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参考資料 富山県経済・文化調査団訪米概要報告(美術館)

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参考資料 富山県経済・文化調査団訪米概要報告(美術館)
富山県経済・文化調査団
訪米概要報告(美術館)
5月13日(火)~5月19日(月)
富山県立近代美術館(館長:雪山行二)
新近代美術館整備班(主幹:中川美彩緒)
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1.クリーヴランド美術館
ア.日 時:5月13日(火)10:00~17:00
イ.場 所:クリーヴランド美術館(オハイオ州、クリーヴランド市)
ウ.視察者:雪山館長
エ.相手方:パティー・エドモンソン(同美術館教育担当)
オ.内容要旨
○古代ギリシャ・ローマから中世、ルネサンス、近現代に至る西洋美術の大コレクションに加えて、
インド、中国、日本などの貴重なコレクションを所蔵する全米屈指の大美術館である。数年前に
新館を増築し、さらに旺盛な活動を展開している。
○新館建設に伴い、本館と新館の間にガラスの大屋根を設け、レストランやコンサートに使用でき
る広大なスペースを確保するとともに、教育部門を大幅に拡充し、現在約 20 名の専門スタッフ
が教育活動に従事している。
○縦約 1.5m、横約 12m の巨大な液晶パネルを新館入口近くに設置し、常時 3,000 点以上の所蔵作品
を名刺大のサイズでサムネイル表示している。利用者はパネルにタッチすることによって好きな
作品を拡大して見ることができるほか、所蔵作品を使った美術史の概説、あるいは 20 余りのテ
ーマのもとに所蔵作品を表示するなど、多彩な機能を備え、特に子供たちに人気を博していた。
利用者による主体的な検索を可能にするなどの工夫を加えれば、きわめて有効な役割を果たす装
置になると思われる。
このほかにも鑑賞を補助するために液晶パネルを効果的に用いた教育活動を展開している。
○アトリエを見学することはできなかったが、新館入口近くのキッズルームを見学し、児童教育の
担当者から説明を受けることができた。
クリーヴランド美術館本館
クリーヴランド美術館新館
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本館と新館をつなぐ巨大なパッサージュ
大型ディスプレイ
大型ディスプレイのテーマプログラム
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2.メトロポリタン美術館
ア.日 時:5月15日(木)13:30~15:00
イ.視察者:県経済・文化調査団
石井知事、髙木会頭、中井社長、梅田会長、雪山館長、宮崎課長、中川主幹
ウ.同 行:土肥富山県人会長、小川北銀NY駐在員事務所長
エ.内容要旨
○土肥元学芸員の案内・説明により効率的に見どころの見学を行い、活発な情報・意見交換を行う
ことができた。
○増築を重ねた広大な施設に、大量の作品や資料が展示され、多数の入場者で繁華街のように混雑
していた。館内ガイド(表示や印刷物)が用意され、多様なガイドツアー(職員又はボランティ
アによる)が定期的に行われている。
(教育部門だけで100名のスタッフを雇用)
○展示室は全体的に明るく(外光も利用)
、開放的な印象。照明等の設備は旧式。
○ショップの広さ、商品の多様さは圧巻で、大変にぎわっている。
○カフェ、レストランは、メンバー専用も含め、多数ある。
○アメリカの美術館で、現在、活発な資金調達による館運営ができているのは、メトロポリタン、
ホイットニー、ゲティの3館だろうとのこと。
○海外の旅行客から修学旅行生など、あらゆる層を受け入れる姿勢と体制は、規模の違いはあるも
のの、本県の美術館・博物館等の施設の運営・企画面に生かすことが可能と思われる。
メトロポリタン美術館 展示室風景
屋内広場
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ボランティアによる日本語ツアー
フェルメールのコーナー
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3.インターナショナル
センター
オブ
フォトグラフィ(ICP)
ア.日 時:5月16日(金)10:00~11:30
イ.視察者:中川主幹
ウ.内容要旨
○写真家コーネル・キャパが1974年に設立した写真ミュージアム。6万点のコレクションを持
ち、写真学校を併設して多数の著名写真家を輩出していることで知られる。
○ギャラリーの建物規模は地上2階地下1階のさほど大きくない印象。シンプルな構造で奇抜さは
ない。展示テーマは多様で質が高く、見応えがある。
○高い天井部に自然光で陰影を作り、全体的に自然な照明計画がなされている。無機質になりがち
