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健康・栄養調査の企画・評価概論
国立健康・栄養研究所 栄養疫学プログラム 国民健康・栄養調査プロジェクト 2009 平成21年度 独立行政法人 国立健康・栄養研究所 健康・栄養調査技術研修セミナー 健康・栄養調査技術研修セミナ 健康・栄養調査の企画・評価概論 独立行政法人 国立健康・栄養研究所 栄養疫学プログラム 国民健康・栄養調査プロジェクト 健康 栄養調査を企画する際の視点 健康・栄養調査を企画する際の視点 • 調査の「目的」や「ねらい」は何か • 何を明らかにしたいのか(現状把握、施策の立 案・評価・修正 案 評価 修正、新たな問題点の明確化) 新たな問題点の明確化) • 行政栄養士による物事の見方や考え方 • 他職種の物事の見方や考え方 • 地域住民の興味やニーズ • 5年後・10年後を見据えた取り組み • 費用・マンパワー(関連機関との連携) • 調査の限界(実施可能な対象者数、調査項目) 調査の限界(実施可能な対象者数 調査項目) 1 国立健康・栄養研究所 栄養疫学プログラム 国民健康・栄養調査プロジェクト 2009 メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の状況 (20歳以上) 男 (%) 100 メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の予備群と考えられる者 タボ ク ゙ ム(内臓脂肪症候群) 予備群と考えられる者 (腹 囲≧85cm+項目1つ該当) メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)が強く疑われる者 ≧85cm+項目2つ以上該当) 80 (腹囲 60 25.2 19.8 25.9 40 25.8 22.5 24.8 24.0 20 26 9 26.9 36.4 36.9 60-69歳 60 69歳 70歳以上 25 0 25.0 57 5.7 30.3 16.7 0 総数 3.4 8.5 20-29歳 20 29歳 30-39歳 30 39歳 40-49歳 40 49歳 50-59歳 50 59歳 (再掲) 40-74歳 (平成19年国民健康・栄養調査結果の概要より) 肥満とやせの状況の推移 (20歳以上) 男 100% 【 ①20年前(昭和62年)・ ②10年前(平成9年)・ ③平成19年】 6.4 5.3 4.2 7.8 8.0 10.6 5.2 3.7 2.0 3.0 3.3 2.6 4.3 3.5 4.3 7.4 4.2 2.1 15.8 10.8 6.6 80% 60% 71.4 65.4 73.2 68.1 79.4 75.4 73.2 72.1 69.4 73.3 68.7 64.4 70.7 72.4 61.4 68.9 65.2 65.9 73.6 69.4 72.0 40% 20% 20.4 23.3 30.4 12.8 16.6 21.3 21.6 24.2 28.6 23.7 28.0 33.0 34.3 25.0 24.1 19.0 26.9 32.7 27.5 14.8 17.2 0% ① ② ③ ① ② ③ 20歳以上総数 20-29歳 ① ② ③ ① ② ③ ① ② ③ ① ② ③ ① ② ③ 30-39歳 40-49歳 50-59歳 60-69歳 70歳以上 肥満 2 普通体重 低体重(やせ) (平成19年国民健康・栄養調査結果の概要より) 国立健康・栄養研究所 栄養疫学プログラム 国民健康・栄養調査プロジェクト 2009 肥満とやせの状況の推移 (20歳以上) (%) 30 肥満者(男性) 肥満者(女性) 低体重(男性) 25 低体重(女性) 20 15 10 5 0 (平成19年国民健康・栄養調査結果の概要より) 継続的な状況(結果)比較の強み