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複合斜張橋・新湊大橋(仮称)の桁の空力振動特性
I-096 土木学会第58回年次学術講演会(平成15年9月) 複合斜張橋・新湊大橋(仮称)の桁の空力振動特性 国土交通省 北陸地方整備局 正会員 新保 修,石山幸 夫,柳 幸一 日立造船㈱ フェロー 植田利夫,正会員 畑中章秀,正会員 山口映二 1.まえがき 新湊大橋(仮称)は日本海側の広域国際交流拠点となる伏木富山港の臨港道路富山新港東西線として計画 しており,図-1 に示すような中央支間 360m,全長 600m の複合斜張橋(中央径間:鋼桁,側径間:PC 桁) である.本橋は降雪時,寒風時などにも自転車 利用者・歩行者に便宜を図るため,図-2 に示す 600m 中央径間360m 側径間120m 側径間120m ように桁下に自歩道を設置した.このため橋全 幅と高さの比が 3 程度の鈍い断面となり,耐風 性上大きな問題となった.また,冬季には積雪 が予測され,積雪時の耐風性確保も検討課題で あった.本論文では,原設計断面の空力特性と 耐風対策および積雪時の耐風性について述べる. 2.風洞試験要領 縮尺 1/50 の剛体部分模型を用いた 2 次元ばね支持試験を日立造船(株)所有の 低速汎用風洞で行った.固有 振動解析の結果,鉛直曲げ1次・ねじれ1次モ−ドでは側径間 PC 桁部のモ−ド寄与が極めて小さいことから 中央支間の鋼桁部のみを対象とした.表-1 に実橋および模型諸元を示す.自歩道の側部は透明板があり,そ の上下には自然換気が可能な充実率 60%のパンチングメタル板が設置される風の透過構造のため,模型では当該部 を同充実率のネットとし,内部の自歩道も再現した. 表-1 振動諸元 13400 12100 9500 単位 鉛直たわみ 実橋諸元値 模型諸元値 模型調整値 0.44 - 2.01 1.13 - 5.20 2.59 2.59 2.59 Hz 2.0% 固有振動数 2.0% ねじれ 2500 4500 振動数比 検査 車レール 3000 自歩道部 検査 車レール − 2 等価質量 外装パネル部 1240 0.50 0.50 kgf・s 19284 0.0031 0.0031 − 0.02 0.02 kgf・s /m 2 等価質量慣性モーメント 構造減衰 (対数減衰率) 2 鉛直たわみ 0.020 ねじれ 0.020 図-2 原設計桁断面 図-2 に示す原設計断面の一様流中,迎角α=+3°の空力 4 振動応答(最大値)を図-3 に示す.10m/s 強で 40cm 程度 の鉛直たわみ渦励振,照査風速 65m/s 以下の 25m/s 付近か らねじれフラッタ−が発生している.また,他迎角でも渦 0 強さ 10%の乱流中では,渦励振振幅は若干低減,フラッタ 風性は極めて悪い. 2 1 励振およびフラッターの発生が認められた.一方,乱れの −発生風速はα=+3°で約 10m/s 上昇する程度であり,耐 3 100 鉛 直 た わ み ( cm) 5 ね じ れ ( deg) 3.原設計案の空力振動特性 80 ○ 鉛直たわみ ● ねじれ フラッター照査風速=65m/s 60 40 100gal相当振幅=10.8cm 20 0 0 25 50 100 図-3 バネ支持試験結果(一様流・迎角+3°) キーワード:複合斜張橋,渦励振,ねじれフラッター,積雪影響 日立造船㈱ 〒551-0022 大阪市大正区船町 2-2-11 TEL06-6551-9239,FAX06-6551-9841 -191- 75 実橋換算風速(m/s) I-096 土木学会第58回年次学術講演会(平成15年9月) 4.耐風対策 耐風対策として出来るだけ小規模な変更に留めることを前提に地覆外側部のコ-ナ-カット,隅切り,フラップ,デフ レクタ-(導流板)の付加などを検討したが,満足しうるものがなかった.そこで,両側部のフエアリング形状を変化さ せ,その先端角度を 60°に設定したところ大幅な耐風性改善が認められたため,さらに,フラップ,下導流板 などの併設を検討した.各対策案の対風応答を図-4 に示す.