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私たちの考える社会とのかかわり

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私たちの考える社会とのかかわり
Sustainability
Report
私たちの考える社会とのかかわり
HIG H LIG HT S
▶ ダントツ商品で
お客様の環境配慮に貢献する
▶ 多様性戦略で競争力を高める
〜グループの先進事例から学ぶ
▶ 国境や会社を超えて高めあう
~進化するCSR調達
富士ゼロックスが考えるCSR、目指す姿、
その先にある持続可能な社会について
皆様にお伝えします。
私たちが目指すもの
Mission Statement
知の創造と
活用をすすめる
環境の構築
世界の相互信頼と
文化の発展への
貢献
企業品質
一人ひとりの
成長の実感と
喜びの実現
経済価値
企業品質とは
時として、矛盾しがちな「経済価値」
「 社会
価値」
「 人 間 価 値 」を、イノベーションに
よって高いレベルで統合し、ステークホル
ダーに有用な価値を提供し続けることを
可能にする企業の「品質」のこと。
企業
社会価値
人間価値
富士ゼロックスのCSRとは企業品質を追求することです。
企業品質の追求を通じ、富士ゼロックスは
ミッションステートメントに掲げた価値の創出を目指します。
その先にあるのは、持続可能な社会であると私たちは考えています。
INDEX
2
Fuji Xerox
02
04
06
10
14
ビジョン図
富士ゼロックスが考えるCSR、目指す姿、その先にある持続可能な社会
トップコミットメント ‘三つのC’の実践を通じてお客様や社会に新しい価値を提供します
ハイライト1
ダントツ商品でお客様の環境配慮に貢献する
ハイライト2
多様性戦略で競争力を高める ~グループの先進事例から学ぶ
ハイライト3
国境や会社を超えて高めあう ~進化するCSR調達
持続可能な社会
持続可能な地球(生態系)
Sustainable
Sustainable
Society
Environment
Sustainability
18
19
20
22
次世代を支える日中関係の架け橋として
グローバル・コンパクトの意義と企業の役割
他社に学ぶCSR ~少年の心を持ち続ける経営〜
再生コピー/プリント用紙の古紙配合率表示の問題について
23
30
32
33
34
CSR推進の自己評価
理念・共有価値
第三者意見
ウェブ版のご案内
編集後記
Sustainability Report 2008
3
Top Commitment
‘三つのC’の実践を通じて
お客様や社会に新しい価値を提供します
富士ゼロックス株式会社 代表取締役社長
▶CSRは企業経営そのもの
地球温暖化、派遣労働の問題、企業
です。多彩な人材の育成と活用を通じて、
することが大切です。そのため私は、‘三
グローバルに通用する組織としての高い
つのC’を社内で徹底しています。
Competencyを根付かせたいと考えて
不祥事など、CSRをめぐる課題への関
最初のCはCustomerです。
お客様一
心が高まり、企 業のそれらへの取り組
人ひとりとの接点をしっかり保ち、
ニーズ
みがますます重要になってまいりました。
を聴き取り、課題解決から普遍的なビジ
そうした中、私は、
4年間続けたCSR会
ネス・プラットホームをつくり出せるよう、
議を廃止しました。一見世の中の流れと
すべての従業員が営業的なセンスを持っ
「いろいろ努力したけれど駄目だった」
と
逆行するようですが、そうではありませ
てほしいと指示しています。なにか一つ
いう姿勢では、社会に魅力ある価値を提
ん。CSRは企業経営そのものであり、そ
大ヒット商品をつくれば安泰という時代
供できません。自部門だけでできなけれ
の対応は企業活動のすべてのプロセス
ではありません。お客様が期待し発信す
ば役員や外部機関を動かすとか、万策が
の中で考えてこそ意味があります。見栄
るニーズや情報にきちんと向き合う姿勢
尽きるまで徹底しないと、お客様や社会
えを競ったり、単に好感度企業のイメー
を大切にしてまいります。
から評価される課題解決は生まれない
ジづくりのためではなく、従業員一人ひ
とりが日常業務のなかで自然体で行な
うことが本来のCSRであると思います。
▶センスと能力を磨く
二番目のCは、Competencyです。
こ
います。
▶歯を食いしばってやりぬく
三 番目のCは、C o m m i t m e n tです。
のだと、役員や従業員に繰り返し説いて
います。それほど気持ちを入れて仕事に
取り組むことで、達成感や自己の成長を
他人からCSRを言われないと主体的に
れからのビジネスでは、お客 様の課 題
動かない状況は恥ずかしいと思います。
解 決に的 確にお応えすると同時に、感
すべての役員や従業員がそうした考えと
性、美、善の要素が求められます。いず
▶新しいコーポレートロゴの導入
感性で行動できる企業となるよう、さら
れも、画一的な答えはありません。社内
2008年4月、当社は13年ぶりにコー
なる進化を図る所存です。
に蓄積された知恵や経験を効果的に結
ポレートロゴを一新しました。ITの発展
びつけて、そして内部にない能力は外部
とビジネスのグローバル化に伴い、コ
のパートナーと手を組んで、圧倒的かつ
ミュニケーションの手段は、紙だけでな
ユニークな魅力を生み出す努力が必要
く、音声やマルチメディアも含めた多様
▶常にお客様の視点に立って
会社と社会にとって意味のある仕事を
4
するには、
お客様の期待を徹底的に理解
Fuji Xerox
実感することができると思います。
な媒体へと進化しています。
これまでは、
した。
こうしたご意見を経営に反映して、
ドキュメントを通じてお客様のコミュニ
この一年間、確実な改善につなげてまい
巻き込んでCSR調達活動を進めること
ケーションをお手伝いしてまいりました
りました。
で、相互にメリットのある、対等の協力関
が、
さらにドキュメントを超えてお客様を
支援するパートナーになるという決意、
加えてグローバルなフィールドで躍動感
▶本年度のレポートで
お伝えしたいこと
のある企業に成長したいという願いを
本年度のレポートでは、私が大切に考
込めて、新しいコーポレートロゴを導入
える三つのC(前述)を代表する事例を
しました。その狙いのとおりの企業とな
ハイライトに掲載しました。
第 三は、海 外の現 地サプライヤーを
係を築こうとしている事例です。品質のつ
くり込みや法令遵守の徹底への我々の
Commitmentをお伝えしたいと思います。
▶これからの
富士ゼロックスのCSR
るよう精進いたしますので、従前のロゴ
第一は、複雑な国際分業が進むなか、
当社は2012年に創業50周年を迎え
と同様、皆様に愛していただければ幸い
あえて難しい商品開発に挑戦することで、
ますので、これを機に本年度は10年ビ
です。
我々が社会に提供すべき価値を問い直
ジョン策定に着手いたします。
そのなかで
し、
あわせて組織の連携強化を図った事
「CSRはプラスアルファの仕事ではなく
例です。Customerに対する我々の姿勢
事業や経営そのものである」
という認識
を感じ取っていただきたいと思います。
を社内にもっと浸透させ、地に足の着い
▶昨年度のコミットメントと報告
2 0 0 7 年 度のレポートで、私は社 会
から信 頼される企 業となるために、富
第二は、国際人事制度のヒントを、欧
士ゼロックスが挑 戦すべき課 題として
米 流 マネジメントの 先 進 国 である 富
(1)CSRの精神に基づいたモノづくり
士ゼロックスオーストラリアに学び、そ
また、経営の責任者である私は、
これ
(2)お客様のCSRに役立つ価値の提供
れを富 士 ゼロックスおよび 関 連 会 社
を自身の重大な任務と認識して、CSRを
(3)やりがいを持っていきいきと働ける
全 体のナレッジに高めようと努力して
織り込んだ理想の経営に全身全霊で打
環境をつくること、を掲げました。
よく理
いる人 事スタッフの事 例です。関 連 会
ち込むことを皆様にお約束申し上げます。
解できたというご意見がある反面、
どの
社 内 部の知 恵と経 験を最 大 限に活 用
皆様からの忌憚のないご意見、
ご感想
目標に進もうとしているのか道筋が不明
してCompetencyの強化を図る富士
確であるといった厳しいご指摘も承りま
ゼロックス流のスタイルをご理解ください。
た自然体のCSRを組織全体で進めてい
きたいと考えております。
をお待ちしております。
Sustainability Report 2008
5
ダントツ商品で
お客様の環境配慮に
貢献する
Highlight s
01
環境配慮商品として高い評価をいただく複合機&プリンター。
実際の開発を担当した技術陣は何を考え、
どのように仕事を進めたのか。その舞台裏を紹介する。
6
Fuji Xerox
エコプロダクツ大賞 経済産業大臣賞を受賞
今やすべての企業で環境配慮に取り
第4回エコプロダクツ大賞(エコプロダク
複合機は、2008年6月に中国政府のグ
組んでいる。
そうした企業のお客様に
「よ
ツ大賞推進協議会主催)エコプロダクツ
リーン調達リストにも選定された。また、
くここまで考えたな」
と感心してもらうレ
部門の経済産業大臣賞を受賞した。秀で
受賞したプリンター75台は、2008年7
ベルの商品でなければ富士ゼロックス
た基本性能に加え、徹底した消費電力の
月の北海道洞爺湖サミットの公式開催
の顔とは言えない。
削減、鉛「ゼロ」
シャフトやバイオマスプラ
期間中、国際メディアセンター、事務セン
富 士ゼロックスのデジタルカラー 複
スチックの採用など業界初の環境技術
ターなどで、
サミット関係者やマスコミ関
合機およびプリンターは、2007年11月、
が高く評価された結果だった。受賞した
係者に活用された。
富士ゼロックスでは、新商品の開発・
機能を盛り込んだ、21世紀を代表する
開発の目標が明確になってやりやすいか
市場導入のプロジェクト管理は、全体を
ダントツ商品をつくりたい、
と真剣な顔
もしれない、
と考えました。それに、仲間
統括するゼネラル・プログラム・マネジャ
で言うんです。もちろん気持ちは僕も同
の技術者がずっと温めてきた環境技術
ー(GPM)
と、開発面を統括するテクニ
じでしたが、
こいつ本気だなと思わせる
がたくさんあるのは知っていましたしね。
カル・プログラム・マネジャー(TPM)に
気迫がすごかったですね」秋吉は苦笑ま