ある一時点での調査(断面調査) 継続的な調査(縦断調査) 何れの調査も長所と短所を併せ持つ できるだけ両者の長所を引き出せるような対応 縦断調査には手間と時間を要するが、 一般的に結果の説得力は高い 3 国立健康・栄養研究所 栄養疫学プログラム 国民健康・栄養調査プロジェクト 2009 調査内容の組み立て • タイムリーに把握しておかなければならない 項目(断面調査) →以前のことは置いておいても、早く何らかの関係をデ ータとして示しておきたい タとして示しておきたい →新規の概念等について、現状を示したい 規 、 • 中・長期的な動きを把握しておかなければなら ない項目(縦断調査) →自治体が独自に行っている健康施策等の評価 →生体指標の定量的変化(肥満者、メタボ該当者の変 化等) →栄養素等摂取状況の変化(脂肪エネルギー比率等) (例示)ある自治体における健康増進計画の目標値 例えば、平成21年現在の中間評価を実施したい。 4 国立健康・栄養研究所 栄養疫学プログラム 国民健康・栄養調査プロジェクト 2009 継続的な結果比較(縦断調査)を行う際の留意点 • 毎回同じ物差しで調査を実施する 同一の質問項目、同一の設問 同一の臨床検査項目を用いる 臨 検 • 調査の標準化と精度管理、 調査方法や手法の標準化 毎回の調査精度を一定(できるだけ高いレ ベル)に維持する 臨床検査の精度管理を徹底する 調査内容の企画 継続 追加 調査内容の企画・継続・追加 • 自治体として継続的に把握しておきたい項目 地域の健康課題として問題視されている内容 → 糖尿病、脳血管疾患、高血圧 糖尿病 脳血管疾患 高血圧 対策 健康施策の評価に必要な内容 → 目標値を算出するために必要な項目 → 国全体、他地域との比較に用いる項目 国全体 他地域との比較に用いる項目 • 追加を考慮しておきたい項目 今後、重要視される可能性のある内容 → 慢性腎不全 対策(国の動向にも注目) 5 国立健康・栄養研究所 栄養疫学プログラム 国民健康・栄養調査プロジェクト 2009 全数調査と標本調査 •対象集団:観察の対象として設定された集団 •全数調査:対象集団の構成員全員に対する調査 (例)国勢調査 記述統計学 →記述統計学 •標本調査:対象集団(母集団)から(一部分)抽出した標 本の調査 (例)国民健康 栄養調査 (例)国民健康・栄養調査 →推測統計学では標本から母集団の特性を推測す る。 ○○県民健康 栄養調査の標本抽出 ○○県民健康・栄養調査の標本抽出 母集団 (○○県) ク クラスター抽出 タ 抽出 標本 人口200万人 各栄養素摂取量は? 推測 単位 単位区(15~30世帯)×35 世帯 6 国立健康・栄養研究所 栄養疫学プログラム 国民健康・栄養調査プロジェクト 2009 クラスター抽出法 ¾○○県内の国勢調査区から、乱数によって選んだ35 地区の住民全員を対象として調査を行う、と うよう 地区の住民全員を対象として調査を行う、というよう に、母集団をいくつかの集落=クラスター(市区町村、 国勢調査区、単位区、世帯など)に分け、これを抽出 単位として無作為抽出を行い、選ばれたクラスター内 の全構成員を調査対象とする方法。 ¾調査地域が広い場合(例えば全県レベルの調査) の訪問調査などで行われることが多い。 長所:調査のための移動・訪問の手間を減らせる。 長所:調査のための移動 訪問の手間を減らせる。 短所:単純無作為抽出に比べて、精度が劣る。 →健康・栄養調査は、この方法が多い 健康 栄養調査は この方法が多い (例示)○○県民栄養調査の調査対象地区を保健所 管区によって層化クラスタ 抽出する例 管区によって層化クラスター抽出する例 保健所 A B C D E F 合計 管内人口(人) 県の総人口に 占める割合(P) 調査対象 単位区数(K) 120,000 6.0 % 35 × 6.0 % ≒ 2 160,000 8.0 % 35 × 8.0 % ≒ 3 620,000 31.0 % 35 × 31.0 % ≒ 11 130,000 6.5 % 35 × 6.5 % ≒ 2 420 000 420,000 21 0 % 21.0 550,000 27.5 % 35 × 27.5 % ≒ 10 2,000,000 100.0 % 35 × 21.0 21 0 % ≒ 7 35 Kは調査単位区総数(=35)×Pを四捨五入。