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成育inくるめ - 成育歯科医療研究会

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成育inくるめ - 成育歯科医療研究会
大会テーマ
「伝える」という行為、「伝えたい」ことという意志、「伝えるべき」こと
という責任、これらはしっかり受け止められているでしょうか?
人と人とのコミュニケーションは、その背景の理解が大切ですが、
私達の仕事においては、そこにScienseとArtも必要です。私達は
成育歯科医療を通して「伝えること」を実践します。
「伝えること」
2011年9月7日(水)~8日(木)
聖マリア学院大学5号館
福岡県久留米市津福本町422 聖マリア病院隣接
プログラム・抄録集
9月7日13:10~14:50
●オープニングセミナー
9月7日15:00~16:00
●オープンクリニック
9月7日16:00~16:20
●一般演題示説
9月7日16:30~18:00
●インタラクティブフォーラム
成育歯科で一番聞きたい授業=福原ゼミ
9月8日9:30~12:00
●シンポジウム
「先天性欠如歯をみとめる生活者への継続的支援」
9月8日12:10~13:10
●ランチョンセミナー
9月8日13:30~16:00
●クリニカルカンファレンス
(先天性欠如歯をみとめる場合)
成育inくるめ
成育歯科医療研究会会長 佐橋喜志夫(岐阜県可児市)
第16回成育歯科医療研究会大会・大会長
森下 格 (聖マリア病院矯正歯科臨床部長)
準備委員長 田中克明 (田中こども歯科医院・鳥栖市)
問い合わせ 田中こども歯科医院内 第16回成育歯科医療研究会大会準備室
TEL:(0942) 87-5151 FAX:(0942) 87-5351
E-mail:[email protected]
大会ホームページ
http://seiikusika.jp/meeting.html
大会長挨拶
第16回成育歯科医療研究会大会
大会長 森下 格
社会医療法人雪の聖母会聖マリア病院矯正歯科 臨床部長
2011年3月11日14時46分、地球の一部の地殻の歪みを解放する動きがありました。海底で発生したので
海の水も大きく揺り動かされました。自然現象としては起こりうる防ぎようのないものでしたが、そこに
は多くの人の営みがあり、多くの幸せがありましたから、生命を奪い、心を痛めつけることとなってしま
いました。
私たち日本人にとって忘れることのできない大切な祈りの日が1日増えました。亡くなられた人々を悼
み、被災された方々へは御見舞の言葉を申し上げます。そして復興への道をともに歩みたいと願っていま
す。日本中で震災の影響が出ていますが、これまでの航路を省み、針路を考え直す契機になっているはず
です。エネルギー、食糧、環境、そして国土開発、あらゆる問題について、目前の私利私欲を廃し、長期
的視野が養われつつあります。次世代の子どもたちのために、地球環境を守り、平和な世界を作り上げる
ことができるよう祈ります。
さて、成育歯科医療研究会は第16回大会を、ほとめきの街・久留米にて開催いたします。メインテー
マは「伝えること」です。有史以前からひとは伝えることを工夫してきました。「言葉」が人類史上もっ
とも重要な発明であり、音声を可視化する「文字」により時間を超えた伝達を可能にしました。遠距離通
信の端緒の「のろし」は、視覚的伝達すなわち光の速さで伝達しました。中世では印刷技術が情報量を飛
躍的に伸ばし、近代の電信電話から現代のインターネットへとそのスピードを増して、今や大量の情報が
瞬時に飛び交う時代であります。成育歯科医療研究会では、私たち歯科医療に携わる者の伝えるべきこと
は何かを詳らかにして参りました。今大会では本研究会の趣旨をお伝えする「オープニングセミナー」2
題と「成育歯科医療研究会とは」のポスターを用意しました。また本会顧問・福原達郎名誉教授による対
話型セミナーは世代を超えての歯科医療文化の伝承を実践できればとの想いで企画しました。そして本会
理事の間で数年前から準備して参りましたオープンクリニックを展示発表にて開催します。2日目は臨床
テーマとして「先天性欠如歯」にフォーカスします。シンポジウムで各方面からの講演によって情報を整
理したのち、本会で準備しました模擬症例によるクリニカルカンファレンスにおいて出席者全員での診断
会を経験して頂きます。晩夏残る2日間の熱き討論で、伝えること、伝えるべきこと、伝えたいことにつ
いて議論尽くす場を提供できることを喜びに感じております。今回の開催にあたって理事、評議員はじめ
多くの先生方に協力頂きました。また、久留米の街の皆様にもお世話になりました。深甚より感謝の意を
表します。
筑後平野と耳納北麓の大地の恵みを食し、久留米城島の酒を酌み交わし、スローな夜を過ごせますよう
に。
General information
★大会参加者の皆様へ★
1.事前登録はおこなっておりません。当日参加登録をお願いします。
2.総合受付は9月7日9時30分より17時まで、9月8日8時30分から14時までとなっております。
3.参加登録
受付にて大会参加費を納入してください。参加費と引き換えに領収書兼参加証をお渡しします。所属
と氏名を記入して、会場内では必ず着用してください。
大会参加費は以下のとおりです。
会
員
10,000円
(懇親会費、ランチョンセミナーを含む)
非会員
15,000円
(懇親会費、ランチョンセミナーを含む)
会員が引率する医院スタッフ(歯科衛生士・歯科技工士・受付など)
は4,000円、ランチョンセミナーは1,000円が別途必要です)
無料
(ただし懇親会
4.この抄録集は会員には事前に送付されます。当日忘れずに持参してください。
非会員の方へは当日参加費と引き換えにお渡しします。
それ以外の方や、追加で必要な方には、1部1,000円で販売します。
5.日本歯科医師会生涯研修認定されます。カードをご準備ください。
6.大会中のビデオ撮影、写真撮影は禁止いたします。記録のため大会長から依頼されたものだけが写真
撮影を許可されます。
★講演・発表される皆様へ★
1.オープニングセミナー、インタラクティブセミナー、シンポジウム、ランチョンセミナーはすべて口
演発表形式です。講義室が横に広いためスクリーンは3面ありますが、すべてのスクリーンに同じ映
像が映し出されます。
2.発表に使用するコンピューターは、持参してください。一般的な15ピンの液晶プロジェクターにつな
ぎます。コネクターが必要な機種では必ずご自身の責任でご用意ください。
3.スライド送り操作は演者自身で行ってください。
4.試写の時間を別にご案内します。特に2日目の試写は1日目の講演終了後すぐに行いますので、ご準備
ください。
