...

MHRC Newsletter No.2

by user

on
Category: Documents
14

views

Report

Comments

Transcript

MHRC Newsletter No.2
No.2
(独)産業技術総合研究所 メタンハイドレート研究センター
Methane Hydrate Research Center (MHRC), AIST
2009年12月1日発行
MHRC Newsletter
高まる天然ガス需要と安定供給
目次:
ガス(LNG)として輸入されており、財務
省統計によれば、2007年のLNG輸入に
高まる天然ガス需要と
安定供給
1
ガスハイドレート産業創
出イノベーションの紹介
2
MHRC研究チーム紹介
要した総額は4.5兆円を越えています。
LNG に よ る 貿 易 は、世 界 の 生 産 量 の
7.5%程度ですが、他の輸送方法がない
研究センター長
わが国にとっては唯一の天然ガス供給
成田 英夫
源と言っても過言ではありません。また近
3
BP世界エネルギー統計2009によれ
メタンハイドレート研究 4-5
アライアンス活動
人材育成活動
6
ば、2008年の世界の天然ガス確認埋蔵
量は約185兆m3、生産量は3兆m3 強で
あり可採年数は約60年となっています。
わが国における天然ガス消費量は、世
話題の研究室巡り
7
界の生産量の3%に相当する937億m3
であり、前年度比3.6%の増加となってい
最近の論文紹介
@MHRC
8
研究者クローズアップ
9
ます。世界では、毎年2.5%程度の消費
増加が続いていますが、最近の傾向とし
ては、中東諸国および中国、韓国、イン
ド、インドネシア、タイなどのアジア諸国
の加速的な消費が進んでいます。わが
MH基礎講座
10
メタンハイドレート研究
関連イベントカレンダー
11
HITORIGOTO
編集後記
お問い合わせ
12
年、アジア諸国のLNG輸入が増加して
おり、安定的に輸入量を確保することが
ますます重要になってくると考えられま
す。このような状況の中、図のように商社
や電力会社、ガス会社などが東南アジア
諸国と長期契約している大口のLNG輸
入プロジェクトが今後10年間にわたり契
約更改の時期を迎えています。直ぐには
間に合いませんが、メタンハイドレート資
源からの天然ガス生産が可能となれば、
今後のLNG長期契約交渉にあたって優
位な条件になるものと考えられます。
国の天然ガスの96%以上は、液化天然
わが国のLNGプロジェクトと契約期間
1
MHRC Newsletter
ガスハイドレート産業創出イノベーション(GHIC)の紹介
メタンハイドレートを始めとするガスハイドレート
財産を特許化すると共に、研究開発の進捗を見
の物理的特性や結晶構造の解明により、その物
て、組織内で中核となる企業が大学・産総研と共
質としての機能が新たに見いだされて来ていま
同で各種研究開発予算制度を利用した実証研究
す。その機能を利用し た天然ガス輸送・貯蔵技
に進むことを基本としています。
術、冷熱利用技術等の革新的な省エネルギー技
現在、産総研ではガスハイドレートの特性を利
術の工業化が期待されていますが、産業技術まで
用した産業技術創出のキーテクノロジーとも言える
高めるには幾多の壁が存在しているのが現状であ
「包蔵ガスの高密度化」、「製造条件の低圧化」、
り、それらの壁を破り、実現へ一歩進めるためは、
「分解抑制手法の開発」等を実施すると共に、新
各技術分野、研究分野の実践的連携が不可欠と
たなビジネスモデルの提案を通じて、低炭素社会
考えられます。本会は、本格化しつつある天然ガ
の実現を目指した取り組みを行っています。
スエネルギー社会の到来に向け、ガスハイドレート
に関する基礎研究成果の共有化による研究開発
の効率化、目的を明らかにした実践的連携による
実証研究の推進、プロジェクト創出等を目的として
2007年に設立しました。現在、企業等7機関、大
学4機関の研究者が守秘義務を交わした連携の
下、幹事会、総会、講演会活動を実施しており、そ
れらの活動を通じて特許の申請等の成果を生み
出しています。
本会においては、学術的基盤を有する大学が
ガスハイドレートの新たな特性を見いだし、その特
性が発現する原理を追究した成果について情報
提供を行い、産総研はその特性を適用可能なビ
