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企業参入に伴う地域調整はいかに行うか?

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企業参入に伴う地域調整はいかに行うか?
企業参入に伴う地域調整はいかに行うか ?
123
[調査論文]
企業参入に伴う地域調整はいかに行うか ?
-長野県富士見町の事例をもとに-
信州大学農学部教授 加 藤 光 一
序-企業参入をいかに考えるか-
企業の農業への参入は、2003年4月導入の「農
地リース特区」からスタートし、2009年の「農地
者以外の地域の人との関係も視野に入れなければ
ならない。このことが新規就農者や企業参入で問
題になる最大のアポリアである。
法改正」により本格化した(農業生産法人への出
このことを考えると、農地中間管理機構=農地
資条件緩和等も)。従来から言われている「企業
集積バンクが介入する場合には、どこが地域調整・
の農業への参入」で問題になるのは「参入企業と
調和主体となるかが重要な問題になる。まだ農地
地域との調和」をいかにすべきかということで
中間管理機構は昨年(2013年12月13日公布、施行
あった。しかし、あえて地域調和、地域調整をは
日はまだ)に公布されたが、現段階では具体的に
かる主体はどこかという問題は、本格的に議論さ
進められていないのでどのようになるかは明らか
れていない(暗黙の了解なのかもしれない)。こ
ではない。だだ確認しておかなければならないこ
の地域調整主体は市町村及び地域行政委員会の農
とは、従来の認定農業者等の担い手のみではなく、
業委員会であることを前提に、本稿では長野県富
企業導入が重要なポイントとなり、また政策の目
士見町の若干の事例をもとに検討しておきたい。
玉でもある。その中で、「農地中間管理事業の推
いわゆる地域調整、地域調和というのは、周知
進に関する法律」及び「農業の構造改革を推進す
のように農地の売買、賃貸借等が発生した場合、
るための農業経営基盤強化促進法等の一部を改正
当事者間の問題だけでなく、地域との調整・調和
する等の法律案」に対する付帯決議において極め
が重要になる。何も参入企業に関わるものだけで
て重要な内容が述べられているので確認しておき
はなく、新規参入就業者の場合にもよく問題にさ
たい。ここに企業参入にともなう地域調整・調和
れることである。この地域調整・調和は日本の場
問題が提示されている。(1)農地の集積・集約
合には集落=ムラに存在した。それはムラに任せ
化の成果を上げていくためには「地域における農
るという農用地利用増進法(1980年制定)に初め
業者の徹底した話し合いを積み重ねていくことが
て制度化されたと認識してよい(東畑四郎氏の考
必要不可欠」で、人・農地プランを強力に推進し、
えは結局は換骨奪胎されたが)。そこでの農用地
農地中間管理機構は人・農地プランが策定されて
利用改善団体はある意味ムラそのものであったと
いる地域に重点をおく。(2)農地の集積・集約
認識してよい。但し、その後の農業経営基盤強化
化を進めるに当たっては、「耕作者自らによる農
促進法等の農地法制にも踏襲され、換骨奪胎され
地の所有が果たしてきている重要な役割」を踏ま
たムラを前提にし、市町村及び農業委員会が地域
えること。(3)農地中間管理機構による農地の
調整・調和の主体として存在している。あえて言
貸付先決定ルールについては、借受希望者のニー
えば、市町村は事業の推進主体であるので、調整・
ズを踏まえて公平・適切に調整するとともに、地
調和主体としては農業委員会がその性格から考え
域農業との調和及びその健全に資するものとし、
るとより適合的である。しかし、その地域調整・
既に効率的・安定的な経営を行っている農業者の
調和は極めて難しく、当事者のみではなく、当事
経営発展に支障のないように留意すること。(4)
124
農地中間管理機構と市町村及び市町村相互の協
1.長野県における農業法人の形態別・営農類型
別の推移
力・連携体制を整備し、その場合市町村は、農地
の所在、所有者等の情報を把握している農業委員
長野県農業会議が把握している農業法人は県全
会の意見聴取を基本とすること、と地域調整・調
体で823法人が存在し、農業生産法人(農地法第
和が強調されている。とりわけ、重要なことは(5)
2条の規定の農地を利用するもの)が406法人、
アドバイザリーである産業競争力会議・規制改革
一般農業法人(農地を利用しない)が417法人で
会議等の意見については参考にとどめ、現場の実
ある(2014年現在)。その法人別参入状況(表1)
態を踏まえ現場で十分機能するものとなることを
とその営農類型(表2)は2000年までとその後の
第一義として、制度を運用を行うこととある。こ
年次別の動向を見たものである。
こから読み取れることは、企業参入を第一義と考
えるのではないことを示している。
法人別でみれば、有限会社(489法人)が最も
多く、次が農事組合法人(194法人)、そして株式
そこで、本稿では、(1)長野県における企
会社(169法人)の順になっている。但し、有限
業参入の状況、(2)長野県富士見町の企業導入
会社の形態は2006年までは多いが、かわって株式
の論理(施策)、
(3)富士見町の企業参入の事例、
会社が2003年から増加している(2006年の会社法
(4)企業参入に伴う地域調整はどのように行う
のか、の順で検討しておきたい。
による有限会社の廃止による)。とりわけ有限会
社が多いのは営農類型で「菌茸」であり、菌茸王
国の長野県はこの形態が主流であったことも影響
Ⅰ.長野県における企業参入の状況
周知のように農業生産法人と農業生産法人以外
している。「複合経営」と「野菜」が次に多いが、
米・麦関係は比較的少ない。
の法人(一般法人)での農業参入が存在する。そ
ところで、これらの表からは2009年農地法等の
こで、農業法人の動向と一般法人での動向を確認
改正による農業生産法人の要件緩和、とりわけ法
しておきたい。
人の構成員の継続的取引関係者、事業への寄与者
(株式会社は合計議決権が総議決権の四分の一以
表1 法人形態別参入状況
有限会社
農事組合法人
株式会社
合同会社
企業組合
その他
2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 休止 不明 総計
325
7
11
19
23
17
14
1
0
0
1
1
1
0
1
17 438
103
3
4
3
8
7
12
9
4
9
6
13
12
0
0
1 194
34
0
0
4
1
2
16
21
11
19
10
14
24
3
0
11 170
4
0
0
0
0
0
0
3
2
1
2
2
1
0
0
0
15
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
1
0
0
1
1
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
3
467
10
15
27
33
26
42
35
17
29
19
31
38
3
1
30 823
注:休止報告のあった法人または休止状態確認不可の法人 34法人
注:新規設立した法人 3法人
表2 法人形態別の営農類型
米
有限会社
農事組合法人
合同会社
株式会社
その他
総計
8
6
1
9
0
24
米・麦
24
35
0
7
0
66
米・
施設
特用
作業
その
そば 大豆 野菜
花卉
菌茸 果樹 複合 畜産
販売
総計
その他
野菜
作物
受託
他
2
1
0
48
1
41
3 167
29
56
50
1
5
2 438
5
2
2
17
0
6
2
29
8
38
25
5
11
3 194
1
0
1
3
0
0
0
2
3
2
1
1
0
0
15
10
2
0
41
4
5
1
22
42
15
6
3
1
2 170
0
0
1
1
0
0
0
1
0
1
1
0
0
1
3
18
5
4 110
5
52
6 221
82 112
83
10
17
8 823
企業参入に伴う地域調整はいかに行うか ?