各単位区の世帯数は約30以下 でほぼ 一定とする。国民生活基礎調査で設定した単位区から無作為抽出 するのが現実的であろう。 7 国立健康・栄養研究所 栄養疫学プログラム 国民健康・栄養調査プロジェクト 2009 点推定と区間推定 • ○○県の健康・栄養調査で、50歳代男性100名の 食塩摂取量は、 平均 = 12g/日 標準偏差 = 5 g/日 標準誤差 = 0.5g/日 0 5g/日 少なくとも、対象者数(n数) と標準偏差(SD)は必ず示 すようにする すようにする。 •点推定 母平均は「12gだろう」 1つの値(標本平均)で推定する方法。 •区間推定 区間推定 母平均は「11~13gの間にあるだろう」 上限と下限(信頼区間)で推定する方法。 示し方 ○○県50歳代男性住民の食塩摂取量の母平均の ○○県50歳代男性住民の食塩摂取量の母平均の、 点推定値(95%信頼区間) = 12(11-13)g/日 点推定と区間推定の計算 ¾計算の仕方 平均 = 12g、 1 標準誤差 = 0.5g 0 ¾点推定 標本平均そ まま( ) 標本平均そのまま(12g)。 ¾区間推定 一般に95%信頼区間は 般 信頼 点推定値±2×標準誤差(=11~13g) 単純無作為抽出の場合、 平均値の標準誤差=標準偏差÷√人数 割合Pの標準誤差=√(P×(1 P)÷人数) 割合Pの標準誤差=√(P×(1-P)÷人数) クラスター抽出の場合、統計ソフトが必要。 標準誤差は、単純無作為抽出の場合よりも大きくなる。 8 国立健康・栄養研究所 栄養疫学プログラム 国民健康・栄養調査プロジェクト 2009 調査人数(客体数) あらかじめ定めた誤差率(例えば1%)を達成す るために必要な人数を調査する(ただし、実際に は予算・期間等の制約を受ける)。 は予算・期間等の制約を受ける) 誤差率は、“標準誤差÷平均値(や割合)”であ り 誤差率が小さいほど推定精度が高い り、誤差率が小さいほど推定精度が高い。一般 般 に、調査人数が多いほど誤差率は小さい。 (注意 誤差率は 抽出率 はなく 調査人数 (注意:誤差率は、抽出率ではなく、調査人数で 決まる) 必要以上に調査人数を増やすよりも、回収率を 向上させるために労力を投じるべきである。 誤差率の意味 標本調査の目的は、母集団の特性(食塩摂取量の母平均、 肥満者の母割合、等)を推定する とである。 肥満者の母割合、等)を推定することである。 母平均(や割合)は、 ■標本平均(や割合)の±誤差率の範囲にある可能性が高く、 標本平均(や割合)の 誤差率の範囲にある可能性が高く、 ■標本平均(や割合)の±2×誤差率の範囲にある可能性が非常に 高い 例1:食塩摂取量の標本平均が10g/日だった場合 ■誤差率3%: 10gの±2×3%は、9.4~10.6g ■誤差率10%: 10gの±2×10%は、8.0 10gの±2×10%は 8 0~12 12.0g 0g 例2:メタボリックシンドロームの標本割合が20%だった場合 ■誤差率3%: 20%の±2×3 % (相対値)は、18.8 (相対値)は 18 8~21 21.2% 2% ■誤差率10%: 20%の±2×10 % (相対値)は、16.0~24.0% ■誤差率を、そのまま標準誤差に置き換えても同じ(その場合 は相対値ではなくて絶対値) 9 国立健康・栄養研究所 栄養疫学プログラム 国民健康・栄養調査プロジェクト 2009 調査設計時の誤差率の考え方 例:食塩摂取量の平均値(現状値11g)を5年後に10g 未満にする。 ■標本平均(や割合)の±誤差率の範囲にある可能性が高く ■標本平均(や割合)の±誤差率の範囲にある可能性が高く、 ■標本平均(や割合)の±2×誤差率の範囲にある可能性が非常に 高い 評価時(5年後)の調査で、平均値が9.4gだった場合 ■誤差率3%: 9.4gの±2×3%は、8.8~10.0g ■誤差率10%: 9.4gの±2×10%は、7.5~11.3g ■このように具体的な目標を考えると、どの程度の誤 差率が必 かが見 差率が必要かが見えてくる。 くる 数値目標の評価1(評価時) 例1:食塩摂取量の平均値(現状値11g)を5年後に 10g未満にする。 10g未満にする 評価時(5年後)の調査で、平均値が9.4g、標準誤差 が0.5g(調査データを用いて計算)だった場合、 ■点推定= 9.4gg ■95%信頼区間=9.4±2×標準誤差=8.4~10.4g ■解釈:減少傾向はみられたが、統計学的有意性を 解釈:減少傾向はみられたが 統計学的有意性を もって目標が達成できたとはいえない。 10 国立健康・栄養研究所 栄養疫学プログラム 国民健康・栄養調査プロジェクト 2009 数値目標の評価2(評価時) 例2 食塩摂取量の平均値(現状値11 標準誤差0 6 ) 例2:食塩摂取量の平均値(現状値11g、標準誤差0.6g) を5年間で1g減らす。 評価時(5年後)の調査で、平均値が9.4g、標準誤差が 0 5g(調査データを用いて計算)だった場合 低下幅は 0.5g(調査データを用いて計算)だった場合、低下幅は、 ■点推定= 9.4gー11.0g=ー1.6g ■低下幅の標準誤差=√(標準誤差 低 幅 標準誤差 √(標準誤差2の両調査の和) 両調査 和) =√(0.62+ 0.52 )=0.8 ■ 95%信頼区間=ー1.6±2×標準誤差=ー3.2~ー0.04g ■解釈:目標を達成し、統計学的に有意であった。 都道府県健康・栄養調査 での標本抽出 必ず、“無作為抽出”を行う 必ず 無作為抽出 を行う。 個人単位・・・単純無作為抽出 地区単位 地区単位・・・クラスター抽出(←これが一般的) クラスタ 抽出( これが 般的) 無作為抽出を行わないと、系統的誤差(偏り)が 生じる可能性が大! →系統的誤差(偏り)のあるデータを用いて、地域 間比較や経年比較をするのは、無意味。 抽出人数(地区数)が少ないと、ランダム誤差が 大きくなる。 →ランダム誤差(誤差率)が大きいと、地域差や 経年変化が見えにくい。 が 11 国立健康・栄養研究所 栄養疫学プログラム 国民健康・栄養調査プロジェクト 2009 指標別の誤差率と必要単位区数 80%の確率で目標誤 差率を達成するため に必要な単位区数 指標 AO-1.1 脂肪エネルギー 比率 AO-1.2 野菜摂取量 AO-2.1 AO 2 1 日常生活にお ける歩数 AO-2.2 運動習慣のある 者(成人) AO-3 喫煙率 仮定した 保有率 連続変数 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 30% 32% 29% 25% 44% 11% 性別 男女 男 女 男女 男 女 男女 男 女 男女 男 女 男女 男 女 誤差率 10% <5 <5 <5 7 7 8 <5 8 <5 35 70 45 40 35 >100 誤差率 5% 8 10 8 20 25 30 16 25 18 >100 >100 >100 >100 >100 >100 50%の確率で目標誤 差率を達成するため に必要な単位区数 誤差率 10% <5 <5 <5 <5 <5 <5 <5 <5 <5 30 70 40 30 25 >100 誤差率 5% <5 <5 <5 16 18 20 10 20 12 >100 >100 >100 >100 95 >100 対象年齢30~75歳 誤差率=標準誤差÷推定値なので、例えば有病率15%で誤差率19%ならば標準誤差は 15%×19%=2 9%である 15%×19%=2.9%である。 