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めっき水洗水からの薬剤等有価物回収システム

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めっき水洗水からの薬剤等有価物回収システム
平成 18 年度「3Rシステム化可能性調査事業」
めっき水洗水からの薬剤等有価物回収システムの構築
報
告
書
平成 19 年 3 月
中
国
経
済
産
業
局
はじめに
使用済製品等の3R(リデュース、リユース、リサイクル)に際しては、分別、収集・運搬等
に要するスペース、労力、コスト、分別の程度や収集量が大きく影響を及ぼすため、排出源毎、
使用済製品の種類毎の特性等に応じ、分別、収集・運搬、3R手法等に工夫を加えた3Rシステ
ムを開発し、成果の普及を図る必要があります。また、3Rシステムが開発されたものであって
も、コストや品質の問題などからシステムが円滑に機能しない事例もあり、3R製品の市場化対
策も必要となっています。
めっき業においては、従来から金属や薬品等の有価物は汚泥として埋立処分されており、また、
使用する薬剤は多岐にわたり有害物質も多いことから、排水処理上の課題も多くあります。
特に、めっき業の主流である電気めっき工程においては、めっき水洗の繰り返しであり、最終
的に素材にめっきとして付着する薬剤・金属は全体の 15~20%にすぎず、大半は再利用されない
まま廃液中に移行し、汚泥として最終処分されています。
また、排水規制については、現在、酸化還元・凝集沈殿等により、排水基準を満たすよう水処
理された処理水を下水道あるいは河川に放流していますが、平成 18 年 12 月から水生生物保全の
観点から、水質汚濁防止法の亜鉛の排水基準値が強化されたため、今後、めっき業界として早急
な排出規制への対応・対策が求められる可能性があります。
このような認識のもと、本調査は、今まで有効利用されていなかった、電気めっき水洗水に含
まれる有価物(各種薬剤・金属の両方)について、工場内での再生利用(リサイクル)とこれに
伴うめっき汚泥の発生抑制(リデュース)を促進することを目的とし、市場規模の大きい電気亜
鉛めっきを対象とした「めっき水洗水からの薬剤等有価物回収システムの構築」の可能性につい
て調査・検討を行ったものです。
具体的には、有価物が混合した水洗水を減圧濃縮装置で濃縮液と水に分離し、濃縮液をめっき
液として、分離水を水洗水として再利用する3Rシステムを検討しました。また、無排水(クロ
ーズド)システムにすることで、強化された亜鉛排水基準に対応するとともに、めっき工程から
の汚泥発生量もゼロにすることを目指した検討を行いました。
現在、亜鉛めっきのリサイクルは、愛知県を中心に、既存システムの大幅改良が必要な次世代
型リサイクルシステム(高温浴・光沢剤の未使用・パルス波によるめっき等)の研究が進められ
ているところです。
一方、本事業では、既存システムの軽微な改良と簡易な設備投資によりリサイクルが可能とな
る、早期対応型システムの構築を目指す検討内容となっています。
今回検討した内容が早期に実現し、電気めっき工程で使用する各種薬剤や金属等有価物と水洗
水の使用量の削減を図ることができ、更には汚泥の発生抑制にも繋げることにより、環境負荷低
減に少しでも役立つことになれば幸甚に存じます。
中国経済産業局
資源エネルギー環境部
環境・リサイクル課
【検討委員会】
本事業では、より実現性が高く最適なシステム構築を目指すため、学識者、電気めっき業者、
めっき薬品メーカー、関係行政機関等で構成する「検討委員会」を設置し、年 3 回の検討委員
会を開催し専門的立場からの見解・指導を得ながら実施しました。
めっき水洗水3Rシステム検討委員会
区
分
氏 名
【委員長】
井 原
学
識
委
員
委員名簿(敬称略)
めっき関係
業界委員
所属・職名
辰 彦
教授
コーディネーター
清 水
達 磨
財団法人くれ産業振興センター
樋 口
浩 一
広島県立西部工業技術センター
資源環境技術部 副主任研究員
新 谷
哲 章
新和金属株式会社 代表取締役社長
広島県鍍金工業組合 副理事長
黒 川
明 夫
有限会社黒川鍍金工業所 代表取締役社長
望 月
建 彦
ユケン工業株式会社 技術部
末 國
博 文
中国経済産業局 資源エネルギー環境部
環境・リサイクル課 課長
船 田
義 治
中国経済産業局 資源エネルギー環境部
環境・リサイクル課 総括係長
オブザーバー
事務局
近畿大学工学部生物化学工学科
課長
表
宏
中電技術コンサルタント株式会社
臨海・都市部 循環システムグループ 副専門役
乗 越
晃
中電技術コンサルタント株式会社
臨海・都市部 循環システムグループ 主査
伊 豆 野 昌 美
中電技術コンサルタント株式会社
臨海・都市部 循環システムグループ 技師
委員会開催年月日
回数
開催年月日 時間
開催場所
第1回
平成 18 年 9 月 11 日(月) 15:00~17:00
鯉城会館 5F パール西
第2回
平成 18 年 11 月 30 日(月) 15:00~17:00
鯉城会館 5F ルビー
第3回
平成 19 年 2 月 16 日(金) 15:00~17:00
広島メルパルク 4F 梅
目
第1章
次
本事業の概要とめっき業の現状
1.事業概要 ..................................................................1
2.めっき業の現状 ............................................................4
3.めっき業の課題 ............................................................8
4.モデル企業の設定と現状 .................................................. 13
第2章
3Rシステムの基本検討
1.現状めっき液変化量の把握 ................................................ 17
2.3Rシステム構築のための工夫 ............................................ 28
3.3Rシステム濃縮倍率の決定 .............................................. 39
第3章
濃縮装置の検討及び濃縮液・分離水の成分分析
1.濃縮分離試験 ............................................................ 40
2.成分分析結果 ............................................................ 47
第4章
3Rシステムの構築と導入効果
1.3Rシステム構築における課題と対策 ...................................... 53
2.3Rシステム案 .......................................................... 54
3.3Rシステムの導入効果 .................................................. 56
第5章
経済性評価
1.3Rシステム導入による削減コスト(導入効果) ............................ 58
2.3Rシステム導入のための必要コスト(導入コスト) ........................ 64
3.経済性評価 .............................................................. 71
第6章
検討結果のまとめとシステム導入に向けた課題
1.本事業の目的・位置付け .................................................. 74
2.現状の亜鉛めっき業の課題 ................................................ 75
3.めっき3Rシステムのポイント ............................................ 76
4.3Rシステムの構築 ...................................................... 76
5.濃縮分離試験結果 ........................................................ 79
6.経済性評価 .............................................................. 80
7.システム導入に向けての課題 .............................................. 82
【参考資料】
第1章
本事業の概要とめっき業の現状
1.事業概要
(1) 目 的
めっき加工において、めっき槽中で電気めっきされた部品は、水洗槽で水洗される。
このとき、部品に付着しためっき液(薬品・亜鉛を含む有価物)が水洗槽に持込まれ、水
洗水と混合するが、現在その水洗水は、水処理施設で処理され、有価物を含んだ汚泥が最終
処分されている。
本調査は、上記のように今まで有効利用されていなかった電気めっき水洗水に含まれる有
価物(各種薬剤・金属の両方)について、工場内での再生利用(リサイクル)とこれに伴う
めっき汚泥の発生抑制(リデュース)を促進することを目的とし、市場規模の大きい電気亜
鉛めっきを対象とした「めっき水洗水からの薬剤等有価物回収システムの構築」の可能性に
ついて調査・検討を行ったものである。
さらに、昨年度、亜鉛排水基準が強化されたことから、亜鉛めっき業ではこの対応が求め
られているため、本調査では有価物の再生利用・汚泥の排出抑制とあわせて、亜鉛の排出抑
制も目指した検討を行った。
具体的には、有価物が混合した水洗水を減圧濃縮装置で濃縮液と水に分離し、濃縮液をめ
っき液として、分離水を水洗水として同工程内で再利用するクローズド・リサイクルシステ
ム(めっき3Rシステム)を検討したものである。
次頁に現状のめっき加工・排水処理状況と、めっき3Rシステムのイメージ図を示した。
【本事業の主な目的】
① めっき水洗水に含まれる有価物の再生利用(リサイクル)と汚泥の発生抑制(リデュース)
② 無排水クローズドシステムによる亜鉛排出抑制(強化された亜鉛排水基準への対応)
1
【現状めっき加工・処理状況】
スプレー洗浄
めっき液・亜鉛
めっき槽
回収槽
第1
水洗槽
汚泥
★埋立
第2
水洗槽
水処理
(酸化還元・凝集沈殿)
放 流
処理水
★亜鉛排水規制の強化(5mg/L→2mg/L)
図 1-1 現状めっき加工・処理状況
【将来めっき3Rシステムイメージ】
めっき液・亜鉛
めっき槽
回収槽
リサイクルシステム
第1
水洗槽
濃縮・分離
めっき液
亜 鉛
第2
水洗槽
無排水システム
水
① めっき液と水のリサイクル
② 亜鉛排出ゼロ
③ 汚泥発生ゼロ
図 1-2 めっき3Rシステムイメージ
2
(2) 本事業におけるリサイクルシステムの位置付け
亜鉛めっきのリサイクルについては、自動車産業の盛んな愛知県を中心として、先進的に
「次世代型めっきクローズド・リサイクルシステム」が検討されている。
このシステムは、複数の有機系薬品等が配合されているため取扱い(リサイクル)の難し
いめっき液中の光沢剤の使用量削減とパルス波によるめっき加工、高温浴への転換等による
普及性の高い亜鉛めっきクローズド化システムを目指している。
このため、現状のめっき加工システムの抜本的な変更を伴うこととなる。
本事業は、将来的に「次世代型めっきクローズド・リサイクルシステム」が構築されるま
で、早急に対応可能なシステムとして、現状めっき加工システムに簡易な設備追加や軽微な
変更による最小限の投資で対応可能な「現代型めっき3Rシステム」を目指して検討したも
のである。
現 状
本検討
長期ビジョン
排水中の
有価物未利用
現代型
リサイクルシステム
次世代型
リサイクルシステム
既存めっき設備に濃縮
装置設置など、簡易な設
備整備によるクローズ
ド・リサイクルシステム
の検討
添加剤の未使用を目指した
シンプルなめっき液に転換
し、パルスめっきにより品
質を確保するシステム
図 1-3 本事業の位置付け
(3) 本事業における検討対象工程
亜鉛めっきの主な 4 工程(脱脂工程・洗浄工程・めっき工程・クロメート工程)のうち、
リサイクルする有価物(薬品や金属)の単価等から、経済性の成り立つ工程として「めっき
工程」と「クロメート工程」の 2 工程が考えられる。
しかしながら、クロメート工程については、先進事例調査結果(巻末参考資料参照)より、
三価クロメート液の液管理が非常に難しく、めっきリサイクル先進地においても現在ほとん
ど取り組まれていないことが判明した。
このため、本調査においても「クロメート工程」のリサイクルは対象外とし、最もクロー
ズド・リサイクルシステム構築の現実性・可能性が高いと考えられる「めっき工程(めっき
水洗水)」を対象とした3Rシステムを検討した。
3
2.めっき業の現状
めっき業の現状について以下に整理した。
(1)めっき業の概要
1)めっき種類
めっきの種類には、下図のように、溶融めっき、電気めっき、無電解めっき等があり、電
気めっきが主流である。
溶融めっき
亜鉛
ニッケル
クロム 等
電気めっき
銅
ニッケル
クロム
金
銀
亜鉛
すず
半田
その他
無電解めっき
銅
ニッケル
その他
めっき
図 1-4 めっき種類
(参考資料:めっき業界の将来展望/株式会社矢野経済研究所)
4
2)めっき業売上高の推移
調査機関が平成 17 年に調査した全国 429 社の有力めっき企業の売上高は 2004 年度には約
6,455 億円であり、2005 年度(見込み)には約 6,700 億円と 3%強の伸びを示している。さ
らに 2005 年度対比 2006 年度(予測)でも同様の 3%強の伸びが見込まれている。
めっき売上高についても 2004 年度対比 2005 年度はごくわずかながら前年比が 100%を上
回るものと見られる。長期にわたる日本国内の不況が徐々に回復し、自動車産業を中心に業
績の好転が伝えられる中、2 ヵ年の傾向はプラスとなり、取り巻く経済環境を考慮すれば数
字としては底を打ち、やや伸び方向に変化した可能性がある。
2006 年度の予測では調査企業のめっき売上高はプラス 3.5%と改善されるとするが、期待
値も含まれるものの、傾向としてはプラスを示している。
(参考資料より引用)
(単位:百万円)
440,000
437,064
430,000
422,196
420,000
421,124
410,000
2004年度
2005年度(見込)
2006年度(予測)
図 1-5 調査対象企業 429 社の売上高推移
表 1-1 調査対象企業 429 社の売上高合計
(単位:百万円)
項 目
売上高合計
めっき売上高
構成比
2004 年度
645,492
421,124
65.2%
2005 年度(見込)
670,297
422,196
63.0%
2006 年度(予測)
696,402
437,064
62.8%
(参考資料:2005 年版全国有力めっき企業 400 社の現状と展望
/株式会社矢野経済研究所)
5
3)めっき種類別売上割合
2005 年度(見込)のめっき種類の金額と割合は下図・表のとおりである。
電気めっきのシェアが 70%弱と大きく約 2,900 億円、ついで溶融めっき(14%、約 600
億円)、無電解ニッケルめっき(13%、約 550 億円)となる。
また、電気めっきにおけるめっき種類別売上の割合は、91 年度において下図のとおりで
あり、クロムめっき、亜鉛めっき、金めっきで全体の約半分を占める。
その他
4%
6%
鉄1%
すず1%
銀4%
溶融
14%
無電解
13%
その他
5%
クロム
25%
無電解ニッケル
6%
電気めっき
の割合
銅
8%
電気
69%
亜鉛
13%
半田
9%
ニッケル
9%
(2005 年度見込み)
金
13%
(データ:1991 年)
(参考資料:めっき業界の将来展望
/株式会社矢野経済研究所)
図 1-6 調査対象企業のめっき種類分類
表 1-2 調査対象企業のめっき種類分類(2005 年度見込み)
項 目
溶融めっき
電気めっき
(単位:百万円)
無電解ニッケル
その他
2005 年度(見込)
59,694
290,545
54,950
17,349
割 合(%)
14.1%
68.8%
13.0%
4.1%
(参考資料:2005 年版全国有力めっき企業 400 社の現状と展望/株式会社矢野経済研究所)
6
4)めっきの主な需要
めっきの主要需要分野は下表の 12 分類である。
高い割合を示しているのが自動車関連(33%、約 438 億円)、IT関連(28%、約 365 億
円)等である。
日用雑貨
6%
その他
5%
建築・土木
13%
自動車
33%
産業・精密機
11%
IT
28%
家電・音響
4%
(2005 年度見込み)
図 1-7 詳細調査対象企業 134 社の主要需要分野
表 1-3 詳細調査対象企業 134 社の主要需要分野(2005 年度見込み)
項 目
金 額
自動車車体・部品(自動車・自転車・オートバイ等)
自動車
自動車電子部品(プリント基板、カーエレクトロニクス等)
34,369
43,760
自動車電子部品(その他)
IT関連分野(一般電子部品・半導体等)
IT
IT関連分野(プリント基板等)
IT関連分野(IT関連機器の筐本、ケース等)
36,470
IT関連分野(その他)
家電・音響
日用雑貨
その他
4,475
26.4%
33%
家電・音響(携帯電話・パソコン等は含めず→IT関連)
3.4%
4,916
3.8%
17,575
13.5%
11,984
4,415
28%
2,496
9.2%
3.4%
1.9%
4,778
4,778
4%
3.7%
14,002
14,002
11%
10.8%
建築/土木の建材(鉄塔、建築金具、床材含む)
16,760
16,760
13%
12.9%
日用雑貨(ギフト・玩具・眼鏡・エクステリア・インテリア等)
8,061
8,061
6%
6.2%
その他(航空・宇宙・船舶等)
6,136
6,136
5%
4.8%
産業・精密機 産業・精密機械(時計・カメラ・印刷機械等)
建築・土木
(単位:百万円)
(%)
(参考資料:2005 年版全国有力めっき企業 400 社の現状と展望/株式会社矢野経済研究所)
7
3.めっき業の課題
めっき業の現状の課題は、主に現状最終処分されている有価物のリサイクルと強化された亜鉛
排水基準に対応する排水処理方法の 2 点があげられる。
『めっき業の現状課題』
1.有価物リサイクルの課題