5.一般演題、オープンクリニックはポスター展示形式です。1日目の12時までに掲示してください。2日
目16時から17時の間に撤去してください。
6.展示発表は、1日目15時から16時20分の間、示説していただきます。会場で待機してください。
7.座長は定時の10分前に所定の会場へお越しください。
★役員の皆様へ★
1.理事・評議員会は9月7日10時より12時まで、会場と同じ5号館の1階で行います。2階で受付を済ませ
てお集まりください。今回は理事会と評議員会を同時に行います。(昼食付き)
★その他のおしらせ★
1.大会会場内の呼び出し案内は行いません。
2.会場は医療機関に隣接した大学です。当日も多くの患者様がいらっしゃいますので病院地区での行動
は節度を持ってお願いします。病院および学院地区は建物内外ともに全面禁煙です。愛煙家の皆様に
はこれを機に禁煙するか、病院隣接院外薬局横に「禁煙思案所」がありますのでご利用ください。
周辺徒歩圏内マップ
■所在地
聖マリア学院大学
〒830-8558 福岡県久留米市津福本町422
TEL: 0942-35-7271
FAX: 0942-34-9125
■アクセス
<福岡空港より>
○西鉄高速バス 第1ターミナル前バス乗り場から「JR久留米」行き乗車 46 分「西鉄久留米」下車
<JR久留米駅(九州新幹線・鹿児島本線・久大本線)より>
○タクシー 10 分
○西鉄バス 2番乗り場から50番「船小屋」行き乗車 15 分 「聖マリア病院前」下車徒歩 3 分
<西鉄久留米駅より>
○タクシー 5 分
○西鉄バス 7番乗り場から50番「船小屋」行き乗車 7 分 「聖マリア病院前」下車徒歩 3 分
<西鉄花畑駅(特急停車駅)より>
○徒歩10分
<西鉄試験場前駅(普通停車駅)より>
○徒歩7分
※大学構内の駐車場は使用できません。病院患者様駐車場は有料です。
※徒歩圏内でのお昼の食事どころ
藍カフェ(病院2診南側)、ラカフェマリア(病院北隣はなえ矯正歯科2階)、人力うどん(病院7診東側)
ひろせ食堂(ラーメン・六反畑バス停前)、モヒカンラーメン(試験場前駅東側)、ドトール(病院内)
マクドナルド(病院北側)、香華園(中華・試験場前駅東側)
プログラム
第1日目 9月7日(水)
9:30~
受付開始
10:00~12:00
常務理事会・理事評議員会
13:00~13:10
開会式
13:10~14:00
オープニングセミナー1
座長:さばし矯正小児歯科 佐橋喜志夫
これって成育歯科ですか? ―私の臨床を振りかえって―
かじもと矯正・小児歯科 梶本祐一郎
14:10~14:50
オープニングセミナー2
座長:さばし矯正小児歯科 佐橋喜志夫
「共感と自己肯定感」について
林矯正小児歯科クリニック 林 滋
15:00~16:00
オープンクリニック
コーディネーター:ちあーず歯科・小児歯科
イシタニ小児・矯正歯科クリニック
ちあーず歯科・小児歯科
はなえ矯正歯科
16:00~16:20
野本知佐
石谷徳人
野本知佐
若江皇絵
一般演題示説
座長:鹿児島大学病院小児歯科 岩崎智憲
舌位挙上を図る低位舌用Lingual Archの考案と臨床
さとみ矯正歯科クリニック 里見 優
座長:藤田保健衛生大学病院矯正歯科・小児歯科 近藤 俊
埋伏歯を伴う開咬症例
カノミ矯正・小児歯科クリニック 伏下 洋実
座長:九州歯科大学口腔機能発達学分野 森川 和政
可動型バンドループを用いて永久歯萌出スペースを確保した一例
松本歯科大学小児歯科学講座 水谷 智宏他
16:30~18:00
インタラクティブフォーラム
成育歯科で一番聞きたい授業=福原ゼミ
座長:聖マリア病院 森下 格
『成長を測る二つのモノサシ』―子どもの咬合の成長を、どう伝えるか―
昭和大学名誉教授 福原達郎
18:30~
懇親会
5号館1階会場にて
スローフードな夜をお楽しみください
第2日目 9月8日(木)
8:30~
受付開始
9:00~9:30
会員総会
9:30~12:00
シンポジウム「先天性欠如歯をみとめる生活者への継続的支援」
座長:聖マリア病院 森下 格
課題提示講演 先天性欠如歯の現状 日本小児歯科学会の調査報告概要
鹿児島大学大学院医歯学総合研究科小児歯科学分野
山崎要一
先天性欠如歯がもたらす生活丌安とその解消
かねこ歯科クリニック 金子末子
先天性欠如歯を認める症例に対する矯正歯科の役割
鶴見大学歯学部歯科矯正学講座 常盤 肇
先天性欠如歯〜修復医(一般医)の視点
(医)皓歯会かわばた歯科医院 川畑正樹
12:10~13:10
ランチョンセミナー
座長:長崎大学大学院医歯薬学総合研究科小児歯科学分野 日高 聖
永久歯の先天性欠如における成育支援
さえき矯正小児歯科医院 佐伯克彦
座長:東條歯科医院 東條多恵
“伝える”って難しい
酒井矯正歯科クリニック 酒井秀彰
13:30~16:00
クリニカルカンファレンス
総合進行 おかもとこども矯正歯科クリニック 岡本篤剛
先天性欠如歯をみとめる場合(3グループに分かれ症例検討と討論)
コーディネーター:
おかもとこども矯正歯科クリニック
はるき小児・矯正・歯科
今泉歯科
岡本篤剛
春木隆伸
今泉三枝
アシスタント:
(医)福和会和泉歯科
九州歯科大学口腔機能発達学分野
藤田保健衛生大学病院矯正歯科・小児歯科
黒田國康
森川和政
近藤 俊
16:00~
閉会式
16:30~
オープンクリニックサテライト サテライト会場での現地見学会
申し込み制先着順、会期中総合受付にて登録、当日13:30締切
タイムスケジュール
会場配置図
会場:聖マリア学院大学
5号館
会場へは正面階段から2階へお進みください
節電のためエレベーターの使用はご遠慮ください
建物周辺を含め全館禁煙です
メイン会場
商社展示会場(廊下) サブメイン会場(ポスター展示)
クローク
5号館2階
521教室
522教室
総合受付
大会本部・講演者控室
懇親会会場
5号館1階
オープニングセミナー1
座長 佐橋喜志夫(さばし小児矯正歯科)
9月7日(水)13:00~13:50
これって成育歯科ですか?
―私の臨床を振りかえって―
梶本祐一郎(大阪府堺市開業)
略歴
1981年 大阪歯科大学卒業
大阪歯科大学小児歯科入局
1983年 大阪歯科大学院入学
1987年 大阪歯科大学院卒業
歯学博士取得
1988年 かじもと矯正・小児歯科開設
成育歯科医療研究会とは、「発達期の患者さんに対して包括的アプローチを行い、 健全な口腔機能の育成を
通じて,広く次世代までも継続するセルフケアを支援する医療体系の開発について研究するという歯科臨床の研
究会」ということは理解しています。
言いかえれば、この理念を持って患者さんに接すれば、予防や齲蝕処置であれ、矯正治療であれ、定期検診
であれ、その先生の行う臨床すべてが成育歯科ということです。100人のドクターがいれば、100通りの成育歯科が
あります。(みんな違う、それでいい!)