125
下、持ち株会社は構成員の四分の一以下、法人と
以内に報告書を農業委員会等に提出しなければな
共同して農商工連携事業を実施する企業等が構成
らない。
員である場合には二分の一未満が上限)等のこと
②役割分担とは、地域の他の農業者と役割分担
は明らかにはならず、出資状況を明確にした統計
をし、継続的かつ安定的な農業経営を行うことで
が存在しないのでいわゆる一般企業の農業参入状
ある(確約書の提出、農業委員会等との協定締結
況を見ておきたい。
等)。
③業務執行役員の常時従事とは法人の場合、業
2.一般法人の農業参入状況
務執行役員の一人以上が耕作等の事業に常時従事
2009年の農地法改正は、一般法人の農業参入に
することである(農作業に限定されるものでなく、
ある意味全面的に開放されたと認識してよい(但
営農計画の作成、マーケティング等の企画管理労
し農地賃貸借権の設定で)。その条件は周知のよ
務も含む)。
うに、①解除条件付き、②役割分担、③業務執行
役員の常時従事、④全部効率利用、⑤下限面積、
⑥地域との調和である。
④全部効率利用とは、農地のすべてを効率的に
利用して耕作の事業を行うことである。
⑤下限面積とは、経営面積の合計が50a以上で
①解除条件付きは、借りた農地を適正に利用し
ない場合に、貸借を解除する条件が書面による契
約において付されていることである。企業が撤退
する場合の混乱を防止するために、原状回復の義
あることである。
⑥地域との調和とは、周辺農地の効率的な利用
等に悪影響を与えないことである。
では長野県の一般法人の年度別参入状況(表3)
務は誰か、費用は誰が負担するか、原状回復がな
で確認しておこう。解除条件付きの参入が開始さ
されない時の損害賠償の取り決め、中途契約終了
れた2010年に24法人も参入し、その後は2011年9
時における違約金支払の取り決めがあるか等が明
法人、2012年7法人となっている。その業種別参
らかになってなければならない。また解除付き貸
入状況(表4)を見ると、食品関係産業が最も多い。
借を受けた場合には、毎事業年度の終了後3か月
長野県全体では74法人、実質62法人である。何故
表3 一般法人の年度別参入状況
特区法による参入
(リース特区)
制度
年度
参入法人数
2003
5
2004
1
2005
1
基盤強化法による参入
(特定法人貸付事業)
2006
6
2007
8
2008
8
2009
5
解除条件付き
賃貸による参入
2010
24
2011
9
2012
7
合計:延べ74法人
(実数62法人)
※2010年は特定法人貸付事業(特区法含む)による貸付期間終了などにより、改めて解除条件付き賃貸により参入し
た法人12法人を含む。
表4 業種別参入状況(2013.1末現在)
参入
2003~
2009
2010~
2012
計
市町村数
参入法人数・業種
貸付面積
【内訳】
34法人
食品関連産業13、サービス
19市町村 (うち12法人は解除
81.5ha
業3、NPO法 人3、 建 設 業7、
条件付きへ移行)
製造販売2、その他5
【内訳】
40法人
食品関連産業15、サービス
84.2ha
18市町村 (うち12法人は移行
業11、NPO法人5、建設業2、(うち重複:12法人分42.9ha)
法人)
製造販売2
延べ74法人
延べ面積165.7ha
25市町村
(実数62法人)
(実面積122.8ha)
126
ならば2003年から2009年までに34法人が参入して
きたがそのうち2010年に「解除条件付き」へ12法
Ⅱ.企業参入から企業導入への論理
-長野県富士見町-
人が移行しているので重複しているためだ。現在、
長野県の全市町村数は77でそのうち企業が参入
しているのは25市町村である(32.5%)。またそ
1.富士見町の概況
調査地の富士見町は長野県の東南部にあり、山
の面積は実質的には122.8ヘクタールでしかない。
梨県の北杜市に接し、北は茅野市・原村、西は伊
したがって、法人あたりの面積は、1.92ヘクター
那市に隣接している。標高は最も低い所が下蔦木
ルでしかない。ところで表出は略したが、企業等
の釜無川河床の700mで最も高い所が八ヶ岳主峰
が農業生産法人を設立しているのは、16市町村で
の赤岳の2,899mとなっている。町の東部は雄大な
参入法人数は30法人である。その業種は、食品加
八ヶ岳連峰を背後に控え、西部は背後に急峻な赤
工・製造業が14法人、建設業4法人、青果販売業
石山脈を控え、平地が少なく起伏に富んだ地形を
2法人、自動車販売業1法人、産廃業者1法人、
形成し、天竜川と富士川(釜無川)の分水嶺となっ
資材販売1法人、その他7法人となっている。一
ている。高速交通の中央道・諏訪南ICが1981年
法人あたり貸付面積は約5ヘクタールである。
3月より供用開始となり、これにより首都圏と富
その点が考えると、企業等が成立している農業
士見町が連結され、高原の町は大きく変貌し、基
生産法人が増加する傾向があり、この形態が今後
幹産業が農業であったが多くの工場が進出してき
は主流となる。ではそうした法人がどのような参
た。しかし2000年以後はその工場数も出荷額も減
入の仕方をし、どのような地域調整・調和をして
少している(表5)。当然、農家戸数も減少してい
いるかを具体的に検討しておく。
る。表出は略するが、1960年には農家数2,529戸、
表5 富士見町工業構成の推移
総数
食料
飲料
衣服
木材
家具
印刷
化学
石油
プラスチック
土石
非鉄
金属
機械
電機
電子
輸送
精密
その他
工場数
150
9
2
2
10
8
3
1
1
2
10
8
17
22
31
‐
6
7
12
2000年
従業者数 出荷額
(人) (万円)
4038 15846563
74
39558
×
×
×
×
97
283381
17
5929
9
5260
×
×
×
×
×
×
86
205093
90
266667
105
154152
98
194951
3053 11847101
‐
‐
82
158677
29
20046
51
61664
工場数
79
7
2
1
6
1
1
1
1
4
7
6
9
8
7
7
6
2
3
2005年
従業者数 出荷額
(人) (万円)
4049 12796701
総数
69
24131
食料
235
