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経済産業省大臣官房調査統計グループ調査分析支援室委託調査 平成27年度 ビッグデータとその解析技術を活用した 新指標の開発事業 (プラットホーム構築検討) 報告書 平成28年 3月 株式会社 NTT データ経営研究所 2 目次 本報告書の概要 ............................................................................................................................................ 4 1.本事業の目的および全体方針 ........................................................................................................... 4 2.ヒアリング結果の概要 ...................................................................................................................... 7 3.先行研究・取組事例等調査結果...................................................................................................... 13 4.プラットホーム構築検討結果 ......................................................................................................... 21 5.調査・検討結果のまとめと今後の方向性 ....................................................................................... 25 第1章 本事業の目的および全体方針...................................................................................................... 28 1.本事業の目的 ................................................................................................................................... 28 2.全体方針 .......................................................................................................................................... 29 第2章 ヒアリング結果の概要................................................................................................................. 31 1.ヒアリング先 ................................................................................................................................... 31 2.ヒアリングにおける論点................................................................................................................. 32 3.ヒアリングの詳細............................................................................................................................ 33 第3章 先行研究・取組事例等調査結果 .................................................................................................. 64 1.海外事例(POS データ、SNS データ等を活用した公的統計・指標作成事例) .............................. 64 2.国内事例(POS データ、SNS データ等を活用した、民間サービス提供事例) .............................. 73 3.POS データに係る調査結果 .............................................................................................................. 97 第4章 プラットホーム構築検討結果.................................................................................................... 110 1.第1回研究会におけるプラットホーム概要 ................................................................................. 110 2.第1回研究会における討議内容の詳細......................................................................................... 112 3.プラットホーム概要事務局案 ....................................................................................................... 117 第5章 調査・検討結果のまとめと今後の方向性 ................................................................................. 118 1.第2回研究会における討議内容の詳細......................................................................................... 118 2.調査・検討結果のまとめ............................................................................................................... 122 3.プラットホーム構築の次年度以降の方向性 ................................................................................. 123 3 本報告書の概要 1.本事業の目的および全体方針 (1)本事業の目的 現下の経済情勢の変化速度は、グローバル化・IT 化などによる経済主体の範囲拡大や意思決定・ 取引活動の迅速化等を通じて、急激に速まっている。 そのため、政府としてもマクロ・ミクロの経済情勢・景気概況やそれらの相関性等の把握のため には、従来からの大まかな属性(産業別、地域別等)ごとの集計で公表までに一定の期間が必要な 政府統計・業界統計や、定性的な企業等からのヒアリング情報だけでは十分でなくなりつつある。 こうした現状を補完するため、最近の IT 技術の進展により活用が可能となって来た民間等保有のビ ッグデータを基にした、新たな速報性の高い「ナウキャスティング(Now-casting、足元予測)」 ・ 「フ ォーキャスティング(Forecasting、将来予測)」や膨大な相関分析といった分析手法(アナリティク ス)による、マクロ・ミクロの新経済指標を研究開発する期待・実現性が急速に高まっている。 これらの研究開発を通じた新経済指標の提供により、民間でのマーケティング戦略・立地戦略等 の立案・改善や生産計画の最適化等が促され、我が国の企業構造改革にも資することとなる。 本事業では、従来の統計調査手法に基づかず、ビッグデータ(POSデータやSNSデータ等) を活用し、速報性や正確性、詳細性が飛躍的に高まる新たな経済指標の開発、将来予測などの提供 等を行うことによる行政サービスの抜本的な向上を目指した「民間等保有のビッグデータ活用のた めのプラットホーム(仮称) 」構築を検討することを目的とする。 4 (2)全体方針 「民間等保有ビッグデータ活用のためのプラットホーム(仮称) 」構築のための「準備フォーラム (研究会) 」を設置し、組織形態、プレーヤー等プラットホーム全体スキーム、実施・運営体制等の 中長期計画等、 『 「民間等保有ビッグデータ活用のためのプラットホーム(仮称)) 」のあるべき姿』 を検討する。 研究会の運営に際しては、予め有識者への個別ヒアリング等を通じて、情報収集、状況把握を進 め、同時に、国内外の大学等研究機関や民間企業等における先行研究や取組について情報収集を行 い整理する。POSデータについては、先行研究や取組についての情報収集に加え、実際のPOS データを用いた分析、比較検証を行い、新たな情報のイメージを見える化することを試みる。 上述の活動によって収集、把握、整理、分析、比較検証した結果、ならびに、SNS等のオープ ンデータの利用可能性の検討のための別事業(指標開発)の経過報告については、適時に研究会に おいて情報提供する。 なお、ビッグデータとして言及されるデータの種類は多数考えられる(次頁「参考資料:ビッグ データの構成データ」参照)が、本事業の目的との親和性、データの取得容易性、該当データに係 る活用事例、研究実績等を勘案し、本事業では SNS 等のオープンデータと POS データに特に着目 した。 また、研究会等における討議に際して俎上に上ったこと等から、ID-POS データ、IoT データも、 上述の SNS 等のオープンデータと POS データに加え、検討対象として追加した。 5 図表1 参考資料:ビッグデータの構成データ ※ビッグデータ時代における情報量の計測に係る調査研究報告書(2014 年3月 6 総務省情報通信国際戦略局情報通信経済室)を基に事務局にて作成 2.ヒアリング結果の概要 (1)ヒアリング対象と主な論点 以下の通り、学術機関有識者4名、小売業の各業態における主たる協会6先、SNS データ、POS データ等のビッグデータに関連する民間企業6先に対して、個別にヒアリングを実施した。 ①ヒアリング対象 図表2 ヒアリング対象一覧 ②ヒアリングにおける主な論点 論点1:新指標のあり方について 論点2:データ保有・提供者及び利用者のメリットのあり方について 論点3:プラットホームのあり方について 7 (2)論点ごとのヒアリング結果の概要 論点1:新指標のあり方について <ヒアリング結果の概要> ① SNS データ等のビッグデータを活用した新指標については、既存統計では見えなかった情 報が、より適時に得られる可能性があり、有用性は高いと思われるという意見が聞かれた。 ② SNS データ等を用いた指標について、社会的な関心の高さゆえ、指標算出に用いた元デー タの質、新指標の算出・評価・検証方法、既存統計との関係性について、試行公開の段階 においても、予め明示する必要があると思われる旨の意見が聞かれた。 ③ POS データ等を用いた商業動態統計等既存統計の補完・強化(適時性の向上等)について は、特定の部門等にとって有用性はあるものの、実現性の観点からは時間を要する可能性 を懸念する意見が聞かれた。 <学術機関有識者からのコメント概要> ① SNS データ等のビッグデータを活用した新指標、ならびに POS データ等を用いた商業動態 統計に代表される既存統計の補完・強化(適時性の向上等)については、その有用性や意 義については概ね肯定的であった。 ② 社会的な関心の高さゆえ、指標算出に用いた元データの質、新指標の算出方法、既存統計 との関係性については、特に説明を要すると思われる。 ③ 元データの質について、特に SNS データはデータの質、特性が明らかでない点等には留意 が必要である旨のコメントがあった。 ④ 新指標の算出方法について、算出された結果や用いたモデルを評価する手法を早期に検討 する必要がある旨のコメントがあった。 ⑤ 民間企業にとっては、政府の公表統計は政策決定の一要因との意識が強く、新指標が既存 統計と結果的に乖離した場合、どちらを注視すべきか等で混乱を来しかねないとのコメン トがあった。 ⑥ 統計情報の予測を政府自身が発表することに関しては、その妥当性を含め、検討の余地が あるのではないか。 <業界団体有識者からのコメント概要> ① 内部の要員不足等が原因で、データ活用が十分に出来ていないこともあり、SNS データ等 を用いた予測情報については高い関心がある。 ② SNS データ、気候データ、免税関連データ、電子タグを利用した在庫データ等の活用につ いて関心はあるものの、コストと比較したときの有用性について、今のところ明確なメリ ットを認識できておらず、業界全体としての取組にまでは発展していない。 8 ③ 来店頻度が低い業態や、POS データの集計数値と実際の売上高が異なる業態においては、 商業動態統計等の統計情報が迅速化することに関して、必ずしもメリットは見出されない。 <民間企業有識者からのコメント概要> ① SNS データ等のビッグデータを活用した新指標、ならびに POS データ等を用いた商業動態 統計に代表される既存統計の補完・強化(適時性の向上等)については、その有用性や意 義については概ね肯定的であった。 ② SNS データ等を用いた新指標によって、従来の統計情報でノイズに見えていた変動の要因 分析が行える等、既存統計と組み合わせた活用の可能性について言及があった。 ③ 政府の役割として、国勢調査のような民間企業が手の届きづらい対象を含んだ調査を期待 している。 ④ 政府の役割として、既存の民間サービスの対象データ範囲の拡大を促進するような環境整 備を期待している。 ⑤ 景況感を週次で見ることが出来ると、データが一部飛躍していたときに、それがノイズな のか何らかのイベントに因るものかを、SNS データ等と見比べて把握できる可能性があり、 大変興味深い。 ⑥ 速報性がある指標が公表される場合、当該指標に基づいてマーケットの景況感が組成され る可能性があるが、その場合、例えば遅れて発表される GDP とでズレが生じると、少なか らず市場にインパクトを与えることになると思われる。 ⑦ SNS データの収集には、自身で収集する方法と、民間企業から購入する方法の二つがある。 ただし、民間企業から購入する場合は、元データに対して何らかの編集加工処理が施され たデータである必要がある。 論点2:データ保有・提供者及び利用者のメリットのあり方について <ヒアリング結果の概要> ① SNS データ等のオープンデータについて、昨今は特定の事業者を介して流通させることが 主流となっており、安定的かつ継続的に収集し、必要な事後処理を行うには相当の作業負 担とノウハウを要する旨の意見が聞かれた。 ② POS データ等について、既に民間で流通サービスを提供している事例が複数存在しており、 また、当該データが競争力の根源となっている事業者においては、対価によらず法的な根 拠なしにはデータの提供が難しいとの意見が聞かれた。 ③ 統計関連業務において、データの収集、集計作業の負荷が大きく、また収集データの汎用 性が必ずしも高くないために、類似する調査に対して複数回の回答を行う等、業務効率性 の観点からは改善の余地がある旨の意見が聞かれた。 9 <学術機関有識者からのコメント概要> ① より粗い形での提供を望むデータ提供者と、詳細な粒度を望むデータ利用者のバランスを 取ることが先ずもって重要であり、かつ、データ提供者に対しては、リスク面、コスト面 でのデータ提供にかかる障壁を取り除く(例えば社会貢献の一環として位置付ける等)必 要がある。 ② POS データの収集に関しては、民間事業者の現況を勘案すると、既にデータを収集してい る事業者から調達する(金銭を対価として支払う)ことも検討に値する。 ③ 政府、プラットホームの提供するサービスが民間事業への介入と受け取られないよう、棲 み分けには留意する必要があり、既に民間で提供されているサービスとの差異を説明する 必要があるのではないか。 <業界団体有識者からのコメント概要> ① POS データの新たな活用方法の発見につながる可能性がある、特に中堅・中小企業にとっ て業態横断的な活用事例を知ることが出来る、小規模小売業者のデータ活用が促される等、 データ利用者のメリットについては概ね肯定的な意見であった。 ② 政府および業界団体の統計調査への対応には負担を感じている事業者も多く、POS データ を大きく加工することなく提供することで代替可能となった場合、回答作業の軽減化を対 価として POS データを提供する可能性について言及があった。 ③ 特にコンビニ業界においてであるが、これまで情報の信頼性が不明瞭だった POS データに 代わり、ポイントカード等ユーザーに紐付くデータの重要性が増してきており、相対的に POS データ自体の重要性は低下してきているのではないか。 ④ 業界団体の統計情報について、データ収集にかかる多大な作業負荷や、収集対象の母集団 の不十分性が課題として認識されており、新たなデータ収集の仕組みに対して期待してい る。 ⑤ 理想的な情報の粒度は、 市区町村単位(地域) 、 「食品」といった商品種目単位(カテゴ リー) 、週次(頻度)である。 <民間企業有識者からのコメント概要> ① 業界によって、データ提供に関する状況が大きく異なっている。例えば、家電業界では民 間事業者が相当程度網羅的に POS データを収集出来ている一方で、スーパーマーケット業 界では民間事業者、業界団体でも POS データの収集に苦戦している。 ② 業界によって、データ提供者への対価も異なっている。例えば、家電業界では対価として 提供データを基に、全体のデータと比較、分析した結果を還元しているが、スーパーマー ケット業界では基本的に対価として金銭を支払っている。 ③ データ収集にあたっては、システム対応のコストを負担してでも、精度の高いデータをシ ステム的に授受できる体制を構築することが重要である。 ④ 集計、分析においては統一されたマスターが重要になってくるが、マスターは他社との差 10 別化要因となることもあり得、業界横断的なマスターを整備するには相当程度作業負荷が 掛かるのではないか。 ⑤ POS データ等の提供に際しては、政府の立場から依頼をする方が収集可能性は高まるもの と思われる。 ⑥ SNS データの元データをそのまま売買することは違法である可能性が高い。 ⑦ SNS データのシェアとして、量的な観点からはツイッターが最も大きいと思われる。オー プンデータではないが、Facebook、LINE も量的には大きい。 論点3:プラットホームのあり方について <ヒアリング結果の概要> ① SNS データ等のビッグデータを活用した新指標については、既存統計では見えなかった情 報が、より適時に得られる可能性があり、有用性は高いと思われるという意見が聞かれた。 ② SNS データ等を用いた指標について、社会的な関心の高さゆえ、指標算出に用いた元デー タの質、新指標の算出・評価・検証方法、既存統計との関係性について、試行公開の段階 においても、予め明示する必要があると思われる旨の意見が聞かれた。 ③ POS データ等を用いた商業動態統計等既存統計の補完・強化(適時性の向上等)について は、特定の部門等にとって有用性はあるものの、実現性の観点からは時間を要する可能性 を懸念する意見が聞かれた。 <学術機関有識者からのコメント概要> ① データの提供を受けるにあたっては、プラットホームとしての中立性の確保が非常に重要 であるとの意見が聞かれた。なお、諸外国においては POS データ保有者と政府が直接デー タをやり取りするケースが多い。 ② POS データ等を用いた指標の算出は一部民間でも取り組みが行われており、将来的に民間 事業者等へ移管するという形は現実的である。 <業界団体有識者からのコメント概要> ① 政府としては、より社会性の高い活動を行うべきであり、本事業のようなプラットホーム の構想は、類似する民間サービスも既に存在しており、当初より民間で実施すべきものの ように思われる。 ② プラットホームには高度な中立性が求められ、民間であっても、独立行政法人のような形 でないと難しく、またデータの提供についても制度面での対応が必要になってくると想定 される。 11 <民間企業有識者からのコメント概要> ① 事業者によって、提供されたデータの共有範囲が異なる。データの保管、集計等を原則グ ループ会社内のみに限定するケースと、一部業務(システム運営等)をアウトソースして いるケースがある。 ② 政府として実施する意義のある統計というのは、民間企業では実施できない国勢調査のよ うな大規模の調査であると考えられる。 ③ マーケットに影響を及ぼしうるような指標については、民間企業では恣意的な操作を疑わ れるなど発表しにくい状況もありうるため、中立な立場である政府やプラットホームが発 表することが望ましい。 ④ 政府が民間のデータ保有企業を束ね、各社の持つ保有データ情報の集約化や検索機能等を 提供するというあり方も考えられるのではないか。 ⑤ POS データの提供に関して、例えば業界横断的な統合マスターの整備を目指すとしても、 メーカーにとってのメリットは多くなく、小売事業者としても、金銭的な対価か法的な義 務が無いと提供は難しいと思われる。 12 3.先行研究・取組事例等調査結果 (1)海外事例一覧(POS データ、SNS データ等を活用した公的統計・指標作成事例) ①海外事例一覧 図表3 海外事例一覧 ②国際連合(国連)の取組事例 国連のビックデータプロジェクト「国連グローバルパルス」は、SAS と共同調査を実施し、ソー シャルメディアやオンライン上の会話から、米国とアイルランドにおける就労環境の変化を理解す るための調査を実施。 米国とアイルランドの約 50 万のブログ・掲示板・ニュースサイトから抽出した 2 年分のソーシャ ルメディアのデータを基に、失業に関連する会話の「雰囲気」や「トピック」を分析して、公的な 失業統計と比較することで、両者の関連性をみている。 13 図表4 国連グローバルパルスと SAS による調査の分析フロー ※出典:UNITED NATIONS GLOBAL PULSE ”UNEMPLOYMENT THROUGH THE LENS OF SOCIAL MEDIA”,2011 また失業した場合に想定される反応と関連があった。例えば、アメリカで「住宅を失う」という 会話は、失業率が急上昇した 2 ヶ月後に増加することが分かった。 図表5 国連グローバルパルスと SAS による調査結果イメージ ※出典:UNITED NATIONS GLOBAL PULSE ”UNEMPLOYMENT THROUGH THE LENS OF SOCIAL MEDIA”,2011 SAS と国連グローバルパルスは、アイルランドとアメリカのそれぞれで、就労環境の変化への気 づきを得るために視覚的な表現(ダッシュボード)を作成した。ダッシュボードをみると失業者に 関する会話量や、失業に関する対処メカニズムを理解できる。 14 ① マクロ経済の動向では、公的機関の失業率や予測モデルが描かれている。このモデルには 統計モデルの良さを評価するための指標として、赤池情報量基準が採用されている。 ② ダッシュボードは利用者が失業に関する傾向や予測を知るために、会話の雰囲気、対処メ カニズム、様々なマクロ経済指標と失業の関係性を時系列で示している。 ③ 月別でバロメーターをみることで、過去の月からネガティブ・ポジティブのどちらに変化 しているかを理解しやすくなる。 将来的には 2 国の予測モデルの結果を基にして、失業予測モデルに向けた価値のあるイン プットを生み出せるようにする。 図表6 国連グローバルパルスと SAS が作成したダッシュボード ※出典:UNITED NATIONS GLOBAL PULSE ”UNEMPLOYMENT THROUGH THE LENS OF SOCIAL MEDIA”,2011 ※図表中の丸囲み数字は事務局にて追加 15 (2)国内事例一覧( POS データ、SNS データ等を活用した、民間サービス提供事例) 図表7 国内事例一覧 16 (3)POS データに係る調査結果概要 ①商業動態統計(小売業種の販売額)と業界団体の公表統計の一覧 図表8 各業界団体(協会)における公表統計一覧 商業動態統計 業界団体(協会) 小売業種区分 百貨店 協会の公表統計 日本百貨店協会 全国百貨店売上高概況 日本スーパーマーケット協会 スーパーマーケット統計調査 新日本スーパーマーケット協会 スーパー オール日本スーパーマーケット協会 日本チェーンストア協会 コンビニエンスストア 日本フランチャイズチェーン協会 チェーンストア販売統計 コンビニエンスストア 統計調査月報 家電大型専門店 ※ ※ ドラッグストア 日本チェーンドラッグストア協会 報道発表 ホームセンター 日本ドゥ・イット・ユアセルフ協会 ウェブサイトで公開 ※家電大型専門店は相当する協会が存在しない為、ジーエフケーマーケティングサービスジャパン株式会社の保有 する POS データ情報(売上高概数)を参考数値として使用 ②商業動態統計と各協会が公表している統計情報の比較 商業動態統計における販売額(2014 年の確報値)と、各業界の協会が公表している統計情報(一 部 2014 年度の値)を比較すると、何れも商業動態統計の 76%以上をカバーしている。 図表9 商業動態統計と各協会が公表している統計情報の比較 ※スーパーの協会統計情報は、スーパーマーケット年次統計調査資料等を基に、商業動態統計の定義(売場 17 面積 1500 ㎡以上等)に合わせた推計値 ※ドラッグストアの協会統計情報は、日本チェーンドラッグストア協会による全国のドラッグストアの総売 上高の推計値 ※家電大型専門店の統計情報は、ジーエフケーマーケティングサービスジャパン株式会社の保有する POS データを基に概数を記載(再掲) ※出典:商業動態統計、日本スーパーマーケット協会、日本チェーンストア協会、 日本フランチャイズチェーン協会、日本百貨店協会、日本チェーンドラッグストア協会、 日本ドゥ・イット・ユアセルフ協会の公表情報 ③商業動態統計(スーパー)とサンプル POS データ(金額 PI)の前年同月比推移 商業動態統計(スーパー)の前年同月比とサンプル POS データの前年同月比(金額 PI)推移を比 較すると、消費税率の引き上げ前後など増減の大きな期間においては、グラフの凹凸の振れ幅に 比較的大きな差分が見られるものの、それ以外の期間においては比較的差分が小さい。 なお、2015 年 6 月以降などのように、商業動態統計の値とサンプル POS データの値で正負が逆 転している期間があるが、これは商業動態統計にのみ含まれる大規模スーパーの売上と、サンプ ル POS データに含まれるスーパーの売上業績が反転していることを示している。 図表10 商業動態統計(スーパー)とサンプル POS データ(金額 PI)の前年同月比推移 ※流通経済研究所保有の全国約 400 店舗のスーパーの POS データで算出(食品には生鮮・惣菜は含まれない) ※税抜での金額PIを算出し、前年同月比をもって商業動態統計(スーパー)と比較 ④POSデータ収集・販売を行う民間企業(代表的な企業) 18 図表11 POS データ関連民間企業一覧 企業名 株式会社インテージ 株式会社 KSP-SP 株式会社マーチャンダイジング・オン 収集データ 主要販売先 スーパー・GMS 大手消費財メーカー ドラッグストア /医療品メーカー 約 4,000 店舗 得意先 500 社 スーパー・GMS 食品 SM/メーカー/ 約 1,030 店舗 卸 得意先 400 社以上 スーパー・GMS 食品メーカー/卸 ドラッグストア 約 400 店舗 ジーエフケー マーケティング サービス ジャパン 株式会社 得意先 330 社 家電量販店 約 4,400 店舗 家電メーカー/卸 株式会社日本経済新聞社 スーパー・GMS 金融機関/商社 (デジタルメディア) ドラッグストア /マスコミ 約 400 店舗 得意先 30 社 ⑤POS データの収集・分析における課題 1)データ収集における技術的な課題 POS データ収集における技術的な課題として以下の2点があげられる。 