)または96時間後(右)のend4-507をYPD寒天培地片に
置いた後の様子を撮影した微分干渉像。24時間後の細胞は破裂または収縮が見られ
るが、96時間後の細胞は一極的な成長を見せた。数字は時間。
(C)
窒素源枯渇24時間後の野生株をYPD寒天培地片に置いた後の様子を撮影した微分
干渉像。細胞は両極的な成長を見せた。数字は時間。
(D)
窒素源枯渇直後のEMM2-N液体培地、またはYPDプレートに1.2Mソルビトールを加
え、 wsp1-319, end4-507の生存率が回復するかを実験した。 wsp1-319, end4-507
はソルビトールの添加で形成されるコロニー数が増加した。
49
生存率の変化を測定した。その結果、wsp1-318、end4-507 共に培地へ 1.2M ソルビト
ールを加える事でコロニー形成能が改善され、生存率の回復が確認された(図 22D)。
特に wsp1-318 は窒素源枯渇後の EMM2-N の液体培地に、end4-507 はその後窒素源を再
添加する YPD プレートにそれぞれ 1.2M ソルビトールを加えると効果的に回復した。
このことからエンドサイトーシスに関わる 2 つの変異株、wsp1-318、end4-507 は浸透
圧の変化に感受性のために G0 期導入時に生存率を落としていると考えられる。
G0 期維持時に生存率を 50%未満に落とす株は 164 株あり、その中の 34
株から 26 種類の責任遺伝子を決定した
(この実験中の四分子解析は畠中内子博士によって、変異株の増殖期制限温度下での
DAPI 撮影は林武志博士によって行われた)
私達は次に窒素源枯渇 24 時間、26℃で G0 期に導入し、その後 72 時間、37℃の高
温に温度シフトした際の生存率に注目した。この時に生存率を 50%未満に落とす株は
164 株あり、全体の約 1/4 であった。元のライブラリーは増殖期で温度感受性を示す
変異株であるため、この結果から増殖期で必要な約 3/4 の遺伝子が G0 期には必要な
い事が推測出来る。しかし、この推測は、G0 期に必要な遺伝子数を過少評価している
可能性があり、その理由は考察で述べようと思う。生存率を落とした株の中から、変
異表現型を相補するプラスミド情報で候補遺伝子が比較的少数である 34 株に絞り、
四分子解析や DNA シークエンシングの手法を用いて 26 種類の責任遺伝子を決定した
(表 2)。34 株は全て独自の変異を持っていたが、ssp1, prp4, dhp1 の 3 遺伝子は複
数の株における責任遺伝子であった。決定された遺伝子の産物を見ると、細胞のあら
ゆる場所において多種多様な働きを担っている事が分かった。このことから窒素源枯
渇後の細胞中でも活発な細胞活動が展開され、G0 期が積極的に維持されている様子が
想像された。また、これらの責任遺伝子を、報告されている機能を基に模式図(図 23)
で示すと、同じ経路に働く遺伝子群が見られ、G0 期維持に重要な機能が浮き彫りにさ
れてきた。遺伝子群の機能は大きく分けると、細胞周期制御、コヒージョンとクロマ
チンリモデリング、ATP 代謝、小胞輸送、細胞壁合成、RNA 合成•代謝に関わるもので
あった。
ここで、これら変異遺伝子を決定した株の増殖期制限温度(36ºC)と窒素源枯渇 24
時間後温度シフトした(37ºC,72h)細胞の DAPI 染色写真を図 24, 25 に示す(野生株及
び窒素源枯渇 24 時間後に生存率を落とす株についても示した)。窒素源枯渇 24 時間
(26℃)+72 時間(37℃)後の様子では多くの変異株が小さく丸い野生株と同様の形状
を示していたが、cdc13-563, cdc2-974, ssp1-412 は円筒状の形態を示していた。ま
50
Viability (%)
Cell N
increase
Shape
DNA
19
3.2
Pr
++
53
29
3.4
Ro
+
65
35
2.4
Ro
++
95
97
38
3.5
Sp
1C
100
100
37
2.7
Sp
1C
100
98
35
3.6
Sp
++
100
100
100
2
2.2
Sp
1C
100
88
100
45
2.9
Sp
1C
Strain No
Mutant gene
Product
Mutation site
Link
929
apl2
AP-1 adaptor complex subunit
N.D.
+
563
cdc13
cyclin
974
cdc2
cyclin-dependent protein kinase
901
SPAC10F6.03c /cts1
CTP synthase
N.D.
+
100
dhp1
5'-3' exoribonuclease
H229R
+
100
+
100
*1
154
506
SPBC19G7.07c
*4
/dmr1
0h
24 h
92
88
83
G282D
84
55
I35N
85
63
conserved fungal protein
96 h 26ºC 96 h 37ºC
452
fcp1
CTD phosphatase
R223K
439
fps1
geranyltranstransferase
N.D.
+
143
hcs1
3-hydroxy-3-methylglutaryl-CoA synthase
A365V
+
98
53
14
1
1.5
Sp
++
676
hrf1
COPII-coated vesicle component
L221P
+
100
100
95
0
2.6
Sp
+
33
mis16
Chromatin protein
Splicing site
+
40
43
31
17
2.2
Sp
+
450
mis4
chromosome cohesion factor Adherin/Scc2
N.D.
+
100
87
90
47
3
Sp
1C
mannosyltransferase complex subunit
N.D.
+
100
68
75
40
2.9
Pr
+
N-acetyltransferase Nat10
N.D.
+
100
100
93
8
3.6
Sp
1C
phosphatidylserine synthase
F121L
+
58
58
67
21
2.3
Sp
++
prp4
serine/threonine protein kinase
N.D.
+
100
100
100
33
3.1
Sp
1C
ptb1
geranylgeranyltransferase II beta subunit
S233P
100
87
83
40
2.9
Sp
1C
*5
459
SPAC4F10.10c
447
SPAC20G8.09c /nat10
/mnn9
*6
160
pps1
*2
434
124
67
pyk1
pyruvate kinase
D215N
+
100
83
87
9
3
Sp
1C
410
rpc40
RNA polymerase I and III subunit
N.D.
+
97
90
95
6
4.1
Sp
1C
259
sec17
alpha SNAP
A162V
+
100
100
100
5
2.8
Sp
1C
584
smd3
Sm snRNP core protein
N.D.
+
100
95
95
1
3.2
Sp
1C
100
55
8
6
2.2
Sp
++
284
SPBC30D10.17c
*3
412
ssp1
*7
/smi1
glucan synthase regulator
serine/threonine protein kinase
G340D
+
100
92
95
8
3.7
Pr
+
*8
translation release factor
P113L
+
100
80
97
29
3.3
Sp
1C
*9
zinc finger protein
+
90
83
42
2
2.1
Pr
+
+
100
100
87
0
2.7
Pr
++
554
sup45
973
vps11
371
ypt1
GTPase
F96S
表2. 窒素源枯渇後温度シフトにより生存率を落とす株の中から26責任遺伝子を同定した。
26株の変異場所、四分子解析による確認の有無(Linkの+)、生存率、窒素源枯渇24時間後の
細胞数の変化(倍)、窒素源枯渇24時間後の形状と温度シフト72時間後のDNA含有量を示す。
(この実験中の四分子解析は畠中内子博士によって行われた。)
N.D.; not determined, Cell shape; Sp, spherical; Ro, rod; Pr, pear-like
*1: one other dhp1 mutant is 14(E320K), *2: one other prp4 mutant is 565, *3: six other ssp1 mutants are
404(W110→Stop), 511(W81→Stop), 617(K195→Stop), 837(W337→Stop), 860(G340D), 871(S289→Stop); the
details will be described elsewhere (Y.H., unpublished result), *4: SPBC19G7.07c (designated dmr1 according
to the nomenclature of S. cerevisiae homolog) is a mitochondrial protein supposedly implicated in mitochondrial
ribosome biogenesis and protein sysnthesis. *5: SPAC4F10.10c (designated mnn9) that has one transmembrane (TM) helix and a signal anchor with putative cleavage site codes for putative mannnosyl transferase
complex subunit required for N-linked glycosylation that occurs at Golgi. *6: Pps1 has three trans membrane(TM)
helices and encodes phosphatidyl-serine synthase, an essential enzyme for lipid synthesis and cell wall
organization. *7: SPBC30D10.17 (designated smi1; homolog of Neurospora GS-1 and S. cerevisiae KNR4/SMI1)
is implicated in glucan synthesis and cell wall biogenesis at the level of transcription or post-transcriptional
regulation. *8; Sup45 is the eukaryotic peptide chain release factor that terminates translation on ribosome. The
mutation site (P113L) resided in the conserved eRF1 domain. *9: The vps11-973 allele showed the mild
phenotype in comparison with vps11-319 defective in the quiescence-entry, probably due to the longer
polypeptide produced by the nonsense codon near the terminus. S. pombe has a paralog of Vps11
(SPAC16A10.03c designated vps111).
