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オクシズヒノキ材を用いた木質調音パネルの開発 - B

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オクシズヒノキ材を用いた木質調音パネルの開発 - B
地域課題に係る産学共同研究委託事業
1.委 託 事 業 名 :
オクシズヒノキ材を用いた木質調音パネルの開発
2.委託事業者名:
委託団体:協業組合ジャパンウッド
概要報告書
連携大学:静岡大学学術院農学領域環境森林科学科教授
安村 基
連携団体:静岡県工業技術研究所
3.研究成果概要:
【背景】
静岡市の面積は141千haで、そのうち森林面積は107千haあり、全体の76%を森林が占めてい
る。このように、静岡市は緑豊かな自然環境に恵まれており、その森林は、空気や水を育み、
災害を防ぐなどの公益的機能を発揮して、私たちの生命を守り、快適な生活を与えてくれる。
そのような静岡市の森林は本来活用できる地域材の宝庫であり、計画的な伐採は、森の保護・
育成にとても重要な役割を果たす。近年、静岡市内人工林のスギ・ヒノキの8割以上が伐採期
を迎えていることから、木材加工施設へと供給し、活用すべき状況となっている。
写真1 オクシズの森林
写真2 オクシズヒノキ林
これらの木材を加工する木材・木製品、家具装備品製造業は、市内に182事業所あり、市内
製造業事業所数の1割を超えている(2013年工業統計)。これら業界においても低迷傾向が続
いており、新たな付加価値を持った木材製品の開発が望まれている。
ところで建築における音への要求は、住宅の場合は、以前は外部から入ってくる音の防音・
遮音に関するものがほとんどであったが、近年は環境基準の改定等により気密性や遮音性が向
上する一方で、より快適な室内の音環境への要求も高まり、吸音性能や響きの調節機能を持つ
内装材が注目されている。また、オフィスや店舗の設計では、音響に関する配慮があまりされ
てこなかった。例えば、金融機関や行政機関等の相談窓口のようなパーテーションで仕切った
ブースでは、近隣ブースの話し声が混ざり、会話が聞き取りにくかったり、また、大規模空間
化した場所では、響きすぎて言葉や音が聞きにくかったりすることがある。このようなことか
ら、会話の聞き取り易さや不快な音の解消等、音響環境改善が要望されている。
【目的】
住宅建築、商業施設やオフィス等における快適な音環境を実現するため、吸音性能や響きの
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地域課題に係る産学共同研究委託事業
概要報告書
調節機能等を持った内装材の開発を行うこととした。これらの音響環境を改善するには、フェ
ルト等の吸音材が用いられるが、人の話し声のような低音域では効果が少ない。そこで、

