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GCC 諸国の環境問題

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GCC 諸国の環境問題
GCC 諸国の環境問題
ガルフ・リサーチ・センター
上級環境研究員
ムハンマド・アブドルラウフ・アブドルハミド
概
要
ている。しかし,石油・ガスの生産とそれらの
本論文は GCC(湾岸協力会議)諸国(バーレー
使用によって,GCC 諸国は深刻な環境問題に直
ン,クウェート,オマーン,カタール,サウジ
面している。大型タンカーや製油所,流通施設,
アラビアおよびアラブ首長国連邦)の環境分野
石油化学プラントなどから,陸上,海上を問わ
における最も重要かつ最新の進展について論じ
ず放出される廃棄物と石油の漏洩に重大な関心
ており,次の3項目から構成されている;第1
が向けられている。こうした石油の漏洩と廃棄
はアラビア湾岸地域における「伝統的な環境脅
物の放出は自然資源に影響を及ぼし,生物多様
威と問題」
,第2は過去数年の間に,「新たに出
性の喪失や大気汚染を招いているのである。
現している環境脅威」で,これは気候変動に焦
経済発展に伴い,交通機関の排気ガス,温室
点を当てて説明されている。第3はグリーン・
効果ガス,廃棄物の放出が増加し,生態系の破
エネルギーの取り組みに関する,「GCC 諸国に
壊が進むのは自明の理である。 GCC 諸国では,
おける再生可能エネルギー」である。
有害な化学廃棄物の管理と,自然および天然資
源の合理的な利用促進が経済開発のスピードに
1.伝統的な環境脅威と問題
後れをとっているのである。
アラビア湾岸諸国の共通の特徴は,極度の乾
世界自然保護基金(World Wide Fund for Na-
燥気候と乏しい草木,そしてやせた土壌である。
ture:WWF)とグローバル・フットプリント・
GCC 諸国の国土は沿岸部に伸びる細い平地と
ネットワーク(Global Footprint Network)は,
山岳地帯を除けば,そのほとんどが砂漠地帯で
「生きている地球レポート2
0
0
6(Living
あり,水資源と耕作地はわずかしかない。
Planet
Report 2
0
0
6)
」と題する世界各国のフットプリ
GCC 諸国は,石油とガスから得られる収入に
ントに関する報告書を2
0
0
6年半ばに発行した。
よって,社会生活のあらゆる面を異例の速さで
報告書は,人類は危機的な速さで自然を開発し
発展させてきた,他に例を見ない国々であり,
ており,このままいくと2
0
5
0年までに地球が生
地政学,軍事,経済,産業,建設,観光,その
み出せる量の2倍の天然資源が必要になる,と
他人為的な改変活動の中心地となっている。こ
警告を発している。
の地域に変貌をもたらした最大の要因は石油関
また,報告書によれば,UAE(アラブ首長国
連事業であることは言を俟たない。GCC 諸国の
連邦)のフットプリントが世界で最も高く,同
経済は,各国の GDP(国内総生産)の2
5%から
国国民が1人当たり最大のストレスを地球に加
5
6%を占める石油・ガス部門によって牽引され
えており,UAE の総エコロジカル・フットプリ
9
2
中東協力センターニュース
2
0
0
8・4/5
ントの数値は1
1.
9gh/人(1人当たりグローバ
GCC 諸国の現在の環境状況を次の主要6分
ル・ヘクタール)に達している。世界の平均フ
野に分けて分析する;!土地問題,"生物多様
ットプリントである1.
8gh/人に比べると,クウ
性,#沿岸・海洋環境,$水資源,%大気汚染,
ェートとサウジアラビアの数値も非常に高く,
および&固形廃棄物管理。
6gh/人である。報告書は
それぞれ7.
6gh/人と4.
1.
1.土地問題
世界の1
5
0ヵ国を網羅しているが,GCC 諸国の
中で記述されているのは上述の3ヵ国だけであ
アラビア湾岸地域は,砂漠地帯から高山の山
る。
岳地帯に至るまで,バラエティーに富んだ地形,
この報告書は,現在の開発と生活様式は今後,
地勢を有している。同地域は山岳,草原,湿地,
持続できないということを示唆する単なる指標
沿岸の平原,砂丘,そして砂漠地帯から構成さ
に過ぎない。報告書は熱帯地方の国と乾燥地帯
れており,その気候環境はきわめて苛酷であり,
の国を比較しているが,それは不公平であると
夏季は乾燥しきった酷暑が長期間続き,冬季は
の批判が噴出する可能性がある。なぜなら,両
冷涼でいくらか湿気を含んだ気候となり,その
地帯の気象条件と環境への負荷はまったく異な
期間は短い。また,年間の降雨量はわずか5
0ミ
っているからである。一方,UAE はパキスタン
リ程度である。頼りにできない降雨量と不毛の
やモロッコ,レバノンなどの国々において環境
土壌は主な土地利用,すなわち農業や農作物の
保全プロジェクトを実施しており,環境の改善
繁茂期管理,森林(土地利用としての森林が存
に貢献している。また,同国在住の外国人が自
在している国)などとしての土地利用を最低限
国の家族を支えるため,数百万ドルのディルハ
の状態に陥れている。表1は国連の食糧農業機
ム(UAE の通貨)を国外に送金している。しか
関(FAO)の統計から纏めた,最新情報による
し,こうした事実は報告書のグローバル・フッ
GCC 諸国の土地利用状況(2
0
0
2年)を示してい
トプリントには反映されていないのである。
る。
表1 GCC 諸国の土地利用状況(2
0
0
2年)単位:1,
0
0
0ヘクタール
Country
Total area
Arable land
Permanent
crops
Permanent
pasture
Forest area*
Natural
forests
Plantations
Others
Total
Bahrain
7
1
2
4
4
n.
s.
n.
s.
n.
s.
6
1
Kuwait
1,
7
8
2
1
3
2
1
3
6
n.
s.
