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NIPPON KOEI CO., LTD.

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NIPPON KOEI CO., LTD.
ジブチ共和国
ジブチ共和国地熱開発にかかる
情報収集・確認調査
ファイナルレポート
平成 26 年 12 月
(2014 年)
独立行政法人
国際協力機構(JICA)
日本工営株式会社
住鉱資源開発株式会社
地熱エンジニアリング株式会社
産公
JR
14-130
ジブチ共和国
ジブチ共和国地熱開発にかかる
情報収集・確認調査
ファイナルレポート
平成 26 年 12 月
(2014 年)
独立行政法人
国際協力機構(JICA)
日本工営株式会社
住鉱資源開発株式会社
地熱エンジニアリング株式会社
No.
1
2
3
4
5
6
7
調査対象位置図
Site
Arta
Asal Rift
Djibouti
Dorra
Gaggade
Hanle
Lac Abhe
No.
Site
8
Nord Goubet
9 Nord Lac Asal
10
Obock
11
Rouweli
12
Sakalol
13
Sud Goubet
略語表
ADDS
Djibouti Social Development Agency
ADME
Djiboutian Agency Control of Energy
AFD
French Development Agency
AFDB-ADF
African Development Bank
ASTER
Advanced Spaceborne Thermal Emission and Reflection Radiometer
AUC
Africa Union Commission
CERD
Centre for the Study and Research of Djibouti
DEM
Digital Elevation Model
DGPS
Differenctial Grobal Positioning System
DoE
Department of Environment in Ministry of Home, Urbanism,
Environment and Land Planning
E/S
Engineering Service
EC
Electrical Conductivity
EdD
Djibouti Electricity
EIA
Environmental Impact Assessment
EIS
Envilonmental Impact Statement
ESMAP
Energy Sectore Management Assistance Program
EUEIPDF
EU Energy Initiative Partnership Dialogue Facility
F/S
Feasibility Study
GDC
Gothermal Development Company
GDP
Gross Domestic Product
GEF
Grobal EnvironmentFacility
GIS
Geographical Information System
GRMF
Global Positioning System
ICEIDA
Iceland International Development Agency
IPP
Independent Power Producer
ISERST
Institute of Higher Studies and Research Science and Engineering
ISOR
Iceland Geosurvey
JICA
Japan International Cooperation Agency
Ma
Million Age
MENR
Ministry of Energy Responsible for Natural Resources
MER
Main Ethiopian Rift
MESR
Ministry of Higher Education and Research
MT
Magneto-Telluric Method
NDF
Nordic Development Fund
NUB
Nubian Plate
ODDEG
Djiboutian Office for Development of Geothermal Energy
OFID
OPEC Fund for International Development
ONEAD
The National Office for Water and Sanitation in Djibouti
OPEC
Organization of the Petroleum Exporting Countries
ORC
Organic Rankin Cycle
PALSAR
Phased Array type L-band Synthetic Aperture Radar
PPA
Power Purchase Agreemen
ppm
parts per million
SAGS
Steamfield Above Ground System
SEFA
Sustainable Energy Fund for Africa implemented by AfDB
SWIR
Short Wave Infrared Radiometer
TAS
Total Alkali-versus-Silica
TDEM
Time-Domain Electro Magnetic Method
TIR
Thermal Infrared Radiometer
UNESCO
United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization
UNU-GTP
United Nations University – Geothermal Training Progrmme
VES
Vertical Electric Sounding
VNIR
Visible and Near-infrared Radiometer
WB
The World Bank
WHO
World Health Organization
XRD
X-Ray Diffraction
XRF
X-Ray Fluorescence
ジブチ共和国地熱開発にかかる
情報収集・確認調査
ファイナルレポート
ジブチ共和国地熱開発にかかる情報収集・確認調査
ファイナルレポート
要
旨
1. 調査の背景
ジブチ国では発電に適する自国資源に乏しく、2010 年までは輸入燃料によるディーゼル
エンジン発電(設備容量 137MW)で国内の電力の全てを賄っていた。2010 年 11 月以降は
隣国エチオピア国から、買電による電力供給を受けることになり、2013 年時点では国内消
費電力の 8 割以上をエチオピア国からの供給で賄っている。このような現況はエネルギー
の安全保障の観点から好ましくないため、ジブチ国では地産エネルギーである地熱エネル
ギーを利用した発電所の早期建設を国家目標の一つとしている。
2. 調査の目的
本調査は、既存の地熱資源調査資料を参照し、有望地点における衛星画像解析、現地地
質地化学調査並びに室内試験を行って地熱開発有望地点の評価をおこない、今後の我が国
からの地熱開発支援の方向性を検討するための基礎情報を収集・分析する目的でおこなっ
たものである。
3. ジブチ国の電力事情
3.1.
電力需給現況
ジブチ国の電力需要は 1970 年代の消費量約 50 GWh から着実に増加しており、2013 年に
は約 355 GWh に至っている。ジブチ国電力公社(EdD)が保有する設備は全てディーゼル
エンジン発電施設であり、そのうち系統連結施設の定格容量は 135MW、実用容量は 101MW
である。一方、ジブチ国では隣国エチオピア国からの安価な水力発電によって、年間最大
電力 700 GWh(平均約 80 MW の設備容量に相当)の供給を受けることが可能となっている。
このため 2013 年の電力量自給率は約 19%と非常に低い値となっている。
3.2.
国家開発計画、電力開発計画
ジブチ国では 2035 年までのビジョンを示した「VISION Djibouti 2035」を発表している
(2014 年 6 月)。これによれば「ジブチ国は 2010 年時点で 100%の火力発電(ディーゼル
エンジン発電)依存を 2020 年までに 100%の再生可能エネルギー利用に変革する」と宣言
されている。
また、国家 5 カ年計画(2011 年~2015 年)によれば、採取可能な地熱資源を確認するこ
とが「目標」として挙げられ、地熱資源を開発することが「行動」として謳われている。
国際協力機構
S-1
日本工営株式会社
住鉱資源開発株式会社
地熱エンジニアリング株式会社
ジブチ共和国地熱開発にかかる
情報収集・確認調査
ファイナルレポート
ジブチ国電力公社(EdD)の計画では、2020 年に達成目標とされている再生可能エネル
ギーによる電力供給設備容量は 236MW と計画されている。このうち、地熱発電は 2019 年
に投入される計画となっており、その設備容量は 50MW と計画されている。
4. 地熱開発にかかる組織体制
4.1.
ジブチ国地熱エネルギー開発局(ODDEG)
ジブチ国では地熱開発を国家開発計画の優先課題として、2014 年に新組織「ジブチ国地
熱エネルギー開発局(ODDEG)」を大統領府直下の機関として立ち上げている。政令によれ
ば、地熱開発にかかる全ての国内資源を ODDEG に集中させるとしている。現在 ODDEG
の職員数や施設、資機材等は限られているが、掘削リグの購入、新事務所の建設、物理探
査技術職員、貯留層技術職員の ODDEG 移動など、組織強化にかかる動きが活発化してい
る。
4.2.
ジブチ国調査研究センター(CERD)
ジブチ国には 1979 年に設立された科学技術研究機関があり、地質、地下水、地化学など
の地熱開発に関連する研究者が在職している。また、これらの分野の室内分析機器もある
程度保有している。CERD ではこれらの研究資源を活用して国内 3 箇所の地熱有望地点にお
いてプレフィージビリティー調査を実施している(Nord Goubet, Lac Abhe, Obock)注。ただ
し、このプレフィージビリティー調査内容の一部の物理探査を実施したチームは、2014 年
7 月に ODDEG に異動となっている。しかし、CERD では水質分析機器などの高度な分析機
器を保有しており、今後地熱開発にかかる役割が注目される。
(注:これらの調査結果は非公開となっている。調査団は入手していない。)
5. 地質地化学分野の能力評価
5.1.
地質
ODDEG は鉱山省の地質技術者と協力関係にある。
CERD にも地質研究者が在籍している。
しかし、両者とも地質分析関連の資機材は殆ど保有していない。
5.2.
地化学
ODDEG では一部職員を地化学担当者としている。CERD では比較的豊富な研究者をそろ
えており、水質分析に関しては資機材も充実している。ただし、地熱開発調査にあたって
一部の分析資機材が不足している。
5.3.
物理探査
MT 探査機材を 2 台保有している。ただし保有する機材は学術的な分野で使用される機種
であり、一般の民間調査会社ではあまり利用されていない。CERD が 3 箇所の地熱有望地点
で実施した調査結果等は非公開なので評価はできないが、2 次元逆解析用ソフトウェアを保
有しておらず、取得した物理探査データの解釈が十分ではないと推察される。
6. 国際社会の支援
国際協力機構
S-2
日本工営株式会社
住鉱資源開発株式会社
地熱エンジニアリング株式会社
ジブチ共和国地熱開発にかかる
情報収集・確認調査
6.1.
ファイナルレポート
世銀他
ジブチ国では現在 Asal-Fiale 地熱地点の開発を急いでいる。この地点は 1980 年代に試掘
が行われ、高塩分濃度の地熱流体が確認されている地点である。2007 年 10 月から 2008 年
3 月にかけて新たな物理探査が行われ、塩分濃度がやや低いと判断される地域があることが
指摘されたため、世銀をはじめとするドナーが試掘調査実施のために支援を表明し、手続
きが進行中である。
6.2.
ICEIDA
かつて地熱関連調査が実施された Arta や Gaggade をフィールドとして、技術支援を開始
している。
6.3.
UNU-GTP
国連大学では、1989 年以来ジブチ国から地熱関連技術者を受け入れて養成を行っている。
6.4.
GRMF
ジブチ国では、Nord Goubet での試掘調査と Hanle-Garabbayis での地表調査を行うべく、
GRMF に支援を要請した経緯がある。
7. 地熱有望地点の調査結果
7.1.
ジブチ国の一般地質環境―東アフリカ大地溝帯
調査地域はアフリカ大地溝帯の北端部に位置しており、古第三紀漸新世~第四紀にかけ
ての断続的な火山活動により特徴づけられる地域である。
7.2.
衛星画像解析調査
衛星画像解析データには我が国の衛星データである ASTER と PALSAR を利用した。解
析の結果、地熱有望地点は、大局的に以下の2通りに分類される。
-
スポット状に酸性~中性変質帯が認められる地域。これらは断裂系ないしは流紋岩に
伴っているケースが多い。
Arta, Asal, Gaggage-Taassa, Hanle-Garabbayis, Lac Abhe, Nord Goubet, Nord Lac Asal,
Rouweli, Sud Goubet
-
衛星画像では変質帯が認められない地域。
Djibouti-Awrofoul, Dorra, Obock, Sakalol-AsbouDara
7.3.
地質調査、地質試料室内分析調査
現地地質調査では、基本的な岩石分布の確認とともに噴気や温泉、変質粘土の有無や分
布性状などの目視確認を行った。そのうえ現地で採取した岩石試料や粘土試料を用いて岩
石薄片作成鑑定や室内分析試験を行った。その結果は以下の通りである。
7.3.1. 岩石薄片観察および X 線蛍光分析(XRF 全岩分析)結果
国際協力機構
S-3
日本工営株式会社
住鉱資源開発株式会社
地熱エンジニアリング株式会社
ジブチ共和国地熱開発にかかる
情報収集・確認調査
ファイナルレポート
岩石薄片観察の結果、全ての岩石で弱い変質作用を受けていることが明らかになった。
また、全岩分析の結果、採取した岩石のほとんどはアルカリ岩・サブアルカリ岩系列の玄
武岩に分類され、ジブチ国の一般岩石分類と一致していることが確認された。一部に安山
岩や流紋岩に分類される岩石試料もある。これらはマグマの分化があったことを示す可能
性がある。
7.3.2. X 線回折分析(XRD 粘土鉱物分析)結果
X 線による粘土鉱物の分析の結果、強い酸性変質を示すナクライトが Arta および
Gaggade-Taassa の試料で確認された。その生成温度は 200-250℃である。また、低温~中温
度の変質を示すスメクタイトや混合層変質粘土が、Nord Goubet-Anaale や Hanle-Garabbayis
の試料で確認された。この生成温度は 100~150℃ないし 150℃~200℃である。
以上より、Arta、 Hanle Garabbayis、Nord Goubet および Gaggde Taassa では、熱水変質活
動すなわち地熱活動が活発であったと推定できるうえ、現在噴気活動が活発な
Gaggade-Taassa や Hanle-Garabbayis、および Nord Goubet-Anaale では、現在も地熱活動が活
発であると考えることができる。
表 1 X 線回析分析結果
(出典:JICA 調査団)
7.4.
地化学調査
現地調査では、温泉や噴気ガスの採取を行った。採取した試料について、水質化学分析、
噴気ガス分析、同位体分析を行い、地熱兆候としての評価を行った。その結果の要旨は以
下の通りである。
7.4.1. 水質化学分析
本調査で採取した水試料はすべて天水起源であり,マントル起源流体の寄与は認められな
い。そのほとんどは Na-Cl 型に区分される。
国際協力機構
S-4
日本工営株式会社
住鉱資源開発株式会社
地熱エンジニアリング株式会社
ジブチ共和国地熱開発にかかる
情報収集・確認調査
ファイナルレポート
7.4.2. 水質分析地化学温度計、ガス分析地化学温度計、マントルガスの混入
温泉水試料から分析した Na-K 地化学温度が 190℃程度の高温を示す地点、ガス試料分析し
た CO2/Ar 地化学温度と CH4/CO2 地化学温度が高温を示す地点、およびガス分析結果からマ
ントル起源のガス混入が認められる(地下熱源となるマントルの存在が考えられる)地点
は、以下のとおりである。
Hanle-Garabbayis
Arta
表 2 地化学分析結果
Na-K 地化学温度
マントル起源
ガス試料地化学温度
190℃以上
ガス混入
☑ 159℃~266℃
☑
―(弱い噴気あり)
Nord Goubet
-
Gaggade Taassa
-
Obock
☑
-
-
Djibouti Awrofoul (No.2)
☑
Asal – Fiale
(評価対象外)
(-: 試料採取不可ないし分析不可項目)
-
-
-
☑
☑
☑
228℃~323℃
-
☑
(出典:JICA 調査団)
8. 衛星画像解析、地質地化学調査から判断する地熱資源評価
以上の調査結果より、以下の地点が開発対象として有望であると判断される。

Hanle-Garabbayis

Arta

Nord Goubet- Anaale

Gaggade-Taassa

Obock (温水のみ)

Djibouti-Awrofoul-No.2 (温水のみ)
9. 社会環境調査
9.1.
目的
社会環境調査として、ジブチ国における自然保護地区の範囲と、社会環境影響評価の手
法について確認し、ジブチ国の地熱有望地点 13 地点を開発することが、社会環境上問題な
い行為であるか否かを確認した。
9.2.
結果
国際協力機構
S-5
日本工営株式会社
住鉱資源開発株式会社
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ジブチ共和国地熱開発にかかる
情報収集・確認調査
ファイナルレポート
現状(2014 年 6 月末)として、
ジブチ国には 9 箇所の環境保護地区に指定されているものの、
保護地区内でのゾーニングが未設定で、可能な開発行為の程度が定められていない。また、
アルタ、アリサビエを除く 7 箇所の保護地区については、その境界線すら未設定の状況に
ある。 今回、地熱微候が確認された地点のうち、Lac Abhe については、境界線が未設定
の保護地区に含まれる可能性があり、今後、同地区を地熱開発の対象とする場合は、環境
局への事前相談が必要となる。
10. 開発支援優先順位の提案
開発支援優先順位を提案するに当たって、以下の項目を考慮した。

資源量評価

地点へのアクセス

開発スペース、掘削水

社会環境配慮
また、既設/計画送電線との関係およびジブチ国の意向は、参考情報として考慮した。
検討の結果、調査団が考える開発支援優先順位を、表 3 にまとめた。
最も優先順位が高いと判断される地点は Hanle-Garabbayis、ついで Arta と Nord Goubet を
同程度と位置付けた。Gaggade-Taassa はアクセス条件が良くないので順位を下げた。
Obock は、地化学温度以外のデータに乏しいことや、送変電系統から離れていることから、
優先順位を下げた。ただし、遠隔地の当面のベース電源確保という位置付けで、小規模な
地熱発電開発を目的にする場合は、上記の高い優先順位の地点と同時に調査を進めること
も検討する必要がある。
その他、ジブチ市郊外の Awrofoul に位置する水道水源用井戸の地下水では、比較的高い
地化学温度と低い電気伝導率が確認された。他に地熱兆候を示すデータはないが、将来の
MT 探査実施候補地に挙げ、地下構造等を調査する価値はあるものと考える。
国際協力機構
S-6
日本工営株式会社
住鉱資源開発株式会社
地熱エンジニアリング株式会社
ジブチ共和国地熱開発にかかる
情報収集・確認調査
ファイナルレポート
表 3 開発支援優先順位の提案
Geothermal
Resources
Socio
-Environment
Workability
Reference
Site name
Resources CL (mg/L)
Garabbayis
☑ A-1
Arta
☑ A-3
Nord Goubet
☑ A-2
Gaggade
☑ A-1
Obock *
B
Djibouti
Lac Abhe
±1,000
Accessibility
C
Fair
Landform
Well
Drilling
Water
B
☑ A
Plain
-ragged hill
Ground water in
Hanle Plain
B
C
Sea
Distance to
transmission
line
Priority
rec'nded
Natural conditions
Inhabitant
☑ A
Barren
A
none
45 km to Dikhil
1
MT survey with
geological and
geochemical survey
☑ A
B
a few
6 km to N.1
2
MT survey with
geological and
geochemical survey
B
a few
50 km to P.K. 51
Barren, Desolate
2
Review of PreFeasibility Study of
CERD
☑ A
Barren
A
none
40 km to P.K 51
3
MT survey
Review of PreFeasibility Study of
CERD
MT survey
Survey for the next
stage
☑ D
±15,000
B
Good
☑ D
±15,000
C-D
Poor-fair
±5,000
☑ D
Poor
☑ D
☑ A
Ragged hill
Ground water in
Hanle Plain
5,000 - 40,000
A
Excellent
A
plain, costal
C
Sea
B
Coastal
near town
Isolated
4*
C
±5,000
A
Excellent
A
Plain
C
Sea
-
-
-
5
-
±5000
C
Fair
A
Plain
C
Lac Abhe
☑ D
Registered
B
a few
75 km to Dikhil
-
Plain - ragged
hill
C
Plain - ragged
hill
Out of a registered
protection area
☑ A
C
Sea
Review of PreFeasibility Study of
CERD
☑: Conditions that special considerations are given for prioritization
Obock *: Survey of a next stage, separately from survey for a flash type may be recommended if a binary type is considered.
(出典:JICA 調査団)
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11. 開発支援優先順位の提案
11.1. 中長期的な支援の方向性
今後の ODDEG の主な業務は、地表調査で有望と判断される地点での試掘調査ならびに
生産井・還元井の掘削、および関連調査業務になると考えられる。ODDEG では既にリグの
調達を進めている。
表 4 に、今後必要になると考えられる技術支援の項目を示した。
表 4 中長期的技術支援の方向性
Milestone
Pre-Survey
Exploration
Tasks
支援の方向性
Data Collection, Inventory
Nationwise Survey
Selection of Promsing Area
EIA and Nessessary Permits
Planning of Exploration
Surface (Geological,
Geochemical survey)
 補足的技術支援
Sounding (MT/TEM)
Gradient and Slim Holes
Seismic Data Acquisition
Pre-feasibility Study
Test Drilling
Slim Holes
Fullsize Wells
Well Testing and Stimulation
Interference Test
First Reservior Simulation
Project Review
and Planning
Evaluation
and
Decision
making
Feasibility Study and Final
EIA
Drilling Plan






















技術支援、
資機材支援(試験分析機器)
有望時点での MT 探査の実施支援
解析技術支援、解析ソフト支援
掘削資金支援
掘削技術支援
坑井地質地化学調査実施技術支援、同解析技術支援
検層実施技術支援、同解析技術支援
検層ツール支援
坑井試験実施技術、同解析技術支援
(当面は不要)
解析技術支援
レポーティング技術支援
掘削資金支援
掘削技術支援
坑井地質地化学調査実施技術支援、同解析技術支援
検層実施技術支援、同解析技術支援
坑井試験実施技術、同解析技術支援
解析ソフト支援
解析技術支援
F/S 支援
EIA 支援
 掘削計画技術支援
Design of Facilities
Tender Prosess
Financial Clousure/PPA/IPP
 借款(E/S:詳細設計、入札支援)
Field
Development
(ODDEG)
Production Wells
Reinjection Wells
Coolong watwer Wells
Well Stimulation
Reservoire Simulation
Construction
(Contractor)
Steam/Hotwater Pipelines
Power Plant and Cooling
Substation and Transmission
 技プロ
掘削技術支援
坑井試験実施支援、同解析支援
検層実施技術支援、同解析支援
解析支援
 借款(E/S:施工監理)
 借款(施設建設工事)
Start up and
Commissioning
Operation and
Maintenance
国際協力機構
 政策立案支援(技術支援)
 借款(瑕疵担保期間)
 技プロによるフォローアップ
S-8
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(出典:JICA 調査団)
11.2. 当面の支援の方向性
11.2.1. 基本方針
【1】基本方針-1
フラッシュタイプを想定した開発支援
本調査の結果、フラッシュタイプの開発が想定できる地熱開発有望地点として4地点
(Hanle-Garabbayis, Nord Goubt, Arta および Gaggade-Taassa)が確認された。これら 4 地点
地熱兆候としていずれも遜色はないものと考えらるため、開発優先順位を確認する必要が
あろう。このため、少なくともアクセス条件が比較的良い 3 地点(Hanle-Garabbayis, Nord
Goubt 及び Arta)で、MT/TEM 探査を実施する必要があると考えられる。Nord Goubet では、
CERD により MT 探査が実施されているので、今後の現地調査支援は Hanle-Garabbayis と
Arta の2地点が対象となる。Nord Goubet については、CERD の調査結果をレビューして追
加調査の必要性を検討する必要がある。ただし、Hanle-Garabbayis での MT 探査の結果が良
好であれば、この地点において直ちに試掘調査を計画してもよい。アクセス条件が 3 地点
ほど良好でない Gaggade Taassa については、上記調査で行う技術移転をもとに ODDEG が
独自に実施することを期待したい。
【2】基本方針-2
Obock の地熱資源開発支援方針
Obock ではフラッシュタイプが開発できる可能性もあるが、地熱兆候として確認されたの
は地化学温度計が 197ºC を示す温泉のみなので、上記の4地点ほど開発優先順位は高くない
と判断した。今後の開発支援方針は、バイナリーを想定した開発支援となろう。
①
フラッシュタイプ開発の可能性
CERD では、Obock において MT 探査を含むプレフィージビリティー調査を実施し
ている。報告書は非公開であり、調査団はレビューできないものの、担当者へのイン
タビューでは、MT 探査ではアノマリーは確認されなかったとのことである。温泉湧
出地点が海岸に位置するため、地表からの探査のみでは、十分な調査結果が得られて
いない可能性がある。フラッシュタイプの施設を想定すると、より精度の高い調査が
必要と考えられるので、海上からの探査を併用する必要も考えられる。ただし、海上
からの探査は実績が少ないため、技術とコストの両面から妥当性を検討する必要があ
る。また、Obock は Asal 地域から約 150km 離れた遠隔地であるため、送電線の建設
の必要性を考慮する必要がある。Obock での地産地消を目的とする場合は、現在の
Obock のベース需要が 500kW 程度であることを想定すると、小規模な発電施設でも
対応可能と考えらる。従い、大規模な調査を実施せずに実現するような地熱開発が望
まれる。
以上から、Obock においては、フラッシュタイプの開発を想定した地熱発電開発の
優先順位は低いものと考えられる。
②
バイナリータイプの開発を想定する場合
Obock で地産地消の地熱発電施設を考慮する場合、バイナリータイプの開発が想定
できる。この場合、表に示した開発支援優先順位とは別に、別途独自に調査を進める
ことも可能である。
国際協力機構
S-9
日本工営株式会社
住鉱資源開発株式会社
地熱エンジニアリング株式会社
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情報収集・確認調査
ファイナルレポート
図 1 試掘までの支援の基本方針
11.2.2. フラッシュタイプの開発を想定した支援
【1】最優先地点における調査 – Hanle-Garabbayis 地点
今回の調査の結果、地熱資源量評価やアクセスの容易さ、並びに調査実施の容易さ等を
考慮して、Hanle-Garabbayis 地熱地点を支援対象の最優先とした。
①
詳細地質調査
この地点の周辺には今回の調査対象以外にも噴気が存在する。詳細調査ではこの噴
気地点を中心に現地調査を行い、必要に応じて岩石試料、変質粘土試料、地化学分析
用試料を採取する。
②
物理探査(MT/TEM 探査)
地質構造、貯留層構造を調査する目的で物理探査を実施する。ODDEG 保有する物
理探査機器は学術的な分野で多く利用される機種であり、我が国の民間コンサルタン
トで保有している会社は少なく、これを十分に操作できない可能性がある。このため、
Hanle-Garabbayis では、探査機器を本邦から持ち込んで日本人技術者が中心となって
探査を行う。
【2】Arta, Nord Goubet を対象にした支援
Hanle-Garabbayis 地点、Arta 地点、Nord Goubet 地点を比較して、今後試掘を行う最優先
地点の確認を行うため、以下の支援を考慮する必要がある。
国際協力機構
S-10
日本工営株式会社
住鉱資源開発株式会社
地熱エンジニアリング株式会社
ジブチ共和国地熱開発にかかる
情報収集・確認調査
ファイナルレポート
これまで、MT/TEM 探査が実施されていない Arta 地点では物理探査現地調査実施に関す
る支援を行う。我が国からの調査資源に限りがある場合は、ODDEG が自身の機材を利用し
て、早い時期に探査が行えるように資金面などで支援を行う。
CERD で MT 探査を実施済みの Nord Goubet 地点については、現在非公開となっている報
告書を入手してレビューを行う。必要な場合には追加調査の支援を行う。追加調査の形態
としては、邦人による調査や、資金面での支援などが考えられる。
なお、Gaggade-Taassa は、アクセス条件が良好ではないため、将来の ODDEG の課題とし
て期待したい。
11.2.3. 対象 3 地点を対象とした支援 - 総合解析
①
MT 探査解析支援 (Hanle-Garabbayis, Arta および Nord Goubet)
これらの探査で得られた結果を、2 次元逆解析ソフトを用いて解析する。ジブチ側
では現在このようなソフトを保有していないので、逆解析ソフトを提供しつつ技術支
援を行うことが望ましい。
②
貯留層概略モデル構築支援
以上の結果に基づき、3 地点(Hanle-Garabbayis, Arta および Nord Goubet)の概略的
な貯留層モデルを構築して、概略資源量を算出する。
③
プレフィージビリティースタディーの実施
3 地点(Hanle-Garabbayis, Arta および Nord Goubet)のうち、最も有望と判断される
地熱地点において、プレフィージビリティースタディーを実施する。プレフィージビ
リティースタディーでは、試掘位置、試掘方法の提案や、坑井試験や坑内検層の提案
も含むものとする。
11.2.4. 現地作業期間の提案
ジブチ国では 5 月から 9 月までは平均気温が 30℃を超え、7 月には 35℃に達する。従っ
て、ジブチ国の技術者は、平均気温が 30℃を下回る 10 月から翌年 4 月にかけて現地調査を
実施している。とりわけ、12 月~2 月にかけては平均気温が 25 度台となるので、この時期
における調査の実施が望まれる。
11.3. バイナリータイプを想定する地点での支援
- Obock
Obock では大規模な地熱発電開発は必要ではないと考えられ、当面のベース需要を満たす
出力 500~600 kW 程度の安価な電力源の確保が課題であると認識される。このため、大規
模な調査や調査井掘削の必要性の有無を検討する必要がある。
現時点で調査団は次の様なアプローチを提案する。
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S-11
日本工営株式会社
住鉱資源開発株式会社
地熱エンジニアリング株式会社
ジブチ共和国地熱開発にかかる
情報収集・確認調査
ファイナルレポート
11.3.1. CERD のプレフィージビリティー 報告書のレビュー
CERD では Obock において、MT 探査や地化学調査を含むプレフィージビリティー調査を
実施しているが、非公開となっており調査団は入手していない。地熱開発を念頭に我が国
からの支援を期待する場合には、まずはこの報告書の開示が必要である。
11.3.2. 調査計画の立案
前述のように、Obock で実施された MT 探査の結果では比抵抗異常は確認されなかったと
のことなので、場合によっては陸上からの追加調査や海上からの調査が必要になる可能性
がある。
海岸線を挟み陸上と海上から MT 探査を実施し、地下構造を探る。だだし、費用対効果
を検討する必要がある。
陸上からスリムホールを掘削し地温勾配や温泉の湧出の有無等を調査する。スリムホー
ルは、海に向けての傾斜掘削とする。農業省では深度 500m程度まで掘削できるリグを保有
しているので、活用できる可能性がある。ただし、熱水対策あるいは暴噴対策が必要であ
る。
11.3.3. 課題
Obock で上記の資源量が確認された場合でも、塩分濃度は海水程度、あるいはそれ以上に
なると想定されるので、以下の様な課題が想定される。