ジネスモデルの検討と実用化まで高めるための技
術研究開発課題と適切な連携スキームについて
検討・提案し具体的な連携組織の構築を行いま
す。連携組織の中核となっている企業は、企業と
しての見地から市場性や経済性の見通しを調査し
ます。連携組織の活動の中で生み出された知的
メタンハイドレート総合シンポジウム(CSMH-1)開催のご案内
日
時
平成22年2月16日(火) 9:30~
会
場
産総研臨海副都心センター別館11F
参加申込先
参加申込締切
平成22年1月31日(日)
※詳細は、http://unit.aist.go.jp/mhrc/ をご覧ください
2
No.2
MHRC研究チーム紹介
変形等に関する評価を行っています。
■生産モデル開発チーム
また、メタンハイドレート層の生産挙動を高い精
度で予測・解析する生産性・生産挙動評価技術と
して、生産に伴う貯留層の浸透性、熱特性、圧密
特性等の変化を評価する解析ルーチンの開発を
行い、現地試験結果との検証を通じて、より信頼性
の高い生産性と生産挙動を予測する生産シミュ
レータの機能強化に取り組んでいます。
キャップ
天満則夫 副研究センター長・研究チーム長
本チームは3名の常勤研究職員(うち、1名は兼
務)、2名の招へい研究員と6名の契約職員を含め
た計11名で構成されています。産総研つくば西事
試料
業所を拠点として「メタンハイドレート開発促進事業
圧力容器
(MH21プロジェクト)」の中で、これまでに開発を進
圧力容器の内部
めてきたメタンハイドレート資源の生産技術、特に
試験装置
シミュレーションに関する以下のような研究を行っ
ています。
まず、メタンハイドレート層からのメタンガス生産
に伴う地層変形・圧密挙動について長期的な安全
性を保証するための地層特性評価を行っていま
す。具体的には、三軸圧縮試験装置(写真)等の実
験装置を用いてメタンハイドレート層に係る強度等
の力学特性を取得して、これまでに開発してきた地
層変形シミュレータの解析精度の向上を図るととも
実験室の概観
に、メタンハイドレート開発に特有な大水深未固結
三軸圧縮試験装置
堆積層の力学特性の総合的な評価を行い、メタン
(生産モデル開発チーム長 天満 則夫)
ガスの生産における坑井周辺の地層忚力や地層
生産モデル開発チームメンバー
3
MHRC Newsletter
メタンハイドレート研究アライアンス活動
■東海大学講演
平成21年7月7日に東海大学海洋学部(静岡
県静岡市)で、成田センター長が講演を行いまし
た。これは、同大学で「松前重義記念基金学術セ
ミナー」開催のために招かれたものです。このセミ
ナーでは、「メタンハイドレート資源開発をめぐる
最新の状況」と題し、日本近海に賦存しているメタ
ンハイドレートの状況や、海底下のハイドレート層
から安全かつ経済的に取り出す技術開発を進め
るための最先端の研究等について、また、持参し
東海大学海洋学部での講演
た人工メタンハイドレートの燃焼デモンストレーショ
ンを行いながら講演を行いました。
当日は、100名以上の学生や地域の皆様が出
席され大変熱心に聴講いただきました。その後
も、興味を持たれた同大海洋学部海洋資源学科
清水研究室の学生さん2名が研修を希望され、つ
くば西事業所にある当研究センターでメタンハイド
レートについて学んでいます。
将来は有能な研究員として活躍される事を期待
いたします。
(事務局 小野 晶子)
燃焼デモの様子
■サイエンス・パートナーシップ・プロジェクト(SPP)
平成21年8月25、26日に、産総研つくば西事
業所にて群馬県立高崎工業高等学校の生徒15
名の研修を行いました。これは、文部科学省が推
進している「科学技術・理科大好きプラン」の一環
で、科学技術・数学(算数)に対する児童生徒の興
ハイドレート結晶成長の実験風景
味・関心と知的探求等を育成する活動に対して支
援する、SPP(サイエンス・パートナーシップ・プロ
二日目は、「メタンハイドレートを科学的に学ぶ」
ジェクト)の研修制度を利用したものです。
と題し、メタンハイドレートの基礎的な講義から始ま
まず第一日目は、「メタンハイドレートを一般的、
り、TBABハイドレートの作製や観察等、様々な実
社会的な観点から学ぶ」と題し、エネルギーの一
験や、研究施設の見学を行いました。
般講義や人工メタンハイドレートの燃焼実験、メタ