5
5
1,
6
2
6
Oman
3
0,
9
5
0
3
8
4
3
1,
0
0
0
n.
s.
1
1 2
9,
8
6
8
Qatar
1,
1
0
0
1
8
3
5
0
n.
s.
1
1
2
1
4,
9
6
9
3,
6
0
0
1
9
4
1
7
0,
0
0
0
1,
5
0
0
4
UAE
8,
3
6
0
7
5
1
9
1
3
0
5
7
3
1
4
Total
2
5
7,
2
3
2
3,
7
4
6
4
3
7
1
7
1,
4
9
5
1,
5
0
7
3
2
5
Saudi Arabia
1,
0
2
8
1,
5
0
4 3
9,
6
7
1
3
2
1
7,
4
6
8
1,
8
3
2 7
9,
7
2
2
*From FAO Global Forest Resources Assessment(2
0
0
0)
Note n.
s.means not significant
Source FAOSTAT Data(2
0
0
5)
9
3
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2
0
0
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1.
2.生物多様性
耕作地と樹園地が GCC 諸国の 総 国 土 面 積
(約2億5,
7
0
0万ヘクタール)に占める比率はわ
湾岸地域には動植物が生息,生育している陸
ずか1.
6
3%にすぎない。また,森林面積は約1
8
0
上の密集地が広範囲に存在している。これらの
万ヘクタールで,総国土面積から見ると非常に
場所はアフリカとアジアの間を行き来する数種
微々たるものである。森林面積のうち,約1
5
7万
類の渡り鳥の中継地としての役割を果たしてい
ヘクタールは自然林で,サウジアラビア,UAE
る。アラビア湾とオマーン湾には数多くの潟湖
およびオマーンの南部高山地帯に生育してい
や干潟,入り江,マングローブが点在しており,
る。
これらは鳥類の理想的な営巣地・繁殖地となっ
アラビアの砂漠は世界で最大の砂漠地帯を形
ている。
成しており,GCC 諸国の砂漠および砂漠化した
WWF はアラビア湾岸地域を7つのエコ地域
土地の広さは総国土面積の約9
0%を占めてい
(eco‐region)に分類しており,
各エコ地域はそれ
る。土地の衰退と砂漠化は GCC 諸国では最も
ぞれ独自の生物多様性の特徴を有している。自
重大な環境問題の一つとなっており,うち何ヵ
然および人為的な圧力によって,数多くの種類
国かはほぼ1
0
0%に近い砂漠化に苦しんでいる。
の動植物の個体数が減少している。国際自然保
土地の衰退を引き起こしている要因は次の通り
護連合(International Union for Conservation of
である;
Nature and Natural Resources:IUCN)作成のレ
・都市化と工業化
ッドリストによれば,GCC 地域の絶滅危惧種の
・家畜による過度の草食
数は図1の通りである。
・農業
陸生生物種の多様性に影響を及ぼす主な要因
・森林の衰退
には次のものが含まれる。
図1 GCC 地域の絶滅危惧種の数
9
4
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2
0
0
8・4/5
・生息/生育地の破壊と分断
・海上の石油操業による石油の漏洩
・家畜による過度の草食
・漁民によるごみの海上投棄
"
・野生動物の狩猟と売買
陸上に関連した要因による汚染
・農耕地の拡大
・生活排水
・外来種の侵入
・工業排水
・観光開発
(海水淡水化プラントの冷却水を含む)
・固形廃棄物
1.
3.沿岸・海洋環境
・自然や自動車,産業による粉塵
#
アラビア湾,オマーン湾,アラビア海そして
海岸の衰退と生息地の破壊
紅海の沿岸に伸びる GCC 諸国の海岸線の長さ
・浚渫と埋め立て
は1万5,
1
7
2キロに達しており,沿岸に生息する
・沿岸部における不適切な建設プロジェクト
$
多種の生物の棲み処となっている。深浅の下干
持続不可能な淡水資源の使用
潮帯と潮間の海洋底,岩礁や砂泥海岸など多様
・水の循環作用の変化
な生息地は沿岸・海洋生物の種類を豊富にして
・沿岸部の地下水資源の過度の開発
いる。
しかし,GCC 諸国の沿岸・海洋地域は都市開
観光客の誘致に重要な役目を担っている珊瑚
発やリゾート・レクリエーション施設の建設プ
礁は,地元漁民の網と錨や沿岸建設プロジェク
ロジェクトによって,自然破壊の危機に瀕して
ト,石油・非石油関連事業,観光リゾート開発
いる。GCC のうち数ヵ国は1
9
9
0年代初期ごろま
などによって汚染の危機に直面している。
でに,自国の海岸線の4
0%をすでに開発してい
1.
4.水資源
た。例えば,2
0
0
4年当時のバーレーンの沿岸面
積は,2
0年を経ずして約4
0平方キロも増加した
アラビア湾岸諸国の政府と国民は過去何十年
のである。同様に,ドバイ(UAE)の沿岸にお
もの間,限られた淡水資源との戦いに取り組ん
いて2
0
0
1年から建設されているパーム島(Palm
できた。少ない雨量,そして水の高い蒸発率と
Islands)は海岸線を1
2
0キロ延伸する計画になっ
消費量の増加がアラビア湾岸諸国の水資源の減
ており,1億立方メートル以上の岩石と砂がこ
少を招いている。アラビア湾岸地域における通
の建設に使用されている。
常の水資源は,地表水,地下水および地下深く
このような急速な沿岸部の開発に加え,石油
と浅い場所にある帯水層である。これらのほか
関連事業が珊瑚礁や藻類の繁茂地,マングロー
に,海水淡水化と排水の再処理から得られる,
ブなど様々な生態系構成要素に損害を与えてい
従来とは異なる新たな水資源がある(表2参
る。生態系に及ぼす悪影響のみならず,石油が
照)
。
海上に漏洩した場合は,GCC 諸国の主要な水資
水の需要が拡大した主たる原因は,人口増,
源である淡水化用の海水も著しく汚染されるの
急速な都市化,家庭および農業部門の水の浪費
である。
などである。湾岸地域のすべての国において,
GCC 諸国の沿岸・海洋汚染の主因としては
都市化が高い率で進んでおり,約8
4%に達して
次のものが列挙できる。
いる。各国の水消費量は1日当たり,1人3
0
0リ
!
