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働きたい女性を迎える職場に求められること
経済産業省補助事業 平成26年度補正地域中小企業・小規模事業者人材確保等支援事業 働きたい女性を 迎える職場に求められること 「千葉・働きたい女性と地元企業の応援プロジェクト」では、これからお仕事を始めたい 女性(主婦)の「はじめの一歩」となる機会づくりに取り組んできました。 本編は千葉県内の中小企業と女性(主婦)のそれぞれに行った調査結果の一部や事例をまと めた、働きやすい職場をつくるヒント集です。 2016年3月 株式会社リクルートジョブズ ジョブズリサーチセンター ヒント1 働きやすい 勤務体系づくり 勤務時間を柔軟にする 現在働いている女性(就業者)でも、始業・終業・1日の就業時間についての「現在」と 「理想」には差がみられます。これから働こうとする女性(非就業者)の「理想」を就業者の 「現在」や事業所(パート)の実態と比べると、さらにその差は目立ちます。たとえば、1日 の就業時間をみると、非就業者の「理想」は「5時間程度」が31.7%ともっとも多いですが、 就業者の「現在」は14.2%、事業所(パート)の実態は「5時間~6時間未満」が7.9%です。 業務の繁閑にあわせて始業・終業時間を変更することや、早朝や夕方以降に行っている業務 を他時間帯に変更するなど、業務の見直しも勤務時間を柔軟にすることにつながります。 就業者(現在)n=409 (%) 50.0 就業者(理想)n=409 非就業者(理想)n=779 50.0 46.0 37.4 40.0 事業所(パート) n=328 (%) 41.5 44.2 40.0 30.0 30.0 24.4 25.5 20.0 16.3 19.1 15.6 8.8 6.6 6.8 3.2 2.01.8 10.0 0.0 8:00 以前 8.3 5.6 8:00 【終業時間】 10.3 9.8 20.0 11.5 0.7 1.7 0.5 8:30 9:00 就業者(現在)n=409 9:30 10:00 9.5 7.1 4.4 10:30 就業者(理想)n=409 11:00 以降 14.3 11.3 10.0 3.4 2.4 0.0 3時台 3時台 ~ ~ 7時台 7時台 8時台 8時台 9時台 10時台 10時台 11時台 11時台 9時台 ~ ~ 18時台 18時台 不明 不明 非就業者(理想)n=779 (%) 40.0 34.5 30.0 20.0 (%) 28.6 30.0 18.8 16.1 8.3 5.6 10.0 0.0 15:00 以前 15:00 19.3 17.3 15.1 18.6 20.0 14.7 13.7 11.7 9.8 3.4 2.4 2.2 15:30 2.9 3.7 16:00 8.8 9.3 5.0 3.9 16:30 17:00 17:30 事業所(パート) n=328 28.0 18.3 15.5 14.3 12.2 8.3 5.0 4.4 2.9 3.3 1.5 0.6 18:00 18:30 19:00 以降 8.5 10.0 3.0 0.0 10時台 15時台 16時台 17時台 18時台 19時台 ~ ~ 14時台 22時台 【1日の就業時間】 不明 (%) 40.0 就業者(現在)n=409 就業者(理想)n=409 非就業者(理想)n=779 31.7 事業所(パート) n=328 37.5 30.0 (%) 25.2 22.2 18.3 20.0 13.4 11.7 10.0 14.2 20.8 18.9 22.7 40.0 21.0 17.4 30.0 13.9 8.5 7.7 6.1 20.0 10.4 9.8 10.0 3.9 12.8 12.2 15.2 14.3 7.9 1.5 0.6 0.0 3時間 程度以内 4時間 程度 5時間 程度 6時間 程度 7時間 程度 8時間 程度 8時間 程度より 長い 0.0 5時間 5時間~ 6時間~ 7時間~ 8時間 未満 6時間 7時間 8時間 以上 未満 未満 未満 不明 出典:「千葉県中小企業における既婚女性(主婦)の就業実態調査<事業所編>」、「千葉県における既婚女性(主婦)の就業実態・意識調査<個人編> 」ともに2015年6月、 株式会社リクルートジョブズ ジョブズリサーチセンター http://jbrc.recruitjobs.co.jp/index.html -1- 早退や不定期の休みにも対応できるようにする 女性(主婦)が理想的な働き方のために勤務先に求めることをみると、転勤や配属先など勤 務場所にかかわるもの、休日・時間など勤務体系にかかわるもの、賃金(収入調整)が上位に あげられました。