Comments
Description
Transcript
最新号のダウンロードはこちら
《特集》地域の暮らしを守る治水事業 記録的な集中豪雨が多発する昨今、水害から地域の暮らしを守るため、 四国各地で着々と治水事業が行われています。 その中から、 今回は河川改修事業、地すべり対策事業と治水施設の記念事業をご紹介します。 香川県 大渡ダム竣工30周年 吉野川 徳島県 ● 愛媛県 那賀川 深瀬地区河川改修事業 及び県道改良工事 ● 高知県 ● 仁淀川 南小川左岸地区 地すべり災害対策工事 那賀川深瀬地区改修事業合同竣工式 (国土交通省那賀川河川事務所) 徳島県阿南市深瀬地区は、那賀川河口から16㎞上流 に位置し、約9.5haの狭い地形にある山間の農村地域で す。 ここは、無提地区であったため、過去より洪水による浸 水被害が頻発しており、平成16年度には浸水被害が4回 発生し、 中でも台風23号による浸水被害は甚大で、床下・ 床上浸水の他、徳島県南の主要道路である県道阿南鷲敷 日和佐線が冠水し、家屋が孤立する事態となりました。 そ こで、深瀬地区の治水安全度と道路の機能の向上を目的 に、平成19年度から道路との合併による堤防整備に事業 着手し、平成28年3月に完成しました。 完成した深瀬地区改修事業 今回整備された堤防は、 全長約780mです。 洪水時の那賀川の最大水位が地面から約4.5mになることから、 堤防の高さは 約6mになっています。 川へ排水する樋門も2基設置し、 洪水時には樋門を閉じてポンプ車で内水を川に排水します。 近くを走る県道阿南鷲敷日和佐線も同時に改良しました。道幅が約3mと狭い個所があったため、 同地区にあった現道を 堤防上に移し、道幅約7mの片側一車線となりました。 整備前 整備後 整備前 整備後 平成28年5月1日、事業完成を祝って 「那賀川河川改修深瀬地区改修事業竣工式」 が、徳島県、阿南市、那賀川河川事務 所の主催により行われました。式には国交省や県、阿南市の職員や地元住民ら160名が出席。石橋四国地方整備局長の式 辞に始まり、 飯泉徳島県知事、岩浅阿南市長らが 「度重なる水害で、道路の冠水や家屋の浸水に悩まされてきた地元住民に とって、堤防の完成は悲願と言っても過言ではない」 などと挨拶されました。 その後、来賓紹介、工事概要説明、電報披露が なされ、無事閉式しました。 竣工式(四国地方整備局長 式辞) 竣工式(阿南市長 挨拶) 竣工式の後、徳島県および阿南市の主催で、県道阿南鷲敷日和佐線のテープカットと歩き初めも行われました。 また、河 川敷では地元深瀬地区および阿南市主催で餅撒きが行われ、 地元の人々約300名の人々が歓声を上げました。 竣工式(テープカット) 竣工式 (歩き初め) 南小川左岸地区地すべり災害対策工事完成式 (国土交通省四国山地砂防事務所) 高知県長岡郡大豊町の怒田・八畝地区地は、 日本でも最大級の破砕帯地すべりが分布しており、昭和57年より直轄地す べり災害対策事業を実施してきました。 中でも南小川左岸地区では、平成26年8月、台風11号、12号の連続した2つの豪雨により、長さ50m、幅45mの斜面崩 壊が発生しました。崩壊箇所の上部には、人家が存在しており、一時期、2世帯4人の方々に避難指示が出されました。 また、 地すべりにより崩壊した土砂により可動閉塞が発生した場合、上流への湛水や決壊による下流への洪水流が発生する可能 性があり、 これらの被害を防止するために、 「南小川左岸地区地すべり災害対策工事」 が始まり、平成28年8月に完成しま した。 工事は、横ボーリング工3,077m、 アンカー工107本の施工を行いました。現場は、急斜面・急勾配で作業ヤードも狭く、 進入路の確保も困難なことから、無人バックホウや、 ケーブルクレーン等を活用して施工を行いました。 また、地すべり活動が 継続する中での施工となったため、地盤伸縮計や警報機等を設置し安全対策にも十分に留意しました。工事完成後は地盤 伸縮計に変位がないことから、対策の効果が発揮されていると考えています。 事業着手前 事業着手後 工事の完成を受けて、平成28年10月1日、 「南小川左岸地区地すべり災害対策工事 完成式」 を、大豊町、高知県、国土交 通省の共催で行いました。