A) 増大するデータ量の格納に関する課題 POS データは日々蓄積されるデータであり、収集を開始すれば、データ量は増加の一途 をたどる。こうしたデータをどのように格納するのか検討が必要である。 B) データの受領方法に関する課題 オンラインでリアルタイムにデータを収集する場合、送信先の企業とサーバー等の接続 が必要になる。その場合の接続方法やシステム開発に関する費用的な面での検討が必要 である。 2)データ収集における民間事業者とのコンフリクトにおける課題 POS データ収集においては、POS データを保有する小売業と POS データを収集、販売して いるデータベンダー双方とのコンフリクトが発生する可能性がある。 A) 小売業とのコンフリクト 小売業によっては、競争戦略も含め、自社の POS データを外部に出さない企業も存在す る。そういった企業から POS データを収集する場合、企業側へデータを供与するメリッ トを提示するなど調整が必要になる可能性がある。POS データを政府に供与する場合、 小売業側でもデータ送信インフラの整備や、POS データを送信するプログラム等を開発 19 する必要があり、コストが発生する。こうしたコストの負担方法等についてコンフリク トが発生する可能性がある。 B) データベンダーとのコンフリクト POS データを収集、販売しているデータベンダーにとって、出所が同じ POS データを政 府が収集し、統計として発表する場合、それを脅威として捉えられる可能性がある。対 策として収集データの粒度が異なることや、公表する政府統計がデータベンダーのサー ビスと競合しないことを理解してもらう必要がある。 3)データ分析における商品マスター整備に関する課題 商業動態統計への POS データの活用、市場規模統計の作成等を考える場合、収集した POS デ ータを商品カテゴリー単位で集計・分析を行う必要があるが、そのためには商品マスター整備 が必要となる可能性が高い。 これは、POS データの提供元の企業によって、商品分類が異なるためである。つまり、ある小 売業には存在するが、別の小売業には存在しない商品カテゴリーが存在する、あるいは同じ商 品カテゴリーであっても、そこに含まれる商品が企業ごとに異なっているということがありえ る。 4)特定業態における POS データの分析・活用の試行 例えば、家電量販店の POS データの民間事業者の保有カバー率が極めて高いのであれば、当該 事業者の保有データを購入し、限局した範囲での分析等を行うことは可能であると考えられる。 次年度コンソーシアム形式で取り組む場合は、コンソーシアム内からデータを調達して、分析 を行う等のあり方が考えられる。 5)POS データの特徴を活かした分析 本事業の目的に照らして考えると、地域性の問題を取り入れた方が良いと考えられ、例えば、 POS データの分析について、単純に全体の数値を示すだけでなく、地域別の分析等を行うこと が考えられる。 さらに POS データであれば、家電業界において実質的なディスカウントとなるポイント制度に 留意する必要はあるが、価格と数量双方の観点からの分析(PQ 分解)が可能となる。 20 4.プラットホーム構築検討結果 (1)第1回研究会における論点整理 ①第1回研究会時点のプラットホーム概要(案) 図表12 プラットホーム概要案(第1回研究会) ②第1回研究会時点の中長期計画(案) 図表13 プラットホーム中長期計画案(第1回研究会) 21 ③第1回研究会における検討結果の概要 論点1:新指標のあり方について 1. 公共性、社会に与えうる影響、客観的な評価検証の要否等、幾つか勘案すべき事項はある ものの、SNS データを活用した新指標については一定程度有用性や意義が認められる。 2. 現状の統計業務においては、業務効率の向上等を目的とした、POS データ等を含むビッグ データ活用の余地がある。 論点2:プラットホームのあり方について 1. POS データの流通等、民間に類似サービスが普及している領域については、政府が積極的 に関与する意義が見出しがたい。 2. 政府に期待される役割の一つとして、将来的に IoT データの利活用も念頭に置いた業態横 断的な規格、基準作りの検討、推進がある。 ④第1回研究会におけるコメント概要 論点1:新指標のあり方について 1. 国際的な観点からは、昨年 2014 年に国際連合の統計委員会においてビッグデータについて の大きな決議がなされており、公的統計における公平性等々の前提はあるものの、ビッグ データを活用することは Obligation である。 2. 新指標の開発に関しては、ビッグデータの統計への活用と公的統計の活用のあり方を同時 並行的に考えていく必要がある。 3. 世の中の動き、経済の動向を新しい指標によってより早くより細かく見られるということ は、種々の政策に活用できる可能性があり、新たな解析技術を使ってどのようなことが可 能になるかを検討することは有意である。 4. (商業動態統計の迅速化について)週次であれば、消費税率の引き上げの影響把握などに 有用と思われる。来るべき消費増税に際して、このような週次の情報を流していけば有用 なのではないか。その時には間に合わないかもしれないが、試験的にやるのは十分にあり 得ると思われる。 5. 注意点として、新指標と商業動態等の既存統計指標とは切り離して考える必要があり、新 指標が既存指標の予測指数として使われるとそれは問題となり得る。 6. 海外において、政府が作っている公式統計を作る時のソースデータをこれまでのデータか らスキャンデータに置き換える動きがあり、ここでは業務の効率化に資するという理由で 流通業者に依頼または法律に明記し、当該事業者からデータの提供受けている。 論点2:プラットホームのあり方について 1. 既に民間が独自に算出、公表している指標と、政府が公表する指標との中間にあるような、 プラットホームによる指標の公表というあり方が可能かは定かでない。 2. POS データの購入(収集) 、加工、提供等は民間で既に同様のサービスが提供されており、 そこに政府が介入する場合は、その必要性、公共性についての確認が必要であり、また民 22 業圧迫とならないよう十分に注意する必要があるのではないか。 3. プラットホームにおける政府の関与の在り方として、例えば収益を上げる目的であれば民 間で実施するべきということであるが、全体構造のバランスの変化や、何らかのリスクを 事前に検知することが目的となれば、公的なものとして考えられる。 4. 統計というのはある意味一つの公共財とも言えるが、その元データの扱いに関しては、事 業者としては提供したくとも、会社の立場として株主説明が難しいというケースもある。 データを公共的な財として扱ってほしいという意見も聞いている。 5. 海外において政府が関与する領域として、基準作り、規格作りがある。国内でのみ通用す るコード体系は、例えば輸出入などの国際的な用途には使用できない。業態横断的または 国際的な統一基準や規格の作成には政府が関与することが考えられる。 23 (2)プラットホーム概要事務局案 ① 今年度の検討を踏まえたプラットホーム概要(案) 図表14 プラットホーム概要案 ②今年度の検討を踏まえた中長期計画(案) 図表15 プラットホーム中長期計画案 24 5.調査・検討結果のまとめと今後の方向性 (1)第2回研究会における検討結果の概要 ①POS データに係る事項 A) プラットホームに POS データを取り込む構想は困難であるが、民間から購入等して統計へ 活用することについては継続して検討は進めるべきである。 B) 家電量販店等特定業態の POS データの民間事業者の保有カバー率が極めて高いのであれば、 当該事業者の保有データを購入し、限局した範囲での分析等を行うことは可能であると考 えられる。 C) 地域性の問題などを取り入れた方が良いと考えられ、分析においては、単純に全体の数値 を示すだけでなく、地域別の分析等を行う必要があるのではないか。 ②対象データに係る事項 A) IoT データについては、今後利活用の可能性を検討していく。 B) 検索キーワードのランキングや気象データ等は、今あるデータと関連付けるものとして、 ニュートラルであり、有効であると考えられる。 C) SNS データの範囲をもう少し広くとらえ、本年度のスコープだけに限定せず、利活用の仕 方についてより広範な調査を実施することも考えられる。 D) データソースとして公的統計というのは、無料で利用できるデータであり、これは IoT と も違うデータソースでありビッグデータの一つである。 E) オンライン上で購入されたまたは参照される価格データについても、実店舗における価格 動向の先行性が指摘されるなど、着目する価値があると考えられる。 ③プラットホーム(事業組成)に係る事項 A) オープンコンペティション、クラウドソーシングのような形でアイデアを集める形を想定 しておかないと、事業の内容が固定化してしまう可能性がある。 B) 公募において利益誘導等が行えないよう、個別の事業を実施したいのであればコンソーシ アムの再委託先として公募に関与することにし、取り纏め事業者は自身で個別事業を実施 できないような体制にした方が良いと思われる。 C) 他府省等とも意見交換をしながら実施する必要性を検討した方が良い。 25 (2)調査・検討結果のまとめ 図表16 各種データに係る調査・検討結果一覧 26 (3)プラットホーム構築の次年度以降の方向性 ①プラットホーム概要(事業組成案) 図表17 プラットホーム概要(事業組成)案 ②次年度計画(案) 図表18 次年度計画案 27 第1章 本事業の目的および全体方針 1.本事業の目的 現下の経済情勢の変化速度は、グローバル化・IT 化などによる経済主体の範囲拡大や意思決定・取 引活動の迅速化等を通じて、急激に速まっている。 そのため、政府としてもマクロ・ミクロの経済情勢・景気概況やそれらの相関性等の把握のために は、従来からの大まかな属性(産業別、地域別等)ごとの集計で公表までに一定の期間が必要な政府 統計・業界統計や、定性的な企業等からのヒアリング情報だけでは十分でなくなりつつある。こうし た現状を補完するため、最近の IT 技術の進展により活用が可能となって来た民間等保有のビッグデー タを基にした、新たな速報性の高い「ナウキャスティング(Now-casting、足元予測)」・ 「フォーキャ スティング(Forecasting、将来予測) 」や膨大な相関分析といった分析手法(アナリティクス)による、 マクロ・ミクロの新経済指標を研究開発する期待・実現性が急速に高まっている。 これらの研究開発を通じた新経済指標の提供により、民間でのマーケティング戦略・立地戦略等の 立案・改善や生産計画の最適化等が促され、我が国の企業構造改革にも資することとなる。 本事業では、従来の統計調査手法に基づかず、ビッグデータ(POSデータやSNSデータ等)を 活用し、速報性や正確性、詳細性が飛躍的に高まる新たな経済指標の開発、将来予測などの提供等を 行うことによる行政サービスの抜本的な向上を目指した「民間等保有のビッグデータ活用のためのプ ラットホーム(仮称) 」構築を検討することを目的とする。 28 2.全体方針 「民間等保有ビッグデータ活用のためのプラットホーム(仮称)」構築のための「準備フォーラム(研 究会) 」を設置し、組織形態、プレーヤー等プラットホーム全体スキーム、実施・運営体制等の中長期 計画等、 『 「民間等保有ビッグデータ活用のためのプラットホーム(仮称)) 」のあるべき姿』を検討す る(後述①) 。 研究会の運営に際しては、予め有識者への個別ヒアリング等を通じて、情報収集、状況把握を進め、 同時に、国内外の大学等研究機関や民間企業等における先行研究や取組について情報収集を行い整理 する(後述②) 。POSデータについては、先行研究や取組についての情報収集に加え、実際のPOS データを用いた分析、比較検証を行い、新たな情報のイメージを見える化することを試みる(後述③) 。 上述の活動によって収集、把握、整理、分析、比較検証した結果、ならびに、SNS等のオープン データの利用可能性の検討のための別事業(指標開発)の経過報告については、適時に研究会におい て情報提供する。 なお、ビッグデータとして言及されるデータの種類は多数考えられる(次頁「参考資料:ビッグデ ータの構成データ」参照)が、本事業の目的との親和性、データの取得容易性、該当データに係る活 用事例、研究実績等を勘案し、本事業では SNS 等のオープンデータと POS データに特に着目した。 また、研究会等における討議に際して俎上に上ったこと等から、ID-POS データ、IoT データも、上 述の SNS 等のオープンデータと POS データに加え、検討対象として追加した。 ①「準備フォーラム(研究会) 」の開催 民間等保有POSデータやSNS等のオープンデータ等のビッグデータに関する専門的知見を有 する外部有識者等(大学、民間、公的機関等)により構成される研究会を開催(期間中に4回程度、 うち1回は外部有識者との個別ヒアリングとする)し、 『「民間等保有ビッグデータ活用のためのプ ラットホーム(仮称) 」のあるべき姿』ついて検討する。 研究会のメンバーは全体で10名程度とし、外部有識者の他に経済産業省の職員(3名程度)を 含める。また、個別テーマの議論に当たっては、必要に応じて個別テーマに関する専門的知見を有 する有識者を随時参加頂くこととする。 ②先行研究及び取組事例等の収集 POSデータやSNS等のオープンデータ等のビッグデータを活用した大学等の研究機関や民間 企業における先行研究及び取組事例を収集、整理する。 ③POSデータ等の見える化 POSデータや仮データのサンプル解析を行い、データ提供を行い、データが充実化することに よって得られる新たな情報のイメージを見える化することを試みる。 また、利用可能性のあるPOSデータの保有機関、収録店舗数、収録内容、各種業態内でのカバ レッジ等を整理する。 29 図表1 参考資料:ビッグデータの構成データ ※ビッグデータ時代における情報量の計測に係る調査研究報告書(2014 年3月 30 総務省情報通信国際戦略局情報通信経済室)を基に事務局にて作成 第2章 ヒアリング結果の概要 1.ヒアリング先 以下の通り、学術機関有識者4名、小売業の各業態における主たる協会6先、SNS データ、POS デ ータ等のビッグデータに関連する民間企業6先に対して、個別にヒアリングを実施した。 ①ヒアリング対象 図表2 ヒアリング対象一覧 31 2.ヒアリングにおける論点 ヒアリングに際しては、以下の通り3つの論点を設定して臨んだ。 (1)論点1:新指標のあり方について ①経産省(調統G)が発表するに相応しい新指標の概念はどうあるべきか i.景気動向をより的確に把握する速報性があり、経産省の既存統計を補完・強化するものであ るべきではないか ii.統計法における新指標の位置付けをどのように整理するべきか ②新指標の具体的な内容はどのようなものが適切か i.既存統計の補完・強化(週報化(POSの活用) 、予測化(SNSの活用) ) →商業動態調査、第三次産業活動指数、 (家計調査(総務省) ) ii.全く新しい景気指数(SNSの活用) (2)論点2:データ保有・提供者及び利用者のメリットのあり方について ①データ提供の対価に相応しい利益とはどうあるべきか i.政府からの提供 →政府統計調査への回答作業軽減措置等を検討すべきではないか ii.プラットホームからの提供 →オープンデータ化による外部ユーザーの活用を検討すべきではないか、ビッグデータの 活用研究を行いその成果の提供を検討すべきではないか (3)論点3:プラットホームのあり方について ①民間移管も念頭に、継続的に事業を行うために必要な要件は何か →事業内容(資金の流れ)はどうあるべきか ②適切な事業運営に必要な体制はどのようなものであるべきか →組織形態、設置場所、責任体制、セキュリティ対策、機材・システム、成果の取扱いのル ール等はどうあるべきか 32 3.ヒアリングの詳細 (1)A 大学 <論点1:新指標のあり方について> 使用する元データについて、特に SNS データなどは、過去 10 年間のデータを見る場合、10 年前と現在とでは利用する年代も異なってくる、端的には利用者の年代層が高齢化していき、 より直近になるほど実態を表しやすくなることが想定される。 日経平均などはマーケットから出てくるものでありこれを代替する指標は必要ではないが、 例えば、政府が実施している景況感を調べる調査等は、代替可能性を検討することもあり得 るとは思うが、それは指標の信頼性によるところが大きいと思われる。 既存の、例えば景気動向指数は種々の指標が組合せられているため、新指標がその何れと比 較検証することに意味があるのかは検討が必要である。また、インパクト分析のような、ミ クロな分析が出来れば中身が分かりやすくなると思われる。 <論点2:データ保有・提供者及び利用者のメリットのあり方について> 民間で POS データをほとんど集めることが出来るのであれば、あえて政府が出る必要はな いのかもしれない。ただし、民間におけるデータ集約の動きを早めるために政府が担う役割 はあるかもしれない。 緊急通行システムなどのデータは、公共性の高いデータであり、これは自動車メーカーは金 銭を対価として提供するのではなく、社会貢献として提供する形になると思う。例えば、急 ブレーキ、急発進が頻発している地域等のデータ提供によって、当該地域に信号を設置する、 死角を減らす対策を取ることが考えられる。 <論点3:プラットホームのあり方について> 政府が発表する公式統計の作成にあたって、ソースデータをこれまでの調査票から POS デ ータ等に置き換えるためにプラットホームを使用することは、行政コストを低減するという 観点から、また人員も減ってきており効率化が必要になってくるであろうことから考えられ る。ただしその場合は、指標の算出はプラットホームの中ではなく、政府の一部となると考 えられる。 (2)B 国立研究開発法人 <論点1:新指標のあり方について> 商業動態統計のような統計で速報性を重視するのであれば、商品分類点数で制限して集め るなどし、小さく早く集計することが重要である。 過去の実証実験では、県が協力してくれ、メーカー系の企業が入る評議会を設置し、 会の中でセグメントを共有している。 対象データは、現状はアンケートの回答データとなっている。 大学や病院などと提携し、千葉の団地で住人に ID を配布するケースや長崎のアジサイ 33 ネット等、健康データを提供、活用する取り組みも始まりつつある。 ID-POS の活用はメーカー側で実施されていることが多く、収集の対象としては小売りでは なくメーカーというケースも考えられる。 ID-POS はメーカーが小売から購入しており、分析して結果を還元している。 ID-POS の収集はメーカーに依頼するというのも一つの選択肢になり得る。 SNS データを用いて何らかの指標を導出する場合、SNS は利用者のプロファイルに偏りが あるなど、その特性を押さえる必要があると思われる。 アイスタイルの「@cosme」では、ID とユーザーが使用している化粧品とを紐付して いる。 SNS データは偏りがあることを前提として、主観上の分析を行うことには意味がある かもしれない。 ただし、単純な形態素解析によるキーワードの抽出だけでは、時制の問題などもあり、 正確な結果が得られるかどうかは不明である。 ビッグデータは、自由度が高すぎる(説明変数の数が多すぎる)ため、従来の分析手法が 適用できなくなっており、モデルや方法の評価の手法については初期の段階である程度決 めておく必要がある。 自由度が高いと、どの様な操作によってどう影響が現れるのかを把握するのが困難で ある。 ある母集団から部分集合をサンプリングで抽出したとして、クロスバリデーションを 行ったとしても、そもそもその母集団が十分であるかどうかが不明なケースも多い。 何かしらのモデル、方法を作ったとして、その方法を評価することが難しい。 尤度や精度が注目されるが、実際には出力される結果の安定性やエラー、イレギュラ ーな事象に対しての影響度等も重要である。 検討の初期段階において、方法の妥当性、またその検証方法等を議論する必要がある。 エラー、イレギュラーな事象に対する過剰な変動への対応としては、セグメント別に 見た際に変動が荒い要因を取り除く方法や、変動要因が含まれる値を指標の分母に組 み入れることで(分子となる指標の過剰な変動を)キャンセルする方法などが考えら れる。 外乱的な要因を包含したモデル、方法とすることで精度が向上することが期待される。 データ分析への AI、ディープラーニング等の適用は、現状では相当程度の注意を要すると 思われる。 プラットホームでの分析においての人工知能等の活用の観点からは、ディープラーニ ングはモデルが見えないこともあり、過学習(注:主としてデータが有限であること に由来する、最小化すべき損失の期待値と実際に最適化する目的関数が異なることに よって生じる誤差の増分である推定誤差が大きい状態)の問題にも注意が必要である。 ディープラーニングで作ったモデルと実物との近似度合が分らない。 <論点2:データ保有・提供者及び利用者のメリットのあり方について> 34 データ保有者(ステークホルダー)は拡大していくと思われる。 多様なデータ、例えば健康情報等が収集され、その他のデータと同一のセグメント、 またはユーザーとして紐付けが可能になれば、意味ある情報となり得る。 POS データ、売上データと気象データとの紐付は既に行われている。 どの様な企業がステークホルダーになりうるかには注意が必要である。 昨今は、業態を跨いだ企業間競争が起こり得、どの企業がいつ競合となるかが不明瞭 なため、データ提供者がデータを提供することに対して株主等への説明責任を果たす ことが難しくなっている。 株主等、ステークホルダーの裏のステークホルダーを考える必要がある。 ステークホルダーの関わり方について、先ず障壁となっている要因を把握して、それらを 取り除く必要がある。 往々にして、リスク面、コスト面の話題が先立つ為、単純に自社にとってメリットが あるというだけではデータ提供に応じない可能性がある。 先ずは、リスク面、コスト面における障害、例えば、競合他社との優位性への影響な どを把握し、これらを解決したうえでメリット、便益の話をする必要がある。 社会貢献、地域貢献の側面についてもメリットとして示していく必要がある。 地域におけるステークホルダーにとっては、地域貢献であることや、データが地域の 公共財としての位置付けであることを認識してもらい、単に事業者にとってだけでな く、地域の生活者にとっても有益であることが明示されると、コスト面での障壁が緩 和される。 単純に、データの価格という観点だけでは提供には応じない企業もある。 地位貢献となることで、企業内部において社内を説得しやすいということが実利とし てある。 データの提供に際して、社会貢献の一環または政府への協力であるといった錦の御旗 は有効である。 自社だけではなく、自社の最終顧客にとっても有益な情報提供になっていることを示 すことが望ましい。 最終的に必要なデータ、必要な粒度等を勘案したうえで、可能な範囲でマスク化や集約、 セグメント化をしていくことが重要である。 パーソナルデータや JAN コード付きのデータとなると提供へのハードルは高いが、こ れを一部ダミー化する、セグメント内で統合・入替をするなどしてハードルを下げる ことは可能と思われる。 セグメントごとの集約については、段階があると考えており、データ保有者が出して も構わないものはローデータ(注:加工処理をしていないデータ)で、ローデータで の提供が難しいものは集約してということになると思う。 セグメント化は段階的に進めればよく、簡易なものについては最初からデータ保有者 にて実施し、そうでないものを例えばプラットホーム等で実施することも考えられる。 収集したデータの加工処理、分析については、セグメント化されたデータでもある程度可 35 能ではある。また、試行に際してはスモールスタートとした方が実現性は高いと思われる。 データの加工処理等によって、有益な情報を見出すため、広島の実証においてセグメ ント化の技術も紹介したが、ID がない状態でもある程度の分析が出来た。 ID-POS の分析については、データ提供者としてはセグメント化して提供する方がハー ドルは低い。 セグメント化に関する産総研の知見は民間にも展開している。 データの加工について、広告代理店が各社からデータを収集して加工処理を行うアイ デアがあり、カード会社に提案したものの、第 1 号にはなりたくないとのことで断ら れたケースがある。 スモールスタートが出来ることも重要である。 <論点3:プラットホームのあり方について> プラットホームとして、技術的な要因が障壁になるというよりも、サービスの観点からの 方が問題になるのではないか。 プラットホームには、例えば競合他社の参画等も当然想定され、中立性が重要となっ てくるが、そこで利用規定や同意書等をどの機関が収集、管理していくのかは検討す る必要がある。 収集するデータの対象が広いと事業が進まない可能性があるため、先ず地域を限定し て実証するというのは一つの選択肢ではある。 横浜、札幌、神戸などは候補地域としての可能性はある。 (3)C 大学 <論点1:新指標のあり方について> 現在大学の産業経営研究所の所長をしており、大手電子機器メーカー、大手通信会社など の企業を呼び、ビッグデータ等を題材に発表してもらっている。 ビッグデータの活用は EU 等の諸外国が先行しており、また米国では、非農業部門雇用指 数を、ビッグデータを用いてどの程度の精度で推計できるかを研究した論文がある。 SNS データ等を用いた新指標について、SNS データはデータの質が定かでない面があり、 ユーザー層が見えないという点にも注意が必要である。 POS データ等を使ったナウキャストという意味では、東大日次物価指数、SRI 一橋大学消 費者購買指数等は参考になる。 日本国内においては、商業動態統計よりも鉱工業指数(Indices of Industrial Production: IIP)の方が着目されているのではないか。 ⇒IIP は確かに最も着目されているが、その分新しい取り組みを行うことで混乱する等、影 響が大きくなることを懸念している。IIP 程ではないが、ある程度着目されている商業動態 統計を今回は対象にした。 (経済産業省によるコメント) 経産省版の GDP に相当するような指数であると、相当注目されると思われる。例えば、生 産指数、商業動態、3 次産業指数の 3 つを組み合わせると近いものが出来るのではないか。 36 マーケットから注目されている指標の方が利用者の増加にもつながると思われる。 IIP の生産予測指数との兼ね合い等の課題はあるが、SNS データ等を用いた商業動態の予 測値の公表は検討に値すると思われる。 データの質や特性、また速報性と統計情報の精度はトレードオフの関係にあること等、社 会一般に敷衍して示していく必要がある。 ビッグデータを活用した解析結果等について、どのような検証方法が考えられるかが見え ない。 ⇒商業動態における業態別のサンプルの数字を用いて比較するといった方法が考えられる。 (経済産業省によるコメント) データ提供者としては、対価として細かい区分のデータを提供してもらえるかどうかに関 心があり、例えば属性別(地域や商品の区分別等)の詳細なデータが求められるであろう。 現在は顔認証技術も相当進んでいると認識しているが、IoT に関連したデータの収集蓄積等 もプラットホームでは想定されているか。 ⇒将来的には IoT 関連のデータも視野に入れていくつもりではあるが、現時点での対象と しては考えていない。 (経済産業省によるコメント) ビッグデータ等を活用して商業動態統計等の速報性を高める(ナウキャスト化を進める) というのは社会的な要望は高いと思われる。 <論点2:データ保有・提供者及び利用者のメリットのあり方について> ビッグデータの場合、データの提供先、提供データの内容が分析等の結果に相当影響を与 える。 マクロ経済の観点からは、先行き、例えば消費増税の駆け込み需要や、その反動減などは POS データを持っている事業者でも見通しを誤ってしまったこともあり、国全体でより広 範なカバーをすることが重要であると考えている。 過去の POS データを使い、統計指標がどの程度再現できているのかを調べることは有 用と思われる。 直近では消費税増税のタイミングである 2017 年 4 月を見計らって、実験的にケースス タディとして取り上げてみると良いのではないか。 先ず、民間事業者等にデータ活用の有用性について認識してもらうためにも、これま では見えていなかった動向が、新しい手法やデータの活用でここまで見えるようにな ることを示すことが重要である。 現在では消費税の増税が注目の中心となる。 昨今は、民間大企業におけるデータの保有量や、分析能力等がハード面、ソフト面ともに 向上している。 日本の特徴として、公的統計、指標の位置付けとして、民間企業は政策に結び付けて考え がちである。 指標がどのように変化すると、どのような政策が打たれるかといったことに関心が集 まる。 37 <論点3:プラットホームのあり方について> 外国政府においてもまだ実用的な活用例は少ないが、OECD やニュージーランドなどでの 事例と比べると日本は遅れている印象がある。 日本では組織的な対応が行われておらず、マクロの観点が抜けていることが遅れの一 因として挙げられる。 日本の場合、家計調査等含め既存統計が諸外国と比べ相当程度確立されており、精度 も良い。 ⇒オーバースペックということもありうるかもしれない。 (経済産業省によるコメント) 米国などでは、比較的容易に推計値を作り公表している。 国内では、深尾京司氏と宮川努氏が Japan Industrial Productivity Database(JIP デ ータベース)等の推計を行っているが事例は少ない。 政策決定に推計値を用いることは当然責任を伴うが、日本は今でも GDP の速報と確報でベ クトルが逆転するケースがあり、それは改善する必要がある。 GDP の統計情報としての位置付けはこれまで低かったと考えているが、最近はその重 要性が意識され始めてきたように思われる。 本件の新しい取り組みに際して、サンプルの妥当性の問題や、前年比などの比較可能性の 問題等、多くの批判があると思われる。 (4)A 大学 ※(1)とは異なる有識者 <論点1:新指標のあり方について> 政府統計のために POS データでの提供を求めるないし認めることは、特に商業動態統計に 関しては、検討する価値があると思われる。 諸外国の中で、米国は比較的遅れており、進んでいるのは欧州の小国、北欧のスウェ ーデン、ノルウェー、スイスなどである。 小売では POS データを活用することになると思われるが、卸売についての状況はどの ようになっているのか。 ⇒卸売における取引データ等は、小売りの POS データのようには標準化は進んでいな い。 (経済産業省によるコメント) 経産省には第三次産業指数があるため、場合によっては経産省版の GDP を作成することが 可能ではないかという話もある。 ⇒経産省では全産業活動指数も公表しており、理論上はこれらを活用することで GDP のよ うな指標を作成することも可能かもしれないが、現時点でどれ程現実的な考えかは定かで はない。 (経済産業省によるコメント) 社会的な注目は GDP に集まりがちであるため、そちらに注力する方が社会的なメリットも 大きいのではないか。 ⇒GDP への注目度は高いが、今回はむしろ商業動態統計への社会的な関心を高めるという 意味もあり商動(商業動態統計)を対象としている。(経済産業省によるコメント) 38 本学が協力している指標について、購入者は金融機関などが多く、CPI よりも有用な情報 となることを目指し、ウェブで公表しているものとは全く異なる情報を提供している。 本学が協力している指標は学識者が算出したものであり、企業が気になるのは結局の ところ政策決定の要因となる総務省の CPI である。 CPI を予測できるような情報が求められることが多く、現状では CPI の予測情報に対 する需要が大きい。 ⇒政府自身が予測情報を提供するかどうかというのは議論があると考えている。 (経済 産業省によるコメント) 本学が協力している指標の位置付けについては、既に CPI 等が存在しているのに新たな指 標を発表することにどのような意味があるのかという議論もある。 社会としては、正しい統計情報なるものが一つだけ存在してほしいという要望がある のではないか。 一方、政府の提供する統計関連のサービスにおいては、例えば迅速性の観点等から民 間事業者が入り込む余地があり、現在は政府サービスの一部を民間主導で補足してい るイメージである。 商業動態統計は重要な統計であり、その信頼度は高いと思われるが、そこに敢えて不確か な予測情報を盛り込む意義に関しては検討の余地があると考えられる。 ⇒特にデータの質や特性が定かではない SNS データ等を用いる場合、批判的に受け取られ る可能性がある点は認識している。 (経済産業省によるコメント) 政府が新しい指標の公表やその予測情報の公開等を行うことについては、相当程度批判さ れることも考えられる。 例えば、2017 年に予定されている消費増税の議論の位置根拠として経産省の新指標や 予測情報が用いられるとどのような状況になるのかは想像できない。 ⇒予測情報等は、政府自身でなくプラットホームが主体となって算出、発表すること も選択肢としては考えられる。 (経済産業省によるコメント) <論点2:データ保有・提供者及び利用者のメリットのあり方について> 本学が協力している指標について、データの収集に大変苦労している。ある程度類似する サービスが既に存在する以上、新しく開始するサービスではそれらと違う形でのメリット を上手く示していく必要があるのではないか。 比較的分析し易いデータを保有している民間企業もあり、それらを活用してコンサルティ ングなども提供している。こういった企業が現状出来ていないサービスを提供するという ことでないと、広く賛同は集められないのではないかと思われる。 データを活用したサービスにおいて、企業側のニーズは個社ごとに異なっており、データ を提供してもらうためにはどのような結果を還元すれば良いかを模索している状況である。 政府の統計サービスとしてビッグデータを活用し、経産省自身の統計情報が改善されるこ とについては、当初は抵抗する事業者等もいるかと思うが、賛成である。 現在民間事業者が行っているサービスと同様のものでれば、いわゆる介入に近く、違和感 39 がある。 ⇒プラットホームを介在させる理由は、政府の予算措置、特に事業開始後 3 年後以降の予 算が確保されるかどうかが定かではないためである。将来的に民間移行して、政府予算な しに事業が継続できるような一つの形としてプラットホームを検討している。 (経済産業省 によるコメント) ナウキャスティングは現在民間事業者等でも始めているところがあるため、そういった民 間事業者では実施できない部分を政府が補完することを期待している。 ⇒本事業がある側面においては民業圧迫になり得るとの批判がある点は認識している。 (経 済産業省によるコメント) <論点3:プラットホームのあり方について> POS データを活用して消費者物価指数(Consumer Price Index:CPI)を作成している国 はあるが、それは政府が POS データ保有者と契約、または法制度を整えたうえで取引を行 うなどしており、基本的には政府が主体となってデータを取り込んでいる。本事業のよう にプラットホームを用いた方式は聞いたことはない。 現在民間で算出している指標についても、一部は総務省の仕事ではないかとも考えられ、 将来的には経産省、総務省が、学術機関等の算出した指標を購入する、ないしは指標の算 出をアウトソースするという形はあっても良い。 <その他> マーケット関係者、証券会社等よりも早く市場の情報、状況を知ることを目的に、フィラ デルフィア連邦準備銀行内に、ビッグデータを扱う部署が新設されたとのことである。 これは中央銀行の責を果たすためにも必要だということで社会的に一定の理解は得られて いるようである。 (5)D 協会 <論点1:新指標のあり方について> 本協会では、年次統計調査報告書(年次報告書)と、月次のマンスリーレポートを作成、 発表している。 年次報告書は 5 月頃に調査を開始し、発表するのは 10 月頃、マンスリーレポートは翌 月の 28 日に発表している。 作成にあたっては、メールで定型のフォーマットを送信し、各企業が記入、返信した ものを、本協会で集計して作成している。 マンスリーレポートにおける回収率は会員約 100 社中 70 社前後であるが、実際には安 定性、継続性等を考慮して、集計対象は 60 社に絞っている。 会員企業の情報を収集するにあたって、より詳細な情報を聞こうとするほど回収率が 下がる傾向があるため、試行錯誤をした結果として、現在の年次報告書やマンスリー レポートの内容に落ち着いたという経緯がある。 40 会員企業は年次の報告書やマンスリーレポート等で業態ごとの売上等の推移を確認してい るようであるが、地場企業も多く、本来は自社の商圏等、より詳細な地域別の情報が求め られていると思われる。 粒度の目安としては、地域は市区町村別、種目は食品等のカテゴリー別が求められる。 ⇒政府統計としては、あまりに詳細なデータを開示することで企業が特定されかねな い状況は望ましくない。 (経済産業省によるコメント) SNS データ等を活用した予測情報には興味がある。 SNS でのつぶやきについて、どのような影響があるかを調べる実験をしているという話を 聞いたことがある。 例えばパンケーキが流行している、またはコンビニデザートが話題になっているという情 報があれば、コンビニ等に視察に行くこともあり、SNS データ等を活用して売れ筋の商品 を予測する等の活用方法は考えられる。 予測に関して、例えば気温の変化によって特定商品の売り上げが増減するということが言 われており、気象庁の 2 か月予報等を用いて販売予測等を考えている。その際はエリア(例 えば、関東地方など)の単位で見ている。 <論点2:データ保有・提供者及び利用者のメリットのあり方について> 日本はカレンダーマーケットと呼ばれ、季節の変動や、暦上のイベント等によって特定の 商品の売り上げが増減するケースが多いこともあり、企業ごとに 52 週販促計画を作ってい る。 商業動態統計の頻度が高まり週次での発表となれば有益な情報になるが、その前提として も、前述の通り市区町村別等のより詳細な区分ごとの数字が求められると思われる。 ID-POS について、現状は POS と同じレベルの分析しか出来ておらず、まだ活用の余地が あると考えている。 スーパーマーケット等から POS データを購入している企業からは、現在ではもう POS デ ータを分析しても既知の内容しか得られず、使えないという話も聞いており、POS データ の活用方法がある程度出尽くしてしまった可能性が考えられる。 他の業界での POS データの活用方法等を参考にすると新たな活用方法が発見できる可能性 もあるため、他業界の事例には関心がある。 POS データの提供について可否を判断するのは経営層になると思われる。 自社のデータを販売したいと考えている企業は多いと思うが、金銭以外の対価となると、 自社商圏内の販売状況が分るような市区町村レベルでの結果が還元されなければ価値は見 出してもらえないのではないか。 <論点3:プラットホームのあり方について> 会員企業のなかには、緊密な取引先に対してのみ POS データを提供しているところや、専 門業者に POS データを販売している企業もある。 会員企業から本協会に対してシンクタンクとしての役割を求められることもあるが、現状 41 では中長期のシナリオ(5 年後に想定される市場の状況を記述)や年次報告書を発表するこ とくらいしか出来ていない。 ビッグデータの活用はよく言われるが、本協会は高い分析能力は保有しておらず、また、 どの程度の分析結果を還元すれば各企業が役に立てるのかが見えていない。 現状では、分析結果として現場の肌感覚で知っている内容以上のものが出てきておらず、 コストに値するだけの分析結果が得られていないように思われる。 POS データ等を活用していると言える企業は、会員企業の中でも大手に限られる。 小売企業は自社で POS データは大量に保有しているが、有効活用はできておらず、実際に はメーカー等に提供、メーカー側で分析して、その結果に基づく提案を受けているのが実 態である。メーカーには分析能力がある。 メーカーから還元される分析結果の内容が非常に重要である。 現状の分析は、ギャップ分析、トレンド分析が主要なものである。 政府の統計情報に関する調査への回答は相当程度負担になっている。 政府の調査には類似のものが多いと感じており、各企業は回答するものを選んでいるので はないかと想定される。 <その他> 在庫に関するデータについては、欠損や紛失等でシステム上の在庫と実在庫等が不整合と なる場合もあり、現状それほど整備されていないと思われる。 (6)E 協会 <論点1:新指標のあり方について> 協会で公表している統計情報は長期間にわたって集計しており、長期トレンドが把握でき るものとなっていると考えている。 コンビニ大手3社は、地域区分やカテゴリー等が各社各様になっており、共通のベー スがない状況のため、企業間で整合性が取れないといった問題が起こり得る。 ただし、ある程度の荒さで大きく見ると、コンビニのデータ、特に同一店舗の前年比 というのは参考になる。 コンビニは生活に身近な商品が多く、業態別にみると景気の影響を受けるのが遅い。 例えば、最近は 7 か月連続でコンビニの前年比が上回っており、現状景気は底堅いと いうことがいえる。 逆に、コンビニが前年割れしてくると相当景気が悪くなってきたと見る。 協会の中でデータ分析等を専門的に討議するような部会、組織はない。 <論点2:データ保有・提供者及び利用者のメリットのあり方について> これまでの POS レジのオペレーションでは、入力者の感覚に任せて年齢層等の判定を行っ ていたため信頼性が低かった。 POS データでは、販売された商品についての情報はわかるが、購入した消費者につい 42 ての情報は把握できなかった。 コンビニ業界において、昨今はポイントカード等のデータがビッグデータとして注目され ており、従前のデータと比べて、顧客ごとのリピート率が算出できるなど、データの精度 が相当程度高まっている。 特に大手3社は保有するデータの量や分析の質という点において圧倒的に他企業と差 をつけており、他社が追いつくことは困難な状況にある。 ポイントカードのデータは競争力の源泉となるものである。 POS データ自体の相対的な価値は低下傾向にあると考えることが出来る。 コンビニ業界におけるデータの提供に関しては、ある程度集計して提供することは考えら れるが、その加工処理に手間がかかるとすると、躊躇するのではないか。 加工等があまりなされないまま提供されたとすると、受領した側でデータの内容を理 解できるかという問題もある。 政府統計のように、国内全体にわたる情報は必ずしも有用ではなく、コンビニ大手3社は 個社単位、個別店舗単位で分析をしている。 大手3社は各社で相当数の店舗があり、個別店舗ごとに当該店舗の過去のデータと、 各期間の気象データやイベント情報、商品ごとの売上の推移などを提供している。 競合他社を含む特定の商圏、例えば市区町村ごとのデータが提供可能になったとして も、その商圏の範囲内で、コンビニ大手1社で相当数の店舗を持っているため、母集 団として十分になってしまう。 コンビニは1社当たりの店舗数が相当多い為、他業態とは少し状況が異なる。 コンビニ大手3社に対しては、データの提供は社会貢献の一環として話した方が通じやす いように思われる。 手間をかけずにデータ提供する仕組みがあれば、提供に応じる可能性はあると思われ る。 ドラッグストア等、他業態のデータについては興味を持つ可能性はある。 既に存在するデータであれば、それを国として活用できない状況はもったいない。 コンビニ大手3社において、データ提供に関する姿勢に差はないと思われる。 <論点3:プラットホームのあり方について> 協会の統計情報は、質問票を用いてデータを収集しており、コンビニは安定してデータを 提供してもらっているものの、他の企業にはデータを出してくれない社もあり、その督促 や公表数字の検索など、相当の負荷が掛かっている。 コンビニに係る統計について、商業動態統計は協会が公表している統計情報よりも集 計対象が広く、ベースが異なる。 本協会が対象とする企業数は 1,000 社程度であるが、実際の協会の会員社は 250 社程度で あり、会員以外のデータを収集することには限界がある。 集計作業は外部委託しているが、最終的なチェックは協会で行っている。 43 (7)F 協会 <論点1:新指標のあり方について> 業界の特色として、来店頻度の低さや、日用必需品を取扱う等があるため、統計情報の迅 速化に関してメリットを感じることは多くはない。 業界の特色として、来店頻度、回転率が低く、商品が急に売れ出すようなことは少な いため、週次での統計データの必要性はあまり感じない。 蛍光灯などの生活必需品は景気の好悪に関わらず、切れたら買うようなものなの で、景気の影響を受け難い業界である。 ホームセンターでは日用品も取り扱っているが、それは大型化する店舗のスペー スを埋めるという意味合いもあり、競合するドラッグストアとの価格競争で利幅 も薄くなっているため、最近は撤退する傾向がある。 業界としてはプロ向けの市場が広がりつつある。 上位数社の経営方針が業界全体に大きく影響し、例えば最近は店舗数を純増させ る一方で、一店舗当たりの売上は低下傾向にある。 担当者レベルでは商業動態統計はあまり見られているとは感じない。 経営層レベルやシンクタンク、金融機関、自治体などは見ているであろう。 月報をこれまでの公開から、会員社向けに変更したところ、シンクタンク等から問い 合わせがあった。 協会各社からの統計情報に係る要望としては、商品種目の細分化等があるが、これは調査 への回答率の低下、集計作業の煩雑化を招きかねず困難である。 調査に対する会員社からの要望は広報・情報委員会で諮っており、例えば、「接着剤」 等のレベルまでもっと商品分類を細かく開示してほしいといった要望がある。 ただし、調査票の作業負荷は小さくなく、あまり細かい内容を聞くと回答されない懸 念がある。回答に際しては優先順位を付けている企業もあるであろう。 <論点2:データ保有・提供者及び利用者のメリットのあり方について> POS データ等のデータ活用について業界全体での積極的な動きはなく、業界統計の集計作 業等については、作業負荷がある程度かかっているものの、協会の要員のみで対応してい る。 POS データについては協会としてはあまり意識しておらず、どのぐらいの企業に導入 されているか等は把握できていない。大手は導入しているはずである。 協会には 60~70 社程度加入しており、規模的に下位の企業については導入されて いないところもあると思われる。 POS データに関しては、協会やホームセンター企業よりも、POS システムの開発 企業(東芝や富士通など)に聞いていただいた方が早いかもしれない。 DIY の業界では、DCM ホールディングスなど大手企業を 10 社程度で市場の概況は分 ると思われる。 元々の協会の成り立ちが、社会に DIY を広めるという趣旨であるため、データの活用 44 や勉強会など、経営的なことは協会としては行っていない。 また、ライバル社同士が集まるとなかなか話がまとまらない。 協会統計のデータ収集は、固定の 38 社に調査フォーマットを送信して、記入後のファ イルを返送してもらい、協会で(外注を使わずに)集計している。 調査フォーマットに記載される数字の元データが何かについては把握していない。 調査フォーマットには、数字情報以外にも市場の概況感なども記述するようにな っている。 概況などは企業ごとに書き方が異なってくるが、それをなるべく表現等揃えるよ うに協会で対応している。 毎月の月報は 22 日に出しており、その 1 週間前を中心に作業が集中しがちである。 固定 38 社で DIY 市場全体の 60~70%程度は押さえているのではないか。 地域別の数字は、東・西日本といった大きな区切りでしか公表しておらず、この 区切りは本社所在地ベースで算出している。 大手企業は売上高等について月次で見ていると思うが、小さい企業は難しいと思 われる。 協会の統計と各社とで商品区分等は異なることがあり、そのマッピング作業等に は負荷が掛かっている。 DIY 業界は季節性の商品が多く、天候や曜日の影響を大きく受ける。 例えば、ホームセンターでは灯油を扱うところもあり、これはその他に分類され るが、昨今は原油安と暖冬の影響で二重に販売減となっている。 かつては特定地域に一社程度ということもあり、地域性が大きかったが、最近は 全国的に展開している企業もあり地位性は縮小している。 (8)G 協会 <論点1:新指標のあり方について> 既存の商業動態統計、新指標ともに参考情報として活用することはあると思うが、学術的 な面が強いように思われる。 商業動態統計について、協会として参考にすることはあるが、個別の企業にとっては 自社の区分と異なるものもあるため、見られているかどうかは定かではない。 ドラッグストアの取扱商品として、日用品は増えてきているが、そもそも業態と いうのは変化し続けるものである。商業動態統計等はそのような業態の変化にも 耐えうるものである必要がある。 SNS について、ドラッグストア業界では、例えば LINE を利用してクーポンなどを送 付している会社はあるが、SNS データを活用して何かを行っているという話はあまり 聞かない。 ⇒例えば、トヨタは米国でのリコール問題に直面した際に、SNS データから世論の見 方を調べていたという事例がある。 (経済産業省によるコメント) 膨大なデータから全体を見ようというのは学術的には面白い試みかもしれないが、意 45 味のあるものになるかは見えない。 SNS データの中に全ての答えがあるいう話をする人もいるが、個人的には懐疑的 である。 意思決定の参考情報程度にはなるかもしれない。 SNS では、話題としている内容と普段全く接点のないようなユーザーによる書き 込みもあるはずではあるが、もし消費者の声が聞けるようであれば、それは参考 にはなる。 <論点2:データ保有・提供者及び利用者のメリットのあり方について> 既に民間で POS データを活用、流通している企業があり、協会としてもそれを利用してい るため、政府として新たに類似のサービスを始めることに関しては必要性を検討する必要 があるのではないか。 チェーンドラッグストにおいては、POS システムは 100%導入済みである。 POS データは企業の中で指標や販売戦略に使われている。 昔は外部の企業複数社(流通システム開発センターやニールセンカンパニー等)に販 売していたが、最近はインテージ社に集約されつつあると感じている。 現在でも、政府へのデータ提供や大学からの支援などが無い状況で、プラットホーム と同様のことをインテージ社等が行っている。これをまた新しく作るというのは如何 なものか。 インテージから協会に、カテゴリー別の販売状況や前年比較等が、集約された状態で はあるが、無償でレポートをもらっている。 インテージからもらうデータで、自業界の全体のおおよその傾向は把握できてい ると認識している。 より細かい地域別のデータなどについては有償となる。 インテージは独自にデータを収集しており、協会として対価を支払ってはいない。 半年に一度、業界の流れについて、メーカー、卸、小売りの業種ごとに、過年度、現 在、今後についての見込み等、経営数字や商品関連情報、制度面について発表してい る。その中ではインテージのデータを使っている。 月毎には会報を出しており、そこでは主として行政機関からの通達等を掲載している。 協会としての調査は年に一回のみ実施しているが、多くの団体は前年比や過年度の売 れ筋商品についての情報はあまり意味がないものと考えている。 協会における商品区分の取扱いについては、例えば機能性食品を食品とすべきかヘル スケアとすべきか等で差異が生じると思われる、協会としてはインテージが決めた区 分に沿ってやっており、そこは JICFS の分類も参照したうえで決めているため、特に インテージの区分に違和感はない。 POS システムを活用した各種調査作業のシステム化は有効と思うが、須新にあたっては、 データ自体の価値(対価)を含む関連コストの分担が問題となると思われる。 各種調査への回答作業については、紙で実施するのは大変であり、POS システムを使 46 っているところはシステム化するというのは一案かもしれない。ただし、POS データ をそのまま送付するのか、誰が集計するのか、システム改修の費用、作業の負担・分 担等が問題になってくるであろう。 インテージと同様に対価として金銭が支払われるのであれば当然提供するところはあ ると思われる。 <論点3:プラットホームのあり方について> 政府としてはより社会性の高い活動を行うべきであり、本事業のようなプラットホームの 構想は、類似する民間サービスも既に存在しており、当初より民間で実施すべきもののよ うに思われる。 このプラットホームの発想は、本来的には民間の DB として考えることであると思う が、ここに政府予算を投じる社会的メリットを明らかにする必要があると思う。 3 年間で民間企業に委託するような事業ではなく、政府として社会性の高い活動を 行うべきではないか。 売れ筋の商品や流行しそうな色の種類などを見出すのは民間のサービスとするべきと 考える。 ⇒同感である。既に民間にサービスが存在するものは、それと強調していくことにな るであろう。 (経済産業省によるコメント) ⇒POS データが手元にあるものの、POS データを販売する先が無い業界があるのも事 実であり、他方、業界内で閉じて一切外には出さないクローズドな業界もある。先ず は現状を把握し、民業圧迫とならないようなあり方を考えていく。 (経済産業省による コメント) ⇒売れ筋を把握するための情報や、流行の色を予測するためのデータを提供していた だくつもりはない。目的は新指標の算出や公的統計の迅速である。 (経済産業省による コメント) 本事業については、国が行うべきか否かは要検討であると考えている。 政府としてどこまで関与するのが適切化の判断は難しいと思われる。 バーコードや POS システムの開発初期の状況において、政府の支援のもと、流通 システム開発センターが民間への普及を促進していき、そこにセブンイレブンな ども合流して(1970 年代:POSシステムの実証実験、1978 年:セブンイレブ ン第 1 次店舗システム、1982 年:セブンイレブンPOS導入)広まったというの は、非常に理にかなっていると思われる。 SNS データを活用したビジネスは既に民間に存在している。 プラットホームには高度な中立性が求められ、民間であっても、独立行政法人のような形 でないと難しく、またデータの提供についても制度面での対応が必要になってくると想定 される。 政府として事業を進める場合、SNS データ等の取得対象が全量でなくても良いという のは如何なものかと思う。義務でなく、任意の提出として、それで本当に信頼に足る 47 データが取れるのかという問題がある一方、全量のデータを取得するために法制度等 で義務化するのは受け入れられないであろう。 東日本大震災の後、16 億円程度の予算措置にて、全国の商品の流れを把握しようとし たプロジェクトがあったが、法制化しないと進まないと考え、当初から反対していた。 結局当該プロジェクトは立ち消えになったと記憶している。社会的なメリットが明確 になっていないと進めるのは困難であると思われる。 ⇒手段と目的は明確にしておく必要があり、今回の目的はあくまで新指標のであり、 民間にプラットホーム相当のサービスが存在しているのであれば、それを活用すると いうことも当然検討する。 (経済産業省によるコメント) プラットホームを 3 年後に民間に移管することとなっているが、競合他社等との問題 も考えられ、独立行政法人など中立性の高い事業主体でないと難しいのではないか。 <その他> 協会が担う役割として、統計情報の発表の他に、厚労省との折衝や、医薬品・健康食品情 報のデータの統合等がある。 今のドラッグストアの商品体系は米国を参考にしたものであり、1995 年に標準を作成 した。1999 年に、厚労省との折衝等を行うために、当協会を設立した。 協会では現在、医薬品情報の提供に使うデータと、健康食品のデータを統合しようと しており、それは株式会社プラネット(注:EDI基幹プラットホームの構築・提供・ 運用等を行っている事業会社)が行っている。将来的には情報の多言語化も目指した い。 業界においては、全国的にはマツモトキヨシ、イオン系のウェルシア、サンドラッグが大 手であり、九州などではコスモス等が強い。地方でローカルに強いドラッグストアチェー ンというのが結構な数ある。 質問があれば回答するので取り纏めて送って頂きたい。 (9)H 協会 <論点1:新指標のあり方について> SNS データ等を活用した指標は協会内でも関心が寄せられているものの、メリットが明確 になっておらず進んでいない。 SNS データや画像データについて、活用できないかという話は出ているものの、使い 勝手やメリットが見えないという段階である。 SNS は意図した情報であり、POS データのような客観的なデータとは異なる。 業界的には需要予測に焦点が当たっており、チャンスロスや廃棄ロスを無くすための 受発注に活用することが重要である。そういう意味では、ID-POS データの方が現実的 であるかもしれない。 統計についは、当協会では広報委員会がまとめている。統計については、そもそも数 字が出せるかどうか(協会員に提出してもらえるかどうか)という問題があり、現実 48 的なものにしかなりようがない為、あまり統計のあり方を変えるような議論にはなら ない。 SNS データ等の話は、ICT 委員会で出ているが、活用したいとは考えているものの、 現時点では具体化はしていない。 SNS データ活用のイメージがなく、議論が出来ないのにくわえ、費用対効果も見 えないため、投資等に結び付きにくい。 結局目的は誘客になるため、競争領域に入ってしまう。ある一定の局面やある一 定の時間だけ見るというのは意味があるかもしれないが、トレンドを大きく見て もあまり有用ではないかもしれない。 商業動態の迅速化については事業者が感じるメリットは多くはないと思われる。調査の自 動化という観点からは活用の余地があるかも知れないが、POS データの単純集計と、会社 としての正式な売上とは異なる。 商業動態の POS データを活用した週次化については、より早く知りたいというのはあ るだろうが、各社とも財務部門を通して確定値で出したいということをよく言われる。 指標は誰に向けてのものか、業界としてはあまりメリットを感じられないのではない だろうか。概してマスコミや投資家向けのように思われる。 事業者にとってはメリットよりデメリットの方が大きいのではないかと思われる。 商業動態や協会統計の使い方としては、幾つかの数字を並べて自社の売上と比較する というのが多いのではないか。 企画部門なら統計そのものを見ている可能性はある。 協会員も一般も見られる情報は(粒度も)同じである。 商品分類別・地域別にすると、商品分類・地域の定義が各社で異なり、また特定 の地域は個社が判明してしまう可能性もある。 政府統計についてはより簡素にし、回答に係る負担を削減して頂きたい。 昨年のデータを分析するのは参考にはなるであろうが、それを政府がやるのかは 疑問である。 自社で既にやっているところもある。 <論点2:データ保有・提供者及び利用者のメリットのあり方について> 既に社内での POS データの活用は行っており、他社へ POS データを販売している事例も ある。 POS データは、販売状況の把握や、受発注の自動化等を軸に活用している。 生鮮食品であれば、見切りや廃棄、棚割りの評価や販売状況の把握、販売促進、 作業スケジュールの割当・検討などでも活用している。 POS データを活用するシステムとしては、メーカーのパッケージを使用している 例もあれば、自社で開発している事業者もある。 POS データの活用として、立地ごとの年代層や販売動向等も見ている例がある。 POS データを日経などに商売のツールとして販売している事業者はある。 49 メーカーや卸とは共同開発なども実施している。 協会における統計情報は、商品の分類等を会員の主体性に依っているところもあるが、概 況を記述する欄もあり、ここからトレンド等を読み解くことが可能である。これは POS デ ータを大量に収集して集計しただけでは見えてこないと思われる。 協会の月報については、システム的にやっているわけではなく、毎月既定のフォーマ ットで各種の数字を提出してもらっている。 協会として、直で POS データを見ることはなく、各社が月報のために提出する数 字をどの様に作成しているかは把握していない。 POS データをもらったとしても、JAN コードだけでなくインストアコードは個別 に振られており、集計等が出来ない。 月報用のデータの提出に際して、商品の分類は、協会としての考えを示し、実際 は各社で判断して分類してもらっている。 協会の商品部類に合わせるようにシステムを変更した事業者もいた。 POS データを大量に取得しても、全体は見えるかもしれないが個別のトレンドは見え ないのではないかと思われる。 月報用のフォーマットには記述式の項目もあり、その文章を読みとかないと、直 観的、定性的なトレンドは捉えられないように思われる。 POS データは社内の経理部門等を経て、最終的には確定した決算数値、売上となるため、 その前の段階の生の POS データを提出することは困難ではないかと考えられる。 POS データ等の活用で調査への回答が自動化することになっても、外向けに提出する 売上として、生の POS データを提出することは考えにくい。 アンケートをメールでとっても、未だに紙に書いて送ってくる方もいる。 数字を確定させるためには社内のコンプラも関わってき、またシステムのコスト もかかってくる。 POS データでリードタイムが短縮できるというのはあるが、確定した数字かどう かという問題は残る。 <論点3:プラットホームのあり方について> 業態を横断する共通の商品 DB があると良いという話がある一方で、競争力にも影響しう るため推進は困難と思われる。 共通の商品 DB があれば、という話は昔から出ているが、競合他社と同じものを使う というのはハードルが高いと思われる。EC でも検討している。 食品分類の商品でもドラッグストアで取り扱っているところもあり、同じ業態で かつ同じ立地での比較にしないといけないのではないか。 地域が細かくならないと有用にはならないかもしれない。 (10)I 協会 <論点1:新指標のあり方について> 50 SNS データ、気候データ、免税関連データ、電子タグを利用した在庫データ等の活用につ いて関心はあるものの、コストと比較したときの有用性について今のところ明確なメリッ トを認識できておらず、業界全体としての取組にまでは発展していない。 SNS データについて、発信はしているが、コンビニやスーパーなどと比べて、商品数 が 100-1000 倍程度あり、一商品ごとの量が薄くなってしまう。 店舗ごとまたはブランドごとのつぶやき、評判は気になるが、これは各社で既に 実施していると思われる。 気候や温度のデータは気になる。 インバウンドの情報については、免税カウンターのデータを用いて算出しており、こ れは自社内での対応で今のところニーズは満たされていると思われる。 インバウンドの購買情報がリアルタイムで分かるようになると良いかも知れない。 IoT の一部になりうる電子タグ等については、在庫を探す際の解決策として試験的に靴 で導入したことがあるが、結果としてはコストとの兼ね合いから本格的な導入には至 っていない。 靴のメーカーに出荷時点でタグを付してもらうため、メーカー側の負担が大きす ぎ、また、メーカーによってタグ付けの可否が異なることから、現場でも、一部 の靴は電子タグですぐに在庫の確認ができ、一部では倉庫に見に行く必要がある など、運用上の課題があった。 電子タグは便利ではあるが、問題はタグ付け等の対応を含む諸々のコストである。 <論点2:データ保有・提供者及び利用者のメリットのあり方について> 百貨店業界においては、POS データにおいて各社独自コードの割合が大きいこと、ハウス カードとの紐付を基にした分析が重要視されていること、既に協会が店舗ごとの売上を提 供していること等から、POS データを共有または流通させる取り組みは積極的には行われ ていない。 POS データに関して、コンビニやスーパーと百貨店の大きな違いは商品のライフサイ クルであり、特にアパレルなどは 6 週間で変わることがあることから、各百貨店独自 のコードが付されることがほとんどである。 コンビニやスーパーではある程度は JAN コードを基にしていると思われるが、百 貨店では JAN コードの導入は進んでおらず、 アパレルだけでなく食品についても、 各社独自のコードが多い。 百貨店では消化仕入(注釈:商品が実際に売れるまでは、陳列する商品の所有権 を卸業者やメーカーに残しておく「預かり」という状態にしておき、売上が計上 されたと同時に仕入が計上されるという取引形態)という慣行があり、百貨店毎 に独自のコードを商品に付している。テナントとして入居している店舗の売上も POS データは吸い上げており、百貨店としては認識が可能である。 POS データのコードの他、商品に付ける値札についても、百貨店固有の値札をつ けて貰っているところもある。 51 昔から自社コードを使用していた経緯もあり、数年前の時点で業界での JAN コー ドの導入率は 20%程度であった。最近は、特に協会が主導しているわけではない が、業界として JAN コードを使っていこうとする傾向はみられる。 協会としては各社の POS データに関与することはなく、経済産業省の商業動態統 計の調査票を基にした調査様式を作成し、カテゴリー別に数字を報告してもらっ ている。 各社における POS データの活用方法は、ハウスカードとの紐付が主たるものと思われ る。 POS データによる売り上げと顧客の属性を結び付けるところが重要であり、単純 な売上データとしての POS データは提供にそこまで抵抗は何のではないかと考え られる。 POS データを他の事業者に販売している話は聞いたことがない。 POS データとハウスカードのデータを紐付け、携帯の GPS 情報等も参考に、どの 路線の居住者が自社の百貨店に訪問しているかを調べている。 百貨店は、各店舗のロケーションや、自社内での位置付け(店舗の格)によって顧客 層が異なるため、全体的なデータは有用性が低く、商圏単位での情報が必要である。 各店舗の主要な商品分類別の売上については、その有用性を認められているものの、当該 情報を算出するための報告にかかる作業負荷については相当程度の作業負荷が掛かってい ると認識している。 2006 年より、会員各社に限定して、各百貨店の各店舗の主要な商品分類別の売上を開 示するようにしており、このデータは会員各社に活用されている。 各社の情報はオンラインで送信され、月次売上情報等を協会として発表している。 商品別の情報については、週単位での鮮度が無いと意味がなく、現場としては先 月の結果の数字をもらっても活用することは出来ないと思われる。 一方で、経営層、企画部門等にとっては、月次のデータは経営判断等に有用と思 われる。 各百貨店は翌月 1 日に速報の売上情報を開示するが、この数字は店頭での売上であり POS データを単純に積上げたものであり、非店頭である、外商や通信販売、掛売、催 事場での販売等が含まれていない。 各々の割合は、店頭が 9 割、非店頭が 1 割程度である。 協会として、非店頭を含む情報の報告期限を翌月の 12 日としているが、百貨店として は相当の作業負荷がかかっているようであり、百貨店・協会ともに集計は人海戦術で 対応している。 以前、商業動態統計と総務省の調査を共同で実施したことがあるが、その際手違 いから、細分化された調査票が配布されてしまい、各店舗からクレームが来たこ とがある。 2006 年に、調査票を紙から電子データでの回答に変更したが、当初は抵抗等があ り大変であった。 52 実際に電子データでの回答を推し進め、情報が出てくるようになるとその有用性 等が認められた。 (11)J 株式会社 <論点1:新指標のあり方について> 政府が発表する統計情報は拡大推計等の際に参照している。 社内には経済産業省をはじめ政府が公表する統計情報を集めるチームがある。 SNS データ等は、大きなトレンドの波を捉えることには使えると思うが、マーケティング に使える程の精度は出ないのではないか。 SNS データ等は、現状では、商品に対するクレームをいち早く察知する、または、当 初想定していなかったような意外な使われ方をしている等、意外性のある話題を企業 がキャッチするために利用しているケースが多いと考えられる。 <論点2:データ保有・提供者及び利用者のメリットのあり方について> エコポイント付与の実施や消費税増税に際して、経済産業省(地方経済産業局)や内閣府 に当社の保有する POS データを販売した実績がある。 現在も継続してデータを提供している政府系機関がある。 POS データは日次で取得し、翌々日には顧客に配信することが可能である。 配信しているデータは以下の 2 種類がある。 実データをそのまま集計したもの。 サンプリングしたデータから拡大推計したもの。 拡大推計の専門チームがあり、また推計方法は既定のものがある。 対象とする業界において、大手事業者の 90%以上の POS データを網羅している。 POS データ提供の対価として、全国規模のデータを用いた当該店舗用の分析レポート、ま たは全国規模のデータそのものを(適宜集計・加工処理をしたうえで)提供している。 POS データの提供者に返すレポートに関しては、日本全国を 5 つのブロックに区分し、 その区分ごとに集計した値を記載している。 地理的には、5 つのブロック区分が最小粒度である。 売上の対前年比を重要視する企業が多く、この値が 1%でも下がると大変気にする。 POS データの提供を受けるにあたり、販売店には当社のシステム使用してもらい、自店舗 のデータを既定のフォーマットに加工してもらっている。 当社システムを利用することによってかかるコストは当社が店舗に支払っている。な おシステムの管理は別会社で行っている。 <論点3:プラットホームのあり方について> 政府として実施する意義のある統計というのは、民間企業では実施できない国勢調査のよ うな大規模の調査であると考える。 インターネット上の情報は偏っており、例えば、IT リテラシーがさほど高くない方も 53 多く、そういう方の意見をインターネット(オンライン)で知ることは難しいのでは ないか。 民間企業では、インターネット上の調査ではない実地調査等を相当の規模で実施する ことは難しい。 POS データを受領した際、そのまま集計等が行えるわけではなく、各店舗が使用している 商品コード等をそろえる必要があり、当社ではそのマスターを作成している。 マスターのメンテナンス等に関与している要員は、正社員が 40 名程度、非正規の社員 が 100 名程度であり、ここに相当の作業負荷が掛かっている。 (12)K 株式会社 <論点1:新指標のあり方について> 景況感を週次で見ることが出来ると、データが一部飛躍していたときに、それがノイズな のか何らかのイベントに因るものかを、SNS データ等と見比べて把握できる可能性があり、 大変興味深い。 POS データは数字情報であり、如何に正確に素早く集計していくかが重要になり、AI を用いた分析等の対象となることはあまり想定されない一方、SNS データ等はテキス トデータであるため、AI を用いた処理を考える対象となる。 SNS データ等を用いた指標に関して、例えば、日本代表チームが勝利した際、SNS で はポジティブな(逆に、負けた場合はネガティブな)発言が多くなることが考えられ るが、果たしてそれが経済の状況を表すことになるのかは疑問である。 ⇒SNS は買う側(消費側)が主に発言するものだと考えられ、一方で商業動態統計等 は売る側(供給側)の数字であり、これらをどの様に結び付けるか、また、家計調査 等との関係についても議論はあるが、現時点では、経産省の統計情報として供給側か ら見たものという位置づけで進めていくことを考えている。 (経済産業省によるコメン ト) クローリング等で SNS データを収集することは可能であり、またある程度の量を収集する ことでノイズもおおよそ軽減されるものの、その後の分析をどの様に行うかが問題となる。 Twitter と特徴が近いと思われる掲示板のテキストデータを対象にして試行的に分析 等を行っているが、百件くらいを対象として、移動平均を取るなどするとノイズがキ ャンセルされ、ある程度良好な結果が得られている。 この傾向は Twitter でも当てはまるのではないかと思われる。 景気ウォッチャーの判断ロジックを AI に学習させ、その AI に対して SNS データ等を入力 にして結果を出力させ、実際の景気ウォッチャーと比較し、調整していくといった方法が 一案として考えられる。 ⇒SNS データの他に、中小企業庁が生声という名称で、中小企業の経営者等へヒアリング した結果を報告し、それぞれにラベルを付しているものがあり、また、地方の経済産業局 が各自で普段付き合いのある先に状況等をヒアリングし、最終的には報告書として纏めら れたものはある。ただし、対象企業は製造業等に偏っていると考えられる。 (経済産業省に 54 よるコメント) 既存の POS データは小売りに偏っていることを考えると、製造業のデータを取得でき るのは補完という意味では有効かもしれない。 オープンデータとして、商品レビューのようにテキストとラベルが結びついているデ ータは他にもある。 ⇒元データとして使用しているデータを公表すると、当該データに対して恣意的に操 作を加えられる懸念はある。(経済産業省によるコメント)。 AI を用いて、複数の異なるロジックを学習させて複数の学習済み AI を作成し場合、 それらから得られる結果の平均を取ると、更に良好な結果が得られるケースがある。 平均を取るだけでなく、機械学習でより適合するものを選択していく方法もある。 速報性がある指標が公表される場合、当該指標に基づいてマーケットの景況感が組成され る可能性があるが、その場合、例えば遅れて発表される GDP とでズレが生じると、少なか らず市場にインパクトを与えることになると思われる。 日次でデータを公表するとした場合、季節調整は出来ず、週ごとに異なるイベントも 多い為、その影響を受けた値(変動)となる可能性がある。 マーケット関係者は、日次データ、週次データの短期間の変動に対して過敏に反応す ることはないと思われるが、遅れて発表される GDP と乖離していた場合、どのような 影響を及ぼすかは定かでなく、少なくとも注目はされると思われる。 <論点2:データ保有・提供者及び利用者のメリットのあり方について> POS データ等の提供に際しては、政府の立場から依頼をする方が収集可能性は高まるもの と思われる。 消費増税後のダメージを推し量るため、政府が民間企業のサポートを受け、消費動向 を追跡していたケースがあった 最終的に、GDP とのかい離が発生することは問題となることが想定され、GDP を補 完するようなデータを集積していく必要がある。 AI を使った分析は、元データが同じ場合は誰がやっても同じ結果になるはずであり、 この元データの品質が非常に重要になってくる。 政府として、精度の高いデータを収集し、DB のような形で提供してくれると大変ありがた い。 Twitter 社等は民間企業でもあり、制度が(厳しい方向に)変更される可能性がある。 例えば、これまでは自由に過去のテキストデータをダウンロード出来ていたが、制度 変更でその範囲が狭められる等である。 <論点3:プラットホームのあり方について> 民間企業の考え方としては、既存ビジネスでカバーできていない箇所があればそこを狙っ て進出はするものの、そうでない場合は、そこに敢えて踏み込むようなことはしないのが 常識としてある。 55 マーケットの影響を及ぼし得るような新しい指標について、民間企業では恣意的な操作を 疑われるなど、発表しにくい状況もありうるため、中立な立場である政府やプラットホー ムが発表することが望ましい。 (13)L 株式会社 <論点1:新指標のあり方について> 新指標として POS を活用した指標が公表された場合、当社としては当該数値を 100%と見 立てて自社データと比較検証する、または、経済産業省の粗い粒度のデータの細分化を実 施する等の活用方法が考えられる。 商業動態統計と当社では業種の定義は異なる 政府が民間で公表されている指標を収集し、適切に組み合わせた指標を公表する取り 組みも考えられるのではないか。 ⇒昨今、民間企業等と学術機関が共同で新たな指標を算出、公表する動きが起きつつ あるが、第3次産業活動指数のようなサービス業を対象とした指標は普及しておらず、 それらを組合せることで全体感を把握できる指標が作成可能な水準には至っていない と認識している。 (経済産業省によるコメント) ⇒将来的には IoT 関連データ等を活用することで、モノだけでなくコトについても消 費等の動向が見えるようになると、更なる新指標への発展が想定される。 (経済産業省 によるコメント) 粒度の荒いデータであっても、全体像が把握できるという点では有意である。 政府には、データを提供することで指標等がより正確になるとアピールして頂き、データ 提供の後押しとなるような活動を期待している。 現在はサンプリングとしているが、将来的には当社でセンサス(全店調査)を実施す ることを目指している。 当社が算出に関与している指標について、現状では単体としてはビジネスにはなっておら ず、プロモーション等の一環との位置づけである。 指標を顧客ごとにカスタマイズして提供する等の有償サービスがありうるかもしれな いが、現時点では当該指標を社会に発信して認知度を向上させ、データ提供者を増や すための一助になればと考えている。 当社が算出に関与している指標と政府統計(商業動態統計等)との乖離は実際に起こって おり、拡大推計には限界があることは認識している。 当社が算出に関与している指標について、学術機関と業界団体との共同プロジェクトの位 置付けであり、データ提供に対する対価は受け取っていない。 共同プロジェクトで発明された知財は参加している三者で共有する。 当社でも、口コミデータ等を対象として分析を行っており、例えばインバウンド消費の動 向や、口コミが広がった商品等について、どのように売上が推移しているのかなどを調べ ている。 56 <論点2:データ保有・提供者及び利用者のメリットのあり方について> システム対応の費用を当社が負担し、自動的に既定フォーマットに即したデータが送られ る仕組みとなっている。 当社独自の既定フォーマットがあり、そのフォーマットに従った形でデータを提供い ただき、当社で集計加工処理を行ったうえで、メーカー等に提供している。 当社が開発費を負担して、データ提供者のシステムに対して、元の POS データを既定 フォーマットに合わせるための開発(システム対応)を行っている。 受領したデータは全量を使用するわけではなく、一部は集計対象外としているものも ある。 利用者によって、必要なカテゴリーやデータの粒度は異なる。 メーカー等への提供時は、店舗名等は匿名化し、商品種目の粒度はアイテムレベルと なっている。 当社へのデータ提供への対価は基本的に金銭であり、サービスを利用する場合は、同様に 対価として金銭を支払って頂く。 データ提供者には、大まかな分析結果は無償で提供するが、それ以上のサービスは他 の企業(データ提供をしないメーカー等)と同様に有償となる。 メーカー等を除いて、基本的にはデータ提供者に対してのみサービスを提供している。 サービスの利用者は、POS データを保有しないメーカーが主であり、小売業者は少な い。 小売業においてもデータ活用を促すような施策を打って行きたい。 生鮮食料品・惣菜等についても、指標の算出を始めたが、これはインストアコードと当社 統一マスターのマッピング表を作成することによって対応している。 最初に統一マスターとのマッピング表を作成するのは大変だが、一度出来ると以降は 差分のみをメンテナンスすればよいので、それほどの作業量にはならない。 統一マスターというのは、どこの業界団体でも抱えている課題ではあるものの、民間企業 が表に立って統一化を進めるというのは考えにくく、公的機関が先導する形が相応しいと 思われる。 ただし、統一マスターを作るにあたっては、そのマスターの利用者が、利用者自身の ビジネスでもそのまま使えるようなものとなっていないと、協力は得にくいと思われ る。 商品マスターの整備を政府が音頭を取って全国的にやるとしても、メーカーによって 求める分析の切り口が異なっており、粒度や定義を定めるのが難しいのではないか。 商品マスターの内容は、メーカーから新しい分析の切り口の要望があった際、それに応え られるかどうかを決めるなど、競争力の源泉となるケースも考えられる。 <論点3:プラットホームのあり方について> 提供データの管理はシステム関連のグループ会社で管理をしており、原則としてグループ 外には出さない。 57 ただし当社が算出に関与している指標について、協力している学術機関は当社と同様 のデータベース(週次のデータ)を部分的に保有している。 提供頂いたデータは、日次、週次、月次でデータベース化したうえで利用しており、 元データについては別の媒体を用いて保管している。 (14)M 株式会社 <論点1:新指標のあり方について> 今年度の研究開発事業で作成している新指標について、使用しているデータは元データを 収集すること自体がビジネスの対象となり得、また指標の算出にはクレンジング等の前処 理が必須となる。 ビッグデータの活用に関連したサービスについては、データの利権をめぐる競争が激 しいため、それらを踏まえた何らかの保証があるのであれば、会社として協力するこ とは可能である。 日本最大手のブログの運営会社自体も、自社ブログの解析用のデータとして当社 のデータを使っている。それは、カバレッジや、過去データの保有量等を勘案し てのことである。 今年度、大学と共同で行っている新指標の開発は、当社の保有するデータクレンジン グ(ノイズの除去等の前処理)が前提となっている。来年度、継続して指標の開発や 算出を進めるのであれば、それはかなりスピード感を持って対応できると思われる。 ⇒新指標開発のアルゴリズムが完成した場合、新指標の算出にかかる予算として、3 年 後どのような状態が見込まれるかというと、それは一般社会への普及の度合いによっ て異なる。広く社会に有益であると見なされる場合には、当該指標の算出のための予 算措置も想定される。この指標は、政府統計にはなりにくいと思うが、参考になる情 報ではある。 (経済産業省によるコメント) ⇒指標の算出アルゴリズムは経産省が受け持ち、その前処理の仕組みは他に移譲する ということも考えられる。 (経済産業省によるコメント) 生データを購入、取得した後、その使い勝手が重要になってくるため、単純にデータ を収集または購入しただけでは、即座に意味のある分析に使うことは難しいと思われ る。 当社からの提案となるが、当社で実施しているようなデータの構造化、前処理まで実 施したものをデータと捉えて、それらを検索、解析、利用するための API 等をプラッ トホームとする考えもあるかとは思う。 当該 API の上に、諸々のアプリが載り、その中には経産省の新指標の算出もあれば、 民間企業等が利用するケースもあり得る。 <論点2:データ保有・提供者及び利用者のメリットのあり方について> SNS 等のオープンデータと呼ばれるものについても、大規模な収集に対しては制約がかか 58 ることがあり、昨今は流通業者を介しての購入が主流となっている。