2.廃水処理の課題 (従来からの課題+強化される亜鉛排水規制)
(1)有価物(金属等)リサイクルの課題
めっきスラッジの分析例を下表に示す。
分析データからわかるように、水分を除けば金属の水酸化物であり、金属のリサイクルが
望まれる。
表 1-4 めっきスラッジの分析例
含水率(%)
CN 総量(ppm)
Cr 総量
Cu
Zn
Fe
Ni
Pb
Cd
Cu 系
74.0
500
141
65,100
24,500
7,730
1,530
72
210
Zn 系
69.0
1,420
449
123
85,400
32,100
545
61
36
Ni 系
76.6
112
141
1,360
680
457
46,000
39
16
Cr 系
72.1
65
21,300
1,510
42,000
12,200
6,830
187
34
(参考資料:高濃度産業廃水処理・リサイクルの最新技術動向
/株式会社東レリサーチセンタ-)
(2)廃水処理の課題
1)めっき業全体の課題
めっきの種類には電気めっき、溶融めっき、無電解めっきなどがあるが、このうち、めっ
き工業の主流である電気めっきについては専業の業者が全国に約 3,000 社あるといわれる。
その多くは家内工業規模の零細企業であり、使用する薬剤も多岐にわたり、有害物質も多く、
廃水処理上の問題も多い。
電気めっきの工程はめっき水洗の繰り返しであり、最終的に素材にめっきとして付着する
めっき薬剤の金属成分は 15~20%にすぎず、大半は廃液中に移行する。
めっき廃水としては酸洗い、それに続く水洗水、めっきおよびそれに続く水洗水に大きく
分けられる。また、電気めっきの銅、亜鉛、クロム等のめっきの廃水処理を分類すると、①
シアン系廃水の酸化処理、②クロム系廃水の還元処理、③重金属系廃水の中和処理に分けら
れる。
8
表 1-5 廃水処理方法
①シアン系廃水処理
酸化処理
アルカリ性溶液に次亜塩素酸ソーダを加え、シアンを炭
酸塩と窒素ガスに分解し無害化するアルカリ塩素法。
②クロム系廃水処理
還元処理
6 価のクロムを 3 価のクロムに還元して無害化する。還
元剤として亜硫酸ソーダが用いられている。
③重金属系廃水
中和処理
水酸化物の沈殿として分離する凝集沈殿法で処理されて
いる。沈殿はスラリー(含水率 99%)として分離後、脱
水処理してスラッジ(含水率 88%以下)となる。
2)亜鉛めっき業の課題
① 強化される亜鉛排水規制
2006 年 4 月 28 日に開催された中央環境審議会水環境部会で、4 月 25 日専門委員会報告
について審議がなされ、「水生生物の保全に係る排水規制等の在り方について」の報告が
まとまった。これを受けて中央環境審議会会長から環境大臣に対して答申がなされた。
今回の答申は、全国的に「全亜鉛」の環境基準超過がみられること、その排出業種が多
岐にわたっていることなどから、「水質汚濁防止法」にもとづく亜鉛に関する一律排水基
準を、現行の 1L(リットル)当たり 5mg から、1L当たり 2mg に強化することを提言し
ている。
ただし、現時点で「1L当たり 2mg」という排水基準達成が困難な業種については、経
過措置として 5 年を適用期間とする暫定排水基準値を設定することが示されている。
将来的には、さらなる規制強化も予測されるため、現状 2mg を超過している事業者は、
1mg/L以下を目指した改善が望ましい。
現在、全国鍍金工業組合連合会の調査によると、全国のめっき業のうち、亜鉛排出濃度
が 1mg/L以下である事業所は、全体の約 69%(H17 秋)である。
また、広島県鍍金工業組合の調査によると、広島県内のめっき業における亜鉛の排水濃
度は、現状 2~3mg/Lの事業所が多く、1mg/L以下の事業所は約 38%と全国に比べ非常に
少ない。
このため、今後めっき業界として早急な排出規制への対応・対策が求められることとな
る。
答申においては、今後の対応として「国、地方自治体、産業界が一体となって、亜鉛の
除去に主眼をおいた技術的指導等の仕組みづくりについて検討すべき」と示されており、
本事業における3Rシステムの検討も、その仕組みづくりの 1 つとして寄与することが期
待できる。
9
表 1-6 「水生生物保全を考慮した亜鉛の排水規制」の概要
現行
新たな一律
排水基準値
適用
暫定排水基準
亜鉛の特殊性等を勘案し、一部の業種を対
象に暫定排水基準を設定する。(電気めっ
き業も対象。ただし、表面処理を行うもの
に限る。)
5mg/L
2mg/L
この排水基準は、1 日
当 た り の 平 均 的 な 排 その基準値は現在の規制値である 5mg/L
出水の量が 50m3以上 とし、その適用期間は 5 年間とする。
である特定事業場に
適用するものとする。 ◆ めっき、表面処理関連
溶融めっき業、電気めっき業、表面処理
鋼材製造業、建設用・建築用金属製品製造
業(ただし、表面処理を行うものに限る。)
◆ 鉱山関連、無機化学関連
(参考)亜鉛排水規制に関する答申における対応の方向性
【企業の自主的な取組の重視】
・ 現状において比較的高濃度で亜鉛を排出している特定事業場については、排水処理施設
の維持管理の徹底に加え、工程全体を考えた管理の徹底に努める。
【今後の対応等】
〔暫定基準に関する今後の対応〕
・ 国、地方自治体、産業界が一体となって、亜鉛の除去に主眼をおいた技術的指導等の仕
組みづくりについて検討すべきである。
・ 設備投資等に要する負担や工場等の排水濃度実態、適用可能な排水処理技術の開発の動
向等を踏まえ、国においては暫定排水基準の検証・見直しに努めることが必要である。
〔今後の課題〕
・ 亜鉛を含む排出源は工場・事業場のみならず多岐にわたっているが、排出源とその寄与
率、非特定汚濁源の影響、さらには亜鉛のマテリアルフローについては、十分に解明さ
れたとは言い難いため、引き続き、国、地方自治体、産業界が一体となってそれらの解
明に向けた調査検討に努めること。
・ 今後とも水生生物に対する亜鉛の実環境中での影響に関する把握調査に努め、現在検討
が進められているリスク評価等の国内外の研究状況を勘案して調査検討を進める必要が
あること。
・ 非特定汚濁源については、亜鉛の用途が多岐にわたっているという特殊性から、その発
生源を製品段階から削減すること等は現状では困難であるものの、水生生物の保全に係
る亜鉛に対する総合的な対策としては、それらの可能性についても長期的な課題として
視野に入れるべきであること。
・ 国が主体となって技術的、政策的な支援、さらには官民一体となった取組に努めること。
10
表 1-7 広島県におけるめっき業の亜鉛排水濃度集計表
〔広島県鍍金工業組合調査〕
【全体集計】
工業組合名
広島県鍍金工業組合
組合員数
31
調査票を提出した事業所数
15
【物質別集計】
ほう素
ふっ素
窒素・亜硝酸
亜鉛
使用している事業所数
11
8
8
12
測定データのある事業所数
11
8
8
12
測定データの総数
ほう素 10mg/L
ふっ素 8mg/L
硝酸性窒素・亜硝酸性窒素 100mg/L
亜鉛 1mg/L
を超過する測定データの数
25
32
25
48
5
1
6
30
(25%)
(3%)
(24%)
(63%)
表 1-8
モデル企業※ の水処理後の亜鉛排水濃度
亜鉛排水濃度
新排水基準値
将来強化想定
(mg/L)
2mg/L以下
1mg/L以下
2005. 6
2.3
×
×
2005. 7
1.3
○
×
2005. 9
2.3
×
×
2005.10
2.9
×
×
2005.11
1.4
○
×
2005.12
1.0
○
○
2006. 1
1.9
○
×
2006. 3
2.0
○
×
2006. 5
1.0
○
○
2006. 7
1.8
○
×
平
1.8
○
×
測定年月
均
排水放流先:河川 / 排水量:50t/日
※ モデル企業については本章 4 項で設定している。
11
表 1-9
全国における亜鉛等排水濃度調査 全データ集計結果(平成 17 年秋期)〔調査:全国鍍金工業組合連合会〕
ほう素、ふっ素等排水濃度調査 全データ集計結果(平成17年秋期)
ほう素
工業
組合
調査票 回答率
使用
組合
提出事
(%)
事業
員数
業所数 *=50%以上
所数
北海道
9
東北
36
茨城
39
栃木
28
群馬
67
埼玉
99
千葉
19
神奈川
79
東京
497
山梨
22
長野
55
新潟
54
静岡
98
愛知
151
岐阜
35
三重
17
富山
16
石川
18
福井
14
京都
40
大阪
299
兵庫
41
岡山
10
広島
32
山口
8
山陰
8
四国
17
九州
44
H17(秋)合計 1,852
H17(春)合計 1,878
H16(秋)合計 1,898
9
29
13
21
16
40
19
37
341
11
27
38
78
151
10
16
9
18
14
40
260
17
10
12
6
4
15
38
1,299
1,132
1,126
100
81
33
75
24
40
100
47
69
50
49
70
80
100
29
94
56
100
100
100
87
42
100
38
75
50
88
86
70
60
59
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
3
16
5
19
14
25
6
26
189
11
20
27
35
71
6
7
5
18
14
28
156
10
5
8
2
3
8
21
758
667
705
ふっ素
(内訳)
(内訳)
測定
使用 測定
10
8
8
10
事業
事業 事業
mg/L mg/L
mg/L mg/L
所数
所数 所数
以下 超過
以下 超過
2
2
0
1
1
1
0
16
16
0
16
16
15
1
5
5
0
6
6
4
2
15
15
0
18
14
14
0
14
14
0
13
13
13
0
25
22
3
23
23
19
4
6
5
1
8
8
7
1
20
17
3
25
20
18
2
187
159
28
180
177
128
49
11
11
0
4
4
4
0
20
20
0
19
19
17
2
25
25
0
22
20
19
1
42
42
0
28
39
35
4
71
66
5
137
137
127
10
6
6
0
3
3
3
0
6
5
1
6
6
5
1
5
4
1
6
6
6
0
18
18
0
18
18
18
0
6
6
0
14
6
6
0
28
27
1
17
17
16
1
156
139
17
164
164
145
19
10
10
0
6
6
5
1
4
4
0
4
2
2
0
8
8
0
7
7
7
0
2
2
0
2
2
2
0
3
3
0
3
3
3
0
7
7
0
7
6
6
0
20
20
0
22
22
19
3
738
678
60
779
765
664
101
628
583
45
692
671
570
101
689
642
47
731
727
614
112
12
平成17年12月5日現在
硝酸性窒素・亜硝酸性窒素
亜 鉛
(内訳)
(内訳)
使用 測定
使用 測定
100
100
1
1
事業 事業
事業 事業
割合
mg/L mg/L
mg/L mg/L
所数 所数
所数 所数
(%)
以下 超過
以下 超過
1
1
1
0
4
3
3
0
0
15
15
15
0
17
17
14
3
18
8
8
8
0
11
11
7
4
36
19
14
13
1
20
15
12
3
20
15
15
15
0
17
17
13
4
24
23
23
22
1
27
27
20
7
26
8
8
8
0
9
9
8
1
11
15
14
13
1
21
21
19
2
10
73
52
41
11
173
168
113
55
33
10
10
10
0
10
10
10
0
0
23
23
21
2
19
19
14
5
26
26
24
24
0
19
18
8
10
56
37
42
40
2
58
61
40
21
34
151
151
143
8
139
139
90
49
35
5
5
5
0
4
4
3
1
25
10
6
6
0
10
10
7
3
30
6
6
5
1
2
2
2
0
0
18
18
18
0
18
18
18
0
0
14
6
6
0
14
6
6
0
0
21
21
18
3
20
20
14
6
30
4
4
4
0
132
132
82
50
38
6
6
6
0
10
10
6
4
40
5
5
5
0
6
6
3
3
50
6
6
6
0
8
8
5
3
38
4
4
4
0
4
4
3
1
25
3
3
3
0
3
3
1
2
67
8
8
8
0
10
8
5
3
38
16
14
13
1
20
20
13
7
35
550
512
481
31
805
786
539
247
31
506
505
472
33
685
688
406
282
41
503
518
478
40
711
698
471
227
33
4.モデル企業の設定と現状
(1) モデル企業の設定
本事業では、亜鉛めっき業における3Rシステムを具体的に検討するために、モデル企業
を設定した。
モデル企業は、広島県内での亜鉛めっき売上高が上位で、過去、広島県鍍金工業組合理事
長を務められており、且つ自社の水処理施設における薬品の回収リサイクルシステムを構築
されるなど、リサイクルに積極的に取り組まれているめっき業者を設定した。
(2)モデル企業の現状把握
1) モデル企業概要
表 1-10 モデル企業の概要
項 目
内 容
めっき加工種類
電気めっき (亜鉛、亜鉛-ニッケル合金、ニッケル、
亜鉛-鉄合金、黒色クロム、銅、その他)
無電解めっき(ニッケル、コンポジット)
生産種類(主要取引先)
自動車部品メーカー、建築部品メーカー、弱電気部品メーカー
工
2 箇所
場
従業員数
65 名
年間生産量
14,000t
売 上
9.4 億円(平成 17 年度実績)
年間使用水洗水量
12,000t/年(50t/日)
年間汚泥発生量
170t/年
本事業対象ライン稼動日数
約 240 日:週 5 日、年 3 回長期休暇(7 日/回)
13
2) 3Rシステム検討対象設備
モデル企業における亜鉛めっき設備(ライン)での全体加工方法を以下に示した。
① 前処理工程
前処理工程では、ラックにかけられた部品が、予備洗浄、脱脂、脱脂後水洗、塩酸洗浄、
洗浄後の水洗と自動処理されていく。
② 電気めっき工程
前処理された部品は、電気めっき工程へと移る。
電気めっき工程では、めっき槽中で電気めっきされた後、回収槽と 2 つの水洗槽で水洗
される。
なお、モデル企業のめっき液は、塩化アンモニウムと塩化カリウムの酸性折衷浴である。
a.部品はめっき槽で電気的に亜鉛めっきされる。
b.めっき完了後の部品は、最初に回収槽で水洗される。
その際、めっき槽のめっき液が製品に付着して回収槽へ汲出され、回収槽の水洗水
に混合する。
めっき槽のめっき液は、回収槽へのめっき液の汲出しと蒸発によって徐々に減少す
る。(めっき液が管理水位以下になると回収槽の水洗水が自動補給される。)
c.回収槽で水洗された部品は、次に第 1 水洗槽に移動し水洗される。
移動の際、回収槽の水洗水が製品に付着して第 1 水洗槽へ汲出される。
d.第 1 水洗槽で水洗された製品は、最終水洗工程である第 2 水洗槽に移動し水洗され、
最後にスプレー洗浄される。
移動の際、第 1 水洗槽の水洗水が製品に付着して第 2 水洗槽へ汲出される。
【水洗水の流れ】
a.第 2 水洗槽でのスプレー洗浄により毎分 1Lの上水が補給される。
b.補給により増量した第 2 水洗槽の水洗水は、第 1 水洗槽にオーバーフローする。
c.これにより第 1 水洗槽の水洗水もオーバーフローし、水処理施設に排水され水処理
される。
※ 回収槽は独立槽となっている。
③ 後処理工程
電気めっきされた部品は、最後にクロメート処理(被膜加工)後水洗され、乾燥させて
めっき加工製品が完成する。
④ 水処理
現在は、各工程の水洗水を水処理施設で一括処理(凝集沈殿)し、排水基準に適合させ
た処理水を河川放流している。また、汚泥は脱水後キルン炉でさらに減量化し、最終処分
(埋立て)している。
14
現状の課題
水洗水中に混入している各種薬剤や亜鉛等の有価物が
再利用されず、汚泥として最終処分されている
START
① 前処理工程
水処理(一括処理)
洗浄後の水洗水
部品(材料)
予備洗浄
脱
脂
水
洗
(水)
(アルカリ脱脂剤)
洗
(塩
浄
水 洗
酸)
アルカリ脱脂剤
油
(水)
塩 酸
※アルカリ脱脂
剤、塩酸、めっき
液、光沢剤、亜鉛、
クロム酸等の有価
物を含む
処理水
酸化還元
凝集沈殿・脱水
錆など洗浄物
分
有価物を含む脱水汚泥
・アルカリ脱脂剤、塩酸
・めっき液、光沢剤
・亜鉛、クロム酸
⇒
埋立処分
部品の流れ
② 電気めっき工程
③ 後処理工程
乾
燥
部品(材料)
END
めっき製品
電気めっき
(めっき液)
(光沢剤)
(亜鉛陽極)
水
洗
(水)
クロメート処理
(クロム酸)
水
洗
(水)
クロム酸
めっき液
光沢剤、亜鉛
15
15
⇒ 放 流
【めっき工程の基礎情報】
前処理
水 洗
電気めっき
スプレー洗浄
60L/時
(上水)
※ 濃度が薄くなると原液補充
・めっき液の減少分を回収層から補充
・減少量は,センサーでチェック
めっき浴(酸性折衷浴):14,500L
亜
鉛
陽
回収槽:590L
・水 11,705kg
(濃度:めっき浴の87%)
・塩化アンモン・塩化カリ 3,480kg
・光沢材
765kg
・亜鉛 580kg
(有価物濃度
不純金属:鉄,銅,鉛等
約30%)
オーバーフロー
第1水洗槽:590L
第2水洗槽:590L
(濃度:めっき浴の12%)
(濃度:めっき浴の2%)
光沢剤分解生成物
【電解液】
・NH4Cl :190g/L
・KCl
: 50g/L
※各槽の濃度は、水洗水入替後約30日経過
時点のもの
【光沢剤(2種類)】
44g/L
・ベンズアルデヒド
・クロルベンズアルデヒド
・オルトクロルベンズアルデヒド
・ポリエチレングリコール
・ノニオン界面活性剤
・ゼラチン
・安息香酸ナトリウム
・ポリエチレンイミン
・パソフェナントロリン
・β-ナフトキシボリオキシアルキレン
・エチルスルホン酸Na塩 等
【水 処 理】
(酸化・還元)
(凝集沈殿)
処理水:河川放流
汚泥(有価物含む):埋立て
※以上の光沢剤成分は予測であり、実際と
は厳密に一致していない場合がある。
図 1-8 めっき工程の基礎情報
表 1-11 めっき工程管理基準
№
1
工 程
亜 鉛
めっき
液組成
液 量
管理基準
温 度
濃 度
Zn
40±10g/L
TCl
190±10g/L
1 次光沢剤
14,500L
30±3℃
40±10ml/L
2 次光沢剤
4±10ml/L
pH
5.8±0.3
2
回 収
上 水
590L
R.T.
-
3
水 洗
上 水
590L
R.T.
-
4
水 洗
上 水
590L
R.T.