また別の視点から成育歯科を考えると、患者さんに対して包括的なアプローチを行おうと思えば、小児歯科、矯
正歯科、歯科口腔外科、歯周病科など歯科全般に精通しているだけでなく、隣接する医学や発達心理学、その他
子どもを取り巻く全てのことがら(環境)に対応でき、連携がとれるスーパードクターを目指さなければならないことに
なり、気持ちはあっても、知識と技術がなければ成育歯科はできないんじゃないか?という見方もできます。
私にとっては、成育歯科という言葉はあまりにも大きくすべてを包括していているため、いまだに曖昧模糊とした
部分があります。
今回、ムシ歯の洪水といわれた時代に小児歯科を志し、材料もない、マニュアルもない、エビデンスなんて言葉
は聞いたこともなく、泥縄的に文献を漁り、自分の体力だけを頼りに試行錯誤を繰り返しながら行なってきた臨床を、
皆さんと一緒に色々な角度から見なおして、いま一度成育歯科について考えてみたいと思います。
オープニングセミナー2
座長 佐橋喜志夫(さばし小児矯正歯科)
9月7日(水)14:00~14:50
「共感と自己肯定感」について
シソウ
林
滋(兵庫県宍粟市開業)
学歴
1977年
大阪歯科大学 卒業
大阪歯科大学大学院小児歯科学専攻 入学
1981年 大阪歯科大学大学院 卒業
職歴
1981年
1983年
1995年
大阪府寝屋川市小松病院歯科勤務
兵庫県宍粟郡山崎町にて林デンタルクリニック開設
山崎町庄能に林矯正小児歯科クリニック移転
私の30年余りの歯科診療を振り返って見ますと、齲蝕による歯牙崩壊の治療に始まりその後、歯列、咬合の異常
である形態的問題解決のために矯正治療へと入り、咀嚼異常や習癖など機能の問題へと移って来ました。それは、
小さな歯の問題から口腔全体の形態へ、そして静的なものから動的な問題へと視野が広がってきました。
今、歯の健康から口の健康へ、そして口の健康からそれを動かしている心の健康へとさらに視野を広げていく必
要を感じています。それは、日本の子どもたちの自己肯定感の低さです。「自分はダメな人間だと思いますか?」の
質問に「そう思う」と答えた中学生は、中国が11.1%、アメリカが14.2%、日本はなんと56%だそうです。(日本青尐年
研究所 平成21年2月発表のデータより) また、最近では高校生の30%近くにうつの傾向があると言われています。
人はとても孤独なものです。「独生独死 独去独来」(釈尊)
だから自分のことを解かって欲しい、理解してくれる人を求めています。共感が嬉しいのはその為です。
今回、私たちの診療を通して親や子どもたちの自己肯定感を尐しでも高めていく関わり方について、皆さんと共に
考えてみたいと思います。
オープンクリニック
9月7日(水)15:00~15:50
オープンクリニックに向けて
成育歯科医療研究会常務理事(オープンクリニック担当)野本 知佐
今年の大会から成育歯科医療研究会ではオープンクリニックに向けての準備を始めました。今年はポスターで3
医院にそれぞれの「オープンクリニック」を行っていただきます。これを手始めに会員の皆様のご意見をお伺いしな
がら、成育歯科医療研究会らしいオープンクリニックを開催していきたいと思っております。
さて、そもそも「オープンクリニックって何?」と思われる先生も多いかと思われます。斯く言う私も「オープンクリ
ニック」が何を意味するものなのかはっきりとした確信が持てず、すぐさまインターネットで「オープンクリニック」を調
べました。
似たような言葉に「オープンハウス」や「オープンキャンパス」があります。このふたつの言葉は割に市民権を得て
いて、説明しなくても何のことか、どんなことをするのか、大半の方はご存知かと思います。「オープンハウス」であれ
ば、新築あるいは改築した家を見学することです。今後の自分の家づくりの参考にするために行く人も多いかと思
いますが、建築した業者が新たな顧客獲得のため行っているともいえます。
「オープンキャンパス」も同じように、入学予定の生徒は大学内を見学することで志望校を決定しやすくなるという
ことと、大学側にすると見学してもらうことで入学者を確保しようという意図もあります。
「オープンクリニック」についてはどうでしょう。「オープンハウス」や「オープンキャンパス」と同じようにその場所を
見学するということには間違いないと思います。では、その目的ですが、すでに学会として「オープンクリニック」を
行っている日本外来小児科学会ではこうしています。「オープンクリニック?耳慣れない言葉だと思います。本学会
の活動性の高さはニュースレターで報告されるさまざまな委員会報告や年次集会で肌で感じられるものです。(中
略)そんな熱気あふれる会員同士が自分のクリニックをオープンにして学びあう試みを進めてみようと考えています。
オープンにする中身はなんでもかまいません。診療所の建物や機器でも、診療風景でも、工夫されたカルテでも、
お互いにオープンにして吸収しあい、刺激しあう、そんな試みに参加しませんか?」(日本外来小児科学会HPより)
成育歯科医療研究会ではこれらを参考にして、オープンクリニックを行っていこうと思います。目的は会員相互
での研鑽、相互交流、見学する方はその医院から吸収できるものは吸収し、見学される方はその見学者から刺激を
うけ、自医院の再発見になればと思います。歯科医療にたったひとつの正解はありません。患者・歯科医師、それ
ぞれ個人個人の信念・技量・希望・予算などによって治療方針が決定され、治療がすすんでいきます。患者にとっ
て最適の歯科医療が提供できるように小さな殻に閉じこもらずに大きな目を持って他医院を見学し、自医院をオー
プンにしてみてはどうでしょうか?
大会事務局よりお知らせ
9月8日、大会終了後にサテライト会場(はなえ矯正歯科=メイン会場から徒歩3分)にて現地視察会を催します。
希望者は総合受付にて当日13時30分までにお申し込みください。(先着順受付)
オープンクリニック 1
9月7日(水)15:00~15:50
オープンクリニック「イシタニ小児・矯正歯科クリニック」
施設名: イシタニ小児・矯正歯科クリニック
施設管理責任者名: 院長 石谷徳人
所在地:〒899-5432 鹿児島県姶良市宮島町41番4号
院長の略歴
1998年3月 鹿児島大学歯学部卒業
1998年4月 鹿児島大学歯学部小児歯科学講座入局
2001年4月 鹿児島大学助手 歯学部小児歯科学講座
2007年4月~ 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 客員研究員
2008年3月 イシタニ小児・矯正歯科クリニック開業 現在に至る
歯学博士(鹿児島大学 歯論55号)
一般社団法人 日本小児歯科学会認定 小児歯科専門医(第789号)
歯科医師臨床研修指導医 (鹿児島大学 第16号)
鹿児島大学歯学部非常勤講師(2008年4月~)
施設の概要
標榜科:小児歯科・矯正歯科
歯科医師数2名(うち非常勤歯科医師1名)
衛生士数4名、歯科技工士2名、歯科助手1名、受付・秘書2名
ユニット・チェアー数5台
平成22年度1日平均外来患者数37名(年間患者数/診療日数)
クリニックのコンセプト:「患者さまと共に考え、共に歩み、支援する」
特徴: 当クリニックは開院3周年を迎えたばかりの新しい小児専門の歯科医院です。来院される患者さまのほとんどが
成長期のお子様であり、齲蝕の無い、機能的な咬合、衛生的な口腔環境を維持させるために、小児歯科、矯正歯
科、予防歯科の基本を大切にしたトータルケアを行っております。
継続的な管理の中で起こり得る患者さまの口腔内の様々な問題について、カウンセリングコーナーと視覚媒体など
を活用し、それらの認識を患者さま、保護者の方、診療スタッフらと共有しながら、必要な時期に必要な専門医療を
提供することを目標としております。
