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資料23-36 - 東京大学宇宙線研究所神岡宇宙素粒子研究施設

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資料23-36 - 東京大学宇宙線研究所神岡宇宙素粒子研究施設
底面光電子増倍管交換作業が増倍管に与えた影響を評価するための交換作業シミュレーシ
ョン
2001年12月15日 金行
健治
2001年の底面光電子増倍管交換作業では、増倍管の上に直接発泡スチロールボードを
置き、その上に作業者がのって交換作業をおこなった。この交換作業が増倍管になんらか
の影響を与えた可能性を調べるため、底面光電子増倍管のモックアップを作り、交換作業
シミュレーションをおこなった。
モックアップ
光電子増倍管交換作業の前に交換方法を確認するために使用した架台に、交換作業で交換
した光電子増倍管12本をスーパーカミオカンデで実際に増倍管を取り付けているのと同
じ方法で取り付けた。交換作業シミュレーション中に増倍管が破損した時の安全確保のた
めに、補助台を各増倍管の周りに設置し、各増倍管の前面をビニールカバーで被い、架台
側面全体を鉄板で囲った。
(図1、2)
交換作業シミュレーション
交換作業をシミュレートするために交換作業時に増倍管に影響を与えた可能性のある作業
の作業量を以下のように評価した。
歩行:底面増倍管交換作業は底面の1/4単位で行った(円の4分割象限に相当)
。事故の
原因となった可能性のある第一象限で交換した増倍管の数は約30本。作業者6人
全員が底面入口から交換した増倍管まで1往復したとして同じ増倍管上を歩いた回
数は 30×6×2=360 回以下。(360 回になるのは交換した30本の PMT が同じ場所
にあった場合)
増倍管取り換え作業:10 分/交換した増倍管
清掃: 清掃自身は 1 分/増倍管。ただし清掃時ロの字型のボードを使ったので、力が加
えられた時間は約 10 分/増倍管。
これをシミュレートするために以下の作業をモックアップ上で行った。
歩行:ボード上を二人で歩き回る。
1枚で12本の増倍管をカバーできる大きさのボードをしき、加重が12本の増倍
管に一様にかかるようにする。3×4にならべられた増倍管の頂点を一回ずつ歩く
と約8m、歩行速度を毎時4kmとすると、2人で 8m×360 回 / (4km/時×2 人) =
約 22 分で各増倍管の上を360回歩いたことに相当する。
取り換え作業:
取り替えに使用したロ型穴あきボードの大きさは3×3の増倍管に荷重がかかるよ
うになっていて、中心にあるロ型の穴を通して増倍管の取り替え作業を行う。そこで
3×4配置のうち中心部分の増倍管 LM7043, KM4151 を交換するシミュレーション
を行った。3×3のロ型ボードをしいてその上に 2 人乗り、10 分間 LM7043 の交換作
業をおこなったのと同様の力を加える。増倍管 1 列分ボードをずらし、同様に KM4151
増倍管の交換作業をシミュレートするため 10 分力を加える。
清掃:取り替え作業に使ったものと同じ3×3のロ型のボードを、また2×3の増倍管上
に板型のボードをしき(ボード半分の1×3部分が増倍管に当たり残り半分はロ型
ボード上に乗る)、 その上に2人乗り(実作業時は1人)
、LM7043 の清掃を5分間
シミュレートする。ボードの位置を反転させて KM4151 に対して同様の作業をおこ
なう。
以上の作業を 8 回分行った。それぞれ実際の作業と比較すると
歩行:底面の端の方 80-240 倍
出入口周辺
8 倍程度 (60 増倍管の出し入れを 3 人で行った時に相当)
取り換え作業:
(1−2)×8 = 8−16倍
(ロ型のボードを使い作業を2回行ったため、4増倍管は2回(GJ4215, GH7620,
、8増倍管は1回圧力がかかる)
JK7344, GH5313)
清掃:(1−2)×8 = 8−16 倍
(ロ型のマット+板型のマットを使い作業を 2 回おこなったため、2増倍管は1回
(LM7043, KM4151)、10増倍管は2回力がかかる。)
の作業をおこなったことに相当する。
以上のシミュレーションをおこなった後、加圧テストのため浜松ホトニクスに増倍管に送
った。
また、歪み計を増倍管に装着し作業によってどの程度のストレスがかかるか測定した。そ
の結果を本報告の最後に添付する。
図1
モックアップ
図2
シミュレーション時の PMT の配置
|
|
コンテナ ハウス
----------------------------------------------------------------------------JK7690
GJ4215
GH7620
LM7126
GH7646
LM7043
KM4151
JK7451
AF4395
JK7344
GH5313
C D 5194
底面光電子増倍管交換作業シミュレーションにおける光電子増倍管のひずみ測定
2001 年 12 月 19 日
吉田
誠
2001 年に行なった底面光電子増倍管(以下 PMT と記す)交換作業において、作業者が発
泡スチロールボードに乗って作業したときに PMT の各部にかかる応力を見積もった。
測定箇所
底面モックアップの角に取り付けられた PMT(AF4395)の側面6箇所に、縦方向のひず
みを測れる向きでひずみゲージD‘を貼り付けた。D についてはさらに円周方向も測れる
よう、横向きにもうひとつのゲージを貼り付けた(図1,2)
。位置は以下のとおり。
取り付け位置
PMT 頭頂からの 備考
高さ
A
-12 cm
直径が最大の部分より上側
B
-29 cm
直径が最も大きい部分
C
-31cm
直径が小さくなっていく途中
D、D’(円周方向) -39cm
直径が最も小さくなったくびれ部分
E
締め付けバンド付近
F
締め付けバンドをモジュールに固定している場所
付近
ひずみ測定
以下のそれぞれの場合について PMT の各部に生じるひずみを測定した。
(1) 実験室内に設置された底面モックアップの PMT の上に置かれた発泡スチロールボ
ード上(ひずみゲージを貼り付けた AF4395 の真上)に一人の研究者(体重 75kg)
が乗り、静止している状態。
(2) ボード上( AF4395 の真上)の研究者が体をゆすった場合。ただし、PMT の根元は
バンドで締め付けられており、バンド 2 箇所をモジュール構造体の取付金具にねじ
留めされているため、ねじ止め位置を結んだ線に平行な向きと垂直な向きのそれぞ
れについて PMT を振動させてみた。
(3) ボード上の乗る位置を変えて静止した場合。乗った位置は図3の三角印1から4の
4 箇所。
(4) ボード上を歩いたとき
(5) 交換作業用のロの字発泡スチロールボード上で体重移動したとき
側面に貼り付けたひずみゲージ(
(株)共和電業 KFG-2-120-C1-16)の読み出しはひずみ
測定器(
(株)共和電業 DPM-711B)で行い、この出力をデジタルオシロスコープで記録
した。ひずみゲージの貼り付けにはエポキシ系の接着剤を使用し、貼り付け位置 A,B,C.D
については貼り付け後36時間、D’,E,F については1時間経ってから測定した。
測定結果
ひずみ測定器からの電気信号をオシロスコープで読み取り、ガラ スのヤング率を
6.5 × 105 kg/cm 2 として各部にかかる応力を計算した。電気ノイズや読み取り誤差のため測
定値には 0.2kg/cm 2 または 20%程度の誤差(どちらか大きい方)がある。
それぞれの測定の結果を以下に記す。
(1)および(2)
以下の表のとおり(単位は kg/cm 2 )。
静止(伸び側がマイナ 振動振幅(取付金具に
ス)
平行 / 垂直)
A
-2.1
0.6 / 0.8
B
-3.0
0.8 / 1.2
C
-1.8
0.6 / 1.2
D
1.5
0.0 / 1.5
D’(円周方向)
-6.0
1.5 / 3.6
E
0.2
3.9 / 2.4
F
0.5
2.7 / 1.8
静止状態で最も大きな応力が生じた D’の記録を図4に載せる。この図の横軸は時間、
縦軸はひずみ検出器からの出力電圧で、100mV がおよそ 3kg/cm 2 の応力に相当する。
図中の記録線は上からそれぞれ C,D’,D に対応する。この図からボードに乗った瞬間
(図中で 25 秒付近)に最大応力 6kg/cm 2 が円周方向伸び側に達したことがわかる。
(2)振動させたときに最大のひずみを生じたのは E で、図5にその様子を載せる。図中
の前半は取付金具に平行にゆすったとき、後半は垂直にゆすったときの様子で、上か
らそれぞれ C,E,F に対応する。
(3)ボード上のそれぞれの場所に乗った時に各部にかかる応力は以下のとおり(単位は
kg/cm 2 )。
ボード上の
乗った場所1
場所2
場所3
場所4
B
-1.1
-2.7
-0.5
-1.2
C
0.5
1.1
0.3
0.6
D
0.6
1.1
0.2
0.8
PMT の真上に乗ったときに比べて、そのほかの場所では小さな応力しかかからない
ことがわかった。
(4)足場上を歩いたときのひずみは、図6より最大で 2.4kg/cm 2 であった。
図にある周期構造は 6 本の PMT の間をおよそ 10 秒周期で往復したことによる。
(5)図7はロの字型足場でのひずみの様子で、足場の形状による顕著な影響は見られな
かった。
ただし、
(3)
(4)
(5)については B,C,D の3点のみ測定した。
考察
今回測定したひずみの中で最大のものは D’であった。この位置では縦方向に圧縮、円周方
向に引っ張りの応力が働くことがわかった。測定(1)と(2)を比較すると、ボード上
で静止しているときは PMT の上部分に引張り応力がかかっているが、ゆすることによって
PMT のくびれ以下にさらに大きな応力が働くことがわかった。ゆすったときの応力の振幅
は 3.6kg/cm 2 なので、PMT の交換作業に伴い最大10kg/cm 2 程度の応力が働いた可能性が
ある。ガラスの引張り強さ( 300kg/cm 2 から 900kg/cm 2 (理科年表)
)にくらべ、この結
果は十分小さく、交換作業は安全なものであったと思われる。また、繰り返し荷重したと
きのガラスの疲労については破壊係数の30%以上の荷重が加えられると無視できなくな
るが(共立出版 ガラス工学)
、今回の PMT 交換作業シミュレーションでは十分無視でき
るものであった。
図 1
ひずみゲージの貼り付け場所。
図 2
ひずみゲージの貼り付けの様子。
GJ4215
LM7043
JK7344
研究者が乗
った位置
1
ひずみゲージを
3
JK7690
図 3
JK7690
4
2
張った PMT
AF4395
ボード上の乗る場所による PMT にかかる応力の変化の測定
図 4
静止状態での PMT 各部のひずみ。
図 5
ゆすったときの PMT 各部のひずみ
図 6
ボード上を歩いたときのひずみの様子。
図 7
ロの字型ボードに乗ったときのひずみの様子。
1/5
平成13年12月21日
浜松ホトニクス株式会社
報告書
1.表題
R3600-05(
(20”PMT)底面
)底面作業シュミレーション済品の圧力試験
)底面作業シュミレーション済品の圧力試験
2.目的
スーパーカミオカンデにおける底面交換作業と同様なシュミレーションを行った PMT
について圧力試験を行い影響を調べた。12本試験を行ったうちの破損した1本につい
て報告する。
3.条件
資料
R3600-05 GJ4215 (1BP2P4D-W)
底面作業シュミレーション済品
試験
放置試験
圧力
6.5 気圧
放置時間
1昼夜(約 24 時間)
使用機器 HPK圧力試験機
4.経過
12月13日(木)
14:10
PMT 入れ替え作業開始
14:50
圧力印加:6.5 気圧 室温 14℃
17:40
圧力確認:6.3 気圧になっていたため 6.5 気圧に上昇させた。
12月14日(金)
5.結果
10:30
圧力確認:0 気圧 室温 12℃
11:20
PMT 取り出し開始。(圧力試験機内が負圧の状態であることを確認)
破損を確認(写真参照)
写真1.