よし、何でも徹底的に試してやろう、
とい
託される。経済産業大臣賞を受賞した
じりに語る。
「でも、そう言い切った方が
う気持ちでスタートしました」。
富士ゼロックス
デバイス開発本部 第二デバイス開発部
マネジャー 安藤 良
富士ゼロックス 商品開発本部 商品開発推進部
マネジャー 秋吉 祐二
見失いかけたとき、当時の社長 小林陽
に挑戦することで歴史に残るほどの変
「ダントツを目指す気概」が合言葉にな
太郎(現相談役最高顧問)が全員にはっ
革や世界一の商品を生み出す、そうした
っている。これは、他社との比較優位や
ぱをかけた際の言葉である。
これは、単
「人を起点とした発想」が「つよさ」につ
一歩リードで満足せず、世の中を驚かせ
に競争に勝つだけの意味ではない。一人
ながるという富士ゼロックスの信念を表
るような圧倒的な強さを追求する姿勢
ひとりが「おもしろい!」
と感じるほどに
す言葉なのだ。
をいう。1980年代に開発陣が方向性を
仕事に打ち込む、
自分の気概で高い目標
突然のリーダー指名
デジタルカラー複合機およびプリンター
のTPMは、入社20年目の安藤良が務め
た。安藤はそれまで大型複写機の画像
制御の開発を担当していた生粋の現場
の技術者である。それが、大量の世代交
代、中国への開発・生産シフトなどによる
リーダー人材の新たな需要のなかで、開
発・市場導入の全体を指揮できる人材と
して大抜擢されたのだ。
一 方 、G P Mである商 品 開 発 本 部の
秋吉祐二は安藤の言葉を聞いて驚いた。
「安藤君は、お客様が要求するすべての
ダントツ商品を目指す
富士ゼロックスの関係者のなかでは、
Sustainability Report 2008
7
プロジェクトには、省エネルギー型の
ていたが、難度の高い技術課題に短期
だく絶好の機会です。コストや納期との
画像装置、バイオマスプラスチック材料
間で結果を出すため、技術開発のメンバ
兼ね合いは私が責任もって判断します。
など、環境技術に明るい多くの開発者や
ーも商品開発に加わってもらうことにし
皆さんは開発者のプライドにかけて、お
技術者が呼び込まれた。従来は技術開
た。安藤はメンバーに呼びかけた。
「 今ま
客様にとって最高の効果が出る技術を
発と商品開発の各段階で担当者を分け
で温めてきた技術をお客様に使っていた
投入してください」。
富士ゼロックスの日本・中国・韓国の4
プリンターでは、従来のレーザー方式で
た。お客様にとって一番価値ある技術を
工場、原材料・部品の製造、商品の物流
はなくLED(発光ダイオード)方式を露
届けようという全員の執念が通じたんで
日本
などが年間に排出するCO2 総量は、
光装置に採用したことで、消費電力を大
すね」。
最大級の化学品メーカーが国内で排出
幅に低減することに成功した。画像形成
するCO 2と比較しても約百分の一程度
装置の研究者である土屋健は開発の経
である。組立作業が中心なので、会社の
緯をこう語る。
「 LEDは、長寿命・低電力
規模に比べれば意外と少ない。
もちろん
などお客様へ価値を発揮できる技術で
生産・物流工程でのCO 2 排出削減も徹
す。
しかし、量産したときの画質のムラが
底して行なっている。
しかし、一番大切な
ずっと課題でした。でも、上司から
『将来
のは複合機&プリンターを使ってくださ
を支える環境技術だ、
ここであきらめる
るお客様が「環境に配慮した企業」にな
な』と強い後押しがありました。そこで、
るうえで、富士ゼロックスがサプライヤー
グループ全員で手分けして、一見関係な
として、
またアドバイザーとして、
どれだけ
いと思われる資料まで全部調べました。
貢献できるかという視点である。
その結果、デジタルカメラのパンフレット
お客様の視点
経済産業大臣賞を受賞した複合機&
から解決のヒントを得ることができまし
技術の融合、そして新たな壁
8
環境に配慮した商品を開発するには
が発生した。コストをかけずにこれらを
どのような難しさがあるのだろうか?「例
解決するために何度も何度も実験を重
えば消費電力を低減するには商品や部
ね、排気穴の場所や大きさ、
ファンの向き
品を
『小型化、集約化』
します。
そうすると
を変えることで、
やっと理想のバランスに
次に熱や音の処理をどうするかを考えな
たどりついた。
こうした問題の繰り返しに、
くてはなりません。振動などによる部品
メンバーは寝る時間を削って議論と実験
相互の影響も解決すべき大きな問題で
を繰り返した。
す」安藤は語る。それぞれの技術では課
チームワークも大きな要素だ。
「従来の
題をクリアしていても、
いざ小型化された
技術を使用する部分のコストは可能な限
商品に組み込もうとすると新たな問題が
り削減し、環境などの新技術には思い切
発生する。例えば、小型化に起因する熱
って投資する、つまりメリハリをつけるこ
の問題は深刻だった。熱を逃がすための
とでお客様の納得できるコストを実現し
排気穴を大きくすると今度は音の問題
ました。
これを残す代わりに、
この部分は
Fuji Xerox
富士ゼロックス
研究技術開発本部 基盤技術研究所 土屋 健
HIGHLIGHT
01 ▶ ダントツ商品でお客様の環境配慮に貢献する
ある程度あきらめようというバランス感
覚を共有することで、全員の仕事のレベ
ルが一段と向上したように感じます」安
藤はこのように振り返る。担当者の利害
は時として衝突する。ダントツの環境配
慮商品という共通の高い目標に向かって
ぶつかり合うことは、
メンバーの結束力を
強めるだけでなく、縦割りの業務分担の
なかで意思の疎通に欠けていた部門間
の連携を改善する効果もあったのだ。
開発者にとってのCSR
富士ゼロックスエンジニアリング(株)、
GPMの秋吉は語る。
「 商品としての基
機構開発部の正木慎治は静音設計を担
本性能はもちろん、環境やユニバーサルデ
当した。
「 僕らの目指すところはとても高
ザインはこれからの商品にはなくてはなら
いのですから、はじめからできる見通し
ない条件の一つです。商品開発の立場で
がたつものはほとんどありません。はじ
は挑戦したい課題はたくさんあります。そ
めから
『できる』か『できない』かを考える
の一方で、
コストや納期の制約があるので、
のではなく、
自分自身が『やる』か『やらな
理想の開発がいつでも実現できるわけで
い』かを腹決めすることが大切だと分か
はありません。
でも、信念を持って夢の実
りました。必死になれば結果は必ずつい
現を追い続けることが開発者のCSRでは
てくるのですね。
この経験を忘れずに、
こ
ないでしょうか。皆さんから応援をいただ
れからもチャレンジを続けていきます」正
き、
自分たちのやってきたことが間違いな
木はプロジェクトへの参加で学んだこと
いと確信することができました。チーム全
をこう述べた。
員、感謝の気持ちでいっぱいです」。
富士ゼロックスエンジニアリング株式会社 機構開発部 正木 慎治
さらに高いステージへ
エコプロダクツ大賞は、設立趣意書の
なかで「具体的にすぐれた環境配慮が組
み込まれるとともに、独創性あふれ、
しか
も社会から評価の高いエコプロダクツ
を表彰する」
と、その狙いを説明している。
世界のサステナビリティに寄与する
「独創
性」
こそ、富士ゼロックスの目標とするとこ
ろである。富士ゼロックスの商品はこうし
た熱い心の技術者が開発している。お客
様の環境配慮への貢献に終わりはない。
Sustainability Report 2008
9
Highlight s
多様性戦略で
競争力を高める
~グループの先進事例から学ぶ
02
10
Fuji Xerox
グローバルに事業活動を展開するうえで、人材の活用はどうあるべきか。
従業員の多様化と柔軟な就労形態で、業績の向上を図る
富士ゼロックスオーストラリア。
同社の取り組みと、それを学ぶ本社人事スタッフの活動を紹介する。
グローバルに通用する人事戦略を求めて
2008年6月、富士ゼロックス人事部の
して、多様な人材を採用し、最大限に能
勢が大切です。そのためには、各国の人
福田殊和は、富士ゼロックスオーストラ
力を発揮してもらう、グローバルに通用
事制度の背景を正確に理解して、それぞ
リアの人事部長ベス・ウィンチェスター
する人材の獲得・育成・活用を掲げてい
れの人事関係者と良好なコミュニケーシ
を訪ねた。富士ゼロックスオーストラリ
る。
「 富士ゼロックスは、グローバルに共
ョンを図り、お互いに学びあうことが不
アは、1 , 6 3 6 名(男性 1 , 2 1 2 名 、女 性
有する価値観の展開と、人材育成の仕
可欠です」
と福田は語る。そして、最初の
424名)の従業員、6拠点の支社で全国
組みを整備することが求められていま
訪問先に、業績の向上策の柱に人事制
の販売網をカバーし、年間6億8,900万
す。全体の活動成果を最大化するには
度をすえる富士ゼロックスオーストラリ
オーストラリアドル(約700億円)の売
“Think Globally, Act Locally”の姿
アを選んだ。
富士ゼロックス
人事部 福田 殊和
富士ゼロックスオーストラリア
人事部長 ベス・ウィンチェスター
会の提供が厳しく企業に求められる。
向にあり、失業率も4.3%と歴史的な低
上(いずれも2007年度実績)を上げる、
富士ゼロックスの100%出資による販売
会社である。
今、富士ゼロックスは、世界規模の事
業拡大に対応し、お客様をはじめとする
ステークホルダーとの連 携を図ること
ができる人材をより多く求めている。こ
のような状 況を受け、福田が所 属する
人事部人材戦略グループはその任務と
オーストラリアの社会事情
オーストラリアは、コンプライアンス・
プログラムの規格(AS3806)や、企業
同国では、数年前まで貧困、失業、
イン
水準にある。
このため、労働市場は売り
の社会的責任に関する規格(AS8003)
フレなどの社会問題が大きな政策テー
手市場が続き、優秀な人材の確保が難し
が早くから制定され、ISO(国際標準化
マとなっていたが、現在は景気が上昇傾
くなりつつある。
機構)が、2010年発行に向けて活動を
進める国際的なCSRガイダンスである
ISO26000の策定作業にも積極的に貢
献するCSR先進国である。
広大な土地に比べて人口の少ない同
国では、毎年数万人の移民を政策的に
受け入れ、国籍・人種・言語・文化の多様
化が進んでいる。1970年代に白人優先
主義を撤廃して以来、人種差別などの人
権侵害に社会が敏感に反応し、労働者
の採用や昇進・昇格の際にも、平等な機
Sustainability Report 2008
11
働き方が変わった!