51
Protein kinases & cell shape control
Regulation of RNA polymerase
Pol I, III
subunit
Fcp1
Rpc40
Pol II CTD
Spliceosome
RAT1
Smd3
Dhp1
RNA splicing
snRNA
Prp4
CAMKK
Ssp1
P
Cdc2
CDK
Cdc13
Mitochondrial protein
unknown function
SPBC19G7.07c
Dmr1
RNAse
pre-mRNA
P
Translation release
Ribosome biogenesis
SPAC20G8.09c
Nat10
eRF1
Sup45
Chromatin dynamics and cohesin
Mis4
Mis16
Cohesin
Histone H4
Clathrin
COPII
AP-1
Hrf1
Apl2
Protein trafficking & vesicle fusion
Hcs1
Lipid biosynthesis
Fps1
Acetyl CoA
HMG CoA
Ptb1
RAB1
α-SNAP
RAB C’
Ypt1
Sec17
G
G
SNARE
Geranylgeranyl
diphosphate
Acetoacetyl CoA
Vps11
Biosynthesis of metabolites
Cts1
Pyk1
UTP
PEP
HOPS
Membrane &
cell wall biogenesis
Mnn9
Pps1
Smi1
図23. G0期維持時に重要と考えられる26遺伝子産物を機能により分類した模式図。
遺伝子産物の機能は多様に渡っているが、同じ経路に働く遺伝子群があることがわかる。
ここからG0期の維持における細胞周期制御、ATP代謝、小胞輸送、細胞壁合成、RNA合成
•代謝経路等の重要性が見てとれる。
52
WT
apl2-929
cdc13-563
cdc2-974
cts1-901
dhp1-154
dmr1-506
end4-507
fcp1-452
fps1-439
hcs1-143
hrf1-676
mis16-33
mis4-450
mnn9-459
nat10-447
pps1-160
prp4-434
ptb1-124
pyk1-67
rpc40-410
sec17-259
smd3-584
smi1-284
spc1-989
ssp1-412
sup45-554
vam6-532
vps11-319
vps11-973
wis1-558
wis1-982
wsp1-318
ypt1-371
ypt5-909
図24. 増殖期、制限温度(36℃)での温度感受性変異株34株と野生株のDAPI染色像。
バーは10µm。 (この実験は林武志博士によって行われた。)
53
-N 24h (26ºC)
WT
end4-507
spc1-989
vam6-532
vps11-319
wis1-558
wis1-982
wsp1-318
ypt5-909
-N 24h (26ºC) + 72h (37ºC)
WT
apl2-929
cdc13-563
cdc2-974
cts1-901
dhp1-154
dmr1-506
fcp1-452
fps1-439
hcs1-143
hrf1-676
mis16-33
mis4-450
mnn9-459
nat10-447
pps1-160
prp4-434
ptb1-124
pyk1-67
rpc40-410
sec17-259
smd3-584
smi1-284
ssp1-412
sup45-554
vps11-973
ypt1-371
図25. 窒素源枯渇24時間後または更に温度シフト(37℃) 72時間後での野生株と温度感受性
変異株34株のDAPI染色像。
窒素源枯渇24時間後の像はその時点で生存率を落とす変異株8株、温度シフト72時間後の像
はその時点で生存率を落とす26株のもの。
54
た株によっては DAPI が取り込まれすぎて強い光を示す明らかに死んでいると思われ
る細胞も多く見られた(例えば図 25 の apl2-929, smi1-284 のパネルに見られる白く
光った細胞)。これらの株は FACS により DNA 含有量を測定すると 1C 以下の部分にピ
ークが出るため、死んで DNA が壊れた細胞が蓄積していると考えられる(表 2、DNA
の+と++で示すもの、または図 26)
。また、これらの株でも窒素源枯渇 24 時間後での
FACS では 1C にピークを示しているため、G0 期に正常に導入された後、温度シフトに
よって死んだものと推測出来る(図 26)。
細胞周期の制御分子 cdc2, cdc13, ssp1 の変異株は窒素源枯渇後も円筒
状の形態のまま、生存率を低下させる
(この実験中の ssp1 変異株の同定は羽生雄一郎さんによって行われた)
cdc2-974 は 35 番目イソロイシンからアスパラギンへの点変異であり、窒素源枯渇
後の細胞は長い円筒状のものが見られた。生存率の低下は穏やかであり(35%)、この
生存率低下は allele 特異的なものであると考えられる。他の cdc2 変異株である
cdc2-33(A177T)や cdc2-3w(C67Y)は窒素源枯渇後には小さく丸い形状を示し、生存率
の低下は見られなかった。更に Cdc2 の活性を促進する Cdc25 の変異株、cdc25-22 に
おいても、G0 期での異常は見られなかった(データは示さない)。一方、Cdc2 と複合
体を形成する B タイプサイクリンである Cdc13 の変異株、cdc13-563 は 282 番目のグ
リシンがアスパラギン酸に変わる点変異であるが、この変異株は窒素源枯渇後、円筒
状の細胞が観察され、生存率を穏やかに低下させる(29%)、cdc2-974 と類似した表現
型を示した。cdc2-974 と cdc13-563 は共に種間で保存されているアミノ酸に変異があ
り、さらにこれらの変異は Cdc2-Cdc13 が相互作用するとされる配列のすぐ近傍に存
在する事から(Jeffrey et al., 1995; McGrath et al., 2005)、この 2 つの変異株は
Cdc2-Cdc13 の相互作用に障害がある事が考えられる。Cdc2-Cdc13 は G2/M 期の推移に
必要な CDK-サイクリン複合体のため、G0 期での生存に必要であるという結果は驚く
べきであるが、G0 期導入後、Rum1 の増加と反比例して cdc13 の蛋白質量が減少する
ものの、ウエスタンブロットで完全には cdc13 のバンドが消滅せずに残っている事か
ら、Cdc2-Cdc13 には G0 期特異的な役割があるのかもしれない。
ssp1 の変異株は 7 株が同定されており、その全てが窒素源枯渇後の温度シフトによ
り生存率を減少させている。ssp1 は G2/M 期の推移、浸透圧ストレス応答、アクチン
局 在 制御 に関わってい ると報告 され ている セリン• スレオニ ンキナー ゼである
(Matsusaka et al., 1995; Rupes et al., 1999)。全ての ssp1 の変異株が窒素源枯
渇後、Cdc2-Cdc13 変異株同様、円筒状の形態であった。Wis1-Sty1 のストレス応答の
55
-N 24h(26ºC)
-N 24h(26ºC), 72h(37ºC)
WT
dhp1-14
mis16-33
pyk1-67
ptb1-124
hcs1-143
dhp1-154
pps1-160
sec17-259
smi1-284
ypt1-371
ssp1-404
rpc40-410
ssp1-412
prp4-434
fps1-439
nat10-447
mis4-450
fcp1-452
mnn9-459
dmr1-506
ssp1-511
sup45-554
cdc13-563
prp4-565
smd3-584
ssp1-617
hrf1-676
ssp1-837
ssp1-860
ssp1-871
cts1-901
apl2-929
vps11-973
cdc2-974
1C 2C
1C 2C
図26. 窒素源枯渇24時間後または更に温度シフト(37℃) 72時間後での野生株と責任遺伝子を
決定した温度感受性変異株のDNA含有量。
56
MAP キナーゼも円筒状である事から、Ssp1, Cdc2-Cdc13 と MAP キナーゼの関係が興味
深い。
コヒージョンとクロマチンリモデリングの関わる変異株 mis4-450 と
mis16-33 は窒素源枯渇後生存率を低下させる
(これらの変異株の同定は林武志博士によって行われた)
cdc2,cdc13 の変異株と並んで予想外に G0 期で生存率を下げたのが、S 期における
姉妹染色体のコヒージョンの確立に関わる mis4(Furuya et al., 1998)とセントロメ
アにセントロメア特異的なヒストン H3 である CENP-A を局在化させる mis16 の変異株
である(Hayashi et al., 2004)。G0 期にこれらの機能が必要な可能性は低く、mis4
と mis16 にはそれぞれ他の役割があることが考えられる。Mis4 は転写制御に関わって
いるという報告がある他(Dorsett et al., 2005)、転写促進に関わるヒストンアセチ
ル化複合体 SAGA の構成分子である Tra1,Tra2 と相互作用する(柳田研究室未発表デー
タ)。また mis4 のヒトホモログは発達遅滞、四肢の奇形を引き起こすコルネリア•デ•
ランゲ症候群(CdLS)の原因遺伝子のひとつとされている(Dorsett, 2007)。Mis16 の
G0 期での役割については想像の域を出ないが、ヒストン H3 の局在に関わるだけでな
く、ヒストン H3 との相互作用から Mis4 同様に発現調節に関わっていることも考えら
れる。
ATP 代謝に関わる変異株 pyk1-64 と cts1-901 は窒素源枯渇後の温度シフ
トにより生存率を低下させる
ATP 代謝に関わる遺伝子の変異株、pyk1-64 と cts1-901 の 2 株は窒素源枯渇後、約
2 回の分裂後、1C の小さく丸い G0 期細胞の形状を示す。しかし、温度シフト 72 時間
後にはそれぞれ 9%と 38%に生存率を落としている。pyk1 の遺伝子産物は解糖系の最後
のステップを媒介する酵素のピルビン酸キナーゼであり、ホスホエノールピルビン酸
をピルビン酸に変換する際に ADP から ATP を合成する。pyk1-64 の変異場所は、種間