写真1
シリアル番号カード
写真 1.
2/5
写真2.
写真 2.
圧力計の指示が0を指示している。
写真3.
写真 3.
PMTを水槽から引き上げた状態。
保護袋の下部から水が溢れでている。
写真4.
写真 4.
保護袋をとった状態。
くびれの部分でクラックが入り完全に二つに分離し
ている。
写真5.
クラックしたバルブをとった状態。
写真 5.
3/5
写真6.
写真 6.
クラック部分の状態。
縦にもクラックが入っている。
写真7.
写真 7.
破片の一部
(一番大きなもの。その後2∼3個に折れ分割してし
まった。
)
6.クラック部分の状態
底面作業シュミレーション済品12本のうち、圧力試験において破損した GJ4215 についてクラック状
態の詳細な観察を行った。
写真8.はクラックした全体の状態を示す。φ254
の
写真8.
写真 8.
バルブのストレート部分より少し光電面側(約φ310
の位置)でほぼ水平に破断されている。
また、光電面方向及びステム方向に各1本の縦方向の
クラックが伸びている。(それぞれの位置関係につい
ては写真 11.参照)
写真 9.
縦方向のクラ
ック(約 26cm)
縦方向のクラ
ック(約 5cm)
4/5
写真10.は破断面を真上から見た状態である。
写真10.
クラック端からおよそ 5∼10mm 付近のガラスの厚さをマイクロメータを用いて測定を行った。
2.90mm
縦方向のクラ
写真 10.
ック(約 26cm)
2.65mm
2.31mm
2.32mm
(矢印位置
矢印位置)
矢印位置
縦方向の
写真11.
写真 11.
クラック
矢印付近より左右対称な模様でバルブの内側に幾筋も
のクラックが入っている。これらのクラックは表面まで
には達していない。以上のことから矢印付近を始まりと
して、外側からの力によりバルブ内側にクラックが入り、
最終的に二つに破断されてしまったと考えられる。
写真10.に記入したガラスの厚さからこの部分が他に
比較し多少薄くなっていることがわかる。
また、縦方向のクラックについてはバルブが変形したた
めに発生したものと考えられる。
写真12.はステム側のクラック部分の拡大写真である。
写真12.
写真 12.
バルブの内側に幾筋ものクラックが入っている。
矢印
縦方向の
クラック
5/5
写真13.は光電面側バルブのクラック部分の拡大写真
写真13.
写真 13.
である。
ステム側と同様にバルブの内側に幾筋ものクラックが入
っている。
写真14.は光電面側のバルブである。
写真14.
写真 14.
矢印付近(写真 11.に示したものと同位置)からクラッ
クの模様が左右へ対象的に分かれている。このことから
矢印(マジックの印)付近よりクラックが発生していっ
たと推測される。
7.バルブの肉厚
本PMTに用いたバルブの肉厚データを表に示す。
A
B(2.0∼5.0)
C(2.0∼5.0)
(2.5∼7.0)
イ
ロ
ハ
ニ
イ
ロ
ハ
319
3.9
2.5
3.2
3.3
2.7
3.2
3.1
3.2
(A:光電面中央部、 B:最大径の部分、 C:φ254 ストレート部分)
No.
ニ
2.9
( )内の数字は規格値を示す。
8.外観の確認
傷などの外観の確認結果、圧力試験によるクラック以外の部分について特に変化は認められなかった。
月日
11月21日
12月11日
12月14日
結果
微小な傷1カ所あり
前回確認時と変化なし
破損以外の変化なし
備考
最初の外観確認
底面作業シュミレーション後
圧力試験後
9.その他
本ガラスバルブの製造を行った日本無線硝子に調査を依頼した。内容については別途報告書を参照下さい。
以上
平成 13 年 12 月 26 日
浜松ホトニクス株式会社 御中
日本無線硝子株式会社
営業部長 小林弘志
製造部長 若井聖司
加圧テストにおいて破損した PMT(GJ4215)の破損原因について
1.現象の確認
① サンプルは同一円周上で破損し、本体の部分とネックの部分に分かれております。
(写真1)
② 破損部分を詳細に観察しましたが、傷は発見されませんでした。(写真2)
③ 前回の検査で発見された傷はありましたが破壊の原点ではありませんでした。
④ 本体破損部位から20mmずれた部分の肉厚を計りましたが、別図のような寸法で
した。
(基準位置は御社にて矢印をつけた部分とします)
⑤ 破損部分の直径はおおよそφ310mmでした。(写真1)
⑥ 原点と思われる部分から左右に走る割れを確認しました。
⑦ 肉厚方向で見ると剥離したような部分が確認されました。(写真 3)
⑧ サンプルは PMT 交換時の作業をシミュレートしているとのレポートを読みました。
2.考 察
① 破損部分の直径φ310mmの部位はR150の円弧とR65の円弧が交わる部分
にほぼ一致しています。この部分は応力が集中すると破壊しやすい部位と思います。
② 肉厚は2mm以上あり、ほぼ平均的な値でこのサンプルに特に問題があったと思いま
せん。
③ 剥離した部分については、普段あまり見られない現象です。剥離は表面が上の部位も
あれば、逆の部位もありました。
④ 前回の観察でも見たとおり、バルブ表面に水に長時間漬かっていたことによる劣化は
見られませんでした。
3.結 論
① 一般的なガラスの性質として応力を受けると、その部位にひずみが発生しますが、応
力を開放した時点でひずみも解消すると考えられていますが、絶対に残らないとも言
い切れないところがあります。従ってこのサンプルにひずみが残るとしたら、破損し
た部位付近であり、破損するとすればサンプルのようになると考えられます。
② 破損部分の肉眼による観察では見つけられませんでしたが、ごく微細なクラックがあ
った可能性はあります。
③ 破損の状況が同一円周上にあることから、バルブの状態はきわめて均一で良好な状態
であったと言えます。その場合、考察①で述べたRの交点部分がもっとも応力を受け
やすいと考えられます。
④ 剥離現象の原因については応力がバルブ全体に加わることによって、バルブが徐々に
変形し、破損部位付近で応力に抗しきれなくなって内側に向かって破壊したために起
こった現象ではないかと考えますが、特定はできません。
以上
図1
破損位置と肉厚
写真1(本体部全体)
写真2(原点と思われる部位)
写真3(剥離が見られる部分)
資料:誘爆実験のセットアップ
誘爆実験はSKで起こった事故を再現することを目的としている。このため、9 本(3x
3)の増倍管(PMT)をスーパーカミオカンデ(SK)と同じ間隔で配置し、中央に位置す
る PMT を人為的に破壊し、衝撃波や水流が周りの PMT にどのように影響するかを観測す
る。PMT の取り付けには、縦212cm、横288cm、高さ270cm、重さ800k
gの専用フレームに、SK で実際に用いられている金具を取り付けて固定している。実験用
フレームには最大3X4=12個のPMTを取り付けることができるが、本実験では9個
のPMTを用いた(図1上)
。このフレームをクレーンで、事故当時とほぼ同じ水深約30
mのSK内水槽底部までで下ろし(図1下)
、誘爆実験を行う、本実験で使用するPMTは
2000 年夏のPMT交換時に取り替えられたPMTであり、それまで5年間、水中にあった
ものである。交換した理由は電気的なものであり、これら PMT には機械的問題は全くない。
図 1 誘爆実験での PMT の配置と実験用フレーム
図 2 誘爆実験の位置
」
図2に誘爆実験装置の位置を示す。実験装置は、SK の所謂点検口(3x4フレーム 2 個分
の大きさ)を利用して水中に下ろした。最初に破壊する PMT の位置を赤い点で示す。タン
ク中心からは10.2m、内水槽までの距離は6.3m、タンクの壁面までは9.0mである。
また、破壊時において、PMT最大径部から内水槽底部(遮光シート)までの距離は95
cm、タンク底部までは355cmである。
誘爆実験には高速ビデオカメラ、歪みゲージ、圧力計、水流計、ハイドロホーンが測定
に用いられた。高速ビデオは1コマ2ミリ秒に対応している。10 ミリ秒程度である爆縮の
様子が時間経過にそって映像としてとらえられることが期待される。高速ビデオカメラは
実験が行われる水深およそ30mの水圧とPMTの破壊の際に出される衝撃波から保護す
るために、厚さ30ミリのアクリル窓の付いた耐圧容器に収められている。
図 3
上部に取り付けられた高速ビデオカメラ。圧力容器の中に入っている。
圧力計はセンサー部に圧電素子としてトルマリンを用いている。圧力計は最大 138MPa
まで測定可能で応答が速く(1.5µsec)
、20G の衝撃まで耐えることができて、爆発圧・衝
撃圧の測定に通常用いられている。
図 4
圧力計。右図は設置されている様子。
歪みゲージはPMTの表面に取り付けられ、PMTが衝撃を受けたときガラスの歪み情
報を与える。
図 5
PMT取り付けバンド付近の歪みゲージ
PMTの最初の 1 本の破壊は図6のような破壊装置「プッシャー」で行われる。これは
電気信号を受けると、シリンダー内後部の薬莢が爆発して先端部に取り付けられた高さ2
0ミリ直径60ミリの円錐状の先端部を初速およそ1トンの力で押し出す仕組みになって
いる。プッシャーは、2cmほど飛び出し PMT 内部で停止する。これをPMTの大口径か
ら小口径に移る部分に設置し、横からPMTを破壊する(図6)
。
図 6
PMT破壊装置「プッシャー」
図 7
プッシャーの設置の様子
9個のPMTを用いた誘爆再現実験は3回(Test 9-1, 9-2, 9-3)行われた。
Test 9-1: 図8