これより,対策後は一様流中でのわずかなたわ みの渦励振が 10m/s 強で,ねじれの渦励振が 25m/s 強で発生するのみで,10%乱流中ではいずれも殆ど消滅した.付加物を設置 しない対策案 B でもたわみ渦励振は 50Gal 程度であり,車輌走行性に支障がなく,また,歩行者の感覚も文 献(1)に従えば,不快に感じる評定率が1%以下で問題なしと判断される.耐風性では対策案 A,C の方が望 ま しいが,付加物のメンテナンス,コスト増を避けるため,対策案 B で施工することになった. CL CL CL フラップ1m 対策案 A 対策案 B フラップ1m 対策案 C フェアリングを変更 (先端角60°) 100gal相当振幅=10.8cm 60 40 3 2 1 20 0 0 0 4 25 50 75 100 0 ○ 鉛 直た わみ ● ね じれ フラッター照査風速=65m/s 100gal相当振幅=10.8cm 60 40 20 4 3 2 1 0 0 実橋換算風速(m/s) 25 50 75 100 5 80 鉛 直 た わ み ( cm) 1 80 100 ね じ れ ( deg) 2 フラッター照査風速=65m/s 鉛 直 た わ み ( cm) 3 5 ○ 鉛直たわみ ● ねじれ ね じ れ ( deg) 4 100 鉛 直 た わ み ( cm) ね じ れ ( deg) 5 フェアリングを変更 (先端角60°) フェアリングを変更 (先端角60°) 桁下導流板1m 80 60 フラッター照査風速=65m/s 100gal相当振幅=10.8cm 40 20 0 0 0 100 ○ 鉛直たわみ ● ねじれ 25 実橋換算風速(m/s) 50 75 100 実橋換算風速(m/s) 図-4 対策断面のバネ支持試験結果(一様流・迎角+3°) 5.積雪時の耐風性 伏木富山地区では既往の最大深雪デ−タから 5 年に一度は1m の積雪が予測される.本橋の鋼桁部の舗装 路面には融雪装置が埋込まれるが,地覆・高欄部は除外されている.そこで,1m の積雪 により高欄部が全 閉される状態を想定して空力振動応答の変化を調査した.図-5 に結果を示す.なお,冬季積雪時における 100 年間の最大風速の期待値は 34m/s である.対策案 B で一様流中,α=+3°では 34m/s で 5°のねじれの渦 励振が発生するが,10%乱流中ではその発生が 40m/s に上昇している.なお,この 5°のねじれに対する構 造強度の安全性は問題のないことを確認している. 4 2 0 100gal相当振幅=10.8cm 80 40 0 0 25 50 75 実橋換算風速(m/s) 100 8 160 6 120 4 2 0 冬季最大風速=34m/s 80 40 0 0 25 50 75 100 8 160 6 120 4 2 0 鉛 直 た わ み ( cm) 120 フラッター照査風速=65m/s 対策案C ね じ れ ( deg) 6 ○ 鉛直 たわ み ● ねじ れ 鉛 直 た わ み ( cm) 160 対策案B ね じ れ ( deg) 8 鉛 直 た わ み ( cm) ね じ れ ( deg) 対策案A 冬季最大風速=34m/s 100gal相当振幅=10.8cm 80 40 0 0 実橋換算風速(m/s) 25 50 75 100 実橋換算風速(m/s) 図-5 積雪時を想定したバネ支持試験結果(10%乱流・迎角+3°) 6.あとがき 将来のメンテナンスを避け,経済性面から付加物を設置しない対策案 B で施工することに決定したが,供用開始 後の動態観測の結果,車輌走行性や歩行者の感覚面で改善する必要ありと判断できれば,より耐風性の良好 な対策案 C に対応するフラップを後付できるよう配慮していることを付記しておきたい. 本業務遂行にあたりご指導を頂きました伏木富山港(新湊地区)臨港道路技術検討調査委員会(委員長:長井 正嗣長岡技術科学大学教授)の委員各位に感謝致します. 参考文献 1) 京都大学工学部土木工学教室橋梁工学研究室・システム総合研究所:本州四国連絡橋公団第三 建設局委託研究成果報告書「大島大橋使用性に関する調査研究」,昭和 63 年 2 月 -192-