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2004年度 和光大学総合文化研究所 公開シンポジウム
「戦前」としての今日
―文化の混淆、融解、
拒絶をめぐって―
Is this another “Interwar Period” today?
—Collision, Fusion and Rejection of Different Cultures—
後援: 町田市教育委員会 川崎市教育委員会
日時:2004年10月23日(土) 10時∼16時
会場:和光大学 J-301教室
<第一部> 報告 欧日米各国の第二次大戦前
(フランス)第二次大戦前のパリ
(ドイツ)ヨーロッパ統合の挫折と成就
(10時より)
杉本紀子(フランス文化)
―ロマン・ロランとシュテファン・ツヴァイクの出会いの意味について
伊藤光彦(ドイツ文化)
(イギリス、アイルランド)遅れてきた近代―アイルランド自由国のその後
吉川 信 (イギリス文学)
(日本)1930年代の美術雑誌をめぐって
三上 豊 (近現代美術)
(アメリカ)戦間期アメリカ合衆国の文化的多様性
余田真也(アメリカ文学)
<第二部>基調講演と討論
(13時より)
基調講演
加藤周一(評論家)
総合討論
司会 植村 洋(イギリス文学)
<懇親会>(無料)
シンポジウムの趣旨
近年の世界の状況を「グローバリゼーション」と捉える見方に私たちが慣らされて久しい。かつ
て「グローバルな」という形容詞は積極的な意味を託されて使われていたが、いつの間にか「グロ
ーバリゼーション」という言葉が時代を席巻し、しかもこの言葉を多少の批判めいた味付けなしに
使う人は少ないだろう。何故だろうか。
「グローバリゼーション」というのは資本主義の本質であるのだが、実態は現在の経済的巨人で
あるアメリカへの「一極集中化」を指していると誰でもが知っているからであろう。経済・軍事の面
で圧倒的に優位に立つアメリカが文化的にも他国を制圧しようとしている。今日先進国同士は一
応平和状態を保っているから経済侵略、軍事的覇権も直接的ではない。またたとえばイラクにお
けるように民主主義をもたらすのだという名目での強制にせよ、受け入れる側が侵略されている
という意識なしにむしろ喜んで受け入れている場合にせよ、異なる文化が入り込んで来る場合に
は必ずそれぞれの国が培ってきた文化との衝突が起きるのは言うまでもないことであろう。そうし
た自国の文化(これさえも過去における他文化との衝突、融合を繰り返した後に現在の形になっ
ている一時的なものに過ぎないのだが)が損なわれるという危機意識が「グローバリゼーション」と
いう事態を多少の恨の気持ちを持って受け止めさせているのではないだろうか。
したがって「グローバリゼーション」という総体的な状況の下で起きているのは実は「文化間の
衝突」なのである。「衝突」は文化の混淆、融合、拒絶等々を招来する。これは何も現代だけの
事例ではない。不可避的と選択的とを問わず、民族と民族が接触した時には必ず文化と文化の
交流が生じた。その交流が一方的な場合には戦争という直接的対決にはならないが、人々が自
分たちの文化に強烈なアイデンティティを付託している場合には今回のイラクのような人民の抵
抗を招くことになる。
このように異なる文化の出会いにはある摩擦が付きものであり、それが文化の次元に止まら
ず、文化の担い手であると自負する国と国の直接対決すなわち戦争を引き起こすことも稀では
なかった。したがって戦争が起こる際には文化の衝突が必ず起きていると考えられるし、異文化
との摩擦が人々の関心を集める時には、戦争の影を危ぶむべきなのである。このような事態は
過去にも幾度となく繰り返されてきた。摩擦が決定的な破局を招来する前に、私たちは過去に
学ばなければならない。
私たちが参考にすべき最も近い時代、それは第二次世界大戦直前の世界ではないだろうか。
夙に言われていることであるが、現代は1930年代と奇妙に似通っているようだ。そこで今回のシ
ンポジウムでは第二次世界大戦直前の時代に、日、欧、米で文化はどういう状況にあったか、戦
争を回避する――文化の衝突を和らげ決定的破局に到らないようにする――ために人々は何
を考え何を言い何をしていたのかを考えてみたい。また逆に自文化の「純血」を守るために戦争
あらざるべからずと気を吐いていた人々の存在も忘れてはならない。昨今の日本の保守回帰、
「日本の伝統を守って何が悪い」式の自国中心蒙昧主義と同様の風潮も蔓延していたのであ
る。自覚的に国を戦争へと突き進ませる確信犯もいれば、自分ではそのつもりもなく戦争を招き
寄せてしまう動きをする人もいる。
このような錯綜した状況を日本、イギリスなかでもアイルランド、フランス、ドイツ、アメリカに見
る。またそれを総括し現代の状況と比較考察するために、当代第一級の評論家である加藤周一
氏に総合的視点から時代と文化についてお話しをしていただく。
加藤周一氏 紹介
1919年生まれ、東京帝国大学医学部卒業。フランス留学の後、医業と文学に従事するが、1958年