福田は、富士ゼロックスオーストラリア
「オーストラリアの成人の35%は、な
から午後5時まで事務所でネクタイを締
で働いているスタッフに話を聞いた。
「私
んらかの理由で働いていません。その中
めて働くことを当然とする価値観がしみ
は3年前に出産し、1年間の育児休職の
には、高い職業能力と就労意欲を持ちな
わたっていた。その一方で、退職者の補
後、
まず週2日の勤務で復帰しました。そ
がら、個人や家庭の事情が制約となって
充を募集しても欲しい人材が集まらず、
の後、週3日に増やし、現在は週4日勤務
毎日フルタイムで働くことができない人
若い労働者は入社してもすぐに辞めてし
しています」
と話すのは人事部のバネッ
もたくさんいるはずです。一つの方法や
まう状況が続いた。大企業ではないので
サ・タルティー。彼女は自分自身の経験
基準で、全員が満足できる制度などあり
飛びぬけて高い給与を提示することはで
も踏まえて、柔軟な人事評価システムの
ません。そこで就労条件の柔軟化を図り、
きない。
しかも、空前の好景気では、優秀
開発を担当している。また、バーバラ・オ
一人ひとりのニーズに合致した働き方を
な人材に就職候補先として考えてもらう
ルライトは「趣味に時間を割きたいので、
提供することによって優秀な人材を合理
ことも困難を伴う。そこでウィンチェス
9日間は通常より長く働き10日目は休む
的な報酬で確保する、それによって会社
ターが考えたのは「自分の希 望にあっ
という働き方を上司との合意で試してい
全体の生産性を高める方針に大きく転
た働き方に柔軟に対応してくれる会社、
ます」
と自分の働き方を説明する。富士
換したのです」。
これらの改革を推進して
一人ひとりの価値観が尊重されて楽しく
ゼロックスオーストラリアでは、趣味も、
きたウィンチェスターは語る。彼女は約2
働くことができる会社にする」
という基本
フレキシブルに勤務形態を変更する正当
年前に大手の建設会社から転職して、富
方針だった。
こうした人事部長の考え方
な理由なのだ。一人ひとりの事情や多様
士ゼロックスオーストラリアの人事部長
は社長のアンディー・ランバートも強く
な価値観が反映できる働き方に福田は
に就任した。当時の同社は、男性従業員
支持し、同社のCSR方針の一翼を担って
驚いた。
が全体の4分の3以上を占め、午前9時
いる。
富士ゼロックスオーストラリア
人事部 バネッサ・タルティー
富士ゼロックスオーストラリア
教育・開発コンサルタント バーバラ・オルライト
富士ゼロックスオーストラリア
社長 アンディー・ランバート
人を中心とした経営
富 士 ゼ ロックス オ ーストラリア が 、
2007年9月にサービス事業の一部とし
きるようになりました。緊急なデータ入
て買収したKAZ社のBPS事業。
クレジッ
力業務もあるのでチームワークが重要で
トカードや保険の個人申込み用紙を管
す。
でも、全員がフルタイムで勤務する必
理・入力し、データ化するのが主な業務
要はありません。柔軟な働き方をする従
だ。買収と同時に富士ゼロックスオース
業員の組み合わせで、
日々新鮮な気持ち
トラリアのマネジャーとなった元 K A Z
で効率よく仕事できます。みんな喜んで、
従業員のサマンサ・フィッツジェラルドが、
やりがいを持って仕事しています。買収
オフィスで説明を聞いてまわる福田に話
後に転職した人はほとんどいません」。
しかけてきた。
「機械化の投資を支持して
12
くれたので、みんな高度な仕事に集中で
Fuji Xerox
福田は、働く従業員の言葉に富士ゼ
HIGHLIGHT
02 ▶ 多様性戦略で競争力を高める ~グループの先進事例から学ぶ
ロックスの「人を中心とした経営」がここ
ルやリーダーシップを備える人材こそが
という発想が求められる。富士ゼロック
でも実現していることを実感した。社会
企業の未来を支える時代である。従業員
スのCSRは、
こうした人事政策の上に成
と豊かな接点を持ち、新しい時代のスキ
の成長と会社の成長が、社会の役に立つ
り立つといっても過言ではない。
ダイバーシティ・マネジメントが労働生産性を支える
福田が仕事をする日本では、ダイバー
シティを、女性や外国人の登用、障がい
者の雇用に関するポジティブ・アクショ
ンの意味にとらえる傾向がある。その背
景に、
日本企業は戦後、画一的な労働市
場から均質の労働力を確保できる環境
であったために、他国でとらえているダイ
バーシティの真の意味するところを理解
しづらい状況があるのかもしれない。
こ
れに対し、富士ゼロックスオーストラリ
アは、
まず優秀な人材を確保するために
就労条件を柔軟化し、その結果として集
まった多様な人材の相乗作用によって、
会社全体の生産性を改善するマネジメン
のために就労時間を短縮したいという
を実現するには、現場の要望に柔軟に対
トに挑戦している。多様な人材を惹きつ
希望も同じように扱うべきです。当然短
応し、公正妥当な評価ができ、変革を生
ける経済力、企業ブランド、
マネジメント
縮した勤務時間に応じて給与は減りま
み出す管理者、すなわち
『リアル・チェン
力を備えることが競争力の源泉なのだ。
すが、
「自分の事情に配慮してくれた」
と
ジ・リーダー』をたくさん育てることがポ
働き方に対するニーズは国や地域に
いう感謝の気持ちが生まれます。
このよ
イントです。制度で人を動かすのではな
よって異なる。その地域のなかでも、い
うに感じる従業員は一生懸命働いてくれ
く、人が活きる制度や仕掛けを考えるの
ろいろな価値観を持った人材が眠って
るので、結果的に生産性が高まるのです。
が、
これからの人事の仕事でしょう。多様
いる。多様な人材の活躍を、生産性の向
その従業員が申し出た就労条件のなか
な人材が、熱心に仕事して、きちんと成
上につなげるために、就労形態の選択と
で、
どうすれば会社にとっても最大の貢
果を出してくれる。その過程を通して一
運用を柔軟化し、一人ひとりの働き方に
献をしてもらえるかを考えるマネジメン
人ひとりが成長を実感したり、働く喜び
対応することによって、人材を多方面か
ト能力が、企業の持続可能性を左右する
を感じる。そんな富士ゼロックスと関連
ら引き寄せて相乗の効果を引き出すこと
のだと思います」。
会社になるよう、各国の取り組みを学び
を考えなければならない。富士ゼロック
富士ゼロックス人事部長の日比谷武
スオーストラリアが取り組んでいるダイ
は語る。
「グローバル化した社会で企業
バーシティ・マネジメントは、なにか大き
の成長を支えるのは、共有価値をベース
働き手の多様なニーズに就労形態で
なヒントを福田に与えた。
とした従業員一人ひとりの帰属意識と誇
柔軟に応える。富士ゼロックスオースト
こうした福 田の意 見にウィンチェス
り、自己実現の意欲だと思います。人事
ラリアの挑戦に、福田は多様な人材の活
ターが答えた。
「そのとおりです。私はす
政策は、それを可能にする道筋を示すも
躍を促進するうえでの大きな示唆を得た。
べての従業員がダイバーシティの対象だ
のでなくてはなりません。私は、その鍵を
企業集団の経験と知恵を共有して、富士
と考えています。女性、民族、宗教、障が
握るのが各国の実情に応じたダイバーシ
ゼロックスの人事戦略はさらに前進する。
いなどに対する配慮も大切ですが、趣味
ティ・マネジメントだと考えています。
これ
ながらねばり強く支援していきたいと思
います」。
Sustainability Report 2008
13
Highlight s
国境や会社を超えて
高めあう
~進化するCSR調達
03
14
Fuji Xerox
労働問題の増加が報告されている中国・華南地区。
富士ゼロックス深圳は、CSR調達の活動を通じて
取引先の経営改善に協力している。
お互いが強くなろうという目標に、
取引先と富士ゼロックス深圳との絆が強まった。
取引先の反応
2007年8月、富士ゼロックスは、東京
労働環境や寮の整備を進めたところ、従
りますが、富士ゼロックスはガイドライン
を皮切りに、仁川(韓国)、上海、深圳で、
業員が自主的に動いて、経営を支援して
やフィードバックが充実していて、取り組
CSR調達説明会を開催した。
くれるようになりました。1年早く対応し
みの質の高さを感じます。電子機器業界
「昨年初めての労働争議を経験し、
困っ
ていれば労働争議は避けられたかもし
の他社にも水平展開して、我々の回答の
ているときに富 士ゼロックスのセルフ
れませんね」。中国・深圳市で機械部品
負担を軽減してほしいですね」。富士ゼ
チェックリストやガイドラインをもらいま
の製造に携わる聖紀塑膠製品(深圳)有
ロックスへの期待は大きい。
した。それまでは品質・コスト・納期の改
限公司の陳順城副総経理は語る。
「 質問
善に専念していましたが、資料を参考に
書類だけを送りつけてくる発注企業もあ
労働争議が多発する中国・華南地区
富士ゼロックス深圳の労務管理アドバ
話を駆使します。近隣の会社で賃金が上
人件費の上昇、人民元高による輸出採
イザーであるNPO 深圳当代社会観察
がったと聞けば、その背景や理由とは無
算の悪化、外資企業に対する優遇措置
研究所の劉開明所長は、華南地区の労
関係に、
自分の勤務する工場でも賃上げ
の廃止・縮小と、中国での事業展開は新
働事情を次のように説明する。
「中国、特
を要求したり転職したりすることも珍し
たな対応を迫られている。
に華南地区では、賃金や処遇を理由とす
くありません」。それに加え、原材料費や
る労働争議が最近急増しています。その
背景には、労働契約、労働安全衛生、最
低賃金など法律や条令・規則が頻繁に
変わるので、経営者の対応が追いつかな
いこと、また、一人っ子政策の世代が増
えるにつれ、安くて補充・代替が可能な
労働力の確保が難しくなってきたことが
あります。さらに、若い労働者は携帯電
聖紀塑膠製品(深圳)有限公司
副総経理 陳 順城氏
深圳当代社会観察研究所
所長 劉 開明氏
まず自分たちが勉強を
これまでのところ、富士ゼロックスの
上、取引先からは、本当にここまでやる必
CSR調達は現地の取引先の理解を得て、
要があるのか?という反応が予想されま
計画どおり立ち上がりつつある。
これは
した。ですから、調達業務に携わる我々
生産現場のスタッフの努力と工夫による
自身が内容を正確に理解して、その必要
ところが大きい。
性を納得しなければならないと考えまし
「我々調達スタッフには、取引先の課
題に対して効果的な支援を行なうことに
た」。富士ゼロックス深圳采購統括部長
の多田順一は語る。
よって信頼関係を強化し、取引先の従業
その後の展開は順調だったのだろう
員のモチベーションや品質・コスト・納期
か?CSR調達の導入展開を担当する采
の改善を保証する任務があります。その
購統括部企画推進科科長の楊元鐘が
富士ゼロックス深圳
采購統括部長 多田 順一
Sustainability Report 2008
15
説明する。
「取引先の各社は、限られた対
のように調査を進めるべきか考えあぐね
応力に複数の企業から同様の調査が要
ました。
日頃から取引先の現場に足を運
求され、対応に苦慮しています。
ですから、
んで、問題を肌で感じる大切さを改めて
セルフチェックや改善計画のフォローに
認識しましたね」。
このように楊は、取引
は予想以上の手間と時間がかかりまし
先のフォローと回答の信頼性への配慮
た。
しかも、回答されたデータと実態とが
が重要であることを指摘する。
直感的に一致しないケースが多くて、
ど
富士ゼロックス深圳
采購統括部 企画推進科 科長 楊 元鐘
「訪問確認」が連携とプロ意識を育てる
富士ゼロックス深圳では、取引先から
が導入展開され、他部署のスタッフも一
して親身に対話することで取引先からも
回答されたセルフチェックと改善計画に
緒に訪問することから、バイヤーには取
感謝される、
といったことから、仕事に対
基づいて、次の要領で
「訪問確認」
を進め
引先の状 況をより良く理 解しておく努
する意欲や会社に対する帰属意識が向
ている。
力がこれまで以上に求められるように
上し、経営に対する理解も進みます。
また、
なりました。今後はすべてのバイヤーに、
他部署の仕事の価値を知ることによっ
長、バイヤー)、人事、環境、総務、法務、
CSR調達の重要性や、富士ゼロックスの
て、部署間のコミュニケーションも改善し
CSRの各担当者で構成している。
チーム
一員としての姿勢を正しく理解してもら
ています」。取引先の問題を改善しようと
では実施する際のポイントを
(1)采購統
う予定です。本当に強いバイヤーが育つ
チームで取り組むことで、
スタッフのプロ
括部長が「取引先の利益のために実施す
ことを楽しみにしています」楊は語る。
意識と部署間の連携が育っているのだ。
「訪問確認」チームは、采購統括部(部
ること」を相手に説明する(2)取引先の
さらに、CSR推進室科長の劉美華が
総経理、副総経理など経営層に参加して
この点の感想を語る。
「 采購統括部の部
いただく
(3)
チェックリストの自己評価だ
長やバイヤーだけでなく、人事、環境、法
けを信じず、工場や寮など現場を目と耳