-
16
第2章
3Rシステムの基本検討
本章では、めっき水洗水3Rシステムの構築に必要な基本検討を行った。
1.現状めっき液変化量の把握
最初に、めっき水洗水を蒸発濃縮によりリサイクルする、めっき本槽に返還可能な量を把握
することを目的とし、現状のめっき本槽の液量変化を検討した。
検討は、めっき本槽の液量変化要因を整理し、各要因の測定と計算により変化量を整理した。
表 2-1 めっき液量変化要因
項 目
記 号
増 減
V
めっき槽のめっき液変化量
影響要因
V3-(V1+V2)
① 蒸 発
V1
減 少
液温度、湿度、大気圧等
② 汲出し
V2
減 少
液の粘性(表面張力)、部品形状、液切り時間等
③ 持込み
V3
増 加
液の粘性(表面張力)、部品形状、液切り時間等
③ 持込み
(+V3)
① 蒸 発
(-V1)
水洗槽
② 汲出し
(-V2)
めっき槽
図 2-1 めっき本槽のめっき液量変化の要因
現 状
(1) 稼動時のめっき液量変化
V
③ めっきライン稼動時の液量変化測定
減少要因
(2) 蒸発量(-)V1
① 室内実験により測定
(3) 汲出量(-)V2
② 回収槽の濃度変化より算定
増加要因
(4) 持込量(+)V3
④ 算定 V-(V1+V2)
※ ○数字は検討の順番
17
回収槽
(1) 蒸発量の測定(実験室での測定)
めっき液量変化の要因の 1 つである蒸発量を、次のフローに従い検討した。
1) 測定フロー
(1) めっき液比重の測定
(2) 各ケースについて蒸発重量測定(実験)
(3) 蒸発重量と比重により蒸発容量換算
(4) 単位面積あたりの蒸発量算定
(5) めっき槽の面積よりめっき槽全体の蒸発量算定
図 2-2 測定フロー
2) めっき液比重の測定
最初にめっき液の比重を算定した。
算定にあたっては、メスシリンダーで容量 100mL 当たりの水とめっき液の重量を測定し、
その重量比から水の比重を 1.0 としてめっき液の比重を算定した。
表 2-2 測定結果
種 類
容 量
重 量
水
100mL
99.8g
めっき液
100mL
114.0g
(参考)蒸発実験後めっき液
100mL
115.0g
【比重計算】
水の比重が 1.0t/m3であることより
めっき液の比重は、114.0/99.8 ≒ 1.142t/m3
参考:蒸発実験後めっき液比重 115.0/99.8 ≒ 1.152t/m3
18
3) 蒸発量測定
下表の 3 ケースの条件のもと、めっき液の蒸発量を室内実験により測定し、対象ライン
のめっき本槽での蒸発量を算定した。
表 2-3 測定ケース
ケース
概 要
1
工場内の条件に近い条件で測定
工場内(めっき液温約 30℃
/室温 25~30℃/湿度 50~60%)
2
めっき液温度を、管理温度より約
10℃高くした場合の蒸発量を測定
3
めっき液温度を管理温度程度(ケ
ース1と同様)とし、外気温度が
低くなった場合(今回約 13℃)の
条件で蒸発量を測定
測定場所
平均めっ
き液温度
平均室温
30℃
23℃
実験室
倉 庫
平均湿度
37%
40℃
22℃
30℃
9℃
50%
【蒸発実験に用いたシャーシの面積】
直径D = 145.5mm より、
面積A = 3.14 × (14.55 / 2)2 ≒ 166.2 cm2
【実験方法】
① ヒーターと攪拌速度を調整し、水槽内の水温を各ケースの設定めっき液温度で一定にな
るように設定。
② シャーシに入れためっき液を設定温度まで加熱した水槽に入れしばらく放置し、水槽の
湯とめっき液の温度を同一にする。
③ 測定開始前のめっき液重量と水槽水温度・室温・湿度を測定。
④ 水槽の湯の温度を一定に保ったまま、10 分間隔でめっき液重量と水槽水温度・室温・湿
度を測定。(40~50 分間)
⑤ 最後にシャーシ内のめっき液温度を直接測定。
実験室
倉 庫
19
【測定結果】
測定日
:平成 19 年 1 月 31 日(水)
蒸発面積 : 166.2 cm2
めっき液の比重: 1.142 g/cm3
■ケース1(めっき液温 30℃/室温 23℃/湿度 37%)
モデル企業の現状めっきラインのめっき液温度や工場内温度に近い条件で測定。
表 2-4 ケース 1 測定結果
時 刻
3:46
累積時間
10 分
3:56
3:56
20 分
30 分
4:39
1.0
0.876
-
0.8
0.700
-
1.0
0.876
470.0
40 分
4:28
4:29
蒸発量
(cm3)
471.0
4:17
4:18
472.8
蒸発重量
(g)
471.8
4:06
4:07
重 量
(g)
-
0.8
0.700
469.2
50 分
-
1.0
0.876
468.2
液温直接測定
10 分間平均
液 温
(℃)
室 温
(℃)
湿 度
(%)
32
23.3
37
30
23.4
37
-
-
-
30
23.3
37
-
-
-
31
23.0
37
-
-
-
31
22.6
37
-
-
-
32
22.4
37
23
37
30
0.9
0.788
20
30
■ケース2(めっき液温 40℃/室温 22℃/湿度 37%)
めっき液温度を管理温度より約 10℃高くした場合の蒸発量を測定。
表 2-5 ケース 2 測定結果
時 刻
5:04
累積時間
10 分
5:14
5:15
20 分
蒸発量
(cm3)
2.4
2.102
-
2.2
1.926
460.2
5:26
5:37
464.8
蒸発重量
(g)
462.4
5:25
5:36
重 量
(g)
30 分
-
2.2
1.926
458.0
40 分
5:47
-
2.2
1.926
455.8
液温直接測定
液 温
(℃)
室 温
(℃)
湿 度
(%)
43
22.5
37
43
22.5
37
-
-
-
43
22.4
37
-
-
-
43
22.3
37
-
-
-
43
22.3
37
22
37
40
10 分間平均
2.2
1.926
40
■ケース3(めっき液温 30℃/室温 9℃/湿度 50%)
めっき液温度を管理温度程度(ケース1と同様)とし、室温が低くなった場合(今回約 13℃)
の条件で蒸発量を測定。
表 2-6 ケース 3 測定結果
時 刻
6:24
累積時間
10 分
6:34
6:35
重 量
(g)
450.4
蒸発重量
(g)
蒸発量
(cm3)
1.2
1.051
449.2
20 分
6:45
1.2
液 温
(℃)
室 温
(℃)
湿 度
(%)
31
9.4
50
31
8.8
50
31
8.7
50
30
8.6
50
31
8.6
52
9
50
1.051
448.0
6:46
6:56
6:57
7:07
30 分
1.0
0.876
447.0
40 分
1.2
1.051
445.8
液温直接測定
10 分間平均
30
1.2
1.051
21
30
【めっき本槽における蒸発量】
室内実験結果をもとに、対象ラインのめっき本槽における 1 時間当たりの蒸発量を算定
し、結果を下表に示した。
表 2-7 実験による蒸発量測定結果
ケース
液 温
(℃)
室 温
(℃)
湿 度
(%)
10 分間平均
蒸発重量
(g)
10 分間平均
蒸発容量 ※
(cm3)
1
30
23
37
0.9
0.788
2
40
22
37
2.2
1.926
3
30
9
52
1.2
1.051
※ 蒸発量 = 蒸発重量(g)/めっき液比重(1.142 g/cm3)
表 2-8 めっき本槽における時間蒸発量換算結果
ケース
10 分間
蒸発量
(cm3/10 分)
1 時間
蒸発量
(cm3/時)
1
0.788
4.729
2
1.926
11.559
3
1.051
6.305
実験時シャー
シ表面積
(cm2)
めっきライン
表面積
(m2)
めっき本槽にお
ける時間蒸発量
(L/時)
3.2
166.2
11.2
7.8
4.2
22
【めっきライン停止時のめっき槽水位変化測定による蒸発量の検証】
室内実験によるめっき液蒸発量の算定結果の精度を検証するために、実際のめっきライ
ンでの蒸発量を直接測定し、結果を比較した。
測定は、蒸発以外の汲出し・持込みなどの変化要因を除外するため、めっきラインの停
止前後の水位変化を測定した。
しかしながら、この方法では、めっき液の液温低下や水位の測定精度の影響が大きいた
め、あくまで室内実験結果の信頼性検証を目的とした実験として位置付け、蒸発量は精度の
高い室内実験結果を用いることとした。
表 2-9 めっき本槽水位変化測定結果
測定日
1/27(土)
基準高から
の水面距離
(mm)
減少高
(mm)
(L/日)
(L/時)
液温
(℃)
140
-
-
-
34
減少量
1/27(土)7:00 ~ 1/29(月)7:00 ライン稼動停止
1/29(月)
155
168L/2 日
84L/1 日
15
基準高からオーバーフロー堰までの距離
基準高
140mm
:
3.5L/時
12
135 mm
135mm
155mm
オーバー
フロー堰
めっき本槽
オーバー
フロー槽
めっき本槽
オーバー
フロー槽
循環・ろ過
循環・ろ過
図 2-3 めっき本槽の液面変化状況(断面図)
めっきライン停止時のめっき槽水位変化測定による蒸発量は、次のとおりと考えられる。
V2 =((155mm-140mm)/ 1,000) ×11.2m2
×1,000L/m3
/2 日 /24 時間
= 3.5L/時 (84L/日)
以上より、室内実験によるケース1の蒸発量とほぼ一致しており、室内実験の信頼性も
高いことが検証された。
23
(2) 汲出量の測定
対象ラインにおけるめっき液汲出量(下図②)を、めっき槽から回収槽へ汲出される亜
鉛と塩素について濃度変化を測定し算定した。
(回収槽は独立した槽である)
③ 持込み
(+V3)
① 蒸 発
(-V1)
② 汲出し
(-V2)
スプレー洗浄
オーバーフロー
めっき槽
回収槽
第 1 水洗槽
第 2 水洗槽
水処理施設
濃度変化測定
図 2-4 汲出量を把握するための回収槽濃度変化測定
1) 測定結果
・亜鉛濃度、塩素濃度はそれぞれキレート滴定法、沈殿滴定法を用いて分析した。
表 2-10 回収槽濃度変化
採水日
経過日数
亜鉛濃度(g/L)
塩素濃度(g/L)
1月 9日
0
0.656
2.13
1 月 10 日
1
8.692
33.4
1 月 11 日
2
16.89
63.2
1 月 12 日
3
21.81
80.4
亜鉛濃度(g/L)
25
20
15
10
y = 7.2x + 1.3
5
0
0
1
2
経過日数
塩素濃度(g/L)
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
3
4
y = 26.5x + 5.1
0
1
2
経過日数
3
表 2-11 めっき液濃度(めっき本槽)
採水日
経過日数
亜鉛濃度(g/L)
塩素濃度(g/L)
1 月 12 日
-
53.6
202.4
24
4
① 汲出量の計算
a.亜鉛濃度から換算
回収槽の槽容量は 590Lであるため、亜鉛濃度変化の近似式から、回収槽中の亜鉛
量は 1 日当たり 4.25kg 上昇する。
7.2g/L × 590L = 4,250 g
つまり、4.25kg 分の亜鉛をめっき液で換算すると、1 日当たり 79.3L汲出すこと
が判明する。
4,250g ÷ 53.6g/L(めっき液濃度) = 79.3 L
b.塩素濃度から換算
上記と同様の計算をすると、塩素濃度から換算した汲出量は、1日当たり 77.2L
となり、ほぼ同等の数値となる。
26.5g/L × 590L ÷ 202.4g/L = 77.2 L
c.まとめ
以上より、1 日当たりの汲出量は、亜鉛濃度・塩素濃度からの算定結果の平均から
約 78L/日であると考えられる。
このときの 1 日の実質稼働時間が約 22 時間であることから、
1 時間当たりの汲出量は、3.5L/時となる。
【備考:回収槽濃度変化】
1 日当たり 13.2%(78L/回収槽 590L)の濃度上昇(めっき槽→回収槽の持込み)
と 13.2%の濃度減少(回収槽→第 1 水洗槽への汲出し)を同時に行う。
この結果から、1 日当たりめっき液比率の 86.8%が残っていくこととなる。
メッキ液比率(%)
めっき液比率(%)
100.0%
85.6%
90.0%
86.7%
80.0%
70.0%
60.0%
50.0%
40.0%
30.0%
20.0%
10.0%
0.0%
0
10
20
30
日数
25
40
50
60
(3) めっきラインにおける現状めっき液変化量の測定
対象ラインにおけるめっき本槽のめっき液変化量を測定し、蒸発量・汲出量・持込量の
すべての液量変化要因を含んだ総変化量を把握した。
下表に測定結果・算定結果を示した。
めっきライン稼動時の水位変化測定結果より、めっきライン稼動時の平均液量変化量は
時間-0.3Lとなり、ほとんど増減がないことが分かった。
表 2-12 めっき液変化量(めっき本槽)の測定結果
月日
1/9(火)
1/10(水)
1/11(木)
1/12(金)
時 間
基準高から 水位変化
の水面距離
(mm)
(mm)
8:00
90
13:00
-
変化量
※1
※2
(L/日) (L/時)
-
21.7
-
32.5
34.3
18:00
-
32.9
31.6
0:00
-
8:00
93
31.6
24.1
13:00
-
31.4
29.7
18:00
-
31.4
27.2
0:00
-
31.7
21.6
8:00
90
31.4
22.3
13:00
-
31.7
30.4
18:00
-
31.6
25.7
0:00
-
31.6
23.7
8:00
92
30.8
21.5
13:00
-
33.1
30.6
18:00
-
33.0
25.6
0:00
-
33.0
24.3
+3
-2
-33.6
+33.6
-22.4
平均
※
室 温
(℃)
32.5
-3
-
液 温
(℃)
-1.5
+1.5
-1.0
-0.3
水位測定は水面変動の少ないオーバーフロー槽(p23 参照。本槽と同水位)で行った。
※1 めっき本槽の表面積が約 11.2m2
よって、日変化量(L)= 水位変化高(m)×11.2m2 × 1,000L/m3
※2 1 日稼動時間は 22 時間。
よって、時間変化量(L)= 日変化量/22 時間
26
(4) 持込量の算定
持込量については、測定によるが困難であるため、めっき液総変化量とその要因となる
持込量以外の蒸発量・汲出量の測定・算定結果を用いて、次のように算定した。
持込量 = めっき液総変化量 - (蒸発量 + 汲出量 )
= -0.3 - (-3.2 - 3.5)
= +6.4L/時
(5) 現状めっき槽めっき液変化量
現状のめっき槽のめっき液変化量は以下のとおりであることが判明した。
表 2-13 めっき液変化量総括
項 目
記号
変化量
算定方法
めっき液総変化量(めっき本槽)
V
-0.3L/時
測 定(めっきライン)
① 蒸発量
V1
-3.2L/時
測 定(室内実験)
② 汲出量
V2
-3.5L/時
測 定(めっきライン)
③ 持込量
V3
+6.4L/時
算 定
持込み
(+6.4L/時)
水洗槽
蒸 発
(-3.2L/時)
汲出し
(+3.5L/時)
めっき槽
総変化量(-0.3L/時)
図 2-5 現状のめっき槽の要因別めっき液変化量
27
回収槽
2.3Rシステム構築のための工夫
前項で現状のめっき本槽の液量変化を検討した結果、減少量がわずかであることが判明した。
よって、現状のままではめっき水洗水に含まれる有価物(めっき液・亜鉛)を再生しても、
めっき本槽に戻して利用できないこととなる。
このため、次のような「再生めっき液」を再利用するための工夫が必要となる。
★ めっき3Rシステム構築のポイント
1.めっき本槽の液量減少(返還量の確保) ⇒ ① 蒸発量の増加
② 持込量の減少
2.水洗槽の給水量の減少
⇒
③ 水洗槽の給水量の減少
①・②については、めっき本槽のめっき液量を減少させ、再生めっき液を戻せる容量を確保
しようとするものである。
また③については、水洗水の供給量を減少させることで、再生めっき液量(返還量)を減少
させることを目的としたものである。
28
(1) 蒸発量の増加について
再生めっき液を再利用するためには、めっき本槽のめっき液を減少させ再生めっき液を戻
せる容量を確保することが必要となる。
この対策の1つとして蒸発量の増加があげられ、次のような方法が考えられる。
■ めっき液温度を 30℃から 40℃に上昇
蒸発量測定結果を分析すると、次のとおりである。
・ ケース 1 と 3 の比較より、室温(外気温)による蒸発量の変化はわずかである。
・ ケース 1 と 2 の比較より、めっき液温度を 10℃高くすることで蒸発量は約 2.4 倍に増
加する
以上より、めっき液温度を現状の約 30℃から 40℃に変更することで、蒸発量を増加させ、
再生めっき液の返還量の増加を図る。
40℃に設定した場合の蒸発量は、7.8L/時で 30℃の場合より 4.6L/時(約 2.4 倍)の
増加が見込める。
ただし、めっき液温度を 40℃の高温浴に変更することで、めっき品質を確保するため、め
っき液の成分バランス調整等が必要となる。
表 2-14 蒸発量実験結果
ケース
液 温
(℃)
室 温
(℃)
湿 度
(%)
ラインにおける
時間蒸発量
1
30
23
37
3.2L/時
2
40
22
37
7.8L/時
3
30
9
52
4.2L/時
ケース 1 と 2
の比較
10℃上昇
同条件
29
4.6L/時
(2) 持込量の減少について
めっき本槽に再生めっき液を戻せる容量を確保する対策の 1 つとして、前処理工程の水洗
水のめっき本槽への持込量の減少があげられ、次のような方法が考えられる。
■ めっき工程前のスプレー洗浄の中止
現在、めっき工程前の前処理工程の最終水洗では、水洗槽に部品を浸して水洗した後、さ
らに部品に直接水洗水をスプレーしめっき工程に移動しているため、通常より多くの水洗水
が持込まれていることが考えられる。
よって、スプレー洗浄を中止することで、めっき槽への持込量の減少を図ることとした。
前処理工程
スプレー洗浄
中 止
めっき工程
持込み
(+6.4L/時)
蒸 発
(-3.2L/時)
水洗槽
汲出し
(+3.5L/時)
めっき槽
総変化量(-0.3L/時)
図 2-6 現状のめっき槽液量変化と中止するスプレー洗浄位置
【スプレー洗浄の中止による持込量の減少量の測定】
スプレー洗浄の中止による持込量の減少量は、次のように測定した。
測定条件
:
蒸発量、汲出量は測定日により変化はないものととする。
めっきラインの稼動状況:AM 7:00 ~ 翌日 AM 5:00
1.現状どおりスプレー洗浄を実施した場合のめっき槽液量変化の測定
前項で検討済 ⇒
-0.3L/時
2.スプレ-洗浄を中止した場合のめっき槽液量変化の測定
① 稼動開始前の水位測定
② 翌日の稼動開始前の水位測定
③ めっき槽のめっき液変化量を算定
30
回収槽
表 2-15 スプレ-洗浄を中止した場合のめっき槽液量変化の測定結果
月 日
減少量
減少高
(mm)
時 間
2/8(木)
10:00
2/9(金)
10:00
(L/日)※1 (L/時)※2
-
-
4
-
44.8
2.0
2
※1 めっき本槽の表面積が約 11.2m 。
よって、日変化量(L)= 水位変化高(m)×11.2m2 × 1,000L/m3
※2 1 日稼動時間は 22 時間。
よって、時間変化量(L)= 日変化量/22 時間
表 2-16 持込量の減少
測定ケース
めっき液変化量
スプレ-洗浄あり
-0.3L/時
スプレー洗浄なし
-2.0L/時
持込減少量
-1.7L/時
(3) めっき本槽の液量減少の工夫による液量変化総括
以上、
「蒸発量の増加」、
「持込量の減少」の検討による、めっき本槽のめっき液量減少量の
総括表を以下に示した。
表 2-17 3Rシステムにおけるめっき本槽のめっき液変化量総括
項 目
現 状
対策による
変化量
3Rシステム
構築時
対 策
めっき槽のめっき液
変化量
-0.3L/時
-6.3L/時
-6.6L/時
① 蒸発量
-3.2L/時
-4.6L/時
-7.8L/時
め っ き 液 温 度 を 30 ℃ か ら
40℃に上昇
② 汲出量
-3.5L/時
-3.5L/時
-
③ 持込量
+6.4L/時
+4.7L/時
めっき工程直前の前処理工
程のスプレー洗浄の中止
-
-1.7L/時
31
(4) めっき工程の給水量の削減
再生めっき液を再利用するための工夫の 1 つとして、水洗水の供給量を減少させ、返還量
(再生めっき液量)を減少させる方法がある。
方法として、最初にスプレー洗浄の導入や水洗槽の増加が考えられるが、前者はすでに導
入済であり、後者は既存設備で対応可能なシステムを目指すため、本検討では対象外とした。
次に考えられるのが、現状のスプレー洗浄量自体の削減である。
これについては、削減による水洗水濃度の変化を把握し、製品の品質に影響がないことを
確認する必要がある。
以下に現状と3Rシステム構築時の水洗状況を示した。
また、次頁以降に給水量削減に関する検討結果を示した。
スプレー洗浄
現 状
オーバーフロー
めっき槽
回収槽
第 1 水洗槽
第 2 水洗槽
水処理施設
図 2-7 現状の水洗水移動状況
表 2-18 回収槽、第 1 水洗槽、第 2 水洗槽の現状
回 収 槽
現在はめっき槽の液量が減った場合に回収槽から液を補給するため、独立した槽と
して水洗水濃度がめっき液に近い状態になるように設定されている。ライン稼動に
よる継続的なめっき槽からのめっき液持込みにより、濃度は約 50 日でめっき液の
約 87%まで達し平衡する。めっき品質に影響を及ぼす濃度になると排水・水処理
し、新しい水に入れ替えている。
第 1 水洗槽
実質的な最初の水洗槽。第 2 水洗槽からの水がオーバーフローして流入し、同量が
水処理施設に排水され水処理される。
第 1 水洗槽は、回収槽からのめっき液の持込みと第 2 水洗槽からのオーバーフロー、
及び水処理施設への排水による物質収支により濃度変化する。
第 2 水洗槽
最終の水洗工程。水洗槽の中で水洗した後、液面上でスプレー洗浄し次の工程に移
動する。スプレー洗浄量は、1 回 1L、1 時間に 60 回で 60L。
3Rシステム
オーバーフロー
めっき槽
回収水洗槽
第 1 水洗槽
濃縮装置
図 2-8 3Rシステムの水洗水移動状況
32
オーバーフロー
第 2 水洗槽
1) 給水量減量の考え方
給水量については、現状の回収槽・水洗槽 2 槽の各濃度について測定し、また、給水量を
減量した場合の各槽の濃度変化をシミュレーションして、それぞれの濃度状況を把握した。
次に、減圧濃縮を行う回収槽の水洗水濃度結果から、減圧濃縮装置の濃縮可能倍率(約 2
倍)を想定し(次章の濃縮試験結果を参考とした)、前項で検討した3Rシステムにおける
めっき本槽の時間減少量(濃縮液返還可能量)から、システムの容量収支において最適な給
水量を設定した。(最適給水量:時間 15L)
さらに、設定した給水量における最終水洗水濃度での水洗によるめっき品質について、外
観検査・耐食試験により確認し、給水量を決定した。
2) 現状の水洗槽濃度分析
水洗水の水を入れ替えて約 30 日後の各水洗槽濃度の測定結果を下表に示した。
加工日数より、各水洗槽の濃度は、物質収支より均衡する最高濃度に近い状態であると想
定できる。
現状、最終水洗槽濃度が約 2%(めっき液比)の状態で、求められるめっき品質を確保で
きている。
ここで計測結果より、回収槽濃度が持込量をもとに計算した均衡濃度(p25、86.7%)と
ほぼ一致していることが判明し、検討した持込量や濃度計算結果の信頼性が高いことが示さ
れた。
表 2-19 現状の加工日数約 30 日での水洗槽濃度測定結果
項 目
濃度(g/L)
亜 鉛
めっき液比率
塩 素
亜鉛比率
塩素比率
平 均
めっき液
亜鉛めっき濃度
54.7
185.3
100.0%
100.0%
回収槽
48.1
158.3
87.9%
85.4%
86.7%
第 1 水洗槽
5.7
24.1
10.5%
13.0%
11.8%