ットルから7
5
0リットルで,これは世界でも最上
海上に関連した要因による汚染
位クラスにランクされる消費量である。
・船舶による汚染
9
5
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2
0
0
8・4/5
表2 GCC 諸国における過去と現在の海水淡水化計画
1
9
9
0
Country
2
0
0
5
Desalination
Production
(mcm)
Domestic
Demand
(mcm)
Desalination
to Demand
ratio(%)
Desalination
Production
(mcm)
Domestic
Demand
(mcm)
Desalination
to Demand
ratio(%)
Bahrain
5
6
1
0
3
5
4
1
2
2.
7
1
3
3
9
2
Kuwait
2
4
0
3
0
3
8
0
5
8
9.
1
6
1
0
9
6.
5
Oman
3
2
8
6
3
7
6
7.
9
3
2
1
7
0
4
0
Qatar
8
3
8
5
9
8
2
5
0.
1
3
2
5
2
9
9
Saudi Arabia
7
9
5
1,
7
0
0
4
7
0
6
3.
2
8
1,
2,
4
5
8
4
3
UAE
3
4
2
5
4
0
6
3
8
1
2.
6
1
9
5
1
8
5
Total
1,
5
4
8
2,
8
1
7
5
5
2,
9
0
5.
7
5
4,
5
7
4
6
3.
5
Source:World Bank(2
00
5)
,Dawoud(2
0
0
7)
図2 世界の地域・部門別配水
注目すべきことは,GDP に占める比率がわず
農業部門から家庭や産業部門へ水を配分する妨
かでありながら,農業部門が引き続き水の一大
げになっている(図2参照)
。
消費部門であるという点である。実際に農業部
GCC 諸国で天然水が不足している原因は年
門の消費量は1
9
9
0年の7
3
5億立方メートルから
間の降雨量が少ないからであり,その結果,湾
2
0
0
0年には9
0
0億立方メートルに増えており,限
岸地域は持続不可能な地下水に大きく依存して
られた水資源に大きな影響を与えている。食糧
いるのである(図3参照)
。
自給政策も水資源の配分に制約を課しており,
9
6
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2
0
0
8・4/5
図3 年間再生可能水
Source:World Resources Institute−August2
00
6
1.
5.大気汚染
力を加えている。
GCC 諸国は大規模な都市化と工業化によっ
湾岸地域では自動車の保有率が高いため,輸
て過去2
0年間で急速な変貌を遂げている。この
送部門がエネルギーの主要消費部門となってお
ため粉塵が大幅に増加し,大気に悪影響を与え
り,総石油消費量に占める同部門の比率は,国
ている。一方,石油・ガス部門の発展により,
によって3
0%から7
4%となっている。
1,
0
0
0人当
湾岸諸国は二酸化炭素の世界的な排出に大きく
たりの自動車保有台数は,クウェートとカター
加担している。主として電力発電プラント,各
ルが他の GCC 諸国より多い(図4参照)
。GCC
種産業および輸送部門が都市部の大気環境に圧
諸国全体の1,
0
0
0人当たりの自動車保有台数は,
図4 GCC 諸国の1,
0
0
0人当たり自動車保有台数(2
0
0
1年)
Source:Vehicular data,http://www.
gcc‐sg.
org/gccstatvol12/TransStat/tr42.
htm
population from WDI(World Bank2
0
0
5)
;World average is for1
9
99.
9
7
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2
0
0
8・4/5
高所得国の平均(1,
0
0
0人当たり約6
0
0台)
よりは
れていない。環境関連規則の制定は,GCC 諸国
少ないものの,世界平均よりは多い。
の主要産業企業の多くが政府系であるため,さ
GCC 諸国の全人口数は,世界の人口の0.
5%
らに事情が複雑になっている。これら諸国にお
しか占めていないにもかかわらず,二酸化炭素
けるリサイクル事業は限られており,現在は紙
の排出量は世界の総排出量の約2.
4%を占めて
類と段ボール,金属,缶のみの再利用が行われ
いる。GCC 諸国の所得水準は高所得国の平均所
ている。したがって,リサイクル事業のさらな
得よりかなり下回っているが,二酸化炭素の1
る開発が必要なのである。
人当たり排出量は高所得国の平均値を上回って
2.新たに出現している環境脅威
いるのである。
従来の環境脅威に加え,過去数年の間に以下
1.
6.固形廃棄物管理
に述べるような様々な環境問題が新たに浮上し
増え続ける人口と急速な都市化は固形廃棄物
てきている。ここで明記すべきことは,今まで
管理を含む行政サービスの需要を拡大した(表
の環境脅威と新たな環境脅威には相関性がある
3参照)
。その上,工業化が加速的に進められた
ということである。例えば,砂漠化は生物多様
結果,有害・非有害の産業廃棄物の量が増大し
性の消失を導く。家畜の増加と過度の草食は砂
た。
漠化をもたらす。廃棄物の投棄によりメタンが
GCC 諸国のユニークな特徴の一つは,外国人
発生し,これが地球温暖化の一因となり,その
の国籍別人口構成に毎年,変化が生じるという
結果,砂漠化や水不足が生じ,生態環境も悪化
点であり,かなりの数に上る外国人が他の国籍
する。
の外国人グループと入れ替わる。これは,様々
2.