×
飲料
4
×
衣服
85
249550
木材
4
×
家具
4
×
印刷
13
×
化学
5
×
石油
29
27714 プラスチック
74
121610
窯業
114
222115
非鉄
91
144506
金属
121
170075 はん用機械
83
78591 生産用機械
2955 9128826 業務用機械
121
271995
電子
10
×
電気
32
40950
情報
輸送
その他
工場数
66
7
3
‐
3
‐
1
1
1
2
8
5
2
2
5
4
8
7
2
3
2
2010年
従業者数 出荷額
(人) (万円)
3765 8226358
67
32663
211 2497311
‐
‐
69
194492
‐
‐
4
×
10
×
5
×
17
×
59
94015
134
293696
55
×
12
×
51
152718
62
30601
2721 4300330
127
169555
16
×
113
130399
32
×
企業参入に伴う地域調整はいかに行うか ?
70年2,248戸、80年1,966戸、90年1,596戸、2000年
1,469戸、2010年1,205戸と漸次減少してきており、
その減少は下げ止まっていない。
とりわけ、富士見町は中央道が転機となり、ハ
ウス等による花卉栽培(キク、カーネーション、
らんどう、カスミソウ等)が盛ん行われ、カーネー
ションの生産は長野県第一位を誇るようになる。
高原気候を前提に「夏場の山上げ」を利用する花
卉生産、花卉苗生産を目指した町外からの農業へ
の進出もでてきた。一方で、従来の米、酪農は高
齢化し、あとつぎ層がいなくなり、耕作放棄地も
出始めてきた。
その対策として富士見町は積極的に町外からの
127
→*新規参入者(新規法人、新規就農者)の営
農地を空洞エリアへ誘導する
②今後、地域の「中心的な経営体」となる農業
者を明確にする
→*新規参入者を地域・JA・町が連携して、
地域農業に貢献する者へ育成していく
③今後、「農地集積により経営効率化」が図れ
る経営体を明確にする
→*地域・農業委員会が連携して農地集積に協
力する
「中心となる経営体の位置づけ方針」では、
①地域農業に貢献する農業者として育成する必
要がある、以下の農業者
農業参入を積極的に進めることになる。とりわけ、
・Iターンで新規に就農した者「新規就農者」
特徴的なことは2012年からの「人・農地プラン」
・町が誘致する農業生産法人「新規参入法人」
をいわゆる集落、地区ごとに行うのではなく、町
②農地私有席により経営効率化が見込まれる、
全域一本としている。このことは既存の担い手層
以下の土地利用の農業者
が脆弱であることにも要因がある。そこで「人・
・「酪農」家のうち、認定農業者
農地プラン」をスタートする時点で全面的に新規
・「そば」生産農家のうち、認定農業者
参入者(企業、新規就農者)を「地域の中心とな
・町が誘致する農業生産法人「新規参入法人」
る経営体」に育成することを積極的に位置づけて
いる。
以上のように、新規参入者、とりわけ企業等の
新規参入法人、Iターン等の新規就農者を第1に計
画を推進していることがわかる(のちに図を用い
2.新規就農対策としての企業導入
て明らかにする)。
『富士見町の人・農地プラン作成方針』によると、
「人・農地プランにおける今後の地域農業のあり
方」を次のように示している(以下下線部分は『作
成方針』で示されていること)。
①関係者が連携して、農家後継者の経営継承を
3.企業参入と企業導入の論理
実は人・農地プランを実施する過程で、農業へ
の企業参入に対する考え=論理の変更を検討する
ことになる。従来の「企業参入」という考えは、
積極的に支援し、Iターン者などの移住就農者を
あくまでも参入してくる企業(法人)の論理であ
確保し、新規参入者を中心的となる経営体に育成
る。また一方、受け入れ側としては極論すれば「来
します。
る者は拒まず」という立場であるという。そこで、
②併せて、農地の有効利用・雇用創出が見込め
る農業生産法人等の誘致に取り組みます。
企業(工場等の)導入をしてきた町としては、そ
の企業導入の論理で、農業での企業参入を考えな
③これら新規就農促進等の総合的な取組みによ
ければならないということになった。工場等の企
り経営耕地面積を維持し、地域農業の復活を図り
業導入の場合には、事前に工場用地を準備し、税
ます。
の優遇処置等を一定用意するが、どのような企業
また、「プラン作成の3方針」として
でもよいというものではない。基本は町の要望す
①今後、農業者の高齢化、担い手不足が生じ、
「農
る企業を最優先し「導入」する(誘致する)。こ
地空洞化」するエリアを明確にする
の農業への「企業導入」の論理で、新規就農、新
128
規参入法人をすることになる(NEC役員出身の
入審議会」を開催し決定している。その審議会の
町長の考え)。
メンバーは農業委員会、JA、町内農業生産法人
富士見町では、こうした新規就農、新規参入法
代表、普及センターで審査することになる。かか
人に対して『農場進出のご案内』(産業課)を準
るポイントは第1に計算が出来る人、第2に人の話
備している。そこには「支援の内容」が次のよう
を聞くことが出来る人、第3に決断力のある人で
に書かれている。
あるという。とりわけ、富士見町に適合的な栽培
①候補地の紹介
方法があるので、「自分の考えをごり押し」しな
生産条件に応じて、候補農地を町が探し、紹介
い法人がよいという考えである。一般的に進出し
します
てくる法人、農業者は、往々にして自分の考えに
②農地所有者との取得調整
凝り固まっており、地域との調整がうまくいかな
賃貸借は、農地法又は農業経営基盤強化促進法
の手続きを支援します
また、適正な賃貸借価格の助言をします
売買は、県農業開発公社による売買を支援しま
す
い。ここでも基本は地域調整・調和が第1に考え
られている。
尚、町の条例で「富士見町新規就農支援補助交
付要綱」をつくり援助している。また同時に「就
農支援対象者審査表」を稿末に示す参照のこと。
③地域調整と定着支援
進出先の地域に早期定着できるよう、地域と御
社との調整を支援します
進出の事前説明会を町主催で実施し、進出の地
Ⅲ.企業参入の2事例をみる-A法人とT
法人-
では、企業参入の二つの事例を見ておきたい。
