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総
則
1 研究のテーマとねらい
教育課程研究会研究推進委員会総則部門(以下「総則部門」
)では、平成 26 年度の研究テーマである「組織的な
授業改善の推進に向けた、教科等の組織による単元研究の手法についての研究」を更に進め、
「アクティブ・ラー
ニングの視点を踏まえた指導方法を取り入れた単元の授業づくりの実現に向けた校内授業研究の在り方」というよ
り具体的なテーマ設定を行い、研究を深めることとした。
(1)これからの時代に求められる資質・能力の育成について
文部科学省教育課程企画特別部会「論点整理(平成 27 年8月 26 日)
」
(以下「論点整理」
)には次のような記
載がある。
○ 将来の予測が困難な複雑で変化の激しい社会や、グローバル化が進展する社会※に、どのように向き合い、
どのような資質・能力を育成していくべきか。また、一人ひとりが幸福な人生を生きるためには、どのよ
うな力を育んでいくべきか。
○ 複雑で変化の激しい社会の中では、固有の組織のこれまでの在り方を前提としてどのように生きるかだ
けではなく、様々な情報や出来事を受け止め、主体的に判断しながら、自分を社会の中でどのように位置
付け、社会をどう描くかを考え、他者と一緒に生き、課題を解決していくための力が必要になる。
― 下線は高校教育課による(
「
『論点整理』11 ページから 12 ページ」より)―
※ 現在の子どもたちの 65%は将来、今は存在していない職業に就く(キャシー・デビッドソン氏:ニュ
ーヨーク市立大学大学院センター教授)との予測や、今後 10 年~20 年程度で、半数近くの仕事が自動化
される可能性が高い(マイケル・オズボーン氏:オックスフォード大学准教授)などの予測がある。
育成すべき資質・能力の三つの柱を踏まえた
日本版カリキュラム・デザインのための概念
主体性・多様性・協働性
学びに向かう力
人間性 など
どのように社会・世界と関わり、
よりよい人生を送るか
どのように学ぶか
(アクティブ・ラーニングの視点からの
不断の授業改善)
学習評価の充実
カリキュラム・マネジメントの充実
何を知っているか
何ができるか
知っていること・できる
ことをどう使うか
個別の知識・技能
思考力・判断力・表現力等
図1 カリキュラム・デザイン概念図(「論点整理」補足資料より一部改編)
社会構造の変化は、学力観の転換の必
要性を生み、これからの時代に育成すべ
き資質・能力をより一層意識することが
必要となった。
「論点整理」の中では、
図1のように、育成すべき資質・能力の
三つの柱として「何を知っているか、何
ができるか」
、
「知っていること・できる
ことをどう使うか」だけではなく、
「ど
のように社会・世界と関わり、よりよい
人生を送るか」までを視野に入れたいわ
ゆる日本版カリキュラム・デザインのた
めの概念を示している。この概念では、
どのように学ぶかという視点としてア
クティブ・ラーニングの視点からの不断の
授業改善が、学習評価やカリキュラム・マ
ネジメントの充実とともに示されている。
□また、特に学習評価に関しては、
「論点
整理」の中で、評価の観点について、
「知
識・技能」
、
「思考・判断・表現」及び「主
体的に学習に取り組む態度」の3観点に
沿った整理の検討をする必要があると述べられている。
(2)カリキュラム・マネジメント
「論点整理」では、学習指導要領に 基づきどのような教育課程を編成し、どのようにそれを実施・評価し
改善していくかという「カリキュラム・マネジメント」の確立が求められるとある。さらに、
「アクティブ・ラ
ーニング」と「カリキュラム・マネジメント」は、授業改善や組織運営の改善など、学校の全体的な改善を行
うための鍵となる二つの重要な概念として位置付けられるものであるとの記述がある。これは、まさに校内授業
研究を通した組織的な授業改善の推進が、
授業のみならず学校全体の質の向上につながるということを示している。
(3)アクティブ・ラーニングとは
中央教育審議会「新たな未来を築くための大学教育の質的展開に向けて(答申)
(平成 24 年8月 28 日)
」
(以
下「答申」
)にある用語集や「論点整理」などで表1のように、また有識者により表2のように示されている。
表1 国が示すアクティブ・ラーニング
答申等名
「 答 申 」
中央教育審議会「新たな未来
を築くための大学教育の質
的展開に向けて(答申)(平
成 24 年8月 28 日)
」
「 論点整理 」
文部科学省教育課程企画特
別部会「論点整理(平成 27
年8月 26 日)
」
アクティブ・ラーニングの定義
教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり、学修者の能動的な学修
への参加を取り入れた教授・学習法の総称。学修者が能動的に学修することに
よって、認知的、倫理的、社会的能力、教養、知識、経験を含めた汎用的能力
の育成を図る。発見学習、問題解決学習、体験学習、調査学習等が含まれる
が、教室内でのグループ・ディスカッション、ディベート、グループ・ワーク等も有
効なアクティブ・ラーニングの方法である。
課題の発見・解決に向けた主体的・協働的な学び(いわゆる「アクティブ・
ラーニング」
)
表2 有識者が示すアクティブ・ラーニング
有識者名
田村 学 氏
文部科学省初等中
等教育局視学官
髙木 展郎 氏
横浜国立大学教育
人間科学部教授
文献名
アクティブ・ラーニングに関する考え方
「自ら主体的に学んでいく学習」を言う。アクティブ
なのは体ではなく頭の中であり、頭が活性化して自ら学
月刊高校教育 2015.
んでいく、そうした学習を子どもたちが真剣にやってい
8月号
ることが大切である。具体的には、問題解決的な学習、
体験学習、探究的な学習などが挙げられる。
「VIEW21(2015 Vol.3)
」
「課題の発見・解決に向けた主体的・能動的で双方向
(ベネッセ教育総合研究 性のある、自律的かつ協働的な学び」である。
所)
「論点整理」では、アクティブ・ラーニングとは、子どもたちの主体的な学びを引き出し、どのような資質・
能力を育むかという観点から、学習の在り方そのものについてその問い直しを目ざすものであるとされている。
さらには、教員自身が習得・活用・探究といった学習過程全体を見渡し、個々の内容事項を指導することによ
って育まれる思考力・判断力・表現力等を自覚的に認識しながら、子どもたちの変化等を踏まえつつ自ら指導
方法を不断に見直し、改善していくことが求められる。
教員による指導方法の不断の見直しについては、
「論点整理」において次の3点が挙げられている。
○ 習得・活用・探究という学習プロセスの中で、問題発見・解決を念頭に置いた深い学びの過程が実現で
きているか。
○ 他者との協働や外界との相互作用を通じて、自らの考えを広げ深める、対話的な学びの過程が実現でき
ているか。
○ 子どもたちが見通しを持って粘り強く取り組み、自らの学習活動を振り返って次につなげる、主体的な
学びの過程が実現できているかどうか。
― ゴシックは高校教育課による(
「
『論点整理』18 ページ」より)―
このことから、アクティブ・ラーニングの視点を踏まえた授業の学習過程には、
「見通しと振り返り」及び「言
語活動」が必要であることが分かる。
以上のことを踏まえ、本研究では、アクティブ・ラーニングの視点を踏まえた指導方法を取り入れた単元の
授業づくりを行う上で、本県が推進している組織的な授業改善の推進に向けどのような工夫を行っていけばよ
いか、ということについて現状を把握し課題を明確化した上で探ることとした。
2 アクティブ・ラーニングに関する調査と分析
神奈川県立高等学校等におけるアクティブ・ラーニングの視点を踏まえた指導方法を取り入れた授業の実施状況
や実施に係る課題を明確化するために、平成 27 年度教育課程研究会研究推進委員が所属する学校を対象に次のよ
うな調査を教科別(担当者が複数である教科のみ)に行った。
(1)調査内容と結果
① 趣旨:アクティブ・ラーニングの視点を踏まえた指導方法を取り入れた授業の実施状況と課題の調査
② 時期:平成 27 年 10 月 15 日(木)~ 10 月 30 日(金)
③ 方法:調査票への回答方式(調査票の掲載は省略)
④ 対象:研究推進委員の所属校における教員 136 名
(数値は 136 名中の割合)
表3 アクティブ・ラーニングに関する調査集計結果
はい
92%
地歴
公民
96%
いいえ
ア. 研修会や勉強会
イ. テレビや新聞等のメディアや書物等
ウ. 同僚等知人の話
エ. 分からない、覚えていない
ア. 生徒の学びが主体的・能動的になること
イ. 対話を伴う学び合いなど協働的な学びを
通して生徒自らの考えを広め深めること
ウ. 授業前半の目標の提示と授業後半の振り
返りを通して次の学習へとつなげること
エ. 教科を超えた探究的な学びにつながること
オ. 生徒の学習目標の達成状況を確認すると
同時に学びの成長を捉える学習評価を実
施すること
カ. 知識を問うペーパーテストや特定の活動の
結果に偏重せず、多様な活動から多面的に
資質・能力を測る学習評価を実施すること
キ. その他
ア. 教科の単元計画の中での位置付けがはっ
きりしていない
イ. 単なる話合いや発表の場に留まってしまい
形骸化している
ウ. アクティブ・ラーニングの効果的な指導法
がよく分からず困っている
エ. アクティブ・ラーニングを常に行わなけれ
ばならないというプレッシャーがある。
オ. アクティブ・ラーニングを行うこと自体が授
業の目的となってしまっている
カ. アクティブ・ラーニングの有効性について
学校組織全体で共有することが難しい
キ. その他
ア. 学習に対してより積極的になっている
イ. 学力向上の効果が見られる
ウ. 学力向上の効果は見られない
エ. 学習の仕方が分からず混乱している
オ. その他
ア. 周りも積極的に取り入れていこうという雰囲
気になってきている
イ. 組織的な研究の推進につながっている
ウ. どのようにやればよいか困っている
エ. その他
8%
38%
29%
17%
17%
36%
4%
60%
20%
12%
8%
38%
16%
60%
16%
20%
4%
46%
10%
62%
15%
15%
8%
44%
13%
71%
19%
10%
0%
33%
38%
32%
36%
33%
43%
0%
8%
4%
12%
7%
2%
6%
4%
0%
5%
17%
4%
6%
2%
2%
4%
12%
2%
2%
10%
2%
0%
2%
8%
0%
9%
9%
4%
6%
10%
28%
30%
14%
25%
29%
15%
11%
27%
14%
12%
9%
2%
10%
0%
5%
19%
26%
29%
20%
17%
13%
7%
10%
18%
17%
9%
56%
11%
22%
11%
0%
15%
33%
0%
11%
33%
22%
6%
88%
13%
0%
0%
0%
18%
33%
8%
17%
42%
0%
10%
50%
29%
14%
7%
0%
14%
13%
11%
23%
57%
29%
43%
14%
0%
13%
75%
0%
56%
33%
23%
15%
38%
14%
7%
21%
質問項目
Ⅰ.アクティブ・ラ
ーニングを知
っていますか
Ⅱ.アクティブ・ラ
ーニングを知
ったきっかけ
は何ですか
Ⅲ.アクティブ・ラ
ーニングを実
施する上で何
に留意すべき
だと思います
か
Ⅳ.アクティブ・ラ
ーニングを実
施する上での
課題は何だと
思いますか
Ⅴ.
グ
をア
実ク
施テ
しィ
ブ
て・
いラ
るー
場ニ
合ン
生徒の
様子
実施の
状況
回答項目
国語
数学
理科
外国語
84%
90%
88%
(2)実施状況と課題の分析
調査の冒頭では、
「アクティブ・ラーニングの認知度」と「知ったきっかけについて」を項目に挙げて調査を
行ったが、全体の約 90%以上が知っていると回答し、その概ね半数以上が「研修会や勉強会」において知った
と回答している。この結果から、アクティブ・ラーニングに対する教員の意識は高くなっていることが伺える。
さらに、表3の調査結果を分析するに当たり、
「ア 全体の概況」
、
「イ アクティブ・ラーニング実践者と未
実践者の抱える課題の分析」
、
「ウ アクティブ・ラーニング実施者のうち『学力向上の効果が見られる』と『効
果が見られない又は混乱している』と回答した教員の抱える課題の分析」の3点に着目した。なお、イ及びウ
については、
「Ⅳ(アクティブ・ラーニングを実施する上での課題)
」とのクロス集計を行っている。
ア 全体の概況
○ 「Ⅲ(アクティブ・ラーニングを実施する上で留意すること)
」として、ア「生徒の学びが主体的・能動的
になること」
、イ「対話を伴う学び合いなど協働的な学びを通して生徒自らの考えを広め深めること」が約 70
~80%と、全体として、生徒の主体性を意識した授業展開を取り入れることに留意していることが分かる。
○ 「Ⅳ(アクティブ・ラーニングを実施する上での課題)
」で、イ「単なる話合いや発表の場に留まって
しまい形骸化している」が、全体として約 20~30%と多くの教員が回答していることから、
「ペアワーク」
や「グループワーク」などの活動を取り入れてはいるが、生徒の主体性・能動性の育成や、それが生徒
一人ひとりの学習につながっているのかなどを捉えることが難しいということが分かる。
○ Ⅲのオ「生徒の学習目標の達成状況を確認すると同時に学びの成長を捉える学習評価を実施すること」
や、Ⅲのカ「知識を問うペーパーテストや特定の活動の結果に偏重せず、多様な活動から多面的に資質・
能力を測る学習評価を実施すること」について、特に留意している教員もいることが分かる。教科の特
性を踏まえアクティブ・ラーニングの視点を踏まえた指導方法を取り入れた授業を実施するときの学習
評価をどのように行っていくべきなのか、また、どういった評価の観点として見ていくべきなのか、模
索している様子が分かる。
○ Ⅳのウ「アクティブ・ラーニングの効果的な指導法がよく分からず困っている」教員も少なからずい
ることが分かる。特に、数学は他の教科に比べ、多くの教員が指導法に悩んでいる。
○ Ⅳのオ「アクティブ・ラーニングを行うこと自体が授業の目的となってしまっている」と回答する教
員も多く、表面的な手法ありきの授業になってしまいがちであることも分かる。
○ Ⅳのイ「単なる話合いや発表の場にとどまってしまい形骸化している」及びオを合わせると4割以上
となり、取組の形骸化が大きな課題であることが分かる。
○ 「Ⅴ(生徒の様子)
」のア「学習に対してより積極的になっている」の項目を見ると、数学は他の教科
に比べ、実施による生徒の学習に対する積極性の向上をほとんどの教員が感じている。
○ 「Ⅴ(生徒の様子)
」のイ「学力向上の効果が見られる」の項目を見ると、外国語は他の教科に比べ、
実施による生徒の学力向上の効果を感じている教員が多い。
○ 「Ⅴ(実施の状況)
」のア「周りも積極的に取り入れていこうという雰囲気になってきている」の項目
を見ると、外国語は他の教科に比べ、より取組に対する機運が高まっていることが伺える。
○ 「Ⅴ(実施の状況)
」のイ「組織的な研究につながっている」の項目を見ると、
「0%」と回答してい
る教科もあることから、校内授業研究におけるアクティブ・ラーニングの在り方がまだ明確になってい
ないことが伺える。
イ アクティブ・ラーニング実践者と未実践者の抱える課題の分析(クロス集計による分析結果)
○ 図2より、Ⅳのイ「単なる話合いや発表の場に留まってしまい形骸化している」が、実践者に比べ未
実践者は 19%も多く、全項目の中で最も多い。未実践者は、アクティブ・ラーニングをペアワーク、グ
ループワーク及び発表などの活動に限定的に捉えている可能性があり、積極的に取り組めていないとい
うことが考えられる。実践者の抱える課題の詳細は後述の項目ウで記述する。
実践者
未実践者
ア.教科の単元計画の中での位置付けがはっきりしていない
イ.単なる話合いや発表の場にとどまってしまい形骸化している
ウ.アクティブ・ラーニングの効果的な指導法がよく分からず困っている
エ.アクティブ・ラーニングを常に行わなければならないというプレッシャーがある
オ.アクティブ・ラーニングを行うこと自体が授業の目的となってしまっている
カ.アクティブ・ラーニングの有効性について学校組織全体で共有することが難しい
キ.その他
図2 アクティブ・ラーニング実践者と未実践者に分けた時のⅣの質問項目の回答
クロス集計の分析結果から分かったこと
未実践者は、アクティブ・ラーニングが話合いや発表の場に留まり形骸化する
のではないかと考え、実践することに消極的になっている。
ウ アクティブ・ラーニング実践者のうち「学力向上の効果が見られる」と「学力向上の効果が見られない
又は混乱している」と回答した教員の抱える課題の分析(クロス集計による分析結果)
○ 図3より、Ⅳのア・ウについて6%~9%の差が出ている。ア「教科の単元計画の中での位置付けが
はっきりしていない」については、知識・技能の習得、思考力・判断力・表現力等の育成及び主体的に
学習に取り組む態度などの学力について、これらの「学力向上の効果が見られる」と考える教員の方が
多く、ウ「アクティブ・ラーニングの効果的な指導法がよく分からず困っている」については、
「効果が
見られない又は混乱している」と考える教員の方が多い。これは、学力向上に実感を持っている教員ほ
ど、教科の単元計画の中での位置付けがはっきりしないことを課題として捉えていることを表している。
また、学力向上の効果が得られないと考えている教員は、効果的な指導法も同様に得られていないとい
うことが伺える。
学力向上の効果が見られる
学力向上の効果が見られない又は混乱している
ア.教科の単元計画の中での位置付けがはっきりしていない
イ.単なる話合いや発表の場にとどまってしまい形骸化している
ウ.アクティブ・ラーニングの効果的な指導法がよく分からず困っている
エ.アクティブ・ラーニングを常に行わなければならないというプレッシャーがある
オ.アクティブ・ラーニングを行うこと自体が授業の目的となってしまっている
カ.アクティブ・ラーニングの有効性について学校組織全体で共有することが難しい
キ.その他
図3 「学力向上の効果が見られる」と回答した教員と「学力向上の効果が見られない又は混乱している」
と回答した教員に分けた時のⅣの質問項目の回答
クロス集計の分析結果から分かったこと
①効果を実感している教員ほど単元計画での位置付けが分からずに困ってい
る。
②効果が見られない又は混乱していると考えている教員は、効果的な指導法が
分からず、苦戦している。
(3)分析結果から分かる課題
分析によって見えてきた課題は2点ある。1点目は、アクティブ・ラーニングの形骸化である。アクティブ・
ラーニングの視点を踏まえた効果的な指導方法とその学習評価への理解が不十分であり、単なる生徒同士の話
合いや発表活動をアクティブ・ラーニングだと捉えている教員が少なくない。2点目は、単元の指導計画の中
での位置付けが明確でないという点である。
これらの課題の解決に向けた方策を得るために、アクティブ・ラーニングの視点を踏まえた指導方法を取り
入れた授業を行うことにより、生徒が実際にどのようなことを考え、何を学んだかを見ていく必要がある。そ
こで、これからアクティブ・ラーニングの視点を踏まえた指導方法を取り入れた校内授業研究の実践事例を紹
介する。
3 他教科と連携してアクティブ・ラーニングの視点を踏まえた指導方法を取り入れた組織的な授業改善の事例
A高校では、教科を超えた校内授業研究に取り組んでいる。平成 27 年度の研究テーマは「生徒が『わかる』授
業づくり」である。この「わかる」とは、基礎的・基本的な知識及び技能の習得だけを指すのではなく、生徒が主
体的に考え、学び合いなどを通して、自ら気付くことを指している。平成 26 年度以降、年1回実施している公開
研究授業は、参加者が自分の所属する学年や教科を担当している学年など、自分の担当教科ではなく他教科の授業
を見て事後協議を行っている。
このような取組の結果、日常的に同じ学年を担当している教員同士で授業についての情報交換をする雰囲気がで
きている。例えば、1年生では、理科の授業で継続して行っているグループ学習について、グループの作り方や活
動の進め方、学習評価の方法など、工夫した点を共有した上で、家庭科の授業でもグループ学習を取り入れた授業
を行った。さらに、家庭科の授業を公開し、経験の浅い若手教員を中心に授業見学を行った後、国語科でもグルー
プ学習を取り入れた授業を行った。
この3教科で授業実施後、授業時間の終了間際に次のようなアンケートを行った。
* 今日の授業を振り返ろう。
(1)該当する番号に○を付けてください。
(4 かなり当てはまる 3 ほぼ当てはまる 2 あまり当てはまらない 1 ほとんど当てはまらない)
①私は、今日の授業で学習した内容がだいたい理解できた。
4
3
2
1
②私は、今日の授業の進め方がスムーズで分かりやすい と思った。
4
3
2
1
(2) 今日の授業であなたが大事だと思ったこと、学んだことは何ですか。
図4は、アンケート項目①及び②の回答率を表したものである。(1)①については、
「かなり当てはまる、ほぼ当
てはまる」といった肯定的な意見の生徒が約 96%で、ほとんどの生徒が授業の内容が理解できたと考えているこ
とが伺える。一方、②については、約 88%の生徒が概ね「スムーズで分かりやすい」と考えている。
27.6%
68.4%
3.9%
27.6%
60.5%
11.8%
図4 アンケート項目①及び②の回答率
また、このような取組を継続的に行う効果を考察するために、家庭科の授業で6月と 10 月に同じアンケートを
実施したところ、アンケート項目①の回答率に関して図5のような結果が出た。
28.0%
60.0%
12.0%
37.5%
62.5%
0.0%
図5 家庭科におけるアンケート項目①の回答率
このことより、6月より 10 月の方が「4 かなり当てはまる」とした生徒が増加しているのと、
「2 あまり当て
はまらない」
とした生徒が減少したことによって、
学習内容に関する生徒の理解度が深まっていることが分かった。
また、(2)に関しては次のような記述が見られた。
【家庭科(家庭総合)
】授業内容「子育て支援」
(学習内容に関すること)
○ 子育て支援について知っておくことはこれからの自分にも必要であり、大事なことだと思った。
○ 思っていたより子育て支援についての法律や制度が多くあったので、調べていて面白かった。
○ 子どもができて困ったら、区役所で相談したり、インターネットで調べたりしたいと思った。会社も子
どものことを考えてくれるところを選びたいと思った。
○ 将来、もし自分が親になったときにどうするかを今のうちから考えておくことが大事だと思った。
(その他)
○ 子どもをあずけるところはたくさんあるので、預ける前にいろいろ調べた方がいいと思った。
これらの記述から、
「将来、もし~」というように、
「どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか。
」
ということに関する記述も見られ、本単元の「関心・意欲・態度」も非常に高まっているということが分かった。
家庭科の授業における「(2) 今日の授業であなたが大事だと思ったこと、学んだことは何ですか。
」に対する記
述内容に関しては、授業形態や手法に関する記述と学習内容の理解など学力向上に係る記述に分類したところ、6
月時点と 10 月時点で明らかな記述数の変化があった。次の表4により、6月時点ではグループ学習の形態や手法
に対する記述が多かったのに対して、
10 月は学習内容の理解など学力向上に係る記述が多く見られるようになった。
表4 (2)記述内容の変容
質問内容
(2) 今日の授業であなたが大事だと思ったこと、学んだことは何ですか。
回答内容
授業形態や手法に関する記述(比率)
学力向上に係る記述(比率)
記述数の合計
6月
10(40%)
15(60%)
25
10 月
1(4%)
23(96%)
24
家庭科の授業における記述内容から分かったこと
アクティブ・ラーニングの視点を踏まえた指導方法を取り入れた授業を組織
的・継続的に行うことにより、考える力の育成につながるだけでなく、学習内容の
定着や主体的に学習に取り組む態度の養成にも一定の効果がある。
国語科、理科についても(2)の記述に授業形態や手法ではなく、学力向上に関する記述が見られた。
【国語科(国語総合)
】授業内容:
「古文に親しむ(児のそら寝)
」
(学習内容に関すること)
○ 登場人物の心情を読み取ることが大事だと思った。
○ 「児」の性格を踏まえ物事を考えることが大事だと思った。
(その他)
○ グループで集まって他者の意見を尊重することが大事だと思った。
○ 自分の考えをしっかり発表することが大切だと思った。
○ 人とのコミュニケーションをしっかり取ることが大切だ。
【理科(科学と人間生活)
】授業内容:
「プラスチックの化学構造」
(学習内容に関すること)
○ 二重結合を外すと何個でもつながることが分かった。
○ 単量体をつなげたら合成高分子になることが分かった。
○ 結合もいくつか名称があったり、プラスチックの分子がとても複雑であることを学んだ。構造式も実際
に作ってみてから書けば、とても理解しやすかった。
(その他)
○ グループでしっかり話をしないとうまくいかない授業だったので、しっかり相談することが大事だと思
った。
○ 自分が他の人に説明できるまでには十分に理解できていなかったので、家でもう一度調べたい。
これらの回答から、グループ学習を取り入れることによって、生徒が学び合いを通して様々なことに気付き、理
解が深まったと考えられる。また、今後の生活において自ら調べ、学ぼうとする「主体的に考える」姿勢が見られ
る記述や、お互いの意見を尊重したり協力したりするなど、コミュニケーションを図ることによる協働性の育成に
つながったと思われる回答も数多くあった。なお、ここで注意すべきは、このA校の取組は単純にグループ学習を
授業に取り入れたことではなく、グループの作り方や活動の進め方、学習評価の方法などを教員同士が工夫し共有
したという点である。さらに、アクティブ・ラーニングとは授業づくりの視点であり特定の型があるわけではない
ので、グループ学習以外の方法も十分にあり得る。大切なことは、アクティブ・ラーニングの本質的な意味や意義
について教員が考え、共有していくことである。
同じ教科の担当者だけでなく、
同じクラスを受け持つ他教科の担当者同士で情報を共有して授業を検討するなど、
組織的な授業づくりを行うことが最も必要なことであるということが分かった。
ただし、取組の課題として挙げられる点は、単元計画を見通してどの時間でアクティブ・ラーニングの視点を踏
まえた指導方法を取り入れていくかということの検討を十分に行えなかったという点である。
単元指導計画や年間
指導計画を作成する際に、身に付けさせたい資質・能力の育成に向け、アクティブ・ラーニングの視点を踏まえた
指導方法を効果的に取り入れることができるように改善を続けていく必要がある。このことは、校内授業研究を通
してどのように単元の指導計画を立て、
身に付けさせたい力を育むためにどのような学習活動をどのように単元と
いう一つの物語の中に組み込んでいくかということと関わっている。
それでは、次に、アクティブ・ラーニングの視点を踏まえた指導方法をどのように単元に位置付けるかという点
について、校内授業研究の具体的な実践事例を基に紹介する。
4 校内授業研究におけるアクティブ・ラーニングの視点を踏まえた指導方法を取り入れた授業の位置付け
(1)校内授業研究の実践
学校全体として組織的な授業改善を推進
していくためには、生徒の実態や課題を確実
に把握し、各学校の教育目標を基に学校とし
て身に付けさせたい資質・能力を明確にし、
それらの資質・能力の育成に向けた校内授業
研究の研究テーマの設定を行い、研究計画の
立案及び実践並びにその検証と改善を、様々
な工夫を重ねながら、1年間のスパンで研究
活動を行うことが必要である。
B高校では、図6で示した校内授業研究の
流れに沿って研究活動を進めている。生徒及
び保護者向けアンケートや、
「神奈川県立高
等学校等学習状況調査」
(全日制高等学校等
2年次生を対象に国語・数学・外国語の3教
科及び学習状況のアンケートなどを行う調
査:以下「学習状況調査」という。)、
「生徒
による授業評価」などを基に生徒の実態や課
題を分析し、学校としての身に付けさせたい
資質・能力を「聞く力」と設定し、校内授業
研究を通して「聞く力」の育成のためのアク
ティブ・ラーニングの視点を踏まえた指導方
法を取り入れた授業改善を行っている。
(2)校内研修会の活用
前述したアクティブ・ラーニングに関する
調査結果から、認知度の高さは明確ではある
が、「単元計画の中での位置付けがはっきり
としていない」
、
「アクティブ・ラーニングの
効果的な指導法がよく分からず困っている」
という課題が挙げられることが分かったこ
とから、各学校に応じたアクティブ・ラーニ
学習状況調査・生徒による授業評価や各種ア
ンケート調査などを基に各学校で生徒の実
態や課題を把握
各学校の教育目標などを踏まえた育成すべ
き資質・能力の設定
R
(調査)
研究テーマの設定(生徒にどのような
力を身に付けさせたいのか)
育成すべき資質・能力の育成に向けた
アクティブ・ラーニングの導入に関す
る校内研修会などの実施
単元の指導計画(アクティブ・ラーニ
ングの視点を踏まえた指導方法を用
いた授業を単元にどう取り入れるか)
学習評価計画の立案(例)
「関心・意欲・態度」
「思考・判断・表現」
⇒ ワークシート、振り返りシ
ート等
「技能」
「知識・理解」
⇒ 確認テスト等
P
(計画)
授業実践
D
(実施)
研究授業及び研究協議
振り返り等
C
(評価)
改善点の整理
次年度の研究計画
D
(実施)
図6 B高校における校内授業研究の流れ
ングについての知見を深め、共通認識や疑問点などを解決するための校内研修会を定期的に行うことが望まし
い。
B高校においても、県教育委員会指導主事を講師とした校内研修会を実施することにより、教職員が、アク
ティブ・ラーニングの視点を踏まえた指導方法を取り入れた授業を行う際の留意点などを含めた校内授業研究
を推進するための様々な知見を得ることができ、取組の推進につながった。
なお、A高校の事例のように、校内研修会や研究授業の事後協議会などで、教科を超えて探究的な学びにつ
ながるような情報交換・情報共有が行えれば、効果的な指導方法も見えてくるものと思われる。
(3)単元の授業づくりにおけるアクティブ・ラーニングの視点を踏まえた指導方法の効果的な活用
具体的な授業づくりは、教員が個人で行うのではなく、教科会などを通した複数の教員による検討が必要である。
B高校では、アクティブ・ラーニングの視点を踏まえた指導方法には様々なものがあり、この指導方法を用
いればよいといったものはないと考えた。また、基礎的・基本的な知識・技能の習得などにおいては従来の講
義形式の授業が必要な場合もあるので、すべての時間にアクティブ・ラーニングの視点を踏まえた指導方法を
取り入れなければならないわけでもないと考えた。
そこで、単元のどの場面でどのようにアクティブ・ラーニングの視点を踏まえた指導方法を取り入れていく
ことが有効かを考えることとした。
単元を構想する際に検討する評価の観点に関して、それらを単元の流れを踏まえて配置し、
「思考・判断・表
現」を見るための言語活動にアクティブ・ラーニングの視点を踏まえた指導方法を取り入れた。
(4)学習評価について
上記のような単元構想を踏まえ、学習評価についても活動そのものをどう評価するかという視点ではなく、
あくまで単元全体を見通して計画していくことが望ましいと考えた。
また、評価方法に関しては、例えば、評価の観点「関心・意欲・態度」及び「思考・判断・表現」について
はワークシートや振り返りシート等を活用したり、評価の観点「技能」及び「知識・理解」については授業の
終了間際に行う確認テスト等を活用することなどが考えられるので、明確な評価規準の設定とこれらの評価方
法の活用を通して、アクティブ・ラーニングの視点を踏まえた指導方法を効果的に用いた単元の授業づくりを
行うことが重要であると考えた。
(5)校内授業研究の意義
B高校では、これまでのアクティブ・ラーニングの視点を踏まえた指導方法を取り入れた授業実践の効果を
研究授業等で検証し、研究協議等で教科を超えた情報交換・情報共有を行うことで、
「アクティブ・ラーニング
の効果的な指導法がよく分からず困っている」という声も徐々に減少しているので、次年度の研究計画の立案
へとつなげ、校内授業研究の研究テーマである生徒の「聞く力」の一層の向上を図り、それ以外の資質・能力
の向上にも取り組みたいと考えている。
5 成果と課題
本研究では、神奈川県内の教員を対象としたアクティブ・ラーニングに関する調査を実施し、その結果を分析す
ることにより、アクティブ・ラーニングの視点を踏まえた指導方法を授業に取り入れることの有効性や課題が見え
てきた。また、授業の取組事例を通して、資質・能力の育成を目的としたアクティブ・ラーニングの視点を踏まえ
た指導方法を取り入れた授業の実践により、思考力・判断力・表現力の育成の他に、知識及び技能の習得や主体的
に学習に取り組む態度の養成にも一定の効果があることが分かった。
本研究のテーマである「アクティブ・ラーニングの視点を踏まえた指導方法を取り入れた単元の授業づくりの実
現に向けた校内授業研究の在り方」に関しては、学校として身に付けさせたい資質・能力を明確化し、その育成に
向けた手段としてのアクティブ・ラーニングの趣旨を正しく捉え、単元のどこに、どのようにアクティブ・ラーニ
ングの視点を踏まえた指導方法を取り入れることが有効か(
「導入・展開・まとめ」は1単位時間ではなく単元の
中で構想する。
)
を教科等の組織における複数の教員で検討し、
実践することが大事であるということが分かった。
学校として
身に付けさせた
い資質・能力
の設定
身に付けさせたい資質・能力の育成
育成の手段としてのアクティ
ブ・ラーニングの視点を踏ま
えた指導方法の活用
校内研修会
(趣旨を正しく捉える)
組織的な
取組による
単元研究
図7 アクティブ・ラーニングの視点を踏まえた指導方法を取り入れた校内授業研究のモデル
図7は、アクティブ・ラーニングの視点を踏まえた指導方法を取り入れた校内授業研究のモデルである。
一方、課題については、取組の形骸化などを筆頭に様々な課題があることが分かった。大きな課題の一つとして
挙げられるのが、学習評価であり、パフォーマンス評価の効果的な活用方法など、学習評価については今後も継続
して検討していかなければならない。
6 提言 ~「アクティブ・ラーニングの視点を踏まえた教員による授業づくり」を目ざして~
今回行った教員対象の調査結果の分析を通じて、アクティブ・ラーニングを知っているし実践もしていると回答
する教員が多い一方で、アクティブ・ラーニング自体が「目的」となってしまっていることや、アクティブ・ラー
ニングの視点を踏まえた効果的な指導方法が分からないと考えている教員が少なくないことが分かった。その解決
の方法として、前述したように、RPDCA サイクルの中で行う単元の指導計画を行う上で、アクティブ・ラーニング
の視点を踏まえた指導方法をどの場面でどのように取り入ればいいのか、どうしたら効果的なのかを組織として考
えることの重要性を示した。
また、前述した「論点整理」からも分かる通り、アクティブ・ラーニングの視点を踏まえた指導方法を取り入れ
た授業を行う上では、
「見通しと振り返り」及び記録、要約、説明、論述、討論といった「言語活動」が重要な活
動となる。
今日の社会は、従来までの「知識」を獲得するのではなく、その「知識」を活用し未知なる課題に対して立ち向
かい解決していく力が求められる知識基盤社会である。
その中で生き抜く力を伸ばすことが学校現場に求められて
いるのである。この社会を生きていくための力を伸ばすための一つの手段として、アクティブ・ラーニングの視点
を踏まえた指導方法が有効であるということである。
本研究で述べてきたとおり、アクティブ・ラーニングは目新しいものではなく、すでに多くの教員が行っている
「言語活動」なども含まれている。それらをより有効な取組とするために、何をすればいいのかだけでなく、単元
のどの場面(時(次)
)でどういった方法で行えばより高い効果が得られるのかなどを分析・検証していく必要が
ある。ただ、これを一人で考えることは大変負担が大きく、教科会や教科を超えた検討会及び隣に座っている教員
同士の打合せなどの場面により、複数の視点で見た方がより質の高い分析・検証を行うことが可能になる。まさに
組織的な授業改善の推進である。
これらの活動は、
教員同士が単元指導計画を立案する際に、
様々な課題を見付け、
その解決に向けて主体的・協働的に取り組むいわゆる「教員によるアクティブ・ラーニングの視点を踏まえた授業
づくり」であると言える。このことを模式化したものが次の図8である。
授
業
《単元計画の検討》
授
授
授
業
業
業
授
業
「教員によるアクティブ・ラーニン
グの視点を踏まえた授業づくり」
生徒の
教科会で
アクティブ・ラーニングの視点
を踏まえた指導方法を取り入れ
た授業をどこにどのように入れ
たら効果的だろう…
他教科の教員同士
隣に座っている
教員同士
育みたい資質・
能力の育成
につ なが るかを
検討
図8 アクティブ・ラーニングの視点を踏まえた教員による授業づくり
例えば、振り返りシートを作成する際に、他教科の複数の教員に見てもらうことにする。すると、
「生徒が振り
返りやすくするために、授業で『キーワード』を意識して展開を考えてみたらどうだろうか」といった意見があっ
たので、生徒に「キーワード」をシートに記述させ、それについて理解できたかどうかを確認する項目を作る。教
員個人が考えた教材を他の教員と共有し練り上げ発展させていく。まさに、これは「教員によるアクティブ・ラ
ーニングの視点を踏まえた授業づくり」である。このようにして組織で作り上げた評価計画も含めた指導案に基づ
いて授業を実践し、生徒に身に付けさせたい資質・能力の育成につなげる。このような教員同士による協働を学校
全体に広げ、よりよい授業づくりにつなげていく。
まさに、教員自身が「アクティブ・ラーニングの視点を踏まえた授業づくり」を展開することが、アクティブ・
ラーニングの視点を踏まえた指導方法を効果的に取り入れた単元の授業づくりの実現に向けた校内授業研究の在
り方そのものであると考えられる。
国
語
1.研究のテーマとねらい
(1)研究のテーマ
アクティブ・ラーニングを効果的に取り入れた授業実践の評価と分析及び改善
(2)研究のねらい
アクティブ・ラーニングとは、課題の発見解決のために生徒が主体的・協働的に学ぶ学習の総称で
あり、これからの社会を生き抜くために必要な、生徒の「資質・能力」を育成することを目的として
いる。平成26年の中教審への諮問に、この言葉が使われて以来、にわかに注目されるようになってい
る。しかし、アクティブ・ラーニングがどのようなものあるか、どのような授業を行えばよいのかと
いうことへの理解は、まだ進んでいないのが現状である。
そこで、今年度、教育課程研究会では、前述のテーマを設定し、各教科等におけるアクティブ・ラ
ーニングの視点を踏まえた指導方法の効果的な取り入れ方、その成果と課題を整理し、組織的な授業
改善の推進に資する。
2.研究で取り組んできた内容
先述の通り、アクティブ・ラーニングには決まった「型」があるわけではないが、そのことについ
て、十分に理解されているとは言いがたい。そこで、当部会では、国語科における多様なアクティ
ブ・ラーニングの在り方を提案したいと考えた。そこで、アクティブ・ラーニングには、学習目標や
生徒の実状に応じて、様々な形があるということを示すため、異なる学校で同じ文章を教材として用
い、その授業案を検討した。
3.研究のねらいを達成するための手立て
本研究では、国語科におけるアクティブ・ラーニングを、「作品(題材)に、生徒が主体的に
向き合うことを目ざした学習」と定義付けた。しかし、アクティブ・ラーニングは、あくまでも
「手段」であり、授業の真の目的は、国語科の指導事項を学ぶことにある。生徒が作品に主体的
に向き合い、そのことを通して「何を身に付けるのか」ということに主眼を置かなくてはならな
い。今回は、「国語総合」の「読むこと」「イ・文章の内容を叙述に即して的確に読み取った
り、必要に応じて要約や詳述をしたりすること。」を取り上げ、2つの学校で異なるアプローチ
から、アクティブ・ラーニングの視点を踏まえた指導方法を取り入れた授業案を検討し、研究授
業を実施した。
4.単元の指導計画及び重点を置いた授業展開例
【事例1】
(1)研究実施校:神奈川県立大船高等学校
授業担当者:佐藤 廉太郎 教諭
(2)学校の課題:生徒が自ら学び相互に高め合う姿勢を育成し、基礎的・汎用的な能力を向上さ
せる必要がある。
(3)実施校における研究テーマ:生徒主体の授業改善の実施
(4)科目:国語総合 『ものと記号』池上嘉彦
学年:1学年
(5)単元名: 文章を読んで、その内容を自分の言葉で表現する
(6)単元のねらい:「自分の言葉で表現する」という目的を持って主体的に文章を読む。
(7)単元で身に付けさせたい力:文章を読んで、その内容を自分の言葉で表現する力。
(8)単元の評価規準
関心・意欲・態度
文章の内容を叙述に即して的確に読み取ったり、必要に応じて要約や詳述を
したりしようとしている。
読む能力
文章の内容を叙述に即して的確に読み取ったり、必要に応じて要約や詳述を
したりしている。
知識・理解
文や文章の組立て、語句の意味、用法及び表記の仕方などを理解し、語彙を
豊かにしている。
(9)単元の指導と評価の計画
次
1
2
学習内容と学習活動
身近な記号を考える。
a:関心・意欲・態度
d:読む能力
指導上の留意点
e:知識・理解
評価の観点
a
d
e
評価方法
写真などから読み取る中で
※導入部分
様々な要素を「記号」とし
なので評価
・本文の内容と関連させたフリップの写真
や絵から、それが何を意味するものなのか
考察する。
て捉えていることを気付か
なし
本文中にある「記号」の意味を理解する。
本文中の「記号」を踏まえ
せる。
〇
○
記述の確認
た上で、巻末の「記号」の
3
・段落、慣用句や難読語の確認をしなが
ら、本文中での「記号」という言葉の使わ
れ方を考える。
・教科書巻末にある評論で用いられる「記
号」の意味を参考にしながら、自分なりの
言葉を用いて「記号」について説明できる
ようにする。
意味が理解できるようにす
筆者の論(具体例)や、一般的、評論の中
で使われる「記号」についての説明を発表
する。
「記号」となる絵や写真を
る。次の発表につなげられ
るよう説明を考えさせる。
○
○
自分で探すようにする。
記述の分析
行動の観察
・本文の言葉を用いながら「もの言わぬも
の」を「もの言う記号」に表現し、他者に
説明する。
・他人の発表を聞いて相互評価する。自分
の説明と異なる点や工夫を聞き取る。
(10)取組事例(「第2次(後半)」相当)
①実施日:平成27年10月15日(木)
②授業クラス:1年7組 40名
③本時のねらい:「記号」となる絵や写真を自分で考え、他人に伝えられるようにする。
④本時の指導内容:
学習活動
指導上の留意点
評価方法
○本時の学習活動を確認する。
ねらいを明確にし、作業あ
りきの学習活動にならない
にようにする。
○本文の内容に即して「もの言わぬもの」を「もの言う記
号」に表現する。
・各自で記号表現を作り、その内容の説明を考える。
本文の内容に即して「言葉
らしいもの」のどの種類に
属した記号表現なのか考え
るように指導する。
○グループ内で自分の考えた「記号」について説明する。
・5人のグループを作る。
・聞き取りシートに他の発表者の説明をメモに取る。
・グループの中で代表者を一人決める。
・代表者の説明をより分かりやすいものになるようにグル
ープで考える。
1~2分程度の説明時間を
設定する。
大き目の紙を配付し、記号
を描かせる。
記述の分析
行動の観察
○グループ代表者がクラス内で発表する。
・聞き取りシートに発表者の説明についてメモをとる。
○自分たちの考えた「記号」と本文で紹介された記号内容
について、考える。
1~2分程度の説明時間を
設定する。
自分たちの考えたものが、
前時まで学習した本文の記
号内容のうち、どれに該当
するか考える。
【事例2】
(1)研究実施校:神奈川県立厚木東高等学校
授業担当者:熊谷 剛 教諭
(2)学校の課題:学習活動が何のための活動なのかを明確にし、何を学び、それをどう生かしてい
けば良いのかを理解させて取り組ませる必要がある。
(3)実施校における研究テーマ:「生徒が参加する授業とは」
学習習慣確立を具体的な目標とし、そのための取組の一つとして「生徒が参加する授業」を各教
科、教員で実践していくことを学校のテーマとしている。
(4)科目:国語総合 『ものと記号』池上嘉彦
学年:1年
(5)単元名:評論文を読む
(6)単元のねらい:本文に線や記号を付すことで、評論文の内容を理解できることを実感し、主体
的に本文に向き合う。
(7)単元で身に付けさせたい力:初めて読む文章であっても、重要語句や、文の構造をたどり、自
分なりに解釈できる力を養う。
(8)単元の評価規準
関心・意欲・態度
文章の内容を叙述に即して的確に読み取ったり、必要に応じて要約や詳述を
したりしようとしている。
読む能力
文章の内容を叙述に即して的確に読み取ったり、必要に応じて要約や詳述を
したりしている。
知識・理解
文や文章の組立て、語句の意味、用法及び表記の仕方などを理解し、語彙を
豊かにしている。
(9)単元の指導と評価の計画
a:関心・意欲・態度
d:読む能力
e:知識・理解
評価の観点
次
学習内容と学習活動
指導上の留意点
1
「言葉」や「言葉らしいもの」「記号」に
ついて考える。
「言葉」と「言葉らしいも
※導入部分
の」があることを確認し、
なので評価
身近なところから記号につ
なし
2
「言葉らしいもの」について確認し、様々
な記号を分析する。考えをグループで共有
し、記号についての理解を深める。
いて考えさせる。「言葉ら
本文を読み、構造をつかむ。
グループ読みをさせ、各自
d
e
評価方法
しい」ものについて分類で
きるようにする。
で本文に向かい合う。線や
本文のポイントとなる箇所に、線や記号を
付し、自分なりに本文の構造化を行う。
a
記号を付した箇所をグルー
プで共有させ、本文のポイ
ントをつかめるようにす
る。内容が高度で、取り組
みが停滞していたら、ある
部分に絞り、取り組みの助
言を行う。
〇
〇
記述の分析
行動の観察
3
段落ごとに本文を読み、内容を理解する。
文や文章の組立てを確認
〇
〇
記述の分析
し、今後の評論の読みに生
各自の読みと照らしながら、本文の内容を
理解する。
かせるようにする。
(10)取組事例(「第2次」相当)
①実施日:平成27年10月8日(木)
②授業クラス:1年G組 20名
③本時のねらい:本文のポイントとなる箇所に、線や記号を付し、自分なりの構造化を行うこと
で本文を的確に読み取ることができること。
④本時の指導内容:
学習活動
〇本時の学習内容の確認。
指導上の留意点
評価方法
線や記号を付すことが目的
記述の分析
行動の観察
なのではなく、本文理解の
ための活動であることを理
解させる。
〇グループごとに音読し、各自が本文に線や記号を付す。
〇本文のキーワードとその理由を考える。
・グループごとにキーワードを探させ、そう考えた理由を
発表させる。
なぜそれがキーワードだと
考えたのかを叙述に基づき
説明できるよう指示する。
自分たちのグループの考え
と比較して聞くよう指示す
〇本時の学習内容を振り返る。
る。
5. 単元の授業づくりに基づく授業実践の評価と分析
評論文の授業については、従前より、難しい語句や難解な本文の構造を教員が板書等に工夫を凝らし
ながら丁寧に説明していくという授業が多かった。しかし、これだけでは、その時に文章に書かれた内
容を理解できたとしても、その理解を自らの力で獲得するための力は身に付かない。
そこで、本研究では、「評論を自分自身で読み解く力」を身に付けることを目ざして単元の授業づく
りを行った。具体的には、「単元の指導と評価の計画」の項にも示したように、『ものと記号』(池上
嘉彦)を教材として用いた。取り上げた指導事項は、 「国語総合」の「読むこと」「イ・文章の内容
を叙述に即して的確に読み取ったり、必要に応じて要約や詳述をしたりすること。」である。この
指導事項を効果的に指導するため、1学期からの指導の系統性に鑑み、次の二つのアプローチを考
えた。
【事例1】では、文章全体の核となる「キーワード」(今回は「記号」)を、図等を用いながら、自ら
の言葉で説明するという活動を取り入れることで、全体の要旨をまとめる力の育成を目ざした。本実践
では、本文が一目で見えるよう、プリントのレイアウトを工夫し、そこにクラスの共通ルール(4月当
初より継続的に指導している)に則り、線や符号を付すことを主な活動に据えた。ルールを共有化する
ことで、生徒は活動に取り組みやすくなり、主体的にテキストに向き合うことができたように思う。
また【事例2】では、今まで教員が行っていた説明等をはじめからは行わず、本文の読み取りを生徒
たちに任せて、まずは文章について、自分なりに考えさせることとした。また各自の勝手な読み取りと
ならないように、ポイントとなる言葉や表現をしっかりと意識させるよう、本文に記号や線を引かせる
という活動を取り入れた。ここでは、本文に書かれたことを解釈し、自分なりの新たな「記号」を作
り、それを他者に説明することを通し、本文の理解を深めることを目ざした。これについては、ある程
度の成果を挙げることはできたが、生徒の作った新たな「記号」が、本文の確実な理解に基づくもので
あるか否かが、曖昧なまま終わってしまった。
授業後の生徒たちのアンケートでは、「やることを明確に教えてくれたので、しっかりと理解できた
上で授業に臨めた」「ねらいを提示されると目標意識が生まれた」「内容を予告してもらうことですん
なりとポイントを理解できた」等、ねらいと活動を明確にすることで、やるべきことと学ぶべきことを
理解し、学習に取り組めたという意見があった。また、「自分ではあまり気にしていなかった部分も友
達の意見を聞き、なるほどと実感できた」「他の人の意見が、自分が目をつけたところと違う箇所だっ
たため、たくさん考えることができた」「他の人のたくさんの考えを聞くことができ、自分の考えが広
がった」というように、他者の意見を参考にして自分の考えを広げることができたという意見も多くあ
った。そして「今回の授業のように、新しい文章を読む時に、線や記号をつけられるようにして、キー
ワードや筆者の言いたいことをつかめるようにしたい」「もっともっと内容を詳しく理解できるように
なりたいと思った。本をたくさん読むと決めた」等、今回の学習を生かして今後も文章の読む力を高め
ていきたいという意見もみられた。
アクティブ・ラーニングといっても様々な方法があり、また対象とする生徒により適したねらいや活
動も多様である。まずは、目の前にいる生徒たちの現状を把握し、その生徒たちに必要な学びを考えて
いくことが大切である。
6.成果並びに課題とその改善に向けた方策
課題の発見と解決に向けて主体的・協働的に学ぶ学習=いわゆるアクティブ・ラーニングであるが、
これに関しては、様々な受け取り方があり、理解が不足したままに導入が進むことで、学校現場が混乱
するという事態が危惧される。具体的には、ある特定の授業形態のみがアクティブ・ラーニングだとさ
れてしまう誤解や、単純にグループ活動や発表を行うことを求めるあまり本質が見失われ、活動主義的
な授業が横行するといったことである。
そこで、国語部会では、全体テーマを受け、同じ教材を2つの学校で異なるアプローチの授業を行う
ことで、アクティブ・ラーニングの多様性を示すことを目ざした。その際、教材としては「評論文」を
とりあげることとした。文学的な文章では、感想や解釈について、例えばグループになるなどして、他
者と意見を交流するという取組が、最近、多く見られるようになってきた。しかし、評論文では、教員
が自らの読みを解説していくという授業が、まだまだ少なくないからである。 その一方で、アクティ
ブ・ラーニングというと、教師がなるべく関わらない授業をするべきだとする考え方もある。しかし、
これもまた大いなる誤解である。これまで述べてきたように、アクティブ・ラーニングで目ざすべきは
「主体的な思考」であり「主体的な活動」ではない。また、「主体的であること」と「自主的であるこ
と」も似て非なるものである。生徒を放置してよい授業などあり得ない。
また、グループ活動については、今回、どちらの実践事例も、グループの要素を取り入れた。もちろ
ん、アクティブ・ラーニングの要素として「協働性」があるため、学習が個人に閉じないことは重要で
ある。しかし、基本的には、国語科の授業としては、生徒が本文や「記号」という言葉そのものに、主
体的に向き合うことが最優先事項である。
生徒が主体的に考えるためには、生徒の状況に合わせて、考えるための材料を整えたり、考える手順
を示したりと、教師が準備段階ですべきことは多い。ここを怠ると、生徒は何をすればよいのか、何を
考えればよいのか戸惑い、思考するところまで至らず、表面的で中身のない授業になってしまう。
例えば、今回の【事例2】では、「筆者の意見・考えは実線」「具体例は波線」「接続詞は□囲み」
「逆説は△囲み」…というような「ルール」を定めて、記号を付しながら文章を読ませた。これは、一
見、生徒は教師の指示通りに動いているだけで、アクティブ・ラーニングとは言えないように思われ
る。しかし、教師が指示しているのは、学習活動の「方法」だけであり、読みの「内容」は、生徒に委
ねられている。生徒は縛られているようでいて、どう読むかということに関しては、まったく縛られて
はいないのである。逆に、線や記号といった「ルール」「ツール」を手にすることにより、生徒は素手
の時よりも、より主体的に文章そのものに向き合うことが可能となるのである。ゆえに、このような授
業は、目ざすべきアクティブ・ラーニングの視点を踏まえた授業の好例であると言えよう。このよう
に、生徒が主体的に学ぶためには、教師の綿密な教材研究・指導計画が欠かせないのである。
学校現場における誤解を解き、アクティブ・ラーニングの視点を踏まえた指導方法が、より効果的に
授業に取り入れられるよう、今後も適切な事例を紹介していきたいと考える。
地
理
歴
史
1 研究のテーマとねらい
(1)研究のテーマ
共通テーマである「組織的な授業改善の推進―アクティブ・ラーニングを効果的に取り入れた単元の授
業づくり」を踏まえ、特に地理歴史部門では、昨年度の研究テーマであった「基軸となる問い」を意識し
た授業づくりの成果を土台として、県立高校改革実施計画(Ⅰ期指定校事業)の重要なテーマの一つであ
る「逆さま歴史教育」の研究と実践を進めていくこととした。
(2)研究のねらい
現代社会にある様々な事象について、生徒自らが、その歴史的な背景を遡って探究し、過去と現代と
のつながりを意識しながら自ら思考・判断した結果を発信していく授業を提案し、来年度より始まる「逆
さま歴史教育」の研究に資することをねらいとした。
2 研究で取り組んできた内容
まず研究の出発点として、
「逆さま歴史教育」とは何かということを明確にするための議論から始めた。様々
な議論を経て、本研究においては「現代社会にある様々な事象について、生徒自らが、その歴史的な背景を
探究し、過去と現代との因果関係などを考察する授業」を逆さま歴史教育の中心的な概念と捉え、そのアイ
デアを提案することを研究の基本とした。
3 研究のねらいを達成するための手立て
本部会では、まず生徒自らが現代社会の事象について、主体的に向き合い、考えるための単元構成や教
材を研究した。さらにはこれらの授業を公開したり、教育課程説明会において、
「逆さま歴史教育」の基本
的な考え方を説明したりするなどして県内の各高校への周知を図った。
4 単元の指導計画及び重点を置いた授業展開例
〈展開例その1〉
(1)研究実施校:神奈川県立神奈川工業高等学校(定時制)
(2)学校の課題:中学校までの学習において、様々な理由から多くの課題を抱えている生徒が多いという
実態がある。
(3)研究テーマ:困難な課題を抱える一方で、工業関係をはじめとした実技科目に対する取組は大変
熱心である。そのため、座学の授業でも、生徒が主体的に取り組みやすい単元計画を作
成し、実技科目以上に生徒との対話を取り入れながら、工夫した教具を活用した授業実
践を行う。
(4)科
目:世界史A
学年:第2学年
(5)単 元 名:現在につながる社会の形成
(6)単元のねらい
・近代以降の日本を取り巻く領土をめぐる諸問題について、世界の動きと結び付けながらその歴史的な
経緯などを調べ、グループでの協働学習や対話などを通じ、思考・判断しながら考察を深めていく。
(7)身に付けさせたい力
・現代社会の諸問題について関心を持ち、歴史的な背景と現代との因果関係を理解し、現在まで続く課
題を主体的に考察する力。
(8)単元の評価規準
関心・意欲・態度
思考・判断・表現
資料活用の技能
知識・理解
近代以降の日本と日本を 近代以降の日本と日本を 近代以降の日本と日本を 近代以降の日本と日本を
取り巻く世界の状況につ 取り巻く世界の状況につ 取り巻く世界の状況につ 取り巻く世界の状況につ
いて意欲的に考え、工夫 いて思考・判断した結果 いて考察し、意見を発信 いて基本的な歴史の流れ
をしながら意見をまとめ を現代の諸課題と結び付 する上で、諸資料を有効 を理解している
ようとする
けながら表現する
に活用する
(9)単元の指導と評価の計画
時
間
学習項
目
1
次
問い
2
次
学習活動
評価の観点
a
b
c
d
評価規準
評価方法
帝国主義の広がりで世界はどのように変化したか?