1.建設と破壊によって生じる廃棄物
に入り混じった固形廃棄物が市町村で排出され
ていることを意味している。その結果,市や町
近年,建設と破壊が生み出す廃棄物が都市固
では量のみならずごみの中身についても適切に
形廃棄物の主要部分を占めるようになってい
処理できる廃棄物管理システムの確立が必要に
る。新築,改築,老朽化建造物の解体,道路の
なっている。
改良・拡張など,各種建設関連工事が増加して
一般的に言って,固形廃棄物の収集システム
いるため,それに伴い廃棄物の量も増えている。
は十分に開発されているが,適切な処理が行わ
これらの廃棄物は湾岸地域の土壌や水質,海洋
表3 GCC 諸国の都市廃棄物(2
0
0
3年)
Country
Generation rate(kg/person/day)
Estimated total waste(0
0
0tons)
Bahrain
1.
2
6
3
2
7.
2
9
Kuwait
1.
4
0
1,
2
2
4.
5
7
Oman
0.
7
3
6
9
2.
4
6
Qatar
1.
3
0
2
9
5.
9
5
Saudi Arabia
1.
2
5
1
0,
2
7
8.
5
4
UAE
1.
1
8
1,
7
4
0.
4
6
Source:Alhoumoud(2
0
0
2)
,World Bank(2
00
5)
9
8
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2
0
0
8・4/5
環境,生物多様性に影響を及ぼしている。一層
くなり(海水淡水化プラントの効率に影響す
のリサイクル事業が必要なのは明らかである
る)
,そして恐怖の水不足の発生が予想され
が,今日,リサイクルが行われているのは紙類,
!
。
る」
段ボール,金属,缶だけである。2
0
0
7年初頭,
また,深刻な社会問題が起きる可能性もある。
道路舗装材料とアスファルトを製造する,建設
農漁業の従事者のみならず,世界が再生可能エ
関連廃棄物のリサイクル工場がドバイとカター
ネルギー資源へ矛先を向けることによって石油
ルに建設されたが,いまだに実験段階にあり,
産業の労働者も職を失うことになるからであ
また,リサイクル製品の使用について関連業者
る。すなわち,気候変動は貧困の撲滅努力とミ
を納得させることが困難であることも判明して
レ ニ ア ム 開 発 目 標(Millennium
いる。
Goals:MDGs)の達成努力を台無しにしてしま
Development
う恐れがあるのである。
2.
2.紛争と環境
湾岸地域の環境変化は,世界各地で発生する
中東地域では政治的・軍事的紛争が続いてい
ハリケーンや津波,洪水などの大惨事と比較す
るため,経済資源が多くの重要部門に行き渡っ
ると,規模は小さい。しかし,湾岸諸国は国家
ておらず,地域レベルの協力や統合が大幅に制
収入を石油とガスの輸出に依存しているため,
限されている。イラクがその明らかな例である。
環境変化が自国の経済に与える影響は大きくな
イランの核開発計画もまた,環境に脅威を及ぼ
る。もし,
世界が近いうちに再生可能エネルギー
す懸念材料となっている。
の使用に移行するならば,湾岸地域は深刻な打
撃を被るだろう。例えば,世界経済フォーラム
2.
3.気候変動
(World Economic Forum)が作成した,気候変動
に対する脆弱性を指標で表す世界地図による
国連の「気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental
Panel
on
Climate
と,湾岸地域は「高い」のカテゴリーに分類さ
Change:
れているのである(図5参照)
。
IPCC)
」は2
0
0
7年に4本の報告書を発行し,地
球温暖化は疑いもなく目に見える事実である,
湾岸諸国は自国の経済を二酸化炭素排出の主
と指摘している。人間の活動が気候変動の主因
因である化石燃料の石油・ガスおよび石油化学
であり,GCC 諸国はその変動の直接的影響を受
産業に大きく依存しているため,難しい立場に
けるものと思われる。湾岸をはじめ,すべての
立たされている。経済は高い伸び率で成長して
地域にある人工島は消滅するに違いない。バー
いるものの,耕作地と水資源の不足が炭素の吸
レーンは,もし海面が上昇すれば,海岸線の1
5
収源である森林と緑地の開発を阻害しているの
キロを失う可能性がある。また,地下水の塩分
である。
濃度が上がり,土地の衰退が広がり,
湾岸の陸・
また,湾岸諸国は世界の主要石油輸出国であ
海の生物多様性に影響を与えるだろう。ある専
る一方,化石燃料の大規模使用によって二酸化
門家は次のように語っている;「近い将来,次
炭素を排出していると非難されている。世界資
の二つの大問題が生じる;!海面の上昇は,海
源研究所(World Resources Institute)によれば,
岸線と海洋生物にかなりの打撃を与え,湾岸地
UAE,サウジアラビアおよびイランは二酸化炭
域で淡水を生産している海水淡水化プラントに
素の排出量において世界のトップ5
0に入ってお
も悪影響を及ぼす。"気温が上昇すれば,水需
り,イランは1
8位,サウジアラビアは2
2位,UAE
要が拡大し,淡水が減り,海水の塩分濃度が高
は4
3位にそれぞれランクされている。湾岸地域
9
9
中東協力センターニュース
2
0
0
8・4/5
図5
Source:World Economic Forum,2
0
0
7.
全体の排出量は他の地域と比較すると少ないが
OPEC 加盟国は地球温暖化問題に取り組むため
(全世界の排出量の2.
4%)
,1人当たりの排出量
の新たな基金として7億5,
0
0
0万ドルを拠出す
は非常に多い。したがって,湾岸諸国が世界の
ると公約した。クウェート,UAE およびカター
国々と共に気候変動に関し責任を負うことは当
ルが各々1億5,
0
0
0万ドルを,そして世界最大の
然であり,エネルギー源の多様化を図り,より
石油輸出国であるサウジアラビアが3億ドルを
環境に優しいエネルギーを追求する必要があ
負担する。この基金の目的は気候変動を技術的
る。気候変動は世界の共通の責任であるが,そ
に解決することにあり,その技術とは,二酸化
の一方で各国が果たすべきそれぞれ個別の義務
炭素回収・貯留(carbon capture and storage)とい
!