熱水循環系のスケール対策

冷却水(海水を想定)のスケール対策
11.4. その他―ジブチ市水源井戸(Awrofoul)
ジブチ市郊外 PK20 付近に位置している水道水源用の井戸で採取した試料の温度は 56.2℃
と 73.6℃であったが、アルカリ地化学温度計ではそれぞれ最高で 191℃を示した。この水源
の電気伝導率は 140~108mS/m と低く、また、エチオピア国からの電力の変電所も近隣に立
地しており、アクセスも良好なので、地熱開発地点としての可能性が評価される。今後
ODDEG による MT 探査を実施して、地下構造等を調査する価値はあるものと考えられる。
以上
国際協力機構
S-12
日本工営株式会社
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目
次
調査対象位置図
略語表
要旨
第1章
調査の目的・背景.................................................................................................................. 1
1.1
調査の背景 ................................................................................................................................. 1
1.2
業務の目的および範囲.............................................................................................................. 1
1.2.1
業務の目的.......................................................................................................................... 1
1.2.2
対象地域.............................................................................................................................. 1
1.2.3
調査の範囲.......................................................................................................................... 1
1.2.4
ODDEG、CERD との共同調査 – 謝辞 .......................................................................... 2
第2章
2.1
ジブチ国 電気事情と電力開発計画 ................................................................................. 2-1
ジブチ国の発電 – 推移と現況........................................................................................... 2-1
2.1.1
推移 .................................................................................................................................. 2-1
2.1.2
国内設備現況................................................................................................................... 2-1
2.1.3
エチオピアからの電力供給と自国発電量 ................................................................... 2-3
2.2
ジブチ国の国家開発計画....................................................................................................... 2-4
2.2.1
Vision Djibouti 2035......................................................................................................... 2-4
2.2.2
国家開発 5 カ年計画....................................................................................................... 2-4
2.2.3
ジブチ国電力公社(EdD)の計画 ............................................................................... 2-5
第3章
国際協力機構
地熱開発にかかる組織体制............................................................................................... 3-1
i
日本工営株式会社
住鉱資源開発株式会社
地熱エンジニアリング株式会社
ジブチ共和国地熱開発にかかる
情報収集・確認調査
ファイナルレポート
3.1
エネルギー自然資源省(MENR)、ジブチ電力公社(EdD) ........................................ 3-1
3.2
ジブチ国地熱エネルギー開発局 (ODDEG) ...................................................................... 3-3
3.2.1
設立目的........................................................................................................................... 3-3
3.2.2
組織 .................................................................................................................................. 3-4
3.2.3
要員・設備....................................................................................................................... 3-5
3.3
高等教育研究省(MESR)、ジブチ国調査研究センター(CERD) ................................... 3-6
3.3.1
CERD 地球科学研究部 物理探査部門の現況 .......................................................... 3-8
3.3.2
CERD 地球科学研究部 地化学部門の現況 ............................................................ 3-13
第4章
他援助機関の動向............................................................................................................... 4-1
国連大学地熱エネルギー利用技術研修プログラム ..................................... 4-1
4.1
UNU-GTP
4.2
ICEIDA アイスランド国際開発機構 ................................................................................... 4-2
4.3
アサール地熱開発に関する支援........................................................................................... 4-2
4.4
その他 ...................................................................................................................................... 4-2
第5章
5.1
地熱有望地点全 13 地点の調査結果 ................................................................................. 5-1
地質概要 .................................................................................................................................. 5-1
5.1.1
テクトニクス................................................................................................................... 5-1
5.1.2
地域の地質構造と地質状況 ........................................................................................... 5-1
5.2
衛星画像解析........................................................................................................................... 5-5
5.2.1
調査目的........................................................................................................................... 5-5
5.2.2
調査方法........................................................................................................................... 5-5
5.2.3
調査結果........................................................................................................................... 5-7
5.3
地質調査 ................................................................................................................................ 5-12
5.3.1
調査目的......................................................................................................................... 5-12
5.3.2
調査方法......................................................................................................................... 5-12
5.3.3
調査結果......................................................................................................................... 5-12
5.4
衛星画像解析、地質調査による地熱開発有望地点の評価 ............................................. 5-18
5.4.1
Arta 地点 ........................................................................................................................ 5-18
5.4.2
Nord Goubet-Anaale 地点 .............................................................................................. 5-18
5.4.3
Hanle-Garabbayis 地点................................................................................................... 5-19
国際協力機構
ii
日本工営株式会社
住鉱資源開発株式会社
地熱エンジニアリング株式会社
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情報収集・確認調査
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5.4.4
Gaggade-Taassa 地点 ..................................................................................................... 5-19
5.4.5
その他の地点................................................................................................................. 5-19
5.5
地化学調査 ............................................................................................................................ 5-19
5.5.1
調査の目的..................................................................................................................... 5-19
5.5.2
調査の内容..................................................................................................................... 5-19
5.5.3
調査結果......................................................................................................................... 5-21
5.5.4
考察 ................................................................................................................................ 5-22
5.5.5
地化学調査による貯留層評価 ..................................................................................... 5-31
5.6
CERD との地化学分析結果比較 ......................................................................................... 5-34
第6章
調査対象地点の地熱資源評価........................................................................................... 6-1
6.1
Arta 地点 .................................................................................................................................. 6-1
6.2
Gaggade Taassa 地点 ............................................................................................................... 6-1
6.3
Hanle-Garabbayis 地点............................................................................................................. 6-1
6.4
Lac Abhe 地点 .......................................................................................................................... 6-2
6.5
Nord Goubet 地点..................................................................................................................... 6-2
6.6
Obock 地点 ............................................................................................................................... 6-2
6.7
Djibouti Aurofoul 地点............................................................................................................. 6-2
6.8
その他湧水地点....................................................................................................................... 6-3
6.8.1
Asal-Korili 湧水 ............................................................................................................... 6-3
6.8.2
Hanle-Dagguirou, Hanle-Minkileh, Hanle-Agna 地点 ..................................................... 6-3
6.8.3
Rouweli 地点 .................................................................................................................... 6-3
6.8.4
Sakalol Asbou-Dara 地点 ................................................................................................. 6-3
第7章
社会環境調査....................................................................................................................... 7-1
7.1
調査の目的 .............................................................................................................................. 7-1
7.2
調査の方法 .............................................................................................................................. 7-1
7.3
調査の結果 .............................................................................................................................. 7-1
7.3.1
自然保護地区について................................................................................................... 7-1
7.3.2
社会環境影響評価について ........................................................................................... 7-3
第8章
国際協力機構
開発支援優先順位の提案................................................................................................... 8-1
iii
日本工営株式会社
住鉱資源開発株式会社
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ジブチ共和国地熱開発にかかる
情報収集・確認調査
8.1
ファイナルレポート
評価項目 .................................................................................................................................. 8-1
8.1.1
資源量評価....................................................................................................................... 8-1
8.1.2
アクセス........................................................................................................................... 8-1
8.1.3
開発スペース、掘削水................................................................................................... 8-1
8.1.4
環境 .................................................................................................................................. 8-1
8.1.5
参考情報........................................................................................................................... 8-1
8.2
開発支援優先順位の提案....................................................................................................... 8-2
8.2.1
Hanle-Garabbayis ............................................................................................................. 8-2
8.2.2
Arta, Noud Goubet ............................................................................................................ 8-2
8.2.3
Gaggade-Taassa ................................................................................................................ 8-2
8.2.4
Obock ................................................................................................................................ 8-2
8.2.5
Lac Abhe ........................................................................................................................... 8-3
8.2.6
Djibouti-Awrofoul ............................................................................................................ 8-3
第9章
9.1
高塩濃度地熱流体の対策................................................................................................... 9-1
ジブチ国 Asal 地点と米国 Salton Sea の地熱流体.............................................................. 9-1
9.1.1
Asal 地域でのスケール・腐食試験結果概要............................................................... 9-1
9.1.2
米国 Salton Sea 地域での対策 ........................................................................................ 9-2
9.2
高塩濃度地熱流体対策のコスト試算 ................................................................................... 9-3
9.2.1
試算の目的....................................................................................................................... 9-3
9.2.2
試算方法........................................................................................................................... 9-3
9.2.3
試算結果........................................................................................................................... 9-4
第 10 章
地熱開発プロファイル..................................................................................................... 10-1
第 11 章
今後の地熱開発支援の方向性、課題と提言 ................................................................. 11-1
11.1
ジブチ国電力開発計画と地熱開発 ................................................................................. 11-1
11.2
地熱資源開発のプロセスと ODDEG の業務分掌 ......................................................... 11-2
11.3
地熱開発の各段階における作業内容とジブチ国の現有能力 ..................................... 11-3
11.4
地熱開発有望地点での調査実績と ODDEG 業務の方向性 ......................................... 11-5
11.5
地熱開発にかかる支援の方向性..................................................................................... 11-7
11.5.1
国際協力機構
地熱開発全体にかかる支援の方向性 ......................................................................... 11-7
iv
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情報収集・確認調査
11.5.2
第 12 章
ファイナルレポート
当面の支援の方向性..................................................................................................... 11-9
引用文献 ............................................................................................................................ 12-1
図表目次
図 2-1
ジブチ国電力需要の推移 ............................................................................................... 2-1
図 2-2
ジブチ国 電力供給計画 ............................................................................................... 2-6
図 3-1
エネルギー開発関係組織 ............................................................................................... 3-1
図 3-2 MENR 組織図 ................................................................................................................... 3-2
図 3-3
EdD 組織図 ....................................................................................................................... 3-2
図 3-4
ODDEG 組織図 ................................................................................................................ 3-4
図 3-5
CERD 組織図.................................................................................................................... 3-6
図 5-1
アフリカ大地溝帯 ........................................................................................................... 5-1
図 5-2 調査地域の地質図 ........................................................................................................... 5-2
図 5-3
調査地域の地質層序図 ................................................................................................... 5-2
図 5-4
調査地域の地質構造発達史 ........................................................................................... 5-3
図 5-5
火山体周辺の酸性変質帯(①②③)の模式的分布.................................................... 5-6
図 5-6
TAS ダイアグラムによる既存の火山岩の化学組成および岩石試料の化学組成 . 5-17
図 5-7
Zr/TiO2-Nb/Y を用いた岩石試料の分類結果.............................................................. 5-17
図 5-8
トリリニアダイアグラム ............................................................................................. 5-23
図 5-9
ヘキサダイアグラム ..................................................................................................... 5-24
図 5-10 水質の平面位置図 ....................................................................................................... 5-25
図 5-11 δD-δ18O 相関図および平面位置図 ........................................................................... 5-27
図 5-12 B-Cl 相関図 .................................................................................................................. 5-28
図 5-13 Na-K-Mg 三成分系図................................................................................................... 5-29
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v
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図 5-14 噴気ガスの He-Ar-N2 三成分系図 .............................................................................. 5-30
図 5-15 噴気ガスの 3He/4He-4He/20Ne 相関図......................................................................... 5-30
図 5-16 δ13C 値の分布図 ........................................................................................................... 5-31
図 5-17 CERD と調査団の各分析項目の相関図 .................................................................... 5-35
図 7-1
保護地区と地熱有望地点の位置 ................................................................................... 7-2
図 7-2
ジブチ国の EIA 作業手順 ............................................................................................... 7-4
図 8-1
EdD 送変電計画図 ........................................................................................................... 8-1
図 10-1 プロファイリングフォーマット ................................................................................. 10-2
図 11-1 電力政策の基本となる 3E .......................................................................................... 11-1
図 11-2 試掘までの支援の基本方針 ..................................................................................... 11-10
表 2-1
EdD 保有のディーゼル発電設備 (送電網接続)......................................................... 2-2
表 2-2
EdD 保有のディーゼル発電設備 (独立電源)............................................................. 2-2
表 2-3
エチオピアとの電力供給契約概要 ............................................................................... 2-3
表 2-4
ジブチ国電力自給率 ....................................................................................................... 2-3
表 3-1
ODDEG 技術職員(2014 年 7 月 20 日現在) ................................................................... 3-5
表 3-2
ODDEG 保有地化学調査機材 ........................................................................................ 3-5
表 3-3
CERD 地球科学研究部門 要員 【2014 年 6 月現在】 ........................................... 3-7
表 3-4
CERD から ODDEG に移籍した要員【2014 年 7 月 30 日】 ..................................... 3-7
表 3-5
CERD 物理探査技術者リスト ........................................................................................ 3-8
表 3-6
CERD 保有 MT 法調査機材リスト ................................................................................ 3-9
表 3-7
CERD 保有 TDEM 法調査機材リスト .......................................................................... 3-9
表 3-8
CERD 保有物理探査データ処理・解析プログラム一覧 .......................................... 3-10
表 3-9
CERD 調査実績(地熱調査のみ) .............................................................................. 3-11
表 3-10 CERD 保有設備・機材................................................................................................ 3-14
表 4-1
他援助機関の支援 ........................................................................................................... 4-1
表 5-1
地熱有望地点前 13 地点の衛星画像解析結果の一覧表............................................ 5-11
表 5-2
地質概査結果一覧表 ..................................................................................................... 5-13
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vi
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地熱エンジニアリング株式会社
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表 5-3
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調査地点および調査数量一覧表 ................................................................................. 5-15
表 5-4 X 線回折分析結果 ......................................................................................................... 5-18
表 5-5
採取試料一覧 ................................................................................................................. 5-20
表 5-6
化学分析項目 ................................................................................................................. 5-20
表 5-7
化学分析方法一覧 ......................................................................................................... 5-21
表 5-8
地化学温度計による資源評価まとめ ......................................................................... 5-33
表 6-1
有望地熱開発地点の資源評価 ....................................................................................... 6-4
表 8-1
開発支援優先順位の提案 ............................................................................................... 8-4
表 9-1
Asal 地域と Salton Sea 地域の熱水組成 ........................................................................ 9-1
表 9-2
各種熱水の Cl 濃度の想定範囲...................................................................................... 9-3
表 9-3
出力 25MW 地熱発電所の建設・維持コストの試算結果 .......................................... 9-4
表 9-4
出力 50MW 地熱発電所の建設・維持コストの試算結果 .......................................... 9-5
表 11-1 地熱開発段階の作業内容と ODDEG/CERD の実施能力現況 ................................ 11-4
表 11-2 地熱開発有望地点での調査実績 ............................................................................... 11-6
表 11-3 地熱開発に係る支援の方向性(案) ....................................................................... 11-7
表 11-4 地熱発電所(50MW 級)建設概略スケジュール ................................................... 11-8
表 11-5 ORC で必要な温泉湧出量 ........................................................................................ 11-12
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添付資料
添付資料-1
議事録
添付資料-2
収集資料リスト
添付資料-3
写真集
添付資料-4
衛星画像解析結果
添付資料-5
調査手法(地質・地化学)
添付資料-6
顕微鏡写真
添付資料-7
地質・地化学分析結果
添付資料-8
地熱プロファイル
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第1章 調査の目的・背景
1.1 調査の背景
ジブチ国は人口約 90 万人の小国であるが、海上交通路の要所として、国際社会から重要視さ
れている。国土の大部分は土漠で農業には適さないため、GDP の約 80%を輸送や港湾等のサー
ビス産業が占めている。これまで電力(発電容量 137MW 2010 年当時)は、高価な輸入石油火
力に頼っていたが、現在では約 8 割をエチオピアからの輸入電力に切り替えている。しかしな
がら、エチオピアは 9 割以上を水力発電が占めるため、特に乾季には十分な電力供給が保証さ
れていない。また、ジブチ国電力需要は 2008 年で約 50MW、電化率は 50%程度であるが、今
後、2030 年には約 200MW に達する
[1]
と予想されている。このため、ジブチ国政府は自国の安
定的な電源開発を目指し、230~860MW とされる地熱ポテンシャルに着目して、50MW 以上の
地熱発電開発を国家の主要課題としている。
ジブチ国では 1970 年代から Asal Rift を中心に試掘等を含めた地熱資源調査が実施されてい
る。しかしながら、地熱流体は、海水の 7 倍近い高塩分濃度(120,000 ppm) [2]を有し、硫化鉄
等のスケール問題を抱えるため、事業採算が難しく、未だ事業の実現化には至っていない。
係る状況下、2013 年 8 月安倍首相のジブチ国訪問時、グレ大統領から地熱開発の協力要請が
なされた。地熱流体の塩分濃度が高いジブチでの地熱開発は世界的にも難易度が高く、協力の
前提条件を整理・確認することが重要であり、技術的観点から基礎情報を収集・分析するため、
本調査を実施することとなった。
1.2 業務の目的および範囲
業務の目的
1.2.1
本調査は、既存の地熱資源調査資料を参照し、有望地点における衛星画像解析、現地地質地
化学調査並びに室内試験を行って地熱開発有望地点の評価をおこない、今後の我が国からの地
熱開発支援の方向性を検討するための基礎情報を収集・分析する目的でおこなったものである。
対象地域
1.2.2
調査対象地点および位置を巻頭の位置図に示す。
調査の範囲
1.2.3
以下の調査を実施した。
① ジブチ国の地熱有望地点 13 ヶ所を対象とした調査
-
既存の地熱資源調査の情報収集および報告書レビュー
-
衛星画像解析
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-
地質調査、地化学調査
-
統一的な基準(地熱資源・経済性・環境)による地熱有望地点の比較優位
② CERD の調査能力調査(地化学探査・MT 探査等)
③ ジブチ国の地熱開発の実施体制の調査(MENR、EdD、CERD、ODDEG)
④ 世銀等、他援助機関の動向の情報収集
⑤ 高塩分濃度地熱流体対策に関する情報収集(米国 Salton Sea Geothermal の取り組みや
Asal Rift 地点の地熱発電所計画における塩分対策)
⑥ 今後の地熱開発支援の方向性・留意事項(スケール対策、試掘方法含む)の提言
1.2.4
ODDEG、CERD との共同調査 – 謝辞
現地調査にあたっては、カウンターパート機関である ODDEG には調査機器の通関手続きや
現地調査に必要な諸手続きおよび現地宿泊施設の手配など多大な協力を頂いた。加えて、現地
調査に同行していただいた。また、事務所の会議室を調査団の執務室としてご提供を頂いた。
ジブチ国の科学技術研究機関である CERD には、所内の設備案内ならびに、地化学技術者の現
地同行をいただいた。また、地化学調査分析の一部を CERD の分析施設で分析し、試験値の相
互チェックを実施して頂いた。
その他、EdD や農業省など、本調査遂行にあたり、ジブチ国関係機関には多大なるご協力を
頂いた。
ここに記して、感謝申し上げる。
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第2章 ジブチ国 電気事情と電力開発計画
2.1 ジブチ国の発電
2.1.1
– 推移と現況
推移
ジブチ国内での年間合計発電量は、1995 年
から 1998 年にかけて一時減少したものの、
1970 年代初頭から増加し続け、2010 年には
350GWh を超えている(EUEIPDF の資料
[3]
)。
2011 年には、エチオピア国からの電力供給が
開始されたため、国内での発電量は 230GWh
程度に減少している(図 2-1 (1))。
さらに、2013 年の実績では、全供給電力量
354.9GWh のうち、自国での発電量は 67.5
(1) 年間合計発電量(GWh)の推移
GWh(19%)にとどまっており、エチオピア
からの電力供給への依存が高まっている。
同様に年間最大需要も増加し続けており、
2010 年には 64MW 程度、エチオピア国から
の電気供給が始まった 2011 年には 70MW に
達している(図 2-1 (2))。2013 年 7 月には、
76.9 MW にまで達している(ODDEG 資料)。
これに対して、2010 年以前の負荷率は、微
増はするものの 60%強にとどまっており、設
(2) 年間最大需要(MW)の推移
備が逐次投入されたことが伺われる。2011 年
にはエチオピアからの送電が開始された
2011 年には、負荷率は 40% 以下に低下して
いる(図 2-1 (3))。
2.1.2
国内設備現況
現在ジブチ国内には、2 ヶ所の発電所があ
り、送電網に接続されている。いずれもジブ
(3) 負荷率(%)の推移
(出典: EUEIPDF, 2013)
チ市内にある。設備容量と実用容量を表 2-1
に示した。Boulaos 発電所には合計 15 基、ま
図 2-1 ジブチ国電力需要の推移
た Marabou には 6 基のディーゼル発電機があ
る。合計の総設備容量は 135MW であるのに
対し、老朽化等の影響で実用容量は 101MW
にとどまっている。
国際協力機構
2-1
日本工営株式会社
住鉱資源開発株式会社
地熱エンジニアリング株式会社
ジブチ国地熱開発にかかる
情報収集・確認調査
ファイナルレポート
表 2-1 EdD 保有のディーゼル発電設備
(送電網接続)
BOULAOS-1
機番
G1
定格容量(MW)
6.6
7
6
6
6
6
実用容量(MW)
3.1
5.5
4.2
4.2
4.2
4.2
G12
G13
G14
G15
G16
G18
計
7
7
52
5.5
5.5
36
G17
BOULAOS -2
機番
G21
G22 BIS
G23 BIS
G24
G25
計
定格容量(MW)
13.7
15
7
5.5
15
56
実用容量(MW)
8.5
13.4
6.7
3.5
12
44
BOULAOS-3
機番
G31
G32
計
定格容量(MW)
4.5
4.5
9
実用容量(MW)
4
4
8
MARABOUT- 2
機番
M1
M2
M3
M4
M5
M6
計
定格容量(MW)
3
3
3
3
3
3
18
実用容量(MW)
2
2
2
2
2
2
12
合
計
定格容量(MW)
135
実用容量(MW)
101
(出典:EdD 資料)
また、タジュラ湾を挟んでジブチ市の対岸に位置する Tadjoura と Obock には、それぞれ独立電
源が設置されており、その設備容量と時間稼働率は表 2-2 に示す通りである。
表 2-2
EdD 保有のディーゼル発電設備
(独立電源)
Tadjoura
機番
Unit-1
Unit-2
Unit-3
Unit-4
Unit-5
Unit-6
計
定格容量(MW)
0.44
0.44
0.44
0.44
0.44
0.44
2.64
時間稼働率(%)
90.8
64.08
52.44
53.28
38.01
60.50
Obock
機番
Unit-1
Unit-2
Unit-3
Unit-4
Unit-5
計
定格容量(MW)
0.28
0.28
0.28
0.44
0.44
1.72
時間稼働率(%)
0
94
86
64
59
(出典:EUEIPDF, 2013)
国際協力機構
2-2
日本工営株式会社
住鉱資源開発株式会社
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ジブチ国地熱開発にかかる
情報収集・確認調査
2.1.3
ファイナルレポート
エチオピアからの電力供給と自国発電量
2011 年 11 月にジブチ国では隣国エチオピアから電力供給を受けることになった。その契約内
容は表 2-3 に示す通りである。
電気料金は 0.06 – 0.07 米ドル/kW である。ディーゼル発電で設定されている現在のジブチの電
気料金 0.3 米ドル/kW と比較すると格安である。このためジブチ国では、エチオピアからの電力
に大きく依存することになっている。ジブチ国の電力自給率は、2011 年の 33.2%、2012 年の 6.2%
および 2013 年の 19.0 %と極めて小さく、自国エネルギーの安全保障という観点で、大きな課題
となっている(表 2-4)。
なお、表 2-3 によればエチオピア国の乾期にあたる 11 月から翌年 6 月までの期間における供
給契約は締結されていない。ただし、この時期のジブチ国は、平均気温がもっとも低く、電力消
費量が少ない時期である。
表 2-3 エチオピアとの電力供給契約概要
ピーク時間
(18:30 - 21:30)
季節
雨期
乾期
7月1日 -
11 月 7 日
常時
(21:30 – 00:00-
18:30)
0.07 米ドル/kW
0.06 米ドル/ kW
未契約
0.07 米ドル/ kW
11 月 8 日 -(12 月)- 6 月 30 日
最大・最小供給電力
最大供給電力
年間 700 GWh
(平均 80 MW)
最少供給電力
年間 180 GWh
(平均 20 MW)
(出典:EUEIPDF, 2013)
表 2-4 ジブチ国電力自給率
2011 年
2012 年
2013 年
(a) 総供給量 (GWh)
232.0
387.0
354.9
(b) 自国発電
77.0
24.0
67.5
自給率 (%)
33.2
6.2
19.0
(出典:EdD 資料から調査団が整理)
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2-3
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住鉱資源開発株式会社
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ジブチ国地熱開発にかかる
情報収集・確認調査
ファイナルレポート
2.2 ジブチ国の国家開発計画
2.2.1
Vision Djibouti 2035
ジブチ国政府は「VISION Djibouti 2035」
[4]
をまとめ、2014 年 6 月にジブチ市内にてプレゼン
テーションを行っている。「VISION Djibouti 2035」には次の 5 項目が Vision の柱として謳われて
いる。
1. 国家の調和と平和
2. グッドガバナンス
3. 民間セクターを活用した多様性のあるかつ競争力のある経済
4. 人的資源の統合
5. 地方融合
「VISION Djibouti 2035」では、電力開発は競争力のある経済発展のために不可欠であるとして、
電力供給能力を 2014 年の 96MW から 2032 年には 355MW まで増加させるとしている。さらに、
ジブチ国政府はチャレンジングな下記の目標を掲げている。
ジブチ国は 2010 年時点で 100%の火力発電依存を、2020 年までに 100%の
再生可能エネルギー利用に変革する。
これらの目標を達成する手段として、エチオピアからの水力発電による電気輸入促進はもとよ
り、風力、太陽光、地熱などの地産エネルギーの開発に注力するとしている。このうち地熱資源
開発に関しては、国内の 10 地点に開発ポテンシャルがあり、このうち有望な 3 ヵ所において地熱
発電に利用できる地熱流体があることが確認されているとしている。
2.2.2
国家開発 5 カ年計画
ジブチ国は 1977 年に独立したが、1991 年 11 月に内乱が勃発し Tajoura や Obock を含む北部地
域は混乱した。1994 年 12 月に政府と反政府勢力の一部は平和協定を取り交わしたが、その後も
小規模な衝突が地方部で繰り返され、
最終的かつ全面的な平和協定の締結は 2001 年となり内乱は
10 年間にわたった。また、2008 年には隣国エリトリアと国境紛争が起きるなど、経済発展を阻害
した。このためジブチ政府は 1996 年に国際通貨基金と世銀からの支援を受けて、①財政、②社会
保障、③公企業、④教育、⑤保険を重点課題として行政改革を行うことを決定し、1) 2002 年から
2006 年、2) 2008 年から 2012 年、および 3) 2011 年から 2015 年の 3 次にわたる 5 カ年計画を策定
している。第 3 次 5 カ年計画
[5]
では、下記の 4 項目が開発の重点として謳われている。
基軸 1:成長、競争力、および雇用
基軸 2:基本的社会サービスへのアクセス向上
基軸 3:貧困及び脆弱性の減少
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情報収集・確認調査
ファイナルレポート
基軸 4:公共統治機能の向上
このうち電力開発は基軸 1 に含まれており、3) 2011 年から 2015 年の間に達成する目標として下
記の 3 項目が掲げられている。
目標 1:電気普及率を 52% から 70%に向上させる;電気料金を 0.3 米ドルから 0.27 米ド
ルに減少させる。
目標 2:技術的サービスロスを 15%から 13%、非技術的ロスを 10.5%から 1%にそれぞれ
減少させる。
目標 3:採取可能な地熱資源を確認する。
さらにこれらを達成するためのアクションプランとして、次の 4 項目が掲げられている。
行動 1:エチオピアからの電力輸入を実現する。
行動 2:地熱資源を開発する。
行動 3:送配電線を更新ないしは拡張する。
行動 4:電気供給サービスを向上する。
以上の様に、地熱開発は電力セクターの重要な優先課題となっている。
2.2.3
ジブチ国電力公社(EdD)の計画
ジブチ国の電力供給計画については、世銀の支援で 2009 年にマスタープラン
[1]
が策定されて
いる。これによれば、地熱発電は実現までに不確定要素が多いという理由で、参考ケースとして
のみ提示されている。提示された地熱発電は 2016 年、2019 年及び 2022 年にそれぞれ 20MW ず
つ開発して、60MW の電力を確保しようとするものである。
一方ジブチ国政府は、2014 年に前述の VISION Djibouti 2035 を発表し、2020 年までに国内の電
力需要をすべて再生可能エネルギーで賄うことを大きな目標としている。この国家方針に基づき、
ジブチ国電力公社は図 2-2 に示す様な電力供給計画を策定している
-
[6]
。これによれば;
2032 年における供給電力は 355MW である。
2016 年までは当面の措置として、エチオピアからの電力輸入と既存の Boulaos ディーゼル
発電所で電力需要を満たす。
2017 年には、それまでに完成予定の第二国際送電線で電力輸入量を増加させ、再生可能エ
ネルギーで全ての電力需要を満たす。
2019 年に、50MW の地熱発電所を稼働させる。
2021 年から逐次風力発電と太陽光発電を投入する。
2027 年以降、不足する電量については、Jaban に建設予定のディーゼル発電で賄う想定で
ある。
このうち地熱発電は、現在 Asal 湖で開発予定の出力が想定されている。
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2-5
日本工営株式会社
住鉱資源開発株式会社
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情報収集・確認調査
(French)
Interconnexion
Geothermie
Centrale de Boulaos
Centrale Jaba'AS
éolien
solaire
Demande
ファイナルレポート
(邦訳)
国際送電
地熱
Boulaosディーゼル
Jaba'ASディーゼル
風力
太陽光
需要
ディーゼル
(Jaban)
太陽光
風力
水力-輸入
ディーゼル
(Boulaos)
地熱 (50MW)
水力-輸入
(出典:EdD [6])
図 2-2 ジブチ国
電力供給計画
この計画の特徴は以下の通りである。
-
国内全需要電力の 60%程度をエチオピア国からの供給に依存している。
出力の安定性に不安がある風力と太陽光に 20%程度依存している。
地熱については、Asal・Fiale 以外の有望地点の開発が見込まれていない。
エネルギーの安定供給と安全保障の観点から、地熱発電をさらに投入できる余地を残している
ものと考えられる。
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2-6
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ジブチ国地熱開発にかかる
情報収集・確認調査
ファイナルレポート
第3章 地熱開発にかかる組織体制
ジブチ国のエネルギー政策に関係している機関は次の 3 機関である。
1. エネルギー自然資源省 (MENR)
2. 高等教育省 (MESR)
3. 地熱エネルギー開発局 (ODDEG)
President
Ministry of Higher
Education and Reserch
(MESR)
Ministry of Energy
Resposible for Natural
Resources (MENR)
Centre for the Study and
Reserch of Djibouti
(CERD)
Djibuti Electricity (EdD)
Djiboutian Office for
Development of
Geothermal Energy
(ODDEG)
(出典:JICA 調査団)
図 3-1 エネルギー開発関係組織
3.1 エネルギー自然資源省(MENR)、ジブチ電力公社(EdD)
エネルギー自然資源省(MENR)は、ジブチ国のエネルギー政策の立案や施行、ならびに傘下
のエネルギー関連機関の監督機関である。傘下にある主な機関は、ジブチ電力公社(EdD)であ
る。MENR 全体の組織図を図 3-2 に示す。
【ジブチ電力公社(EdD)】
ジブチ電力公社 EdD は 1960 年に設立され、ジブチ国の発電・送電・配電を担当する唯一の機
関である。MENR の監督下にはあるが、独立運営かつ独立採算の公社と位置付けられている。た
だし、
電気料金の変更は閣議の承認が必要である。
EdD は、ジブチ国の全土
(Djibouti, Arta, Tadjoura,
Obock、Dikil および Ali Sabieh)に電力を供給する。一方、送配電網が完備されていない地方地
域は ADDS(Djibouti Socila Development Agency)と呼ばれる機関が電力供給を担当している。
国際協力機構
3-1
日本工営株式会社
住鉱資源開発株式会社
地熱エンジニアリング株式会社
ジブチ国地熱開発にかかる
情報収集・確認調査
ファイナルレポート
EdD が所有する主な施設は 1) Marabout および Boulaos のディーゼル発電所、2) PK2 変電所、
Ali-Sabieh 変電所、3) Obock と Tadjoura にそれぞれ設置されている独立発電所、4) PK12~Ali
Sabieh 間 72km および PK12~Palmeraie 間に 9.3km に敷設されている 63kV 送電線、5) エチオピ
ア(Dire Dawa)~ジブチ(PK12)間の 230KV 国際送電線 283km のうちジブチ領内 203km、であ
る。
EdD の組織図を図 3-3 に示す。
Minister
EDD,
ADME
Private
Secretariat
Publication・Files・
Documents
Secretariat
Technical
Advisor
Assistant
Administration
/Finance /Regal
Directorate
Natural Resources
Directorate
Personnel Affaires
Mining Geology
/Exploration
Renewable Energy
General
administration /
Finance
Oil Transportation
/Refining
Regal
Oil /Gas
exploration
Rural
Electrification
Technical
(Contract)
Export /Storage
/Distribution
Budget, Account,
equipment
Permission,
Concession
Conventional
Energy
Survey /Planning
Hydrocarbon
Monitoring and
Control
Energy Directorate
Project Administration
Hydrocarbon
Directorate
Regulation
(出典:MENR 資料から調査団が整理)
図 3-2 MENR 組織図
Board of
Administration
Director General
Training Center
Litigation Sec.
Deputy Director
General
Information
Technology
Chief Secretary
Geothermal
Customer Sec.
Production Sec.
Accounting Agency
Approv. & Stock Sec.
Transportation Sec.
Administrative Sec.
General Sec.
North Subdivision
South Subdivision
(出典:EdD 資料から調査団が整理)
図 3-3
国際協力機構
EdD 組織図
3-2
日本工営株式会社
住鉱資源開発株式会社
地熱エンジニアリング株式会社
ジブチ国地熱開発にかかる
情報収集・確認調査
3.2 ジブチ国地熱エネルギー開発局
3.2.1
ファイナルレポート
(ODDEG)
設立目的
ジブチ国地熱エネルギー開発局(ODDEG)は、2014 年に大統領府直下の機関として設置され
た新しい機関である。政令によれば、ジブチ国の全ての地熱関連の人的物的資源を集中して地熱
資源開発を行う機関と規定されている。報道によれば、ODDEG はケニアの GDC のモデルに従っ
て設立されたとエネルギー天然資源省大臣は述べている。
ODDEG の役割は、大統領令 No, 2014-33/PRE (2014 年 2 月 18 日)で規定されている。以下抜粋
する。
-
第二条:ODDEG は、管理運営を担当して財政的に自立する法人格を有する公共機関で
ある。ODDEG はジブチ共和国大統領府に設置する。
-
第三条:ODDEG の主要業務は以下の通りである。
-