また、生徒さん達からはたくさんの質問が
ンハイドレート資源開発の講義や地質標本館の見
あり、関心の高さがうかがえました。
学等を行いました。
(事務局 小野 晶子)
4
No.2
■第3回メタンハイドレート研究アライアンス講演会の開催
平成21年11月30日、第3回メタンハイドレート研
究アライアンス講演会が産総研臨海副都心セン
ターにおいて開催されました。講演会は、「メタン
ハイドレートなどの開発時における地盤環境に係
る課題解決に向けて-実例、解析、そして、モニタ
リング-」と題するものでした。
天満副センター長から、当研究センターで開発
中の地盤挙動解析手法COTHMAの紹介、次い
で、「千葉県水溶性天然ガスの開発と地盤沈下へ
の対忚(関東天然瓦斯開発㈱:木村部長、小勝マ
パネルディスカッションの様子
ネージャー)」、「粒子移動と気泡の発達を考慮し
山口教授)では、約50名の参加者の間で時間を
た地盤挙動のSPH法解析(名工大院:前田准教
超過するほどの活発な意見交換が行われ、皆様
授)」、「地盤挙動のモニタリング(日鉱探開㈱:広
からは「また次回の講演会にも、是非参加したい」
岡技師長)」の話題提供があり、何れも興味深い内
との声も聞かれるほど、非常に有意義な講演会と
容でした。その中でも、特に地盤沈下への関心が
なりました。
高く、最後に設けられた総合討論(座長:東邦大
(生産モデル開発チーム 青木 一男)
■第2回産総研オープンラボ
平成21年10月15、16日に、第2回産総研オープンラボが、
つくばセンターで開催されました。オープンラボは、産業界に
開かれた公的研究機関としての産総研の研究開発シーズ等を
紹介し、対話を通じて企業との連携を強化するきっかけを作る
ことを目的としています。メタンハイドレート研究センターのブー
スでは「メタンハイドレートとビジネスチャンス」と題して、メタン
ハイドレート資源開発の進捗やガスハイドレートの物理的特性
を活かした機能活用技術に関する説明を行ったほか、メタンハ
イドレートの燃焼デモンストレーションもご覧いただきました。ま
た、当日はメタンハイドレート資源開発のための機器開発に関
する技術相談にも対忚しました。当ブースには200名近い来場
者があり、研究員からの説明を熱心に受けておられました。
(事務局 小野 晶子)
5
MHRC Newsletter
人材育成活動(H21/4/1~11/30 現在)
■情報発信・啓蒙
開催日
H21/8/22
イベント名
会場
参加者
IYPEジュニア・サイエンスカフェ 秋葉原UDX
■研修生受け入れ
実施期間
学校名
内容
小学3~6年生を対象に科学の専門家
20名
と科学について語り合う
研修制度・目的
内容
1.
H21/4/1~
H22/3/31
日本大学生産工学部 卒業論文研修 ガスハイドレートの物性測定技術の習得
2.
H21/7/1~
H22/3/31
東邦大学理学部
生命圏環境科学科
卒業論文研修 メタンハイドレートの合成実験
3.
H21/7/1~
H22/3/31
東邦大学理学部
生命圏環境科学科
卒業論文研修 メタンハイドレートの力学試験
4.
H21/7/1~
H22/3/31
東邦大学理学部
生命圏環境科学科
卒業論文研修 メタンハイドレートの力学試験
5.
H21/8/17~ 東京理科大学工学部
機械工学科
H21/8/28
インターンシップ
6.
H21/8/17~ 日本大学生産工学部
忚用分子化学科
H21/8/29
インターンシップ ガスハイドレートの物性測定
7.
H21/8/17~ 日本大学生産工学部
忚用分子化学科
H21/8/29
インターンシップ ガスハイドレートの物性測定
8.
H21/8/25~
高崎工業高校
H21/8/26
9.
ガスハイドレートの生成分解挙動・構造解析方法
の習得
SPP
(15名)
メタンハイドレートの資源開発の講義とメタンハイ
ドレートの基礎講義
H21/8/31~ 東京理科大学工学部
機械工学科
H21/9/13
インターンシップ
ガスハイドレートの生成分解挙動・構造解析方法
の習得
10.
H21/8/31~ 東京理科大学工学部
機械工学科
H21/9/13
インターンシップ
ガスハイドレートの生成分解挙動・構造解析方法
の習得
11.
H21/10/5~ 東海大学海洋学部
海洋資源学科
H22/3/31
卒業論文研修 メタンハイドレートの生成速度計測
12.