で保存されている PK ドメイン中の D215N の点変異である。一方の SPAC10F6.03c (ホ
モログから cts1 と命名)の遺伝子産物は CTP 合成酵素であると予測されており、L-グ
ルタミンまたはアンモニアを窒素源として、ATP 依存的に UTP から CTP へのアミン化
を行う。これら 2 つの遺伝子産物は栄養源が制限されている環境中での生命維持にお
いて根幹となる代謝活動を支えているものと考えられる。
57
小胞輸送経路と細胞壁合成に関わる変異株は窒素源枯渇後の温度シフト
により生存率を低下させる
細胞内の小胞輸送に関わる遺伝子の変異株 6 株、apl2-929, hrf1-676, ptb1-124,
sec17-259, vps11-973, ypt1-371 が窒素源枯渇後の温度シフトにより、生存率をそれ
ぞれ 19, 0, 40, 5, 2, 0%に低下させている事がわかった。また、小胞輸送に関連し
た脂質合成に関わる遺伝子の変異株 2 株、fps1-439 と hcs1-143 の生存率も温度シフ
ト後、それぞれ 45%と 1%に低下している。この中で、ER からゴルジ体への輸送小胞
COPⅡ(Barlowe et al., 1994)の構成分子が Hrf1 であり、エンドサイトーシスの際の
輸送小胞であるクラスリン被覆小胞に積荷を認識する受容体を結合させる足場とな
るアダプチン AP-1 が Alp2 である(Le Borgne and Hoflack, 1998)。また、輸送小胞
が結合先を認識するために必要な SNARE に結合するのが、α-SNAP(Clary et al.,
1990)である Sec17 と HOPS 複合体(Starai et al., 2008)であり、Vps11 は HOPS 複合
体の構成分子である。v-SNARE と t-SNARE の複合体に Sec17 が結合して SNARE 同士の
結合を外し、結合が外れた SNARE には HOPS 複合体が結合して新たなペアリングを行
うと考えられている(Collins et al., 2005)。更に、Ypt1 は RAB small GTPase で C
末端にゲラニルゲラニル化修飾を受けて膜構造に局在し、輸送小胞の接合を促進し、
細胞内輸送を仲介する(Newman et al., 1992)。このゲラニルゲラニル基を合成する
経 路 の 脂 質 合 成 酵 素 が
Hcs1
(HMG-CoA
合 成 酵 素 ) と
Fps1
(geranylgeranyltransferase)である。また Ptb1 はゲラニルゲラニル転位酵素 Ⅱ の
βサブユニットと考えられ、small GTPase の C 末端にゲラニルゲラニル基を付加する。
Ypt1 の C 末端には-XCC, また前出の Ypt5 の C 末端には-CXC のモチーフがあり、この
システインがゲラニルゲラニル化される(Newman et al., 1992)。ゲラニルゲラニル
化された Ypt 蛋白質は ER やゴルジ体の膜に結合して、小胞輸送が活性化される。こ
のようにこの 8 遺伝子は全て、細胞内での輸送に必須なものであり、その変異株の著
しい生存率の低下は、G0 期維持のために活発な小胞輸送が行われている事を示唆して
いる。
また細胞壁の合成に関わる遺伝子の変異株 3 株、SPAC4F10.10c(ホモログから mnn9
と命名)-459, pps1-160, SPBC30D10.17(ホモログから smi1 と命名)-284 も窒素源枯渇
後に生存率を落としている。Mnn9 は mannosyltransferase 複合体の構成分子、Pps1
はホスホチジルセリン合成酵素、Smi1 は glucan synthase regulator と考えられてい
る。窒素源枯渇後の細胞は潰れているものや細胞内に白く見える物質が溜まっている
ものが多く観察され(図 25)、これらは細胞壁の脆弱性と関係があるものと考えられ
58
る。
RNA 合成•代謝に関わる変異株は窒素源枯渇後の温度シフトにより生存率
を低下させる
RNA 合成•代謝に関わる変異株 6 株、dhp1-154, fcp1-452, prp4-434, rpc40-410,
smd3-584,SPAC20G8.09c(ホモログから nat10 と命名)-447 が窒素源枯渇後の温度シフ
トにより生存率をそれぞれ 37, 2, 33, 6, 1, 8%に低下させていた。Fcp1 は RNA ポリ
メラーゼ Ⅱ の C 末端ドメイン(CTD)の脱リン酸化酵素であり(Archambault et al.,
1997; Hausmann et al., 2004)、Rpc40 は RNA ポリメラーゼⅠと Ⅲ に共通する構成分
子である(Shpakovski and Shematorova, 1999)。Prp4 と Smd3 は共に RNA スプライシ
ングに関わる分子で、Smd3 はスプライソソームを構成する Sm コア蛋白質の1つであ
り(Raker et al., 1996)、Prp4 はスプライソソームを活性化するシグナルとなるリン
酸化を入れるキナーゼであると考えられている(Kuhn and Kaufer, 2003)。Dhp1 は
pre-mRNA の polyA サイトから下流を分解する 5
-3
exoribonuclease である
(Shobuike et al., 2001)。また Dhp1 は出芽酵母では RAT1、ヒトでは XRN1 とホモロ
ジーがあり、3
プロセシングファクターを集め、転写を終結させる分子である(Luo et
al., 2006)。興味深い事に、Dhp1 は増殖期において染色体分離にも必要であり
(Shobuike et al., 2001)、dhp1 変異株は染色体分離の欠陥を示している(図 24)。
また、nat10 はリボソームのスモールサブユニットの合成に関わると予測されている
分子である。
これらの中で、fcp1-452 が非常に激しく生存率を落としていた。その産物が RNA
ポリメラーゼ Ⅱ の CTD の脱リン酸化酵素であることから G0 期の転写制御に大きく影
響している可能性があるため、この株について更に解析を進める事にした。
fcp1-452 の変異により多くの遺伝子の転写パターンが変動し、変動する
転写物は増殖期と G0 期において大きく異なっている
(この実験中の変異場所同定は羽生雄一郎さんによって行われ、マイクロアレイの部
分は島貫瑞樹博士と共同で行われた)
fcp1-452 の変異場所は 223 番目のアルギニンがリシンに変わる点変異である(図
27A)。この場所は FCPH ドメイン中で、特に高く保存されている 7 アミノ酸の中の一
つで、脱リン酸化活性に必須である(Hausmann and Shuman, 2003)。まず、野生株と
59
A
S.pombe Fcp1 - 723a.a.
81.9kDa
FCPH domain
phosphotase active site
(140-326)
phosphorylated
CTD binding
223
Arg(AGG) → Lys(AAG)
essential site for phosphatase activity
(Hausmann and Shuman, 2003)
B
WT
fcp1-452
Fcp1
-GFP
C
fcp1
WT -452
α- GFP
116
99
DAPI
66
Merge
45
31
21
14
図27. fcp1-452は脱リン酸化活性に必須なアミノ酸に変異がある。fcp1-452においてFcp1
蛋白質の局在、量は野生株と変わらない。 (この変異株の変異場所の同定は羽生
雄一郎さんによって行われた。)
(A)
fcp1-452の変異場所は脱リン酸化活性に必須なFCPHドメイン中の223番目のアル
ギニンがリシンに変異している。
(B)
ゲノム中のfcp1遺伝子にGFPタグを付けた野生株とfcp1-452 の窒素源枯渇24時間
後のGFP蛍光像とDAPI染色像。共にFcp1は核に局在している。
(C)
GFPタグ付きのfcp1遺伝子を持つ野生株とfcp1-452から蛋白質抽出液を調整し、抗
GFP抗体によるウエスタンブロットによりfcp1-GFP蛋白質を検出した。fcp1-GFP(青
矢頭)の量は野生株とfcp1-452でほぼ同じであった。
60
fcp1-452 において Fcp1 蛋白質の発現場所と発現量を調べるために、ゲノム中の fcp1
遺伝子を fcp1-GFP 遺伝子に置き換えた株を作製し、蛍光顕微鏡による観察と抗 GFP
抗体によるウエスタンブロットを行った。その結果、野生株, fcp1-452 共に Fcp1 は
核に局在し、また同程度の蛋白質発現量である事がわかった(図 27B,C)。
次に、私達はこの株を使って fcp1 の欠陥が増殖期と G0 期の転写パターンにどの様
な差異を表すか実験を行った。まず、fcp1-452 は増殖期において 26℃では野生株と
同様に増殖するが、制限温度の 36℃に移すと直ちに完全に増殖を停止し、4 時間後に
は形状が異常な細胞が多く観察される様になる(図 28)。窒素源枯渇後では、26℃に
おいては野生株と遜色無く G0 期に導入され、小さく丸い 1C 細胞の形態を示すが、そ
の後、37℃に温度シフトすると、24 時間後には 65%, 48 時間後には 3%, 72 時間後に
は 2%に生存率が低下する(図 29)。私達は変異株の細胞が異常な表現型を見せるが生
存は保っている状態の時間帯を選ぶこととし、増殖期では温度シフト 4 時間後、G0
期では温度シフト 24 時間後の細胞を調べる事にした(図 30)。転写比較のため、野生
株と fcp1-452 においてそれぞれ EMM2 培地中(増殖期)、EMM2-N 培地中(G0 期)で 26℃
または 37℃という条件下で合計 8 サンプルに対してマイクロアレイ解析を行った。実
験当初は Fcp1 が RNA ポリメラーゼⅡの脱リン酸化酵素であり、転写機構そのものに
直接作用する事から、影響は転写全般に広く出るものであると予測していた。しかし、
結果は驚くべきものであった。全 5000 遺伝子の転写量の変化は図 31 に示し、その再
現性を確認しているが、増殖期(VE)においても G0 期(G0)においても fcp1-452,37℃で
の転写量変化のパターンは全体的に増加したり、減少したりという転写全般に作用す
るものではなく、ある転写物は増加し、ある転写物は減少するという非常に遺伝子特