帝国主義の 19 世紀末から
過程
みられた「帝国
主義」の内容を
理解し、欧米列
強による植民
地獲得の様子
を調べる
「帝国主義」とは、軍事
や政治を背景に、
市場の
拡大や資源の確保のた
めの行動であることを
知り、
欧州諸国だけでな
くアメリカや日本も加
わったこと理解する
○
教科書か
らの読み
取り
ワークシ
ート
国家の意
義や構成
国際社会における国家
の意義や構成を知り、
ナ
ショナリズムと国民国
家、
国際法の関係につい
ての知識を身に付ける
○
資料の
読み取
り
資料への
記入
領土の変
遷につい
て、工夫
しながら
理解しよ
うとして
いるか
行動観察
地名を探
し歌詞の
変化の背
景を考え
ることが
できたか
グルー
プ作業
国家と領土の
関係を考える
○
問い なぜ「蛍の光」の歌詞は時代によって変化しているのだろうか?
音楽を聴
く
歌詞の変
化と地名
3
次
ねらい
「蛍の光」の歌
詞を手がかり
に、現在の日本
の領土を知り、
領土の変遷を
年代順に理解
する
現在の日本の領土がど
のような変遷を経て現
在にいたったのかにつ
いて理解し、
領土に関す
る諸課題を考察するた
めの基礎的な知識を身
に付ける
戦後になって
2番までしか
歌われなくな
った理由を考
える
「蛍の光」
がどのような
場で歌われたかを考え、
2番までしか歌われな
くなった理由を考察す
る
○
○
○
問い
今の日本をとりまく領土問題には、どのようなものがあるか?
日 本 を 取 戦 後 の 日 本 外 戦後、東西冷戦のなか
○
り 巻 く 交の歩み
で、
日本の外交がたどっ
様々な領
てきた道のりを理解す
土問題
る
北方領土問題
をはじめ、日本
の領土を取り
巻く諸課題に
は、どのような
ものがあるか、
調べてきた内
容を発表する。
ロシア(ソ連)と日本の
主張を理解し、
それぞれ
の立場を確認する。
○
ワークへの
記入
資料、教科
書の読み
とり
シートへ
の記述
発表内
容
(10)取組事例
①実施日
:平成27年11月18日(水) 授業担当者:加藤 将 教諭
②授業クラス :第2学年
③本時のねらい
・ 現在、日本は、周辺諸国との間にいくつかの領土対立を抱えている。こうした課題は、いつ始ま
り、どのようにして現在に至ったのかについて、生徒の理解を助け、自らが探究する力を培うこと
をねらいとしている。
④本時の指導内容
・ 唱歌「蛍の光」の、普段は耳にすることのない3番以降の歌詞に載っている地名を探し、年表と
比較しながら日本の領土の変遷に関する理解を促す。
授業展開
学習活動
評価方法
なぜ「蛍の光」の歌詞は時代によって変化しているのだろうか?
導入(5分)
展開(35 分)
「蛍の光」がどのような場面で使われているか考える。
① 「蛍の光」の歌詞に着目して、場所や歌詞の変遷の
訳を探る
行動観察
【関心・意欲・態度】
・歌詞に出てくる地名を地図上から探す
② 領土の帰属に関する変遷を時系列にまとめる
・カードを使った並べ替えの作業
・資料を使い、歌詞の変遷の訳と日本や世界の状況を
結びつけて考察する
③ 「蛍の光」がどのような場で歌われたかを考え、2
番までしか歌われなくなった理由を考える
まとめ(10 分)
ワークシート
【思考・判断・表現】
【資料活用の技能】
発表【思考・判断・表現】
次回予告(現在の領土をめぐる諸課題について考えよう)
〈展開例その2〉
(1)研究実施校:神奈川県立柏陽高等学校[普通科]
(2)学校の課題:基礎・基本を着実に身に付けた上での言語活動の充実
(3)実施校における研究テーマ:逆さま歴史教育を取り入れたアクティブ・ラーニング(AL)
(4)科目:近現代と神奈川(学校設定科目)
学年(年次):2学年
(5)単元名:冷戦から 21 世紀へ
(6)単元のねらい:高度経済成長から現代にいたる戦後経済史の流れを理解した上で、現代から過去にさか
のぼって歴史を学習することにより、歴史の諸事象についての理解をより深める。
(7)単元で身に付けさせたい力
・戦後の日本経済についての歴史的展開を理解する。
・戦後の日本経済の歩みを簡潔にまとめることができる。
・学んだ知識を活用して歴史的事象の因果関係を主体的に考察することができる。
(8) 単元の評価規準
関心・意欲・態度
思考・判断・表現
資料活用の技能
知識・理解
戦後の日本経済につい
ての歴史的展開を主体
的に考えようとしてい
る
戦後の日本経済の歩みに
ついて学んだ知識を活用
しながら事象の原因と結
果などについて考察し、
仮説をたて、自らの意見
を表現することができる
戦後の日本経済の歩みに
ついて諸資料を有効に使
いながら調べ、まとめる
ことができる
戦後の日本経済の歩みに
ついて歴史的な展開を理
解している
(9)単元の指導と評価の計画
時
間
学習項目
学習活動
ねらい
評価の観点
a
b
c
d
評価規準
評価の方法
1
問い 高度経済成長はなぜ可能だったのか、また経済の成長は人々の生活をどう変えたか?
2
高度経済成長と
は何か
「政治から経済の
季節へ」の移行過程
を学ぶ
高度経済成長の
背景が分かる
経済成長が可能
だった背景
所得倍増政策、技術
革新や円安の意味
技術革新や円安
の特徴が分かる
変わる生活
消費革命と中流意
識の涵養
変化をグラフか
ら読み取る
〇
〇
発問に対して
工夫して答え
を導こうとし
ている
行動観察
高度経済成長
の特徴を適切
にまとめてい
る。
ポートフォリ
オ
問い 高度経済成長が終焉してもなぜ安定成長を続けることができたか、またその問題点は何か?
高度経済成長の
終わり
成長終焉の背景を
理解し石油危機に
ついて知る
高度経済成長の
終焉の因果関係
が分かる
安定成長への意
向
安定成長が可能だ
った背景を知る
安定成長へ移行
した因果関係が
分かる
安定成長期の問
題点
貿易摩擦について
知る
グラフから貿易
関係を読み取る
バブル経済
バブル経済の特徴
を知る
日本経済への影
響が分かる
〇
○
発問に対して
工夫して答え
を導こうとし
ている
行動観察
安定成長期に
ついて適切に
まとめること
ができる
ポートフォリ
オ
3
問い 「失われた 20 年」はなぜ起こったのか、またその間に人々の生活はどう変わったのだろうか?
失われた 20 年
不況の深刻化につ
いて知る
グラフから不況
を読み取る
小泉改革
新自由主義改革に
ついて支持や批判
など様々な意見の
内容を調べる
実感なき景気回
復を理解する
現状の経済政策
いわゆるアベノミ
クスの目的と現状
現状の経済政策
を理解する
〇
様々な資料か
ら経済状況を
正しく読み取
り、適切にまと
めることがで
きる。
○
4
デフレ期の経
済についてま
とめている
グループワー
クでの様子
1 枚ポートフ
ォリオ
AL:自動車新車販売台数の推移の背景を考察し発表する
自ら問いと仮説
を立てる
自動車販売台数の
推移を遡り、問いと
仮説を立てる
グラフから推移
の原因を読み取
ることができる。
仮説の発表
評価カードで点数
の高かった班が全
体に向けて発表す
る
考察した内容を
まとめ、表現する
ことができる
まとめ
仮説の検証に必要
な資料について検
討
○
○
工夫をして事
象の因果関係
について考え
ようとしてい
る。
グループワー
クでの様子
思考・判断した
結果を適切に
まとめ、発表す
ることができ
る
評価シート
(10)取組事例
①実施日:平成 27 年 11 月 17 日(火) 授業担当者:渡辺 研悟(教諭)
②授業クラス:2年6組 41 名
③本時のねらい:自動車の新車販売台数の推移について、戦後経済史の知識を活用しながら、自ら問を立て
資料を読み込み、根拠を明確にした上で、自らの意見を表現する。
④本時の指導内容
授業展開
学習活動
指導上の留意点
評価方法
自動車新車販売台数の推移をみて問いを探し、仮説をたてよう!
本日の授業内容
の紹介
(5 分)
授業テーマの確認と方法の説明についてスライ
ドを用いて行う。評価カードを配る。
授業の目的と方法について理解
させる。
方法については授業者が
例を一つ提示する。
自ら問いを立て
る
(10 分)
自動車の販売台数の推移をさかのぼり、グラフ
から読み取れる特徴から問いを立て、ホワイト
ボードに記入する。
1960 年~90 年、1990 年~2015
年のふたつの枠組みでグラフか
ら特徴を読み取らせる。
仮説を立てる
(20 分)
立てた問いに対して資料をもとにしてその背景
の仮説を立てる。
必ず仮説の根拠となるプリント
や資料を明確化させる。
発表の準備
(5 分)
評価基準を配り、発表者や発表方法を話し合う。 経済史の知識を活用して、
経済事
象の背景を考える。
仮説の発表
(15 分)
最優優秀班の発
表
(5 分)
ワールドカフェ方式で一班 2 分、評価時間 1 分
で発表を行う
評価カードで一番点数の高かった班が全体に向
けて発表する。
発表に向けた準備を行う。
まとめ
(5 分)
仮説の検証に必要な資料は何かについて検討す
る。
探究する力を育む。
ワークシート
発表
優れた活動を全体に向けて共有
する。
〈展開例その3〉
(1)研究実施校:神奈川県立大和南高等学校(全日制普通科)
(2)学校の課題 :グループに分かれての協議活動には、積極的に参加する意欲があるが、十分に基礎的な知
識を身に付けていないため、議論が深まらないという課題がある。
(3)実施校における研究テーマ
・
「逆さま歴史教育」において、グループでの協働学習の中で、テーマに基づいて探究し、その結果を
発信する学習を通して歴史的な思考力を育む。
(4)科目:世界史B
学年:2学年
(5)単元名:産業革命
(6)単元のねらい
・現在の人間と機械の関係から、18 世紀後半及び 20 世紀初頭の産業革命がもたらした利点や諸問題を理
解し、現在の社会とのつながりを考察することで、21 世紀の新たな産業を思考するきっかけにする。
(7)単元で身に付けさせたい力
・現在の人間と機械の関係から、18 世紀後半及び 20 世紀初頭の産業革命がもたらした利点や諸問題を理
解し、現在の産業構造社会とのつながりを考察できる力。
(8)単元の評価規準
関心・意欲・態度
思考・判断・表現
資料活用の技能
知識・理解
産業革命がもたらした利
点や諸問題を理解し、現
在の人間と機械の関係に
ついて工夫をしながら考
察しようとしている。
産業革命がもたらした利
点や諸問題を理解し現在
の人間と機械の関係につ
いて思考・判断した結果
を表現することができ
る。
産業革命がもたらした利
点や諸問題を理解し、現
在の人間と機械の関係を
考察する上で諸資料を適
切に使うことができる。
18 世紀後半及び 20 世紀
初頭の産業革命がもたら
した影響などを理解して
いる。
(9)指導と評価の計画
時
1
学習内容
学習活動
ねらい
評価の観点
a
b
c
d
評価規準
評価方法
問い 今のオートメーション化された工場について、メリットとデメリットは何か?
現在の産業をと
現在のオートメーシ
19 世紀後半に第
りまく状況と19
ョン工場の写真資料や
世紀後半の産業
19 世紀後半の産業革命
革命
○
工夫をしな
グループでの
二次産業革命と
がら意見交
討議
もよばれるよう
換をしてい
に関する資料などから
な大きな社会変
る【a】
社会や個人に与えた
動が起きた背景
影響などを考えてまと
などを考える
○
思考判断し
ワークシート
た結果を表
める
現している
【b】
問い 産業革命はどのように始まったのだろうか?
2
18 世紀後半か
産業革命が起こった要
18 世紀後半にイ
らはじまる世
因を考え、イギリスか
ギリスで産業革
○
産業革命が
起きた要因
界最初の産業
ら産業革命が始まった
命が起こった要
について思
革命
理由について話し合う
因をまとめる
考し、結果
ワークシート
を適切にま
機械の発明と
人力と機械の違いや機
産業革命後、社会
とめている
交通機関の改
械が発展した様子につ
が変化した様子
【b】
良
いて意見を出し合う
を考察する
産業革命後の
資本家・労働者・技術
当時の人々の
社会構造
者・農家などのグルー
様々な立場の視
から社会の
プをつくり、資料から
点に立つことで、
様子を捉え
産業変化についての意
社会構造を多面
ることがで
見をまとめ、発表する
的に理解する
きる【c】
資料を使い
○
発表
様々な視点
問い 産業革命は人間を幸せにしたのだろうか?
3
産業革命の問題
人間の代わりをするロ
現在、起きている
と現在の諸問題
ボットの例などを紹介
といわれる産業
のように機
し、問題点などを出し
革命について考
械と接して
合う
え、問題点など自
いくべきか
らの考えを発信
を主体的に
今後の機械と人間の関
する力を育成す
考察する
係を考察し、その結果
る
【a】
【b】
を発表する
○
○
私たちはど
ワークシート
発表
〈展開例その4〉
(1)研究実施校:神奈川県立光陵高等学校(全日制普通科の課程)
(2)学校の課題:学力向上進学重点校としての高等学校教育のコアの確立、組織的・計画的な授業改善の取
組と校内研修の充実
(3)実施校における研究テーマ
・高い学力の習得と、バランスの取れた豊かな人間性と社会性を培う質の高い教育活動とキャリア教
育を展開することをコアとして実践し、幅広い教養を身に付けた人間力あふれる次世代リーダー育
成を図る。
(4)科目:日本史A(地理歴史科) 学年:第2学年
(5)単元名:第二次世界大戦と日本 〈戦前の文化〉
(6)単元のねらい
・昭和戦前史を中心とする日本の歴史の展開と課題を、現代の日本と関連付けて考察させることによっ
て、歴史的思考力を培い、市民としての自覚と国際社会に主体的に生きる日本人としての資質を養う。
(7)単元で身に付けさせたい力
・昭和戦前史の課題を、現代の日本と関連付けて多面的・多角的に考察し、国際社会の変化を踏まえつ
つ公正に判断できる。
・昭和戦前史の展開についての基本的な事柄を、現代の日本とのかかわりを踏まえ総合的に理解し、そ
の知識を身に付けている。
(8)単元の評価規準
思考・判断・表現
知識・理解
昭和戦前史の課題を、現
代の日本と関連付けて
多面的・多角的に考察
し、国際社会の変化を踏
まて公正に判断できる
昭和戦前史の展開につい
ての基本的な事柄を、現
代の日本とのかかわりを
踏まえ総合的に理解し、
知識を身に付けている
(9)指導と評価の計画
学習内容
b
d
1
戦後 70 年 戦後 70 年
身のまわりにあ ○
〈 戦前の 身のまわりに る「戦前期の文
文化〉
ある「戦前期 化」を見いだす
の文化」を探
る
(個人⇔ グ
ループ)
○
2
(本時)
学習活動
戦争と音楽
(生徒による
探究)
ねらい
観 点
時
戦前の文化と ○
現代とのかか
わりを通して,
その変遷,相
違点(共通点)
などを考察す
る
○
評価規準
評価方法
昭和戦前史の課題を ワークシ
現代の日本と関連づ ート
けて多面的・多角的に
考察できる
昭和戦前史の文化に
ついての基本的な知
識を身に付けてい
る
(10)取組事例
①実施日:平成 27 年 11 月 16 日(月) 授業担当者:藤沼総輔 教諭
②授業クラス:2年3組 39 名
③本時のねらい
・文化史を多角的な視点から理解する能力を高める。
・文化の基本的性格を考察し,戦争と文化の関係性を理解する。
④本時の指導内容:
(学習の効果) ・身近なものの中から昭和戦前期の文化を探ることによって、現代とのつながり・か
かわりを知り、歴史の理解・考察を深めることができる。
授業展開
導入
(10 分)
学習内容
指導上の留意点
評価の方法
戦前期の音楽が,現代日本においてどのように用いられているか。また,その
音楽のどのようなところにつながり等があるのか。
○現代日本に浸透している、いわゆる軍
歌、戦時歌謡の戦時期の音楽を知る。
学習活動の取組状況
(観察)
展開
(20 分)
戦前期から現代までの間に、戦前期の音楽が、どのように歌詞や使用目的で変わって
いるか(変わらなかったか)
。音楽のどのようなところにつながり等があるのか。
○導入を踏まえ、戦時中との歌詞の変化や
使用目的の変遷・相違点を考える。
現代において、どのよ
うな場面でそれらが聴
かれ、どのような効果
をねらったものかに気
付かせる。
学習活動の取組状況
(観察、意見交換時の
質的な見とり)
現代日本でも見られる
「キャラクターソン
グ」などとの共通点を
見い出すよう促す。
まとめ
(15 分)
○「戦争期の文化」と「現代 日本におけ
るメンタリティー」を考えてまとめる。
過去の「事象」に学び
つつ、現代日本とのつ
ながり・影響について
考察する意義に触れ
る。 (
「逆さま歴史教
育」
)
学習活動の取組状況
(観察)
まとめた記述内容
<展開例その5>
(1)研究実施校:神奈川県立上鶴間高等学校(全日制普通科の課程)
(2)学校の課題: 組織的・計画的な授業改善の取組と校内研修の充実
(3)実施校における研究テーマ
・史実の評価について、一面的な理解にとどまらず、自ら資料にあたり探究することで多面的な評価
をする姿勢を育むことをはじめとして、幅広い教養を身に付ける。
(4)科目:日本史A(地理歴史科) 学年:第2学年
(5)単元名:明治維新
(6)単元のねらい
・日本が近世から近代に移行する時期の歴史の展開について国際環境と関連付け、世界の中の日本とい
う視点から客観的に考察させる。
(7)単元で身に付けさせたい力
①当時の人物、事件、社会を通して時代背景を理解する。
②文字史料や歴史資料を読み解き、得られた情報から史実を導く。
③史実を同時代の日本や世界から概観し、後世に与えた影響を認識する。
(8)単元の評価規準
関心・意欲・態度
思考・判断・表現
資料活用の技能
知識・理解
日本が近世から近代に移
行する時期の歴史の展開
について国際環境と関連
付け、主体的に考察しよ
うとしている。
日本が近世から近代に移
行する時期の歴史の展開
について国際環境と関連
付け、世界の中の日本と
いう視点から客観的に考
察し表現できる。
諸資料を有効に使い、日
本が近世から近代に移行
する時期の歴史の展開に
ついて国際環境と関連付
けてまとめることができ
る。
日本が近世から近代に移
行する時期の歴史の展開
について国際環境と関連
付け、世界の中の日本と
いう視点から客観的に考
察させる。
(9)単元の指導と評価の計画
時
学習内容
1
1862(文久 2 年)
の政局
2
3
4
幕末の江戸・
横浜と駐日外交
官
被害者・諸外国
から見た生麦事
件
それぞれの
生麦事件
学習活
動
講義
ねらい
公武合体運動と島津久光の幕政への
干渉について時代背景を理解する
講義
安政の五か国条約により外国公館が
設置されたことと生麦事件に関する
いくつかの記録が残された理由を理
解する
グルー
プワー
ク
生麦事件で犠牲となるリチャードソ
ンの生前の書簡から班ごとに来日の
時期と江戸の印象をまとめ、報告する
グルー
プワー
ク
班ごとに外交官が残した生麦事件の
4 本の記録を解釈し、他の班員ととも
に史料の解釈を報告シートにまとめ、
報告し合う
講義
日本人によるイギリス人殺傷事件と
薩英戦争が起きた背景について理解
する
グルー
プワー
ク
生麦事件に関わる被害者や加害者側
の当事者についてその後のことを紹
介する
生徒が各自で事件の残した意味や資
料の読み方に関わる教訓をまとめる
評価の観点
a
b
c
○
○
○
○
○
評価規準
評価方法
時代背景を
意欲的に理
解しようと
している
発問の内容
関心・意欲
を持ってグ
ループワー
クに参加し
ている
班別活動の
観察
資料に依拠
した解釈が
できる
他班の報告
を踏まえて
思考・判断
した結果を
表現できる
班別活動の
観察と報告
シート
○ 攘夷思想や
外国人排斥
事件とその
背景を理解
している
授業中の生
徒の観察と
ワークシー
ト
d
資料との関
わり方につ
いて留意す
べき点をま
とめられる
行動観察
ワークシー
ト
5 単元の授業づくりに基づく授業実践の評価と分析
〈展開例1〉
神奈川工業(定時制)の例では、現在の「国民国家」
「主権」
「領土」などに関わりが深い単元をヒントに今
回の単元計画を立案した。しかし本時前の調査では、
「蛍の光」を「知っている」生徒はわずか 10%であり、
卒業式で歌った経験も少ないことが分かった。そこでまず生徒達に「蛍の光」への関心を高め、後に歌詞の
内容を扱い学習することとした。1882(明治 15)年、
『小学唱歌集初編』に掲載された歌詞には、
「千島の奥
・ ・
も沖縄も、八洲の内の(後略)
」とされ、その後、4番は「千島の奥も、台湾も、八洲の内(後略)
」そして、
「台湾の果て、樺太も、八洲の内の」へと変化した。地名の変化について、日本地図(平成 27 年3月に教育
委員会より配布されたもの)を活用して、これらの島々が当時の北端と南端であること、歌詞の変化の理由
には、それぞれ歴史的出来事としての日清、日露戦争が関係していることに気付かせることを意図した。
クラス全体で歌詞にある4つの場所を地図中から見つけ出す作業を手始めに領土変遷の学習では、
「樺太千
島交換条約」
「下関条約」
「ポーツマス条約」
「現在」の時点の4枚の地図カードを用意し3~4名のグループ
に分かれ歴史の流れを整理する協働作業を行った。生徒は、グループで討議しながらカードを並び替えたり
して知識を時系列に整理することができた。最後に、出征に赴く兵士への別れの場面で「蛍の光」が歌われ
ている映像を視聴し、現在は2番までしか歌われない理由について意見を出し合った。
生徒は概ね積極的に授業に参加し、発言や質問、協働作業などスムーズに進行し、当初は認知度の低かっ
た「千島」
「沖縄」
「台湾」
「樺太」の名称や場所に関する知識は、定期テストの際には、それぞれ 68%、94%、
70%、59%と向上し、知識が一定程度定着したことが分かった。しかし「樺太千島交換条約」
「下関条約」
「ポ
ーツマス条約」とそれぞれの地名との関連については、知識の定着を果たせたとは言えない状況であるため、
現代の領土問題を考える際にも議論の深まりは難しい。生徒の中には、領土問題に関する知識を持っている
者もいたため、今後は、こうした生徒の知識を引き出しつつ、さらに活発な授業展開を図りたい。
〈展開例2〉
柏陽高校の例では、単元指導計画を立てる際には、設定した言語活動の内容を見据えて、そのために生
徒がおさえておくべき知識は何かを把握することが重要であると考えた。活用させる知識がきちんと定着
しているかどうかがアクティブ・ラーニングの正否に関わるため、習得の時間を3時間とった。一枚ポー
トフォリオやマインドマップ(ウェビング)を使用することで、知識が定着しているかどうか、生徒自ら
が整理したり意識化できるよう配慮した。また生徒が主体的に問いを立てる場面を作ることで、課題発見・
課題解決能力を養うものとした。
本実践では生徒に仮説を立てさせ、発表を1時間の間で行ったが、観点が 1960~90 年、1990~2015 年と
二つに分かれていたため、2時間の時間配分で行う方がより望ましかった。問いを立てる際には、グラフ
や統計資料など、目に見えて変化の分かる教材を活用することが重要で、また仮説を立て考察を行った場
合、仮説の妥当性を検証する場面が必要である。そのため、本実践の後に、生徒には、1950 年代以降の自
動車産業の歩みについての補助プリントを配付した。
生徒は非常に積極的に取り組み、自らが立てた問いに対して発表した仮説も、これまで習得した知識の
上に立つものであり、説得力のあるものであった。しかし限られた時間ということもあり、仮説の立案か
ら発表までの時間を十分に確保することができなかった。また仮説を検証していくための授業にも十分な
時間が必要である。今回は近現代を扱ったが、中世や近世の単元では、仮説を立てる際の数値化できる資
料が乏しいという課題もある。
6 成果並びに課題とその改善に向けた方策
本年度実践した事例において、いずれも生徒は主体的に思考し、自らの考えを発信することができた。
また授業後の満足度は概ね高かった。今回の共通テーマである「アクティブ・ラーニングを効果的に取り入
れた単元の授業づくり」と地歴部門の独自テーマである「逆さま歴史教育」に関する研究と実践が、最終的
に軌を一にしたことが本年度の成果と言える。
歴史的な思考力を培い、生徒自らが「歴史を語る」力を育むという目標は、様々な手法によって果たさ
れるべきものである。本研究会では当初、
「逆さま歴史教育」とは何かという視点から協議を重ね、歴史を
様々な「逆さ」から考える視点、例えば、
「個人から見た国家」
「敗者から見た歴史」
「人物評価の逆転」
「創
られた伝統」などのアイデアがあり、本研究会においても例えば、
「逆さ」から見たら「生麦事件」はどう
なるかという授業実践の提案を行っているところである。
さしあたり、冒頭述べたように現代社会にある様々な事象について、その歴史的な背景を生徒自らが探
究し、考察した結果を発信していくというスタイルを追究していくこととしたい。
学習指導要領の中にも、例えば日本史Aの内容とその取扱いには「現代からの探究」という単元が設定
されているように、
「逆さま歴史教育」の手法とは、決して新手のものではなく、多くの学校で実践されて
いるものである。そのことは、今年度の 11 月に開催された教育課程説明会(地理歴史・公民)において、多
くの教員が、各学校から持ち寄ったアイデアの中に、すでに現代の事象と過去の歴史的背景との因果関係
を考察するといった授業案があることからも分かる。今後は、生徒自らが課題を設定しやすい教材等を研
究していかなければならない。こうした取組を個々の事例に終わらせず、多くの学校で共有していくこと
が重要な課題であると考える。
公
民
1.研究のテーマとねらい
(1)研究のテーマ
共通テーマである「組織的な授業改善の推進―アクティブ・ラーニングを効果的に取り入れた単元の授
業づくり」を踏まえ、とくに公民部門では、昨年度の研究テーマである「問いと答えをつなぐ単元指導計
画の工夫」から「問い」に焦点を絞り、「思考力・判断力・表現力を身に付ける問いの工夫」とした。
(2)研究のねらい
昨年度公民部門では、「問い」という形で生徒に付けたい力を表現し、その問いを解くために適切な
「言語活動」を教科全体で検討することにより、組織として授業改善を図ることができると考え、問いを
中心とした単元指導計画を作成し、授業実践を行った。その結果、「指導者が授業を組み立て、実践する
際にねらいが明確になる」「生徒にとってもその授業でどのような活動をし、何を考えればよいかが明確
になる」などの効果が見られた。また、生徒の発表やレポート、振り返りなどから授業がねらい通りに進
まなかったことが判明した場合でも、まず「問い」が適切であったかどうかを検討することにより、授業
改善の手掛かりとなることが分かった。事後研究会などの場においても、「問い」の設定やそれを解くた
めの活動を検討し共有することにより、効率よく組織的に授業改善に取り組むことができた。しかし、適
切な「問い」の設定には、その教科・科目についての「高度な知識や理解」、適切な「生徒の状況把握」
が不可欠であることが課題であることも分かったので、今年度は「思考力・判断力・表現力を身に付ける
問いの工夫」を研究のねらいとした。
2.研究で取り組んできた内容
各推進委員は「問い」を意識して単元指導計画を作成し、授業実践を行った。そのため、単元指導計画
の作成に当たっては『中等教育資料(平成26 年1月号 村瀬正幸教科調査官)』を参考に昨年度と同様に
「授業のシナリオ」を作成し、単元を貫く「基軸となる問い」と「基軸となる問いに生徒を導く小さい問
い」を意識して単元を構成するように工夫した。(表1)
単元名「現代の国際経済」
表1(政治・経済「授業のシナリオ」)
自由貿易の推進がもたらした課題について関心を持ち、自らの課題として考え抜く力
ねらい
を付ける。
基軸となる「問い」
私たちは自由貿易が生み出した問題をどのようにして解決できるか。
1 鍵となる概念:自由貿易、発展途上国、南北問題、国際連合、ODA
「問い」が持つ意味
2 学ぶ価値:世界市民として、地球規模の課題について考える力を付ける。
3 問いの転移:公正としての正義、格差社会、人間の安全保障、人口・食料問題
「自由貿易にはどのような利点と問題点があるか。」
展開(1)
・なぜ貿易をするのか。
・国際的な経済取引はどのような項目に分けられるのか。
学
習
過
程
「自由貿易と外国為替相場の変動はどのように関係しているのか。」
・国際間の支払いはどのようにして行われるのか。
展開(2)
・円高・円安はどのような影響を与えるのか。
・どのようにして IMF・GATT 体制はできたのか。
・どのようにして今日のような変動相場制になったのか。
・どのようにして WTO はできたのか。
「地域における自由貿易の推進にはどのような課題があるか。」
・各地域で自由貿易はどのようにして推進されてきたのか。
展開(3)
・日本は地域的経済統合をどのように進めてきたのか。
・BRICs はどのようにして台頭してきたのか。
・中国・インドのめざましい経済成長にはどのような課題があるのか。
・経済のグローバル化にはどのような課題があるのか。
学
習
過
程
「自由貿易の推進が発展途上国において生み出した問題はどうしたら解決できる
か。」
・南北問題とは何か。
展開(4)
・国際社会は南北問題をどのようにして解決しようとしてきたのか。
・南北問題はどのように変化してきたか。
・日本の ODA にはどのような課題があるのか。
・モノカルチャー経済による貧困はどのようにすれば解決できるか。
〈関心・意欲・態度〉私たちの生活と現代の国際経済の動向との結び付きについて関
心を高め、意欲的に考えようとしている。
〈思考・判断・表現〉南北問題の背景と解決方法について主体的に考察している。
単元の評価規準
〈資料活用の技能〉国際収支表を日本の貿易の現状を理解するために主体的に活用し
ている。
〈知識・理解〉自由貿易や保護貿易の考え方に関する基本的な知識を身に付けてい
る。
(小田原高等学校
坂本 和啓 教諭作成)
3.研究の目標を達成するための手立て
『中等教育資料(平成26 年1月号 村瀬正幸教科調査官)』に示されるように、『単元を貫く「基軸と
なる問い」は、単一の「問い」だけで完結するものではなく、いくつかの小さい「問い」の考察を通して
順次深めることができるような学習内容を持ち、単元構想全体で追究する「問い」である』ことから、
「問い」と連動した学習過程や評価を準備することにより、授業の方向性を規定するように工夫し、「基
軸となる問い」の有効性を確認するようにした。
実践事例1(現代社会)は、「経済は私たちの生活とどのようにつながっているか?」という問いを立て、
具体的な企業を調べる学習を行うという授業実践である。学んだ知識を基に具体的な企業について調べ、自
分とのつながりについて考えをまとめ、グループ内で発表と相互評価を行うことで新たな学びを促進するこ
とをねらいとしている。
実践事例2(政治・経済)は、「民主政治の基本原理と日本国憲法」の単元で基本的人権を扱う際に「18
歳選挙制」について考察させる授業実践である。効果的に単元の授業づくりにアクティブ・ラーニングを取
り入れることを意識したが、毎回の授業でアクティブ・ラーニングの視点を踏まえた指導計画を作ることに
より生徒の学習効果が高まることが実感できた。また実践を通じて、授業のねらいや、生徒が持っている知
識を「問い」に取り組む際にどのように活用するのかを明確にすることが大切であることが分かった。
実践事例3(政治・経済)では、「国民経済と国際経済」の単元で、自由貿易協定に対する国内の対立に
気付かせることで、国際経済について理解を深めることをねらいとした授業実践である。「知識」を身に付
けさせたうえでアクティブ・ラーニングの視点を踏まえた指導を行うことで、「思考力・判断力・表現力」
を身に付けさせることをねらいとした実践である。
4.単元の指導計画及び重点を置いた授業展開例
【実践事例1 現代社会】
(1)研究実施校:神奈川県立横浜明朋高等学校(定時制)
(2)科目:現代社会
学年:1年
(3)単元名:市場経済の仕組み
(4)単元のねらい
・市場の仕組み、経済成長と景気、企業の仕組み、財政と租税、金融の働きを理解し現代経済の特質を把握する。
(5)単元で身に付けさせたい力
・経済の基本的知識を身に付け、経済活動を生活に結び付けて考察することで、自分自身と経済のつながりをイメ
ージする力を身に付ける。
(6)単元の評価規準
(7)単元の指導と評価の計画
学習項目
1
学習活動
評価の観点
ねらい
a
b
c
評価規準
評価方法
○
市場の機能について
の知識を身に付けて
いる。
ワークシート
○
市場の限界について
の知識を身に付けて
いる。
ワークシート
○
経済指標についての
知識を身に付けてい
る。景気変動の仕組
みを生活に結び付け
て考察している。
d
生活に必要な財やサービスはどのように交換されているか?
市場経済の
考え方
経済主体、価格機構な
ど、市場経済の原理を学
習する。
経済の三主体の役割と特徴を理
解する。市場機構の仕組みを理
解する。
2
市場において取引がうまく行われないのはどんなときか?
市場の限界
市場の限界、失敗につ
いて学習する。
○
市場経済の機能と限界を理解す
る。
3
経済の大きさや状態はどのように測っているか?
経済の大き
さと変動
4
○
学習した知識を活用し
て企業について調べ
ている。
企業と自分とのつなが
りについて考えてい
る。
企業の形態、特に株式会
社の仕組みと社会的責
任について学ぶ。
株式の仕組みや資金調達、社会
的責任や CSR 活動について理
解する。
○
○
金融機関は私たちとどのようにつながっているか?
金融の役割
6
GDP や国民所得などの基本的な
経済指標を理解する。景気変動
の各局面について理解する。
企業は消費者とどのようにつながっているか?
企業の役割
5
主要な経済の指標、景気
と物価の変動原理につ
いて学ぶ。
金融機関の働き、中央銀
行の役割と金融政策に
ついて学ぶ。
○
金融が経済においてどのような
働きをしているのかを理解する。
金融についての基本
的知識を身に付けて
いる。
ワークシート
発表シート
フィードバッ
クシート
ワークシート
政府は経済にどのように関わっているか?
政府と財政
の役割
財政の意味と財政政策
の役割を学ぶ。租税の種
類と負担の在り方を学
ぶ。
( 評価の観点
財政政策の役割、財政と景気の
関係を理解し、政府と経済の関わ
りを理解する。
a:関心・意欲・態度
○
○
b:思考・判断・表現
財政や租税に関わる
課題を見いだしてい
る。
c:資料活用の技能
ワークシート
レポート
d:知識・理解)
(8)取組事例
①実施日:10月9日(金)
②実施クラス:1年2組 授業担当者:鵜戸 紘一郎 教諭
③本時のねらい:これまでに学んだ企業に関する知識を基に具体的な企業について調べ、自分とのつながりについて考
えをまとめる。グループ内で発表し、それぞれ相互評価を行うことで新たな学びを促進する。
④本時の指導内容(45分)
授業展開
導入
学習活動
発表のオリエンテーション
グループに分かれて準備する。
展開
【グループ内発表】
日経225の中から選んだ企業につ
35分
・1人3分以内でグループ
いて、以下の内容を調べてきてグ
内発表。
ループ内で発表する。
指導上の留意点
評価方法
5分
グループのメンバーで助
け合う
・発表と発表の間に時間を
・売り上げ、拠点数、従業員数等
とり、フィードバックのコメン
・主要株主
トを記入する。
・何を生産しているか(代表的な商
品、サービス)
自身とのつながりを中心
プレゼン用発表シ
・その会社が優れている点
に、自分の言葉で表現さ
ート
・CSR活動の内容
せる。
・自分とのつながりは何か?
