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2007 年度予算案発表と同時に公表された PART 評価
2007 年度予算案発表と同時に公表された PART 評価結果 平成 18 年 2 月 21 日 独立行政法人法日本学術振興会 ワシントン研究連絡センター 米国では、毎年大統領予算案の発表と共に、「プログラム評価採点ツール(Program Assessment Rating Tool: PART)」と呼ばれる連邦プログラムの評価結果がOMBから発表さ れる。ここではPARTについて簡単に説明した後、2007 年度予算案発表時に公表されたNSF、 NIH、DOE、NASAの 4 省庁のPART結果の中で評価が高かったプログラムを紹介する。(参 考Website:http://www.whitehouse.gov/omb/expectmore/about.html) 1.PART 概要 PART は、ジョージ・W・ブッシュ大統領が 2002 年に発表し、2004 年度の大統領予算案 発表時(2003 年冬)から導入された連邦プログラムの評価システムであり、各省庁から提 出された情報やデータをもとに、行政管理予算局(Office of Management and Budget: OMB) が評価分析を行った結果を発表している。 PART では、以下の 4 分野でそれぞれ複数の評価のための設問が設けられており、それに ついての返答をまとめて、OMB 審査官が各プログラムに対して評価を下す。 (1)Program Purpose & Design(プログラムの目的とデザイン) プログラムの目的の明確さと、プログラムのデザイン手法に関する評価。質問には、 根拠法などのプログラム担当省庁の責任範疇外のものも含まれる。 (2)Strategic Planning(戦略的計画) プログラムの計画、優先順位決定、リソース割り当てに関する評価を行なう。各プロ グラムについて、適切なパフォーマンス評価基準と、野心的でありつつも達成可能な 目標が設定されているか、また予算とパフォーマンス目標との関連付けがあるかにつ いても評価される。 (3)Program Management(プログラム管理) プログラムの目的と目標の達成に向けて、各省庁が効率的にプログラムを管理してい るか、またそれを示すことができるかを評価。特に財務管理、プログラム向上評価、 パフォーマンスデータ収集、プログラムマネジャーのアカウンタビリティーが重視さ れる。 (4)Program Results/Accountability(プログラムの成果、アカウンタビリティー) プログラムが長期的目標と年間目標の達成に向かっているかどうかが評価対象とな る。同じようなプログラムと比較して当該プログラムは結果を出しているか、また、 第 3 者機関による評価結果でパフォーマンス効果が実証されているかどうかについ ても評価される。 評価結果は、「効果的(Effective)」、「やや効果的(Moderately effective)」、「まず まず(Adequate)」、 「効果的でない(Ineffective)」、 「評価不可能(Results not demonstrated)」 の 5 段階で示される。(評価不可能とは、データ不足等で評価ができない場合を指す) OMB が 2007 年度に発表した PART では、793 件の連邦プログラムが評価対象となってお り、その結果は表1の通り。 表1 2007 年度の PART 評価結果 対象プログラム数 効果的(Effective) やや効果的(Moderately effective) まずまず(Adequate) 効果的でない(Ineffective) 評価不可能(Results not demonstrated) 1 793 15% 29% 28% 4% 24% 2.国立科学財団(NSF) NSF では 10 件のプログラムが PART の対象となっており、その全てが「効果的」と評価さ れた。表2は効果的と評価された全プログラムとその内容である。 表2 PART で効果的とされた NSF のプログラム プログラム名 プログラム内容 研究施設の建設(Construction and 研究施設、研究船舶、南極に設置されている望遠鏡 Operations of Research Facilities) などの建設・維持・運営を実施する。 連邦研究開発センター(Federally Funded FFRDC とは、連邦政府が研究や運営に対する支援を 行なうセンターで、民間委託機関に対して実際の運 Research and Development Centers: 営が委託されているものを指す。 FFRDC) 基礎科学技術研究(Fundamental Science NSF の中で中心的なプログラムで、科学・数学・工 and Engineering Research) 学分野の教育と研究を幅広く支援する。 情報技術研究(Information Technology 演算、ネットワーク技術、ソフトウェアや情報技術 Research) が及ぼす社会への影響など、情報技術分野の研究を 支援する。 ナノ規模科学技術研究(Nanoscale Science ナノテク分野の研究、教育、研究機器の開発に対す and Engineering Research) る支援を実施する。 極地研究機器、施設、補給支援(Polar 南極に設置された研究所での研究を包括的に支援す Research Tools, Facilities and Logistics) る。 環境による生物の複雑系研究(Research 複雑な生物・環境システムを理解することを目的と on Biocomplexity in the Environment) した研究を支援する。 個別研究者への支援(Support for 大学院生への奨学金など、科学・数学・工学分野を Individual Researchers) 専門とする学生、教育者、研究者を支援する。 研究所への支援(Support for Research 科学・数学・工学のレベルの向上のために、大学や Institutions) 研究所などに対して組織的な支援を提供する。 小規模研究協力支援(Support for Small 科学・数学・工学分野の教育を強化するための大学・ Research Collaborations) 地方自治体などから構成される協力体制に対して支 援を実施する。 