完成式には地域住民、工事関係者の方々等、約30人が参加。 また、完成式に併せてパネル展示や 現地説明会を実施しました。 現地説明会 パネル展示 完成式では岩崎大豊町長から 「平成26年8月の降雨では、大豊町で20箇所の地すべりが発生した。関係機関の皆様に は、迅速に対応いただき大変感謝している。今回被災を受けた箇所は地すべり対策が未実施の箇所であったが、対策を実施 しているエリアについては、被害が発生しなかった。対策の重要性を再認識した」 との挨拶がありました。 南小川南岸地域防災推進協議会の西村会長からは 「地域の安全・安心確保のため、迅速に対応いただいた。 また、地すべ り対策を実施している箇所は被害もなく大変感謝している」 との謝辞をいただきました。 この工事の完成が、南小川左岸地区の安全・安心の一助となったものと考えています。今後も、怒田・八畝地区地すべり対 策事業を推進し、地域の安全・安心のさらなる向上を図ってまいります。 岩﨑大豊町長挨拶 西村南小川南岸地域防災推進協議会会長挨拶 アニバーサリープロジェクトから「大渡ダム竣工30周年イベント」(国土交通省大渡ダム管理所) 国土交通省では、完成から一定期間を経過した治水施設について、地域の方々とその生い立ちをふり返り、果たしてきた 役割や地域の水害・土砂災害リスクについて再認識していただく、 「アニバーサリープロジェクト」 を推進しています。 そのプロジェクトの一つとして、昭和61年に竣工し、今年で30年を経過する 「大渡ダム」 において、 ダム見学会とパネル展 が開催されました。 7月3日、大渡ダム竣工30周年イベントとして、親子による大渡ダムの見学会を実施。 ダム施設の説明や30年間の働きを 紹介し、普段は目にすることのできない操作室、堤体の内部を見学していただきました。参加者は大人90人、子ども67人。 子どもたちからは、 「すごい迫力」 「ゲートが大きくてびっくりした」 「ダムの中って涼しい∼」 「普段入れない場所に行けてよ かった」 など。 また、 保護者の方からは、 「勉強になった」 「ダムの役割を初めて知った」 など、 たくさんの感想をいただきました。 8月16日は、 「茶霧湖(さぎりこ) まつり」 に併せて、 ダム施設の説明やパネル展を実施しました。 パネル展では大渡ダム完成 から30年の歩みを紹介し、多目的ダムとして大きな効果を上げ、下流域各方面に貢献してきた姿を写真などで伝えました。 大石仁淀川町長からは、 「適切な管理を続けて来られた大渡ダム管理所の功績に感謝するとともに、 引き続き、 地域のために ご尽力くださいますよう切にお願い申し上げます。」 というコメントをいただきました。参加者は150人を数え、 「昭和38年や 昭和50年のような洪水が発生した際には、 大渡ダムより被害が軽減されることを知ることができた」 「完成から現在までの大 渡ダムの軌跡を知ることができてよかった」 という声をいただきました。 大渡ダム見学風景 大渡ダムパネル展示 大渡ダム管理所では、 こうしたイベント時の見学者などに手作り冊子をお渡ししています。 この冊子は、 「30年の歩み」 とい うタイトルで、 A4判12ページ。事務所のパソコンやプリンターを使って、職員が手作りしたもので、 ダムの全景や建設中の現 場写真の他、6600万㎥を誇る貯水量といったデータ、 ダム機能の説明なども紹介しました。 この冊子が皆様の大渡ダムへ の理解を進める手立てになればと、期待が寄せられています。 川のトピックス 力を合わせ「水防災意識社会を再構築!(国土交通省四国地方整備局) 平成27年12月10日に社会資本整備審議会会長から、国土交通大臣に対して 「大規模氾濫に対する減災のための治水 対策のあり方について∼社会意識の変革による 「水防災意識社会」 の再構築に向けて∼」 が答申されました。 この答申を踏まえ、新たに 「水防災意識社会 再構築ビジョン」 として、全国の直轄河川とその沿川市町村 (109水系、730 市町村) において、 平成32年度を目途に水防災意識社会を再構築する取り組みを行うこととしました。 四国では国が管理している8水系において、河川管理者・県・市町村等からなる協議会を新たに設置して、減災のための目 標を共有し、以下のハード・ソフト対策を一体的・計画的に推進しています。 ○住民目線のソフト対策 ・住民等の行動につながるリスク情報の周知。 ・事前の行動計画の作成や訓練の促進。 ・避難行動のきっかけとなる情報をリアルタイムで提供する。 ○洪水を安全に流すためのハード対策 ・優先的に整備が必要な区間において堤防のかさ上げや浸透対策などを実施する。 ○危機管理型ハード対策 ・越水等が発生した場合でも決壊までの時間を少しでも引き延ばすよう堤防構造を工夫する対策の推進。 住民の皆様にも、 日頃から水防災の意識を高めていただくよう、 また水防災の取り組みに対しご協力をいただくようお願 いいたします。 第1回吉野川上流大規模氾濫に関する減災対策協議会 住民目線のソフト対策 洪水を安全に流すためのハード対策 危機管理型ハード対策 もっと女性が活躍できる建設業を目指して「女子大学生による工事安全パトロール」(国土交通省徳島河川国道事務所) 建設関係の工事現場は、 男性の職場というイメージが広く一般に定着しています。工事現場のトイレや更衣室等、女性が 働きやすい労働環境が整備されていない現状があります。 そこで、徳島河川国道事務所では、工事現場の安全・衛生面の向 上に関する取り組みを推進することを目的として、建設系女子大学生に参加していただき、工事現場の安全パトロールを実 施しました。 実施日は、平成27年10月30日、徳島大学の女子大学生7名、国土交通省徳島河川国道事務所の女性職員3名、建設会 社の女性職員5名に参加いただきました。 安全パトロールでは、女性用トイレ、作業員休憩所、喫煙場所、 ゴミ箱の分別状況、昇降階段や通路等について女性目線 で点検を行ってもらい、 女性用トイレの感想や通路・階段の利用のしやすさ等、 さまざまなご意見をいただきました。 安全パトロール後には、大学生の他にも、建設現場の担当職員や会社関係者、徳島河川国道事務所の職員等24名が参 加し、意見交換会を実施しました。学生さんからは、建設会社への就職に関する内容や女性が建設会社で働く上での課題 などについて質問が出ました。質問に対し、建設会社で働いている女性職員の方からは、 ご自身の経験を話していただくな ど、活発な意見交換を行うことができました。 こうした安全パトロールを通じて、大学生が建設現場の実務を体験するとともに、現場の女性技術者と交流できる場とし て活用いただければと考えています。 今後も多くの皆さんに参加していただけるよう、取り組みを継続してまいります。 現場点検 バックホウの試乗 絶滅危惧種を救え! 「ハクセンシオマネキ」のお引っ越し(国土交通省徳島河川国道事務所) 吉野川下流域では、東南海・南海地震など今後数十年から百数十年に一度程度の発生が予測されており、現在、鳴門市 里浦地区の河川堤防において地震津波対策の工事を行っています。 この工事現場に、環境省レッドリスト絶滅危惧Ⅱ類、徳 島県レッドデータブック準絶滅危惧の 「ハクセンシオマネキ」 が生息していることが確認されました。 そこで、河川・渓流環境 アドバイザーの酒井勝司四国大学名誉教授にアドバイスをいただき、工事を行うことにしました。 現地の状況より、回避という選択ができなかったため、工事の影響範囲外へ お引っ越し をしてもらうことに。 お引っ越し は、暖かくなりカニの活動が活発になりだした、 4月下旬の4日間で行いました。作業を行ったのは、酒井勝司アドバイザーの ご指導により、工事関係者、事務所職員約20。 「ハクセンシオマネキ」 は、一度巣穴に隠れてしまうと数十分も姿を見せない ほど警戒心が強く、動きが俊敏です。初日は十数匹しか、捕獲することができませんでしたが、翌日からは捕獲の技術も向 上。最終的には、全72匹を捕獲し、 旧吉野川と吉野川へ無事に引っ越しを行うことができました。 河川工事の実施にあたっては、今後とも河川環境へ配慮し、 多自然川づくりに取り組んでまいります。 捕獲状況 捕獲したハクセンシオマネキ 水難事故から子どもたちを守る「着衣泳講習会」を開催!(国土交通省大洲河川国道事務所) 平成20年7月、兵庫県都賀川で小学生2人、保育園児1人を含む5人が急激な増水により逃げ遅れ、 川に流され亡くなる という、痛ましい水難事故が発生しました。