国内に賦存する種々のエネルギーレベルの地熱資源を同定確認するとともに、探査、
予備調査およびスタディーをおこなう。

地熱資源の工業用利用とその他利用のためのプレフィージビリティー調査やフィー
ジビリティー調査を行う。

地熱資源開発を行う公的機関や民間機関の同定やその支援を適切なパートナーと行
う。地熱資源開発はエネルギー開発に限らず副産物の開発も含む。
第四条:ODDEG の具体的な行動内容は以下の通りである。

地表調査、坑井掘削および地熱資源利用を通して、早期の地熱資源開発を促進する。

独立系発電事業者(IPP)に地熱資源を供給する。

地熱開発にかかる技術開発やその実演、普及をおこなう。

地熱開発業務に関する施設建設や運転に関する全ての業務を行う。

情報収集を通じて公的機関や民間機関にアドバイスを行う。

多国間協力や二国間協力における特権事項に関する合意事項の精緻化や実施へ参加
する。
この大統領令によれば、ODDEG は調査から蒸気生産、蒸気供給までを業務分掌としている。
現在すでに任命されている局長によれば、世銀支援で試掘調査を予定している Asal・Fiale 地熱地
点では、蒸気生産確認後には、開発権限(Consession)を IPP に譲渡する計画であるとのことであ
る。このことから、ODDEG の当面の業務範囲は、資源確認までと考えられる。
国際協力機構
3-3
日本工営株式会社
住鉱資源開発株式会社
地熱エンジニアリング株式会社
ジブチ国地熱開発にかかる
情報収集・確認調査
3.2.2
ファイナルレポート
組織
ODDEG の組織は、同大統領令 No.2014-33/PRE (2014 年 2 月 18 日)に規定されている
[7]
。組
織図を図 3-4 に示す。組織図上では、ODDEG は坑井掘削まで(蒸気確認まで)を担当する機関
となっている。
2014 年 7 月 30 日の ODDEG 担当者との交信によれば、ODDEG はトルコの掘削リグ製作会社
Petrotek 社と契約交渉を進めているとのことである。交渉は時間を要し、購入時期は不明である
としているが、蒸気確認までを担当する機関として、準備を整えつつあることが理解できる。
President
Council
Administration
Director General of
ODDEG
Information and
Documentation
Audits and Risks
Administrative,
Financial and Legal
Human Resources,
Accounting and
Materials
Legal
Planning,
Development and
EIA
Studies, Research
and Explorations
Studies and
Research
Development and
EIA
Drilling
Planning
Decret No. 2014-33 /PR
Portant Statut de I'Office Djiboutien de
Développement de l'Energie Géothermique.
Maintenance
(出典:法令 2014-33/PR により JICA 調査団作成)
図 3-4
国際協力機構
ODDEG 組織図
3-4
日本工営株式会社
住鉱資源開発株式会社
地熱エンジニアリング株式会社
ジブチ国地熱開発にかかる
情報収集・確認調査
3.2.3
ファイナルレポート
要員・設備
初代局長には、CERD の前身の ISERST(Institute Superieur d’Etudes et de Recherches Scientifiques
et techniques)の研究者であり、後に EdD の地熱開発を担当した、Abdou Mohamed Houmed 氏が
選任されている。また、2014 年 7 月 30 日付けで発布された法令で、CERD の物理探査研究員 3
名、貯留層技術職員 1 名、技術員 1 名と MENR の技師 5 名とが正式に ODDEG 職員として任命さ
れている。
表 3-1 ODDEG 技術職員(2014 年 7 月 20 日現在)
ODDEG 職員
出身組織
人数
局長
ISERST→EdD
1
地球物理学者
CERD
1
貯留層エンジニア
CERD
1
物理学者
CERD
1
技術員
CERD
1
地球物理技師
CERD
1
掘削技師
MENR
3
計画技師
MENR
1
開発技師
MENR
1
(出典:JICA 調査団)
2014 年 6 月の時点では、ジブチ市内 Marabout 地区の EdD 事務所に仮事務所を置いていたが、
2014 年 12 月現在では下町の議会近くに移設しており、新事務所は Djibouti 市郊外の PK20 地点の
旧農業関連施設跡地に建設中である。当面の地熱探査に必要になると考えられる物理探査機器類
のうち、現在 CERD が保有しているものは、近々ODDEG に移管される見込みである。2014 年 6
月末現在、ODDEG が保有する地化学調査関連の設備・機材は、本調査で譲渡した表 3-2 の現地
調査機材のみである。
表 3-2
ODDEG 保有地化学調査機材
分析機材
数量
備考
pH 計
pH meter
2台
現場用
電気伝導率計
Conductivity meter
2台
現場用
温度計(熱電対による)
Thermometetr
2台
現場用
(出典:JICA 調査団)
国際協力機構
3-5
日本工営株式会社
住鉱資源開発株式会社
地熱エンジニアリング株式会社
ジブチ国地熱開発にかかる
情報収集・確認調査
ファイナルレポート
3.3 高等教育研究省(MESR)、ジブチ国調査研究センター(CERD)
高等教育研究省(MESR)は、ジブチ国の高等教育政策の立案や施行を担当し、傘下にジブチ大学
や、医療学校、ジブチ国調査研究センター(CERD)を置く。
【ジブチ国調査研究センター(CERD)】
CERD の前身となる研究機関 ISERST(Institut Supérieur d’Etudes et de Recherches Scientifiques et
Techniques 科学技術高等調査研究所)は、主として自然資源調査を目的として 1979 年 1 月 1 日
に設立された。その後、2001 年に再編成されて、CERD(le Centre Etude et Recherche de Djibouti
ジブチ国調査研究センター)となり、7 つの研究部門とその他のサポーティング部署からなる総
合研究所となり現在に至っている。
図 3-5 にジブチ国調査研究センター(CERD)全体の組織図を示す。
これら研究部門のうちエネルギー開発関連部門は、地球科学部門(Earth Sciences Institute)であ
る。以下に地球科学部門について記述する。
Ministry of Higher Education and Research
Directorate General
Earth Sciences Institute
Cartography /GIS /Remote
sensing Laboratory
Administration and
Finance Department
Life Sciences
Institute
Library
Administration
Section
Languages of Djibouti
Institute
Publishing Science and
Environmental Journal
Accounting
Section
Social Sciences
Institute
Risk and Disaster
Management
Laboratory
New Technologies
Institute
Strategies and Politics
Research Institute
Medical Research
Institute
(出典:CERD)
図 3-5 CERD 組織図
国際協力機構
3-6
日本工営株式会社
住鉱資源開発株式会社
地熱エンジニアリング株式会社
ジブチ国地熱開発にかかる
情報収集・確認調査
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【CERD 地球科学研究部門】
表 3-3 に、2014 年 6 月現在の要員構成を示す。ただし、これらの要員のうち 5 人は 2014 年 7
月 30 日付けの政令により ODDEG に移籍している。移籍した要員内訳を表 3-4 に示す。
以下表 3-3 に従って記述する。
CERD の地球科学研究部門は、10 の専門分野にわたり、総勢 30 人の技術職員が配置されてい
る。各分野における技術職員数では、地化学が 7 人と最も多く、ついで水理地質 5 人、地震学 4
人、及び地質学、地球物理、地図作成がそれぞれ 3 人ずつとなっている。とくに水理地質・地化
学(水質)分野が充実している。
CERD の地球科学研究部門は、2014 年 7 月 30 日に ODDEG が設置されるまでは、地熱資源調
査を担当した機関である。近年、Obock、Nord Goubet および Lac Abhe において、地熱開発にか
かるプレフィージビリティー調査を実施した。
表 3-3 CERD 地球科学研究部門
【2014 年 6 月現在】
博士
PhD
修士
Master
学士
Bachelor
その他
others
計
Subtotal
Geology
4
-
1
-
5
Geothermal
1
-
-
-
1
1
-
-
-
1
地質学
地熱
要員
鉱床学
Metallogeny
地球物理
Geophysics
1
2
-
-
3
地図製作
Cartography
-
3
-
-
3
リスクマネージメント
Risk Management
-
1
-
-
1
水理地質
1
2
-
3
6
Hydrogeology
地化学
Geochemical
1
5
-
2
8
地震学
Seismology
-
1
-
3
4
Drilling
-
-
-
2
2
7
12
1
10
34
坑井掘削
計
Total
(出典:CERD)
表 3-4 CERD から ODDEG に移籍した要員【2014 年 7 月 30 日】
国際協力機構
ODDEG 職員
出身組織
人数
地球物理学者(PhD)
CERD
1
貯留層エンジニア(PhD)
CERD
1
物理学者
CERD
1
技術員
CERD
1
地球物理技師
CERD
3-7
1
(出典:法令 2014-193/PRE による)
日本工営株式会社
住鉱資源開発株式会社
地熱エンジニアリング株式会社
ジブチ国地熱開発にかかる
情報収集・確認調査
3.3.1
ファイナルレポート
CERD 地球科学研究部
物理探査部門の現況
ここで、今後ジブチの地熱開発を支援する方向性を検討する資料とするため、地熱開発で特に
重要な分野となる物理探査部門と地化学部門の CERD の現状を下記に示す。
(1)
物理探査担当職員
表 3-5 に人員リストを示す。CERD で物理探査業務に従事する人員は 3 名、全員フランスやア
ルジェリアなどジブチ国外で学位を取得している。
表 3-5 CERD 物理探査技術者リスト
氏名
Dr.
Hassan
Magareh
役職
Mohamed
上席物理探査技師
Nasardin Ahmed
物理探査技師
Fahman Hassan Abdllah
物理探査技師
専門
MT 法探査
電気探査
TDEM 法探査
重力探査
DGPS 測量
記事
Université de Bretagne で PhD 取得。
アルジェリアにて地震波探査を学び、
学位を取得。
フランスで分子物理学の MD を取得。
(出典:CERD)
(2)
(a)
物理探査保有設備・機材
MT(Magnetotelluric)法 探査機器
CERD では MT 法探査機器としてドイツ Metronix 社製 ADU-07e を 2 台所有している。1 台は
2010 年に UNESCO 資金で、1 台は 2012 年に CERD の資金で購入したものである。
表 3-6 に CERD が保有する MT 法探査の機材リストを示す。
測定機など大部分の機材は Djibouti
市(CERD 物理探査研究室もしくは CERD 施設内の機材倉庫)に保管されているが、一部は Arta
にある地震観測所に保管されている(巻末写真集参照)。
【注目事項】CERD が保有している MT 法測定器 Metronix ADU は、我が国では大学や研究機
関で多く利用されている機種で、民間コンサルタントで利用している例は少ない。Metronix 社は
もっぱら学術的な探査のための機種を開発してきており、かつ軍事転用が可能な部品もあるため、
ドイツ国の輸出ライセンスが必要であるためである(Metronix 社談)。一方、我が国の民間コン
サルタントが使用している Phoenix 社の製品は、実用に適しており、自動計測が可能であるなど、
操作方法が簡便である。従い、Metronix 社の製品を有するジブチ国の技術者に技術指導が必要な
場合は、支障をきたす可能性がある。
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3-8
日本工営株式会社
住鉱資源開発株式会社
地熱エンジニアリング株式会社
ジブチ国地熱開発にかかる
情報収集・確認調査
ファイナルレポート
表 3-6 CERD 保有 MT 法調査機材リスト
機
材
型番(仕様)
数
量
1
MT 法測定機
Metronix ADU-07e; SN:107,150
2台
2
磁場測定用コイル
Metronix MFS-06e;
SN:62; 64; 105; 107; 115; 150
6台
3
コイルケーブル
Metronix
6本
4
非分極性電極
Metronix EFP-06
18 個
5
電場測定用電線
Metronix
16 本
6
測定機用バッテリー
-
4~6 個
7
バッテリー充電器
-
2台
8
発電機
-
2台
-
1 セット
-
1 セット
測量用機材
(コンパス、水準器、巻尺等)
センサ設置用道具
(スコップ、ツルハシ等)
9
10
11
GPS 受信機
GARMIN
2台
12
測定機操作用ノート PC
TOSHIBA,DELL
3台
13
測定機-PC 接続用 LAN ケーブル
50m
2本
14
データ解析用デスクトップ PC
-
複数台
(出典:CERD)
TDEM(Time-Domain ElectroMagnetic)法 探査機器
(b)
CERD では TDEM 法探査機器として 2010 年に UNESCO 資金で導入した豪州・Monex GeoScope
社製 Terra TEM 1 台を保有しており、機材は Djibouti 市(CERD 物理探査研究室もしくは CERD
施設内の機材倉庫)に保管されている(巻末写真集参照)。表 3-7 に機材リストを示す。
表 3-7 CERD 保有 TDEM 法調査機材リスト
機
材
型番(仕様)
数
量
1
TDEM 法測定機
Monex GeoScope ; Terra TEM:S/N 121076
1台
2
送信用・受信用電線
100m x 100m loop
2 セット
3
電源用バッテリー
Monex GeoScope; Battery Box
1個
4
バッテリー充電器
Monex GeoScope; Battery Charger
1台
5
インターフェースケーブル
Monex GeoScope; Interface Cable
1 セット
(出典:CERD)
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重力探査機器
(c)
CERD では、重力計として、2013 年に CERD の資金で導入したカナダ・Scintrex 社製 CG-5
Autograv を 1 台保有している。また、2014 年に CERD の資金で米国・Trimble Navigation 社製の
DGPS(Differential Global Positioning System)測量機器(型番不明)を 1 台導入しており、重力探
査測点の DGPS 測量に用いる予定にしているが、2014 年 5 月時点での作業実績はない。上記の重
力探査に関係する機材は Djibouti 市(CERD 物理探査研究室もしくは CERD 施設内の機材倉庫)
に保管されている(巻末写真集参照)。
物理探査データ処理・解析プログラム
(d)
CERD では各種の物理探査手法によって取得されたデータを自ら処理し、解析を行っている。
表 3-8 に CERD が保有する物理探査データ処理・解析プログラムの一覧を示す。Windows OS
で使用可能な商用プログラムもあるが、Fortran 言語で書かれたプログラムや Unix OS で使用する
プログラムなど学術利用されているプログラムも併用している。
表 3-8 CERD 保有物理探査データ処理・解析プログラム一覧
手
法
用
途
プログラム名
開
発
者
ライセンス
1
MT
データ処理
Mapros
Metronix 社
1
2
MT
データ処理
Birrp
Dr. A. Shaves
Free
3
MT
1D 解析
IPI2win_MT
Moscow State Universiy
Free
4
MT
1D 解析
(Fortran Program)
-
-
5
TEM
データ処理
SiTEM
Aarhus Geophysics 社
1(ドングル)
6
TEM
1D 解析
Semdi
Aarhus Geophysics 社
1(ドングル)
7
重力
データ処理
CGX Tool
Scintrex 社
1
8
重力
解析
(Fortran Program)
-
-
9
その他
データ図化
GMT
Hawaii University
Free
(出典:CERD)
(3)
物理探査実施の現状
CERD がプレフィージビリティーを作成した 3 ヶ所の候補地(Nord Goubet、Obock、Lac Abhe)
では、2010 年以降、CERD が単独で物理探査を実施している。CERD では、1) 高周波数側の浅部
比抵抗構造を TDEM 法探査で、2) 低周波側の深部比抵抗構造を MT 法探査で、3) 密度構造を重
力探査で推定するというコンセプトを持って調査している。上記 3 候補地では概ねこれら 3 手法
を 1 パッケージとして調査を実施している。 表 3-9 に CERD の調査実績(地熱調査のみ)を示
す。
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表 3-9 CERD 調査実績(地熱調査のみ)
場
所
手
法
年
数
量
1
Nord Goubet
TDEM
2010
32
2
Nord Goubet
MT
2010
30
3
Lac Abhe
TDEM
2011
35
4
Lac Abhe
MT
2011
34
5
Lac Abhe
重力
2012
85
6
Obock
TDEM
2013
46
7
Obock
MT
2013
46
8
Obock
重力
2013
122
備考
重力計は Université de Bretagne からの貸与
(出典:CERD)
調査は、前述した 3 名の物理探査技師、および日雇い人夫で実施されている。また、アクセス
の悪い Nord Goubet などではキャンプを設営、Lake Abhe では車で行ける範囲以外は人力で機材を
運搬し、調査が実施されている。調査期間は、Nord Goubet で約 30 日、Lac Abhe で約 45 日、Obock
で約 30 日であったと報告されている。
CERD の物理探査技師達は、調査計画、データ取得(フィールド調査)、解析・解釈を一貫し
て実施し、最後に CERD の地質技師と物理探査結果を議論している。業務内容が分業化された欧
米系の物理探査技師とは異なり、我が国の物理探査技師に近い印象を受ける。
(a)
MT 探査
MT 法探査では、測定時間を、2,048Hz サンプリング 2 分、256Hz サンプリング 40 分、32Hz サ
ンプリング 20 時間に設定し、計 22 時間測定している。現場では 1 日に最大 2 点撤収、2 点設置
のサイクルが繰り返される。リモートリファレンス点は設置しておらず、相互リファレンス処理
のみ実施している。
(b)
TDEM 探査
TDEM 法探査では、1 日に 4 点ほど測定している。測定時間は 30 分で、MT 法探査実施前、も
しくは実施後にまとめて測定されている。一般的に TDEM 法のデータは MT 法のデータのスタテ
ィックシフト(測点付近の比抵抗異常体に起因し、見掛比抵抗曲線がシフトする現象)の補正に
用いられることもあるが、CERD ではそのようなデータ処理はしていない。
(c)
重力探査
重力探査も、TDEM 法探査や MT 法探査に合わせて実施されている。ただし、データ処理プロ
グラムを保有しておらず、地形モデル(DEM)を海外機関の公開データに依存しているなどの理
由から適切な地形補正が実施されていない。また、測量機器を保有していないため、重力測点の
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測量も十分な精度で実施されているとは考えらず、重力探査データの品質が十分であるとは言え
ない。
(d)
CERD が保有する物理探査データ管理
2010 年以降に CERD が実施したデータは、実質的に各物理探査技師が半ば個人的に保有、管理
している状況である。また、Lac Asal などで海外企業が実施し取得された物理探査データについ
てはレポートのみ入手可能とのことで、CERD としても閲覧を希望しているが、データにアクセ
スできない状況である。全国的な地球物理データ(例えば重力図や磁気図)に関しても、CERD
独自で所有していないため、インターネット上で公開されている外国機関の情報にアクセスする
ような状況であり、基礎情報として広域の重力図や磁気図は用いられていない。
(4)
(a)
物理探査部門
現況評価
一般評価
CERD の調査能力に関してはこれまでの実績やヒアリング結果から、一定の評価をして良いと
考える。ただし、人員面の問題から物理探査技師全員参加の調査しかできないため、一度調査に
出ると他の物理探査業務が停止してしまい、結果として効率的な調査、解析は実施できていない
状況である。
(b)
解析技術
本調査では CERD のプレフィージビリティー報告書が閲覧不可能だったため、CERD のデータ
解釈やデータコンパイルに関する能力は、聞き取り調査から推察する。
電磁探査に関しては、1 次元解析しか実施できていない、重力探査では地形補正ができていな
い、そもそもジブチ国(CERD)における物理探査の歴史は 2010 年に始まったばかりであり、取
り扱ったことのある物理探査データ数が少ないなどの理由から、数値解析や統合解釈に関する能
力が十分ではないと考えられる。つまり、CERD は取得した物理探査データを地熱調査における
試掘ターゲットの推定や貯留層モデリングに必要なデータとして十分に提供できていないと考え
られる。
(5)
(a)
想定される技術支援内容
探査機器
ジブチ国では探査機器を既に保有している。また、ジブチ国の地熱有望地点は多くはなく、今
後 MT 探査の需要が増えるとは考えにくい。従い、探査機器の調達供与は不要と考えられる。
(b)
フィールド探査技術
ジブチ国での MT 探査実施の歴史は新しい。このため、フィールド探査技術確認のために、有望
地点における共同物理探査(MT 法探査、TDEM 法探査、重力探査)の実施が望まれる。ただし、
CERD で保有している機器は、我が国企業では殆ど使用されていないドイツの Metronix 社のもので
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あり、操作方法などが異なることから、支援内容は、測定計画立案や測定用コイル・電極の設置方
法など、限られたものにならざるを得ないと考えられる。
(c)
解析ソフト、解析技術
一方、解析技術に関しては、適切な解析ソフトを保有しておらず、十分な能力を有していない
と判断される。二次元解析ソフトの導入などとともに、解析技術の技術移転が必要である。
(d)
支援のアプローチ
CERD は地熱開発が有望と考えられる 3 地点(Nord Goubet、Obock、Lac Abhe)で MT 探査を
実施している。また、Lac Asal では、ISOR が MT 探査を実施している。このため、地熱開発のた
めに優先的に MT 探査を実施すべき地点はそれほど多くはない(現況の評価では Hanle-Garabbayis,
Hanle-Gaggade, Arta の 3 地点-後述)。このような現況を鑑みて地熱開発を速やかに促進すると
いう観点から、次のようなアプローチが適切であると考える。
-
CERD で実施したプレフィージビリティー調査結果を入手して MT 探査実施解析技術を評
価し、留意点を挙げる。
-
日本およびジブチ国で、Hanle-Garabbayis と Arta の MT 探査を実施する1。日本からは
探査機械 2 セット(Phoenix 社製)を持ち込み、1 地点で探査を実施する。同時にジブチ
国は保有の Metrorix 社の2セットを用いて他 1 地点で探査を実施する。
-
二次元解析ソフトをジブチ側に供与し探査結果を解析する。ジブチ側は、既往の MT 探査
結果も再解析する。
-
こうすることによって、ジブチ国 5 地熱地点を比較することができる。
-
一方、ジブチ側は引き続き Hanle-Gaggde で MT 探査を実施し、主な地熱地点の MT 探査
を終える。
3.3.2
CERD 地球科学研究部
(1)
地化学担当職員
地化学部門の現況
地化学部門の職員は下記の通りである。
-
PhD
:1 名(地球化学部門長)
-
修士
:5 名
-
技術員
:2 名
1
MT 探査未実施の有望地点 Hanle-Garabbayis, Hanle-Gaggade, Arta のうち、Hanle-Gaggade は他の2地点に比較して
アクセスが悪い。
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住鉱資源開発株式会社
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地化学分野
(2)
保有設備・機材
現状(2014 年 6 月末現在)として、CERD が保有する地化学調査関連の設備・機材は、次表の
通りである。
表 3-10 CERD 保有設備・機材
分析機材
数量
備考
フレーム原子吸光光度計
AAS-Flame
1台
Na, K のみ分析可能
ガスクロマトグラフィー質量分析計
GC-MS
1台
農薬用
ICP 発光分析計
ICP-OES
1台
超音波ネブライザー、水蒸気発生装置は無い
マッフル炉
Muffle Fumace
1台
質量計
Balance
2台
ボールミル
Ball Mill
1台
インキュベーター
Incuvator
2台
BOD 分析用
顕微鏡
Microscope
1台
微生物、プランクトン分析用
オーブン
Oven
2台
吸光光度計
Spectrophotometer
3台
うち 1 台は赤外の分析可能
イオン交換水製造装置
Deionizer
1台
イオン交換カラムに 2 つのタンクを繋げた手製装置
超純水製造装置
Ultra Water Purifier
1台
高速液体クロマトグラフ質量分析計
HPLC-MS
1台
イオンクロマトグラフィー
Ion chromatography
1台
pH、EC メーター
pH, Conductivity Meter
1台
2 つの分析室各 1 台、精度 0.1mg
(出典:CERD)
(3)
地化学部門
活動現況
CERD 地化学研究室での聞き取り調査の結果は次の通りである。
-
分析検体数は年間 400 検体程度。
-
分析項目としては、水質として pH、EC などの基礎項目、硫酸イオン、炭酸水素イオン、
塩化物イオンなどの陰イオン、カルシウム、ナトリウムなどの陽イオン、COD、BOD など
の有機物、その他、栄養塩類や農薬、重金属などが、分析可能である。その他、岩石の含有
量試験(酸に岩石を溶かして成分を測定する試験)も対応している。
-
試料の内訳としては、ONEAD(ジブチ上下水道公社)から無償で委託される地下水試料が
分析試料の多くを占めている。その他、下水や工場からの廃水、岩石の分析を行っている。
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(4)
(a)
地化学部門
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現況評価
-
能力評価
一般評価
CERD の地化学研究室には分析室が2部屋ある。機材ごとに管理担当者が配置されており、ま
た試薬もリストを作成して管理していることから、ラボ管理については一定のレベルにあると推
察される。また現地調査における試料処理の状況から、要員の訓練も一定レベルに達していると
判断される。
(b)
分析機材
表 3-10 に示した分析機材の保有状況から、地化学調査で重要な主要溶存成分(塩化物イオン、
硫酸イオン、炭酸水素イオン、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、ケイ酸)の
分析は可能と判断される。
一方、噴気ガス成分は、機材不足により分析が困難な状況にあると推測される。また、地球化
学部門長である Dr.Awale によると、機材に関する課題として、試薬代などラボ運営にかかる予算
が不足していることや、分析機材の修理や部品調達が可能な代理店が国内では限られており、研
究活動に支障が出ているとのことである。
(5)
その他要望事項
-岩石分析機器
CERD は、下記の岩石分析機器を更新ないしは新規導入したいと希望している。
-
岩石薄片作成機器一式(更新)
-
偏光顕微鏡(更新)
-
実体顕微鏡(更新)
-
XRD 解析機器(新規導入)
-
XRF 解析機器(新規導入)
-
流体包有物分析機器(新規導入)
(6)
想定される技術支援内容
(a)
現地調査機器
本調査で使用した水質調査に関する現地調査機器は ODDEG に供与される。一方、噴気ガスの
採取機材は、ジブチ国内で、保有している機関は無い。但し、ジブチ国の地熱有望地点の数は多
くはなく、今後、噴気ガス調査の需要が増えるとは考えにくいことから、現地調査機器の調達供
与は不要と考える。
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(b)
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室内分析機器
ジブチ国における地化学分析は現状として CERD が実施しているため、地化学調査のうち分析
にかかる技術支援の対象は CERD であると考える。ヒアリングや現地視察により、CERD におけ
る地化学分析は水質を中心に実施されており、噴気ガス分析や岩石分析の実施例は少ない。噴気
ガス分析については、
本調査を含む一連の調査で、ジブチ国の地熱開発候補地を同定しておけば、
今後の需要は多くないと想像されることから、機器の調達供与は不要と考える。一方で、岩石分
析については、ボーリング中の堀留深度を特定する際や、地熱井を維持管理するうえで、そのメ
ンテナンスに用いられる技術であり、調達供与が求められる。
水質分析については本調査で実施した CERD との精度比較で明らかになったように、少なくと
も主要溶存成分について、CERD の分析精度は実務レベルに達しており、機材は概ね整備されて
いる。但し、今後の地熱開発を進めるにあたって、付属機器の更新、消耗品の購入が困難な状況
にあり、今後、地熱開発の技術協力を進めるうえでは、プロジェクトにかかる消耗品の供与が求
められる。
想定される供与機材を次に示す。
-
岩石薄片作成機器一式(更新)
-
偏光顕微鏡(更新)
-
実体顕微鏡(更新)
-
XRD 解析機器(新規導入)
-
XRF 解析機器(新規導入)
-
流体包有物分析機器(新規導入)
-
原子吸光ランプ(消耗品)
-
ガス・試薬(消耗品)
-
ガラス器具(消耗品)
(c)
フィールド調査技術
本調査を通して、CERD が水質に関するフィールド調査の技術を持っていることがわかった。
一方、今後のジブチ国における地熱開発を担う ODDEG については、まだ技術的に不十分な点が
見受けられ、今後の技術移転が期待される。
(d)
地化学分析、解析技術
地化学分析、解析技術のうち水質について、CERD が基本的な技術を保有しているものと考え
る。一方で、岩石分析に関しては、適切な機器を保有していないことなどにより、十分な段階で
はないと判断される。岩石分析用の機材の導入などとともに、分析・解析技術の技術移転が必要
である。ODDEG は分析室を持たず、地化学分析の経験も無い。但し、分析データを解析する技
術は求めらており、今後の技術移転が期待される。
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(e)
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支援のアプローチ
ジブチ国は地熱資源開発を促進するために、2014 年 1 月 20 日に ODDEG を設立した。懸案と
なっていた技術要員の配置は、同年 7 月 30 日付けの政令で、10 人が正式所属となった。うち 5
人が CERD から異動した技術者で、おもに物理探査関連の要員である。このため、物理探査機器
も ODDEG に移管される見込みである。しかし、地化学関連の専門家や分析資機材は、依然 CERD
が保有しており、今後の方針は明確ではない。
このように、現在のところ CERD と ODDEG の役割分担は明確ではなく、人員の異動が継続中
であるため、支援対象を ODDEG とするのか、あるいは CERD も含めるのか等を適切に見極める
必要があるものの、現在想定される支援のアプローチは以下の通りである。
-
ODDEG に課せられる役割は、調査結果の解析ならびに総合解釈であると考える。したが
って、座学を中心に地化学分野ならびにフィールド調査の全般的な知識や、解析方法、貯留
層管理について技術移転する必要がある。
-
CERD は、全般的な分析技術を担っている。よって、地化学・岩石分析にかかる機器の供
与、
ならびに試掘時のボーリング試料の岩石分析及び解析方法等を技術移転する必要がある。
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第4章 他援助機関の動向
ODDEG がまとめた資料によれば、地熱開発に関する他援助機関の動向は下記の通りである。
4.1 UNU-GTP
国連大学地熱エネルギー利用技術研修プログラム
国連大学では、膨大な地熱資源を持つ開発途上国が専門家グループを組織し、地熱の調査や開
発に当たることができるよう、特別な研修機会を設けて支援している。このプログラムの拠点は
アイスランド国の首都レイキャビックに設けられている。参加費用はアイスランド政府と国連大
学が負担している。ジブチ国では、1989 年から 2013 年にかけて 31 人(年平均約 6 人)の技術者
が学んでいる。また、2014 年には合計 5 人の技術者を UNU-GTP に送る計画となっている。
表 4-1 他援助機関の支援
Organization
UNU-GTP
ICEIDA
GRMF
WB, AfDB-ADF,
SEFA, GEF, OFID,
AFD, ESMAP
Programs
1. Past Record (1989 - 2013):
Short Course
20 person
Six months Trainings
9 person
Master degree course
1 person
PhD
1 person
2. This Year (2014)
Short Course
3 person
Six months Trainings
2 person
Master degree course
1. Technical Training for drilling Supervision (2014 - 2016)
2. Knowledge improvement of geothermal exploration and review of studies at
Arta and Gaggade
3. Improvement of management capacity of geothermal development
1. Application was submitted to GRMF for confirmation drilling at Hanle and
the Nord Goubet, but not accepted due to clerical reasons.
1. Test drilling at Asal-Fiale site
- Project Managing Director
- Engineering Consultant for technical supervision
- Drilling contractor
1. WB: World Bank
AfDB: African Development Bank
2. ADF: African Development Fund (AfDB)
3. SEFA: Sustainable Energy Fund for Africa implemented by
AfDB
4. GEF: Grobal Environment Facility
5. AFD: Agence Francaise de Developpemet
GGDP: Global Geothermal Development Plan through ESMAP
6. ESMAP: Energy Sectore Management Assistance Program
7. OFID: OPEC Fund for Internationla Development
SEFA: A joint initiative of the Danish government and
the Energy, Environment and Climate Change
Department (ONEC) of AfDB
ADF: the concessional window of the AfDB Group.
(出典:JICA 調査団)
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4.2 ICEIDA アイスランド国際開発機構
アイスランド国際開発機構(ICEIDA)では、2012 年に北欧開発基金(NDF)と協調して、東
アフリカの大地溝帯に沿う 13 カ国の地熱開発調査を支援するプロジェクトを立ち上げている。こ
のプロジェクトは、2012 年に世界銀行と取り交わした Compact with the World Bank Group on
Sustainable Geothermal Energy for Africa2の初期段階のプロジェクトと位置付けられている。
ICEIDA では、2014 年から 2016 年にかけて、掘削管理の訓練や地熱開発地点である Arta や
Gaggade における既存調査のレビューを通じた地熱開発能力の向上を目指したプログラムを計画
している。
4.3 アサール地熱開発に関する支援
ジブチ国では、アサール湖の地熱資源を開発すべく、世銀グループなど7つの資金源(表 4-1
参照)により、アサール湖での試掘を計画している。すでに資金調達に向けて準備が進められて
いる。資金は、Project Managing Director や Engineering Consultant および Drilling Contractor の調達
に充てられる計画である。ODDEG で別途調達を進めている掘削リグはこのプロジェクトには投
入されず、Drilling Contractor が掘削リグの準備や消費材料の調達などをおこなう計画となってい
る。
4.4 その他
ODDEG では、
地熱有望地点の Nord Goubet での試掘と Hanle での地表調査を実施すべく、
GRMF
(Geothermal Risk Mitigation Facility)に申請したが、事務処理の不備から受理されなかったとのこと
である。
また、2014 年 5 月 26 日にアイスランドの首都レイキャビックで行われた Geothermal Donor
Collaboration Meeting in Reykjavik3 において、米国が地熱開発分野においてジブチ国を支援する旨
のスピーチをしたと伝えられているが、ODDEG によれば、現在のところ具体的な動きはないと
のことである。
2
3
世界銀行のイニシアティブ Sustainable Energy for All の一環として特に地熱資源の開発を進める支援。
African Union Commission (AUC)と ICEIDA の共催
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第5章 地熱有望地点全 13 地点の調査結果
5.1 地質概要
テクトニクス
5.1.1
調査地域は「アフリカ大地溝帯」と呼ばれ
る地理帯に位置している。アフリカ大地溝帯
はアファール三重会合点(Afar Triple Junction)
より南西~南南西へ、ジブチ、エリトリア、
エチオピア、ケニア、ウガンダ、タンザニア
と東アフリカ地域を縦断する(図 5-1)。
調査地域
アフリカ大地溝帯は一般的に活断層、活火
山および温泉などの地熱地帯によって特徴づ
Afar Triple Junction
けられる。地球物理学的研究や岩石学的研究
から、大地溝帯の地下では高温のマントルの
貫入により地殻が薄くなっていることが示さ
れている。
大地溝帯はまたアフリカプレートの東西を
分離拡大する境界と考えられている。東側は
ソマリア・プレート、西側はヌビア・プレー
(出典:USGS Web-site
http://pubs.usgs.gov/gip/dynamic/East_Africa.html)
トと呼ばれ(図 5-1)、
両プレートは大地溝帯を
図 5-1 アフリカ大地溝帯
境に東西方向に年間約 5mm の速度で離れて
いる
[8]
。
5.1.2
地域の地質構造と地質状況
(1)
地域地質状況
調査地域はアフリカ大地溝帯の北端部に位置しており、古第三紀漸新世~第四紀にかけての
断続的な火山活動により特徴づけられる
[9]
。地質は大きくは東部地域、西部地域に区分して説
明することができる。
東部地域には、調査地域の基盤岩が分布し、南東部のジュラ紀―白亜紀の石灰岩および堆積
岩類である。最初の火山活動は漸新世(25-30Ma)に発生した Adolei basalts と考えられ、南東部
の基盤岩類を取り巻くように分布している。この上位には、中期中新世(15Ma)の Mabla rhyolite
が調査地域の東部にかけて広く分布する。さらに上位には、後期中新世―鮮新世(3.4-9Ma)の
Dalha basalts および Somali basalts が不整合で重なる。その後、鮮新世以降には、Stratoid basalts
および Gulf basalts (3.4-1.5Ma)がタジュラ湾の形成と共に噴出し、更新世には、アサールリ
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フト(Asal rift)および調査地域北部の Manda Inakir rift で玄武岩の噴出が見られる。これらは
おもに西部地域に分布している。
同地域と隣接するエチオピアリフトの層序対比表を図 5-3 に示した。この表から、両地域で
は中期中新世までは火山活動に類似性が見られるものの、後期中新世以降は火山活動の時期が
異なっていったことが分かる。