また今年3月には増築工事を行い、お子様が快適に楽しみながら来院して頂くだけでなく、保護者の方も快適に
安心してお待ち頂けるように、院内空間にも配慮しております。
オープンクリニック 2
9月7日(水)15:00~15:50
オープンクリニック 「ちあーず歯科・小児歯科」
施設名:ちあーず歯科・小児歯科
施設管理責任者名: 院長 野本 知佐
所在地:〒791-2116
愛媛県伊予郡砥部町原町325-37
院長の略歴
1989年3月 岡山大学卒業
1989年4月~ 岡山大学小児歯科学講座入局
1995年4月~ カノミ矯正・小児歯科クリニック(姫路市)勤務
1999年4月~ 須之内歯科医院(松山市)勤務
2003年4月~ ハロー歯科(岡山市)勤務
2009年1月~ ちあーず歯科・小児歯科 開院
施設の概要
標榜科:一般歯科、小児歯科、矯正歯科
歯科医師数
衛生士数
1 名(指導医など内訳
1 名、歯科助手数
ユニット・チェアー数
小児歯科専門医 1名 )
0名、その他のスタッフ
1名
3 台
平成22年度1日平均外来患者数
20 名
クリニックのコンセプト: 「楽しい歯医者」
特徴: 「歯医者」といえば、怖い痛いイメージを持つことが多いと思う。当院では大人も子どもも「楽しく歯医者に
通ってもらうこと」をコンセプトとし、患者様と十分なコミュニケーションを図ることにより、歯科恐怖のひとつである
「Distrust(不信感)」を与えないように注意し、「General Fear」や「Specific Fear」があれば、それに対応する行動
科学的なアプローチを行うよう心がけている。
小児歯科、一般歯科とも治療のみ行うのではなく、治療後の定期的な健診とメインテナンスを推奨している。特
に小児歯科では、「健全な永久歯列に移行」できるようにう蝕のみでなく歯列咬合に関するチェックも行っている。
当院では低年齢からの定期的な受診をすすめているがう蝕の有無やう蝕活動性、う蝕の状態などによって受診
間隔は異なってくる。う蝕治療を行う場合も未来の歯科恐怖患者をつくらないように細心の注意を払っている。ま
た歯列咬合に問題のある場合は治療に最適な時期を見極め、治療が開始できるよう定期健診を推奨するととも
に保護者とのコミュニケーションも重要だと考える。
口腔ケアの基本は毎日の個人の清掃と定期的な歯科医院でのメインテナンスであると考える。歯科医院に対
するイメージが悪いと歯科医院からどんどん足が遠のく結果となってしまう。悪いイメージの原因は痛みを伴う治
療であったり、患者が納得できない治療であったり、スタッフとのコミュニケーション不足であったりする。当院で
は良いイメージを持って永く通えるように初診、治療、定期健診それぞれの場面でインフォームドコンセントをと
るようにしている。
オープンクリニック 3
9月7日(水)15:00~15:50
オープンクリニック 「はなえ矯正歯科」
施設名: はなえ矯正歯科
施設管理責任者名: 院長 若江皇絵
所在地:〒830-0047 福岡県久留米市津福本町322
院長の略歴
1999年 福岡歯科大学卒業
九州大学歯学部矯正歯科研修医入局
2007年 九州大学歯学研究院 学位記取得
日本矯正歯科学会 認定医取得
2008年 はなえ矯正歯科開設
施設の概要
標榜科:矯正歯科 予防歯科
歯科医師数 1名
歯科衛生士数 1名、歯科助手数 1名、その他のスタッフ 1名
ユニット・チェアー数
2台
平成22年度1日平均外来患者数
10名
クリニックのコンセプト: 「より美しく健康に」
特徴: 当院は矯正歯科の専門院として3年前に開院致しました。歯並びを単に美容の観点から整えるのみではな
く、美しさと機能と安定性を兼ね備えた咬合を確立し、クリニックのコンセプトである美しさと健康を提供したいと
いう想いで診療しています。そのため矯正治療のみならず予防歯科や筋機能療法などの指導も積極的に行っ
ています。また当然ではありますが、矯正治療に使うあらゆる装置が患者さんのニーズに合わせて提供できるよ
う常に研鑽を行い、最新の情報を取り入れています。
当院で大切にしているのは患者さんとの信頼関係を築くことです。そのため院長の目の届くユニット2台の範囲
で診療を行い、患者さんと会話をする時間をしっかり作り、治療の経過をいつでも患者さん自身で確認できるア
ルバム棚を設けています。
今後の課題は予防歯科の内容を充実させることです。また従業員が仕事を通して充実した人生を送れるよう
に研修によるスキルアップや積極的なコミュニケーションをはかり、ビジョンの共有に努めています。
矯正治療は患者さんと10年来のお付き合いを行いやっと評価される診療だと考えていますので、当院が良い
診療ができたかの判断はまだ7年以上後のことになると思います。
10年先も初心を忘れず努力し続けることが私にとって最も大切な課題です。
一般演題 1 (ポスター展示)
座長 岩崎智憲(鹿児島大学病院)
9月7日(水)16:00~16:10(示説)
舌位挙上を図る低位舌用Lingual Archの考案と臨床
さとみ矯正歯科クリニック(山形市) 里見 優
【目的】 不正咬合の機能的咬合の改善と安定を試みるとき、舌位および舌運動の改善は必要条件ではないだ
ろうかと考え、舌位挙上を治療早期に図ることを目的に固定式舌挙上矯正装置を考案し、治療システムを構築し
たので報告する。
【方法】 通法通り口腔内にて臼歯にシームレスバンドを適合し製作した下顎歯列石膏作業模型上にて0.036”
矯正線を屈曲し、小臼歯部に長径調節用U-loop を付与した通常のリンガルアーチ(LA) を製作する。LAの左右
小臼歯部に0.036”矯正線にてV字状の舌挙上用Wedge wireを顎舌骨筋線上に屈曲し、舌側弧線の直上位に
位置するように臼歯部にてロウ着する。ST-lock等の維持装置は、必要に応じて付与する。
《 低位舌への治療方法 》 まず咬合の咬頭干渉の除去をこころみる → 上顎歯列の
拡大(床矯正装置、Helix、Rapid、LA等)をする → 被蓋の改善を得る → 後方位咬
合を可能にする → 臼歯部咀嚼を練習する → MFT(筋機能療法)にて舌挙上訓練
→ 低位舌用リンガルアーチ等で舌位挙上を図る → Lip seal・鼻呼吸の獲得をする
→ 成長方向を確認、長期管理する。このような治療の流れを矯正装置とMFT、その
他を併用して、達成する。低位舌用リンガルアーチは装着後、舌位に応じて、舌挙上
用Wedge wireを上方に引き上げて,舌位と舌運動を規正して正しい口腔機能の獲得
をめざす。平成23年6月末148名に施術している。
【症例】
【結果】 MFT による舌挙上訓練と低位舌用リンガルアーチを併用することにより、潰瘍などを発症させずに効率よ
く安全に舌位および舌運動の改善が得られた。低位舌用リンガルアーチの主線および Wedge wire の調節により、
舌位の挙上および突出防止がはかられた。製作も可撤装置より簡単であり、マルチブラケット装置などとの併用も
容易に可能である。
【考察】 固定式の低位舌用リンガルアーチの使用により、可撤式矯正装置より効率的に舌位および舌運動が改
善し、安定した機能的咬合の獲得が得られることが示唆された。
一般演題 2 (ポスター展示)
座長 近藤 俊(藤田保健衛生大学病院)
9月7日(水)16:10~16:20(示説)
埋伏歯を伴う開咬症例
カノミ矯正・小児歯科クリニック(姫路市) 伏下 洋実
【目的】
成長発育期にある小児に対しては、形態・機能の両面から口腔の発達を促さなければならない。今回、埋伏
犬歯を伴う開咬症例を通して、小児期の口腔管理について考案を加えたので報告する。
【症例】
初診時年齢 8 歳 2 か月の女児。開咬を主訴に来院。顔貌所見では、正貌は下顎がやや右偏、側貌はコン
