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2 熱の伝わり方の研究2
〈第56回鈴木賞 正賞〉 2 熱の伝わり方の研究2 沼津市立浮島中学校 3年 天 野 恵 美 里 1 研究の動機 前回の研究では、金属の種類によって熱の伝わり方が違うことや、色の違いによって熱の伝わり方が 違うことを実験で確認することが出来た。その後、熱の伝わり方と金属の種類について文献で調べたと ころ、小型冷蔵庫の原理などに利用されている以下の興味深い現象があることがわかった。 ⑴ 2種類の金属を接触させ電流を流すと、熱の吸収または発生が起こる。 (ペルチェ効果) ⑵ 2種類の金属を接触させ異なる温度で保持すると、電流が発生する。 (ゼーベック効果) そこで、この現象を利用して金属の種類と熱の伝わり方について、さらに詳しく調べてみたいと 思い研究を行うことにした。 2 研究の目的 ⑴ 金属の種類によって、放熱効果にどのような違いがあるのかを調べる。 ⑵ 金属の表面積によって、放熱効果にどのような違いがあるのかを調べる。 ⑶ 2種類の金属を接触させた素子(ペルチェ素子:ペルチェ効果、ゼーベック効果を発生させる電 気部品。)の異なる面に与える温度差によって、発電にどのような違いがあるのかを調べる。 3 研究の方法 ⑴ ペルチェ効果の利用 ① ペルチェ素子に異なる電圧を与えて、発熱と吸熱の性質を調べる。 ② 上記の発熱を利用して、金属の種類による放熱効果を調べる。 ③ 上記の発熱を利用して、金属の表面積による放熱効果を調べる。 ⑵ ゼーベック効果の利用 ① 高温の熱源(アイロン)と放熱効果のあるアルミ棒による発電効果を調べる。 ② 高温の熱源(アイロン)と低温の熱源(氷水入りのビン)を使って、接触面積を変化させた場 合の発電効果を調べる。 ③ 低温の熱源(ドライアイス)とアルミ棒を利用して発電効果を調べる。 ④ 高温の熱源(温水入りのビン)と低温の熱源(ドライアイス)を使って、発電効果を調べる。 ⑤ 高温の熱源(温水入りのビン)と低温の熱源(氷水入りのビン)を使って、接触面積を変化さ せたときの発電効果を調べる。 4 研究の内容と結果 ⑴ ペルチェ効果の利用 ① ペルチェ素子に異なる電圧を与えて、発熱と吸熱の性質を調べる。 (実験装置1) ・ ペルチェ素子は、縦17㎜、横17㎜、厚さ約3.7㎜のサイズのものを使用する。 ・ ペルチェ素子の発熱する面と吸熱する面には、4x4の16マスのアルミ板(厚さ0.03㎜)が貼ら れている。 ・ ペルチェ素子に与える電圧は、1.5V ごと1.5 ~ 7.5Vの範囲とした。 (赤:+側、青:-側) −48− ・ 温度の計測は接触式温度計を用いて、発熱面及び吸熱面の中央の部分を計測する。 ・ ストップウオッチで10秒ごとの金属表面の温度を記録する。 (室温26.8℃) ・ 測定面の反対の面は、断熱を考慮して木の板の上にセットする。 ペルチェ素子 実験装置1 グラフ1 発熱面の表面温度 グラフ2 吸熱面の表面温度 (結果) ・ 発熱面の表面温度は、各電圧で時間の経過にともなって高くなった。 (グラフ1) ・ 発熱面の表面温度は、与える電圧が大きいほど値が高くなった。 (グラフ1) ・ 吸熱面の表面温度は、始めは与える電圧が大きいほど温度が低いが、その後3.0 ~ 7.5Vの範囲 では与える電圧が大きいほど温度は高くなった。 (グラフ2) (考察) ・ 発熱面では与える電圧が大きいほど、ペルチェ素子表面の発熱量が増えていることがわかった。 ・ 吸熱面では始めは与える電圧が大きいほど吸熱量が大きいが、その後温度が高くなる現象が発 生したことから、裏の発熱面の熱が伝わり表の吸熱量を上まわったため温度が上昇する現象が発 生したと考えられる。