(Mohamed, 2010 [9])
図 5-2 調査地域の地質図
年代区分
完新世
第
四
紀
絶対年代
(Ma)
Ethiopian Rift Valley
(WoldeGabriel et al, 1990)
Djibouti
(Mohammed, 2010)
Recent basalts
0.0117
Wonji Group
更新世
Stratoid basalts/
Gulf basalts
2.58
Chilalo Trachytes
鮮新世
5.33
第
三
紀
Butajira Ignimbrites
Dalha basalts/
Somali basalts
Guraghe Basalts
中新世
Shebele Trachytes
Mabla Rhyolite
Kella Basalts
Adolei Basalts
23.03
漸新世
33.9
(出典:JICA 調査団)
図 5-3 調査地域の地質層序図
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(2)
地域地質構造
調査地域の地質構造は、東部地域と西部地域で大きな違いが見られる。
東部地域のうち東南部はソマリア・プレートに属するジュラ紀―白亜紀の基盤岩が露出して
いる。東北部はダナキル・マイクロプレートに属する漸新世―中期中新世の火山岩類が分布す
る。
AAZ: Arcuate Accomodation Zone, ARA: Arabian Plate, NUB: Nubian Plate.
MER: Miain Ethiopia Rift, SOM: Somalian Plate,
TGD: Tendaho-Goba’ad Discontinuity
(Wolfenden et al., 2004 [10])
図 5-4 調査地域の地質構造発達史
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西部地域は、アファール低地から続く低地帯であり、NW-SE 方向の小地溝帯(グラーベン)
に沿った玄武岩を主体とする火山活動が鮮新世―現在まで続いている。
調査地域の地質構造の発達過程は以下の通りである
[10]
。
1) 漸新世(30Ma 前後) :大量の Adolei 玄武岩が噴出するとともに、紅海とアデン海の
拡大が開始された(図 5-4 の A)
。
2) 中期中新世(15Ma 前後)
:紅海の堆積盆が深く発達するとともに、ヌビア・プレート
(NUB)とダナキル・マイクロプレート(Danakil microplate) が拡大を開始した(図
5-4 の B)
。また同時期、エチオピアリフト(MER)では、リフトにそって局所的な火
山活動が発生した。
3) 後期中新世(11Ma-8Ma)
:エチオピアリフト(MER)が拡大を開始し、アファール三
重会合点(Afar Triple Junction)が形成されると共に、ヌビア・プレート(NUB)と
ダナキル・マイクロプレートが大きく拡大してアファール低地帯が形成された(図 5-4
の C)
。
4) 鮮新世―現在(4Ma-0Ma):エチオピアリフト(MER)が拡大を続けるとともに、紅
海およびアデン海が再拡大し、現在の地質構造が形成された(図 5-4 の D)。
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5.2 衛星画像解析
5.2.1
調査目的
ジブチ国の地熱有望地点全 13 地点の地熱ポテンシャル概況を把握する目的で、衛星画像解析
により火山地形・地質構造・変質帯分布を確認し、各地点の火山-構造-変質帯図を作成する。
この火山-構造-変質帯図は、既往の報告書・文献とともに現地調査時の参考資料とする。
5.2.2
調査方法
衛星画像解析データには、我が国の衛星データである ASTER の L3A および PALSAR の L1.5
データを利用する。
ASTER 解析画像により火山地形・地質分布・変質帯分布を把握し、PALSAR 解析画像を併用
して火山地形・地表面性状および断裂系を主体とする地質構造を把握することにより、地熱有
望地点の火山-地質構造-変質帯分布図を作成する。
なお、データ解析には、主に米国 ITT 社製 ENVI(Ver. 5.0)のソフトウェアを用いる。
(1)
ASTER 画像解析
ASTER は可視近赤外域(VNIR)に加えて短波長赤外域(SWIR)と熱赤外域(TIR)を含む
多バンド(14 バンド)データと高解像度(15~30m)という優れた特徴を持つ光学センサであ
る。また、ASTER データ解析では、短波長赤外域のバンドを使ったバンド合成画像および比演
算処理画像を作成し、各種変質帯の分布域を抽出し、地質構造判読などを行う。
ASTER 画像解析では、植生域や水域・雲およびそれに伴う影などの解析不能部分にマスキン
グ処理を施した上で、RGB にそれぞれバンド 4・バンド 6・バンド 8 を与えたバンド合成画像、
およびバンド間で比演算処理を行い RGB にそれぞれバンド 4/バンド 6・バンド 5/バンド 6・バ
ンド 5/バンド 8 を与えた比演算処理画像を作成する。これらの画像を用いて、各種変質帯の分
布域を抽出する。
バンド合成処理画像(RGB=B4,B6,B8)では、明ばん石およびカオリナイトなどを主体とす
る酸性変質帯(advanced argillic alteration zone)は桃色系、セリサイトを主体とするフィリック
変質帯は黄色系、緑泥石および緑れん石を主体とするプロピリティック変質帯は緑色系を呈す
る。比演算処理画像(RGB=B4/B6,B5/B6,B5/B8)では、酸性変質帯は赤色系、プロピリティッ
ク変質帯は赤紫色~濃青色系を呈する。
以上のように、ASTER 解析データにより各種熱水変質帯の分布域の識別が可能であるが、変
質帯周囲の二次堆積範囲を含むため、ASTER バンド合成画像(RGB=B3,B2,B1)・ASTER DEM
による段彩レリーフ図を併用した地形・地質判読結果により範囲補正する。また、乾燥地域に
特有の湖成蒸発岩堆積物(サブカ堆積物:蒸発塩類・石灰質堆積物等)と河川・扇状地堆積物
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が変質帯と同様の発色を示す場合があり、あらかじめ地形・地質判読結果によりこれらの範囲
を除外する。
図 5-5 に模式的に示すように、火山体周辺の熱水変質帯(とくに酸性変質帯)は山頂火口付
近と貫入岩上方(②)にパイプ状に、また火口直下でマグマ上部に形成される変質帯キャップ
(①)として広範囲に、斜面中部~脚部では温泉・噴気孔周辺(③)に小規模なマウンド状~
スポット状に分布し、いずれも周辺には変質ハロー4が形成されると考えられる。
(渡辺, 1998 [11])
図 5-5 火山体周辺の酸性変質帯(①②③)の模式的分布
(2)
PALSAR 画像解析
PALSAR は天候や昼夜に影響されない能動型のマイクロ波センサで、L バンド多偏波データ
と高解像度(10~25m)という特徴を備えている。PALSAR データ解析では、調査地域全域の
モザイク画像を作成した上で、リニアメント等の判読を行う。
PALSAR データは合成開口レーダデータであり、地形や地表面性状を把握するのに有効であ
る。PALSAR 画像解析では、オルソ補正済み L1.5 プロダクトの HH 単偏波画像を用いて地熱開
発調査地域全体のモザイク図を作成する。その画像から地形リニアメントを主体に、断層崖、
火山地形(クレーター・カルデラ・溶岩ドーム・溶岩流など)の判読を行う。
PALSAR 画像では山地露頭域は地形影響の強いエッジの効いたテクスチャを示す。調査対象
地域は東アフリカリフトの大地質構造に連なる Afar Triple Junction に位置し、Asal Rift 等の火
山性リフトに伴う多数の NW-SE 系平行断裂系に伴う地形・地質構造(地溝・地塁構造)が明
4
リモートセンシングで色調により変質帯を表現する場合、「明らかな変質岩」と「明らかな非変質岩」の間
に、中間色の漸移域があらわれる。この様な部分には自然色の衛星画像でも変質岩の広がりが判読される。こ
のような産状の場合に、明らかな変質岩を「変質部(酸性・中性)」とよび、漸移部を「変質ハロー」と呼ぶ。
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瞭に判読される。二次堆積物分布域の堆積物の粒径(地表面ラフネスの相違)が色調に反映し、
暗色部(小粒径でラフネス小)と明色部(大粒径でラフネス大)が区別される。
5.2.3
調査結果
ASTER データから、変質帯抽出用にバンド 4-6-8 合成画像およびバンド 4/6-バンド 5/6-バン
ド 5/8 の比演算処理画像を、地形判読用に DEM による段彩レリーフ図、地質判読用にバンド
3-2-1 合成画像を作成した。また,PALSAR データから、地形・地質構造・地表性状判読用に
PALSAR 単偏波(HH)モザイク画像を作成した。作成した画像は巻末に添付する。
ASTER および PALSAR データの解析結果図と LANDSAT ナチュラルカラー画像を GIS に搭
載し、既存報告・文献資料を参照して総合的に解析し、熱水変質帯分布域・火山地形・二次堆
積地形・地質区分および主要断層系を抽出することにより、地熱有望地点全 13 地点の火山-構
造-変質帯分布図を作成した。作成した分布図は、巻末に添付する。
記述中の地質区分・年代は Mohamed Jalludin(2009) [12]、および Mousa, N et al. (2010) [13]を参
照し、噴気孔・湧水域の記載位置は Mohamed Jalludin(2011) [14]に従った。
なお、火山-地質構造-変質帯の総合解析結果には、変質帯分布(酸性変質帯・中世変質帯)
のほかに、衛星画像から解析した地形地質情報として二次堆積層分布域(沖積層・塩類・石灰
質堆積地)・新規火山地形(火砕丘・成層火山)のほか、変質帯分布に関連する断裂系・流紋
岩類(貫入岩および火砕岩)の分布を併せて示した。
以下に地熱有望地点全 13 地点の解析結果を示す。
(1)
Arta 地点
Arta から北方アデン湾までの Dalha Basalt(9-4Ma)分布域で、小規模な流紋岩質貫入岩類お
よび火砕岩類が西半部に分布し、この南部延長に NNE 系断層が 2 系統分布する。比較的地形
の開析が進んでおり、渓谷~海岸域に河川堆積物が連続する。地点内の標高は 0m~720m(Arta)
まで大きく変化する。変質帯は流紋岩質貫入岩に伴う変質帯が明瞭で、現在または過去の噴気
箇所に対応するとみられる狭い酸性変質スポットの周囲に、弱い酸性~中世変質ハローが広く
分布する。現在の噴気箇所は 1 ヶ所で、変質帯分布域の東縁に当たる。
(2)
Asal Rift 地点
Asal 湖/Goubet 湾間の Asal Rift で、Ardoukoba 火山を中心とする Recent Basalt(1Ma-)の溶岩
原・噴出丘分布域。リフト帯を構成する多数の WNW 系平行断裂系に沿って、多数の火口丘・
噴丘・マールが分布し、噴出丘の周囲と陥没地は火砕物および堆積物・析出塩類が埋積(サブ
カを含む)する。標高範囲は-150m(Lac Asal)~200m である。変質帯は、地点北東縁に弱い
酸性~中性変質帯、南西縁に流紋岩質貫入岩(Stratoid Rhyolite)に伴う酸性変質帯と弱い酸性
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変質ハロー(一部噴気・湧水を伴う)が、断裂系と平行に分布する。ただし衛星画像からは小
規模な噴気孔は、塩類析出地との識別が不可能である。
Asal 地溝帯の地質構造は NW-SE および NNW-SSE の方向性を有する正断層で特徴づけられ
る。E-W 系の断裂も認められることがある。NNW-SSW および E-W 系の断裂は現在活動して
いる NW-SE 系の断層よりも古い時代のものであり。Stratoid 玄武岩等のの古い地質に発達して
いる。d
(3)
Djibouti 地点
首都 Djibouti 市街地を含む海岸低地~丘陵地に相当し、Qued Ambouli 川河口域・都市域、鮮
新世~第四紀の河川・扇状地・三角州堆積物(塩類堆積地・サンゴ礁を含む?)で、基盤は Gulf
basalt(3-1Ma)からなる。被覆層のため断裂系は認められない。標高範囲は 0m~60m の低平
地。変質帯は認められず、噴気・湧水の記載もない。
(4)
Dorra 地点
Doda 盆地東方で、NS 系に密集する平行断裂系で細断された Stratoid Basalt(3.5-1Ma)の斜
面である。断裂による陥没地群は河川・湖沼堆積物や石灰質堆積物で埋積(Sabkha)される。
標高範囲は 340m~720m である。変質帯は認められない。西縁部に噴気の記載があるが、画像
からは堆積地と判別される。
(5)
Gaggade 地点
Gaggade 盆地南東縁部の緩斜面と盆地底部に相当し、Stratoid Basalt(3.5-1Ma)と盆地底の鮮
新世~第四紀堆積物(河川成・湖沼成)からなる。NW 系断裂が主体だが、交差する NE 系・
NNW 系断裂も認められる。標高範囲は 100m~580m。変質帯は、地点北東部に噴気を伴う酸性
変質スポットとハローが NW 系断裂に沿って列状に分布する。盆地縁部や渓谷底付近にも弱い
酸性変質域が散在する。
(6)
Hanle-Garabbayis 地点
Yoboki 東方、Hanle/Gaggade 盆地間の丘陵地(地塁構造)に相当するエリアで、Stratoid Basalt
(3.5-1Ma)主体で北半部は Babba Alou 火山体の Stratoid Rhyolite(-1Ma)が広く貫入して火砕
岩も分布し、さらに Recent Basalt(-1Ma)の小規模火砕丘がこの上面に散在する。地溝・地塁
構造に平行な NW~WNW 系断裂が主体だが、これらを横断する NNE 系断裂も多数分布する。
断裂による小規模陥没盆地および東西の Hanle/Gaggade 盆地(地溝)は河川・扇状地堆積物・
石灰質堆積物・塩類で埋積される(サブカ)。地点内の標高は 160m~970m(Babba Alou 火山)
まで変化する。Babba Alou 火山の流紋岩質岩中心部(貫入相~噴火口)に比較的規模の大きい
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酸性変質帯が集中し、南部の Stratoid Basalt にはやや古い噴出孔周囲の小規模酸性変質帯スポッ
トと変質ハローが散在する。活動的な噴気孔は後者の、流紋岩質貫入岩に近接する新規火砕丘
に伴っている。
(7)
Lac Abhe 地点
Abhe 湖東部の Goba’ad 盆地~北東丘陵(地塁)にあたり、Stratoid Basalt (3.5-1Ma)と新規
の火砕丘群主体で、南東縁にこれらに貫入・噴出した流紋岩質岩類が分布する。盆地および地
塁上の小規模陥没地は湖沼堆積物・石灰質堆積物・析出塩類で埋積され(サブカ)、塩湖であ
る Abhe 湖に連なる。標高は 240m~560m で相対的に起伏が小さい。断裂系は地溝・地塁構造
に平行な WNW 系が主体であるが、少数ながらこれらを横断する NNE 系断裂も分布する。新
規火砕丘群はこれらの断裂交差部付近に分布する傾向がある。変質帯分布は地点東縁部では新
規火砕丘脚部の散点的な酸性変質帯スポット~小規模マウンド状変質岩が多く、流紋岩質岩に
関連するものは少ない。また,Abhe 湖に接する盆地~斜面下端部に噴気・温泉を伴う大小のマ
ウンド状の酸性変質帯~石灰華(Travertine)分布地が複数認められるのが特徴である。
(8)
Nord Goubet 地点
Goubet 海峡北西部で Day 山地(1800m)の南山麓斜面に相当し、Stratoid Basalt(3.5-1Ma)の
台地~海岸である。谷形状に現れる NNW・NW 系の平行断裂系が混在する。渓谷部・台地周
辺は河川・扇状地堆積物、断裂による東部の小陥没盆地は石灰質堆積物等で埋積される(サブ
カ)。地点の標高は 0m~530m で比較的起伏が小さい。南部の断裂系周囲の陥没地にマウンド
状の変質岩があり、小規模な酸性変質スポットと変質ハローが点在し、活動的な噴気を伴う。
(9)
Nord lac Asal 地点
Asal 湖北部で Day 山地(1800m)の南西山麓斜面に相当し、Stratoid Basalt(3.5-1Ma)の台地
に新規の流紋岩類(Stratoid Rhyolites, -1Ma)が貫入している。NW 系・NNE 系の平行断裂が混
在し、地点南東部の山塊は両断裂系が混在して地滑りブロックとなり、ブロック東西縁は浸食
が進んで大規模な堆積地(扇状地)を形成する。渓谷部は河川堆積物、湖岸付近の小規模陥没
地は石灰質堆積物および塩類で堆積される(サブカ)。地点の標高は-150m(Asal 湖)~950m
(Day 山地山麓斜面)と大きく変化する。地点東部の断裂系沿いの流紋岩質貫入岩類の周囲に
弱い酸性変質帯(橙色破線)が分布する。Asal 湖岸は湧水域だが、画像解析からは塩類堆積地
となっている(西縁部の 1 か所のみ、マウンド状の酸性変質岩の可能性)。
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Obock 地点
(10)
Qued Sadai 川の河口域で、鮮新世~第四紀堆積物(河川成・湖沼成および風成)からなり、
最上部は湖沼性の石灰質堆積物と河川堆積物に覆われる。西部後背地および堆積層下位には流
紋岩質火砕物の扇状地が認められる。地点内の標高は 0m~90m で極緩斜面である。変質帯分
布は認められない。河口部に扇状地末端の低温湧水池が見られる。
Rouweli 地点
(11)
Tadjoura 東方の Gulf Basalt(3-1Ma)台地(表層に火山灰・堆積物上載)を主体とし、西縁部
では流紋岩質の火砕流堆積物(扇状地)が覆っている。EW 系の平行断裂系により南方に階段
状に標高を減じ、標高は 0m~330m まで変化する。渓谷部には小規模な河川・扇状地堆積物が
分布する。変質帯は東部に 1 か所の酸性変質スポット(噴出孔?)が認められるのみ。海岸部
に噴気孔が記載されているが、ごく小規模のため衛星画像からは判読不能である。
Sakalol 地点
(12)
Asal 湖北方の Doda 盆地南部~Alol 盆地北部に相当し、NW 系・NNW 系平行断裂が発達する
Stratoid Basalt(3.5-1Ma)の台地。断裂による大小の陥没盆地(地溝)には砕屑物・石灰質堆積
物および塩類が析出(サブカ)する。地点の標高は 10m~320m である。変質帯の分布は認め
られない。Alol 盆地南縁は湧水域と記載されるが、画像からは塩類堆積地と判別される。
(13)
Sud Goubet 地点
Goubet 海峡東方の Stratoid Basalt(3.5-1Ma)の台地~海岸に相当する。WNW 系と NNE 系の
断裂系が混在する。峡谷部は河川・扇状地堆積物、南部の断裂による小陥没盆地は石灰質堆積
物等で埋積される(サブカ)。標高範囲は 0m~550m。変質帯は、地点東部の NNE 系断裂沿い
の流紋岩質貫入岩に中性のプロピライト変質帯(橙破線)が顕著で、ほかに弱い酸性(~中性)
変質スポットが点在する(一部は噴気を伴う可能性あり)。
以上の結果を表 5-1 に整理して示す。
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表 5-1 地熱有望地点前 13 地点の衛星画像解析結果の一覧表
地質区分・年代は Mohamed Jalludin(2009) [12]および Mousa, N et al (2010) [13]による。
(出典:JICA 調査団)
噴気孔・湧水域の記載位置は Mohamed Jalludin(2011) [14]による。
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5.3 地質調査
調査目的
5.3.1
本調査は以下の項目を目的として実施した。
(a)
地質状況の現地確認(地形、岩相、地質構造、変質状況)
(b)
リモートセンシング解析で抽出された変質帯の確認
(c)
代表的岩石および変質粘土の試料採取
調査方法
5.3.2
ODDEG 並びに CERD の技術者が案内する地点に到着後、持参したリモートセンシング解析
画像や地質図などを参考にしつつ、蒸気噴出箇所や変質地帯などの地熱兆候地点の位置確認や
性状確認を目視にて行った。同時に周辺地質の岩相や断裂系の方向性などを確認した。各地点
の代表的な岩石と変質帯が分布する地点においては変質粘土の試料採取を行い、室内試験を実
施した。
5.3.3
調査結果
(1)
現地調査結果
各地点の現地観察結果概要は表 5-2 の通りまとめられる。表 5-2 には、地点へのアクセス情
報も併せて示す。
(2)
室内分析結果
現地調査で採取して岩石薄片鑑定、X 線回折分析(XRD)および蛍光 X 線分析(XRF)を実
施した。採取した試料を
表 5-3 に示す。
(a)
室内分析方法
本調査で実施した各分析方法の詳細は巻末に示す。
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表 5-2 地質概査結果一覧表
サイト名
位置、アクセス
現地地形
主な地質
地質構造・断裂系
地熱兆候(噴気、変質など)
所 見
Dalha玄武岩が広く分布する。地質図に
よれば、噴気点を通ってN-S方向に
Ribta流紋岩が分布する。全体的に風化
が進んでいる。
現地では、N-S方向の断裂が顕著であ
る。
地質図に記載される3箇所の噴気はN-S
方向に配列する。この噴気は流紋岩の
分布と重複しているように見える。
地質図では、3箇所の噴気が記載されて 噴気は弱いものの、強い変質が観察さ
いるが、現地では1か所のみ確認でき
れる。強い熱水変質活動があった推定
る。
できる。噴気が弱い理由は、噴気活動
が低減しているか、あるいは、厚い
衛星画像で推定されている南北方向の キャップロックが形成されているかの
強い酸性変質と、噴気周辺の弱い酸性 いずれか。噴気は流紋岩の分布と密接
変質が確認できる。
に関係している。
ただし、海岸に近いので流体の塩分濃
度は高いと想定される。
断裂系はGoybhette湖からエ
チオピアに向かうNNW-SSE方向の雁行状
地溝帯と同様の方向に発達している。
開口が進行中ともいわれる。
弱い噴気が多数見られる。顕著な変質
は観察されない。
既存井戸では、10万ppmを超える塩分
濃度が確認されている。
地表で確認できる地熱兆候は多くな
い。ただし、Ardouboba火山が1978年の
わずか36年前に噴火しているので、マ
グマの冷却は進んでいないものと考え
られる。
ISORのMT探査(2008年)によれ
ば、高塩分濃度の既存井戸掘削地区の2
kmほど北方では、海水程度の塩分濃
度の流体がある可能性があると指摘し
ている。
1
Arta
Tadjoura湾の南岸に位置する。
噴気地点のアクセス=>海岸から約
2.5km。
ジブチ市~国道1号線:40分、未舗装道
約45分。軍隊の訓練地域内を通過。
国道からの道路は、深く開析が進んだ
谷を通る。
噴気地点や変質地帯は、広く浸食され
たワジの東端に位置する。
周辺山体も開析されており、古い時代
に露出した地形を呈する。
2
Asal Rift
(Fiale)
Tadjoura湾西端のGoubet湖からAsal湖
方向に2km地点。
噴気地点のアクセス=>ジブチ市から国
道1号線~舗装
噴気はLava-Lakeと呼ばれる溶岩原に位 新規玄武岩(Recent)溶岩原を形成
置する。周辺は新規溶岩が形成する丘 し、粘性が極めて低い溶岩であったこ
陵地。いくつかの火口丘などが見られ とが分かる。
る。道路を利用:2.5時間。アクセス良
好。Ghoubbet湖からAsal湖(標高約マ
イナス150m))を通り、内陸部で本件調
査地点のSakalol平原(標高約5m)をへ
てエチオピア国アファール地溝帯にか
けては、ジブチ国を通過するRiftの中
央部が、雁行状に走っている。
Asal湖側には、1978年11月に噴火した
Ardouboba火山が位置する。。
Asal Rift
(Koril)
Asal湖南湖岸の温泉。道路脇。地質図 Asal湖湖畔が、背後の玄武岩崖に面す
によれば2km以内の湖岸に他2温泉が る箇所から湧出する。
ある。
地質図によれば、Asak 湖の東岸から北
岸にかけて湧水地点が点在する。
湧水地点の崖には成層した凝灰岩がみ
られる。背後は新規玄武岩が分布して
いる。
ジブチ中央地溝帯に位置しているので
NW-SE系の断裂系が見られる。
温泉は78℃程度と高温。温泉の塩分濃
度は海水程度(53,500μS/cm)。付近に
白色粘土の分布が見られる、高温変質
か?
Asal湖の標高約-150mで、Ghoubbet湖
(海水)との距離は約10km。温泉は、
Asal湖に向かう海水がArdouboba火山の
マグマで熱せられ湖畔に湧出している
ものと想定.ただし、塩分濃度が課題。
3
Djibouti
国道沿い
溶岩台地の上
Tadjoura 湾岸玄武岩3.4-1.2 Ma
顕著な構造は認められない。
73℃の温泉水。ポンプ揚水。他に地熱
兆候は見られない。
特になし。
4
Dorra
アクセスの問題で現地調査は実施して
いない
5
Hanle-Gaggade
Asal湖南方20-25kmに広がるGagade平原
の南東端山岳部に位置する。
噴気へのアクセス=>ジブチ市から
Ghoubbet湖畔:2時間、湖畔から国道未舗装交差点:車約20分、未舗装溶岩
台地走行土漠まで車1.5時間、土漠走行
下車まで:1時間、徒歩:約1.5時間
広域的にはSW方向に傾動した溶岩斜
面を示す。サイト周辺は、NW-SE~
WNW-ESE方向に谷地形で浸食されてい
る。流紋岩の幅の狭い貫入岩がNW-SE方
向の稜線を形成している。
Afar-Stratoide(2.0 - 2.7 Ma)に属
する玄武岩、それを覆い同様のAfarStratoid 玄武岩(1.8- 2.2Ma)、小
規模な流紋岩が分布している。
NW-SE方向のGagade地溝帯と平行な
断裂系が認められる。地熱兆候(噴
気、変質)もこの断裂系に沿ってい
る。
衛星画像で認められる噴気、変質粘土
がみられる。これら地熱兆候は、NW-SE
系に伸長する断裂ないしは貫入岩流紋
岩にそっているように見られる。
噴気が強く、強い変質も見られ、線状
配列が見られることから、ターゲット
は絞り易いと考えられる。有望地の一
つである。
国際協力機構
5-13
日本工営株式会社
住鉱資源開発株式会社
地熱エンジニアリング株式会社
ジブチ国地熱開発にかかる
情報収集・確認調査
サイト名
ファイナルレポート
位置、アクセス
現地地形
主な地質
地質構造・断裂系
地熱兆候(噴気、変質など)
所 見
Hanle-Garabbayis
広大なHanle平原の中南部の北方山岳地 噴気地点は、Hanle平原を形成するNWに接する地点に位置する。
SE方向構造のHanle地溝帯に並行する急
噴気へのアクセス=>ジブチ市からディ 崖。
キル市:国道1号線約2.5時間。噴気地
点は、Hanle 平原を走る国道から平原
北方の山岳部へ2.5km。1980年に深井戸
の掘削が行われており、地熱兆候地点
までのアクセスは良い。
Hanle-Gagadeと同様にAfar-Stratoide Hanle 地溝帯と同方向のNW-SE方向に断
(2.0 - 2.7 Ma)に属する玄武岩、そ 裂が見られる。
れを覆い同様のAfar-Stratoid 玄武岩
(1.8- 2.2Ma)が分布する。北方~西
方に大規模な流紋岩が分布している。
強い噴気が観察できる。地質図では、
新旧の玄武岩溶岩の境界部に整合する
ように噴気が分布しているように見え
る。
噴気活動は強いが、1980年の深井戸の
温度は高くない。詳細調査が望まれ
る。なお、Hanle平原の地下水の塩分濃
度は3000μS/cmのオーダーで高くな
く、地熱流体として有望。
In the Hanle Plain
(Dagguirou湧水、
Minkileh湧水、
Agna湧水)
広大なHanle平原の縁辺部に点在する湧 いずれも、背後に急峻な溶岩台地の崖
水。
が迫る。
背後の溶岩はDalha (8.6 - 3.6 Ma)の
玄武岩
同上
いずれの温泉も40℃~60℃で、温度は
高くない。顕著な変質は見られない。
地熱兆候は弱い。
7
Lac Abhe
ジブチ国の西端に位置する。
地熱兆候(沸騰泉)は、湖沼堆積物~
噴気へのアクセス==>ジブチ市からディ 土漠堆積物平地の広大な平地地形。た
キル市:国道1号線2.5時間、ディキル だし、Travatineが林立している。
市からアベ湖:土漠2.5時間
現地は湖沼堆積~土漠堆積物平地
湖沼堆積物~土漠堆積物;山岳地は
Stratoid 玄武岩
平地地形部には構造は見られない。
Travatineの配列にも規則性なし。
沸騰泉が湧出する(100L/min程度)。
EC=6,000μS/cm。
広範囲かつ多数あるTravatineのうち2
個の上部から蒸気がみられる。
強い地熱兆候を示す有望地点である。
ただし、林立するTravatineとフラミン
ゴが飛来するAbhe湖には環境資源と
なっている。
8
Nord Goubet
タジュラ湾西端グべ湖北岸に位置す
る。
国道から手前の噴気地点までは車両で
30分、徒歩15分。さらに遠方の強い噴
気地点までは徒歩約2.5時間
解析された谷地形底部にはDalha玄武岩 N-S方向の谷地形が発達している。
が分布し、急峻部にはStratoide 玄武
岩(Tadjoura 湾岸玄武岩3.4-1.2
Ma)が分布する。
一部の谷底にはRibta 流紋岩が見られ
る。
地質図には9か所の噴気と1か所の温泉
が記されている。現地調査では3箇所の
噴気を確認した。もっとも強気噴気は
流紋岩に付随している。石灰華が沈積
している。衛星画像で推定される酸性
変質が確認できる。
広い範囲で噴気が分布し、強い噴気が
観察される。地熱活動が推定される。
噴気の一部は流紋岩の分布と関連して
いる。ただし、海岸に近いので流体の
塩分濃度は高いものと想定される。
9
Nord Lac Asal
Asal湖の北岸に位置している。陸路で
のアクセスは不可
10
Obock
タジュラ湾北岸に位置する。オボック
市海岸。アクセス容易。
海浜地帯。平地。
石灰質粗粒砂岩礫岩。周辺に火山岩類
は分布しない。
顕著な特徴は見られない。
温泉は海面下にあり、干潮時のみ見ら 常時は海面下にも関わらず温度は比較
れる。温度は70℃程度。流量約10L/min 的高い。深部は高温熱水の可能性があ
で比較的多い。噴気や顕著な変質は観 る。
察されない。
11
Rouweli
溶岩台地が海岸にせまる。温泉は溶岩
崖下の狭い海岸にあり、海水面以下、
干潮時のみ観察できる。
Stratoid玄武岩。
衛星画像で見られるNWの玄武岩の明瞭
な崖が確認できる。
温泉は海面下。干潮時のみ見られる。
温度は40-50 ℃程度で流量も少ない。
顕著な変質は確認されない。
12
Sakalol
NW-EWの全体構造と並行な構造
温泉温度62度。顕著な変質は認められ 地熱活動としての兆候は弱い。
ない。地質図によれば、Sakalol平原と
溶岩台地の境界部に温泉が点在する。
13
Sud Goubet
タジュラ湾北海岸に位置する。
湧水へのアクセス==>ObockからAsal方
向に約50分、国道から車で約50分。徒
歩50分。ワジのため雨期にはアクセス
困難。
Ghoubet湖~Garabtison1検問所:悪路
2.5時間;検問手続き:1.0時間、検問
所~Dalho:1.0時間;;Dalho~湧水地
点:溶岩台地と土漠2.0時間:徒歩0.5
時間
Tadjoura湾の南岸に位置している。陸
路でのアクセスは不可
6
噴気は南北に開析された谷地形に位置
する。国道から手前に噴気地点は周辺
はやや浸食を受けた地形と呈する。周
縁部は急峻な地形携帯を示す。地質分
布と対応している。
-
-
-
Sakalol土漠(塩類堆積原)の中央部南 Stratoid玄武岩(3.5 - 1 Ma)が背後に
端の溶岩台地と平原の境界部。
広く分布している。全面は、塩類堆積
溶岩台地はNW-SE方向の、全体構造と同 物(蒸発堆積)に覆われている。
方向に区切られている。
-
-
-
地質図には、Asal湖の北岸に15点の湧
水地点が記載されている。
地質図によれば、Tadjoura湾岸玄武岩
に2点の噴気地点が記載されている。
参考資料: [9], [13], [15]
国際協力機構
5-14
-
地熱活動の兆候は弱い。
-
(出典:JICA 調査団)
日本工営株式会社
住鉱資源開発株式会社
地熱エンジニアリング株式会社
ジブチ国地熱開発にかかる
情報収集・確認調査
ファイナルレポート
表 5-3 調査地点および調査数量一覧表
SN.
試料番号
調査地点
薄片鑑定
X線
回折分析
蛍光
X線分析
1
140518-1
Rouweli
○
-
○
4
140519-1
Nord Goubet
-
○
-
5
140519-2
Nord Goubet
○
-
○
9
140519-6
Nord Goubet
-
○
-
10
140520-1
Arta
○
-
○
11
140520-2
Arta
-
○
-
12
140520-3
Arta
-
○
-
14
140520-5
Arta
-
○
-
15
140520-6
Arta
-
○
-
17
140520-8
Arta
-
○
-
18
140521-1
Asal-Fiale
○
-
○
20
140521-3
Asal-Fiale
-
○
-
22
140521-5
Asal-Fiale
-
○
-
25
140522-1
Djibouti-Awrofoul
-
-
○
26
140523-1
Nord Goubet_Anaale
○
○
○
27
140523-2
Nord Goubet_Anaale
-
○
-
29
140527-1
Lac Abhe
○
-
○
32
140528-3
Lac Abhe
-
-
○
33
140530-1
Hanle Garabbayis
○
○
○
35
140530-3
Hanle Yoboki
-
○
-
36
140530-4
Hanle Yoboki
○
○
○
38
140531-1
Hanle Dagguirou
○
-
○
40
140601-1
Hanle Agna
○
-
○
41
140606-1
Gaggade-Taassa
○
-
○
43
140606-3
Gaggade-Taassa
○
-
○
44
140606-4
Gaggade-Taassa
-
○
-
45
140606-5
Gaggade-Taassa
-
○
-
46
140608-1
Sakalol-Asbou-Dara
○
-
○
13
16
15
数量
計
(出典:JICA 調査団)
国際協力機構
5-15
日本工営株式会社
住鉱資源開発株式会社
地熱エンジニアリング株式会社
ジブチ国地熱開発にかかる
情報収集・確認調査
(b)
ファイナルレポート
偏光顕微鏡観察結果
偏光顕微鏡観察は、試料の岩石種、造岩鉱物、組織、変質鉱物の有無および生成状況を確認
する目的で行った。岩石薄片顕微鏡観察記録は、顕微鏡記載カードとして写真とともに巻末に
添付した。
観察の結果、ほとんどの試料で二次石英、方解石、沸石類および粘土鉱物等の変質鉱物が確
認された。特に褐色の粘土鉱物がほとんどの試料の基質部に生成していることから、低度の変
質を伴っていることが推察される。観察の結果は、一覧表として巻末に添付した。
(c)
全岩分析結果
全岩分析は、岩石試料の岩石種と化学組成を確認する目的で行った。分析の結果は、以下に
示す図表類にプロットし比較した。結果は次の表のとおりである。
【TAS ダイアグラム(SiO2-Na2O+K2O 図):図 5-6】
TAS ダイアグラムは、火山岩の系列と岩石種を示すダイアグラムである。これに既存のジブ
チの火山岩の化学組成と、今回採取した岩石試料の化学組成をプロットし、比較を行った。
結果、今回採取した試料のうち、すべての玄武岩試料は、ジブチの既存の火山岩の化学組成
と同じフィールドにプロットされ、ジブチで一般的なアルカリ岩系列の火山岩であると判断さ
れる。アルカリ岩はリフトバレーに広く分布しており、ケニアのオルカリア地熱発電所、エチ
オピアのアルート・ランガーノ地熱発電所と同系列の岩石であり、分化したと考えられる流紋
岩を伴うことから、地熱開発に有望な地質条件を備えた地点である可能性がある。
【Zr/TiO2-Nb/Y 図による分類(Winchester and Floyd, 1977)
:図 5-7】
上記の TAF ダイアグラムで用いられている SiO2、 Na2O、 K2O は変質作用に影響されやす
く、原岩の化学成分を示さないことが多い。このため、変質作用を受けても移動しにくい Zr,
TiO2, Nb, Y を主成分としたダイアグラムを用い、岩石系列の確認を行った。結果、ほとんどの
岩石試料は、アルカリ玄武岩・サブアルカリ玄武岩に分類され、TAS ダイアグラムと同様のア
ルカリ岩系列にプロットされる結果となった。
この結果と岩石薄片観察結果から、対象地点の岩石は低度の変質作用を受けているが、原岩
の化学組成に大きな変化は生じていないものと考えられる。
国際協力機構
5-16
日本工営株式会社
住鉱資源開発株式会社
地熱エンジニアリング株式会社
ジブチ国地熱開発にかかる
情報収集・確認調査
ファイナルレポート
(プロットは本調査試料およびジブチ地質図副説明書に記載のデータを示す)(出典:JICA 調査団)
図 5-6
TAS ダイアグラムによる既存の火山岩の化学組成および岩石試料の化学組成
(本調査試料のみを示す)
図 5-7
(d)
(出典:JICA 調査団)
Zr/TiO2-Nb/Y を用いた岩石試料の分類結果
X 線回折結果
X 線回折は、岩石試料に生成している粘土鉱物や沸石類などの二次鉱物の種類を判別し、変質
の程度を確認する目的で行った。分析の結果は次の表の通りである。
国際協力機構
5-17
日本工営株式会社
住鉱資源開発株式会社
地熱エンジニアリング株式会社
ジブチ国地熱開発にかかる
情報収集・確認調査
ファイナルレポート
表 5-4
X 線回折分析結果
(出典:JICA 調査団)
多くの試料で変質鉱物として粘土鉱物が確認されるとともに、3 試料でナクライト、3 試料で
石膏が確認された。これらの変質鉱物は熱水変質に伴い形成されたものと考えられる。また、粘
土鉱物では、スメクタイト、およびスメクタイト-混合層粘土鉱物の組み合わせが見られ、4 試料
からはより高度な変質作用を示す緑泥石やセリサイトが確認された。これらの変質鉱物の組み合
わせから、a) 100℃-150℃、b) 150℃-200℃、c) 200℃-250℃の 3 種類の生成温度範囲を推定した。
5.4 衛星画像解析、地質調査による地熱開発有望地点の評価
衛星画像、地質調査および室内分析結果から判断される地熱開発有望地点の状況は以下の通り
である。
5.4.1
Arta 地点
衛星写真より、広い範囲で弱い酸性変質が見られ、スポット状に強い酸性変質帯が分布してい
る。地質図及び現地調査では、流紋岩の分布が確認される。また、現地調査では強い酸性変質帯
が確認される。室内分析では、変質粘土鉱物であるナクライトが確認され、その生成温度は 200
~250℃。Arta 地点での噴気は弱いものの、地質学的には強い地熱兆候があると判断できる。
5.4.2
Nord Goubet-Anaale 地点
衛星写真では強い酸性変質帯が認められる。地質図および現地地質調査では、流紋岩ないしは
安山岩の分布が確認される。室内分析の結果、変質粘土鉱物のスメクタイト・石英/方解石が確
認され、その推定生成温度は 100~150℃である。現地では強い噴気が観察されることから、これ
らの変質帯は、貯留層を外縁するキャップロックを形成している可能性がある。
国際協力機構
5-18
日本工営株式会社
住鉱資源開発株式会社
地熱エンジニアリング株式会社
ジブチ国地熱開発にかかる
情報収集・確認調査
5.4.3
ファイナルレポート
Hanle-Garabbayis 地点
衛星写真および地質図では、Yoboki を中心とする地域で大規模な流紋岩の分布が確認されると
ともに大規模な酸性変質帯が見られる。Garabbayis 地点でも小規模ながら酸性変質帯がスポット
状に分布し、地質図では小規模ながら流紋岩が認められる。室内分析の結果、変質粘土鉱物のス
メクタイトと緑泥石が確認され、生成温度は 150~200℃である。Nord-Goubet Anaale と同様、現
地では強い噴気が観察されることから、これらの変質帯は、貯留層を外縁するキャップロックを
形成している可能性がある。
5.4.4
Gaggade-Taassa 地点
衛星写真では、対象地点に明瞭な線状構造が認められ、また小規模ながら酸性変質帯が認めら
れる。地質図および現地調査では、線状構造にそって流紋岩脈の分布が確認され、流紋岩に沿っ
て変質粘土の分布が認められる。室内分析では、強い酸性変質を示すナクライトが確認され、そ
の生成温度は 200~250℃である。現地では強い噴気が観察されることから、強い地熱兆候がある
と判断できる。
5.4.5
その他の地点
Lac Abhe 地点:対象地点は広く湖沼堆積物に覆われており、地質学的な地熱兆候は確認できな
い。衛星写真によれば、対象地点の北東に迫る玄武岩溶岩に弱い変質帯がみられ、また流紋岩の
分布もみとめられる。
Sord Goubet 地点、Nord Lac Asal 地点:これらの地点は、アクセスできないものの、衛星写真
では、変質帯が認められる。
その他の地点:その他の地点では、衛星写真や現地調査でも、顕著な地質学的地熱兆候は認め
られない。
5.5 地化学調査
5.5.1
調査の目的
ジブチ国の地熱兆候地において噴気ガスおよび温泉水を採取し、化学分析を行うことによって
その地化学的特徴を明らかにし、地熱貯留層の有望性を評価した。
5.5.2
調査の内容
(1)
調査地点
本調査では、噴気ガスと温泉水に加え、それらの起源を考える上での参考として井戸水(飲料
水用)および湖水を採取した。調査対象地点毎の採取試料数を表 5-5 に示す。
国際協力機構
5-19
日本工営株式会社
住鉱資源開発株式会社
地熱エンジニアリング株式会社
ジブチ国地熱開発にかかる
情報収集・確認調査
ファイナルレポート
表 5-5 採取試料一覧
調査対象地点
No.
噴気ガス試料
温泉水試料
井戸水試料
湖水試料
1
Arta
1
0
0
0
2
Asal
1
1
0
1
3
Djioubi
0
0
2
0
4
Dorra
5
Gaggade
1
0
0
0
6
Hanle
1
3
1
0
7
Lac Abhe
0
2
0
1
8
Nord Goubet
1
1
0
0
9
Nord Lac Asal
10
Obock
0
2
0
0
11
Rouweli
0
1
1
0
12
Sakalol
0
1
0
0
13
Sud Goubet
4
2
アクセス道路崩落により調査せず
アクセス道路がなく調査せず
アクセス道路がなく調査せず
採取試料計
5
11
(出典:JICA 調査団)
(2)
(a)
調査項目
現地調査項目
現地調査項目は次の通りである。
座標、高度、気温、泉温あるいは噴気温度、湧出流量、噴気の強さ(目視)
(b)
化学分析項目
化学分析項目は表 5-6 の通りである。
表 5-6 化学分析項目
噴気ガス試料
H2O,NCG,H2S,CO2,R gas,H2,N2,CH4,O2,He,Ar,3He/4He,4He/20Ne,
δ13C(CO2)
温泉水,井戸水および
湖水試料
pH,電気伝導率,Li,Na,K,Ca,Mg,Cl,SO4,T-CO2,H2S,T-SiO2,B,
T-Fe,Al,As,T-Hg,δD,δ18O
(出典:JICA 調査団)
国際協力機構
5-20
日本工営株式会社
住鉱資源開発株式会社
地熱エンジニアリング株式会社