ベックスタイプ。口腔内所見では、前歯部開咬を認め、overbite は - 3.5 mm、臼歯関係は Angle Ⅱ級。パノラ
マ所見では、13、23 の萌出スペースの不足を認め、24 の歯胚の方向が異常であり、頭部X線規格写真では
ANB 7°、FMA 35°であった。
【診断】
13、23 萌出スペース不足 ・ 24 歯胚方向異常 ・ 舌癖を伴う骨格性Ⅱ級 ・ Angle Ⅱ級開咬
【治療方針】
13、23、24 の位置の推移に注意しながら、臼歯関係の改善、筋機能療法(MFT)を行い、13、23、24 は自然
萌出が困難な場合は牽引を行い、マルチブラケットにて排列を行う方針とした。
【治療経過】
咬合斜面板とフェイスボウヘッドギアを装着。3か月後に臼歯関係の改善を認め、装置除去後に MFT を行っ
た。前歯の被蓋関係も改善されたが、13、23 が萌出困難であったため、外科的に牽引処置を行った。 23 は術
後 3か月で萌出したが、萌出困難であった 13 はマルチブラケット装着後に再牽引を行い、術後約 1 年で萌出
した。埋伏していた 24 は矯正治療中に自然萌出し、非抜歯にて矯正治療を終了した。
【考察】
MFT を継続して行い、機能異常に適切に対処したことが形態改善に繋がった。埋伏歯の原因としては本症
例のようなスペース不足が最も頻度が高い。埋伏する可能性を有した永久歯に遭遇した場合、未然に歯列弓
と顎骨を拡大し、スペースを作ることで自然萌出する可能性が拡がると考えられた。しかし、本症例では機能改
善を目的に MFT を先行して行ったため、拡大装置を使用できなかった。機能改善と歯列弓拡大を平行して行
うことは困難だが、埋伏回避の為に治療順序を再考する必要があった。
一般演題 3 (ポスター展示)
座長 森川和政(九州歯科大学口腔機能発達学分野)
9月7日(水)16:10~16:20(示説)
可動型バンドループを用いて永久歯萌出スペースを確保した一例
水谷 智宏1、中山 聡1,2、岩崎 浩1,2、宮沢 裕夫1,2
1 松本歯科大学小児歯科学講座
2 松本歯科大学大学院 健康増進口腔科学講座
【緒言】
乳歯列から混合歯列へと移行する過程は、身体的な成長・発育時期と重なるため、乳歯の歯根吸収や永久歯の
歯根形成と、顎骨の成長を相対的に考慮することが望ましい。特に、永久歯萌出に伴う歯根形成速度や形成量に
対して十分な配慮を行うことにより、適切な時期にスムーズな咬合管理を行うことが可能である。
今回、可動式バンドループを用いて下顎左側第1大臼歯を遠心傾斜させることにより、第2小臼歯萌出スペースを
確保した1例を経験し、患児と保護者より同意を得たので報告する。
【症例】
年齢:6歳9カ月 男児
主訴:口腔内精査希望
2010年4月、下顎左側第2乳臼歯が食事時に脱落したことから、精査を希望して松本歯科大学病院小児歯科を受
診。口腔内を精査したところ、下顎左側第2乳臼歯が喪失し、第2乳臼歯遠心根相当部から下顎左側第1大臼歯が
わずかに萌出している状態であった。下顎左側第1大臼歯の萌出開始から間もないことから経過観察を行い、歯冠
長1/2の萌出が確認できた同年8月に、下顎左側第1大臼歯に対して可動型バンドループを装着した。
その後、経過観察を続け、2011年4月には下顎左側第2小臼歯が萌出するスペースの確保が出来たことから、固
定式バンドループへ交換し定期検診を継続している。
【考察】
ループ型咬合誘導装置は、目にする機会が減尐したものの従来より用いられている装置である。小児期の咬合
管理を考慮して用いられてきたいくつかの咬合誘導装置は、近年の材料進歩により改良が続けられているが、変化
する小児の成長パターンに対して、再度、歯科医療を牽引してきた先人の知恵を大いに活用するとともに、最善の
結果を産むことが出来るような医療提供を行っていく必要がある。
今後、中長期的な管理を継続し、永久歯への交換がスムーズに促されるように配慮するとともに、予防を中心とし
た口腔健康の維持に努めていきたいと考える。
報告:シンポジウム「指しゃぶり」(ポスター展示)
報告:シンポジウム「指しゃぶり」
東條歯科医院 東條多恵
【目的】 平成22年9月9日第15回成育歯科医療研究会大会において「指しゃぶり」をテーマにシンポジウムが開催
された。その概要をまとめ、提言とともに報告する。
【報告】
1.「指しゃぶりの気持ちとその対応」東條歯科医院 東條多恵
行動療法は、原因を追及するのではなく現状を受け入れ分析し学習のプロセスを用いて行動の変容をはかる
心理療法であり、指しゃぶりへの対応として有用である。子どもの行動変容を支援するためには、発達段階に応じ
た発達課題をふまえたうえで、保護者とともに子どもを受容することが不可欠である。
2.「当院における指しゃぶりを有する子ども達の状況」田中こども歯科医院 田中克明
自院に来院する患者に統計調査を行った結果、家庭環境や心理的背景についてある程度の傾向が感じられた。
環境などは変えようがないものが多いのが現実であるが、指しゃぶりを問題行動としてのみ捉えるのではなく個別
の背景因子について保護者の気づきを促すことで、習癖にたいする認知や親子の関係にも変化が生じる。特に
昨今の社会情勢では、子ども達はそれぞれ複雑な環境に置かれている。指しゃぶりをきっかけに、周囲の大人が
子どもの立場で生活を見つめ直すことが出来れば、それが最初の支援ではと考える。
3.「「指しゃぶり」矯正歯科医の視点」聖マリア病院矯正歯科 森下 格
指しゃぶりは不正咬合の原因となるが、合目的的に行われる習慣行動であり本人にとって必要な行動であるな
らば、介入して中止させるべきものではない。しかし矯正治療を希望し指しゃぶりが治療の障害となる場合は「悪
習癖」として中止支援が必要となる。矯正歯科の教科書には装置としてハビットブレーカーや指サック、指に塗る
苦味剤を紹介されるが、具体的な行動療法の教育が望まれる。
【まとめ】指しゃぶりは幼児期前半までは発達的意義をもつが、幼児期後半を過ぎて習癖として固着した場合は形
態的、機能的、心理的に悪影響を生じる可能性がある。個別の背景因子や成育環境への配慮は必要ではあるが、
問題なのは子どもではなく行動とその影響であることを認識し、まず指しゃぶりをふくめて子どもをありのまま受容
し子ども自身が自発的に問題解決をはかっていくように、保護者や周囲の人が連携して支援することが重要であ
る。指しゃぶりの中止を目的とするのではなく、子どもの成育を促す良い機会であるという認識を共有したい。
成育歯科医療研究会は、シンポジウムの内容と成果を発表し、事後抄録としての出版を行い、多くの歯科医師
の目に触れるようにすることで、社会における認識を変えていく契機にしたいと考える。これは成育歯科医療研究
会のメンバーだけがその情報を持ち利用するばかりではなく、全ての歯科医師の共通の理解としていくことを目指
すものである。
Interactive Forum
成育歯科で一番聞きたい授業=福原ゼミ
9月7日(水)16:30~18:00
座長 森下 格(聖マリア病院)
『成長を測る二つのモノサシ』
―子どもの咬合の成長を、どう伝えるか―
福原達郎
(昭和大学名誉教授、東京都大田区開業)
略歴
1949年 東京医学歯学専門学校歯学科卒
東京医科歯科大学専攻生(歯科矯正学)
1952年 東京大学医学部解剖学教室研究生 1959年 学位授与
1963年 東京医科歯科大学助教授 同年フルブライト交換研究員として
シカゴ大学客員准教授
1968年 新潟大学教授 病院長を経て
1977年 昭和大学教授 病院長・学部長を経て
1993年 定年退職 昭和大学名誉教授 東京都にて開業
日本矯正歯科学会会長・日本口蓋裂学会理事長・会長などを歴任
日本歯科医学会長賞・日本矯正歯科学会賞・变勲:瑞寳中綬章
対話のテーマ
1 背の高い子ほど矯正の治りが良いのは、何故か?