日時 2001年12月26日14時28分
水深 27.9m(PMTの最大径の位置)
圧力計は破壊されるPMT5の真上、高さ140cmに4本取り付けられた。
同位置に取り付けた理由は、圧力計の相互チェックのためである。高速カメラ
はPMT4の上方からPMT5を中心に収めるように設置した。歪ゲージはP
MT2,5,4,8小口径部に周方向の歪みを検出するように取り付けられた。
図中に誘爆実験に使用されたPMTが、交換前にSKのどの場所にあったかを
示す(側部/底部)
。図の上部が水槽の中央方向を向いている(以下同様)。
図 8
Test9-1 のセットアップ
Test9-2:
図9
日時 12月27日13時36分
水深 27.8m
圧力計をPMT1,5,7,9の上方に取り付けた。また、歪みゲージはP
MT2,4,5,6のそれぞれ破壊されるPMT側の小口径部に周方向の歪
みを検出するよう取り付けられた。高速カメラは9本のPMTをフレームに
収めるため、PMT5と6の中間の真上でPMT面から高さ250cmの位
置に設置した。
図 9
Test-9-2 のセットアップ
Test9-3:
図10
日時 12月27日17 時31 分
水深 27.8m
圧力計、歪みゲージの位置は Test9-3 と同じであるが、高速カメラが横からP
MT8を中心にとらえるように、PMT7の後方のフレームにPMTと同じ
高さに設置した。
図10
Test9-3 のセットアップ
以下に Test9-3におけるPMT破壊の瞬間と残骸の様子を示す。図11は水中カメラを
PMT1とPMT2の中間からおよそ2mの位置に降ろし、一般ビデオ(一コマ30ミリ
秒間隔)で撮影したものである。画面中央奥に見えるPMT(9x9の中央の増倍管)が
破壊され、手前左のPMT2、手前右のPMT1が破壊される様子をとらえている。
図 11
水中カメラがとらえたPMT破壊の瞬間
図12にフレーム引き上げ後のPMTの残骸を示す。左の写真は中央のPMT5、右はP
MT4の残骸である。いずれもダイノード部が破壊され飛ばされている。なるべく残骸を
引き上げられるように、PMTのブリーダー部をヒモでフレームにつないであるが、引き
ちぎられて回収できないものも存在した。
以下の写真は Test9-2 終了後水中から引き上げられた直後の写真である。いずれも手前右が
PMT1、中央がPMT5である。
図 12
引き上げられたPMTの残骸
資料: 誘爆実験データ
1.実験概要
事故原因究明のために今回行った光電子増倍管(PMT)破壊試験の概要は以下の通りである。このリス
トの他に 0.7m 間隔で2本の PMT を用いた実験を2回行ったが、1回目はプッシャーの位置が不適当
であったため爆縮しなかった。2回目は PMT の爆縮には成功したが誘爆はしなかった。爆縮する PMT
の周囲に他の PMT が有るか無いかで、爆縮の仕方や衝撃波生成の状況が異なるという指摘を受けたた
め、以後、全ての誘爆試験は 9 本の PMT を用いて行った。
試験
Test1-1
Test9-1
Test9-2
Test9-3
PMT 破壊日時
特徴
PMT
本数
・ 最初の一本の破壊テスト
24-DEC-2001 18:30 1
・ PMT9本を使用した最初の誘爆テスト。
26-DEC-2001 14:28 9
・ 使用する PMT は過去に受けたストレスが異なる物を使
用した。
・
PMT の過去のストレスに関しては Test9-1 と異なる配
27-DEC-2001 13:36 9
置にした。
・ 圧力計を立体的に配置した。
・ 高速カメラのアングルを変更した。
(真上から撮影)
・ PMT の過去のストレスは同程度の物を選んだ。
27-DEC-2001 17:31 9
・ 高速カメラのアングルを変更した。
(横から撮影)
表1:誘爆実験の概要
最初に PMT 破壊装置を用いて PMT を壊す試験(Test1-1)を行った。圧力計、歪み計を用いて、PMT
の破壊の様子をモニターした。Test9-1、9-2、9-3 では、PMT を 9 本用いた。それぞれの試験では、高
速カメラの撮影位置を変更した。また、過去に PMT に与えられたストレスが異なる PMT を使用した。
Test9-1 では、相互チェックのため全ての圧力計を一カ所に配置したが、アンプの設定が不適当であっ
たため圧力の値は正しく取得できなかった。ただし、時間情報は正しいと思われる。Test9-2 と Test9-3
では、衝撃波の到達時間の差から PMT 位置を同定するために、圧力計を立体的に配置した。
(セットア
ップの詳細については「資料:誘爆実験セットアップ」を参照)
2.PMT 破壊装置による衝撃波発生の特徴
今回は最初の PMT を破壊するために PMT 破壊装置「プッシャー」を使用している。この PMT 破壊装
置は PMT のネック部を破壊するようにセットされている。
(「資料:誘爆試験セットアップ」参照) 破
壊装置による爆縮とそれに続く衝撃波発生のメカニズムを調べるために、PMT1つを用いて Test1-1 を
行った。図1に Test1-1 の圧力計と歪み計のデータを示す。
図1:Test1-1 の圧力計、歪み計データ
図1の横軸は経過時間で、PMT 破壊装置を起動した時間を 0 としてある。データは上の4つが圧力計
で、下の4つが歪み計である。圧力計 P3 のデータは得ることができなかった。図から T=11ms 付近で
歪み計 S1(プッシャーの反対側のネック部)にシグナルが見られる。この時に PMT 破壊装置の火薬に
点火し装置内の内圧を蓄えて始めたと考えられる。プッシャーは PMT に接していないが、増倍管を囲
むプッシャーを固定しているフレームに、90 度、180 度、270 度位置に取り付けられたボルトが PMT
を抑えている。その後 PMT 破壊装置からプッシャーが射出され、T=25ms 付近で PMT に激突したと
考えられる。T=31ms までで PMT のネック部が破壊され、T=30∼40ms 付近で PMT の光電面付近に
大きなひずみが生じ破壊から爆縮に至っていると思われる。この PMT 爆縮の様子は、プッシャーによ
る破壊であるため衝撃波による爆縮とは必ずしも同じでない可能性がある。衝撃波のシグナルは
T=46ms に認められる。光電面部分に大きな歪が生じ始めたのを T=31ms と仮定すると、衝撃波発生ま
では 15ms 程度であることがわかる。
3.PMT 誘爆データの解析 1: タイミング、誘爆のメカニズムについて
Test9-2 と 9-3 では 4 つの圧力計を立体的に配置した。これにより、各圧力計に衝撃波が到着した時間
差情報が PMT の位置によって特定のパターンを示すので、衝撃波を発生した PMT を推測することが
可能となった。 衝撃波の伝播速度は 1500m/s と仮定した。今回の解析では圧力センサー位置に最大
20cm 程度の誤差が含まれている。衝撃波の到着タイミングに換算すると最大約 0.1ms の誤差が含まれ
ている。
最初に、Test9-2 の圧力計と歪み計のデータを図2に示す。この図の圧力計のシグナルは大きく分けて
4つのクラスターになっている。最初と二番目、二番目と三番目の時間差は約 15ms であり、三番目と
最後のクラスターは約 10ms である。Test1-1 から、光電面に強い歪みを生じてから衝撃波発生までは
15ms 程度かかることがわかった。よって、これらのクラスター間の時間間隔は、PMT が衝撃波を受け
てから爆縮し次の衝撃波を出すまでの時間に相当すると考えられる。したがって、Test9-2 の破壊試験
での誘爆は周囲の PMT が全て同時に壊れたのではなく、連鎖的に PMT が破壊されたと考えられる。
最後のクラスターのみ時間間隔が短くなっているが、この理由としては、誘爆連鎖の後半で破壊された
PMT は、それ以前の衝撃波によって既にダメージを受けていたため、衝撃波を受けてから(歪みを生
じてから)爆縮を開始するまでに要する時間(PMT ガラスを破壊する時間)が短くなったことが考え
られる。さらに考察を推し進めれば、最初の PMT 破壊後、その近傍で 2 つ目の PMT が誘爆するとそ
の後は、すでにダメージを受けている PMT が周りに存在するため、ほぼ確実に PMT 破壊の連鎖が継
続すると考えられる。Test1-1 で破壊された PMT では、数ミリ秒間歪みを発生し、その後爆縮してい
ると思われる。Test9-2 の誘爆連鎖の過程で短縮された連鎖時間間隔は約 5ms であり Test1-1 での歪み
継続時間と矛盾しない。ただし、Test9-2 では PMT が衝撃波によって破壊されているのに対し Test1-1
では PMT 破壊装置で破壊したため、これらは厳密な比較対象にはならないであろう。
次に、各衝撃波を発生した PMT を推定する。圧力計の各シグナル領域を拡大したプロットが図3であ
る。各プロット中には、推定した PMT 位置とその PMT 位置での衝撃波発生時刻(青線)
、各圧力計で
の衝撃波到達予測時間(赤線)を示した。パターンが PMT 位置により特徴的なため、ほぼ一義的に同
定できる。
最初は PMT5 から衝撃波が発生する。図3から最初の衝撃波の到達時間差は PMT5 の場合に予測さ
れる時間差と良く一致することがわかる。
2つ目のクラスターには PMT8 と PMT6 が含まれると推定された。PMT8 の圧力シグナルは小さい
が、高速カメラによる撮影データからこの時期に破壊されていることがわかっている。また、 T=41ms
付近のシグナルは時間差のパターンが PMT6 に一致する。