異的に作用しているものであった。この結果はこれまでの Fcp1 の役割として考えら
れていた事と大きく違う興味深いものであった。
また、増殖期、37℃で、fcp1-452 の中で野生株に比べ転写量が 2 倍 (または 4 倍)
以上変動する転写物は増加と減少でそれぞれ 249 (48), 106 (14)あった。一方、G0
期、 37℃で同様に fcp1-452 の中で野生株に比べ転写量が 2 倍 (または 4 倍)以上変
化する転写物は増加と減少でそれぞれ 647 (117), 668 (142)であった。分裂酵母の約
5000 遺伝子のうち、2 倍以上変化する転写物は窒素源枯渇下(G0)では 26%に及んでお
り、増殖期(VE,7%)に比べ fcp1 変異の影響がより広域であることが示唆された。
更に興味深いことに、増殖期、G0 期それぞれで 4 倍以上増加または減少に分類した転
写物は固有のものが殆どであり、図 32A で示す様に増殖期、G0 期で重複する転写物は
305 個中、8 個だけであった。このことはこれまでの Fcp1 のイメージを更に変える結
果であり、Fcp1 が増殖期と G0 期の差異を転写レベルで制御している可能性を示唆す
るものであった。
そこで、fcp1-452 の変異によって 37℃で変動する転写物を種類分けし、個々に見
61
Number of Cells (106 cells/ml)
1h
2h
4h
8h
図28. 増殖期でのfcp1-452は、36℃に温度シフトすると完全に増殖を停止し、4時間後に
は形態の異常を見せる。
(A)
EMM2液体培地中における、26℃または36℃での野生株とfcp1-452の増殖カー
ブ。 fcp1-452は36℃で完全に増殖を停止する。
(B)
EMM2液体培地中で36℃に温度シフトした後のfcp1-452 のDAPI染色像。4時間後
から変形した細胞が観察される。
62
fcp1-452, 26ºC
fcp1-452, 37ºC
図29. 窒素源枯渇24時間後の温度シフトでfcp1-452は生存率を低下する。
窒素源枯渇24時間後の野生株とfcp1-452を更に26℃または37℃で培養し、24時間毎に
72時間までの生存率を測定した。 fcp1-452では37℃に温度シフトして48時間以降、急激
に生存率が落ちている。
63
Vegetative
polyA RNA collection
EMM2
37°C
26°C
4h
AAAAAA
26°C
26°C
G0 phase
4h
AAAAAA
VE
37℃
VE
26℃
-N
EMM2
EMM2-N
24h
37°C
24hr
26°C
Microarray Analysis
26°C
AAAAAA
G0
37℃
AAAAAA
G0
26℃
26°C
26°C
24h
図30. 野生株とfcp1-452の遺伝子発現解析の方法。
増殖期では対数増殖期の細胞を37℃、または26℃で4時間培養して、サンプリングを行っ
た。G0期では窒素源枯渇24時間後の細胞を37℃、または26℃で24時間培養して、サンプリ
ングした。サンプリングした細胞からpolyA RNAを抽出し、マイクロアレイにより発現解析を
行った。
64
A
増殖期(VE)
37ºC fcp1-452/WT
26ºC fcp1-452/WT
fcp1-452 37ºC/26ºC
WT 37ºC/26ºC
G0期(G0)
37ºC fcp1-452/WT
B
Fold
change
26ºC fcp1-452/WT
fcp1-452 37ºC/26ºC
WT 37ºC/26ºC
VE
G0
wt fcp1 wt fcp1
26 37 26 37 26 37 26 37
図31. 増殖期(VE)とG0期(G0)それぞれでfcp1452は、制限温度下(37℃)における転写パ
ターンを大きく変化させる。 (この実験は島
貫瑞樹博士と共同で行われた。)
(A)
分裂酵母約5000遺伝子転写物の分布を2
条件間の比較で示したグラフ。各グラフと
も2条件間で差がない転写物は対角線上
にプロットされる。fcp1-452,37℃を含む比
較ではVE, G0ともに対角線から大きくばら
ついており、変動する転写物が多数存在
する事が示されている。
(B)
分裂酵母約5000遺伝子の転写変動の全
体像。各バーが転写物を示しており、8条
件での転写量の平均より高い場合は赤、
低い場合は緑、同等の場合は白で示され
ている。全体を見るとVE, G0それぞれで
fcp1-452,37℃はWTやfcp1-452,26℃と大
きくパターンが変わっているが、変化の仕
方は一様ではなく、転写物によって異なっ
ている。
65
A
x4- transcripts
G0
increased
VE
increased
11
3
138
1
0
113
4
G0
decreased
43
VE
decreased
B
Transcripts
in fcp1 37ºC
VE increased
VE decreased
G0 increased
G0 decreased
x4- transcripts
Transcripts
x4-change Signal Peptide Transmembrane
14
48
142
117
Signal Peptide
2
12
20
11
Transmembrane
Classification of x4- transcripts
Cell cycle
Stress response
regulated
2
10
33
19
0
11
10
4
Cell cycle
regulated
11
12
45
37
Stress response (Most
effective stress source)
VE increased
(Heat)
VE decreased
Amine Transporter DNA replication
(H2O2, Cadmium)
G0 increased ER components ER components
(Heat)
G0 decreased ER components
oxidoreductase(H2O2)
Mitochondria
Chromatin
remodeling/silencing
0
5
15
17
0
1
4
6
Chromatin
Mitochondria remodeling/silencing
DNA packaging
heterochromatin
図32. fcp1-452,37℃で野生株,37℃に比べ4倍以上変動する転写物は増殖期(VE)と G0期(G0)
の間で大きく異なっている。 (この実験は島貫瑞樹博士と共同で行われた。)
(A)
VE,G0でそれぞれ4倍以上増加または減少する転写物をベン図で示した。それぞれでほと
んど重なっておらず、VEとG0で全く別の転写物がFcp1によって制御されている事が伺える。
(B)
4倍以上変動する転写物をシグナルベプチドを持つもの、トランスメンブレンドメインを持つも
の、細胞周期に制御されるもの、ストレス応答のもの、ミトコンドリアのもの、クロマチンリモデ
リングまたはサイレンシングに関わるものに分けた。上はそれぞれの転写産物数で、下はそ
れぞれの分類において有意に多く存在したもの(p-value ≤0.05)。
66
ていくことにした。影響を受ける多くの転写物はストレスにより応答するもの、シグ
ナルペプチドやトランスメンブレンドメインを持つものであった。さらに細胞周期に
より転写量が制御されているものやミトコンドリアに関係するもの、クロマチンサイ
レンシングやリモデリングに関係するものの多くも転写量が変動していた。これら 4
倍以上変動する転写物をまとめたものを図 32B に示す(個々の遺伝子名、輝度データ
等の詳細は表 3-5)。これを見ると fcp1-452 において、増殖期と G0 期では影響を受け
る転写物が大きく異なっている事が更に明確となる。例えば、増殖期と G0 期では共
にストレスに応答する転写物が多く影響を受けているが、その中で、増殖期では酸化
ストレスと重金属ストレスに応答するものが多く減少している一方、G0 期では酸化ス
トレスに応答するものが圧倒的に多く減少しており、その 3 割は oxidoreductase で
あった(図 32B 下、表 6)。
細胞周期によって転写量が制御されている遺伝子の内訳は更に増殖期と G0 期の違
いを示し、興味深いものであった(表 7)。細胞周期によって転写が変動する遺伝子は、
Rustici らの報告により、転写量の増加がピークを迎える時期によって 1-4 のクラス
ターに分類されている(Rustici et al., 2004)。増殖期では細胞周期で変動する 11
遺伝子の転写物が大きく減少していた。この 11 遺伝子はすべて M 期後期(anaphase)
に転写のピークを迎えるクラスター2 に属しており、その半数は DNA 複製に必要な分
子であった。これらは MCM ローダーである Cdc18, DNA 複製に必要な核酸を合成する
ribonucleoside reductase である Cdc22, DNA 複製のライセンシング因子である Cdt1,
S 期進行を制御する WD リピートを持つ Cdt2, G1/S 期の B タイプサイクリンである Cig2,
セントロメアに CENP-A を局在させる Ams2 であり、Fcp1 はこうした遺伝子の発現を促
進することにより細胞周期を制御していることが考えられる。一方、
G0 期においては、
細胞周期で影響を受ける転写物は 14 個(fcp1-452 で増加 10, 減少 4)が 4 倍以上変動
していたが、これらはクラスター1-4 に万遍なく存在していた。これらの遺伝子産物
の多くは機能未知のものであり、膜蛋白質、SNARE と予測されるもの、転写因子等も
含まれていた。これらの分子は G0 期において細胞周期進行と異なる独自の働きがあ
ることが予測され、Fcp1 がそれを制御している可能性を示唆している。
またクロマチンサイレンシング•リモデリングに関わる転写物は、増殖期では顕著
ではないが、G0 期では Arb1, Chp2, Tas3, Raf1, Set1, Pht1 等が見られ、有意数が
変動していた(表 8)。このことから G0 期ではクロマチン構造の制御に、Fcp1 が関わ
っている可能性が考えられ、変異株ではその構造維持に支障が出ていることが予測さ
れる。
シグナルペプチドやトランスメンブレンドメインを持つ遺伝子やミトコンドリア
関連遺伝子の転写物の多くも fcp1-452 で転写量が変動している(表 9-11)。増殖期で
