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ChinL-R - のるぷろライトシステムズ
おとがい筋電極から 睡眠脳波は取れるか? (小児への応用) のるぷろライトシステムズ 大木 昇 質問・連絡先 大木 昇(のるぷろ) Mail [email protected] 【 目 的 】 最近、小児の睡眠について関心が深まっ ているが、正常小児の睡眠をPSG以外に 簡単に計測する手法がなく、小児睡眠 を脳波を含めて手軽に計測することで 研究が進むと考えられる。最近の高性 能PSG機器ではアース電極の他にシステ ムリファレンス電極(以下R電極)を額に 装着する。このR電極とおとがい筋電極 間の電位には脳波が含まれていると思 われる。 今回、正常小児においておとがい筋とR 電極間の信号を取り出し、通常のC3,C4 の脳波と比較して、睡眠脳波として利 用できるかを比較し、その応用につい て検討する 。 【 手法(収録)】 1.R電極を額の上部に装着する。 アースは額の下部とする。(Fig.1) 2. おとがい筋電極は通常PSGと同様に装着。 3. 通常のPSG比較できるように、C3 C4 O1 O2 LOG ROG ECGなども装着する。 4. 収録は高機能ポリグラフ装置ポリメイト AP1132(デジテックス社製)を使用し、 サンプリング周波数500Hzでリモンタージュ できるように電極単位で行った。 【 手法(波形表示)】 1.おとがいLとR電極の誘導(ChinL-R)を作成。 時定数を0.5秒、HFFを60Hzに設定する。 2.おとがいRとR電極の誘導(ChinR-R)を作成。 時定数を0.5秒、HFFを60Hzに設定する。 3. 通常のおとがい筋誘導も作成する。 4. おとがい筋誘導で時定数を0.5秒、HFFを 30Hzにした誘導をChinLとして作成する。 5. 従来の簡易法として検討されていたA1-A2誘 導を参考として0.5秒、HFFを60Hzで作成。 Fig.1 誘導法 R ChinR-R 時定数 0.5sec HFF=30Hz E ChinL-R 時定数 0.5sec HFF=30Hz Chin 時定数 0.03sec HFF=100Hz ChinL 時定数 0.5sec HFF=30Hz ChinR ChinL 誘導波形例(バイオCAL時) 00:00:41 R E ChinR-R ChinL-R Chin ChinL C3- C3-A2 50.0 C4- C4-A1 50.0 ChinL- ChinL-R 50.0 ChinR- ChinR-R 50.0 O1-A2 50.0 O2-A1 50.0 A1-A2 50.0 LOG 100.0 ROG ROG 100.0 Chin Chin 25.0 ChinL 10.0 ECG 500.0 O1O2A1-A2 LOG Chin ECG 1sec/div EyeLeftRight 目を左右に動かすバイオCAL 【 方 法 】 ボランティア小児(6才女児)を被験者として、 自宅にてポリメイト(AP1132)を使用して3回終 夜PSGを計測した。2回は比較のため通常のPSG モンタージュパターンも併用したが3回目はお とがい筋からの収録のみと画像収録を行った。 収録時期は2007年4月から7月である。 結果を波形で比較し、その違いを定性的に評価 すると同時に、10秒ごとの周波数パワーをFFT解 析算出、4帯域トレンドとして作成し、帯域パ ワー値をC3,C4との相関を調べた。 覚醒時脳波 00:00:30 C3-A2 50.0 C4-A1 50.0 ChinL-R ChinL-R 50.0 ChinR-R ChinR-R 50.0 O1-A2 50.0 O2-A1 50.0 A1-A2 A1-A2 50.0 LOG 100.0 ROG 100.0 Chin 25.0 ChinL ChinL 10.0 ECG 1000.0 1sec/div α波は出現しにくいと思われる。周波数的にはβ波が優位である。 EOGの影響が出やすい。EMG成分が入ることも重要 A1-A2でも同様にαが少なくβが優位である。 STAGE1の脳波 00:05:00 C3-A2 50. C4-A1 50. ChinL-R ChinL-R 50. ChinR-R ChinR-R 50. O1-A2 50. O2-A1 50. A1-A2 A1-A2 50. LOG 100 ROG 100 Chin 25. ChinL ChinL 10. ECG 100 1sec/div 連続したVertex Sharpは出現していない。 θ波は一部出現。 EMGでマスクされている可能性がある。 