http://www.whitehouse.gov/omb/expectmore/effective.html 3.国立保険研究所(NIH) NIH では、4 件のプログラムが PART の対象となっており、3 件が「効果的」、1 件が「や や効果的」と評価されている。表3は効果的と評価されたプログラムとその内容である。 表3 PART で効果的と評価された NIH のプログラム プログラム名 プログラム内容 NIH の建築物・施設(NIH – Buildings and 研究に必要な施設の建設計画と設計を支援し、既存 Facilities) の施設や機器を有効利用する。 NIH 外の研究プログラム(NIH – 大学や民間に対する研究補助金の拠出や、研究事業 Extramural Research Programs) 委託を実施する。対象となる分野は、基礎研究、初 期段階の医療実験、研究機材や実験動物の開発・購 入など幅広い。 NIH 内の研究(NIH – Intramural Research) NIH 所属の研究者による研究事業を支援する。バイ オ・医学療関連研究の支援だけでなく、若手研究者 のトレーニングも実施する。 http://www.whitehouse.gov/omb/expectmore/effective.html 2 4.エネルギー省(DOE) DOE では 50 件のプログラムが PART の対象となっており、その内 11 件が「効果的」、26 件が「やや効果的」、7 件が「まずまず」と評価され、「効果的でない」は 2 件、「評価不 可能」は 4 件である。表2は効果的と評価されたプログラムとその内容である。 表2 PART で効果的とされたエネルギー省のプログラム プログラム名 プログラム内容 先端シミュレーション・演算(Advanced 米国が保有する核兵器備蓄の老朽化や安全性を分析 Simulation and Computing) するため、高速演算可能なコンピュータによるシミ ュレーションを実施。 基礎エネルギー科学(Basic Energy 材料科学、化学、地球科学、工学や生物学の研究を Sciences) 支援する。また年間 7,000 名以上の研究者にユーザ ー施設を提供している。 生物学・環境研究(Biological and 気候変動、環境改善、エネルギーに関係する微生物 Environmental Research) の遺伝子やたんぱく質研究、放射線生物学、医学な どの分野の研究に対し支援を実施。 核兵器に転用可能なプルトニウム生産の 核兵器テロが起こる可能性をできるだけ減らすた め、毎年 1.2 メガトンの兵器用プルトニウムを生産 廃止(Elimination of Weapons-Grade 可能なロシアの 3 つの原子力発電所を閉鎖し、その Plutonium Production Program) 代替として石炭発電所を建設する。 国際核物質保管・協力(International 核兵器テロを防ぐため、旧ソビエト連邦内に残る核 Nuclear Materials Protection and 弾頭と核分裂性物質の厳重な保管を実施。 Cooperation) 国家核安全保障局:大量破壊兵器不拡散 大量破壊兵器の拡散を防ぐため、旧ソビエト連邦、 のための国際的イニシアティブ(National リビア、イラク、その他の地域で失業中の大量破壊 Nuclear Security Administration: Global 兵器の専門家を対象に補助金を提供し、兵器開発に Initiative for Proliferation Prevention) 関係させずに、安定した職業につけるよう支援する。 国家核安全保障局:海軍原子炉(National 米海軍に対し、安全で軍事的に有効な原子力推進プ Nuclear Security Administration: Naval ラントを提供し、安全且つ信頼性のある運営を支援 Reactors) する。 国家核安全保障局:兵器利用―準備キャ 設計から製造に到るまでの核兵器備蓄に関連する技 ンペーン(National Nuclear Security 術を開発・提供する。また、国家核安全保障局の兵 Administration: Weapons Activities – 器複合施設の運営コスト削減につとめる。 Readiness Campaign) 核不拡散と国際安全保障(Nonproliferation 安全保障上の懸念がある輸出を制限し、さらに、国 and International Security) 際的な核不拡散にむけて、政策(条約、合意、相互 査察など)の策定や、審議・活動実施に対して技術 的・政策的な助言を行う。 原子核物理学(Nuclear Physics) 原子核加速器の運転、基礎原子核物理学や天体核物 理学などを含む関連分野の研究を支援する。 戦略的原油備蓄(Strategic Petroleum 米国のエネルギー安全保障を強化するため、7 億バ Reserve) レルの原油を備蓄し、海外からの原油輸入量、また は国内での生産量がなんらかの理由で減った場合、 この備蓄を利用する。 http://www.whitehouse.gov/omb/expectmore/effective.html 3 5.航空宇宙局(NASA) NASA では 9 件のプログラムが PART の対象となっており、その内 2 件が「効果的」、4 件 が「やや効果的」、3 件が「まずまず」と評価されている。表5は効果的と評価されたプロ グラムとその内容である。 表5 PART で効果的とされた NASA のプログラム プログラム名 プログラム内容 NASA の天文学・宇宙物理学研究(NASA 宇宙がどのように始まり、進化してきたか、また物 Astronomy and Astrophysics Research) 質、エネルギー、空間、時間に限界があるかを理解 することを目的とし、データ収集のための無人宇宙 探査機を開発・運行させる。 太陽系探査(Solar System Exploration) 太陽系の惑星や月などの誕生と進化、地球外生命の 存在などを調査するため、無人宇宙探査機を打ち上 げ、航行させる。 http://www.whitehouse.gov/omb/expectmore/effective.html 4