特に、これから働こうとする女性(非就業者)の方が、就業者よりも勤務場 所や賃金(収入調整)について求めていることがうかがえます。また、子供がいる非就業者の 67.7%は「学校行事による早退、通院など本人の休日希望にあわせた勤務体系」を求めてい ることもわかりました。同じ子供がいる就業者よりも割合が高いのは、現在の生活と就業後の 生活の変化が想像しづらく不安が大きいということも考えられます。 突発的な勤務時間・勤務日の変更は制度による対応(半日休暇制度の導入など)もあります が、上手に対応できている職場は「何かあったら遠慮なく言ってね」といった声掛けをするな ど同僚・上司の理解・協力が得られるように工夫しています。 【理想的な働き方のために勤務先に求めること TOP5】 (%) 就業者_子供なしn=110 非就業者_子供ありn=604 非就業者_子供なしn=175 75.0 75.4 80.0 60.0 就業者_子供ありn=299 67.7 66.4 60.9 52.5 49.1 44.7 37.1 40.0 27.3 26.4 25.4 42.7 44.6 32.7 28.4 16.4 11.8 20.0 0.0 31.1 自宅から通勤で きる範囲での配 属の考慮 学校行事による 早退、通院など 本人の休日希望 にあわせた勤務 体系 夫の扶養範囲内 で就労できるよう 時間や収入など の調整に応じる こと 引っ越しを伴う転 勤はないこと 17.7 終業時間を通常 よりも早めること が可能なこと お仕事フェア 来場者の声 プロジェクトでは、2015年9月、2016年1月に千葉県内の各3会場で「お仕事フェア」を開催。各会 場に約20社の企業が参加し、来場者が企業の担当者と仕事内容や働き方について相談できる機会を設け ました。そこで「応募したい企業があった」女性に、応募したい企業の魅力を感じた点について聞くと、 「仕事内容」や「勤務時間」「勤務場所」に次いで、「出展者の印象」も上位にあがりました。特に求 職中の女性にとって、応募前に企業の担当者と話すことは応募への動機につながりやすいようです。 0.0 仕事内容 勤務時間 勤務場所 出展者の印象 勤務日数 休日休暇 福利厚生 その他 10.0 20.0 30.0 40.0(%) 37.9 37.4 26.4 23.6 16.5 11.0 10.4 3.8 「企業の担当者の方からいろいろお話が聞けて、働くことへの意欲がわきました」(求職中/39歳) 「企業の方と直接お話ができて、今後の就活に期待ができました」(求職中/40歳) 「じっくり企業の方と話せたので仕事内容が理解できました」(求職中/50歳) 「直接お話しできて良かったです」(育児休暇中/38歳) 「ブースの方のお話を聞いて、自分はこれからどうしたらいのかなどの悩みが少し解消できた感じがしました」 (求職中/無回答) 出典:「お仕事フェア」9月(2015年9月3,18,25日の3日間分)の来場者アンケートのうち該当設問回答者n=182 -2- ヒント2 働きたい 仕事づくり “事務的な業務”を創出する 事務職は現在働いている女性の職種の中でもっとも多く、また理想の職種としても1位にあ げられています。事業所側においても女性を「採用した職種」であり、今後も「採用したい職 種」でもあります。一見すると、双方の希望が同じで現状もその通り・・・何も問題がないように 思えますが、女性の採用が進まない原因のひとつとして「事務職は採用数が少ない」「事務職 がない」という事業所は少なくありません。 営業職や販売職、介護職などの業務に“事務的な業務”(資料作成、日程調整、伝票処理、受 発注管理など)がある場合、切り出して事務職をつくるという取り組みも始まりつつあります。 