民間企業ではそれを ビジネスとして行っている。 昨今の SNS データ等においては、SNS データの元データ保有者と契約している流通業 者を通じて購入する流れとなっており、元データ保有者(民間企業)の意思によって データの提供状況が左右する可能性もあり、オープンデータとはいえ個別に大規模に 収集することは困難であると思われる。 プラットホームとして、どこまでの機能、データを提供するかについて、当社として はデータの収集そのものもビジネスチャンスとしてとらえている。 現時点で、当社のように SNS データを大量に保有している企業は少なく、このポ ジションにいる会社は稀有な存在であると考えている。 <論点3:プラットホームのあり方について> プラットホームの機能として、収集したデータをそのまま保存する、データを集約する、 クレンジング等の前処理を行う、データ解析を行う等が考えられると思うが、これらの機 能のうち、データの収集・保存、前処理は民間企業が既に提供しているサービスがある。 データの解析はその目的に応じて個別に行われる。 SNS データには構造化のステップがあると考えており、その度合いに応じて、データ (元データの収集) 、IT インフラ(データが集約されている状態)、分析エンジン(ノ イズの除去等を行い、データを整理した状態)、アプリ(整理されたデータを用いた解 析) 、ナレッジ(解析結果から有用な情報を導出)といったステップがあると考えてお り、今大学と共同で取り組んでいるのは、このアプリのステップに相当する。 現時点でのプラットホームの構想案であれば、当社の持つシステムと類似する箇所も あり、既存の民間サービスと部分的に類似するシステムを政府としてゼロから構築す るのは非効率的な点があるかもしれない。 ⇒新指標の継続的な発表に主眼を置いており、それに加えて、将来的にはプラットホ ームの自立、維持費用が単独で賄えるような仕組みづくりを検討している。経産省は その基礎作りのための予算を提供する。<経済産業省によるコメント> 元のデータとプラットホームとは切り離して考えた方がよく、先ずは元データ(生デ ータ)をどうやって収集、取得するかという段階があり、その後、取得データを分析 対象として利用可能な状態に処理する段階を経たうえで、高度な解析等を実施する。 このうち、プラットホームはどの程度担うかということである。 ⇒経済産業省としては、現在構想しているプラットホームありきという訳ではなく、 目的はあくまで新指標を継続的に算出、公表していくことである。 (経済産業省による コメント) 政府が民間のデータ保有企業を束ね、各社の持つ保有データ情報の集約化や検索機能等を 提供するというあり方も考えられるのではないか。 当社の持つ一つの考え方としては、既に民間に存在するホットリンク社のような複数 のデータ収集、加工処理事業者を、政府が旗振り役として束ね、エンドユーザー向け 59 に集約された情報提供や、データの種類等を検索するための API を提供する、といっ た形が考えられる。 上述のような旗振り役は、例えば当社のコンペティターが担ってしまうと、その 集団には入りにくいなどがあり、政府として担って頂くことが必要であると考え る。 ⇒政府というよりも、調査分析支援室として、多数の事業者を束ねるのは現実的 でなく、その媒介として第三者機関的な存在があった方が良いと考えている。 (経 済産業省によるコメント) SNS データを活用した分析システムの開発期間は、これまでの類似するシステムの開発経 験の有無等にもよるが、おおよそ 1 年から 1 年半程度が目安となる。 開発期間について、衆院選のときに利用したシステムであれば、1 年半程度、高安先生 とご一緒しているようなシステムの開発は、これまでの5,6年の経験の蓄積がある ため、1 年くらいで開発は可能と思われる。 (15)N 株式会社 <論点1:新指標のあり方について> 商業動態統計の迅速化や、SNS データ等のビッグデータの解析から、どのような情報が得 られるかを明示することが事業の推進には必要であると考えられる。 先ず、本日の意見は会社としての意見ではない旨をお断りさせて頂きたい。 SNS データ等のビッグデータについては、そこからどのような情報が得られるのかが 見えていない。 商業動態統計の週次化や細分化についても、そこで誰にどのようなメリットがあるか が見えないと、協力を得ることは難しいのではないか。 事業が回るのであれば別だが、もし費用と収益がプラスマイナスゼロであったとして も、そこに配分するリソースの有無によっては推進できない可能性もある。 週次のデータと月次のデータは見え方が異なるため、それぞれ必要ではあると思う。 人工知能などを活用して、大量のデータを自動で整理等してくれるのであれば助 かる。 SNS データを使った新指標については、元データの信頼性や、ユーザーの偏りについ ての対応、また新指標によって何が分かるようになるのか、現状の景気の雰囲気が分 かる程度のものか、それ以上の情報が見いだせるのか、が重要になってくると考えら れる。 自社で、従来型の POS データの活用や、会員サービスのデータ活用は行っているものの、 SNS データについてはまだ活用が十分に出来ていない。 SNS データ等の利活用はグループ全体としては行っておらず、個別にプロジェクト等 が企画されている状況である。 ヤフーなどと共同でマーケティングを行っている等の事例はある。 当社グループのデジタル事業会社としては、別途子会社があり、そこでは EC に関連 60 する口コミデータや会員サービスのデータを用いた解析等を行っている。 当社グループではクレジットカードも取り扱っているため、カードの利用履歴等も含 めて、グループとしてデータの利活用を考えていこうという動きはある。 POS、ID-POS、会員カードなどの情報を用いた従来型の分析は実施している。 SNS を使った、情報発信または情報収集は実施できていない。 <論点2:データ保有・提供者及び利用者のメリットのあり方について> POS データは価値のあるデータと考えており、今のところ提供への対価としては金銭のみ である。 POS データについては当社としては価値を見出しており、メーカー等に実際に販売し ている。 ただし、メーカーとしては、小売企業との商業上の付き合いとして購入している 側面もあると考えられる。 当社では、当社グループに対して店舗網や規模毎の POS システムを用意し、展開 しているため、グループの主要企業の POS データは当社に集約される。 当社の位置付けとしては当社グループにおける IT セクションであり、その中には POS システムも含まれる。POS データの販売や関連するビジネスは他のマーケティング子 会社で実施している。 POS データは基幹システムである会計システムに流れていくが、それに付随する 形で情報系としても POS データ情報を見ることが出来る。 現時点では、メーカー以外に POS データを販売しているケースはないと思われる。ま た、メーカーへの提供も、当該メーカーに関する POS データに限定しており、他のメ ーカーの POS データは渡していない。 POS データの提供に関して、例えば業界横断的な統合マスターの整備を目指すとしても、 メーカーにとってのメリットは多くなく、小売事業者としても、金銭的な対価か法的な義 務が無いと提供は難しいと思われる。 民間企業においては、ビジネス目的が無いと投資は行われず、そういった動機以外で は、法的な義務等の理由がないと POS データの提供等は難しいと思われる。 POS データの集計に関して、区分ごとの集計作業はグループ内でも非常に苦労し ており、商品コードや商品カテゴリーがかなり異なっているものもある。 最近では、業態が異なっているものの、販売している商品が重なっているケース も多く、例えば、イオンではスーパーで携帯電話や SIM カードも扱っており、ま た家電販売店でも飲料水を扱う等がある。 システムの観点からは、メーカーの都合で変更等が行われる JAN コードだけで商 品等を管理することは考えられず、それはプライベートブランドでも同様である。 最近は、機能性食品等の登場によって商品自体のカテゴリー分けが難しくなって いる。 経済産業省として、商品分類の細分化等を主導しても、メーカーとしてはあまりメリ 61 ットを感じられない可能性がある。 これまで、標準化を進めようとして成功した事例というのは少なく、明確なメリ ットや法律による強制力がないと動かない。 小売業界は市場規模が大きく、当社グループのみが動いたとして、業界全体を引っ張 っていくような影響力は持っていない。 <論点3:プラットホームのあり方について> 現在、自社内でプラットホームと似たようなビジネスの構想を考えており、これは技術的 には可能である。プラットホームに中立性が担保されるのであれば、プラットホームに自 社の当該ビジネスを代行させるという考え方はある。 現在考えられているプラットホームのような構想で、メーカー以外にも POS データを 販売するようなビジネスを考えている。 商業動態統のために POS データを送付することは技術的には可能であり、ポイントは 営業会社がどう考えるかということになる。 プラットホームが NPO のように中立性を担保する存在となるのであれば、POS デー タの流通を代行させる可能性はある。 (16)O 株式会社 <論点1:新指標のあり方について> SNS データの DB の構築には、自身で収集する方法と、民間企業から購入する方法の二つ がある。 一つのやり方として、経産省様自身が SNS のテキストデータをクロールするシステム を保有し、収集することが考えられる。 当社にて、ニュースサイト、ブログ、掲示板等をクロールするシステムの構築は 可能である。 SNS のテキストデータを収集している企業から、元データに対して何らかの編集加工 処理が施されたデータを購入する。 <論点2:データ保有・提供者及び利用者のメリットのあり方について> SNS データの元データをそのまま売買することは違法である可能性が高い。 当社法務部の見解となるが、ツイッターやブログ等のテキストデータについて、 (特別 に契約している場合を除き)そのままの形で販売することは法的に問題がある可能性 が高く、現状そのような事業を行っているベンチャー企業もあるが、相当法的リスク が高いものと思われる。 ブログ等のテキストデータの収集請負のような形で、グレーな事業を行っている 企業も存在している。 収集したテキストデータに対して何らか編集加工を行ったデータ、または元データを 基に算出した指標であれば売買することは問題ない。 62 この何らかの編集加工について、例えばクレンジング等のノイズ除去はこれに当 てはまらない。 あくまで元のテキストデータに対して何らかの変更が行われる必要がある(例と しては、方言で記載されている文章を標準語に変換する等) 。 当社はツイッター社とパートナー契約をしており、当社の環境下にツイッターの全デ ータを保有している。 アジアにおいては、当社ともう1社以外にツイッターのデータをそのままの形で 販売することが出来る事業者はいない。 当社のサービスとしては、顧客の要望に応じてツイッターのデータから何らかの 指標を算出し、それを元データであるテキストデータと一緒に納品している。 顧客の5~6割は金融機関である。 当社も、主要なブログ、ニュースサイト等のデータは保有している。 当社では、検索目的として、ニュースサイトやブログのテキストデータも収集してい る。 これは、平成 21 年の法改正で導入された著作権法第 47 条の 7 で「電子計算機に よる情報解析」を目的とする場合は、 「記録媒体への記録又は翻案」を行うことを 認められたことで可能となった。 掲示板の2ちゃんねるについては、一部の偏ったユーザーが利用しており、今回 のような指標の算出にどの程度有効かは疑問である。 掲示板の2ちゃんねるのテキストデータは、内部情報の流出や誹謗中傷など、事 業者のリスク管理の観点からモニタリングするというニーズはある。 価格コム、食べログなどの掲示板のレビューは有用と考えられるが、これも商用利用 は不可となっており、デジタルガレージ社から直接購入する必要がある。 SNS データのシェアとして、量的な観点からはツイッターが最も大きいと思われる。 オープンデータではないが、Facebook、LINE も量的には大きい。 当社で保有している SNS データは以下の通りである。 ツイッターは 2006 年からの日本語データがあり、2015 年 9 月以降であれば全言 語のデータを保有している。 ブログはおおよそ 8 割程度を占めるであろうメジャーなものについて、2006,7 年 頃からのデータを保有している。 ウェブのニュースについては、2011 年頃からのデータを保有している。 個人的には、シングルソースでは限界があると考えており、既存の政府統計等と組み 合わせることでより有用な情報になるのではないかと考えている。 ⇒将来的な課題として検討していきたい。<経済産業省によるコメント> 63 第3章 先行研究・取組事例等調査結果 1.海外事例(POS データ、SNS データ等を活用した公的統計・指標作成事例) 海外事例一覧 本報告書に掲載した海外事例の一覧を以下に示す。 図表3 海外事例一覧 64 1.イタリアにおける価格調査を基にした CPI への適用 Istat(訳例:イタリア国家統計局)では毎年、CPI(Consumer price indices:訳例、消費者物価指数) を含めた商品リストの更新を行っている。CPI には、イタリア全土の消費を基準とした NIC(The Consumer Price Index for the whole nation:訳例、国家レベルの消費者物価指数)、現行の EU 規制を 基準とし、 ヨーロッパ中央銀行の金融政策として利用される HICP(The Harmonised index of Consumer Prices:訳例、消費者物価調和指数) 、従業者のいる家庭の消費を基準とした FOI(The Consumer Price Index for blue and white-collar worker households:訳例、従業者の世帯の消費者物価指数)の 3 つが ある。CPI の更新では、各家庭の消費実態を総合的に把握するために幅広い事項を調査対象として、 「重 みづけ」を行っており、それらを基に算出されている。 図表19 CPI 作成のための重みづけの項目別比較 ※出典:Istat, “Consumer Price Indices Methodological note”, Oct, 2015 価格調査は毎月 1 日~21 日の期間に行われ、 毎月 Istat に 597,500 個の価格が回収される。 そのうち、 501,900 個の価格表記はタブレット端末を使って、地方から MOS(Municipal Offices of Statistics:訳 例、地方統計局)に収集され、Istat(イタリア国家統計局)に送付される。残りの 95,600 個は Istat が 直接収集する(このうち、13,000 個の表記については、WEB クローラーの技術を使って収集される)。 CPI を算出するためのデータは 2 つの調査から毎月集められている。1 つは地方調査(the local survey) であり、もう 1 つは中央調査(the central survey)である。 ●地方調査 2015 年、MOS(Municipal Offices of Statistics:訳例、地方統計局)は 92 の主な都市から価格を収 集した。92 の都市のうち 80(19 は州の主要都市、61 は県の主要都市)は、調査に該当する商品すべて が対象となっている。残りの 12 の地方都市では地方の関税(ガス、水道、固形廃棄物、下水道の収集等) 65 や地方のサービス(サッカーの試合、映画館、中等学校教育等)が調査対象となる。 価格は 41,300 ヶ所の様々な拠点(小売店舗、企業、協会等)から回収される。家賃も 8,000 の家屋か ら収集される。2015 年には、501,900 個の価格がタブレット端末を使って地方から MOS に収集され、 Istat(イタリア国家統計局)に送付された。 ●中央調査 2015 年、Istat は 95,600 個の価格を直接収集した。このうち、13,000 個の表記については、インター ネットを通じて WEB クローラーの技術を使った収集をした。2015 年に Istat によって調査された価格 の割合は、全体の 23.1%であった。地方調査との役割分担として、食品、ノンアルコール飲料、衣服な どの価格は地方調査が収集するのに対し、コミュニケーションに関する価格は中央調査が収集する。 66 2.スイスにおける価格調査を基にした CPI への適用 スイスでは CPI や HICP を各家庭の消費の代表的な商品やサービスを基に算出している。重みづけに は FSO(Swiss Federal Statistical Office:訳例、スイス連邦統計局)によって行われる HBS(Household Budget Survey:訳例、家計調査)等のデータを用いる。毎年 12 月に重みづけの計算が行われる。 2008 年 FSO はスキャナーデータの利用を導入した。これにより、データの質や収集コストの削減、 小売の管理負担の軽減などの改良を図った。スキャナーデータによって収集された価格は CPI の計算に 用いられる。 FSO によって収集されたスキャナーデータは市場全体を把握できておらず、多くの情報はマーケット リサーチ会社から購入される。毎月 50,000 個の価格がスイス中の 11 地域(小売 2,000 店舗)から収集 されるが、地方と国の価格体系によって収集の役割分担がされている。 図表20 2015 年スイスの CPI、カテゴリー別の支出割合 ※出典:FSO,” Consumer Price Index (CPI): Fixed basket and weights” 2015 地方の価格体系を基にした商品は、 2000 年から外部委託したマーケットリサーチ会社から収集される。 また小売店舗からも直接収集される。データ提供協力の小売店舗は、売上の大きさ、取扱商品の幅の広 さなどから決定される。約 27,000 個の価格が、タブレット端末を通じて小売から収集される。大手小売 では電子フォーマットを利用して、直接 FSO に送付するものもある。他には電子メールや電話などで送 付する企業もある。一方、国の価格体系を基にした商品は、FSO(Swiss Federal Statistical Office:訳 例、スイス連邦統計局)のスタッフによって直接収集される。 データ収集のタイミングは、1 ヶ月に 1 回、月の最初の 2 週間のうちに回収されるが、燃料やガソリン の価格は月 2 回(月の初めと中頃)回収される。 67 3.ノルウェーにおける価格調査を基にした CPI への適用 ノルウェーでは Statistics Norway(訳例:ノルウェー統計局)が CPI の算出を担当している。Statistics Norway ではデータを収集する方法として、長い間、小売店に紙の質問用紙に記述してもらいポストに投 函してもらうことを行っていた。現在でも質問紙による回収は行われているが、電子メールや他の収集 方法も追加されている。 2011 年時点のデータによると、ノルウェーの CPI の 21%が紙の質問用紙で、2001 年から比較すると 20%ほどシェアを落としている。その代わりに、ウェブによる調査や、スキャナーデータ、電子登録さ れた価格などが増加している。 図表21 2011 年ノルウェーの CPI の収集方法の割合 ※出典:Ingvid Johansen and Ragnhlid Nygaard, “Various data collection methods in the Norwegian CPI”, 22 August, 2012 ノルウェーでは、ここ数年で小売業の集中化が進んでおり、ノルウェーの食品スーパーマーケットの 市場では 4 つの大手企業で占めている。ノルウェーでは本社から個店に対してデータを供給する要望が 高い。各企業は個店が紙の質問用紙を作成するにあたり、業務上の負担とならないよう、スキャナーデ ータを供給するための資金を豊富に備えている。 68 4.スウェーデンにおける価格調査を基にした CPI への適用 スウェーデンでは Statistics Sweden(訳例:スウェーデン統計局)が CPI の算出をしている。価格の 収集方法は、長年に渡り、価格収集の担当者が収集する方法が中心であったが、コストが高いことや人 的なミスの発生等の問題により、現在はスキャナーデータの導入が進んでいる。価格表記の確認は、担 当者によって収集した価格とスキャナーデータによって収集した価格の 2 つを用いて行われている。 担当者による価格収集は、3 週間のうちに行われる。サンプル対象として決定された店舗は、収集期間 の選択肢を与えられる。担当者は、店舗が決定した日程に訪問して、取扱商品すべての価格を収集する。 調査対象の価格は、HICP の規則に従って、取引価格とされている。スウェーデンにはおよそ 100 人の 価格収集の担当者がいて、毎月 CPI 作成のために価格を収集している。スキャナーデータは、こうした 価格収集で起こるエラーを把握するための補足情報として利用する。 図表22 スウェーデンにおける価格調査の方法 ※出典:Muhanad Sammar, Anders Norberg & Can Tongur Statistics Sweden, “Scanner Data – Discussion on the Treatment of Discounts in the CPI”より作成 69 5.国連のビックデータ活用について 国連のビックデータプロジェクト「国連グローバルパルス」は、SAS と共同調査を実施し、ソーシャ ルメディアやオンライン上の会話から、米国とアイルランドにおける就労環境の変化を理解するための 調査を行った。この調査は、米国とアイルランドの約 50 万のブログ・掲示板・ニュースサイトから抽出 した 2 年分のソーシャルメディアのデータを基に、失業に関連する会話の「雰囲気」や「トピック」を 分析して、公的な失業統計と比較することで、両者の関連性をみるものであった。 図表4 国連グローバルパルスと SAS による調査の分析フロー ※出典:UNITED NATIONS GLOBAL PULSE ”UNEMPLOYMENT THROUGH THE LENS OF SOCIAL MEDIA”,2011 データは主に 2 つの方法で分析された。1 つ目は感情の分析である。 「幸せ」「落胆」「心配」などの発 言から算出された「ムードスコア」が、失業率の上昇や下降の予測と関連があった。例えば、アイルラ ンドで「悩んでいる」という会話は、失業率上昇の 3 ヶ月前に増加することが分かった。2 つ目はストレ スへの対応である。失業した場合に想定される反応と関連があった。例えば、アメリカで「住宅を失う」 という会話は、失業率が急上昇した 2 ヶ月後に増加することが分かった。 70 図表5 国連グローバルパルスと SAS による調査結果イメージ ※出典:UNITED NATIONS GLOBAL PULSE ”UNEMPLOYMENT THROUGH THE LENS OF SOCIAL MEDIA”,2011 SAS と国連グローバルパルスは、アイルランドとアメリカのそれぞれで、就労環境の変化への気づき を得るために視覚的な表現(ダッシュボード)を作成した。ダッシュボードをみると失業者に関する会 話量や、失業に関する対処メカニズムを理解できる。ダッシュボードは利用者が失業に関する傾向や予 測を知るために、会話の雰囲気、対処メカニズム、様々なマクロ経済指標と失業の関係性を時系列で示 している。これにより、失業人口の動きを引き起こすタイミングや環境を理解し、その準備や対策をす ることができる。 例えば、マクロ経済の動向では、公的機関の失業率や予測モデルが描かれている。このモデルには統 計モデルの良さを評価するための指標として、赤池情報量基準が採用されている。将来的には 2 国の予 測モデルの結果を基にして、失業予測モデルに向けた価値のあるインプットを生み出せるようにする。 また月別のムードスコアは 6 つのバロメーターで描かれている。このように月別でバロメーターをみる ことで、過去の月からネガティブ・ポジティブのどちらに変化しているかを理解しやすくなる。それぞ れのバロメーター名をクリックすると、棒グラフにより時系列の推移が分かるようにした。 SAS と国連グローバルパルスは、この調査を通じて、就労状況に関連した感情や発言のオンライン のデータを量的に表現することによって、失業統計等の公的な統計データの意義を補足できる可能性が あることを強調した。 71 図表6 国連グローバルパルスと SAS が作成したダッシュボード ※出典:UNITED NATIONS GLOBAL PULSE ”UNEMPLOYMENT THROUGH THE LENS OF SOCIAL MEDIA”,2011 72 2.国内事例(POS データ、SNS データ等を活用した、民間サービス提供事例) 国内事例一覧 本報告書に掲載した国内事例の一覧を以下に示す。 図表7 国内事例一覧 73 1.一般財団法人流通システム開発センター ◆ 企業情報 一般財団法人流通システム開発センターは流通システムの合理化・標準化のための専門機関として 1972 年に設立されて以来、JAN コードを始めとする企業・商品・事業所等を識別するための様々なコー ド類の研究、管理及び普及などを行っている。また、これらを活用して業務の効率を高めるための POS システムの導入促進等を行うとともに、企業間の電子商取引に必要な標準メッセージ開発や通信プロト コル開発等を行ってきた実績を持つ。 POS システムの導入や効率的な利用を促進する観点から、商品マスターの整備・運用を支援する統合 商品データベース「JICFS/IFDB」の運用や、POS データ支援サービスである「RDS(流通 POS データ ベースサービス)事業」のインフラ提供サービス事業を実施している。 同センター内には協議会を設置し、各業界団体等と協力しながら標準 EDI「流通ビジネスメッセージ 標準(略称:流通 BMS) 」の普及推進と対象拡大等に向けた積極的な取り組みを行っている。国際的な 活動では流通コードの管理及び流通標準に関する国際機関である GS1 に日本を代表する機関として、理 事会メンバーとしても参加している。 電子タグ(RFID)とネットワークの技術を組み合わせた「EPCglobal ネットワークシステム」の開発 が、GS1 傘下にある EPCglobal により進められており、当該センターもその導入促進に携わるなど、標 準化活動にも積極的に参画している。一方、グロサリー業界を中心に設立された製配販連携のあり方に 関する協議会では、事務局を務める。 ◆サービス名と概要 「流通 POS データベースサービス(RDS)」 POS データの有効活用による流通効率化や、地域や企業規模による情報の偏在化の是正などの実現を 目的として、 一般財団法人 流通システム開発センターが運営を行う POS データベースサービスである。 具体的には、RDS に賛同する小売業より提供される POS 情報をデータベース化し、小売業をはじめ、 卸売業、商品メーカーが低コストで市場情報(マーケット情報)の相互利用を可能とする仕組みである。 ◆サービスの特徴 RDS は POS システムを導入している全国の小売業(総合スーパー、食品スーパー、ミニスーパー、 コンビニエンスストア、ドラッグストアなど)から、POS データを定期的に収集し、データベースとし てまとめている。データはデータサービス企業(DBS)によって日経 POS や NPI Report といった商品 となり、マーケット情報として販売されている。商品の最新販売動向が、地域別・業態別・カテゴリー 別に整理されており、小売業・メーカー・卸売業などで、商品戦略や販売戦略の策定、価格設定などに おける基礎データとして利用される。小売業は RDS に参加し、定期的に POS データを提供することに 74 より、自店と地域の POS 情報の比較がインターネットで簡単にわかる「比べて店検 WebⅡ」が無料で利 用できるメリットを享受できる。 