務などの本社スタッフが一緒に行動する
で確かめる、
と決めた。
ことで、
スタッフの育成という面において
「今までは、取引先を訪問するのはバ
も非常に良い影響があります。自社の取
イヤーの仕事でした。
しかし、CSR調達
り組みが先進的である点が分かる、訪問
富士ゼロックス深圳 CSR推進室 科長 劉 美華
取引先からも予想以上の反応が
16
「 富 士 ゼ ロックス が 示 し た セ ルフ
認も我々にとって役立ちました。富士ゼ
チェックリストを見たとき、
この項目に全
ロックス深圳の中国人スタッフは若いの
部合格しないと取引を停止されると勘
によく勉強しています。何が問題でどう
違いして、社内で大騒ぎになりました。
し
解決すればよいか、人事や環境など専門
かし、丁寧に読むとどれもやらなくては
のチームが的確に教えてくれます。中小
いけないことばかりで、
よくぞここまでま
企業の我々が、
どうすれば品質・コスト・
とめてくれたと感心しました」。中国・深
納期とCSRを両立できるか、具体策を引
圳市で機械部品の製造に20年以上携
き続き一緒に考えてほしいですね」。名
わる奄美弾簧有限公司の名島直徳総経
島総経理は富士ゼロックスへの期待を
理は語る。
「セルフチェックの後の訪問確
込めて語る。
Fuji Xerox
奄美弾簧有限公司
総経理 名島 直徳氏
HIGHLIGHT
03 ▶ 国境や会社を超えて高めあう
~進化するCSR調達
本社と現場の一体化が重要
新技術の開発や、一層のコストダウン
努力が求められる製造業の現場では、利
現場のリソースが足りず、点検や是正が
なおざりになる事態が想定される。
益の保証とCSR調達を両立させる上で
そこで、CSR調達に取り組む必要性を
さまざまな障害にぶつかる。
それゆえ、取
取引先の経営層に納得してもらった上で、
引先の経営層にCSR調達を要請しても、
取引先の現場には実践的な点検・是正
の手順やツールを提供することが不可欠
である。
さらに、CSRの議論の広がりとと
は継続が大切です。現場だけで推進して
もに、企業に対する社会の期待もますま
いると行き詰まることも多いし、世界の
す専門的になるので、変化を察知して対
動向などもつかめないので、本社や調達
応できるスタッフの育成・確保も必要だ。
本部のタイムリーなサポートが必要で
富士ゼロックス深圳の導入当時の采
す」。書類や指示だけでない、本物の改
購統括部長で、現在は同社の生産セン
善につなげることが富士ゼロックスの本
ター長の蒔田信之が語る。
「 CSR調達
社と現場との共通の目標である。
深 圳当代 社 会 観 察 研 究 所の劉 開 明
CSR調達の導入推進を指示した富士ゼ
はありません。CSR調達は商品の品質そ
所長は語る。
「 富士ゼロックスがCSR調
ロックス社長の山本忠人は、
これまでの
のものだと考えて、
ねばり強く続けます」。
達を経営戦略の中心にすえて、総力を挙
活動を振り返って述べた。
「 お客様や株
取引先の労働環境の改善を、富士ゼ
げて取り組んでいることに敬意を表しま
主から見れば、取引先の工程も富士ゼ
ロックス商品の品質向上につなげる。
こ
す。訪問確認チームの教育プログラムに
ロックスの工程も同じです。一緒に改善
の遠大な計画は始まったばかりだが、関
私も関与しましたが、その教育内容の水
を繰り返す気概と行動力がなければ、市
係者は強い手応えを感じている。
より分
準や準備の細やかさは、ほかに例を見ま
場競争に生き残る品質やコストの改善は
かりやすく、よりはっきりした効果をと、
せん。欧米企業もここまではやりません。
実現しません。CSR調達は特別なことで
関係者の努力が続く。
富士ゼロックス深圳
生産センター長 蒔田 信之
さらに先を目指して
一人でも多くのスタッフがCSR調達の意
義を理解して、取引先と具体的な改善策
を語り続ければ、会社や取引先の業績も、
そして華南地区の社会も良い方向に進
むと期待しています」。
さらに今後の課題も指摘する。
「 取引
先が診断に慣れて表面的な回答をした
り、悪質な取引先が社内文書を偽造して
訪問確認に臨んだときに見抜く力をつけ
る必要があります。
また、何度警告しても
改善しない取引先への対応も考えなけ
ればなりません。外部の専門監査人との
共同体制の強化も検討すべきでしょう」。
開発・生産担当役員として、2年前に
Sustainability Report 2008
17
次世代を支える日中関係の
架け橋として
富士ゼロックス 相談役最高顧問 時代はアメリカ主導の20世紀から
「ア
り巡らせた拠点で人材を鍛えること、日
メリカ以外」の国による世界へと変化を
本企業の経営層に外国の役員を招くこと
始めました。戦争、テロ、疫病、天災被害
などはその手段として考えられます。
のニュースが絶えない混沌とした日々の
私は、2003年から新日中友好21世
なかで、
これからどのような世界になる
紀委員会の日本側座長に就任して、
さま
のか、
どこが中心となるかを世界中が注
ざまな角度から日中関係について議論
視しているように思います。 し、両国政府に提言・報告を行なってい
その中でも中国が最も注目される大
ます。その活動を通じて、青少年の交流
国の一つであることは間違いありません。
やメディアの役割は特に注意を払うべき
中国は素晴らしい歴史を持ち、誇り高い
課題だと感じています。
国民に恵まれた国です。開放政策後の経
世界を席巻した投資家中心の市場原
済成長は、世界における存在感を強く印
理主義は、
いろいろな局面でその問題性
象付けました。中国と日本との関係を見
を露呈しています。若者世代に拝金主義
ると、経済の結びつきだけでなく、政治
が広がらないよう配慮することは世界の
の歩み寄りも着々と進んでいると思いま
サステナビリティにとって重要な視点で
す。その反面、急激な変化は経済格差や
あると思います。
環境問題を生み、本当に悩ましいところ
にきていると思います。
げて、民族主義的な非難を加える姿勢は、
お互いに慎む必要があります。政治は本
い中国が抱える多くの問題は中国だけ
来、国内優先であり、外交上の重要な事
の問題ではありません。中国がバランス
項についてダブルスタンダードととらえ
のよい楫 取りで国際社会に仲間入りし
られがちな発言が避けられないからです。
て、それが世界のサステナビリティにつ
それを前提に、相手国が本当に言いたい
ながるよう、先進国やアジア諸国が何を
ことは何か、
どう対話すれば誤解を生ま
できるか、また中国自身がそうした世界
ずに建設的な関係が築けるかを考える
の心配を払拭して誠実に取り組むことが
大人の智恵が求められると思います。
とても重要だと思います。
Fuji Xerox
また、相手国の政治家の発言を取り上
その意味で、
これからの経済発展に伴
かじ
18
小林 陽太郎
中国のほかにも、インド、イスラム圏、
これからの時代、
いずれの国も、
さまざ
アフリカなど世界のあり方に影響を与
まな国との接点を豊かにして、情報の質・
える国々が控えています。仕事や生活を
量を強化して、対等に共存できる関係を
一緒にすれば、
どんな国や地域の人々で
築かなければなりません。そのためには、
あっても心が通じる経験は皆さんにもあ
社会や市民の視点でバランスのとれた物
ると思います。偉ぶるでもなく、卑下する
の考え方のできる人材を増やすことが急
でもなく、対等な付き合いを深めること、
務だと思います。そういうことは、政治家
そして相手の問題が良い方向に解決す
や役人だけに任せるのではなく、企業の
るようアイデアを出し合っていくことが、
人間が率先して行動を起こさなければ
世界の平和と安全、
ひいては世界のサス
実現しません。世界の隅々まで企業が張
テナビリティにつながると信じています。
グローバル・コンパクトの意義と
企業の役割
富士ゼロックス 相談役特別顧問
2002年、私は富士ゼロックスの社長
「社会」を統合的に高めていこうとする、
として国連グローバル・コンパクトに署
富士ゼロックスのCSRの基本哲学「企
名し、2007年には国連グローバル・コン
業品質」
にも通じる考え方です。
パクトのボードメンバーに就任しました。
グローバル・コンパクトのフォーラムは
国連グローバル・コンパクトは、企業
経済新興国や発展途上国でも盛んに開
が国連機関、労働団体、市民社会と連携
催されます。私は、中国や韓国、
タイなど
して人権、労働、環境、腐敗防止分野に
で開催される国連グローバル・コンパクト
おける10原則を支持し、責任ある行動
の会議に、
出来るだけ多くの日本企業、
そ
をとる自発的な活動です。私は現在、国
して富士ゼロックスの現地法人トップの
連グローバル・コンパクトがかかわるい
参加を呼びかけています。
その地域にどの
ろいろな場でお話する機会を多くいただ
ような課題やニーズがあるのかを客観的
きます。国連であったり世界のローカル
に理解する絶好の機会だからです。いま
なネットワークのフォーラムであったり
世界がどのような方向に向かおうとして
しますが、いつも富士ゼロックスにおけ
いるのか、
どのような新しい仕組みが形成
るCSRの実践がベースになっています。
されようとしているのか、それにどのよう
そして、いつの場合も各国の経営者や国
に参画すべきか、そうした議論に参加し、
連関係者から予想を超える高い評価を
その熱気を肌で感じるとともに、
自らもコ
いただきます。
これは私にとっても、富士
ミットしていくことがこれからのリーダー
ゼロックスの社会的な「意味合い」を考
人材に求められるのではないでしょうか。
える良い機会となっています。
有馬 利男
富士ゼロックスにかかわる人々や、世
グローバル・コンパクトの国際会議に
界中の多くの企 業の方々が、自分と世
参加しますと、著名なグローバル企業の
界、そして地域社会との関係を自然に考
経営トップやNGOのリーダー達が地球
える、それが企業の中でも当然のことと
温暖化にとどまらず、貧困や格差、
あるい
評価される、そのような「企業市民」の時
は、労働や人権の問題など幅広い社会
代を創り上げていく上で、国連グローバ
の問題に目を配って熱く議論しています。
ル・コンパクトは極めて有効なプラット
昨年のリーダーズ・サミット会議では国
フォームです。国連グローバル・コンパク
際企業の経営トップが、水資源管理や温
トの意義、その実現によって企業経営に
暖化防止について活動の連携を呼びか
もたらされる可能性は、もっと国際社会
け、イニシアティブ(活動チーム)が実際
に広く理解されなければなりません。そ
にスタートしました。
れには、何よりも企業関係者の自発的な
私がグローバル・コンパクトの活動を
意志と参画が不可欠です。そのために私
すばらしいと思うのは「高い理念の実現
も国連グローバル・コンパクトボードメ
を、世界経済やそれを支える企業の発展
ンバーとして、
また日本のグローバル・コ
と統合的に追い求める」
というその哲学
ンパクトネットワークの議長として力を
に共鳴するからです。
これは「経済」
「 人」
尽くしていきたいと思います。
▶詳しくはwebをご覧ください。
http://www.fujixerox.co.jp/company/sr/2008/highlight/arima.html
Sustainability Report 2008
19
他社に学ぶCSR
企業と社会とのかかわり
第2回 中村ブレイス株式会社 (島根県)
~少年の心を持ち続ける経営~
地域との共生という言葉がある。企業は、雇用や納税だけ
(いわみ)銀山」の世界遺産登録に尽力した経営者がいる。
でなく、地域が誇れる文化の教育や街づくりへの貢献を
島根県大田市大森町の中村ブレイス株式会社代表取締
積極的に引き受けて、その地域社会とともに成長する存在
役の中村俊郎(なかむらとしろう)氏だ。大航海時代、西欧
でありたい。義手義足、補助装具、人工乳房。35年間、医
の商人や宣教師は石見銀山の銀を求めて日本に集まった。
療用義肢装具の新境地を開拓し、若い義肢装具士の育成
その歴史の街で起業したのだ。富士ゼロックスCSR部長
に努めるとともに、その成功を故郷に還元し、故郷「石見
の澁谷隆が中村俊郎氏に話をうかがった。
ば失望感や不安感が緩和します。製作に
は信じられないくらい手間や時間がかか
りますが、社会にも社員にも大切な仕事
なので赤字覚悟で続けています。
澁谷 福祉とビジネスとのバランスが難
しそうですね。
中村 経営者ですから、売上を伸ばす、
給料を払う、地域に貢献する責任があり
ます。
その一方で、世界を見ろという父母
の教え、地域の人々から受けた愛情、奇
中村ブレイス社長 中村氏(左)
と富士ゼロックス 澁谷(右)
の励ましによって、現在の自分があります。
澁谷 画期的な製品を多数持ちながら、
600の同業者への卸販売にたどりつき
その感謝の気持ちで人に喜ばれることを
直営の販売網を作らずに、全国600の
ました。
するのが私の原点です。
ビジネスは手段
同業者に製品を卸しているのはなぜで
澁谷 シリコーンゴム製の再生装具を
のひとつにすぎません。喜ばれるものを
しょうか?