元理解を深めます
長野県の企業進出の実績からすると最も多い食品
④労働力の確保支援
加工業者と農業生産法人会社の二つを検討し、抱
社員、パート(スポット)等の地元労働力の確
保を支援します
次に「進出までのプロセス」を次のように示し
えている問題を確認しておきたい。但し、この二
つの法人はあくまで富士見町では企業参入の代表
的な法人である。
ている。
①富士見町産業課営農推進係との事前調整→②
関係書類の提出→③産業課との面談・内部調整→
1.A法人(食品加工業者)の参入経過と実態
A法人本体は1950年に漬物業者として創業し、
④誘致決定→⑤進出候補農地の通知→⑥候補農地
株式会社としては1975年に設立し、資本金1200万
の現地確認と決定→⑦進出準備 次に「関係書類
円、年商46億円で、従業員70名の会社である。現
の提出」で次のように示している。
在は食品全般の製造・販売、食品開発販売を行っ
①富士見町を進出地として選定
ている。その中で農産事業部が中心になり、農業
②関係書類の提出
生産法人を立ち上げ野菜生産を中心に富士見町に
・会社概要(代表者、設立日、従業員数、資本金、
営業成績、営業内容、取引先、沿革等)
進出している。
(1)参入経過と実態
・過去3年の決算関係書類
2010年に椎茸施設栽培生産として進出してき
・賃貸対照表、損益計算書
た。この段階では既存の花卉ハウス農家の空いて
・進出計画
いるハウスを100坪借用して生産することから出
計画内容、農地面積、雇用計画、資金計画、売
発した。しかし、椎茸だけではなく、高原野菜地
上目標等
こうしたことを前提に、「企業・新規就農者導
帯としての富士見町では野菜生産をすることがよ
いのではないかと試験的に2011年から1ヘクター
企業参入に伴う地域調整はいかに行うか ?
129
ル(内訳は畑50アール、水田50アール)で始めた。
が成功しないときには撤退できなくなるからだと
この段階では行政に相談することなく、空いてい
言う。ここにいわゆる企業の論理、法人の論理が
る農地を町内で探し、まず、候補地を周辺の農家
働いている。自然人である農家の場合との違いで
の人に「誰の土地か」を聞き、そして法務局で土
ある。
地を調べ、その農家に飛び込みで借地の交渉をし
一年の試験的な試みである程度、事業として可
た。まず、畑50アールにはブロッコリーと白菜を
能性を見いだしたので行政との関係を持つように
栽培し、水田50アールにはトウモロコシを栽培し
した。何しろ、規模拡大を目指すとどうしても「飛
た。現在のレタス・キャベツ・トウモロコシと椎
び込みの農地交渉」では限界があり、また地域の
茸(菌床)を生産し販売している(一部は独自ルー
信頼をえていないので借地を探すことが出来な
トもあるが野菜は基本的には地元農協にも出荷し
かった。とりわけ、飛び込み方式では「農地の団
ている)。
地化、集約化」が不可能であった。借りるにして
あくまでも試験的な試みであったために行政と
も虫食い的なものでしかなく、飛び地が多く、農
の関わりは持たなかった。この富士見町の地域に
作業を行うにしても、移動で時間がとられるから
「根付く」(定着)するかわからなかったからだと
いう。もし最初から行政と関係を持つと「事業」
だ。
(2)農地集積
表6 一筆毎の農地集積実績
所有者
1
2
独自
富士見町
3
4
5
6
7
8
9
10・11
12
土地 地番
913
875
1746-1
1749
1133
1124-1
10168
10169
11467-4
11871-1
11473-1
11471
11870-1
3901
11467-1
2316
2489
684-1
704-1
13
富士見町A
行政斡旋
14
15
16
小計
9913-1
9914-1
9596
9594-1
9597-1
9595
面積(㎡)
2,310
1,940
3,100
2,280
3,123
2,656
2,704
2,847
3,500
2,731
2,500
1,400
1,006
3,056
2,573
1,460
2,139
2,000
2,550
2,457
1,072
1,674
1,000
2,500
54,578
782
950
432
2,303
1,041
1,095
賃借料(円)
7,000
7,000
7,000
7,000
31,230
26,560
27,040
28,740
備考
7,000円/1枚
10,000円/10a
10,000
共有
25,500
24,570
10,720
16,740
10,000円/10a
2,737
3,325
1,512
8,061
3,644
3,833
3,500円/10a
130
富士見町A
17
18
行政斡旋
19
富士見町B
20
21
22
23
24
25
26
27
北杜市D
(別の農業
生産法人
からの借
用)
28
独自
川上村
北杜市A
北杜市B
北杜市C
9591-1
9591-3
3957
3966-1
3965
3967
9583-1
9580
9578-1
9588-1
9587
9581-1
9579
8577
3938-1
3946
3935
9593
9592
9590-1
小計
総計
小計
2,387
192
1,987
850
744
330
2,956
1,346
705
1,452
852
1,954
694
784
969
908
628
576
2,641
1,346
30,904
2,387
13,000
10,000
15,000
4,029
1,608
1,023
1,253
2,634
4,954
55,888
141,370
8,355
672
6,955
2,975
2,604
1,155
10,346
4,711
2,468
5,082
2,982
6,839
2,429
2,744
3,392
3,178
2,198
2,016
9,244
4,711
3,500円/10a
5,250円/10a
5,250円/10a
5,250円/10a
5,250円/10a
注:A法人資料より作成
では一筆ごとの農地集積実績を見ておきたい
村者でも賃借料がゼロの人は農地を維持してもら
(表6参照)。この表は賃借料が空欄になっている
えば十分という考えの人で、いわゆる耕作放棄地
ところはゼロのところである。また番地が明らか