第 2 水洗槽
0.8
4.3
1.5%
2.3%
1.9%
33
-
3) 給水量と各水洗槽濃度のシミュレーション
給水量を減量した場合の各水洗槽の濃度変化について、シミュレーションを行った。
シミュレーションの条件設定は、以下の「算定条件」のとおりとした。
また、給水量については、下表のとおり 60L/時(ケース1)、30L/時(ケース 2)、15L
/時(ケース 3)、7L/時(ケース 4)の 4 ケースを設定した。
次頁以降に検討結果を示した。
【算定条件】
・ 1 日当たりの汲出量
:約 78L(p25 より)
・ 1 日 22 時間稼動より、1 時間当たり約 3.5L
・ 回収槽容量が 590Lより、1 時間当たり 0.6%濃度上昇(持込み)
・ また、同時に汲出しによる 1 時間当たり 0.6%の濃度減少がおこる。
・ よって、1 時間当たりめっき比率の 99.4%が残っていくこととなる。
【検討ケース】
表 2-20 シミュレーション検討ケース
既 存
回収槽
基礎ケース
0L/時
現 状
0L/時
第 1 水洗槽 第 2 水洗槽
0L/時
0L/時
60L/時
3 R
回収水洗槽 第 1 水洗槽 第 2 水洗槽
ケース 1
60L/時
ケース 2
30L/時
ケース 3
15L/時
ケース 4
7L/時
備 考
給水が無い場合
第 2 水洗槽で給水(スプレー洗浄)
第 2 水洗槽の水洗水がオーバーフ
ローにより第 1 水洗槽に給水
第 1 水洗槽から水処理施設に排水
第 2 水洗槽で給水(スプレー洗浄)
第 2 水洗槽の水洗水がオーバーフ
ローにより第 1 水洗槽に給水
第 1 水洗槽の水洗水がオーバーフ
ローにより回収水洗槽に給水
回収水洗槽から濃縮装置に給水
34
【シミュレーション結果】
表 2-21 既存システムの濃度変化シミュレーション結果
基礎ケース(%)
項 目
回収槽
給水量
第 1 水洗槽 第 2 水洗槽
0L/hr
時間
0 日(
現 状(%)
回収槽
第 1 水洗槽 第 2 水洗槽
0L/hr
60L/hr
1 時間)
0.5
0.0
0.0
0.5
0.0
0.0
1 日( 22 時間)
10.7
0.7
0.0
10.7
0.4
0.0
2 日( 44 時間)
20.1
2.6
0.2
20.1
0.9
0.1
3 日( 66 時間)
28.3
5.3
0.7
28.3
1.4
0.2
4 日( 88 時間)
35.6
8.6
1.5
35.6
2.0
0.4
5 日( 110 時間)
41.9
12.4
2.6
41.9
2.5
0.6
10 日( 220 時間)
63.5
32.9
12.8
63.5
4.6
1.6
30 日( 660 時間)
84.8
77.9
64.8
84.8
8.0
4.0
50 日(1,250 時間)
86.4
85.6
83.8
86.4
8.5
4.4
75 日(1,650 時間)
86.5
85.9
85.2
86.5
8.6
4.4
100 日(2,200 時間)
86.5
86.0
85.4
86.5
8.6
4.4
86.7%
11.8%
1.9%
実測値
-
-
-
表 2-22 3Rシステムの濃度変化シミュレーション結果 ①
ケース 1(%)
項 目
回収槽
給水量
時間
0 日(
ケース 2(%)
第 1 水洗槽 第 2 水洗槽
回収槽
60L/hr
第 1 水洗槽 第 2 水洗槽
30L/hr
1 時間)
0.5
0.0
0.0
0.5
0.0
0.0
1 日( 22 時間)
9.7
0.3
0.0
10.2
0.5
0.0
2 日( 44 時間)
18.1
0.8
0.1
19.1
1.3
0.1
3 日( 66 時間)
25.5
1.3
0.2
26.9
2.3
0.3
4 日( 88 時間)
32.0
1.8
0.4
33.7
3.2
0.6
5 日( 110 時間)
37.7
2.3
0.6
39.7
4.1
1.0
10 日( 220 時間)
57.1
4.3
1.6
60.2
8.2
3.0
30 日( 660 時間)
76.4
7.6
4.0
80.5
14.9
7.7
50 日(1,250 時間)
77.8
8.1
4.4
82.0
15.9
8.5
75 日(1,650 時間)
77.8
8.1
4.4
82.1
15.9
8.6
100 日(2,200 時間)
77.8
8.1
4.4
82.1
15.9
8.6
35
表 2-23 3Rシステムの濃度変化シミュレーション結果 ②
ケース 3(%)
項 目
回収槽
第 1 水洗槽 第 2 水洗槽
給水量
回収槽
15L/hr
時間
0 日(
ケース 4(%)
第 1 水洗槽 第 2 水洗槽
7L/hr
1 時間)
0.5
0.0
0.0
0.5
0.0
0.0
1 日( 22 時間)
10.5
0.6
0.0
10.6
0.7
0.0
2 日( 44 時間)
19.6
1.8
0.2
19.9
2.2
0.2
3 日( 66 時間)
27.6
3.3
0.5
28.0
4.2
0.6
4 日( 88 時間)
34.7
4.9
0.9
35.1
6.5
1.1
5 日( 110 時間)
40.8
6.5
1.5
41.4
8.9
1.9
10 日( 220 時間)
61.9
13.8
5.1
62.7
20.4
7.6
30 日( 660 時間)
82.7
26.6
14.2
83.8
43.0
24.7
50 日(1,250 時間)
84.2
28.6
15.9
85.4
46.8
28.1
75 日(1,650 時間)
84.3
28.7
16.0
85.4
47.0
28.2
100 日(2,200 時間)
84.3
28.7
16.0
85.4
47.0
28.3
90.0%
80.0%
70.0%
濃度
60.0%
回収
1槽
2槽
50.0%
40.0%
30.0%
20.0%
10.0%
0.0%
1
221
441
661
881 1101
220
440
660
880
1100 1321
1320 1541
1540 1761
1760 1981
1980 2200 時間
(10日) (20日) (30日) (40日) (50日) (60日) (70日) (80日) (90日) (100日) 日数
図 2-9 ケース 3 の濃度変化
36
表 2-24 シミュレーション結果総括(100 日後)
給水条件
既
存
基礎ケース
現
状
実
測
3
R
濃 度(めっき液比)(%)
回収槽
第 1 水洗槽
第 2 水洗槽
0L/時
0L/時
0L/時
0L/時
回収水洗槽
回収槽
第 1 水洗槽
第 2 水洗槽
86.5
86.0
85.4
86.5
8.6
4.4
86.7
11.8
1.9
回収水洗槽
第 1 水洗槽
第 2 水洗槽
60L/時
第 1 水洗槽
第 2 水洗槽
ケース 1
60L/時
77.8
8.1
4.4
ケース 2
30L/時
82.1
15.9
8.6
ケース 3
15L/時
84.3
28.7
16.0
ケース 4
7L/時
85.4
47.0
28.3
4) 給水量の検討
① 給水量の検討
シミュレーション結果より、現状最終水洗槽が 2~5%の濃度では品質が確保されて
いる。
3Rシステムにおいては、現在の回収槽にも給水(オーバーフロー)させるため、
その時の濃度変化をケース1で検討した結果、回収水洗槽濃度は現状より約 1 割弱程
度しか減少しないことが判明した。さらにケース 2~4 のとおり、給水量を減少させる
と現状の回収槽濃度とほとんど変わらない濃度で均衡する。
また、この濃度の水洗水を減圧濃縮する場合、約 2 倍の濃縮倍率が濃縮限界である
ことが次章の濃縮試験結果から判明している。
よって、これまでの検討結果より、めっき槽の減少量が約 7L/時であることから、
給水量は 15L/時程度(ケース 3)とする必要がある。(最適給水量)
ここで、ケース 3 の給水量 15L/時の検討結果を見てみると、最終水洗槽である第 2
水洗槽の濃度は約 16%である。このため、この濃度で最終水洗した場合のめっき品質
を確認する必要がある。
次頁に、上記条件下でのめっき品質試験を実施した結果を示した。
37
② 試験加工による品質の確認
めっき工程の最終水洗水濃度を約 16%にした場合の試験製品の品質について確認
した。
品質は、外観の判定と耐食試験による判定の 2 種類について確認した。
【外 観】
通常製品と試験製品の外観について、目視による差はみられなかった。
■ 通常製品
■ 試験製品
【耐食試験による判定】
試験製品についてめっき性能評価を行った。
耐食試験(塩水噴霧試験)による白錆・赤錆発生時間は下表のとおりで、納品先の規
格を満足していることが確認できた。
表 2-25 耐食試験結果
項 目
白錆発生時間
赤錆発生時間
試験結果
144 時間
312 時間
72 時間以上
240 時間以上
判定時間
※
※ 判定時間は加工品により異なる。
③ 給水量の決定
以上より、給水量を現状の時間 60Lから、濃縮する回収水洗槽の水洗水濃度と濃縮
装置の濃縮可能倍率を考慮して設定した時間 15Lに減量させた場合においても、めっ
き品質が確保されていることが確認できた。
よって、3Rシステムにおけるめっき工程水洗水の給水量は、時間 15Lに設定した。
38
3.3Rシステム濃縮倍率の決定
これまでの検討結果より、めっき槽のめっき液減少量は、めっき液温度の上昇による蒸発
量増加とめっき工程前のスプレー洗浄の中止による持込量の減少により、時間約 7Lに増加で
き、この量の再生めっき液が返還可能となることが分かった。
また、めっき工程の水洗水給水量は、現状のめっき品質を確保できる条件で、現状の時間
60Lから 15Lまで減少可能なことが判明した。
これより、時間約 15Lの水洗水を 7Lに濃縮するため、濃縮倍率は約 2 倍の設定となる。
ここで、このような条件で濃縮した場合、濃縮液濃度が 1.7 倍と高くなるため、物質収支
について検討する必要がある。
これについては、次章の濃縮試験と成分分析により、濃縮による成分変化を分析し検討す
ることとする。(増加し蓄積していく成分と加熱により減少する成分がある)
また、設定条件においては、水洗水としてリサイクルする分離水が時間 8Lの量となるこ
とから、時間 7L分はこれまでどおり上水を使用することとなる。
よって、現状と比較した上水使用料削減率は約 88%となる。(60L/時 → 7L/時)
表 2-26 濃縮倍率検討結果
項 目
返還可能量
容 量
(めっき液減少量)
収 支
給 水 量
(濃縮処理量)
濃 度
回収水洗槽
収 支
(濃縮対象水)濃度
検討結果
7L/時
濃縮倍率
約2倍
濃縮後
用 途
リサイ
クル量
不足量
濃縮液
7L/時
0
分離水
8L/時
7L/時
濃縮液
約 170%
-
(2.14 倍)
15L/時
84%
同 上
39
第3章
濃縮装置の検討及び濃縮液・分離水の成分分析
本章では、めっき液が混入した水洗水を、減圧蒸発により水を分離し水洗水としてリサイクルす
るとともに、濃縮液を再生めっき液としてリサイクル可能な濃縮装置について検討した。
1.濃縮分離試験
実績のある減圧蒸発濃縮メーカー数社に、モデル企業工場の実際のめっき水洗水を提供し、表
3-1 の条件でめっき水洗水試験濃縮分離試験を依頼した。
各社ロータリーエバポレーターで実施された結果を分析し、ここでは検討するシステムに最も
適していると判断された濃縮装置の試験結果についてとりまとめた。
表 3-1 試験条件
濃縮方法
減圧濃縮
サンプル水洗水の状況
濃縮液をめっき液として再利用
分離水についても、水洗水として再利用
濃度:めっき液濃度の約 60%、成分分析:表 3-2 参照
濃縮倍率
2 倍濃縮
処理能力
60L/時(※現状の給水量とし安全側の処理能力の設定で比較検討した)
減圧度・加熱温度
詳細な提示なし(※ 発泡による影響を受けないこと)
提出項目
試験に関する報告書、濃縮液・分離水 各 1L返還
試験目的の提示
表 3-2 濃縮試験の提供サンプル水洗水 成分分析結果
新 液
工場めっき水洗水
サンプル水洗水
めっき液組成関連
亜鉛 (g/L)
50.0
53.8
30.7
塩素 (g/L)
190.0
177.5
100.8
カリウム (g/L)
23.5
16.0
8.3
窒素 (g/L)
49.8
45.2
24.9
6.0
5.8
5.9
690.0
291.0
187.5
61.0
59.0
88.0
有機炭素量 (g/L)
6.3
20.4
10.5
鉄 (ppm)
0.0
8.8
7.5
クロム (ppm)
0.0
0.2
0.0
銅 (ppm)
0.0
0.3
0.2
鉛 (ppm)
0.0
0.0
0.3
30.2
81.3
46.5
成分A
266.4
343.2
115.3
成分B
1,844.6
51,126.4
2,820.9
成分C
11,377.7
17,144.6
10,430.0
成分D
42.3
3479.3
2,082.8
pH
25℃
導電率 (mS/cm) 25℃
どん点 (℃)
不純金属
1 次光沢剤UV
光沢剤
40
(1) 濃縮試験結果
以下に試験結果の概要、次頁以降に濃縮試験報告書を示した。
表 3-3 濃縮試験結果概要
真空度/加熱温度
83 kPa/75℃
加熱によりやや発泡性がみられた。
発泡性
加熱温度をプレ試験の 65℃から 10℃高くしたことで蒸発速度が早ま
り、激しく沸騰して発泡が起きたと考えられる。
濃縮倍率
2倍
濃縮試験
状 況
結晶の析出なし。
白色の濁りが発生するが、温度低下により濁り消滅。
濃縮倍率が 2 倍以上になると、玉状の褐色の液が発生・沈降。
2 倍以上
3 倍で褐色の液が溜まり配管が詰まる。
室温まで冷却すると白色の結晶が発生し液は 2 層に分かれた。(上:
黄金色、下:褐色液)
NH4+が多量に含まれる。アンモニア臭あり。
凝縮水
pHは 11 程度。
3 倍で液面に油状の物質発生(2 倍時点はなし)。
備 考
濃縮過程でNH4+が気散していると考えられ、実機では酸性液でN
H4+をトラップする必要あり。
41
濃 縮 試 験 報 告 書
(抜
粋)
42
1.はじめに
酸性亜鉛めっき回収液の濃縮テストを行いました。今回は液の発泡性をみるために加熱温度を
前回(プレ試験)より高くしてテストを行いました。以下に実験の詳細を報告します。
2.供試原液の分析
供試原液は酸性亜鉛めっき回収液でした。分析結果を以下に示します。なお、この値はろ紙 No.2
でろ過した液の分析値です。
pH
Zn
:
6.14
:
34.0 g/L
NH4
+
:
172.5 g/L
電導度
:
158 mS/cm
SS
:
274 mg/L
外観
: 薄い黄金色の透明液、細かな茶色の SS あり
*SS が存在しましたので、あらかじめろ紙 No.2 でろ過した液を濃縮テストに使用しました。
3.LTV 濃縮実験
3-1. 2 倍濃縮テスト
<実験方法>
酸性亜鉛めっき回収液のろ液を図1に示す LTV 濃縮装置の蒸発フラスコ(3L)に適時追加しな
がら合計 4L 入れ、真空ポンプで減圧状態(82.6kPa)にして加熱濃縮を行い、濃縮液が 2.0L にな
るまで濃縮(2.0 倍濃縮)を行いました。テスト終了後、凝縮液および濃縮水の水質を分析しま
した。
<実験結果>
表 1 に濃縮運転データ、表 2 に凝縮液等の分析結果を示します。
表1
LTV 濃縮データ
加熱温度
(℃)
液温度
(℃)
蒸気温度
(℃)
原液量
(L)
濃縮液量
(L)
濃縮倍率
(倍)
凝縮液量
(L)
75
59
56
4.0
2.0
2.0
2.0
*
2.0 倍濃縮した時点で白色の濁りが生じましたが、温度を低下させると濁りは消えました。
表 2 凝縮液等分析結果
*
(室温 18℃)
+
液種
pH
電導度
[mS/cm]
NH4
[g/L]
Zn
[g/L]
原液
6.1
158
172.5
34.0
黄金色
凝縮液(2.0L)
10.9
207 μS/cm
1.66
0.48mg/L
無色透明
外
観
凝縮液からはアンモニア臭がしました。液面に油状の物質は見られませんでした。
* 2 倍濃縮した時点での濃縮液と凝縮液をそれぞれ 2L 返却いたします。
43
3-2. 3 倍濃縮テスト
濃縮倍率が 2 倍以上となった場合の状況を把握する目的で行った。
<実験方法>
酸性亜鉛めっき回収液のろ液を図 1 に示す LTV 濃縮装置の蒸発フラスコ(3L)に適時追加しな
がら合計 9L 入れ、真空ポンプで減圧状態(82.6kPa)にして加熱濃縮を行い、濃縮液が 3.0L にな
るまで濃縮(3.0 倍濃縮)を行いました。テスト終了後、凝縮液および濃縮水の水質を分析しま
した。
<実験結果>
表 3 に濃縮運転データ、表 4 に凝縮液等の分析結果を示します。
表3
LTV 濃縮データ
加熱温度
(℃)
液温度
(℃)
蒸気温度
(℃)
原液量
(L)
濃縮液量
(L)
濃縮倍率
(倍)
凝縮液量
(L)
75
60
57
9.0
3.0
3.0
6.0
*
前回に比べやや発泡性がみられました。加熱温度を前回に比べ約 10℃高くしたことで蒸発速
度が高まり、激しく沸騰し発泡が起きたと考えられます。
*
2.0 倍濃縮した時点で白色の濁りが生じましたが、温度を低下させると濁りは消えました。
*
濁りが生じたまま濃縮を続けると玉状の褐色の液が発生し沈降しました。さらに濃縮を続け
ると褐色の液が増え、フラスコ下部の配管に溜まりました。
*
3 倍濃縮した時点で濃縮液を室温まで冷却すると白色の結晶が発生しました。この時、液は 2
層に分かれており、下部に褐色の液があり、上部には黄金色(原液とほぼ同じ色)の液があり
ました。
表 4 凝縮液等分析結果
*
(室温 18℃)
+
液種
pH
電導度
[mS/cm]
NH4
[g/L]
Zn
[g/L]
原液
6.1
158
172.5
34.0
黄金色
凝縮液(6.0L)
11.1
262 μS/cm
4.12
0.33mg/L
無色透明
凝縮液からはアンモニア臭がしました。液面に油状の物質がありました。
* 3 倍濃縮した時点での濃縮液と凝縮液をそれぞれ 3L 返却いたします。
44
外
観
図1
LTV 濃縮装置図
4.まとめ
酸性亜鉛めっき回収液を LTV 濃縮装置にて濃縮しました。前回より加熱温度を約 10℃高くした
ところ、発泡性が見られました。2 倍濃縮した時点で濃縮部には白色の濁りが発生しました。さ
らに濃縮を続けると褐色の液が分離・沈降し、徐々に増えていきました。3 倍濃縮した時には、
装置下部の配管に褐色の液がたまり、濃縮液を室温まで冷却すると白色の結晶が発生しました。
凝縮液にはZnはほぼ含まれませんが、NH4+が多量に含まれていました。凝縮液はpHが高いため、
濃縮過程でNH4+が気散していると考えられますので、実装置では酸性液でNH4+をトラップする必要
があります。
45
表 3-4 (参考)プレ試験を含めた濃縮試験結果の分析
試 験
1 回目
pH 6.37
水洗水濃度 Zn 9.55g/L
(亜鉛濃度) (原液の 0.24 倍)
NH4+ 16.5g/L
めっき液
原 液
pH
Zn
濃縮結果
5.8±0.3
40±10g/L、TCl
4.2 倍濃縮
2 回目
考 察
濃縮する水洗水は、1
回目がめっき原液の
約 0.2 倍の低濃度で
あり、2 回目は原液の
約 0.85 倍とめっき液
に近い高濃度であっ
た。
pH 6.14
Zn 34.0g/L
(原液の 0.85 倍)
NH4+ 172.5g/L
190±10g/L
3 倍濃縮
2 倍濃縮
加熱温度
65℃
75℃
真 空 度
85.3 kPa
82.6 kPa
なし
やや発泡性がみられた。
加熱温度を 65℃から 10℃高くしたことで蒸
発速度が早まり激しく沸騰し、発泡が起きた
と考えられる。
発 泡
濃縮後
濃 度
実験状況
結晶析出
(SS 発生)
凝縮水
Zn
43.5g/L
実測値
(原液の 1.09 倍)
Zn 102g/L
計算値
(原液の 2.55 倍)
問題なく順調に
濃縮
2 倍濃縮時点で白色の 2 倍濃縮時点で白
濁り(温度低下により濁 色の濁り(温度低
下により濁り消
り消滅)
↓ 濃縮継続
滅)
玉状の褐色の液が発
生・沈降
↓ 濃縮継続
3 倍で褐色の液が溜ま
り配管が詰まる
↓ 室温まで冷却
白色の結晶発生
液 2 層に分かれる
(上:黄金色 下:褐色液)
なし
あり
Zn
68g/L
計算値
(原液の 1.70 倍)
濃縮後の液濃度がめ
っき液原液の 1.7 倍
くらいから濁りが見
られ 2.5 倍と高濃度
になると SS の発生が
みられる。
なし
アンモニア臭
油状の物質はなし
アンモニア臭
液面に油状の物質
アンモニア臭
油状の物質はなし
pH
約 10
NH4+ 0.2~0.4g/L
Zn
0.1mg/L
pH 11.1
NH4+ 4.12g/L
Zn
0.33mg/L
pH
10.9
NH4+ 1.66g/L
Zn
0.48mg/L
46
加熱温度を 65℃から
10 ℃ 高 く し た こ と
で、蒸発速度が高ま
り、激しく沸騰し発
泡が起きたと考えら
れ る 。( 真 空 度 約
85kPa のもとで加熱
温度 65~75℃の間で
発泡が起こることが
考えられる。)
凝縮水のpHが高
く、原液・凝縮液・
濃 縮 液 の N H 4+ の 収
支バランスが合わな
い。濃縮過程でNH4+
が気散していると考
えられる。
2.成分分析結果
濃縮試験により濃縮・分離された濃縮液(再生めっき液)と分離水の成分分析を実施し、減
圧濃縮による成分変化等について分析した。
(1) 成分分析項目
以下に成分分析項目と試験方法を示した。
表 3-5 モデル企業のめっき液組成(参考)
液組成
液 量
管理基準
温 度
濃 度
Zn
40±10g/L
TCl
190±10g/L
1 次光沢剤
2 次光沢剤
pH
14,500L
30±3℃
40±10ml/L
4±10ml/L
5.8±0.3
47
備 考
NH4Cl(塩化アンモニウム)100g/L
KCl (塩化カリウム)
90g/L
表 3-6 分析項目・試験方法
分析項目
備 考
試験方法・種類
めっき液組成関連
亜鉛 (g/L)
めっき陽極
塩素 (g/L)
めっき液成分(塩化アンモンと塩化カリの酸性折衷浴) 沈殿滴定試験
カリウム(g/L)
めっき液成分(塩化アンモンと塩化カリの酸性折衷浴) 原子呼光光度法
窒素 (g/L)
めっき液成分(塩化アンモンと塩化カリの酸性折衷浴) 全窒素測定
pH
キレート滴定試験
25℃
導電率(mS/cm)
25℃
どん点 (℃)
断面積 1cm2、距離 1cmの相対する電極間にある溶液の
25℃における電導度をいう。水道水 100μS/cm
簡易分析試験
光沢剤成分が溶解しなくなる温度(めっき可能温度)
不純物増加の目安(不純物が増加するとどん点低下)
不純金属
有機炭素量
(g/L)
有機物(光沢剤+不純物)量測定
鉄 (ppm)
不純金属。めっき品質に影響。鉄は除去しやすい。
分析できない光沢剤成分及び不純物の増加量の目安
有機炭素測定
クロム (ppm)
原子呼光光度法
銅 (ppm)
除去しにくい不純金属
鉛 (ppm)
1 次光沢剤UV
(ml/L)
光沢剤
成分A
HPLC分析より簡易にめっき液中の光沢剤成分を測
定。光沢剤濃度として換算している。
光沢をだすための成分(2 次光沢剤)
液体クロマトグラ
成分B
めっきを均一に付けるための成分(1 次光沢剤)
成分C
品
質
吸光光度法
フィー法
(HPLC分析)
成分D
分解物(不純物)
ハルセル
めっきの付き具合を把握
48
簡易性能確認試験
(ハルセルテスト)
(2) 濃縮試験結果分析
1) ハルセル試験結果
めっき水洗水の減圧蒸発によって得られた濃縮液(再生めっき液)の性状を判断するため、
濃縮液によるハルセル試験を行い、めっきの付き方について、通常の工場めっき液の場合と
比較した。
濃縮液のハルセル結果は、ムラなくめっきが付いている良好な状態であり、色・光沢の違
いについては、濃縮液成分の微調整により調整可能と考えられる状態である。(薬品メーカ
ー見解)
濃縮液
現場液(工場めっき液)
(条件:2A-10min-R.T.)