20
跡のような恩人との出会い、多くの方々
「メディカルアート」
と名付けた理由は?
売るのではなく、喜ばれることをやってい
中村 義肢装具は福祉事業の性格が強
中村 当社の人工乳房でお母さんが自
る会社はずっと生き続けると思います。
い、手作りの地味な仕事で、患者さんに
信を取り戻せば家庭が明るくなり、家族
澁谷 子供の頃の経験が大きく影響し
は永続したサポートが必要です。儲かる
の人生の可能性が広がります。
アートは
ているのでしょうか?
かどうかの基準だけでは判断できない
ハートに通じる、
という想いを商品名に
特殊性があります。そのうえ、世界を舞
込めました。アメリカでの修業時代から
台に全方位で仕事をしたい、休日返上
温めてきた夢を、仕事も軌道に乗り、社
で夜遅くまで石膏まみれになっている仲
員も成長したので実現したのです。患者
間を助けたい、義肢装具を明るいイメー
さんの治療が終わったときに、それから
ジの仕事にしたい、
との大きな夢をもっ
先を一緒に闘う分身があると、その効果
て、若い頃に単身アメリカへ渡りました。
はお金にかえられません。すぐに購入し
そうした私なりの試行錯誤の結果、全国
なくても、いつでも入手できると分かれ
Fuji Xerox
本物そっくりのメディカルアート
中村俊郎氏
1948年生まれ、島根県出身。義肢装具士。18歳で義肢装具の道に入り、本場
アメリカで2年半勉強して米国装具士補の資格を取得。1974年、故郷である
島根県大田市大森町で中村ブレイスを起業。現在、社員65人。島根県教育委
員長など要職を歴任。地元石見銀山の資料収集や歴史的価値の普及啓蒙にも
尽力。2007年、石見銀山は日本で14番目のユネスコ世界遺産に登録された。
島根県石見銀山
中 村 私は、昭 和 2 3 年に5 人 兄 弟の
らかしていますが、みんな自分で上手に
中村 世界のどんなに小さな企業でも、
末っ子に生まれました。両親が40歳を過
なってくれます。私はいらんことをとき
思いと努力、人々の応援、書籍やメディア
ぎてからの子供なのでとても可愛がられ
どき言うだけです(笑)。社是はひとこと
での紹介、そうしたご縁があって
「今」が
ました。父親は地元・大森町が大田市に
“Think”です。社是のとおり、ほんと、
うま
あります。
「 今」への感謝の気持ちを形に
吸収される際に幕引きをした助役兼収入
いぐあいに育ってくれます。技術や作業
表したのが石見銀山文化賞です。決して
役でした。若い頃に夫婦で経験した外地
だけでなく、患者さんとの気持ちのやり
高額な賞金ではありませんが、自分たち
での生活や廃れていく街をなんとか復興
とりも仕事のひとつです。子供の患者か
ができる範囲のことを20年、30年と続
したい気持ちを10歳前後の私にこたつ
ら、ほかの人では嫌だ、あのお兄ちゃん
けられることが、中村ブレイスの健全経
で語ってくれました。母親は決断が早く、
やお姉ちゃんならやってほしい、
と言わ
営のバロメーターになると思います。次
豪気で面倒見のよい人でした。父母の背
れれば、
それはひとつのプロでしょう。
の世代にも継承してほしいですね。
中が私の教科書です。地域の人々にもと
澁谷 家庭で広い見方を教わる、肝を
ても可愛がってもらいました。大森町は
すえて人生を切り開く、仕事を通じて夢
私にとって大きな家族のような存在です。
を実現するという中村さんのお話は、ま
澁谷 23歳のとき、勉強したい気持ち
さにCSRの実践と感じ入りました。
だけで、わずかな資金を片手に飛び込ん
中村 企業は企業、社会は社会と分断し
だアメリカでも、偶然の出会いや人々の
てやってきた結果、
これほど歪みや問題
愛情で助けられたそうですね?
が目立つ社会になってしまいました。社
中村 命がけで行動を起こすことがどれ
型に石膏を流し込みメディカルアートを製作する
員や人を大事にする企業によって国が栄
だけ大切かということです。勝算などな
澁谷 社員の育成にはたっぷり時間を
える、自分を大事にしたうえで仕事を大
い、一個人の思いに過ぎなくても、奇跡
かけていらっしゃるのですね。
事にする、
それに戻ることが基本だと思い
の扉は開きました。
チャンスはどこにでも
中村 この土地は石見左官という建造
ます。それに外国の方々も気づいてCSR
ある、人間が念じて行動したら不可能は
物に芸術的な細工を施す職人を輩出し
とおっしゃるのでしょう。私の会社は、夢
ないと痛感しました。そして、地元や日本
てきた歴史があります。
これまでは、はや
を語り、誠実さを押し出して、若い人を育
にはいなくても、広い世界にはちゃんと
く仕事を覚えろと社員を叱り飛ばしまし
てる私塾でよいと思っています。夢を実現
見てくれる人がいることを理解しました。
たが、みんなそのDNAをもっていること
するには30年、40年かかるかもしれませ
この経験は私にとって本当に大きかった
に60歳を迎えてようやく気づきました。
んが、
それでもいいではないかと思うので
ですね。
考えたらすごい素質をもっていたんだな、
す。そうした少年の心を経営者が持ち続
澁谷 職場を拝見し、社員の皆さんが
それに気付かなくてごめんな、すぐに成
けることもCSRではないでしょうか。
礼儀正しく、仕事に集中されている姿に
果を出さんでもよいからくじけないで頑
感心しました。
どのように育成されてい
張りなさいよ、みんな大器で今は土をこ
るのですか?
ねている段階だと思えばいい、
と考える
中村 いろいろな仕事を経験してもら
ようになりました
(笑)。
います。義肢装具の職人に育つのに20
澁谷 2008年から中村ブレイス石見銀
年は覚悟しなければなりません。ほった
山文化賞を設けた目的を教えてください。
▶詳しくはwebをご覧ください。http://www.fujixerox.co.jp/company/sr/2008/highlight/csr.html
Sustainability Report 2008
21
再生コピー/プリント用紙の
古紙配合率表示の問題について
富士ゼロックスインターフィールド株式会社
代表取締役社長 石束正明
2008年1月に表面化した再生コピー/プリント用紙の
富士ゼロックスでは、
コピー/プリント用紙の原材料の出
古紙配合率に関する表示と事実との不一致は、環境配慮
所や古紙配合比率が仕様どおり遵守されるよう、2008年4
型製品と信じて購入されたお客様の信頼を裏切るとともに、
月から毎年2回、製造を委託する製紙メーカーの工場を訪
紙のリサイクルやグリーン購入を推進される官民の皆様の
問し、原材料管理、製造工程、原材料トレーサビリティ、原
努力を踏みにじる行為であり、製品販売者として深く責任を
材料配合、環境・化学物質管理を厳しく実査いたします。
こ
痛感しております。衷心よりお詫び申し上げますとともに、
こ
の基本を徹底することが製品販売者の最低限の義務と考え
こに改めて事実関係を説明申し上げます。
ております。
富士ゼロックスは、年間約14万トンのコピー/プリント
今回の問題は、用紙と環境問題を日本全体で考え直す機
用紙を販売し、このうち約50%を再生用紙が占めていま
会になりました。新興国を中心とした紙需要の国際的な高
す。富士ゼロックスでは24年前から、中性紙や再生紙など
まりで古紙の逼迫は今後も避けられません。一方、古紙の
環境に配慮した用紙の企画・開発、植林事業などに幅広く
配合率を科学的に分析する手法は残念ながら確立しており
取り組んでまいりました。
そのなかで(1)古紙回収率が限界
ません。従って、古紙の調達環境、再利用可能の回数、科学
の水準に近づいていること、ならびに古紙の再利用は繊維
的分析方法等が劇的に変化しない限り、古紙100%だけに
が維持できる3~5回が限界であることから、バージンパル
拘泥することは、第二、第三の偽装問題を引き起こしかねま
プと古紙パルプをバランスよく使う
(2)バージンパルプの調
せん。官公庁のグリーン調達では100%古紙採用の原則を
達は植林や認証林など持続可能な出所の原材料に限定す
維持する方針が環境省から示されています。
これは国の姿
る
(3)製紙会社・NGOとの協力によって社会的責任を考え
勢として大切なことですし、当社も積極的に協力いたします。
る、
などを基本的な方針としております。
しかし、民間を含めてすべて100%古紙でまかなうのは残
こうした方針に基づき、2004年12月に用紙調達基準を
念ながら実現が困難です。皆様におかれましては、バージン
制定し、毎年製紙メーカーに対して、使用原料等の年度報
パルプと古紙パルプの併用、ならびにバージンパルプの出所
告書を原紙単位および工場単位で提出していただく制度を
限定(植林・認証林)
という富士ゼロックスの考えをご理解
導入しました。
しかし、2007年9月頃、古紙の入手および再
いただき、一層のご支援を賜りたくお願い申し上げる次第
生紙の生産継続がさらに困難になるリスクが高い旨の連絡
です。
を製紙メーカーから受け、2008年春を目標に、再生紙の古
紙配合率を100%から70%に低減する方向で商品化を準
備しておりました。一連の問題は、
このような状況のなかで
発覚したものであります。
22
Fuji Xerox
CSR推進の自己評価
社会に対して有用な価値を創造し、提供する──
私たちが考える企業の存在理由です。
富士ゼロックスは、ステークホルダーの皆様とともに歩み、
ともに高め合い、
社会から信頼される企業を目指しています。
Sustainability Report 2008
23
CSR推進状況一覧
CSRを推進するために、
ステークホルダーごとに指標を定め、定量的に現在の状況を把握しています。
ふ か ん
2007年度の状況を俯 瞰できる一覧表とともに、それぞれの指標が持つ意味や、
2007年度の数値の分析、
目標などの解説をあわせて報告いたします。
ステークホルダー
お客様
従業員
地球環境・
将来世代
指標
重大商品事故の発生件数
0件
従業員満足度を調査している法人の割合
100%(回答率89.2%)
富士ゼロックス
(単独)
:
国内の関連会社・販売会社:
78.2%
海外の関連会社・販売会社:
89.5%
役員および管理職に占める女性の割合
富士ゼロックス
(単独)
:
国内の関連会社・販売会社:
海外の関連会社・販売会社:
1.5%
2.1%
26.9%
総従業者に占める直接雇用の比率
富士ゼロックス
(単独)
:
国内の関連会社・販売会社:
海外の関連会社・販売会社:
82.7%
87.8%
85.4%
従業員1,000人当たりの労働災害の発生件数
富士ゼロックス
(単独)
:
国内の関連会社・販売会社:
海外の関連会社(生産系事業所)
:
海外の販売会社:
3.47件
4.08件
12.31件
4.19件
産業医・産業保健スタッフ一人当たりの従業員数
富士ゼロックス
(単独)
:
国内の関連会社・販売会社:
海外の関連会社・販売会社:
405.8人
123.0人
856.2人
従業員一人当たりの年間総労働時間
富士ゼロックス
(単独)
:
国内の関連会社・販売会社 事務職:
国内の関連会社 製造スタッフ:
海外の関連会社・販売会社 事務職:
海外の関連会社 製造スタッフ:
障がい者法定雇用率を達成している
法人の割合(日本国内のみ)
富士ゼロックス
(単独)
:
国内の関連会社:
国内の販売会社:
お客様のオフィス・工場でのCO2削減貢献量
821kt-CO 2
事業所でのCO2排出量
国内外の開発・生産事業所:
国内外のオフィス:
部品リユースによる製造段階でのCO2排出抑制量
25kt-CO 2
回収された使用済み商品の再資源化率
国内・機械本体:
海外・機械本体:
生産プロセスでの水使用量
富士ゼロックスおよび国内生産関連会社:
海外生産関連会社:
化学物質規制の問題発生件数
不適合件数 4件
国・地域別従業員数の増減
(カッコ内は対前年増減値)
社会・地域
取引先
株主・投資家
24
Fuji Xerox
掲載
ページ
数値
P25
日本
24,926人(-333)
アジア・パシフィック
16,848人(+1,942)
P25
P26
2,007.2時間
2,111.4時間
2,030.7時間
2,005.3時間
2,205.1時間
100%(雇用率1.96%)
58.3%
44.1%
123kt-CO 2
58kt-CO 2
P27
P27
99.9%
99.3%
244万t
52万t
P28
P28
68人(+1)
その他の地域
社会貢献支出
富士ゼロックス
(単独)
:
国内の関連会社・販売会社:
海外の関連会社・販売会社:
CSR調達セルフチェックリストの回収率
75.4%
海外生産拠点(中国)
における原材料・部品の
現地調達比率(ローカルコンテンツ比率)
65.6%
内部統制・コンプライアンスの重大問題発生件数
1件
5億7,227万円
6,146万円
3,200万円
P29
P29
P29
▶お客様
重大商品事故の
発生件数
製造事業者である富士ゼロックスが認識している商品関連トラブルのうち、死亡・重症・後遺症・CO
中毒・火災等の重大な被害を伴い、かつ多発性が認められる商品事故の年間発生件数を示しています。
2007年
実績
▶改 正消費生活用製品安全法によって経済産業省への報告義務が定められている重大商
品事故は発生していません。
▶上 記以外の商品事故およびその兆候を複数把握し、徹底した原因の分析・調査を行ない、
0件
必要と考えられるときは経済産業省に任意報告しています。そのうちで事故の多発性や
商品リコール等の措置を講じる必要性が認められる案件はありません。
課題
目標
▶すべての商品事故が限りなくゼロに近づくように、設計、調達、生産の各プロセスにおける品質
URL
http://www.fujixerox.co.jp/company/sr/2008/stakeholder/customer/quality/safety.html
と安全性の作り込みをいっそう強化することが課題です。安全性の追求に終わりはありません。
▶従業員
従業員満足度を
調査している法人の割合
富士ゼロックス
(単独)
富士ゼロックスおよび関連会社のうち、従業員満足度の調査を実施している法人の割合を示しています。
2007年
実績
▶2 007年度は、富士ゼロックスのほか、国内の関連会社・販売会社では46社中の36社
(78.2%)、海外の関連会社・販売会社では19社中の17社(89.5%)で従業員満足度
の調査を実施しました。
100 %
▶富 士ゼロックス単独の従業員満足度は、3.74ポイント
(5点満点)
となり、昨年から微増
しています。各社の従業員満足度の調査は、質問内容や回答肢の設定が異なるため、調
(回答率89.2%)
国内の関連会社
販売会社
海外の関連会社
販売会社
78.2 %
89.5 %
役員および管理職に
占める女性の割合
査結果の比較や平均値の算出はできません。
課題
目標
▶すべての関連会社・販売会社での従業員満足度調査の実施、
ならびに評価項目の共通化
URL
http://www.fujixerox.co.jp/company/sr/2008/stakeholder/employee/stability/satisfaction.html
富士ゼロックスおよび関連会社の役員および管理職に占める女性の割合を示しています。なお、
ここで
の「管理職」は部下の有無を問わず、人事制度上の管理職に該当する従業員の意味で使用しています。
2007年
実績
富士ゼロックス
単独)
国内の関連会社
販売会社
海外の関連会社
販売会社
1.5 %
2.1 %
26.9 %
を推し進めます。
▶富士ゼロックスおよび国内の関連会社・販売会社が約1~2%、海外の関連会社・販売会
社が約27%と、両者で大きく異なります。
▶富士ゼロックスおよび国内の関連会社・販売会社では、現在のところ、管理職への女性の
登用率を増加するための特別なポジティブ・アクションは導入していません。
課題
目標
▶性 別を問わず従業員が100%能力を発揮できる会社となるうえで、
また魅力ある商品・
サービスを充実するうえで、女性従業員の果たす役割が重要と考えており、現状の役員・
管理職への女性の登用比率は課題の一つであると認識しています。
▶そうした課題を解決していくうえで、女性従業員の登用率を管理指標としたポジティブ・
アクションの導入なども含めて、各社の特徴や状況に適した改善方法の検討を進めてい
く予定です。
URL
http://www.fujixerox.co.jp/company/sr/2008/stakeholder/employee/stability/diversity.html
●本 ページに掲載している各項目は、富士ゼロックスが社会とのかかわりを考えるうえで重視している項目およびステークホルダーからの質問が
多く予想される項目から選択し、それらを管理する指標と成果を定量的に掲載しています。
●掲 載している2007年度実績は、富士ゼロックスおよび関連会社(国内・海外)から提出されたデータに基づく集計(2008年3月31日現在)で
す。一部の報告については、2008年度以降を含むものもあります。
各項目冒頭の太字部分は、その指標が示す意味を表しています。
各項目の見方(P25-29)
2007年実績 は、
2007年度の実績とその説明を掲載しています。
課題目標
URL
は、2007年度の実績を受けて、今後の課題と目標を報告しています。
は、Sustainability Report ウェブ版の関連情報のページを示しています。
Sustainability Report 2008
25
総従業者に占める
直接雇用の比率
富士ゼロックス
単独)
国内の関連会社
販売会社
海外の関連会社
販売会社
富士ゼロックスおよび関連会社の総従業者に占める直接雇用の割合を示しています。なお、直接雇
用には、期間を定めない雇用契約を締結している従業員と期間を定めた雇用契約を締結している
従業員の双方を含みます。
82.7 %
87.8 %
85.4 %
2007年
実績
▶直 接雇用とそれ以外の従業員との割合は、国内の関連会社・販売会社も海外の関連会
社・販売会社も、
ほぼ同じ数値を示しています。
▶派 遣社員・請負の活用は、生産や製作サービスなど労働集約型業務の多い関連会社に
集中する傾向があります。
課題
目標
▶競 争力の維持向上に向けた雇用ポートフォリオやダイバーシティ
(人材多様性)の考え方
も考慮にいれながら、業務内容や期待役割に即した雇用政策を充実していく必要がある
と認識しています。
▶雇用形態にかかわらず働く人々が安定した就業と成長の機会を得られるよう、人事制度
やマネジメントの品質の維持・向上に努めます。
URL
従業員1,000人当たりの
労働災害の発生件数
富士ゼロックス
単独)
国内の関連会社
販売会社
海外の関連会社
(生産系事業所)
海外の販売会社
3.47 件
4.08 件
12.31 件
4.19 件
産業医・産業保健スタッフ
一人当たりの従業員数
富士ゼロックス
(単独)
405.8 人
1社当たりの業務災害および通勤災害の発生頻度を示しています。すべての会社を従業員1,000
人と仮定して、年間の実際の発生件数を換算しました。
2007年
実績
課題
目標
海外の関連会社・販売会社
856.2 人
従業員一人当たりの年間
総労働時間(実績値)
富士ゼロックス
(単独)
URL
2,111.4 時間
2007年
実績
2,205.1 時間
26
Fuji Xerox
▶富 士ゼロックスおよび国内の関連会社・販売会社では、100%の会社が産業医・産業保
健スタッフを備えています。
▶海外の関連会社・販売会社では、47.3%(9社/19社)が産業医・産業保健スタッフを備
えています。内訳は、生産系会社が80%、販売会社が35.7%です。
課題
目標
▶産業医・産業保健スタッフを備えていない海外の関連会社・販売会社については、各地の
URL
http://www.fujixerox.co.jp/company/sr/2008/stakeholder/employee/condition/hygiene.html
事情や従業員の意向を勘案して選任・配置の要否などを検討します。
富士ゼロックスおよび関連会社における従業員1人当たりの年間総労働時間を示しています。
2007年
実績
▶年 間総労働時間が2,200時間を超える会社が国内の関連会社・販売会社で7社、海外
の関連会社・販売会社で2社ありました。
▶富士ゼロックスおよび国内の関連会社・販売会社では、年間総労働時間を短縮するため
に個別の施策を実施していますが、現在のところ、全社一律の施策は導入していません。
課題
目標
▶雇用ポートフォリオやワーク・ライフ・バランスの考え方も考慮にいれながら、労働時間の
管理指標を総合的かつ多面的に検討することが課題です。
▶年 間総労働時間が特に多い事業所については、富士ゼロックスからの支援も行ない、連
携を図りながら、年間総労働時間の短縮に努めます。
▶また、健康への影響が懸念される一部の長時間労働については、労働時間の抑制を重点
テーマと位置づけ、
その解消に努めます。
海外の関連会社・販売会社 事務職
海外の関連会社 製造スタッフ
http://www.fujixerox.co.jp/company/sr/2008/stakeholder/employee/condition/hygiene.html
関する左記の数値には、産業医・産業保健スタッフを備えていない会社のデータを含んでいません。
時間
2,005.3 時間
▶業務災害の発生頻度が特に高い海外の事業所については、富士ゼロックスからの支援も
富士ゼロックスおよび関連会社における産業医・産業保健スタッフ1人当たりの従業員数を示していま
国内の関連会社 製造スタッフ
2,030.7
▶日本国外の生産拠点における業務災害の低減が課題です。
す。なお、産業医・産業保健スタッフには常勤と非常勤の双方を含みます。海外の関連会社・販売会社に
2,007.2 時間
国内の関連会社・販売会社 事務職
▶国内の関連会社・販売会社も海外の販売会社も、ほぼ同じ数値を示しています。
▶業務災害は、海外の生産拠点の発生件数が高くなっています。
行ない、連携を図りながら、労働安全体制の強化に努めます。
国内の関連会社・販売会社
123.0 人
http://www.fujixerox.co.jp/company/sr/2008/stakeholder/employee/environment.html
URL
http://www.fujixerox.co.jp/company/sr/2008/stakeholder/employee/condition/working_hours.html
障がい者法定雇用率を達
成している法人の割合
富士ゼロックスおよび国内の関連会社・販売会社において障がい者の法定雇用率を達成している
会社の割合を示しています。
日本国内のみ)
富士ゼロックス
(単独)
100 %
(雇用率1.96%)
国内の関連会社
国内の販売会社
2007年
実績
▶国 内では、障害者雇用促進法で数値基準の適用を受ける46社の約半数で法定雇用率
課題
目標
▶国内の関連会社・販売会社では、現在の促進活動を充実強化し、
すべての会社で早期に
を達成しています。
法定雇用率を達成できるよう、実効性のある施策の検討・導入に努めます。
▶海 外の関連会社・販売会社では、法定雇用率のルールがない国においても、就業機会の
58.3 %
44.1 %
提供やダイバーシティの観点から、障がい者雇用を推奨する方針の検討に努めます。
URL
http://www.fujixerox.co.jp/company/sr/2008/stakeholder/employee/stability/diversity.html
▶地球環境・将来世代
お客様のオフィス・
工場でのCO2削減貢献量
市場で稼動する富士ゼロックス製の複合機やプリンターの消費電力量が2000年の消費電力量と
比べ、
どれだけ削減されたかをCO2排出量に換算して示したものです。
2007年
実績
▶2007年度は、821kt-CO2の削減を実現。
この数値は富士ゼロックスおよび関連会社が、オ
フィスや工場での活動に伴い排出するCO2の約4.8倍、
それに加え購入部材の製造や商品の
物流など事業活動全般を含めた排出量の約1.1倍、そして杉の木約60,000本が一年間に
「森林は二酸化炭素を吸収しています」
の換算による
固定するCO2量に相当します。※ ※林野庁ホームページ、
821 kt-CO
課題
目標
2
▶左記の数値では、標準的な計算式が定まっている複写機やプリンターの消費電力量のみ
を計算しています。それ以外の大型図面用出力機や、省エネルギーに貢献するソリュー
ション・サービスなどのCO2削減効果をどのように算定して組み込むかが課題です。
▶引き続き省エネルギー効果の高い商品・サービスの開発や販売に努めることで、2008年
には932kt-CO2の削減を目指します。
URL
