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11月15日 第7回 資本主義と工業化---

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11月15日 第7回 資本主義と工業化---
現 代社 会変動 論
第7回
資本主義と工業化――世界システムの変動
資本主義は危機と再編を繰り返してきた
1.社会の進化と類型――世界史的視点
(1)社会進化
●社会進化とは、長期にわたる社会の歴史的・累積的な発展をいう。
機能主義的社会進化論――社会システムの適応能力の増大(Spencer, Parsons など)。
マルクス主義的社会発展論――社会的生産諸力の増大。これに伴って、生産諸関係と上
部構造が段階的に変化。アジア的生産様式→古代奴隷制→封建制→近代資本制。
(2)社会の類型――経済的生産の技術による分類
●狩猟・採集社会――自然の果実である動植物を狩猟・採集して生活する社会。小規模な
部族コミュニティを形成し、狩猟・採集のための道具を使用。
・1万年前までは、人類はほとんど狩猟採集社会を構成していたと推定される。
・日本では、縄文時代にあたる。
・アメリカ・オーストラリアの原住民、ニューギニアなどでは狩猟・採集社会が現存。
●牧畜・農耕社会(農業社会)――家畜の飼育や作物の栽培によって生活する社会。狩猟・
採集から牧畜・農耕に移行した小さな共同体から、農業を基礎としながら商工業を発達さ
せた伝統的文明まで多様。工業社会に対して農業社会として一括されることも多い。
・日本では、弥生時代からほぼ江戸時代まで。
●工業社会――無生物エネルギーの効率的利用による生産を中心とする社会。産業革命以
後の社会。
・工業化の過程は、イギリスでは 18 世紀後半以降、ドイツ、フランス、アメリカ合衆国
では、19 世紀に入ってから進んでいった。日本では、1890 年以降とされる。
2.近代化理論と世界システム理論
(1)W.W.ロストウの近代化理論
・冷戦時代のアメリカで生まれた理論。
・伝統的社会は、次々と産業化に向けて「離陸」し、高度大衆消費社会に向かう。
・どの国も政治的・経済的・文化的条件が整えば、離陸できる。
・国による経済格差は、近代化に向けての発展段階の違いによる。
(2)ウォーラーステインの世界システム理論
●世界システム―― I.ウォーラーステインの概念で、歴史上存在したグローバルな経済シ
ステム、とくに 16 世紀以降に成立した資本主義世界システム(近代世界システム)を指
す。
-1-
現 代社 会変動 論
・世界帝国――世界システムがひとつの国家によって支配されている場合。
・世界経済――世界システムのなかに複数の国家が存在する場合。
●ウォーラーステインによれば、近代世界システムは、16 世紀の大
航海時代に成立。市場向けの生産によって結ばれている資本主義世
界経済。地理的拡大により現在では、文字どおり世界全体がひとつ
の資本主義世界システムになっている。
●近代世界システムは、中核-半周辺-周辺の諸国からなる。
●ヘゲモニー(覇権)国家――中核国のなかで、世界システムに最も影
響力がある国家。
Immanuel Wallerstein(1930.9.28 ~)
http://www.yale.edu/sociology/faculty/pages/wallerstein/
●資本主義世界システムは、スペインとポルトガルの覇権争い(16 世紀)から、オラン
ダ覇権時代(17 世紀)、イギリスとフランスの覇権争い(18 世紀)、イギリスの覇権が確
立した時代(19 世紀)、アメリカ合衆国に覇権が移った時代(20 世紀)からなる。近代の
奴隷制や再版封建制は、資本主義世界システムとの関連で見るべき。
●移行期には、中核国が半周辺国に転落したり(スペイン)、半周辺国が中核国にのし上
がったりする(日本)。また、周辺国が半周辺国に移行する場合もある(韓国)。
(3)資本主義・社会主義・第三世界――20世紀の世界システムの構造
● 1917 年ロシア革命以降、ソビエト連邦成立。スターリンの指導のもとで工業化。のち
にモンゴル人民共和国(1924)がソ連圏に。
●第二次世界大戦後は、東欧(1946)、中国(1949)、北朝鮮(1948)、ベトナム(1945 ~ 54)、
キューバ(1959)などでも社会主義国が成立。ソ連に続き、東独、チェコスロバキア、北朝
鮮などは急速に工業化。
● 1946 年チャーチルの「鉄のカーテン」演説、1947 年トルーマン・ドクトリンで、米ソ
対立が顕在化。冷戦時代へ。
●第一世界(先進資本主義国)、第二世界(社会主義国)、第三世界(発展途上国)の3
極構造に。(「第三世界」の語源については、フランスの人口学者アルフレッド・ゾーヴ
ィー、インドの首相ネルー、フランツ・ファノンなど諸説あり)。国際政治の構造として
は、ネルー説を採って、冷戦下における非同盟・中立諸国の勢力を第三世界と見るのが妥
当。
● 1989 年、ソ連・東欧崩壊。マルタ会談(ブッシュとゴルバチョフ)で「冷戦終結」宣
言。
3.脱工業化社会
●生産力(工業化の段階)と生産関係(社会体制としての資本主義と社会主義)とは必ず
しも対応しない。
●先進工業国は、1970 年以降、脱工業化社会になりつつあるという見方。
-2-
現 代社 会変動 論
(1)ベル『脱工業社会の到来』(1973)
●工業社会と脱工業社会
・社会は、社会構造、政治形態、文化からなる。
・社会構造は、経済、技術、職業体系からなる。
・近代西洋の社会構造の基軸原理は、経済化(最適化)。
・脱工業社会――財の生産からサービスの生産へ。
・専門職・技術職階層が優位に立ち、技術革新と政策形
成において理論的知識が中心を占めるようになる。
Daniel Bell(1919 ~ 2011)data unknown from Wikipedia, U.S.A.