3つ目のクラスターには PMT2、PMT9、PMT4 が推定された。いずれも時間差パターンが良く一致
する。特に PMT4 は約 0.5ms 間隔の衝撃波の大きな2つのピークがいずれの圧力計でも観測されてい
る。
最後のクラスターは PMT1 、PMT7 、PMT3 が推定されている。PMT1 と PMT7 は時間差パター
ンが良く一致する。PMT3 については他の衝撃波の影響によると思われるシグナルが多く、時間差パタ
ーンがはっきりしないが矛盾はしていない。
以上の推定された誘爆順序と PMT の位置を考慮して、Test9-2 における誘爆連鎖の時間発展は図4の
ように推定される。最初の一本 (PMT5)が爆縮後連鎖的に破壊された様子がよく説明できる。図4のプ
ロット内の数値は衝撃波が発生したと予測される時間で、矢印の下の数値は衝撃波を受けてから次の衝
撃波を生成するまでの時間間隔である。この中で、PMT1 の誘爆は位置的には PMT2 と PMT4 が引き
起こした可能性があるが、時間差からは PMT2 によって引き起こされたと考える方が自然である。
PMT4 による可能性は否定できない。
次に、推定された Test9-2 の誘爆シーケンスと歪み計の結果と比較する。歪み計は PMT2,4,6,8 に取り
付けられている(
「資料:誘爆実験セットアップ」参照)
。推定された爆縮連鎖によると PMT6 と 8 は最
初に誘爆を起こしている。
PMT6 と 8 が衝撃波を受けたのは PMT5 が衝撃波を放出したときで T=26ms
である。図2より、PMT8 の歪み計 S1 は T=26ms 付近で、そして PMT6 の歪み計 S4 も T=26ms 付近
で値が急激に変化する。この時に PMT のセンサー付近のガラスに大きく歪が入った(衝撃波の到達)
と考えて良いであろう。ただし、歪計のデータではその後、いつガラスの破壊から爆縮に至ったのかは
定かではない。同様に PMT2,4 の歪み計 S2、S4 のデータも PMT-6,8 の衝撃波発生時間後に大きく変
化しているので、図4の誘爆シーケンスと矛盾しない。
さらに、推測された誘爆のシーケンスと高速カメラのビデオ映像を比較した。詳しくは「5.PMT 誘
爆データの解析3」のセクションで述べるが、ビデオ映像と図4のシーケンスは良く一致する。
Test9-3 に対しても同様の解析を行った。圧力計と歪み計のデータを図5に、また推測された誘爆シー
ケンスを図6に示す。Test9-3 の場合にも歪み計のデータと推測された誘爆連鎖は矛盾しない。
図2:Test9-2 の圧力計、歪み計データ
図3 Test9-2 PMT シグナル領域拡大図
あああああああああっf
衝撃波発生時間
T=26ms
PMT-5
12ms
38 40
PMT-8
53 55 56
17ms
18ms
64 66 66
PMT-9
PMT-4
10ms
PMT-7
14ms
8ms
PMT-6
13ms
PMT-2
11ms
13ms
PMT
1
PMT
2
PMT
3
PMT
4
PMT
5
PMT
6
PMT
7
PMT
8
PMT
9
図4:Test9-2 誘爆シーケンス
PMT-1
PMT-3
図5:Test9-3 の圧力計、歪み計データ
43
57
PMT-5
61
PMT-8
68
72
76
83 85
PMT-7
11ms
14ms
15ms
18ms
PMT-9
PMT-6
11ms
18ms
PMT-1
PMT-2
15ms
PMT-3
9ms
PMT-4
PMT
1
PMT
2
PMT
3
PMT
4
PMT
5
PMT
6
PMT
7
PMT
8
PMT
9
図6:Test9-3 誘爆シーケンス
4.PMT 誘爆データの解析2:衝撃波の圧力パルスについて
ここでは、誘爆によって発生した衝撃波圧力パルスの特徴について述べる。データサンプルは Test9-2
と Test9-3 の PMT5 の衝撃波を除いた。表2に衝撃波シグナルの特徴をまとめた。
Test9-2
PMT8
PMT6
PMT2
PMT9
PMT4
PMT1
PMT3,7
Test9-3
PMT8
PMT1,4
PMT7
PMT9
PMT2
PMT6
PMT3
平均
最 大 ピ ー ク ピ ー ピ ー ク コメント
圧 力 半 値 幅 ク数 間 時 間
(MPa) (ms)
(ms)
0.5
1.4
1.2
2.4
2.2
1.2
1.5
0.02
0.03
0.05
0.05
0.03
(0.2)
0.02
不明
2
2
2
2
(1)
不明
1.2
1.9
1.0
1.8
1.8
1.4
3.0
1.6
0.03
0.05
0.07
0.07
0.03
(0.6)
0.1
0.05
1
不明
4
3
2
(1)
2
2.2
0.15
0.1
0.25
0.5
パルス波高が小さい
1 つ目のパルスは小さい(0.5MPa 程度)
2 つ目のパルスは複数パルスが重なっている可能性あり
2 パルスがきれいに分離している
複数パルスが連続している可能性あり
シグナルが密集している
シグナルが密集している
0.5
0.7
0.05
3 パルスがきれいに分離している
複数パルスが連続している可能性あり
0.2
0.3
表2:各衝撃波パルスの特徴
これらの値はプロットから目で読み取ったが、不明瞭な値は( )付きで示した。また平均をとる際には( )
内の値は使用しなかった。この結果、観測された衝撃波の最大圧力パルスの平均は約 1.8MPa である。
最大圧力を与える圧力計の距離を 1.4m、衝撃波の圧力は距離の 1.1 乗に比例して減衰するとし、隣接
PMT への影響を見積もるために爆縮 PMT の中心から隣の PMT のガラス面までの最短距離を 0.45m と
すると、0.45m での衝撃波の圧力は約 5.6MPa と見積もることができる。観測された半値幅の平均は
0.05ms であった。1つの PMT 破壊で生じる圧力パルスの平均の数は 2.2 個であった。ピークの数はほ
とんどが複数であった。それらのピーク間の時間間隔は平均 0.3ms であった。
このセクションの議論は目での読み取りによる解析であるため、半定性的なものである。
5.PMT 誘爆データの解析3:高速カメラ映像
ここでは、高速カメラで撮影された映像から PMT 破壊の状況を理解することを試みる。高速カメラは
2ミリ秒で1コマ撮影を行い、その時間情報を画面最上部に表示する。最も右端の数値がミリ秒単位の
時間情報である。
まず、Test9-2 中の PMT 破壊状況について高速カメラの映像を、圧力計のデータと独立に分析する。
図7と図8に分析した結果を示した。この解析では光電面が完全に破壊した時点(直径が最小)で衝撃
波が発生していると想定し、画像から推測される衝撃波発生時刻を記入した。
衝撃波発生の画像から決定される時刻と圧力計から決定される時刻はオフセットを 1 つ決めればユニー
クに決定できる。その関係が求まれば高速ビデオの映像と圧力計、歪み計の比較が精度よくできる。
9回の衝撃波発生時刻をもちい、それぞれ、高速カメラの時間情報(t と表す)と、圧力計による推測され
た時間(T と表す)を比較することによりオフセットを決定した。T は PMT 破壊装置を起動した時からの
経過時間である。表3は比較の結果である。
衝撃波発生時刻
PMT5 PMT8 PMT6 PMT2 PMT9 PMT4 PMT1 PMT7 PMT3 平均
圧力計(T)
26
38
40
53
55
56
64
66
66
高速カメラ(t)
48030 48044 48046 48056 48060 48060 48068 48068 48070
t-T-48000
4
6
6
3
5
4
4
2
4
4.2
表3:Test9-2 における高速ビデオと圧力計の衝撃波発生時刻の比較
表3で、圧力計による衝撃波発生の時間情報は図4の値を採用した。圧力計による時間と高速ビデオに
よる時間は良く一致している。時間のずれは約 2ms で、高速ビデオ1コマ相当である。よって、
「PMT
データの解析2」で導き出された図4の圧力計による誘爆シーケンスは高速ビデオ映像の結果を良く再
現している。この比較で求められた時刻の関係式
T = t – 48000 – 4.2
(式 1)
を用いて求めた T の値を図7と図8に青文字で示す。
次に、高速ビデオ映像から可能な範囲で PMT 破壊の様子を分析する。まず Test9-2 の PMT6 に関
しては T=35.8 から T=41.8 の映像から、PMT5 に近い側の光電面最大径付近からひびが入り始め、最
終的に光電面全体が破壊されたように見える。
PMT4 に関して、図7、8の T=43.8 から T=55.8 までの映像から、まず光電面以外の(おそらく
ネック部分)が破壊(または、破断)浸水し、光電面の下降あるいはダイノード部分の上昇により誘爆
がはじまったと思われる。
それ以外の PMT は一部の映像しか撮影されていないためどのような破壊であったのかは判別でき
ない。
(「資料:誘爆実験セットアップ」参照)その映像を図9
Test9-3 では横から高速カメラで撮影した。
に示す。図9から PMT8 は光電面最大径でかつ衝撃波を受けた方向の部分から破壊/爆縮が始まってい
る。PMT9 ではひびは光電面最大径でかつ衝撃波を受けたところから発生するが、爆縮はネック部分か
らきのこ雲のようにつぶれ込んでいるように見える。このとき、引き続きダイノード部が引きあげられ
ている。
以上から、PMT の爆縮の仕方は 1 種類ではないことがわかった。今回確認されたものは、以下の3