・・・・濃縮したことによる弊害を確認
図 3-1 ハルセルめっき試験結果
49
2) 成分分析結果
以下にめっき水洗水の減圧蒸発によって得られた濃縮液(再生めっき液)と分離水の成
分分析結果を表 3-7 に示した。
濃縮による成分変化を把握するために、濃縮前のめっき水洗水、また、めっき液(新液・
現場液)の成分も分析した。
めっき液の新液は、めっき加工される前の建浴時の新液を示し、現場液はめっき加工が
行われた工場めっき液を示している。
濃縮を行っためっき水洗水は、この現場液が汲出され混入している液である。
表 3-7 成分分析結果①
分析項目
めっき液
①新 液
濃縮前
濃縮後
②現場液
③めっき水洗水
④濃縮液
⑤分離水
めっき液組成関連
亜鉛 (g/L)
50.0
53.8
30.7
63.3
0.3
塩素 (g/L)
190.0
177.5
100.8
201.6
0.0
カリウム (g/L)
23.5
16.0
8.3
63.3
0.2
窒素 (g/L)
49.8
45.2
24.9
52.9
2.0
6.0
5.8
5.9
5.8
11.3
690.0
291.0
187.5
309.0
0.3
61.0
59.0
88.0
55.0
有機炭素量 (g/L)
6.3
20.4
10.5
19.2
2.6
鉄 (ppm)
0.0
8.8
7.5
0.8
0.2
クロム (ppm)
0.0
0.2
0.0
0.1
0.1
銅 (ppm)
0.0
0.3
0.2
0.3
0.3
鉛 (ppm)
0.0
0.0
0.3
0.2
0.0
30.2
81.3
46.5
86.4
266.4
343.2
115.3
164.6
10.6
成分B(HPLC 分析)
1,844.6
51,126.4
2,820.9
7.9
68.8
成分C(HPLC 分析)
11,377.7
17,144.6
10,430.0
19,059.9
726.2
成分D(HPLC 分析)
42.3
3,479.3
2,082.8
1,706.1
94.6
pH
25℃
導電率 (mS/cm) 25℃
どん点 (℃)
不純金属
1 次光沢剤UV(ml/L)
光沢剤
成分A(HPLC 分析)
50
-
-
表 3-8 は、現場液と新液の成分比較による「めっき加工における成分変化」、及び濃縮液
とめっき水洗水の成分比較による「2 倍濃縮による成分変化」について整理したものである。
表 3-8 成分分析結果②
分析項目
②現場液/①新液
④濃縮液/③めっき水洗水
(めっき加工による変化) (2 倍濃縮による変化)
めっき液組成関連
不純金属
光沢剤
亜鉛 (g/L)
1.1
2.1
塩素 (g/L)
0.9
2.0
カリウム
0.7
7.7
窒素 (g/L)
0.9
2.1
pH
1.0
1.0
導電率(mS/cm) 25℃
0.4
1.6
どん点
1.0
0.6
有機炭素量 (g/L)
3.2
1.8
鉄 (ppm)
8.8
0.1
クロム (ppm)
0.2
0.1
銅 (ppm)
0.3
1.6
鉛 (ppm)
0.0
0.8
1 次光沢剤UV(ml/L)
2.7
1.9
成分A(HPLC 分析)
1.3
1.4
成分B (HPLC 分析)
27.7
0.0
成分C(HPLC 分析)
1.5
1.8
成分D(HPLC 分析)
82.3
0.8
(g/L)
25℃
(℃)
① 濃縮状態
表 3-8 からめっき液組成成分である、亜鉛・塩素・窒素のめっき水洗水(濃縮前)に対
する濃縮液(濃縮後)の量を比較すると、それぞれ試験条件である濃縮倍率(2 倍)とほ
ぼ同倍率であり、濃縮が良好に行われていることが分かる。
ただし、カリウムのみ 7.7 倍と非常に大きい値となっている。
51
② 成分変化
a.光沢剤成分D・B
【濃縮液】
表 3-7 の「濃縮前の水洗水③」と「濃縮後の濃縮液④」の成分を比較すると、光沢剤
成分Dが濃縮により 2 割弱減少している。
成分Dは光沢剤分解物を示す指標であり蓄積によりめっき品質に悪影響を及ぼすた
め、濃縮による減少は本システムにおいて望ましい傾向である。
光沢剤成分Bも蓄積するとめっき品質に悪影響を及ぼす。
しかしながら、成分Bはめっきを均一に付けるための成分でもあるため、不足すると
めっきの付きが悪くなる。
濃縮の結果、濃縮液の成分Bは非常に減少していることから、蓄積の心配はないが逆
に不足してくるため、リサイクルする際には成分Bの補給が必要となる。
【分離水】
分離水については、成分B・Dとも比較的少量であることから、水洗水としてリサイ
クルしやすいと考える。
【現場液】
表 3-8 の新液に対する現場液の成分を比較すると、成分Bが約 28 倍、成分Dが約 82
倍と、通常のめっき加工により、めっき液中の光沢剤等の分解がおこり、めっき本槽に
蓄積・増加されていることが分かる。
また、これらは導電率の低下、有機炭素量の増加からも同様の傾向が判断できる。
このため、本槽のこれらを除去するため現場めっき液自体をろ過する必要がある。
ろ過方法は活性炭ろ過が有効で、ろ過による不足分については補給が必要となる。
b.不純金属
不純金属も蓄積するとめっき品質に悪影響を及ぼす。
濃縮結果、クロム・銅は微増しているものの、鉄・鉛は若干減少しており濃縮による
影響はほとんどない。
ただし、クローズドシステムにすることで徐々に本槽に蓄積されるため、除去する必
要がある。
c.pH
濃縮液のpHは現場液と同程度であり、良好な結果である。
分離水については、pHが 11 程度のアルカリ性を示しており、めっき液成分のアン
モニアが揮発して分離水に混合していることが考えられる。
これについては、水洗水として再利用した場合のめっき品質への影響について試験す
る必要がある。
52
第4章
3Rシステムの構築と導入効果
1.3Rシステム構築における課題と対策
現段階での3Rシステム構築における課題と対策案を整理し、これまでに検討した3Rシス
テムの基本検討結果(第 2 章)、濃縮装置検討結果(第 3 章)と合わせて3R全体システムを検
討した。
課題と対策案を表 4-1 に、また3R全体システムを次頁以降に示した。
表 4-1 3Rシステム構築における課題と対策案
項目
課題の要因
課 題
対 策(案)
① めっき液を高温浴に
薬品メーカー主導による現在のめ
40℃で求められるめっき品質
変更(現状めっき液温
っき液成分バランスの調整
が確保可能なめっき液成分の
度を 30℃から 40℃と
(薬品メーカーは微調整により対
調整
する)
応可能との見解)
3R・クローズドシステム
② 前処理工程(めっき工
程の前)の最終水洗槽
でのスプレー洗浄の
中止
実際のラインでスプレー洗浄を中
止した場合の製品の品質確認
→ 確認済(合格)
めっき品質の確保
③ めっき工程の水洗水
給水量の減量
給水量を時間 15Lに減量した場合
のシミュレーションによる最終水
洗槽濃度で水洗した場合の試験加
工製品の品質性能試験を実施
→ 確認済(合格)
めっき本槽における光沢剤分
解物(成分D)の蓄積・増加
活性炭ろ過による除去
回避
不足した成分を適正量補給
④ クローズド(無排水) めっき本槽における不純金属
システムによる各種 (主に鉄)の蓄積・増加回避
成分の循環・蓄積
亜鉛陽極と不溶性陽極の併用
めっき本槽における 亜鉛の (不溶性陽極の種類、置換割合、調
増加回避
整方法、設置による課題等は今後継
続して研究する必要あり)
減
圧
濃
縮
増加する成分は活性炭ろ過で除去
光沢剤成分バランスがくずれ 不足成分を適正量補給(不足量は今
る
後、減圧濃縮装置(実機)での濃縮
⑤ 減圧濃縮時のめっき
による調査が必要)
液を含んだ水洗水の
今後、減圧濃縮装置(実機)で分離
加熱
した分離水での水洗によるめっき
分離水がアルカリ性を示す
53
品質を確認
(現段階ではジンケート浴での水
洗実績から影響無しという見解)
2.3Rシステム案
以下にこれまでの検討結果を総合した3Rシステムの全体図及び既存設備からの改良点、導
入効果を示した。
★冷却電力量の削減
★亜鉛コスト削減
(資源有効利用)
めっき液成分調整
不溶性電極の併用
(バランス・不足分補給)
スプレー洗浄中止
めっき液温度 40℃(10℃上昇)
スプレー洗浄量減量
→持込量削減
→蒸発量増加(濃縮液返還量増)
→濃縮量削減
オーバーフロー
不溶性陽極
最終水洗槽
不足成分の補
めっき槽
回収水洗槽
第 2 水洗槽
第 1 水洗槽
クッショ
ンタンク
ろ過装置
給によるバラ
活性炭による分解物・
ンス調整
不純金属の除去
クッショ
ンタンク
濃縮装置
●濃縮液リサイクル
●クローズドシステム
クッショ
ンタンク
●分離水リサイクル
(無排水)
凡例:
★薬品コスト削減
★Zn排出規制対応
(資源有効利用)
★水処理・汚泥処分費削減
新たに設置する設備
既存システムの改良
図 4-1 3Rシステム(案)の仕組みと導入効果
54
★水コスト削減
(資源有効利用)
必要となる調整事項
ここでは3Rシステム案における容量収支を示した。
① めっき液減少量
-6.6L/時
持込量
蒸発量
汲出量
② スプレー洗浄量
+4.7L/時
-7.8L/時
-3.5L/時
15L/時
回収水洗槽濃度
分離水 8L/時
(めっき液比)
上 水 7L/時
約 85%
不溶性陽極
最終水洗槽
めっき槽
回収水洗槽
第 1 水洗槽
クッショ
ンタンク
ろ過装置
第 2 水洗槽
② 濃縮処理量
15L/時
クッショ
ンタンク
濃縮装置
濃縮液返還量
濃縮倍率
分離水返還量
7L/時
約2倍
8L/時
(②/①)
濃縮液濃度
(めっき液比)
約 170%
図 4-2 3Rシステム(案)と容量収支等
55
クッショ
ンタンク
3.3Rシステムの導入効果
検討した「めっき水洗水3Rシステム」の導入効果として表 4-2 のような効果が期待できる。
以下に各効果の概要を示した。
次章ではこれらの効果により発生する利益(現状からの削減コスト)を算定し、本システム
導入に関する経済性について検討した。
表 4-2 3Rシステム導入効果
分 類
リサイクル
(リユース)
リデュース
その他
導入効果
水洗水リサイクルによるめっき液薬品・上水・亜鉛使用量の削減
無排水による水処理・汚泥処分量削減
高温浴への変更によるめっき液冷却電力、めっき加工電力コスト削減
無排水による亜鉛排水規制の対応
(1) リサイクル効果
【水洗水リサイクルによるめっき液薬品・上水・亜鉛使用量削減】
検討した3Rシステムは、めっき液・亜鉛を含む水洗水を減圧濃縮により、水を蒸発させ、
めっき液・亜鉛を濃縮液(再生めっき液)として分離し、水と濃縮液の両方をリサイクルす
るものである。
これにより、今までめっき本槽からの汲出し等で減少するため補給していためっき液の成
分薬品(塩化アンモニウム・光沢剤)の補給(購入)の必要が無くなる。
また、めっき加工での亜鉛の溶出に伴う減少により定期的に追加していた亜鉛板の追加量
(購入費)の削減が見込める。
(2) リデュース効果
【無排水による水処理量・汚泥発生量削減】
検討したシステムは、前述のとおりめっき液薬品(塩化アンモニウム・光沢剤)・上水・
亜鉛のリサイクルが可能なシステムであると同時に、無排水システムであることから水処理
量が削減され、めっき工程からの汚泥発生量がゼロとなる。
56
(3) その他効果
1) 高温浴への変更による冷却電力、めっき加工電力コスト削減
検討したシステムは、めっき液管理温度を現状より 10℃上昇させることにより成り立つ
システムである。
ここで、めっき液温度を 10℃上昇させることにより、今まで必要となっていた冷却に必
要な電力が削減できる。(めっき液温度はめっき加工時の通電による発熱で上昇するため、
現状冷却して管理温度を保つようにしている。
)
さらに、めっき液の温度上昇により、めっき加工に必要な電力も削減できる。
2) 無排水による亜鉛排水規制のクリア
現在、めっき水洗水は水処理施設で排水基準値以下に処理され、その水を下水道あるいは
河川に放流している。亜鉛めっきについては、部品に付着しなかった亜鉛が水洗水の排水中
に含まれており、モデル企業を含めたほとんどの企業が酸化還元・凝集沈殿による水処理に
より亜鉛排水基準(5mg/L)をクリアしている。
しかしながら、2006 年 11 月 10 日付けで「排水基準を定める省令」等の改正が公布、2006
年 12 月 11 日から施行され、水生生物保全の観点から水質汚濁防止法の亜鉛の排水基準値が
強化された。
現状、広島県内めっき業者の亜鉛の排水濃度は 2~3 mg/Lの事業所が多く、強化された
基準(2 mg/L)をクリアするための改善が必要であり、将来さらに強化され 1mg/Lとなっ
た場合は、全国の約 3 割の業者が現状の水処理方法では対応できなくなる。
検討したシステムは、めっき工程のめっき液(高価な光沢剤含む)やめっき液薬品・上水・
亜鉛等有価物を回収・リサイクル可能なシステムであり、かつ無排水クローズドシステムで
あるため、亜鉛の系外への排出をなくし、強化された亜鉛排水基準のクリアが可能となる。
57
第5章
経済性評価
前章で整理したシステム導入効果による現状からの削減コストとシステム導入により必要とな
る費用を整理し、両者を比較することで本事業の経済性を検討した。
1.3Rシステム導入による削減コスト(導入効果)
3Rシステム導入効果の中で、コスト換算可能な下表の項目について、現状必要となってい
る費用の削減が見込めることから、それぞれの削減費用を検討した。
表 5-1 3Rシステム導入効果(導入により現状から削減が見込めるコスト)
分 類
導入効果
① 水洗水リサイクル(濃
塩化アンモニウム
縮液再利用)によるめっき
リサイクル
(リユース)
液薬品使用コスト削減
光沢剤
② 水洗水リサイクル(分離水再利用)による洗浄水(上水)
使用コスト削減
③ 不溶性陽極の使用による亜鉛(板)購入コスト削減
リデュース
④ 無排水による水処理・汚泥処分コスト削減
⑤ 高温浴への変更による冷却電力コスト削減
その他
⑥ 高温浴への変更によるめっき加工電力コスト削減
(1)水洗水リサイクル(濃縮液再利用)によるめっき液薬品使用コスト削減
現状、めっき本槽では主に汲出しによりめっき液(薬品)が減少していく。
このため、定期的にめっき液成分の薬品(塩化アンモニウム・光沢剤)を補給しており、そ
の薬品購入費用が発生している。
3Rシステムの構築により、めっき液の含まれた水洗水を減圧濃縮し、濃縮液(再生めっき
液)をめっき本槽に戻して利用することで、今まで必要となっていた薬品の購入費が削減でき
る。
よって、①で塩化アンモニウム、②で光沢剤の現状年間購入費用を算定し、これをシステム
導入効果(削減コスト)として計上した。
58
1) 塩化アンモニウム
めっき液成分の 1 つである塩化アンモニウムの年間汲出量(年間減少量)をめっき液持
出量より算定し、費用計算した。
1 日のめっき液汲出量は、第 2 章の検討結果より約 78Lである。
めっき液中の塩化アンモニウム量は、モデル企業で使用しているめっき液組成から 1L
当たり 190g である。
よって、1 日当たりの塩化アンモニウムの汲出量は、
190g/L × 78L/日 ≒ 14,820 g/日
工場の年間稼動日数は約 240 日である。
よって年間汲出量は、
14,820g/日 × 240 日/年 ≒ 3,600 kg/年
ここで、塩化アンモニウム購入単価は 57 円/kg より、
塩化アンモニウムの年間購入費用(システム導入による削減コスト)は、
3,600kg/年 × 57 円/kg ≒ 200 千円/年
2) 光沢剤
めっき液成分の1つである光沢剤の年間購入費用を、下表の 4 ヶ月の使用量実績より算
定し、これをシステム導入効果(削減コスト)として計上した。
下表のとおり、光沢剤の年間購入費用(システム導入による削減コスト)は、約 7,000
千円となる。
表5-2 使用量実績
年 月
一次光沢剤
二次光沢剤
H18.10
400L
400L
H18.11
200L
400L
H18.12
400L
600L
H19.01
200L
300L
4ヶ月合計
1,200L
1,700L
年間使用量
3,600L
5,100L
単 価
800円/L
800円/L
2,880千円/年
4,080千円/年
購入金額
合 計
約7,000千円/年
(H18.10~H19.1:稼働率ほぼ 100%)
59
(2) 水洗水リサイクル(分離水再利用)による洗浄水(上水)使用コスト削減
現在、めっき工程の水洗水は上水を使用しており、給水量は時間 60Lである。
3Rシステムの構築により、めっき液の含まれた水洗水を減圧濃縮し、分離した分離水を水
洗水として再利用することで、今まで必要となっていた上水使用料が削減できる。
これをシステム導入効果(削減コスト)として計上した。
現在のめっき工程の使用水洗水量は、次のとおり年間約 317L
60L/時間 × 22 時間/日 × 240 日/年
≒ 316,800 L/年
ここで、3Rシステムとした場合も時間 7Lの上水補給が必要であるため、
削減量は、
316,800 L/年 ×(60-7)/60 ≒ 280,000 L ≒ 280 m3/年
水道料金(工業用)が 343 円/m3より、削減額は、
280 m3/年 × 343 円/m3 ≒ 100 千円/年
(3) 不溶性陽極の使用による亜鉛(板)購入コスト削減
第2章の汲出量の検討において、亜鉛の汲出量は、1 日当たり 4.25 kg
工場の年間稼動日数は、約 240 日より
亜鉛の年間汲出量は、
4.25 kg/日 × 240 日/年 = 1,020 kg/年
亜鉛購入単価を 578 円/kg(H18.12 時点)とすると、
年間亜鉛使用金額は、
1,020 kg/年 × 578 円/kg ≒ 600 千円/年
60
(4)無排水による水処理・汚泥処分コスト削減
現状、有価物を含んだめっき工程の水洗水は、水処理施設で処理されており、処理後の水は
河川に排水され、発生した汚泥は県内の公共最終処分場に運搬・処理している。
3Rシステムの構築により、めっき工程からの排水がなくなるため、これにより工場全体の
汚泥発生量は減少する。
ここでは、めっき工程からの排水で発生すると考えられる汚泥の量と処理費用を算定し、こ
れをシステム導入効果(削減コスト)として計上した。
現在の工場全体の年間汚泥排出量は、下表の 4 ヶ月の使用量実績より約 228tと推計される。
表 5-3 工場全体の汚泥処分量
年 月
汚泥処分量(t)
H18.10
15
H18.11
23
H18.12
18