ジブチ国地熱開発にかかる
情報収集・確認調査
(3)
ファイナルレポート
調査方法
噴気ガスの採取方法は添付資料に示す。水試料(温泉水、井戸水、湖水)は、現地で試料水を
取手付きビーカー等で採取後、試料容器に注ぎ入れ、前処理を行った後密栓した。分析方法及び
分析対象毎の前処理方法は、表 5-7 に示す通りである。
表 5-7 化学分析方法一覧
(出典:JICA 調査団)
5.5.3
調査結果
水試料(温泉水、井戸水、湖水)の化学分析結果および噴気ガス試料の化学分析結果を巻末に
添付する。これら表には、各地化学温度の計算結果も合わせて示した。
最も泉温の高い温泉水は Lac Abhe 地点の SP-1(99.2℃)であり、同地点の SP-2 の泉温も 96.2℃
と高かった(添付試料参照)。ついで、 Korili(Asal 地域)、Awrofoul No.6 (Djibouti 地域)、
Obock-2(Obock 地域)の泉温は、それぞれ 77.5℃,73.6℃,70.7℃と高温を示した。なお、Anaale
国際協力機構
5-21
日本工営株式会社
住鉱資源開発株式会社
地熱エンジニアリング株式会社
ジブチ国地熱開発にかかる
情報収集・確認調査
ファイナルレポート
(Nord Goubet 地域)の泉温は 98.0℃と高いが、同地点は噴気が卓越する地点であり、水の湧出
量は非常に少ない。加えて、その電気伝導率は 39 mS/m と他の地点と比べて一桁低いことから、
Anaale の水試料は地表付近で噴気が冷えて生成した蒸気凝縮水が主体であると考える。
塩濃度については Lac Asal の湖水が突出して高く
(Cl 濃度:197,000 mg/L)
、同じ湖水の Lac Abhe
も 28,800 mg/L と海水よりも高い Cl 濃度を示した(巻末添付参照)。温泉水では Korili(Asal 地
域)、 Obock-2 および Obock-1(Obock 地域)が高く、それぞれの Cl 濃度は 22,200 mg/L、20,300
mg/L および 16,800 mg/L であった。これらの濃度は海水の Cl 濃度(19,353 mg/L;日本地球化学
会, 2005)と同程度である。一方、この他の温泉水の Cl 濃度は 2,720 mg/L 以下であり、最も泉温
の高い Lac Abhe SP-1 の Cl 濃度は 1,680 mg/L であった。
噴気ガスについては、Anaale(Nord Goubet 地域)および Garabbayis(Hanle 地域)で優勢な噴
気を確認・採取した(添付試料参照)。Taassa(Gaggade 地域)の噴気も優勢であったが、そこ
で採取した試料には大気成分ガスが多量に混入していた。また、Arta(Arta 地域)および Fiale(Asal
地域)の噴気は勢いが非常に弱く、しかも大気成分ガスを多く含む試料であった。
5.5.4
考察
(1)
温泉水および井戸水の地化学的特徴
本調査で採取した温泉水および井戸水の地化学的特徴を明らかにするために、以下の図面を作
成した。
(a)
-
トリリニアダイアグラム
-
ヘキサダイアグラム
-
δD-δ18O 相関図
-
B-Cl 相関図
-
Na-K-Mg 三成分系図
トリリニアダイアグラム、ヘキサダイアグラム
トリリニアダイアグラムおよびヘキサダイアグラムを図 5-8 ~ 図 5-10 に示す。前者は水質の
分類および水の成因を検討するために作成し、後者は各試料の水質の特徴を視覚的に理解するた
めに作成するものである。
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5-22
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図 5-8 トリリニアダイアグラム
図 5-8~図 5-10 から、本調査で得た水試料は、Garabbayis Dug Well (Hanle 地域)および Anaale
(Nord Goubet 地域)を除いたすべてで Na-Cl 型の水質を示すことがわかる。Garabbayis Dug Well
については、Cl に比べて SO4 と HCO3 の割合が高い。同地点は pH が 8.5 の水井戸であり、温度
は 33.7℃と低いが、付近には噴気帯(調査地点名:Garabbayis,後述)が存在する。このことか
ら、Garabbayis Dug Well には噴気帯を形成する蒸気中のガス、あるいは凝縮水が混入していると
推測する。なお、Anaale については混合型に区分されるが、先述のとおり蒸気凝縮水が主体と考
えられるため、地熱流体の情報は反映していないと考える。
図 5-8 には海水の値と、エチオピア国からジブチ国に伏流水として流入する Awash 川の値(出
典:エチオピア国地熱開発マスタープラン策定調査)を参考データとしてプロットした。今回の
試料との関連性は認められない。
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図 5-9 ヘキサダイアグラム
(出典:JICA 調査団)
図 5-10 にヘキサダイアグラムの平面位置図を示す。
上述のとおり、本地域で採取した水試料はほとんどが Na-Cl 型であるが、横軸のスケールを統
一することで、地点間の濃度の大小が明確になる。この図から、オレンジで示す Obock と Korili、
ならびに赤で示す Lac Asal と Lac Abhe の塩濃度は、他の地域と比べて非常に高いことがわかる
(ただし、赤の Lac Asal と Lac Abhe の湖水は超高塩分濃度であるため縮小して示してあり、本
来は 6 倍のスケールとなることに注意)。
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5-24
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(出典:JICA 調査団)
図 5-10 水質の平面位置図
(b)
δD-δ18O の相関図(デルタダイアグラム)
δD-δ18O の相関図(デルタダイアグラム)を図 5-11 に示す。本調査で得た水試料はすべて世
界の平均的な天水を示す WMWL 線の右下に位置し、また WMWL に沿うようにプロットされる。
マントル起源流体(Hoefs, 1996 [16])の方向へのシフトは認められない。従い、本調査で得た水試
料の起源は天水であり、マントル起源の水の混入はないと判断できる。
本地点の水試料は涵養起源を考察する際、同位体比および地化学的特徴から以下の 5 種類のタイ
プに分類される。
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-
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グループ1:
【特徴】同位体組成比が最小を示す
【地点】Agna(Hanle 平原)、 Lac Abhe SP-1、Lac Abhe SP-2、 Asbou-Dara(Sakalol 地域)
【考察】ジブチ国の西端から南端に位置するこれらの水は、今回の分析試料の中でもっとも低い
同位体比を持つ。これらの涵養水は、現在のジブチ市付近の浅層地下水の涵養域よりも標高が高
い場所で降った雨(高度効果)、または寒冷気候下で降った雨(温度効果)が起源であると考え
られる。
-
グループ 2:
【特徴】中間的な同位体組成を示す
【地点】Korili(Asal 湖)、Dagguirou(Hanle 平原)、Minkileh(Hanle 平原)
【考察】グループ1とグループ4の中間的な組成を示す。グループ1よりも標高が低い、または
温暖気候下で降った雨を起源とすると考えられる。
-
グループ 3:
【特徴】ジブチ市周辺の地下水と同様の同位体組成を示す
【地点】Awrofoul No.2、Awrofoul No.6、Rouweli、Rouweli Dug Well
【考察】タジュラ湾を挟んだ Rouweli 地点および Djibouti 地点の水の同位体組成は、ジブチ市周
辺の水井戸で測られた同位体組成と同様の傾向を示す(Houssein, 2010)
[17]
。このグループの水
は、現在の地域的な降水を起源とし、ところにより海水の影響を受けているものと考えられる。
-
グループ 4:
【特徴】現在の海水に近い同位体組成を示す
【地点】Obock-1、Obock-2
【考察】現在の海水(※)とほぼ同様の同位体組成を示す。これらの水は、海水と同様の塩分濃
度を有することからも、海水が涵養起源である可能性がある。
※ジブチ付近の海水の同位体比は、低緯度で塩濃度も高いため、世界の平均海水よりも重い(δD で
6‰、δ18O で 1.5‰付近(Houssein Bouh, 2010) [17])。
-
グループ 5:
【特徴】その他
【地点】Garabbayis Dug Well(Hanle 平原)、Anaale(Nord Goubet 地域)
【考察】これらの水試料はグループ 4 の付近にプロットされるが、塩分濃度が低いなど、地化学
的特徴は異なっており、前述のように蒸気凝縮水、または蒸発の影響を受けて同位体比が重くな
っていると考えられる。
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情報収集・確認調査
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Korili
10
Awrofoul No.2
WMWL:δD = 8δ18O + 10
Awrofoul No.6
Gp-4
Gp-3
-4.0
-3.0
-2.0
Dagguirou
0
-1.0
0.0
1.0
2.0
Minkileh
Agna
δD = 7.4 δ18O + 1.26
R² = 0.92
Garabbayis Dug Well
-10
Lac Abhe SP-1
Lac Abhe SP-2
Gp-2
Anaale
-20
Obock-1
Obock-2
Gp-1
Rouweli
-30
Rouweli Dug Well
Mantle-originated fluid
Asbou-Dara
Awash River
-40
Group
Type
Location
1
同位体組成比
が最小を示す
グループ
Agna,
Lac Abhe SP-1,
Lac Abhe SP-2,
Asbou-Dara
Korili,
Dagguirou
Minkileh
Awrofoul No.2,
Awrofoul No.6,
Rouweli,
Rouweli Dug Well
2
Gp-1
Gp-4
3
Gp-3
Gp-2
Gp-1
4
中間的な同位
体組成を示す
グループ
ジブチ市周辺
の地下水と同
様の同位体組
成を示すグル
ープ
海水に近い同
位体組成を示
すグループ
その他
5
Obock-1,
Obock-2
Garabbayis
Well,
Anaale
Dug
(出典:JICA 調査団)
図 5-11 δD-δ18O 相関図および平面位置図
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(c)
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B-Cl 相関図
図 5-12 に B-Cl の相関図を示す。同図により各試料水の生成機構および貯留母岩の検討ができ
る。同図より、Garabbayis Dug Well 以外の地点は海水とほぼ同じ B/Cl モル比(0.001 前後)を示
すことが読み取れる。一方、Garabbayis Dug Well の B/Cl モル比は約 0.01 であり、他の地点と比
べると B の割合が有意に高い。B は揮発性があることから、水が沸騰・凝縮する過程で蒸気凝縮
に分配され濃縮する。このことから、同地点には沸騰・凝縮を繰り返した蒸気凝縮水の寄与があ
ると考えられ、蒸気凝縮水の混入があるとしたトリリニアダイアグラムからの解釈と整合する。
(出典:JICA 調査団)
図 5-12 B-Cl 相関図
(d)
Na-K-Mg 三成分系図(Geoindicator diagram)
Na-K-Mg 三成分系図(Geoindicator:Giggenbach, 1988
[18]
)を図 5-13 に示す。同図では、反応
速度の異なる二種類の化学反応を利用した温度計(Na-K 温度計および K-Mg 温度計)の関係から、
水―岩石間の反応がどの程度平衡に達しているかを把握できる。同図より、Lac Abhe SP-1 および
SP-2 を除く地点は Immature、あるいはそれに近い Partial equilibrium の範囲にプロットされる。そ
のうち比較的高い Na-K 温度を示す温泉水としては、Obock 地域の Obock-1(197℃)と Obock-2
(195℃)、および Djibouti 地域の Awrofoul No.2(191℃)が抽出できる。Na-K 温度は反応速度
が遅いため、温泉水が深部から上昇する間に冷却したとしても、深部の温度情報を保持すること
が期待される。この想定が適用できる場合、上記 3 地点の地下には 200℃程度の高温域が存在し
ている可能性がある。
Lac Abhe SP-1、SP-2 のプロット位置は Full equilibrium のライン上にプロットされることから、
その温泉水は地層と溶解平衡関係にあると解釈される。Lac Abhe SP-1, SP-2 の地化学温度は、
Na-K
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5-28
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情報収集・確認調査
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温度が 151~158℃、カルセドニー温度が 115~124℃であるから、SP-1 および SP-2 は 115~158℃
の帯水層から湧出する温泉水と解釈できる。なお、この温度範囲は、Houssein (2010)
[17]
が化学
調査結果から推定した Abhe 湖周辺の貯留層温度(110℃~157℃)とほぼ整合している。
(出典:JICA 調査団)
図 5-13 Na-K-Mg 三成分系図
噴気ガスの地化学的特徴
(2)
本調査で採取した噴気ガスの地化学的特徴を明らかにするために、以下の図面を作成した。
(a)
-
He-Ar-N2 三成分系図
-
3He/4He-4He/20Ne
-
δ13C(CO2)値の分布図
相関図
He-Ar-N2 三成分系図
He-Ar-N2 三成分系図を図 5-14 に示す。同図はガスの起源を検討するものである。火山性ガス
やマントル起源ガスといった端成分流体の寄与の有無が判別できる。同図を見ると、Anaale(Nord
Goubet 地域)は天水(air-saturated water)とマントル起源ガスの混合直線上にプロットされる。
加えて、Garabbayis(Hanle 地域)についても、わずかながら天水から離れてマントル起源ガス方
向にシフトしている。このことから,Anaale および Garabbayis の噴気ガスにはマントル起源ガス
が混入しており、地下深部にはその熱源となるマントルが存在しているものと考えられる。Anaale
および Garabbayis の貯留層温度は、CO2/Ar 温度および CH4/CO2 温度からそれぞれ 228℃~323℃
および 159℃~266℃が期待される。
Arta(Arta 地域)、Fiale(Asal 地域)、Taassa(Hanle 地域)の噴気ガスについては、図 5-14
では大気成分ガス(air)と同じかそれに近い位置にプロットされ、マントル起源ガスの寄与は読
み取れない。
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5-29
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(出典:JICA 調査団)
図 5-14 噴気ガスの He-Ar-N2 三成分系図
(b)
3
He/4He 比と 4He/20Ne 比の相関図
3
He/4He 比と 4He/20Ne 比の相関図(図 5-15)では、前記の Anaale,Garabbayis 以外にも Taassa
および Fiale のプロットも大気成分ガスから離れ、マントル起源ガス方向へシフトしていること
がわかる。これにより、これら4地点にはマントル起源の He が混入しているものと判断でき、
Taassa および Fiale に対しても、地下熱源となるマントルが存在しているものと考えられる。なお、
両地点では CO2 が検出されなかったため、地化学温度が計算できず、貯留層温度は推定できない。
しかし、Fiale が位置する Asal 地域では地熱井の掘削が行われており、最高温度として 359℃(A5
坑、深度 2,105 m)が記録され、A3 坑および A6 坑では 265~280℃の流体の噴出が確認されてい
る(D’Amore et al., 1998 [19])
(出典:JICA 調査団)
3
4
4
20
図 5-15 噴気ガスの He/ He- He/ Ne 相関図
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5-30
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δ13C(CO2)値の分布図
(c)
δ13C(CO2)値の分布図を図 5-16 に示す。同図からは CO2 ガスの起源を検討できる。
Fiale(Asal 地域)、Garabbayis(Hanle 地域)および Taassa(Gaggade 地域)のδ13C 値はそれ
ぞれ、-10.3‰, -15.1‰および-18.6‰であり、一般的なマグマガス(-8‰~-4‰)、ならびに石灰
岩等の海性堆積岩起源のガスよりも小さな値を示す。一方で、有機物起源の CO2 ガスは、通常-20‰
以下の値を示すが、3 地点の試料はこれよりも明らかに大きな値を示している。なお、Fiale(Asal
地域)と Garabbayis(Hanle 地域)はバックグラウンドよりも高い値を示しており、同地点のガス
成分はほぼ大気と同様であったことも踏まえると、大気の CO2 の影響を受けた値を示したものと
考える。
(出典:JICA 調査団)
。
図 5-16 δ13C 値の分布図
5.5.5
地化学調査による貯留層評価
地化学調査結果の要旨を表 5-8 にまとめた。地化学調査結果から貯留層評価を検討した結果は、
次の通りにまとめられる。
-
本調査で採取した水試料はすべて天水または海水起源であり、マントル起源流体の寄与は
認められない。そのほとんどは Na-Cl 型に区分される。ただし、Garrabayis Dug Well(Hanle
地域)については HCO3 および SO4 の割合が高く、地熱蒸気の凝縮水が混入している可能
性がある。
-
温泉水試料から分析した Na-K 地化学温度が 190℃程度の高温を示す地点は以下のとおり。
・ Obock-1, Obock-2(Obock 地域)
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・ Awrofoul-No.2(Djibouti 地域)
-
ガス試料から分析した CO2/Ar 地化学温度と CH4/CO2 地化学温度が高温を示す地点は以下
のとおり。
・ Garabbayis(Hanle 地域)
:159℃~266℃
・ Anaale(Nord Goubet 地域)
:228℃~323℃
-
マントル起源のガス混入が認められる地点は以下のとおり。
・ Taassa(Gaggade 地域)
・ Garabbayis(Hanle 地域)
・ Anaale(Nord Goubet 地域)
・ Fiale(Asal 地域)
以上より、地熱開発の有望地点としては下記が抽出できる。
(1) 有望地点
(ア) Garabbayis(Hanle 地域)
(イ) Anaale(Nord Goubet 地域)
(ウ) Taassa(Gaggade 地域)
(エ) Fiale(Asal 地域)
(2) 開発の可能性のある地点
(ア) Obock (Obock 地域)
(イ) Awrofoul (Djibouti 地域)
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表 5-8 地化学温度計による資源評価まとめ
(出典:JICA 調査団)
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5.6 CERD との地化学分析結果比較
2014 年 5、6 月における現地調査では、CERD の地化学研究室スタッフ 2 名も参加した。彼
らは複数地点で本調査団と同時に試料採取を行い、それを CERD 地化学研究室で分析した。こ
の分析結果と本調査団が同試料を日本で分析した結果の分析項目毎の相関図を図 5-17 に示す。
また、分析結果の比較一覧表を巻末に添付する。
図 5-17 から、主要成分では両者の値に高い相関がみられる。このことから、CERD は十分な
分析技術を保有しているといえる。しかし、一部成分(Li、T-Fe、As など)については CERD
と調査団の値が僅かに異なる。
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:分析結果に差異が
みられる項目
(出典:JICA 調査団)
図 5-17 CERD と調査団の各分析項目の相関図
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第6章 調査対象地点の地熱資源評価
衛星写真解析や地質図などの既存資料、地質・地化学現地調査及び室内試験結果の要点を表
6-1 に示した。これらの地球科学的自然条件調査による資源評価の結果は次の通りである。
6.1 Arta 地点
現地で観察される地熱兆候は 1 ヶ所の弱い噴気と周辺に広がる強い変質粘土帯および変質を
受けた流紋岩である。噴気は弱いため採取した試料では有意の分析結果は得られなかった。し
かし、粘土鉱物の分析では極めて強い変質活動の存在が示され、変質粘土の生成温度は最大
250℃程度と推定される。また、地質図では近隣に噴気の存在が記載されている。これらの調査
結果から、開発有望な地熱資源が賦存している可能性がある。ただし、海岸に近いために、地
熱流体の塩分濃度は高い可能性がある。
6.2 Gaggade Taassa 地点
現地では強い噴気が確認される。室内分析の結果でマントル起源のガス成分が混入すること
が確認されている。また、流紋岩脈にそって強い変質帯が観察され、変質粘土生成温度は
200-250℃程度と推定される。これらの調査結果から、開発有望な地熱資源が賦存している可能
性がある。地点は内陸部にあり、ハンレ平原にも近いことから、塩分濃度は中程度であると推
定する。
6.3 Hanle-Garabbayis 地点
現地調査では強い噴気が確認される。室内分析の結果でマントル起源のガス成分が混入する
ことが確認されている。噴気部に熱水変質粘土が形成され、中程度の生成温度 150~200℃を示
す。地質図では近隣の噴気の存在が記載されている。したがい、現地の地熱兆候と室内試験結
果から、開発有望な地熱資源が賦存している可能性は高いと判断する。
Hanle-Garabbayis では 1985 年に 3 本の坑井(450m 程度)が掘削され、最高温度は 87℃と記
録されている。また、1989 年には掘削深度 1,623mと 2,038m の坑井 2 本が掘削されたが、それ
ぞれ深度 1,420m で最大温度 72℃、
深度 2,020m で最大温度 124℃が記録されているに過ぎない。
また、浅い深度で遭遇した流紋岩の透水性は良好だったが深度 800m 以深の透水性が低いと報
告され、地表の地熱兆候(蒸気)は、極めて深い部分の熱エネルギーが断層系を通じて噴出し
ているもので、本地点で地殻が薄くなっているという想定は成り立たないと指摘されている
[9]
。
この教訓からは、
蒸気を供給している断層系や流紋岩の探査が重要であると解釈できる。なお、
この地点も内陸部にありハンレ平原に近いことから、塩分濃度は中程度と推定する。
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6.4 Lac Abhe 地点
現地では広い範囲に多数の巨大な石灰華(Travertine)が広範に分布している。これは、この
地域で活発な地熱活動があったことを示す有力な証拠である。観察した温泉は沸騰しており、
温泉水の電気伝導度は 580 mS/m 程度とそれほど高くはない。ただし、地化学温度では最大
158℃程度と低い値を示す。この値は、Bouh Houssein(2010) [17]が Lac Abhe 周辺で採取した 12
試料の地化学温度の最高温度 157℃と整合している。これら結果から、貯留層温度はそれほど
高くなく、地熱開発地として有望とは言えないと判断する。
なお、Lac Abhe では、CERD が MT 探査とプレフィージビリティー調査を実施しているが非
公開となっている。今後の方向性はこの報告書も参考にしつつ慎重に検討する必要がある。
6.5 Nord Goubet 地点
現地では複数の噴気が観察され、一部温泉華(Travatine)が見られる。採取した粘土鉱物の
分析では、スメクタイト帯(100~150℃)と確認され、やや低温度ではあるが、採取位置が噴
気体の縁辺部である可能性もある。一方強い噴気から採取された地化学温度(CH4/CO2)は最
高 320℃強を示している。地質図では周辺に複数の噴気地点と流紋岩の岩体分布も記載されて
いる。以上から、開発有望な地熱資源が賦存しているものと推定する。ただし、地点は海岸に
近いため地熱流体の塩分濃度は高い可能性がある。
6.6 Obock 地点
この地点は海岸に位置し、温泉は干潮時のみ地表に現れる。温泉の温度は 70℃程度、温泉の
地化学温度は最高 197℃を示しており、開発できる可能性はある。ただし、周辺地質は新規の
石灰質堆積岩が分布しており、変質や地質構造的特徴は不明である。温泉の塩分濃度は海水程
度を示しており、地熱流体も高い塩分濃度である可能性が高い。
Obock では、CERD が MT 探査を実施してプレフィージビリティー調査を行っている。現在
は非公開となっているが、開発の方向性を定めるにはこの報告書も参考にして検討する必要が
ある。
6.7 Djibouti Aurofoul 地点
ジブチ市近郊 PK20 付近に位置する給水用井戸で採水を行った。採水温度は 56~74℃程度で
あるが、地化学温度は最大 191℃を示した。他に地熱兆候は見られないが、開発できる資源が
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賦存する可能性がある。その場合、井戸水の電気伝導率は 156 mS/m と低いことから、地熱流
体の塩分濃度もそれほど高くないと推測される。
6.8 その他湧水地点
6.8.1
Asal-Korili 湧水
Asal 湖畔に位置している。地化学温度は最高 177℃を示し小規模なバイナリーの開発の可能
性は残るが、
フラッシュタイプの資源としての開発可能性は低い。塩分濃度は海水程度を示す。
6.8.2
Hanle-Dagguirou, Hanle-Minkileh, Hanle-Agna 地点
いずれもハンレ平原の縁辺部で湧出する湧水である。湧水温度は 40℃~58℃と高くはない。
地化学温度も最高で 170℃程度である。フラッシュタイプの資源としての開発可能性は低い。
6.8.3
Rouweli 地点
湧出温度は 40.7℃、地化学温度計は最高で 160℃程度。フラッシュタイプの資源としての開
発可能性は低い。
6.8.4
Sakalol Asbou-Dara 地点
湧出温度は 61.8℃、地化学温度計は最高で 164℃程度。フラッシュタイプの資源としての開
発可能性は低い。
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表 6-1 有望地熱開発地点の資源評価
広域地質(衛星画像、地質図、現地調査)
地化学温度計
Arta
ス ポッ ト 状酸性変質 +広範囲変質ハロー
地質的特徴
流紋岩を伴う
断裂系
鉱物帯
Kaolinitephyrophylite
N N E系
Asal_Fiale
ス ポッ ト 状酸性変質 +広い変質
2
流体の塩分濃
度 (μS / cm)
噴気ガス
広域変質
1
熱水変質
調査対象
No.
新規玄武岩溶岩
強度
●●●
生成温度℃
石英
評価
ア ルカリ
A-3
最大200-250
(Very weak, Air mixed)
-
-
> 3 0 ,0 0 0
★有望
-
--
> 3 0 ,0 0 0
(★有望)
可能性低
-
-
-
Mixed with gas of mantle
origin
-
-
-
-
96-111
116-177
> 3 0 ,0 0 0
-
-
-
103-118
52-191
±1 ,0 0 0
(評価対象外)
WN W系多数
Asal_Koril
3
Djiboubi_Awrofoul_No.2
なし
玄武岩
なし
-
4
Dorra
なし
玄武岩
N N W系多数
Not accessible
5
Gaggade_Taassa
ス ポッ ト 状酸性変質 +広域変質ハロー
流紋岩を伴う
N W系,N E系,WN W系混在
Kaolinitephyrophylite
6.1
Hanle-Garabbayis
ス ポッ ト 状酸性変質 +広い変質
大規模流紋岩に隣接
N W系, WN W系混在
Smectite-Chlorite
Mix
6.2
Hanle-Dagguirou
-
玄武岩
N W系, WN W系混在
-
6.3
Hanle_Minkileh
-
玄武岩
N W系, WN W系混在
6.4
Hanle-Agna
-
玄武岩
7
Lac Abhe
ス ポッ ト 状酸性変質 +中性変質
8
Nord Goubet
9
-
(★可能性有)
C
(評価対象外)
最大200-250
Mixed with gas of mantle
origin
-
-
±5 ,0 0 0
★有望
A-1
150-200
Mixed with gas of mantle
originT(CH4 /CO2 )=266℃
-
-
±5 ,0 0 0
★有望
A-1
-
-
-
94-109
113-170
±5 ,0 0 0
可能性低
-
-
-
-
-
103-118
91-126
±5 ,0 0 0
可能性低
-
N W系, WN W系混在
-
-
-
-
92-107
107-173
±5 ,0 0 0
可能性低
-
玄武岩、 湖沼堆積物
WN W系主体、 N N E系混在
-
-
-
-
115-138
136-158
±5 ,0 0 0
可能性低
-
ス ポッ ト 状~マウンド状酸性変質 +広域変質ハ
ロー
ス ポッ ト 状流紋岩、 安山岩
N N W系, N N E混在
Smectite
100-150
Mixed with gas of mantle
originT(CH4 /CO2 )=323℃
-
-
> 3 0 ,0 0 0
Nord Lac Asal
弱酸性変質
玄武岩
N N W系, N N E混在
N o t accessib le
10
Obock
なし
石灰質新規堆積物
なし
-
-
-
-
90-108
115-197
> 3 0 ,0 0 0
11
Rouweli
ス ポッ ト 状酸性変質
玄武岩
EW系
-
-
-
-
79-95
75-160
±5 ,0 0 0
可能性低
-
12
Sakalol_Asbou-Dara
なし
玄武岩
N W系, N N W系混在
-
-
-
-
115-130
116-164
±5 ,0 0 0
可能性低
-
13
Sud Goubet
広域中性変質 +ス ポッ ト 状酸性変質+広域変
質ハロー
玄武岩
WN W系, N N E系混在
Not accessible
●●●
●●
●
A-2
★有望
(評価対象外)
★可能性有
B
(評価対象外)
(出典:JICA 調査団)
国際協力機構
6-4
日本工営株式会社
住鉱資源開発株式会社
地熱エンジニアリング株式会社
ジブチ国地熱開発にかかる
情報収集・確認調査
ファイナルレポート
第7章 社会環境調査
7.1 調査の目的
社会環境調査として、ジブチ国における自然保護地区の範囲と、社会環境影響評価の手法に
ついて確認し、ジブチ国の地熱有望地点 13 地点を開発することが、社会環境上問題ない行為で
あるか否かを確認した。
7.2 調査の方法
ジブチ国における自然保護地区の位置および社会環境影響評価に関連する制度について、ジ
ブチ国の法律、政令を確認するとともに、Ministry of Housing, Urbanism, Environment and Land
Management, Department of Environment(以下、環境局)にヒアリングを行った。
7.3 調査の結果
7.3.1
自然保護地区について
自然保護地区に関連する法律、政令を次に示す。
保護地区は 2004 年にまず 7 ヶ所(図 7-1 の No.1~7)が指定され、その後 2011 年に追加で
2 ヶ所(図 7-1 の No.8、9)指定されている。但し、保護地区の地区境界が設定されているの
は 2011 年に追加された 2 ヶ所のみで、2004 年指定の 7 ヶ所については境界が未設定の状況で
ある。環境局としては、保護地区内のゾーニング等も検討中であり、保護地区内全てで開発行
為を禁止しているわけではない。保護地区周辺で開発行為を行う場合は、環境局に事前相談を
行う必要がある。その後、環境局が、開発箇所周辺の環境状況を確認して、その開発行為の可
否を判断することになる。
表 7-1 自然保護地区関連制度
法律・政令
法律・政令の概要
本調査における特記事項
Low45/AN/04/5emeL:
陸上及び沿岸保護地区の設立
4 ヶ所の陸上の保護地区と 3 ヶ所の沿岸の
保護地区を指定している。
保護地区の地区境界は明記されていない。
指定された保護地区のうち、アベ湖とアッサ
ル湖については、本調査における地熱有望地
点が存在する可能性がある。
Decree 2011-0236/PR/MHUE:
2 ヶ所の陸上保護地区
2 ヶ所の保護地区を追加。同 2 ヶ所の保護
地区の境界についても緯度経度で明記して
いる。
本政令で指定する 2 ヶ所に、本調査における
地熱有望地点は存在しない。
ラムサール条約の批准
ラムサール条約の批准。
ジブチ国には、条約湿地が 1 ヶ所存在するが、
同箇所に本調査の地熱有望地点は存在しな
い。
(出典:JICA 調査団)
国際協力機構
7-1
日本工営株式会社
住鉱資源開発株式会社
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ジブチ国地熱開発にかかる
情報収集・確認調査
ファイナルレポート
保護地区と今回調査を行った地熱有望地点の位置関係を図 7-1 に示す。同図のとおり、アッ
サル湖およびアベ湖については、保護地区内に地熱有望地点が含まれている、もしくは隣接し
ているため、両地区で開発を進める場合は、事前に、その開発の可否について環境局に相談す
る必要がある。
1. Sept Frères and Ras
Syan, Khor Angar and
Godoria forest
2. Mabla Forest
3. Musha and
Maskhali Islands
4. Day Forest
5. Lake Asal
6. Haramous
8. Djalélo Valley
7. Lake Abhé
9. Addaoua Bourale mountain area
located near Assamo village
※Djalelo Valley、Addaoua Bourale mountain area located near Assamo village 以外は保護地区の境界が未設定である。
(出典:JICA 調査団)
図 7-1 保護地区と地熱有望地点の位置
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7-2
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情報収集・確認調査
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社会環境影響評価について
7.3.2
ジブチ国の社会環境影響評価に関連する法律、政令を次に示す。
Decree 2011-029/PR/MHUEAT(EIA 作業手順の改定)では、開発の種類や規模に応じて、EIA
を概略と詳細の二つのカテゴリーに区分しており、環境局によると地熱開発や試掘行為は、詳
細 EIA のカテゴリーに分類される。
表 7-2 社会環境影響評価の関連制度
法律・政令
法律・政令の概要
本調査における特記事項
Decree 2001-0011/PR/MHUEAT
環境影響調査手順の定義
(旧 EIA 方法)
ジブチ国で初めて環境影響評価の手法
を記載した政令。
2014 年現在では、EIA は改訂版
を元に実施されており、本政令は
使用されていない。
Decree
2011-029/PR/MHUEAT
EIA 作業手順の改定
(最新、EIA 作業手順書)
EIA のカテゴリー、EIA の手順、手数料
などについて細述されている。
地熱開発、試掘を行う際には、本
政令を元に EIA を実施する必要
がある。
(出典:JICA 調査団)
EIA の一連の手続きを図 7-2 に示す。環境局へのヒアリングによると Asal における世銀の
地熱開発では EIA レポートの認可を受けるのに 3 カ月程度かかっており、今後、別地点で地熱
開発を進める際には同程度の期間を要するものと想定される。
なお、ジブチ国の EIA に関連する情報について、環境局へのヒアリングの結果で判明したも
のを次に示す。
-
ジブチ国では環境基準が未整備であり、EIA にあたっては WHO などの世界基準、他の
先進国の基準値を用いている。
-
ジブチ国で EIA を委託できる環境コンサルタントは存在しない。但し、環境影響評価を
他国ドナーコンサルタントの下で経験した個人のコンサルタントは存在する。
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7-3
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Citizens
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Project
Proponent
National
Government
Expert
Team
Technical
Committee
Draft Terms of
Reference
Order to check the
Terms of
Reference
Site survey
Opinion
Final Terms of
Reference
Implementation of
EIA
Survey, Forecast,
Evaluation
Draft EIS Report
Public hearing
Opinion
EIS Report
Order to check the
EIS report
Publicity
Opinion
Desk study and
Detail study
Opinion
Evaluation
Final EIS
Monitoring and
taking measures to
protect the
environment
Periodical report
Grant for
Environment
Clearance
Opinion
Environment Audit
Report
Inspection
END
(出典:Decree 2011-029/PR/MHUEAT から JICA 調査団作成)
図 7-2 ジブチ国の EIA 作業手順
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(1)
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環境保護地区での開発
前述の通り、現状(2014 年 6 月末)として、ジブチ国には 9 ヶ所の環境保護地区が指定され
ているものの、保護地区内でのゾーニングが未設定で、可能な開発行為の程度が定められてい
ない。また、Arta、Ali Sabieh を除く 7 ヶ所の保護地区については、その境界線すら未設定の状
況にある。
今回、地熱兆候が確認された地点のうち、Lac Abhe については、境界線が未設定の保護地区
に含まれる可能性があり、今後、同地区を地熱開発の対象とする場合は、環境局への事前相談
が必要となる。
(2)
環境影響調査
環境影響評価に関する政令は 2011 年に改定され、同政令により、EIA のプロセスは、以前に
比べ明確になった。但し、環境局へのヒアリングによると地熱発電所の建設のみならず、調査
時の試掘についても別途、環境影響評価が必要となるため、今後の開発にあたっては、工程管
理上、環境影響調査の実施期間に留意する必要がある。
(3)
住民移転
現地調査で、水道、道路、電気などインフラ設備が全く整っていない地方であっても、平原
や湧水がある場合、ヤギなどを放牧する遊牧民が住んでいるケースが複数認められた。
前述した政令では、開発時に住民に対して十分に告知することが示されており、今後の開発
時に留意する必要がある。
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7-5
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情報収集・確認調査
ファイナルレポート
第8章 開発支援優先順位の提案
8.1 評価項目
開発支援優先順位評価項目は以下の項目とする。
8.1.1
資源量評価
既述の第 6 章で考察の結果、有望と判断された地点のみを対象とする。
8.1.2
アクセス
既掲載の表 5-2 に記載したアクセス情報に基づく。ただし、幹線道路から現地までのアクセ
ス状況のみ考慮する。
8.1.3
開発スペース、掘削水
坑井掘削を含む施設建設スペースの有無や掘削水の入手方法などを検討する。
8.1.4
環境
既述の第 7 章で考察した条件を考慮する。
8.1.5
参考情報
以下の情報を参考とした。
(1)
既設/計画送電線との関係
ジブチ国 EdD では、送変電計画を策定している。地熱発電所との関係は、この計画を基本と
して概略距離を求める(図 8-1)。
(出典:EdD)
図 8-1
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EdD 送変電計画図
8-1
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情報収集・確認調査
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8.2 開発支援優先順位の提案
検討の結果、調査団が考える開発優先順位は表 8-1 に示すとおりである。
8.2.1
Hanle-Garabbayis
Obock(及び評価対象外の Djibouti-Awrofoul)を除く他の評価対象地域は、現在の情報から判
断する限り資源賦存的にはいずれも遜色がないものと判断するが、地熱兆候として
Hanle-Garabbayis と Gaggade-Tasssa がやや優れていると考えられる。しかし、Gaggade-Taassa