H21/10/5~ 東海大学海洋学部
海洋資源学科
H22/3/31
卒業論文研修
メタンハイドレートで被覆された気泡の管内挙動
解析手法
■研修員受け入れ
実施期間
H21/12/1~
H21/12/28
■技術移転
実施期間
H21/7/1~7/3
機関名
内容
日立電線(株)技術本部技術研究所
高圧DSC操作方法の習得
参加者
実施場所 参加者
産総研、日本オイルエンジニアリング、および 宮崎県
石油天然ガス・金属鉱物資源機構の研究者 日南地域
6
11名
内容
タービダイト層地質
巡検
No.2
話題の研究室巡り
■清水建設 株式会社 技術研究所
る地盤変形予測の信頼性を高めてこられました。
東部南海トラフで採取された貴重なフルコアの
データを今後も活用しながら研究を進めていきた
いとのこと。
将来の海洋産出試験を見据え、今後は、広域
にわたる変形についても精度よく評価できるよう、
研究を進めていかれる予定です。
[メンバー(11名)構成] 研究開発支援センター 1
名、社会基盤技術センター 7名、総合解析技術セ
メタンハイドレート研究に携わっている皆さま
ンター 1名、生産技術センター 1名、所長室 1名
創業200年を越える歴史を有する中で、国内で
[保有設備・装置] メタンハイドレート製造装置(攪
もいち早く設立されたという技術研究所。その歴史
拌式)、メタンハイドレート製造装置(通気式)、低
ある研究所で、メタンハイドレート(MH)研究に携
温高圧三軸試験装置、低温高圧圧密試験装置
わっていらっしゃる皆さまに、お話を伺いました。
平成13年の冬、メタンハイドレート資源開発研
究コンソーシアム(MH21)関連研究のために所内
の各部署から研究者が集められました。コンソーシ
アム内には異分野の研究者の方々が多数おら
れ、アプローチの手法、用語の捉え方、試験法や
解析法の違いを実感したそうですが、ワークショッ
プ等でいろいろな分野の方と積極的に議論を重
ねながら研究を進められてきたそうです。
研究テーマとしては、MH生産に伴う周辺地盤
への変形の影響を検討するため、海底地盤を対
象とした力学試験や物性評価を行い、その結果を
低温高圧三軸試験装置の前で
■最後に・・・
もとに数値解析、シミュレーションを行っています。
お忙しい中お邪魔し、実験室も見学させていただきま
その成果としてこれまでに、東部南海トラフの深海
したが、丁寧なご説明や質問に対するご回答に、皆さま
底地盤に対忚する構成式を開発されています。採
の実直なお人柄を感じました。大変お世話になりまし
取コアの試験結果とシミュレーション結果の比較等
て、ありがとうございました。(平成21年11月27日)
を通して、未知の領域であった深海底地盤に対す
■問い合わせ先ホームページ
清水建設 株式会社
■技術研究所の沿革
URL:http://www.shimz.co.jp/
(文化元年 初代清水喜助 江戸神田鍛冶町で創業)
昭和19年 設計部内に研究課(現:技術研究所)が設立される
昭和24年 研究部と改称
昭和35年 研究所と改称
昭和47年 東京都江東区に本館を新築
昭和59年 技術研究所と改称
平成15年 (創業200年)技術研究所新本館完成
7
←見学させていただいた
実験室入口
MHRC Newsletter
最近の論文紹介@MHRC
“Dependence of Depressurization-Induced Dissociation of Methane Hydrate Bearing
Laboratory Cores on Heat Transfer”
Hiroyuki Oyama, Yoshihiro Konno, Yoshihiro Masuda and Hideo Narita
Energy Fuels 2009, 23, 4995-5002 (DOI:10.1021/ef900179y).
Depressurization is considered a promising technique of producing gas from methane hydrate reservoirs.
This report presents a dissociation model and an experimental study of core on gas production to clarify the
dissociation characteristics during depressurization. The dissociation model can be expressed as a function of
heat transfer and mass transfer. In our experiments, we used an artificial sedimentary core and performed
several depressurization experiments under various production pressure conditions. The temperature,
pressure, and production volumes of gas and water were measured in response to time. By comparing the
developed dissociation model with our core experimental results, it is clearly demonstrated that the model can
describe the experimental results well and that the heat transfer from the surroundings is predominant in our
experimental case. In addition, we conclude that our developed model can predict the quantitative
characteristics during the gas production process from core.