も考慮されなければならないだろう 。例えば,
う世界の注目を集めている技術である。
排出量の多い国は少ない国よりさらに重い義務
3.GCC 諸国における再生可能エネルギー
を負うのである。湾岸諸国はこの問題をはっき
りと認識しており,再生可能エネルギー分野に
湾岸諸国は炭化水素資源の生産国として常
おいて革新的な解決策に取り組んでいる。それ
に先頭に立ってきた。Richard Price 氏(www.
は,カーボンニュートラルな都市(carbon‐neu-
energyme.
com)は,
「バーレーン,クウェート,
tral city:炭素循環の考え方に基づく都市)の建
オマーン,カタール,サウジアラビアおよび
設を目指しているアブダビの Masdar 都市プロ
UAE の GCC 諸国はあらゆるタイプの発電所の
ジェクトに明白に表れている。同都市は2
0
0
9年
建設を計画しており,その数は合計で1
1
4プロジ
の完成が予定されている。
ェクト,総投資額は1,
6
0
0億ドルを優に超える」
湾岸地域の温室効果ガス排出量は全世界の
と語っている。
2.
4%に過ぎないが,湾岸各国は気候変動に懸念
しかし,経済的な理由や環境問題,そして政
を抱いている。2
0
0
7年1
1月,湾岸諸国の中の
治,治安上の問題など様々な理由により,湾岸
1
0
0
中東協力センターニュース
2
0
0
8・4/5
表4 GCC 諸国のエネルギー生産(2
0
0
4年)単位:GWh(ギガワット時)
Bahrain
Kuwait
Oman
KSA
Qatar
UAE
Unit
GWh
GWh
GWh
GWh
GWh
GWh
Coal
0
0
0
0
0
0
Oil
0
3
2,
7
8
7
2,
0
7
0
8
1,
2
7
9
0
1,
3
2
9
Gas
8,
4
4
8
8,
4
6
9
9,
4
2
9
7
8,
5
9
6
1
3,
2
3
3
5
1,
0
8
8
Biomass
0
0
0
0
0
0
Waste
0
0
0
0
0
0
Nuclear
0
0
0
0
0
0
Hydro
0
0
0
0
0
0
Geothermal
0
0
0
0
0
0
Solar PV
0
0
0
0
0
0
Solar thermal
0
0
0
0
0
0
Other
0
0
0
0
0
0
Total
8,
4
4
8
4
1,
2
5
6
1
1,
4
9
9
1
5
9,
8
7
5
1
3,
2
3
3
5
2,
4
1
7
Source:Compiled from IEA website:http://www.
iea.org/index.
asp
諸国は代替エネルギーの生産と活用の可能性
間,
年3,
0
0
0億ドルを上回るだろう」と予測した。
を,程度の差はあるものの,模索し始めている。
今日,エネルギーと気候変動に関し,GCC 諸国
表4は国際エネルギー機関(IEA)が纏めたエネ
がチャレンジすべき政策課題が2つある。ま
ルギー生産データ(2
0
0
4年)であり,GCC 諸国
ず,!GCC 諸国は増大するエネルギー需要を満
が依存しているエネルギー資源を分類,表示し
たし,自国の経済開発を持続させるために,十
ている。
分な直接投資を誘致する方策を策定し,そして,
表4の数字が示す通り,GCC 諸国は代替エネ
"危険な気候変動を阻止するため,これらの直
ルギーの商業使用をほとんど行っていなかっ
接投資資金を炭素排出量削減の技術開発に投下
た。しかし,最近になり GCC の姿勢に変化の兆
することである。
しが見え始めた。2
0
0
7年1
1月1
8日と1
9日にリヤ
GCC 諸国の活用可能な代替エネルギーの一
ドで開催された第3回 OPEC 首脳会議におい
つに,太陽エネルギーがある。湾岸地域の専門
て,クリーンエネルギー資源の研究を促進する
家の一人が次のように述べている;「湾岸地域
との強い意向が表明された。エネルギー,環境
は雲の発生が少なく,太陽の光に直接,晒され
ならびに気候変動に関する研究のために,サウ
ている。同地域の通常の日射量は,1平方メー
ジアラビアが3億ドルを,そして UAE,クウ
トル当たり約1,
8
0
0キロワット時である。この数
ェート,カタールが各々1億5,
0
0
0万ドルを拠出
値は,湾岸地域が技術的にも経済的にも太陽エ
すると発表したのである。
ネルギーの活用が可能である,ということを示
2
0
0
6年に IEA は,「増大するエネルギー需要
している。統計はまた,中東・北アフリカが太
を賄うために発展途上国がエネルギー基盤の開
陽エネルギー技術の利用に適していることを示
発に要する総投資額は2
0
0
1年から2
0
3
0年の期
#
。
唆している」
1
0
1
中東協力センターニュース
2
0
0
8・4/5
Graph from IEA website:http://www.
iea.
org/index.
asp
GCC 諸国は伝統的な炭化水素資源の代替と
1
5%を賄う予定である。
なる新たなエネルギー資源の開発に努力を傾注
また,現在建設中の総額1
3億ドルのファイナ
しているが,その現状を以下の通り,国別に分
ンシャル・ハーバー(Financial Harbor)は北岸地
析することとする。
区冷房ネットワーク(North Shore District Cooling Network)に
3.
1.バーレーン
よって3万トン
バーレーンの炭化水素の生産量は少なく,そ
の冷却水が施設
のほとんどがサウジアラビアとの共同操業油田
全体に供給され
であるアブーサファー油田(Abu Safa field)から
る計画になって
生産される石油である。少ない生産量を埋め合
いる。このよう
わせるため,同国は精製事業に取り組み,付加
な地区冷房シス
価値の高い石油製品の輸出に力を入れている。
テムは,従来の
バーレーンは風力エネルギー活用の可能性を
ビル冷房の方法
探っており,同国の世界貿易センター(World
よりエネルギー
Trade Center)が風力エネルギーを利用して発電
消費量が少な
を行う世界初の施設になるだろう。センターに
く,ビル所有者
設置される3基の風力タービンによって電力が
にとって利用価
生産され,センターの電力需要のおよそ1
1∼
値があるため,
1
0
2
Bahrain world trade center
中東協力センターニュース
2
0
0
8・4/5
しかし,前述の通り,クウェートは2
0
0
7年1
1
月の OPEC 首脳会議において代替エネルギー
の研究に資金を提供すると確約した。最新の技
術が開発されれば,より経済的で実用可能な代
替エネルギーが誕生するものと思われる。
3.