人の話し声の周波数と言われる500[Hz]〜1[kHz]付近の周囲雑音の低減効果があること

残響時間が適度に調節できること

建築物への壁用内装材、パーティションパネル、2つの展開
を製品開発の目標として、平成22年に制定された「公共建築物木材利用促進法」や、東京オリ
ンピック開催による建築物への木材需要を踏まえて、新たな付加価値として上記の項目を満た
し、木材を多用した建築物に合う木質系調音パネルの開発を、活用が望まれている静岡市の森
林資源であるオクシズヒノキを用いて行った。
【研究結果及び成果】
吸音機構としては、代表的なフェルト状多孔質材料のほか、ヘルムホルツ(Helmholtz)の共鳴
器に代表される共鳴型や板(膜)振動型がある。スリット構造による共鳴型の場合、図1に示
す特定の周波数で振動エネルギーが効率的に消費されるため、その共振周波数近傍で吸音効果
が期待できることが知られている。
500[Hz]〜1[kHz]付近で吸音効果を得るこ
とを目的として、オクシズヒノキ材を用いたス
リット構造による共鳴型と多孔質吸音材を組
み合わせたハイブリッド構造の木質系調音パ
ネル(図2)の開発に取り組んだ。
(1) 木質住環境の快適性に関する研究会
図1 スリット構造による共振特性
(快適研)
静岡大学にて、木質住環境の快適性に関する研究会を毎月 1 回実施し、調音パネルの
木質構造の形状や寸法等をはじめとして開発の方向性や、(3)項に記載するジャパ
ンホームショー2015 出展における試作品のコンセプト等を決定した。
写真3 快適研
図2 調音パネルイメージ
(2) 音響評価機器を活用した調音パネルの開発
(2)−1 残響室法吸音率評価
静岡県工業技術研究所が所有する残響室法吸音率測定システムを活用して、木質構造
部の形状や寸法等の違い、あるいは多孔質吸音材料との組合せによる吸音特性の変化
等について基礎的なデータを蓄積した。写真4に測定時の試料配置例を示す。様々な
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概要報告書
測定事例から、①材料による比較、②スリット幅による比較、③格子部の形状による
比較について図3〜図5に測定結果を示す。図中のダイヤウッドは当社主力製品の内
装材の名称である。
写真4 試料配置例
図3 吸音率(材料による比較)
図4 吸音率(スリット幅による比較)
図5
吸音率(形状による比較)
図3から木材と多孔質吸音材の組み合わせにより、多孔質吸音材単体よりも低い周
波数での吸音率向上を確認した。図4からスリット幅(格子と格子の間隔)を狭くす
ることにより、吸音特性のピークがより低周波側にシフトすることが確認できた。ま
た、図5からは吸音については格子部の形状に因らないことが確認できた。
これらの結果を快適研にフィードバックしてパネルの設計・試作を行った。格子部の
形状は、意匠的な理由で三角柱からオーソドックスな角材に変更した。
(2)−2 室内音響指標による評価
静岡県工業技術研究所が構築した“残響”や“音の明瞭性”といった室内音響指標が
得られる簡易室内音響計測システムを活用して、試作したパーティションパネルの音
響特性を評価した。400Hz〜1kHz の残響時間が、パネル無し状態で 0.7 秒の部屋で、
パネルを設置後は、日本建築学会音環境保全規準・設計指針で学校教室の理想残響時
間 とされる 0.6 秒と同等の結果が得られた。
(3) イベント・展示会での情報調査
 ジャパンホームショー2015(2015.11.18〜20 東京ビッグサイト)
試作品について意見調査をした。バイヤーや建築士等から調音性や意匠性等について
貴重な意見を聞くことができた。
 森林の都しずおか物語ショー(2016.2.10〜12 新宿パークタワー)
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地域課題に係る産学共同研究委託事業
概要報告書
◀ 写真6 ポスター
写真5 ジャパンホームショー
静岡県主催により東京で開催された展示会に参加し、試作品について意見を聞いた。
(4) 工業技術研究所実験室への内装材施工
静岡県工業技術研究所の共同研究室(容積 120m3)の壁2面(面積 36m2)に、①ダイ
ヤウッド CLASSIC タイプ、②試作調音内装材、をそれぞれ施工し、(2)−2と同様に
簡易室内音響計測システムで評価を行った。
写真7 内装材施工後の部屋
写真8 測定の様子
図6は内装材が施工されていない状態を 100 と
して、内装材の施工による響きの低減効果を表
しており数値が小さいほど効果が大きい。吸音
効果を目指した製品ではない内装材従来製品は、
ほとんど残響時間の低減はない。試作調音内装
材は、製品開発における目標として着目した
500Hz〜1kHz だけでなく、2.5kHz 付近まで響き
図6 響きの低減効果
の抑制効果が十分に得られていた。
【まとめ】
本共同研究により、オクシズヒノキ材と多孔質吸音材料を組み合わせたハイブリッド構造の
調音パネル開発に取り組み、木構造の形状や寸法ほか様々な条件における吸音に関する基礎デ
ータを蓄積できた。これらを基に試作したパーティションパネル及び壁用内装材について、製
品開発における目標として着目した 500Hz〜1kHz での音響的な効果が確認できた。
今後は、これらの蓄積されたデータを基に、オクシズヒノキ材を用いた木質調音パネルの製
品化を更に進め、静岡市内に施工予定の公共性のある大型施設への納入を図る。
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