状態のものであった。また賃借料が空欄になって
になってないところは、利用権設定を行っていな
いるところが24筆のうち10筆が借地料ゼロである
いところである。このことを踏まえて見ると次の
がこれは「耕作放棄地」的状態の範疇に入る。あ
ように言える。
る意味では、耕作放棄地的状態のものを探して借
まず、富士見町内の「独自」としているのは、
地を求めたことがわかる。また賃借料が成立して
自らが町内に空いている農地を求め独自に交渉し
いる14筆のうち、この後明らかにするが、実勢の
た結果、借地することが出来たところである。番
小作料より若干高くなっている。ちなみに、行政
地が明らかになっていないところが5筆存在する
の斡旋の場合には、10アール当たり3500円である
が、これは利用権設定がなされていない。筆数で
が、子が比較的高く借地している。①の場合には
言えば24筆で約5.5ヘクタールである。表では所
一筆7000円で、⑫場合はまとまっており、諏訪の
在地名を明らかにしていないが、同じ集落ではな
人ということもあり10アール当たり10000円であ
く4カ所にもまたがっている。賃借料がゼロのと
り、この独自に集積した農地は、まず第1に分散
ころは在村者は12名で⑬が諏訪市の人である。在
してあり、第2に、実勢借地料より高くなっている。
企業参入に伴う地域調整はいかに行うか ?
131
第3に、そのほとんどが耕作放棄地の状態のもの
てもウイン・ウインの関係ではある。しかし、地
が多いことも事実である。
域調整・調和という点からすれば、行政がやや無
次に富士見町が「斡旋」してくれたのは、一地
理して「農地空洞化エリア」に貼り付けたことが
区に集中している。その点では、先に示した町の
どのようになるかが問題となる。実際に、町の斡
方針に合致している。同時に借地料が10アール当
旋と言うことから比較的農地を集めることは出来
たり3500円と安い。その点では、独自に農地を見
ているが、本音としては町の「中心的な経営体」
つけるよりも有利である。尚、⑲の所有者は寒天
と位置づけしてもらい、「お墨付き」をもらった
業者で伊那の人である。但し、町が「農地空洞化
ことを前提に、町が斡旋された以外の条件のよい
エリア」に法人を貼り付ける方針であるにもかか
農地を集めたいという希望である。また、地域社
わらず、一筆の面積が極めて少なく、かつ3ヘク
会との関係では表立って問題は出ていないが、農
タールぐらいでしかない。A法人によると、独自
地維持管理がやや手抜きであるという評判が出始
に発掘した農地に比べて、立地条件も悪いし、土
めているのも事実である。
壌条件も悪い。有り体に言えば、今後のこの地域
で規模拡大するためにはやや条件がよくなくても
行政の斡旋を受けるしかないという。
以上の点からするならば、A社の場合には町の
「企業導入」論理に合致し、極めてうまく行政、
その点で、富士見町以外の隣の山梨県北杜市へ
農業委員会等が誘導してくれたために富士見町で
の借地は、ある意味、富士見町のリスク分散のた
展開することが出来ている。まだ始まったばかり
めの土地、または富士見町を撤退するときのため
で、この経営の今後を予測することは極めて難し
の土地としての意味も存在していることを認識し
い。そしてこの法人が雇用創出に貢献しているか
ておかなければならない。
どうかは、まだわからない。ただ、大学、大学院
(3)人・農地プランとの関係
での若いスタッフが会社から派遣されているとい
企業導入の町の論理からすれば、新規の参入の
うのは事実であるが、地元雇用という点からは植
農業生産法人会社で、かつ親会社が実績をもつ食
え付け、収穫等のスポット的な雇用は生み出す可
品加工業者であり、極めて適合的な法人だ。その
能性はある。野菜それもレタス、キャベツ、トウ
ために新たに一般法人の解除事項付きのリースの
モロコシと菌床椎茸に限定されているので、年間
農地賃借での参入をする農業生産法人として成立
周年での雇用が拡大するには、多様な作物編成の
させたものと言ってもよい。そして人・農地プラ
経営でなければならない。それを克服するかは課
ンの「中心的な経営体」と位置づけた。
題として残る。その点からすれば、施設花卉園芸
そのメリットは進出した法人として多くのこ
とを享受している。条件は悪いが一地区に農地を
経営の面積をそれほど必要でない場合の方が、周
年の雇用創出には役立つ。
集積できるというメリットとともに、最大のこと
はスーパーL資金を借入可能だったことだ。実際
に1億の融資をうけており、その融資は、トラク
2.T法人(農業生産法人有限会社)の参入経過
と実態
ター2台(アタッチメント付き)でほぼ2000万円、
T法人(農業生産法人有限会社)は、実は全国
椎茸施設20棟(雨よけハウス)4000万円に使い、
的にも有名な法人で、長野県佐久郡御代田町に本
後の4000万円は農業生産法人を立ち上げたばかり
部を置き、直営農場のひとつである富士見直営農
であるので回転資金に回している。そのために、
場を経営しているが、以下明らかにする富士見町
この法人は投資を回収するためにも、更なる規模
の事例はあくまでも直営農場の一つでしかないた
を拡大しなければならない。
めに、その直営農場がどのような形で富士見町に
この点からすれば、法人としてもまた行政とし
進出してきたか、具体的には農地集積はどのよう
132
に行ったかをみておきたい。併せて、その場合の
で、研修という形で4年から6年研修させ、独立
地域調整・調和問題を明らかにしておきたい。
した農業者を育ているという名目である。その研
(1)参入経過と実績
修過程そのものが、農産物の生産と販売である。
T法人自体の経営実態等については、別稿を用
意しなければならないほど有名であるが、ここで
は富士見町で展開している富士見町直営農場に関
わることのみを紹介しておく。
富士見町には、JA諏訪(富士見町も含む)
を介して2005年から進出してきている。
(2)農地集積
具体的な農地集積を示したものがやや煩雑にな
T法人は農業研修と農産物の生産・販売を目的
る表7である。所有者は全員で84名、借地面積
に2000年に設立されている。元々、佐久青果出荷
18.8ha、農地筆数147筆、全借地料135.7万円である。
組合という長野県の青果物を県外に移出する会社