3.オマーン
石油の二次回収作業や新たな探鉱活動によっ
て生産増が期待されるものの,オマーンは現在
Bahrain Financial Harbor
のところ,油田の老朽化に伴う生産量の減少に
人気を集めている。地区冷房システムによって,
直面している。
バーレーンのピーク時の電力消費量は2
0
2
0年ま
環境・気候変動省(Ministry of Environment
でに4
0
0メガワット以上,削減されると予想され
and Climate Change)は代替エネルギーの開発に
ている。
力を注いでいる。Heelat Ar‐Rakah キャンプの井
Middle East Electricity(www.
middleeastelectr
戸から汲み上げた地下水は,フッ素や硫化水素
icity.
com)によると,
著名なバーレーン人科学者
をかなり含んでいるため,飲料水として使用で
が,
「電力需要は今後1
0年間において飛躍的に増
きないことが分かった。太陽エネルギーがこの
大する可能性がある。バーレーンはこれに備え,
キャンプ用の淡水を生産する脱塩プラントの操
新たな太陽エネルギー技術の開発のために予算
業に利用されているほか,井戸のポンプを作動
を割り当てる必要がある」と指摘している。
する電力は風力タービンによって生産されてい
一方,太陽エネルギーによって稼働する移動
る。
式の逆浸透法海水淡水化装置(能力2
0
0ガロン/
一方,揚水や照明,通信用に使用する光起電
日)や太陽・風力エネルギーの活用による移動
システム(発電能力3
5
2キロワット)も建設され
式発電機(能力1.
5キロワット)などのプロジェ
ている。オマーンは現在,クリーン燃焼が可能
クトも実施されている。
な石炭火力発電所(費用1
0億ドル)を同国南部
に建設するために,そのフィージビリティ・ス
3.
2.クウェート
タディを実施している。
クウェートは2
5
0万バレル/日あまりの生産能
力を有する,古くからの石油産出国である。
1
9
9
0
3.
4.サウジアラビア
年の湾岸戦争以前からソーラーレイク(solar
IEA によれば,サウジアラビアは世界最大の
lake)や太陽エネルギー利用の冷暖房システム,
原油確認埋蔵量と1,
0
0
0万バレル/日以上の生産
光起電システムなどの研究を実施しており,太
能力を有しており,OPEC ではリーダー的な役
陽エネルギーの開発に莫大な投資を行ってき
割を担っている。前述の通り,同国は代替エネ
た。しかし,いずれのシステムも費用効果にお
ルギーの開発研究に莫大な資金を投入すると公
いて実用的でないことが判明したため,クウ
約している。現在,サウジアラビアでは太陽エ
ェートは太陽エネルギーの商業利用を断念し,
ネルギーに的を絞った潜在的代替エネルギーに
その代案として省エネルギー政策の採用を決定
関する研究が進められているが,すでに油田の
した。
照明システムや広告塔,交通信号などに太陽エ
1
0
3
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2
0
0
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ネルギーが活用されている。太陽エネルギーを
ハブになるものと思われる。
利用した調理器,海水淡水化プラント,火力発
電所,光起電システムなど,各種分野における
3.
6.UAE
プロジェクトが米国協力プログラム(American
UAE では太陽エネルギーの利用が進んでお
Cooperation Program)のもとで実施され,
2
0世紀
り,駐車料金メーター,海上のブイ,ホテルの
末の2
0年間で数多くの研究・開発計画が実行さ
給湯システムなどの電力源として一般的に活用
れた。
されている。
サウジアラビアはまた,廃棄物を用いた発電
専門家や Middle East Electricity によれば,
UAE
プラントの建設も計画している。このプラント
は風力エネルギーのみで年間1,
0
0
0メガワット
は有害廃棄物や有機廃棄物,毒性廃棄物などか
の電力を生産することができる。
ら電力と使用可能な水を生産する。
3.
6.
1.アブダビ
3.
5.カタール
アビダビは湾岸地域では初のプロジェクトと
カタールは天然ガス生産国として知られてお
なる風力発電プラントをシール・バニー・ヤー
り,海上のノースフィールド・ガス田が最大の
ス島(Sir Bani Yas Island)に最近,建設した。
ガス埋蔵量を有している。
このプラントは高温多湿などの厳しい気象条件
湾岸地域の将来の炭化水素資源のハブとカ
に耐えられるよう設計されており,この種の設
タールが呼称している,
「エネルギー都市カター
計では世界初の風力発電所である。
ル(Energy City Qatar)
」は,
「グリーンビルディ
アブダビはまた,発電能力5
0
0メガワットの太
ング(環境負荷の少ない建築物)
」による町づく
陽エネルギー発電プラントを3億5,
0
0
0万ドル
りを実践しており,湾岸初の炭化水素資源取引
の費用で建設する予定であり,2
0
0
9年の操業開
Qatar energy city
1
0
4
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2
0
0
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始を見込んでいる。
き事例であり,その国の人々の環境への意識を
オマーンと同様,アブダビもクリーン燃焼に
高め,同様のイニシアティブを取る動機となる
よる石炭火力発電所の建設を検討しており,
ことが期待されている。
Taqa 社(Abu Dhabi National Energy Company)が
この発電所に関わる研究を現在,実施中である。
3.
6.