は減少する 48 転写物のうち 10 個がトランスメンブレンドメインを持っており、その
67
VE Increased (14)
PombeID
Fold change in
intensity Gene
raw data Product
Functions
signal
peptide
TM
Cell cycle Stress
Gene
Mitochondria
regulated response
silening
SPBC3E7.02c
12.3
36863 hsp16
heat shock protein Hsp16 (regulated by sty1)
SPAC27D7.09c
4.7
19821
But2 family protein (stress response, signal peptide)
Signal peptide
Stress
SPAPB24D3.07c
12.5
16829
sequence orphan (signal peptide, ER)
Signal peptide
Stress
SPAC13G7.02c
33.1
10777 ssa1
heat shock protein Ssa1 (heat shock protein 70 family)
Stress
SPBC19C7.04c
7.9
9369
conserved fungal protein
Stress
13.0
5938
S. pombe specific UPF0300 family protein 6
Stress
4503 nab3
poly(A) binding protein Nab3 (RNA 3'-end processing, stress response)
Stress
SPCC737.04
Stress
SPAC3H8.09c
5.4
SPBPB2B2.03c
23.3
3813
pseudo-very degraded permease
SPAC4H3.03c
5.3
3585
glucan 1,4-alpha-glucosidase (stress response)
SPAC1556.06b
8.0
2381 meu2
meiotic expression upregulated
SPCC338.18
4.6
2059
sequence orphan (stress response, 1TM)
TM
Stress
SPBPB2B2.02
4.3
1862 mug180
esterase/lipase (signal peptide, 1TM)
TM
Stress
SPAC29A4.12c
11.5
1119 mug108
sequence orphan
SPAC3G6.07
5.3
344
Stress
dubious (stress response)
Stress
VE Decreased (48)
PombeID
Fold change in intensity
Gene
raw data Product
Functions
signal
peptide
TM
Cell cycle Stress
Gene
Mitochondria
regulated response
silening
SPBPB7E8.01
0.2
3432
sequence orphan (signal peptide, extracellular region)
SPAC31G5.14
0.2
2790 gcv1
glycine decarboxylase T subunit
Cell surface
SPBC1539.07c
0.2
2580
glutathione-dependent formaldehyde dehydrogenase (stress response)
SPBC1105.05
0.2
1758 exg1
glucan 1,3-beta-glucosidase I/II precursor (signal peptide)
SPAC5H10.06c
0.2
1660 adh1
alcohol dehydrogenase Adh4
SPAC2E1P3.05c
0.2
1299
fungal cellulose binding domain protein (signal peptide)
SPBC2G2.05
0.1
1274 rpl1603
60S ribosomal protein L13/L16
SPAC11D3.02c
0.2
1058
ELLA family acetyltransferase (predicted)
SPAC1F7.05
0.1
1017 cdc22
ribonucleoside reductase large subunit Cdc22 (DNA replication)
SPAPJ760.03c
0.2
1008 adg1
sequence orphan (signal peptide)
SPBC1271.07c
0.1
876
N-acetyltransferase (stress response)
SPAC19G12.16c
0.2
804 adg2
conserved fungal protein (signal peptide, GPI anchor)
SPAC8C9.05
0.2
735
D-Tyr-tRNA deacylase (predicted)
SPBC1703.08c
0.1
622
5-formyltetrahydrofolate cyclo-ligase
SPAPB2B4.03
0.2
609 cig2
cyclin Cig2 ( G2/M, G1/S)
SPAC869.10c
0.1
584
proline specific permease (12TM)
SPAC1039.08
0.1
541
serine acetyltransferase (cys to ser)
SPAC644.05c
0.1
518
deoxyuridine 5'-triphosphate nucleotidohydrolase (predicted)
SPAC25B8.13c
0.1
502 isp7
2-OG-Fe(II) oxygenase superfamily protein
SPBPB21E7.07
0.1
410 aes1
enhancer of RNA-mediated gene silencing
SPBC359.05
0.1
403 abc3
ABC transporter Abc3 (signal peptide, 13TM)
SPBPB10D8.02c
0.2
403
arylsulfatase (predicted)
Cell cycle
SPAP14E8.02
0.1
368
transcription factor (pol II transcription)
Cell cycle
SPCC306.11
0.2
360
sequence orphan (signal peptide, extracellular region)
SPBC21B10.13c
0.2
332 yox1
transcription factor, homeobox type Yox1 (pol II transcription)
SPAC977.09c
0.2
319
phospholipase (signal peptide)
SPBC14C8.07c
0.2
289 cdc18
MCM loader (DNA replication)
SPBPB2B2.13
0.1
288
galactokinase Gal1 (predicted)
SPBC359.03c
0.0
264
amino acid permease, unknown 8 (11TM)
TM
SPCPB1C11.01
0.1
263 amt1
ammonium transporter Amt1 (11TM)
TM
SPCC569.05c
0.1
224
spermidine family transporter (stress response, 12TM)
TM
SPAC1039.10
0.1
197 mmf2
homologous Pmf1p factor 1 (mitochondrial DNA maintenance)
SPAC17H9.19c
0.2
184 cdt2
WD repeat protein Cdt2 (DNA replication)
SPAC27D7.12
0.2
154 but1
neddylation pathway protein But1
SPCC290.04
0.2
148 ams2
cell cycle regulated GATA-type transcription factor Ams2 (DNA replication)
SPAC1039.09
0.1
133 isp5
amino acid permease Isp5 (12TM)
SPAC1002.17c
0.2
130 urg2
uracil phosphoribosyltransferase (predicted)
SPAC1F8.03c
0.1
81 str3
siderophore-iron transporter Str3 (13TM)
TM
SPBC359.01
0.1
78
amino acid permease, unknown 7 (12TM)
TM
SPBPB2B2.01
0.2
71
amino acid permease, unknown 12 (10TM)
SPAC6C3.03c
0.2
64
sequence orphan (signal peptide, mitochondoria)
SPBC428.18
0.1
44 cdt1
replication licensing factor Cdt1 (DNA replication)
SPBC359.04c
0.1
39
DIPSY family (signal peptide, cell surface)
SPAC513.03
0.0
33 mfm2
M-factor precursor Mfm2
SPBC359.06
0.0
32 mug14
adducin (meiosis)
SPAC1F8.01
0.2
25 ght3
hexose transporter Ght3 (signal peptide, 12TM)
Cell surface
SPAC869.01
0.2
23
amidase (signal peptide), C-N ligase activity
Cell surface
SPAC5H10.07
0.1
16
sequence orphan
Mitochonndria