事業所での
CO2排出量
富士ゼロックスおよび関連会社が自身の工場やオフィスで消費した電力などのエネルギーをCO2
排出量に換算して示したものです。
2007年
実績
123 kt-CO
2
課題
目標
58kt-CO2をCO2排出量の目標値としました。ISO14001によるマネジメント活動を通
なわち、省エネルギー商品の拡販を通じて、市場で稼動している富士ゼロックス商品の消費電力量を
URL
2
▶2 008年度は、生産量の増大が見込まれ、開発・生産事業所は137kt-CO2、オフィスは
▶バランスのとれたCO2排出管理を進めるため、2008年からカーボンオフセット指標を導入します。す
2
25 kt-CO
標値としましたが、生産量の増大をカバーしきれず、開発・生産事業所は123kt-CO2、
オ
じ、
さらに省エネルギー化を徹底して進めます。
58 kt-CO
部品リユースによる
製造段階での
CO2排出抑制量
▶2007年度は、開発・生産事業所は112kt-CO2、オフィスは57kt-CO2をCO2排出量の目
フィス
(本社・営業拠点など)
は58kt-CO2となり、
いずれも目標を達成できませんでした。
国内外の開発・生産事業所
国内外のオフィス
http://www.fujixerox.co.jp/company/sr/2008/stakeholder/environment/reduce/warming.html
削減することで、開発・生産事業所からのCO2排出量の増加分と相殺するマネジメントを推進します。
http://www.fujixerox.co.jp/company/sr/2008/stakeholder/environment/business/warming/index.html
富士ゼロックスおよび関連会社が製造過程でリユース部品を活用したことによって、仮に新造の部
品を使用すればその製造工程で発生したであろうCO2の排出量を削減できた量を示しています。
2007年
実績
▶2007年度は、部品リユースの効果として、昨年より1kt-CO2多い25kt-CO2の排出を抑
制することができました。
この数値は富士ゼロックスおよび関連会社が事業活動で排出
するCO2の約15%、杉の木約1,800本が一年間に固定するCO2量に相当します。
課題
目標
▶機 械本体の部品のリユースは、現在のところ、
日本の生産拠点でのみ実施しています。生
産量の多数を占める中国の生産拠点でも導入の実現性や方法を検討して、部品のリユー
ス率を継続的に高めることが課題です。
▶一点でも多くの部品をリユースするための技術開発などにより、部品リユースによる製造
段階でのCO2排出抑制量を、2010年に33kt-CO2まで拡大することを目指します。
URL
http://www.fujixerox.co.jp/company/sr/2008/stakeholder/environment/reduce/resources/collect.html
Sustainability Report 2008
27
回収された
使用済み商品の
再資源化率
国内外で回収された使用済みの複合機やプリンターの機械本体において、
リユース部品として使用
できなかったものを素材・熱など再び資源化して活用した割合を示しています。
2007年
実績
99.9 %
99.3 %
国内・機械本体
海外・機械本体
▶毎年改善を積み重ねた結果、国内の再資源化率は、99.9%、海外は99.3%となりました。
▶2 008年1月に、中国蘇州に中国国内を統括する統合リサイクルシステム拠点を設立し、
日本およびタイの既存の拠点とあわせて、
日本、中国およびアジア・パシフィック全地域で
使用済み商品の回収・リサイクルを行なう体制が完成しました。
課題
目標
URL
▶2008年度は、国内は99.9%、
アジア・パシフィックは99.5%、中国は96.0%を再資源化
率の目標値として活動を進めます。
http://www.fujixerox.co.jp/company/sr/2008/stakeholder/environment/reduce/resources/separate.html
http://www.fujixerox.co.jp/company/sr/2008/stakeholder/environment/reduce/resources/overseas.html
生産プロセスでの
水使用量
富士ゼロックスおよび関連会社が国内外の製造段階で使用した水の量を示しています。
2007年
実績
244 万 t
量において約20%削減しました。
課題
目標
5 2 万t
化学物質規制の
問題発生件数
▶引き続き、製造段階での節水と循環利用を徹底することが課題です。
▶生 産量の増大が計画されるなか、富士ゼロックスおよび関連会社の開発・生産拠点に
おける水の総使用量を、2005年度使用量比20%減の水準で維持することを目標として、
各事業所で引き続き水使用量の削減を進めていきます。
URL
不適合件数
です。
▶2 007年度は、製造段階での循環利用を進めた結果、2005年度に比べて全体の総使用
富士ゼロックスおよび
国内生産関連会社
海外生産関連会社
▶国内生産関連会社の総使用量は244万トン、海外生産関連会社の総使用量は52万トン
http://www.fujixerox.co.jp/company/sr/2008/stakeholder/environment/business/resources/water.html
EUのRoHS指令やその他の規制に不適合な事案の件数を示しています。
2007年
実績
4件
▶2 007年度は、不適合件数が4件発生し、うち2件は出荷前検査で判明、残り2件は販売
者・事業者に情報を伝えて対応を進行中です。いずれも取引先の製造工程におけるミス
が原因です。再発防止策として取引先への教育を実施しました。
課題
目標
▶2 008年度は、製造段階での発生ゼロ件を目標として、引き続き規制への適合保証を強
URL
http://www.fujixerox.co.jp/company/sr/2008/stakeholder/environment/risk/product.html
化します。
▶社会・地域
国・地域別従業員数の増減(カッコ内は対前年増減値)
アメリカ
マレーシア
オーストラリア
1,846 (+269)
中国
シンガポール
867 (+116)
日本
24,926 (-333)
1,129
ニュージーランド
483 (+3)
台湾
1,298 (+155)
フィリピン
241 (-3)
オランダ
Fuji Xerox
41 (+1)
合計
2007年
実績
41,842 (+1,610)
量の増加およびサービス事業の買収により
ます。
課題
目標
▶各 事業拠点の経済発展、雇用政策や目標、
労働者のニーズなどを考慮しながら、
さらな
る雇用の促進、職業訓練などに努めます。
(+60)
3 (+1)
▶全 体で1,610人増加しています。特に、生産
中国とオーストラリアで従業員数が増えてい
9,340 (+1,293)
韓国
ベトナム
1,053
550
(+47)
(+1)
タイ
28
65
(±0)
富士ゼロックスおよび関連会社の国・地域別従業員数
を示しています。
URL
http://www.fujixerox.co.jp/company/sr/2008/
stakeholder/employee/environment.html
社会貢献支出
富士ゼロックスおよび関連会社の社会貢献活動に関連する支出の総額を示しています。
富士ゼロックス
(単独)
2007年
実績
5億7,227万円
課題
目標
国内の関連会社・販売会社
6,146 万円
海外の関連会社・販売会社
▶2007年度の実績は、富士ゼロックスおよび関連会社全体で約6億6,000万円です。
▶2008年度は、学術・教育、文化・芸術、将来世代、環境、地域発展にかかわる活動や当社
の事業とのかかわりが深い分野を中心に活動します。
また、
より多くの従業員が自発的に
社会貢献活動に参画することを促すことでその成長を図るとともに、共感できる社外の
パートナーとの協業を進め、社会・地域の皆様との連携を深めていきたいと考えています。
URL
http://www.fujixerox.co.jp/company/sr/2008/stakeholder/community/
3,200 万円
▶取引先
CSR調達
セルフチェックリストの
回収率
富士ゼロックスおよび関連会社が対象取引先に依頼したCSR調達のセルフチェックリストの回収
率を示しています。
2007年
実績
▶2007年8月に、
日本、中国(上海、深圳)、韓国でCSR調達の導入説明会を実施。対象取
引先390法人※に対してセルフチェックの実施と報告を依頼し、75.4%の取引先から回
答を得ました。
(2008年8月現在)
▶回答のあった取引先に対しては、
セルフチェックの結果を分析したフィードバックシートを
75.4%
各社ごとに作成し、2008年1月から取引先にフィードバックするとともに、改善計画書の
※取引先各社の海外の関連製造会社を含む。
提出を依頼しています。
課題
目標
▶2008年度は、改善計画書の提出があった取引先については当社による訪問確認を実施
すること、
セルフチェックや改善計画書の提出が遅れている取引先については引き続きの
フォローや支援を強化することが課題です。
▶取引先が共通に抱える課題を整理して、社会の新しい動向や実行可能な実務ノウハウを
提供する機会の充実を図る所存です。
URL
海外生産拠点(中国)
における原材料・部品の
現地調達比率
ローカルコンテンツ比率)
65.6%
http://www.fujixerox.co.jp/company/sr/2008/stakeholder/partner/engagement.html
中国で操業する富士ゼロックス深圳、富士ゼロックス上海、東莞鈴鹿富士ゼロックスが調達する原
材料・部品のうち、中国国内の法人との取引契約に基づいて調達した資材の割合を購買総額に占
める金額の比率で示しています。
2007年
実績
▶2 007年度の実績は、富士ゼロックス深圳が66.8%、富士ゼロックス上海が60.3%、東
莞鈴鹿富士ゼロックスが69.8%でした。
▶富 士ゼロックスおよび関連会社では、現地調達比率の目標値管理は、現在のところ導入
していません。
また、現地調達で創出した雇用、税額等の経済効果は把握していません。
課題
目標
▶進出先の地元経済の発展に寄与するために、
ローカルコンテンツ比率の拡大を考慮した
事業活動を展開していきます。
▶株主・投資家
内部統制・
コンプライアンスの
重大問題発生件数
1件
プレスリリースを行なった内部統制・コンプライアンスの問題の年間発生件数を示しています。
2007年
実績
▶元従業員が約2,000台のパソコンを受注したかのように装って当社名義で商社に発注し
(約4億4,000万円)、
これを買取り業者に転売した代金で過去の架空取引の穴埋めを
していた事実が判明しました。当社は、本人を懲戒解雇するとともに刑事告訴しました。
損害額は2008年3月期決算にて営業外損失として計上しました。
( 2008年4月25日プ
レスリリース)
課題
目標
▶再発の防止に向けて、管理体制の見直し、従業員教育の徹底など、内部統制・コンプライ
URL
http://www.fujixerox.co.jp/company/sr/2008/corporation/organization/law.html
アンスの強化に努めます。
Sustainability Report 2008
29
富士ゼロックスが目指すもの
〜理念・共有価値〜
富士ゼロックスは、
「 私たちが目指すもの」
で表現している三つの価値を実現するために、
企業が備えるべき品質として
「企業品質」を掲げています。
また、富士ゼロックスの従業員一人ひとりが、
事業活動を行なう上で持ち続けるべき価値観を
「私たちが大切にすること」
として定めています。
私たちが目指すもの
「私たちが目指すもの」は、富士ゼロックスおよび関連会社とそこに勤務するすべての従業
員が共通して目指すものです。
「知の創造と活用をすすめる環境の構築」
という、当社の事業領域を通して
「世界の相互
信頼と文化の発展への貢献」を実現するとともに、それに取り組む従業員が「一人ひとりの
成長の実感と喜びの実現」
をすることが、私たちの存在目的であることを表現しています。