そこで、この発熱面の熱が吸熱面に伝わらないようにして、正確な吸熱面 −49− の温度を計測する工夫として考えた結果、発熱面に熱を伝える金属を接触させその放熱効果につ いて調べてみることにした。 ② 上記の発熱を利用して、金属の種類による放熱効果を調べる。 (実験装置2) ・ 金属の種類は、銅、アルミニウム、鉄の3種類とする。 ・ 金属の形状は、長さ300mm、幅100mm、厚さ0.5mmの板状とする。 ・ 金属の板に2cmごとに線を引き素子の位置を金属板の中央部にセットする。 ・ 金属板が空気以外のものに接触しないように木の板2本で金属板を支える。 ・ 接触式温度計を使って、素子の吸熱面中央部分の温度を計測する。 (室温26.5℃) 実験装置2 グラフ3 金属の種類と放熱効果 (6V) (結果と考察) ・ 与える電圧を3Vと6Vで測定したが、いずれも銅、アルミ、鉄の順に吸熱面の温度が低いこ とから、銅、アルミ、鉄の順に放熱効果が高いことがわかった。 (グラフ3) ・ 吸熱面の温度は30秒付近まで低下するが、その後発熱面の熱が伝わりやや温度が上昇した。 ③ 上記の発熱を利用して金属の表面積による放熱効果を調べる。 (実験装置3) ・ 表面積の異なるアルミ棒(幅25㎜及び幅50㎜)を使用して放熱効果の違いを調べる。 ・ 接触式温度計を使って、素子の吸熱面中央部分の温度を計測する。 (室温26.7℃) 実験装置3 グラフ4 表面積と放熱効果 (結果と考察) ・ 与える電圧を1.5 ~ 7.5Vの範囲で測定したが、いずれも表面積が大きいアルミ棒の方が吸熱面 の温度が低いことから、表面積が大きいと放熱効果が高いことがわかった。 (グラフ4:6Vの 条件) ・ アルミ棒の幅25㎜と幅50㎜では、表面積がそれぞれ182.5㎝ 2と335.0㎝ 2となり、比較すると約 2倍の差があるが、表面温度の低下の差は比較的少なかった。 ⑴ ゼーベック効果の利用 ① ペルチェ素子の2つの面に異なる熱を与えて発生する電気の強さを調べる。 (実験装置4) −50− ・ 素子に与える熱は、アイロン表面(加熱)とアルミ棒表面(放熱)に接触させて伝える。 ・ アイロン表面の温度を約60℃まで加熱し、その後電源を切り放置する。 (室温26.4℃) ・ アルミ棒は、幅25㎜を使用し、アルミ棒の中央部にペルチェ素子を接触させる。 実験装置4 実験装置5 グラフ5 アイロンとアルミ棒の温度変化 グラフ6 温度差と発電量の関係 (結果と考察) ・ アイロンの温度とアルミ棒の温度は時間とともに低下して、温度差も減少した。 (グラフ5) ・ アイロンの温度とアルミ棒の温度の温度差に比例して発電量が高くなった。 (グラフ6) ・ 高温の熱源(温水入りのビン:63.5℃)と低温の熱源(氷水入りのビン:11.3℃)を使ってモー ターを回転させることが出来た。約500mV以上の発電を確認した。 (実験装置5) *②~⑤の実験については省略。 5 まとめ ⑴ 熱を伝えやすい金属は、放熱効果が高い。 今回調べた金属では、銅>アルミニウム>鉄の順に放熱効果が高い。 ⑵ 金属の表面積が広い方が、放熱効果が高い。 ⑶ 2種類の金属を接触させた素子に温度差を与えた場合、温度差の大きさに比例して発電効果が高 い。 ⑷ 2種類の金属を接触させた素子に温度差を与える面積を変化させた場合、接触面積が大きい方が 発電効果が高い。 ⑸ 2種類の金属を接触させた素子に高温と低温の温度差を表面と裏面で同じ位置に与えた時は、表 面と裏面で違う位置に与えた場合より発電効果が高い。 6 感想 今回の研究は、目に見えない熱という不思議なものに興味を持ち始めたものだったが、2年間にわた る研究で熱の伝わり方について様々なことがわかった。また、研究の結果から、熱、金属の種類、電気、 これらの間には、 まだまだ深い関係がありそうだ。今後もこれらの関係に興味を持って調べていきたい。 −51−