同じクラスで大きい子の治りは良い、という経験はありませんか
成長を測るモノサシ 年齢か身長か 相対成長の考え方
絶滅したドウドウの復元
相対成長 Allometry の式 曲線vs.直線 どちらが的を射るか
2 咬合の成長変化を、どう伝えるか
咬合変化は身長で表す 側方歯群の交代(Dental Age ⅢB)がカギ
子どもの身長を知りたがる親に narrative な成長物語を創る
マイケル・サンデル教授(ハーバード大)に学ぶこと
成育歯科の出番です
良く噛むことを勧める 歯がなければ動物は死ぬ
予備テーマ
○ 矯正は、早ければ早いほど良い Yes か No か
○ 2期矯正治療の考えは正しい Yes か No か
○ 先天性欠如は遺伝する Yes か No か
○ 顎変形症の予測は可能か
○ なぜ下顎埋伏智歯は水平位をとるのか
○ 混合歯列期に FKO の復権はあるか
memo
シンポジウム「先天性欠如歯をみとめる生活者への継続的支援」
9月8日(木)9:30~9:45
座長 森下 格(聖マリア病院)
課題提示講演
先天性欠如歯の現状 ― 日本小児歯科学会の調査報告概要 ―
鹿児島大学大学院医歯学総合研究科小児歯科学分野
略 歴
山崎要一
1983年 九州大学歯学部 卒業
1987年 九州大学歯学部附属病院 小児歯科 助手
1996年 カナダ・ブリティッシュコロンビア大学 (文部科学省在外研究員)
1997年 九州大学歯学部附属病院 講師
2003年 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 小児歯科学分野 教授
2005年 鹿児島大学病院 病院長補佐 (研修・教育担当,〜2009)
2008年 日本小児歯科学会 副理事長
2011年 鹿児島大学病院 病院長補佐(研修・教育担当)
日本小児歯科学会 専門医指導医
日本顎関節学会 専門医指導医
日本顎口腔機能学会 常務理事
成育歯科医療研究会 常務理事
認定NPO法人 こども医療ネットワーク 理事
鹿児島県小児保健学会 副会長
日本歯科医学会 評議員
1.はじめに
永久歯先天性欠如は、発現部位や欠如歯数によって様々な歯列咬合異常を誘発し、小児期からの継続的な口腔管理を行
う上で大きな問題となる。
日本小児歯科学会には、多数の報道機関から「永久歯先天性欠如の発現頻度」の問い合せがなされてきたが、明確な回答が
できない状況にあった。そこで、北海道、昭和、鶴見、朝日、大阪歯科、九州歯科、鹿児島の7大学が中心となり、日本で初め
ての全国規模の調査を実施した。
2.研究方法
永久歯の歯冠完成期にあたる7歳以上の歯科用エックス線写真を用いて、下記を検索した。
1)全国の資料をとりまとめ、一括分析して全体の永久歯先天性欠如の発現頻度や発現部位を分析する。
2)各大学(地域)において、同様に永久歯先天性欠如の発現頻度や発現部位を調査し、分析する。
3)過剰歯や矮小歯などの異常と永久歯先天性欠如の関係を検討する。
調査記録は個人情報を含まないOCRデータとして鹿児島大学で一括分析され、対象者数は7大学合計で15,544名(男子
7,502名、女子8,042名)となった。
3.研究成果
(1) 結果概要
永久歯の先天性欠如は1,568名に確認された。発現頻度は10.09%で、上顎のみの先天性欠如者は2.50%、下顎のみでは
5.71%、上下顎では1.87%であった。
歯種別では、下顎左側第二小臼歯が3.26%、下顎右側第二小臼歯が2.84%で、次いで下顎側切歯、上顎第二小臼歯、上顎
側切歯の順であった。
(2) 出生年代・性別における比較
全調査対象者のうち生年月日が明確な15,494名について、出生年代別に1985年以前(2,536名)、1986年から1995年(9,737
名)、1996年以降(3,221名)の3群での発現頻度は、それぞれ9.62%、10.08%、10.50%であった。
性別では、男子が9.13%、女子が10.98%であった。
(3) 永久歯先天性欠如の発現パターン
歯数別比較では、1歯欠如が5.22%、2歯欠如が2.93%、3歯以上ではいずれも1%未満であった。
4.おわりに
本調査は、これまで様々な医療機関から報告されてきた幅のある発現頻度報告に比べ、信頼性の高い基準データを社会に
提供した。
シンポジウム「先天性欠如歯をみとめる生活者への継続的支援」
9月8日(木)9:45~12:00
座長 森下 格(聖マリア病院)
先天性欠如歯がもたらす生活不安とその解消
金子 末子 (かねこ歯科クリニック 福岡市)
略歴
1994年
1994年
1997年
2001年
2010年
鹿児島大学歯学部卒業
岡山大学歯学部小児歯科学講座入局
ナカムラ矯正・小児歯科クリニック(亀岡市)勤務
かねこ歯科クリニック開業(福岡市)
日本小児歯科学会専門医
小児歯科診療の中で、患者さんに先天性欠如歯を認めることは多々あります。
私達にとっては多々あることでも、初めて先天性欠如歯について知った患者さんや保護者は驚き、疑問や不安
を抱きます。
原因は何か? 将来どうなるのか? どのような治療法があるのか? 乳歯はいつまでもつのか? 費用はどれ
くらいかかるのか? 遺伝するのか? その内容はさまざまです。
それぞれに、私達は適切なアドバイスや解答ができているでしょうか。
その疑問や不安の解消のためには、まず、将来的な口腔内の状態について患者さんや保護者がイメージでき
ることが重要です。治療計画に基づき、そこに至るまでに短期的・長期的にすべきことについて確認、説明し、出
てくる疑問や不安について話をよく聞き、先天性欠如歯がもたらす生活不安を軽減、解消することは患者さんの
咬合育成・獲得に向けての口腔内の継続的な支援とともに大切なことです。
今回、当医院での永久歯の先天性欠如歯について発現頻度などの調査とアンケートを行いました。結果の報
告をさせていただき、そして、アンケートより、実際に先天性欠如歯が患者さんや保護者にどのような生活不安を
もたらしているか、その解消のために、私達はどのような点に配慮し支援を行えばよいか検討しました。症例も交
えて見ていただき、先生方と先天性欠如歯について考えたいと思っております。
シンポジウム「先天性欠如歯をみとめる生活者への継続的支援」
9月8日(木)9:45~12:00
座長 森下 格(聖マリア病院)
先天性欠如歯を認める症例に対する矯正歯科の役割
鶴見大学歯学部 歯科矯正学講座 常盤 肇
学 歴
1984年3月
1990年3月
職 歴
1990年4月
1991年4月
1995年4月
1997年4月
1997年6月
2000年3月
2002年6月
2007年4月
慶應義塾高等学校 卒業
鶴見大学歯学部 卒業
鶴見大学歯学部附属病院 臨床研修歯科医
鶴見大学歯学部附属病院 診療科助手
総合相模更生病院 矯正科
鶴見大学歯学部 助手(歯科矯正学講座)
日本矯正歯科学会 認定医
博士(歯学)
日本矯正歯科学会 指導医
鶴見大学歯学部 助教(歯科矯正学講座)
主な研究テーマ
顎機能総合解析システム(ナソヘキサグラフ®)の開発
3次元6自由度ロボットの開発
正常咬合者および顎機能異常を有する患者(顎変形症患者、顎関節症など)
の顎機能解析
不正咬合が咀嚼筋組成におよぼす影響
不正咬合を主訴に矯正歯科を訪れる患者には歯の形態異常や先天性欠如を伴う症例の頻度が高く、その対処に関