H19.01
18
4 ヶ月合計
74
月平均:年平均
19t/月:228t/年
ここで対象めっきラインの工場全体に占める排水量の割合は約 10%。
また、対象ライン全体に占めるめっき工程の排水量の割合は約 25%であることから、
めっきラインでの3Rシステムの構築による汚泥削減量は、
228t/年 × 0.1 × 0.25 ≒ 6t/年
ここで、現在処分している最終処分場の汚泥処分費は、産廃税込みで 5,725 円/t、
また、水処理に係る薬品費用は約 130 千円/t、合計約 136 千円/tより、
無排水による水処理・汚泥処分コスト削減費は、
6t/年 × 136 千円/t ≒ 800 千円/年
【参考:全国的な汚泥処理効果について】
モデル企業では、脱水汚泥をキルン炉で減量化した後、最終処分している。
通常はプレスによる脱水のみの企業が多く、モデル企業に比べ汚泥処分量(重量)が多くな
り、その分処分費も高くなる。
また、広島県の公共処分場処分料金は全国の 1/2~1/3 と非常に安い設定となっているため、
その他の地域での汚泥処分削減効果はさらに大きくなると考えられる。
61
(5)高温浴への変更による冷却電力コスト削減
本検討におけるめっき3Rシステムでは、めっき浴温度を現状の 30℃から 40℃に変更する
ことで、本槽めっき液の蒸発量を増加させ、再生めっき液の返還容量を確保する工夫をした。
ここで、現状めっき浴温度を管理温度の 30℃前後に保つために、めっき加工の通電による
温度上昇を冷却機で抑えている状況である。
よって、めっき浴の管理温度を 10℃上昇させることで、冷却のための電力を削減すること
ができ、この費用をシステム導入効果(削減コスト)として計上した。
【算定条件】
以下に、めっき薬品メーカーが検討しためっき浴温度の上昇による冷却電力削減費用の検討
結果を示した。
この結果をもとに、処理量の比率からモデル企業における冷却電力削減費用を概算した。
表 5-4 高温浴に変更した場合の冷却電力削減効果参考資料
めっき材料種類
エレベーター式バレルライン
めっき液種類
塩化浴
めっき浴容量
10,000L
稼動時間
12 時間/日 、24 日/月
めっき加工での
電気抵抗による発熱
5,000A・10Vで約 1~2℃/時間 上昇
10,000A・10Vで約 3~4℃/時間 上昇
めっき浴温度
従来 25℃ ⇒ 高温浴 40℃
効 果
従 来
高温浴
コストダウン
冷却費不要
冷却用チラー電気代
90,000 円/月
水冷冷却電気代
0 円/月
90,000 円/月
参考 :薬品メーカー検討資料
【高温浴にした場合の効果(モデル企業における概算)】
表 5-5 モデル企業における冷却電力削減費用概算結果
効 果
従来→高温浴
冷却費
不 要
冷却用チラー
電気代
→電気代なし
コストダウン
モデル企業
塩化浴 14,500L
22 時間/日
20 日/月
90,000 円/月
62
モデル企業
推定コストダウン
90,000 円/月
×(22/12)(時間/日)
×(20/24)(日/月)
×12 月/年
≒ 1,700 千円/年
(6)高温浴への変更によるめっき加工電力コスト削減
現状のめっき加工設備で設置している整流器は下表の 3 台である。
ここで、めっき液温度が 10℃温度上昇するとめっき加工に必要な電力を約 1V下げること
ができることから、3Rシステムの構築により、下表の通り消費電力は約 6kW削減できる。
表 5-6 高温浴への変更によるめっき加工削減電力
整流器
現状電力
3Rシステム電力
①
4.5V × 2,000A
=9.0kW
3.5V × 2,000A
=7.0kW
②
4.5V × 2,000A
=9.0kW
3.5V × 2,000A
=7.0kW
③
4.0V × 1,800A
=7.2kW
3.0V × 1,800A
=5.4kW
電力合計
25.2kW
19.4kW
削減電力
約 6kW
よって、年間削減電力量は
6kW × 22 時間/日 × 240 日/年 ≒ 31,680 kWh
電気料金は現在、 16 円/kWhより、年間削減電力費は、
31,680 kWh × 16 円/kWh ≒ 500 千円/年
(7)3Rシステム導入による削減コスト(導入効果)のまとめ
表 5-7 3Rシステム導入による削減コスト(導入効果)
項
目
削減コスト
① 水洗水リサイクル(濃 塩化アンモニウム
縮液再利用)によるめっき 1 次光沢剤
リサイクル
(リユース)
液薬品使用コスト削減
その他
7,000 千円/年
2 次光沢剤
② 水洗水リサイクル(分離水再利用)による洗浄水
(上水)使用コスト削減
リデュース
200 千円/年
100 千円/年
③ 不溶性陽極の使用による亜鉛購入コスト削減
600 千円/年
④ 無排水による水処理・汚泥処分コスト削減
800 千円/年
⑤ 高温浴への変更による冷却電力コスト削減
1,700 千円/年
⑥ 高温浴への変更によるめっき加工電力コスト削減
合 計
500 千円/年
10,900 千円/年
63
2.3Rシステム導入のための必要コスト(導入コスト)
本システムの導入のために、新たに必要となる費用として下表の費用があげられる。
次頁以降にそれぞれの必要費用を検討した。
表 5-8 3Rシステム導入コスト
分 類
設備設置
投資項目
① 減圧濃縮装置(付帯設備含む)の購入・設置工事費
② 運転人件費
③ ユーティリティー
④ メンテナンス
品質確保
⑤ 成分調整のための不足薬品の追加
(調 整)
⑥ 不溶解陽極の購入・設置
64
(1)濃縮装置設置のために必要となる費用
第 3 章で検討した減圧濃縮装置の導入に必要なコストを算定した。
1) 濃縮装置(付帯設備含む)の購入・設置工事費
表 5-9 3Rシステム導入に必要な設備コスト
設 備
減圧濃縮装置
単 価
8,000 千円
数 量
1基
費 用
備 考
8,000 千円 耐用年数:7 年
クーリングタワー
-
-
-
既存設備を使用
ボイラー
-
-
-
既存設備を使用
冷却水ポンプ
200 千円
1基
200 千円
500 千円
3槽
1,500 千円
500 千円
2基
1,000 千円
-
2,000 千円
50m
1,000 千円
タンク
(原液・濃縮液・ドレン水)
ポンプ
(濃縮液・ドレン水)
搬入・据付工事
現地工事(配管)
試運転調整費
合 計
-
20 千円
-
-
-
-
300 千円 調整期間:5 日
14,000 千円 耐用年数:7 年
2,000 千円/年 (メーカー設定)
【設備の耐用年数について】
設備(濃縮装置)の耐用年数の設定については、法務局へのヒアリングより次の考え方
のもと設定した。
次のいずれか(①が設定されていれば①で決定、設定されていない場合は②か③)
① 法務局に相談されてメーカーが決定している耐用年数
②「固定資産の耐用年数に関する省令」の耐用年数表で該当する耐用年数
③ 実際の耐用年数(実績より)
本設備の耐用年数は、メーカー設定により 7 年とした。
65
2)運転人件費
当該設備はバッチ連続で無人運転が可能であるため人件費は計上しない。
3)ユーティリティー
必要なユーティリティーは、下表のとおりである。
表 5-10 ユーティリティー
項 目
時間当り使用量
真空ポンプ電力他
3.7 kWh
ここで電気料金を 16 円/kWh とすると、時間当たり必要金額は、59.2 円/時間
年間稼働時間は、
22 時間/日 × 240 日/年 = 5,280 時間
よって、減圧濃縮装置のユーティリティー年間費用は、
60 円/時間 × 5,280 時間/年 ≒ 300 千円/年
4)メンテナンス
水洗水が酸性であるため、主に真空ポンプヘッドの取替えが毎年必要となる可能性が
あるため、そのコストとして年間 400 千円を見込んだ。
5)減圧濃縮装置の導入に必要コスト
以上より減圧濃縮装置の導入に必要な総コストは下表のとおりである。
表 5-11 減圧濃縮装置の導入に必要コスト
項 目
a 濃縮装置の購入・設置工事費
b 運転人件費
費 用
備 考
2,000 千円/年 付帯設備含む、耐用年数 7 年
-
c ユーティリティー
300 千円/年
d メンテナンス
400 千円/年 主に真空ポンプのヘッド部分
合 計
2,700 千円/年
66
(2)めっき品質確保のために必要となる費用
1)成分調整のための不足薬品の追加
本3Rシステムにおいては、「活性炭ろ過」と「減圧濃縮時の加熱」による成分の減量
が考えられ、不足成分について薬品を補給する必要がある。
このため、成分調整方法について、今後、薬品メーカーと連携して、「活性炭ろ過」と
「濃縮液の返還」によるめっき液成分バランスの変化を実験により検証し、不足成分の補
給量、補給頻度などの調整方法を設定する必要がある。
特に光沢剤成分の減少が想定できるため、光沢剤の特性や成分分析結果等を勘案し、現
段階においては1次光沢剤の補給量を 50%、2 次光沢剤の補給量を 100%として設定した。
下表に補給に必要な費用を整理した。
表 5-12 成分調整のための不足薬品の補給費用
薬品名
現状年間必要費用
補給量
補給に必要な金額
1 次光沢剤
2,880 千円/年
50%
1,440 千円/年
2 次光沢剤
4,080 千円/年
100%
4,080 千円/年
約 7,000 千円/年
-
約 5,500 千円/年
合 計
2)不溶解陽極の購入・設置
既存設備の電流効率は、亜鉛の持出量等から判断して 70%程度である。
よって亜鉛陽極から溶解した亜鉛のうち 7 割が製品に付着し、3 割が未付着のままめっ
き液中に残っている。
現在、その亜鉛は水洗槽に徐々に汲出され、排水・水処理されることで亜鉛の増加が防
止できているが、クローズドシステムにすることにより、未付着亜鉛がめっき槽に蓄積・
増加し続けることになる。
よって、この亜鉛の増加を防止するため、亜鉛陽極量(亜鉛板)を付着割合である 7 割
に減少させ、残りの 3 割を不溶性陽極に置き換え、現状と同じ電流を流すことにより、亜
鉛がすべて製品に付着し、未付着の亜鉛がなくなることとなる。
不溶性陽極については、カーボン陽極とチタン・白金陽極の 2 種類について、現状と同
電圧で同電流が流せる条件で、概略設計・単価検討をメーカーに依頼した。
67
【置換する陽極の枚数】
現在、下図のとおり 76 籠分の亜鉛陽極が設置されており、電圧 4.0~4.5Vで約 5,800
Aの電流を流している。
同電圧で同電流が流せる不溶性陽極 1 籠分の金額は、下表のとおりである。
また、不溶性陽極の必要枚数は、現状(76 籠)の約 3 割であることから 23 枚(1 枚で
1 籠分)である。
これより、現段階では価格が安価なカーボン電極を使用する設定とし、必要コストとし
て計上した。
表 5-13 不溶性陽極設置のための必要費用
不溶性陽極種類
単 価
チタン・白金陽極
枚 数
174 千円
費 用
耐用年数
年間費用
4,002 千円
3年
約 1,300 千円
805 千円
3年
約 300 千円
23 枚
カーボン電極
35 千円
【参考 : 現状めっきラインの亜鉛板(陽極)の仕様】
① 亜鉛板の大きさ
200 mm × 130 mm × 40 mm
② めっきライン全体の亜鉛板設置個数
76 籠(2 籠×36 箇所 + 1 籠×4 箇所 = 76 籠)
1 籠 9 個入り
使用しているZn板 :9 個×76 籠=684 個
③ 流している電流・電圧
整流器は3台設置:4.5V × 2,000A、4.5V × 2,000A、4.0V × 1,800A
11
9
7
5
3
1
10
8
6
4
2
12
対象めっきラインのめっき槽
14
13
16
18
20
22
24
26
28
30
32
34
36
38
40
15
17
19
21
23
25
27
29
31
33
35
37
39
68
【参考 : チタン・白金電極 概略設計図】
69
(3)3Rシステム導入により必要となるコスト(導入コスト)
以上より、本システム導入のために新たに必要となる費用を下表に整理した。
表 5-14 3Rシステム導入により必要となるコスト
分 類
投資項目
① 減圧濃縮装置(付帯設備含む)の購入・設置工事費
② 運転人件費
設備設置
品質確保
(調 整)
費 用
2,000 千円/年
-
③ ユーティリティー
300 千円/年
④ メンテナンス
400 千円/年
小 計
2,700 千円/年
⑤ 成分調整のための不足薬品の追加費用
5,500 千円/年
⑥ 不溶解陽極の購入・設置
300 千円/年
小 計
6,000 千円/年
合 計
8,500 千円/年
70
3.経済性評価
検討結果より、本3Rシステム導入による削減コストが年間約 10,900 千円、3Rシステ
ム導入コストが 8,500 千円/年となり、年間 2,400 千円の利益(経費削減効果)が見込まれ、
経済性が確認できた。
(1) 3Rシステム導入による削減コスト(導入効果)(B)
表 5-15 3Rシステム導入による削減コスト(導入効果)
項 目
削減コスト
① 水洗水リサイクル(濃 塩化アンモニウム
200 千円/年
縮液再利用)によるめっき 1 次光沢剤
7,000 千円/年
液薬品使用コスト削減
リサイクル
(リユース)
2 次光沢剤
② 水洗水リサイクル(分離水再利用)による洗浄水
100 千円/年
(上水)使用コスト削減
リデュース
③ 不溶性陽極の使用による亜鉛陽極購入コスト削減
600 千円/年
④ 無排水による水処理・汚泥処分コスト削減
800 千円/年
⑤ 高温浴への変更による冷却電力コスト削減
1,700 千円/年
その他
⑥ 高温浴への変更によるめっき加工電力コスト削減
合 計(B)
500 千円/年
10,900 千円/年
(2) 3Rシステム導入のための必要コスト(導入コスト)
(C)
表 5-16 3Rシステム導入のための必要コスト(導入コスト)
分 類
投資項目
減圧濃縮装置(付帯設備含む)の購入・設置工事費
運転人件費
導入コスト
2,000 千円/年
-
設備設置
ユーティリティー
300 千円/年
メンテナンス
400 千円/年
品質確保
成分調整のための不足薬品の追加
(調 整)
不溶解陽極の購入・設置
合 計(C)
5,500 千円/年
300 千円/年
8,500 千円/年
71
(3)経済性評価
3Rシステムを経済性について以下に検討した。
1) 3Rシステム導入による削減コストと導入コストの比
B/C = 10,900 / 8,500 ≒ 1.28
2) 3Rシステム導入による削減コストと導入コストの差
B-C = 10,900 - 8,500 = 2,400 千円/年
3) モデル企業における導入効果
モデル企業における3Rシステム導入効果(利益)は、以下のように、全国の溶融めっき・
電気めっき業の売上高対営業利益率の約 5%を占める。
表 5-17 モデル企業における3Rシステム導入効果
項 目
備
① モデル企業売上
② 3Rシステム導入年間利益
考
9.4 億円
2,400 千円
③ 3Rシステム導入利益率
0.26 % ②/①
④ 全国平均営業利益率
5.5 %
表 5-18 の※参照(H14 年度実績)
売上高対営業利益率
③/④
⑤ 3Rシステム導入利益率の
4.7 % 3Rシステム導入による利益率は、
営業利益率に対する割合
営業利益率の約 5%を占める
表 5-18 溶融めっき業、電気めっき業の主要計数表(参考)
経営資本対営業利益率
5.9%
経営資本回転率
1.0 回
※売上高対営業利益率
5.5%
流動比率
164.7%
売上高対総利益率
26.5%
販売・管理費比率
21.0%
従業員 1 人当り年間加工高
11,912 千円
従業員 1 人当り機械装備額
2,832 千円
出展 : 中小企業の経営指標 平成 15 年度調査 /中小企業庁
72
4)経済性の成り立つ企業規模
削減コストの主なものは、光沢剤使用コスト(7,000 千円/年)と高温浴への変更による
電力コスト(2,200 千円/年:1,700+500)であり、これらは事業規模に比例する。
モデル企業(モデルライン)の事業規模が、年間めっき処理量約 31,000 千dm2/年である
ことから、
加工量 1 dm2当たりの削減コストは、
(7,000 千円/年+2,200 千円/年)/(31,000 千dm2/年)≒ 0.3 円/dm2
また、導入コストの主なものは成分調整のための不足光沢剤の追加コスト(5,500 千円/
年)で事業規模に比例し、加工量 1 dm2当たりの導入コストは、
(5,500 千円/年)/(31,000 千dm2/年)≒ 0.18 円/dm2
よって、その他の必要コストをほぼ固定と考え加工量をxdm2/年とすると、経済性が成り
立つためには、
(削減コスト:0.3x+1,700 千円/年)≧(導入コスト:0.18x+3,000 千円/年)
0.12x ≧ 1,300 千円/年
x ≧ 10,800 千dm2/年
以上より、目安として、年間めっき加工量 10,800 千dm2の企業について導入可能性が高い
(経済的に成り立つ)と考えられる。
73
第6章
検討結果のまとめとシステム導入に向けた課題
以下に、本事業の検討結果の概要とシステム導入に向けた課題を示した。
1.本事業の目的・位置付け
(1) 事業の目的
•
本調査は、今まで有効利用されていなかった、電気めっき水洗水に含まれる有価物(各
種薬剤・金属の両方)について、工場内での再生利用(リサイクル)とこれに伴うめっ
き汚泥の発生抑制(リデュース)を促進することを目的とし、市場規模の大きい電気亜
鉛めっきを対象とした「めっき水洗水からの薬剤等有価物回収システムの構築」の可能
性について調査・検討を行った。
•
さらに、亜鉛めっき業では昨年度強化された亜鉛排水基準への対応が求められており、
リサイクルとあわせて無排水クローズド化を目標とした検討を行った。
【本事業の主な目的】
① めっき水洗水に含まれる有価物の再生利用(リサイクル)と汚泥の発生抑制(リデュース)
② 無排水クローズド化システムによる強化された亜鉛排水基準への対応
(2) 事業の位置付け
•
現在、亜鉛めっき業の盛んな愛知県を中心に、構築された場合に普及性の高いクローズ
ドシステムの構築を目指し、研究・検討が進められている。(先進事例ヒアリングより)
•
上記システムは、普及性を高めるため、既存システムの大幅改良(高温浴・光沢剤の未
使用・パルス波によるめっき等)が必要となり、現状のめっき業者においては、設備の
更新時期等にあわせた大掛かりな対応が必要となる。また、構築までにしばらく時間が