A1-A2では明確な波形がでていない。 STAGE2の脳波 04:00:00 Spindle C3-A2 50.0 C4-A1 50.0 ChinL-R ChinL-R 50.0 ChinR-R ChinR-R 50.0 O1-A2 50.0 K-Complex1 O2-A1 K-Complex2 A1-A2 50.0 A1-A2 50.0 LOG 100.0 ROG 100.0 Chin 25.0 ChinL ChinL 10.0 ECG 1000.0 1sec/div Spindleは出現しない。K-Complexは逆相にでるものとでないものがある。 A1-A2では明確な波形がでていない。 STAGE3,4の脳波 02:21:30 C3-A2 50.0 C4-A1 50.0 ChinL-R ChinL-R ChinR-R 50.0 ChinR-R 50.0 O1-A2 50.0 O2-A1 50.0 A1-A2 A1-A2 50.0 LOG 100.0 ROG 100.0 Chin 25.0 ChinL ChinL 10.0 ECG 1000.0 1sec/div δ波は逆相に出現する。振幅は若干低めに出る。C3,C4に入っているα波はでない。 ChinLに小さな波形が入る。A1-A2ではδ波はでてこない。 REMの脳波 06:09:45 C3-A2 C4-A1 ChinL-R ChinL-R ChinR-R ChinR-R O1-A2 O2-A1 A1-A2 A1-A2 LOG ROG Chin ChinL ChinL ECG 1sec/div REMsに同期してδ様の波形が入る。この波形は立ち上がりが急なことが特徴。 ChinLにもREMsに同期して小さな波形が入る。A1-A2では波がでてこない。 睡眠段階ごとのおとがい誘導波形一覧 Wake ST1 ST2 ST3,4 REM ChinL-R Chin ChinL 【 結果 】 1.3回の終夜計測でおとがい筋誘導から脳波をと りだし表示させることができた。(Fig.2) 2.各睡眠段階で特徴ある波形が導出されたが、こ れまでのR&K判定で利用する特徴波形とは異なる のでそのまま睡眠段階判定には利用できない。。 3.A1-A2誘導のみでは特徴的な波形が少ないため、 明確な睡眠段階の判定ができなかった。 4.10秒ごとの周波数解析トレンドを描くと、睡眠 リズムを示すトレンドを描くことができる。 5.帯域パワーの相関を調べるとδ波とθ波の相関 が高い傾向が見られた。 α波とδ波の終夜トレンド (1夜目) C3-A2 [sqrt(Power)] 500 C3-A2 α δ 375 250 125 0 1h 2h 3h 4h ChinL-R [sqrt(Power)] 500 5h α 6h δ波のパワーは小さい 7h 8h 7h 8h δ 375 ChinL-R 250 125 0 1h 2h 3h 4h 5h 6h REM時にδ波パワーが少し大きいのはREMsが入るため β波とθ波の終夜トレンド (1夜目) C3-A2 [sqrt(Power)] 500 β θ 375 C3-A2 250 125 0 1h 2h 3h 4h ChinL-R [sqrt(Power)] 500 5h 6h β 7h 8h 7h 8h θ 375 ChinL-R 250 125 0 1h 2h 3h 4h 5h 6h α波とδ波の終夜トレンド (2夜目) C3-A2 [sqrt(Power)] 500 C3-A2 α δ 0.0 375 250 125 0 1h 2h 3h ChinL-R [sqrt(Power)] 500 4h 5h α 6h 7h δ 0.0 375 ChinL-R 250 125 0 1h 2h 3h 4h 5h 6h 7h β波とθ波の終夜トレンド (2夜目) C3-A2 [sqrt(Power)] 500 β θ 0.0 375 C3-A2 250 125 0 1h 2h 3h ChinL-R [sqrt(Power)] 500 4h β 5h 6h θ 7h 0.0 375 ChinL-R 250 125 0 1h 2h 3h 4h 5h 6h 7h α波とδ波の終夜トレンド (3夜目) ChinL-R [sqrt(Power)] 500 α δ 375 ChinL-R250 125 0 1h 2h 3h 4h 5h 6h 7h 8h β波とθ波の終夜トレンド (3夜目) ChinL-R [sqrt(Power)] 500 β θ 375 ChinL-R250 125 0 1h 2h 3h 4h 5h 6h 7h 8h ChinとHR変動 (3夜目) Chin [Abs Mean] 20 15 10 5 