Stress
Cell surface
Mitochonndria
Cell surface
Cell cycle
Cell surface
Stress
Cell surface
Mitochondrion
Cell cycle
TM
Cell cycle
Stress
Silencing
Cell surface
TM
Stress
Cell surface
Cell cycle
Cell surface
Cell cycle
Cell cycle
Stress
Stress
Stress
Cell cycle
Mitochondrion
Stress
Cell cycle
TM
Stresss
TM
Cell surface
Mitochondria
Cell cycle
Cell surface
Cell cycle
(Stress)
Stress
TM
Stress
表3. 増殖期(VE)においてfcp1-452,37℃で野生株,37℃に比べ4倍以上変動する転写物。
Pombe IDは遺伝子の登録名、fold changeはfcp1-452,37℃での野生株,37℃に対する変化
量、intensity raw dataはマイクロアレイの輝度値を示し、各遺伝子に含まれるドメインまたは特性
は右6列に示した。
68
7C+&/,5%.3%*+MFKDN
!"#$%&'
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表4. G0期(G0)においてfcp1-452,37℃で野生株,37℃に比べ4倍以上増加する転写物。
Pombe IDは遺伝子の登録名、fold changeはfcp1-452,37℃での野生株,37℃に対する変化
量、intensity raw dataはマイクロアレイの輝度値を示し、各遺伝子に含まれるドメインまたは特性
は右6列に示した。
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表5. G0期(G0)においてfcp1-452,37℃で野生株,37℃に比べ1/4以下に減少する転写物。
Pombe IDは遺伝子の登録名、fold changeはfcp1-452,37℃での野生株,37℃に対する変化
量、intensity raw dataはマイクロアレイの輝度値を示し、各遺伝子に含まれるドメインまたは特性
は右6列に示した。
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表6. 増殖期(VE)またはG0期(G0)においてfcp1-452,37℃で野生株,37℃に比べ4倍以上変動
する転写物でストレスに応答するもの。
酸化ストレス(H2O2)、重金属ストレス(Cadmium)、熱ストレス(Heat)、浸透圧ストレス
(Sorbitol)、DNA損傷ストレス(MMS)により転写量が上昇するものを示した。 ++はストレス後、
急速に転写量が上がり、+は緩やかに上がることを示している。
71
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表7. 増殖期(VE)またはG0期(G0)においてfcp1-452,37℃で野生株,37℃に比べ4倍以上変動
する転写物で細胞周期によって転写量が制御されているもの。
クラスター1は転写のビークがM期にあり、クラスタ−2は1より少し遅いM期後期(anaphase)、
クラスター3はS期、クラスター4はG2期にある(Rustici et al., 2004)。
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表8. 増殖期(VE)またはG0期(G0)においてfcp1-452,37℃で野生株,37℃に比べ4倍以上変動
する転写物で遺伝子発現抑制に関わるもの。
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表9. 増殖期(VE)またはG0期(G0)においてfcp1-452,37℃で野生株,37℃に比べ4倍以上変動
する転写物でシグナルペプチドを持つもの。
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表10. 増殖期(VE)またはG0期(G0)においてfcp1-452,37℃で野生株,37℃に比べ4倍以上変動
する転写物でトランスメンブレンドメインを持つもの。
75
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表11. 増殖期(VE)またはG0期(G0)においてfcp1-452,37℃で野生株,37℃に比べ4倍以上変動
する転写物でミトコンドリアに関係するもの。
76
7 個がアミントランスポーターであった。またこの 48 転写物のうち 24 個が膜系のオ
ルガネラに局在する蛋白質をコードしていた。実際、増殖期、37℃の fcp1-452 の細
胞の電子顕微鏡写真では細胞質で膜系構造物が 26℃のものに比べ減少していた(図
33A,B)。一方で G0 期では、fcp1-452 で増加する 142 転写物のうち、41 個がシグナル
ペプチドやトランスメンブレンドメインを持ち、その半数近くが ER に関連した蛋白
質をコードしていた(表 9,10)。実際に窒素源枯渇 24 時間後、37℃の fcp1-452 細胞
の電子顕微鏡写真では非常に発達した ER 様の膜構造が細胞質のみならず核にも観察
された(図 33D)。野生株の窒素源枯渇 24 時間後、37℃ではこの様な膜構造は観察さ
れない(図は示さない)。また fcp1-452 の細胞は窒素源枯渇 24 時間後、26℃では野
生株と同様の構造を見せている(図 33C)。
これら変動する転写物の違いは Fcp1 が増殖期と G0 期において異なった遺伝子群の
発現制御を行っていることを如実に示している。また、Fcp1 による転写制御が細胞の
表現型にも反映されていた事から、Fcp1 が増殖期と G0 期の差異を制御する鍵となる
分子である事が示唆された。
77
A
A
fcp1-452
+N26ºC
26ºC
fcp1-452 VE
B
B
fcp1-452
+N 37ºC
fcp1-452 VE
C
fcp1-452G0
-N 26ºC
fcp1-452
D
D
fcp1-452 G0
fcp1-452
-N 37ºC
図33. fcp1-452は制限温度において、増殖期では細胞質に膜系構造物が減少しており、G0
期ではER様構造が発達していた。 (この実験中の電子顕微鏡の部分は吉田智子技
術員によって行われた。)
(A,B) fcp1-452のVE, 26℃ (A), 37℃ (B)での電子顕微鏡観察像。バーは1µm。
(C,D) fcp1-452のG0, 26℃ (C), 37℃ (D)での電子顕微鏡観察像。バーは1µm。
78
考察
G0 期導入時に必須な遺伝子群
これまでの結果から本研究で構築した分裂酵母変異株のスクリーニングシステム
は非常に有用であることがわかった。窒素源枯渇による G0 期の誘導では、まず、枯
渇直後に成長の停止が起こり、その後約 2 回の分裂を行う(図 3)。先に述べた様に、
このことはこの時期、細胞成長と細胞周期の制御が別々に起こっている可能性を示唆
する。分裂後、細胞は小さく丸くなり、細胞構造を大きく変化させると同時に、外部
ストレスに対する抵抗性を備える。本研究では G0 期導入時に欠陥を示す株の中から
7個の責任遺伝子を同定した。その機能解析により、G0 期導入時に見られる、成長と
細胞周期の制御、細胞構造の変化、ストレス耐性の強化、という 3 つの事象それぞれ
に関連する遺伝子群を見い出した(図 34)。wis1, sty1 変異株の解析から、ストレス
応答 MAP キナーゼ経路が窒素源枯渇後に細胞成長と細胞周期の両方の制御に関わって
いる事が示された。また、vam6, vps11, ypt5 変異株の解析から、窒素源枯渇後の細
胞内では活発な小胞合成が起こるため、小胞を融合して処理する経路が必須であるこ
とが示唆された。そして end4, wsp1 の変異株の解析から、細胞環境を再編成し、外
部ストレスの抵抗性を高めるため、エンドサイトーシスが必須である可能性が示され
た。G0 期導入時に見られる 3 つの事象それぞれに必要な遺伝子群が同定出来た事は、
このスクリーニングが網羅的に機能している事を示している。
Wis1-Sty1 経路は浸透圧や酸化、または熱等の様々な外部ストレスにより活性化さ
れ(Degols et al., 1996; Millar et al., 1995; Shiozaki and Russell, 1995)、glycerol
-3-phosphate dehydrogenase や trehalose-6-phosphate synthse 等のストレス応答の
遺伝子発現を誘導する(Degols et al., 1996)。増殖期においては、sty1 破壊株で Cdc25
の活性が部分的に阻害され、G2 期停止が起こり(Millar et al., 1995; Shiozaki and
Russell, 1995)、逆に wis1 を強制発現すると細胞分裂が促進され細胞長が十分でな
い う ちから分 裂が起こ るこ とが報告されてい る(Warbrick and Fantes, 1991) 。
Wis1-Sty1 経路は窒素源枯渇によっても活性化される事が報告されており、sty1 破壊
株では接合子の形成が阻害され、2C の細胞が溜まる(Shiozaki and Russell, 1996)。
今回、wis1 と sty1 の変異株では窒素源枯渇後、細胞が成長を続け、分裂を起こす様
子が観察され、G2 期停止が起こっているのではなく,細胞増殖が止まっていない事が
確認された。更にこれらの変異株では細胞周期制御分子の発現異常があることもわか
った。このことから Wis1-Sty1 経路は窒素源枯渇を感知して、細胞成長と細胞周期を
停止するために必須な経路であることが示された。Wis1-Sty1 経路は栄養条件により
79
Stress-responsive
MAP kinase pathway
stress
Vegetative
cell
Wis1
Sty1
G0 cell
endocytosis
vesicle fusion
Vps11
Vam6
Ypt5
Wsp1
End4
図34. G0期導入時に必須な3つの遺伝子群。
変異株の解析により、ストレス応答MAPキナーゼ経路が細胞成長と細胞周期の制御を、小胞