他の生徒の発表を聞いて気付いた
相互にフィードバックを
ことをシートに記入する。また、発表
行い、新たな学びを促
フィードバックシ
者に対するコメントをワークシートに
す。
ート
記入する。
まとめ
授業のまとめ
5分
ワークシートをまとめ、感想を記入
する。
【評価例】
①「おおむね満足できる」状況(B)と判断した生徒の主な記述内容(生徒が記述したものをそのまま掲載)
・企業を調べて、いろんなサービスを展開していることを知った。
・有名な会社は規模が大きく、従業員も売り上げもとても多いことが分かった。
②「十分満足できる」状況(A)と判断した生徒の主な記述内容(生徒が記述したものをそのまま掲載)
・調べる前は何をしている企業か全く分からなかったが、自分がよく行く店などに必ずあるものを作っているとい
うことを知り驚いた。
・調べた企業について、名前は知っていたけど、こんなに沢山のCSR活動をしていると知り感心した。
【実践事例2 政治・経済】
(1)研究実施校:神奈川県立弥栄高等学校(全日制)
(2)科目:政治・経済
年次:3年次
(3)単元名:「基本的人権の保障と新しい人権」
(4)単元のねらい 【基軸となる問い】 「日本国憲法は、私たちの基本的人権をどのように規定しているのか?」
近代国家には、国民の基本的人権と国家の基本的な制度的枠組みを定めた最高法規として憲法があることを理
解させ、国民の自由や権利が保障されていることの意義を理解する。
(5)単元で身に付けさせたい力
①基本的人権と新しい人権の意義と在り方を広く深く理解する力。
②基本的人権の中の「参政権」を政治参加や選挙制度と関連付けて理解させ、主体的に考察し、公正な判断力と
良識ある公民として必要な能力と態度。
③人権濫用の禁止と公共の福祉の原理を取り上げ、基本的人権の理解が自分自身の生活にも関わっているという
ことを理解し活用できる能力。
(6)単元の評価規準
関心・意欲・態度
思考・判断・表現
資料活用の技能
知識・理解
基本的人権と新しい人権 基本的人権と新しい人権 図・写真・統計などの多 基本的人権と新しい人権
に関心を持ち、現代の課 について、その特徴や問 様な資料の中から、的確 について理解している。
題意識を高め、意欲的に 題点、課題を多面的・多 なものを適切に選択し、 また、基本的な事柄を理
課題を追究し考察しよう 角的に考察し、表現して 効果的に活用している。
解し、その知識を身に付
としている。
けている。
いる。
(7)単元の指導と評価の計画(単元全3回)
時
間
学習項目
学習活動
ねらい
評価の観点
a
b
c
d
評価規準
評価方法
基本的人権が私た
基本的人権が私 発問
基本的人権とは何か?
ちにとって、侵す
たちにとって、 ペアワーク
私たちの意見は国会に
ことのできない永
侵すことのでき 活動観察
1
個人の尊重と
基本的人権とは何 久の権利だという
幸福追求権
かについて理解す ことに気付かせる
○
ない永久の権利 定期試験
○
だということに
る。自由権と社会 。
(後日)
気付かせる。
権について理解す
る。
基本的人権を確保する権利はどのような権利か?
2
基本的人権を確 請求権、参政権に 基本的人権を確保
保するための権 ついて理解する。 するための権利が
○
本
18歳選挙権につい 私たちの日常生活
時 利
て考える。
と密接な関係があ
○
○
基本的人権を
発問
確保するため
活動観察
の権利が、私
討議
たちの生活と
ワークシート
関わりがある
定期試験
ことに気付く
ることに気付かせ
ことができ
る。
る。
(後日)
新しい人権と社 発問
新しい人権とは何か?公共の福祉とは何か?
会全体の利益の 活動観察
3 新しい人権
新しい人権と公共 新しい人権が主張
国民の義務と
の福祉について理 されるようになっ
公共の福祉
解する。
た背景と公共の福
ために個人の基 定期試験
○
○
○
本的人権が犠牲
になってはなら
祉の必要性に気付
ないということ
かせる。
に気付くことが
できる。
( 評価の観点
a:関心・意欲・態度
b:思考・判断・表現
c:資料活用の技能
d:知識・理解)
(8)取組事例
①実施日:平成27年11月2日(月) 授業担当者:和田 守 教諭
②授業クラス:3年次 共通選択(22名)
③本時のねらい
・基本的人権を確保する権利とはどのような権利なのか理解する。
・「参政権」を取り上げ、「18歳選挙権」について主体的に考え、実際に討論で意見交換を図る。
④本時の指導内容
授業展開
導入
5分
学習活動
指導内容・指導上の留意点
○基本的人権を確保する権利に ・教師の話をしっかり聞かせる。
評価規準(評価方法)
教師の話をしっかり聞いてい
ついて学ぶねらいを理解す ・基本的人権を確保する権利について る。学ぶねらいを理解してい
る。
発問をする。
る。【評価規準 a】(発問)
○ディベートに参加して参政権 ・ディベートによって参政権を学ぶね
を学ぶねらいを理解する。
らいを分かりやすく簡潔に説明す
る。
展開①
45分
○請求権、参政権とは何かを理 ・講義による説明を行うため、一方的 積極的に講義を聞いて内容を
解する。
○内容を板書する。
な教え込みにならないようにする。
・板書と説明のペース配分に注意す 【評価規準 a d】(発問・観
る。
展開②
35分
理解している。
察)
○「18歳選挙権に賛成か反対 ・それぞれの意見を明確にしやすいよ 積極的に討議に参加し、自分
か」について自分の意見をデ
ィベートシートに記入する。
○参政権について、「18歳選挙
うな問いかけをする。
の意見を表現できている。
・討議の進度や方向性に応じて、話合 【評価規準 a b】
いをサポートする。
(観察・ワークシート)
権に賛成か反対か」に分かれ ・ディベートシートに自分の意見と討
て討議する。
議についての感想をしっかり書かせ
る。
まとめ
5分
○ディベートシートに自分の意 ・他人の感想をしっかり聞かせ、自分 自らの意見・感想を自分の言
見と討議についての感想をま
とめる。
の意見と比較させる。
葉で表現できている。
・討議の目的と振り返りにしっかり取 討議の目的を理解している。
り組ませる。
【評価規準 b】
○討議についての感想を発表し ・教科書で本時に学んだ内容と次回学 (ワークシート)
て共有する。
○本時の内容を確認する。
○討議の目的を理解する。
ぶ内容を確認させる。
【評価例】
①「おおむね満足できる」状況(B)と判断した生徒の主な記述内容(生徒が記述したものをそのまま掲載)
賛成意見
・投票率が低下しているので、18歳以上の人が選挙に参加することで投票率の増加がされると思うから。
・18歳と20歳の間の政治に対する知識・関心においてたいして差があると思えないから。
反対意見
・高校生ぐらいで政治のよい判断ができないと思うから。20歳までの2年で、大学に入ったり就職したりで社会を知れる
と思うので下げな
い方がよい。
・権利の放棄をする人が増えるだけかもしれない。
②「十分満足できる」状況(A)と判断した生徒の主な記述内容(生徒が記述したものをそのまま掲載)
賛成意見
・18歳になったら、可能になったり許されることが増え、生活の自由が広がる分、自由を与えられた責任として社会に
意見発信する機会
も同等に持つべきだから。
・近年の投票率に見られる若者と高齢者の間の投票率の大きな差をうめ、若者の政治への無関心を解決するために早い
段階のうちか
ら政治についての教育を十分に施し、個々人の参政権に責任を持たせることが必要だから。
・18歳になると様々な権利が認められ、人によっては働き始めたりして社会とのかかわりも増えてくる。なので、その
社会のことを決定する
権利も認められるべき。
反対意見
・まだ若くて、他人の意見に左右されやすいお年頃だから。それを悪用する人がいるかもしれないから。
・社会経験を通して初めて選挙の意味を知ると思うから。
【実践事例3 政治・経済】
(1)研究実施校:神奈川県立高浜高等学校(全日制)
(2)科目:政治・経済
学年:3年
(3)単元名:国民経済と国際経済
(4)単元のねらい
【基軸となる問い】日本はどのように国際経済に関わっていくか
・貿易の意義、為替相場、国際経済機関の役割について理解させた上で、国際経済における日本の役割について
考察させる。
(5)単元で身に付けさせたい力
① 国際経済について、高い関心を持って国際的な諸課題の解決に取り組もうとする態度。
② 国際経済における日本の役割について、思考したことを表現する力。
③ 貿易の意義や為替相場の仕組みについて理解し、資料を正しく読み取る力。
④ 意見の対立を調整しながらもよりよい結論を導くために必要となる合意形成能力。
(6)単元の評価規準
関心・意欲・態度
思考・判断・表現
資料活用の技能
知識・理解
国際経済に対する関心を 国際経済における日本の 国際経済に関する資料を 貿易の意義、国際収支や
高め、国際経済における 役割について様々な考え 適切に読み取り、活用し 為替相場の仕組み、国際
日本の役割について意欲 方を踏まえ公正に判断し ている。
協調の必要性や国際経済
的に追究しようとしてい て、自らの意見を適切に
機関の役割に関する基本
る。
的な概念や理論を理解
表現している。
し、その知識を身に付け
ている。
(7)単元の指導と評価の計画(単元全6回)
時
間
学習項目
学習活動
ねらい
評価の観点
関
思
技
知
1
・貿易理論、国際 ・貿易の必要性に
○
○
易の在り方につ
ート
解し、貿易の在
収支について理
いて公正に判断
定期試験
り方について思
解させる。
することができ
る。
・外国為替の仕組
みについて正し
○
○
影響を資料から
ート
し、資料を読み
を読み取らせな
読み取ることが
定期試験
ながら日本への
がら理解させる
できる。
影響を考える。
。
・戦後国際経済史 ・国際経済機関の
について理解す 役割に関する基
る。
本的な概念や理
・資料から国際経 論を理解させる
済における日本 。
の立場を読み取 ・国際経済におけ
る。
る日本の立場に
気付かせる。
4
○
・グループ活動を ・自由貿易協定に
通して自由貿易
対する国内の対
協定について理
立に気付かせる
解する。
。
○
日本のODAはどのようにあるべきか?
5
発展途上国の諸
問題と日本の経
済協力
ワークシ
みについて資料
・国際経済機関の
役割について理
○
解し、資料から
日本の立場を適
切に読み取るこ
とができる。
日本は自由貿易協定にどう向き合っていくか?
本
時
く理解し、その
みについて理解
日本はどのように国際経済機関と関わっているのか?
国際経済の動向
ワークシ
気付かせ、国際
外国為替市場の ・外国為替の仕組 ・外国為替の仕組
3
しく理解し、貿
収支について理
為替相場の変動は日本にどのような影響を与えるか?
第二次大戦後の
国際経済
法
収支について正
考する。
2 仕組み
評価の方
・貿易理論と国際
貿易は日本にどのような利益をもたらすか?
貿易と国際収支
評価規準
・発展途上国の諸 ・国際経済におけ ○
問題等と日本の
る日本の役割に
経済協力の在り
気付かせる。
方を追究する。
○
国際経済において、日本は何をすべきか?
国際経済におけ ・国際経済におい ・国際経済におけ ○
る日本の役割
て、日本がすべ
る日本の役割に
きこととして最
ついて多面的・
6
も重要な事を一
多角的に考察さ
つ発表する。
せる。
○
○
・自由貿易協定に
ついて正しく理
解し、適切に意
見を表現するこ
とができる。
・国際経済におけ
る日本の役割に
ついて客観的に
考察しようとし
ている。
・国際経済の特質
を意欲的に追究
し、発表してい
る。
・国際経済の特質
を多面的・多角
的に考察し、日
本の役割につい
て的確に表現し
ている。
ワークシ
ート
定期試験
ワークシ
ート
定期試験
ワークシ
ート
定期試験
発表内容
(8)取組事例
①実施日:平成27年11月6日(金) 授業担当者:田中 覚 教諭
②授業クラス:3年D組(普通科一般コース37名)
③本時のねらい
本時の問い:日本は自由貿易協定にどう向き合っていくか
・自由貿易協定に対する国内の対立に気付かせ、グループワークを通して洗練された自らの意見を適切に
表現する力を身に付けさせる。
④本時の指導内容
学習活動・内容
導入
(5分)
指導上の留意点
評価方法
日本は他国と自由貿易協定を結ぶべきか
・前時の学習内容を踏まえ、日本は自由貿易
協定を締結すべきか否かの現時点での意
見をワークシートに記入する。
・個人の直感的な意見でもよいのでマ
クロの視点から一言記入させる。
自由貿易協定は日本国内の様々な立場の人々にどのような影響を与えるか
展開
(35分)
・与えられた役割の内容を理解し、要約す ・自由貿易によって利益が増加する立
る。
場であるのか減少する立場であるの 定期試験
ワークシー
か正しく理解させる。
・自らの属性の利益を最大化させる意見をグ
・個別のアクターのミクロな視点から
ト
ループ内で発表する。
意見を発表させる。
日本は自由貿易協定にどう向き合っていくか
・自らの属性の利益を考慮しながら、グルー
・個別アクターのミクロな視点と全体
プ内での意見の合意を目ざした話合いを行
のマクロの視点という両方の視点
い、結果を発表する。
を意識させる。
・自由貿易協定が与える日本国内への影響を
・与えられた役割から離れて思考させ
定期試験
考慮しつつ、自由貿易協定を締結すべき
る。
ワークシー
か、各自で意見をまとめワークシートに記
・冒頭で記述した自らの意見との変化
(10分)
ト
述する。
に注目させる。
〈本時のアクティブ・ラーニングの視点を踏まえた学習活動(合意形成学習)のポイント〉
・ラディカルデモクラシー的な視点と討議デモクラシー的な視点による2段階の議論。
(自らの属性の利益や選好に縛られた意見の表出から、理性的な討議と合意形成という2段階の議論)
・全生徒が自らの役割をメンバーに説明することで教える立場となり、疑似教え合いの場とさせる。
・「資料の読み取り」、「文章の要約」、「発表」、「議論」、「まとめ小論文」という生徒の様々な活動。
【評価例】
①「おおむね満足できる」状況(B)と判断した生徒の主な記述内容(生徒が記述したものをそのまま掲載)
まとめ
自由貿易協定を結ぶべきだ。
これによって日本からの輸出が増えて、日本にたくさん利益がある。農業は被害を受けるかもしれないが、それ以
上の利益が日本
全体では考えられるから自由貿易協定を推進していくべきだ。
②「十分満足できる」状況(A)と判断した生徒の主な記述内容(生徒が記述したものをそのまま掲載)
自由貿易協定を結ぶべきだ。
自由貿易協定を結ぶことで日本からの輸出が増えて、日本に大きな利益が考えられるからだ。しかし、国際競争力
の低い農業は衰退してしまうかもしれない。そのことについては、輸出の増加で利益が出た企業は税をたくさん支
払うことになるので、その税の一部から補償することでカバーできるのではないだろうか。
(9)単元の授業づくりに基づく授業実践の評価と分析
①生徒向けアンケートの記述より
・興味の無い内容だったが、皆で話し合って議論をするので頭に入るし関心が持てた。
・話合いをすることで授業の始まりと終わりで自分の考え方が変わった。
・普通の授業よりも、授業に参加している感じがある。
・自分で考えて発言するのは難しいが、役割を限定されることで意見が言いやすい。
・必ず自分の意見を言う機会があってよかった。
・全員の前ではなく、数人の前だから話しやすい。
・生徒同士だと気楽に聞き合えるのでよい。
・話合いの中で自分では気付けなかったことをたくさん聞けて理解が深まったように思う。
・自分の考えを口に出すこと、文字にすることは大切だと思った。
・先生の考えも聞いてみたい。
②参観教員より
・積極的に生徒が活動していた。
・話合いの中で生徒の理解がどれぐらい深まったかには差異があるように感じた。「自由貿易協定にどう向き合
っていくか」ではなく、もう少し単純な問いの方が良かったかもしれない。
・生徒が授業の活動に慣れているようで、簡単な指示で自発的に議論が進んでいた。
・アクティブ・ラーニングについて、どのようなことをやればよいのか分からなかったが、生徒の学びに効果
がありそうだと感じたので、自分も何かやってみようと思った。
(10)成果ならびに授業改善に向けた方策
・思考力・判断力・表現力を身に付けさせる問いをたて、手法としてアクティブ・ラーニングを意識した指導を
行ったが、生徒のアンケートの結果から、「思考力・判断力・表現力」を身に付けるための活動を通して、
「関心・意欲・態度」が育まれている状況も見られた。したがって、単元の指導計画を作成するに当たって、
「知識・理解」を身に付けさせ、その「知識・理解」をアクティブ・ラーニングによって活用することで「思
考力・判断力・表現力」を向上させ、それらの過程を通して「関心・意欲・態度」を育成するという、身に付
けさせたい力を計画的に育むことを意識した単元指導計画が効果的であることを感じることができた。
・この形態の授業は、回を重ねるごとに生徒が主体的に授業に取り組むようになってくる。前回よりも「上手に
要約する」「分かりやすく話す」「客観的に文章にまとめられるように具体例を示す」などの目標を立てて授
業に臨む生徒もいる。アクティブ・ラーニングの視点を踏まえた学習方法はある程度のパターンを作り、繰り
返すことで生徒の主体性な学習活動を引き出すことができることが分かった。
・「思考力・判断力・表現力を身に付ける問い」に対する答え方は多様であり、各校の「生徒に身に付けさせた
い力」に応じた適切な問いの設定が必要である。
5.成果並びに課題とその改善に向けた方策
共通テーマを踏まえ、「思考力・判断力・表現力を身に付ける問いの工夫」をサブテーマとして研究に取り組
み、各推進委員からは次のような成果と課題が出された。
アクティブ・ラーニングの視点を踏まえた授業を実践することで、講義形式の授業では見取ることができない生
徒たちの様々な表現が見られ、学習内容について理解しているかそうでないかも顕著に分かった。話合いや確認問
題に取り組んでいる中で、学習する上で生徒がどんなことに引っかかって理解に苦しんでいるのか、分からないこ
とは何なのかということが明確に見えることが分かった。逆に生徒にとっては、自分たちで理解する努力や工夫が
表出した授業になり、また、自分は何が理解できていないのか、何が分からないのかが明確になることで、学習意
欲の向上につながるのではないかとも考えられる。しかし、このような授業を行うためには、プリントの構成や問
いの設定を準備することに相当な時間と労力がかかる。だが、こうした工夫を継続していくことで学習内容の分量
を考えながらワークの問いを作成することに一定の流れができ、準備の時間が徐々に短くなってきた。生徒が自ら
学び、自ら考える授業にするためには、年間を通して、教科の枠を飛び越え、アクティブ・ラーニングの視点を踏
まえた授業展開を模索し、試みる必要があると強く感じる。 (瀬谷高等学校 古川 竜三 教諭)
生徒が活動するアクティブ・ラーニングの視点を踏まえた授業を効果的に実践することで、思考力・判断力・表
現力がより高まるということが実感出来た。今後の授業改善の方策としては、アクティブ・ラーニングの視点を踏
まえた指導方法を積極的に導入していく事も必要である一方で、教師による基礎的・基本的な知識・技能の定着も
大切であり、バランスのとれた効果的な授業実践をしていくことが考えられる。(弥栄高等学校 和田 守教諭)
公民科で質の高い言語活動を行うためには、社会諸科学の概念・理論や倫理的諸価値を身に付けさせ、それらを
活用して「自分の言葉で」表現することが大切である。授業の冒頭で「基軸となる問い」を示すことで、生徒も本
時のテーマをつかみ、内容がより伝わる。また、生徒にとって身近なテーマを学ぶように配慮することが大切であ
る。すべての単元でこのようなテーマを設定するのは難しいが、「発問を工夫すること」で授業は大きく変わって
くるということを踏まえ、生徒の立場になった発問を繰り返していくことが授業改善の第一歩となる。最近の高校
生は社会現象に対する関心や社会参加の意識が低下していると言われているが、生徒の意欲を喚起し、積極的に参
加できる授業を実践したい。また、社会事象を考察するに際しては、主体的な意思による様々な視点が考えられる。
そういう前提に立つと「正解」は数多くあるかもしれない。大切なことは生徒が社会事象に対して自分なりの立場
で根拠などを示しながら説明できることである。アクティブ・ラーニングの視点を踏まえた授業実践を通して生徒
にそのような力を育んでいきたい。(相模田名高等学校 平林 明徳教諭)
今年度の取組において、「思考力・判断力・表現力」を身に付けさせるためパフォーマンス評価ができる本質的
な問いをつくることを試みてきた。そのため「逆向き設計論」に基づく授業設計を行ってきた。すなわち、まず単
元の中核部分を明確にし、それに向かって考えるように生徒たちを促すために「本質的な問い」を考える。次に
「本質的な問い」に対応する「永続的理解」を明確にする。この理解が持てるようになり、その証拠となるような
作品をつくれるようなパフォーマンス課題、例えば自分の意見を小論文にまとめるという課題を設定する。自分の
考えをまとめる際、自分で考えた後にペアワークで意見を交換させ、全体で共有し、様々な視点があることを認識
させた。そして、最終的に最も重要だと思われる方法について小論文を書かせた。そして生徒が提出したものを基
に評価規準としてルーブリックをつくり、評価を行った。以上のような取組の成果としては、第一に、多様な視点
があることを生徒に気付かせることができたことがある。「自分とは違う視点の人もいてよかった」「全体で様々
な意見が出ていてなるほどと思うことが何回かあった」など話し合う中で、自分だけでは気付くことができなかっ
た視点を獲得できたことが分かる。自分で考え、ペアで話し合い、全体で共有することで、「ペアでは意見をいう
ことができた」「2人組だとお互い話すからよかった」など、ペアで話す時間がお互いの意見を引き出しやすくし
ていることもうかがえる。第二の成果として、小論文の形式でまとめさせたことで、ほとんどの生徒が論理的形式
に基づく小論文という目に見える成果物で問いに対する解決をまとめられたことがある。「記述力が付いた」と答
えている生徒もいて、年度当初から継続的に取り組んできた成果が見られる。最初の頃よりも文字数も増え、問い
から外れた主張をすることも減り、理由、説明、例示、予想される反論と、より詳しく自分とは異なる視点も持っ
て文章を展開することが可能になってきている。一方で、今後の課題として、生徒が考えを深める時間の確保、考
えるための素材の充実と精選、課題の精選が挙げられる。生徒から「毎回の小論文が大変だ」という声があった。
その理由として、課題の難易度が高すぎる、考えるための素材が足りない、考えるための時間が足りない、文章に
まとめる時間が足りないなどが考えられる。「発表がすぐ終わってしまうので先生からもアドバイスをしてもらっ
て、もっと内容を深めたい」という意見があった。生徒の意見に対して傾聴技法を用いて確認するようにしている
が、質問・解釈・情報提供などの活動技法も用いてより生徒の考えを深めさせるやりとりを生徒とすることが考え
られるが、これらのことを可能にするには、更なる時間の確保が必要である。年間計画の中で確保できる時間には
限りがあるので、情報提供と協議の充実を図るなど課題の数を絞り込んで、1回1回の質を高めることも検討して
いきたい。(小田原高等学校 坂本 和啓 教諭)
今年度の研究では、「問い」の質を高め、アクティブ・ラーニングの視点を踏まえた単元計画を作成したが、そ
の結果、「思考力・判断力・表現力」を身に付けるための学習活動により、「関心・意欲・態度」が育まれている
ことも見取ることができた。つまり、作成の際に意識することで、学力の三要素(「基礎的・基本的な知識・技
能」「知識・技能を活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力等」「主体的に学習に取り組む
態度」)の定着を図ることができる単元指導計画になる可能性があることが分かった。しかしながら推進委員から
の報告にもあるように、常に高いレベルの「問い」をつくり、それにあった学習指導方法を用意するのは難しく、
また、各学校によって状況が違うので、一人ひとりの教員の意欲と、力量に負う部分も大きい。今後は、学力の三
要素の定着を意識した質の高い「基軸となる問い」とそれに見合った学習指導方法の開発について、研究を深めた
い。
数
学
1 研究のテーマとねらい
(1)研究のテーマ
「組織的な授業改善の推進~アクティブ・ラーニングを効果的に取り入れた単元の授業づくり」
(2)研究のねらい
平成26年11月に文部科学大臣が中央教育審議会に諮問した「初等中等教育における教育課程の基準等の在り
方について」の中で、「必要な力を子供たちに育むためには、『何を教えるか』という知識の質や量の改善は
もちろんのこと、『どのように学ぶか』という、学びの質や深まりを重視することが必要であり、課題の発見
と解決に向けて主体的・協働的に学ぶ学習(いわゆる『アクティブ・ラーニング』)や、そのための指導の方
法等を充実させていく必要」があることが述べられている。
一方、数学科においては従前より「数学的活動(数学学習に関わる目的意識を持った主体的活動)」の充実
が求められており、過去の研究授業においても、生徒によるペアワーク、グループワーク及びグループディス
カション等の実践を行ってきた。今回の研究では、数学科におけるアクティブ・ラーニングを踏まえた指導方
法を「数学的活動」の充実の延長上にあるものと捉え、単元における授業づくりの研究を通して、「数学的活
動」を効果的に取り入れることをねらいとした。
2 研究で取り組んできた内容
本研究推進委員の所属する県立永谷高等学校及び県立座間総合高等学校の協力を得て、校内授業研究におけ
るRPDCAサイクル(図1)に従い、アクティブ・ラーニングを効果的に取り入れた単元の授業づくりの研究を
行った。教科の組織は、当委員6名を3人ずつ2グループに分け、研究授業実施校数学科の教員団と想定した。
研究で取り扱う単元、各校の課題及び研究テーマは表1の通りである。
また、単元の中で、最も効果的にアクティブ・ラーニングの視点を踏まえた指導方法を取り入れている授業
を公開研究授業とした。さらに、この授業では各校の校内授業研究テーマで示された目標を達成するために、
数学的活動を意識し、数学における言語活動を行う場面を重視した。
図1 校内授業研究におけるRPDCAサイクル
R(調査)
学校の実態と課題の把握
P(計画)
実践・研究の計画
研究テーマの設定
A(改善)
更なる改善の実施
C(評価)
授業づくりの評価
目標の達成状況の評価
表1 校内授業研究テーマに基づく授業づくりの概要
研究実施校
県立永谷高等学校
県立座間総合高等学校
研究単元
数学Ⅱ 軌跡と領域
数学Ⅲ 定積分と和の極限
学校の課題 「基礎的な知識・技能の定着」 「生徒の自主的学習態度を育成
「思考力・判断力の育成」
し、「確かな学力」を定着させ
る授業づくり」
校内授業研 「わかる授業」を実現するため 「生徒が主体的・意欲的に学習
究テーマ
の工夫、「発表を取り入れた授 に臨む授業づくり」
業」を実現するための工夫
D(実施)
テーマに即した授業づくりの実践
3 研究のねらいを達成するための手立て
今回の研究では、数学科におけるアクティブ・ラーニングを踏まえた指導方法を「数学的活動」の充実の延
長上にあるものと捉えることとしたが、高等学校学習指導要領解説(平成 21 年 12 月)では、「数学的活動」
の配慮事項として、次の3つを挙げている。
(1) 自ら課題を見いだし、解決するための構想を立て、考察・処理し、その過程を振り返って得られた結
果の意義を考えたり、それを発展させたりすること。
(2) 学習した内容を生活と関連付け、具体的な事象の考察に活用すること。
(3) 自らの考えを数学的に表現し根拠を明らかにして説明したり、議論したりすること。
このことを踏まえ、単元研究にあたり次の2つのプロセスを設定し、プロセス1は永谷高等学校における
研究で、プロセス2は座間総合高等学校における研究でそれぞれ実践することとした。
プロセス1 ①日常生活における事象の数学的な側面に着目し、数学的に表現する。<数学化>
②その課題を解決するための構想を立て、結果を導く。<考察・処理>
③その結果を元の事象に戻し、その意味を考える。<活用・意味付け>
プロセス2 ①出された課題を、自ら分析し、解決のための構想を立て、考察し表現する。<表現>
②自分の考えを、根拠を明らかにして他者に説明する。<共有>
③自分の考えと他者の考えの違いを明らかにし、議論する。<洗練>
4 単元の指導計画及び重点を置いた授業展開例
4.1 実践事例1
(1)研究実施校:神奈川県立永谷高等学校(全日制普通科)
(2)科 目:「数学Ⅱ」
学 年:第2学年
(3)単元名:軌跡と領域(第2章 図形と方程式)
(4)学校の課題: 「基礎的な知識・技能の定着」「思考力・判断力の育成」
(5)校内授業研究テーマ:
「わかる授業」を実現するための工夫、「発表を取り入れた授業」を実現するための工夫
(6)単元のねらい:
軌跡について理解し、簡単な場合について軌跡を求めることができる。また、簡単な場合について、不等
式の表す領域を図示したり、領域を不等式で表したりすることができる。
(7)本単元で身に付けさせたい力:予想し、その内容を適切に表現する力
(8)単元の評価規準
関心・意欲・態度
数学的な見方や考え方
数学的な技能
知識・理解
軌跡と領域の考え方に関 様々なツールを利用し、 ・領域を不等式で表した ・不等式を満たす点の集
心をもつとともに、それ 距離の比が一定となるよ り、いくつかの不等式を 合が座標平面上の領域を
らを事象の考察に活用し うな軌跡を予想し、求め 同時に満たす領域を求め 表すことを理解してい
ようとしている。
ることができる。
たりすることができる。 る。
(9)校内授業研究テーマに基づく単元計画の工夫
◆単元計画の柱
「わかる授業」を実現するための工夫、「発表を取り入れた授業」を実現するための工夫
→数学的活動の3つのプロセスを単元計画に組み入れる。
①日常生活における事象の数学的な側面に着目し、数学的に表現する。<数学化>
②その課題を解決するための構想を立て、結果を導く。<考察・処理>
③その結果を元の事象に戻し、その意味を考える。<活用・意味付け>
◆単元指導の概要(全6時間)
1時
ある条件を満たす点がつくる図形に興味・関心を持つ。
2時
ある条件を満たす点全体がつくる軌跡が、どういう図形になるかを考えることができる。
3時
領域を不等式で表すことができる。
4時
領域を不等式で表すことができる。また、連立不等式の表す領域を求めることができる。
(10)単元の指導と評価の計画【 評価の観点 a:関心・意欲・態度 b:数学的な見方や考え方 c:数学的な技能 d:知識・理解 】
評価の観点
時
学習内容
学習活動
ねらい
評価方法
a
1
軌跡
2
本時
軌跡のまと
め
3
不等式と領
域(1)
4
不等式と領
域(2)
ある条件を満たす点全
体がつくる図形(軌
跡)について考える。
ある条件を満たす点全
体がつくる図形(軌
跡)について考える。
【アポロニウスの円】
不等式が表す図形につ
いて理解し、領域の境
界線が直線や円となる
場合について、領域を
求める。
前時とは逆に領域を不
等式で表す。また、連
立不等式の表す領域を
図示する。
あ る 条 件 を満 た
す 点 が つ くる 図
形 に 興 味 ・関 心
をもつ。
あ る 条 件 を満 た
す 点 全 体 がつ く
る 軌 跡 が 、ど う
い う 図 形 にな る
か を 考 え るこ と
ができる。
領 域 を 不 等式 で
表 す こ と がで き
る。
領 域 を 不 等式 で
表 す こ と がで き
る 。 ま た 、連 立
不 等 式 の 表す 領
域 を 求 め るこ と
ができる。
b
c
d
行動観察
ワークシート
振り返りシート
○
○
行動観察
ワークシート
振り返りシート
○
○
○
行動観察
ワークシート
振り返りシート
行動観察
ワークシート
振り返りシート
(11)本時の学習指導案
①実施日:平成27年10月21日(水) 授業担当者: 門馬 博美 教諭
②授業クラス: 2年2 組 35名
③本時の目標:ある条件を満たす点全体がつくる図形(軌跡)について考えることができる。
④本時の指導内容
授業
学習活動
展開
東京スカイツリーと東京タワーは
ある地点で見ると同じ高さに見え
導入
ることを理解する。
(10 分) また、その距離が、高さと同じ
2:1の比の距離であることを理
解する。
問題1:
地図の中からスカイツリーと東
京タワーからの距離の比が2:
1になる場所をできるだけ多く
探し、そこに点をとりましょう。
展開
(35分)
評価規準
○実際の高さの比 634:333 では難しいので
2:1として考えさせる。
軌跡の考え方に関心
をもつとともに、そ
れらを事象の考察に
活用しようとしてい
る。【関心・意欲・
態度】
様々なツールを利用
し、距離の比が2:
1となるような軌跡
を予想し、求めるこ
とができる。
【数学的な見方や考
え方】
○距離の比が高さの比と同じとき、2つの
タワーが同じ高さに見えることを伝える。
○定規、コンパス、分度器など、色々なツ
ールを用意し、距離の比が2:1になる地
点をできるだけ多くとらせる。
スカイツリーと東京タワーからの
距離の比が2:1になる地点を探
し、それらの点をつなぐとどのよ
うな図形になるか予想する。
また、それらの点をたくさんとる
とどのような図形になるか予想す
る。
どのような方法で2:1になる地
点をとったか、その結果、どのよ
うな図形になりそうか予想を発表
する。
問題2
スカイツリーを点О(0,
0)、東京タワーを点A(3,
0)とし、点Oと点Aからの距
離の比が2:1となるような点
Pの軌跡を考えよう。
予想が正しいか、式を使って確認
する。
関係式から導き出した結果、求め
る軌跡が円となり、予想と一致す
ることを理解する。
まとめ
(5分)
指導上の留意点
私はコンパスを使っ
て、2:1になる地点
をとってみようかな。
僕は2つの三角定規
を使って、2:1に
なる地点をとってみ
ようかな。
○ペアを作り、どれだけ多くの地点をとれ
るか競争させる。
○点をとることができないペアがあると予
想されるので、具体的な数値で2:1の確
認をする。
○発表の時は、ペアで何地点とれたか、点
をどんどんとっていくとどのような図形に
なりそうかを質問する。
○座標平面上の軌跡として考えさせる。
○立式は教員が補助し、その後は生徒に取
り組ませ、黒板に解答を板書させる。
○書画カメラで、問題1でとった点から予
想した図形と、問題2で求めた軌跡を重ね
て映写し、両者が一致するかを確認する。
予想した図形が、導
き出した軌跡と一致
したよ!
5 単元の授業づくりに基づく授業実践の評価と分析
5.1 実践事例1
(1)単元の検証
単
元
の
成
果
1時
2時
(本時)
3時
問題の意味を理解できない生徒が多く見られた。もう少し丁寧に説明すればよかった。
道具を使って実際に2:1の点をたくさん書き込ませたことにより、多くの生徒が軌跡に興味を持ち予
想できた。
不等式の表す領域を図示することができた。
4時
前時はほとんどの生徒が図示できたが、連立不程式になると正解率が低くなった。
領域の問題については理解した生徒が多かった。軌跡の問題では問題の意味を理解できない生徒が多く
見られたことから、より丁寧な説明を行う、導入のときに道具を使う等の工夫が必要である。
単元の課題
図3 振り返りシートの分析
(グラフ中の数字は人数)
図2 振り返りシート
単元・授業の振り返りシート
年
組
番 氏名
単元名『
』 授業日(
月
日 ~
月
日)
担当教員
先生
(評価 4:かなり当てはまる、 3:ほぼ当てはまる、 2:あまり当てはまらない、 1:ほとんど当てはまらない)
項
番
授業日
1
月 日
(
)
校時
アンケート
評価
軌跡
ある条件を満たす点全体がつくる図形
(軌跡)について理解できた。
4・3・2・
1
月 日
(
)
校時
軌跡のまと
め
日常生活の場面において、ある条件を
満たす点全体がつくる図形(軌跡)に
ついて、様々なツールを利用し軌跡を
予想し、求めることができた。
4・3・2・
1
3
月 日
(
)
校時
不等式と領
域(1)
不等式が表す領域(領域の境界線が直
線や円になる場合)について理解でき
た。
4・3・2・
1
4
月 日
(
)
校時
不等式と領
域(2)
領域を不等式で表したり、連立不等式
の表す領域を図示したりすることがで
きた。
4・3・2・
1
2
学習内容
意見・感想
<単元を振り返っての感想>
(2)本時の検証
本時の授業では、2定点A、Оに対して、OP:AP=2:1を満たす点Pの軌跡(アポロニウスの円)を
考えるにあたり、数学的活動を次の3つのプロセスとして設定した。
①日常生活における事象の数学的な側面に着目し、数学的に表現する。<数学化>
→東京スカイツリーと東京タワーが同じ高さに見えている写真から、なぜこのように見えるのかの説明を
教師から受けて、地図上で、距離の比が2:1になる場所を定規・コンパス等を使ってできるだけ多く
探す。
→点をたくさんとると、どのような図形になるかを予想する。
→座標平面上で、スカイツリーを点O(0,0)、東京タワーを点A(3,0)とする。
②その課題を解決するための構想を立て、結果を導く。<考察・処理>
→点O(0,0)と点A(3,0)からの距離の比が2:1となるような点Pの軌跡を求める。
→求める軌跡は、中心が点(4,0)、半径が2の円である。
③その結果を元の事象に戻し、その意味を考える。<活用・意味づけ>
→座標平面上に軌跡を描き、①で点をとった地図と重ねて確認する。
プロセス①について検証する。東京スカイツリーと東京タワーの高さを知っている生徒は多く、なぜ同じ高
さに見えるのか、生徒たちはとても興味を持っていた。次に、スカイツリーと東京タワーからの距離の比が
2:1になる場所を多く探そうという課題に対し、生徒たちはペアとなり、用意されたツール(三角定規、コ
ンパス、分度器等)を利用して、2:1になる点をとっていた。そして、このまま点をとり続けるとどのよう
な図形になるかを予想させたところ、円と答えた。その後、教師から、座標平面上でこの問題を考えさせるた
めに問題2を提示した。
図4 実践事例1のワークショップ
次にプロセス②について検証する。教師が条件を式に表すとこ
ろまでは提示し、その後を前時までの復習として生徒に考えさせ
成果 ・わかりたい意欲
た。式変形がうまくいかなかったり、円の方程式を忘れてしまっ
・生徒の
ていたりということもあったが、板書した生徒の解答を共有する
がある
主体的活動
・振り返りシート
ことで、多くの生徒が、求める軌跡を導くことができていた。
プロセス③について検証する。座標平面上で考えた軌跡をクリ
授業
単元
アファイルに描いたものと、プロセス①で多く点を取ったペアの
・数学的活動
地図を重ね、書画カメラを使ってプロジェクターで黒板に映し出
・公式の理解
・日常→数学
した。少し見えにくかったものの、生徒たちはどうなるのか興味
・生徒の「なぜ」
・数学→日常
津々の様子で、それまでにぎやかだった教室内に一瞬しんとした
を大切に
課題
・生徒発表
空気が流れた。
(3)研究協議と併せての全般の検証
授業後に行った、付せんを使用したワークショップ(研究協議会)では、図4のような意見が出た。成果
としては、生徒の主体的活動がある授業であったこと、また、分からないことがあったら教員に質問する、
友達と教え合うということが活発に行われており、生徒たちは分かりたいという意欲がとてもあり、普段か
ら教員が「わかる授業」を大切にして授業実践されていることなどが挙げられた。課題としては、前述した
3つのプロセスの数学的活動において、教員側はそのプロセスを理解できるが、生徒たちは「つながり」が
見えていなかったのではないかということが議論となった。日常の問題を数学の問題として数学化するとこ
ろ、数学の問題として解決した解を日常の場面に活用する・意味付けするところをもっと丁寧に説明するべ
きだったという意見が多かった。また、単元を見通した際、本時の授業には公式の理解が不可欠だったので
あるが、定着していない生徒が一定数おり、想定した時間より長くかかってしまった原因であることも挙げ
られた。また、次ページの表2は授業後の生徒アンケートの結果である。
表2 実践事例1の本時に対する生徒のアンケート結果
よく分かった
だいたい分かった
あまり分からなかった
19 人
10 人
1人
そう思う
だいたいそう思う
あまりそう思わない
30 人
0人
0人
③生徒同士で、話し合う場面や意見などを発表する機会
のある授業だと思いましたか。
そう思う
だいたいそう思う
あまりそう思わない
30 人
0人
0人
④授業の中で他の生徒の意見や考えを聞いて、自分の考
えが広がったと思いますか。
そう思う
だいたいそう思う
あまりそう思わない
①授業のねらい(この時間に何を身に付けなければなら
ないか)が分かりましたか。
②授業の中で、自分で考える場がありましたか。
⑤今日の授業の「内容」が理解できましたか。
20 人
10 人
0人
よく理解できた
だいたい理解できた
あまり理解できなかった
⑥授業の最後に振り返りシートで振り返りを行い、次の
授業に向けての課題が分かりましたか。
17 人
9人
4人
深まった
少し深まった
あまり深まらなかった
15 人
12 人
2人
コンパスで軌跡を予想して求めることができた。/始めてやることがたくさんあってできるとすごくうれしかった。もっとよくできるようにな
りたい。/みんなの意見聞けてよかった/今まで習ったことを使ったので、たくさん分かりました。/最初の東京タワーの話と計算があってよか
った。
こうしたことから、本時の授業は、校内授業研究テーマである「分かる授業」を実現するための工夫や「発表
を取り入れた授業」を実現するための工夫が随所に散りばめられた、生徒の「基礎的な知識・技能の定着」「思
考力・判断力の育成」につながる授業であったと考える。このような取組を一授業だけでなく、単元や年間を通
じて繰り返し行っていくことで、さらに効果が期待できると考える。
4.2 実践事例2
(1)研究実施校:神奈川県立座間総合高等学校(全日制)
(2)科 目:「数学Ⅲ」
学 年:3年
(3)単元名:定積分と和の極限(第7章 積分法とその応用)
(4)学校の課題:「生徒の自主的学習態度を育成し、『確かな学力』を定着させる授業づくり」
(5)校内授業研究テーマ:
生徒が主体的・意欲的に学習に臨む授業づくり
(6)単元のねらい:
直線及び様々な曲線(指数関数、対数関数、三角関数、2次曲線)で囲まれた面積を、グラフの上下関
係や積分範囲を認識し、計算することができる。また、グラフを用いて定積分の意味を理解し、活用でき
る。
(7)本単元で身に付けさせたい力:
いろいろな積分法を理解し求積に活用できる計算力及び思考力、また、自分の考えと他の生徒の考えを
比較し、検討できる力
(8)単元の評価規準
関心・意欲・態度
・曲線で囲まれた部分を細分
することによって、長方形の
集まりであることを認識し、
面積を求めようとしている。
・定積分と面積の関係につい
て理解し、積分の性質を利用
して、関数の定積分を求めよ
うとしている。
数学的な見方や考え方
・曲線で囲まれた部分の面積を微
小な長方形で近似する考え方で、
定積分と和の極限との関係を考察
することができる。
・

b
a

d
f ( x)dx と g ( y )dy の違いに
c
ついて考察することができる。
数学的な技能
・置換積分など
を利用して、楕
円や媒介変数表
示された関数で
囲まれた図形の
面積を求めるこ
とができる。
知識・理解
・分数関数や三角関
数などで囲まれた図
形の面積について、
定積分の計算を用い
て求められることを
理解している。
(9)校内授業研究テーマに基づく単元計画の工夫
◆単元計画の柱
①
②
③
④
基本的な技能を習得させる。
自ら考え、自分の意見を他者に説明できる力を育成する。
最も効率的な解法を考えさせたり、計算の工夫を用いたりして面積を導き出せるようにする。
自分の考えと他者の意見を比較し、検討できる力を育成する。
◆単元指導の概要(全6時間)
1時・2時
学習した定積分と面積の関連性を考察する。また、曲線で囲まれた面積を n 個の長方形
に細分化し、和の極限を利用することで求められることが理解できる。
3時
定積分の計算を用いて、いろいろな関数で囲まれた面積を求めることができる。
4時
x が y の関数であることを認識することによって、関数と y 軸で囲まれた面積を求める
ことができる。
5時
置換積分法などを用いることで、楕円や媒変数表示で表された図形の面積を求めることが
できる。
6時
いろいろな面積の求め方を確認するとともに、定積分を正しく計算できる。
(10)単元の指導と評価の計画【 評価の観点 a:関心・意欲・態度 b:数学的な見方や考え方 c:数学的な技能 d:知識・理解 】
評価の観点
学習
時
学習活動
ねらい
評価方法
内容
a b c
d
定積分
1
本時 と 和 の
極限
・定積分の計算を用いて面
積を求めるのではなく、
1
2
 x dx
0
について、面積をいくつか
に細分して求めさせる。
1
定積分
2
本時 と 和 の
極限
曲
3
線
y  f (x)
・0 x dx の値が正確な値に
近づけるための工夫を考え
させる。
2
・定積分を用いて直線や曲
線で囲まれた面積を求めさ
せる。
と面積
4
x  g ( y)
と面積
5
6
いろいろ
な式で表
される曲
線と面積
問題演
習
d
・  f ( x)dx と  g ( y )dy の
c
a
違いについて理解させ、曲
線 x  g ( y)と直線で囲ま
b
曲線
れた面積を求めさせ
る。
・楕円や媒介変数表示され
た関数で囲まれた図形の面
積を求めさせる。
・これまでに学習した関数
で囲まれた図形の面積を求
めさせる。
・定積分の計算を用いる
前に、定積分と面積の関
連性を考察することがで
きる。
○
・求める面積をn個の長
方形に細分化して、その
長方形の和の極限で求め
られることを考えること
ができる。
行動観察
ワークシート
振り返りシート
○
・定積分の計算を用いて
分数関数や三角関数など
で囲まれた図形について
も、面積を求められるこ
とを理解する。
d
b
・ f ( x)dx と  g ( y )dy
c
a
の違いについて理解す
るとともに、定積分の計
算は同じであることを理
解する。
・楕円や媒介変数表示さ
れた関数の定積分は、置
換積分などを用いて求め
ることができる。
・学習した内容を再度確
認し、定積分を用いた面
積の求め方の定着を図
る。
行動観察
ワークシート
振り返りシート
○
行動観察
ワークシート
振り返りシート
行動観察
ワークシート
振り返りシート
○
行動観察
ワークシート
振り返りシート
○
○
行動観察
ワークシート
振り返りシート
(11)本時の学習指導案
①実施日:平成27年11月2日(月) 授業担当者: 池田 しずか 教諭
②授業クラス:3年1組 17名
③本時のねらい:曲線で囲まれた部分を細分し、微小な長方形の集まりとして面積を求めることに興味・
関心を持ち、考察することができるようにする。
④本時の指導内容
授業
展開
学習活動
1.問題を考える。
導入
(10分)
〈問題〉 次の直線や曲線とx 軸、y 軸
および直線 x  1 で囲まれた部分の面積S
を求めよ。
(1) y  4
(2) y  2 x
2
〔解答〕(1)
(3) y  34x (2)
2 1(4)(3)y  x(4)
指導上の留意点
・既習内容の確認のために、面積の
公式や定積分を用いて計算させる。
・(4)を区分求積法の考え方に導くた
めに、(1)~(3)の計算式から、面積
の定義や公式を確認する。
評価規準
2.問題の解答について検証する。
・ワークシートNo.1を配付する。
〈発問〉曲線 y  x とx 軸および直線 x  1
で囲まれた面積 S は
2
1
展開
①
(40分)
S   x 2 dx 
0
1
3
となることを、グラフを用いて検証しよう。
・自分の考えを記入する。
〔予想される生徒の考え〕
・長方形で分割 ・台形で分割
3.個人の考えを発表する。
・他の人の考えを聴いて、ワークシートに整理
する。
・計算ではなく、方法に着目させ
る。
・クラスで色々な考えを共有するた
めに、生徒に板書させ、他の生徒に
その考えを説明させる。
・適宜、考え方が整理できるような
助言を行い、分類を促す。
あの分け方だと計
算が難しそうだ。
どんな分け方
があるかな?
