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世界を早足で巡り歩く人材

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世界を早足で巡り歩く人材
GLOBE TROTTING TALENT(本誌 P42)
世界を早足で巡り歩く人材
正しいアプローチを選択すれば、世界のマーケットを巡り歩ける人材を、地域に埋もれさせてしまうことなく組織の財産になる
人材へ一変させることができます。
2014 年は、世界各地でトップクラスの人材が動く年になることが多数の調査で示されています。しかし、有能な人材への需要が
高まるほど、人事部門は自社の逸材の流出を食い止めなければならず、担当者にとっては頭痛の種です。
人事コンサルティング業務をグローバルに展開しているマーサーのレポート(2013 Worldwide International Assignments
Policies and Practices;WIAPP)では、海外での雇用機会を求める人が増加していることが報告されました。2010~
2011 年には半数以上の企業で短期および長期海外派遣の仕事が増加しました。同社の昨年の調査では、調査した企業の
70%が短期赴任の増加を、55%が長期赴任の増加を見込んでいました。主な任地は、米国、ブラジル、中国、英国、オースト
ラリアであり、真にグローバルな今日の雇用市場を反映するものでした。
人材パイプラインの構築という点からいえば、海外勤務の可能な人材に対するこうした需要の高まりは、脅威と機会の両者をもた
らします。世界の雇用市場ではトップクラスの人材はかつてないほど雇用機会を得ることができますが、リクルーターは人材プールに
登録されている人材にジョブハンティングへ向けて具体的に動き出すよう助言する前に、人材プールの中から最善の人を探し出さ
なければなりません。求人と人材とをうまくバランスさせていくことが成功への鍵になると考えられます。世界規模(20 ヵ国 26 事業
所)でブランドコンサルティング業務を展開するランドー・アソシエイツ社のキャロルアン・ホワイト氏(チーフタレントオフィサー)は、
「国際的なキャリアの機会を常に提供できることは、当社の継続的なトップクラスの人材探しのアドバンテージになっている」と語って
います。
エースを繋ぎとめる
コンサルティング業務を行っているバーシン・バイ・デロイトは、海外で就職可能な人が増えている一方で、特別なスキルをもつ人材
は世界的に不足し、かつ特定地域へ集中していると指摘しており、雇用主が期待しているよりも能力の低い人材がグローバル人
材プールから雇われていくことになる可能性があると警告しています。また、同社は、人材を見いだすことのできる地域で業務を展
開していくのが望ましいとしています。
同社の報告書 Human Resources, Learning and Leadership: Our Ten Predictions for 2014 では、世界の人材
を引きつける人材ネットワークの構築を企業に推奨しています。一方、この報告書では、雇用主を選択できるほどの人材はほんの
一握りにすぎないため、多くの企業はこうした人材をみつけることができず、人材の獲得戦略にいくぶんの妥協が迫られる可能性が
あると警告しています。「トップクラスの人材の採用」あるいは「競争に勝てる人材の採用」は、もはや解決策にはなりません。つまり、
「人材の獲得競争は終了し、勝者は人材であった」ということです。
こうしたバーシン・バイ・デロイトの見解が正しく、将来の成功を下支えするはずの国際雇用プランが人材の不足によって妨げられる
とすると、既存の人材の流出を防止することがますます重要になってきます。したがって、企業は、この機会をグローバルな異動が可
能な社内の優秀な人材の関心をかきたて世界規模の海外戦略へ引き込んでいく機会と考えるべきです。「一箇所に定着するこ
とを好まない人材を昇進とともに海外の職務に就かせることによって、会社は彼らの在職期間を延長することができます」とホワイト
氏は語ります。
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5 大陸の事業所、6,000 名の従業員を擁するギリアド・サイエンス社(バイオ医薬品研究・開発会社)で欧州・アジア・中東担
当の人材開拓部門ディレクターを務めるグラント・ワインバーグ氏は、前述のホワイト氏の見解に一致し、次のように語っています:
「(正しいビジネス上の理由で)既存の人材を世界各地へ赴任させることは会社の成長、社内文化の維持に寄与するとともに、
優秀な人材を新たな環境・習慣へ曝し育成していくことにもつながります」。さらに同氏は、「この方針は長期的観点からも好ましく、
これらの人材は会社の様々な事業所で経験を積み複数の国々を兼務できる人材へ成長し、グローバル企業における職責を全う
しプレッシャーに耐えられるだけの人材になっていきます」と語っています。
海外へ赴任することによってもたらされるエキサイティングかつチャレンジングな経験が自身の異文化理解、コミュニケーションスキル、
機敏さ、新たなあるいは未知の物事を解決する能力を向上させていくうえで貴重であると考えるのは、高度なスキルをもち将来的
に見込みのある人材であれば至って自然なことです。海外派遣は、しばしば人間性のテストにもなり、独立心は確実に学習の継
続を促すのみならず、チャンスをつくる、あるいは難局を乗り切るうえでの会社への依存心を払拭します、とワインバーグ氏は説明し