事故当時、 出水の直前まで晴れていたものの、上流域で活発化した前線の影響 により突発的で局所的な集中豪雨が発生し、瞬く間に川の水位が上昇したのです。 このような悲しい事故を繰り返さないた めにも、国土交通省では、平成21年度より7月1日∼7日を 「河川水難事故防止週間」 と位置づけ、河川での水難事故防止に 関する啓発活動を重点的に行ってきました。 大洲河川国道事務所においても、平成21年度に流域の関係機関で肱川水系安全利用推進連絡会を設立し、水難事故 防止の専門家を講師に招き、小学生を対象とした出前講座を開催しています。平成24年度からは、 同じ水難事故防止の取 り組みを行う地元消防署・小中学校と協力し、 川の楽しさを伝えるとともに、 その怖さについて十分理解を深めてもらおうと、 プールを利用した体験型の 「着衣泳」講習会を毎年開催してきました。 これは、万一の時に自ら危険を回避する能力を習得す ることを目的としています。今年度は、 これまでに最多となる、流域の小中学校7校からの要望があり、年間水難事故件数の 50%以上が発生している6月から8月の期間において講習会を開催しました。 「着衣泳」 と聞くと、 「衣服を着て泳ぐ」 ことをイメージしがちですが、実際には 「衣服を着た状態で浮く」 ということを学ん でもらいます。講習会では、 まず水中歩行などの水慣れから始め、着衣状態のまま水中で身動きを取ることの難しさを体験 してもらい、落水から背浮きへ移行する練習や、 身近にあるペットボトル等の浮力を持った日常品を使用した救助方法を学 びます。 この背浮きを学んでもらうことは、非常に重要です。 もし不意に海や川へ落水してしまった場合、絶対に慌てず、救助が来 るまで 「浮いて待つ」 ことを徹底的に指導しています。本講習を通して、 自分が落水してしまった時にはとにかく浮いて待つこ と、落水者を発見した時には通報し浮き具を投げ入れるなど、水難事故に遭遇してしまった時に取るべき行動を取り、 かけ がえのない命が守れることを願っています。 今後も、各地において、 これまでにないような局地的豪雨による急激な河川の増水など、今まで以上に水難事故発生の危 険性が高まることが予想されます。 また、近年の自然志向・アウトドア志向を受けて河川をキャンプ等の活動の場として利用 する市民の方々が増加しております。過去の事例を教訓に、河川利用者自らが安全確保を行い、危険回避するための判断力 を身につけてもらえるよう、 今後も地域と一体となり水難事故ゼロに向かって、継続的な啓発活動に努めてまいります。 出前講座 ペットボトルを使用した背浮き練習 ラフティング世界選手権プレ大会を開催 (国土交通省吉野川ダム統合管理事務所) 徳島県三好市の大歩危・小歩危渓谷は、激流と穏やかな流れが交互にみられる変化に富んだ景勝地で、透明度も高く、 水量も豊富でラフティングには最適の流域です。 この地で、 日本国内初の世界選手権大会が平成29年10月に開催されるこ ととなり、平成28年10月、 ラフティング世界選手権2016プレ大会が開催されました。 大歩危・小歩危渓谷には、 ラフティング体験に訪れる方が多く、美馬市・三好市・つるぎ町・東みよし町の2市2町で受け入 れている体験型教育旅行では、農家民泊の生活体験と併せて多くの中学・高校生がラフティング体験を楽しんでいます。吉 野川には体験ラフティングを提供する民間業者が19社あり、年間で約3∼4万人もの人がラフティングを目的にこの地を訪 れています。近年はラフティング事業を営む従業員 (リバーガイド)等の定住化もみられ、観光振興や地域の活性化に大きく 寄与しています。 こうした中、吉野川のPRと地域活性化を目的に平成20年からは毎年「大歩危リバーフェスティバル」が開催されてきまし た。 また、地元女子ラフティングチームの「ザ・リバーフェイス」が、平成22年オランダ世界選手権で優勝し、地元のラフティン グ熱も近年益々高まってきました。 そこで、 ラフティングを通じた地域の振興を図るため、 ラフティング世界選手権の開催をIRF世界ラフティング協会へ申請 したところ、平成29年10月3∼9日の7日間、 日本国内で初の世界選手権大会が徳島県三好市の吉野川中流域で開催され ることが決定しました。 