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Glow discharge cleaning system T.Sasajima,K.Kodama,M.Honda,T.Arai,K.Masaki M.Morimoto and S.Takahasi JT-60 Facilities Division 2 Department of Fusion Facilities Naka Fusion Research Establishment Japan Atomic Energy Research Institute グロー放電洗浄装置 1. はじめに 臨界プラズマ試験装置(JT-60)では高温プラズマを生成し、長く保持する必要があることから高温プラズマの妨げ となる不純物の混入を低く抑えることが重要である。そこで、JT-60 では真空容器内の清浄化を図るためグロー放電洗 浄を行っている。 グロー放電洗浄は、陽極をグロー放電電極、陰極を真空容器としてヘリウムガスを使用したグロー放電を行い、陰 極スパッタリング現象によって第一壁タイルに含まれる不純物ガス(酸素等)の脱ガスを行うものである。 高温プラズマ生成の際には不純物ガスの放出をできるだけ抑えなければならないため、グロー放電洗浄を頻繁に行 うことから、真空容器内に陽極となる電極を据え置き簡易にグロー放電洗浄ができる構造でなければならない。また、 陰極スパッタリングは陽極からでたイオンを陰極に叩き付けて陰極の気化ガスを取り出すため洗浄能力を向上させる ためにもグロー放電電流をあげることが望ましい。よって、JT-60 では陽極となる電極の数を増やすことでグロー放電 電流の確保を行っている。 しかし、グロー放電電極を真空容器内に据え置くには真空容器内の取付けスペースを確保しなければならない。 JT-60 にはプラズマの計測を行うポート等があるが様々な計測機器で埋め付くされているためポート以外で電極を据 え置くことが必要になった。 本講演では、取付けスペースを問わない第一壁兼用グロー放電電極の開発、構造、取付け後の試験運転による問題 点、今後の課題について報告するものである。 2. グロー放電装置の構成 グロー放電装置は図-1 に示すように陽極となる電極部分、 電極 直流安定化電源、システム操作用のパソコンからなる。また、 真空容器内にヘリウムガスをガス注入装置から供給してい ガス注入装置 He 真空容器及び 第一壁タイル + イオン + + 質量分析 装置 る。不純物ガスについては真空排気設備で排気し、質量分析 装置により不純物のガスモニターを行っている。陰極部は真 + − 直流安定化 パソコン 電源 真空排気装置 空容器壁がスパッタリングによって洗浄されるように真空 容器としている。 図-1 グロー放電装置 グロー放電電極の種類は写真-1 のような真空容器のポート(計測用の穴)を利用して取り付けているポート型電極 と写真-2 の取付けスペースを問わない第一壁兼用の第一壁型に分けられる。 電極 電極 ポート 電極 写真-1 ポート型電極 両方の電極供、陽極、陰極を絶縁で分割した構造とな っている。大きな違いはポート型電極は取付けスペースに 十分な余裕があり部品の大きさや構造設計が比較的楽に できた電極である。その反面、第一壁型電極は電極と真空 容器壁間のスペースが非常に狭いため取付けスペースを 考慮した電極構造のものである。 写真-2 第一壁型電極 グラフ-1 にグロー放電による脱ガスの時間経過を示す。 電極を随時立ち上げるとそれに応じて脱ガス量がふえて 10 10 ことによって脱ガスの効果が上がる。しかし、JT-60 で はグロー放電用に使用できるポート数には制限がありグ ロー放電電極を増やすには限度がある。この問題を解決 するため、真空容器の内面をプラズマから保護するため イオン電流(A) いる。すなわち、電極を増やしグロー放電電流を上げる 2 -6 1 10 -6 100 10 -9 10 10 -9 1 10 4 44 -9 0 1000 2000 3000 4000 #$ %&'()*+,-,./ 第一壁型電極は真空容器を保護する第一壁を兼ねる 第一壁の構造を十分考慮して設計しなければならない。 ! 第一壁の構造は図-4 に示すように第一壁の材質を熱衝 " 用し且つ、プラズマからの熱負荷を受けることによるボ ルトの溶融を防ぐため金属類は露出しない構造となって 図-4 第一壁タイル構造 撃及熱負荷に強い黒鉛材(等方性黒鉛材、CFC 材)を使 6000 グラフ-1 電極数と脱ガス 3. 第一壁型グロー放電電極の設計 ため第一壁タイルの取付けスペース及び熱負荷を受ける 5000 時間(秒) に取付けられているタイル(第一壁)を電極として利用 する第一壁型グロー放電電極を開発した。 18 28 グロー着火 いる。また、第一壁はプラズマ放電時に受ける電磁力を 緩和するため第一壁タイル一枚当たりの大きさを約 150mm×200mm の大きさに制限している。第一壁型グロー放電 電極はこの第一壁制限を満たす構造が必要となった。 第一壁型電極を設計する上で一番の問題は第一壁 と真空容器のスペースが約 40mm と狭いことにあっ た。この空間で陽極となる電極電位と陰極となる真空 ● 仕様 1.使用雰囲気:300℃ 2.印加電圧:1.5kV 3.振動:60G 容器電位を絶縁しなければならない。ボルトで固定し 電極兼第一壁 38㎜ ている第一壁とタイル台座及び真空容器間に絶縁材 絶縁セラミックス (円盤型) 電極兼台座 を挿入することは構造上部品点数が増えることにな り、組立が複雑になるため構造を簡素化する必要があ った。