しては十分な配慮が必要となる。先天性欠如症例では、乳歯が残存している場合とすでに脱落している場合とがある。
前者の残存乳歯の処置については多くの議論がなされており、その寿命等に関しては他の先生に譲るとし、今回は後
者を中心として話を展開させて頂く。既に乳歯が脱落している症例のスペースの閉鎖については、補綴科、保存科、イ
ンプラント科、矯正歯科など様々な診療科が関与することになり、interdisciplinary approach による総合的な治療が必要
である。周知のとおり、歯科医療技術の中で唯一歯根の位置を変化させることができるのが矯正歯科であり、空隙歯列
や異所萌出などの再配列や space control は、矯正の indication といえ、最終的に良好な口腔機能の改善が図られる
環境の確立、すなわち欠損部補綴をいかに成功させるようにするかが重要なポイントとなる。また、患児や保護者にとっ
ては、この空隙は審美性などの問題から精神的な負担を生じるため、治療時期の観点からもしっかりとした支援が必要
となってくる。
本シンポジウムでは、いくつかの先天性欠如を伴う不正咬合症例を供覧し、矯正治療の役割を中心に、歯の移植や
インプラント、スペースクローズなどの治療のオプションや治療のタイミングなどについてお話しできればと考えている。
【予定症例】
過剰歯の移植を行った多数歯先天性欠如症例
欠損部に移植を行った顎変形症症例
9本の先天性欠如症例
インプラントと残存乳歯を混在配列した先天性欠如症例の長期経過症例
シンポジウム「先天性欠如歯をみとめる生活者への継続的支援」
9月8日(木)9:45~12:00
座長 森下 格(聖マリア病院)
『先天性欠如歯〜修復医(一般医)の視点』
(医)皓歯会 かわばた歯科医院 川畑正樹
略歴
1990年 鹿児島大学歯学部卒業
1990~1994年 (医)豊歯会 竹下歯科医院勤務
1995年 鹿児島県枕崎市にて開業
所属学会
日本歯周病学会(歯周病専門医)
日本顎咬合学会(認定医)
日本臨床歯周病学会(認定医)
日本口腔インプラント学会
日本補綴歯科学会
スタディグループ
SJCD、鹿児島キホーテの会
著書・歯科雑誌投稿など
1, 川畑正樹:Evaluate Treatment Planning矯正を伴う審美修復治療.補綴臨床Vol.38.No2 2005
2,土屋賢司,川畑正樹,北園俊司:矯正治療との連携による歯冠修復治療,補綴臨床Vol.38.No6 2005
3, 川畑正樹:一般医の矯正治療はここが違う.臨床家のための矯正YEARBOOK’06,東京:クインテッセンス出版,
2006,p.24-29
4, Ward M.Smalley:欠損歯や形態異常歯を持つ患者への包括的連携治療 インターディシプリナリー治療計画. 改訂版.
2010,p.277-316 (翻訳)、クインテッセンス出版
修復治療に際して、歯列内での先天性欠如歯や形態異常歯の存在はそのマネージメントにいつも苦慮することと
なる。歯列内に欠如歯によるスペースが存在する場合、修復医としては欠損補綴と同様に捉えて治療を行うことが多
い。しかしながら隣在歯の代償性移動が生じ脆弱な歯列となっていることがほとんどであり修復治療を複雑にする要
因となっている。先天性欠如歯に相当する部位の乳歯の晩期残存に対しても、いつまで保存できるかといった指標
を示すことなく経過観察となり、その歯の動揺や脱落、破損が生じた際に初めて治療着手となっている場合も多いよ
うである。また矯正治療が行われた症例においても欠如歯による空隙閉鎖を中心とし矯正治療単独で終了となって
いる場合も多く見受けられる。近年インプラントも一般に認知されるようになり、接着修復の発展は著しい。症例によっ
ては的確な診断のもと治療目標を設定し連携により修復治療のオプションを用いた治療が行われるべきではないか
と考える。先天性欠如歯を有する患者に対して、歯科医の間でも生涯を見据えた治療目標の明示はあまりされてお
らず、治療を担当する歯科医の得意分野によっても方針に大きな幅があり正確な情報を伝えているとは言い難い状
態と感じている。患者の立場から考えると判断に困惑する場合もありえるであろう。海外に目を向けると日本では馴染
みがない診療体系ではあるが、複雑な症例に対しても連携治療(インターディシプリナリー)により矯正医、歯周病医、
補綴医が治療計画を共有しその専門性を生かし良好な結果を残しているようである。昨年、連携治療を広めたとされ
るアメリカのシアトルスタディクラブによる治療計画に関する書籍が発刊されその翻訳にかかわる機会を得た。今回そ
の内容も紹介し先天性欠如歯を有する症例での修復治療に関し一般医としての立場から私見を述べディスカッショ
ン出来ればと考えている。
ランチョンセミナー1
座長 日高 聖(長崎大学大学院)
9月8日(木)12:10~13:10
永久歯の先天性欠如における成育支援
さえき矯正小児歯科医院 佐伯克彦
略歴
1978年 大阪歯科大学 卒業
1988年 加古川市にて開業
2003年 大阪歯科大学小児歯科学講座にて学位取得
歯学博士
日本小児歯科学会 小児歯科専門医
日本矯正歯科学会 矯正歯科認定医
日本小児歯科学会近畿地方会 副会長
大阪歯科大学小児歯科学講座非常勤講師
歯の先天性欠如の発生頻度は7~8%で、小児歯科に来院される子供達にも日常的に見られます。特に永久
歯先天性欠如を有する子供達を漫然と放置すると、将来的には良好な咬合関係の喪失が予測されます。臼歯部
の先天性欠如では欠損側の咬合高径の減尐が顔面の非対称につながり、前歯部では機能的・審美的に不良な
状態になるので、適切な対応をすることは非常に重要です。一般的な対処法は、先行乳歯の保存、欠損部の補
綴、歯列矯正などが言われますが、重要なことは、発見時に保護者や患者本人へ説明し理解を得て、必要な時
期に個人の資料を採取・診査し、何時、どの状況で、どの様な処置を行うかを決定し実行することです。先天性欠
如の問題は、基本的には発見時期と問題解決が可能な時期に差があり、定期検診など長期間の協力が必要とな
ります。
今回は、当院での先天性欠如症例の口腔成育の取り組みを、長期症例を中心に紹介させて頂きたいと思いま
す。
ランチョンセミナー2
座長:東條歯科医院 東條多恵
9月8日(木)12:10~13:10
“伝える”って難しい
酒井矯正歯科クリニック 酒井秀彰
学 歴
1987年3月 日本大学歯学部卒業
1992年3月 学位取得 (昭和大学:歯学博士)
職 歴
1992年4月~1996年3月昭和大学歯学部歯科矯正学教室
1997年3月 酒井矯正歯科クリニック 開設
2011年4月現在
世田谷区歯科医師会広報委員会
東京都歯科医師会広報常任委員会
矯正専門として開業してから15年目を迎えた。治療方針の説明や診断時には、写真を多用して解りやすさを心が
けて来たつもりであった。しかしながら先日、開院当初の患者さんが大学生となり(うち動的治療期間は2年程度)、
今後の定期観察の相談をした母親との会話時に、深く考えさせられる事があった。十分な説明をしたつもりであっ
たが、伝わっていなかったことに愕然とした。また中高年の女性患者さんへの対応では、治療開始2ヶ月目に御自
身の過去を打ち明けられ、私が非常に動揺し、もっと話しを聞いてから治療に入るべきだったのでは?と聞く(聞き
出す)能力の不足を痛感した。これらの例を提示し、患者さんとのコミュニケーションについて考えてみたい。なお、