HbA1cや栄養素等の連続型変数は30単位区あればおおむね十分な精度が得られる。 「国民健康・栄養調査における各種指標の設定及び精度の向上に関する研究」(主任研究者:吉池信男)より 指標別の誤差率と必要単位区数 80%の確率で目標誤 差率を達成するため に必要な単位区数 指標 AO-4.1 睡眠による休養 が不足している者 AO-5.1 肥満者の率(成 人の内臓脂肪型肥満) AO-5.3 糖尿病有病者・ 糖尿病有病者 予備群の率 高血圧症有病 症有病 AO-5.4 高 者・予備群の率 BO-1 MS喫煙率 仮定した 保有率 26% 27% 25% 28% 31% 25% 34% 32% 34% 59% 70% 52% 15% 17% 13% 性別 男女 男 女 女 男女 男 女 男女 男 女 男女 男 女 男女 男 女 誤差率 10% 30 40 40 30 35 65 30 50 40 14 14 25 70 >100 >100 誤差率 5% 90 >100 >100 95 >100 >100 >100 >100 >100 45 45 85 >100 >100 >100 50%の確率で目標誤 差率を達成するため に必要な単位区数 誤差率 10% 20 30 35 20 30 65 25 50 30 8 7 20 70 100 >100 誤差率 5% 80 >100 >100 85 >100 >100 90 >100 >100 35 35 75 >100 >100 >100 対象年齢30~75歳 誤差率=標準誤差÷推定値なので、例えば有病率15%で誤差率19%ならば標準誤差は 15%×19%=2 9%である 15%×19%=2.9%である。 HbA1cや栄養素等の連続型変数は30単位区あればおおむね十分な精度が得られる。 「国民健康・栄養調査における各種指標の設定及び精度の向上に関する研究」(主任研究者:吉池信男)より 12 国立健康・栄養研究所 栄養疫学プログラム 国民健康・栄養調査プロジェクト 2009 食事記録による測定値は何を見ているのか? 測定値 =真の(長期間の習慣的な)摂取量 +日間変動(←調査日数を増やして平均をとると減少)(+その他 の誤差) 真の(長期間の習慣的な)摂取量 調査日数を増やすと、真 の値からのバラツキが小 さくなる。 平均値のバラツキ(標準 誤差)は、 √日数に反比例。 30日 14日 7日 3日 2日 1日 (仮想データ例: 個人内変動係数25%) 0 1日の食事記録では、個人の摂取量、および 集団レベルでの摂取量の分布の把握は困難 13 国立健康・栄養研究所 栄養疫学プログラム 国民健康・栄養調査プロジェクト 2009 集団の評価において、EAR以下の人の割合は、 1日調査ではこんなに過大な評価となる 長期間の平均的な摂取量 の分布 1日の測定値 の分布 複数日調査の長所・短所 •長所 長所 ■EARカットポイント法を用いた集団の摂取量評価 が 能 ( 部 対象者だけ も ) が可能。(一部の対象者だけでも可) ■平均値等についても推定精度が高まる(同じ調 査人数でも誤差率が小さくなる)。 短所 •短所 ■手間がかかる。 ■それにより、協力率が下がるのは困る。 それにより 協力率が がる は困る 14 国立健康・栄養研究所 栄養疫学プログラム 国民健康・栄養調査プロジェクト 2009 自治体(地域)における評価の切り口 • 地域全体での評価 • 性・年齢階級別の評価 • 保健所の所管地域もしくは、二次医療圏ごとで ご の評価 • 特定の疾病にかかわる臨床検査値と関連する リスクファクタ-の関連 →血圧と食塩の摂取量 → BMIとエネルギーの摂取状況 → 地域特有の疾病と関連するリスクファクター 地域特有の疾病と関連するリスクファクタ デ タを整理 確認する データを整理・確認する ¾いきなり平均値や標準偏差を計算しない! -まず、ヒストグラム等を描いて分布を視覚的に 確認する -その後、適切な要約統計量を決めて分布の特徴 を表現する ¾いきなり検定しない! 