ています。
こうしたスキルは、その人材にグローバルパスポートを与えてくれます。さらに、海外赴任は、しばしば次の海外赴任につながります。
各赴任先での職務は新たな経験であり、個々の新しい職務はその人材の能力をさらに高めます。また、組織におけるこうした人
材は磁石のような役割も果たし、他のトップクラスの人材を引きつけてきます、とワインバーグ氏は語ります。組織にとっての問題は、
このように世界を巡り歩ける人材の引き留めが困難なことです。
海外赴任の可能な人材を社内に引き留めておくためには、流出を防止しようとするのではなく、転職して他の地域へ移動するのと
同じような機会を、移動に飢えた人材に社内異動という形で与えるのがしばしば最も有効です。「これは、国際的キャリアパス
(社内におけるキャリアアップのための進路)をつくり、有能な人材を引きつけ、かつ引き留めていこうとするものです。ただし、これ
には切れ目のない継承計画と事業所間の協力が必要になります」とホワイト氏は語ります。しかし、これに成功すれば、その人材
を組織の財産に変えていくことができるとともに、将来ある地域で高度なスキルをもつ人材が即座に必要になった場合に、組織内
で速やかに適任者を見いだすことが可能になります。
こうした理由から、ランドー・アソシエイツ社では人材の引き留めを新規スタッフの採用と同等に重視しています。「ポジションに空き
が生じた場合には、常に私達は外部の候補者を探す前に社内での人材調達を試みます。言い換えれば、私達の事業所の多く
でランドーネットワーク内の他の事業所出身のスタッフが数名働いているということになります」とホワイト氏は語っています。
現在ランドー・アソシエイツ社では、グローバルモビリティに焦点を当てたいくつかの取り組みを行っており、その中には多数の事業所
間における職務交替も含まれています。例えば、同社では 3 ヵ月に一度、従業員 1 名がモスクワオフィスに配属されます。「このポ
リシーは、特定のスキルをもつ人材を地元でなかなか見つけられず、クライアントへ他のマーケットに関する情報を十分に提供できて
いない事業所を助けるうえで役立っています」とホワイト氏は説明しています。
マーサーの WIAPP レポートによれば、雇用主が海外から人材を雇う理由として最も多かったのは、高度な専門スキルをもつ人材
の不足です。社内採用の重要性は、次のような一貫した条件下で特に必要となります:キャリアマネジメントプログラムやリーダー
シップ開発プログラムを提供する、知識を確実に現地へ移動させる、あるいは現地にない特定の経営スキルを提供する。
ますます多くの企業が様々な地域に事業を展開していく中にあっては、文化的視点と専門的かつ高度なスキル、グローバルな機
動性をもつマネージャーのいる企業のほうが圧倒的に有利です。「なぜならば、組織全体あるいは部門が成功するためには、他地
域でどのように仕事がなされるかを理解していなければならないからです」とワインバーグ氏は語ります。さらに同氏は「国際経験豊
富なリーダーは重んじられるとともに、良好な結果を残し、究極的に在職期間も長くなります」と付け加えました。
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従業員がグローバルな機動性をもつことの重要性を認識していない人事担当者あるいは人材紹介業務担当者がいるとしたら、
次のように警告したいとワインバーグ氏は最後に語りました:「あなたの人材は、事業展開している地域全体の広さと同等に幅広
い経験をもつ人でなければなりません。あなたがグローバルモビリティを通じて人材を開発していくことを選択しなくても、他の人は選
択するでしょう」。
ケーススタディ
海外を巡り歩く人生
LinkedIn 社グローバルセールス開発部門でディレクターを務めるマーク・ディック氏は、これまでの国際経験が自身のキャリアに重
要な影響を与えてきたと語っています。「海外勤務は異なる文化圏での経験を与えてくれたことに加え、仕事における思考の幅を
広げ、さらに、国際ネットワークの構築を可能にしてくれました。私は、海外勤務を通じて個人的にも仕事のうえでも成長し、職務
上の様々な局面でグローバルな視点で考えられるようになりました」とディック氏は言います。
ディック氏は英国生まれですが、オーストラリアの LinkedIn およびフェアファックスメディア社で営業職として勤務し、現在はサンフラ
ンシスコに居住しています。ディック氏の最初の海外勤務は、在学していたスコットランドの大学を通じて米国の求人に応募したこと
に始まりました。「キャリアを発展させていく過程で、私は自身を開発していく方法として積極的に国際経験を積む努力をしてきまし
た」とディック氏は語ります。
同氏は、自身のキャリア開発においてリーダーシップスキルと社交スキルの洗練を最も重視してきました。「共通の目標を達成する
ために人々を動機付け鼓舞していく能力は、世界のどの地域でも、また、彼らの文化や背景が何であれ、成功のために不可欠で
す」と同氏は語っています。
グローバルな職務で成功していくためには、国際的に生きていくことを積極的に受け入れ、そのような機会が与えられたことに興奮
し楽しんでいく姿勢が必要とディック氏は言います。「求められているスキルをもっていれば、海外勤務の機会に恵まれます。また、
異文化の地への順応性は、新たな環境へ速やかに溶け込むこと、そして職務で成功することを可能にします」と語りました。
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