以降は文筆業に専念。「西洋」と「東洋」、「過去」と「現在」をつなぐ架け橋として幅広い学識と鋭い洞
察力に基づく発言は国内外から注目されている。七ヵ国語に翻訳された『日本文学史序説』(筑摩書
房,1975-80、第七回大佛次郎賞を受賞)をはじめ著書多数。
『グローバル化で文化はどうなる』(藤原書店,2003)紹介文より抜粋
報告要旨
(フランス)第二次大戦前のパリ
杉本紀子(フランス文化)
両次大戦間のパリは文化の坩堝であった。公認の文化がタブラ・ラサを迫られると同時に、民衆
の娯楽に過ぎないとみなされていたシャンソンやレビューが「大衆文化」としてクローズアップされる
一方で、ロシア文化がパリを初めとして西欧を瞠目させたし、イギリス、アメリカ、中東欧の作家や画
家たちがパリに来てフランス文化と直接に触れ合った。この「狂騒時代」を積極的に享受するフラン
スの文化人は多かったが、これを“フランス文化の危機”と捉える人々もいたのである。またこの中に
あって長い間対等の人間とみなされて来なかった黒人たち(植民地から来ていた学生たちであった
が)が自らのアイデンティティを主張する動きを始めてもいた。今回は、たとえナチズムの手を借りて
でもフランス文化を守ろうとする人々と、二十一世紀の歴史・文化に重要な役割を担うことになる黒人
文化の当時の状況を見ることによって、「戦前」の時代を考えたい。
(ドイツ)ヨーロッパ統合の挫折と成就
―ロマン・ロランとシュテファン・ツヴァイクの出会いの意味について
伊藤光彦(ドイツ文化)
ロマン・ロラン(1866-1944)とシュテファン・ツヴァイク(1881-1942)は共に「ヨーロッパの亡命者」とし
て世を終えたが、生涯を通じ、理性的でヒューマニステイックな「統合ヨーロッパ」を追求し続けた。二
十世紀前半の二度にわたる大戦は二人の希望を打ち砕いた。今日、25ヵ国に拡大されたEU(ヨー
ロッパ連合)はロラン、ツヴァイクが求めた「世界市民の集合としてのヨーロッパ」の悲願の何を満た
し、何を挫折のままに放置しているか。フランス的およびドイツ的文化世界の知性を代表しつつ1910
年代から30年代まで続いた両作家の交流、出合いの意味を今日の視点で考えたい。
(イギリス、アイルランド)遅れてきた近代―アイルランド自由国のその後
吉川 信 (イギリス文学)
1922年に成立したアイルランド自由国は、残念ながら北部アルスター地方内の6州を切り離すこと
で出発せざるを得なかった。英本国からの入植者をマジョリティとした地域であるだけに、自由国に
とっては苦肉の選択となったわけだが、その後の内戦はIRAの分裂を生み、近年武装解除の方向に
進んでいるとはいえ、今日まで問題を残している。30年代のアイルランドは、他のヨーロッパ諸国が
隣国との戦争に備えていたのに比して、もっぱら自国内の平和を模索することに忙しかった。EUの
通貨統合で潤っている今日のアイルランドもまた、30年代のそれに類似していないか。自国の多民
族化に今更気をもんでいるような後進性が、むしろ気になるのである。
(日本)1930年代の美術雑誌をめぐって
三上 豊 (近現代美術)
1937年に刊行された『美術時代』と36年10月刊行の『雑記帳』を中心にとりあげる。この時期、美術
雑誌はバブリーな時代の雰囲気を引きずっていた が、37年、日中戦争の勃発によりその誌面には
「戦い」の文字が頻発してくる。当時の状況のなかで『美術時代』は網羅的な誌面を作り4号で消え、
戦後も ほとんど注目されることはない。『雑記帳』は14号まで続き、近代美術史のスター画家松本竣
介が刊行していたこともあり、ミニコミ紙だが戦後も貴重な資料としての扱いをうけている。この2誌を
比較することで、美術雑誌というメディアの性格、戦後美術史の方法論を検討してみたい。
(アメリカ)戦間期アメリカ合衆国の文化的多様性
余田真也(アメリカ文学)
戦後の好景気と消費文化を享受する狂乱の1920年代から、大恐慌の影響下にあえぐニューディ
ール期の30年代へと綴られるアメリカ合衆国の通史は、近年の研究にならえば、人種主義から文化
多元主義へと文化の論理が移行する時期として要約できる。本発表では同時期の文化産物にみら
れる未開趣味や異種混淆を例にとりながら、戦間期アメリカにおける文化の多様性に関する素描を
試みる。また、現代における多言語・多文化主義との異同についても考察してみたい。
参加費無料 予約不要
(直接会場へお越しください)
お問い合わせ
〒195-8585 東京都町田市金井町2160 和光大学 総合文化研究所
℡ 044-989-7478(総合文化研究所) e-mail [email protected]
℡ 044-989-7497(学部事務室)Fax 044-988-1435
ホームページ http://www.wako.ac.jp/souken/
交通 小田急線<鶴川>駅より徒歩15分 または鶴川駅前からタクシー5分
<鶴川>は急行が止まりませんので、下り<新百合ヶ丘>または上り<町田>で各駅停車に乗り換えてください
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