2.ドバイ
新規構想の一環として,Masdar 社はユニーク
一方,ドバイは風力エネルギーの研究分野に
なゼロ炭素の都市,
「グリーン・コミュニティー
おいて一歩,先を走っている。ドバイ電気・水
(green
community;環境に配慮した社会)
」の
庁(Dubai Electricity and Water Authority:
建設を計画している。グリーン・エネルギーと
DEWA)では,風力発電ファーム・プロジェク
技術を駆使して建設されるこの都市では,次の
ト(総額1
0億ドル)の研究が行われているが,
ような環境にやさしい建物・施設などが統合的
その目的はドバイのエネルギー需要の1
0%を風
に整備され,持続可能な生活環境が実現され
力エネルギーで賄うことにある。中東で太陽エ
る;グリーン建築に基づく最新の事務所や研究
ネルギーを最初に活用した国はドバイであり,
施設,海水淡水化プラント,バイオ燃料の使用,
アパート群の冷房に利用されたが,これによっ
持続可能交通機関,排水の管理・リサイクル,
て電力料金が3分の1,安くなった。また,ド
太陽エネルギー冷房システム,持続可能な灌漑
バイのホテルの給湯システムにも太陽エネル
システム,その他再生可能資源の利用。
ギーが利用されており,1日当たりの必要電力
正確には予想できないが,この都市建設プロ
を十二分に賄っている。
ジェクトによって,2
0
1
5年までに次のような直
ドバイ政府は先頃,
「持続可能開発政策(Sus-
接的な効果が得られるものと期待されている。
tainable Development Policy)
」の採用を発表し,
「再生可能エネルギー局(Renewable Energy Di-
・アブダビのクリーンエネルギー・持続可能技
vision)
」を創設した。同局は,グリーンビルディ
術分野において,質の高い1,
0
0
0人の雇用機会
ング基準,省エネルギーと節水管理およびグ
が新たに創出される。
リーン発電事業に責任を有する。ドバイ政府は
・クリーンエネルギー・持続可能技術を専攻す
このイニシアティブが国内企業にとって前例と
る8
0
0人の修士課程・大学院生が Masdar 学院
なり,彼らが持続可能な開発に取り組むことを
で勉学する。
期待している。政府はまた,この政策に沿って,
・アブダビの非石油部門を発展させ,数十億ド
「エ ネ ル ギ ー と 環 境 設 計 の リ ー ダ ー シ ッ プ
ルの経済効果をもたらす。
(Leadership in Energy and Environment Design:
・湾岸地域では初の世界クラスの科学研究ハブ
」の専門家チームを設立した。LEED は
LEED)
となる。クリーンエネルギーの研究ハブに加
持続可能ビルディングに関する第1級の評価制
え,他の知的活動や知識産業の中心地になる。
度の一つであり,米国グリーンビルディング協
議会(US Green Building Council)がこれを管
理・推進している。
Masdar 都市構想とそのイニシアティブは疑
いもなく正しい選択であり,これによって排出
ガスの削減能力が得られるが,この能力こそが
3.
6.
3.フジャイラ
最も重要で直接的な利益となるのである。した
フジャイラは風力発電パークを数ヵ所建設す
がって,この Masdar 都市構想は他国がならうべ
る計画を立てており,各パークの年間電力生産
1
0
5
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2
0
0
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量は2
0
0メガワットが予定されている。また,太
ネルギー資源:炭化水素,原子力または再生可
陽電池の生産ラインが最近,フジャイラ・フ
能エネルギーか?(Future Arabian Gulf Energy
リーゾーンで操業を開始した。図5は GCC 諸
Sources:Hydrocarbon,Nuclear or Renewable?)
,
国の再生可能エネルギープロジェクトを要約し
#乾燥地帯における持続可能エネルギー資源に
たものである。
関する国際会議(International Conference on Integrated Sustainable Energy Resources)
,および$
以上,GCC 諸国の再生可能エネルギーの取り
持続可能開発のためのエネルギーに関するアラ
組みについて説明してきたが,最後にもう一つ
ブ地域フォーラム:戦略,政策ならびに計画
重要なことをここで指摘したい。それは,再生
(Arab Regional Forum on Energy for Sustainable
可能エネルギーがいまや GCC 諸国の中心課題
Development:Strategies,Policies and Plans)
。!
となっており,これに関連した会議が最近,相
の会議はマナーマで開催されたが,他のすべて
次いで開催されているということである。主な
の会議はアブダビで開催された。2
0
0
8年1月,
会議は次の通りである;!GCC 諸国における
アブダビに本店を置く Masdar 社は,
2
0
0
8年最大
代替エネルギーの可能性(Potential of Alternative
のエネルギー会議と銘打った,
「世界未来エネル
Energy in the GCC)
,"アラビア湾岸の将来のエ
ギーサミット(World Future Energy Summit:
表5 GCC 諸国における現在と将来の再生可能エネルギープロジェクト
Country
Current projects
Future projects
Bahrain
−Wind Generation in Trade Center
−North Shore district cooling network for Financial Harbor
−Solar powered reverse osmosis unit
−Solar/wind powered generation
−Scientist calls for solar energy
research
−Pledged money for research
Kuwait
Oman
−Solar powered reverse osmosis unit
−Photovoltaic system for water pumping and electricity
generation
−Wind energy for water pumping
−Studying feasibility of clean burning
coal plant
Saudi
Arabia
−Using solar energy for oilfield lighting systems,
advertising signs and traffic signals.
−Progress has been made in the field of solar cooking,
solar desalination,thermal and solar electricity and
photovoltaic systems.
−Pledged money for research
−Waste to energy research
Qatar
−Energy city will adopt green building practices
−Pledged money for research
UAE
−Solar energy used in powering parking meters,offshore
buoys,water heating in hotels and cooling
−Wind power plant in Sir Bani Yas Island,Abu Dhabi
−Masdar initiative in Abu Dhabi
−Dubai adopts sustainable development policy
−Solar cell production line in Fujairah free zone
−Solar power plant in Abu Dhabi
−Abu Dhabi considering clean
burning coal power plant
−Studies in Dubai for $1 billion
wind farm.