検定 -まず、図や要約統計量で比較して特徴を確認 -必要な場合は、適切な方法で検定を行う 必要な場合は 適切な方法で検定を行う 15 国立健康・栄養研究所 栄養疫学プログラム 国民健康・栄養調査プロジェクト 2009 デ タの種類 データの種類 計量データ:量的に測定できる連続的な測定値 定 続 定 -連続データ (例)身長、体重、血圧、血清総コレステロール、 栄養素摂取量 -離散データ (例)う歯の本数 計数データ:カテゴリー型のもの -2値 (例)性別の“男”と“女”、既往歴の“有り”と“なし” -カテゴリーが3つ以上 順序尺度:順序関係はあるが、絶対量としての意味はない測定値。 -(例)濃い味付けが好きですか:とても好き、好き、ふつう、嫌い、とても嫌い 名義尺度:順序関係がない分類のための変数。 -(例)喫煙の“現喫煙”、“非喫煙”、“やめた”、など (例)喫煙の 現喫煙 、 非喫煙 、 やめた 、など ポイント:一見同じ質的データに見えても、順序尺度で量反応関係に 注目する場合 、用 る統計手法 違う 注目する場合は、用いる統計手法が違う 分布型を確認 統計学的方法のうち、よく使うパラメトリックな方法(t検定など)では、左 右対称な分布(正規分布)を前提としているものが多い。 従って、可能ならば、何らかの変換によって正規分布に近似させてから 処理すべきである。 - 対数変換、平方根変換、Box-Cox(べき)変換など 数変換 方根変換 き 変換など 正規分布に近似できない場合、ノンパラメトリックな方法を考慮する。 図2 正規分布 図3 対数正規分布 度数 度数 左右対称でベル形 (正規分布) 右に歪んでいる (対数正規分布) 測定値を対数変数(横軸 をl 〔測定値〕に)すると をlog〔測定値〕に)すると、 左右対称になる 測定値 16 測定値 国立健康・栄養研究所 栄養疫学プログラム 国民健康・栄養調査プロジェクト 2009 横断研究でよく使われる解析方法 ¾ 平均値を群間で比較する -平均値と誤差標準(や標準偏差)を群毎に計算して、 t検定(2群の差、正規分布)、Mann t検定(2群の差、正規分布)、Mann-Whitney Whitney U検定(非正規分布) 分散分析(3群以上の差)、Kruskall-Wallis検定(非正規分布) 共分散分析(交絡変数で調整して2群以上の差) ¾ 割合を群間で比較する -割合(%)を群毎に計算して、 カイ二乗検定(2×3以上のクロス表) Fisherの正確な検定(2×2表、小標本) Mantel-Haenszel検定(交絡変数で調整したクロス表) 拡張Mantel検定(2×3以上のクロス表で順序尺度の場合) 多重ロジスティックモデル(多変量解析) 横断研究でよく使われる解析方法 相関と回帰 正相関と負相関 正相関 測定値 B 測定値 B 測定値 B 測定値 A 無相関 負相関 測定値 A 測定値 A 相関係数 --1~+1の値をとり、2変数の直線的な関連の強さ を表す。 -検定も行う(帰無仮説:母相関係数=0) 17 国立健康・栄養研究所 栄養疫学プログラム 国民健康・栄養調査プロジェクト 2009 連続デ タ おけるさまざまな代表値 連続データにおけるさまざまな代表値 分布型と代表値 左右対称の分布 (正規分布など) 歪んだ分布 (対数正規分布など) 平均値 中央値 幾何平均 最頻値 平均値 中央値 最頻値 平均値・・・左右対称な場合に有用 中央値 非 称等、 分布 場 中央値・・・非対称等、歪んだ分布の場合 ビタミンA摂取量 ビタミンA摂取量 対数 変換 z 対数正規分布の典型例 -中性脂肪、ビタミンA摂取量など z 正規分布の典型例 -身長、体重、総エネルギー・主栄養素摂取量など 身長、体重、総 