但し、一地区に集中するのではなく、かなり分散
がもとになっている。日本農業の担い手不足と儲
している。
ける農業をどのようにするかと言うことから農業
第1に、この147の筆数を考えると農協が介する
生産法人を設立している。簡単に説明すれば、研
ことが可能だったために集積可能であった。先に
修生(社員)を募集し、彼らを本部又は直営農場
見たA法人と比較すると明らかである。これは…
表7 T社の富士見町管内利用権設定一覧表
貸付者番号
地目
設定種類
作物名
始期
終期
1
畑
896
賃貸
野菜
210129
310128
10
7
6,272
田
1,806
賃貸
野菜
210701
310630
10
7
12,642
2
3
面積㎡
期間年
㎡当賃料
賃貸料
畑
820
賃貸
野菜
210701
310630
10
7
5,740
畑
301
賃貸
野菜
210701
310630
10
7
2,107
畑
559
賃貸
野菜
210701
310630
10
7
3,913
畑
1,325
賃貸
野菜
210701
310630
10
7
9,275
4
畑
1,202
賃貸
野菜
210701
310630
10
7
8,414
5
畑
1,765
賃貸
野菜
210901
260831
5
7
12,355
6
畑
866
賃貸
野菜
210901
260831
5
7
6,062
7
畑
1,149
賃貸
野菜
210901
260831
5
7
8,043
8
畑
567
賃貸
野菜
210901
260831
5
7
3,969
9
畑
1,717
賃貸
野菜
220301
320229
10
7
12,019
10
11
12
13
14
15
16
畑
777
賃貸
野菜
220527
270526
5
7
5,439
畑
1,058
賃貸
野菜
220527
270526
5
7
7,406
畑
958
賃貸
野菜
220527
270526
5
7
6,706
田
1,877
賃貸
野菜
220527
270526
5
7
13,139
田
1,683
賃貸
野菜
220527
270526
5
7
11,781
田
3,022
賃貸
野菜
220527
270526
5
7
21,154
田
1,844
賃貸
野菜
220527
270526
5
7
12,908
田
1,697
賃貸
野菜
220527
270526
5
7
11,879
田
1,289
賃貸
野菜
220527
270526
5
7
9,023
畑
501
賃貸
野菜
220527
270526
5
7
3,507
11,711
畑
1,673
賃貸
野菜
220527
270526
5
7
田
758
賃貸
野菜
220629
270628
5
7
5,306
田
442
賃貸
野菜
220629
270628
5
7
3,094
田
132
賃貸
野菜
220629
270628
5
7
924
田
414
賃貸
野菜
220629
270628
5
7
2,898
畑
1,143
賃貸
野菜
220629
270628
5
7
8,001
企業参入に伴う地域調整はいかに行うか ?
17
18
畑
畑
1,346
3,551
133
賃貸
野菜
220629
270628
5
7
9,422
賃貸
野菜
220629
270628
5
7
24,857
畑
3,238
賃貸
野菜
220629
270628
5
7
22,666
畑
3,124
賃貸
野菜
220629
270628
5
7
21,868
畑
3,056
賃貸
野菜
220629
270628
5
7
21,392
畑
2,786
賃貸
野菜
220629
270628
5
7
19,502
70,000
19
畑
7,000
賃貸
野菜
230223
280222
5
10
20
畑
860
賃貸
野菜
230128
280127
5
7
6,020
21
畑
1,122
賃貸
野菜
230228
280227
5
7
7,854
22
畑
901
賃貸
野菜
230228
280227
5
7
6,307
23
畑
1,046
賃貸
野菜
230228
280227
5
7
7,322
24
畑
1,063
賃貸
野菜
230228
280227
5
7
7,441
25
畑
1,150
賃貸
野菜
230228
280227
5
7
8,050
26
田
1,651
賃貸
野菜
230228
280227
5
7
11,557
27
畑
2,267
賃貸
野菜
230228
280227
5
7
15,869
28
29
30
畑
977
賃貸
野菜
230628
280627
5
7
6,839
田
1,600
賃貸
野菜
230628
280627
5
7
11,200
畑
293
賃貸
野菜
230628
280627
5
7
2,051
畑
527
賃貸
野菜
230628
280627
5
7
3,689
14,161
畑
2,023
賃貸
野菜
230628
280627
5
7
畑
549
賃貸
野菜
230628
280627
5
7
3,843
畑
1,607
賃貸
野菜
230628
280627
5
7
11,249
11,606
31
畑
1,658
賃貸
野菜
231227
281226
5
7
32
田
1,078
賃貸
野菜
231227
281226
5
7
7,546
田
664
賃貸
野菜
240228
270227
3
8
5,312
33
34
35
田
913
賃貸
野菜
240228
270227
3
8
7,304
畑
408
賃貸
野菜
240228
270227
3
8
3,264
畑
1,298
賃貸
野菜
210701
310630
10
7
9,086
畑
1,724
賃貸
野菜
240524
290523
5
7
12,068
畑
59
賃貸
野菜
240524
290523
5
7
413
畑
320
賃貸
野菜
240524
290523
5
7
2,240
36
畑
853
賃貸
野菜
240524
290523
5
7
5,971
37
畑
1,504
賃貸
野菜
240612
290611
5
7
10,528
38
田
1,757
賃貸
野菜
240612
290611
5
7
12,299
田
1,724