(2)カステル『ネットワーク社会の興隆』(1996)
●生産様式と発展様式
生産様式――資本主義と国家主義(社会主義)
発展様式――農業主義/工業主義/情報主義
●情報的発展様式では、知識創造・情報技術の革新が生産性の源泉と
なる。
● 1980 年代以降、資本主義は、情報的発展様式に再編されつつある。
国家主義は、情報的発展様式への再編に失敗して崩壊した。
Manuel Castells
(1942.2.9 ~)スペイン生まれ
http://sociology.berkeley.edu/faculty/castells/index.htm
4.危機と再編
(1)20世紀の資本主義
●外延的蓄積体制と内包的蓄積体制
レギュラシオン学派――マルクス経済学から派生したフランスの経済学派。
19 世紀の資本主義――外延的蓄積体制。植民地の拡大による市場の確保。
第一次世界大戦とロシア革命で危機に陥る。
20 世紀の資本主義――内包的蓄積体制。内需の拡大(大量消費)による市場の確保。
大量生産・大量消費を支える制度の整備によって安定化。
●調整様式としてのフォーディズム
20 世紀前半――大量生産体制が確立(特にアメリカ)。1929 年大恐慌。
1930 年代――国家が経済に介入(ニューディール政策)。
1945 年以降
完全雇用を目指すケインズ主義国家が常態化。
有効需要の創出により、景気の変動を調整。
大量生産-大量消費の調整様式が確立(→フォーディズム)。
●戦後の経済体制
アメリカ合衆国が、西欧諸国・日本の経済再建を援助。
資本主義世界経済が、内包的蓄積体制へ移行。国民国家が経済を調整する。
アメリカへの輸出による経済成長。アメリカの製造業は高コスト構造に陥る。
-3-
現 代社 会変動 論
1970 年代、石油危機をきっかけに大量生産体制は危機を迎える。
→ 1980 年代、米国は情報革命・グローバル経済に活路を求め、経済構造の再編へ。
日本は 80 年代後半にバブル経済、90 年代に入って経済構造の再編へ。
(2)状況複合と事後的機能主義
●歴史は法則に従って、発展軌道を進むわけではない。
●社会は、ある発展パターンを見つけだすと、しばらくはそのパターンにしたがって発展
する(事後的機能主義)。
●しかし、条件の変化によりそのパターンが行き詰まると(危機)、社会(を構成するさ
まざまな行為者)は、新しい発展パターンの探索に乗り出す。
●与えられた歴史的条件(状況複合)の下で、新しいパターンを見つけだすと、そのパタ
ーンに沿って発展し始める(再編)。再編に失敗すると崩壊する。
資本主義と工業化
経済的生産の技術 生産様式
狩猟採集社会
文明と世界システム
日本
(原始共産制)
縄文時代
農耕牧畜社会
アジア的
古代奴隷制
封建制
産業革命
工業社会
資本制
工業的発展様式
弥生時代
大和朝廷
文明の盛衰
近代世界システムの成立と拡大
ポルトガルとスペインの覇権
オランダの覇権
イギリスとフランスの覇権争い
戦国時代
江戸時代
資本主義の蓄積体制
イギリスの覇権
西欧列強の覇権争い
第一次世界大戦
アメリカへの覇権の移行期
外延的蓄積体制
社会主義国家
ロシア革命
大量生産体制
初期フォーディズム
1929年世界大恐慌
第二次世界大戦
日中戦争
太平洋戦争
社会主義の拡大
冷戦
3極構造
アメリカの覇権の確立
脱工業社会
情報技術革命
情報的発展様式
明治維新
日清・日露戦争
1972年第一次石油危機
内包的蓄積体制
高度経済成長
ケインズ国家
フォーディズム
石油危機
1989年社会主義の崩壊 フォーディズムの危機
バブル経済
Aglietta, Michel. 1976. Réglation et crises du capitalisme: L'expérience des etats-unis,
Calmann-Lévy.(若森章孝ほか訳『資本主義のレギュラシオン理論―政治経済学の革
新』大村書店、1989 年)
Bell, Daniel. 1973. The Coming of Post-Industrial Society. New York: Basic Books.( 内田忠夫
他訳『脱工業社会の到来[上]・[下]』ダイヤモンド社、1975 年)
Castells, Manuel. 1996. The Rise of the Network Society. Blackwell.
Parsons, Talcott. 1966. Societies: Evolutionary and Comparative Perspectives. Prentice Hall.( 矢
沢修二郎訳『社会類型―進化と比較』至誠堂、1971 年)。
Rostow, W. W. 1960. The Stages of Economic Growth: A Non-Communist Manifesto. Cambridge
University Press.(木村健康・久保まち子・村上泰亮訳『経済成長の諸段階―一つの
非共産党宣言』ダイヤモンド社. 1961 年)
Wallerstein, Immanuel. 1979. The Capitalist World Economy: Essays. Cambridge University Press
(藤瀬浩司・麻沼賢彦・金井雄一訳『資本主義世界経済Ⅰ―中核と周辺の不平等』
名古屋大学出版会. 1987 年/日南田靜眞監訳『資本主義世界経済Ⅱ―階級・エスニ
シティの不平等、国際政治』名古屋大学出版会. 1987 年)
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