な写真の展示室だが、均一に柔らかな明るさで満たされ、疲れにくいと感じられた。
○こうした照明計画は、写真作品を展示する時だけでなく、新美術館の照明計画の参考になると思
われる。
外観
入口
(撮影禁止のため、内部画像はありません)
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4.アート&デザインミュージアム(MAD)
ア.日 時:5月16日(金)
イ.視察者:県経済・文化調査団
石井知事、中井社長、梅田会長、大澤・般若・釈永(作家)、佐野部長、雪山館長、
宮崎課長、中川主幹
ウ.同 行:土肥富山県人会長
エ.相手方:グレン・アダムソン館長
バーバラ・トンバー顧問(グローバルリーダーシップ委員会理事・会長)
ローリー・スミス主任学芸員、ローン・ラバコ学芸員
オ.内容要旨
○グレン・アダムソン館長から美術館について説明を受けた後、活発な質疑応答と情報収集を行い、
その後ローリー・スミス学芸員から館内を案内していただいた。
アダムソン館長説明概要
○同館は、創立時から幾度かの組織改編、改名を行っている。
1956 年 MMC(Museum
1979 年 ACM(American
2002 年 MAD(Museum
of Contemporary Craft)
Craft
of Arts
Museum)
and
Design)
2008 年 現ビルに移転、リニューアルオープン
○現在の館名(MAD)とした時には、現代工芸を主として取り組む美術館でありながら、「クラ
フト」をやめ、「アート&デザイン」と変えたことに非常に意味がある。現在の美術館は、狭義の「ク
ラフト」の枠を広げ、クラフト(及びクラフトデザイン)の外にある分野、絵画、彫刻、ファッシ
ョン、産業技術など、すべての表現形式を盛り込む活動を目指している。
○そのため、①アーティスト(作り手)が作っている過程への注目 ②プロダクトデザインのような
量産品についてのデザインソースへの注目、この2点に注意し、広い分野を取り上げるだけでな
く、深く掘り下げるよう心がけている。
○また、伝統的な手仕事から最先端のデジタル技術まで、片足は過去(根源)、片足は未来(新しい
素材・技法・表現)に置く考えで活動しており、開催中の企画展「Out of hand」に端的に表れて
いる。新しいアイディアをぜひ楽しんでほしい。
質疑応答
Q.レクチャールーム他の施設について知りたい
○地下のレクチャールーム(147 席)はシアター、トークショー、ダンスパフォーマンス等に利用。
主として館主催の行事に使用。上を地下鉄が通るが音は気にしていない。
2~5 階は展示室、3階に映像検索装置(1台)を併設。
6階はエデュケーションセンターとし、創作スタジオ(3室)がある。
7階は特別イベント会場とし、企業等のレセプション会場として貸出も行う。
○入館者数は1日400~600人、イベント開催時は1000人ほど。夜間開館時は若い層の来
館、週末や夏季はファミリー層の来館が多い。リピーターには、デザインやファッションを学ぶ
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学生が多い。
○エデュケーションプログラムとして年間約1200件のプログラム(ツアーガイド、ワークショ
ップ等)を実施、そのスタッフは正規職員5名と臨時職員5名とボランティアで実施。
Q.MoMAやメトロポリタン美術館のような大規模館が取り上げる『工芸』部門との違いは何か。
○特にデザインにフォーカスした活動をすること、また、来館者が多様な体験をし、創作のプロセ
スに触れることに特化している。
Q.富山近美もデザインを積極的に取り上げているが、ファインアートとデザインではファン層が
違うように感じるがどうか。
○その傾向はアメリカでも同じであり、差を埋めるためには、双方の共通する部分を取り上げる企
画をするべきと考える。
Q.活動資金について(運営費のうち、公的資金はどの程度の割合か)
○アート&デザイン美術館はNPO法人である。
○アメリカの美術館は、どこも、ほぼ官民共同で運営しており、公的資金の割合は 5~20%。
○95~80%にあたる資金は、同館の場合、①個人の寄附(メンバーシップ)20%、②企業スポンサー
収入(ロゴ掲載や会場使用料)30%、③観覧料、④ショップ、レストラン収入(③④あわせて 45%)
、
⑤基金の繰り入れ、以上で賄っており、総額は約150万ドル(年間)、収支はゼロになればよい
が、今後は基金を増やすよう努力したい。
施設見学
○企画展「Out of hand」
世界 20 ヵ国 80 作家の 140 点を 6 セクションに分け展示。3Dプリンターで創り上げた椅子やオ
ブジェ、装飾品、音やリズムを聞き分けて立体化する試みなど、最新のコンピュータプログラム
を駆使した作品制作の様相を見る展示。テクノロジーによって創作の可能性が広がることを提示
しており、こうした視点は富山県の新美術館にとって大変参考になると思われる。