ネルギ 主栄養素摂取量など z 医学データは、少し右裾が長いことが多い 18 国立健康・栄養研究所 栄養疫学プログラム 国民健康・栄養調査プロジェクト 2009 箱ヒゲ図 標準偏差はバラツキの指標 標準偏差 ラ キ 指標 上側 隣接値 平均=100 平均±1標準偏差 (全体の68%) ● ● 標準偏差=20 度数 75%点 平均=100 平均±2標準偏差 (全体の95%) 中央値 値 標準偏差=40 25%点 0 20 40 60 下側 隣接値 80 100 120 140 160 180 200 測定値 ● 代表値(中央位置の指標) 代表値(中央位置の指標)と散布度(バラツキの指標)として、 散布度( ラツキの指標) して、 -「平均と標準偏差」 中央値と四分偏差」 -「中央値と四分偏差」 の組合せがよく用いられる。 標準偏差と標準誤差は別もの 平均193、標準偏差20(mg/dL) 平均193、標準誤差3(mg/dL) 差 60 50 標準偏差は、データのばらつき 標準偏差は、デ タのばらつき 標準誤差は、標本平均の確からしさ どちらかを使うかは、何を言いたいかによる 30 どちらを示したか、必ず明記する 20 10 血清総コレステロール(mg/dL) 19 3334.0 3322.4 3310.7 2299.1 2287.5 2275.8 2264.2 2252.6 2240.9 2229.3 2217.7 2206.1 194.4 182.8 171.2 159.5 147.9 136.3 124.6 0 113.0 度数(人 人) 40 国立健康・栄養研究所 栄養疫学プログラム 国民健康・栄養調査プロジェクト 2009 見かけの数値で比較できるの? 東部地域 平均値(標準偏差) 総エネルギー摂取量 3,000(450) kcal ビタミンB1摂取量 1.38(0.50)mg 1 38(0 50)mg 西部地域 平均値(標準偏差) 総エネルギー摂取量 2,000(250)kcal ビタミンB1摂取量 1.14(0.20)mg 単純に東部地域が西部地域よりビタミンB1摂 取量が多く 適切であると評価してもよいか? 取量が多く、適切であると評価してもよいか? エネルギー調整 ネルギ 調整 栄養素摂取量と疾病罹患のリスク分析(コホート研究、症例対照 研究など)を行う場合 ” ネ ギ 調整”はほぼ必ず 行われて 研究など)を行う場合、”エネルギー調整”はほぼ必ず 行われ いる。 (Willettの)残差法 -(Willettの)残差法 -重回帰分析 -栄養素密度法(エネルギー1,000kcal当たりの栄養素摂取量) これらのうち、栄養素密度法は、エネルギーの影響を完全には 調整できない。 調整できない -炭水化物、たんぱく質、脂質のエネルギー比は、総エネル ギー摂取量と中等度の正相関を示すことが多い。 -ビタミンCなど、総エネルギー摂取量と相関の弱い栄養素 の栄養素密度は、総エネルギー摂取量と負相関を示すこ とがある。 とがある 20 国立健康・栄養研究所 栄養疫学プログラム 国民健康・栄養調査プロジェクト 2009 食事調査と誤差 食習慣と疾病罹患との関連を調べるた めに、食事調査を行うとする。 調査法は? -習慣的摂取量 こちらが推奨されることが 多いが なぜだろうか? 多いが、なぜだろうか? 食物摂取頻度調査法 食事歴法 -数日間の摂取量 数日間の摂取量 食事記録法 時間思 出し法 24時間思い出し法 食事調査と疫学研究 習慣的摂取量(食物摂取頻度調査法など) -長期間の平均的な値を推定しているので、ランダム誤差が 小さい。真実の関連が薄まりにくい。 だからリスク分析で推奨される。 -ただし、系統的誤差は入る可能性があるので、(FFQは)絶 -ただし 系統的誤差は入る可能性があるので (FFQは)絶 対量の評価には向かない。 集団の摂取量の平均値を推定したい場合は不向き。 個人の順序づけはできる。 