はアクセスや敷地の面で不利な条件にあるので、開発支援最優先地点として Hanle-Garabbayis
を推奨する。この地点では 6.3 で述べたようにかつて試掘井が掘削された経緯があるが、その
結果を参考とすると、調査のポイントは断層系の同定と流紋岩の分布の把握が主要な目的とな
ると考える。なお、Hanle-Garabbayis の噴気地点へは、エチオピアに通じる国道 1 号線から未
舗装道路を車両で侵入して、下車後 10~15 分の徒歩でアクセスすることが可能である。
8.2.2
Arta, Noud Goubet
両地点は地熱資源の賦存は同程度であるものと推定する。Arta はタジュラ湾の南岸、Nord
Goubet は同湾の北岸に位置しており、地形地質条件が類似している。Arta は PK12 に位置する
現存する変電所とも近い。また Nord Goubet は、世銀の支援で試掘調査が予定されている Asal
Fiale と直線距離が約 10km なので送電変電施設を共通にできる可能性がある。また、Arta に到
達する未舗装道路周辺は軍事訓練場となっているため、アクセス条件は良い。
8.2.3
Gaggade-Taassa
Gaggade-Taassa は、地熱資源評価的には有望な地点と考えられるが、アクセス条件が良くな
いうえ、施設建設のスペースも取りにくい地形条件となっている。このため、低い開発支援優
先順位とした。
8.2.4
Obock
オボック市は遠隔地に位置し、現在独立電源として発電コストの高いディーゼル発電がおこ
なわれている。このため、地産地消エネルギーの地熱発電所の建設が強く望まれている。今回
の調査で地化学温度が最大 197℃に達する地熱資源の存在の可能性が判明し、フラッシュタイ
プの開発の可能性も残されていると考えられる。しかし、現在のベース需要は 500kW に満たな
いものと推定され、また将来的に全国電力網の整備も計画されていることから、大規模な開発
が妥当かどうか検討する必要がある。従って、後述するように、まずは CERD が実施した MT
国際協力機構
8-2
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情報収集・確認調査
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探査の結果をレビューするとともに、可能性があればジブチ国で入手可能な調査資源を最大限
活用して、バイナリーを想定した調査方法の検討が妥当であると考える。
8.2.5
Lac Abhe
今回実施した調査で採取した Lac Abhe の温泉水の地化学温度計は、最高でも 158℃であった。
また、Lac Abhe はジブチ国の保護地区になっている上、景観的にも優れているため開発に当た
っては環境問題等の課題が生ずるものと考えられる。さらに、遠隔地でもあるため、開発支援
順位としては低い評価となった。
8.2.6
Djibouti-Awrofoul
ODDEG と CERD の要請により、ジブチ市近郊にある水道水源用井戸の水質分析を行った。
その結果、地化学温度が 190℃程度で、かつ電気伝導率は 150 mS/m 程度と低い値であることが
判明した。地下水位が地下約 110m と浅くはないが、今後の MT 探査の対象地点として挙げて
おきたい。
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8-3
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表 8-1 開発支援優先順位の提案
Geothermal
Resources
Socio
-Environment
Workability
Reference
Site name
Resources CL (mg/L)
Garabbayis
☑ A-1
Arta
☑ A-3
Nord Goubet
☑ A-2
Gaggade
☑ A-1
Obock *
B
Djibouti
Lac Abhe
±1,000
Accessibility
C
Fair
Landform
Well
Drilling
Water
B
☑ A
Plain
-ragged hill
Ground water in
Hanle Plain
B
C
Sea
Distance to
transmission
line
Priority
rec'nded
Natural conditions
Inhabitant
☑ A
Barren
A
none
45 km to Dikhil
1
MT survey with
geological and
geochemical survey
☑ A
B
a few
6 km to N.1
2
MT survey with
geological and
geochemical survey
B
a few
50 km to P.K. 51
Barren, Desolate
2
Review of PreFeasibility Study of
CERD
☑ A
Barren
A
none
40 km to P.K 51
3
MT survey
Review of PreFeasibility Study of
CERD
MT survey
Survey for the next
stage
☑ D
±15,000
B
Good
☑ D
±15,000
C-D
Poor-fair
±5,000
☑ D
Poor
☑ D
☑ A
Ragged hill
Ground water in
Hanle Plain
5,000 - 40,000
A
Excellent
A
plain, costal
C
Sea
B
Coastal
near town
Isolated
4*
C
±5,000
A
Excellent
A
Plain
C
Sea
-
-
-
5
-
±5000
C
Fair
A
Plain
C
Lac Abhe
☑ D
Registered
B
a few
75 km to Dikhil
-
Plain - ragged
hill
C
Plain - ragged
hill
C
Sea
Out of a registered
protection area
☑ A
Review of PreFeasibility Study of
CERD
☑: Conditions that special considerations are given for prioritization
Obock *: Survey of a next stage, separately from survey for a flash type may be recommended if a binary type is considered.
(出典:JICA 調査団)
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8-4
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第9章 高塩濃度地熱流体の対策
9.1 ジブチ国 Asal 地点と米国 Salton Sea の地熱流体
ジブチ国 Asal 地域では試掘井が掘削されているが、得られる地熱流体の塩分濃度が 100,000
ppm を超えることが確認されている。このような高塩分濃度の熱水が生産される場合、生産井
坑内および地上配管におけるスケーリング、ならびにケーシングおよび地上配管の腐食が大き
な問題になる可能性が高い。
Asal 地域では、Asal-3 号井の噴出流体を使ってスケーリングと腐食の程度を確認する試験が
1989~1990 年に実施されている(Virkir-Orkint, 1990 [2])。そこで、本節ではその結果をレビュ
ーするとともに、超高塩濃度の熱水を利用する米国 Salton Sea 地域での対策をまとめる。
9.1.1
Asal 地域でのスケール・腐食試験結果概要
Asal 地域のスケール・腐食試験時に用いられた熱水の化学組成(代表値)を表 9-1 に示す。
同表には Salton Sea の代表的な熱水組成(Featerstone et. al., 1995 [20])も合わせて示した。
表 9-1 Asal 地域と Salton Sea 地域の熱水組成
成分
pH
Djibouti
Asal-3
United States
Salton Sea
5.57
-
TDS
(mg/kg)
-
214,000
SiO2
(mg/kg)
511
-
Cl
(mg/kg)
105,500
119,000
Li
(mg/kg)
19.6
160
Na
(mg/kg)
39,300
51,200
K
(mg/kg)
6,540
12,000
Ca
(mg/kg)
23,360
20,600
Mg
(mg/kg)
35.8
50
Fe
(mg/kg)
36.5
540
Zn
(mg/kg)
52
300
Pb
(mg/kg)
3.5
70
Cu
(mg/kg)
0.30
2
Ba
(mg/kg)
115
210
Mn
(mg/kg)
-
770
Sr
(mg/kg)
323
360
(出典:文献 [2] [20]より JICA 調査団作成)
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Asal-3 号井を使ったスケール・腐食試験の概要は次の通りである。
-
Asal-3 号井を 93 日間噴気させ、その間に地上の試験プラントにてスケールおよび腐食の発
生程度を評価した。
-
この噴気期間で生産量は 25~28 %減少した。しかし、この試験は坑井の初期減衰を含む評
価であり、坑内のスケーリングのみに起因した減衰の程度は不明である5。
-
試験プラント内にクーポン(炭素鋼および SUS,76×13×3-4 mm)を最長で 48 日間設置
し、スケールの付着レートを計測した。
-
二相流ラインに設置したクーポンに対するスケールの付着レートは、坑口圧力が 17.7~20
barg のとき 1.8~2.3 μm/h であり、12.4~14.4 barg のとき 10.5~10.7 μm/h であった。
前者のスケール種は方鉛鉱(PbS)が主体であり、後者は鉄シリケートが主体であった。
-
試験プラント末端のサイレンサーには非晶質シリカスケールが付着した。
-
インヒビター(脂肪酸、カルボン酸のポリマー)を使用すると、方鉛鉱および鉄シリケー
トの付着は抑制できた。しかし、別にフレーク状の沈殿物が発生した。
-
腐食試験では、各種の炭素鋼、ステンレスおよび合金を蒸気および蒸気凝縮水ラインに設
置し、その腐食程度を評価した。その結果、蒸気凝縮水で炭素鋼が腐食した他は、顕著な
腐食は確認されなかった。
この試験では硫化鉱物およびシリカ鉱物の付着が確認されたが、試験期間が短く、その量的
な評価、すなわち蒸気生産量に与える影響への評価はなされていない。また、インヒビターの
効果も不明瞭である。加えて、熱水に対する腐食試験は行われていないため、ケーシングおよ
び地上配管の材料の選定に対する目処は付いていないと考えられる。
9.1.2
米国 Salton Sea 地域での対策
米国の Salton Sea の熱水組成は表 9-1 に示した通りであり、Asal-3 号井とほぼ同じ組成の超高
塩濃度の熱水であることがわかる。Salton Sea でのスケール対策および腐食対策の概要は次のと
おりである。
(1)
スケール対策
Salton Sea では下記の二つのスケール対策が行われている。
① Crystallizer Reactor Clarifier
② pH 調整
①は地上の熱水ラインにスケールの種結晶を注入し、それを凝集核として成長したスケール
粒子を沈殿物として回収・除去する方法である。鉄を含む非晶質シリカスケールの付着防止に
効果を発揮しているが、回収したスケールの廃棄に多大なコストがかかるのが問題である。
5
減衰に一つの理由として坑井に 10 本のドリルパイプが残留していることによる可能性もある。
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②の pH 調整は、
熱水の pH を低下させることでシリカスケールの付着を防止する方法である。
地上配管のスケール対策としては一般的な方法であり、日本のいくつかの地熱発電所でも採用
されている。pH の調整には硫酸が使用されることが多く、その添加量は、スケーリングと配管
腐食の両方が起こらないように厳密に管理する必要がある。なお、酸を添加する地点には合金
(例えばハステロイ)のミキサーを設置し、熱水と酸の混合を図るのが一般的である。
腐食対策
(2)
Featerstone et. al.(1995) [20]によれば、Salton Sea の各設備では以下の材料が採用されている。
-
生産井・還元井ケーシング:合金
-
生産ラインおよび気液分離装置:合金(例えばインコロイやハステロイ)
-
還元ライン:セメントライニング
低塩濃度の熱水を産する地熱発電所の場合は、坑井のケーシングおよび地上配管の材料は炭
素鋼で問題ない。しかし、超高塩濃度の熱水を通水する場合は上記のような高級材料を使用す
る必要があるため、坑井の掘削および地上配管の敷設に係るコストは格段に高くなる。
9.2 高塩濃度地熱流体対策のコスト試算
試算の目的
9.2.1
熱水の塩分濃度の違いによる発電所の建設および維持にかかるコストを推算し、ジブチ国に
おける地熱発電所建設事業の可能性を検討するための資料とすることを目的とする。
9.2.2
試算方法
地熱熱水の塩分濃度として 4 種類(標準、中塩濃度、高塩濃度、超高塩濃度)を仮定し、そ
れぞれの熱水が生産される地熱発電所の建設・維持コストを推算した。各種の熱水で想定した
Cl 濃度は表 9-2 の通りである。同表には、想定した Cl 濃度の熱水を産する日本国内の地熱発電
所、およびジブチ国における温泉水の湧出エリアも合わせて示した。
表 9-2 各種熱水の Cl 濃度の想定範囲
標準
Cl 濃度
(mg/L)
500~1,000
葛根田(1 号機),澄川,滝上
中塩濃度
1,000~5,000
葛根田(2 号機),鬼首,大岳
高塩濃度
超高塩濃度
5,000~40,000
40,000~160,000
森,山川
該当なし(米国 Salton-Sea)
熱水種類
日本の地熱発電所
ジブチ国の温泉水
[Cl 濃度(mg/L)]
Hanle[636-953]
Lac Abhe[1,680-1,690],
Rouweli[2,720], Sakalol[2,320]
Asal[22,200], Obock[16,800-20,600]
該当なし (Asal 湖水[197,000]))
(出典:JICA 調査団)
推算は日本国内での発電所の建設・維持を想定して行った。また、アクセス道路等の大規模
な土木工事は試算の対象外とした。
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9-3
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情報収集・確認調査
9.2.3
ド
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試算結果
25 MW 級および 50 MW 級の発電所の建設・維持コストの試算結果を、それぞれ表 9-3 およ
び表 9-4 に示す。発電出力によらず、超高塩濃度の熱水を産する地熱発電所の建設コストが標
準~高塩濃度のケースの約 3 倍と突出して大きい。これは、腐食対策として坑井のケーシング
や地上配管に高級材料を使用し、さらに還元井でのスケーリングを防止するために凝集沈殿シ
ステム(Crystallizer Reactor Clarifier)の導入を想定したことに起因する。したがって、本試算
に基づけば、地熱発電所の開発は生産熱水の塩濃度が最低でも高塩濃度の地域を対象にすべき
と考えられる。本調査で得た温泉水はすべて標準~高塩濃度であり、超高塩濃度に該当する温
泉水はなかった(Asal 湖水のみが超高塩濃度)。地熱資源の有望性が高い Hanle 地域の温泉水
は標準の Cl 濃度であり、仮にその深部に 10 倍の Cl 濃度の地熱熱水が貯留していたとしても、
その Cl 濃度は高塩濃度レベルと予想される。その場合は日本の森・山川地熱発電所を想定した
開発が可能と考えられることから、技術面およびコスト面においても、Hanle 地域での開発は
有望であると考える。
なお、坑井掘削および発電所建設にかかるコストは詳細条件に大きく依存する。本推算結果
はあくまで参考値であり、今後、本調査によって抽出される有望地点の開発支援が継続される
場合には、その開発コストは当該地点固有の情報を加味して再検討する必要がある。
表 9-3 出力 25MW 地熱発電所の建設・維持コストの試算結果
試算項目
標準
中塩濃度
高塩濃度
超高塩濃度
前提条件
発電所の建設コスト(単位:億円)
生産井掘削費用
39
40
48
227
還元井掘削費用
8
8
8
10
地上配管の敷設
費用
20
33
37
149
N/A
N/A
N/A
2
100
100
100
100
167
181
193
488
スケール対策設
備の設置費用
発電所建設費用
合計
発電所の維持管理コスト(単位:億円)
スケール抑制に
係る費用
生産井改修費用
還元井改修費用
蒸気生産設備の
定期点検費用
発電所の定期点
検費用
運転員人件費
合計
・ 2000 m 級生産井を 6 本掘削する。
・ 掘削条件,生産能力は同一とする。
・ 1000 m 級還元井を 3 本掘削する。
・ 掘削条件、還元能力は同一とする。
・ 気液分離装置,pH 調整設備の設置
費用含む。
・ 生産,還元ラインを含む。
・ Crystallizer Reactor Clarifier の導
入を想定。
3
10
3
10
3
10
3
2
10
試算期間:20 年間
・ pH 調整剤(硫酸)の購入費用。
・ CRC の維持管理費用。
・ 1 本/5 年の浚渫工事を想定。
5
5
5
5
・ 1 本/3 年の浚渫工事を想定。
30
30
30
30
・ 1 回/2 年の実施を想定。
39
39
39
39
・ 1 回/2 年の実施を想定。
30
30
30
35
117
117
117
124
(出典:JICA 調査団)
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9-4
日本工営株式会社
住鉱資源開発株式会社
地熱エンジニアリング株式会社
ジブチ国地熱開発にかかる
情報収集・確認調査
ド
ファイナルレポート
表 9-4 出力 50MW 地熱発電所の建設・維持コストの試算結果
試算項目
標準
中塩濃度
高塩濃度
超高塩濃度
前提条件
発電所の建設コスト(単位:億円)
生産井掘削費用
78
80
97
454
還元井掘削費用
16
16
16
21
地上配管の敷設
費用
38
60
64
285
N/A
N/A
N/A
4
150
150
150
150
282
306
327
914
スケール対策設
備の設置費用
発電所建設費用
合計
発電所の維持管理コスト(単位:億円)
スケール抑制に
係る費用
生産井改修費用
還元井改修費用
蒸気生産設備の
定期点検費用
発電所の定期点
検費用
運転員人件費
合計
・ 2000 m 級生産井を 12 本掘削する。
・ 掘削条件、生産能力は同一とする。
・ 1000 m 級還元井を 6 本掘削する。
・ 掘削条件,還元能力は同一とする。
・ 気液分離装置,pH 調整設備の設置
費用含む。
・ 生産,還元ラインを含む。
・ Crystallizer Reactor Clarifier の導
入を想定。
6
17
6
17
6
17
6
4
17
試算期間:20 年間
・ pH 調整剤(硫酸)の購入費用。
・ CRC の維持管理費用。
・ 1 本/3 年の浚渫工事を想定。
8
8
8
8
・ 1 本/2 年の浚渫工事を想定。
30
30
30
30
・ 1 回/2 年の実施を想定。
49
49
49
49
・ 1 回/2 年の実施を想定。
30
30
30
35
140
140
140
149
(出典:JICA 調査団)
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9-5
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住鉱資源開発株式会社
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ジブチ国地熱開発にかかる
情報収集・確認調査
ド
ファイナルレポート
第10章 地熱開発プロファイル
調査対象地点の地熱プロファイルを作成するに当たり、本業務で調査・収集した情報に関し
て、GIS によるデータベース化を実施した。データベース化には ArcGIS を使用し、以下に示す
情報を整理した。
○現地調査
温泉水・ガス・湖水・井戸水サンプリング地点、岩石試料収集地点、現地調査ルート、自然保
護地区(範囲)
○国内分析
・衛星画像解析結果(熱水変質帯分布、火山地形、二次堆積層分布(沖積・塩類・石灰室堆積
物)、断裂系・流紋岩類(貫入岩および火砕岩))、地化学分析結果
○収集既存資料
・図面:地質、年間降水量分布、年間可能蒸発散量分布、地下水流動量分布、汽水地下水分布、
流域界、土壌分布、人口密度分布、耕作地分布、植生区分
・データ:既往地熱掘削井(位置、深度、温度分布等)、地熱兆候(噴気、温泉)
○基礎情報
国境、群境、県境、海岸線、主要都市位置、道路、地形図(90mメッシュ)、10m 等高線、湖、
ワジ
作成した GIS データベースおよび前述の開発優先順位検討結果を基に、図 10-1 に示す様式
で地熱プロファイルを作成した。なお、プロファイルの作成対象は、第 6 章で有望と判断され
た 5 地点とした。作成したプロファイルは巻末に添付する。
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10-1
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ジブチ国地熱開発にかかる
情報収集・確認調査
ド
ファイナルレポート
Geothermal Prospect Profile Sheet
No.
Arta
as of Octber 2014
Region
Arta
Topography
Sampling location
N
Development Priority
Geothermal Potential
ODDEG Priority
Access map
E
2
A-3
4
Geothermal Potential
- Deeply dissected with ragged hills on both side along the access
road
- The fumarole point and alteration zone are located on a edge of
wadi where widely eroded;
Geology
Reservoir Area
km2
Thickness
m
Geological map
Accessibility
- Located on the southern coast of Tadjoura Bay; about 2.5 km
from the coast to the fumarole point
- ca. 2.5 km from the coastal line to the fumarole point
- ca. 40 min. from Djibouti city to the junction, ca. 45 min. on
unpaved road to the fumarole point through military training
field
Satellite Imagery Analysis Result
- Dalha basalt together with NS oriented Ribta rhyolite that runs
through the fumarole point
- Rock outcrops are generally weathered
- NS oriented fractures
- NS oriented distribution of three fumaroles described on the
geological map
- The fumaroles seemingly along the rhyolite outcrops
Evaluations of Geothermal Resources
Temp. of formation
Fumarolic Gas Origin
Geochemical Temperature
Salinity
Acidic alteration spot and broad weak alterated halo.
Associated with rhyolite.
200-150
degree C.
degree C.
degree C.
>30,000
μS/cm
Transmission Condition
Required T/L
N.1
Connection
Socio-Environmental Aspect
Natutral Condition
Inhabitant
6
km
substation (city)
Barren
a few
(出典:JICA 調査団)
図 10-1 プロファイリングフォーマット
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ジブチ国地熱開発にかかる
情報収集・確認調査
ド
ファイナルレポート
第11章 今後の地熱開発支援の方向性、課題と提言
11.1 ジブチ国電力開発計画と地熱開発
エネルギー政策は次の 3E が重要とされる:
Energy security、 Economic growth、Environmental protection。
ジブチ国は最新の国家開発計画「Vision Djibouti 2035」において、2010 年時点で 100%の火力
発電依存を 2020 年までに 100%の再生可能エネルギー利用に変革する、
と謳っている。同時に、
第 3 次国家開発 5 カ年計画(2011 年―2015 年)では、電気の普及率を 70%に向上させ、かつ
自国資源である地熱資源を開発するとして、3E を柱とした電力開発を目指している
Economy
Energy
Policy
Energy Security
Environment
(出典:JICA 調査団作成)
図 11-1 電力政策の基本となる 3E
一方、2.1.3 で前述したようにジブチ国では現在 230kV の一系統の送電線でエチオピア国か
ら電力を輸入して国内消費電力の 80%以上を賄っており、さらに新規 230kV 送電線が 2017 年
には完成する予定となっている。これにより 2020 年における電力の 100%は再生可能エネルギ
ーで賄うという目標は達成される。しかし、2020 年における設備容量 236MW の内訳は 186MW
(約 79%)がエチオピア国からの輸入に依存し、自国資源の電力はわずか 50MW(地熱発電)
が計画されているに過ぎない。この地熱発電は開発される可能性があるアッサル湖地点を想定
しているものであり、他の地熱ポテンシャルは開発実現までの不確定要素が多いという理由で
計画策定には採用されていない。電力政策基本の 3E のうち「エネルギー安全保障・安定供給
(Energy Security)」は「地産地消」エネルギーの比率を高めることが重要な施策の一つとなる
ため、ジブチ国の地産エネルギーである地熱による電力開発を積極的に推進することが求めら
れている。
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11-1
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ジブチ国地熱開発にかかる
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ド
ファイナルレポート
また、2021 年以降、風力発電が徐々に導入され、2024 年には 50MW 程度の設備容量が見込
まれている。ただし、風力発電は出力の変動が大きいので通常バックアップとなる即応性の高
い火力や水力などの発電施設に補完されながら利用される。計画ではこの補完機能を隣国の水
力に依存するような形態になっている。すなわち、ジブチ国の電力供給はピークロードやベー
スロードの一部に加え、風力発電の出力変動補完までも隣国の水力発電に依存する運営となる
計画である。このような運用はエネルギー安全保障・安定供給(Energy Security)」の観点から
好ましくはないため、地熱発電の開発促進が望まれている。ただし、経済的側面ではエチオピ
アからの買電価格は 6~7 セント/kW と廉価であり、従って効率的な地熱エネルギー開発が必
要となっている。
 地産地消の熱発電を促進する必要がある。
 水力発電との価格競争を考慮した開発計画とする必要がある。
11.2 地熱資源開発のプロセスと ODDEG の業務分掌
地熱資源開発は大まかに次の開発段階を踏んで実施される
[21]
。
1.
予備調査(Pre-survey)
2.
地表探査(Exploration)
3.
試掘調査(Test Drilling)
4.
事業評価、事業計画(Project Review and Planning)
5.
坑井掘削、貯留層評価(Field Development)
6.
発電施設 SAGS 建設(Construction)
7.
試験運転(Start up and commissioning)
8.
運営維持管理(Operation and Maintenance)
大統領令によれば、ODDEG の業務分掌は地熱開発調査から蒸気提供までとされるが、
ODDEG によれば、現在世銀の資金で試掘掘削が計画されている Asal-Fiale 地熱地点では蒸気確
認まで行い、その後は開発権(Concession)を IPP に譲渡するとのことである。しかし、ODDEG
は掘削リグを購入する予定であることから、Asal-Fiale 地熱地点の生産井・還元井の掘削や、運
転開始後の坑井改修作業も実施する可能性がある。
従い、今後ジブチ国の地熱開発の支援対象は上記した開発段階のうち「2.地表探査」、「3.
試掘調査(貯留層評価を含む)」と「4. 事業評価、事業計画」以降の、主に掘削にかかる業務
と理解される。大統領令では IPP 契約等にも ODDEG が関与していく旨が謳われているが、現
在の組織計画では担当する部署が設置されていないので、当面の支援対象として考慮しなくて
もよいと考えられる。
国際協力機構
11-2
日本工営株式会社
住鉱資源開発株式会社
地熱エンジニアリング株式会社
ジブチ国地熱開発にかかる
情報収集・確認調査
ド
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11.3 地熱開発の各段階における作業内容とジブチ国の現有能力
地熱開発の業務実施段階
[21]
における作業内容とそれに対応するジブチ国現有の実施能力(要
員、資機材)を整理して表 11-1 に示した。
これによれば、現在の ODDEG が単独で実施できる可能性がある業務は物理探査のみである
ことが分かる。
この物理探査実施要員は 2014 年 7 月末付けで CERD から異動したものであり、
実施に必要な資機材は現在移管措置をおこなっているところである。初期の地熱調査で重要な
地質調査や地化学調査の要員や機器については、ODDEG では不足しているかあるいは保有し
ていない。これらの調査には CERD の技術支援が必要となるが、CERD にしても地質調査・地
化学調査を実施する資機材は十分ではない。
一方 CERD では Obock, Norde Goubet および Lac Abhe において MT/TEM 探査や地質地化学
調査を実施し、それに基づきプレフィージビリティー調査を実施している。それら報告書は非
公開となっているのでレビューの対象とはできないものの、MT 探査用の逆解析ソフトを保有
していないために解析精度には疑問がのこる。
地震探査は、微小地震計が Asal-Fiale 地熱地点に設けられており Arta 市内に置かれる CERD
の地震観測所で観測中である。しかし、他の地熱有望地点に敷衍する能力は有していない。
坑井掘削に関わる資機材は現在購入交渉中である。相当規模の投資となるので、ODDEG の
ビジネスモデルは蒸気確認・蒸気生産業務である。ただし、世銀の支援で試掘が計画されてい
る Asal-Fiale 地熱地点では、蒸気確認後は IPP に開発権を与える計画とされているため、蒸気
販売まで視野に入れているかどうかは明確ではない。しかし、いずれにしても、将来の ODDEG
の主要業務は地熱井掘削業務と見ることができる。これに対応して ODDEG では掘削エンジニ
アや各種坑井試験担当のエンジニアの養成を急いでおり、UNU-GTP や ICEIDA の支援を受け
て訓練している。
試掘実施後には、坑井掘削結果を利用した貯留層解析シミュレーションを行い、資源量の推
定を行う必要があり、高度なシミュレーション技術が必要となる。現在のところ、ODDEG は
もとより CERD もシミュレーションに必要なソフトウェアや解析技術は保有していない。
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11-3
日本工営株式会社
住鉱資源開発株式会社
地熱エンジニアリング株式会社
ジブチ国地熱開発にかかる
情報収集・確認調査
ド
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表 11-1 地熱開発段階の作業内容と ODDEG/CERD の実施能力現況
Milestone
Tasks
Staff
1. Pre-Survey
2. Exploration
3. Test Drilling
4. Project Review
and Planning
5. Field
Development
6. Construction
Data collection, Inventory
Nationwide Survey
Selection of Promising Area
EIA and Necessary Permits
Planning of Exploration
Surface (Geological)
Geochemical Survey
Sounding (MT/TEM)
Gradient and Slim Holes
Seismic Data Acquisition
Pre-feasibility Study
ODDEG
Tools
CERD
Staff
Tools
Almost completed with JICA’s assistance
Slim Holes
Fullsize Wells
Well Testing and Stimulation
Interference Test
First Reservior Simulation
Evaluation and Decision Making
Feasibility Study and Final EIA
Drilling Plan
Design of Facilities
Financial Clousure/PPA/IPP
Production Wells
Reinjection Wells
Cooling Watwer Wells
Well Stimulation
Reservoire Simulation
Steam/Hotwater Pipelines
Power plant and Cooling
Substation and Transmission
7. Start up and
Commissioning
(MoM)
N/S
Yes
U/T
N/A
N/S
N/A
N/A
Yes
N/A
N/A
U/T
U/P
-
Yes
Yes
N/A
N/A
Yes
Yes
N/S
N/S
N/A
N/A
Yes
N/A
N/A
N/S
-
N/A
N/A
-
Yes
N/A
U/T
-
U/T
U/P
N/A
N/A
(IPP)
(IPP)
(IPP)
(IPP)
(IPP)
(IPP)
(IPP)
(IPP)
(IPP)
(IPP)
8. Operation and
(IPP)
(IPP)
Maintenance
MoM: Ministry of Mining; Yes: Available; U/T: Under Training ; U/P: Under Procurement,
N/A: Not Available; N/S: Not Sufficient; (IPP): Independent Power Provider
(出典:JICA 調査団)
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11-4
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11.4 地熱開発有望地点での調査実績と ODDEG 業務の方向性
表 11-1 と同様に、地熱開発の各段階における業務内容と有望地点におけるこれまでの調査
実績を表 11-2 に示した。概略地質調査と地化学調査については本調査で実施済みであり、開
発有望地点が明らかになってきた。優先順位の高い有望地点においては、適宜地質調査や地化
学調査を補足追加実施していく必要があるものの、次の調査ステップは地下構造を調査する物
理探査の実施である。
既述のようにジブチ側は MT 探査の機器を 2 セット保有しており、Obock、Nord Ghoubet お
よび Lac Abhe にて探査を実施済みである。このため、今後はその他の地点(Arta、
Hanle-Garabbayis、Gaggade-Taassa)で MT 調査を実施していくことになる。また、必要に応じ
て探査地域を拡大する可能性もある。さらに、試掘地点の決定など、当面は地質・地化学調査
技術とともに MT 探査技術も ODDEG が保有し続ける必要がある。
一方、既述のように現在 ODDEG では坑井掘削に関わる資機材の購入手続きを進めており、
その投資規模からも、ODDEG の今後の最大の業務は掘削業務となると考えられる。掘削工事
は、掘削技術はもとより工事準備段階や付帯施設を含めると土木工事や電気工事など広範な分
野の知識と経験を必要とする。また、掘削中の坑井地質や地化学試料の分析・解析や種々の坑
井試験、坑内検層など科学技術的スキルも求められ、さらに、総合解析としての貯留層評価技
術が必要である。
以上の様に、ODDEG では今後、地熱井掘削と貯留層評価を中心としたビジネスモデルを展
開していくものと考えられる。
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住鉱資源開発株式会社
地熱エンジニアリング株式会社
ジブチ国地熱開発にかかる
情報収集・確認調査
ド
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Asal Fiale
☑
☑
☑
☑
☑
☑
☑
☑
☑
☑
☑
☑
VES
-
☑
-
☑
VES
☑
-
☑
MT
☑
☑
MT
☑
☑
MT
☑
☑
MT
☑
☑
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
Production
10.Wells
Reinjection Wells
Cooling Water Wells
Well Stimulation
-
-
-
-
-
-
-
Reservoir Simulation
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
Exploration
Test Drilling
Project Review and Planning
Evaluation
9. and Decision Making
Feasibility Study and Final EIA
Drilling Plan
Design of Facilities
Financial Closure/PPA/IPP
6.
WB
☑
Slim Holes
Full-Size wells
Well Testing and Stimulation
Interference Test
First Reservoir Simulation
5.
tourism
☑
Geochemical
Sounding (MT/TEM or VES)
Gradient and Slim Holes
Seismic Data Acquisition
Pre-feasibility Study
4.
Binary
☑
Surface (Geological)
3.
Lac Abhe
Pre-Survey
Data Collection, Inventory
Nationwide Survey
Selection of Promising Area
EIA and Necessary Permits
Planning of Exploration
2.
Nord
Ghoubet
Hanle
-Gaggade
Arta
Milestone/Tasks
1.
Hanle
-Garabbayis
Geothermal Site
Obock
表 11-2 地熱開発有望地点での調査実績
Field Development
Construction
Steam/Hot
11.Water Pipelines
Power Plant and Cooling
Substation and Transmission
-
-
-
-
7.
Start up and Commissioning
-
-
-
8.
Operation and Maintenance
-
-
-
Note: ☑:実施済み、VES: 垂直電気探査、MT: MT 探査;ただし実施済みでも、必要に応じて追加調査の必要あ
り。‘-’: 実施実績確認されず。WB:世銀が支援
(出典:JICA 調査団)
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日本工営株式会社
住鉱資源開発株式会社
地熱エンジニアリング株式会社
ジブチ国地熱開発にかかる
情報収集・確認調査
ド
ファイナルレポート
11.5 地熱開発にかかる支援の方向性
11.5.1
地熱開発全体にかかる支援の方向性
以上の現況把握と考察から、ジブチ国の地熱開発にかかる支援の方向性を表 11-3 にまとめる。
表 11-3 地熱開発に係る支援の方向性(案)
Milestone
Pre-Survey
Exploration
Sounding (MT/TEM)
Gradient and Slim Holes
Seismic Data Acquisition
Pre-feasibility Study
Test Drilling
Slim Holes
Fullsize Wells
Well Testing and Stimulation
Interference Test
First Reservior Simulation
Project Review and
Planning
支援の方向性
Tasks
Data Collection, Inventory
Nationwise Survey
Selection of Promsing Area
EIA and Nessessary Permits
Planning of Exploration
Surface (Geological, Geochemical
survey)
Evaluation and Decision making
Feasibility Study and Final EIA
Drilling Plan
 補足的技術支援