膜融合の経路が細胞質の小胞の処理を、エンドサイトーシスが浸透圧の変化に対するストレス
耐性に必須な事が示唆された。
80
成長を制御する Tor 経路と細胞周期を制御する CDC 遺伝子群の間のクロストークに関
わっている興味深い可能性が考えられる。今回、wis1 と sty1 の変異株の窒素源枯渇
後の表現型が、Wis1-Sty1 経路の下流として報告されている atf1,atf21,pcr1 を介し
て起きているかを調べたが、これらを介しているという結果は得られなかった。窒素
源枯渇後、この経路のシグナルがどのように伝達されているかは興味深いところであ
る。Sty1 と結合し、Wis1-Sty1 経路が活性化されると発現が上昇するキナーゼの Srk1
が Cdc25 を直接リン酸化して細胞周期を停止するという報告もあり(Lopez-Aviles et
al., 2005)、今回観察された表現型との関係が期待される。
小胞膜融合に必須な vam6, vps11, ypt5 の変異株は窒素源枯渇後、細胞分裂が全く
起こらなかった。窒素源枯渇後の細胞の様子を映画撮影したものでは細胞内に構造物
が溜まり、細胞が膨らんでいく様子が観察されている(データは示さない)。先に述
べた様に、興味深いのは、この表現型が許容温度下で見えている事である。G0 期導入
時には非常に活発な小胞合成が起きて、普段許容温度では見えない欠陥が表れている
ことが予想される。G0 期導入時にはオートファジーが活発に起こっているという報告
もある(Kohda et al., 2007)。小胞膜融合の欠陥により処理されない小胞が、細胞質
内に蓄積し、蓄積した小胞が、細胞分裂等他の細胞内活動を阻害し、細胞死が起こっ
ている事が考えられる。
エンドサイトーシスに関わる end4, wsp1 の変異株は窒素源枯渇後、浸透圧の変化
に感受性であったが、最も興味深い現象は end4-507 が長期間、窒素源枯渇下にある
と生存率を回復させるところである。End4 はエンドサイトーシスにおいて、アクチン
によって細胞内部に伸長するエンドソームの前駆体を切り離す役割が報告されてい
る(Kaksonen et al., 2003)。窒素源枯渇 24 時間後では、この機能が阻害されている
ため、切り離されていないエンドソームがきのこ状の構造として電子顕微鏡で観察さ
れていると考えられる(図 21C)。窒素源枯渇後の野生株細胞はほんの 6 時間ほどで 2
回分裂して小さく丸い G0 期細胞の形態をとっており(図 3,4)、G0 期細胞の確立には
迅速な細胞構造の変化が必要である。エンドサイトーシスには細胞膜を通り抜けられ
ない極性を持つ高分子の物質を細胞外から取り込み栄養分とする他に、自らの細胞膜
や膜上の受容体を取り込み、細胞膜上の構造を再編成する役割が考えられる。細胞膜
の再編成は、外部に対する細胞表面の感度を制御し、様々なストレスに対する抵抗性
を調節していると予測される。このことからエンドサイトーシスが阻害され遅延する
事は G0 期細胞の確立を妨げる事となり、外部ストレスに対する耐性が十分に構築さ
れない事が考えられる。窒素源枯渇 24 時間後の end4-507 は、細胞構造の変化が不十
分な時期に浸透圧ストレスを受けたため、感受性を示したと考えられる。ただ、きの
こ状の構造が見えている事からも分かる様に、阻害されながらも遅いペースでエンド
ソームの切り離しは起こり、ゆっくりと G0 期細胞の構築は進んでいるため、十分な
81
時間さえあれば、G0 期導入が完了し、生存率を回復することが出来ると予測される。
一方で、wsp1-318 は細胞膜へアクチンを招集出来ないため(図 21A)、エンドサイトー
シスを起こせず、完全な G0 期細胞の確立に失敗して生存率を落としていると考えら
れる。
G0 期維持時に必須な遺伝子群
G0 期維持時に生存率を落とす株の中からは 26 個の責任遺伝子を同定した。これら
の 26 遺伝子は全て、菌類から哺乳類まで広く保存されており、その報告されている
機能から、G0 期維持には細胞周期制御、ATP 代謝、小胞輸送、細胞壁合成、RNA 合成•
代謝等の機能が重要である事が示唆され、G0 期においても活発な細胞内活動が起こっ
ている事が改めて示される結果となった。中でも G0 期の生存率維持に著しい欠陥を
示した fcp1(RNA ポリメラーゼ ⅡCTD 脱リン酸化酵素、詳細は下に示す)変異株はた
った 1 塩基の置換で、広範な遺伝子の転写に影響を与える事がわかった。興味深い事
にこの影響は、転写全体が一様に変化する general なものではなく、遺伝子によって
制御が異なる非常に specific なものであることがわかった。更に、転写の影響を受
ける遺伝子群は増殖期と G0 期で大きく異なっている事がわかった。このことはこれ
まで考えられていた Fcp1 の機能から予測される結果とは大きく異なっており、Fcp1
が増殖期と G0 期の違いを転写レベルで制御する鍵となる分子である事を示唆してい
る。ここで、Fcp1 の影響力を考察すると、今回の結果では fcp1 の変異株で野生株に
比べ 2 倍以上変化している転写物は増殖期、G0 期を合わして全体の 33%であった。
以前の報告では、増殖期と G0 期の野生株細胞の間で 2 倍以上の変動を示している転
写物は、全体の約 55%に当たる 2700 個であることから(Shimanuki et al., 2007)、Fcp1
の影響力は単純に考えて増殖期と G0 期の転写の違いの約 60%をカバーする強力なも
のと推測される。また、fcp1 変異株において変動が見られた分子の染色体上の分布を
検討したが、特徴的な局在は発見出来なかった。
RNA ポリメラーゼⅡCTD と Fcp1 の役割
RNA ポリメラーゼ Ⅱ は mRNA を合成する主要な複合体であるが、その最大のサブユ
ニットである Rpb1 は Y1S2P3T4S5P6S7 からなるリピート配列である C 末端ドメイン (CTD)
を持っている(Giglia-Mari et al., 2004; Liu et al., 2004; Meinhart et al., 2005)。
CTD は種によってその長さが決まっており、酵母では 26、ヒトでは 52 のリピートか
82
らなり、生存に必須であることが知られている。
CTD の S2, S5 はリン酸化修飾を受け、
そのリン酸化状態の変化によって転写プロセスが進むとされている。転写開始時のプ
ロモーター結合や pre-intiation complex 形成には脱リン酸化状態の CTD が必須であ
る。その後の CTD のリン酸化は CDK-cyclin 複合体によって制御される。これまでに
pre-initiation complex を形成する TFⅡH, 転写開始から伸長に関わる Mediator
complex, 伸長に関わる P-TEFb という3つの複合体の報告がある(Giglia-Mari et al.,
2004; Liu et al., 2004; Meinhart et al., 2005)。
TFⅡH は CDK7 とサイクリン
H, Mediator complex は CDK8 とサイクリン C, P-TEFb は CDK9 とサイクリン T をそれ
ぞれ含み、分裂酵母でもそれぞれに対応する分子が存在する。TFⅡH と Mediator は遺
伝子の 5 末端で S5 をリン酸化し、P-TEFb はすでに S5 がリン酸化された CTD の S2 に
更にリン酸基を付加する。CTD のリン酸化状態を目印に様々な転写関連分子が招集さ
れ、結合する。capping enzyme は S5 リン酸化で転写初期に招集され、逆に 3
forming factors や cleavage factor IA の 3
end
末端への招集は P-TEFb による S2 リン
酸化に制御されている。また遺伝子の中程では S2,5 リン酸化 CTD に特異的に結合す
る蛋白質としてヒストンメチルトランスフェラーゼである Set2 が見つかっている。
Set2 はヒストン H3 の 36 番目のリジンをメチル化し、HDAC を招集することにより転
写が終わったクロマチンのサイレンシングを行っている。これらの事実から CTD の主
たる機能は様々な転写関連分子に対する足場であり、CTD のリン酸化状態は転写状況
に沿って必要な分子を調整するための目印となっている。転写後の RNA ポリメラーゼ
Ⅱ の再利用にはリン酸化された CTD のリン酸が外される必要があり、CTD 脱リン酸化
酵素がこの役割を担う。その一つが Fcp1 である。Fcp1 は、TFⅡF (RNA ポリメラーゼ
Ⅱ の転写に必須な 6 個の転写因子(Orphanides et al., 1996)の一つで、プロモータ
ーにおいて RNA ポリメラーゼⅡを中心とした pre-initiation complex を形成する他、
伸長において CTD 脱リン酸化を活性化する。)による脱リン酸化に必須な蛋白質とし
て出芽酵母抽出液から様々な column 精製により同定された(Archambault et al.,
1997; Chambers and Kane, 1996)。分裂酵母では 2002 年に RNA polymerase Ⅱのサブ
ユニットである Rpb3 で免疫沈降を行った際に共沈する分子のひとつとして fcp1 が同
定されている(Kimura et al., 2002)。Fcp1 はヒトから菌類まで幅広く保存されてい
る必須酵素で N 末端側に脱リン酸化活性を持つ FCPH ドメイン、C 末端側にリン酸化さ
れた CTD と結合すると考えられている BRCT ドメインを持つ。Fcp1 は CTD の 2 番目と
5 番目両方のセリンを脱リン酸化できる。分裂酵母の Fcp1 の FCPH ドメインは 140-326
番目のアミノ酸に渡り、Asp170, Asp172, Arg223, Asp258, Lys280, Asp297, Asp298
の 7 箇所が脱リン酸化活性に必須である事が報告されている(Hausmann and Shuman,
2003)。CTD の脱リン酸化酵素としては、マウスやヒトでは Fcp1 以外にも BRCT ドメイ
ンを持たない Scp1 が、また分裂酵母の Ssu72 が 5 番目のセリンを脱リン酸化するこ
83
とが報告されている。ただし 2 番目のセリンを脱リン酸化出来るのは Fcp1 のみであ