コミュニケーション不足というと医療訴訟を連想しがちであるが、良い医療を産み出すためのコミュニケーションを
ディスカッションできればうれしい。
クリニカルカンファレンス「先天性欠如歯をみとめる場合」
9月8日(木)13:30~16:00
参加者全員を3グループに分け、コーディネーターを中心に症例検討と診断および治療計画の立案
をしてもらいます。アシスタントは議論を基にしてプレゼンテーションを作成します。80分のカンファレンス
ののち、メイン会場へ移動して全体での総合討論を行ないます。
提示症例1
16歳女子
クリニカルカンファレンス「先天性欠如歯をみとめる場合」
9月8日(木)13:30~16:00
提示症例2
9歳男子
クリニカルカンファレンス「先天性欠如歯をみとめる場合」
9月8日(木)13:30~16:00
提示症例3
7歳男子
memo
広報(ポスター展示)
成育歯科医療研究会の成り立ちと目指すところ
成育歯科医療研究会前会長 佐々木 洋
本研究会の発足と改名の経緯
成育歯科医療研究会は、当初『咬合誘導研究会』として発足した。以前より、包括的な発達期の歯科を目指す
臨床カンファレンスを継続してきた『咬合誘導懇話会』の中心メンバーが、全国より発起人を集め、1996年3月に
準備会を九州大学で開催し、改めて研究会として発足した。同年10月には、第1回学術集会も九州大学で開催さ
れている。
また、発足当時から研究会名称と趣旨については毎年論議が続き、最終的には2004年に「健全な口腔機能の
育成を通じて、広く次世代までも継続するセルフケアを支援する医療体系の開発について研究する」という観点
から、研究会の名称を「成育歯科医療研究会」(英語名称案:The Society of Dentistry for Child Health and
Development)と変更した。
成育歯科が生まれた背景:成育医療と健康モデルの世界的変遷
20世紀末には小児保健に対する新しい概念が広がり始めた。医療行政の中では、社会の尐子化進行への対
策として、生命のリプロダクションサイクルを意識した総合的かつ継続的医療体系が継続して検討され、これを『成
育医療』と称した。この構想を具体化するために、国立成育医療センター設立に代表される医療施設統廃合など
の事業展開がなされた。『成育医療』では、胎児から小児、思春期を経て出産の可能性のある成人期までの、ライ
フサイクルに沿った心身の健康が目的となっている。
一方、世界的な視点からなら、WHOの国際障害分類(ICIDH 1980)から国際生活機能分類(ICF 2001)への転
換も、新たな医療体系へのパラダイムシフトの重要な背景といえる。国際障害者年の前年に制定されたICIDHは、
疾病が身体レベルで顕在化した機能障害を生じ、個人生活レベルでの能力障害につながり、社会生活レベルの
不利を生むというモデルである。現在でも、予防・治療・リハビリテーションのガイドラインの多くがICIDHの概念に
沿って構築されている。このようにICIDHは世界の医療レベル向上に大いに貢献したが、機能障害の背景にある
個人の身体・心理的背景以外の生活環境要因
International Classification of Functioning,
Disabilities and Health (ICF 2001)
や、生活者を主体とするヘルスプロモーションの
理念が反映されていない。ICF 2001の概念(図
1)では、主体となる生活者の視点から捉えられ
Health condition
(健康状態)
た生活機能とその障害が対象となった。2007年
には ICF-CY (Children and Youth Version、同
Body Functions &
Structure
(心身機能・構造)
Environmental Factors
(環境因子)
Activity
(活動)
Participation
(参加)
Personal Factors
(個人因子)
図1:国際生活機能分類(ICF 2001)
児童版)も公表されている。
広報
育成歯科医療から成育歯科医療へ
従来医療の世界では、管理・指導的な意味合いの強い「育成」が馴染みのある言葉で、歯科でも発育期の包括
的医療体系として『口腔育成』が提唱されてきた。解説するまでもなく、口腔育成はICIDHの概念にもとづいている。
「育成」と「成育」の相違を明示したい。
逆配列漢字熟語の「育成」と「成育」だが、前者は他動詞として「人材/家畜を育成する」、後者は自動詞として
「子ども/作物が成育(植物では生育)する」のように使う。成育医療に関わる専門的活動は、子どもの成育を支援
する活動となる。しかしこのような概念は、かつての歯科医療体系にはなかった。そこで提唱されたのが「口腔成
育」や「成育歯科医療」である。成育する主体は子どもなのだから、「口を介して(口腔の生活機能が十分働き)心
理・行動・機能・身体が育つ」が大意で、「口から育つこころと身体」なら更に判り易いかもしれない。一方、子どもと
育児世代から歯科医療職種に求められる役目を端的にまとめれば、「障害や疾患の有無にかかわらず、こどもが
持つ『口』の働きが充分に活かされ、子どもの心身が健康に育つよう養育者と一緒に考え、成育・育児・子育て支
援を行うこと。さらにその成果を次の世代の成育に継承していくこと」となる。
研究会誌バックナンバーを紐解けば納得されるであろうが、国立成育医療センター構想(1997)以前の発足時
(1996)から、本研究会では育成歯科医療の問題点抽出と新たなパラダイムへの模索が止むことはなかった。つま
り、「成育歯科医療研究会」への改名よりも学術活動のほうがはるかに先行していたことを、あらためて記しておき
たい。
成育歯科医療の骨子と本会のめざすもの
成育歯科医療は、従来の専門領域の口腔衛生学、小児歯科学、矯正歯科学の専門性を平面的に集結したも
のではなく、発達心理、言語病理、行政、教育など他の専門領域との連携を不可欠とする、包括的かつ全人的な
医療体系である。エビデンスに基づいた診断や治療また情報の開示は、国民から納得の得られる医療の重要な
鍵である事はいうまでもなく、また客観的な診断があってこそ、根拠ある治療が生まれ、医療連携も可能となる。し
かし成育歯科医療では、診断重視から更に前進し、生活者個々の状況にあった支援案の提示が求められる。す
なわち歯科疾患や形態異常への対応から、生活者が日常生活で抱える障害(生活機能障害)への対応に活動を
シフトする。従って、成育的アプローチのケーススタディやカンファレンスでは、クライアントの生の言葉や行動が
評価対象となる。
つまり、専門職の評価指針から判別された歯科疾患や咬合分類で判別される咬合異常ではなく、個別の背景
から生まれた障害(生活障害)が支援対象となる。ありていに申せば、治療・予防(疾病・傷害への対応)は手段に
過ぎず、生活機能の向上つまり「楽しく元気な暮らしや育ち」が目的である。また、成育医療の「ライフサイクルに
沿った心身の健康」を意識するなら、臨床でも親の育児行動を変容強化し、セルフケア確立や治療経験を通じて
子どもの自律や自立を促す支援ができたらよい。こうしたパラダイムの体現が本研究会の目標だと考えている。
memo
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