技術支援、
資機材支援(試験分析機器)
有望時点での MT 探査の実施支援
解析技術支援、解析ソフト支援
掘削資金支援
掘削技術支援
坑井地質地化学調査実施技術支援、同解析技術支援
検層実施技術支援、同解析技術支援
検層ツール支援
坑井試験実施技術、同解析技術支援
(当面は不要)
解析技術支援
レポーティング技術支援
掘削資金支援
掘削技術支援
坑井地質地化学調査実施技術支援、同解析技術支援
検層実施技術支援、同解析技術支援
坑井試験実施技術、同解析技術支援
解析ソフト支援
解析技術支援
F/S 支援
EIA 支援
掘削計画技術支援
Design of Facilities
Tender Prosess
Financial Clousure/PPA/IPP
 借款(E/S:詳細設計、入札支援)
Field Development
(ODDEG)
Production Wells
Reinjection Wells
Coolong watwer Wells
Well Stimulation
Reservoire Simulation
Construction
(Contractor)
Steam/Hotwater Pipelines
Power Plant and Cooling
Substation and Transmission
 技プロ
掘削技術支援
坑井試験実施支援、同解析支援
検層実施技術支援、同解析支援
解析支援
 借款(E/S:施工監理)
 借款(施設建設工事)
Start up and
Commissioning
Operation and
Maintenance
 政策立案支援(技術支援)
 借款(瑕疵担保期間)
 技プロによるフォローアップ
(出典:JICA 調査団)
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住鉱資源開発株式会社
地熱エンジニアリング株式会社
ジブチ国地熱開発にかかる
情報収集・確認調査
ド
ファイナルレポート
ODDEG が生産・還元井まで全て掘削すると仮定して 50MW級の地熱発電所を建設する場合
の標準的スケジュールは表 11-4 の通りである。ただし、大きな資金を必要とする「3.Test Drilling」
や「5.Field Development」のための資金調達に時間を要する場合には全体工程は大きく伸びる可
能性がある。
表 11-4 地熱発電所(50MW 級)建設概略スケジュール
1st
2nd
3rd
4th
5th
6th
7th
lifetime
1st
2nd
3rd
4th
5th
6th
7th
lifetime
1. Pre-Survey
ODDEG
a. Data collection, Inventory
b. Nationwise Survey
c. Selection of Promsing Area
d. EIA and Nessessary Permits
e. Planning of Exploration
2. Exploration
ODDEG
a. Surface (Geological, Geochemical survey)
b. Sounding (MT/TEM)
c. Gradient and Slim Holes
d. Seismic Data Acquisition
e. Pre-feasibility Study
3. Test Drilling
ODDEG
a. Slim holes
b. Fullsize wells
c. Well Testing and stimulation
d. Interference test
e. First Reservior Simulation
4. Project Review and Planing
ODDEG
a. Evaluation and decision making
b. Feasibility study and Final EIA
c. Drilling Plan
d. Design of Facilities
f. Financial Clousure/PPA/IPP
5. Field Development
ODDEG
a. Production wells
b. Reinjection Wells
c. Cooling water wells
d. Well stimulation
e. Reservoir simulation
Contractor
6. Construction
a. Steam/hot water pipelines
b. Power plant and Cooling
c. Substation and transmission
7.Start up and commissioning
8.Operation and Maintenance
(出典:ESMAP)
国際協力機構
11-8
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地熱エンジニアリング株式会社
ジブチ国地熱開発にかかる
情報収集・確認調査
ド
ファイナルレポート
11.5.2
当面の支援の方向性
(1)
基本方針-1
フラッシュタイプを想定した開発支援
本調査の結果、フラッシュタイプの開発が想定できる地熱開発有望地点として4地点
(Hanle-Garabbayis, Nord Goubet, Arta および Gaggade-Taassa)が確認された。これらの 4 地点
での地熱兆候はいずれも遜色はないものと考えられる。このため、開発優先順位を確認する目
的で、少なくともアクセス条件が比較的良い 3 地点(Hanle-Garabbayis, Nord Goubet 及び Arta)
で、MT/TEM 探査を実施して比較検討し、試掘地点を決定する必要があると考えられる。Nord
Goubet で は 、 CERD に よ り MT 探 査 が 実 施 さ れ て い る の で 、 今 後 の 現 地 調 査 支 援 は
Hanle-Garabbayis と Arta の2地点が対象となる。Nord Goubet については、CERD の調査結果を
レビューして追加調査の必要性を検討する必要がある。ただし、Hanle-Garabbayis での MT 探
査の結果が良好であれば、この地点において直ちに試掘調査を計画してもよい。アクセス条件
が 3 地点ほど良好でない Gaggade Taassa については、上記調査で行う技術移転をもとに ODDEG
が独自に実施することを期待したい。
(2)
基本方針-2 Obock の地熱資源開発支援方針
Obock ではフラッシュタイプが開発ができる可能性もあるが、地熱兆候として確認されたの
は地化学温度計が 197ºC を示す温泉のみなので、上記の4地点ほど開発優先順位は高くないと
判断した。今後の開発支援方針は、Obock の地熱資源の開発目的によって異なると考えられる。
(a)
フラッシュタイプ開発の可能性
CERD では、Obock において MT 探査を含むプレフィージビリティー調査を実施している。
報告書は非公開であり、調査団はレビューできないものの、担当者へのインタビューでは、MT
探査ではアノマリーは確認されなかったとのことである。温泉湧出地点が海岸に位置するため、
地表からの探査のみでは、十分な調査結果が得られていない可能性がある。フラッシュタイプ
の施設を想定する場合には、より精度の高い調査が必要となるため、海上からの探査を併用す
る必要も考えられる。ただし、海上からの探査は実績が少ないため、技術とコストの両面から
妥当性を検討する必要があろう。また、Obock は Asal 地域から約 150km 離れた遠隔地である
ため、送電線の建設の必要性を考慮する必要がある。
以上から、Obock においては、フラッシュタイプの開発を想定した地熱発電開発の優先順位
は低いものと考えられる。
(b)
バイナリータイプの開発を想定する場合
Obock での地産地消を目的とする場合は、現在の Obock のベース需要が 500kW 程度である
ことを想定すると、小規模な発電施設でも対応可能と考えらる。従い、大規模な調査を実施せ
ずに実現するような地熱開発が望まれる。この様な場合、バイナリータイプの開発が想定でき
る。この場合、表 8-1 で示した開発支援優先順位とは別に、別途独自に調査を進めることも可
能である。
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ド
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図 11-2 に試掘実施に至るまでの支援の基本方針を示した。
(出典:JICA 調査団)
図 11-2 試掘までの支援の基本方針
(3)
(a)
フラッシュタイプの開発を想定した支援
最優先地点における調査 – Hanle-Garabbayis 地点
今回の調査の結果、地熱資源量評価やアクセスの容易さ、並びに調査実施の容易さ等を考慮
して、Hanle-Garabbayis 地熱地点を支援対象の最優先とした。