種類である。
§ 衝撃波を受けた側の光電面最大径近傍からひびが入り始め、光電面全体にひびが入った
後で大口径部分が潰れるように爆縮に転じる。
§ 衝撃波を受けた側の光電面最大径近傍からネック部分にかけてひびが入り始め、ネック
部分が最初に破壊し、ネック部分がきのこ雲のように入り込むように爆縮をはじめる。
引き続きダイノード部分が強く引き上げられる。
§ 大口径以外の場所(ネック部分かステム部分か不明)が破壊され、光電面の下降かダイ
ノード部の上昇を伴い爆縮が始まる。
最初の PMT 破壊( P M T 5 )
2番目のクラスター(PMT6,8)
PMT6,8 共に原
型を留めてい
まだ無傷。
T=17.8
る。
T=35.8
PMT5 の最大径に
亀裂が確認でき
PMT8 の光電面
部分が確認し難
る。
くなる。
T=19.8
T=37.8
光電面とダイノー
ドの相対位置がず
れる。PMT の内部
に水が進入してい
く。
PMT8 の外周部
がこのコマ以後
確認できなくな
る。
(衝撃波発生)
T=21.8
t=48044T=39.8
光電面のひびが増
加する。
PMT6 の形状が
このコマ以後確
認できなくな
る。
(衝撃波発生)
T=23.8
t=48046
T=41.8
光電面が内向きに
陥没。映像では
PMT の大きさが
最小になってい
る。(衝撃波発生)
t=48030 T=25.8
1
2
3
外側に向かって膨
張し始める。
4
5
6
7
8
9
T=27.8
図7:Test9-2 の高速カメラ映像1
3 番目と4番目のクラスター(PMT2,4,9、PMT1,3,7)
PMT2 に水が
入り始めたよ
PMT4 の光電
面全体が砕け
うに見える。
た。PMT1 の
T=43.8
光電面にひび
が入る。
PMT9
もこのコマ以
後は確認でき
PMT4 の光電
面が下降、も
ない。
しくはダイノ
t=48060
ードが上昇を
開始した。
T=55.8
( 衝撃波発生 )
T=45.8
PMT2 の輪郭
の一部が歪み
始めた。
PMT9
には水が入り
始めたように
見える。
PMT1 の最大
径部分が陥没
し始めたよう
に見える。
PMT2 は光電
面全体にひび
が入ったが、
形は留めてい
るように見え
る。
光電面の光の
反射から、
PMT7 が壊れ
始めたように
見える。
PMT2 は光電
面の形状が不
明瞭になる。
( 衝撃波発生 )
PMT1 と 7 の
光電面が砕け
たように見え
る。
(衝撃波発生)
t=48056
T=51.8
PMT4 はダイ
ノードと光電
面が接触し、
光電面にひび
が入った。
t=48068
T=53.8
このコマ以後
PMT3 の形状
が確認し難く
なる。
(衝撃波発生)
t=48070
T=55.8
図8:Test9-2 の高速カメラ映像2
1.実験開始直前。まだ破壊されていない。
2.PMT5 が爆縮。
PMT8 の最大径付近が破壊される。
3.PMT8 が爆縮し、ステム部分が上昇。
PMT9 の最大径付近に亀裂発生。
4.PMT9 の光電面の亀裂が広がる。
PMT5
5.PMT9 が破壊される。
図9:Test9-3 の高速カメラ映像
PMT8
PMT9
6.誘爆実験結果のまとめ
今回の誘爆実験では以下のことが明らかになった。
§
水深 30m の環境下では 0.7m 間隔で配置された 20inch PMT の破壊は連鎖的に広がる。
§
最初の爆縮で必ずしも周囲の全ての PMT が誘爆するわけではない。
§
観測された衝撃波発生の時間間隔は 10∼20ms 程度で、誘爆連鎖の後半では短くなる。即
ち、最初の爆縮で破壊に至らなかった場合でも PMT にはダメージが蓄積される。
§
衝撃波による PMT 爆縮には何種類かあることがわかった。今回確認できたものは、
1)衝撃波を受けた側の光電面最大径近傍からひびが入り始め、光電面全体にひびが
入った後で大口径部分が潰れるように爆縮に転じる。
2)衝撃波を受けた側の光電面最大径近傍からネック部分にかけてひびが入り始め、
ネック部分が最初に破壊し、ネック部分がきのこ雲のように入り込むように爆縮をは
じめる。引き続きダイノード部分が強く引き上げられる。
3)大口径以外の場所(ネック部分かステム部分か不明)が破壊され、光電面の下降
かダイノード部の上昇を伴い爆縮が始まる。
である。
§
観測された圧力パルスの平均の強さは 0.45m の距離で約 5.6MPa であった。
§
パルスの平均の幅は約 0.05ms であった。
§
観測された1つの PMT 破壊で生じる圧力パルスの平均の数は 2.2 個で、時間差の平均は
0.3ms であった。
気泡の崩壊による音圧の影響について
1. 計算モデル
気泡振動にはその内部の熱現象が強く影響する
ことがわかっている(1).そこで,そのような現象を
考慮したモデルを用いて数値計算を行った.
モデルの構築にあたり,用いた仮定を以下に示す.
(1) 気泡は球対称を保って運動する.
(2) 気泡内の圧力,温度は気泡壁のごく近傍を除い
て一様であるとする.
(3) 気泡内の気体は理想気体とする.
(4) 気泡界面の温度は液体の温度に等しいとする.
(5) 気泡内の不凝縮ガスはHenry の法則に従うもの
とする.
(6) 気泡内に生じる液滴の合体,分裂は起こらない.
Fig.1: Time variation of bubble radii at various ambient
pressures
2. 計算条件
初期状態において,気泡内では水蒸気はその温度
の飽和状態であり,また気泡内にはわずかに空気が
含まれているとした.そしてそれが周囲の水圧によ
って振動する過程を計算した.用いた初期条件を
Table.1 に示す.なお,初期状態での気泡周囲の溶
存空気は,0.1 気圧下での飽和濃度であるとした.
Table 1: Initial conditions
Bubble radius, Rb0
250[mm]
Temperature
285[K]
Vapor pressure inside a bubble
1.4[kPa]
Air pressure inside a bubble
10[Pa]
Ambient pressure
100∼500[kPa]
Fig.2: Time variation of acoustic pressures from
bubbles at various pressures (r = 0.7[m])
3. 計算結果
気泡半径の時間変化を Fig.1 に,気泡中心から
0.7[m]離れた地点での圧力の時間変化を Fig.2 に示
す.気泡の遠方場の圧力は次式により求めている.
n


2  n−1



+
 ( p ∞ B )  ( n − 1)  ∂φ  1  ∂φ   
p a = − B 1 −
  +     
1 −
B
c 2  ∂t  2  ∂r    




(1)
ここで,φ:速度ポテンシャル,c:液の音速である.
また,B および n は Tait 式における定数であり,
B = 3.049×108[Pa],n = 7.15 である.
また,遠方音圧の最大値の,水深および気泡中心
からの距離による変化を Fig.3 に示す.
Fig.3: Maximum acoustic pressure (far field)
参考文献
(1) 松本洋一郎,“気泡運動における不凝縮ガスの
影響(気泡壁における蒸発・凝縮への蒸気・不
凝縮ガス間の拡散の効果),”機論,52-475 ,
B(1986),pp.1168-1174
衝撃波強さの外気圧依存性
平成13年12月28日
東大工学部松本教授・高木講師によるシミュレーションでは、気泡中心から1m離れた地
点での圧力が計算されている。外気圧の関数としてそれを図示すると、
Pa/Pair vs Pamb
3
2.5
log Pa/Pair
2
1.5
1
0.5
0
0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
0.6
0.7
0.8
log Pabm (atm)
のようになり、衝撃波圧力は外気圧の約1.9乗に比例する。
水深30m(増倍管内部は真空であるから外気圧として4気圧)での球形気泡が崩壊した
とき、その中心から0.48m離れた点での衝撃波圧力は130気圧と見積もられる(三
井造船シミュレーション)。従って、水深3m(外気圧1.3気圧)での衝撃波圧力は1
5気圧となる。
2001/12/28
三井造船(株)
SuperKamiokande PMT 衝撃解析(第3報)
前回解析は球形モデルにて解析を行ったが、本解析では実際の形状に近いモデルにて
一部を取り出したモデルにて解析を行った。
1.解析モデル
図-1
解析モデル寸法
接点番号
22815
21848
20984
20075
19185
18290
17332
16156
14919
13557
12330
11269
【解析モデル】
1)モデル
1/48 円柱
48cm
半径 1.5m
2)PMT モデル(1個のみモデル化)
図1
3)境界条件
モデル外縁境界条件:無限境界
その他境界:対象条件
4)圧力条件:20m,30m 水圧負荷
図-2
解析モデル
2.解析結果
MPa
接点No.22815
Pmax=8.21MPa
10
9
8
7
6
5
4
3
2
1
0
水深20m
水深30m
0
5
10
15
時間(mS)
図-3.1 圧力時刻歴(PMT 頂点水平位置48cm)
接点No.19185
MPa
Pmax=9.02MPa
10
9
8
7
6
5