-2
メタンハイドレート(MH)胚胎層からの天然ガス
Overall dissociation rate coefficient [s ]
10
-1
生産手法として有力な手法と考えられている減圧
法について、新しい分解モデルの構築とコア実
験との比較から、MHの分解特性を明らかにする
ことを試みた。
これまで広く使用されていた分解モデルは、
オートクレーブ内の水・ガス・MH系で導出された
分解速度定数 [1] をもとにしており、砂で構成され
-3
10
-4
10
-5
10
-6
10
Experimental results.
Fitting result.
-7
10
た堆積層の孔隙内におけるMHの分解過程を記
0
2
4
6
8
10
Production pressure [MPa]
述するものではなかった。
図 生産圧力とMH分解速度定数の実験値とモデルによる
フィッティング結果
本研究で構築した分解モデルは、生産圧力一
定条件下のコア内部でのMHの分解を、外部か
を導出し、その値とモデルにより求められる分解
らの熱伝達と減圧による物質移動を組み込んだ
速度定数との比較から確認した。横軸を生産圧
形で記述した。分解速度は、次式で表現される。
力、縦軸を分解速度定数とした比較結果を図に
示す。この図から構築したモデルは、減圧過程が
終了し生産圧力で一定となった状態における、
各生産圧力とMH分解速度定数の関係を適切に
この式において、右辺の中括弧内は減圧による
記述できることが示された。
これにより生産圧力一定状況では、メタンハイ
物質移動の影響を表し、その前の定数項は入熱
による分解を表している。
ドレートの分解が伝熱により律速されることを理論
孔 隙内 に MH を 生成 さ せ た 模擬 堆 積 物を、
的に明らかにした。
MH胚胎層の原位置圧力・温度条件において、
各種の生産圧力に減圧してMHを分解させる実
[1] Clarke, M.; Bishnoi, P. R. Can. J. Chem.
験を行った。そして、コアの各部における温度と
Eng. 2001, 79, 143–147.
圧力、加えて産出するガスと水の時間変化を測
Reprinted with permission from Energy Fuels
定した。モデルとの比較は、測定で得られたガス
2009, 23, 4995-5002 (DOI:10.1021/ef900179y).
Copyright 2009 American Chemical Society.
の時間変化量から、孔隙内MHの分解速度定数
8
No.2
研究者クローズアップ
メタンハイドレート研究における先端研究者を紹介する
よって全然違う。だから、やってて飽きないです。
「研究者クローズアップ」第2回目は、山口大学大学院理
■将来的な展望をお聞かせください。
工学研究科助教の吉本憲正先生に、お話を伺いました。
これまでのテーマに加えて、最近は地盤中の物
■では、まず研究テーマから、教えてください。
質移動に興味があって、今やり始めています。もう
土の“中”にあるメタンハイドレートを取り出すと、
ひとつ、メタンハイドレートの研究を始めてからは土
土がどう変形するのか、どういう影響を及ぼすのか
木関係以外の分野の人と知り合って話をして、全く
を実験的に調べています。また、その実験結果をも
違う領域との間を埋めることが楽しくなってきまし
とに土の変形を予測するためのモデルやシミュレー
た。土が中心ではあるけれども、ちょっと半分違う領
ション用の解析コードを開発しています。
域、研究がやりたいなと思っています。
■具体的には?
■ところで、マイブームなどありますか?
立方体の試料の変形の様子を横からデジタルカ
ジョギングをしています。1年半ぐらい前から走り
メラで撮るんです。その画像から変形の度合を観
始めて、11/8の下関海響マラソンには学生と一緒
て、試料全体の変形をとらえていきます。温度や圧
に初めて出て、フルマラソンを完走しました。
力など全てをコントロールした中で模型実験をし
■では、子供の頃になりたかった職業は?
て、ハイドレートの分解により土がどのように変形す
(しばらく考えてから)本屋さんになりたかったで
るのかを観察します。さらに、それと同じ条件で解
すね。本が好きなので、そうすれば、一日中本を読
析をしていけば、自分達の作っているモデルの信
んでいられると思っていました(笑)
頼性を高めていけるんじゃないかと思っています。
■最後に、読者へのメッセージをお願いします。
■研究の目的は?