同サービスは商品メーカーにとっては、新商品の立ち上がり動向の迅速な把握、競合他社商品とのシ ェア分析、商品開発などのマーケティング戦略、営業マンの得意先情報支援ツール、広告・キャンペー ンなどの効果測定、販売予測、需要予測に利用される。卸売業にとっては、小売業の売上向上につなが る棚割提案、リテール・サポート全般、市場動向を加味した適切な品揃え提案、地域別、業態別の売れ 筋情報の把握、販売予測、需要予測に利用される。小売業にとっては、売れ筋商品の迅速な把握、消費 者ニーズに対応した売場作り、適正在庫の把握、棚割(プラノグラム)といった事項に活用されている。 図表23 流通システム開発センターのデータ結合システム ※出典:流通システム開発センターホームページ 75 2.株式会社インテージ ◆企業情報 株式会社インテージが所属するインテージグループの事業は、独自に収集した各種データ・リサーチ ノウハウ・データ解析などを基盤とした「市場調査・コンサルティング」 、ソフトウェアの開発・販売や システムの運用・維持などを行っている「システムソリューション」、CRO(医薬品開発業務受託機関) 業務を展開する「医薬品開発支援」から構成されている。 1960 年 3 月「株式会社 社会調査研究所」としてスタートして以来、SCI(全国個人消費世帯パネル調 査)や SRI(全国小売店パネル調査)など、同社の保有するパネルを用いた調査が主力サービスとなっ ている。取り扱う業界は、食品・飲料、雑貨・化粧品などの日用品を初め、流通・小売や情報通信、官 公庁など多岐に渡る。 99 年 7 月に上海に事務所を開設して以来、海外拠点の拡大を推進し、現在では中国、韓国、香港、マ カオ、タイ、ベトナム、インド、シンガポール、インドネシアの 9 拠点を設置している。2012 年には NTT ドコモ社と合弁会社である「株式会社ドコモインサイトマーケティング」を設立。ドコモの保有す る顧客基盤と同社が保有するデータの分析・商品化に関するノウハウを融合することで、スマートフォ ン等を活用したモバイルリサーチ、マーケティング支援事業を展開ししている。これらのサービスでは、 主に大規模なモニターを活かした希少商材を対象とするリサーチや、モバイルの特性である即時性・常 時性を活かしたリアルタイムリサーチ等のサービスを開発、提供を行っている。2014 年には一橋大学、 新日本スーパーマーケット協会と共同で、 「流通・消費・経済指標開発プロジェクト」をスタートさせた。 同プロジェクトの「SRI 一橋大学消費者購買指数」では「支出指数」・「価格指数」・「数量指数」・「商品 入替効果指数」を算出することができ、 「SRI 一橋大学単価指数」では商品の単価価格を算出することが できる。2015 年 5 月には生鮮食料品・惣菜のデータが加わり、これらのマーケットサイズ・伸長率・季 節性の把握が可能となった。 図表24 インテージのデータ結合システム ※出典:インテージホームページ ◆サービス名と概要 「SRI(全国小売店パネル調査) 」 76 スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ホームセンター・ディスカウントストア、ドラッグス トア、専門店(ペットショップ、酒専門店、ベビー用品店)など全国約 4,000 店舗より収集している小 売店販売データ。独自に構築した店舗マスターにより、立地情報や商圏情報を紐づけた店舗別の分析も 可能となっている。 「SCI(全国消費者パネル調査) 」 全国 15 歳~69 歳の男女 50,000 人の消費者から、継続的に収集している日々の買い物データである。 独自に構築した店舗マスターにより、立地情報や商圏情報を紐づけた店舗分析も可能となっている。買 物データと意識や行動を紐づけた分析や、i-SSP(メディア接触パネルデータ)等とのシングルソース分 析、SRI(全国小売店パネル調査)データと組み合わせにより、消費者の購買と店頭での販売の両面から の実態把握・評価が可能である。 ◆サービスの特徴 「SRI(全国小売店パネル調査) 」 SRI は POS レジでスキャンされた商品を SKU 単位で捕捉した販売情報に、商品マスターの情報を結 びつけた市場分析サービスである。エリアと業態別のサンプル設計に店規模を加味し、市場規模を推計 することができる。これは市場や自社商品の動向、新商品やリニューアル品の立ち上がり、流通向けの 提案書の作成などに用いられる。 調査項目は各店舗におけるバーコード別の販売年月日、販売金額、販売個数。報告データは販売金額・ 販売量の拡大推計値、販売店率、マーケットシェア、販売店当たりの販売量、販売店当たりのシェア、 販売単価など。 「SCI(全国消費者パネル調査) 」 SCI はモニターが携帯端末で購入した商品のバーコードをスキャンし、インターネット調査画面から、 その商品を購入したチャネルや個数・金額などを入力することで、誰が・いつ・どこで・何をいくつい くらで購入したかが分かるサービスである。これは、メーカーのターゲット戦略立案、自社商品購入者 の特徴、自社商品の売上要因、消費者の購買実態の把握などに用いられることが多い。 SCI の調査項目はバーコード、購入日時、レシート合計金額、購入チャネル、 (バーコードをスキャン した商品の)購入金額、購入個数、付帯調査項目(飲料温度帯など、商品・購入チャネル・時期などに よって異なる)が基本となっており、これらを集計して作成される報告データ(販売データ)は 100 人 あたり平均購入規模、購入率、購入者あたり購入規模、マーケットシェアなどが一般的である。 77 3.日経メディアマーケティング株式会社 ◆ 企業情報 日経メディアマーケティング株式会社は、新聞をはじめ、デジタル、放送、出版などの様々な領域で ビジネスを展開している日本経済新聞社のグループである。なかでも同社は、デジタル系における法人 向けビジネスの中核企業として位置づけられる。 同社は 1962 年に日本経済新聞社の販促部門として設立された。1983 年に日本経済新聞社の営業品目 のうち出版物、特別情報などの販売業務を引き継ぎ日経総合販売(株)となった。1988 年には日経大阪 総合販売(株)と日経西部総合販売(株)と統合。2000 年 3 月に日経総合販売(株)より日経メディア マーケティング(株)に社名を変更した。 同社は日々の業務での活用を想定した「ビジネス・スタンダード」から、専門性の高い「プロフェッシ ョナル・サービス」まで幅広い領域の情報サービスを扱っている。その内容は、記事ベースをはじめ、 企業・財務・統計データ、人事情報、POS 情報、調査・分析レポート、海外ビジネス情報、教育・研修 に至るまで多岐にわたる。 図表25 日経 POS 情報システムのデータ結合システム ※出典:日本テラデータ株式会社ホームページ 78 ◆サービス名と概要: 「日経 POS 情報サービス」 日本経済新聞デジタルメディア局が全国の大手スーパー(ダイエー、イオン、ユニーなど)、中小スー パー、生協から毎日 POS データを収集して集計・加工している。同社が収集した約 265 万アイテムの売 り上げ情報を収録。スーパーの売り場を基準にした独自調査で食品・雑貨約 2.000 の分類を設定してい る。 ◆サービスの特徴 ●「日経 POS 情報サービス」 日経の POS データには下記の 3 種類のサービスがある。 ① 日経テレコン・POS EYES 加工食品・家庭用品の販売ランキングや推移グラフを利用できるサービス。日経の POS で管理している 食品・雑貨全分類の情報を閲覧でき、データのダウンロードも可能。 ② 日経テレコン・POS Vision ビジュアル化されたテンプレートを選んでエクセル帳票・グラフをダウンロードできるサービス。デー タの加工・整形が必要なく、分析資料に活用できる。 ③ NEEDS-SCAN/TREND POS データを Web から取得するダウンロード型サービス。各種エクセルマクロファイルを使って、多様 な角度から分析できる。 79 4.ジーエフケー マーケティングサービス ジャパン株式会社 ◆ 企業情報 ジーエフケーマーケティングサービスジャパン株式会社(GfK Japan)は、日本のビジネスに特化し たサービスを提供するために、1979 年に日本法人として設立された。日本市場における家電、カメラ、 IT、通信機器、オプティックス、ゴルフ等の小売店パネル調査が主なサービスである。2009 年には多様 な顧客のニーズに対応するため、カスタムリサーチの専門会社を設立。グローバルの GfK のグループ力 を活かし、日本ならびに世界の市場と消費者の動向を提供する。 2015 年 6 月、同社はオープンデータと POS データを掛け合わせたビッグデータ分析の一環として、 気象情報を用いたエアコンの週間需要予測を試験的に行い、その結果を「GfK エアコン需要予報」とし て HP 上にて公開した。本取り組みは、季節家電の需要には気温が大きく関わっていることを受け、天 気予報を利用して将来の需要を予測しようというもので、気象庁が発表している 7 日平均気温の確率予 測資料を基に、GfK 独自の統計モデルを用いて需要を予測し発表した。 2016 年 1 月には、インバウンド市場のデータソリューション事業においてホットリンクと業務提携す ることに合意した。同社は、世界の航空券予約の約 6 割をカバーする航空券予約データ(GfK フォワー ドキーズ)を用い、空港別の予約状況をリアルタイムで把握できる WEB アクセスツールや、中国からの インバウンド需要にフォーカスしたレポートなどを提供する。今回の提携によって、両社が有するイン バウンド市場データを相互で販売することが可能となる。インバウンド需要を定量的に捉えることがで きる GfK の航空券予約データサービスと、購買意向などの定性的な示唆を把握できるホットリンクのソ ーシャルメディアデータを双方が販売することで、両社はより包括的で質の高いインサイトを提供する。 ◆サービス名と概要 「POS トラッキング」 GfK の POS トラッキング(小売店パネル調査)は、どの商品がいつ、どこで、いくらで売れたかとい う最新の情報を国内・海外の双方の市場で提供。リテール及びリセラーの販売実績をトラッキングし、 ブランドや製品の市場シェアやパフォーマンスを分析する。 これにより、需要を予測し、商品の在庫や ラインアップを調整したり、販売や価格設定の戦略を最適化したりすることができる。 ◆サービスの特徴 ●「POS トラッキング」 主要な大手家電量販店・専門店・ディーラー などを契約パネルとし、POS データを日・週・月ベース で オンライン収集している。家電量販市場では約 9 割、家電市場全体では約 6 割という圧倒的な市場カ バー率によって、市場の変化やメーカーの ポジショニング、数量、金額、加重平均価格といった売れ筋 商品の販売実績を実売ベースで正確かつスピーディに捉えることが可能となっている。 80 5.カスタマー・コミュニケーションズ株式会社 ◆ 企業情報 カスタマー・コミュニケーションズ株式会社は 2000 年に設立し、ID-POS を用いた購買行動データの 活用支援やコンサルティングを小売向けに展開する企業である。また、市場インデックスデータを作成・ 分析して消費財メーカーに提供するプラットホームを構築している企業でもあり、ドラッグストア・食 品スーパー会員のデータベースをもとにして、小売業、消費財メーカーを中心に分析システムの販売も 行っている。 小売企業各社は顧客に紐づいた購買履歴データを保有・活用しているが、同社は、全国各地のドラッ グストア・食品スーパーの会員約 5,000 万人からなる国内最大規模のデータベースを保有しており、個 人を特定しない性別や年齢等の消費者属性情報を市場インデックスデータに加工して、多様な分析を提 供出来る点に強みがある。大手企業のみならず、中堅・中小を含む幅広い企業でビッグデータの活用が 浸透することを企図し、分析機能を簡便化した低価格なツールの展開も予定しているという。 2014 年 5 月より株式会社産業革新機構および株式会社プラネットを主要株主とする新しい資本体制に なり、ビッグデータを活用することによる、マーケティングサービスの裾野の拡大を目指している。 図表26 カスタマー・コミュニケーションズのデータ結合システム ※出典:2012 年「購買履歴データを活用した商談対策セミナー」カスタマー・コミュニケーションズ講演をもとに(公財)流通経済研究所作成 ◆サービス名と概要 「TRUE DATA」 ID-POS データを様々な分析ツールを用いて、 「何が、いつ、どこで、誰に売れているのか」 「どんな商 品を開発・投入すべきか」などのマーケティング上の課題に利用する。 81 ◆サービスの特徴 ●ID-POS データ 全国のスーパーマーケット、ドラッグストアなどの購買情報を基にした、カード会員組織を横断した ID-POS 購買データを延べ 5000 万人規模で保有している。本データでは全属性・全年代を網羅できる。 また自己申告制のデータではなく、レジで記録されたデータを記録するため、購買の事実ベースに基づ く実態把握が可能となる。同データでは顧客一人一人の購買履歴を知ることができ、全国やエリア別の メーカー別、ブランド別、商品別の購買動向と合わせて、リピート状況、併買状況、スイッチング状況 を把握することが可能である。 ●分析ツール 同社が提供する分析ツール Shopping Scan、Map Scan、Customer Scan、Eagle Eye、Dolphin Eye、 UreCompas の 6 つに分かれており、商品・店舗ごとの購買行動の分析や、地図上での購買行動を可視化 することができる。 Shopping Scan:商品のトライアルやリピート状況から商品力の強さを把握し、併買分析から効果的 なクロスセル(買い合わせ)を検討できる。 Map Scan:全国の地図、人口・世帯数など統計情報と、自社ポイントカード会員の購買実績を組み 合わせたサービス。新規会員の優先エリア、チラシ配布エリアの確認など、商圏分析に用いる。 Customer Scan:TRUE DATA 全国パネル平均と、自社データ分析を比較することで、自社の強み・ 弱みを把握し、強化すべきカテゴリーを把握。販促検証にも用いる。 Eagle Eye:TRUE DATA と連動して全国ドラッグストア、スーパーマーケットにおける消費者の 購買行動を表示。 Dolphin Eye:化粧品、菓子類等、スーパーマーケット 500 カテゴリー、ドラッグストア 250 カテ ゴリーを把握。購入点数や購入額のトレンドをメーカー別、商品別、カテゴリー別に表示。昨年ト レンドとの比較、平均価格のトレンド、売行きランキングを出力。 ウレコン:TRUE DATA を用いて、全国のドラッグストア、食品スーパー合わせて約 850 万人の購 買履歴と購買者属性情報を市場インデックスデータとして提供。 82 6.株式会社アイディ―ズ ◆ 企業情報 株式会社アイディーズは 1998 年に設立され、小売業に対する「ロイヤルティプログラム」によるデー タベースマーケティング、プロモーションプログラムの提供、MD コンサルティング、食品メーカーに 対するショッパーマーケティングサイエンスの提供、マーケティング分析サービス「Power ID」の運営・ 提供を行っている企業である。 株式会社アイディ―ズが提供するサービスでは、約 20 億件の膨大な ID-POS データが分析可能になっ ている。特に、日別に地域レベルの販売実績と自社の販売実績を比較できる仕組みを構築しており、日々 の売場づくりや販売促進の評価に採用されている。さらに同社では沖縄県の支援のもと、民間企業の立 場で標準商品コードの作成に取り組んでいる。特に同社が作成した「i-code」は、これまで JAN コード で管理されなかった生鮮食品と惣菜にコードを付与し、取扱い全商品を分析・活用可能なデータに一元 化した「商品標準化コード」として拡大展開に力を入れている。 2013 年には大日本印刷と協業し、ネットサービスを小売店舗への送客や販売促進に活用する O2O サ ービス分野を開拓した。2015 年 3 月には、大日本印刷のネットチラシ配信サービス「オリコミーオ!」 と、アイディーズが提供する「i-code MS」によって鮮魚・青果・精肉の生鮮三品と惣菜を対象とした O2O サービスを開始した。このサービス内では、生鮮三品と惣菜に統一化コード(i-code)を付与し、 販売促進に活用できるようにした点が画期的であると言われている。 図表27 アイディ―ズのデータ結合システム ※出典:アイディ―ズホームページ ◆サービス名と概要 「PowerID」 PowerID はクラウド上で ID-POS データを分析するための高速分析ツールで、データ圧縮処理をするこ 83 とで高速処理を行うサービス。 「i-code」 i-code は生鮮3品・惣菜含め商品のさまざまな情報を分析できるように、株式会社アイディーズが全商 品の一元化を実現させた統一マスター、 「商品標準化コード」である。i-code によって食品スーパーマー ケットの生鮮商材・総菜の購買の特徴が、複数チェーンをまたいで把握できるという。 ◆サービスの特徴 ●「i-code」 i-code は「生鮮 3 品・惣菜までを含んだ全商品(SKU)のコード統合」をしたことが大きな特徴であ る。i-code を構成する情報体系は大別して 4 つに分かれる。JAN コード、標準商品名、平均価格等の「標 準分類マスター、標準商品マスター」 、容量・重量、サイズ、産地、メーカーの「商品関連情報」、性別、 年齢層、購入時間の「属性関連情報」 、加工方法、調理方法、使用用途の「調理関連情報」である。 同社では i-code を導入することで、下記の点で利便性があるとしている。 ① 自社の強み・弱みの把握 i-code によって自社の特徴やポジショニングを把握することができる。 ② 「全国・地方・自社」のエリア比較 標準化コードを用いることで、地方エリアと全国・首都圏データを比較することができる。 ③ 自社と市場との分析比較精度の向上 流通独自の分類体系から標準化コードを用いることで分析誤差を少なくすることができる。 ④ 生鮮・惣菜・食品すべてのデータ連動 市販されている食品データと農林水産省や卸売市場などの生鮮データを一元化することで、クロス MD の企画や販促を打ちやすくすることができる。 ⑤ フォーマットのデータ管理・比較の軽減 ベンダー・メーカーのマーケティング活動への負担とコストを、一元化によって軽減することがで きる。 ⑥ 商品知識や購入層、調理法などの情報の短時間での入手 商品に関する情報の検索・分析の時間を短縮化できる。 84 7.株式会社ショッパーインサイト ◆ 企業情報 株式会社ショッパーインサイトは、2013 年 5 月に読売広告社とアイディーズによる資本で設立された 企業である。食品スーパーマーケットを中心とする ID-POS データを使い、ショッパーの購買行動を把 握・分析し、様々なサービスを提供している。ID-POS データの分析に用いる商品マスターとしては、生 鮮・惣菜を含む独自マスターで統合された株式会社アイディーズの「i-code」を採用している。また、i-code を活用したサービスとして、数十チェーン分の i-code が実装された大規模データ集計ツール「real shopper SM」を提供している。Real shopper SM は、食品スーパーから取得した ID-POS データをブラ ウザ経由で分析することができる ASP サービスであり、 加工食品に加えて野菜や魚、肉などの生鮮食品、 惣菜も含めた食品全体の売上データを、400 万 ID 以上の会員の購買履歴として分析できるサービスであ る。 同社では、自社の方向性として独自 ID-POS データの活用でショッパーの購買行動を分析し、メーカ ーのマーケティングプロモーションを支援することを掲げている。データ分析・マーケティング情報サ ービスに加えて、具体的な店頭知見やブランド理解、生活者理解のナレッジと掛け合わせることで、生 活者にも流通にも受け入れられるプランニングを目指すとしている。グループ企業とのネットワークも 活かしたマーケティングデータや知見を基に、顧客とのソリューション開発で広範囲な領域のプランニ ング・分析・評価を行うとのことである。 図表28 ショッパーインサイトのデータ結合システム ※出典:ショッパーインサイトホームページ ◆サービス名と概要: 「real shopper SM」 85 複数のチェーンを束ねた大規模な i-code データを集計し、分析するための ASP データサービスである。 加工食品に加えて野菜や魚、肉などの生鮮食品、惣菜も含めた食品全体の売上データを 400 万 ID 以上の 会員の購買履歴として分析できるユニークなサービスとなっている。 ◆サービスの特徴 ●「real shopper SM」 購買実態を把握するデータ分析サービスとして、以下の点が特徴とされている。 ① 生鮮を含めたクロス MD 提案の新たな切り口を発見できる点 自社ブランドと併買される食材や、生鮮との買われ方、全体・競合商品データと比較した際の共通点/ 相違点などから、新たな買い上げを増やす切り口を検証できる。 ② 自社ブランドの購入者をより深く理解できる点 今までは見えなかった食品全体の購買行動を知ることで、自社の顧客の特徴を把握することができる。 ③ 提案営業力の強化につながる点 52 週 MD の販促企画をより説得力あるものにでき、セール展開の効率化や食卓全体を捉えた新たなメニ ュー提案のベースデータとして活用できる。 ④ コミュニケーション施策の効果を測定できる点 マス広告やプロモーション施策を実施した際の購買変化(併買商品、ターゲット構成等)を分析し、 実施前の目標値と比較検証、次回施策へ反映できる。 86 8.Segment of One & Only 株式会社 ◆ 企業情報 Segment of One & Only 株式会社はドラッグストアの ID-POS データを集積している。全国 18 社の 地域密着型ドラッグストアの ID 付 POS データを統合し、メーカー、卸売業、プロモーション関連企業 などの営業政策に用いるシステムのリリースと、ID-POS マーケティング研究会の定期開催を行っている。 同社では、ID 付 POS データを統合することで、消費者の買い物行動をより深く知り、メーカーのブラ ンディングやプロモーションを強化することを目指している。 ID 付 POS データでは 900 万人分のビックデータを取り扱い、全部門・カテゴリーをカバーしている。 また各地域を代表する地域密着型企業のデータにより、当該企業での購買シェアの高いデータとなって いる。 ID-POS マーケティング研究会は、小売・卸・メーカーなどが参加する勉強会となっており、年間 4 回、毎回 2~3 のカテゴリーの購買行動分析を行い、報告がされている。この研究会は、単に加盟企業の データを分析するだけでなく、分析の結果を店頭実験で検証し、その結果を更に分析に生かすという PDCA サイクルを構築していく実行性を持っている点に特徴がある。同社によれば、こういったデータ 分析と店頭実験のサイクルにより、データ活用の技術を高めていくことができるとしている。 図表29 Segment of One & Only のデータ結合システム ※出典:Segment of One & Only ホームページ ◆サービス名と概要 「ID-POS データ DBサービス」 ドラッグストアの ID 付き POS データを集積し、分析する基盤として提供するサービスである。現在 では、全国 18 社の地域密着型ドラッグストアの ID-POS データを統合したサービスして展開している。 87 ◆サービスの特徴 ●「ID-POS データ DBサービス」 ID 付き POS データでは 900 万人分のビックデータを取り扱い、全部門・カテゴリーをカバーしてい る。また各地域を代表する地域密着型企業のデータにより、購買シェアの高い顧客のデータ(=優良顧 客のデータ)となっている。データ分析では、年間一定金額以上の購買者のデータ抽出による併売分析・ リピート分析や、購入者(性年代別、購買行動別)の特定や比較、エリア・立地・店舗規模・調剤併設 の有無による抽出と集計、分析が可能となっている。 88 9.ジェイビートゥービー株式会社 ◆ 企業情報 ジェイビートゥービー株式会社は、中堅規模のスーパーマーケットやドラッグストアチェーンが発行 するポイントカード・会員カードから得られた、ID 付き POS データを取り扱う企業である。同社では、 小売業、卸・メーカーに対して、ID 付き POS データを用いた ASP 分析サービスを提供している。この ASP 分析サービスでは、ドラッグストアや食品スーパーなど小売業の本部から顧客属性(ID、性別、年 齢、郵便番号)付きの POS データを預かって分析を行う。本システムを導入した小売と契約した卸・メ ーカーは、ID 付き POS データとその分析結果をインターネットで共有することができる。 ジェイビートゥービー株式会社では同社のデータセンターに蓄積した分析データを、メーカー等に対 して提供する場合、マーケティングや新商品の開発に活用できることを重視している。こういった場合、 小売店が提供した POS データは第三者に利用される形になるが、どの小売店からのデータなのかは特定 できない形に加工されているという。このようにメーカー側にもサービスを提供することで、小売店側 のシステム開発にかかるコスト負担を軽減させるメリットがあるという。 図表30 ジェイビートゥービーのデータ結合システム ※出典:ジェイビートゥビーホームページ ◆サービス名と概要 「ID 付き POS データ」 中堅規模のスーパーマーケットやドラッグストアチェーンが発行するポイントカード・会員カードか ら得られた、ID 付き POS データを取り扱うサービス。 89 ◆サービスの特徴 「ID 付き POS データ」 小売業、卸売業・メーカーに対して、ID 付き POS データを用いた ASP 分析サービスを提供する。 ASP 分析サービスでは、ドラッグストアや食品スーパーなど小売業の本部から顧客属性(ID、性別、年 齢、郵便番号)付きの POS データを預かって分析する。このシステムを導入した小売と契約した卸売業・ メーカーは、ID 付き POS データとその分析結果をインターネットで共有することができる。小売業は 自社を支える優良顧客の動向を定点観測でき、卸売業・メーカーは、自社商品の想定ターゲット顧客、 想定購買パターン、店頭におけるリアルな購買行動を比較し、課題と対策を検討するなどの販売戦略や 新商品開発等の取り組みに活かすことができる。 90 10.株式会社NTTデータ ◆ 企業情報 株式会社 NTT データは、2005 年 7 月に高精度日本語解析エンジン「なずき」を発表し、Twitter・ブ ログ等の Web 情報と各種社内情報の両方を総合的に分析できる SaaS 型サービス「なずきのおと」の提 供を開始した。 「なずきのおと」では自然言語処理エンジン「なずき®」の自動分析をベースに、企業/商 品の情報を Twitter、ブログ等の Web 情報から抽出して定量・定性分析を可能とすると共に、アンケー トや売上データ等各種情報をアップロードして同様の分析を行う。例えば、商品の Web 上の評判とアン ケートやコールセンターへの問い合わせの評判内容の差異や推移のタイムラグ分析、Web 上の評判と売 上データやサイトアクセス数推移の関連性分析などを行うことができるとしている。 同社は 2012 年 9 月 22 日に米 Twitter 社と「データ再販(Data Resellers) 」に関する契約を締結し、 米 Twitter 社が提供する API「Firehose」を通じて取得・蓄積した、日本語のツイートデータおよび日 本国内で書き込まれたすべてのツイートデータを提供できる権利を取得した。さらに 2013 年 2 月からは Twitter 公認製品提供事業者として「Twitter データ提供サービス」を開始した。2013 年 6 月 18 日には FindJapan 株式会社と「中国のネットデータ提供に関する国内独占契約」を締結し、2013 年 7 月より「中 国ネットデータ提供サービス」を開始している。 