4.検証結果を吟味する。
・分類したそれぞれの方法のメリットとデメリ
ットを考える。
〔予想される生徒の考え〕
メリット
長方形分割
計算が楽
台形分割
隙間が少ない
デメリット
隙間が多い
計算が大変
〔予想される生徒の考え〕区間をできるだけ
細かく等分し長方形を作る。
5.
・多面的な見方に気付かせるため、
検証結果が1種類の場合は教員から
他の方法を提案する。
・長方形の作り方には左端を曲線に
あわせて分割する場合( y  x 2 の時
は長方形が曲線の下側に存在)と、
右端を曲線にあわせて分割する場合
(長方形が曲線の上側に存在)があ
ることに触れる。
・ワークシートNo.2を配付する。
曲線 y  x とx 軸および直線 x  1 で囲まれ
た面積 S は
2
1
S   x 2 dx 
0
1
3
であることを検証する。
展開
②
(40分)
検証結果を確かめよう。
(1) 区間[0,1]を5等分する場合
(2) 区間[0,1]を10等分する場合
(3) 区間[0,1]を20等分する場合
・(1)の5等分する場合についての説明を聞く。
・座席の横1列(4~5人)の班(計算班)を
作り、今後の動きについて説明を聞く。
・班ごとに問題を分担し、計算する。
例)計算1班…10等分(左端)
2班…10等分(右端)
3班…20等分(左端)
4班…20等分(右端)
曲線で囲ま
れた部分を
細分するこ
とによっ
て、長方形
の集まりで
あることを
認識し、面
積を求めよ
うとしてい
る。
【関心・意
欲・態度】
・(1)の5等分する場合について説明
する。
・計算班で分担された問題を解答
後、班を解体し、各計算班から1名
以上を集め、新たに説明班を作り、
その班にそれぞれの計算を教えるこ
とを伝える。
・計算をする際は電卓を用いてもよ
いこととする。
・10等分、20等分と細分化していく
と、求めたい図形に近づくことを視
覚的に理解させるために、図を書か
せる。
・生徒の状況によっては n 等分する
場合の面積を求めてから、n=10、20
を代入して計算することも考えられ
る。
・説明班でそれぞれの計算結果を説
明させる。
曲線で囲ま
れた部分の
面積を微小
な長方形で
近似する考
え方で、定
積分と和の
極限との関
係を考察す
ることがで
きる。
【数学的な
見方や考え
方】
何か簡単に計
算する方法は
ないかな?
うちの班の値は、こ
うやって計算して○
○になったよ。
計算が
大変!
6.計算結果を共有する。
・計算班を解体し、新たに縦1列の班(説明
班)を作る。
例)説明1班の構成
計算1班1名(10等分左端)
計算2班1名(10等分右端)
計算3班1名(20等分左端)
計算4班1名(20等分右端)
・説明班でそれぞれの計算結果を説明する。
7.計算結果を考察する。
・分割を細かくすると、長方形の作り方による
差異が小さくなり、同じ値 1 に近づくことを
3
確認する。
8.分割を限りなく細かくする場合を考える。
・n 等分する場合の面積を求める。
・n → ∞のときの極限値が
1
1
3
この値で間
違ってない
かな?
・必要に応じて、Σ計算の復習を行
う。
になり、
 x dx の値と一致することを確認する。
2
0
まとめ
(10分)
9.アンケートと振り返りシートを記入し、提
出する。
・学習の振り返りをさせる。
5 単元の授業づくりに基づく授業実践の評価と分析
5.2 実践事例2
(1)単元の検証
1時
(本時)
2時
(本時)
3時
単
元
の
成
果
曲線で囲まれた部分の面積を求める方法を考察することによって、区分求積法の考え方に気付かせ
ることができた。多様な考え方を知ることによって、自分の考えを広げるきっかけを作ることがで
きた。
曲線で囲まれた部分の面積を右端区分求積法と左端区分求積法によって考察させ、長方形の底辺を
10等分、20等分した場合を実際に計算して求めることで、定積分で求めた面積の値に近づくことを
実感させることができた。
前時の内容から拡張し、面積を極限による量として捉え、区分求積法によって実際に面積を求めら
れることを確認させることができた。定積分が区分求積法の一般化であることを確認させ、様々な
関数で囲まれた部分の面積を定積分で求められることについて理解させることができ、定積分の有
用性を実感させることができた。
曲線
4時
は、 x 軸を上下に、y 軸を左右にすると図が描けることを確認し、曲線
と y 軸の間の面積の求め方について考察した。1時の内容に触れ、
との違いについて理
解させた。
5時
6時
単元の課題
楕円の面積を定積分を用いて表し、対称性や円の面積を利用して求めることができることに気付か
せることができた。媒介変数表示の曲線に関する図形の面積を図に頼らずに定積分を用いて表し、
置換積分法を利用して求めることについて理解させることができた。
この単元の既習内容の確認をし、問題演習を行った。問題の担当を決め、その問題の解法を発表形
式で説明させた。説明するための準備段階で、生徒同士で解法について確認し、わからないことに
ついて復習し、互いに理解を深めさせることができた。
曲線や直線で囲まれた部分の面積を考える際に、図が分かる場合は面積を定積分で表すことができ
ていたが、既習内容の理解が不十分であったため、図が分からない場合は上下関係や積分範囲を認
識し、定積分で表すことができない生徒がみられた。また、定積分の計算でのつまずきも多くみら
れたため、既習内容を丁寧に復習する必要があったと思われる。
図5 振り返りシート
単元・授業の振り返りシート
年
単元名『
組
図6 振り返りシートの分析
(グラフ中の数字は人数)
番 氏名
』 授業日(
月
日 ~
月
日)
担当教員
先生
評価 4:かなり当てはまる、 3:ほぼ当てはまる、 2:あまり当てはまらない、 1:ほとんど当てはまらない
項
授業日
学習内容
アンケート
評価
意見・感想
番
曲線で囲まれた部分の面積を求めるた
月
日
定積分と和の
4・3・2・
(
)
1
めに、細分して計算することで面積を
1
極限①
校時
求められることが理解できた。
曲線で囲まれた部分の面積を求めるた
月
日
4・3・2・
定積分と和の
めに、細分して計算し、どのようにす
(
)
2
1
極限②
れば曲線の面積に近づけることができ
校時
るか考察し、理解できた。
様々な関数で囲まれた図形の面積を、
月
日
曲線と面積
4・3・2・
定積分を用いて求められることについ
(
)
3
1
校時
て理解できた。
4
月
(
日
)
校時
5
月
(
6
月
(
曲線 と面積
2つの定積分の違いについて理解し、
面積を求められた。
日
)
校時
いろいろな式
で表される曲
線と面積
日
)
校時
問題演習
楕円や媒介変数表示された関数の定積
分について理解し、面積を求められ
た。
これまで学習した積分の性質を用い
て、関数の定積分を求められた。
4・3・2・
1
4・3・2・
1
4・3・2・
1
(2)本時の検証
本単元は、定積分を用いて面積を求める単元であり、簡単な関数に対する計算については、数学Ⅱで学習
している。本時の授業では、グラフを用いて面積を長方形に細分化することで面積を導き出す流れをとり、
その過程で個々の生徒の考えや疑問に感じたことをクラス全体で共有し合う、生徒主体の活動が授業の根幹
となっている。本授業では、2つの場面において、数学的活動を3つのプロセスとして設定し、検証した。
①出された課題を、自ら分析し、解決のための構想を立て、考察し表現する。<表現>
②自分の考えを、根拠を明らかにして他者に説明する。<共有>
③自分の考えと他者の考えの違いを明らかにし、議論する。<洗練>
(検証1)
〈発問〉曲線 y  x 2 とx 軸および直線 x =1で囲まれた面積 S は
1
S   x 2 dx 
0
1
3
となることを、グラフを用いて検証しよう。
日頃から自分自身で考える姿勢がついているようで、様々な考えが出された。教員から指名された生徒
が板書し、自分の考えの発表を行った。出された意見は大別すると次の通りである。
(ⅰ)長方形に細分化 (ⅱ)台形に細分化 (ⅲ)長方形と三角形 (ⅳ)その他
ここでは、生徒一人ひとりが自分の考えで、課題に向き合い、自分の意見を他の生徒に伝えることがで
きた。ただし、生徒が考える場面や、発表する場面に時間がかかったことから、それぞれの解法のメリッ
ト・デメリットについては教員主導で説明したため、プロセス③の議論に関しては不十分であった。
(検証2)
検証結果を確かめよう。
(1) 区間[0,1]を5等分する場合
(3) 区間[0,1]を20等分する場合
(2) 区間[0,1]を10等分する場合
計算の段階では、4人で確認し合って解いている班、式を立てる生徒と計算を行う生徒に分かれて行って
いる班、また、一人ひとりが問題を解いて、検証し合う班など様々であった。計算に時間がかかってしまっ
た班があったため、元の班で議論する時間がなかった。だが、早
めに計算が終わった班は、
「台形の形で計算をしたらどうなるだろうか」と小さな台形の和
図7 実践事例2のワークショップ
で計算し長方形よりも の値に近づくことを発見した班や、中に
1
は長方形の和の式から極限の和を利用して を導き出した班もあ
3
成果
った。よって、この活動の中で、3つのプロセスを達成した班も
1
あったといえる。
・課題の発見・生 ・グループワーク
3
(3)研究協議と併せての全般の検証
全体を通して、生徒自らから考え自分の意見を持って、主体的
な活動が随所に見ることができた。グループワークは定期的に
行っており、生徒自身が課題を解決する授業を実践しているこ
とが今回の授業に大いに反映されていたと思われる。本時のグ
ループ活動の様子は、研究協議の中でも多く意見が出された。
課題としては、展開②のところで「右端区分求積法と左端求積
授業
徒の主体的活動
の充実
単元
・時間の配分
・議論の展開
課題
法」についての説明に時間をかけることができなかったため、「右端区分求積法と左端求積法」の違いに
ついて考察するところまで至らず、その後のグループワークでは単に計算することに没頭して終わった班
もあった。前半の展開①の生徒個々で考える時間や後半のグループワークの時間に制限を設けることが必
要であった。
表2 実践事例1の本時に対する生徒のアンケート結果
①授業のねらい(この時間に何を身に付けなければならない
か)が分かりましたか。
だいたいわかった
あまりわからなかった
よくわかった
8人
9人
0人
②授業の中で、自分で考える場がありましたか。
そう思う
だいたいそう思う
あまりそう思わない
12 人
5人
0人
③生徒同士で、話し合う場面や意見などを発表する機会のあ
る授業だと思いましたか。
そう思う
だいたいそう思う
あまりそう思わない
13 人
4人
0人
④授業の中で他の生徒の意見や考えを聞いて、自分の考えが
広がったと思いますか。
そう思う
だいたいそう思う
あまりそう思わない
9人
8人
0人
よく理解できた
だいたい理解できた
あまり理解できなかった
⑤今日の授業の「内容」が理解できましたか。
⑥授業の最後に振り返りシートで振り返りを行い、次の授業
に向けての課題が分かりましたか。
9人
8人
0人
深まった
少し深まった
あまり深まらなかった
8人
8人
0人
以上より、校内の研究授業のテーマである「生徒が主体的・意欲的に学習に臨む授業づくり」は達成したと
いえる授業であった。常日頃から、生徒に考えさせる姿勢を身に付けさせることの重要性を感じさせる授業で
もあった。
6 成果並びに課題とその改善に向けた方策
本研究のねらいは、単元の授業実践を通して、数学科におけるアクティブ・ラーニングの視点を踏まえた指導
方法=「数学的活動」を効果的に取り入れる視点を明らかにすることであった。そこで、このねらいを達成する
手立てとして、2つの数学的活動のプロセス(1①数学化→②考察・処理→③活用・意味づけ、2①表現②共
有③洗練)を設定し、単元の授業実践を行った。
単元計画の段階で、この数学的活動のプロセスを意識して授業づくりをすることによって、効果的な「数学的
活動」が実現できた。具体的には、永谷高校の実践(プロセス1)では、目的意識をもった主体的活動を実現
することができ、解決に向けた意欲も引き出すことができた。また、座間総合高校(プロセス2)では、自分
の考えと他者の考えの<共有>・<洗練>を経て、生徒が多様な見方ができるようになったという成果があがっ
た。
一方で、課題としては、永谷高校(プロセス1)では、解決したい意欲はあるが、知識や技能の定着不足で
活動が止まってしまった生徒が見られた点が挙げられる。また、座間総合高校(プロセス2)では、他者と協
働して多様な考えを生み出すことまではできていたが、自力で解決する力に結びつくまでにはなかなか至らない
といった点が挙げられる。
このことから、数学科におけるアクティブ・ラーニングの視点を踏まえた指導方法=「数学的活動」を実現す
るためには、数学的活動のプロセスを意識し単元計画を作成することと、その前に習得させるべき知識や技能を
しっかり定着させておくこと、そして活動後のフォローを行うことが重要であることが分かった。以上のことを
踏まえ、今後の授業改善に生かしていきたい。
理
科
1 研究のテーマとねらい
(1)研究のテーマ
「組織的な授業改善の推進-アクティブ・ラーニングを効果的に取り入れた単元の授業づくり-」
現行の高等学校学習指導要領(理科編)においては、科学的な「思考力・判断力・表現力等」の育成が
求められており、確かな学力の向上に向けた授業改善の取組を一層推進する必要がある。学校の課題を
踏まえ、生徒に身に付けさせたい力及び研究テーマを設定し、単元計画においてどのようにしてアクテ
ィブ・ラーニングの視点を踏まえた指導方法を効果的に取り入れるかを研究し、評価と分析を行うこと
とした。
(2)研究のねらい
神奈川県高等学校教育課程研究会研究推進委員会(理科部門)(以下「推進委員会」という。)では、
組織的な授業改善を推進するために次の点が有効と考え、これらを実践し検証することをねらいとした。
・生徒の実態把握と学校としての課題の共有化
・生徒に身に付けさせたい力の設定(「協働して学び合い、主体的に考えようとする力」)
・学力の三要素の一つである「思考力・判断力・表現力等」の育成を図る授業の展開方法
・授業の展開方法として、「アクティブ・ラーニング」の視点を踏まえた授業の実践
・授業実践の評価と分析及び改善に向けての方策を、研究の成果と課題で示すことにより、各学校及び教
員一人ひとりの授業改善に役立てること
理科部門では研究会全体のテーマに基づき、どのようなねらいのためにどのような「生徒の主体的、協
働的な学習活動」を取り入れるとよいかを考え、その活動を単元のどの場面で行い、授業の中でどのよう
に展開すると効果的であるかを研究することとした。
2 研究で取り組んできた内容
(1)校内授業研究の在り方について
推進委員会理科部門では、今年度のテーマに基づき、委員の所属校の実態や授業改善の取組状況等を
把握し、生徒に身に付けさせたい力として、昨年に引き続き「協働して学び合い、主体的に考えようと
する力」を設定した。その力の育成のためには、単元のどの場面で、どのようなアクティブ・ラーニン
グの視点を踏まえた指導方法を取り入れるとよいかを検討し、授業の中でどのように展開すると効果的
であるかの研究を行った。
単元の指導計画の検討は、委員を物理・化学分野と生物・地学分野の2つのグループに分け、委員の
作成した単元の指導計画を検討し、授業実施科目を「化学基礎」と「生物基礎」として進めた。さらに、
委員の持ち寄った単元の指導計画を精選することにより学習指導案づくりを行った。検討の後半では、
2つのグループを統合し、公開研究授業を行う委員の所属校の状況を踏まえ、意見交換を行い、指導計
画の改善を図った。その後、公開研究授業を実施し、公開研究授業後の検討会において実施した授業に
ついて検証を行った。
(2)研究の対象とした各科目の単元及び内容とその手立て
ア 「化学基礎」では、「物質量と化学反応式」の単元を取り上げ、物質の数量的な扱いについて学習
し、化学反応における反応物や生成物の数量関係について考察できるようになることが目標である。
実践事例は単元の終盤に位置付けられたものであり、既習事項を活用していきながら課題解決学習を
行い、新たな知見を見出していくような授業を目ざした。
イ 「生物基礎」では、「生物の体内環境の維持」の単元を取り上げ、事例発表の授業は様々な器官を
学習するに当たっての「導入段階での取組」という位置付けとし、本授業を単元全体にどのようにつな
げていくかということを考えた。また、中学校で学習した内容も含めて、生徒の知識を整理し、今後の
学習内容(体内環境の維持や免疫)につなげることを意識し、生徒にどのような手順で取り組ませるか
も研究した。
アとイのいずれについても、教材の共有化を踏まえ、授業実施者の計画に基づき、委員の持ち寄った実
験の指導計画や実験の教材などを協議し、それらを組み合わせて指導内容を精選していくことを通して指
導計画を作成し、授業を実施した。
【実践事例 「化学基礎」】
3 研究の目標を達成するための手立ての工夫
(1)生徒に主体的に考えさせるための工夫について
生徒が主体的かつ協働的に学びながら、化学反応における反応物や生成物の量的な関係性や化学反応
式との関係について気付き、理解を深めていけるよう、マグネシウムと塩酸を用いた実験を題材として
課題解決型のグループ学習を実施した。
個々に長さの異なるマグネシウムリボンを配付し、塩酸との反応で生じる水素の体積を測定した。そ
の後、4人組の班内で各自のデータを共有してグラフを作成し、化学反応における反応物であるマグネ
シウムの質量と生成物である水素の体積の関係性について考察した。また、実験結果からマグネシウム
と水素の物質量を算出して表を作成し、物質量比と化学反応式の係数比の関係について考察した。最後
に、作成したグラフや表を掲示してクラス全体で共有し、他班の結果と自分たちの結果を比較すること
で、操作や計算のミスなのか実験誤差なのかといった点について確認した。
(2)ワークシート等の工夫について
課題の提示方法として、最終的な到達目標に対して段階的に課題を提示することでやるべきことを明
確化し、90分の授業時間を通して集中して取り組めるように設定した。生徒に対しては次の4つの課題
を提示した。
① マグネシウムと塩酸の反応について化学反応式を書く
② マグネシウムと塩酸の反応で発生する水素の体積を測定する
③ 用いるマグネシウムの質量と発生する水素の体積の関係性を考える
④ 用いるマグネシウムの物質量と発生する水素の物質量の関係性を考える
また、生徒の学習理解度に応じて解決の手助けとなるようなヒントを用意し、学習を進めていく中で
ヒントを活用しつつ自ら解決していき、新たなことに気付き達成感を得られるよう配慮した。
さらに、グラフや表の作成といったデータ処理に際しては、複数の生徒の実験データを統合して行う
ようにすることで協働的な学びの機会を設けた。その中で数値処理の方法などを互いに教え合う様子も
見られた。
4 単元の指導計画及び重点を置いた授業展開例
(1)研究実施校:神奈川県立三浦臨海高等学校 (単位制普通科 90分授業)
(2)学校の課題:「言語活動」及び「生徒主体の授業づくり」
(3)実施校における研究テーマ: 生徒が主体的に取り組める授業を展開し、生徒自らの学ぶ力を育むとと
もに、確かな基礎学力の定着を図る。
(4)科目:「化学基礎」
(5)単元名:物質量と化学反応式
(6)単元のねらい:相対質量や物質量といった化学における数量の概念について学習する。また、それらの
概念に基づき化学反応における反応物と生成物の関係について定量的に考察する。
(7)単元で身に付けさせたい力:化学的数量の概念を基に化学反応について定量的に考察する力を養う。
また、科学的な思考力や探究方法を身に付ける。
(8)単元の評価規準
関心・意欲・態度
思考・判断・表現
物質量や化学反応式につい
て関心を持ち、意欲的に探
究しようとしている。
物質量と質量や気体の体
積との関係や、化学反応
における物質の変化とそ
の量的関係について考察
し、導き出した考えを表
現している。
(9)単元の指導と評価の計画(本時は太枠)
観察・実験の技能
知識・理解
物質量と質量や気体の体 ・物質量や粒子数、質量、
積との関係や、化学反応 気体の体積との関係に
における物質の変化とそ ついて理解し、知識を身
の 量 的 関 係 に つ い て 観 に付けている。
察、実験などを行い、基 ・化学反応式は化学反応
本操作を習得するととも に関与する物質とその
に、それらの過程や結果 量的関係を表すことに
を的確に記録、整理して ついて理解し、知識を身
いる。
に付けている。
時
間
学習
内容
ねらい
身近な物質を
用いた手軽な
実験を行う。
指数の扱いに
ついて学ぶ。
身近なものでも化学
変化が起こることを
知る。
大きな数の扱い方を
理解する。
相対質量
原子量
分子量
式量
原子量の考え
方を理解し、分
子量、式量につ
いて学ぶ。
原子の質量など極め
て小さい数について
考え、相対質量の利
用について理解す
る。
物質量
モル質量
ア ボ ガド
ロの法則
物質量と粒子
数、質量、気体
の体積の関係
について学ぶ。
化 学 変化
と 化 学反
応式
化学変化を化
学反応式とし
て表す。
化学変化
1
指数
2
3
4
5
6
7
評価の観点
学習活動
a
b
c
d
◎
○
◯
物 質 量 と 他 の数
量 と の 関 係 を考
えている。
化学変化の特徴を理
解し、化学反応式の
立て方や表す意味を
理解する。
◎
◎
◎
12
a: 関心・意欲・態度
◎=特に重視
化学反応式の係数が
化学変化における反
応物・生成物の量的
関係を示しているこ
とを理解する。
b: 思考・判断・表現
結 果 か ら 化 学反
応 式 の 係 数 と物
質 量 の 関 係 を考
察している。
c: 観察・実験の技能
(10)取組事例
①実施日:平成27年11月10日(火) 授業担当者 : 池原 洋達 教諭
ワークシー
トの記述内
容の分析
状 態 変 化 と 化学
変 化 の 違 い を理
解している。
実 験 を 適 切 に行
う こ と が で きて
いる。
◎
ワークシー
トの記述内
容の分析
物 質 量 に つ いて
理解し、知識とし
て 身 に 付 け てい
る。
化 学 反 応 式 の表
す 意 味 や 係 数に
つ い て 考 え てい
る。
10
11
原子量・分子量・ ワ ー ク シ ー
式 量 に つ い て理 ト の 記 述 内
解している。
容の分析
物質量やアボガドロ
数などの化学的な数
量概念を理解し、単
位の変換などの数学
的な力を身に付け
る。
マグネシウム 実験を通じて化学反
と塩酸を用い 応式の係数と物質量
た実験を行う。 の関係を理解する。
化学反応式の
係数と物質量
の関係につい
て学ぶ。
ワークシー
トの記述内
容の分析・行
動観察
そ の 活 用 に つい
て考えている。
○
化 学 反応
に お ける
量的関係
化 学 変 化 や 指数
の 利 用 に 関 心を
持っている。
◎
○
9
評価方法
実 験 を 適 切 に行
い、的確に記録し
ている。
◯
8
実験
評価規準
化 学 反 応 式 の係
数 と 化 学 変 化に
お け る 量 的 関係
に つ い て 理 解し
ている。
d: 知識・理解
レポートの
記述内容の
分析・行動観
察
ワークシー
トの記述内
容の分析
②授業クラス:1年次生 30名
③本時のねらい: 化学反応における反応物と生成物の関係について実験により確かめ考察し、体感する。
また、生徒一人ひとりが実験を行いデータを取ることで主体的な学びを育み、それを班
で統合していくことで表現力の育成を図る。
④本時の授業内容
学習内容と活動
・本時の学習目標と学習内容を確認する。
指導・支援
評価方法
・化学反応における反応物と生成物の量的な
関係性について実験により確かめることが目
的であることを明確にする。
(課題①)マグネシウムと塩酸の反応について
化学反応式を考える。
(課題②)マグネシウムと塩酸の反応により発
生する水素の体積を測定する。
・一人に一本、長さの異なるMgリボンを配付す
・計測に適した範囲内の長さで準備する。
る。
・Mgリボンの質量を量る。
・Mgと塩酸を反応させて発生するH2を氷水を用
いて水上置換により捕集し、体積を量る。
・行動観察
(観察・実験の技能)
・電子天秤の使用や水上置換の手法など必要
に応じ指導する。
・水素の捕集に失敗した場合にはやり直させ
る。
(課題③)マグネシウムの質量と水素の体積の
関係について考える。
・個人で得たデータを班内で共有し、Mgの質量
とH2の体積についてグラフを作成し、関係性
・掲示用の大きいグラフ用紙を各班に配付
する。
・作成されたグラフ、表
(観察・実験の技能)
について考える。
(課題④)マグネシウムと水素の物質量の関係
について考える。
・用いたMgの質量から物質量を算出する。
・標準状態と仮定して発生したH2の体積から物
・既習事項である物質量と質量の関係、物質
量と気体の体積の関係について確認する。
質量を算出する。
・マグネシウムと水素の物質量の比を計算し、
・ワークシートの記述内容
の分析
(思考・判断・表現)
・掲示用の大きい用紙を各班に配付する。
表を作成する。
・各班で作成した表を掲示し、全体で共有する。 ・MgとH2の物質量比を確認する。
・化学反応式と結果を比較し、化学変化におけ
・化学反応における反応物と生成物の物質
る量的関係と化学反応式の関係について考
量比と化学反応式の係数の関係を確認す
察する。
る。
5 単元の授業づくりに基づく授業実践の評価と分析
本授業は「化学基礎」の単元「物質量と化学反応式」における終盤に位置付けられたものであった。した
がって既習事項を活用していきながら課題解決学習を行い、新たな知見を見出していくような授業を目ざし
た。
この単元では、物質の数量的な扱いについて学習し、化学反応における反応物や生成物の数量関係につい
て考察できるようになることが到達点である。したがって、これまでに学んだ物質量と質量の関係、物質量
と気体の体積の関係といった知識を活用していくことや、実験を通して理論と実際の現象とのつながりを体
感させることに主眼を置きつつ、これらの活動を通じて生徒が主体的かつ協働的に学びながら化学反応にお
ける反応物や生成物の量的関係性や化学反応式との関係について気付き、理解を深めていくような授業展開
を考えた。
授業実践の結果として、まず既習知識の活用という点については、用いたマグネシウムの質量や発生した
水素の体積から物質量を求めるなど、実験により取得したデータを整理していく過程において班内で協力し
ながら考え、互いに教え合うような姿勢が見られた。また、個人として得たデータを班内で統合し、グラフ
の作成や物質量比を算出した後にクラス内で共有し、そこから化学反応式の係数の示す意味を考察させた。
班によってはデータの精度にばらつきが見られたが、クラス全体としてデータを共有することで誤差や操作
ミスに気付くことができた。現象の体感という点については、一人ひとりに異なる長さのマグネシウムリボ
ンを用いて操作に責任を与えたことで目的意識を持って実験を行うことができ、全員が積極的に授業に取り
組むことができたとともに、授業内容を印象付けることができた。
今回の授業実践を通じて課題解決型の学習活動にアクティブ・ラーニングの視点を踏まえた指導方法を取
り入れることにより、生徒の学習意欲の向上や言語活動の充実による表現力の向上のみならず、既習事項の
応用や新規知識の獲得といった学習理解を深めることにも有効であることが分かった。
6 成果並びに課題とその改善に向けた方策
(1)成果
今回単元及び授業展開について計画するに当たり、アクティブ・ラーニングの視点を踏まえた指導方法の
効果的な取り入れ方について検討してきた。すなわち、生徒が主体的かつ協働的に活動し、課題解決へ取り
組む状況をどのように作り出すかということである。また、授業実施校の実態を踏まえ、アクティブ・ラー
ニングの視点を踏まえた指導方法を取り入れつつも基礎的学力の定着といった学校における課題を達成する
ことも求められた。
主体的な学びという点については、生徒一人ひとりが手を動かして実験を行い、データを取得することで、
他人任せの姿勢に陥らないように留意した。また、協働的な学びという点については、他者の行った実験デ
ータを班やクラス内で共有していきながらデータ処理や考察をしていき、理解を深めていく中で垣間見るこ
とができた。課題解決学習という点については、生徒が自ら実験や考察を通して課題を解決していく中で、
到達目標である化学反応における量的関係及び化学反応式の示す意味について理解していけるよう、課題を
どのように与えるのか、何を考えさせるのか、どのような情報をヒントとして与えるのかといったところを
十分に検討し配慮した。課題を4分割して段階的に提示することで集中力や興味を持続させるとともに、課
題ごとの状況設定を生徒の実態に即した形で問うことができた。
結果として、大部分の生徒が90分間を通して前向きな姿勢で授業に取り組むことができ、授業後に実施し
たアンケート結果からも授業内容の理解について自信を持つことができたと感じていることが分かった。
(2)課題とその改善に向けた方策
アクティブ・ラーニングの視点を踏まえた指導方法を効果的に取り入れていくためには次のような課題が
挙げられる。一つは、生徒の実態を的確に把握し、実態に即した形で課題を提示する必要があるということ
である。生徒にとって難易度が高すぎても諦めにつながってしまい、低すぎても達成感を得られず意欲を引
き出すことができなくなってしまう。この点に関しては日頃から生徒の理解度や意欲をよく観察して授業の
計画に反映させていくとともに、授業準備段階でのプリント作成や授業実施時の声掛けの仕方などでの配慮
工夫が必要である。
次に、協働的な学びを実現するための工夫である。グループワークにおいては、他人任せになってしまう
生徒が出てしまうことが考えられる。この点に関しては個人としての思考活動を十分に確保した上で他者と
の関わりを作るような流れが必要である。また、形式的なグループワークにならないためにはその必要性や
意義を生徒が感じられるようにする必要もある。
さらに、単元全体を見通した計画の中でアクティブ・ラーニングの視点を踏まえた授業を実践していくこ
とである。一つの授業内にアクティブ・ラーニングの視点をすべて取り入れることは困難な場合もある。課
題解決学習ということについて、①課題の認識・②解決方法の検討・③その実践・④実践の評価といったプ
ロセスがあるとするならば、単元の中で各授業にこれらを位置付けて一つずつ行っていくことが有効な場合
もあるかもしれない。個人としての思考を重視する時間と他者との関わりを重視する時間を別設定すること
が有効な場合も考えられる。したがって、単元全体の指導計画を立て、その中でどの時間にどのようにアク
ティブ・ラーニングの視点を取り入れていくかといった計画性も重要である。
〈班で作成したグラフの掲示〉
〈班で作成した表の掲示〉
マグネシウムの質量と水素の体積の関係
マグネシウムと水素の物質量の比
〈授業で用いたワークシート〉
【実践事例 「生物基礎」】
3 研究のねらいを達成するための手立て
(1)生徒に主体的に考えさせるための手立て
本授業は、単元の「導入段階での取組」と位置付けたため、個別学習とグループ学習を組み合わせるこ
とで、生徒の既習内容の確認と広がりを図れるように努めた。また、授業のヒントとなるような資料等は
使用しないことで、生徒一人ひとりが自分自身の考えや発言に責任を持って取り組み、学び合いのある授
業となるよう工夫した。
(2)ワークシート等の工夫について
単元全体の内容につなげるために、生徒の既習事項を段階的に整理・選別し、まとめを行えるように
工夫した。その際に、体内器官を印象付けるために作図等を活用し、視覚的要素の充実を図った。また、
復習と基礎知識の定着を図るために、自宅学習の要素を取り入れた。
4 単元の指導計画及び重点を置いた授業展開例
(1)研究実施校:神奈川県立大船高等学校(全日制普通科50分授業)
(2)学校の課題:生徒主体の授業改善の実施
(3)実施校における研究テーマ:生徒が自ら学び相互に高め合う姿勢を育成し、基礎的・汎用的な能
力を向上させる。
(4)科目:「生物基礎」
学年:第1学年
(5)単元名:生物の体内環境の維持
(6)単元のねらい:生物の体内環境の維持について観察、実験などを通して探究し、生物には体内環境を維
持する仕組みがあることを理解する。また、体内環境の維持と健康の関係について理解
する。
(7)単元で身に付けさせたい力:体内環境の維持に関わる様々な臓器について、既習の知識を活用し、情報
の共有や議論を通じて確認するとともに、各臓器のつながりを考察し、そ
の働きを理解する力。
(8)単元の評価規準
関心・意欲・態度
思考・判断・表現
観察・実験の技能
知識・理解
体内環境の維持の仕組みに
ついて関心を持ち、意欲的
に探究しようとする。
生物の体内環境が保たれ
ていることを考察し、導
き出した考えを表現して
いる。
体内環境の維持の仕組み
について観察、実験など
を行い、基本操作を習得
するとともに、それらの
過程や結果を的確に記
録、整理している。
体内環境が保たれてい
ることを理解し、知識を
身に付けている。
(9)単元の指導と評価の計画(本時は太枠)
時
間
学習内容
1
体内環境の維
体内環境 持に関わる体
液の役割につ
と体液
いて学ぶ。
2
3
4
血液
学習項目
ねらい
体内環境の維持(恒
常性)に体液がどの
ように関わっている
のかを理解する。
評価の観点
a
b
体内環境の調節に関
わる臓器の位置関係
と主な働きについて
考察する。
心 臓 の 構 造 と 心臓の構造と役割を
心 臓 の 構 血 液 の 循 環 に 学習し、血液循環量
の調節について理解
造と働き ついて学ぶ。
する。
d
評価規準
評価
方法
動物の進化と体内環境 行 動 観
の維持、体液の働きや 察
関係性について関心を
持っている。
○
血 液 の 成 分 と 血液の成分の持つ役
そ の 役 割 に つ 割とその働きについ
いて学ぶ。
て理解する。
体内の臓器に
ついて、その位
置関係や主な
体内の臓
働きについて
器につい
学ぶ。
て
c
○
血液凝固の仕組みにつ
いて、基本的な概念や
原理・法則を理解して
いる。
行動観
察
ワーク
シート
体内の臓器について関 ワ ー ク
心を持っている。
シート
への記
体内環境の維持に関わ
述内容
る臓器について考え、
の分析
その位置関係や働きに
ついて的確に表現して
いる。
◎
○
○
心臓の構造に関心を持 行 動 観
ち、その働きについて 察
理解している。
ワーク
シート
5
6
7
肝 臓 の 構 造 と 肝臓の構造を学習
働 き に つ い て し、その働きについ
肝臓の構
学ぶ。
て理解する。
造と働き
腎 臓 の 構 造 と 腎臓の構造を学習
働 き に つ い て し、尿生成過程のろ
学ぶ。
過と再吸収の仕組み
腎臓の構
について考察し、的
造と働き
確に表現する。
○
○
◎
肝臓についての基本的
な知識を身に付け、体
内環境の維持に働く仕
組みを理解している。
ワーク
シート
への記
述内容
の分析
観察を適切に行い、的 ワ ー ク
確に記録している。
シート
腎臓による体液調節の へ の 記
仕組みについて、事象 述 内 容
を科学的に考察し、導 の分析
き出した考えを的確に
表現している。
a:関心・意欲・態度
◎=特に重視
b:思考・判断・表現
c:観察・実験の技能
d:知識・理解
(10)取組事例
① 実施日:平成27年10月29日(木)
授業担当者 : 細谷 多恵子 教諭
② 授業クラス:1学年 40名
③ 本時のねらい:体内の臓器の位置関係を確認するとともに、
体内環境の維持に関わる臓器の特徴を考察し、
その臓器のつながりと主な働きについてまとめる。
④ 本時の指導内容
学習内容と活動
指導・支援
評価方法
【個別学習】
・体内にある臓器を確認する。
【グループ学習】
・臓器の名称のまとめを行う。
・個別学習とグループ学習とを色分けこ ワークシートへの記述
ることで、生徒の理解度が分かるように 内容の分析
する。
(関心・意欲・態度)
【グループ学習】
・体内臓器の形・名称・位置関係を話し合い
ながら、模式図<図1>の中に書き込む。
【発表】
・班で書き込んだ図について、発表を行う。
・導入で挙げられた臓器について、班で
話合いをさせ、臓器のつながりを考えな
がら書き込むように働きかける。書き出
された図についても、机間指導の中で、
なぜそのような位置関係に仕上げたの
かを発問する。
・資料を用いて、臓器の正しい位置関係
と名称を確認させる。
行動観察
ワークシートへの記述
内容の分析
(知識・理解)
【グループ学習】
・様々な臓器の中で、体内環境の維持に関係
する臓器について考え、その特徴を考察す
る。また、それらの臓器について主な働きを
まとめる。
【発表】
・班での意見を簡潔にまとめ、発表を行う。
・次の授業につながるように、「体内環
境の維持に関係する臓器」の部分を強調
し、考察させるように働きかける。
・発表から考えられることに対して、適
宜補足説明する。また、この後の授業で
扱う臓器名についても補足を行う。
行動観察
ワークシートへの記述
内容の分析
(関心・意欲・態度)
・宿題<図2>について説明する。
・次の時間の予告を行う。
5 単元の授業づくりに基づく授業実践の評価と分析
今回の授業は、様々な器官を学習するに当たって「導入段階での取組」という位置付けであり、本授業を単
元全体にどのようにつなげていくかということを考えた。また授業に、中学校で学習した内容も含まれている
が、定着が不十分である可能性も考えられたため、生徒をどのような手順で取り組ませるかも論点となった。
そのため、次の手順のように段階を設けることで、生徒の知識を整理し、今後の授業(体内環境の維持や免疫)
につなげることを意識した。
○ 活動1:生徒の持つ既習の知識で知っている器官を列挙させた。
○ 活動2:活動1で挙がった器官を<図1>の中に作図させ、各器官の大きさや位置関係を確認させた。
○ 活動3:活動2の段階では、体外環境と体内環境に関係する器官が混在しているため、体内環境と体外
環境の違いについて考えさせ、
活動1の器官から
「体内環境」
に関わる器官だけを選び出させた。
○ 活動4:活動3で選んだ器官の働きをまとめさせた。
○ 活動5:家庭学習として、体内環境の維持に関わる器官について、<図2>の中に適する器官を貼り付
ける作業を行わせた。
活動1については、個別学習だけでは、取組が難しい生徒もいるためグループ学習も組み合わせ、知識の幅
を広げるようにした。活動2については、視覚的な要素を組み込むことで、各器官の位置関係やつながり、形
や大きさなどを考えさせるようにした。その際に、グループ発表を行うことで、クラス内での知識の共有を図
るとともに、間違った知識にならないように、模式図を活用し授業者から正しい位置関係などの解説を加える
ようにした。活動3・4では、誤りがあったとしても、今後の授業において訂正することができ、間違えたこ
とが生徒の気付きにつながると考え、あえて正解にこだわらず、生徒自身が考察するという取組を重視した。
また、活動5として、体内環境に関わる器官については更に家庭学習を行うことで、本時の復習と基礎知識の
定着を図るようにした。
〈授業で用いたワークシート〉
〈宿題のワークシート〉
6 成果並びに課題とその改善に向けた方策
(1)成果
体内の器官については中学校ですでに学習を行っているが、今回の授業を行うことで器官の名称や位
置関係などがあやふやになっている、主な働きが分からないなど、生徒の知識量や定着度に差があることが
確認できた。新たな単元の導入段階で今回のアクティブ・ラーニングの視点を踏まえた指導方法を取り入れ
たことで、個人学習・グループ学習・発表を行い、生徒同士の話合いや発表への意見交換など生徒自身の積
極的な取組を経て、生徒が持つ既習内容の習熟度を合わせることができた。また、授業の振り返りとして自
宅学習を取り入れたことで、授業の復習とともに、基礎的な知識の定着を図ることができたと考える。授業
の最後に、今後の授業でホルモンや免疫を学ぶ上で必要となる器官(副腎、胸腺など)を提示することで、
新たな器官に対する生徒の興味・関心や学習意欲を高めることができた。授業と家庭学習で基礎的な知識の
定着を図ったことで、本単元以降の学習においても、各器官の存在や位置関係などをスムーズに理解できる
生徒が多かった。本時の内容は、体内環境を学習する上で様々な場面で活用でき、視覚的要素としても生徒
に定着させることができるものと考える。そのため、単元の導入段階でアクティブ・ラーニングの視点を踏
まえた指導方法を活用したことは、生徒の習熟度を合わせるとともに、今後の授業展開においても有効であ
ると思われる。
授業後のアンケートでは、
「自分では分かっていると思っていたけど、
理解していない部分が結構あった。
」
、
「初めて知った器官について興味がわいた。」、「自分が分からないことを班で話し合いながら勉強できて
楽しかった。」等の意見が見られた。
(2)課題とその改善に向けた方策
個々の生徒が持つ知識量に差があることから、グループ学習を行う際には班の構成メンバーにより学
習活動の積極性に差が生じることが挙げられる。その際には、生徒の状況を確認しながら、授業者からの
声かけや活用資料の追加などを行い、生徒の活動状況が落ちないような工夫をする必要があると考える。
特にワークシートの課題1については、この内容が活動2~4へとつながるため、個別学習・グループ学習
を経て、十分な広がりを求めたい部分である。そのため、生徒の既習知識の活用が難しい場合は、各器官の
模式図等を事前に提示し、図から考えさせることもできるのではないかと考える。
今回の授業では「既習事項の確認」の要素が強く、発展的な内容まで踏み込んだ授業とはならなかった。
限られた時間の中で、
それらの内容をどのように組み込んでいくかを検討する必要があると思われる。
また、
単元を通して体内環境の維持を学習した際に、個々の器官の構造や働きについてはよく理解できていたが、
器官同士のつながりについては十分に理解できていないことが分かった。具体的には、「肝臓の働きによっ
てアンモニアからつくりかえられた尿素は、直接、腎臓に送られろ過・再吸収の結果排出される。」、「腎
臓で再吸収されたグルコースは、直接、肝臓に送られ貯蔵される。」といった誤った理解をする生徒が多く、
様々な物質が心臓を介して循環しているということを十分に理解できていないことが分かった。生徒が個々
の器官に留まらず、全体像が理解できるように各器官のつながりについて学習する時間を設けたり小テスト
を活用するなど、体内環境を維持する仕組みの本質的な理解が図れるよう、指導の工夫が必要である。
7 まとめ
今年度は、「アクティブ・ラーニング」を効果的に取り入れた授業づくりについて検討してきた。その際、
単元計画の中でねらいに即して位置付けることを研究し、単元の導入部と単元のまとめの段階でのアクティ
ブ・ラーニングの視点を踏まえた学習活動をそれぞれ計画し、実践した。ねらいを効果的に達成するために
は、生徒に適した学習活動を取り入れることが最も重要であり、そのためには、各科目の教員が意見を出し
合い協力して指導計画を作り、具体的な教材づくりも含めて組織的に授業づくりをしていく必要がある。具
体的には、単元全体を見通した中で計画し、ねらいを明確にすること、生徒の理解度や意欲、人間関係など、
実態を的確に把握すること、個人の思考の時間と他者との協働学習の時間を適切に設けることなどの重要性
が、今回の実践を通じて確認された。
今回の各事例のように、「アクティブ・ラーニング」の視点を踏まえた授業の実践により「思考力・判断
力・表現力等」を育成し、生徒に「協働して学び合い、主体的に考えようとする力」を身に付けさせるこ
とは、これからの授業づくりにおいては不可欠な要素である。これらの実現のためには、「学校として」
どのような力を育成し、そのためにどのような学びを提供するかについての共通理解を持つ必要がある。
保健体育(保健)
1 研究のテーマとねらい
(1)研究のテーマ
組織的な授業改善の推進~アクティブ・ラーニングの視点を踏まえた指導方法を効果的に取り入れた単
元の授業づくり~
~協働的な学びにより、生徒が主体的に取り組む授業づくりを推進し、学習意欲を高めるための学習活
動の工夫~
(2)研究のねらい
共通テーマ「組織的な授業改善の推進~アクティブ・ラーニングの視点を踏まえた指導方法を効果的
に取り入れた単元の授業づくり~」の実践に向けて、研究推進委員会では、まず実態を把握するため、
推進委員の所属校における課題について検討した。その内容から課題を明らかにするとともに、その課
題解決を図る具体的な手立てについて検討することが必要であると考えた。
そこで、公開研究授業実践校の教育目標「学習意欲を高め、社会生活を営むために必要な基礎学力を
身に付けさせる」を踏まえ、単元の計画における学習活動の工夫に着目し、生徒の学習意欲を高め、基
礎学力を身に付けさせることができる教材づくりなど、生徒が主体的に学習に取り組む授業形態につい
て研究することとした。
2 研究で取り組んできた内容
研究授業実践校の教育目標を踏まえ、協働的な学びにより、生徒が主体的に取り組み、学習意欲を高める
授業の在り方について研究した。
具体的には、生徒の主体的な活動を促すため、グループ活動を取り入れた授業づくりに取り組むこととし
た。講義により習得した知識を基に、考えたり、話し合ったり、発表し合うような言語活動を通じて、コミ
ュニケーション能力を育むとともに、生徒が取り組みやすい教材を作成し、学習意欲が高まる授業展開を目
標とした。
3 研究のねらいを達成するための手立て
(1)学習指導要領及び解説による目標、指導内容の確認
(2)各校における課題、問題点の抽出及び整理
(3)関心・意欲・態度を育む授業展開・学習活動の工夫
(4)思考力・判断力・表現力等を育む授業展開・学習活動の工夫
(5)主体的に学習に取り組む態度を養う授業展開・学習活動の工夫
(6)学習意欲が高まる教材の工夫
4 単元の指導計画及び重点を置いた授業展開例
(1)研究実施校:神奈川県立大楠高等学校(全日制)
(2)学校の課題:基礎的な学力の定着とコミュニケーション能力の育成
(3)実施校における研究テーマ:「学習意欲を高める授業づくり」
(4)科目:保健
学年:2学年
(5)単元名:(1)現代社会と健康 イ 健康の保持増進と疾病の予防
(ウ)薬物乱用と健康
(6)単元のねらい
ア 健康の保持増進と疾病の予防について、関心を持ち、学習に進んで取り組もうとすることができるよ
うにする。
イ 健康の保持増進と疾病の予防について、課題の解決を目ざして、知識を活用した学習活動などにより、
総合的に考え、判断し、それらを表すことができるようにする。
ウ 健康の保持増進と疾病の予防について、課題の解決に役立つ基礎的な事項及びそれらと生活や社会の
かかわりを理解することができるようにする。
(7)単元で身に付けさせたい力
健康の保持増進と疾病の予防について、生涯を通じて自らの健康を適切に管理・改善していく基礎知
識を身に付けさせ、グループ活動を通して意欲的に学習していく資質や能力。
(8)単元の評価規準
関心・意欲・態度
思考・判断
知識・理解
・生活習慣病と日常の生活行動
について、資料を探したり、見
たり、読んだりするなどの活動
を通して、学習に意欲的に取り
組もうとしている。
・喫煙、飲酒と健康、薬物乱用
と健康、感染症とその予防につ
いて、課題の解決に向けての話
合いや意見交換などの学習活動
に意欲的に取り組もうとしてい
る。
・生活習慣病と日常の生活行動につ
いて、資料等で調べたことを基に、
課題を見付けたり、整理したりする
などして、まとめた考えを説明して
いる。
・喫煙、飲酒と健康、薬物乱用と健
康、感染症とその予防について、学
習したことを個人及び社会生活や事
例と比較したり、分析したり、評価
したりするなどしている。また、筋
道を立ててそれらを説明している。
・健康の保持増進と生活習慣の予防には、食事、
運動、休養及び睡眠の調和のとれた生活を実践す
る必要があるということ、喫煙と飲酒は、生活習
慣病の要因になること、薬物乱用は、心身の健康
や社会に深刻な影響を与えることから行ってはな
らないこと、喫煙と飲酒、薬物乱用対策には、個
人や社会環境への対策が必要であること、感染症
の発生や流行には、時代や地域によって違いがみ
られること、感染症の予防には、個人的及び社会
的な対策を行う必要があることについて、理解し
たことを発言したり、記述したりしている。
(9)単元の指導と評価の計画
時
学習内容
学習活動
ねらい
a
生活習慣
病とその
予防
○生活習慣病につい
て資料を探し、調べ
る。調べ学習
○生活習慣病を予
防し、健康を保持
増進するには、適
切な食事、運動、
休養など、調和の
とれた健康的な生
活を実践すること
が必要であること
を理解できるよう
にする。
○健康の保持増進
にとって食事は重
要な要素であり、
具体的にどのよう
な食事や食生活の
在り方が健康に望
ましいかを理解で
きるようにする。
◎
1
食事と健
康
2
運動と健
康
3
休養・睡
眠と健康
4
・
5
・
6
※ a:関心・意欲・態度 b:思考・判断 c:知識・理解
喫煙、飲
酒と健康
○生活習慣病につい
て、資料等で調べた
ことを基に課題を見
付けたり整理し発表
する。
○適切な食習慣のた
めの具体的なイメー
ジについてグループ
で話し合う。
ディスカッション
○適切な食習慣につ