地盤工学の研究はすごく夢があるテーマだとい
その模型実験で得られた結果と、我々が作って
ろんな意味で思うんです。新しいことに挑戦できる
いるモデルと、どれだけ近い結果が出るのかを早く
し、うまくいけばすごく社会の役に立つ。自分はこの
見たいなと。最終的に目指しているのは、できるだ
テーマに出逢えて恵まれましたが、なかなか出逢え
けシンプルで、対忚性があって、精度が高い変形
ないこともあると思います。だから、そういうテーマに
のモデルを開発したいというのがありますね。
出逢えた人は大事にして、チャンスを活かしてほし
■メタンハイドレートという研究テーマは?
いと思います。
例えば土の上に道路や建物を造るのは、外的な
学生さんの人物評によると、“妥協しない”先生とのこと
作用…、外部に力が作用して土が変形する。だけ
ですが、お話ししているとにこやかな笑顔が印象的でし
ど、ハイドレートの場合は中にあるものがなくなる。
た。学生さんの指導についても常日頃考えておられるご
だから、内的な作用で土がどう変形するかっていう
様子で、これから若い研究者をたくさん育てていかれる
のは、新しい視点というか面白いなって思います。
方なのだなと思いました。快く忚えていただき、ありがとう
■土の研究の魅力って?
ございました!
(平成21年11月18日) ■連絡先
まったく同じものがないんですね。場所々々に
山口大学大学院理工学研究科
環境共生系専攻地盤工学研究室
吉本 憲正(よしもと のりまさ)
URL:http://geotech.civil.yamaguchi-u.ac.jp/
1973年 兵庫県たつの市生まれ
1994年4月 山口大学工学部社会建設工学科編入学
1998年3月 山口大学大学院工学研究科社会建設工学専攻博士前期課程修了
1998年4月-2000年7月 (株)ニュージェック(大阪)
2000年8月-2006年3月 山口大学工学部社会建設工学科 助手
2006年4月- 山口大学大学院理工学研究科環境共生系専攻 助手
2007年1月 博士(工学)取得
(2007年4月- 助教)
9
MHRC Newsletter
MH基礎講座
■メタンハイドレート層の力学特性
(忚力のピーク値)や剛性(載荷初期の曲線の傾
天然メタンハイドレートの開発時において,貯留
き)が大きい。これは,生産時,メタンハイドレート
層や周辺地盤の力学的な挙動(変形など)は,海
の分解により,貯留層の強度や剛性が低下するこ
洋環境やガスの生産性に対して影響をおよぼす
とを示唆している。
可能性が指摘されている。そのため,安全かつ経
室内実験により得られた力学特性を解析し,数
済的な生産を実現するには,メタンハイドレート層
値シミュレータに導入することで,生産時の海底地
の強度や剛性(変形のしにくさ)に代表される力学
盤の変形挙動を評価することができる。
特性を解析し,生産時の海底地盤の挙動を評価
10
しなくてはならない。
天然のメタンハイドレート層コアは稀尐であるた
メタンハイド
レート飽和率
55 %
8
軸差応力 (MPa)
め,人工的に作製した砂質堆積物の中にメタンハ
イドレートを生成させた模擬試料を使用して,力学
特性を実験的に取得することが多い。力学特性に
影響する因子(条件)としては,試料に含まれるメ
タンハイドレートの量,砂の種類,間隙率,周囲か
6
41 %
26 %
4
0%
2
ら受ける圧力,温度などが挙げられる。図は円柱
0
形(直径5cm,高さ10cm)の模擬試料を軸方向に
0
圧縮したときの忚力(圧縮荷重/断面積)とひず
2
4
6
8
10
軸ひずみ (%)
み(縮み量/初期の試料高さ)との関係である。試
図 模擬試料の応力-ひずみ関係
料のメタンハイドレート飽和率(間隙内に占めるメ
(生産モデル開発チーム 宮崎 晋行)
タンハイドレートの体積比率)が大きいほど,強度
お し ら せ
●
北海道サイト、つくば西サイトでは、ポスドク、テクニカルスタッフを募集しています。詳しくは、
ホームページ(http://unit.aist.go.jp/mhrc/)の人材募集をご覧下さい。
●
本研究センターでは、メタンハイドレート研究に関する出前講義を実施しています。ご希望の
方は、メタンハイドレート研究アライアンス事務局(
)まで、ご連絡
下さい。
●
本研究センターでは、2010年2月にメタンハイドレート研究に関する総合シンポジウムを企画
しています。詳しくは、ホームページ(http://unit.aist.go.jp/mhrc/)をお訪ね下さい。
10
No.2
■メタンハイドレート研究関連イベントカレンダー
開催日時
イベント
場所
主催・事務局
URL
American Geophysical http://www.agu.org/meetings/
アメリカ・サンフランシスコ
2009/12/14-18 AGU 2009 Fall Meeting
Union(AGU)
fm09/
第1回メタンハイドレート総合シンポジ 東京・産総研臨海セン 産総研メタンハイドレート
2010/2/16
http://unit.aist.go.jp/mhrc/
ウム(CSMH-1)
ター
研究センター
American Geophysical http://www.agu.org/meetings/
アメリカ・ポートランド
2010/2/22-26 2010 Ocean Sciences Meeting
Union(AGU)
os10/
2010/3/1-3
2010/3/2-3
GeoX2010, 3rd International
Workshop on X-ray CT for Geoma- アメリカ・ニューオーリンズ
terials
東京・東京海洋大学
Blue Earth '10
品川キャンパス
Louisiana State Univ.