−Wind power generation in Fujairah
1
0
6
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2
0
0
8・4/5
WFES0
8)
」と題する再生可能エネルギー関連
しかし,人口が少なく,経済ブームに沸いて
の会議を開催した。アブダビはこの会議で未来
いる GCC 諸国などの国々にとっては,この
エネルギー分野における年間ノーベル賞(約2
2
0
提案はきわめて不公平なものだろう。なぜな
万ドル相当)を発表した。
ら,それは経済開発の停滞を伴うからである。
また,この提案は在留外国人の人口を考慮に
4.結
論
入れていない(特に,経済発展を続ける国に
GCC 諸国は挑戦すべき様々な環境問題に直
移動する労働者)
。さらに,この提案は各国間
面しており,相反する多くの優先課題を両立さ
の人口増加レースを招くきっかけになる可能
せる必要に迫られている。その課題とは,経済
性があり,そうなれば,地球規模の別の問題
の多様化,水供給,食糧安全保障,環境保護・
が発生し,排出量が減少するのではなく,逆
保全,地球温暖化によって新たに生じる悪影響
に増加する結果になる恐れがある。
#
など,多岐にわたっている。
Dr.
Basel Al‐Yousafy and Dr.
Aly Alkorah,
気候変動,再生可能エネルギー,そして従来
“Environmental and Economic Feasibility of
の炭化水素資源に関する湾岸諸国の考え方は昨
Renewable Energy in the Arab Region,
”Dar
年から著しい変化を見せている。エネルギー資
Alhayat newspaper,March5,2
0
0
7.
源の多様化に関心が向けられ,再生可能エネル
ギー分野では各種の研究や新たな取り組みが実
参照文献
施に移されている。湾岸諸国は気候変動と戦い,
・Awni,
M.
(2
0
0
7,
1
25)Gulf countries and clean
排出ガスの取引市場において中心的役割を担う
energy.Retrieved from Emirates Center for
決意を固めている。バリ会議(バリで開催され
Strategic Studies and Research:http://www.
た第1
3回国連気候変動枠組み条約締約国会議)
ecssr .ac .ae / CDA / en / FeaturedTopics /
で採択されたロードマップによって,湾岸諸国
DisplayTopic/0,
1
6
7
0,
7
3
6
‐
0
‐
5
2,
0
0.
html
は今後2年間,財政的・技術的支援を工業先進
・IUCN.2
0
0
4,IUCN Red List of Threatened
国から受ける絶好のチャンスを得ており,砂漠
iucnredlist.
org/accessed
Species,
[http://www.
化と気候変動がもたらす負の影響に立ち向かう
1/2
0
0
5]
on1
6/1
・Jack Boureston,Brett Marvin,“Iran’s nuclear
ことができるだろう。中東における再生可能エ
ネルギーのシェアは,中長期的には拡大するも
programme.
”Nuclear Engineering International.
のと予想される。
Dartford:Mar2
0
0
4.Vol.
4
9,Iss.
5
9
6;pg.
1
0,
3pgs.
(注)
!
Meena
・Global Environmental Outlook year book.
2
0
0
6,
Janardhan ,“ Climate
Change‐
unep.
org.
Accessed from html://www.
MIDEAST:Producers and Victims of Fossil
・GRC,TERI,Green Gulf Study,July2
0
0
6.
Fuels,
”IPS ,December1
3,2
0
0
7.
・Mohamed A Raouf,Abdualla Saif,
“Renewable
" 2
0
0
7年,ドイツのアンゲラ・メルケル首相
Energy in the Arab Gulf States:Current Situ-
が次の提案を行い,世界の多くの科学者から
ation and Prospects Gulf Region”
,GRC Envi-
絶賛された;「発展途上国と工業先進国の1
ronment Newsletter,Gulf Research Center,
人当たり二酸化炭素排出量が同じ水準に達す
Dubai,UAE,issue #4,January2
0
0
7.
るまで,発展途上国の排出量増加を認める」
。
1
0
7
・Mohamed A Raouf,“State of the Environment
中東協力センターニュース
2
0
0
8・4/5
in GCC Countries:Assessment of Year 2
0
0
6
ingentaconnect .com / content / els /0
9
6
0
1
4
8
1/
and Outlook for 2
0
0
7,Gulf Yearbook 2
0
0
6/
1
9
9
8/0
0
0
0
0
0
1
4/0
0
0
0
0
0
0
1/art0
0
0
8
4;jsessionid
2
0
0
7”
,Gulf research Center,Dubai,UAE,April
=4
2ujes5
2mpevi.
alice?format=print
・Retrieved from Middle East Electricity:http://
2
0
0
7.
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・Mustafa Kibaroglu,Good for the Shah,Banned
for the Mullahs:The West and Iran’s Quest for
NewandRenewableEnergyRegionalNews.
html
Nuclear Power.
.The Middle East Journal.
007,12)Massive growth in the
・PR Leap,(2
Washington:Spring6
0,no2(2
0
0
6)
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0
7.
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・World Resources Institute,http://earthtrends.
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http://
www.
prleap.
com/pr/6
0
5
3
6/
select_countries & theme=1
0&variable_ID=
・Sawahel,W.
(2
0
0
4,1
12)Gulf’s first wind
5
6
7,accessed online September3
0,2
0
0
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power plant is opened.Retrieved from Science
・Various news articles during year 2
0
0
6 from
Development
Network:http://www.scidev.
net/News/index.cfm?fuseaction=readNews &
various GCC newspapers.
itemid=1
7
0
9& language=1
・Price,R.
(2
0
0
7,1
02
7)Oil and gas rich Gulf
・Websites:
seeks alternative energy.Retrieved from Energyme:http://www.energyme.com/energy /
masdaruae.
com/
‐http://www.
2
0
0
7/2
0
0
7
0
0
3
6
2.
ht
‐http://www.
iea.
org/index.
asp
・Al Malki A.
;Al Amri M.
;Jabri H.
A.
(この報告は,競輪の補助金を受けて作成された
(1
9
9
8,5)Experimental study of using renew-
ものです)
able energy in the rural areas of Oman.Retrieved
from
Ingentaconnect:http://www.
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中東協力センターニュース
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