図表31 NTTデータのデータ結合システム ※出典:NTT データホームページ ◆サービス名と概要: 「なずきのおと」 マーケティング分析用に新たに独自開発した言語解析エンジン「なずき」をコアの解析エンジンとし て、ネット上/社内の情報収集・整理を実現し商品・サービスに対する評判情報の分析を支援する SaaS 91 型のマーケティング・リサーチサービスである。 ◆サービスの特徴 「なずきのおと」 「なずきのおと」は「そとのおと」と「なかのおと」で、ソーシャルメディアと社内管理情報を横断 的に分析している。 「そとのおと」と「なかのおと」の特徴を以下に示す。 ・ 「そとのおと」 ・・・ネット上のニュースやブログ・Twitter といったソーシャルメディアを収集し分析・ 表示。 ・ 「なかのおと」 ・・・社内管理のアンケート・営業日報等をアップロードして分析・表示。 同社では「そとのおと」、 「なかのおと」を組み合わせたサービスの詳細について、以下の分析イメー ジを提案している。 ① 自社商品・サービスに関するネット上の悪評を常時監視 ② 自社商品に関して Twitter 上で広まった発言の確認 ③ 自社のプレスリリースのネット上での反響を調査 ④ 自社商品についてのアンケート回答の分析 ⑤ 営業販売員の日報の分析 ⑥ Web 上における評判について、自社商品と競合商品の比較分析 ⑦ 商品の売上と Web 上の評判のクロス分析 ⑧ 商品のジャンル別比較分析 ホームページでは、 「なずきのおと」を導入した企業に対して、同社が検索対象の単語を含むニュース やブログ、Twitter の記事を収集し、そこに含まれる話題・評判情報を日次・週次の時系列グラフやラン キング形式で提供した事例が紹介されている。本サービスを導入した企業によれば、展開するプロモー ション活動に対する評判を収集するツールとして効果的に機能するものであるという。 92 11.株式会社ライフスケープマーケティング ◆ 企業情報 株式会社ライフスケープマーケティングは、2001 年に食卓をマーケットに見立てた新たな視点を持つ マーケティングリサーチ、コンサルティング会社である。同社では、生活者の行動を的確に把握するた めのマーケティング支援のツールとして、生活者の食に関する行動を分析するためのシステムである「食 MAP」をサービスの核としている。 「食MAP」では、家族世帯と単身世帯のモニターから、毎日の購 買・食卓情報を集め、分析用のデータベースを構築して、ユーザー企業が生活者の食に関する行動や意 識・心理を捉えるためのソリューションを提供している。また、食卓から見える潜在的な定性情報を発 見し、必要に応じて新たな調査手法の開発に取り組んでいるという。 同社は、2015 年 10 月以降、 「食MAP」においてシニア層のデータ提供サービスを拡充した。20~64 歳だったモニター対象者に 65~69 歳の人を追加し、調査世帯も 360 世帯から 400 世帯に増加した。こ れにより 65~69 歳のシニア層の食卓データの提供を可能とし、各企業の高齢者向け商品の開発などのマ ーケティングに活用できるデータとしての価値を高めた。このように食に関わる幅広い顧客に対して、 独自の手法で収集した生活者の「食卓情報」を提供することが同社の強みとなっている。 図表32 ライフスケープマーケティングのサービス ※出典:株式会社ライフスケープマーケティングホームページ ◆サービス名と概要: 「食 MAP」 食MAPとは、食卓 Market Analysis and Planning の略で、食卓を市場に見立てたマーケティング情 報を 365 日観察することにより、 誰が・どこで・何を買い・いつ・どんな食卓で、どのように調理し、 誰が食べたのかを把握できるシステムである。 93 ◆サービスの特徴 「食 MAP」 食 MAP のモニターは、首都圏 30km 圏内(東京・神奈川・千葉・埼玉)在住の有配偶女性、単身男女 を対象に、国勢調査の年代構成比に合わせて構成されている。家族世帯版の食 MAP では有配偶の 2 人以 上世帯 20~69 歳主婦、シングルス(単身)世帯版食 MAP では単身世帯 20~64 歳の男女が対象。サン プルは、2015 年 10 月時点で以下のデータが蓄積されている。 ・家族世帯版食MAP:食卓数 627 万件、メニュー数 2,796 万件、材料数 5,992 万件 ・シングルス世帯版食MAP:食卓数 242 万件、メニュー数 605 万件、材料数 835 万件 ※調査内容は、食卓(メニュー・材料) 、購買した商品、家庭内在庫の商品、意識情報等 また、食 MAP では、以下の指標を用いて独自の分析が可能である。 ・ 「TI 値」 ・・・Table Index の略で、1000 食卓当たりのメニュー(or 材料 or 商品)の出現数を表す値。食 卓に登場するメニューの分類が細かくされているため、それらの出現率を標準化する指数。 ・ 「F 値」 ・・・フード(Food)値のことで、あるメニューが平均何種類の材料を使用して調理されたかを表 す値。 ・ 「M 値」 ・・・ある食材(材料 or 商品)が何種類のメニューに使われたかの数値であり、その食材の汎用 性を表す指数。 ・ 「材料使用率」 ・・・ある材料があるメニューに使用された割合を表す割合。 ・ 「人気度」 ・・・あるメニューが飲食したモニター家族構成員に「人気があった」とされた率。 94 12.ドコモインサイトマーケティング株式会社 ◆ 企業情報 ドコモインサイトマーケティング株式会社は、2012 年にドコモとインテージの合弁会社として設立さ れた企業である。主要株主である NTT ドコモの携帯電話契約者 6500 万人規模の顧客データとインテー ジの情報活用のリソースを基にした情報提供を行っている。循環型マーケティングのフレームを基にし た発想で、多様な生活者の行動や感情の動線を可視化し、企業のビジネスの循環を促進するマーケティ ングをサポートするとしている。 同社のサービスは「リサーチ」「コミュニケーションサービス」「エリアマーケティング」に分かれて いる。 「リサーチ」はスマートフォンの普及に伴う生活者の情報接触の変化を踏まえ、ドコモの顧客基盤 とモバイルの特徴を活かした、生活者起点のインサイトの提供を目指すサービスである。 「コミュニケー ションサービス」はサービス、パネル、システムの各基盤を整備・統合した「マーケティング・プラッ トフォーム」の実現を目指すサービスであり、 「エリアマーケティング」はドコモの顧客基盤とインテー ジのノウハウの融合により、エリアの特徴と生活者を俯瞰するサービスである。エリアマーケティング の利用例として、被害想定や減災対策のための「防災計画」 、観光客分析やイベント調査に基づく「観光 振興」 、立地評価や商圏分析に基づく「店舗開発」などがあげられている。 図表33 ドコモインサイトマーケティングのデータ結合システム ※出典:ドコモインサイトマーケティングホームページ ◆サービス名と概要 「みんレポ」 生活者の消費行動をありのままに投稿してもらうことで、生活者理解と企業との共創を実現するマー 95 ケティングのアプリケーション。 「レコーディングリサーチ」 スクリーニング条件に合致した対象者による、スマートフォンを用いた継続記録式(日記式)調査。 「モバイルインタビュー」 スマートフォンを活用したインタビュー調査で、チャット形式・掲示板形式の調査とテレビ電話形式 の調査がある。 「スマート」 スマートフォンユーザーに対する小ボリュームの調査。質問は 50 問で、低コストで調査が実施できる サービスである。 「di-PiNK ディーアイピンク」 企業が自社で保有するデータに、NTT ドコモが保有するデータとインテージのリサーチデータを統合 した DMP による新しいマーケティングサービスである。 「対話型プロモーション」 dポイントクラブを対象にしたアンケート形式のプロモーション・メディア。 「モバイル空間統計」 NTT ドコモの携帯電話ネットワークのしくみを使用して作成される人口の統計情報。公共分野では防 災計画・まちづくり・観光施策など、産業分野では出店計画・競合分析・プロモーション戦略などのエ リアマーケティングに活用されている。 ◆サービスの特徴 「モバイル空間統計」 同社が提供するエリアマーケティングサービス「モバイル空間統計」は、NTT ドコモの携帯電話ネッ トワークを利用し、基地局単位で時間帯別に集計した携帯電話の情報から人口の地理的分布を推計する。 2015 年 10 月には株式会社三菱総合研究所と業務提携し、三菱総合研究所の分析技術と同社の「モバイ ル空間統計」を組み合わせ、インバウンド市場分析サービス「訪日外国人市場動向レポート」の提供を 開始した。本サービスは訪日外国人の携帯電話のローミングデータを活用して推計しており、市区町村 単位で「訪日外国人の国籍別来訪人数」 「消費額推計値」などの情報を知ることができる。 96 3.POS データに係る調査結果 (1)商業動態統計(小売業種の販売額)と業界団体の公表統計の一覧 図表8 各業界団体(協会)における公表統計一覧 商業動態統計 業界団体(協会) 小売業種区分 百貨店 スーパー 業界団体の公表統計 日本百貨店協会 全国百貨店売上高概況 日本スーパーマーケット協会 スーパーマーケット統計 新日本スーパーマーケット協会 調査 オール日本スーパーマーケット協会 日本チェーンストア協会 チェーンストア販売統計 ※食料品・衣料品 コンビニエンス ストア 日本フランチャイズチェーン協会 家電大型専門店 ※ ドラッグストア 日本チェーンドラッグストア協会 コンビニエンスストア 統計調査月報 ※ 報道発表(健康産業新聞 1569 号(2015.4.1) ) ウェブサイト:年間総売上 ホームセンター 日本ドゥ・イット・ユアセルフ協会 高とホームセンター数の 推移 ※家電大型専門店は、ジーエフケーマーケティングサービスジャパン株式会社の保有する POS データ情報 (売上高概数)を参考数値として使用する (2)商業動態統計と各協会が公表統計情報の比較 商業動態統計における販売額( 2014 年の確報値)と、各業界の協会が公表している統計情報(一 部 2014 年度の値)を比較すると、何れも商業動態統計の 76%以上をカバーしている。 97 図表9 商業動態統計と各協会が公表している統計情報の比較 ※スーパーの協会統計情報は、スーパーマーケット年次統計調査資料等を基に、商業動態統計の定義(売場 面積 1500 ㎡以上等)に合わせた推計値 ※ドラッグストアの協会統計情報は、日本チェーンドラッグストア協会による全国のドラッグストアの総売 上高の推計値 ※家電大型専門店の統計情報は、ジーエフケーマーケティングサービスジャパン株式会社の保有する POS データを基に概数を記載(再掲) 【出典】商業動態統計、日本スーパーマーケット協会、日本チェーンストア協会、 日本フランチャイズチェーン協会、日本百貨店協会、日本チェーンドラッグストア協会、 日本ドゥ・イット・ユアセルフ協会の公表情報 (3)商業動態統計(スーパー)とサンプル POS データ(金額 PI)の前年同月比推移 98 図表10 商業動態統計(スーパー)とサンプル POS データ(金額 PI)の前年同月比推移 ※流通経済研究所保有の全国約 400 店舗のスーパーの POS データで算出(食品には生鮮・惣菜は含まれない) ※税抜での金額PIを算出し、前年同月比をもって商業動態統計(スーパー)と比較 商業動態統計(スーパー)の前年同月比とサンプル POS データの前年同月比(金額 PI)推移を比 較すると、消費税率の引き上げ前後など増減の大きな期間においては、グラフの凹凸の振れ幅に比 較的大きな差分が見られるものの、それ以外の期間においては比較的差分が小さい。 なお、2015 年 6 月以降などのように、商業動態統計の値とサンプル POS データの値で正負が逆 転している期間があるが、これは商業動態統計にのみ含まれる大規模スーパーの売上と、サンプル POS データに含まれるスーパーの売上業績が反転していることを示している。 99 図表34 POS データのサンプル数の多寡による前年同月比(金額 PI)の差異 - 食品 サンプル数が約 400 店舗の前年同月比(金額 PI)と、関東・近畿地方の大規模店舗約 100 店舗に おける前年同月比(金額 PI)を、それぞれ商業動態統計の値と比較。サンプル数約 100 の値は、サ ンプル数約 400 の値と比べ振れ幅が大きく、サンプル数の増加が指標の安定性に寄与することが想 定される。 図表35 POS データのサンプル数の多寡による前年同月比(金額 PI)の差異 - 日用品 サンプル数が約 400 店舗の前年同月比(金額 PI)と、関東・近畿地方の大規模店舗約 100 店舗に 100 おける前年同月比(金額 PI)を、それぞれ商業動態統計の値と比較。特に 2014 年 4 月の消費税増 税時近傍において、サンプル数約 100 の値の振れ幅(サンプル数 400 との乖離)が大きく、サンプ ル数の増加が指標の安定性に寄与することが想定される。 (4)POSデータ収集・販売を行う民間企業(代表的な企業) 図表11 POS データ関連民間企業一覧 企業名 株式会社インテージ 株式会社 KSP-SP 株式会社マーチャンダイジング・オン 収集データ スーパー・GMS 大手消費財メーカー ドラッグストア /医療品メーカー 約 4,000 店舗 得意先 500 社 スーパー・GMS 食品 SM/メーカー/卸 約 1,030 店舗 得意先 400 社以上 スーパー・GMS ドラッグストア 約 400 店舗 ジーエフケー マーケティング サービス ジャパン 株式会社 主要販売先 家電量販店 約 4,400 店舗 食品メーカー/卸 得意先 330 社 家電メーカー/卸 株式会社日本経済新聞社 スーパー・GMS 金融機関/商社 (デジタルメディア) ドラッグストア /マスコミ 約 400 店舗 得意先 30 社 (5)商業動態統計の小売業の値に占める小売企業の売上高の割合 商業動態統計の小売業種に係る数値に相当する情報の全量を、POS データ等を使って週次等で収 集することは現時点では困難であることが想定される。 そこで、代表性のある指標の作成可否を検討する参考情報として、商業動態統計の値を100(%) とし、そのうち大規模小売企業における売上高の積算が50%超ないし80%超となる企業数を、 各企業の開示情報等を基に調査した。 101 <スーパーマーケット> 図表36 商業動態統計(確報値)における、2014 年のスーパー販売額(13.37 兆円)に占め る大手スーパーマーケットの売上高の割合(累積) <コンビニエンスストア> 図表37 商業動態統計(確報値)における、2014 年のコンビニエンスストア販売額(10.42 兆円)に占める大手コンビニエンスストアの売上高の割合(累積) 102 <百貨店> 図表38 商業動態統計(確報値)における、2014 年の百貨店販売額(6.83 兆円)に占める大 手百貨店の売上高の割合(累積) <家電大型専門店> 図表39 商業動態統計(確報値)における、2014 年の家電大型専門店販売額(4.53 兆円)に 占める大手家電販売店の売上高の割合(累積) 103 <ドラッグストア> 図表40 商業動態統計(確報値)における、2014 年のドラッグストア販売額(4.94 兆円)に 占める大手ドラッグストアの売上高の割合(累積) <ホームセンター> 図表41 商業動態統計(確報値)における、2014 年のホームセンター販売額(3.35 兆円)に 占める大手ホームセンターの売上高の割合(累積) 104 (6)POS データの活用における現状と展望 1.POS データ活用の現状 1-1.POS データとは POS レジによって収集される販売履歴データである POS データは 2016 年現在、多くの民間企業によ って活用されている。業界を問わず、一般的に POS データに含まれる内容は「いつ、どこで(店舗) 、 どの商品が、いくらで、いくつ」販売されたかという情報である。 図表42 一般的な POS データの構成 POS データに含まれる情報 商品マスターに含まれる情報 日付・時間 商品コード(JAN) 店舗コード 商品名 取引 ID(レシート No) メーカー名 商品コード(JAN) 商品分類コード 販売金額 販売数量 POS データに付随して、小売業では独自に商品マスターを整備し、活用している。商品マスターには、 商品コード(JAN)をキーにして、商品名、メーカー名、商品分類コードが紐づけられる。商品分類コ ードは売場構成のベースになるものであるため、各小売業によって戦略的に独自のものが作られている。 1-2.小売業による POS データ活用 POS システムを導入している小売業では以下にあげるような形で POS データを活用している。 売上の管理:店舗の売上状況について、POS データから売上日報等を作成している 経営判断:各店舗の POS データを本部で一括管理し、企業全体の意思決定に活用している 品揃え:POS データより、売れ筋商品、死に筋商品を把握し、商品の品揃えに反映している 以上のように、小売業では主に自社の POS データを分析し、売場づくりや経営判断に利用している。 1-3.複数企業の POS データを収集するデータベンダーのビジネス POS データは、自社データとして小売業が活用する以外に、メーカーや卸売業のマーケティングや小 売業への商品提案に活用されている。メーカーや卸売業は、個別に取引先の小売業から POS データを購 入するだけではなく、市場動向を把握するツールとして複数の小売業の POS データの集合体である市場 POS データを購入することも多い。こうした複数の小売業の POS データを収集し、販売しているのがデ ータベンダーである。 データベンダーとして代表的な企業としては、株式会社インテージ(スーパーやドラッグストアの POS データを収集、販売)や、GFK Japan(家電量販店の POS データを収集、販売)があげられる。各企業 の提供しているサービス等の詳細は別紙報告書(〇〇〇〇)に記載しているが、これらの企業は複数の 105 小売業から POS データを購入、あるいは集計データと引き換えに無償提供を受け、それらの POS デー タを1つに統合し、市場 POS データとして販売している。複数の小売業の POS データを統合すること で、全国的な商品の販売動向を把握できるほか、エリア別の商品の動きの違い、カテゴリー横断的な消 費動向を把握できるようになる。 データベンダーは、主に POS データを商品単位の粒度でカテゴリー別に販売している。また、小売業 によって商品分類が異なることから、これらを統合するための商品マスターをベンダー側で作成し、POS データと合わせて顧客に提供している。こうしたデータを購入したメーカーや卸売業の活用方法を以下 に示す。 <メーカー、卸売業の活用方法> 商品開発での活用:競合商品の販売動向や、現在売上が伸長している商品の動向を市場 POS データ で把握し、商品開発に利用している 小売業への商品提案への活用:営業担当者が小売業に自社商品の導入提案や、売場づくりの提案を 行う際に、自社商品が市場で支持されていることを証明するエビデンスとして、あるいは提案先の 小売業のカテゴリー別の売れ行き診断材料として活用されている また、POS データを提供した小売業にも交換条件として市場 POS データを提供しているケースもある。 以下に小売業における市場 POS データの活用方法を示す。 <小売業での市場 POS データの活用> 自社の売場診断材料として活用:市場でのカテゴリーや単品商品の販売動向と、自社の状況を比較 することで、自社の強み・弱みを把握する、売り負けている商品が無いかを確認する、競争力を持 った販売価格が設定できているかを確認する、といった形で活用されている。 図表43 小売業による市場と自社の実績比較のイメージ 実績 項目 小売業 市場 小売業-市場 増減率(前年対比) 小売業 市場 小売業-市場 (%) (%) (ポイント) 金額PI(円/1000人) 1,012.5 1,103.8 △ 91.2 △ 6.1 0.1 △ 6.2 点数PI(点/1000人) 6.7 7.0 △ 0.3 △ 8.4 △ 2.1 △ 6.3 151.5 157.7 △ 6.2 2.6 2.3 0.3 平均売価(円) 1-4.業界団体における POS データ活用 多くの小売業の業界団体では月次、年次で販売額の統計資料を作成している。しかし、こうした統計 資料の作成においては、POS データは使われておらず、調査票による売上の報告を加盟小売業から得る 手段が使われている(詳細は、各業界団体へのヒアリング結果を参照)。 106 POS データが業界団体で利用されない要因としては、下記があげられる。 ① POS データの送受信のシステム整備等に係るコストが大きい。 ② 月報、年報単位での集計であり、即時性が低い。 ③ 企業単位での売上等の調査であり、粒度が大きいため調査票への記入で十分情報が取得できる。 2.政府統計における POS データ活用の方向性 2-1.商業動態統計への活用 POS データは POS システムによって、商品がレジを通過した瞬間に記録される情報であり、正確性、 即時性が高いデータであると言える。そのため、商業動態統計を作成する場合に、対象となる各企業か ら POS データを受領することができれば、以下のようなメリットがある。 即時性を高めることができる:POS データを収集することで、データ収集から発表までの時間を短 縮することができるため、即時性の高い情報を政府統計として発表することが可能となる。 頻度を増やすことができる:即時性が高まることで、月次で集計・発表している商業動態統計を週 次で集計・発表することが可能となり、発表の頻度を高める=粒度を細かくすることができる。 集計等に係る工数を削減できる:POS データを自動で受領し、プログラムによって自動集計を行う ことで、データの収集、集計に係る工数を削減することができる。 正確性を高めることができる:人の手を介さないため、調査票への記入ミスや記入漏れを防ぐこと ができるほか、販売実績となるデータから統計を算出することにより、情報の正確性を高めること ができる。 以上のようなメリットから、商業動態統計の作成において POS データを活用することは有効であると 考えられる。 2-2.マクロ的な市場動向を把握する統計への活用(市場規模の統計) 前述のようにデータベンダーは商品単位での POS データを収集し、販売を実施しており、ミクロ的な 粒度での活用が前提となっている。そのため、多くのデータベンダーは業界全体の POS データを収集す ることはせず、サンプリング的にデータを収集している。 そのため、政府統計として POS データを活用し、新しい統計を創出するにあたっては、商品単位の粒 度ではなく、最小単位でも商品カテゴリー単位での POS データの収集を行い、マクロ的な市場規模の統 計を算出することが考えられる。POS データを活用し、より正確な商品カテゴリーごとの市場規模を算 出できることで、以下のような利点が考えられる。 ① 正確な市場規模の算出により、企業間の情報格差を減らし、よりフェアな競争を促進できる。 ② 企業に対し、より精緻な経営判断材料を提供できる。 ③ 国内市場の正確な把握により、政府における輸出政策立案、需要振興策立案等に活用できる。 107 3.POS データの収集・分析における課題 3-1.データ収集における技術的な課題 POS データ収集における技術的な課題としては以下の2点があげられる。 増大するデータ量の格納に関する課題:POS データは日々蓄積されるデータであり、収集を開始す れば、データ量は増加の一途をたどる。こうしたデータをどのように格納するのか検討が必要であ る。 データの受領方法に関する課題:オンラインでリアルタイムにデータを収集する場合、送信先の企 業とサーバー等の接続が必要になる。その場合の接続方法やシステム開発に関する費用的な面での 検討が必要である 3-2.データ収集における民間事業者とのコンフリクトにおける課題 POS データ収集においては、POS データを保有する小売業と POS データを収集、販売しているデー タベンダーの両方とのコンフリクトが発生する可能性がある。 <小売業とのコンフリクト> 小売業によっては、競争戦略も含め、自社の POS データを外部に出さない企業も存在する。そういっ た企業から POS データを収集する場合、企業側へデータを供与するメリットを提示するなど調整が必要 になる可能性がある 技術的な課題でも触れたように、POS データを政府に供与する場合、小売業側でもデータ送信インフ ラの整備や、POS データを送信するプログラム等を開発する必要があり、コストが発生する。こうした コストの負担方法等についてコンフリクトが発生する可能性がある。 <データベンダーとのコンフリクト> POS データを収集、販売しているデータベンダーにとって、出所が同じ POS データを政府が収集し、 統計として発表する場合、それを脅威として捉えられる可能性がある。対策として収集データの粒度が 異なることや、公表する政府統計がデータベンダーのサービスと競合しないことを理解してもらう必要 がある。 3-3.データ分析における商品マスター整備に関する課題 商業動態統計への POS データの活用、市場規模統計の作成等を考える場合、収集した POS データを 商品カテゴリー単位で集計・分析を行う必要があるが、そのためには商品マスター整備が必要となる可 能性が高い。これは、POS データの提供元の企業によって、商品分類が異なるためである。つまり、あ る小売業には存在するが、別の小売業には存在しない商品カテゴリーが存在する、あるいは同じ商品カ テゴリーであっても、そこに含まれる商品が企業ごとに異なっているということがありえるのである。 108 図表44 小売業による商品分類の違い イメージ そのため、より正確に POS データの集計と分析を実施していくためには、商品マスターの整備が必要 となる。商品マスターは、日々、新しい商品が市場に投下されていく中で常にメンテナンスが必要なも のであるため、その対応について検討を行わなければならない。 3-4.特定業態における POS データの分析・活用の試行 一例として、家電量販店の POS データの民間事業者の保有カバー率が極めて高いのであれば、当該事 業者の保有データを購入し、限局した範囲での分析等を行うことは可能であると考えられる。 次年度コンソーシアム形式で取り組む場合は、コンソーシアム内からデータを調達して、分析を行う 等のあり方が考えられる。 3-5.POS データの特徴を活かした分析 本事業の目的に照らして考えると、地域性の問題を取り入れた方が良いと考えられる。 例えば、POS データの分析について、単純に全体の数値を示すだけでなく、地域別の分析等を行うこと が考えられる。 さらに POS データであれば、家電業界において実質的なディスカウントとなるポイント制度に留意す る必要はあるが、価格と数量双方の観点からの分析(PQ 分解)が可能となる。 109 第4章 プラットホーム構築検討結果 1.第1回研究会におけるプラットホーム概要 <第1回研究会時点のプラットホーム概要(案)> 図表12 プラットホーム概要案(第1回研究会) 図表45 プレーヤー一覧 プレーヤー 想定主体 経済産業省 政府 主な役割 • プラットホームより整形済データ(新指標) 大臣官房 調査統計 G を受領し、新指標を算出、公表。 • 整形済データ(新指標)の対価として、プ ラットホームに利用料を支払う。 大学等 大学 • プラットホームに対して、技術提供、新指 企業の研究所 政府 標等の開発支援を行う。 • SNS データ等オープンデータの収集を行 公益法人 プラットホーム 民間事業者 う。 • POS データ等データ提供者からのデータの 収集を行う。 • 収集データの整形、新指標の算出、利用者 からの依頼に基づく分析を行う。 110 • 公的統計向けのデータ提供を行う。 小売企業 データサービス企業 • プラットホームに対して有償/無償データ POS データ等保有者 (データ提供者) ※将来的には IoT 関連 データ保有者も想定 の提供を行う。 • データ提供への対価としては、金銭または プラットホームによる分析結果の受領、既 存の調査票による調査の免除(データ提供 で代替、公的統計に関するもののみ)等が 想定される。 