【現在と理想の職種 TOP5】 (%) 50.0 42.5 38.4 40.0 30.0 就業者(現在)n=409 就業者(理想)n=409 24.7 21.7 19.8 18.1 17.8 20.0 非就業者(理想)n=779 21.7 11.5 7.6 10.0 6.6 7.1 5.6 7.8 4.6 7.1 0.0 一般事務、 医療関連 ホールスタッ コンビニエン 専門職系の 雑貨・小物 スタッフ職 (医療事務 フ スストア・スー 事務・スタッ 販売 など) パー店員 フ職 書店員 レジ係 (スーパー など) 就業者(現在)n=409 1位 2位 3位 4位 5位 - - - 就業者(理想)n=409 1位 2位 5位 - 3位 4位 5位 - 非就業者(理想)n=779 1位 5位 - 4位 - 2位 - 2位 【採用した職種と今後採用したい職種】事業所n=421 (%) 60.0 55.6 51.8 採用した職種 今後採用したい職種 40.0 20.0 0.0 ヒント3 ヒント2 働きたい 働く きっかけづくり 仕事づくり 10.9 10.0 10.5 10.9 10.5 10.2 事務職 販売職 サービス職 生産工程・ 製造関連職 6.4 7.8 管理職 5.9 9.0 1.7 1.4 7.1 6.4 6.7 6.7 その他 不明 0.0 0.0 営業・渉外 建築・土木・ 運輸・通信 職 工事関連職 関連職 お試し就業の機会をつくる これから再び働こうとする女性の中には、仕事のブランクがあることに不安を抱いている方 が少なくありません。「お仕事フェア」に来場した女性からも「園児がいるので長いブランク があり、仕事探しをしてもなかなかだめだったけど、直接企業の方と話せたり、相談コーナー があって良かったです。」という声があがりました。 飲食店や販売など店舗があるところでは、客として従業員の仕事内容を一部見たり知ること もできますが、仕事内容を事前に見たり知ることは難しいのが現状です。 最近では介護施設の事業所を中心に応募前の「事前見学」として、実際の仕事内容や職場環 境の説明を積極的に行う動きもみられます。求職者の不安を解消する手段のひとつとして、就 業後のイメージを具体的にするお試し就業の機会を考えてみてはいかがでしょうか。 -3- ヒント2 ヒント3 お仕事フェア 働きたい 働く 参加企業・女性 きっかけづくり 仕事づくり CASE1 譲れないポイントを伝えミスマッチの防止を 株式会社富井 ●就業後のイメージを醸成しながら譲れないポイントを伝える 設立/1976年 所在地/千葉県松戸市金ケ作408-328 資本金/ 2,000万円 「お仕事フェア」に2015年9月、2016年1月の2回参加し、そ 事業内容/菓子製造・卸・販売 れぞれ来場した女性が応募・面接へ進み、採用につながったピー ナッツサブレー本舗の富井では、応募者との丁寧な話し合いにこ だわっている。販売店のスタッフとして、「土日出勤あり」「19 時まで勤務あり」は女性にとって決して“易しい条件”とは言い難 いが、同社にとっては必須の条件。そこで注目したいのが、同社 の応募者への対応である。 「まず、応募者の就業できる時間や希望する収入を伺います。 意外に明確な時間や収入を話せない人も少なくありません。そこ で、扶養控除の仕組みを踏まえた当社の3パターンの働き方を説 明し、応募者の居住地や家族の状況などを聞きながら、どのパ ターンで働けそうかを話し合います。」(採用担当 杉浦氏) 採用担当 杉浦 詳子氏 自社の説明の前に、まず応募者の状況をヒアリングしてから、 自社で働く場合について説明することにより、「土曜日なら子供 は部活だから大丈夫」といったように応募者も就業後のイメージ がわき、就業後のミスマッチを防いでいる。 同社には、出産後にまた働きたいと戻ってくる従業員や家族の 介護のために就業時間を調整して働き続ける従業員も存在し、女 性のライフステージに合わせた働き方に取り組んでいる。 CASE2 これまでの経験からできることを見出し、活かす仕事を 株式会社ニッカ 設立/1972年 所在地/千葉県浦安市日の出2-1-8 資本金/ 4,000万円 事業内容/直営小売店舗の運営 靴・雑貨の販売 右:ららぽーとTOKYO-BAY店 店長 田中 豊氏 左:高橋 智香さん ●前職との共通点を見つけることで自身の強みを活かす 2015年9月の「お仕事フェア」に参加し、REGAL SHOES ららぽーとTOKYO-BAY店で11月から働いている高橋さんは「未 経験の仕事に就くことは不安だった」という。