4
3
2
1
0
水深20m
水深30m
0
5
10
時間(mS)
図-3.2 圧力時刻歴(PMT 赤道水平位置48cm)
15
接点No.11269
MPa
Pmax=9.22MPa
10
9
8
7
6
5
4
3
2
1
0
水深20m
水深30m
0
5
10
時間(mS)
図-3.3 圧力時刻歴(PMT 底部水平位置48cm)
15
3.爆縮の様子
4.考察
第2報(球体モデル)で報告した最大圧力と比較し、PMT の実際の形状に近いモデ
ルでの本解析結果に於ける最大圧力は、3割強低くなっている。これは3項の図でも
わかるとおり爆縮点が一点とならないことによる。
本解析結果の方が実際のPMT爆縮時に起こる衝撃圧力に近いものと考えられる。
光電子増倍管取り付け手順メモ
と改善策
全体の工程
1)共通作業:光電子増倍管(PMT)搬入、PMTケー
ブル前処理と試験
2)上面中央部分PMT取り付け
3)側面PMT取り付け
4)底面PMT取り付け
5)上面端部PMT取り付け
改善策は赤字にて記載
共通作業:光電子増倍管搬入、光電子増倍
管ケーブル前処理と試験
光電子増倍管搬入(浜松より)
運搬方法:トラック
坑内は上記に加えて、カミオカンデ奥についてはトロッコ、その他はローラーを併用
保管場所:
旧カミオカンデ坑道奥およびカミオカンデ斜坑(
1992 - 1993年) (作業:
研究者+鉱山作業者) 東4号 (
1994 - 1995) (作業:
作業者+研究者) 鉱山倉庫(1995) (作業:作業者)
改良項目:カミオカンデ奥坑道の保管場所は環境、作業性とも悪かったので、そのような場 所に保管場所を選ぶべきではない。 備考)PMTの箱は上下に分かれており、上側が段ボール、下側がプラスチック段ボールである。坑
内の湿気が高いため、数年におよぶ長期の保管をしたPMTについては保管の際、上側の段ボー
ルを取り去り、ビニール袋をかぶせた。
注)以後「
作業者」は特にことわらない限り全て 神岡鉱業エンジニアリングの下請け作業者をさす
運搬:作業者 運搬方法:小型トラック+ローラー
光電子増倍管ケーブル処理と試験
場所: 東4号
・段ボール製の上蓋(またはビニール袋)
を取り去り、ケーブルの先端の外皮を専
用工具を用いてはぐ。 (作業:作業者)
・PMT6個づつ暗箱に入れて高電圧をかけ、信号をオシロスコープで確認する。こ
の際PMTは搬入時のプラスチック製段ボール下箱に入ったまま。 (作業:研究者)
・後の作業のために高電圧ケーブル線をケーブルに巻き付けビニールテープで固
定する。 (作業:研究者)
運搬:作業者 運搬方法:小型トラック+ローラー
上面中央部分
上面3個モジュール製作
場所:現在のコントロール室と倉庫
・3個組PMTモジュール用取り付け金具組立 (作業:作業者)
・PMTを保管箱から出して発泡ポリエチレン製の取り付け用台に乗せ、アルコール洗浄、PMT
番号確認 (
作業:研究者)
改良項目:PMTの洗浄時にPMTの傷、形等の異常がないかを確認、記録する。 ・PMT3個に取り付け金具をかぶせて、取り付け用のバンドを締める(
この際、取り付け金具は
ポリエチレン製の取り付け台に乗っているので落としてPMTにあたるような心配はほとんどない、
またバンドを締める工具は全てクッションで被いPMTにあたってもPMTが破損しないようにした)
(作業:
研究者) 改良項目: PMTモジュールに取り付けられたPMTの位置等PMTモジュールに異常
がないか項目を決めて確認、記録する。
・ケーブル処理(
洗浄し、3本を束ねる) (作業:
作業者)
・ポリエチレンシートで被い、埃よけと、万が一のPMT破損の際、ガラスの飛散を最小限におさ
える処理をする (作業:
作業者)
運搬:作業者 運搬方法:小型トラック+ローラー
場所: 東4号
PMT一時保管
運搬:作業者
運搬方法:小型トラック+ローラー
(水槽内は幅60cm長さ1.8m、赤さ10cm程度の専用台車)
改良項目:PMT一時保管の際、経費が足りないことからPMT保護・
運搬用の発泡ポリエチレンの台が足りず、浜松フォトニクスからの輸
送に使われたPMTの箱を切って仮に使用した。そのため、仮の台か
ら専用台に乗せ換える1工程だけ余分にPMTがむき出しになった。
経費的に許されるなら、PMT保護・
運搬用の発泡ポリエチレンの台
は必要数製作すべきである。
上面中央部PMTの水槽への取り付け
場所: 水槽底面
・下向きの3個組のPMTモジュールを支持金具と運搬用PMT保護台ごと取り付け専用
リフトに乗せて、上面架構(高さ約2m)まで3個組PMTモジュールを上げ、架構にボルト
で取り付ける。この際ボルト締めは電動工具を用いて行い、工具が誤ってPMTにあたる
ことがないようにした。 (作業:作業者) ・ケーブルを水槽上面架構上のケーブルトレイに沿って引き回し、ケーブルを水槽上ま
で引き上げる (作業:作業者+研究者)
・PMT面のところにブラックシートを取り付ける。 (作業:研究者)
・PMTの番号と取り付け位置を記録する。 (作業:研究者)
PMT取り付け作業備考
・外水槽PMTは、内水槽PMTがついた後にまずタイベックシートを取り付けてその後P
MT取り付け。 (アメリカ側担当)
・上面中央部は水槽底面上でPMTを取り付けた後、上面全体を所定の位置までつり上
げた。 (三井造船担当)
側面
側面3個モジュール製作
場所:現在のコントロール室と倉庫
・3個組PMTモジュール用取り付け金具組立 (作業:作業者)
・PMTを保管箱から出して発泡ポリエチレン製の取り付け用台に乗せ、アルコール洗浄、PMT
番号確認 (
作業:研究者)
改良項目:PMTの洗浄時にPMTの傷、形等の異常がないかを確認、記録する。 ・PMT3個に取り付け金具をかぶせて、取り付け用のバンドを締める(
この際、バンドを締める工
具は全てクッションで被いPMTにあたってもPMTが破損しないようにした。また、側面用金具は
上面、底面用に比べると軽く、万が一PMTにあたった場合等の衝撃は小さいと考えられる)
(作業:研究者) 改良項目: PMTモジュールに取り付けられたPMTの位置等PMTモジュールに異常
がないか項目を決めて確認、記録する。
・ケーブル処理(
洗浄し、3本を束ねる) (作業:
作業者)
・ポリエチレンシートで被い、埃よけと、万が一のPMT破損の際、ガラスの飛散を最小限におさ
える処理をする (作業:
作業者)
運搬:作業者
運搬方法:小型トラック+ローラー
場所: 東4号、鉱山坑内事務所跡、
鉱山旧工作室
PMT一時保管
運搬:作業者
運搬方法:小型トラック+ローラー
(水槽内は幅60cm長さ1.8m、赤さ10cm程度の専用台車)
改良項目:PMT一時保管の際、経費が足りないことからPMT保護・
運搬用の発泡ポリエチレンの台が足りず、浜松フォトニクスからの輸
送に使われたPMTの箱を切って仮に使用した。そのため、仮の台か
ら専用台に乗せ換える1工程だけ余分にPMTがむき出しになった。
経費的に許されるなら、PMT保護・
運搬用の発泡ポリエチレンの台
は必要数製作すべきである。
側面PMTの水槽への取り付け
場所: 水槽底面
・3個組PMTモジュールとPMT運搬用保護台を4本のバンドで固定し、側面PMT取り付け専用リ
フトで側面架構(高さ約2.1m、PMT12個が取り付く)まで3個組PMTモジュールの一端をつり上
げ、架構にボルトで取り付ける。この際、作業が終わるまでPMT保護をかねた発泡ポリエチレン
製のPMT取り付け台はPMTモジュールからはずさず安全を確保した。また、ボルト締めは電動工
具を用い工具が誤ってPMTにあたる等の事故を防ぐようにした。 (作業:作業者) 改善項目: 万が一PMTが架構にあたってもPMTに衝撃を与えないよう、PMT取り付
け前に架構に養生をする。
・PMT面のところにブラックシートを取り付ける。 (
作業:研究者+作業者)
・PMTの番号と取り付け位置を記録する。 (作業:研究者)
・側面架構造の補強のための横向きの2本のLアングルをボルト締めする (
作業:作業者) 改善項目:万が一の事故に備えて、Lアングル取り付け前に上下のPMT前面を防爆用
の布で覆う。 ・翌日、PMT架構をつり上げ水槽に固定する。 (作業:
三井造船作業者)
・ケーブルを水槽上まで引き上げる (作業:三井造船作業者)
PMT取り付け作業備考
外水槽PMTは、内水槽PMTがついた後に、同じ日の内に、まずタイベックシートを取り付けてそ
の後PMT取り付け。 (アメリカ側担当)
底面
底面3個モジュール製作
場所:現在のコントロール室と倉庫
(一時期、鉱山の旧坑内工作場跡)
・3個組PMTモジュール用取り付け金具組立 (作業:作業者)
・PMTを保管箱から出して発泡ポリエチレン製の取り付け用台に乗せ、アルコール洗浄、PMT
番号確認 (
作業:研究者)
改良項目:PMTの洗浄時にPMTの傷、形等の異常がないかを確認、記録する。 ・PMT3個に取り付け金具をかぶせて、取り付け用のバンドを締める(
この際、取り付け金具は
ポリエチレン製の取り付け台に乗っているので落としてPMTにあたるような心配はほとんどない、
またバンドを締める工具は全てクッションで被いPMTにあたってもPMTが破損しないようにした)
(作業:
研究者) 改良項目:
PMTモジュールに取り付けられたPMTの位置等PMTモジュールに異常 がないか項目を決めて確認、記録する。
・ケーブル処理(
洗浄し、3本を束ねる) (作業:
作業者)
・ポリエチレンシートで被い、埃よけと、万が一のPMT破損の際、ガラスの飛散を最小限におさ
える処理をする (作業:
作業者)
運搬:
作業者
運搬方法:小型トラック+ローラー
場所: 東4号
PMT一時保管
運搬:作業者
運搬方法:小型トラック+ローラー
(水槽内は幅60cm長さ1.8m、赤さ10cm程度の専用台車)
改良項目:PMT一時保管の際、経費が足りないことからPMT保護・
運搬用の発泡ポリエチレンの台が足りず、浜松フォトニクスからの輸
送に使われたPMTの箱を切って仮に使用した。そのため、仮の台か
ら専用台に乗せ換える1工程だけ余分にPMTがむき出しになった。
経費的に許されるなら、PMT保護・
運搬用の発泡ポリエチレンの台
は必要数製作すべきである。
底面PMTの水槽への取り付け
場所: 水槽底面
・下向きの3個組のPMTモジュールをバンド4本で運搬用PMT保護台と固定し、PMTモジュールを
運搬用PMT保護台ごと上向きにする。 改良項目:
ここが危険な作業なので、万が一バンドを止め忘れてもPMT破損がないよう に床に発泡ポリエチレン等を敷いて、その上でPMTモジュールを回転させる。
・取り付け専用リフトに3個組PMTを乗せて転倒防止の固定をする。
・PMT保護台を取りはずし、厚い布製の防爆用キャップを各PMTにかぶせる。 改良項目:
建設時のものは上からかぶせるだけでPMTの後ろの方にガラスが飛び散ると
完全にはガラスが止まらない構造であったので、すっぽりPMTを覆ってしまうよ
うな(シャワーキャップのようなイメージ)
ものに換える。
・取り付け専用リフトで底面架構(高さ約2m)
まで3個組PMTモジュールを上げ、架構にボルトで取
り付ける。この際ボルト締めは電動工具を用い工具が誤ってPMTにあたる等の事故を防ぐようにし
た。 (以上の作業:作業者) ・ケーブルを水槽側面までケーブルトレイに沿って引きのばす(作業:
作業者+研究者)
・ケーブルを水槽上まで引き上げる (
作業:三井造船作業者)
・PMT面のところにブラックシートを取り付ける。 (作業:
研究者+作業者)
・PMTの番号と取り付け位置を記録する。 (作業:
研究者)
底面でのPMT取り付け作業備考
外水槽PMTは、内水槽PMTがついた後にまずタイベックシートを取り付けてその後PMT取り付け。
(アメリカ側担当)
上面端部
上面3個モジュール製作: なし。上面端部は本数が限られ、
また端であるのでPMT1本づつ水槽架構に取り付けた。
上面PMTバンド取り付け
場所: 水槽上部
・PMTを保管箱から出して発泡ポリエチレン製の取り付け用台に乗せ、アルコール洗浄、PMT
番号確認 (
作業:研究者)
改良項目:PMTの洗浄時にPMTの傷、形等の異常がないかを確認、記録する。 ・PMT1個に取り付けバンドをかぶせて、取り付け用のバンドを締める(
この際、バンドを締める
工具は全てクッションで被いPMTにあたってもPMTが破損しないようにした)。その後で、上面
フレームに取り付けるための小フレームをねじ止め。 (
作業:研究者)
改良項目: PMTのバンド取り付け位置等に異常がないか項目を決めて確認、記録する。
・汚れていればケーブル洗浄 (
作業:研究者)
・ポリエチレンシートで被い、埃よけと、万が一のPMT破損の際、ガラスの飛散を最小限におさ
える処理をする (作業:
研究者)
水槽上面マンホールまで台車で箱に入ったPMTを運び、水槽内のボートに 箱ごとホイストで降ろす (作業:
研究者)
上面端部PMTの水槽への取り付け
場所: 水槽水面でボート
による作業
・ボートにPMTを箱ごと乗せ、所定の位置まで行く。 (
作業:研究者) ・バンドと小フレームのついたPMT1個を上面架構の上に設置した小さいウインチでつり上げ、上
面架構に電動工具でねじ止めする。 この際架構の上下に人がいて、PMT破損等の危険がないよ
うに注意した。 (
作業:研究者)
改良項目: PMTに防爆用の布をかぶせて作業を行う。
・ケーブルを水槽上面架構上のケーブルトレイに沿って引き回し、ケーブルを水槽上まで引き上げ
る (作業:研究者)
・PMT面のところにブラックシートを取り付ける。 (
作業:研究者)
・PMTの番号と取り付け位置を記録する。 (作業:研究者)
PMT取り付け作業備考
・外水槽PMTは、内水槽PMTがついた後にまずタイベックシートを取り付けてその後PMT
取り付け。 (アメリカ側担当)
光電子増倍管取り付け作業時等における光
電子増倍管破損について
•
•
•
カミオカンデ奥の坑道からPMTを取り出す際、誤ってPMTの入った
箱を倒した。このとき箱の上側は湿気対策のため段ボールからビニー
ル袋に変えてあった。PMTはプラスチック段ボールの下箱とビニー
ル袋で被われていたため、PMT破損以外の被害はなし。
作業者が水槽底面で底面PMT取り付け作業で3個組PMTモジュー
ルを上向きに変えるとき、PMTモジュールと保護用の台を固定して
いたバンドを止め忘れて作業したため、PMTモジュールと保護用台
がはずれPMTがむき出しになって底面に衝突、破損。ガラスが粉々
になった。作業者を含めてPMT破損以外の被害はなし。
三井造船作業者が水槽上面で作業(足場撤去)をしていたときあや
まって物(足場用パイプ)を水槽上面に取り付けたPMTにあて、PM
Tにひびが入る。被害はPMTが壊れた以外はなし。
「圧力水によるアクリル板上孔の流量測定と損傷検査の結果報告」
平成13年12月18日
東京大学 宇宙線研究所
神岡宇宙素粒子研究施
伊藤
好孝
福田
善之
三浦
真
塩澤
真人
1.目的
防爆ケースに使用が予定されているアクリル板には、爆縮時に外部から水を流入させるための孔
を用意する必要がある。本報告書は、水圧5気圧における孔からの流量の測定と孔がアクリル板に
与える影響(破損、損傷の有無)の検査結果を記す。測定は平成13年12月17日(曇り、気温
2度)、18日(曇り時々雪、気温1度)の両日に行われた。試験に使用したアクリルはクラレ製
コモグラフで厚さ10㎜のものであり、性能表を添付資料に示す。
2.検査方法とセットアップ
検査方法は、茂住選抗近くの既設の消火栓(最大圧20㎏/㎝2)にSGP50Aの配管を接続
し、羽根車復湿式水道メータ(流量計)で流量の観測を行った。圧力計はアクリル板出口の10㎝
手前に設置した。孔を開けたアクリル板を配管先端にフランジで固定する。そこに5気圧もしくは
6.5気圧の水圧を10分間印可し配管内の流量を測定するとともに、試験後にアクリル板の孔周
辺部および板全体に破損や損傷が確認されるかどうか検査した。図1に水圧試験のセットアップを
示す。
図 1 セットアップの写真。右に既設消火栓と圧力調整バルブ、
及び中央付近の青い部分が羽根車復湿式流量計、左端に圧力計と
アクリル板がある。
使用したアクリルに開けた孔の径は15㎜、10㎜、および5㎜であり、15㎜に関しては孔数が
1,2、3個、10㎜では1,2,4個、5㎜で2,4,9個とした。それぞれの孔の個数と位置
は図2、3に示した。このように孔をアクリル板に複数個開けたのは、流量が孔数(面積)に比例
するかどうかと確認すると同時に、孔間の距離を変えることによりアクリルの水圧にたいする強度
の検査を行うためである。
図 2
15㎜および5㎜の孔の個数とアクリル板上の配置
図 3
10㎜の孔の個数とアクリル板上の配置
図4にフランジに実装したアクリル板(15㎜径の孔1個)の写真を示す。また、図5に圧力試験
注の水の噴き出しの様子を示す。
図 4
フランジに実装されたアクリル板と15㎜の孔
図 5
圧力試験中のアクリル板からの水の放出
3.測定結果
測定データをまとめると以下の表になる。
水圧
0.65MPa (流速の理論値は36.1m/秒)
孔径
15㎜
孔数 1(1.77㎝2)
流量
4.2㍑/秒
流速
23.7m/秒
孔径
2
10㎜
孔数
8.3㍑/秒
1(0.79㎝ )
流量
2.0㍑/秒
流速
26.0m/秒
孔径
5㎜
孔数
2(3.53㎝2) 3(5.30㎝2)
2(0.39㎝2)
流量
1.0㍑/秒
流速
26.7m/秒
23.5m/秒
2(1.57㎝ ) 4(3.14㎝2)
4.1㍑/秒
4(0.78㎝2) 9(1.77㎝2)
2.0㍑/秒
4.7㍑/秒
26.1m/秒
26.5m/秒
孔径
15㎜
1(1.77㎝2)
流量
3.7㍑/秒
流速
21.1m/秒
10㎜
孔数
測定なし
26.0m/秒
0.51MPa (流速の理論値は31.9m/秒)
孔径
20.4m/秒
2
水圧
孔数
11.7㍑/秒
1(0.79㎝2)
流量
1.8㍑/秒
流速
22.6m/秒
(参考)流速の理論値の算出
ベルヌーイの定理より、動圧ρu2/2 と静圧pが等しいことから、p=0.65MPa又
は0.51MPa、ρ=1000kg /m3を代入するとu=36.1m/秒、および31.9m/秒
が得られる。
Flow at 0.65MPa
Flow (L/sec)
15
15mm
10mm
5mm
10
5
0
0
2
図 6
4
6
# of Holes
8
10
流量と孔の面積の関係
水圧が0.65MPa(6.4気圧)で測定した場合の流量と孔の面積との相関の結果を図6に
示す。これから、流量は圧力が同じ場合には孔の個数(面積)に比例していることがわかる。また、
0.51MPa(5気圧)で10㎜、15㎜の孔径で1個孔のアクリル板を測定した時の流量は、
それぞれ1.77㍑/秒および3.72㍑/秒であった。圧力の違いによる流量の変化は、ベルヌー
イの定理により圧力の比と流速の2乗の比に等しいことから、15㎜径では(0.65MPa/0.
51MPa)=1.27=(4.2㍑/秒/3.72㍑/秒)2、また10㎜径では1.27=(2.