る。これらの知見から考えると本研究により得られた Fcp1 の結果は興味深い。
これらの知見では Fcp1 の役割は主に RNA ポリメラーゼ Ⅱ の CTD を脱リン酸化する
ことによって RNA ポリメラーゼ Ⅱ のリサイクルを行っている事になるが、本研究の
結果では fcp1 の点変異により遺伝子特異的に影響が出ており、また増殖期と G0 期で
変動する転写物の種類が大きく変わっていた。このことは fcp1 が単に RNA ポリメラ
ーゼ Ⅱ のリサイクルに働くといった転写全般に作用するだけではなく、何らかの方
法で遺伝子発現を個々に制御している可能性が考えられる。この特異性がどのように
生み出されているかは非常に興味深い問題である。Fcp1 には RNA ポリメラーゼⅡCTD
以外の未知のターゲットが存在するのかもしれない。或は、Fcp1 が CTD に作用する時
期の違いや CTD への accessibility の違いによっても特異性が表れるかもしれない。
また、Fcp1 と CTD 上で相互作用する分子の違いが変化を生み出しているのかもしれな
い。CTD へ結合する蛋白質は転写の進行に関わるもの以外も多く存在することが示さ
れている。例えば、出芽酵母において S2,5 リン酸化ペプチドカラムで取れて来た結
合蛋白質には DNA 損傷修復(Hrr25)、蛋白質分解(Cic1)、RNA 分解(Mrt4)、snRNA 修飾、
snoRNA 合成(Cbf5)、ストレス応答(Hog1)に関わるもの等多岐に渡っている(Phatnani
et al., 2004)。この中の Hog1 は分裂酵母での Sty1 であり、窒素源枯渇下において
Fcp1 と Sty1 が CTD を介して、G0 期特異的な転写を促進している可能性も考えられる。
今後、Fcp1 と相互作用する分子を IP とマススペックにより決定する等、この問題を
更に追求して、解決したいと思う。
super housekeeping
遺伝子
今回の実験では、増殖期で生存率を落とす変異株の約 1/4 のみが G0 期でも生存率
を落とす事が分かった。実験的推測から分裂酵母全 5000 遺伝子の約 20%が増殖期に
必要だとすると約 250 個の遺伝子が増殖期にも G0 期にも必要な super housekeeping
遺伝子ということになる。しかし、この数字は低く見積もられすぎている可能性があ
る。なぜなら本研究では窒素源を枯渇し、温度シフト後 72 時間目の生存率を基にし
ており、さらに長期間での培養で生存率を落とす株も存在する可能性があるからであ
る。事実、増殖期に不要である Zn フィンガードメインを持つ転写因子、klf1 の破壊
株は窒素源枯渇 2 週間後から生存率を落とし、1ヶ月後には著しく生存率を低下させ
ている(Shimanuki et al., 2007)。よって G0 期の維持の研究にはより長い時間での
観察を考慮する必要があるのかもしれない。しかし一方で、klf1 が重要になってくる
窒素源枯渇 2 週間後以降は G0 期を越えて分化や老化といった新たなステージに入っ
84
ているという考え方も出来る。これは分裂酵母の窒素源枯渇後の G0 期と呼んでいる
細胞が高等生物のどの状態の細胞にあたるかという問題とも関係してくる。これに関
してヒトの線維芽細胞で興味深い実験がなされている。ヒトの線維芽細胞の G0 期導
入には複数の方法があり、mitogen を培地から抜く方法 (mitogen withdrawal)、細胞
をプレート上で密集成長させる方法 (contact inhibition)、浮遊培養させる方法
(loss of adhesion)でそれ ぞれ表現型が変わる(Coller et al., 2006) 。mitogen
withdrawal では線維芽細胞はプレート上で広がった形状、contact inhibition では
細長いまま密集して縮んだ形状、loss of adhesion では小さな粒状になっており、そ
れぞれのトランスクリプトーム解析の結果は、G0 期導入法により全く違うものとなっ
ていた(Coller et al., 2006)。この 3 つの方法で共通して変化する転写物が G0 期の
導入に重要であると考えられるが、それらの中には細胞周期進行の阻害分子の他にア
ポトーシスや最終分化の抑制分子が含まれており、G0 期では増殖期へ回帰するための
経路の確保も重要である事が示唆されている。分裂酵母の窒素源枯渇後の細胞は高等
生物においてこの最終分化が抑制されている増殖停止中の細胞にあたるのではない
かと考えられる。最終分化をした高等生物の細胞はもはや増殖サイクルには戻れない
と考えられているが、この最終分化は近年の iPS 細胞の研究により Klf4 を始めとす
る遺伝子群によりリプログラムされることがわかっている(Takahashi and Yamanaka,
2006)。分裂酵母での klf1 破壊株の例は、Klf1 がないために G0 期に維持された後、
高等生物でいう最終分化の様な現象の抑制が出来ず、増殖サイクルに戻れなくなって
いるのかもしれない。単細胞生物において、最終分化とは進化的に死と変わらぬ意味
合いになるため、分裂酵母が最終分化を抑え、G0 期を維持する機構はまさに死を免れ
るための重要な機構である。分裂酵母における G0 期維持機構の解明は、単細胞生物
と多細胞生物の間を隔てている最終分化の本質の解明にも一役買う可能性がある。そ
のためにも今回の報告で触れなかった株の解析も急務となる。
現在、窒素源枯渇後の温度シフトによって生存率を落とす株のうち、約 120 株の責
任遺伝子がまだ決定していない。責任遺伝子の決定にはこれまでゲノムライブラリー
や cDNA ライブラリーによる形質転換から相補するプラスミドを特定し、四分子解析
でリンケージを確認し、DNA シークエンシングにより変異場所を決定するという行程
がとられ、非常に多くの時間と労力を必要としていた。それでも、相補プラスミドが
とれなかったり、接合不能であったりと責任遺伝子が決定出来ない例も多数あった。
しかし、今後は次世代シークエンサーの出現により、全ゲノム配列を解読する事が可
能となったため、責任遺伝子に迅速かつ正確に辿り着く事が出来ると期待されている。
残りの変異株の責任遺伝子の決定と G0 期での役割を解析する事によって更なる G0 期
導入、維持機構の解明に努めたいと考える。
85
謝辞
柳田充弘教授に感謝致します。奈良先端科学技術大学院大学の客員教授でもあられ
る柳田教授が 3 年前に奈良で行った講義に出席した事が全ての始まりでした。講義後
に質問に応じて頂き、研究に興味があることを伝えると京都の研究室に呼んで下さい
ました。そして、海のものとも山のものとも分からない一学生の私に、「沖縄の私の
ところで研究しなさい」とおっしゃって頂きました。柳田教授の寛大さに敬服し、こ
の恩に報おうと決意したものでした。この 3 年間、恩に報いるどころか、御迷惑や御
心配ばかりお掛けしてしまいましたが、なかなか進歩しない私を本当に辛抱強く指導
して頂きました。また、「気働き」の大切さなど、研究面のみならず人として大切な
事も数多く教えて頂きました。3 年間、教授から受けた教えを胸に今後の人生を、ゆ
っくりかもしれませんが上を向いて歩いて行きたいと思います。
沖縄科学技術研究基盤整備機構 G0 細胞ユニットという非常にハイレベルな環境の
中で、脱落せずに、なんとかここまでやってこられたのは G0 細胞ユニットのメンバ
ー皆さんの温かいサポートのおかげです。グループリーダーの島貫瑞樹博士には、実
験手法から日常生活まで多岐に渡る相談にのって頂きました。長尾恒治博士は、初め
て柳田研究室にお伺いした時に研究発表をされていて、本当に凄い人がいると興奮さ
せられました。武田鋼二郎博士には、分裂酵母の実験を一から丁寧に教えて頂きまし
た。秘書の照屋智美さん、技術員の國分綾さん、森礼郁さん、上原理沙さん、菊池さ
くらさん、Tomas Pluskal さん、Bryan Matis さん、Alejandro Villar Briones さん
には苦難の連続だけになりがちな研究生活を、明るく実り多いものにして頂きました。
また、研究支援課の吉田智子さんには電子顕微鏡の撮影で大変お世話になりました。
京都大学柳田研究室の皆さんにも、本当にお世話になりました。畠中内子博士には
四分子解析を引き受けて頂きました。羽生雄一郎さん、赤井祐子さんは博士課程の同
期であり、精神的に色々と励まして頂きました。その他、京都出張の際、いつも温か
く親切にして頂きました京都の研究室の皆さんに心から御礼申し上げます。また、今
回のこの研究は、マンダラプロジェクト等、過去の柳田研究室において、多くの人が
努力を重ね、少しずつ積み上げ残してくれた貴重な財産の賜物でして、偉大な先輩方
に感謝致します。
奈良先端科学技術大学院大学の別所康全教授には、研究生活において多岐に渡るア
ドバイスを頂いた他、学位取得の手続きのため、大変な御尽力を頂きました。3 年間、
奈良から遠ざかっていた私が、きちんと単位を揃えて論文を提出する事が出来るのは
別所教授のお陰です。また、アドバイザーを引き受けて頂き、的確な質問やアドバイ
スを下さいました中島欽一教授、高橋淑子教授、片岡浩介准教授、初めてのフロンテ
86
ィアコースの学生として、新たなカリキュラムを組み、御指導頂いた真木壽治教授、
島本功教授に、心から感謝致します。
最後にあらゆる面で私を支えてくれた両親と家族に感謝致します。特に妻の賀奈子
には、この 3 年間、忍耐ばかりの本当に辛い思いをさせてしまいました。旅行も贅沢
もみんな我慢して、子育てを一手に引き受けてもらいながら、実験に追われ余裕の無
かった私が、心ない言葉であたってしまった事も一度や二度ではありませんでした。
毎晩の様に続いた喧嘩に「普通だったら別れてるよ」と半ばあきれたように言いなが
らも、深いところで信じてくれていました。妻に最大限の感謝を送りたいと思います。
息子の拓人にも我慢ばかりさせました。週末は一緒に遊びたいはずなのに「パパは大
事なお仕事があるんだよね」と寂しそうに玄関で見送ってくれた姿が、ここまで頑張
らせてくれました。昨年 12 月、新たに加わった長女の結名を含めた、私のかけがえ
のない家族にこの論文を捧げると共に、これからは辛い時期を一緒に耐えてくれたこ
の家族を幸せにする事を誓って謝辞を終わりたいと思います。
平成 21 年 3 月 9 日
佐二木
87
健一
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