小規模小売業 利用者 • 整形済データまたはプラットホームによる 製造業者 学術機関 分析結果を購入する。 • 対価としては主として金銭の支払いを想 各業界の協会 定。 <第1回研究会時点の中長期計画(案)> 図表13 プラットホーム中長期計画案(第1回研究会) 111 2.第1回研究会における討議内容の詳細 以下の通りの概要で第1回研究会を実施した。 <日時> 2015年12月22日(火)14:00-16:00 <場所> 経済産業省別館 934会議室 <出席者> ・委員 元橋委員(座長) 、小巻委員、渡辺委員、本村委員 ・報告者 高安准教授 ・経済産業省 吉村審議官、上田参事官、高辻調査分析支援室長、齋藤参事官補佐(広報担当)、 杉浦統計審査専門職、藤本総括係長、吉田課長補佐(企画担当) ・事務局 萩原、武井 ・オブザーバー 高安教授、山田助教、佐野助教、榊主任研究員、折笠主任研究員、石橋研究員 <議題> ・新たな指標開発について ・プラットホーム構築について <討議内容> (1)POS データの収集について • 直近 5 年間で企業のデータ提供に対する姿勢に変化があると感じている。コストとリスクの バランスがかなり変化したのではないか。 • データを集めるためのコストが下がり、また POS データを提供することに関する実態のない リスク感について、技術的なリスクが何かという理解が高まってきたことで部分的に緩和さ れたのではないか。 • データを集めるというのは全体が分かるということであり、個々の事業体としても全体の中 の自社の相対的な位置が分かることがメリットになるはずである。 • 全体と個々のバランスについて、どういった指標化が出来るかが整理出来ると、優先的に取 り扱いやすい、あるいは事業者の理解が得やすくなり、データを収集しやすくなるのではな いか。 • 整理の軸としては、定量的なものの他、時期を知るというのもありえ、ビッグデータの活用、 AI の分析においては、リアルタイム性が高まってくるため、時期に関する予測精度がこれま でとは異なってくるはずである。何らかの変化が起きたというような、非定常性を見つける ようなものの方が理解を得やすいのではないか。 112 • コンビニ業界については、大手はデータも分析力も持っており、データをシェアすることで 得るものが無いと考えている可能性がある。 • 民間でデータを集めることが出来るのであれば、あえて政府が出る必要はないのかもしれな いが、データの収集を早めるための役割はあるかもしれない。 • 切り口や狙いを明確にし、既存のデータ活用の流れとは異なる独自の流れが出来ると良いと 思われる。 • 特定業界においてある企業が保有する POS データのシェアが高くても、マーケットを独占し ているわけではないので独禁法等は関係なく、現状は業界の中で高いシェアを持っている事 業者がデータを提供し、利用者が購入するという形になっている。 (2)指標・統計情報算出の主体、データの公共性について • 新指標または公的統計を算出は、プラットホームではなく、政府が実施し、プラットホーム はあくまで加工済みのデータを政府に提供するのが現実的であると思う。 • 特にオープンデータを使って算出する指標について、説明責任を現時点で十分果たせるか不 安な面があり、特に政府が予測値を出す場合には、その根拠や、算出方法について十分な説 明責任が果たせないかもしれない。一方で、折角の有用な参考データではあるため、プラッ トホームが算出、公表する場合もあると考えられる。アルゴリズム等について十分な説明が 出来るようになれば、政府が発表するという選択肢も考えうる。 • 既に民間で独自に出している指標もあるが、そういった民間が発表するものと、政府の発表 との間にあるような、中間的な指標のあり方は可能なのか定かではない。 • 指標の類型化の軸の整理の問題とも考えられ、収益を上げる目的であれば民間で実施すると いうことになるが、全体構造のバランスの変化や、何らかのリスクを事前に検知することが 目的となれば、公的なものとしても考えられる。 • 官民分担の話として、統計はある種のサービス、役務を提供しているということであり、そ れを政府が提供するか民間が提供するかということである。従前のように分担を意識しない 場合、指標等はほとんど政府が作っていた。 • ビッグデータの場合のように、民間の技術が先行して、新たな役務提供ができるということ が分かってきた場合に、それを官民どちらがやるべきかという方法論だと思われる。民間が 手を出せない範囲、そこに行政ニーズがあれば政府としてやっていくしかない。 • 民間か政府か、どちらが指標等を算出することが果たしてよいことかどうかを議論すればよ く、どちらが効率的か、全体最適としてどちらの方が効率性が高くなるかという議論である。 • 緊急通行システムなどのデータは、自動車メーカーは政府に販売するのではなく、提供する 形になると思う。よくあるのは、急ブレーキ、急発進の頻発地域等のデータを提供し、その 地域に信号を設置する、見えにくいところを無くすという対応を取ることがある。 • 統計というのはある意味一つの公共財とも言えるため、政府が購入して指標を算出するのか、 公共的な目的に対して民間はデータ提供をしていくべきなのかという議論がある。 • データの扱いに関して、会社としては提供したくとも、会社の立場として株主説明が難しい というケースもある。データを公共的な財として扱ってほしいという意見も聞いている。 113 (3)既存の商業動態統計との位置付けについて • 商業動態の区分の一例として小売りの 6 業種を上げているが、商業動態の小売業は年間で 100 兆円規模であり、この 6 業種を加算するだけでは全体像を示しているわけではないが、代表 的な業態の動きをみるという意味で、指標のような形で扱うことを考えている。 • 当該 6 業種のほとんどは業界統計もあり、なおかつ多くのところで POS が導入されており、 主要なところだけでも、参考として、週次で、ナウキャストに近いような形で公表していけ ないか。 • 週次であれば、消費税率の引き上げの影響把握などに有用と思われる。来るべき消費増税に 際して、このような週次の情報を流していけば有用なのではないか。 • ただし、商業動態とは切り離して出さないと、商業動態の予測指数として使われるとそれは また問題となり得る。 あくまでも消費増税の動きを見るための POS データからの情報であり、 かつ有用性が高いという言い方はあると考えられる。 (4)海外での取組、政府の関与について • 海外のスキャンデータの活用等において政府が関与するケースというのは大きく分けて以下 の 3 つがあると考えられる。 一つ目は、政府が作っている公式統計を作る時のソースデータをこれまでのデータからス キャンデータに置き換えるというもの。これは、業務の効率化に資するという理由で、流 通業者にお願いをするまたは法律に書いてしまって、流通業者からデータを提供してもら い、今までと同じ公式統計を作るという動きである。 このような動きはヨーロッパではかなり行われてきており、現状では小さな国が多いが、 ユーロスタットなどがイニシアチブを取りながら促進しており、おそらく近い将来ヨーロ ッパのほとんどの国、場合によっては ECB 等も含めて、CPI や他の統計等は使えるデータ は全て活用していく形に切り替わっていくのではないか。 同様に、オンラインのデータ活用も取り組もうとしており、これまでマニュアルベースで 取っていたものが電子的にとれるような形になっているのであれば、極力それを使って取 得し、行政の効率化をしようとしている。 二つ目は、米国の中央銀行である FRB において、いわゆるビッグデータを大量に購入する 契約を交わして取得し、分析用のスタッフも内部で雇い、そのための部署を作り分析を始 める動きである。 これは、新しい指標を作るというのではなく、株式市場が変化してきた際等において、そ の背景にあるものをマーケットよりも早く、最低限でも同時に経済の状態を知りたいと考 えており、分析結果は外には出さないと思われる。内部用の指標として、自身の政策を決 めるためのものとして活用していくものと思われる。 この動きは良いかどうかは定かではないが、中央銀行業務のように非常にスピーディに動 かなければマーケットに追いつけないというような状況下では、このような動きは広がっ ていくと思われる。日銀も遅れてはいるが同じようなことを始めようとしている。 114 三つ目は、いわゆる基準作り、規格作りである。日本なら JAN コード、米国ならアメリカ のコード体系をそれぞれ使っているが、例えば輸出入においては非常に不便である。同じ 商品でも、日本と米国では違うコードが割り振られ、追跡することが出来ない。 そこで、国際的な統一コードを作ろうという動きがあるが、そのコードは例えば、その商 品がお茶であるということを認識できるように分類等を紐付けようとしている。 今まで、国でもより小さな単位でも、商品を分類することは出来ておらず、統計の部署内 では統計で扱うものは出来ていたが、細かい領域では出来ていなかった。それを進める際 の旗振りを政府がやるというのは、これは民間では難しいので政府が果たすべき大事な役 割ではないか。 • 以上の 3 つが代表的な政府の関与の仕方であり、それ以外のケースで政府が介入する場合は 民業圧迫とならないよう十分に注意する必要があるのではないか。 (5)共通マスターについて • POS データ等を取扱う企業からは常々共通のコードが無いという話を聞いている。 • アイディーズ社の i-code は一民間企業によるプラットホームであり、必ずしも広がってはい ない。 • JICFS という、経産省が主導して、流通システム開発センターが、共通のコードを作ろうと いう取組が 30 年来やられていたかと思う。基本的には経産省主導の下で、共通のコードを作 ろうというのが、POS システムの普及に際しての経産省の大きな役割として期待されていた のだと思うが、JICFS はカバレッジが低く有用性が高くない。 • 民間企業においてもマスターを作る動きはあるが、個社ごとに個別に作っており比較可能性 が無い。政府が共通マスターを作成し、単体企業のデータとしてではなく、業態を跨いだ比 較なども可能となるのはメリットとなるのではないか。 • 流通システム開発センターが最初に目指した、辞書のようなものに立ち返って、共通のイン フラを作るということを、本研究会で考えていくのは一案ではないか。 • 民間の事業者から、共通のコードが無いので困っている、でも自分たちでは作れないという 意見は良く聞かれる。しかし民間はそこで終わってしまう。 • JAN コードにおいても、同じ商品でもラベルがほんの少し変わっただけでも、番号がどんど ん付け替わっていくため、同一商品を過去にさかのぼることが難しい。 • 共通マスターについては本研究会の検討範囲を超えてはいるが、重要な観点であり、例えば プラットホームを構築して POS データ等を集めたとしても、データを統合する必要があるた め、同じ事象に遭遇すると認識している。 (6)共通マスターに係る民間での取組みについて • あるマーケティング会社において、ドラッグストアとスーパーの情報を集めてきても、双方 の業態で牛乳の管理の仕方が違っており、同じ商品の牛乳であっても、ドラッグストアとス ーパーでどのように分類されているのかは把握できない。 • 業態に応じて、場合によっては同じ業態の中でも企業に応じて個別に管理しているため、共 115 通化が図られておらず、業態を跨いで、または企業を跨いで統合しようとすると、直ちに横 断的なデータの整理ができなくなる。 • 業態を跨いだ整理、統合は民間企業がやろうとしても、自社利益には直結しにくく、コスト に見合わない。 • テキストマイニングという手法を活用して商品の名前から JAN コードのようなコードに紐付 けをしようとしている取組みもあるが、例えば生鮮食品にもコードが振られるとすると、工 業製品でないものについて、本当にコードが付与できるかという問題がある。 • 例えばまいたけにしても、産地まであるいは鮮度まで特定して、1 年前の同じ名前のまいたけ と全く同じと言い切れるかどうかという問題がある。 • この例えでいうと、まいたけはまいたけとして一つの商品として取り扱うのであれば、それ では研究者にとっての有用性は高くはない。 • 生鮮食品の例でいえば、生産者、流通業者、小売業者と、それぞれが個別に情報管理してい る点がある。それらを繋ぐというのは業種の壁を超えないと難しく、有用な既存データを整 理して統合する発想は考慮しても良いと思われる。 (7)今後の検討の方向性について • 議論のスコープについて、統計を中心に考えているが、逆に言うと統計の限界というか難し さもある。制度等を変えるのに時間もかかるため、ここでの検討スコープは色々な新しい技 術を使って、世の中の経済の動向をより早くより正確に把握するためには何が適切か、どの ような手法があるか、また新しい手法と統計を組合せること、そのような可能性について議 論を進めるのが良い。 • 商業動態統計と第三次産業活動指数の一部を代替できないかという検討は、今後ぜひ検討を 進めていきたい。 • 世の中の動き、経済の動向を新しい指標によってより早くより細かく見られるということは、 種々の政策にとっても有用であるため、新しい技術を使ってどのようなことが可能になるか という検討はスコープに入れておくのが良い。 116 3.プラットホーム概要事務局案 <今年度の検討を踏まえたプラットホーム概要(案)> 図表14 プラットホーム概要案 <今年度の検討を踏まえた中長期計画(案)> 図表15 プラットホーム中長期計画案 117 第5章 調査・検討結果のまとめと今後の方向性 1.第2回研究会における討議内容の詳細 以下の通りの概要で第2回研究会を実施した。 <日時> 2016年3月7日(月)17:00-19:00 <場所> 経済産業省別館 931会議室 <出席者> ・委員 元橋委員(座長) 、小巻委員、本村委員 ※渡辺委員へは第2回研究会後に個別説明を実施 ・経済産業省 吉村審議官、上田参事官、下堀政策企画委員、高辻調査分析支援室長、 間中サービス動態統計室長、齋藤参事官補佐(広報担当)、杉浦統計審査専門職、 藤本総括係長 ・事務局 武井 ・オブザーバー 大竹課長補佐(総括・企画担当) 、吉田課長補佐(企画担当) <議題> ・最終報告書概要について <討議内容> (1)POS データについて • ID-POS データは「POS データ等」の中に含まれているのか、また含まれるとすると、報告 書概要上で、POS データにユーザーが紐付かないことが課題の一つとして挙げられているが、 これは ID-POS データで解決してしまう。POS データ等とはという補足説明があると良いと 思われる。 • 本来は ID-POS データも含めた収集が出来るのが理想的ではあるが、現状は POS データです ら収集困難な状況となっている。具体的な収集等のイメージは描けてはいないものの、ター ゲットとしては ID-POS データを含んで考えている。 • POS データ等、各種のデータについて、データの性質に基づいて、それぞれのデータの位置 付けについて関係性を整理し、説明を補足されると良いと思われる。例えば、SNS データは 時間的な情報が含まれ、POS データには店舗コードという形で位置情報が含まれている。両 者を合わせて活用することで、時間の情報と空間の情報とを補完的に、プラスアルファの情 118 報として付加していけるのではないか。 • POS データにかかる本年度の結論としては、プラットホームに POS データを取り込む構想は 困難であるが、民間から購入等して統計へ活用することについては継続して検討は進めるべ きであると認識している。最終報告書には、それらの結論をより整理して明記する必要があ る。 • SNS データを使った指標は新指標として開発し、POS データについては当初は商動(商業動 態統計)の代替等が考えられていたが、これが困難であるということが本年度の調査で判明 した。しかしながら、POS データを用いて新たな指標や地理的な分析等を検討していくこと は可能と考えられる。 • 一部の業界においては、民間事業者で非常に高いカバー率で POS データを収集しているケー スもあるため、そこに限局したうえでデータの分析等を進めていくということが考えられる。 予算等との関係もあるが、範囲を限定して先ずは分析してみるということが重要である。 • 日銀では POS データを CSPI 等の統計に活用している。 • 報告書の目的に照らして考えると、地域性の問題などを取り入れた方が良いと考える。例え ば POS データの分析について、単純に全体の数値を示すだけでなく、地域別の分析等を行う 必要があるのではないか。 • POS データについては、次年度以降、検討するスキームとしており、POS データの購入も含 めて深掘りをしていく予定である。 • 分析を外注し、必要な結果だけを受け取るということも考えられる。 (2)対象データについて • SNS データといえるかは分らないが、検索キーワードのランキング等についても、対象デー タに含めても良いかもしれない。 • より幅広い視点で見た場合、SNS データの範囲をもう少し広くとらえ、本年度の新指標の開 発だけに限定せず、利活用の仕方についてより広範な調査を実施することも考えられる。 • IoT データは当初の検討スコープの中では具体的な活用の方法が、アイデアベースですらなか った。しかしながら、事務局としては、将来を見越した課題事項として捉えておく必要があ るために本年度の報告書上にも記載している。 • IoT データとしては、工場の受発注など、昔からあるサプライチェーンまわりのデータも含ま れるはずであり、内閣府の景気ウォッチャー等他省庁が所管するものよりも、経産省の本来 業務に近いデータも存在しているのではないか。ただし、データの入手の難易度が高いとい う課題はありうる。 • データの分類の問題と思われるが、現状は、SNS データはインターネット系のデータ、POS データは小売系のデータ、IoT はそれ以外という位置づけとなっているように見受けられる。 • 今後は、自動車の位置情報や健康系の情報など、IoT データの分類が新たに出てくるものと思 われる。 • 消費者サイドの観点からは、IoT データは活動量計のデータなど無意識にデータが取得できる ものもあり、これらは特に地域での活用等に向いている。 119 • IoT データという言葉が意味する範囲は広いため、より詳細な説明が必要である。 • IoT データについては、他省庁等の動向を注視するというよりも、利活用の可能性を検討して くという方が、方向性が近いかもしれない。 • 諸外国の例示のように、例えば価格の情報を用いて CPI のような何らかの指標を作成するこ とを検討することは有意であると思われる。 • データソースとして公的統計というのは、無料で利用できるデータであり、これは IoT とも 違うデータソースでありビッグデータの一つである。 • 今あるデータと関連付けるものとしては、気象データはニュートラルなデータとして有効で はないか。 (3)プラットホーム(事業組成)について • もともとのプラットホームの考えとしては、新しい組織等を作ることを想定していたが、ヒ アリング等において民業圧迫を懸念する意見が複数聞かれたことを受け、民間事業者の活力 を最大限活用し、その機能を政府として使用する形に方針を転換している。 • コンソーシアムでやるということだが、これは元請けのような取り纏め業者がいて、その下 に幾つかの事業者が再委託先として連なるイメージと認識している。この場合、元請けとな る事業者は全体の取り纏めを実施するほか、現状想定される事業組成案のうち、自身で実行 可能な事業については再委託をすることなく、元請け自身で実施することも考えている。 • オープンコンペティション、クラウドソーシングのような形でアイデアを集める形を想定し ておかないと、元請けが決まった段階で何を行うかが決まってしまうのではないか。 • IoT 推進ラボではビッグデータ解析コンテストを実施していた。全てがそのようになる必要は ないが、そういったチャネルを用意しておくことは有効である。 • プラットホームの中でも、水平統合、垂直統合についての議論は出てきており、協調領域に 関する水平統合の必要性は運用の仕組みの中に入れ込んでおいた方が良い。 • 再委託先は、元請け事業者が経産省と相談の上で仕様を決定し、公募・入札することを想定 している。 • 今までのように PMO を作っていてもあまりうまくいかないということから、コンテスト等の 仕組みづくりを工夫しているところがある。入札で事業者が決まった段階で一年間何をやる かが決まってしまうことは避けた方が良いと考えている。 • 入札時の仕様に書かれていない新しい内容を上手く盛り込んでいけるような仕組みにするこ とが重要である。元請け事業者が公募する形があり得ると思う。 • 利益誘導等が行えないよう、個別の事業を実施したいのであれば再委託先として関与するこ とにして、元請け事業者は自身で事業を実施できないような体制にした方が良いと思われる。 • ビッグデータに関しては、競争領域と協調領域があるが、このうち競争領域についてはまさ に国として実施していかなければならないと考えているが、これをどの様に実施してくか、 そのやり方については民間のアイデアを入札等で取り入れていく必要があると考えている。 • プラットホームのメタな部分のデザインが検討事項として必要な可能性がある。現状ではミ クロとマクロの話が個々に検討されているように見受けられ、それらをつながるための議論 120 が必要なのではないかと思われる。 • なるべく具体例があった方が良。例えば家電量販店の POS データのカバー率が高いのであれ ば、それを購入して限局した範囲での分析を行う等。 • シナリオを明確にしたうえで、コンソーシアムの中でデータを調達して、分析を行う等のあ り方が考えられるかも知れない。 • プラットホームが諸外国にあるかというご質問に対しては、現時点では見受けられなかった ということかと思うが、本年度は民間を活用した仕組みづくりの一案としてプラットホーム という案を考えている。ただし、これは統計に使うのか他の用途に使うかによって、あり方 は異なってくると思われる。 • 用途に応じて本事業の場合は統計にとって有用なあり方を検討していく必要があり、国だけ が実施するのではなく、適宜民間の活力も利用していくことを考えていく必要がある。 • SNS データを用いた指標について、これは統計として捉えられるかどうかという点には検討 の余地がある。統計として捉える場合、実際に指標を作成・ブラッシュアップしていくプロ セスには複数の民間事業者の知恵を入れる必要があるが、政府としてはもう少し前面に出て も良いのではないかと考えている。 • 本事業については、統計法に基づく、報告者から報告頂く統計というものから、それ以外の 既に存在しているデータを使った社会、産業の状況をいち早く把握する指標等までスコープ を広げており、既存の統計以外の新しい統計情報についても、政府として検討等を進めてい く。 • 経産省が景気動向指標に対応する参考指標を取扱うことについて、統計の一つとして考えて いく場合、内閣府や日銀などとも意見交換をしながら実施する必要性を検討した方が良いの ではないか。 • 景気動向指標を置き換える意図はなく、より適時に景気の動向が把握できる参考指標として 公表することを考えている。 • オープンガバメントの話との関連付けとして、政府としては API を公開したり、また統計ポ ータルなどを準備したりしており、このようなダッシュボードのような機能も重要かと思う が、その様な議論は既になされているのか。 • 元々は総務省を中心に、オープンガバメントとして、政府系のデータを情報提供するように という指示があり、進捗には差があるものの、e-Stat 等の取組を実施している。 • 市町村がやっているハッカソンのようなオープンデータの取組とは、親和性が高いのではな いかと思われる。よって、市町村もユーザーとして対象に含めることで、より有用性が増す のではないか。 121 2.調査・検討結果のまとめ <各種データに係る調査・検討結果一覧> 図表16 各種データに係る調査・検討結果一覧 (1)POS データ ① 新指標への活用については、本年度の事業の結果、特定領域の業態であれば民間事業者が 相当程度 POS データを収集することが出来ていることが判明したため、必要に応じて POS データ等を調達することで、利活用の検討が可能であると考えられる。 ② データ共有については、既に民間で同様のサービス展開が複数なされており、また、業態 によってはデータの共有に対する障壁が相当程度高いものもあり、何らかの事業等を推進 することは現時点では困難である為、先ずは当該障壁の解決策等を検討する必要がある。 (2)SNS データ ① 新指標への活用については、本年度の事業の結果、民間事業者からのデータの調達ならび に当該データを用いた新指標の算出の実現性に目途が立っており、次年度以降は当該指標 を継続的に算出し、社会に公表、承知していくべく、制度設計や仕組みづくりを最優先で 対応する。 ② データ共有については、実現性の観点からは何らかの方法が考えられるものの、現在想定 している利用者(中堅・中小企業等)において、明確なニーズが存在するかの確認を予め 実施する必要がある。 (3)IoT データ ① 内閣府等で研究会・検討会が実施されており、また民間事業者において、個別または共同体を 組成して、基準作りや利活用の方法等について検討、模索している状況にあり、経済産業省と しても、今後広く社会へ普及しうるような利活用の可能性について、引続き調査・検討してい く。 122 3.プラットホーム構築の次年度以降の方向性 (1)プラットホーム概要(事業組成案) 図表17 プラットホーム概要(事業組成)案 ※プラットホームにて取扱う指標に関しては、他府省等の指標を参照または参考とする可能性 もあるため、⓪ ビッグデータの統計業務への利活用検討の検討会においては、他府省等関係 者の参加を得て進めることを想定 (2)次年度計画(案) 図表18 次年度計画案 123 二次利用未承諾リスト 報告書の題名 平成27年度ビッグデータとその解析 技術を活用した新指標の開発事業(プ ラットホーム構築検討) 報告書 委託事業名 平成27年度ビッグデータとその解析 技術を活用した新指標の開発事業(プ ラットホーム構築検討) 受注事業者名 株式会社NTTデータ経営研究所 頁 6 14 14 15 18 19 65 67 68 69 75 76 78 81 83 85 87 89 91 93 95 100 100 105 106 109 図表番号 1 4 5 6 10 11 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 42 43 44 タイトル 参考資料:ビッグデータの構成データ 国連グローバルパルスとSASによる調査の分析フロー 国連グローバルパルスとSASによる調査結果イメージ 国連グローバルパルスとSASが作成したダッシュボード 商業動態統計(スーパー)とサンプルPOSデータ(金額PI)の前年同月比推移 POSデータ関連民間企業一覧 CPI作成のための重みづけの項目別比較 2015年スイスのCPI、カテゴリー別の支出割合 2011年ノルウェーのCPIの収集方法の割合 スウェーデンにおける価格調査の方法 流通システム開発センターのデータ結合システム インテージのデータ結合システム 日経POS情報システムのデータ結合システム カスタマー・コミュニケーションズのデータ結合システム アイディ―ズのデータ結合システム ショッパーインサイトのデータ結合システム Segment of One & Onlyのデータ結合システム ジェイビートゥービーのデータ結合システム NTTデータのデータ結合システム ライフスケープマーケティングのサービス ドコモインサイトマーケティングのデータ結合システム POSデータのサンプル数の多寡による前年同月比(金額PI)の差異 - 食品 POSデータのサンプル数の多寡による前年同月比(金額PI)の差異 - 日用品 一般的なPOSデータの構成 小売業による市場と自社の実績比較のイメージ 小売業による商品分類の違い イメージ 124