それでも不安を乗 り越えられたのは“前職との共通点”。「前職のペットサロンはホ テルの中にあったこともあり、伝統・高品質を大事にするお客様 でしたが、現在のお客様も同じような方々だと気づいたとき、接 客が自然にできるようになりました。」という。 異業種・未経験の仕事でも、前職で培った経験との共通点を見 出すことで自身の強みを活かす仕事ができている。 「お子様がいらっしゃる女性を従業員に迎えることは初めてで した」と語る店長の田中氏に高橋さんについて聞くと、「お客様 への自然な接客や落ち着きがあるところは即戦力です。まだわか らないことがたくさんある時期ですが、お客様の前で“わかりま せん”という態度は一切出さずに、他のスタッフへすばやく聞く ことができる。これを教えなくてもできるというのはこれまでの 経験があるからでは」と、やはりこれまでの経験から培った強み について触れていた。周囲も認め、サポートすることで未経験の 不安も乗り越えられる職場づくりに取り組んでいる。 -4- 女性が Qqqq 活躍する職場 業務プロセスの見直しで女性が活躍できる仕事づくり ●女性の活躍で「生産性向上」と「クオリティアップ」を実現 株式会社BRAST 設立/2010年 所在地/千葉県佐倉市大田1906-1 資本金/ 2,000万円 事業内容/足場工事、保育・託児等 男性が多い建設業界でありながら、BRASTは女性が活躍でき る仕事づくりを推進している。代表取締役の柏原氏はそのきっ かけについて「サッカーW杯で女子が優勝し女性のパワーに注 目していた矢先に、足場を組みたいという女性の応募があり、 女性ができる仕事について考えた。」という。 従来、足場工事のプロセスは「施工設計図の作製」後、「足 場資材の準備」から始まり「足場の組立」「足場の解体」「足 場資材の片づけ」まで職人がすべて行っていたが、「足場の組 立」「足場の解体」に含まれる「メッシュシート張り」「メッ シュシート剥がし」の作業や資材の整理整頓を職人以外が担う ように切り出し、女性が活躍できる仕事を創出した(下図参 照)。 代表取締役 柏原 英輝氏 メッシュシートを張る女性職人 女性も含め、一連の業務を分担することにより、職人の業務 負荷は軽減し、残業時間も減少。さらに、事故につながらない ように慎重さが求められるメッシュシート張りは「きめ細やか な作業が上手な女性には向いており、本当にきれいに仕上げて いる。安全性の観点からみても安心。」(管理部人事課課長 鈴木氏)とクオリティもアップ。男性が多い足場工事現場の雰 囲気も明るくなったという。 ●会議室を改装したプチ保育から社内託児所へ 会社敷地内託児所『楽・楽』 またBRASTでは、事務を担当する女性従業員の妊娠・出産を きっかけに「会社として、本人の希望があれば働き続けられる 環境をつくろう」と会議室を改装、自分たちで子供の面倒をみ ながら仕事ができる職場づくりに取り組んだ。その後、保育士 常駐、遊具も完備した社内託児所を設立。現在では認可外保育 許可も取得し、地域の子供も預かっている。 社内託児所で女性従業員が働きやすくなったうえに、「採用 の場面でも、女性が働き続けられる職場という好印象を持って もらえるようになった」(柏原氏)。 さらに2016年2月には「おふくろ食堂」として地域開放型の 社員食堂もオープン。朝食も夕食も育児・家事で慌ただしい主 婦・ママ従業員にとって、昼食は自分のペースで食べられる貴 重な時間。リラックスできる空間・時間の確保にも取り組む。 「経済産業省補助事業 平成26年度補正地域中小企業・小規模事業者人材確保等支援事業」は、中小企業・小規模事業者が 多様な人材(主婦・女性、若者、シニア)を活用することで、事業の付加価値を拡大し、生産性の向上につなげることを目 的としています。 「千葉・働きたい女性と地元企業の応援プロジェクト」では、平成27年度の本事業において千葉県内の中小企業・小規模事 業者の人材確保に関するニーズを把握した上で、地域の多様な人材を発掘し、マッチングを促進する取組を行っています。 -5-