この大会の参加国数は30ケ国以上、参加チーム80チーム、参加人員560人の規模を予定し、参加 国数、参加人員ともこれまで例をみない規模の外国人を対象とする大会でもあり、 これを機に現在、約2万人の外国人観光 客が訪れている大歩危・小歩危地区の情報を広く海外に発信できる環境を整備し、 さらなる誘客に努めるとともに、他の観 光資源のPR拡大と併せて三好市全体の観光振興の普及促進に取り組む予定です。 今年、平成28年10月6∼10日の4日間に開催されたラフティング世界選手権2016プレ大会は、来年開催される本大会 の日本代表チームの選考を兼ねて開催されたもので、吉野川中流域(徳島県三好市山城町・高知県大豊町) を舞台に、国内 18チームおよび海外からオーストラリア1チームの総数19チーム、約130人が激戦を繰り広げました。今大会では、総合成 績1位のチームが来年開かれる世界大会の出場権を手にすることとなっており、 オープン男子では「ラフティングチームテイ ケイ (神奈川)」、 オープン女子では「ザ・リバーフェイス (徳島)」、 ジュニア男子では「TAMA(東京)」、 マスターズ男子では「 R6Masters(高知)」、 マスターズ女子では「SakuLa(徳島)」、 ユース男子では「三好ラフティングチームユース男子(徳島)」 がそれぞれ日本代表に決定しました。来年開催される本大会でもさらなる飛躍を期待し、素晴らしい大会にしていただきた いと願うばかりです。 競技実施状況 大会ロゴマーク (案) 表彰式状況(スプリント・オープン男子) すこやか川散歩 ひろ み がわ 広見川 愛媛県南部から高知県へと流れる広見 川は、1級河川四万十川の支川(渡川水 系) で、2番目に大きな河川。総延長は56.3 き ほく たか とぎ ㎞で、愛媛県鬼北町の高研山 (1055m) や きり たて 霧立山(1096m)などを水源とし、鬼北 町、松野町を貫流し、幾つもの支川を合わ せ、高知県四万十市江川崎で四万十川に 合流します。 今回は、奈良川などの支川も含め、流域 の立ち寄りスポットを紹介し、広見川源流 域へと向かいます。 エリアには、4つの道の 駅があり、 どんな物産や味に出会えるのか 楽しみ。寄り道しながら、のどかな川の風 景をたどります。 広見川中流域「下広見橋」 からの風景 高研山 1,055m 至 楠原 197 至 大洲 至 大洲 ⑪節安ふれあいの森 197 ⑧安森洞そうめん流し 明星ヶ丘 文化の里 ⑩道の駅 日吉夢産地 285 ⑨善光寺薬師堂 宇和島市 車 自動 松山 道 441 三 広見川 ⑦広見轟の甌穴群 ③道の駅 広見森の三角ぼうし 川 間 57 鬼北町 320 282 ①道の駅みま 至 三間 霧立山 1,096m 283 愛媛県 ②奈良川緑地公園 高知県 至 宇和島 282 ⑥岩谷縄文遺跡 近永 駅 至 宇和島 320 奈良川 ④成川渓谷 出 目 駅 瀬戸内海 381 ( し ま ん JR予 とグ 土 松丸 駅 リ 線 ー ン ラ イ ン ) ⑤道の駅虹の森公園まつの 至 窪川 広見 381 川 重信川 愛媛県 高知県 肱川 仁淀川 松野町 広見川流域 N 四万十川 宇和海 441 0 1 2 3 4 5 km 四万十川 至 中村 土佐湾 ① 道の駅みま 広見川の支川の一つ、三間川の流域に 位置する 「道の駅みま」。松山自動車の三 間ICから降りてすぐにあり、四万十川観光 の拠点として、 さまざまな施設が充実して います。 無農薬や低農薬販売にこだわった新鮮 な 野 菜 などが 並 ぶ「 農 産 物 直 売 コ ー ナー」、 オリジナル商品も並ぶ 「特産品コー ナー」、 バイキングを楽しめるレストラン 「畦 みちの花」。 さらには、三間出身の創作版画 家として世界的にも活躍した 「畦地梅太郎 記念美術館」、農機具の父と呼ばれた 「井 「道の駅みま」三間川側からの外観 関邦三郎記念館」 も併設されています。電 動アシストなど自転車のレンタサイクルも あるので、四国霊場札所の龍光寺や仏木 寺などの周辺スポットも散策可能です。 県道31号宇和三間線は、秋にはコスモ スがゆれる花街道として知られ、清酒「コス モスのささやき」 など、 コスモスにちなんだ オリジナル商品も人気です。 道の駅の傍らには三間川が流れ、青い 「道の駅みま」 の傍らを流れる三間川 山並みに向かって緑の川岸が続きます。 