(LSU) & US Naval
Research Lab. (NRL)
海洋研究開発機構
(JAMSTEC)
2010/3/15
GCOE International Symposium
東京・慶忚義塾大学 慶應義塾大学グローバル
"Clathrate Hydrates and Technol日吉キャンパス
COEプログラム
ogy Innovations"
2010/3/21-25
Spring 2010 National Meeting &
Exposition
2010/3/26-29 日本堆積学会2010年茨城大会
http://www.cee.lsu.edu/geox2010/
workshop/
http://www.jamstec.go.jp/jamstec
-j/maritec/rvod/blue_earth/2010/
http://www.gcoes4design.keio.ac.jp/event/
アメリカ・サンフランシスコ
American Chemical
Society(ACS)
http://portal.acs.org/portal/acs/
corg/content
茨城・茨城大学
日本堆積学会
http://sediment.jp/01member/
nos0287.html
2010/4/11-14
2010 AAPG Annual Convention &
アメリカ・ニューオーリンズ
Exhibition
American Association
of Petroleum Geolohttp://www.aapg.org/neworleans/
gists(AAPG)
2010/5/2-7
EGU General Assembly 2010
European Geosciences http://meetings.copernicus.org/
Union(EGU)
egu2010/
オーストリア・ウィーン
2010/5/3-6
2010 Offshore Technology Conferアメリカ・ヒューストン
ence(OTC 2010)
Offshore Technology
http://www.otcnet.org/2010/
Conference
Institute of Geological
7th International Workshop on
http://www.gns.cri.nz/news/
2010/5/10-12 Methane Hydrate R&D "Fiery Ice ニュージーランド・ウェリントン and Nuclear Sciences
conferences/
(GNS Science)
from the Seas"
日本地球惑星科学連合2010年大会
千葉・幕張メッセ
日本地球惑星科学連合 http://www.jpgu.org/meeting/
2010/5/23-28
(JpGU Meeting 2010)
日本エネルギー学会
http://www.jie.or.jp/ngas/
第40回GH研究会(記念大会)
未定
2010/5/
gashydrate/ivento_0
GH研究会
2010/6/6-11
Gordon Research Conference:
Natural Gas Hydrate Systems
アメリカ・ウォータービル
http://www.grc.org/
Gordon Research Conprograms.aspx?
ferences
year=2010&program=naturalgas
2010/6/9-10
石油技術協会平成22年度春季講演
会
福岡
石油技術協会(JAPT)
2010/6/20-26 ISOPE-2010
中国・北京
2010/6/22-25
2010 Western Pacific Geophysics
Meeting
台湾・台北
2010/7/5-9
7th Annual General Meeting,
AOGS 2010
インド・ハイデラバード
http://www.japt.org/
The Int. Soc. of Offhttp://www.isope.org/
shore & Polar Eng.