いて、発表を聴き、
ワークシートにまと
め、理解する。
○適切な運動習慣に
ついてグループごと
で話し合う。
シミュレーション
○県の施策(3033運
動)について学び、
自らの生活について
振り返る。
○休養や睡眠が健康
を保持増進するため
に必要であることを
基礎的な知識を基に
話し合う。
ブレインストーミング
○健康の保持増進と
生活習慣病の予防に
ついて、話合いを基
にワークシートにま
とめ、理解する。
○喫煙の短期的・長
期的な健康影響につ
いて資料を探し、調
べる。調べ学習
○たばこの広告が社
c
◎
◎
◎
○健康にとって
の運動の意義や
健康のための運
動、また将来に
わたって運動を
継続するための
具体策などを理
解できるように
する。
○疲労の質は、
昔とは変化して
おり、健康のた
めの休養の取り
方、特に睡眠の
重要性について
理解できるよう
にする。
○喫煙は生活習
慣病の要因とな
り、周囲の人々
や胎児などの健
康にも影響があ
ることを理解で
b
◎
◎
◎
◎
評価規準
○生活習慣病について、資料を
探したり、見たり、読んだりす
るなど学習活動に意欲的に取り
組もうとしている。
(関心・意欲・態度)
○生活習慣病について、資料等
で調べたことを基に、課題を見
付けたり整理したりするなどし
てそれらを説明している。
(知識・理解)
○適切な食習慣についての知識
を身に付け、課題解決に向けて
の話合いなどの学習活動に意欲
的に取り組むことができるよう
にする。
(知識・理解)
○健康の保持増進と生活習慣の
予防には適切な食習慣を実践す
る必要があることについて理解
したことを発言したり記述した
りしている。(思考・判断)
○適切な運動習慣についての知
識を身に付け、課題解決に向け
ての話合いなどの学習活動に意
欲的に取り組むことができるよ
うにする。健康の保持増進と生
活習慣の予防には休養・睡眠が
必要であることについて理解し
たことを発言したり、記述した
りしている。 (知識・理解)
○適切な運動習慣について課題
解決に向けての話合いなどの学
習活動を通じて、筋道を立てて
それらを説明している。
(思考・判断)
○喫煙について資料を探した
り、見たり、読んだりするなど
の学習活動に意欲的に取り組も
うとしている。
(関心・意欲・態度)
○喫煙は生活習慣病の要因にな
評価
方法
観察
成果物
観察
成果物
観察
観察
成果物
観察
観察
ノート
観察
観察
薬物乱用
と健康
会に与える影響につ
いてグループで話し
合う。
ブレインストーミング
○なぜイッキ飲みが
なくならないのか、
飲ませる人、飲まさ
れる人の気持ちにな
ってグループで話し
合う。ロールプレイ
○喫煙、飲酒と健康
について、話合いを
基にワークシートに
まとめ、理解する。
○薬物乱用による影
響や現状について、
ワークシートにまと
め、理解する。
○薬物を題材にした
4コマ漫画のセリフ
を考え、発表する。
ロールプレイ
7
・
8
○薬物の誘いを断る
にはどうすればよい
かグループで考え、
発表する。
ブレインストーミング
感染症と
その予防
性 感 染
症・エイ
ズとその
予防
9
・
10
○感染症の症状や感
染ルート・予防法に
ついて資料を探し、
調べる。調べ学習
○先進国で唯一、年
間の新規エイズ患者
報告数が増加傾向に
ある日本の現状につ
いて考える。
ブレインストーミング
○性感染症・エイズ
とその予防につい
て、話合いを基にワ
ークシートにまと
め、理解する。
きるようにす
る。
○飲酒による健
康への短期的影
響、長期的影響
を説明でき、飲
酒による健康問
題に対する個人
や社会環境への
対策の例を挙げ
ることができる
ようにする。
○薬物乱用の開
始の背景には、
自分の体を大切
にする気持ちや
社会の規範を守
る意識の低下、
周囲の人々から
の誘い、断りに
くい人間関係、
薬物を手に入れ
やすい環境など
があることも理
解できるように
する。
○感染症は時代
や地域によって
自然環境や社会
環境の影響を受
け、発生や流行
に違いが見られ
ることを理解で
きるようにす
る。
○性感染症・エ
イズの予防に
は、衛生的な環
境の整備や正し
い情報の発信な
どの社会的な対
策とともに、そ
れらを前提とし
た個人の取組が
必要であること
を理解できるよ
うにする。
◎
◎
◎
◎
◎
◎
◎
ること、対策には個人や社会環
境への対策が必要であることに
ついて理解したことを発言した
り、記述したりしている。
(知識・理解)
○飲酒について、学習したこと
を、個人及び社会生活や事例と
比較したり、分析したりするな
どしている。また、道筋を立て
てそれらを説明している。
(思考・判断)
成果物
○薬物乱用の対策には個人や社
会環境への対策が必要であるこ
とについて理解したことを発言
したり、記述したりしている。
(知識・理解)
○薬物乱用について、課題の解
決に向けての話合いや意見交換
などの学習活動に意欲的に取り
組もうとしている。
(関心・意欲・態度)
○薬物乱用と健康について学習
したことを個人及び社会生活や
事例と比較したり、分析した
り、評価したりするなどしてい
る。また、道筋を立ててそれら
を説明している。
(思考・判断)
○感染症とその予防について資
料を探したり、見たり、読んだ
りするなどの学習活動に意欲的
に取り組もうとしている。
(関心・意欲・態度)
○感染症の発生や流行には時代
や地域によって違いが見られる
こと、感染症の予防には、個人
的及び、社会的な対策を行う必
要があることについて、理解し
たことを発言したり、記述した
りしている。 (知識・理解)
○性感染症・エイズについて、
学習したことを個人及び社会生
活や事例と比較したり、分析し
たり、評価したりするなどして
いる。また、それらを説明して
いる。
(思考・判断)
観察
観察
成果物
観察
観察
観察
観察
成果物
観察
成果物
(10)取組事例
①実施日:平成27年10月8日(木) 授業担当者:輪湖 豊 教諭
②授業クラス:2年7組(26名)
③本時のねらい
・前回の授業で学んだ薬物乱用の知識を踏まえ、架空の薬物乱用への誘い方を考え、その誘いに対す
る適切な断り方を考える。
・正しい知識と自分の意思を持ち、必ず断る姿勢を確立する。
④本時の指導内容(2時間扱いの2時間目)
授業
展開
導
入
5
分
学習活動
指導上の留意点
○前時の授業を振り返る。
・前時の学習内容を振り返り、本時の学習に結び
付ける。
○本時の学習内容を確認する。
・本時のねらいを簡潔に説明する。
評価方法
【学習内容】薬物乱用の正しい知識と自分の意思をしっかり持ち、薬物乱用をしないための適切な対応を考える。
【発問】自分が薬物の売人だと仮定し、後輩に薬物を勧めてみよう。
【課題1】自分が薬物の売人だと仮定し、後輩に薬物を勧めてみよう。
○先輩(自分)と後輩のイラストに、売るため
のセリフを考え、個人用のプリントにまとめ
る。
・甘い言葉で勧める。
・威圧的に勧める。
○グループ内で、意見交換する。
・特に自分の誘い方と異なる人を参考にする。
【関・意・
態】
観察
【課題2】友人や先輩から勧められた場合、どう断ったらよいだろうか。
○友人や先輩に勧められた場合の断り方につい
て考え、個人用のプリントにまとめる。
展
開
40
分
・3D作戦「だって、でも、どうして」を繰り返
し、相手が諦めるまで、粘り強く断る。
・流されず、自己主張コミュニケーションを身に
付ける。
・それでもダメなら明るい方へ逃げて助けを求め
る。
【課題3】薬物の誘いを断ろう。(グループ内)
○個人用のプリントを持ち寄って、グループ内
で誘い方、断り方のロールプレイをする。
○グループ内で行ったロールプレイを発表す
る。
・必ず断る。
・正しい知識や悪影響を説明しながら断れるとよ
り良い。
・誘う側を気遣うようなセリフを拾う。
・机間指導を行いながら良い例を探し、ピックア
ップし全体に発表する。
【課題4】街角やインターネットで勧められた場合、どう断ったらよいだろうか。
ま
と
め
5
分
○街角やインターネットで勧められた場合の断
り方について考え、個人用のプリントにまと
める。
・好奇心を持たない。
・「いらない」と一言言って立ち去るだけで、そ
れ以上誘われないことが多い。
・立ち止まらない。
○学習の振り返りをする。
・本時は断り方を学習したが、まずは薬物乱用を
絶対しないという意志を持つこと、そして薬物
乱用がありそうな場には近づかないこと。
・薬物乱用をしている友人や先輩がいた場合は、
できるなら学習した正しい知識等から、注意し
救ってあげられる人になってほしいと伝える。
ロールプレイに使用した4コマ漫画
授業風景
【思・判】
観察
5 単元の授業づくりに基づく授業実践の評価と分析
「アクティブ・ラーニングの視点を踏まえた指導方法」を効果的に取り入れた授業を実践するということと、
授業実践校では「協働的な学び」の推進にも取り組んでいるということから、この2本の柱を軸に、「アクテ
ィブ・ラーニングの視点を踏まえた指導方法を取り入れた協働学習」が実践できるような授業づくりを検討し
た。また、どの学校、どの先生が授業実践しても一定の授業展開ができ、アクティブ・ラーニングの視点を踏
まえた指導方法を取り入れた協働学習ができることを考えワークシートを作成した。
研究発表では、7時間目にグループで、薬物乱用についての知識(共有の課題)の協働学習を行い、8時間
目では薬物乱用を騙し勧める立場と、勧められる立場の両方になり、学んだ知識を生かし、適切な断り方を考
え、グループでロールプレイする、アクティブ・ラーニングの視点を踏まえた指導方法を取り入れた探究(ジ
ャンプの課題)の協働学習を行った。授業後の授業者は、「協働学習中は前向きに自分の考えを発表し、活動
している生徒が多く見られたという印象がある。」との感想を持ち、授業見学者からは、「協働学習になった
時に、今まで活動していなかった生徒が活動するようになっていた」との意見が挙げられた。
授業後に行った生徒に対するアンケートの結果から、アクティブ・ラーニングの視点を踏まえた指導方法を
効果的に取り入れた授業は、生徒の意欲と主体性を高め、協働的な学びの実践に有効な授業形態であることが
わかった。
【授業後の生徒アンケート】
授業のねらいについて
よくわかった
16人
だいたいわかった
6人
わからなかった
0人
授業の中で他の生徒の意見や考えを聞いて、
自分の考えが広がったと思いますか
そう思う
15人
だいたいそう思う
7人
思わない
0人
生徒コメント
・ほかのグループの意見も聞けるので、考えが広がる
・みんなそれぞれ意見が出て良かった
・色々な意見が合ってよかったと思う
6 成果並びに課題とその改善に向けた方策
今回の授業実践で、「学び」から離れてしまいそうな生徒に対して、アクティブ・ラーニングの視点を踏ま
えた指導方法を取り入れた協働学習に取り組むことで、再び「学び」に向かう姿勢が感じられた。知識(共有
の課題)の協働学習で、学びに向かい知識が定着し、アクティブ・ラーニングの視点を踏まえた指導方法を取
り入れた探究(ジャンプの課題)の協働学習で、学びに向かい、他者の意見や考えを聞き、思考を深めるとい
ったサイクルができることを実感できたことが大きな成果であった。
また授業実践校では、保健体育科として全クラスでアクティブ・ラーニングの視点を踏まえた指導方法を取
り入れた授業を実践し、それぞれのクラスで前述の成果が得られたということだった。次年度への継続的な指
導を考えた際に、より発展的にアクティブ・ラーニングの視点を踏まえた指導方法を導入することができ、生
徒の思考力の向上の一助になりうるのではないかと考えられる。
課題として、アクティブ・ラーニングの視点を踏まえた指導方法を取り入れたグループでの協働学習を実践
するには、事前のワークシートの準備などが重要になってくる。ここが疎かになってしまうと、知識の定着に
偏ってしまう協働学習になり、思考を深める協働学習が薄くなってしまう可能性が高い。さらに、教員一人ひ
とりが、すべての単元の事前準備のために時間を確保するよりは、教科全体で分担する方が、より効率的であ
る。そして、教科として授業の方向性を共通認識し、各単元でワークシート作成を分担するなどの流れを確立
することは、よりよい授業づくりにつながると考える。
今回のワークシートはどの学校、どの先生が実践しても一定の授業展開ができるよう作成している。また、
ロールプレイに関しては、各学校や先生によって難易度をアレンジできるため、多くの学校で実践していただ
き、さらに多くの教材が作成されるきっかけになることを期待したい。
保健体育(体育)
1 研究のテーマとねらい
(1)研究のテーマ
組織的な授業改善の推進~アクティブ・ラーニングの視点を踏まえた指導方法を効果的に取り入れた単元の授
業づくり~
~協同的な学びにより、生徒が主体的に取り組む授業づくりを推進し、学習意欲を高めるための学習活動の
工夫~
(2)研究のねらい
研究推進委員会では、全体テーマ「組織的な授業改善の推進~アクティブ・ラーニングを効果的に取り入れ
た単元の授業づくり~」の実践に向けて、実社会や実生活の中で知識・技能を活用しながら、自らの課題を発
見し、主体的・協働的に探究し、成果等を表現していけるよう、学びの質や深まりを重視することが必要であ
ると考えた。
そこで、課題の発見・解決に向けて生徒同士が、教え合い、学び合いができるように学習活動や教材を工夫
し、チームや個人の課題を明確化する。また、適切な練習方法や戦術を考えることによる思考力・判断力の育
成など、生徒が主体的に学習に取り組む授業形態について研究することとした。
2 研究で取り組んできた内容
自らの課題を発見し、主体的・協働的に探究し、成果等を表現していけるよう、学びの質や深まりを重視するこ
とを踏まえ、生徒が自主的に学習に取り組むハンドボールの授業形態について研究した。
具体的には、練習や試合をタブレット端末で撮影し、自らのチームの様相を客観的に見ることによって、課題を
発見、解決できるようにした。チームにとって必要な練習法を選択しやすくし、生徒同士で戦術を考える機会を設
け、活発に意見交換ができるようにした。また、生徒相互で撮影することによって、教え合い、学び合いが行える
ように工夫した。
3 研究のねらいを達成するための手立て
(1) 生徒の実態把握
(2) 単元計画における学習内容の確認と精選
(3) ドリルゲームやタスクゲームの工夫
(4) 映像や「タブレット端末」の使用方法の検討(生徒同士が教え合い考えて学習するための工夫)
(5) 学習指導案の検討
(6) 「学習ノート」と「学習カード」の作成
4 単元の指導計画及び重点を置いた授業展開例
(1) 研究実施校:神奈川県立霧が丘高等学校(全日制課程)
(2) 学校の課題: 「上級学校での学びや生涯学習に意欲的に取り組む態度と確かな学力の育成」
(3) 実施校における研究テーマ:「言語活動を通じて課題解決能力を身に付けるための授業」
(4) 科目:体育 学年:2学年
(5) 単元名:球技「ゴール型」(ハンドボール)
(6) 単元のねらい
ア 次の運動について、勝敗を競う楽しさや喜びを味わい、作戦や状況に応じた技能や仲間と連携した動きを高
めてゲームが展開できるようにする。
○ ゴール型では、状況に応じたボール操作と空間を埋めるなどの連携した動きによって空間への侵入など
から攻防を展開すること。
イ 球技に主体的に取り組むとともに、フェアなプレイを大切にしようとすること、役割を積極的に引き受け自
己の責任を果たそうとすること、合意形成に貢献しようとすることなどや、健康・安全を確保することができ
るようにする。
ウ 技術などの名称や行い方、体力の高め方、課題解決の方法、競技会の仕方などを理解し、チームや自己の課
題に応じた運動を継続するための取り組み方を工夫できるようにする。
(7)単元で身に付けさせたい力
味方が作りだした空間にパスを送れるようにする。シュートやトライをしたり、パスを受けたりするために味
方が作りだした空間に移動できるようにする。課題解決の過程を踏まえて、取り組んできたチームや自己の目標
と成果を検証し、課題を見直すことができるようにする。
(8)単元の評価規準
a 関心・意欲・態度
b 思考・判断
c 運動の技能
d 知識・理解
③学習に主体的に取り組もう
⑦これまでの学習を踏まえ
①味方が作りだした空間にパ
⑤課題解決の方法について、
としている。
て、チームが目ざす目標に応
スを送ることができる。
理解したことを言ったりして
④互いに助け合い、高め合お
じたチームや自己の課題を設
②シュートをしたり、パスを
いる。
うとしている。
定している。
受けたりするために味方が作
⑥「競技会の仕方」ではゲー
り出した空間に移動すること
ムのルール、トーナメントや
ができる。
リーグ戦などの試合方式、運
営の仕方や役割に応じた行動
の仕方などの具体例を挙げて
いる。
(9)単元の指導と評価の計画
時
1
2
※ a:関心・意欲・態度 b:思考・判断 c:運動の技能 d:知識・理解
ねらい
学習活動
〇主体的に取り組むことがで
〇ハンドボールの学習の方
きるようにする。
法について理解する。
〇味方がつくりだした空間に
〇「基本的な技」の説明を聞
パスを送ることができるよう
き、練習に取り組む。
a
評価の観点
b
c
d
単元(題材)の評価規準
評価
方法
①味方が作りだした空間に
観察
にする。
3
〇味方がつくりだした空間に
〇「基本的な技」の説明を聞
パスを送ることができるよう
き、練習に取り組む。
にする。
4
〇味方がつくりだした空間に
〇「基本的な技」の説明を聞
パスを送ることができるよう
き、練習に取り組む。
◎
パスを送ることができる。
にする。
5
【技】
〇互いに助け合い、教え合う
〇簡易ゲームで自己の課題
ことができるようにする。
を見つけるよう取り組む。
◎
③学習に主体的に取り組も
うとしている。
【関・意・態】
○自己の課題を設定すること
ができるようにする。
観察
◎
⑦これまでの学習を踏まえ
学習
て、チームが目ざす目標に応
ノート
じたチームや自己の課題を
設定している。【思・判】
6
7
〇味方が作り出した空間に移
〇「発展的な技」の説明を聞
動することができる。
き、練習に取り組む。
〇味方が作り出した空間に移
〇「発展的な技」の説明を聞
動することができる。
き、練習に取り組む。
〇味方が作り出した空間に移
〇「発展的な技」の説明を聞
動することができる。
き、練習に取り組む。
◎
①味方が作りだした空間に
パスを送ることができる。
【技】
8
②シュートをしたり、パスを
受けたりするために味方が
作り出した空間に移動する
ことができる。
【技】
観察
9
〇味方が作り出した空間に移
〇簡易ゲーム
動することができる
〇試合の撮影
◎
⑤課題解決の方法について、 観察
理解したことを言ったりし
学習
ている。
ノート
【知・理】
10
〇ゲームのルール、トーナメ
〇ゲームの進め方(役割分
ントやリーグ戦などの試合方
式、運営の仕方や役割に応じ
◎
⑥「競技会の仕方」ではゲー
学習
担、審判法)
ムのルール、トーナメントや
ノート
○試しのゲーム
リーグ戦などの試合方式、運
た行動の仕方などを理解でき
営の仕方や役割に応じた行
るようにする。
動の仕方などの具体例を挙
げている。【知・理】
11
〇自己の課題を設定すること
〇分析
◎
⑦これまでの学習を踏まえ
ができるようにする。
〇チーム練習
て、チームが目ざす目標に応
〇リーグ戦
じたチームや自己の課題を
設定している。【思・判】
12
〇自己の課題を設定すること
〇分析
ができるようにする。
〇チーム練習
◎
④互いに助け合い、高め合お
〇リーグ戦
13
〇自己の課題を設定すること
〇分析
ができるようにする。
〇チーム練習
観察
うとしている。
【関・意・態】 学習
カード
〇リーグ戦
〇自己の課題を設定すること
14
〇振り返り
ができるようにする。
◎
②シュートをしたり、パスを
観察
受けたりするために味方が
作り出した空間に移動する
ことができる。【技】
(10)取組事例
① 実施日
平成 27 年 10 月 13 日(火)
授業担当者:渡辺 裕介 教諭
② 授業クラス 2年1・5・6組
男子 21 名
女子 15 名
③ 本時のねらい
○これまでの学習を踏まえて、パスを受けるために味方が作り出した空間に移動することができるようにする。
④ 本時の指導内容(14 時間扱いの 11 時間目)
※学習カードは別添
授業
展開
学習活動
導
入
10
分
1
2
3
4
整列・挨拶・出席確認
本時の学習内容の確認
準備運動
ストレッチ・補強運動
展
開
35
分
5 前回の試合の映像を観る
・チームで課題分析
・本日の試合の作戦会議
・実践練習
・学習カードへの記入
6 ゲーム
指導上の留意点
評価方法
・出席確認と同時に健康状態を確認する。
・本時の学習内容とねらいを説明する。
・体の調子や状態に気付き、怪我の予防を意識
して行うよう指示する。
・ボールを持たないときの動きに着目するよう 【思・判⑦】
促す。
(学習カード)
・課題分析、作戦、実践練習内容を学習カード
に記入するよう促す。
・作戦を考えるときにチームの特徴を生かせる
よう助言する。
・課題や作戦を意識して取り組むよう促す。
・役割分担をし、手の空いている人が試合の撮
影を行う。
※2コートで試合を展開する。
ま
と
め
5
分
7 用具の片付け
8 本時の振り返り
9 整列・挨拶
タブレット端末を使った授業風景
・全員で協力して片付けをするよう促す。
・問いかけにより、本時の学習内容が身に付い
たかをチームで確認する。
・健康状態の確認をする。
学習ノート
5 単元の授業づくりに基づく授業実践の評価と分析
今回の単元では、1年次で身に付けた「基礎的な技能」に加え、2年次では、
「発展的な技能」を展開するために
「学習ノート」
・
「学習カード」と「タブレット端末の映像」を使用することで、技能の向上や思考・判断の活性につ
ながった。
「学習ノート」
・
「学習カード」の活用では、授業ごとに何を行うか示すことで、生徒が時間ごとに何を行えばいい
のか理解できていたので、積極的に練習やゲームに取り組もうとする姿が見られた。また、自己やチームの課題及び
解決のための手立てなど、主に思考・判断に係る記載項目を多く設け、技能習得に対する工夫を促すことができた。
「タブレット端末」の活用では、自分たちの試合の映像を見ることにより、仲間同士でプレイの反省や、本時のゲ
ームに向けての戦術の確認を意欲的に話し合う場面が多く見られた。また映像を使用することで、より細かなチーム
の課題が発見でき、練習方法の工夫などにつながった。
評価については、
「学習ノート」
・
「学習カード」に記載項目の工夫により、生徒の学習活動を適切に評価すること
ができた。
「タブレット端末」の活用では、生徒一人ひとりの技能を中心に評価することができた。
6 成果並びに課題とその改善に向けた方策
今回の研究においての成果は、
「タブレット端末」の映像によって、自チームのプレイを振り返ることができたの
で、
「パスを受けるために味方が作り出した空間に移動する」という授業内における課題に対する練習方法や試合の
戦術といった思考力・判断力の育成を高めることにつながったことである。また、学習ノート・学習カードを工夫し
たことで技術などの名称やルールなどの知識を深めることなど、学習活動の適切な評価等、本研究のねらいについて、
概ね達成することができた。
課題としては、
「タブレット端末」の映像の編集が、課題に応じて明確にできていなかったことが挙げられる。特
に、全体を見ながら課題を見付けていくためには、自チームの活動と比べる映像がないと、何ができていて何ができ
ていないかが分からない生徒もいたので、分かりやすく見るポイントを伝えていかなければならない。そのためには
これから学校全体で組織的に授業改善に取り組み、さらに生徒が主体的に授業に参加していけるよう取り組んでいか
なければならない。
芸 術(音楽 )
1 研究のテーマとねらい
(1)研究のテーマ
音楽科におけるアクティブ・ラーニングを効果的に取り入れた能動的な鑑賞の実践
(2)研究のねらい
音楽科の授業は、グループで歌唱の発表をしたり、器楽でペアワークを行う等、アクティブ・ラー
ニングの要素を普段から多く含んでいる。しかし、鑑賞の授業においては、一方通行となりがちとな
ることから、
『能動的な鑑賞』をキーワードにした授業づくりの実践・分析を行い、今後の鑑賞の授業
への改善につなげることをねらいとした。
また、音楽科の教員は、1名配置の学校が大多数を占めていることから、
「組織的な授業改善」とい
うテーマへの取組に苦慮しているが、本研究を芸術科の教員に留まらず、様々な教科の教員とも共有
することで、より効果的な授業改善を図っていきたい。
2 研究で取り組んできた内容
まず、本研究で取り上げる楽曲の選定を行った。音楽を形づくっている要素に気付きやすいラヴェルの「ボ
レロ」や、音楽表現のイメージを持ちやすいサン=サーンスの「動物の謝肉祭」などが挙がったが、生徒に
鑑賞の授業において達成感を味わわせたいということ、また、楽曲中の様々な場面に音楽を形づくっている
要素が多く含まれているという理由で、ベートーヴェンの「交響曲第9番第4楽章(合唱付)」に決定した。
30 分もの大曲を能動的に鑑賞するためにはどのような手立てが有用かを考えた。生徒一人ひとりが音楽そ
のものに感動するためには、アナリーゼや構成の理解は欠かせないという結論に達し、スコアを見ながらの鑑
賞を行うことを主軸とした授業構成を検討した。
また、推進委員会では、本楽曲のアナリーゼとスコアリーディングを行うとともに、本題材で取り上げる音
楽を形づくっている要素の検討、精査を行った。
3 研究のねらいを達成するための手立て
(1)ワークシートの作成(ⅠとⅢで学びの質と量のフィードバック。Ⅱは毎時の振り返りに用いる。
)
【資料Ⅰ参照】
(2)スコアへのマーキング(意識すべき音楽を形づくっている要素の視覚化)
【資料Ⅱ参照】
(3)第九マップの作製(楽曲の構造を視覚的に理解する)
【資料Ⅲ参照】
(4)Live 映像の使用(楽器と音色のマッチング、字幕を入れることで歌詞への理解)
(5)テーマの歌唱練習(歓喜のメロディーに親しむ)
4 題材の指導計画及び重点を置いた授業展開例
(1)研究実施校: 神奈川県立大井高等学校(全日制普通科)
授業担当者:西川 陽平 教諭
(2)学校の課題:授業や教材を工夫することにより、生徒が学習に対する意義を見出し、生徒一人ひとり
に自己肯定感を持たせることができる。そのため、
「コミュニケーション能力の育成」や「モラル・マナ
ーの涵養」という、本校の課題を意識して取り組んでいる。
(3)実施校における研究テーマ:生徒の基礎的な学力の向上のための教材を開発する。鑑賞の授業において、
視覚的効果を狙った教材等を作成、活用することにより、授業における生徒の能動的な活動を促し、音楽
に対するよさや美しさを創造的に味わわせる。
(4)科目:音楽Ⅰ
学年:1学年
(5)題材名: 第九に挑戦!〔B 鑑賞 ア・イ〕
(6)題材のねらい:音楽を形づくっている要素をスコアと音から読み取りながら、能動的に鑑賞する。
(7)題材で身に付けさせたい力:
・音楽を生涯楽しめる鑑賞の能力
・音楽を形づくっている要素(旋律、リズム、テクスチュア)の働きや、音楽の表情の変化との関わ
りを主体的に捉え、感受する力。
(8)題材の評価規準
音楽への関心・意欲・態度
鑑賞の能力
① 作曲者による表現の特徴に関心を
もち、鑑賞する学習に主体的に取り
組もうとしている。
② 楽曲の構造を捉えて、楽譜と音楽
との関わりに関心を持ち、表現の特
徴を理解する学習に主体的に取り
組もうとしている。
① 作曲者の特徴や楽曲の様式・構成などを理解しながら、音楽を形づく
っている要素(テクスチュア、音色、旋律)を知覚し、それらの働きが生
み出す特質や雰囲気を感受している。
② 音楽を形づくっている要素(テクスチュア、音色、旋律)が生み出す特
質や雰囲気との関わりを感受し、それらを根拠として楽曲を解釈したり、
価値を考えたりして、音楽のよさや美しさを創造的に味わって聴いてい
る。
(9)題材の指導と評価の計画(6時間)
時
学習
内容
楽
曲
の
理
2 1 1解
へ
の
導
入
2
3
4
5
6
ス
コ
ア
を
活
用
し
音
楽
の
諸
要
素
を
意
識
し
た
楽
曲
の
理
解
[関]:音楽への関心・意欲・態度
学習活動
ねらい
・交響曲第9番第4楽章(抜粋)を聴き、
この楽曲やベートーヴェンについて知っ
ていることや印象等を、ワークシートⅠ
に記入する。
・ベートーヴェンについてパワーポイン
トを見て学習する。
・
「歓喜の歌」
(抜粋)の音取りを行う。
・本時の振り返りをワークシートⅡに記
入する。
・第九マップとスコアを使い楽器の編成
や流れ等を可視化し、第4楽章の構成を
視覚から理解する。
・本時の振り返りをワークシートⅡに記
入する。
本題材の目的、学習
の流れを理解し、楽
曲についてや鑑賞を
行うことに関心を持
つ。
・
「歓喜の歌」
(抜粋)の歌唱練習を行う
(旋律のみ)
。
・スコアの読み方について学ぶ。
・本時の振り返りをワークシートⅡに記
入する。
スコアの読み方を理
解し、この楽曲を鑑
賞することに関心を
持つ。
評価の観点
関
鑑
賞
に
向
け
て
の
ま
と
め
・第4楽章冒頭、第1~3楽章の回想と 作曲者の意図を読み
否定について考える。
取り、
楽曲についての
・第4楽章の中のポイントとなる箇所に 理解を更に深める。
登場する楽器やフレーズについて知る。
・前時までの復習。
・自分が印象に残っている箇所について
整理をする。
・本時の振り返りをワークシートⅡに記
入する。
鑑
賞
・第4楽章のスコアを見ながら鑑賞す これまでの学習を踏
る。
まえて鑑賞し、音楽
・ワークシートⅢを記入する。
の表情の変化に気付
き、楽曲のよさや美
しさを味わう。
鑑
評価
規準
評価方法
[関]
①
観察
ワークシート
Ⅰ・Ⅱ
○
[ 鑑 ] 観察
①
ワークシートⅡ
スコアの存在を知
り、第4楽章の構成
について理解する。
・
「歓喜の歌」
(抜粋)の歌唱練習を行う 旋 律 の 変 化 に 気 付
(旋律のみ)
。
き、その重なりを意
・
「歓喜の歌」の変奏部分について知る。 識する。
・ドッペルフーガについて知る。
・本時の振り返りをワークシートⅡに記
入する。
[鑑]:鑑賞の能力
○
[ 関 ] 観察
②
ワークシートⅡ
○
○
○
[ 関 ] ワークシートⅡ
②
[鑑]
①
[ 関 ] 観察
①
ワークシートⅡ
[ 鑑 ] スコア
①
○
○
[ 鑑 ] スコア
②
ワークシートⅢ
○
(10)≪取組事例A≫
①実施日:平成 27 年 10 月5日(月)
②授業クラス:1年3組 30 名
③本時のねらい:
「歓喜の歌」の旋律、歌詞に親しみを持たせる。スコアの読み方を理解し、楽曲の構成に
興味を持たせる。最後の鑑賞に向け、音楽を聴きながらスコアを目で追う練習をする。
④本時の指導内容:
授業展開
学習活動
指導上の留意点
導入
(5分)
・今日の授業の流れを把握する。
・見通しを持って取り組めるよう、丁寧
に説明する。
展開
(40分)
・
「歓喜の歌」
(抜粋)の歌唱を原語のド
イツ語で行う(旋律のみ)
。
・教科書を使用し、ジェスチャーを交え
て歌わせ、歌詞の意味を理解させる。
・
「歓喜の歌」のテーマ部分を、スコア
を見ながら鑑賞する。
・二拍子ということを伝え、1小節を2
回タップしながら、音楽に合わせて、
スコアを目で追い、スコアの見方を理
解させる。
・各部の冒頭を聴き、スコアのどの部分
かを考える。
・クイズ形式で行い、拡大スコアを2つ
提示し、比較させる。演奏している楽
器の数や音符の数の違いがはっきりし
ている箇所を取り上げ、スコアを読み
ながら鑑賞することに興味を持たせ
る。
・次回の活動を予告し、題材全体に対し
見通しを持たせる。
まとめ
(5分)
・本時の振り返りをワークシートⅡに
記入する。
評価方法
観察
ワークシートⅡ
≪取組事例B≫
①実施日:平成 27 年 10 月 14 日(水)
②授業クラス:1年6組 31 名
③本時のねらい:ホルン、シンバル等が奏でる音(聴覚)とスコアの音符(視覚)の関わりを理解する。
「歓
喜の歌」のテーマの変化や表現の特徴に関心を持ち、作曲者の意図を読み取る。音楽を形づくっている
要素(テクスチュア、音色、旋律)が生み出す特質や雰囲気との関わりを感受し、それらを根拠として
主体的に楽曲を解釈したり、価値を考えたりする。
④本時の指導内容:
授業展開
学習活動
指導上の留意点
評価方法
導入
(5分)
・今日の授業の流れを把握する。
・見通しを持って取り組めるよう、丁寧
に説明する。
展開
(40分)
・第4楽章冒頭、第1~3楽章の回想
と否定について考える。
・第1~3楽章の抜粋を聴かせ、第4楽 観察
章冒頭の回想について作曲者の意図を スコア
読み取れるように解説する。
・映像とスコアから、音楽を形づくって
いる要素(テクスチュア、音色、旋律)
を知覚させ、それらの働きを感受させ
る。
・学んだ箇所に関してスコアに直接マー
キングをさせ、最後の鑑賞のためのラ
ンドマークとする。
・第4楽章の中で、ポイントとなる箇
所に登場する楽器やフレーズについて
知る。
(冒頭のファンファーレ、ホルン
やマーチのシンバルなど)
・前時までの復習。
・自分が印象に残っている箇所につい
て、スコアに印を付け、その理由を記
入する。
まとめ
(5分)
・本時の振り返りをワークシートⅡに
記入する。
・次回、これまでの学びを総動員する最
後の鑑賞であることを十分に意識させ
る。
ワークシートⅡ
5 題材の授業づくりに基づく授業実践の評価と分析
≪取組事例A≫
普段なじみの少ないドイツ語だが、ジェスチャーをつけた歌詞の復唱を行ったことで、歌詞の言葉と意
味とのマッチングを楽しんで学習していた。授業終了後、ドイツ語で鼻歌を歌っている生徒がいたことか
らも、その成果がうかがえる。
スコアの読み方に関しては、歌唱で練習した部分であること、そして小節をタップするという手法が目
新しいこともあり多くの生徒が目で追うことはできていた。
スコア当てクイズでは、楽譜をつぶさに見て比較するのではなく音符の密度によって判断する方法を伝
えたため、比較的容易に当てることができた。さらに、全体教示のために机を取り払っていたことで生徒
同士の距離が近く、生徒同士の学び合いも自然に起きておりスムーズに進めることができた。
授業後の研究協議で話題になったのは、学習活動での指示についてである。例えば、合唱のテーマ部分
(4声全て)をマーキングさせる際、スコアの最下段はコントラバスであるため、
「一番下はマーキングし
ないように」と指示を出したが、それでは生徒の学習活動がただの作業となってしまう。
「なぜここはマー
キングしないのか考えよう。
」
、または「歌の部分だけ線を引いてみよう。
」といった言葉掛けにより、生徒
は作業だけではなく、音楽とスコアを結び付けられる学習活動につながる。鑑賞の授業において、指示の
出し方や言葉掛けの工夫により、生徒の学習活動がより音楽的な取組になることを、意識しておくべきで
あると確認した。
≪取組事例B≫
はじめは、それぞれの楽章の回想に関しては、一度各楽章の冒頭部分を聴いてから、
「同じメロディーが
流れたら挙手をする」という学習活動を計画した。しかし、多少曲を聴いただけでは判別がつきづらいこ
とが分かり、本クラスからは映像を用いて、教員が解説する形に変更した。結果として、
「作曲者の意図を
読み取る」という目標を達成するためには映像を用いた方が適していた。しかし、本時の中で生徒が自ら
活動する場面が無くなってしまったことは悔やまれた。
また、効率よく学習させるために4楽章を8分割した『部』と『楽章』を混同してしまい、混乱してい
る生徒もいた。これは『部』を数字ではなくアルファベットにすべきであった。
ポイントとなる楽器(ホルンやヴァイオリン)については、簡単ではあるが実際の楽器を用いて解説を
行った。現代では資料としての楽器の写真を提示することは容易だが、やはり生の楽器への反応は良く、
手立てとしては最適であった。また他クラスでは、経験者がホルンを吹き、生の楽器の音色にも触れるな
ど、とても素晴らしい活動もあった。
4楽章に三度登場するファンファーレに関しては、マーキングをさせてから冒頭のみの鑑賞となってし
まったが、同じ音形をスコアから見つけ出すなど、さらに能動的な活動を取り入れることができたと反省
している。その一方で、歓喜のテーマへの橋渡しとなるホルンが持つ緊張感を、スコアを見ることによっ
て他の楽器群がないことを視覚的に理解することができ、眼(楽譜)と耳(音)が結びついた鑑賞を行え
たという手応えも感じた。
6 成果並びに課題とその改善に向けた方策
(1)研究の成果
本題材の最後の時間は、生徒の手元にはスコア、スクリーンには次に通過するマーキングポイント【資
料Ⅱ参照】
(これは意識して欲しい音楽を形づくっている要素の提示、そしてスコアを見失わないためのラ
ンドマーク、という二つの目的がある)のみを提示し、30 分に及ぶ本楽曲の鑑賞を行った。
その結果、どのクラスでもほとんどの生徒がスコアを見ながら、またはうなずきながら音楽を聴くこと
ができていた。そしてワークシートⅠとⅢの比較【資料Ⅳ参照】から読み取れるように、知識としての学
びも成功した。
【ワークシートⅢより抜粋】
・フガートが楽器の会話のようできれいだった。→テクスチュア
・歓喜のテーマで、ヴァイオリンが入って次に管楽器が入るところは好き。→旋律
・第五部「神様はいるんだ」というところで本当に神様が舞い降りたように感じた。→音色
・途中でマーチをいれる発想がすごい。勇者がぐいぐい進む感じがした。→音色
・自分で作ったメロディーを否定するときの音楽がすごい。→旋律
・テーマⅠとテーマⅡが同時に出てくるところがすごい!(ドッペルフーガ)→テクスチュア
・生演奏で聞いてみたい。→すべての要素
このように、音楽を形づくっている要素を意識した鑑賞を行い、本題材のねらいである『能動的な鑑賞』
を達成できたと言える。これは推進委員会で練り上げた、スコアを主軸にした授業計画の成果である。各
自でスコアを所有することで生まれる愛着、視覚的に見ることで促進される理解、作業的に書き込むこと
で定着する知識、それらすべてが、鑑賞という行為を前向きに取り組めるよう生徒に働きかけていた。
(2)課題と今後の方策
・生徒に一人一冊スコアを準備することについて
生徒が一人一冊のスコアを持ち授業に参加することが、本題材において最も有効であった。今回はその準
備を、推進委員が手分けをして印刷、製本を行ったが、非常に時間がかかり、各学校で単独で行うには現
実的ではないが、教材費でポケットスコアを購入する、小品で授業を行う等の手立てが考えられる。
・第九マップ、映像、拡大スコア、手持ちのスコア等の教材について
視覚的効果をねらった教材であるが、生徒が混乱しないよう、今どこに注目すべきかの言葉かけをよ
り丁寧に行う、書画カメラを使用する等、画面の切り替えをスムーズに行う等、提示方法には十分な配
慮が必要である。
また、各学校の実態に応じて、掲示ではなく配付した方が効果的である場合も考えられる。
・スコアに書き込む学習活動について
スコアを活用した学習活動は、生徒たちが音楽のよさや美しさに気付くことにつながる等、書き込む作
業と実際の音楽を結び付けるための工夫を常に考える必要がある。伝えたいポイントをしっかり押さえ、
スコア記入後に繰り返し音楽を聴きマッチングをしっかり行う等、より音楽的な学習活動が深まるよう
配慮する必要がある。
(3)鑑賞におけるアクティブ・ラーニング
鑑賞の授業において、グループワークやディベート等により、生徒同士が感想を述べ合い、楽曲のよさや
美しさを感じ取り、鑑賞を深めていくことが考えられるが、本題材においては、そのような時間をあえて設
けなかった。また、生徒が主体的に行う学習活動は、ワークシートⅠ・Ⅱ・Ⅲの記入である。話合い活
動等を行う授業を展開しなかった理由は、教授を中心とした授業を行う中で、生徒が本楽曲の魅力に気
付き、能動的な鑑賞を行うという明確なねらいがあったからである。その結果、多くの生徒が音楽を形
づくっている要素を意識しながら、前向きな鑑賞を行うことができたのは、まさしくアクティブ・ラーニン
グの視点を効果的に取り入れることができた良い実践例になったのではないだろうか。
また、この授業をきっかけに、年末、テレビの前でスコアを片手に第九を聴く生徒がいたら、まさに
生涯にわたり音楽を愛好する心情を育てることにつながったといえるのではないだろうか。
【資料Ⅰ】
ワークシートⅠ
ワークシートⅡ
ワークシートⅢ
【資料Ⅱ】
用意したスコア。楽譜を無料配布しているサイト、『International Music Score Library Project』からダウン
ロードし、印刷、製本を行った。
マーキング例
【資料Ⅲ】
【資料Ⅳ】
ワークシートⅢ
ワークシートⅠ
芸術(美術・工芸)
1 研究のテーマとねらい
(1)研究のテーマ
「『発想や構想の能力』を意識した美術的アクティブ・ラーニングの研究」
(2)研究のねらい
多くの学校には美術・工芸担当教員が1名しかいない状況である。組織的な授業改善を進めるためには、
各学校の教育目標等を踏まえ設定した授業研究テーマに基づくとともに、校内研究授業等の教科の枠を超
えた取組の中で、指導計画を充実・改善していくことが重要である。
美術・工芸担当教員5名で構成される教育課程研究会研究推進委員芸術(美術・工芸)部門のメンバー
による平成 24 年~26 年度の3年間の組織的な授業改善の推進の取組においては、授業における「導入」
の研究から、「展開」の研究、「まとめ」の研究という流れで進めてきた。平成 27 年度は、「発想や構
想の能力」の向上を目標に、発想や構想を意識して、美術におけるアクティブ・ラーニングの視点とは何
かを研究することとした。
美術的アクティブ・ラーニングの視点を踏まえた授業を実践するために、完成作品そのもの以上に、そ
こに至るまでの発想や構想の過程を重視する。アイデアが形になるまでのプロセスに力点を置く題材を設
定し、その中で意見交換、発表の場を設けることにより、学びが更に深まると考えた。
言語活動の充実と題材の指導計画の更なる工夫を図ることをねらいとし、発想や構想の能力を育てる美
術的アクティブ・ラーニングの視点を踏まえた授業の実践を目ざして、このテーマを設定した。
2
研究で取り組んできた内容
推進委員にて共有した「美術的アクティブ・ラーニング」を、各推進委員が学校の実情に応じて工夫
し、研究を進めた。このうち、題材「『ライフ・スクロール』~自分の人生を絵巻物にする~」では、他
者の感性や発想・思考に触れるとともに自らも発言し話し合う機会である「ディスカッションタイム」を
設けることにより、より深い創造活動に寄与できるのではないかと考えた。生徒が深く感じ、考え、深い
学びへと到達する自分の人生絵巻を形にする題材の中で、制作過程における相互作品鑑賞の方法を検討
した。その後、他者の感性や発想、思考に触れて「発想や構想の能力」を高めていく授業づくりにおい
て校内授業研究を実施し、教育課程研究会の公開研究授業に位置付けた。
3
研究のねらいを達成するための手立て
各校で取り組む授業研究の内容を、研究推進委員会で共有し、発想や構想の能力を意識した美術とし
てのアクティブ・ラーニングの視点や指導計画の構成の工夫等について相互に意見交換を行いながら検
討を進めた。また、研究授業の指導計画や指導案について事前に研究推進委員で検討しながら指導の改
善に努めた。
4 題材の指導計画及び重点を置いた授業展開例
(1)研究実施校:神奈川県立上溝南高等学校(全日制普通科)
(2)学校の課題:素直で教師の指示に従って学習にきちんと取り組む生徒が多く、努力も怠らないが、自
発的に考え主体的に学ぶ力は必ずしも充分ではないので、その能力を伸ばしていくこと。
(3)実施校における研究テーマ:教師が主役とならず、「生徒の主体性を引き出す授業」をする為にはど
のような工夫ができるのか。
(4)科目: 美術Ⅱ 学年:2年
(5)題材名:「ライフ・スクロール」~自分の人生を絵巻物にする~〔A表現(1)絵画・彫刻〕
(6)題材のねらい:「自分の過去・現在・未来」に想いを馳せ、未来を空想し自由に表現することで、
「自分とは?」「ヴィジョンとは?」と、考えながら自分と深く向き合う。素材(巻物)の特性を理解
し、特性を生かした表現技能を身に付ける。
(7)題材で身に付けさせたい力:「過去」「現在」「未来」各部分について深く考え、イメージを醸成す
る力。浮かんだイメージを画面に構成する力。描画素材(巻物)の特性を理解し、その特性を生かした
表現技能。「鑑賞」を通じ、作品を多角的な視点で受け止める力。他者と「意見交換」を行い、内容を
まとめ発表する力
(8)題材の評価規準
a 美術への関心・意欲・態度
過去・現在から未来への可能
性に対し興味・関心を持ち、
形態や展開、構成などを創意
工夫して構想を練り、未来の
自分へ渡す作品として真摯に
表現しようとしている。
b 発想や構想の能力
巻物という表現形式の特性
を生かして、過去・現在・
未来をどう画面に構成して
いくかについて創造的に構
想を練っている。
c 創造的な技能
意図に応じて教材や用具の
特性を生かし、表現方法を
工夫して、主題を追求し効
果的に表現している。
d 鑑賞の能力
他の生徒の作品の良さ、表
現の工夫などを感じ取り、
理解している。また自分独
自の見方や感じ方、考えな
どを持っている。
(9)題材の指導と評価の計画
◎学習活動
●学習のねらい
評価の観点
時間
45 分
学習
内容
①②③
導入
④⑤⑥
下絵
制作
1
⑦
鑑賞
⑧⑨⑩
⑪
下絵
制作
2
⑫⑬⑭
⑮
着彩
1
◎ミニ下絵に彩色する。
○
●彩色することで、表現を深め、本番
作品の彩色に役立てる。
⑯
鑑賞
◎鑑賞シートに記入しながら、他の生
徒の作品を鑑賞する。
●他の作品から自作に取り入れたい内
容を意識して、鑑賞する。
◎各自、今後の制作に取り入れていき
たい内容を発表する。
● 各 自 が お 互 い の 制 作 の目標 を 理 解
し、共有する。
評価規準
abcd
◎導入シートに記入する。
○
○
●導入シートを通じ、過去現在未来に
思いを馳せ、自分と深く対話する。
◎導入シートを用いて、4人一組でデ
ィスカッションを行う。
● 他 の 生 徒 と の 情 報 交 換を通 じ 、 他
者・自己の理解を深める。
◎導入シートの「文字情報」を基にし ○ ○
て、ラフスケッチを描く。
●リラックスしてラフに多数描くこと
で、過去の記憶を呼び覚まし、未来の
発想の呼び水とする。
◎鑑賞シートに記入しながら、他の生 ○
徒の下絵を鑑賞する。
●他の生徒のプロセスを理解し、自作
に生かす。
◎鑑賞シートを用いて、4人一組でデ
ィスカッションし、話し合った内容を
発表する。
●ディスカッションにより、理解の共
有範囲・表現の幅を拡げる。
◎ラフスケッチを基にして、巻物の比 ○ ○
率に合わせ「A4×4サイズ」のミニ下
絵制作。
●巻物の比率を意識して作品全体の構
想を練る。
○
評価
方法
a 過去現在未来に対し興味・関
心を持って、導入シートに取り
組もうとしている。
d ディスカッションを通じ、他
の生徒の過去現在未来に対する
思いを感じ取り、理解してい
る。
a 興味・関心を持って、過去現
在未来のラフスケッチ制作に熱
心に取り組もうとしている。
b 文字からラフスケッチを描き
起こす際、表現に創意工夫が見
られる。
○ a ディスカッションに積極的に
参加し、発表された内容に取り
組もうとしている。
d 他の生徒の作品の鑑賞やディ
スカッションを通じ、作者の心
情や意図と表現の工夫などを感
じ取り、理解している。
導入シート
ディスカッシ
ョンの様子
発言の内容
a 興味・関心を持って、下絵制
作に熱心に取り組もうとしている。
b 下絵を描く際に、ラフスケッ
チを利用しながら表現に対し創
意工夫をしている。
制作中の作品
(ミニ下絵)
活動の様子
a 興味・関心を持って、彩色作
業に熱心に取り組もうとしている。
c 技法や材料・用具の特性を理
解し、効果的な表現方法を選択
し、主題を追究し表現してい
る。
制作中の作品
(ミニ下絵)
活動の様子
○ d 他の生徒作品の鑑賞やアドバ
イスを通じ、自分の制作に取り
込むべき内容を見出している。
ラフスケッチ
活動の様子
鑑賞シート
活動の様子
鑑賞シート
活動の様子
⑰(⑱)
下絵
制作
3
◎ミニ下絵を基に本下絵の制作
●ミニ下絵を基に表現を深める。
○○
⑲⑳㉑
㉒㉓㉔
着彩
2
◎本下絵に彩色する。
○
● 鑑 賞 会 で 得 た こ と に より表 現 を 深
め、作品のクォリティを更に上げる。
㉕㉖
仕上
げ作
業
◎巻物状に仕上げる。
●トータルな仕上がりを意識する。
㉗
鑑賞
◎鑑賞シートに記入しながら、他の生
徒の作品を鑑賞する。
●他の生徒の作品理解を深める。
◎鑑賞シートを用いて、4人一組でデ
ィスカッションし、話し合った内容を
発表する。
●ディスカッションにより、更に他の
生徒の作品理解を深める。
○
a美術への関心・意欲・態度 b発想や構想の能力
a 興味・関心を持って、下絵制
作に熱心に取り組もうとしてい
る。
b 本下絵を描く際に、ミニ下絵
を利用しながら表現に対し創意
工夫をしている。
○
a 鑑賞会で得たことを生かし、
彩色作業に熱心に取り組もうと
している。
c 技法や材料・用具の特性を理
解し、効果的な表現方法を選択
し、主題を追究し表現してい
る。
○
a 興味・関心を持って、仕上げ
の作業に熱心に取り組もうとし
ている。
c 技法や材料・用具の特性を理
解し、効果的な表現方法を選択
し、主題を追究し表現してい
る。
○ d 他の生徒の作品のよさや美し