○エデュケーションセンター(創作スタジオ)
適度な広さ(20 畳程度)の片面ガラス張りの創作スタジオが 3 室あり、それぞれに作家が滞在して
創作過程を公開している。来館者が参加して共に創作することもあり、こうした試みは作家の考
えを知るだけでなく、美術と来館者を親密にする点でとても有効だと思われる。
○映像検索装置
液晶ディスプレイによる収蔵品検索システム。トップ画面にサムネイルサイズの作品画像がびっ
しりと並び、タッチするとピックアップして拡大したり、作品データを知ることができる。材質
や制作年代による並べ替えが可能。どんなテーマで検索をかけるか充分に検討すれば、コンパク
トで有効な映像システムだと思われる。
○ミュージアムショップ
作家制作のオリジナルアクセサリーや食器が多彩に展示され、終始にぎわっている。ショップだ
けが目的の来館者も多く、独自の商品開発は、新しい美術館運営に不可欠の要素だと思われる。
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MAD外観
スタッフとの面談
入口
トンバー顧問とアダムソン館長
企画展「Out of hand」展示作品
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企画展「Out of hand」展示作品
画像検索装置(展開中)
インタラクティブな作品解説装置
同 トップ画面
創作スタジオ
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5.グッケンハイム美術館
ア.日 時:5月17日(土)
イ.視察者:県経済・文化調査団
石井知事、中井社長、梅田会長、佐野部長、雪山館長、布野課長、宮崎課長、太田班
長、荻布班長、中川主幹
ウ.同 行:土肥富山県人会長
エ.内容要旨
○建物は、「カタツムリ」の愛称をもつ、建築家フランク・ロイド・ライトが設計した世界でもっと
も有名でユニークな建築物のひとつ。最上階までエレベータで上がり、そこから螺旋状に降りな
がら作品を鑑賞するという設計になっている。近現代専門の美術館で、土肥会長の案内で館内の
見どころを効率的に見学できた。
○企画展は「イタリア未来派」を開催中で、絵画、彫刻のみならず、映像、出版、建築など多様な紹
介につとめた大規模なもの。難解な作品も多いが、時代背景をあわせて楽しめる内容になってお
り、こうした工夫は大いに参考になった。
○展示を見ながら降りてくる途中に、映像コーナー、ライブラリー、休憩コーナーが適度に配置さ
れ、鑑賞者を飽きさせない工夫が各所に見られるほか、新設されたアネックスでは本県の近代美
術館同様、市内の学校とグッケンハイム美術館との共同による子どもたちの芸術活動も行われて
いる。土肥会長からは、こうした活動は、この先、発展するためにさらに何をどうしていくか工
夫が必要との意見があり、新しい美術館の教育活動において参考になったと感じている。
グッゲンハイム美術館外観
内観
ライブラリー
(撮影禁止のため、展示室等の画像はありません)
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6.ニューヨーク近代美術館(MoMA)
ア.日 時:5月17日(土)
イ.視察者:県経済・文化調査団
石井知事、中井社長、梅田会長、佐野部長、雪山館長、布野課長、宮崎課長、太田班
長、荻布班長、中川主幹、杉原係長
ウ.同 行:土肥富山県人会長、大西なな氏
エ.内容要旨
○世界最初で最大の近現代美術館であり、2004 年には日本人建築家の谷口吉生氏によりリニューア
ルされている。土肥会長及び大西なな氏の案内で、館内の見どころを効率的に見学した。
○かねて見たいと思っていたセザンヌや、本県近代美術館にもあるピカソ、ミロ、ジャスパー・ジ
ョーンズのまとまった作品群などを実見でき、有意義であった。
○展示作品数が多く、来館者はマップを片手に目当ての美術品を探すことを楽しんでいる様子であ
った。また、デザイン部門展示は、ポスター、椅子等のほか、調度品や装飾品まで収集範囲が広
く、その時代の特徴をあらわすように複合的、博物館的な展示になっている。ポスターと椅子を
主とする本県の新近代美術館では、収集内容の特徴を生かした最先端の展示空間を目指すべきと
感じた。
○中庭の庭園では、多くの緑とともに彫刻作品が展示してあり、都会の真ん中とは思えない空間を
演出していた。
○新設の別館には、地下 1 階から 2 階までを使ってのエデュケーションセンターとなっており、学
校等の団体見学、親子で簡単な創作をするコーナーなどが設けてあった。
○本県近代美術館とは規模が異なるので一概には言えないが、環水公園に設置する新近代美術館の
環境整備や展示手法に大いに参考になったと感じている。
上:展示室
左:中庭
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