0 1h 2h 3h 4h 5h 6h 7h 8h 1h 2h 3h 4h 5h 6h 7h 8h ECG [Abs Mean] 150 112 75 37 0 帯域パワーの相関 (1夜目) C3-A2とChinL-Rの散布図 β波相関 α波相関 80000 80000 y = 0.4316x + 3817.1 R2 = 0.3653 y = 0.3188x + 6021.3 R2 = 0.2351 70000 60000 60000 50000 50000 ChinL-R ChinL-R 70000 40000 40000 30000 30000 20000 20000 10000 10000 0 0 0 10000 20000 30000 40000 C3-A2 50000 60000 70000 0 80000 10000 20000 30000 40000 C3-A2 50000 60000 70000 80000 θ波相関 δ波相関 140000 400000 y = 0.3712x + 18589 R2 = 0.3355 350000 y = 0.5401x + 3451.1 R2 = 0.558 120000 300000 100000 ChinL-R ChinL-R 250000 200000 80000 60000 150000 40000 100000 20000 50000 0 0 0 50000 100000 150000 200000 C3-A1 250000 300000 350000 400000 0 20000 40000 60000 80000 C3-A2 100000 120000 140000 帯域パワー値の相関 (2夜目) C3-A2とChinL-Rの散布図 α波相関 β波相関 80000 80000 y = 0.4446x + 3156.3 R2 = 0.171 60000 60000 50000 50000 40000 y = 0.355x + 5187.9 R2 = 0.1082 70000 ChinL-R ChinL-R 70000 40000 30000 30000 20000 20000 10000 10000 0 0 0 10000 20000 30000 40000 C3-A2 50000 60000 70000 0 80000 10000 20000 δ波相関 30000 40000 C3-A2 50000 60000 70000 80000 θ波相関 400000 200000 y = 0.4828x + 14592 R2 = 0.1959 350000 y = 0.5024x + 3834 R2 = 0.3487 300000 150000 ChinL-R ChinL-R 250000 200000 100000 150000 50000 100000 50000 0 0 0 50000 100000 150000 200000 C3-A2 250000 300000 350000 400000 0 50000 100000 C3-A2 150000 200000 帯域パワー値の相関係数 C3-(ChinL-R) 1日目-α波 1日目-β波 1日目-δ波 1日目-θ波 2日目-α波 2日目-β波 2日目-δ波 2日目-θ波 0.604 0.485 0.579 0.747 0.414 0.329 0.442 0.590 C4-(ChinR-R) 0.501 0.435 0.510 0.662 0.349 0.275 0.520 0.565 δ波とθ波の相関が高い。高振幅波形を捕らえていると考えられる。 α波は計測条件で相関が変わっている(2日目は全体に悪い傾向) δ波で左上に外れるのはREMsが混入するため! 【 考察 】 1.おとがい筋誘導では、R電極がある前頭部にでて くる高振幅な脳波(δ波やθ波)を広くとらえ ることができる。 2.δ波は振幅は下がるが出現傾向は正確に反映し ている。 3.α波やVertexSharpなど後頭や頭頂にでる波形は 捕らえにくい。逆に眼球運動が入ることでREM判 定に利用できる。 4.周波数パワーでは相関がよくないが、それは眼 球運動が一部入るためと、前頭に出にくい波形 があるためと考えられる。 【 結論 】 1.おとがい筋誘導で、脳波及びおとがい筋電図を 同時記録することができた。時定数を変えるこ とでおとがい筋に混入するREMsも見分けること が可能だった。 2.睡眠段階の判定には、R&Kで判定する波形と特徴 と異なるのでそのまま睡眠段階判定には利用で きない。独自の波形を定義する必要がある。 3.今後、正常な大人でもこの方法で睡眠状態を把 握できるかを検討する。