American Geophysical http://www.agu.org/meetings/
Union(AGU)
wp10/
第19回日本エネルギー学会大会
AGU 2010 Meeting of the Americas
Asia Oceania Geosciences Society
(AOGS)
未定
日本エネルギー学会
ブラジル・イグアスフォール American Geophysical
Union(AGU)
ズ
http://www.jie.or.jp/
http://www.agu.org/meetings/
ja10/
2010/9/5-9
日本機械学会2010年度年次大会
名古屋
http://www.jsme.or.jp/kouen.htm
2010/9/5-10
12th International Conference on
the Physics and Chemistry of Ice 札幌・北海道大学
(PCI-2010)
2010/7/
2010/8/8-13
日本機械学会
10th International Conference on
ロシア・バイカル湖
Gas in Marine Sediments
日本地質学会第117年学術大会
富山・富山大学
2010/9/18-20
(富山大会)
2010年度日本地球化学会年会
未定
2010/9/
2010/9/6-12
2010/12/13-17 AGU 2010 Fall Meeting
2011/7/17-21
7th International Conference on
Gas Hydrates(ICGH2011)
アメリカ・サンフランシスコ
スコットランド・エディンバラ
11
http://www.asiaoceania.org/
society/index.asp
http://
Organizing Committee
www.lowtem.hokudai.ac.jp/PCIof PCI-2010
2010/
Limnological Institute
http://lin.irk.ru/gims10/
of SB RAS
http://www.geosociety.jp/
日本地質学会
okayama/content0001.html
日本地球化学会
http://www.geochem.jp/
American Geophysical
http://www.agu.org/meetings/
Union(AGU)
Organizing Committee
http://www.icgh.org/
of ICGH2011
O
OT
HI
IG
OR
T
今年も、11月第三木曜日にボージョレ・ヌーヴォーが
が、あるワインバー主催の「ジビエと古酒」と称されたフラ
解禁された。日本中で、どれだけの人が飲んだのだろう
ンス産ワイン会へ参加した時のこと。私は、あくまでも「単
か。ちなみに、私は飲んでいない。飲む機会がなかっ
にワインが好き」というだけで蘊蓄を語れるほどの通では
た。買ってまでも飲みたいとも思わなかった。まあ、どち
ない。が、92年物の白ワインを飲んだときは、空気中で
らでもあるのだが・・・。
はあまり濃い香りを感じられなかったのに、口の中に入る
と「フワァー」と香りがひろがり、それが鼻を抜けていく。そ
ところで、みなさんは北海道池田町にあるワイナリーを
の様を何とも言えぬ心地で味わった。
ご存じだろうか。北海道に住んでいる人なら知らない人
はいないと思うが、そこでは「世界一遅い」と自負(?)し
その後も、4種類の赤ワインがでてきたが、どれもすば
ている「十勝ワイン」のヌーヴォーが12月1日に解禁と
らしいものであった。中でも一番印象に残ったのが、85
なった。
年物の「ボルネ」(正式名は忘れたが)とかいう赤ワインで
ある。
この地方は、冷涼な気候のためブドウの収穫時期が
遅く、どうしてもこれ以上は早く販売出来ないとのこと。ま
まろやかでさわやかな味わいがあり、まるで質の良い
た、「すこしでもおいしいワインを」と願いながら研究をし
ヌーヴォーのように思えた。ソムリエから、「これは保存が
ているこのワイナリーに勤務するある方は、「ヌーヴォー
大変よかったためゆっくり熟成し、このように若々しい味
の一番の魅力は、味わいながらこの夏の天候を思い出
が保てた」と説明があった。「う~ん、わたしみたい・・」
し、自らの1年の記憶をよみがえらせることにあると思う。
えっ?なんか余計なこと言った?
ということで、久しぶりにおいしいワインと料理で至福
今年は道産ワインヌーヴォーで、あなたの1年を振りか
のひとときを過ごし、余韻にひたりながら帰途に着いたの
えってみませんか?」と語っている。
であった。
「は~い、買いに行ってきま~す!」で思い出したの
■編集後記
■お問い合わせ
試行錯誤しながら、第2号を発行するに至りました。取
独立行政法人 産業技術総合研究所
材へお伺いしても、恥ずかしながら、初歩的なことを聞い
メタンハイドレート研究センター
たり、また教えていただいたりと未熟な私たちに笑顔で
忚じてくださったみなさま、感謝申しあげます。ありがとう
〒062-8517
ございました。
北海道札幌市豊平区月寒東2条
17丁目2-1
そんなこんなしながらも、また次号のためにいろいろと
考えておりますので、ご愛読いただいているみなさまに
〒305-8569
は情報発信の場として活用していただきたいと思いま
茨城県つくば市小野川16-1
す。
Phone: 011-857-8945
当研究センターでは、公告・人材募集等も行っており
FAX: 011-857-8944
ます。また、身近なことから研究の事、いろいろおもしろ
い話などもお待ちしています。
URL: http://unit.aist.go.jp/mhrc/
2009年12月1日発行
■発行者
■企画・編集
MHRC Newsletter
独立行政法人 産業技術総合研究所
メタンハイドレート研究アライアンス事務局
No. 2
メタンハイドレート研究センター
12
(古娘)
Fly UP