さ、作者の心情や意図と表現の
工夫などを感じ取り、作品に対
する見方や感じ方、考えなどを
持ち、理解している。
制作中の作品
(本下絵)
活動の様子
活動の様子
完成作品
活動の様子
鑑賞シート
活動の様子
c創造的な技能 d鑑賞の能力
(10)取組事例
ア 実施日:平成 27 年 11 月 11 日(水) 授業担当者:松川 正浩 教諭
イ 授業クラス:美術Ⅱ選択生徒 16 名
ウ 本時のねらい:鑑賞を通じ、今後の制作に取り込みたい内容を見出す。また、コメントシートの内
容から、他者が自作をどう思い、何を期待しているのかを理解する。自分が取り入れたいと思った内
容と今後の制作の方向性を皆の前で、お互いに発表し合うことで、他者理解を深めるとともに、より
深い鑑賞体験及び制作体験を皆で共有する。
エ 本時の指導内容:自分の作品に関する制作メモをシートに記入したのち、お互いの作品及び制作メ
モを鑑賞する。その際、各自取り入れたいことを鑑賞シートに記入するとともに、他の生徒のシート
にコメントを書き込む。続いて他の生徒が自分のシートに書いてくれたコメントを読み、取り入れた
い内容をまとめる。最後に、各自鑑賞シートを記入した内容を、皆の前で発表する。
時
間
5
学習
内容
導入
分
20
⑯
分
鑑賞
17
発表
分
◎学習活動
●学習のねらい
◎制作メモに記入する。
●自作品について説明をする。
評価の観点
abcd
評価規準
評価方法
○
a 興味・関心を持って、作品解
説シートの記入に熱心に取り組
もうとしている。
鑑賞シート
(制作メモ)
◎鑑賞シート・コメントシートに記入 ↓
しながら他の生徒の作品を鑑賞する。
●他の生徒の作品を理解する。
◎他の生徒のコメントを読み感じたこ
と・参考にしたいことをまとめる。
●他の生徒が、自作について感じたこ
とを理解する。
◎鑑賞シートを用いて、各自内容を発 ↓
表する。
●皆の前で発表することにより、各自
が感じたことを共有し、各自のこれか
らの表現に生かす。
○ d 他の生徒の作品のよさや美し
さ、作者の心情や意図と表現の
工夫などを感じ取り、作品に対
する見方や感じ方、考えなどを
持ち、理解している。
鑑賞シート
活動の様子
a 他の生徒の作品の良さや、コ 活動の様子
メントに対し、自分が感じ取っ
たことについて、積極的に発言
しようとしている。他者の発表を
聞き、メモを取ろうとしている。
3
まとめ
◎本時のまとめ
●内容をしっかり理解する。
↓
a 本時の活動内容をしっかり理
解しようとしている。
活動の様子
導入
◎本時の作業について説明を聞く。
↓
● 本時の 活動内 容をし っかり 理解す
る。
a 説明を注意深く聞き、本時の
活動内容をしっかり理解しよう
としている。
活動の様子
a 興味・関心を持って、下絵制
作に熱心に取り組んでいる。
b 本下絵を描く際に、ミニ下絵
を利用しながら表現に対し創意
工夫をしている。
a 本時の活動内容をしっかり理
解しようとしている。
制作中の作品
活動の様子
a 本時の活動内容をしっかり理
解してワークシートに記入しよ
うとしている。
活動の様子
分
3
分
↓○
分
本下絵 ◎ミニ下絵を基に本下絵の制作
制作
●ミニ下絵を基に表現を深める。
2
まとめ
◎本時のまとめ及び次回の説明
●内容をしっかり理解する。
↓
振り
返り
◎本日の授業の振り返りシートに記入 ○
する。
●内容をしっかり振り返り記入する。
35
⑰
分
5
分
活動の様子
オ
事後考察
仮下絵から本下絵に移る直前の段階で、相互作品鑑賞会を行った。鑑賞会をする前に①他の作品を
観て、自分の作品に役立てられそうなことを探す。②誉めることより、なるべく相手に役立ちそうな
コメントを書く。③「①、②」から得られた内容を、皆の前で自分の言葉を使って発表する。以上①
~③に真剣に取り組むことで、「お互いに作品を高め合っていこう」という空気感を美術室に作り出
したいと、生徒に伝えた。生徒たちも真摯に取り組み、作品鑑賞やコメントで得たことを自分の言葉
で発表することが出来た。当日参加された他校の美術教諭からいただいたコメントも大いに刺激とな
って、下絵を改良したいという積極的な姿勢を持った生徒も数多く見受けられた。制作途中の良いタ
イミングに鑑賞会が入れられると、その後の制作に対するモチベーションアップと、作品の見直しが
図られて非常に効果が挙がるのではないかと考えられる。
生徒感想
・今回の授業では、意見交換をメインとされていたので、自分では気付かなかったところが気付け
てよかったです。・1 人で発表する機会が中々無かったので、有ってよかったかなと思います。・皆のプリント
に自分の意見を、前回よりもしっかりかけてよかったです。・他の人の意見を聞いたり、発言したりすること
で、共有できたのでよかったと思います。・モヤモヤしていたものが晴れて、こうしたらよいと解決したのでよ
かった。・美術の授業では、アイディアに個性がとても出るので、他の人の作品や意見などを聞いて自分だけの
アイディア以上に色々な考え方が広がったと思う。・他の人や先生がプリントに書いてくれた意見を見て改めて
直すべきところが見えてよかったです。
カ
授業の様子
■相互鑑賞会の様子
■シートにコメントを書き込む
■仮下絵から本下絵へ
5 その他の取組事例
(1)1>1000~F50 号の油彩画を描こう〔美術「美術専攻実技Ⅱ」:絵画〕
ア 研究推進委員:神奈川県立弥栄高等学校
宮田 一宏 教諭
『生徒が主題をゼロから考え制作するのではなく、いくつか制約がある中で答えを出していく形によ
り、今後の制作の足がかりになるのではないか』
イ 組織的な授業改善:本校の授業研究テーマである「TOP(Thinking,Organization,Presentation)教
育の実践」を意識し、専門性の高い題材設定をした。主題生成の方法について研究し、生徒の独自性
を踏まえ、複数の手法が選べるように工夫した。
ウ 題材のねらい:デザインのように制作に際して制約を設けることにより、制約を活用したり、乗り
越える過程に生徒一人ひとりの独自性が宿ると考えた。
エ 身に付けさせたい力:それぞれが主題生成のプロセスを身に付ける。主題を基に構図や色彩など計
画する力。
オ 指導内容と構成の工夫:
①3つのキーワードの中から一つ選び、作品の基調テーマとする。
②多様に解釈できる問いの中から、独自の答えを考え、発表する。
③参考となる図版を画集から見つけ出し、鑑賞する。
・鑑賞やグループワークを取り入れることで、他者の考え方も
取り入れながら発想の力を高める。
・制作後に振り返りシートを記入し、与えられたキーワードから
■画材研究
どのように、発想したかをまとめ、言語化する力を身に付ける。
(2)デザイナーになろう ~アイデアが形になるまで~〔芸術「美術Ⅲ」:デザイン〕
ア 研究推進委員:神奈川県立横浜栄高等学校
猪又 隆洋 教諭
『変化の激しい現代社会において、学校教育における美術の授業の中では、「美術そのものの教育」
のみならず、「美術を通しての教育」に更に重点を置きながら、社会と美術、社会と自分との関わり
を考えていかなければならないのではないか』
イ 組織的な授業改善:本校の授業研究テーマである「生徒の学習意欲を向上させ『確かな学力』の育
成・定着を図る。ICT 等を活用し、生徒の言語活動の充実を目標とした授業実践の研究を進める。」
を意識し、生徒が関心を持ちやすいよう、彼らの身近なものをモチーフとして取り上げ、随所に ICT
機器を用いたプレゼンテーションを取り入れつつ、言語活動の充実が図れるような題材設定をした。
ウ 題材のねらい:「美術を通しての教育」を通じて、他者の価値観や考え方を知り、自主的かつ協調
的な学びを図ることで、実社会で生活していく上でも役に立つ力を身に付ける。
エ 身に付けさせたい力:多角的な視点から物事を考察できる能力。他者理解、異文化理解。
オ 指導内容と構成の工夫:
①デザイナーを扱った DVD を鑑賞してプレゼンテーションについて知り、課題内容を把握する。
②ICT機器も適宜用いながら情報を収集して、現状の問題点や改善点を考える。各種キャンペーンな
どについても知る。
③ロゴについて学ぶ。企業や商品の歴史などの背景についても考える。
④中間プレゼンテーションを行い、その後の意見交換から、良い点、改善点を探る。
⑤再構想をし、最終プレゼンテーションへ向けてパネルにまとめていく。
⑥最終プレゼンテーションを行う。意見交換、振り返りを行う。
・正解のない問いに、教師が答えを提示するのではなく、生徒それぞれが自問自答しながら考えてい
けるように偏ったイメージを植え付けないようにする。
・絵画や彫刻だけでなく、身近なものの中にも美術的要素は存在することに気付けるような話を随所
に織り交ぜる。
・授業を通して他者の価値観、美意識などを発見し、他者理解・異文化理解につながるように、ファ
シリテーターとしての中立的な立場からの授業展開を心掛ける。
カ 授業の様子・生徒作品
■最終プレゼンテーションの様子
(3)芸術祭テーマ課題 ~海の世界~〔芸術「美術Ⅰ」:映像メディア表現〕
ア 研究推進委員:神奈川県立相模原中等教育学校
藤井 信孝 教諭
『芸術祭としては、はじめての映像メディア表現であり、教師と生徒の間でも一つのものを作り上げ
ていくという共通の意識が生まれるのではないか』
イ 組織的な授業改善:本校の授業研究テーマである「基礎的・基本的な知識及び技能の習得はほぼ達
成できているが、主題を基に、全体と部分との関係を考え創造的な構成をつくりだす課題において、
部分にしか注意が向かず、全体の関係を意識出来ない生徒が多い」を意識し、グループでの役割、連
続する動きを把握することで全体と部分を理解する題材設定をした。
ウ 題材のねらい:グループでストーリーを考え、アニメーションの基礎を理解すると共に、協働の意
識向上とリーダーシップの育成を図る。
エ 身に付けさせたい力:話し合い、協働で制作する力。形、動きや位置の変化を、工夫して表現する
力。
オ 指導内容と構成の工夫:
①芸術祭テーマ「海」を主題に、A4の紙でアニメーションを制作する。10 人程度のグループに分
かれ、テーマやストーリー、工夫する点を積極的に話し合い、協働で制作する。一人あたり 20 枚
程度制作する。
②アニメーションの基礎を理解する。
③連続する流れを意識し、発想する。基本はモノクロームとし、余力のある生徒は着色する。
④一人あたり、A4サイズの紙 20 枚程度で制作し、複合機で取りこみ(連続スキャン可能)、ムービ
ーメーカーで編集する(実行委員)。
・芸術祭では、芸術祭実行委員が全体テーマを決定している。今年度は『海』であり、芸術祭特別課
題として生徒にヒアリングをした結果、アニメーションとした。
カ 授業の様子・生徒作品
■授業風景
■作品
(4)立体コラージュ〔芸術「美術Ⅱ」:立体造形〕
ア 研究推進委員:神奈川県立麻溝台高等学校
宮本 知保 教諭
『自由テーマの作品制作において、制作の中間地点や完成後にアクティブ・ラーニングの手法を用い
た作品鑑賞を行うことで、制作活動のモチベーションを高め、思考力・構想力の向上につなげられる
のではないか』
イ 組織的な授業改善:本校の授業研究テーマである「思考力が育成できる学習活動」を意識し、生徒
が自ら思考し、構想を練っていくような題材設定をした。また、鑑賞ではアクティブ・ラーニングの
手法を用い、活発な学習活動を行えるよう工夫した。
ウ 題材のねらい:各自が自由にテーマを設定し、レリーフ状の立体作品を制作する。パネルの裏側を
使って一つの世界観を立体で展開する。
エ 身に付けさせたい力:立体作品制作を通じて独自の発想や構想の力、立体作品を創造する技能、自
己の世界観を展開する力を付ける。鑑賞においてはコミュニケーション能力、グループワークを積極
的に楽しむ気持ちを育てる。
オ 指導内容と構成の工夫:
①立体作品の鑑賞を行い、立体ならではの面白さ、味わいを感じる。様々な芸術家や先輩の作品の工
夫や意図を読み取る。
②コラージュの起源など、立体コラージュについて理解する。
③マインドマップなどを利用しながら立体作品を発想し、構想を練ることで、独自の世界観を構築す
る。立体としての美しさや面白さを意識する。
④構想を具現化するための技能や素材の特性、用具の扱いについて学ぶ。
⑤作品について説明したり、他者の作品の意図等を読み取る。
・制作の前や途中段階で鑑賞やグループワークを取り入れることで、他者の考え方も取り入れ、発想
の力を高める。
・制作後にグループワークでお互いの作品を鑑賞し合う。グループワークを通じて発想・構想の能力
やコミュニケーション能力を高める。
カ 授業の様子・生徒作品
■中間振り返りグループワーク
■制作風景
■作品画像(過去の例)
6
題材の授業づくりに基づく授業実践の評価と分析
・構想及びアイディアスケッチ・下絵制作に、予想以上に時間がかかり、またディスカッションや相互
鑑賞の時間も加わり、制作のための十分な時間が確保できなかった。
・絵画制作において、構想期間と制作期間に間が空いてしまった。授業内容に関しての予告は、数ヶ月
前から行っていたが、実際の授業との連動がうまくいかなかった。
・「デザイナーになろう」では、社会と自分の接点を考える、今までの「美術の授業」の枠にとらわれ
ない新しいタイプの内容になり、自分が学んでいることが将来に結び付く一つのきっかけになった。
・アニメーションという、生徒自身も興味がある題材設定であったことから、積極的に課題に取り組ん
でいた。20 枚では枚数が多いかと懸念していたが、意欲的に描いていた。ストーリーに関して、生
徒主体とするか、こちらが設定しておくかが課題である。
・各自が自由にテーマを設定する課題においてアクティブ・ラーニングの視点を踏まえた手法で中間振
り返りを行ったが、大部分の生徒のモチベーションを上げる効果があった。しかし、制作の発想や構
想がしっかりと固まっていない生徒にとっては、少し混乱してしまう部分があった。
7
成果並びに課題とその改善に向けた方策
・相互鑑賞を取り入れることで、他者の発想・感性・考えを理解し、自作品へのフィードバックは有効
に成されたが、その思いを共有するためのディスカッションタイムは充分な深まりを持つところまで
はいかなかった。ディスカッションを入れる時期と、話し合う内容・記録シート・発表方法等を吟味
し、より有効に機能するように工夫改善する必要がある。
・絵画の構想を練るに当たり、それぞれの考えが違うことを絵柄だけでなく言葉でも知り合うことがで
きた。また、主題と完成形の関係性について考えることができたことも成果である。技法研究や資料
集め、ディスカッションの時間などコンテンツの順番に一考の余地がある。技法研究を題材の最初で
行ったが、構想期間を経てから行った方がより、それぞれの主題に寄り添った形になるのではないか
と思う。
・最終的な作品を一枚の絵として見た時に、美術的要素がもっと含まれていると良かった。
・生徒たちは今まで受けてきた美術の授業とは違うアプローチだったためか、初めこそ戸惑いを見せた
がすぐに課題を理解し、積極的に取り組んでいた。
・アクティブ・ラーニングの視点を踏まえた授業づくりの目的を再確認する必要がある。身に付けさせ
たい力とは何か、そして生徒の何が高まり、何が身に付いたのかを読み取る必要もある。グループワ
ークやディベートの実施が、そのままアクティブ・ラーニングの実施であると混同してはならない。
美術は、作品を制作する、という広がりのある活動から、他教科とは異なる実践も可能ではないだろ
うか。
・アクティブ・ラーニングの視点を踏まえた振り返りの鑑賞で、果たして生徒の思考力・構想力を育成
することができたのかという点においては、力を伸ばせた生徒とそうでない生徒に大きく分かれた結
果となった。有効なグループワークを行うためには、一人ひとりがそれまでの制作を充実させておく
必要があり、発想や構想の段階でつまずいている生徒には具体的な方法を示すなどグループワーク以
前の支援も不可欠であろう。また、グループワークの実施の時期を見極め(早すぎず遅すぎず…)、
グループワーク実施時には具体的な分かりやすい指示を行うことが有効である。
芸 術(書道 )
1 研究のテーマとねらい
(1)研究のテーマ
他教科との連携を通し、生徒が自ら主体的に考え、「言葉の印象を書で表現する力」を定着させる授
業づくり
(2)研究のねらい
今回の研究に当たって、身に付けさせたい力を確実に定着させるために、アクティブ・ラーニングの視
点を効果的に取り入れた単元を計画することにした。生徒が主体的に題材に向き合い、感性を高め、書
表現や鑑賞の能力を高めるためには、表現活動だけでなく作品の構想を十分に練らせたり、作品につい
て生徒同士で話し合わせたりするなどの言語活動を単元指導計画に組み込むことが有効であると考え
た。
2 研究で取り組んできた内容
生徒の「書で表現したい」という意欲を喚起し、主体的に創作に取り組ませるためには、題材となる言葉の
理解を深めることが必要である。そこで、教科横断的な発想を取り入れ、今回は、1 学期に生徒が「国語総合」
ですでに学習している小説「羅生門」を題材にして、その一節を表現させることにした。
「羅生門」の一節に
込められた作者、下人、老婆の思いを解釈し、書で表現するためには、撰文の段階で十分な吟味が必要であ
り、字体や書風も工夫する必要がある。
3 研究のねらいを達成するための手立て
昨年度の「書道Ⅱ」公開研究授業では、アクティブ・ラーニングの視点を取り入れた学習活動として、感
想文の作成やプレゼンテーション等、自らの考えを深めるための多様な言語活動の形態を提示した。もちろ
んアクティブ・ラーニングの視点を踏まえた授業を行うことは目的ではなく、生徒の思考力・判断力・表現
力を伸ばすための手立てであるということに留意する必要がある。創作プリントや発表プリントを用いるこ
とによって制作の過程を見取るとともに、机間指導を丁寧に行うことで、「言葉の印象を書で表現する力」
を身に付けさせることができると考えている。
4 単元の指導計画及び重点を置いた授業展開例
実践事例(公開研究授業)
(1)研究実施校:神奈川県立海老名高等学校(全日制)
(2)学校の課題:
自分が感じたことを正確に相手に伝えることや、相手の感情を推し量ることは、案外難しいもの
である。どうしたら相手に伝わるのか、どうしたら相手のことが理解できるのか、様々な表現方法
を知り、様々な表現方法を受け入れることで、感受性と想像力を育んでいくことが必要である。芸
術においては、各教科で身に付けた力から自己表現に適した知識・技能を自らの判断で選び、組み
合わせ、五感を使って表現する場を設定し、感受性と想像力を醸成していくことが求められる。
(3)実施校における研究テーマ
「自らが学び、思考力、判断力、表現力を高める授業をつくるための授業改革」
(4)科目:書道Ⅰ
学年:1年
(5)単元名:漢字の書 「漢字仮名交じりの書に親しもう」
(6)単元のねらい:
・
「羅生門」を題材に書表現の工夫を試みることで、言葉の大切さを感じ取り、言葉と書との関係につい
ての考えを深める。
・芥川が文章で表現した世界を受け止め、互いの作品鑑賞を通して共感する部分や相違する部分を知り、
個性の感受や表現の多様性に気付く。
(7)単元で身に付けさせたい力:
「言葉の印象を書で表現する力」
(8)単元の評価規準
書への関心・意欲・態度
書表現の構想と工夫
創造的な書表現の技能
鑑賞の能力
書の美しさと表現効果を 参考とする古典の特徴を 参考とする古典のよさや 鑑賞と表現は相互に関連
分析的に味わい、見ること 理解し、漢字と仮名の調和 美しさを生かして表現す していることを理解し、書
を楽しむことで、書の関心 した線質の表し方やその る技能を身に付け表して のよさや美しさを感じ取
を高めようとしている。
美しさを理解し、表現を工 いる。
っている。
言葉の印象を書で表現し 夫している。
ようとしている。
(9)単元の指導と評価の計画
時
1
学習内容
学習活動
・言葉と書との ・
「漢字仮名交じ
関係について考 りの書」作品を
える。
鑑賞する。
2
ねらい
評価の観点
a
b
・作者の意図や
個性によって印
象が異なること
に気付く。
c
d
○
評価規準
評価方法
・漢字仮名交じりの 記述の確認
書のよさや美しさを
感じ取っている。
(d)
・表現したい言 ・
「羅生門」より
葉を選ぶ。
「漢字仮名交じ
りの書」で表現
したい言葉を選
ぶ。
・草稿を練る。
・草稿を基に練
習する。
・選んだ言葉か
ら受ける印象を
整理し、表現し
たいことをまと
める。
・言葉から受け
る印象をより効
果的に表現する
にはどうしたら
よいか、近くの
生徒と相談しな
がら考える。
・表現意図に即
した参考古典を
探す。
・古典を参考に
することで創作
のヒントとす
る。
・鉛筆で紙面構
成を考える。
・言葉が持つ印
象と表現したい
内容にふさわし
い紙面構成を検
討する。
・古典の特徴を
生かし、漢字と
仮名の調和を図
る。
・参考古典の字
体や書風の特徴
を整理し、漢字
と仮名の調和を
工夫する。
・鉛筆草稿を見
ながら字形や線
質に統一感を持
たせる。
○
・古典の特徴を理解 創作プリン
し、効果的な表現を トの記述の
するために必要な要 確認
素を見つけ、それら
を生かして全体の構
成を工夫している。
(b)
○
・参考とする古典の 制作過程の
特徴を理解し、漢字 作品の分析
と仮名の調和した線
質の表し方やその美
しさを理解し、表現
を工夫している。
(b)
3
)
4
(
公
開
研
究
授
業
・作品を仕上げ
る。
・濃淡・潤渇や
余白を工夫し、
表現意図に沿っ
た作品に仕上げ
る。落款も作品
に調和するよう
工夫する。
・作品を鑑賞す ・互いに鑑賞し、
る。
①言葉と書表現
の調和
②判断した理由
③参考古典
を付せんに書き
プリントに貼
る。
・制作者メモを
公開し、表現意
図が達成されて
いる部分と工夫
が必要な部分に
関して感想を述
べ合う。
・参考古典の書
風や技法を漢字
と仮名の両方に
おいて取り入れ
る。
○
・観点を絞って
他者の作品を鑑
賞する。
・言葉に対する
印象の類似点・
相違点やその印
象に対してどの
ような書表現を
試みたかを話し
合うことで様々
な個性に気付
く。
○
○
・意見・感想を
ふまえて自分の
作品の自己評価
をする。
a:書への関心・意欲・態度
・参考とする古典の
よさや美しさを生か
して表現する技能を
身に付け表してい
る。
(c)
○
b:書表現の構想と工夫
清書作品の
分析
・漢字仮名交じりの 鑑賞プリン
書のよさや美しさを トの記述の
感じ取って自分の言 確認
葉で表現している。
(d)
・書の美しさと表現
効果を分析的に味わ
い、見ることを楽し
むことで、書の関心
を高めようとしてい
る。
(a)
話合いの観
察
・鑑賞と表現は相互
に関連していること
を理解し、書のよさ
や美しさを感じ取っ
ている。
(d)
鑑賞プリン
トの記述の
確認
c:創造的な書表現の技能
d:鑑賞の能力
(10)取組事例(公開研究授業)
① 実施日:平成 27 年 10 月 24 日(土)1、2 限目 授業担当者:山本 美和(教諭)
② 授業クラス:1 年 2 組 40 名(必修科目:
「芸術Ⅰ」音楽Ⅰ・美術Ⅰ・書道Ⅰからの選択)
③ 本時のねらい: ・言葉の印象を効果的に表現する書風・技法を考え、表現する。
・言葉が持つ印象の受け止め方の多様性に気付くとともに、鑑賞と表現は相互に
関連していることを理解する。
④ 本時の指導内容:
時
学習活動
指導上の留意点
評価規準
・前回の試作と草稿を比較し、修正 ・潤渇や余白、文字群のバランス等、
点を確認する。
鉛筆の草稿では表現しきれない点
を試作で確認させる。
・草稿プリントの添削内容を確認さ
せ、改善を促す。
3
・清書を仕上げる。
・表現したいことを表すために必要
な要素を精選し、作品を数点作成さ
せる。
・清書を選び、プリントに必要事項 ・意図が達成されている作品を清書 ・参考とする古典のよさや美しさを
を記入する。
として選ばせる。
生かして表現する技能を身に付け
表している。
(c)
・互いに鑑賞し、
①言葉と書表現の調和
②調和がとれていると判断した理由
③参考古典
を付せんに書きプリントに貼る。
4
・進行、ねらいについて全体に説明 ・漢字仮名交じりの書のよさや美し
をしてから鑑賞に入る。
さを分析的に感じ取って自分の言
葉で表現している。
(d)
・制作者メモを公開し、表現意図が ・言葉に込められた想いが効果的に ・書の美しさと表現効果を分析的に
達成されている部分と工夫が必要 表現できている箇所を見つけ、なぜ 味わい、見ることを楽しむことで、
な部分に関して感想を述べ合う。
効果的と感じるのか理由を考えさ 書の関心を高めようとしている。
せる。
(a)
・自分の作品の自己評価をし、◎○ ・自分が伝えたかった言葉の印象が ・鑑賞と表現は相互に関連している
△をプリントに記入する。
効果的に伝わったか、また、鑑賞者 ことを理解し、書のよさや美しさを
がどんな印象を受けたかを踏まえ、 感じ取っている。
(d)
自己評価をさせる。
⑤ 言葉の印象を書で表現するための教材の工夫:
・
「国語総合」で学習した文章を用いることで、書表現の題材となる言葉の吟味を深める。
〈創作プリント〉
創作草稿を練る過程において生徒同士で意見を交換することで、題材のイメージを具体化する手立てとする。
〈鑑賞プリント〉
他者の意見・感想を受けて自分の作品を客観的に評価する。
付
箋
添
付
欄
】
言
葉
と
書
表
現
の
調
和
【
】
意
図
の
達
成
【
】
』
・ ・ ・
◆
調
和
が
と
れ
て
い
る
と
判
断
し
た
理
由
:
◆
言
葉
の
イ
メ
ー
ジ
と
書
表
現
の
調
和
で
工
夫
し
た
と
こ
ろ
:
漢
字
仮
名
交
じ
り
の
書
書
道
~
言
葉
の
印
象
を
ふ
く
ら
ま
せ
て
「
羅
生
門
」
を
書
こ
う
一
年
組
番
氏
名
③
参
考
古
典
②
調
和
が
と
れ
て
い
る
と
判
断
し
た
理
由
①
言
葉
と
書
表
現
の
調
和
漢
字
仮
名
交
じ
り
の
書
書
道
Ⅰ
◆
参
考
古
典
:
『
Ⅰ
↓
↓
↓
◆
自
己
評
価
(
◎
/
○
/
△
)
全
体
構
成
【
~
言
葉
の
印
象
を
ふ
く
ら
ま
せ
て
「
羅
生
門
」
を
書
こ
う
2
2
~
~
一
年
組
番
氏
名
裏面
折り返すと本人記述
部分が隠れる。
生徒作品
「眺」の縦線を強調して時間の長さと下
人のぼんやり待っている様子を表現。
墨色を工夫することで薄明かりの様子と
不気味さを表現。
鑑賞風景
付せんに①言葉と書表現の調和②調和が
とれていると判断した理由③参考古典を
書いて各班員のプリントに貼る。
集まった付せんの記述と本人の記述とを
比較し合致点や相違点について意見を交
わし合う。
5 単元の授業づくりに基づく授業実践の評価と分析
参観者へあらかじめ付せんを配付し、生徒たちが作品制作や鑑賞会を通して言葉と書を結び付けようと工夫
しているところや、言葉の印象を具体的な形に表そうと苦慮しているところなどに着目して、付せん一枚につ
き一項目ずつ気付いた点を記入し、挙げていった。研究協議においてはその付せんを記述内容ごと「良かった
点」
・
「疑問点」
・
「改善点」の3点に分類し、生徒が言葉と書との関連性を深めることができたか考察した。
良かった点
・
「羅生門」の読解が撰文に繋がっ
ている。色に関する文、感情が読
み取れる文、余韻の深い文等。
・誘導的な撰文ではなく生徒が主
体的に撰文している。
・形だけの連携ではなく内容が伴
った連携になっている。
・表現を否定しない鑑賞姿勢が良
かった。
・意見を言い、要約してから付せ
んに書くという作業が重要。
付せんの記述内容(抜粋)
疑問点
・草稿の完成度における個人差
が大きいように感じた。
・草稿の形式に決まりごとはあ
るのか。
・鑑賞の評価規準は設けた方が
よいのか。
・互いに意見を言い合えるのも
スキルではないか。
改善点
・作品の完成が到達点ではなく草
稿づくりの大切さを教えるべきで
はないか。
・鑑賞会を最後にせず、途中で行
い意見を基に改善していく流れの
方が良かった。
・グループでの話合い時間が少な
い。
・言葉と書表現が重なった。墨色
の濃淡の違いを生かしてイメージ
を具現化する等。
・必ずしも書表現と言葉とが一
致しなくてもよいのかもしれな
い。
・登場人物の気持ちの捉え方が一
面的に感じた。
・鑑賞時に感じた印象をうまく言
語化できていない。
・国語教材の研究も必要。
・国語が別教科と思いがちである
ことは、やや反省。
・
「書道Ⅰ」の段階で古典作品を
意識し仮名と調和させるのは難
しいのでは。
① 主体的に書作品の題材に向き合うために、
「国語総合」
で既習の教材『羅生門』から表現したい言葉を撰文する
ことにした。
「国語総合」で読みこんだ文章ということで、
文字造形の奇抜さや表面的な言葉の印象によらない深い
考察に基づく撰文となった。
② 言葉を吟味する過程で、生徒同士「なぜその言葉を選ん
だのか。
」
、
「この言葉は下人のどんな心情を表しているの
か。
」など、文章から感じ取ったことをお互いに話し合う
様子が見られた。一つの言葉から似通ったイメージを連想
する場合もあれば、同じ言葉でも抱く印象が異なる場合も
あり、
「国語総合」で共通理解を図ったことや学習を踏ま
えて個人個人が抱いた感想を直接言葉にして述べ合うこ
とは、作品制作のヒントを得る上でも大いに有効であった
と考える。
③ 書作品の制作を通して、形にできない感情をより良く正確に相手に伝えるには、効果的な表現方法があること
を実感できた。また、鑑賞会において相手の意図を理解するためには、自分と異なる感性も広く受け止め、積極
的に真意を理解しようとする姿勢が必要であることも学べた。書のよさや美しさを感じ取るには、鑑賞と表現
が相互に関連していることを理解する必要がある。
④ 付せんの記述を見ると撰文の段階で十分に吟味しており、字体や書風を工夫するために「羅生門」を多面的に
捉えていることが分かる。アクティブ・ラーニングを効果的に取り入れた単元を計画し、実施したことによっ
て、生徒が主体的に考え、「言葉の印象を書で表現する力」を定着させることができたと言えよう。
(参考:生徒アンケート)
今日の授業のねらい(何を勉強す
るか)がわかりましたか。
Aよくわかった
24
生徒同士で話し合う機会や意見などを発 Aそう思う
表する機会がある授業だと思いましたか。
28
今日の授業の「内容」が理解でき
ましたか。
Aよく理解できた
26
Bだいたいわかった
14
Bだいたいそう思う
11
Bだいたい理解できた
12
Cあまりわからなかった
1
Cあまりそう思わない
0
Cあまり理解できなかった
1
6 成果並びに課題とその改善に向けた方策
① 生徒の書表現に対する意欲を喚起し、主体的に創作に取り組ませるために、他教科の国語で学習した内
容を生かしたことは、意義のあることであった。
② 他教科との連携により、言葉に対する感性が高まり、自らの書表現のねらいが明確になったが、それを
作品として形にするためには、言葉の意味内容や文学作品の読解を踏まえた草稿づくりがより重要である。
字書の活用や参考古典・古筆の紹介など、草稿の手順や着想の得方を丁寧に指導する必要がある。
③ お互いの感性の類似点や相違点について意見交換をする場は、作品制作の着想を得る観点に着目するこ
とで多様な感性を理解する一助となり有意義であったが、他者からの意見や助言を受け、それを基に作品
を改善していく流れを指導計画に明確に組み込んだ方が、より多様な感性を受け止める意義についての理
解が深まったと考える。鑑賞会の順序を入れ替えて、鑑賞の後、更に練成する時間を作り、作品の変遷を
見取る機会を設けると効果的である。
外 国 語 (英 語 )
1.研究のテーマとねらい
(1)研究のテーマ
「組織的な授業改善の推進~アクティブ・ラーニングを効果的に取り入れた単元の授業づくり~」
(2)研究のねらい
平成26年度は、各校で設定した英語4技能の「CAN-DOリスト」の形での学習到達目標に沿った計画
的な単元指導計画と評価について研究を行ったが、平成27年度はこれまでの研究を更に継続するとと
もに、アクティブ・ラーニングの視点からの学習・指導方法を取り入れた授業についての研究をする
ことをねらいとした。
2.研究で取り組んできた内容
本研究推進委員会(外国語部門)の委員は、文部科学省の委託事業「外部専門機関と連携した英語指導力向
上事業」研究担当者を兼ね、それぞれの所属校である港北高等学校、伊勢原高等学校、相模原中等教育学校の
3校において以下の内容に関する研究に取り組んだ。
・授業は英語で行うことを基本とし、言語活動の高度化を目ざした指導方法。
・単元ごとに計画を立て、生徒が主体となって話したり書いたりする活動を行うことによって、生徒が自らの
意見・感想を表現する授業方法。
・英語4技能の「CAN-DOリスト」の形での学習到達目標に係る達成状況を把握するためのスピーキングテスト
及びライティングテストの実施及び評価方法。
・英語の授業におけるICТ機器の効果的な活用。
3.研究の目標を達成するための手立て
・学習のねらいと到達目標、評価方法、基準を示すことによって、生徒が見通しを持って学習に取り組むこと
ができるようにする。また、生徒が学習内容を振り返り、何を理解したか、どのようなことを表現できるよ
うになったかを把握できるようにする。
・学年ごとに設定した学習到達目標を踏まえ、単元の指導計画の中で、どのような言語活動をさせるかを考え、
ペア・グループ活動を効果的に取り入れた学習方法を工夫する。
例)教科書本文の内容に関連した資料を各自が持ち寄り、お互いに読んだり、意見交換をしたりして、グ
ループごとに一つの説明資料を作成し、クラス全体で共有する。
4.単元の指導計画及び重点を置いた授業展開例
実践事例
(1) 研究実施校:神奈川県立港北高等学校(全日制)
(2) 学校の課題:アクティブ・ラーニングの視点からの指導方法の研究に学校全体で取り組み、その実践によ
って授業改善を推進する。
(3) 実施校における研究テーマ:効果的なアクティブ・ラーニングを中心とした単元計画と授業実践
(4) 科目:コミュニケーション英語Ⅰ
学年:1年
(5) 単元名:Power On Communication English Ⅰ(東京書籍)
(6) 単元のねらい
Lesson 8 The Emerald Isle
・トピックについて関心を持ち、意欲的にペア、グループで意見を交換する。
・学んだ表現を用いて、トピックに関わる様々な事柄を英語で説明し、意見を述べ、発表する。
・英文を読んだり聞いたりして、概要や要点を理解する。
・英語でコミュニケーションをとるために必要な語彙や文法に関する知識を身に付けている。
(7) 単元で身に付けさせたい力
・英文を読んで、概要や要点を理解する力
・内容に関する質問を聞いて、答えられる力
・学習した文法事項を用いて、調べた内容を英語でまとめ、自分の意見を述べる力
(8) 単元の評価規準
コミュニケーションへの
関心・意欲・態度
・教師の質問に積極的に答
えようとしている。
・トピックについて関心を
持ち、意欲的にペア、グル
ープで意見を交換してい
る。
言語や文化についての
知識・理解
・学んだ表現を用いて、 ・英文を読んだり聞いたり ・扱われている文構造や、
様々な事柄について英語で して、概要や要点を理解す 英語表現の意味と働きを理
説明したり、意見を述べた ることができる。
解している。
りすることができる。また
・学習した文構造や英語表
簡単な質問に英語で答える
現を正しく使うことができ
ことができる。
る。
外国語表現の能力
外国語理解の能力
(9) 単元の指導と評価の計画
時
学習内容
学習活動
1
文法導入
(The
Emerald
Isleで用
いられる
文法項
目)
・新出文法の導入
・トピックに関
連する英問英答
を通して文法に
注意を向けさせ
る。
・文法の演習
・用法について
理解する。
・内容についての
導入
・学習する内容
について予想す
る。
アイルラ
ンドにつ
いて知る
①
・新出語彙の導入
・新出語彙の意
味を理解する。
・協働学習①
(発表項目ごとに
グループ分けをす
る。グループに分
かれて調べ学習、
情報まとめ作業を
する)
・それぞれの発
表項目につい
て、より深く調
べ、情報をまと
める。
3
アイルラ
ンドにつ
いて知る
②
・協働学習②
(発表項目ごとの
グループに分かれ
て調べ学習、情報
まとめ作業、発表
準備をする)
・それぞれの発
表項目につい
て、より深く調
べ、情報をまと
める。
4
本
時
アイルラ
ンドにつ
いて知る
③
・発表活動
・聞き手に分か
りやすいように
発表する。
・質問に英語で
答える。
2
ねらい
a
b
○
c
d
評価規準
・トピックについて関心
を持ち、意欲的にペアで
意見を交換している。
評価方法
活動の観
察
ワークシ
ート
○ ・扱われている文構造
や、英語表現の意味と働
きを理解している。
○
・教師の質問に積極的に
答えようとしている。
○ ・扱われている文構造
や、英語表現の意味と働
きを理解している。
筆記テス
ト(後
日)
・トピックについて関心
を持ち、意欲的にグルー
プで意見を交換してい
る。
活動の観
察
ワークシ
ート
○
・学んだ表現を用いて、
様々な事柄について英語
で説明したり、意見を述
べたりすることができ
る。
活動の観
察
ワークシ
ート
○
・学んだ表現を用いて、
様々な事柄について英語
で説明したり、意見を述
べたりすることができ
る。また簡単な質問に英
語で答えることができ
活動の観
察
ワークシ
ート
○
る。
5
6
The
Emerald
Isleの内
容理解①
The
Emerald
Isleの内
容理解②
・自己表現活動
・発表を聞いて
何を感じたか等
を述べる。
・新出語彙の再確
認
・新出語彙の意
味を確認する。
・本文のリスニン
グ
・通し聞きを行
い、情報を把握
する。
・Lesson 8の内容
読解①(アイルラ
ンドの気候、文化
等の内容ごとに、
情報をまとめる)
・教科書の英文
から読み取った
必要な情報を整
理する。
・新出語彙の再確
認
・新出語彙の意
味を確認する。
・Lesson 8の内容
読解②
・教科書の英文
から読み取った
必要な情報を整
理する。
・Lesson 8の内容
確認(まとめた情
報をクラス全体で
確認する)
7
Lesson 8
のまとめ
・単語テスト
・学習した語彙
や文法事項の理
解度チェックを
する。
・Reading
Comprehension
・内容理解の確
認をする。
・教科書を読ん
で質問に答え
る。
・Express
Yourself
・学習した文法
事項を用いて、
自らの事柄につ
いて述べる。
○
・トピックについて関心
を持ち、意欲的にペア、
グループで意見を交換し
ている。
活動の観
察
○ ・扱われている文構造
や、英語表現の意味と働
きを理解している。
筆記テス
ト(後
日)
○
・英文を聞いて、概要や
要点を理解することがで
きる。
ワークシ
ート
○
・英文を読んで、概要や
要点を理解することがで
きる。
活動の観
察
ワークシ
ート
○ ・扱われている文構造
や、英語表現の意味と働
きを理解している。
筆記テス
ト(後
日)
・英文を読んで、概要や
要点を理解することがで
きる。
活動の観
察
ワークシ
ート
○ ・この単元で学習した文
法や言語事項を理解し、
正しく使うことができ
る。
筆記テス
ト
・英文を読んで、概要や
要点を理解することがで
きる。
ワークシ
ート
筆記テス
ト(後
日)
・学んだ表現を用いて、
トピックに関わる様々な
事柄を英語で説明した
り、意見を述べたり、発
表できる。
活動の観
察
ワークシ
ート
○
○
○
※ a:コミュニケーションへの関心・意欲・態度
b:外国語表現の能力
c:外国語理解の能力
d:言語や文化についての知識・理解
(7) 取組事例
①実施日:平成27年11月18日(水) 授業担当者:潮来 友梨 教諭
②授業クラス:1年1組(40名)
③本時のねらい:
・グループで調べたアイルランドの歴史や文化等について、学習した表現を用いて発表する。
・アイコンタクト・ジェスチャー・表現の工夫等、相手に伝わる発表の仕方を身に付ける。
④本時の指導内容:授業時間45分
授業展開
導入
(5分)
展開
(35分)
学習活動
効果的な発表の仕方の再確認
発表準備
各グループへの助言を行う。
発表活動
他のグループの発表をよく聞
き、新しく得た情報や感想を
書かせる。
内容について簡単な質問を
し、答えさせる。
各グループの発表について意
見を共有させる。
質疑応答
意見の共有
まとめ
(5分)
指導上の留意点
表現の工夫等、相手に伝わる
発表の仕方を確認する。
評価方法
活動の観察
活動の観察及び
ワークシート
活動の観察及び
ワークシート
振り返り、次回 の授業に関す 発表で使われた表現等を振り
返り、次回の本文理解につな
る指示
げる。
⑤授業担当者のコメント
・今日はグループで調べた事柄について発表する活動を行ったが、生徒は積極的に取り組んでいた。
・反省としては、準備の時間がもう少しとれるとよかった。
・発表の中で発音がきちんとできていなかった単語があったので、発音について指導を強化していきたい。
・生徒は作成した原稿を暗記して発表に臨んでいたが、覚えることで精一杯の段階から更に向上できるよ
うに指導していきたい。
⑥参加教員対象のアンケートのコメント
・発表者に「伝えよう」という気持ちがあり、聞いている生徒の態度もよかった。
・学習した表現、文法事項がプレゼンテーションの中に生かされていた。
・生徒が皆協力して課題に取り組み、積極的に参加していたのが印象的だった。
・発表後の教員からのフィードバックのコメントがよかった。次の機会での改善につながると思う。
⑦研究協議における指導・助言
・授業者の英語による指示が明確で、生徒にとってどのように活動するかが分かりやすいところが大変よ
かった。
・プレゼンテーションのためのワークシートは、とてもよく工夫されている。各学校の状況に応じてアレ
ンジして使ってほしい。生徒がプレゼンテーションを行う上で、基本となるフレーム(基本表現)が必要
だが、このワークシートからそれを身に付けられる。発表のためのkey pointsは、プレゼンテーション
をする上で気を付けたいことが非常に分かりやすくリストアップされている。アイコンタクトやジェス
チャー、抑揚、イントネーションがなぜ必要なのか。それは、聞く相手に分かってもらうために必要な
のであり、相手に分かってもらうことが、コミュニケーションの基本である。このことを生徒に伝えて
いくようにしたい。
・プレゼンテーションを指導する方法として、教科書の表現を使うのが基本だが、教科書の表現を使用す
る割合が多くなればなるほど棒読みになりやすいので、キーワード以外は中学校の表現を使うようにす
るとよい。自分の知っている単語を増やすとともに、教科書の内容が伝わる表現を使えるようにしてい
くことが重要である。
5.単元の授業づくりに基づく授業実践の評価と分析
(1)英語4技能の「CAN-DOリスト」の形での学習到達目標
港北高等学校の1学年では、次表のような目標を立てている。「話すこと」及び「書くこと」について
は、それぞれ年度内に3回のテストを実施し、評価する計画である。
外国語表現の能力
学年
(次)
1
外国語理解の能力
話すこと
書くこと
聞くこと
読むこと
評価方法
(評価時期)
日常的な話題につい
て、英語の質問に対
して、英語で答える
ことができる。
評価方法
(評価時期)
自分のまわりのこと
について、まとまり
のある文章を書くこ
とができる。
評価方法
(評価時期)
コミュニケーション
英語Ⅰレベルの難易
度の英文を聞き、概
要を把握できる。
評価方法
(評価時期)
コミュニケーション
英語Ⅰレベルの難易
度の英文を読み、概
要を把握できる。
インタビューテスト
(授業中)(7月)
インタビューテスト
(12月)
グループ発表
(授業中)(2月)
定期試験(7月)
定期試験(12月)
定期試験(3月)
定期試験(7月)
定期試験(12月)
定期試験(3月)
定期試験(7月)
定期試験(12月)
定期試験(3月)
(2)「話すこと」の能力の測定
実際に行われたテストの具体的な内容は以下のとおりである。学校行事等の関係で、個別のインタビュー
テストの実施が困難であったため、プレゼンテーションと内容に関する質疑応答を評価材料とした。
実施後には担当者が生徒の解答を分析して、成果と課題を明らかにし、指導と評価に生かしている。
スピーキングテスト
実 施 学 年
1年
実 施 科 目
コミュニケーション英語Ⅰ
実 施 期 日
平成27年11月11日~11月20日 各授業
テスト問題
アイルランドと日本の文化の類似点・相違点について、学習した表現を用いて発表する
(グループプレゼンテーション)。
【評価規準(コミュニケーションへの関心・意欲・態度)】
間違うことを恐れず、発表している。
【評価規準(外国語表現の能力)】
2つの国の文化の類似点・相違点について、学習した表現を用いて、聞き手が理解できるように表現し、発
表している。
【評価規準 (コミュニケーションへの関心・意欲・態度)】
A
英語で表現しようという積極的な姿勢・態度がある。
B
英語で表現しようという姿勢・態度がある。
C
英語で表現しようという姿勢・態度がない。
【評価基準(外国語表現の能力)】
A
・学習した表現を用いて、聞き手が内容を十分に理解できるように発表することができる。
・内容に関する質問に適切な英語で答えることができる。
(Impressive)
B
・学習した表現を用いて、聞き手が内容を理解できるように発表することができる。
・内容に関する質問に英語で答えることができる。
(Understandable)
C
・学習した表現を用いて、聞き手が内容を理解できるように発表することができない。
・内容に関する質問に英語で答えることができない。
(Not Understandable)
【総合評価(上記2項目の「A,B,C]の組み合わせにより、総合評価を付ける。)】
A
AA
B
AB、BA、BB
C
AC、CA、BC、CB、CC
【実施方法(教室、面接官、自習監督など)】
・あらかじめ、スピーチを実施する旨を伝え、原稿作成をするよう指示しておいた。
・各教科担当が授業時に、教室で行った。
・各教科担当が各グループを教壇に立たせて原稿を見ずにスピーチをさせた。
・ディスコースマーカーを活用し、発表を論理的に組み立てるよう指導した。
・準備段階から発表内容を把握し、発表後に与える質問を準備した。
【実際のスピーチテスト問題】
Cultural differences and similarities between Ireland and Japan
・上記のテーマについて、原稿を作成し、1グループ4人が教壇でスピーチを行った。
【成果】
・原稿作成時、生徒はグループで協力して情報を集め、意見やアイディアを出し合い、英語で熱心に原稿を
作成しようとする姿勢が見られた。
・発表時には、ジェスチャーの工夫やパワーポイントで写真を見せるなど、相手に分かりやすく伝えようと
する姿勢が1学期より更に向上した。
・生徒は、学習した様々な表現を活用して、いきいきと発表をし、自分の知っている英語でなんとか質問に
答えようとしていた。
【課題】
・発表前に十分な練習時間が確保できなかったため、単語の発音やアクセントに誤りがあるグループもあっ
た。
・原稿を暗記させて実施したため、発表するのに精一杯でアイコンタクトをできていない生徒が少数いた。
・かなり難しい単語や表現を使ったグループもあったため、いかに聞く側に分かりやすくリフレーズしてい
けるかが課題である。
【実際の生徒の発話】
St. Patrick’s Day is famous as the Irish festival. Do you know religions of Japan and Ireland? In
fact, festivals and religions are related to each other. So, we’ll talk about Ireland’s festival. Irish
festivals are held based on the teaching of Christ. In contrast, Japanese festivals are held based on
the teaching of Buddhism. In this way, there is a difference between these two countries. But there
is also a common point. To wear similar clothes in the festivals is a similarity between Japan and
Ireland. According to a textbook, Irish people wear green clothes. Japanese wear Yukata for
festivals. It is known as the traditional clothes in Japan. It is true that people in both countries
enjoy the festivals by wearing special costumes. In this way, the festivals of two countries are
different based on the religions. So, we can enjoy many festivals in both countries.