詳細地質調査
既存の地質図によれば、この地点の周辺には今回の調査対象以外にも噴気が存在すると記
載されている。詳細調査ではこの噴気地点を中心に現地調査を行い、必要に応じて岩石試
料、変質粘土試料、地化学分析用試料を採取する。
地質地化学分野での今後の支援の方向性は 3.3.2(5)及び(6)に述べた通りである。

物理探査(MT/TEM 探査)
地質構造、貯留層構造を調査する目的で物理探査を実施する。ODDEG 保有する物理探査
機器は学術的な分野で多く利用される機種であり、我が国の民間コンサルタントで保有し
ている会社は少なく、これを十分に操作できない可能性がある。このため、
Hanle-Garabbayis では、探査機器を本邦から持ち込んで日本人技術者が中心となって探
査を行う。
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(b)
ド
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Arta, Nord Goubet を対象にした支援
前記したように、開発支援の最優先地点として Hanle-Garabbays 地点を選定したが、他3地点
の地熱資源についても遜色なく、アクセス条件が比較的良好な地点(Arta, Nord Goubet)につ
いては、Hanle-Garabbayis 地点同様に物理探査を実施して、試掘を行う最優先地点の確認をす
る必要があろう。このため、以下の支援を考慮する必要がある。
MT/TEM 探査が実施されていない Arta 地点では物理探査の実施に関する支援を行う。我が国
からの調査資源に限りがある場合は、ODDEG が自身の機材を利用して、早い時期に探査が行
えるように資金面などで支援を行うことも考えられる。
CERD で MT 探査を実施済みの Nord Goubet 地点については、現在非公開となっている報告
書を入手してレビューを行う。必要な場合には追加調査の支援を行う。追加調査の形態として
は、邦人による調査や、資金面での支援などが考えられる。
なお、Gaggade-Taassa は、アクセス条件が良好ではないため、将来の ODDEG の課題として
期待したい。
(c)

3 地点を対象とした支援 - 総合解析
MT 探査解析支援 (Hanle-Garabbayis, Arta および Nord Goubet)
これらの探査で得られた結果を、2 次元逆解析ソフトを用いて解析する。ジブチ側では現
在このようなソフトを保有していないので、逆解析ソフトを提供しつつ技術支援を行うこ
とが望ましい。
なお、物理探査部門についての今後の支援の方向性については、3.3.1(4)及び(5)
で述べた通りである

貯留層概略モデル構築支援
以上の結果に基づき、3 地点(Hanle-Garabbayis, Arta および Nord Goubet)の概略的な
貯留層モデルを構築して、概略資源量を算出する。

プレフィージビリティースタディーの実施
3 地点(Hanle-Garabbayis, Arta および Nord Goubet)のうち、最も有望と判断される地
熱地点において、プレフィージビリティースタディーを実施する。プレフィージビリティ
ースタディーでは、試掘位置、試掘方法の提案や、坑井試験や坑内検層の提案も含むもの
とする。

現地作業期間の提案
ジブチ国では 5 月から 9 月までは平均気温が 30℃を超え、7 月には 35℃に達する。従っ
て、ジブチ国の技術者は、平均気温が 30℃を下回る 10 月から翌年 4 月にかけて現地調査
を実施している。とりわけ、12 月~2 月にかけては平均気温が 25 度台となるので、この
時期における調査の実施が望まれる。
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バイナリータイプを想定する地点での支援
(4)
- Obock
前述したように、Obock では大規模な地熱発電開発は必要ではないと考えられ、当面のベー
ス需要を満たす出力 500~600 kW 程度の安価な電力源の確保が課題であると認識される。この
ため、大規模な調査やスリムホール掘削の必要性の有無を検討する必要がある。
現時点で調査団は次の様なアプローチを提案する。
CERD のプレフィージビリティー 報告書のレビュー
(a)
CERD では Obock において、MT 探査や地化学調査を含むプレフィージビリティー調査を実
施しているが、非公開となっており調査団は入手していない。地熱開発を念頭に我が国からの
支援を期待する場合には、まずはこの報告書の開示が必要である。
調査計画の立案
(b)
前述のように、Obock で実施された MT 探査の結果ではアノマリーは確認されなかったとの
ことなので、場合によっては陸上からの追加調査や海上からの調査必要になる可能性がある。
-
海岸線を挟み陸上と海上から MT 探査を実施し、地下構造を探る。だだし、費用対効果
を検討する必要がある。
-
陸上からスリムホールを掘削し地温勾配や温泉の湧出の有無等を調査する。スリムホー
ルは、海に向けてのデレクショナルホールとする。農業省では深度 500m程度まで掘削
できるリグを保有しているので、活用できる可能性がある。ただし、熱水対策あるいは
暴噴対策が必要である。
(c)
想定
ORC(Organic Rankin Cycle)を仮定すれば表 11-5 の様な条件と出力が期待される。すなわ
ち、温泉温度 130℃で温泉湧出量が 720 L/min の場合や温泉温度が 150℃で温泉湧出量が
480L/min の場合では、おおむね 200kW の出力が期待できることになる。少ない量ではないが、
この程度の資源が確認できれば、現在のベースロードの半分程度の電源は確保できる可能性が
ある。
表 11-5
ORC で必要な温泉湧出量
出力
100 kW
200 kW
130℃
380 L/min
720 L/min
150℃
250 L/min
480 L/min
温泉温度
注:数字は目安。
(出典:Engineering Advncement Association of Japan(2013)
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[22]
による)
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(d)
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課題
Obock で上記の資源量が確認される場合でも、塩分濃度は海水程度、あるいはそれ以上にな
ると想定されるので、以下の様な課題が想定される。
-
熱水循環系のスケール対策
-
冷却水(海水を想定)のスケール対策
(5)
その他―ジブチ市水源井戸(Awrofoul)
ジブチ市郊外 PK20 付近に位置している水道水源用の井戸で採取した試料の温度は 56.2℃と
73.6℃であったが、アルカリ地化学温度計ではそれぞれ最高で 191℃を示した。また、この水源
の電気伝導度は 140~108mS/m と低く、また、エチオピア国からの電力の変電所も立地してお
り、アクセスも良好なので、地熱開発地点としての可能性が評価される。今後 ODDEG による
MT 探査を実施して、地下構造等を調査する価値はあるものと考えられる。
以上
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ド
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第12章 引用文献
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ド
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000; DORRA, DIKHIL, ALI SABIH, TADJOURA, DIBOUTI,” BRGM, I'ORSTOM, PARIS,
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