個人の順序づけはできる 数日間の摂取量(食事記録法など) -個人内変動(日々の摂取量の変動)が大きいため、個人の 習慣的摂取量からのぶれ(ランダム誤差)が非常に大きい。 真実の関連が薄まって見える。 真実の関連が薄まって見える -つまり、相対危険度が1に近い(関連がない)ように見える。 だからリスク分析で推奨されない。 薄まった関連を統計学的に補正して、相対危険度の真実の(薄まっていな い)値を推定する方法もある。ただし、誤差も一緒に拡大される。 21 国立健康・栄養研究所 栄養疫学プログラム 国民健康・栄養調査プロジェクト 2009 日本人の成人女性において、習慣的な摂取量の±5% または±10% の範囲に入る摂取量を個人レベルで得るために必要な調査日数 範囲 入る摂取量を個 得る 必要な調 数 (日本人の食事摂取基準(2010年版)より抜粋) 脂質 たんぱく質 脂質 たんぱく質 0.03 12日間平均 12日間平均 0.035 3日間平均 0 025 0.025 3日間平均 0 03 0.03 1日間 1日間 0.025 0.02 0.02 0 015 0.015 0.015 0.01 0.01 0.005 0.005 0 0 20 40 60 80 100 120 140 160 0 0 20 カルシウム 40 60 80 100 120 葉酸 葉酸 カルシウム 12日間平均 0.003 3日間平均 0.0045 1日間 0.0025 12日間平均 0.005 3日間平均 1日間 0.004 0.0035 0.002 0.003 0.0025 0.0015 0.002 0.001 0.0015 0.001 0.0005 0.0005 0 0 0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 22 .00 100.00 200.00 300.00 400.00 500.00 600.00 700.00 800.00 900.00 1000.0 国立健康・栄養研究所 栄養疫学プログラム 国民健康・栄養調査プロジェクト 2009 集団において、1日調査のデータから 習慣的な摂取量の分布を推定するには? いろいろ試行錯誤されている。以下の2つが有名。 National Research Council : Nutrient Adequacy; Assessment Using Food Consumption Surveys. National Academy Press, Washington DC,1986 -分散分析を用いた比較的簡単・基本的な方法。 分散分析を用 た比較的簡単 基本的な方法 Nusser SM, Carriquiry AL, Dodd KW, Fuller WA : A semiparametric p transformation approach pp to estimatingg usual daily intake distributions. J Am Stat Assoc 91: 1440-1449,1996 -かなり複雑だが、方法的にはより望ましいと思われる。専用ソフトが 有料で提供されている。 -これの簡易版であるBest-Power法は、日本語ソフトが無料で提供され ている(国立保健医療科学院HP,食事調査マニュアル改訂2版付録)。 必要な情報 -1日の食事調査データ -個人内変動を推定するための複数日の食事調査データ 個人内変動を推定するための複数日の食事調査デ タ (全員でなくてもよい) この講義の資料を作成するに当たり、国立保健 講義 資料を作成する 当 り、国 保健 医療科学院 人材育成部長 横山徹爾先生が、 過去 当研究所 国 保健医療科学院 過去に当研究所や国立保健医療科学院のセミ ナー等のために作成された教材の一部を、ご本人 の了解のもと、引用・使用させていただいておりま 解 も 、 用 使用さ おり す。 23