そ の土手には懐かしい土の道。 ひととき、 そぞ ろ歩いてみましょう。 ●道の駅みま 問い合わせ先:☎0895-58-1122 定休日:年中無休 (1月1日のみ定休) 営業時間:9時∼18時 ●お食事処 「畦みちの花」 定休日:第1火曜日 (繁忙期は営業) 営業時間:9時∼17時 人気のランチバイキングは11時∼13時30分 ●畦地梅太郎記念美術館・井関邦三郎記念館 休館日:火曜日 (祝日の場合は翌日) 問い合わせ先:☎0895-58-1133 開館時間:9時∼17時(受付は16時30分) 道の駅みまから約11㎞ 特産品(清酒コスモスのささやき・吟醸ジュレ大番) 畦地梅太郎記念美術館館内 ② 奈良川緑地公園 三間川は奈良川を合わせ、やがて広見 川に注ぎ込みます。今回は、奈良川の上流 も訪ねることにします。 その前に立ち寄った のが、鬼北町役場の裏手に広がる 「奈良川 緑地公園」。その名の通り、奈良川沿いに 整備された河岸の広場。10月第2土曜の 前夜祭や翌日曜に開催される町最大のイ ベント 「でちこんか※」 の野外会場です。 イベ ント当日は、特産品が並ぶ「びっくり市」 や 「ジャンボきじ鍋」 のふるまいなどでにぎわ います。 奈良川緑地公園と奈良川 ※ 「出てきませんか」 を意味する方言 問い合わせ先:☎0895-45-1111(鬼北町建 奈良川緑地公園から約0.5㎞ 設課都市計画・管理係 内線2411・2412) ③ 道の駅広見森の三角ぼうし 広見川散策においては、拠点となる 「道 の駅森の三角ぼうし」。当駅のシンボルは 巨大な赤鬼。全国で唯一、 自治体で 「鬼」 の 字が付く町「鬼北町」ならではのお出迎え です。 建物の中には、農家から新鮮な野菜が 届けられる 「産直市」、鬼北名物のユズを 使った特産品や鬼グッズなどが並ぶ 「特産 赤鬼が迎える 「道の駅森の三角ぼうし」 売場」、鬼北のキジ肉を使ったカレーや ラーメンもおすすめの 「彩り茶屋」 がありま す。 ●道の駅広見森の三角ぼうし 問い合わせ先:☎0895-45-3751 休館日:毎週月曜日 (祝日の場合は翌日・8月無 休) 営業時間:8時∼18時 ●彩り茶屋 「道の駅森の三角ぼうし」特産品売り場 営業時間:9時∼17時 (LO16時30分) 道の駅広見森の三角ぼうしから約9.2㎞ 鬼北町ゆかりの鬼製品とゆずゼリー 地元名物のキジ肉を使ったカレー&ナン ④ 成川渓谷 奈良川緑地公園から、県道316号、国道 320号を通り、奈良川上流にある成川渓谷 を目指します。 そこは、鬼ヶ城連峰から流れ 出る清流が3㎞にわたって渓谷美を生み出 す森の中の癒やしスポット。 渓谷内にある宿泊施設「成川渓谷休養 センター」 には、食事だけでも利用もできる レストランがあり、鬼北特産のキジ肉を 成川渓谷休養センター 成川の清流で桑の葉を洗う風景 使った料理も味わえます。ロッジやキャン プ場、 アルカリ性単純泉の 「高月温泉」 も人 気です。温泉で癒やされた後は、清流沿い を散策してみましょう。夏の清流では、桑の 葉を洗う風景を見ることも。乾燥させてお 茶にするのだそうです。 ●成川渓谷休養センター・キャンプ場・ロッジ 問い合わせ先:☎0895-45-2639 休館日:第2第4火曜日 (祝日の場合は翌日・8 月無休) レストラン営業時間:11時∼15時 ●高月温泉 成川渓谷 問い合わせ先:☎0895-45-2516 休館日:第2第4火曜日 (祝日の場合は翌日・8 月無休) 営業時間:11時∼21時 成川渓谷休養センターから約13㎞ ⑤ 道の駅虹の森公園まつの 「道の駅広見森の三角ぼうし」 から国道 381号を南へ向かい、今回3つ目の道の駅 に寄り道です。松野町に入って間もなくの 国道沿いにあるのが「道の駅虹の森公園 まつの」。 ここには、淡水魚の水族館「おさ かな館」があり、四万十川を代表する幻の 魚「アカメ」 を見ることができます。愛らしい コツメカワウソの姿や、時間によってはペン ギンの散歩も見逃せません。 環境に配慮したリサイクルガラスの工房 かざ ね 「風音」やその製品を展示販売するコー 道の駅虹の森公園まつの ナー。松野町近隣で獲れた鹿の肉「まつの ジビエ」なども並ぶ「かごもり市場」。旬の 野 菜や果 物を使ったスムージーもある フードコーナ。