0㍑/秒/1.77㍑/秒)2と理論通りに合っている。次に、孔径と流速(流量は流速に孔の面積を
乗じたもの)の関係を見ると図7のようになる。流速は同じくベルヌーイの定理により理論的に計
算することができ、水圧が6.4気圧では流速36.1m/秒、5気圧では31.9m/秒と得られ
る。これらの値は図7の値と比べると約30%程度理論値より小さい値となっているが、これは管
内抵抗やアクリル板の孔の出口でのエネルギー損失により流速が落ちているものと考えられる。ま
た、孔径による流速の変化も図7のように見られるが、その変化量は10%程度である。
Velocity(m/sec)
Flow velosity
30
25
20
15
10
5
0
5mm
0
図 7
4.破損・損傷の目視検査
10mm
0.5
1
1.5
Area(cm^2)
15mm
0.65MPa
0.51MPa
2
孔径に対する単位面積当たりの流量
0.65MPaの水圧で10分間印可した後、それぞれのアクリル板で孔の周辺部の損傷や破損
がないか目視による検査を行った。結果は、全てのアクリル板において全く破損および損傷が見当
たらなかった。図8に水圧試験後のアクリル板の孔周辺部の様子の例を示す。
図 8
水圧試験後の孔周辺部。左上に10㎜の孔が見える。
5.結論
今回の測定で5気圧の水圧に対する流速の直接測定を行い、流速は23m/秒という値が得られ
理論計算値である32m /秒に比べて30%程小さい結果であった。これは管内抵抗やアクリル板
の孔の出口によるエネルギー損失によるものと考えられる。また、5気圧の環境下では、10㎜厚
のアクリル板は非常に強固であり破損等の現象は確認されず、水吹き出し孔の周辺部にもまったく
損傷を受けないことがわかった。
資料
アクリル(コモグラス)の性能表。
SNO実験におけるアクリルの経時変化について
東大宇宙線研究所
1
助手
三浦
真
はじめに
SNOはカナダの地下に設置されたニュートリノ検出器である。ここでは重水
1000トンを直径12mのアクリル容器で保持している。この容器は厚さ5
cmのパネル125枚をボンドで接着することによって構成されている。ここ
ではSNOで用いられているアクリル板の光学的性質およびボンドの機械的
性質の経年変化について報告する。
2
光学的性質について
2−1
方法
アクリルの性能を評価するため、まずサンプルの透過率を測定する。サンプ
ルは純水で満たされた容器に置かれ、波長 250−500nmのレーザー光
を入射し、各波長における透過率を測定する。次に、実際のSNO実験の状況
を考えて、以下のように評価値Fを定義する。
F
=
(∫dλ・CTD2OTacryTH2OQPMT)
/(∫dλ・CTD2OTH2OQPMT)
λ::波長
C:チェレンコフ光のスペクトラム
TD2O:重水の透過率
Tacry:アクリルの透過率
TH2O:水の透過率
QPMT:PMTの量子効率
これはアクリルの実効的な透過率を積分したような値である。これを用いてア
クリルの性能を評価する。
アクリルの経年変化をシミュレートするために、温度60度に保った重水に
つけ、2,4,6週間後にサンプルを取り出し、上記の値を計算した。文献に
よれば温度60度の水に40日間漬けておくことは、10度の水で10年に相
当する。
2−2
結果
いくつかのメーカーのアクリルサンプルの結果を以下に示す。
サンプル 0週間 2週間 4週間 6週間
#1
0.558 0.573 0.579 0.579
#2
0.724 0.761 0.752 0.736
#3
0.724 0.731 0.743 0.733
#4
0.724
0.732
全般的に、水に浸した後一時的にF値の増加が見られ、以降安定する傾向にあ
る。F値の変化はサンプルによってばらつきはあるものの、約2%以内に収ま
っている。これにより、SNOグループはアクリルの光学的性質の経時変化は
十分少ないと結論づけている。
3
水中における接着の劣化について
SNOではアクリルボンドの水中における強度の長期的変動をモニターする
ために、水中に漬けたサンプルを定期的に取り出し、その強度をチェックして
いる。残念ながらまとまったレポートを入手できなかったが、その方法といく
つかのデーターを紹介する。
3−1
方法
まず、Fig.1に示すようなアクリル角材をボンド(LUC6751)で
つなげた試材を用意する。これを内径965mm、深さ700mmのタンクに
置き、SNOからの返り水で満たす。試材をタンクに設置する際、Fig.1
に示すように直径9.5mmのステンレスチューブを間に挟み、これを積み上
げたものにステンレス板を5枚乗せて28.4kgの荷重を与える(Fig.
2)。タンク内の水は12度で、一日に全容積を交換する割合で循環している。
このように負荷を与えながら水中に置かれている試材をある期間ごとに10
本取り出し、強度の試験を行う(ASTM D-790 Method II)。
3−2
以下、入手したデーターを示す。
2
試験日時
破壊時のストレス (psi)
平均値(psi)
標準偏差(psi)
27.Jan.00
5856,9840,6864,8880,5760,
5780,9360,7104,9600
7669
1743
19.Apr.00
8880,9600,7584,9984,7200,
7200,6672,6012,6912,7248
11040,9840,6960,8880,9360,
9360,9120,9840,9600,9360
7680,4800,3840,4560,5760,
4800,7440,6720,7920,6960
9216,10800,7440
7819
1206
9336
1021
6048
1479
9152
1372
11.Oct00
15.May01
8.Nov01
注) PSI:Pounds/inch2 = 6894.7 Pa
各月とも20%程度のばらつきがあるがこれは試材の個性によるものと思わ
れる。また、15.May01 が他の月と比べて小さい値になっているが、最新のデ
ーターでは値を戻しているように見える。限られたデーターしか入手できなか
ったので結論づけるのは難しいが、約±20%の範囲で各月とも一致してい
る。
4
まとめ
SNO実験で用いられているアクリルに関する経時変化についての結果を
まとめた。光学的性質に関しては水温10度で10年間に相当する環境下でテ
ストをして、光学的性質がほとんど変わらないことがわかった。また、SNO
のアクリルボンドの強度モニターでは、現在のところ有意な劣化は観測されて
いない。
本報告の最後に、SNO実験のアクリル容器の開発に携わった専門家のコメン
トを添付する。(宛先の Art 氏は、SNO実験の研究代表者。)
3
4
5
Hi Art,
Some questions I can answer , and on some I can only speculate.
1. The compressive and tensile strength of acrylic when continuously
immersed in water does not decrease with time.
2. The transparency of acrylic when continuously submerged in water
does not decrease with time.
3. The growth of algae on acrylic when submerged continuously in
water is similar/identical to growth of algae on glass surfaces (i.e. if
algae growth was not observed on PMT tubes in pool in
Kamiokande, then it will not take place on acrylic spheres.
The solution proposed by Super K probably will not eliminate sympathetic
implosion of adjacent PMT tubes as the shock wave from inside the acrylic
sphere will traverse the acrylic envelope as if it were water. Of course,
the momentarily formed air cavity inside the cocoon at the moment of
implosion may mitigate the transmission of the shockwave to the water
outside the cocoon. Only an actual test on two adjacent cocoons in water
containing PMT tubes can answer adequately this question.
The other approaches that do not require experimental verification are:
1. Make PMT tubes thick enough where implosion will take place
only at pressures 400 to 500 percent higher than working depth in
the pool. Better QC of PMT tubes would guarantee minimum wall
thickness in all tubes.
2. Place PMT tubes in dry acrylic cocoons designed not to implode at
working depth for a minimum of 10 years of continuous submersion.
Either way, this a major engineering problem with scientific and
economic ramifications whose satisfactory solution requires a team
composed of both theoretical physicists and engineers competent in the
design of instrumentation components for continuous submergence. Such
an approach was successfully used in the design and construction of SNO
in Sudbury, Canada.
I would be more than glad to participate as a consultant to the project in a
similar manner as I was to SNO construction team.
Good luck with the project.
Jerry Stachiw
6
企業データシートからのアクリル材の水の経年変化に対する影響
戸塚洋二
平成13年12月3日
○三菱レーヨンのデータ
7
○ 住友化学「スミベックス」データシート内に:
耐水性:吸水に伴い寸法変化が起こりますが、
・・・機械的性質の変化もご
くわずかです。
なる記述がある。
また、1970年代からの沖縄博の水族館に使われたアクリルは外観上の
変化がないということです。
8
アクリルケース外形
アクリルケース断面1
アクリルケース断面2
防爆試験用防爆ケース 森山案発注図面
2001/12/18
変更点
• 現在使用している金属バンドのようなものを最悪使
用できるように設計する。これは前回提案したバンド
(アクリルケースに押し当てるタイプ)
が確かにつかえ
るかどうか未確認のため。このため形状がやや大きく
なった。
• ASSY部付近の余裕を取るために、リングをやめ、ス
テンレスワイヤーで後部に引っ張ることにする
• 後部は7ミリ厚さのFRPを使用する
• 追加の穴加工により、前回提案したバンドによる固
定方法も試験できる 前面は12ミリのアクリル、後半は7ミリのFRP
金具を使えるように広くする
21
_
R 341
155
624
184
R 176
ネック部を守る
ために広くとる
184
図中ではアクリル10ミリだが実際は12ミリ
21
ケーブル穴及ケーブル抜き溝詳細
68
6
132
36
624
R 176
R 341
この溝に合う部品を
製作しておき、ケーブル
を通した後に接着する
184
塩澤金具類似品を使用して固定する(試験はこれでOK)
もしくは
前回提案したバンドを使用して固定する
後半部詳細
624
_
140
48
R 178
184
68
36
250
40
R 142
20
155
20
8φ 9
PCD600
20
20
20
550
20
145
後半部、穴詳細(前回提案型バンド用穴は未記入)
M8
20
20
20
20
564
140
20
20
M8
B-B'断面
C-C'断面
前半部詳細
_
624
552
R 176
R 341
8φ 9
PCD600
184
大口径バンド変更案
• 大口径側のバンドは、これまでのものだと
形状が大きくてフランジと干渉する。
• M5で可能であれば丸フランジのまま可能
φ 6
φ 10.5 , 1.0t
M5を通すための6ミリの穴をあけた直径10.5ミリ
の規格品を使用する。他はこれまでと同じ。
2.75
大口径バンド部詳細図
M8
φ 523
PMT直径の公差の最大値
20
φ 513
20
20
20
564
φ 10.5
注意点、メモ
• 試験の際にアクリルを架構に固定するねじ穴が必要。
それなくしてはアクリルは不安定。
• 側面に取り付ける際、大口径部、小口径部にストレスを
かけないように小口径部のバンド側の穴は水平向きの
長穴を用意しておく。
• 前回提案のバンドが使用できれば形状を小さくでき、対
称性もあがるので安全性は増す。
• ASSY部突入防止ステンレスワイヤー部設計未完了。
これまで使用してきている金属バンドのようなものを使う場合
• 底面は新玉を使うため、金属バンドとケーブルの出方は
取り付け作業の際に調整できる。
• 側面は大口径部は取り替える。小口径部も再取り付けの
可能性がたかい。
高耐水圧光電子増倍管
n
n
n
n
形状
耐水圧
予想電気的特性
年次計画(希望)
形状
glass
light
Lead and
support
diode
reflector
photocathode
photoelectron
耐水圧
n 球の直径500mm、ガラス厚7mmとする
n 外圧によって球が座屈を起こす限界圧力は、
pcr = 2Et2/a2[3(1-ν2)]1/2
で与えられる。
n E=7×1010 Pa, t=2, a=250, ν=0.14として、
pcr = 2.7×107 Pa
となる。この限界圧力は、280気圧に相当する。
予想電気的特性
n 基本的動作
l
l
l
l
反射型光電面から光電子が放出される
光電子は10kV型はそれ以上に加速されてダイオードに衝突する
ダイオード中で電子・ホール対を約1000対生成する
電子、ホールは次段のアバランシェダイオードで100倍程度増幅され
る
l 電子、ホールは電極から取り出されて出力パルスとなる
n
n
n
n
ゲイン:105
量子効率:50%
パルス立ち上がり:2nsec以下
パルス立ち下がり:2nsec以下
年次計画(希望)
n
n
n
n
2001: 5インチ試作球による動作原理の確認
2002: 50cm球の軌道シミュレーション
2002: 50cm球の試作
2003: 試作球の動作確認
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