賃貸
野菜
240612
290611
5
7
12,068
39
畑
672
賃貸
野菜
240612
290611
5
7
4,704
40
畑
472
賃貸
野菜
240727
290726
5
7
3,304
41
畑
2,126
賃貸
野菜
241227
291226
5
7
14,882
42
畑
650
賃貸
野菜
241227
291226
5
7
4,550
田
2,115
賃貸
野菜
250430
300429
5
8
16,920
11,328
田
1,416
賃貸
野菜
250430
300429
5
8
田
901
賃貸
野菜
250430
300429
5
8
7,208
畑
1,488
賃貸
野菜
250430
300429
5
8
11,904
44
田
2,454
賃貸
野菜
250430
300429
5
8
19,632
45
畑
533
賃貸
野菜
250426
300425
5
7
3,731
畑
638
賃貸
野菜
250426
300425
5
7
4,466
22,008
43
46
47
48
畑
3,144
賃貸
野菜
250426
300425
5
7
畑
795
賃貸
野菜
250426
300425
5
7
5,565
畑
606
賃貸
野菜
250426
300425
5
7
4,242
14,070
田
2,010
賃貸
野菜
250530
300529
5
7
畑
755
賃貸
野菜
250530
300529
5
7
5,285
畑
192
賃貸
野菜
250530
300529
5
7
1,344
134
49
田
50
田
51
52
1,012
499
賃貸
野菜
250730
300729
5
7
7,084
賃貸
野菜
250730
300729
5
7
3,493
15,995
田
2,285
賃貸
野菜
260122
310121
5
7
田
1,231
賃貸
野菜
260122
310121
5
7
8,617
田
1,587
賃貸
野菜
260122
310121
5
7
11,109
11,697
53
畑
1,671
賃貸
野菜
260122
310121
5
7
54
畑
1,221
賃貸
野菜
260122
310121
5
7
8,547
畑
578
賃貸
野菜
260122
310121
5
7
4,046
55
56
57
58
59
畑
235
賃貸
野菜
260122
310121
5
7
1,645
田
1,754
賃貸
野菜
260127
310126
5
7
12,278
田
1,980
賃貸
野菜
260127
310126
5
7
13,860
畑
1,643
賃貸
野菜
260127
310126
5
7
11,501
畑
839
賃貸
野菜
260129
310128
5
7
5,873
畑
2,213
賃貸
野菜
260127
310126
5
7
15,491
25,809
60
畑
3,687
賃貸
野菜
260127
310126
5
7
61
田
1,160
賃貸
野菜
260127
310126
5
7
8,120
62
畑
1,021
賃貸
野菜
260127
310126
5
7
7,147
63
64
65
66
67
68
畑
857
賃貸
野菜
260129
310128
5
7
5,999
畑
918
賃貸
野菜
260129
310128
5
7
6,426
田
1,260
賃貸
野菜
260129
310128
5
8
10,080
畑
1,837
賃貸
野菜
260129
310128
5
8
14,696
畑
2,225
賃貸
野菜
260129
310128
5
8
17,800
田
1,485
賃貸
野菜
260129
310128
5
8
11,880
畑
1,143
賃貸
野菜
260129
310128
5
8
9,144
畑
877
賃貸
野菜
260129
310128
5
8
7,016
田
730
賃貸
野菜
260129
310128
5
8
5,840
田
690
賃貸
野菜
260129
310128
5
8
5,520
畑
583
賃貸
野菜
260129
310128
5
8
4,664
畑
456
賃貸
野菜
260129
31.128
5
8
3,648
畑
597
賃貸
野菜
260129
31.128
5
8
4,776
畑
550
賃貸
野菜
260129
31.128
5
8
4,400
畑
547
賃貸
野菜
260129
31.128
5
8
4,376
畑
929
賃貸
野菜
260129
31.128
5
8
7,432
69
畑
1,387
賃貸
野菜
260129
31.128
5
8
11,096
70
畑
856
賃貸
野菜
210226
260225
5
8
6,848
田
2,789
賃貸
野菜
口座調査
3
7
19,523
71
72
73
田
2,171
賃貸
野菜
口座調査
畑
1,589
賃貸
野菜
210701
260630
3
7
15,197
5
7
11,123
畑
116
賃貸
野菜
210701
260630
5
7
812
畑
1,115
賃貸
野菜
210701
260630
5
7
7,805
13,517
田
1,931
賃貸
野菜
210701
260630
5
7
畑
822
賃貸
野菜
210701
260630
5
6
4,932
畑
3,395
賃貸
野菜
210701
260630
5
6
20,370
74
畑
817
賃貸
野菜
210701
260630
5
7
5,719
75
畑
267
賃貸
野菜
210701
260630
5
7
1,869
76
77
78
畑
485
賃貸
野菜
210701
260630
5
7
3,395
畑
617
賃貸
野菜
210701
260630
5
7
4,319
畑
892
賃貸
野菜
210701
260630
5
7
6,244
畑
691
賃貸
野菜
210701
260630
5
7
4,837
畑
142
賃貸
野菜
210701
260630
5
7
994
畑
485
賃貸
野菜
210701
260630
5
7
3,395
田
980
賃貸
野菜
210701
260630
5
7
6,860
企業参入に伴う地域調整はいかに行うか ?