四万十の青さのりが入った ゆ ずり は うどんなどがあるレストラン 「遊鶴羽」は、 毎月第2、第4火曜日の11時∼14時は農 家レストラン (ランチバイキング) を開催。完 熟トマトのもぎとり体験ができる 「森の国 ファーム」 もオープン。松野町は梅の産地と しても知られ、梅にちなんだ土産も味わっ ガラス工房 「風音」展示コーナー おさかな館コツメカワウソ てみたいもの。 道の駅の裏には、広見川を楽しむ親水 公園が。 ここから広見川は、幾つかの支川 を集めて蛇行し、 やがて国道沿いに流れな がら高知県に入ります。そして、四万十市 西土佐で四万十川と合流します。 ●虹の森公園 問い合わせ:☎0895-20-5006 おさかな館水槽「アカメ」 定休日:毎週水曜日 (祝日・春休み・GW・夏休 み・冬休みは営業) 営業時間:10時∼17時 虹の森公園から約6㎞ 特産の梅を使った人気商品 アカメ ⑥ 岩谷縄文遺跡 (岩谷) 「道の駅虹の森公園まつの」から県道 280号を北に向かいます。すると、鬼北町 立泉小学校の近くに、広見川の東岸河岸 段丘から発掘されたという 「岩谷遺跡」が あります。 ここは、約3千年前、縄文人が暮 らしたという場所。 おびただしい数の縄文 土器や石器などが出土し、石を置いた配石 遺跡も発見されました。 これは、ハヤ、 ウナ ギ、ナガエバなどの豊漁を祈念した祭祀 (さいし)跡ではないかと考えられているそ うです。発掘跡近くには、縄文時代の住居 復元された縄文時代の住居 が復元され、そのすぐ傍らを流れる広見 川。太古から人々の暮らしを支えてきた清 流は、今なお夏のアユ漁、 ウナギ漁、秋のカ ニ漁で知られています。 岩谷縄文遺跡から約5.5㎞ 「岩谷遺跡」 の傍らを流れる広見川 とどろき おう けつ ⑦ 広見轟の甌穴群 広見川は急流が多く、幾つかの箇所で 甌穴が見られます。甌穴とは、川の岩石面 にできる円形の穴。水流が川床のやわらか い部分を浸食して浅いくぼみができ、そこ に入った小石が渦の流れなどで回転し、 さ らに丸みを帯びた穴を拡大させたというも の。 カメ穴とかポットホールとも呼ばれてい います。広見川ではこの他に、延川バス停 付近や大滝橋下でも甌穴が見られます。 中でも轟橋付近の 「広見轟の甌穴群」 は 最も規模が大きく、橋の下流域に幅80m、 広見轟の甌穴群 長さ160mにもわたって分布。穴の大きさ も直径3cmのものから2mに及ぶものまで あります。 広見轟の甌穴群から約8㎞ 広見轟の甌穴群 流れがつくった甌穴 やす もり どう ⑧ 安森洞 広見川の支川、 安森川の上流に車を走ら せると 「安森洞」があります。昭和34年に 「風穴」 を調査中、鍾乳洞が見つかり、動物 の骨がたくさん出てきました。 今は洞窟から 流れ出す清流を利用して、 夏は 「流しそうめ ん」 や 「ニジマス釣り」 を楽しめます。土日祝 日限定で、おにぎりや釣ったニジマスを塩 焼きにして味わうことも。週末の身近な避 暑地としてにぎわいます。 ●安森洞そうめん流し 問い合わせ先☎0895-48-0830(安森ロマン 安森洞 亭)/期間外は三島石油店☎0895-48-0136 期間:6月最終日曜日∼8月末日 営業時間:10時∼17時 安森洞から約5㎞ 安森洞内部 ニジマスの塩焼き ⑨ 善光寺薬師堂 「安森洞」 から再び国道320号に向かっ て走り、国道手前で旧道に入ると、 「善光寺 薬師堂」があります。薬師堂は、室町時代 の禅宗様式の特徴を備えた建物で、四国 では最南端に位置する貴重なものとして、 国の重要文化財に指定されました。堂の中 には厨子があり、その中に木造薬師如来 坐像が安置されています。 薬師堂創建の年代は定かではありませ んが、 修繕の際に、 薬師如来像から正平13 年 (1358) という修理銘が出てきました。 こ れにより、 それ以前に開かれたと推測され 善光寺薬師堂(国の重要文化財) ています。地元では、寿永4年(1185) の壇 ノ浦の戦いに敗れた北九州の豪族が、 薬師 如来を造立したと伝わり、 それが薬師堂の 始まりともいわれてきました。 山里にたたずむかやぶき屋根のお堂、 そ の始まりは今なお謎に包まれています。 善光寺薬師堂から約8㎞ ⑩ 道の駅日吉夢産地 薬師堂から、国道320号を東へ向かい ます。