かかることが想定され、
「次世代型システム」と位置付けることができる。
•
本事業は、
「次世代型システム」が完成するまでに、既存システムの軽微な改良と簡易な
設備投資により3R・クローズドが可能な「現代型システム」を検討したものである。
〔既存システム〕
〔本事業〕
既存システムの改良によ
り対応可能な現代型3R
システム
74
〔先進事例〕
既存システムの大幅改良
により普及性の高い次世
代型3Rシステム
2.現状の亜鉛めっき業の課題
(1) 有価物の未利用排出
•
めっき加工の主な工程として、
「前処理工程」、
「めっき工程」、
「クロメート工程」等があ
る。各工程では、浴槽に必要な薬品(有価物)等が入っており、めっきする部品を浴槽
内の液に浸し、処理・加工される。
•
めっき工程においては、めっき槽に、めっき液(塩化カリウム、塩化アンモニウム、光
沢剤等の薬品(有価物))が入っている。その他有価物として亜鉛陽極、水洗時の水等が
あげられる。
•
各工程では、処理・加工後に水洗工程を経て次の工程に移る。水洗方法も、水が貯めら
れた水洗用の浴槽が 2~3 個設置されており、処理・加工後の部品を浸して水洗する。
(最
後にスプレー水洗される工程もある)
•
ここで、処理・加工後の槽から水洗槽に移動するとき、部品についた薬品等有価物が水
洗槽に持込まれる。このように有価物が持込まれ蓄積された各工程の水洗水は、水処理
施設に排水・混合され、水処理(酸化還元・凝集沈殿)後の水は排水、汚泥(スラッジ)
は最終処分されている。
•
最終処分される汚泥中には薬品等の有価物が含まれており、これら有価物の有効利用(リ
サイクル)が課題としてあげられている。
(2) 強化される亜鉛排水規制
•
現在、上記の通りめっき水洗水は水処理施設で排水基準を満たすよう処理され、その水
を下水道あるいは河川に放流している。
•
亜鉛めっき業については、めっき陽極の亜鉛が排水中に含まれており、現在、酸化還元・
凝集沈殿による水処理により亜鉛排水基準はクリアできている。
•
しかしながら、2006 年 11 月 10 日付けで「排水基準を定める省令」等の改正が公布、2006
年 12 月 11 日から施行され、水生生物保全の観点から水質汚濁防止法の亜鉛の排水基準
値が強化されたため、亜鉛めっき業者はこの基準をクリアするための対策が必要となっ
た。現状、広島県内めっき業者の亜鉛の排水濃度は 2~3mg/Lの事業所が多く、強化さ
れた基準(2mg/L)をクリアするための改善が必要である。将来さらに規制が強化され
1mg/Lとなった場合は、全国の約 3 割の業者が現状の水処理では対応できなくなる。
•
そこで、有価物のリサイクルも含め、現在の水処理方法から無排水クローズド化システ
ムの構築・転換が課題となっている。
75
3.めっき3Rシステムのポイント
① めっき液量の減少(「蒸発の促進」
・めっき槽への「汲出量の削減」
)
② めっき工程の水洗水の「使用水量(給水量)の削減」
③ クローズド化による「不純物の蓄積回避」
• 本事業では、先進事例のヒアリング結果や経済性等から「めっき工程」についての3Rシ
ステムを検討した。
4.3Rシステムの構築
(1) 既存システムの改良及び新規整備点
1) めっき液量の減少促進
• めっき浴を高温浴に変更(30℃から 40℃) (改良)
• めっき工程直前のスプレー洗浄の中止
(改良)
2) めっき工程の水洗水の「使用水量の削減」
• 回収槽を水洗槽に変更
(改良)
• めっき工程スプレー洗浄量の削減
(改良)
3) クローズド化
• 濃縮装置の設置(配管含む) (新規整備)
4) クローズド化による「不純物の蓄積回避」
• 活性炭ろ過 (改良)+ 不足成分の補給 (改良)
• 不溶性陽極の併用
(新規整備)
(2) 3Rシステムの流れ(仕組み)
1) めっき液・亜鉛などの有価物を含む「回収水洗槽」の水洗水を「濃縮装置」に供給
• 供給量:15L/時、濃度(めっき液比):85%
2) 濃縮装置で水洗水を減圧濃縮
• 連続バッチ式、濃縮倍率約 2 倍、処理能力 15L/時
3) 濃縮液をめっき本槽へ返還
• 濃縮液濃度(めっき液比):約 170%
4) その他
• めっき浴のめっき液を循環・活性炭ろ過
• めっき液の成分調整
• 不溶性陽極の併用
76
【3Rシステム(案)の仕組みと導入効果】
★冷却電力量の削減
★亜鉛コスト削減
(資源有効利用)
めっき液成分調整
不溶性電極の併用
(バランス・不足分補給)
めっき液温度 40℃(10℃上昇)
スプレー洗浄中止
スプレー洗浄量減量
→蒸発量増加(濃縮液返還量増)
→持込量削減
→濃縮量削減
オーバーフロー
不溶性陽極
最終水洗槽
不足成分の補
めっき槽
回収水洗槽
ろ過装置
給によるバラ
活性炭による分解物・
ンス調整
不純金属の除去
クッショ
ンタンク
クッショ
ンタンク
●濃縮液リサイクル
第 2 水洗槽
第 1 水洗槽
濃縮装置
クッショ
ンタンク
●クローズドシステム
●分離水リサイクル
(無排水)
凡例:
★薬品コスト削減
★Zn排出規制対応
(資源有効利用)
★水処理・汚泥処分費削減
新たに設置する設備
既存システムの改良
図 6-1 3Rシステム(案)の仕組みと導入効果
77
★水コスト削減
(資源有効利用)
必要となる調整事項
【3Rシステム(案)と容量収支等】
① めっき液減少量
-6.6L/時
持込量
蒸発量
汲出量
+4.7L/時
-7.8L/時
-3.5L/時
② スプレー洗浄量
15L/時
回収水洗槽濃度
分離水 8L/時
(めっき液比)
上 水 7L/時
約 85%
不溶性陽極
最終水洗槽
めっき槽
回収水洗槽
クッショ
ンタンク
ろ過装置
第 1 水洗槽
第 2 水洗槽
② 濃縮処理量
15L/時
クッショ
ンタンク
濃縮装置
濃縮液返還量
濃縮倍率
分離水返還量
7L/時
約2倍
8L/時
(②/①)
濃縮液濃度
(めっき液比)
約 170%
図 6-2 3Rシステム(案)と容量等収支
78
クッショ
ンタンク
5.濃縮分離試験結果
(1) 濃縮試験結果概要
表 6-1 濃縮試験結果概要
真空度/加熱温度
83 kPa / 75℃
発泡性
加熱によりやや発泡性がみられた。
加熱温度をプレ試験の 65℃から 10℃高くしたことで蒸発速度が
早まり、激しく沸騰して発泡が起きたと考えられる。
濃縮試験
状況
濃縮倍率
2倍
結晶の析出なし。
白色の濁りが発生するが、温度低下により濁り消滅。
2 倍以上
濃縮倍率が 2 倍以上になると、玉状の褐色の液が発生・沈降。
3 倍で褐色の液が溜まり配管が詰まる。
室温まで冷却すると白色の結晶が発生し液は 2 層に分かれた。
(上:黄金色、下:褐色液)
(2) ハルセル試験結果
濃縮液(再生めっき液)のハルセル試験結果は、ムラなくめっきがついている良好な状態。
色・光沢の違いについては、濃縮液成分の微調整により調整可能。(薬品メーカー見解)
濃縮液
現場液(工場めっき液)
(3) 成分分析結果(濃縮による成分変化)
【濃縮液光沢剤成分D・B】
•
成分Dは光沢剤分解物を示す指標であり、蓄積によりめっき品質に悪影響を及ぼ
すが、蒸発濃縮により 2 割弱減少することが分かった。
•
光沢剤成分Bも蓄積するとめっき品質に悪影響を及ぼすが、不足するとめっきの
付きが悪くなる。蒸発濃縮の結果、濃縮液の成分Bは非常に減少していることか
ら補給による成分バランス調整が必要となる。
•
成分D・Bは通常のめっき加工により、めっき液中の光沢剤等の分解がおこり、
めっき本槽に蓄積・増加されているため、本槽ろ過により除去する必要がある。
【不純金属】
•
不純金属も蓄積するとめっき品質に悪影響を及ぼす。濃縮結果、これらはほとん
ど増加しないが、クローズドシステムにすることで徐々に本槽に蓄積されるため、
除去する必要がある。
79
6.経済性評価
(1) 3Rシステム導入による削減コスト(導入効果)(B)
表 6-2 3Rシステム導入による削減コスト(導入効果)(B)
項 目
リサイクル
(リユース)
リデュース
その他
削減コスト
① 水洗水リサイクル(濃
縮液再利用)によるめっき
液薬品使用コスト削減
200 千円/年
塩化アンモニウム
1 次光沢剤
7,000 千円/年
2 次光沢剤
② 水洗水リサイクル(分離水再利用)による洗浄水
(上水)使用コスト削減
100 千円/年
③ 不溶性陽極の使用による亜鉛(板)購入コスト削減
600 千円/年
④ 無排水による水処理・汚泥処分コスト削減
800 千円/年
⑤ 高温浴への変更による冷却電力コスト削減
1,700 千円/年
500 千円/年
⑥ 高温浴への変更によるめっき加工電力コスト削減
合 計(B)
10,900 千円/年
(2) 3Rシステム導入のための必要コスト(導入コスト)
(C)
表 6-3 3Rシステム導入のための必要コスト(導入コスト)(C)
分
類
投資項目
減圧濃縮装置(付帯設備含む)の購入・設置工事費
設備設置
品質確保
(調
整)
運転人件費
導入コスト
2,000 千円/年
-
ユーティリティー
300 千円/年
メンテナンス
400 千円/年
成分調整のための不足薬品の追加
不溶解陽極の購入・設置
5,500 千円/年
300 千円/年
合 計(C)
8,500 千円/年
80
(3) 経済性評価
検討結果より、本3Rシステム導入による費用削減額が年間約 10,900 千円、3Rシステム
導入コストが 8,500 千円/年となり、経済性が確認できた。
1) 経済性評価
① 3Rシステム導入による削減コストと導入コストの比
B/C = 10,900 / 8,500 ≒ 1.28
② 3Rシステム導入による削減コストと導入コストの差
B-C = 10,900 - 8,500 = 2,400 千円/年
③ モデル企業における導入効果
モデル企業における3Rシステムの導入による利益は、全国の溶融めっき・電気めっ
き業の売上高対営業利益率の約 5%を占める。
2)経済性の成り立つ企業規模
目安として、年間めっき加工量 10,800 千dm2の企業について導入可能性が高い(経済的に
成り立つ)と考えられる。
81
7.システム導入に向けての課題
システム導入に至るまでには以下のような課題が残っており、今後薬品メーカー等との連携
を図りながら、以下に示す課題を検証していくことが必要である。
【既存システムの変更における課題】
① 高温浴への変更によるめっき液組成調整に伴うめっき品質の影響確認
② めっき工程直前水洗工程のスプレー洗浄の中止に伴うめっき品質の影響確認
③ めっき水洗工程のスプレー水洗量の削減に伴うめっき品質の影響確認
【減圧濃縮及びクローズドシステム構築における課題と対応策】
① 濃縮液の返還によりめっき本槽蓄積する光沢剤分解物の活性炭除去効果の確認
② 濃縮液の返還により増加する不純金属(主に鉄)の活性炭除去効果の確認
③ 濃縮液の返還により増加する亜鉛の不溶性陽極併用による増加回避効果の確認
④ 減圧濃縮・活性炭除去による光沢剤成分バランス変化の確認と調整方法の設定
⑤ 減圧濃縮・分離によりアルカリ性となる分離水を使用した水洗でのめっき品質影響確認
各課題の概要について以下に説明した。
(1) 既存システムの変更における課題
本検討では、3Rシステム構築のため 3 点の既存システム変更を提案した。
このため今後、システム導入に向け次のような検証が必要となる。
1) 高温浴への変更によるめっき液組成調整に伴うめっき品質の影響確認
既存ラインにおける現状のめっき液管理温度は、30±3℃である。
めっき液温度が管理温度より上昇すると、めっき液中の光沢剤の溶解不良や電解消耗量の
増加等が原因で、めっきの光沢が出なくなる。
このため、現在はめっき加工での発熱による温度上昇に対し、冷却して管理温度に保つこ
とでめっき品質を確保しており、これらはめっき業者と薬品メーカーが連携し、薬品メーカ
ーの主導のもと管理されている。
本検討では、めっき液温度を 40℃に上げることでめっき本槽の液蒸発を促進させ、3Rシ
ステムを構築する提案をしている。
このため薬品メーカーと連携し、既存のめっき液を 40℃で品質の確保できる組成に調整す
る必要がある。(薬品メーカーは、現段階ではトライアルにより調整可能との見解)
82
2) めっき工程直前水洗工程のスプレー洗浄の中止に伴うめっき品質の影響確認
既存ラインにおいては、めっき工程直前の水洗工程でスプレー洗浄を行っている。
本検討において、スプレー洗浄によりめっき槽への持込量が多くなっていることが判明し
たため、3Rシステムではスプレー洗浄を中止し、めっき本槽の液量を減少させることで容
量収支バランスを調整する提案をしている。
このため本検討で、スプレー洗浄を行わない場合のめっき品質への影響について、現状の
品質が確保できることを確認した。
システム導入にあたっては、1)のとおりめっき液組成を微調整するため、調整後のめっき
液での加工による影響を念のため再確認する必要がある。
3) めっき水洗工程のスプレー水洗量の削減に伴うめっき品質の影響確認
既存ラインにおいては、めっき加工後、回収槽と第 1・第 2 水洗槽で水洗し、最終的にスプ
レー洗浄している。スプレー洗浄の量は、1 ラックあたり 1 分間で 1L(時間 60L)である。
3Rシステムの検討においては、給水された水洗水を第 2(最終)水洗槽から回収槽へを水
洗槽までオーバーフローさせ、回収槽の水洗水を減圧濃縮装置で濃縮し、濃縮液をめっき液、
分離水を洗浄水としてリサイクルする計画である。
ここで本検討においては、水洗水の給水量(スプレー洗浄量)を現在の時間 60Lから 15L
に減少させることを提案した。
このため、給水量を時間 15Lに減少させた場合のめっき品質への影響について、現状の品
質が確保できることを確認した。
システム導入にあたっては、1)のとおりめっき液組成を微調整するため、調整後のめっき
液での加工による影響を念のため再確認する必要がある。
(2) 減圧濃縮及びクローズドシステム構築における課題と対応策
1) 濃縮液の返還によりめっき本槽に蓄積する光沢剤分解物(成分D)の活性炭除去効果の確認
めっき液中の光沢剤の主な成分(A~D)のうち、成分Dは光沢剤の分解による不純物で
あり、この量が増加するとめっき品質が悪化する。
成分Dは、めっき加工により増加し本槽で蓄積される。本3Rシステムを構築した場合、
これが回収槽に汲出され、その水洗水を濃縮し本槽へ返還するため、本槽の成分Dは増加
し続けることとなる。
一方、成分Dは減圧濃縮時の加熱で 50%程度減少することが分かった。
よって、めっき本槽で蓄積される成分Dを定期的に除去することで、めっき品質は確保さ
れる、その除去方法として「活性炭除去」が有効と考えられる。
今後システム導入にあたっては、除去率が高く経済的な活性炭の選定やそれによる除去率
等を試験により確認し、除去頻度等最適な調整方法を設定する必要がある。
83
2) 濃縮液の返還により増加する不純金属(主に鉄)の活性炭除去効果の確認
鉄・銅・鉛等の不純金属は、主にめっき材料から溶け出しめっき液中に蓄積され、めっき
品質に悪影響を与える。
よって、本システムでは 1)と同様活性炭により成分Dとともに除去することを提案した。
今後システム導入にあたっては、除去率が高く経済的な活性炭の選定やそれによる除去率
等を試験により確認し、除去頻度等最適な調整方法を設定する必要がある。
3) 濃縮液の返還により増加する亜鉛の不溶性陽極併用による増加回避効果の確認
現在、めっき加工においては亜鉛陽極から溶けだした亜鉛の約 7 割が部品に付着し、残り
の約 3 割がめっき液中に残って回収槽に汲出されている。
3Rシステムを構築した場合、回収槽に汲出された亜鉛が濃縮装置をとおしてめっき本槽
に返還され、本槽の亜鉛量が増加し続けることとなるため、本検討では既存の亜鉛陽極の一
部(3 割分)を「不溶性陽極」に置き換え、併用することを提案した。
今後システム導入にあたっては、実験等により最適な置換割合、不溶性陽極の種類等を検
証する必要がある。
4) 減圧濃縮・活性炭除去による光沢剤成分バランス変化の確認と調整方法の設定
本検討では、濃縮液の成分分析結果より、めっき液が混入している水洗水を減圧濃縮装置
で加熱することでめっき液成分バランスが崩れることが判明した。
また、1)
・2)で示しためっき液の「活性炭ろ過に」によっても必要成分が減少し、成分
バランスが崩れることが考えられる。
よってシステム導入にあたっては、薬品メーカーと連携して、「活性炭ろ過」と「濃縮液
の返還」による光沢剤成分バランスの変化を実験により確認し、不足成分の補給量、補給頻
度などの調整方法を設定する必要がある。
5) 減圧濃縮・分離によりアルカリ性となる分離水を使用した水洗でのめっき品質の影響確認
本検討では、減圧濃縮により分離された分離水(凝縮水)の成分分析結果より、分離水の
pHが 11 程度のアルカリ性になることが判明した。
検討では、この分離水を水洗水としてリサイクルする計画であり、このアルカリ性の水で
水洗することによるめっき品質への影響が懸念される。
よってシステム導入にあたっては、分離水での水洗がめっき品質に影響を与えないことを
確認する必要がある。
現状、ジンケート浴でのめっき加工において、一般的にpH11 以上のアルカリ性の水洗
水で水洗されていることから、現段階では本システムにおいてもめっき品質への影響は少な
いと考えている。
84
【
参
考
資
料
】
【めっき業におけるリサイクル先進事例調査】
本めっき水洗水3Rシステムの検討に先立ち、めっき業で今まで取り組まれてきたリサイク
ル事例を調査し、課題やポイントを整理した。
調査は、最初に既存資料調査として「出願特許」、「文献調査」、「濃縮メーカー調査」を実施
した。
次に既存資料調査から、本検討の参考になると考えられる事例を抽出し、企業及び研究機関
への詳細なヒアリング調査を実施した。
1.既存資料調査
(1)出願特許調査
めっき水洗水3Rシステムを検討するにあたり先進研究事例を特許調査により把握した。
特許は、特許電子図書館ホームページで調査し、関連キーワードとして「めっき」・「水洗
水」・「めっき水洗水」・「リサイクル」・「蒸発濃縮」を設定して、これらの組み合わせで検索
した。
検索結果の中で、本検討の参考となりうる主な特許をグレーハッチで示した。
1) キーワード検索結果
【キーワード:めっき・水洗水/全て含む】(1)
項 番 公開番号/登録番号
1
2
3
4
出願年
発明の名称
出願人
特許公開2005
ニッケルめっき工程における水 愛知県