The topic we will introduce is music. Look at these pictures. This is a Japanese traditional musical
instrument, “Biwa.” It was handed down from China. How about this? This is Irish bouzouki. We
are going to talk about a difference and a similarity between Japanese music and Irish music. In
Japan, we use musical scores to play music. On the other hand, according to the Internet, Irish
music doesn’t have musical scores. So this is the difference between these two countries. But, both
Irish and Japanese music are made by pentatonic scale. That’s why Irish music has been popular
among Japanese people. In this way, Irish music and Japanese music have some points in common.
Listening to Irish music is good chance to know Irish culture. Let’s listen to Irish music!
(3)学習到達目標達成状況の把握
英語4技能の「CAN-DOリスト」の形での学習到達目標ごとに、以下のような表を活用して達成状況を把
握している。まず、年度の初めに学年としての目標値を設定し、2回のテストの達成状況を検証する。
表中のA、B、Cは上記の評価基準と対応している。
【話すこと】
学年
(次)
1
学習到達
目標
日常的な話題
について、英
語の質問に簡
単な英語で答
えることがで
きる。
達成状況
科目
A
8.5 %
:
B
66.8 %
:
C
24.7 %
:
教科書・
単元
評価方法
Lesson 2
プレゼン
テーショ
ンと質疑
応答
コミュニ
ケーショ
ン英語Ⅰ
Lesson 8
プレゼン
テーショ
ンと質疑
応答
具体
授業で
実施
授業で
実施
達成状況
A
6.3 %
:
B
63.7 %
:
C
30.0 %
:
A
10.7 %
:
B
69.9 %
:
C
19.4 %
:
6.成果並びに課題とその改善に向けた方策
(1)成果について
・単元構想にアクティブ・ラーニングの視点からの学習・指導方法を取り入れることで、生徒が主体とな
る言語活動を計画的に実施することができた。
・11月にかけて行われた公開研究授業には、各校における授業改善を推進するため、県立高校及び県立中
等教育学校から各課程1名の英語教員が参加した。
・11月の教科別教育課程説明会では、研究担当者による研究の発表を通じて、本研究の成果を各校へ周知
した。具体としては、港北高等学校におけるアクティブ・ラーニングを効果的に取り入れた授業の取組
実践、相模原中等教育学校の「CAN-DOリスト」に基づいた指導と評価の取組実践についてである。
(2)課題について
・アクティブ・ラーニングの視点からの学習・指導方法については、十分に理解が深まっているとは言え
ないので、更に共通理解を図っていく必要がある。
・英語4技能の「CAN-DOリスト」の形での学習到達目標について、生徒の達成状況を踏まえ、次の指導や
評価につなげるための方法を更に検討する必要がある。
(3)改善に向けた方策
・アクティブ・ラーニングの視点を踏まえた授業づくりについて、効果的な事例を教科で共有し、実践を
重ねることによって授業改善を進めていくようにする。
・目標の設定、達成状況を把握するためのスピーキングテスト・ライティングテストの実施、テスト結
果の分析、目標の見直しというサイクルを確立し、教科全体で取り組むことが重要である。
家
1
庭
研究のテーマとねらい
(1)研究のテーマ
アクティブ・ラーニングの視点を効果的に取り入れた授業実践の評価と分析及び改善
(2)研究のねらい
高等学校家庭科では、生活を主体的に営む力と実践的な態度を育てること、実際の生活において課題
を発見し解決できる能力を育てることなどを目ざしている。
本研究推進委員会では、効果的なアクティブ・ラーニングの視点を踏まえた指導方法の取り入れ方
や展開の方法を踏まえて単元の指導計画を作成し、授業展開を行うことで、生徒の学び合う力、主体
的に考え学ぶ力を育むことができる組織的な授業改善をねらいとした。
2 研究で取り組んできた内容
本研究推進委員会では、平成25年度には、「組織的な授業改善の推進―学校の課題を踏まえた校内授業
研究テーマに基づく授業づくり」をテーマとし、研究授業実施校の学校目標や生徒に身に付けさせたい力
の具体を念頭に置きながら、共通教科「家庭」及び専門教科「家庭」における単元全体を通した効果的な
学習・指導方法について検討した。また、平成26年度には「組織的な授業改善の推進-単元の授業づくり
に基づく授業実践の評価と分析及び改善に向けての方策」をテーマとし、研究授業実施校の生徒に身に付
けさせたい力を踏まえた単元の授業づくりから、授業実践の振り返りを分析することで改善の方法を検討
した。
平成27年度の研究は、「組織的な授業改善の推進~アクティブ・ラーニングの視点を効果的に取り入れ
た単元の授業づくり~」というテーマに沿って授業計画の作成、展開を検討し、授業実践を行った。その
後に評価・分析を行い今後のアクティブ・ラーニングの効果的な取り入れ方について検討した。
3 研究のねらいを達成するための手立て
本研究では、研究授業実施校の校内授業研究テーマを踏まえ、研究のねらいを達成するための手立てと
して、共通教科「家庭」においては、次の2点に取り組むこととした。
なお、研究授業実施校の校内授業研究テーマは、「基礎学力を活用した課題解決型の授業づくり」であ
る。
1点目は、衣生活の単元全体を通して、「制服を作る」というテーマを掲げ、アクティブ・ラーニング
の視点を踏まえた指導方法を効果的に取り入れた授業を展開することとした。衣服の材料や管理などの学
習についても制服というテーマを通して生徒の身近な問題として捉えさせ、考えを深めさせることができ
ると考え、計画を立てた。
2点目は、被服実習で「裂き編み」を行い、リサイクルを体験しながら環境問題等を自ら課題解決しよ
うとする態度を養うこととした。古いTシャツを使って、別の新しい物に作り替える体験は、自身に何が
できるか、どう取り組んでいけばよいかを考えさせる上で有効であると考えた。
また、専門教科「家庭」においては、次の2点に取り組むこととした。
なお、研究授業実施校の校内授業研究テーマは、「生徒が主体的に取り組める授業」「思考力・判断
力・表現力を育む授業」である。
1点目は、生徒が授業に主体的に取り組むための工夫として、地域で生産されている「瀬谷のジャン
ボ落花生」を題材とした。生徒自身が調理法を調べ発表し、実践するという授業形態により、生徒自ら
が積極的に授業に参加し主体的に行動できるように考えた。
2点目は、試作した献立を試食し、改善点を話し合い、意見を出し合ってより良いものへと高めるた
めにアクティブ・ラーニングの視点を踏まえた指導方法を取り入れた。自分達だけでは気付かない他者
の意見をどう取り入れ、どう生かしていくか、アクティブ・ラーニングの視点を踏まえた指導方法を通
して実践できるよう計画を立てた。
4 単元の指導計画及び重点を置いた授業展開例
実践事例1 共通教科「家庭」(「家庭総合」)
(1)研究実施校:神奈川県立希望ケ丘高等学校(定時制)
(2)学校の課題:基礎学力の定着、基礎学力を活用した「自分で考える力」の育成
(3)校内授業研究テーマ
「基礎学力を活用した課題解決型の授業づくり」
(4)科目:「家庭総合」 学年:1年
(5)単元名:(4)生活の科学と環境
イ 衣生活の科学と文化 [総時間数20時間]
(ア)人の一生と被服
(イ)衣生活の自立と管理
(ウ)衣生活の文化と製作
(エ)衣生活と環境
《4時間》
《4時間》
《8時間》
《4時間》
(6)単元のねらい
着装、衣服材料、衣服管理などについて科学的に理解させ、衣生活の文化に関心を持たせるととも
に、必要な知識と技術を習得して、安全と環境に配慮し、主体的に衣生活を営むことができるように
する。
(7)単元を通して身に付けさせたい力
自らが、「制服をつくる」というテーマを通して、衣服材料、衣服管理、環境問題などについて学
習し、考えを深める力。 また、衣服を購入する際に、その衣服の「背景」を見通す力。
(8)単元の評価規準
関心・意欲・態度
思考・判断・表現
技能
知識・理解
着装、被服材料、被服 着装、被服材料、被服の 主体的に衣生活を営む 着装、被服材料、被服の
の構成、被服製作、被 構成、被服管理などにつ た め に 必 要 な 被 服 製 構成、被服製作、被服管
服管理などの衣生活の いて課題を見いだし、そ 作、被服計画、被服整 理などについて、科学的
科学と文化に関心を持 の解決を目ざして思考を 理などの技術を身に付 に理解し、安全と環境に
ち、意欲を持って学習 深め、適切に判断し、表 けている。
配慮した衣生活を主体的
活 動 に 取 り 組 ん で い 現している。
に営むために必要な知識
る。
を身に付けている。
(9)単元の指導と評価の計画
a:関心・意欲・態度 b:思考・判断・表現 c:技能 d:知識・理解
評価の観点
時
学習内容
学習活動
ねらい
評価規準
評価方法
a
b
c
d
衣 生 活 と ・衣生活に関する ・ 衣 生 活 に 関
◯ 「 エ シ カ ル 消 ワークシー
環境①
意識調査を行う
する意識調
費」「エシカル ト
とともに、単元
査 を 通 し
ファッション」 定期テスト
の目標(制服を
て、興味・
について、理解
つくる)を確認
関 心 を 持
している。
する。
つ。
・ 「 エ シ カ ル 消 ・衣服を「買
費」「エシカル
う 」 「 着
ファッション」
る」際に、
について知る。
「エシカル
消費」など
1
の新しい視
・
点を持つ。
3
・ジーンズ工場で ・ 身 近 な 「 消
◯
自らの消費の背 視聴記録
の労働に関する
費」という
景について、社 ワ ー ク シ ー
映 像 ( 2 分 17
活動におい
会貢献や環境保 ト
秒)を視聴し、
て、自分の
全などの観点か
衣服が作られる
消費行動が
ら考えている。
背景を知る。
どのように
環境保全や
社会貢献に
つながるか
を考える。
衣 生 活 の ・衣服の素材につ ・ 繊 維 に よ っ
◯ 燃焼実験の結果 ワ ー ク シ ー
自立と管
いて知る。
て燃え方が
から、各繊維の ト
4 理①
・「燃焼実験」を
異なること
特徴を理解して 定期テスト
・
行い繊維の特徴
を 理 解 す
いる。
6
を知る。
る。
・衣服に用いられ
・衣服の性能
◯
衣服に用いられ
ワークシー
る各種加工を知
る。
・制服に適する繊
維や機能を検討
する。
衣生活の
自立と管
理②
8
・
9
・
10
・皮膚や外部から
汚れが付着する
ことを知り、毎
日の手入れが必
要であることを
知る。
・日本の気候を考
えた衣服の保管
について知る。
・衣服に関わる表
示の情報を整理
する。
・洗濯によって、
汚れが落ちるメ
カニズムを理解
するとともに、
洗濯条件によっ
て洗浄力が変化
することを知
る。
衣生活と
環境②
本時
12
・
14
・衣服の使い捨て
や使用期間の短
期化に伴う繊維
製品の廃棄量を
知り、衣服を資
源として見直
す。
・環境に配慮した
衣生活を考え
る。
・学習を踏まえ、
制服の着方や行
く末を考える。
人の一生
と被服
16
・「希定 * 制 服を
作ろう」
(プレゼンテー
ションの準備)
*希望ケ丘高校定時
制のこと
人の一生
と被服
18
・課題の発表
(制服案のプレ
ゼンテーション
を行う)
を向上させ
ている加工
を 理 解 す
る。
・制服に適す
る繊維につ
い て 考 え
る。
・見えない汚
れについて
認識し、衣
服を管理す
るための方
法を理解す
る。
る各種加工につ
いて、理解して
いる。
ト
定期テスト
素材や加工の特
徴から望ましい
制服を考えてい
る。
毎日の手入れ、
保管について、
適切な方法を理
解している。
ワークシー
ト
カビ・黄ばみ・
虫害を予防する
ための方法を理
解している。
衣服の表示の情
報を整理でき
る。
ワークシー
ト
洗濯のメカニズ
ムや衣服の機能
を回復させるた
めに手入れが必
要であることを
理解している。
ワークシー
ト
定期テスト
衣服を資源と認
識するととも
に、自らの衣服
の行く末につい
て考えようとし
ている。
ワークシー
ト
定期テスト
季節に応じた衣
服の着方を理解
することができ
る。
ワークシー
ト
定期テスト
◯
環境に配慮した
着方や廃棄方法
を考えている。
ワークシー
ト
◯
「素材」「加
工」「管理」
「環境」「着
方」を踏まえ、
制服について考
え、工夫してい
る。
「素材」「加
工」「管理」
「環境」「着
方」を踏まえ、
制服についてま
とめたり、発表
したりしてい
る。
ワークシー
ト
◯
◯
◯
・表示から自
分の衣服の
管理ができ
る。
・毎日の洗濯
によって、
低下した衣
服の機能を
回復させ、
きれいに、
長く使用で
きることを
理解する。
・持続可能な
社会を構築
するために
衣服の行く
末について
考える。
・着方によっ
て、着心地
の良さが変
化すること
を知る。
・環境に配慮
した衣生活
について考
える。
・制服作りを
通して、こ
れまでの学
習を活用し
て望ましい
制服を考え
る。
・考えた制服
についてま
とめ、発表
できる。
◯
◯
◯
◯
○
ワークシー
ト
定期テスト
ワークシー
ト
発表
振り返り
・発表の振り返り
衣生活の
文化と製
作①
・かぎ針編みの基
本を知る。
20
2
・
5
7
衣生活の
文化と製
作②
衣生活の
文化と製
作③
・裂き編みの準備
(Tシャツを裂
く)
・裂き編み
・持続可能な ◯
社会を構築
するための
衣生活につ
いて関心を
高める。
被服実習
・Tシャツを ○
再生利用し
作品を作る
ことによっ
て、着用後
の衣服につ
いての意識
を高めると
ともに、編
み物の技術
を身に付け
る。
◯
これからの衣生
活を主体的に営
もうとしてい
る。
ワークシー
ト
着用後の衣服の
活用に関心を持
って取り組もう
としている。
編み物(かぎ針
編み)を用いて
コースターの製
作ができる。
観察
作品
11
・
13
・
15
・
17
・
19
(10)取組事例
①実施日:平成27年11月5日(木)
授業担当者:久保田 正芳 教諭
②授業クラス:1年5組 20名
③本時のねらい:持続可能な社会を構築するために衣服の行く末について考える。
④本時の指導内容:
授業展開
◯学習内容
・学習活動
導入
(5分)
◯本時の学習内容の確認
・単元の初めにとったアンケートの結果(環
境に関する項目)を確認する。
展開
(35分)
展開①20分
◯衣服の行く末を考える。
・生産〜消費・着用後に廃棄されるまでどの
ようなことができるかを考える。
自分ができること:黄色の付せん
自治体や企業ができること:
ピンクの付せん
・グループ(同じテーブル)で意見を交わ
す。
・教師から提示された江戸時代の循環型の衣
生活を参考に、さらに、ワークシートに考
え を 記 入 す
る。
・数名が発表す
る。
展開②15分
◯日本のリサイ
クルの現状を
知る。
・日本のリサイ
指導上の留意点
ワークシート配付
・本時は、衣生活と環境につ
いて学習することを明確に
し、身近な衣服が環境問題
につながっているというこ
とを認識してもらいたいこ
とを伝える。
・スムーズに考えられるよう
に、ワークシートの書き方
の例を示す。(実物投影)
・廃棄に至るまでの道筋に矢
印を引かせて明確にするよ
う伝える。
・ ま ずは 、 個人 で考 え るよ
う促す。
・現代に昔の知恵を取り入れ
ることはできないかと伝
え、考えを深められるよう
にする。
・考えたことを共有する。
(ワークシートの実物投影)
・自治体の取組を紹介する。
・衣料品のリサイクル率は、
なぜ他品目のリサイクル率
より著しく低いのかを考え
るよう伝える。
評価規準
【評価の観点】
(評価方法)
まとめ
(5分)
クル率を知る。
・衣服は有益な資源であることを知る。
◯自分のこれからの衣生活について考える。
・「持続可能な社会の構築」
という観点で、自分に何が
できるかを考えるように伝
える。
持続可能な社会
の構築という観
点で、自分に何
ができるかを考
え、まとめてい
る。
ワークシート
【思考・判断・
表現】
⑤本時の評価規準とAと判断される具体的な例とCと評価した生徒への手立ての例
【思考・判断・表現】
学習活動における具体 持続可能な社会の構築という観点で、自分に何ができるかを考え、まとめてい
の評価規準
る。
「十分満足できると判 これまでの学習を振り返り、現代の課題を捉え、改善策を考えている。また、
断される状況(A)」 これからの自分の行動について考え、記述している。
と判断される具体的な
例
「努力を要すると判断 身近な取組から自分に何ができるのかを考えるよう支援する。
される状況(C)」と
評価した生徒への手立
て
<本時のワークシート>
実践事例2 専門教科「家庭」(「フードデザイン」)
(1)研究実施校:神奈川県立瀬谷高等学校(全日制)
(2)学校の課題:与えられた課題に対しては一生懸命取り組むことができるが、自主的に応用、発展さ
せた学習に取り組む実践力に結び付けることに課題がある。
(3)実施校における研究テーマ:
「生徒が主体的に取り組める授業」「思考力・判断力・表現力を育む授業」
(4)科目:フードデザイン 学年:3年選択
(5)単元名:(4)食育と食育推進活動
イ 家庭や地域における食育推進活動[総時間数10時間]
(6)単元のねらい
家庭や学校及び地域における食生活上の課題を把握し、それらの課題を解決するために、栄養、食
品、調理の学習を生かして、食育に関する実践活動に積極的に取り組むことができるようにする。
(7)単元を通して身に付けさせたい力
本単元は1学期の学習の発展的・実践的内容に当たる。実践校は平成25年度から地域等連携教育の
推進校となっていることを踏まえ、これまでの食生活に関する基礎的な知識・技能に加えて、地域に
おける食材について興味・関心を持ち、地域の食材を活用した食育推進活動の実践と独自の調理法を
主体的に考え、実践する力を身に付けさせる。
(8)単元の評価規準
関心・意欲・態度
思考・判断・表現
技能
知識・理解
食育の推進に向けて、意 食育の推進についての課 栄養、食品、調理に関す 栄養、食品、調理に関す
欲を持って学習活動に取 題を見いだし、その解決 る 技 術 を 身 に 付 け て い る 知 識 を 身 に 付 け て い
り組んでいる。
を目ざして思考を深め、 る。
る。
適切に判断し、表現して
いる。
(9)単元の指導と評価の計画
a:関心・意欲・態度 b:思考・判断・表現 c:技能 d:知識・理解
評価の観点
時
学習内容
学習活動
ねらい
評価規準
評価方法
a b c d
地域の食
材調べ
1
地域の食
材調べ
2
地域の食
材調べ
3
・
4
○瀬谷のジャン
ボ落花生につ
いて
・1学期に扱っ
た食事の意義
と役割の地域
の食文化につ
いて再度触
れ、瀬谷区に
はジャンボ落
花生があるこ
とを確認す
る。
○落花生の調理
法調べ
・夏季休業中の
課題として、
落花生の調理
法を調べ、ま
とめてくる。
○落花生の調理
法についての
報告会とまと
め
・個人で調べて
きた画用紙を
基に、模造紙
へ調理法等を
まとめる。
・まとめた模造
紙を瀬谷高祭
で掲示する。
・本校が所在
する身近な
地域である
瀬谷区の食
材に関心を
持つ。
・瀬谷のジャ
ンボ落花生
を地域の食
材として本
講座受講者
以外の学内
の生徒や地
域の方々へ
の発信を目
ざして、一
般的な落花
生の調理法
を知る。
・瀬谷のジャ
ンボ落花生
を地域の食
材として本
講座受講者
以外の学内
の生徒や地
域の方々へ
の発信を目
ざして、一
般的な落花
生の調理法
を知る。
○
身近な地域の食
材に関心を持っ
て主体的に学ぼ
うとしている。
観察
○
落花生について
写真若しくはイ
ラストを入れ、
分かりやすく調
理法を調べまと
めている。
個人で調べて
きたことをま
とめた画用紙
○
落花生を使った
調理法につい
て、班で協力し
て分かりやすく
まとめている。
観察
ワークシート
班ごとにまと
めた模造紙
地域の食
材を活用
した調理
実習Ⅰ
○瀬谷のジャン
ボ落花生につ
いての講義
・タブレットを
用いてジャン
ボ落花生につ
いて学ぶ。
地域の食
材を活用
した調理
実習Ⅰ
○瀬谷のジャン
ボ落花生を使
った塩ゆで調
理実習
・瀬谷のジャン
ボ落花生の塩
ゆでを行い、
試食する。
・班ごとに担当
する分野(ご
飯、炒め物、
和え物、おや
つ)と次回の
授業でどの調
理を行うかを
決め、食材の
発注表と調理
の手順の確
認、役割分担
を行う。
地域の食
材を活用
した調理
実習Ⅱ
○試作会
・前時で決めた
調理法で班毎
に調理を行
い、タブレッ
トを用いて記
録する。
・自分の班の試
食をする。
5
6
7
・瀬谷のジャ
ンボ落花生
を中心に落
花生につい
ての講義を
通して基本
的な知識・
理解を深め
る。
・身近な地域
の食材だか
らこそ食べ
られる生の
落花生の塩
ゆ で を 実
習 、 試 食
し、大きさ
や味、乾燥
落花生との
違い等を知
る。
・試食した感
想を基に、
地域の食材
(瀬谷のジ
ャンボ落花
生)を活か
した調理法
を自分たち
が調べてき
た課題の中
から選び計
画できる。
・計画に基づ
いて調理実
習 が で き
る。
○
瀬谷のジャンボ
落花生の特徴に
ついて理解して
いる。
観察
ワークシート
定期試験
○
実習に主体的に
参加し、試食し
て気付いたこと
をまとめ、地域
の食材(瀬谷の
ジャンボ落花
生)を生かした
調理法について
考えている。
観察
ワークシート
○
実習に主体的に
参加し、試食し
て気付いたこと
をまとめ、地域
の食材(瀬谷の
ジャンボ落花
生)を生かした
調理法について
考えている。
落花生を使った
調理ができる。
観察
ワークシート
実習・試食を通
して気付いたこ
とをまとめ、班
毎に意見を共有
し、地域の食材
(瀬谷のジャン
ボ落花生)を生
かした改善案を
考えている。
観察
ワークシート
家庭や地域にお
ける食育推進活
動を実践しよう
としている。
改善した落花生
を使った調理法
をまとめてい
る。
落花生を使った
調理ができる。
観察
ワークシート
○
8
9
・
10
地域の食
材を活用
した調理
実習Ⅱ
本時
・試食と振り返
り、改善点を
考え、まとめ
る。
地域の食
材を活用
した調理
実習Ⅲ
○本番
・試作会での振
り返りを基に
調理を行い、
自分たちの独
自の調理法と
してまとめ
る。
・実習や試食
を通して気
付いたこと
を基に地域
の食材(瀬
谷のジャン
ボ落花生)
を生かした
調理法を考
える。
・瀬谷のジャ
ンボ落花生
を使った独
自の調理法
としてまと
め地域に提
案できる。
○
○
○
○
(10)取組事例
①実施日:平成27年10月2日(金)
授業担当者:菊地 いずみ 教諭
②授業クラス:3年選択「フードデザイン」 15名
③本時のねらい:実習や試食を通して気付いたことを基に、地域の食材(瀬谷のジャンボ落花生)を
生かした調理法を考える。
④本時の指導内容:
評価規準
○ 学習内容
授業展開
指導上の留意点
【評価の観点】
・ 学習活動
(評価方法)
導入
○前時の振り返りと本時の学習内容の確認
・前時の調理実習の振
(5分)
・本時は前時の調理実習の振り返りを踏まえて、
り返りを基に課題を
地域の食材(瀬谷のジャンボ落花生)を生かし
捉えることを促す。
た改善案を見出し、独自の調理法としての提案
その際、本講座の最
に向けて考えることを知る。
初の授業で学習した
調理とおいしさにつ
※生徒たちは前時より個人のワークシートを配付
いて復習する。
され、前回の4人ずつ(1班のみ3人)の調理 ・本時は調理実習の振
実習のグループで座っている。
り返りだけではな
く、地域の食材(瀬
谷のジャンボ落花
生)を生かした改善
案を見出し、独自の
調理法としての提案
に向けて考えること
を説明する。
展開
[展開①](10分)
・実習・試食を通
(35分)
○前時の調理実習の振り返り
・振り返りのポイント
して気付いたこ
(個人5分)
は「地域の食材(瀬
とをまとめ、班
・前時の調理実習で気付いたことを、ワークシー
谷のジャンボ落花
毎に意見を共有
トと黄色の付せんに記入する。
生)を生かせている
し、地域の食材
か」であることを伝
(瀬谷のジャン
える。
ボ落花生)を生
・記入中発問等はせ
かした改善案を
ず、振り返りに集中
考え、まとめて
(グループ5分)
させる。
いる。
・班ごとに黄色の
・グループで検討して 【思考・判断・表
付せんを拡大版
いるが、最初に個人 現】
のワークシート
で考えさせているの (個人用ワークシ
へ出し合い、意
で、少数の意見も大 ート、グループ用
見を共有する。
切にするよう促す。 ワークシート)
話合いの中で新たな気付きが出た場合は気付い
た者が再度、黄色の付せんに記入し、貼る。
・黄色の付せんを回収
→水色の付せんを
(他の班の分の試食7分)
配付
・他の班の試食をし、気付いたことがあれば水色 ・1人1回は必ず気付
の付せんに記入する。
いたことを付せんに
(他の班への改善の提案3分)
記入するように促
・該当の班の試食用台紙へ水色の付せんを貼りに
す。
いく。
・水色の付せんを回収
[展開②](15分)
○地域の食材(瀬谷のジャンボ落花生)を生かし
た改善案を考える。
(個人5分)
・これまでの学習事項に加えて、実習・試食を通
して気付いた付せんの記入内容を踏まえて、地
域の食材(瀬谷のジャンボ落花生)を生かした
改善案を考え、ピンク色の付せんに記入する。
(グループ10分)
・班ごとにピンク色の付せんを拡大版のワークシ
ートへ出し合い、意見を共有する。気付いた者
が再度、ピンク色の付せんに記入し、貼る。最
終的な修正は赤ペンで直接ワークシートに記入
する。
・食材の発注に変更が出た場合は、食材の発注表
・知識を実践に生かす
思考力・判断力を育
むことを目標に、改
善案を考える際に
は、どうしてそう改
善しようと考えたの
か理由も必ず書くよ
うに促す。
まとめ
(5分)
片付け
(5分)
に赤ペンで、訂正した数、新たに追加するもの
を記入する。
○本時の振り返り
・本時の授業を通して気付いたこと、考えたこと
を記入し、次回の調理実習に必要なもの、身支
度等を確認する。
○試食に使った食器類の片付け
・試食に使った食器の洗浄、テーブル拭き、流
し・調理台等の清掃を行う。
・ワークシートに本時
のまとめを記入する
ように促す。
・食事室・調理室両方
の掃除とゴミの分別
を徹底させる。
⑤本時の評価規準とAと判断される具体的な例とCと評価した生徒への手立ての例
【思考・判断・表現】
学習活動における具体の評価規 実習・試食を通して気付いたことをまとめ、班ごとに意見を共有し、地
準
域の食材(瀬谷のジャンボ落花生)を生かした改善案を考え、まとめて
いる。
「十分満足できると判断される 前時の調理実習の振り返りを基に、調理法における課題を捉えていると
状況(A)」と判断される具体 ともに、地域の食材(瀬谷のジャンボ落花生)を生かした改善案につい
的な例
て記述している。
「努力を要すると判断される状 他の班員や他の班の意見をヒントに、地域の食材(瀬谷のジャンボ落花
況(C)」と評価した生徒への 生)を生かした改善案について考えられるように支援する。
手立て
<本時のワークシート>
5
単元の授業づくりに基づく授業実践の評価と分析
単元の授業づくりに基づく授業実践の評価と分析を行ったところ、次の点が挙げられた。
実践事例1 共通教科「家庭」(「家庭総合」)
◯ 「制服を作る」という最終課題に向けて単元を構築したことにより、各学習内容のつながりが明確
になった。また、被服実習で裂き編みを行い、リサイクルを実践的・体験的に学習していることで、
持続可能な社会の構築に向けて意識がより高まったと思われる。
○ 本時においては、単元の冒頭に実施したアンケート結果を示したことで、本時で扱う問題を自分の
こととして捉えやすくなった。さらに、導入部で本時のゴールを示し、学習目標を明確にしたことで、
学習意欲を喚起できたと思われる。
○ ICT機器を活用することによって、学習内容に対し興味・関心を持たせることができた。
実践事例2 専門教科「家庭」(「フードデザイン」)
○ 家庭や地域における食育推進活動の実践として、高校の所在している瀬谷区の地域の食材を題材にし、
地元の農家の方と連携することで、実際の食材を用いた講義と実習を計画的に組み合わせることがで
き、基礎事項の定着が図れた。夏休みの課題で、落花生の調理法に関して調べたことで、生徒自身の
興味・関心の向上が見られた。調べてきた調理法は授業内の報告会に加えて、模造紙にまとめて文化
祭での掲示発表を行うことで学びの深化を図ることができ、校内外への地域の食材の魅力発信に向け
ての第一歩としても効果的であったと考える。
○ 各自が調べてきた調理法の中から、班で瀬谷のジャンボ落花生の特徴を生かした調理法を選ぶ→試
作を通して自ら課題を見付ける→改善に向けて生徒同士で意見を出し合い、再考した調理法を実習に
よって具体化する→校内外への独自の調理法の提案を発信するという単元計画は、「地域の食材を生
かした調理法を考える」という目標に基づいた授業づくりにつながった。また、その過程で、生徒が
主体的に調理をした経験から課題を見出し、改善に向けてさらに考えを深め、生徒同士が協働して工
夫していくというアクティブ・ラーニングの視点を踏まえた指導方法を効果的に取り入れることがで
きた。また、①基礎実習→試作会→本番という段階を踏んだ実習を実施した点、②付せんの色やマー
カーの色を変えて複数回の生徒同士の意見交換を行った点、③他の班への改善策の提案に、付せんや
試食用台紙をアクティブ・ラーニングの補助として使用した点が効果的であったと考える。
6
成果並びに課題とその改善に向けた方策
実践事例 1 共通教科「家庭」(「家庭総合」)
○ 成果としては、事前に実施したアンケート結果を導入として活用した上で本時の目標を示したこと
により、生徒が身近なテーマとして捉え、授業に取り組みやすくなったこと、ICT を積極的に活用し、
短時間の動画再生や資料提示等をしたことで、生徒の興味関心を喚起するとともに目標に向けてより
具体的な考え方や答えを導く手助けになったことが挙げられる。
○ 課題としては、自分の意見を出せない生徒がおり、グループでの話合いの時間を設けたが、話合い
ができていないグループがあったこと、付せんの使い方が不慣れであったこと、本時の目標である
「これからの衣生活の取組」について発表をさせることができなかったことが挙げられる。
○ 改善への方策としては、生徒からより多くの意見を引き出すために、資料提示後、問題点に気付か
せる時間を十分に取るとともに、どの時点で何を考え、何をするべきなのかを明確にすること、各グ
ループには、発表が苦手な生徒と文章にすることが苦手な生徒が混在するので、自分の意見はプリン
トに記入し、グループの意見は付せんを使う等、記入方法を分けることが考えられる。また、話合い
ができなかったグループに対しては、話し合う方法を具体的に指示し、意見をまとめる時間を十分に
取ることも必要と考える。
実践事例2 専門教科「家庭」(「フードデザイン」)
○ 成果としては、地域の食材である「瀬谷のジャンボ落花生」を題材にし、その特徴を生かした独自
の調理法を考え、地域へ発信するという授業計画の中で、地元の生産者と連携し、地域に密着した食
育推進活動ができたことが挙げられる。また、自分達で考えた調理法で調理し、その直後に試食をし
ながら改善案を考えるという授業展開は、生徒の「改善」に対する意識が高まり、主体的にグループ
活動に取り組むのに効果的であった。さらに他の班からアドバイスをもらうことで、自分達では気付
くことができなかった点にまで思考が広がり、食材の特徴を生かした調理法を考えることへとつなが
った。
○ 今回の実践では、特段、課題は挙げられなかったが、グループ活動をするための指導の工夫として
は、次の点が考えられる。①3色の付せんを活用し、用途別に使い分ける。②「改善案」を考える際
の参考となるように実習の様子をタブレットで記録させる。③自分の考え、グループの考え、他の斑
へのアドバイスなど、細かく作業時間を区切りテンポよく進行する。④本時の目標を何度も確認し、
話合いの中で生徒に常に目標を意識させるなどである。これらの工夫が効果的に働き、「改善案」を
考えるためのグループ活動での活発な意見交換につながったと考える。
情
報
1.研究のテーマとねらい
(1)研究のテーマ
全体のテーマ門:組織的な授業改善の推進~アクティブ・ラーニングを効果的に取り入れた単元の授業づくり~
情報部門テーマ:共通教科情報における問題解決型の協働学習に関する研究~協働学習における評価を中心に~
(2)研究のねらい
本研究は、共通教科情報において、「問題解決型の協働学習」を行い、主体的に学習に取り組む意欲や態度、思考
力・判断力・表現力をルーブリックにより評価する方法を、昨年度に引き続き研究のねらいの一つとした。
また、平成25年度に国が示した「世界最先端IT国家創造宣言」では「初等・中等教育段階におけるプログラミングに
関する教育」を充実させることが記述され、平成34年度入学生より学年進行で実施される、次期高等学校学習指導要領
の共通教科情報では、プログラミングを学習項目に位置付けることが中教審などから示されていることから、本研究で
は「社会と情報」と「情報の科学」の両科目において、問題解決の方法を学習する項目の一つとして、プログラミング
学習を取り入れ、単元計画作成を通して、実践研究を行った。
2.研究で取り組んできた内容
本研究では、神奈川県高等学校教育課程研究会・研究推進委員会(情報部門)委員(以下「推進委員」という)の県
立高校の情報科の教員7名との研究協議・授業実践を通して、次の2点を研究主題として取り組むこととした。
・共通教科情報における協働学習を通して育成した学習意欲や思考力・判断力・表現力の評価方法の工夫。
・共通教科情報の単元計画に協働学習を取り入れた、題材の工夫。
3.研究のねらいを実現するための手立て
上記の2つの研究主題に対し、次の①から③を本研究のねらいを実現するための手立てとし、授業改善のポイントと
した。
本研究における授業改善のポイント(手立て)
① ワークシートや生徒同士が互いに点検し合うチェックシートを、ルーブリックを活用して評価することで、協働
学習における個人の評価を行う。(茅ケ崎北陵)
② 「情報の科学」の単元「問題解決とコンピュータの活用」において、プログラミング(処理手順の自動化)を学
習する際の題材について検証し、作成したプログラムを互いに点検し合うことで、評価・改善の機会を設け、理
解を深めることをねらいとしたワークシートを作成する。(津久井)
③ 「社会と情報」の単元「情報セキュリティの確保」において、問題の解法の手順を表現する力を身に付けさせ、
暗号化の仕組みを科学的に理解させる。(麻生総合)
4.単元の指導計画及び重点を置いた授業展開例
4.1 「問題解決の手法を学ぼう」
(1)研究実施校
:神奈川県立茅ケ崎北陵高等学校
(2)学校の課題
:基礎的・基本的な知識・技能だけではなく、思考力・判断力・表現力の育成
(3)実施校における研究テーマ :問題解決型協働学習における思考力・判断力・表現力の育成及びその評価
(4)教科・科目
: 共通教科情報・情報の科学
(5)単元名
: 問題解決の基本的な考え方
(6)単元のねらい: 問題の発見、明確化、分析及び解決の方法を習得させ、問題解決の場面でこれらの方法を実施す
ることの重要性を考えさせる。また、問題解決策の選択後、実行・評価まで行うことにより、
RPDCAサイクルの重要性を理解させる。
(7)単元で身に付けさせたい力:問題の発見から解決までの各段階における問題解決の考え方、手法や手段について
理解し、主体的に問題解決に取り組むことができる力。
(8)単元の評価規準:
関心・意欲・態度
思考・判断・表現
技能
・問題解決に関心を持ち、
問題解決の目的や状況に応
じて問題解決の方法を選択
し、解決を図ろうとしてい
る。
・問題解決の手法により自
分の考えが深まり、よりよ
い解決策の考案に結び付い
ている。
・問題解決の各段階におけ
る検討の記録に基づいて問
題解決を振り返り評価して
いる。
知識・理解
・問題解決の各段階におけ ・問題解決の考え方や方法
る解決の方法を身に付けて や手段について理解してい
おり、問題解決の目的や状 る。
況に応じて活用することが
できる。
(9)単元の指導と評価の計画:
a:関心・意欲・態度、b:思考・判断・表現、c:技能、d:知識・理解
◎:重視して指導・評価した観点、○:指導・評価した観点
【持】:個人の考えを持つ活動、【広】:考えを広げる活動、【深】:考えを深める活動
時
1
2
3
4
5
6
7
学習内容
問題解決とその手法
問題解決の一連の流れと解決のため
の手法を学ぶ。【持】
データの分析技法
データ分析の手法と数値の特徴につ
いて学ぶ。【持】
ねらい
評価の観点
a b c d
問題解決の流れ及び解決のための手法
を理解する。
○
・問題集の取組状況
・定期試験
データの分析の手法及びグラフの扱い
について理解する。
○
・問題集の取組状況
・定期試験
ブレーンストーミングとカードを使 ブレーンストーミングとカードを使っ
った整理法を用いて問題の発見及び た整理法を用いて効果的に問題の発
整理を行う。【持・広】
見、整理をさせる。
問題の整理
カードを使った整理法を用いて問題
の整理を行う。【広】
解決策の考案
整理した問題点について解決策を考
案する。【広】
解決策の発表
自分たちのグループが感じている問
題及びその解決策を発表する。
【深】
振り返り
発表を受けて単元の振り返りを行
う。【深】
評価方法
◎ ○
・ワークシート
(記述の分析)
・行動の観察
カードを使った整理法を用いて問題を
客観的事実と主観的意見とに分離させ
る。
○
・ワークシート
(記述の確認)
整理した問題点を基に問題の解決策を
考案する。
○
・ワークシート
(記述の分析)
各グループの発表において聴き手が納
得できるように発表する。聴き手は問
題及びその解決策について評価する。
○
・ワークシート
(記述の確認)
本単元において学んだことを共有す
る。問題及び解決策をレポートにまと ○ ◎
め、実行に向け準備を行う。
・行動の観察
・ワークシート
(記述の分析)
(10)指導内容:
①実施日
:平成27年10月16日(金)
授業担当者:三井栄慶 教諭
②授業クラス :1年7組 40名
③本時のねらい:ブレーンストーミング及びカードを使った整理法を実践し、効果的に問題の発見及び整理を行う。
この学習活動を通して問題に対する自分の考えを深める。また、実践を通してブレーンストーミン
グ及びカードを使った整理法の手法を理解する。
④本時の指導内容:
授業展開
導入
(5分)
展開
(10分)
学習活動
指導上の留意点
評価方法
・これからの学習活動 ・授業テーマを伝え、本時の学習内容を伝える。
の説明(写真1)
・本時の評価について伝える。
・学食に対する要望の ・一つひとつの意見に対して付せんが1枚となるよう付せ 【思・判・表】
・ワークシート
洗い出し
んの枚数をできるだけ増やすよう助言を行う。
個人の考えを列挙さ ・自分の考えが出尽くしたらタブレット端末で写真を撮る
せる。(写真2)
ことを伝える。
・以前説明したブレーンストーミングのルールを思い起こ 【思・判・表】
・ワークシート
させながら実施をさせる。
展開
(15分)
・ブレーンストーミン ・考えのまとまりが一つできたらタブレット端末で写真を 【技能】
・行動の観察
グ(写真3)
撮ることを伝える。
・新しい考えを追加で貼る場合は付せん紙に新たに出てき
た考えであることを明記させる。
・カードで整理されたグループのシートを俯瞰して自分た
展開
(10分)
・問題点を一文で表現
する。
ちのグループが考えた問題点を一文で表現する。
・この一文もタブレット端末で写真を撮ることを伝える。
・いくつかのグループについてグループのシートを実物投
影機に投影しながら発表させる。
まとめ
(5分)
・本時の学習の振り返
り
・次回は本時で出てきた考えを整理することを伝える。
・本時の授業を通してどのようなことに気付かされたか、 ・ワークシート
タブレットの写真を確認させながら記入させる。
⑤本時の思考・判断・表現の評価に用いたルーブリック
評 価
S
A
思考・
判断・
表現
【思・判・表】
協働学習のブレーンストー
ミングの場面で新しい考え
を生み出すことができてい
る。振り返りにもその旨が
記述されている。
(手立て)
評価結果
31%
生徒の記述
(抜粋)
▼今日の授業で他人がど
んどん意見を出すのでい
い話合いができたと思う
し、思い付いたことをど
んどん発言した結果新し
い考えを生み出せた。
▼自分の意見をしっかり
持ち、相手の意見を受け
入れることで新しい考え
が生まれていき、一人だ
けでは出なかった意見を
出すことができた。
B
C
協働学習のブレーンストー
ミングの場面で新しい考え
を生み出すことができてい
る。振り返りにはそのこと
の記述がなされていない。
個人で問題に対する考えを
出すことができていて、振
り返りに記述されている。
問題に対する考えが出
ていない。かつ振り返
りにも記述がなされて
い。
協働学習の場面でどのよう
相手の意見に対して思うこ
ヒントとなる発問によ
な新しい考えが出てきたか
とがあれば発言するよう促
り、問題発見を促す。
振り返らせる。
す。
40%
29%
▼今日の授業を通して、 ▼付せんをすべて使い切
自分にはない新鮮な意見 ることができ、意見を書
を取り入れることができ くことができた。
た。
▼相手の意見を否定する
ことなく、まとめられ
た。
0%
(12)授業の様子
(写真1)本時の学習内容、評価方法 (写真2)個人の意見をカードに
などを伝える。
書き出し、記録。
(写真3)グループでカードを共有
しながら意見を出し合う。
4.2 「エイリアンとの交信~VBAプログラミング」
※エイリアン:単元の最終目標を、プログラミングによる暗号解読(エイリアンからのメッセージ)とし、未知なる言語
=エイリアンの言語として、途中の課題(MISSION)を考え、ストーリーを作った。
※VBA:Visual Basic for Application
Microsoft社のOfficeに含まれる、プログラミング言語。
(1)研究実施校 :神奈川県立津久井高等学校(全日制)
(2)学校の課題 :基礎学力を身に付け活用できる生徒の育成
モラル・マナー・ルールを遵守できる生徒の育成
コミュニケーション力・行動力を発揮できる生徒の育成
(3)実施校における研究テーマ:ICT を活用し、言語活動を重視した授業づくり
(4)教科・科目:共通教科情報・情報の科学
学年:3年
(5)単元名:問題解決とコンピュータの活用
(6)単元のねらい:日常生活におけるプログラムと人間との関わりについて考察するとともに、プログラミングの基
(6)単元のねらい:本的な考え方を理解する。
(6)単元のねらい:アルゴリズムの設計やプログラミングを通して、論理的思考力を身に付ける。
(7)単元で身に付けさせたい力:論理的思考力
(8)単元の評価規準
関心・意欲・態度
思考・判断・表現
技能
知識・理解
・日常生活におけるプログ ・問題解決の処理手順を考 ・問題解決の処理手順をフ ・問題解決の処理手順をフ
ラムと人間との関わりにつ え、各段階で適切な方法を ローチャートなどを用いて ローチャートなどを用いて
て、その良さを知ろうとし 選択することができる。
ている。
表現することができる。
表現する方法や、適切なプ
・問題解決の処理手順を評 ・適切なプログラム言語を ログラム言語を用いて、問
価し、その結果を適切に表 用いて、問題解決の処理手 題解決の処理手順を自動実
現することができる。
順を自動実行させることが 行させる方法を理解するこ
できる。
とができる。
(9)単元の指導と評価の計画
a:関心・意欲・態度、b:思考・判断・表現、c:技能、d:知識・理解
○:指導・評価した観点
時
1
学習内容
ねらい
評価の観点
a b c d
プログラムって何?