道沿いには青空を映してゆったりと 流れる川の風景が広がり、 「 古用(ふるよ う)」 のバス停近くでは、板を渡しただけの 沈下橋やウナギ漁の仕掛けを見ることも。 この国道の先に、 「 道の駅日吉夢産地」が あります。 この道の駅には、 オリジナルの地元商品 や新鮮な野菜も並ぶ 「特産品売り場」 や地 元の食材を素材としたメニューが自慢の 「お食事処武左衛門」 があります。屋内の焼 道の駅日吉夢産地 きたてパンコーナーや、手作りシャーベット などを販売する屋外の「ゆずシャーベット ハウス」 もおすすめ。 ちなみに 「武左衛門」 は、江戸時代に農民一揆を率いて圧政に 抗議し、年貢の引き下げなどを認めさせた という郷土の恩人。8月には、一揆を再現し た 「武左衛門ふる里まつり」 が行われます。 また、 「 武左衛門」 を冠したみそなど、特産 品のユズが入った土産物も、武左衛門同 様に根強い人気です。 特産品のユズなどを生かした人気商品 夢産地は、支流の一つである日向谷川 が、広見川に注ぎ込む合流点のすぐ先にあ ります。 次は合流点に戻り、 広見川に沿って 県道285号を源流域へと向かいます。 ●道の駅日吉夢産地 問い合わせ先:☎0895-44-2340 休館日:1月1日以外店内無休 営業時間:8時∼18時 ●お食事処武左衛門 定休日:火曜日 営業時間:9時∼17時 (LO16時) 道の駅日吉夢産地から約16㎞ せつ やす ⑪ 節安ふれあいの森 県道285号線に入ると川の流れは細くな り、 渓谷という風情。 さらに山に分け入り、 そ の先にあるのが 「節安ふれあい森」 です。 ここ は、広見川の源流域にある広大な自然公 園。別荘気分を味わえるバンガローやキャ ンプ場があり、 バーベキューを楽しむにも最 適。 体験学習施設では、 うどん打ち体験にも 挑戦でき、 宿泊も可能です。 夏はそうめん流しが有名で、近くのワサ ビ田で採れたという新鮮なワサビやスダチ などを自分ですりおろし、 ミョウガやショウ 節安ふれあいの森 ガ、青シソなどの薬味をトッピングして味わ うことができます。 今回の広見川の旅は道も行き止まりに なり、 この森が終点。広見川源流域のすが すがしい空気を思う存分吸い込んで帰路 につきます。 ●節安ふれあいの森 問い合わせ先:☎0895-44-2990/開園日以 外は日吉支所 ☎0895-44-2211 節安ふれあいの森ロッジ 開園期間:ゴールデンウィーク・7月中旬∼8月 末日 ●節安ふれあいの森そうめん流し 問い合わせ先:☎0895-44-2990/開園日以 外は日吉支所☎0895-44-2211 開園期間:7月中旬∼8月末日 営業時間:10時∼15時 トピックス 平成28年7月29日から31日の三日間にわたり、全国 各地の河川最上流部に位置する自治体で構成する 「全 国源流の郷協議会」加盟24市町村の関係者が松野町 に集い、源流域の現状と取り組み、源流の魅力や役割に ついて活発な意見を交わしました。 第1日目は四万十川の源流域であり、足摺宇和海国 立公園の一部、滑床渓谷を視察。 2日目、午前は加盟24市町村のうち、19市町村の首 長による首長サミットが行われ、午後は全国源流サミッ トの開会となり、開催セレモニーの後、開会挨拶、来賓祝 辞。続いて 「コミュニティデザインについて∼人と人のつ 滑床渓谷視察 ながりを軸にした地域づくり∼」 と題したコミュニティデ ザイナーの山崎亮氏の基調講演。 「源流 守る・活かす・ 生きる」 をテーマに、東京農業大学教授・宮林茂幸氏を コーディネーターに開催地域の四万十川から4人のパネ ラーによるパネルディスカッションが行われました。 その 後、場所を移して 「全国源流の集い」が開かれました。 「全国源流フェア 予土うまいもの合戦」 と銘打ち、 「道の 駅虹の森公園まつの」 では、全国源流の郷協議会加盟 市町村の特産品と愛媛・高知両県の特産品を使用した 首長サミット 食文化の紹介が一般来場者も対象に行われました。 3日目の最終日は、滑床渓谷散策、松野町巡りの2つ のツアーと記念植樹が行われ、第7回原流サミットは盛 会裏に幕を閉じました。 開会式会場風景 開会式来賓祝辞 パネルディスカッション 全国源流フェア 予土うまいもの合戦