知の創造と
世界の相互信頼と
環境の構築
貢献
活用をすすめる
文化の発展への
一人ひとりの
成長の実感と
喜びの実現
私たちが大切にすること
「私たちが大切にすること」は、会社の、
お客様の満足
また社会の一員として富士ゼロックスの従
冒険心
業員一人ひとりが、
ビジネスに臨む個人の
環境
姿勢・ありようを10の価値で表しています。
この10の価値はすべて、富士ゼロックスの
従業員らしさを象徴するものです。
これら
高い倫理観
楽しむ心
のマインドを持ちながら
「私たちが目指す
もの」
を実現することを目指しています。
私たちが
大切にすること
信頼と思いやり
多様性の尊重
プロフェッショナリズム
連携
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Fuji Xerox
科学的思考
よい会社構想
富士ゼロックスは、1992年に「よい会社構想」を発
表し、経営の根幹にすえています。当社は、
目指すべきよ
い会社を
「強い」
「やさしい」
「おもしろい」会社と定義し
ています。お客様に満足いただける卓越した商品・サー
強い
ビスをお届けし、株主にも継続的に報いることができる
お客様、
株主への貢献
「強い」会社。環境、倫理、社会貢献などを含め、地域社
会や国際社会に対して
「やさしい」会社。従業員が仕事
やさしい
や人生を
「おもしろい」
と感じる会社。
このような「強い」
おもしろい
「やさしい」
「 おもしろい」をバランスよく兼ね備えた会
社を目指しています。
環境への配慮
地域社会や国際社会への貢献
創造性を発揮できる職場
社員の成長の実感
企業品質
富士ゼロックスの代々の経営者は、企業は経済価値、
社会価値、人間価値などの有用な価値を社会に提供す
株主
るために存在するという考え方を持ち、
「 強い」
「やさし
お客様
経済価値
い」
「おもしろい」会社を目指す
「よい会社構想」
や幅広い
価値提供を自社の使命として定めた
「私たちが目指すも
の」
などを経営の中心にすえてきました。
「企業品質」
とは、
このような姿を実現するために企業
企業
将来世代
人間価値
従業員
が備えるべき
「品質」
です。時として矛盾しがちな経済価
値、社会価値、人間価値を統合するという強い意志を共
社会価値
有し、矛盾を克服する新たな知識を生み出すことができ
る品格や能力を備えることが「企業品質」の本質である
地域
取引先
と考え、
それを高めるチャレンジを続けていきます。
Sustainability Report 2008
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サステナビリティレポートに対する
第三者意見
後藤 敏彦 氏
NPO法人サステナビリティ日本フォーラム代表理事
NPO法人社会的責任投資フォーラム代表理事
世界が対応を迫られている3つの重要課題は、気候変
動、生物多様性、南北問題です。産業革命以来の経済社
組みを徹底されることを期待します。
会システムの負の側面で、
これを解決する文明史的変革
古紙混入率偽装について多くの製紙会社の開き直りの
が求められています。
あまりにも大きな問題で企業とは無
ように見える姿勢はいただけませんが、貴社の迅速な対
関係のように思いがちですが、
グローバリゼーションの中、
応には敬意を表します。同時に、最終消費者には対応不
そのメイン・アクターとして企業の取り組みに期待がか
可能な課題であることを常に念頭に置き生産者に注文を
かっています。制約ではなく事業の好機と考え期待を先取
つけ続けていただきたいと考えます。
りして取り組む企業が社会から信頼される、
すなわちそれ
環境効率について掲げられた全社環境目標を10年単
がCSRであり、21世紀の経済社会システムでの勝ち組に
位で反復継続されたら極めて効果大であり期待していま
なることを意味していると思います。
す。ただ、気候変動では総量が問題とされています。貴社
「CSRとは企業品質を追求、向上することです」
と明確
の、
ライフサイクル全体を通しての温室効果ガス(GHG)
に定義付けられ、緒言で「CSRは企業経営そのもの」
と
総量削減は重要、
かつ有効な取り組みと評価しますが、
自
し、3つのCで徹底を図られています。報告書に記載され
社グループ全体のGHG排出総量削減にも抜本策を考え
た3つの事例はこれが重要(マテリアル)
ということを示さ
るべき時期と思います。
ここ10〜15年の取り組みが最も
れたものと理解しました。
重要といわれていますので、例えば2020年をターゲット
CSR全般についてビジョン、
ミッションを掲げた後、多
とした中長期計画の検討も期待したい。
くの日本企業は包括的な方針はあるものの具体的事項に
南北問題は技術移転、雇用創出、CSR調達等が企業と
なると方針等はあいまいのまま実施しているのが一般的
して最も貢献しうる分野です。営業地域全域でこの取り
です。貴社は、項目ごとに具体的な方針、仕組み、実施計
組みがなされているのはさすがです。ただ、情報開示は項
画等々が極めて明確に示されていることが特徴です。取り
目によっては単体データに止まっていますので、早急に連
組みの継続性とパフォーマンス評価に有益であると思い
結ベースと主要国別のものが欲しいところです。社会貢
ますので高く評価したい。結果についても、従業員満足度
献等について国内での取り組みには定評があり高く評価
について経年推移の数値情報やマイナス情報の開示もあ
されていますが、
これも海外のことがほとんどみえません。
り、また、従業員の多様化や柔軟な就労形態対応につい
今後はプラン、
ドゥー情報だけでなくチェック、
アクト情報
て子会社からも学ぼうという姿勢など好感がもてます。
も期待したい。
地球環境・将来世代とのかかわりについては実に多様
報告編集に関連して、理解しやすいように多くの指標を
な取り組みをされています。三つの重点領域の中で「天
数値化されていることは高く評価します。
ただ、
ウェブとの
然資源の保全」
という生物多様性にかかわる事項を早
併用を徹底してほとんどの詳細情報を移されていること
くから掲げられているのは敬服します。
これらについては
はよいのですが、冊子でウェブとの関連の説明が最後に
CSR調達が極めて大きな鍵となります。CSR調達につい
なっているのは課題です。企業情報提供に関する全体像
ては大変な困難を伴うと思いますが、グローバル共栄会
や考え方は最初に示すべきと考えます。
と一緒に着実に進めていこうとされていることがよく分
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かります。先行き一次調達先だけでなく末端までの取り
Fuji Xerox
Sustainability Report 2008 ウェブ版のご案内
本冊子では、富士ゼロックスの
「社会からの期待に応える活動」
の中で、
特に皆様にお伝えしたいことを報告しています。
冊子に掲載されていないそのほかの情報や、
より詳しい情報はウェブサイトに掲載しています。
ウェブ版トップページはここからご覧いただけます。 http://www.fujixerox.co.jp/sr/2008/
より詳細な情報がウェブ版でご覧いただけます。
▶他社に学ぶCSR(インタビュー)
http://www.fujixerox.co.jp/company/sr/2008/highlight/csr.html
▶グローバル・コンパクトの意義と企業の役割(インタビュー)
http://www.fujixerox.co.jp/company/sr/2008/highlight/arima.html
ステークホルダーとのかかわり
▶従業員とのかかわり
http://www.fujixerox.co.jp/company/sr/2008/stakeholder/employee/
○ 労働条件・労働安全衛生
ー 人権への取り組み
ー 労働時間・休日休暇
ー 安全衛生
○ 雇用・労働環境
○ 安定した就業への取り組み
ー キャリア開発支援
ー 多様性への取り組み
ー 労使関係
ー 従業員の満足度調査
○ 公正な評価/処遇とワーク・ライフ・バランス
ー 人事制度(評価・処遇)
ー ワーク・ライフ・バランス
ー 直接雇用以外の従業者に対する取り組み
▶お客様とのかかわり
http://www.fujixerox.co.jp/company/sr/2008/stakeholder/customer/
○ お客様の経営課題へのソリューション提供
ー グローバルサービスの提供
ー 富士ゼロックスがお客様に提供する価値
○ 高品質・安全な商品の提供
ー 品質保証・商品安全
ー 安心できるアフターサービスの提供
○ お客様のCSRを向上する商品の提供
ー ユニバーサルデザイン
ー お客様のオフィスにおける環境負荷軽減
○ お客様満足実現のために
ー お客様とのコミュニケーション
▶地球環境・将来世代とのかかわり
http://www.fujixerox.co.jp/company/sr/2008/
stakeholder/environment/
▶取引先とのかかわり
http://www.fujixerox.co.jp/company/sr/2008/stakeholder/partner/
○ 購買倫理 ○ 主要取引先とのエンゲージメント活動
▶社会・地域とのかかわり
http://www.fujixerox.co.jp/company/sr/2008/stakeholder/community/
○ 将来世代への支援
○ 事業とかかわる分野への支援
○ 地球環境の保全
○ ボランティア活動を支えるしくみ
○ 環境マネジメント
ー 環境方針
ー 環境負荷の全容
ー 環境経営推進体制
ー 環境教育
ー 環境経営中期計画
ー 目標と実績
ー 環境会計
ー 環境コミュニケーション
○ 自社活動による環境負荷の低減
ー 地球温暖化抑制への取り組み
ー 天然資源保全への取り組み
○ 地域社会との交流
○ 化学物質リスクの低減
ー 自社活動における取り組み
ー 商品における取り組み ▶株主・投資家とのかかわり
○ お客様や社会の環境負荷の低減
ー 商品における地球温暖化抑制への取り組み
ー 商品における天然資源保全への取り組み
http://www.fujixerox.co.jp/company/sr/2008/stakeholder/stock/
○ 主要業績
○ 生態系・生物多様性の保全
(主要事業所の環境パフォーマンス)
○ サイトデータ
Sustainability Report 2008
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編集後記
「事業活動を通じて、社会からの期待に応えたい」
「わたしたちの商品やサービスで、社会にある課題の解決に貢献したい」
毎年発行する「Sustainability Report」には、
そんな富士ゼロックスの思いと、挑戦する姿を紹介しています。
どのような形で発行したら、皆様に手に取っていただき、
どのようにお伝えしたら、皆様に興味深く読んでいただき、
そして、富士ゼロックスの思いと活動をお伝えできるのだろうか。
本年度も試行錯誤を繰り返し、
たくさんの方のご協力をいただいて、本レポートが完成しました。
お読みいただいた皆様に、
私たちの思いと挑戦し続ける姿が、お伝えできれば幸いです。
私たちの活動はまだまだ発展途上です。
今後も富士ゼロックスは、冒頭に述べた思いを持ち続け、
着実に前進してまいります。
こちらもあわせてご覧ください
● 会社概要と事業内容
● 研究開発と品質への取り組み
http://www.fujixerox.co.jp/company/sr/2008/archives/
〒107-0052 東京都港区赤坂九丁目7番3号 TEL:03‐6271-5111(代表)
【お問い合わせ先】 CSR部 TEL:03‐6271-5160 FAX:03‐6271-5167
http://www.fujixerox.co.jp/
発行年月:2008年8月 201-234(08-08)
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Fuji Xerox
Sustainability Report 2008
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