~日常生活におけるプログラム
アルゴリズム、プログラムを理解す
○
絵を描くための説明文を考え、正確 る。
に伝わるか実験する。
評価方法
・行動の観察
・プリント
○
2
自動販売機でジュースを買うときの処
理手順をグループで話し合い、記述す アルゴリズムの基本構造を理解すると
る。
ともに、処理手順をフローチャートと
記述した処理手順をフローチャートと して記述する。
して表現する。
3
エイリアンとの交信ツール
~VBA プログラミング①
VBE の基本的な操作方法を理解する。
VBE にコードを入力したり、コードを実 ※VBE:VBAを作成するための開発環境ソフト
行し、基本的な操作方法を理解する。
4
・
5
エイリアンは“変な数”を使う!?
セルへの値の代入について理解する。
(
本 ~VBA プログラミング②
時 セルの値を交換するアルゴリズムを考 セルの値を交換するプログラムを作成
)
する。
え、プログラムとして表現する。
6
変数を作成し、変数に値を代入する。
変数の型、変数の宣言を理解する。
変数を用いた計算プログラムを作成 プログラムのテストを行い、より効果 ○
し、テストする。
的なプログラムに改善する。
7
エイリアンのメッセージを解読するに
は?
色の指定方法を理解する。
~VBA プログラミング④
セル番地を変数で指定する方法を理解
セルの色を指定するプログラムを作成
する。
する。
セル番地を変数で指定する。
8
エイリアンのメッセージを1つずつ解
読してみよう!
~VBA プログラミング⑤
条件分岐(If 文)を理解する。
セルの値を見てセルの色を塗るプログ 比較演算子を理解し、活用する。
ラムを作成する。
比較演算子を使って判定する。
9
エイリアンのメッセージを連続して解
読してみよう!
~VBA プログラミング⑥
繰り返し(For 文)を理解する。
セルの値を見てセルの色を塗るプログ
ラムを作成する。
比較演算子を使って判定する。
10
エイリアンのメッセージとは?
~VBA プログラミング⑦
繰り返しの繰り返し(For 文の入れ子)を
○
For 文を入れ子構造にしたプログラムを 理解する。
作成する。
11
エイリアンに返信しよう!
~VBA プログラミング⑧
これまでに学習したプログラムや構文
これまでに学習したプログラムを活用 を活用し、プログラムの構造を考え
して、エイリアンに返信するプログラ る。
ムを作成する。
・行動の観察
・プリント
○
・実習課題
○
○ ○
・行動の観察
・実習課題
○
・行動の観察
・プリント
・実習課題
・実習課題
○
・実習課題
○
・行動の観察
・実習課題
○
○
○ ○
・行動の観察
・実習課題
・行動の観察
・プリント
・実習課題
(10)取組事例
①実施日:平成 27 年 11 月2日(月) 授業担当者:大里有哉 教諭、井上宰子 教諭
②授業クラス:3年必修選択C 25 名
③本時のねらい:セルへの値の代入、セルの中身を表示する方法を理解する。
セルの中身を交換するプログラムを作成することを通して、プログラムの設計・作成を行う。
④本時の指導内容:
授業展開
学習活動
指導上の留意点
評価方法
導入
(5分)
・本時のねらいを確認する。
・前回学習したコードを確認する。
・前回の授業で扱ったコードを振り返り、本
時の授業でも使用することを伝える。
・基本的なコードをプリントに記述させると
ともに、実際に作業をさせることでコードに
よる動作を確認させる。
・学習したコードを再度入力し、実行するこ
とで、内容を理解しているか確認する。
主な内容
①
(40分)
・セルへの値の代入、セルの中身の取
得・表示をするためのコードを、実習
を通して理解する。
・【MISSION 01】(セルへの値の代
入、セルの中身を取得・表示するプロ
グラム):学習したコードを活用し
て、プログラムを作成する。
・【MISSION 02】(2 つのセルに入力
されている値を交換するプログラ
ム):内容を理解し、状況を絵で表現
する。
・【MISSION 02】:必要な動作、処理
手順を考え、グループのメンバーと比
較・検討する。(写真5)
・【MISSION 02】:検討した処理手順
を、プログラムとして表現する。
・グループ内で完成したプログラムを
テストし合う。(写真6)
・代入を振り返らせ、順を追ってプログラム
として表現させる。
・テストのチェックシートを配付し、お互い
にプログラムをチェックさせる。
【思・判・表】
・プログラムのどこに問題点があるかを見つ
・ワークシート
け出させ、プログラムを改善させる。
・変数の基本的な考え方をイメージさせる。
主な内容
②
(40分)
・変数の考え方を理解する。
まとめ
・【MISSION 02】の内容を理解させるため
に、コップとジュースを使って実演する。
(写真4)
・グループのメンバーと話し合い、柔軟な発 【技能】
想をするよう促す。
・ワークシート
・学習したコードを振り返る。
・本時の学習内容を振り返り、次時に
・次回はセルを使用しないでプログラムを作
つなげる。
成することを伝える。
(11)生徒の記述(本時の振り返り 抜粋)
▼難しい▼ゲームとかやってるのがあたりまえになっていたけどつくっている人はすごいと思った。▼VBA プログラミ
ングを学んで、こんなやり方があるんだなと思ったのですが、1つの文字をミスったら、どこを直せばいいのかわか
らなくなりそうなので、これから使っていこうかな…とかは考えます。▼皆いつも「プログラム」の一言でまとめて
るけど、内容はものすごく複雑だという事がよく分かった。
(12)授業後のアンケート
「プログラミングは面白い」「プログラミングについてもっと学んでみたい」という問いに対し、「とても当ては
まる」「やや当てはまる」と、プログラミングを学習する意欲において、肯定的に回答をした生徒が9割程度であっ
たことから、内容は難しかったが、興味を持って取り組んでいた様子が伺える。
(13)授業の様子
(写真4)ジュース・コップを提示し、 (写真5)グループでの協議の様子。 (写真6)お互いのプログラムを
入れ替えを説明。
点検する。
4.3 「暗号化の仕組みを知ろう」
(1)研究実施校:神奈川県立麻生総合高等学校
(2)学校の課題 :生徒が主体的に学ぶ意欲を高める授業づくりの研修を充実させる。
基礎的・基本的な知識・技能の定着と確かな学力を向上させる授業展開を工夫する。
(3)実施校における研究テーマ:
①毎時間の「目標」を明確にした上で生徒が分かる授業を展開できるよう、全教科で研究し取り組む。
②教科内外で授業の工夫を検証し、知識活用型学習や生徒の表現力を育む言語活動が見られる授業を実践する。
(4)教科・科目 : 共通教科情報・社会と情報
(5)単元名ねらい: 情報セキュリティの確保(情報の暗号化)
(6)単元のねらい:個人認証と暗号化などの技術的対策や情報セキュリティポリシーの策定など、情報セキュリティ
(6)単元のねらい:を高めるための様々な方法を理解する。
(6)単元のねらい:問題解決や目的の実現に必要な活動を手順に分けて考える(手順化する)力を身に付ける。
(7)単元で身に付けさせたい力:論理的思考力
(8)単元の評価規準:
関心・意欲・態度
思考・判断・表現
技能
知識・理解
・授業で学んだ要素や、考
えたこと、習得した技術を
成果物として残そうとして
いる。
・問題解決への道筋を、手 ・コンピュータを利用し ・暗号化の必要性と、重要
順に分解して考えることが て、問題解決に必要な手順 な要素を理解することがで
できる。
を実行することができる。 きる。
・手順の正しさを検証する
ことができる。
(9)単元の指導と評価の計画:
a:関心・意欲・態度、b:思考・判断・表現、c:技能、d:知識・理解
◎:重視して指導・評価した観点、○:指導・評価した観点
評価の観点
時
学習内容
ねらい
評価方法
a b c d
・記述の分析
情報セキュリティの確保の概要
・情報の暗号化の基本知識を理解する。
情報の暗号化①
・手順化する力を身に付ける。
・行動の観察
・情報セキュリティの概要と、暗号
1
○ ◎
○
化の必要性を理解する。
・暗号化と鍵の関係を理解する。
・公開鍵の手順を考察する。
2
3
情報の暗号化②
・素因数分解の困難さが公開鍵の原 ・手順化する力を身に付ける。
理であることを理解し、手順を導
く。
情報の暗号化③
・プログラムの正しさをどう確かめ
たら良いか考察する。
・素因数分解を行うプログラムの実 ・動作検証を手順化する力を付ける。
行結果の計測から、プログラム動作
の検証を行う。
○ ◎
・記述の分析
・行動の観察
・記述の点検,分析
・行動の観察
○ ◎ ○
(10)指導内容:
①実施日
:平成27年11月13日(金)
②授業クラス
:1年4組 30名
授業担当者:大石智広 教諭
③本時のねらい :暗号化について理解するとともに、目的を実現するまでの過程を、細かい手順に分解して考える
ことができる(手順化できる)。
④指導内容:
授業展開
導入
(5分)
学習活動
指導上の留意点
・映画「MI5」の予告動画を見て、暗 ・日常的な暗号を使ったシーンを例に挙げる
号解読という目的を理解する。
と共に、暗号化以外のセキュリティ確保に使
・暗号化の必要性を理解する。
用される技術を紹介する。
評価方法
前時の
主な内容
(40 分)
・シーザーローテーションで暗号化 ・暗号化技術のポイントである、手順と鍵に
と複合化を実践する。
ついて簡潔に説明する。
・暗号には、手順と鍵が必要なこと
を学習する。
・公開鍵方式の手順を南京錠に例え ・実物(写真7)を使って試行錯誤させるこ
て考える(グループワーク)。
とで、難題に取り組みやすくする。
・できたグループから、実演で発表 ・できたグループから、手順を発表させる。
する。
(写真8)
・前回の授業を振り返り、公開鍵の意義と手
順を確認する。
主な内容
①
(40分)
主な内容
(40分)
まとめ
(5分)
【思・判・表】
・公開鍵が素因数分解の困難さから ・素因数分解という用語は使わない。
・ワークシート
出来ていることを学習する
・素因数分解の手順を考える(個人 ・個人で考えた後に、グループでその方法を
⇒グループ)。
シェアすることで、自分達でゴールにたどり
着けるようにする。
【関・意・態】
・グループで考えた手順通りに、素
・行動の観察
因数分解が実行可能か検証する。
・正しい手順でも、時間がかかることを意識
させ、コンピュータの必要性を感じさせる。
・考えた手順をコンピュータで実現 ・プログラム自体はさっと眺める程度。
するのが、プログラムであることを
説明。
【思・判・表】
・プログラムが実際に正しく動作す ・答えが出てきた時に、正しいかどうか分か ・ワークシート
るか、どうしたら確かめられるか、 るか問いかける。
考える(個人)。
【関・意・態】
・プログラムの動作を検証するテス ・あらかじめ結果の予想を書かせ、結果と予 ・行動の観察
トを考え、実行する。
想を比較させる。
・暗号の鍵に利用した数をプログラ
ムに素因数分解させ、時間を計測す
る。
・実際の暗号の桁数を理解する。
・振り返り。
・実際の暗号の安全性を、桁数を説明する
ことで、感覚的に理解させる。
(11)生徒の記述(本時の振り返り 抜粋 原文ママ)
▼計算嫌いだから、すぐに答えを出せなかったけれど、みんなの答えと計算方法をみてまあまあ理解できた。▼手順
を説明するのは難しかったがすぐに分解はできた。▼数学みたいで嫌だった。▼いつもより楽しい授業でした!▼数
学みたいに数が多かったけど、なんとかできた。プログラムをみて、LINE や Twitter の人はすごいんだなあとそんけ
いしました。▼やっぱり最近のコンピュータを使えば簡単なケタではすぐに解けてしまうから、実際に使われている
のはすごく大きくて誰にも解けないものだからこそ、私たちの情報も守られているんだなと思って、安心しました。
(12)授業後のアンケート
「暗号化の仕組みについて考えられた」96%、「暗号化の手順や掛け算に分解する手順を考えられた」88%、「コ
ンピュータプログラムをテストすることができた」92%であった。それぞれ5段階(5が最良)で評価してもらい、
5又は4と回答した生徒の割合である。記述部分の内容も考慮すると、多くの生徒が、苦労しながらも、しっかりと
授業に参加し、主体的に取り組んでいた様子がうかがえる。
(13)授業の様子
← 実物(写真7)を用いて
グループで発明した
「鍵を渡さなくてもよい暗号」
を発表。(写真8) →
6.成果と課題並びにその改善に向けた方策
本研究における授業改善のポイント(手立て)の成果と課題
① ワークシートや生徒同士が互いに点検しあうチェックシートを、ルーブリックを活用して評価することで、協働
学習における個人の評価を行う。
【成果】
・昨年度、3段階(A・B・C)で設定したルーブリックを4段階(S・A・B・C)としたことで、よりきめ細かく
生徒の状況を評価することができた。また、各段階において、指導の手立てを作成しておくことで、机間指導
などを通して、適切な指導を行うことができた。
・別クラスの担当者間、主担当とTTの副担当の間で、評価を統一させるために効果的であった。
【課題・改善】
・「ルーブリックの作成の時間がかかるのでは」「集めた記述を評価するのに時間がかかるのでは」という質問
が多く投げかけられた。一度学校の状況に応じたルーブリックを作成してしまえば、他の単元や他の学習活動
でも容易に作成でき、活用できるので、本研究におけるルーブリックの作成手順なども公開していきたい。
② 「情報の科学」の単元「問題解決とコンピュータの活用」において、プログラミング(処理手順の自動化)を学
習する際の題材について検証し、作成したプログラムを互いに点検し合うことで、評価・改善の機会を設け、理
解を深めることをねらいとしたワークシートを作成する。
【成果】
・本研究に携わるまで、今回の授業担当者は、VBAにふれたことがなかった。経験の無さから、授業構成の構想
に十分時間をかけたこともあり、生徒のつまづきそうな点や理解の過程をしっかりと捉えた、単元案を作成す
ることができた。
・セルの入れ替えの手順を書き出し、VBAのコードとして記述していく実習において、作成したプログラムを互
いに点検し合うことで、生徒は、他者のエラーを見付けることと同時に、自身のプログラムの振り返りを行う
ことができた。
【課題・改善】
・自動販売機のアルゴリズムを考えさせる課題について、身近ではあるが、改めてその動作をフローにしてみる
と複雑な仕組みであることが分かった。題材として取り上げるとき、どのような条件を付して与えるかによ
り、難易度が大きく変わってくるため、しっかり見極めることが大切である。
③ 「社会と情報」の単元「情報セキュリティの確保」において、問題の解法の手順を表現する力を身に付けさせ、
暗号化の仕組みを科学的に理解させる。
【成果】
・南京錠、ポーチ、秘密の手紙を用いて、公開暗号鍵の仕組みを体験させたことで、暗号に関する興味・関心を
高めることができた。その後の素因数分解につながるまで、手順を書き出し、明確にする課題を通して、公開
暗号鍵との関連を意識させたまま、コンピュータ、プログラムの有用性を理解させ、暗号化に対する理解を深
めることができた。
【課題・改善】
・問題を手順化することが必要で、重要であることは理解できた生徒が多かった。一方で、その力が身に付いた
のか否か、教師が判断することは難しい。他の単元で機会を増やし、グループでの協議を取り入れながら、自
分の考えをまとめさせるような課題に多く取り組ませたいと思うが、そのような題材の準備は大変である。何
か良い題材があり、学校間で共有できるようにしていくことができれば、各学校ごとの工夫は必要であるが、
題材研究の負担軽減につながる。
まとめ
本研究では、共通教科情報の単元計画に協働学習を取り入れた題材の工夫により、生徒の学習意欲を向上させ、主体
的な取組を促すことができた。「問題解決型授業」の題材は、「生徒にとって身近な問題か、切実な問題か、実行可
能」という観点で選択することが重要であると同時に、「これらがしっかりとつながっているか」も重要な要素となり
得ることが分かった。単元を通して、一連のストーリーを構成することにより、その問題を解決していく必然性を与え
ることが、生徒の理解を深めていくことにつながるため、このような題材を選定することが大切である。また、互いの
プログラムや手順を点検し合う過程を2つの実践例で取り入れた点も、内容の理解を深める方策として有効であったと
考える。今後は、生徒の確かな学力の育成に向けて、多くの学校の教科で工夫を凝らした問題解決型協働学習を取
り入れることを期待する。
農
業
1 研究のテーマとねらい
(1) 研究のテーマ
学校の教育力を高めることを目ざしてアクティブ・ラーニングの視点を踏まえた指導方法の導入による
「生徒主体で能動的な実験・実習による農業学習の改善」をテーマとした。
(2) 研究のねらい
農業科では実験実習を重視した授業展開がなされているが、これらの授業においては生徒が学習のねら
いを正確に把握し、能動的に考え、取り組むことにより応用的、汎用的な学力を身に付けることが期待さ
れる。これらを踏まえ、今年度の研究では、特に実験実習において効果的にアクティブ・ラーニングの視
点を踏まえた指導方法を導入し、それらにより農業学習を改善すべく実践、検証を行うこととした。
2 研究で取り組んできた内容
(1)各農業関係高等学校の特に実験実習におけるアクティブ・ラーニングの視点を踏まえた指導方法の導
入に向けた授業展開の研究・開発と、生徒の学習指導上における課題の把握及び共有化
(2)各農業関係高等学校で取り組む特色ある授業の検証
(3)農業を取り巻く課題を題材とした授業の検証
(4)教員相互の指導方法や教材の共有化と検証
3 研究の目標を達成するための手立て
(1)生徒主体で能動的な実験・実習に向けた方策として、アクティブ・ラーニングの視点を踏まえた指導
方法を導入した授業展開について具体的な手法の検討、公開授業研究及び検証を行う。
(2)各農業関係高等学校の特色ある授業を見学し、授業で工夫している点や参考となる取組、課題を共有
化する。
(3)農業を取り巻く様々な課題を題材とした授業内容について検証する。
(4)教材の共有化と効果的な活用について検証する。
4 単元の指導計画及び重点を置いた授業展開例
実践事例1 「農業」
(
「農業と環境」
)
(1)研究実施校:神奈川県立平塚農業高等学校(全日制)
(2)学校の課題:専門分野の基礎的・基本的な知識と技術の定着を重視し、実践力を高めることが課題で
ある。
(3)実施校における研究テーマ:専門教科や共通教科の枠を超えて授業公開を全校に拡大し、積極的な意
見交換、授業方法や教材・教具の工夫などについて情報共有し、アクティブ・ラーニングの視点を取
り入れた組織的な授業改善に取り組む。
(4)科目:農業と環境
学年1年(食品科学科)
(5)単元名:農業生産の基礎(栽培の基礎)
(6)単元のねらい
アクティブ・ラーニングの視点を踏まえた指導方法の一手法であるプロジェクト学習法を用いて、
農業生物の育成について体
験的、探究的に学習させ、農業生物の種類と特性、育成環境の要素及び栽培に関する基礎的な知識と
技術を習得させる。
(7)単元で身に付けさせたい力
栽培技術を身に付けるためには、農業生物の性質や育つ仕組みを理解し、育つために必要な環境条
件を知ることが重要である。さらに、農業生物への働きかけとして実施する作業の目的を理解した上
で、正確に作業を実施する力を身に付けさせる。
(8)単元の評価規準
関心・意欲・態度
農業生物の栽培や環境に
興味・関心を持ち、主体的
に学習活動に取り組もう
としている。
思考・判断・表現
農業生物の種類と特性、
栽培に関する諸課題の
解決を目ざして思考を
深め、適切に判断し、表
現している。
技能
農業生物の栽培や環境に
関する基礎的な技術を身
に付け、農業生物育成に係
るプロジェクトを計画し、
その技術を適切に活用し
ている。
知識・理解
農業生物の栽培や環境に関
する基礎的な知識を身に付
け、農業と環境に関連付けて
理解している。
(9)単元の指導と評価の計画
班ごとのグループプロジェクトを主としてテーマを決め、栽培作物から計画し、加工までを協力し
ほじょう
て取り組ませる。活動時間の3分の2を圃場での実習とし、残りは教室での栽培に関する仕組みや技
術を調べ、発表する場として知識を深める。
班ごとの畑のテーマ(例)
・トン汁をつくる ・シチューをつくる ・野菜のケーキ ・白菜を害虫から植物で守る
・おでん ・ポトフ
時
1
(
2
0
時
間
)
a.関心・意欲・態度 b.思考・判断・表現
評価の観点
学習内容
学習活動
ねらい
a b c d
農業生物の栽培 農 業 生 物 の 基 作 物 の 生 育 に ○
○
と利用
礎となる栽培 応じた管理を
管 理 を 学 習 す 協力、実践し、
る。
自ら学び栽培
技術を身に付
ける。
2
(
1
時
間
)
たねと発芽・た た ね ま き に 関
ねまき・育苗と す る 基 礎 的 な
定植
知識を学習す
る。
たねまきに関
する基礎な知
識を説明し、栽
培のスタート
をスムーズに
展開させる。
3
(
4
時
間
)
成長の仕組みと 成 長 と 管 理 に
管理
関する項目を
班別に調べ発
表する。
成長に関する
様々な項目を
班別に調べ、分
かりやすく発
表する。
c.技能 d.知識・理解
評価規準
・農業に興味
関心を持
ち、意欲的
に取り組ん
でいる。
・作業ごとに
必要な栽培
技術を身に
付けてい
る。
○ ・たねまきに
必要な知
識を身に
付け、正し
くたねを
まくこと
ができる。
○
評価方法
・定期試験
・観察
・実習手帳
・圃場の管理
・定期試験
・ワークシー
ト
・ノート
・班員で協力 ・定期試験
して調べ、 ・ワークシー
まとめ、他
ト
の生徒に伝 ・ノート
わるように
発表してい
る。
4
(
2
時
間
)
農業生物をとり 環 境 と 管 理 に
まく環境とその 関 す る 項 目 を
管理
班別に調べ発
表する。
気象・土・肥
料・病害虫など
項目別に班で
調べ、簡潔にま
とめ、発表す
る。
○
・簡潔にまと
め、要点を
押さえて発
表してい
る。
・定期試験
・発表資料
・ワークシー
ト
・ノート
(10)取組事例(公開研究授業)
①実施日:平成 27 年 10 月 27 日(火)6校時 授業担当:伊藤 謙二 教諭
②授業クラス:食品科学科 1年D組 39 名
③本時のねらい:生徒主体の能動的な実験・実習による農業学習の実践を踏まえ、各テーマに関する内容
を班員で協力し調べ、他の生徒に分かり易く発表、伝えることで主体的な学習への取組
姿勢を高めることを目的とする。
④本時の指導内容
(単元観)農業生産の基礎となる技術を体験し、食品の元となる作物がどのような栽培経過で作ら
れているかを理解し、食品製造や販売の分野で活躍できる基礎を養う。
(生徒観)食品科学科の生徒であり、栽培よりも製造加工に興味が強いことから、最終的な加工ま
でを意識させ、農業全体を見渡せる基礎的な知識を身に付ける。
(指導観)グループでの取組であるため、作業分担が偏らないように注意し、協力してひとつ
のテーマについてまとめ、発表できるようにする。
授業展
【評価の観点】
学習活動
指導上の留意点
開
評価規準及び評価方法
導入
○学習内容の確認
・ワークシートに発表者のポイント
(5分) ・本時の目標を理解する。
となる点を記入するように説明す
・発表方法の説明。
る。
展開
(40
分)
○班ごとのプレゼンテーショ
ン
・班員全員で壇上にて発表す
る。
・プレゼンテーションソフト等
を活用し、説明する。
・ワークシートへポイントを記
入する。
・教員より補足説明する。
ま と め ○講評とまとめ
(5分) ・感想を書く。
・発表時間は5分とする。
【思考・判断・表現】
・班員で協力して調べ、
・資料をプレゼンテーションソフト
まとめ、他の生徒に伝
で5枚程度用意させる。
わるように取り組んで
いる。
・ワークシートにポイントが書きや
(発表資料、ワークシ
すいように工夫して作成させる。
ート、ノート)
・講評とともにポイントとなる点を
確認する。
テーマ ・作物のからだ(8班)
・栄養成長と生殖成長、作物体内の営み(1班)
・栄養成長期の管理①(6班)
・栄養成長期の管理②(2班)
・花芽形成のきっかけ(3班)
・花芽のつきかたと開花(4班)
・生殖成長期の管理(7班)
・作物の繁殖と育種(5班)
圃場での栽培の様子
各班5枚程度のプレゼンテーション資料を作成し、スキ
ャナーで PC へ取り込み、プロジェクターで投影して発表する。
プレゼンテーション資料の例
発表の様子
(11)単元の授業づくりに基づく授業実践の評価と分析
アクティブ・ラーニングの視点を踏まえた指導方法を取り入れた実習を主眼に、授業全体を通して生
徒がいかに主体的に活動できるかを検討し、今回の授業展開に取り組んだ。今までは、栽培品目から、
栽培管理などを教員側から提示し、全生徒が同じ内容の作業に取り組んでいたが、班ごとにテーマを決
め、栽培作物も違い実習時間内の管理作業も班ごとに別々に取り組ませた。このことにより、各生徒が
作業を自発的に行い、生き生きとした活動となっている。
また、教室での座学中心の授業を図書室での調べ学習と発表に変え、生徒が学び、理解したことをお
互いに教え合うことで、必要最低限の基礎・基本となる知識を身に付けることができた。図書室での調
べ学習中は、グループ内で取り残されている生徒がいないように注意を払い、また難しい文献等で内容
が高度になり過ぎないように助言した。
プレゼンテーションの資料は分かりやすくかつ、見やすくなるようにアドバイスした。発表時は押さ
えるべきポイントをしっかりと教員から補足説明し、発表に苦手意識を持たせないように進めた。
(12)成果並びに課題とその改善に向けた方策
今回の実践での課題は、図書室で何をどのように調べればいいのかが分からない生徒が多く見受けら
れたことである。改善のために、始めの説明でもう少し具体的な例を取り上げるなどの工夫をすること
が必要だと感じた。概ね生徒同士の活動は関心を持って取り組むことができたが、発言が苦手な生徒や
コミュニケーションが苦手な生徒の居場所をどのように確保できるかが課題である。今後も更に工夫、
改善を重ね、生徒が主体的に学習活動に取り組めるようにしていきたい。
実践事例2
「農業」
(
「草花」
)
(1)研究実施校:神奈川県立吉田島総合高等学校(全日制)
(2)学校の課題:生徒の基礎学力の定着に向けた授業改善及び総合学科高校としての農業の学びを生かし
た人材づくりの推進
(3)実施校における研究テーマ:知識構成型ジグソー法を活用した生徒主体で能動的な実験・実習による
農業学習に向けた取組
(4)科目:草花
学年:総合学科3年次
(5)単元名: 草花の特性と栽培技術
(6)単元のねらい
草花の生育環境及び品種改良と繁殖方法について、基礎・基本を理解するとともに、観察や実験を
通して生育環境の制御に必要な知識と技能を習得させる。また、科学的に捉えて合理的に解決し、表
現する創造的な能力を身に付ける。
(7) 単元で身に付けさせたい力
草花栽培の技術や繁殖方法を理解し、実践することで、品質の良い草花を生産する方法を習得さ
せる。また、そのための施設や環境制御技術についても理解させ、生産を科学的に捉える視点と、
グループワークでの協調性、表現する能力を身に付けさせる。
(8)単元の評価規準
関心・意欲・態度
草花の栽培や品種改良に
興味・関心を持ち、主体的
に学習活動に取り組もう
としている。
思考・判断・表現
草花の種類と特性、品種
改良に関する諸課題の
解決を目ざして思考を
深め、適切に判断し、表
現している。
技能
草花や品種改良に関する
基礎的な技術を身に付け、
栽培技術に係るプロジェ
クトを計画し、その技術を
適切に活用している。
知識・理解
草花の栽培や品種改良に関
する基礎的な知識を身に付
け、栽培環境と関連付けて理
解している。
(9) 単元の指導と評価の計画
時
学習内容
学習活動
1~2
草花の生
育と環境
草花の一
生につい
て学習す
る。
3~4
品種改良
と繁殖
草花の品
種改良に
ついて学
習する。
5~6
品種改良
の手順と
方法
無菌播種
法を用い
た実験を
行う。
7~8
草花の生
育と栽培
技術
9~10
生産施設
と栽培環
境の調節
草花の生
育と栽培
技術につ
いて学習
する。
生産施設
と栽培環
境の調節
について
学習する。
a.関心・意欲・態度 b.思考・判断・表現 c.技能 d.知識・理解
評価の観点
ねらい
評価規準
評価方法
a
b
c
d
草花の一生につ ○
草花の一生に ・ワークシート
いて興味・関心
ついて学ぼう ・観察
を持ち、主体的
としている。
に学習活動に取
り組む。
草花の品種改良
○ 草花の品種改 ・ワークシート
について理解す
良について理 ・定期試験
る。
解している。
無菌播種法につ
いて、その手順
や方法を身に付
け、グループワ
ークを通じて、
協調性や理解・
表現力を深め
る。
草花の生育と栽
培技術について
理解する。
○
生産施設と栽培
環境の調節につ
いて思考を深め
表現する。
○
○
○
無菌播種方法
について、適
切な技術を身
に付け、その
過程や結果を
適切に表現す
ることができ
ている。
草花の生育と
栽培技術の関
わりについて
理解してい
る。
生産施設と栽
培環境につい
て、合理的に
判断して、適
切な栽培環境
を表現するこ
とができてい
る。
・ワークシート
・観察
・ワークシート
・観察
・ワークシート
・観察
(10) 取組事例(公開研究授業)
①実施日:平成 27 年 11 月 24 日(火)
授業担当者:髙橋 晋太郎 教諭
②授業クラス:園芸デザイン系列3年次 22 名
③本時のねらい:無菌播種法について、その手順や方法を身に付け、グループワークを通じて、協調性や
理解・表現力を深める。
④本時の指導内容
授業展開
導入
(5分)
学習活動
・学習内容の確認
・育種とは
・繁殖方法の確認
展開
・実験班の中から、
(70 分)
エキスパート活動
※休憩10 分
の担当テーマを決
める。
・4つのテーマに分
かれ、エキスパー
ト活動を展開す
る。
・実験班に戻り、ク
ロストークを展開
する。
※実験班ごとのまと
めを発表し、テー
マの理解を深め
る。
(身だしなみを整
え、クリーンルー
ムに移動する)
・全体で確認をして、
実験に取り掛か
る。
まとめ
・自己評価とまとめ
(5分)
評価の観点・評価規準
及び評価方法
・本時の学習内容を理解させ、班ご (観察)
とに話合いをする準備をしていく。
指導上の留意点
・知識構成型ジグソー法を活用す
る。
「なぜ無菌にするのか?その
方法は?」
「予測される危険は?」
「どのような実験方法で?」
「播種
に適している種子とは?」に分か
れてエキスパート活動を行わせ
る。
・生徒が主体的に意見を主張できる
環境を作る。
・クロストークを行う。「コチョウ
ランはなぜ、この方法で播種を行
うのか」について、テーマの組み
立てに専念させる。時間を区切っ
て各班の話合いの成果を発表。
・実験の注意点を確認
・発問を行い、正確な操作方法を学
ばせる。
・実験が正確・安全に行われるよう
に指導に留意する。
・播種できたか確認を行う。
・自己評価で振り返りを行わせる。
・無菌操作方法の確認を行う。
※生徒の成功例を映写する。
ワークシートの例
【思考・判断・表現】
・無菌播種方法について、その
過程や結果を適切に表現する
ことができている。
(ワークシート・観察)
【技能】
・無菌播種方法について、適切
な技術を身に付けている。
(観察)
(ワークシート)
タブレット
端末で実験
方法を説明
エキスパート活動の様子
ICT を活用
実験の様子
(11)単元の授業づくりに基づく授業実践の評価と分析
実験・実習の授業では、一見すると主体的に活動をしているようだが、中には「教師に言われたこと
をやっている」等、自らの思考が「アクティブ化」していない生徒も見受けられる。そこで、生徒主体
で能動的な実験・実習を行うため、
「知識構成型ジグソー法」を活用した授業改善に向け、研究に取り
組むことにした。
知識構成型ジグソー法とは、設定したテーマに対して各班員が知識ごとのパートに分かれて調べ、そ
の知識を持ち寄り、テーマに対する答えを導いていく学習方法である。この手法を用いることにより、
「この作業は何のために行うのか?」
「なぜ、このやり方なのか?」など、自らその意味を考え、他者
に対して自分の考えや意見を伝えるなど、協調性を育む学習活動として、生徒自身の学びも深まるので
はないかと考え、試みた。
実践した結果、エキスパート活動やクロストークでのまとめにおいて、生徒主体の発言が増え、実験
班で導き出した答えを聞いて、考えを一つにまとめることができた。
この学習活動により、他者の意見を聞くことで、今まで気付かなかった注意点や操作のポイント、安
全確認が行え、スムーズに実験に取り掛かることができ、生徒は「楽しかった」
「失敗が許されないの
で緊張した」
「初めての無菌操作にも関わらず、正確に行うことができた」など、概ね達成感を持つこ
とができた。
(12)成果並びに課題とその改善に向けた方策
活発な活動をしている生徒がいる半面、緊張感を持っていない生徒や積極的でない生徒も見受けられ
た。このことについては、エキスパート活動での、
「自分の意見の伝え方」が分からなかったり、他者
とのコミュニケーションが苦手な生徒であったりすることから、班を固定しないことや、
「他者にどの
ように意見を伝えるか」といった指導やサポートが必要ということが分かった。
また、生徒主体の学習活動は、実験・実習における「安全性」の確保や、
「正確性」について、時に間
違った答えを導き出してしまうこともある。
「基礎的・基本的な知識・技能」の習得に関しては、教員
がしっかりと伝えなくはならない。このことは実験・実習での「アクティブ・ラーニングの視点を踏ま
えた指導方法」の際には特に気を付けなくてはならない。
さらに、
「アクティブ・ラーニングの視点を踏まえた指導方法」を導入した授業で、教育効果を高める
ためには、単元で取り上げる学習内容や時間配分が適切なものとなるように留意することがポイントで
ある。
今回、教科「農業」における実験・実習で「アクティブ・ラーニングの視点を踏まえた指導方法」に
慣れておらず、活発に参加できなかった生徒が一部存在したことから、教科「農業」に限らず、学校全
体での「アクティブ・ラーニングの視点を踏まえた指導方法」を推進する取組を更に進めていき、学校
目標を意識した組織的な授業改善を行う必要がある。
(公開研究授業以外の実践事例)
実践事例3 造園計画
(1)実施日:平成 27 年 10 月8日(木) 3校時
授業担当者:坂水 元也 教諭
(2)実施科目:
「造園計画」
(環境緑地科1年 39 名)
(3)単元名:造園デザインの基礎
(4)小単元名:花壇のデザイン
(5)本時のねらい:現場で実際に施工される花壇をデザインさせることで、造園デザインの基礎を学ぶ意
欲を高めるとともに、設計した花壇について班活動により発表させることで、設計意
図を伝達する能力を養い、設計競技についての考え方を理解させることをねらいとす
る。
(6)単元の授業づくりに基づく授業実践の評価と分析
生徒が考案した作品の中から、花壇が実際に施工されるため、生徒の意欲が高まる題材であった。最
もふさわしいデザインをするための能力と態度を養うため、班活動と発表を行わせた。班活動では、班
の中で良い図案を選ぶため話し合うことで設計競技の一端を理解させることができた。発表では設計者
からデザインの内容を聞き取り、設計者ではない生徒が発表をする方法としたことで、設計意図を他者
に伝達するプレゼンテーション能力とコミュニケーション能力を高めることを目的とした。班活動と発
表というアクティブ・ラーニングの視点を踏まえた指導方法により、デザインという個人作業が活性化
したと考えられる。
(7)成果並びに課題とその改善に向けた方策
設計者の図案に対し、班でコミュニケーションを良くとって発表できていた。発表内容に対し、個々
の作品の改善点や良い点を全体に周知できたことは成果である。アクティブ・ラーニングの手法をデザ
イン活動に取り入れることは、個別対応になりがちなデザインの指導をクラス単位で行う方法の一つで
あるといえる。今後もアクティブ・ラーニングの視点を踏まえた指導方法を積極的に活用し、生徒が主
体的・協動的に学ぶ学習活動を支援していきたい。
実践事例4 農業と環境
(1)実施日:平成27年11月13日(金) 1・2校時 授業担当者:石塚 洋平 教諭
(2)実施科目:「農業と環境」(園芸科学科1年A組 39名)
(3)単元名:栽培・飼育のプロジェクト~ハクサイ・キャベツ・ダイコン~
(4)小単元名:施肥の計算と追肥
(5)本時のねらい:施肥の計算と追肥の必要性を理解し、「なぜ、この作業が必要なのか」という目的
意識を持ち、圃場において必要な作業を思考し、能動的に実習を進められる能力を
養う。
(6)単元の授業づくりに基づく授業実践の評価と分析
生徒全員が一斉に同一の作業に取り組むような実習ではなく、生徒が思考し、適切な方法を判断しな
がら能動的に作業することで、知識や技能の定着を図れるような実習を目ざした。また、少人数のグル
ープ単位で取り組ませ、意見交換と作業のチェックをさせた。教材として、作業方法を思考させる「実
習プリント」を配付した。
圃場へ移動する前に「実習プリント」を利用して生徒に作業方法を思考させ、それを基にグループ討
議を実施した。
「実習プリント」は自分の解答を記入する欄と正答を記入する欄を設けたポートフォリ
オ形式とした。ポートフォリオ形式にすることにより、解答を導き出す過程に思考の重点が置かれ、正
答を書いた後に思考の変容を再度確認できるようにした。
「正しい答えを書くこと」ではなく、
「思考す
ること」に重点を置いたことで、積極的で具体的な「自分の解答」が記述され、その内容を基に討議も
活発に行われていた。
基本的な作業内容を理解した上で圃場へ移動し、実際の作業方法をグループごとに検討させ、作業方
法を導き出せたグループから作業を開始した。理解した知識を圃場において応用することで能動的な実
習となった。作業方法を導き出せるか、出せないかは、
「実習プリント」の正答を導き出すための着眼
点であった「根の範囲」を実際に圃場で確認できるかであり、約7割のグループが導き出すことができ
た。導き出すことができなかったグループは、再度、着眼点を振り返らせることで正答へと導いた。
(7)成果並びに課題とその改善に向けた方策
実習の作業方法を導き出す過程に思考の重点を置くことで、
「なぜ、この作業が必要なのか」という
目的意識を持ち、圃場において能動的に実習を進めることができた。圃場において着眼点である「根の
範囲」を確認することを認識させていれば、作業方法を導き出せるグループが増加したと考えられる。
今回の研究により、実習ごとに作業の核となる点を精選していき、その核を基にしてアクティブ・ラ
ーニングの視点を踏まえた指導方法を展開する実習構成が重要であることが分かった。継続的に能動的
な実習となるようにし、今後は課題設定から解決までを生徒自身が主体的に取り組める授業を展開し、
プロジェクト学習の実践へとつなげていきたい。
実践事例5 総合実習
(1)実施日:平成27年12月1日(火) 3・4校時 授業担当者:巻島 弘敏 教諭
(2)実施科目:「総合実習」(畜産科学科2年 38名)
(3)単元名:ブタの繁殖
(4)小単元名:ブタの人工授精
(5)本時のねらい:近年ブタの繁殖技術として不可欠な人工授精の必要性について考察させ、効果的な手
法や留意点について理解し、能動的に実習を行う。
(6)単元の授業づくりに基づく授業実践の評価と分析
グループ学習で人工授精の利点やその必要性について考えさせ、グループ間で意見交換することによ
って、近年広く普及し、不可欠となっている基礎的な養豚技術の意義について深く理解する機会となっ
た。また、手法についても実際に授精器具を目の前にしながら、手順や留意点についてグループで考察
し、グループ間で意見交換することで、思考し、理解を深めながら技術を習得できた。
(7)成果並びに課題とその改善に向けた方策
実習において習得する技術の意義や手法について理解するには、それらについて深く思考することが
必要である。そのことによって、更に高度な技術を習得し発展させていく能力が身に付き、それらは専
門教育にとって大変重要であると考えられる。そのためにグループ内やグループ間で意見交換しながら、
望ましい結論に導いていくアクティブ・ラーニングの視点を踏まえた指導方法は大きな意義があると考
えられる。
しかし、アクティブ・ラーニングの視点を踏まえた指導方法を進めた後の検証作業を十分に行わなけ
れば、それらが間違った結論として導き出される危険性もはらんでいる。今後、実験実習においては、
生徒が能動的に思考しつつ専門的な知識・技術を習得していく姿勢が求められるが、一方で正確な基礎
的・基本的な知識・技能の習得を促す検証作業も合わせて重視する必要がある。
5 まとめ
調べ学習、グループ学習、知識構成型ジグソー法、プロジェクト学習法等様々な手法を用いた授業実践と
その検証により、アクティブ・ラーニングの視点を踏まえた指導方法の導入による生徒主体で能動的な実験・
実習による農業学習の改善を進めた。その結果、それらの取組を通して生徒の意欲・主体性・自発性・能動
性・協調性の向上、達成感の醸成、授業の活性化等、多くの成果が認められた。特に、実験実習で知識・技
能を取得する際重要な「なぜ行うか」
、
「どのように行うか」を生徒が能動的に思考しつつ取り組むことがで
きた。
一方で、調べること、発言することが苦手な生徒へのサポート体制、生徒間の取組姿勢の差異、正確な基
礎的・基本的な知識・技能の定着、安全性の確保などが課題として残った。今後は、学校ぐるみ、全教科・
科目におけるアクティブ・ラーニングの視点を踏まえた指導方法の推進による学習環境の整備、チーム・テ
ィーチングの有効活用、アクティブ・ラーニングの視点を踏まえた指導方法を実施する単元の精選等に留意
しつつ研究を進めていく必要がある。
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