そこで、図-5 に示すように第一壁とタイル台座 の取付け構造は第一壁と同じ構造にし、タイル台座固 絶縁セラミックス (角型) 回り止めを兼ねた絶縁形状 固定座 図-5 第一壁型グロー放電電極構造 定部に絶縁を挿入しタイル台座を挟み込むことで電 極となる第一壁と真空容器の電位を分割することにした。これは、絶縁部を1箇所に絞ることで電極の部品点数を減 らし、且つ上下から台座を挟み込むだけなので組立作業が簡素化できた。 また、この他の工夫点として 2 点あげられる。まず 1 点目は第一壁には電磁力が加わるためプラズマ放電時にはタ イルが回転する力が加わる。この回転力は第一壁型電極にも同じ作用が働くため電極ケーブルの断線、固定ボルトの 弛みを誘発する恐れがある。そこで、図-5 のように絶縁材下部を角形にして角形固定座と組み込むことで回転作用を 防ぐ処置を施した。ちなみに上部絶縁材の形状は第一壁タイル内部に組み込むためタイル切削を極力少なくするため である。これは第一壁タイルの強度を保つため重要なこ 絶縁セラミックス とであった。 工夫点の 2 点目は図-6 のように絶縁材に溝を付け且つ 2㎜ はめこみ式にしたことにより絶縁材表面を伝わるアーキ ングを防ぐ処置を施したことである。この方法は、P-3 第一壁タイル ボルト 1㎜ セクションに据付けてあるポート型グロー放電電極が放 電後の定期点検時に、絶縁を介した電極と電極を固定し ているサポート間でアーキング現象と思われる痕跡が確 4㎜ 認された経験から、その後の対処方法として溝をつける ことを行った。限られたスペースにおいて沿面の距離を 稼ぐための工夫である。この方法はスペースの制約があ 真空容器壁 図-6 アーキング対策 る第一壁型電極に特に有効であると考え採用した。 絶縁板の溝を設計する上で問題になるところはどのくらいの溝をつければ絶縁板の表面に流れるアーキングを防ぐ ことができるかであり、一般で使用される絶縁碍子等のデータを参考にしようとしたがグロー放電電極の絶縁板の使 用条件と異なり参考データが得られなかった。そこで、第一壁型グロー放電電極の絶縁部は真空雰囲気での使用のた め湿度等の問題は除外し、塵埃侵入による絶縁劣化を防ぐため溝幅を 1mm、深さを 2mm 程度とした。 4. 第一壁型グロー放電電極の改良 第一壁グロー放電電極は上記構造で設計製作したが 真空容器内での信頼性を高めるため更に絶縁材の強度 を確保する処置を行った。図-7 に示すように絶縁部を割 れにくい金属材料に代え、表面をセラミックスで覆うセ 第一壁型タイルには電磁力が加わる 絶縁セラミックスの破損 プラズマ SUS材 溶射型絶縁セラミックスの採用 セラミックス I 電極タイル ラミックス溶射技術を採用した。第一壁グロー放電電極 は通常のプラズマ放電の際には熱負荷が少ない設計に なっているがディスラプションによる衝撃及び絶縁部 に劣化があった場合にはプラズマから電極に流れ込む 電流により電磁力の作用を受けセラミックス材が破損 することが考えらる。絶縁セラミックスの破損は電極の SUS材 (セラミックス溶射材) B 厚さ:260μm 耐衝撃力:4.9N・m 力 セラミックス 図-7 電極の信頼性向上 構造上セラミックス材で台座を固定しているため電極 自体の脱落、それに伴うプラズマ実験の停止を余儀無くされる。 そこでセラミックスが破損しても絶縁劣化だけで抑えるために絶縁セラミックスの中に SUS 材を使うことにした。 セラミックス溶射とはあらかじめ成形加工した SUS 材にセラミックス(酸化アルミナ)を吹き付けるものである。吹 き付け層の厚さは 260μm で強度は長さ 110mm の試験片に 30R の曲面を押し付けた場合曲げ角度が 30°で割れ、絶 縁層がはがれる角度としては 40°と絶縁材の強度として十分であった。また、電気的特性は絶縁破壊電界が 1×107V/m、 耐衝撃電圧は 7kV、12μs と電極仕様を十分満たしており対衝撃力としては 4.9N・m であるため第一壁グロー電極の 信頼性向上になった。 ただし欠点として、縁面距離を稼ぐための溝をつけることができなかったことである。1mm 溝をつけることを考え るとセラミックス溶射は吹き付けのため、セラミックスが溝に入らない。また、溝が埋まってしまう等技術的に難し かったからである。 5. 第一壁型グロー放電電極の着火報告 第一壁型電極を製作取り付けたことにより表-1 に示す ような値が得られた。第一に第一壁型グロー電極により各 3A の電流を流すことができ、グロー放電洗浄の向上に努 めることができた。第二に第一壁として 1 年間、不具合を きたすこと無く健全であった。 電極としての放電実績は最高 713 時間実施した。 表-1 グロー放電着火報告 設定電圧:600V 名 称 放電電流 負荷端電圧 放電実績 電極表面積 第一壁不具合 P-6第一壁型電極 ∼3A 290∼600v 713時間 231・ 無し P-3第一壁型電極 ∼3A 240∼600v 245時間 362・ 無し P-11第一壁型電極 ∼3A 240∼600v 52時間 362・ 無し P-3ポート型電極 (参考) ∼10A 240∼300v 713時間 501・ 6. まとめと今後の課題 第一壁グロー放電電極の開発により、限りある真空容器内スペースで電極数を増やすことができグロー放電洗浄の 効果を高めた。また、破損しにくい材料を使用したことにより第一壁としての信頼性が向上した。 今後の課題としてはグロー放電電流、電極表面積及び電極の配置等の関係を調べ、よりグロー放電の洗浄効果を高 めることである。また、総グロー放電電流を高めるために電極数を増やすことである。