79
80
135
畑
1,617
賃貸
野菜
210701
260630
5
7
畑
469
賃貸
野菜
210701
260630
5
7
11,319
3,283
畑
882
賃貸
野菜
210701
260630
5
7
6,174
畑
220
賃貸
野菜
210701
260630
5
7
1,540
畑
807
賃貸
野菜
210701
260630
5
7
5,649
畑
896
賃貸
野菜
210701
260630
5
7
6,272
畑
812
賃貸
野菜
210701
260630
5
7
5,684
田
746
賃貸
野菜
210701
260630
5
7
5,222
田
1,358
賃貸
野菜
210701
260630
5
7
9,506
田
1,259
賃貸
野菜
210701
260630
5
7
8,813
田
1,095
賃貸
野菜
210701
260630
5
7
7,665
81
畑
1,029
賃貸
野菜
210701
260630
5
7
7,203
82
畑
2,900
賃貸
野菜
210701
260630
5
7
20,300
83
畑
974
賃貸
野菜
210701
260630
5
7
6,818
84
田
1,931
賃貸
野菜
210701
260630
5
7
13,517
筆数計147筆 面積計187,747㎡ 賃貸料 計1,357,523円
注:始期・終期の数字は、例えば250430とは平成25年4月30日である。
JA出資法人との関係も存在するので成立してい
るが、そのために借地料ゼロの農地が機械的に存
在しなくなったとT法人は述べている。
第2に、何故、この18.8haも存在するかであるが、
Ⅳ.企業参入に伴う地域調整はいかに行うか
表8は人・農地プランの中心となる経営体一覧
と図1は人・農地プラン具体的な農地利用全体図
このうち約6haが2013年からT法人の富士見農場
で、表8と図1は対応している。赤い点線部分が、
の責任者に再貸付し、独立させているためだ。こ
最初に示した富士見町で今後担い手不足で「農地
の規模からすれば地元に定着する農業者をあと2
空洞化」が予想されるエリアである。赤実線枠は
人は独立させることが出来る。この点は今後どの
今後中心的経営体(個人)として育成する経営体
ように展開するか観察しなければならない。
である。朱実線枠は今後中心的経営体として育成
3.A社とT社の地域競合
する経営体(法人)、黄色枠は土地利用型の認定
実際の問題として、A法人とT法人はほぼ隣り
農業者で農地集積が必要な経営である。この図か
合わせに事務所も同じ地区に存在する。いくら行
らすれば、いかに中心的な経営体との関係も含め
政等が介して調整しているといっても、圃場が隣
て調整しなければならないか明らかである。
り合わせだったりしている。棲み分けをしなけれ
この図からすれば、中心的な経営体しか出てこ
ばならない状態になっている。具体的な形で問題
ないが、これに農地を提供する貸付側の論理が加
は出てきていないが、これをどう調整するか、今
われば益々地域調整・調和が困難なことが明らか
後はその調整主体をどこにおくかが問われてい
になる。実際、このような形で農地集積しても、
る。それを従来はムラが担っていた。そのムラも
雑草の繁茂状態から「おまえのところには貸さな
危機に陥っており、ムラの再生と同時にそのムラ
い」などということが頻繁に出てきている。規模
に替わる調整主体を考えなければならない。町の
の大きな経営ほど、農地の維持管理が悪いという
行政もさることながら、農地の一筆ごとの管理状
ことが言われ、従来の個別経営の方がよいと言わ
況をもっともよく熟知している農業委員会がどう
れている。こうした問題をどのように解決するか
関わるかが問われることになる。
極めて深刻な問題として出てきている。
第1に、ムラを超えた地域調整が必要な状況に
あり、そのムラの地域調整機能をどこが担うのか。
これを農地中間管理機構が担えるのかも今後は問
136
表8 人・農地プランの中心となる経営体(2013年3月作成、2014年3月更新予定)
28才
36才
戸別所得補償制度の加入者
T法 人 独 立
11
後継者の有無
3
4
5
6
7
8
9
10
36才
37才
29才
39才
29才
39才
36才
35才
34才
43才
構成員(従業員)
経営者・代表者の年齢
経営体(番号)
1
2
現状
計画
[2013年度]
[2016年度]
活用が見込まれる施策
経営内容
経営規模
経営内容
経営規模
(作目)
(ha、頭数等)
(作目)
(ha、頭数等)
青年就農
給付金
(開始型)
2名
5(3)名
無
無
カーネーション
花卉
0.2ha
0.6ha
カーネーション
花卉
0.2ha
0.6ha
○
○
2名
無
ホウレンソウ
0.2ha
ホウレンソウ
0.3ha
○
3(1)名
11(10)名
1名
3(1)名
3(1)名
5(2)名
無
無
無
無
無
無
カーネーション
バラ苗
野菜
ブロッコリー
キャベツ
キク
0.3ha
0.9ha
0.5ha
1.6ha
1.2ha
0.1ha
カーネーション
バラ苗
野菜
ブロッコリー
キャベツ
キク
0.3ha
1.2ha
0.9ha
2.8ha
2.0ha
0.5ha
○
○
○
○
○
○
10(9)名
無
レタス
3.3ha
レタス
3.3ha
○
5(2)名
無
キク
0.3ha
キク
0.3ha
○
われることになる。
第2に、「標準小作料」制度が廃止され、目安と
なる借地料がなくなり、何を基準にすべきかわか
スーパー L
耕作放棄地
資金の
再生利用
金利負担
緊急対策
軽減措置
交付金
ならなかった。
《付記》
らなくなったと述べている。実際に、豊穣度差が
この調査は地域調整主体とは何かに集約させた
暗黙に存在する中での借地料が極めて安易に決定
形で問題にしたが、調査が難しく困難であった。
されている。このことは貸し手の借り手の関係と
この調査には全国農地保有合理化協会の深谷成夫
して成立し、その個別事情を大事するということ
さん、長野県農業公社、そして富士見町の農業委
から、標準小作料制度は廃止したにも関わらず、
員会事務局次長(産業課営農推進係長)の植松聖
その地代管理も含めた地域調整をどこが担うのか
久さんにはたびたび面倒をかけことをお詫びした
も問題である。実は地代管理も地域調整の重要な
い。とりわけ、深谷さんにはご迷惑をかけた。調
ことになる。
査には信州大学農学部四年の加藤研究室のメン
第3に、今後、農地中間管理機構が中心になり、
農地の集積と集約化が進み、それを中心的経営体
が担うという場合にも事態は同じである。考えな
ければならないのは、今までのような地域調整が
困難な中でも、絶妙な均衡状態を作り出してきた
にもかかわらず、むしろ、今後の中心課題は県一
本の農地間管理機構が市町村及び市町村農業委員
会を利用して地域調整をいかにするかになる。そ
の場合、どこか、誰が、どのような機関が地域調
整の主体となるかが重要になる。その点からすれ
ば、従来のシステムを全面的に否定するのではな
く、どのように再定立するかが重要になる。やや
デフォルメすれば、従来、農地管理主体は問題に
なったが調整主体ということは全面的に問題には
バーが同行した。
企業参入に伴う地域調整はいかに行うか ?
図1 富士見地区 人・農地プラン農地利用全体図
137
138
企業参入に伴う地域調整はいかに行うか ?
139
140
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