平成 17 年
-248308
洗水からのニッケル回収方法
株式会社中央製作所
特許公開2005
平成 17 年 めっき皮膜用表面処理剤
-226136
無電解銅めっき水洗水の処理方
特許公開2005
平成 17 年 法及びそれに使用する活性炭の
-111296
再生方法
特許公開2005
ニッケルめっき工程におけるニ
平成 17 年
-29874
ッケル回収方法及び回収装置
ダイキン工業株式会社
独立行政法人産業技術総
合研究所
三菱商事株式会社
愛知県
株式会社中央製作所
5
特許公開2004
連続式めっき装置における水洗
平成 16 年
株式会社中央製作所
-270003
装置
6
特許公開2004
平成 16 年 めっき皮膜用表面処理剤
-217950
7
特許公開2003
アルカリ性亜鉛系電気めっき方
平成 15 年
日本表面化学株式会社
-306799
法
8
特許公開2003
有機酸を含有するめっき排水の
平成 15 年
日本表面化学株式会社
-293157
処理方法
9
特許公開2003
セラミックス電子部品の製造方
平成 15 年
株式会社村田製作所
-86450
法
10
特許公開2000
パラジウム含有液からのパラジ 同和鉱業株式会社
平成 12 年
同和ハイテック株式会社
-192162
ウム回収方法
資料-1
ダイキン工業株式会社
【キーワード:めっき・水洗水/全て含む】(2)
項 番 公開番号/登録番号
出願年
発明の名称
出願人
11
特許公開2000
平成 12 年 不活性雰囲気めっき方法
-169970
安部 可伸
12
特許公開2000
平成 12 年 無電解めっき装置
-160349
株式会社荏原製作所
13
特許公開2000
平成 12 年 鋼帯の連続表面処理設備
-107669
新日本製鐵株式会社
14
特許公開平11
-310900
15
特許公開平11
-253968
16
特許公開平11
-229198
17
特許公開平11
-172497
18
特許公開平11
-128993
19
特許公開平11
-71696
20
特許公開平9
-285800
21
特許公開平9
-202994
平成 9 年
電気めっき装置
22
特許公開平9
-195087
平成 9 年
外観均一性に優れた反応及び
電解クロメート処理鋼板の製 新日本製鐵株式会社
造方法
23
特許公開平8
-299963
平成 8 年
シアン含有水の処理方法
ペルメレック電極株式会社
24
特許公開平7
-86725
平成 7 年
印刷配線板の製造方法
日立化成工業株式会社
25
特許公開平6
-336700
平成 6 年
貴金属シアン浴めっき廃水及 ペルメレック電極株式会社
び水洗水の処理方法
イビデン株式会社
26
特許公開平6
-304574
平成 6 年
めっき廃液の処理方法
27
特許公開平6
-212489
平成 6 年
耐食性材料のめっき前処理方
田中貴金属工業株式会社
法
28
特許公開平5
-305785
平成 5 年
印刷版用アルミニウム支持体
富士写真フイルム株式会社
の表面処理方法
29
特許公開平5
-98466
平成 5 年
ニツケル-クロムめっき方法
荏原ユージライト株式会社
及びこれに用いる装置
二次成形品の電気亜鉛めっき 株式会社三進製作所
法
ユケン工業株式会社
日立化成テクノプラント株
平成 11 年 用水回収装置
式会社
株式会社日立製作所
平成 11 年
平成 11 年 プリント配線板のめっき装置
めっき水洗水からの金属回収
方法
クロムめっきにおける不純物
平成 11 年 回収電気分解槽に沈殿したス
ラッジの無害化方法
二次成形品の電気亜鉛めっき
平成 11 年
法
クロムめっき液不純物回収電
平成 9 年 気分解槽に沈澱したスラッジ
の無害化方法
平成 11 年
資料-2
富山日本電気株式会社
新日本製鐵株式会社
新日本製鐵株式会社
ユケン工業株式会社
日英ハードクローム工業株
式会社
日立電線株式会社
日立造船株式会社
【キーワード:めっき水洗水・リサイクル/いずれか含む/(詳細)水洗水】
(他キーワードで検索済みのものは除外)
項 番 公開番号/登録番号
30
31
32
33
出願年
発明の名称
出願人
株式会社シティー・ネット
特許公開2005
バイオガス発生装置及びバイ
株 式 会 社 長野 エ ム ・ アン
平成 17 年
-125185
オガス発電システム
ド・エーセンター
旭化成株式会社
特許公開2003
電着塗料の回収方法及び回収
平成 15 年
日産自動車株式会社
-342794
装置
日本ペイント株式会社
特許公開2003
キャタリスト処理液のリサイ
平成 15 年
安達 隆昭
-201572
クルシステム
ウーファウカー・エンジニ
特許公表2006
金属酸洗い浴をリサイクルす ア リ ン グ ・ゲ ゼ ル シ ャフ
平成 18 年
-512478
るための方法及び装置
ト・ミト・べシュレンクテ
ル・ハフツング
【キーワード:蒸発濃縮・めっき/全て含む】
(他キーワードで検索済みのものは除外)
項 番 公開番号/登録番号
出願年
発明の名称
34
特許公開2004
平成 16 年 廃液処理方法
-66130
35
実用新案公開平6
-12476
平成 6 年
出願人
株式会社日立コミュニケーショ
ンテクノロジー
日陽エンジニアリング株式会社
めっ き浴液の蒸 発濃 縮
株式会社中央製作所
並びに蒸発水回収装置
資料-3
2) 主な特許の概要(グレーハッチの特許。めっき水洗水のリサイクル)
番号
発明の名称/出願人
要 約
【課題】装置を大型にすることなく水洗水中のニッケルをほぼ
ニッケルめっき工程
1
全て回収、再利用することができるニッケルめっき工程におけ
る水洗水からのニッケル回収方法を提供する。
における水洗水から 【解決手段】ニッケルめっき後の水洗水にアルカリを加えてp
のニッケル回収方法 H調整し、水洗水中のニッケルイオンを水酸化ニッケルとする
工程と、生成した水酸化ニッケルを水洗水から分離する工程と、
愛知県
分離した水酸化ニッケルを溶解してニッケルを回収する工程と
株式会社中央製作所
からなる、ニッケルめっき工程における水洗水からのニッケル
回収方法において、水酸化ニッケルを水洗水から分離する工程
より前に、水洗水に珪藻土を添加する工程を加えた。
3
【課題】 プリント基板工場等から排出される無電解銅めっき水
無電解銅めっき水洗 洗水に含まれるEDTA及びその分解生成物からなるCOD成
水の処理方法及びそ
れに使用する活性炭 分及び銅を効率よく除去できる処理方法を提供する。
【解決手段】 プリント基板工場等から排出される、無電解銅め
の再生方法
っき水洗水の処理方法において、該水洗水を活性炭処理して、
独立行政法人産業技
それに含まれるEDTA、その分解生成物からなるCOD成分
術総合研究所
及び銅を活性炭に吸着させる。それに使用する活性炭をアルカ
三菱商事株式会社
リ及び酸で再生する。
【課題】 二次成形品に電気亜鉛めっきを行う際に、排水の流出
二次成形品の電気亜 を防止し完全なリサイクル・クローズド化を可能とするめっき
法を提供する。
鉛めっき法
【解決手段】 各処理工程において、ほぼ 70℃の高温溶液を用
14
株式会社三進製作所
ユケン工業株式会社
いるとともに、個別的に大気蒸発装置を用い、各工程内でリサ
イクル可能とし、各工程の出側には多段の水洗を行う単一の水
洗槽を設け、さらに亜鉛めっきでは、めっき電流としてパルス
電源を用いてめっきを行う。
【課題】 電気めっき鋼板製造ラインでのめっき後の水洗水に含
17
まれる有用金属である、例えばニッケルを効率良く、かつ安定
めっき水洗水からの して回収することが可能な金属回収商法を提供すること。
金属回収方法
【解決手段】 電気めっき設備において、めっき後の水洗水を処
理するイオン交換樹脂塔入側に濃度検出器及び流量計を配設
新日本製鐵株式会社
し、該イオン交換樹脂の吸着から溶離への切り替えタイミング
を濃度と流量の積算値によって決定することを特徴とするめっ
き水洗水からの金属回収方法。
二次成形品の電気亜
19
鉛めっき法
【課題】 二次成形品に電気亜鉛めっきを行う際に、排水の流出
を防止し完全なリサイクル・クローズド化を可能とするめっき
法を提供する。
【解決手段】硫酸亜鉛めっき浴に二次成形品を浸漬し、めっき
ユケン工業株式会社
電流としてパルス電源を用いてめっきを行う。
資料-4
番号
発明の名称/出願人
要 約
31
【課題】 本発明は、カチオン電着塗装の最終水洗槽の廃水を膜
濾過装置で処理し、濃縮液を塗料として回収すると共に濾過液
を水洗水としてリサイクルするに際し、廃水の濃度や塗装工程
電着塗料の回収方法 の稼動条件の変動及び電着槽の液面の変動等があっても効率的
及び回収装置
に濃縮可能な電着塗料の回収方法及び回収装置を提供すること
を可能にすることを目的としている。
旭化成株式会社
【解決手段】 最終水洗槽5から排出される廃水を第1の膜濾過
日産自動車株式会社
装置Cの1次濃縮タンク6に受け入れながら1次濃縮し、該1
日本ペイント株式会
次濃縮タンク6の濃縮液を全量、第2の膜濾過装置Dの2次濃
社
縮タンク8に導き、該第2の膜濾過装置Dで2次濃縮した後、
該2次濃縮タンク8の濃縮液を電着槽1に返送するように構成
したことを特徴とする。
33
本発明は、水洗浴と空気洗浄器とを含む金属酸洗い浴をリサイ
クルする方法に関する。該方法は、a)リサイクリング工程の
前に、処理される廃液流中の遊離酸が金属塩の形態に変換され
金属酸洗い浴をリサ ること、b)濃縮金属塩溶液を得るために、ほぼ酸を含まない
イクルするための方 該得られた金属塩溶液から水が分離されること、及びc)金属
法及び装置
酸化物と遊離酸とを得るために、該濃縮金属塩溶液が熱的方法
504319633 にかけられることを特徴とする。本発明は、対応する装置にも
関する。本発明の方法及び装置は、一定の酸の回収を可能にし、
また、操作費用を下げつつ、金属酸化物の生産を有意に増加さ
せることができる。
34
【課題】プリント配線板等の製造工程などで発生した廃液より
成分1と成分2を効率よく取り出すことができる廃液処理方法
を提供する。
【解決手段】温度を上昇させても水への溶解度が一定である成
廃液処理方法
分1と、成分1よりも水への溶解度が高く、温度上昇に従って
水への溶解度が上昇する成分2を主成分とする廃液を濃縮槽1
株式会社日立コミュ 5内で高温に加熱して蒸発濃縮処理を行うに当り、まず濃縮槽
ニケーションテクノ
15を洗浄した後、濃縮槽15へ廃液を供給して濃縮槽15内
ロジー
で加熱することにより最初に飽和溶解度に到達する成分1中の
日陽エンジニアリン
飽和溶解度以上の結晶を、脱液用空気及び蒸気により脱液しな
グ株式会社
がら濾過手段17により結晶として取り出し、次に廃液に含ま
れる成分2が加熱温度で飽和溶解度に達する前に冷却して、冷
却温度で飽和溶解度に到達し結晶化した成分2を脱液しながら
濾過手段17により結晶として取り出すことを特徴とする。
35
【目的】 めっき浴槽から発生する水蒸気及びミストを回収し、
無色の気体として大気中へ放出することができ、クロムミスト
めっき浴液の蒸発濃 の完全除去及び大気中への水分の放出量を減少させることがで
縮並びに蒸発水回収 きるめっき浴液の蒸発濃縮並びに蒸発水回収装置を提供する。
装置
【構成】 めっき浴槽1から発生する水蒸気及びミストを含む気
体をめっき浴液と接触させて蒸発濃縮する蒸発濃縮部6の後段
株式会社中央製作所 に、クーラー18 を備えた水シャワー式のスクラバ6を接続し、
ここで回収された水を水洗回収槽3を介してめっき浴槽1へ戻
す。
資料-5
(2) 文献調査
めっき水洗水3Rシステムを検討するにあたり、参考となる文献を調査した。
1) 関連する文献
項番
年 月
文献名
著 者
1
昭和 63 年 3 月
再資源化技術の開発状況調査報告書 財団法人クリーン・ジャパン・
センター(国庫補助事業)
(金属等を含む廃棄物)
2
平成 9 年
表面技術 Vol.48、No2、1997
電気めっき浴の再生技術
星野
3
平成 11 年
表面技術 Vol.50、No12、1999
無排水処理エコプレーティング
名古屋市工業研究所
久米 道之
4
平成 16 年 3 月
経済産業省製造産業局非鉄金
めっきスラッジのリサイクルに関す
属課
る実態調査
全国鍍金工業組合連合会
5
平成 16 年 5 月
高濃度産業排水処理・リサイクルの 株式会社東レリサーチセンタ
最新技術動向
ー
6
平成 17 年
環境と協奏する亜鉛めっきシステム
名古屋市工業研究所
の開発
7
平成 17 年 3 月
めっきスラッジのリサイクルに伴う
九州経済産業局
モデル循環システムの調査研究
芳明
2) 文献の概要
番号
1
2
文献名
概要・ポイント
本報告書の中では、電気めっき工業・表面処理工業につ
再資源化技術の開発状況
いての使用有害物の処理・再利用の現状が報告されている。
調査報告書
検討項目は、工業の概要、めっき工程の特徴、めっき薬
(金属等を含む廃棄物)
剤と有害物質、排水処理と回収再利用、問題点などである。
電気めっき浴の再生技術
近年、循環型経済社会及び持続可能な発展を目指すこと
が求められており、めっき技術においても環境負荷低減を
進めるとともに省エネ省資源のための工程内でのめっき浴
の濃縮回収法及びめっき浴の再生技術の両方を確立させる
ことは大きな意義がある。
本文献では、継続的な工程内でのめっき浴の濃縮回収法
及びめっき浴の再生技術の確立と改善活動に取り組むポイ
ントが紹介されている。
資料-6
番号
文献名
概要・ポイント
3
本文献では、筆者が国際共同研究を通して、良好な地球
環境の保全、資源・エネルギーの有効利用の観点から、湿
式めっきプロセスのあるべき姿として提案するに至った無
排水処理めっきについて、その考え方、筆者が実際に訪問
無排水処理エコプレーテ
し、見聞したドイツにおける実施例、及び筆者らが提案し
ィング
たラック式亜鉛めっきへの適用について紹介されている。
・無排水処理めっきの考え方
・ドイツにおける無排水処理めっきの実施例
・無排水処理めっきのラック式亜鉛めっきへの適用 等
4
本報告書では、めっきスラッジの排出等に関する実態調
査を行い、リサイクルの推進を妨げている要因等を明らか
にした上、めっきスラッジのリサイクルに関して実現可能
めっきスラッジのリサイ
な方法について検討されている。
クルに関する実態調査
リサイクル方法としては、スラッジ中の金属を抽出精錬
する山元還元だけでなく、製品原料化についてもめっきス
ラッジが利用できる方法の調査が行われている。
5
本文献は、全国の有力めっき業者 400 社について、ヒア
高濃度産業排水処理・リ
リング、電話取材、アンケート等により各社のデータが整
サイクルの最新技術動向
理され、めっき業界の現状の動向が分析されている。
6
めっき工程からの排水やスラッジをなくすためにはめっ
き浴を循環させ再利用を図る必要があり、そのための無排
水処理めっきシステム開発が望まれる。
一方、このようなめっきシステムによって得られる亜鉛
めっきが従来の亜鉛めっきと同等以上の特性を有する必要
環境と協奏する亜鉛めっ
があり、このような特性を得るためには無排水処理亜鉛め
きシステムの開発
っきプロセスに適しためっき浴組成及び電解条件の最適化
を行う必要がある。
本文献は、無排水処理亜鉛めっきを行うための亜鉛めっ
き浴組成及び最適なパルス電解条件の検討と同時に無排水
処理亜鉛めっきシステムの検討結果が報告されている。
7
本報告書では、めっきスラッジのリサイクルを阻害して
いるクロム、スズなどの重金属分離・除去方法や処理コス
めっきスラッジのリサイ
トの改善等の課題を解決するため、めっきスラッジからの
クルに伴うモデル循環シ
金属資源の回収を高めていくための処理方式、不要な重金
ステムの調査研究
属の除去と有用な金属回収及びスラッジ資源化等の調査・
検討が行われている。
資料-7
(3) 濃縮メーカー調査
既存資料調査や学識者のアドバイスにより、本システムに適した濃縮・分離方法を「蒸発
方法」と考え、蒸発濃縮装置を製作しているメーカーをインターネット等より検索し整理し
た。
1) インターネット検索(キーワード:濃縮、分離、廃液、再利用)
番号
メーカー
1
株式会社三進
製作所
愛知県
減圧型濃縮
2
株式会社ササ
クラ
大阪市
蒸発濃縮
3
株式会社SPF 名古屋市 真空濃縮
4
大和化学工業
株式会社
大阪市
減圧脱水乾燥
5
新東ブレーダ
ー
愛知県
濃縮処理
6
荏原製作所
大阪市
濃 縮
7
高橋金属株式
会社
滋賀県
減圧蒸発
8
オーカワラ
静岡県
ヒーポンフラ 遠心効果により発泡とミストの飛散を防止
ッシュエバポ し、液・蒸気の分離性能が高い
9
神鋼エンジニ
アリング&メン
テナンス
神戸市
蒸発濃縮
熱源は蒸気、温水いずれでも可能
10
株式会社ジー
ベック
大阪市
熱分解式・
廃液蒸発濃縮
沸点差を利用した廃液蒸発・濃縮装置
所在地
分離方法
概 要
希釈液の水分を所定濃度まで濃縮回収する
と同時に、蒸発させた水を復水して再利用。
低価格で省スペースコンパクト化を実現
老化液を結晶缶及び遠心分離機で結晶物と
して回収し、メッキ液として再利用。凝縮水
も水洗水として再利用(大規模装置が得意)
蒸発缶内面に、独自に開発したクラッド法に
より新金属を自由にクラッドできる。
スラッジを出さないリサイクル機器として、
エッチング液、クロム・ニッケル・銅・銀め
っき液などの回収に広く活用。
廃液を反応釜で蒸留・脱水し、濃縮する。
減圧することで沸点を下げる。
蒸発分離方法により廃水を効率的に処理。蒸
留水は再利用が可能
低温で沸騰蒸発
ヒートポンプ技術を応用
洗浄廃液を 10~100 倍に濃縮。低温蒸発によ
り濃縮槽やヒーターのスラッジ付着を防止。
2) その他文献(「高濃度産業排水処理・リサイクルの最新技術動向」p301)より
番号
メーカー
所在地
分離方法・装置
11
木村化工機株式会社
兵庫県
自己蒸気圧縮型(液膜流下式)、多重効用缶
12
株式会社日阪製作所
東大阪市
13
神鋼パンテック株式会社
神戸市
ヒートポンプ式真空蒸発装置
14
西村鉄工所
佐賀県
CDドライヤー
15
APV株式会社
東京都
各種エバボレーター、蒸発昌折装置
16
日立造船株式会社
東京都
多重効用蒸発濃縮缶、TS標準型
17
オカドラ株式会社
横浜市
サイクロンドライヤー
各種乾燥、蒸発濃縮装置
資料-8
(4) 資料調査によるめっきリサイクル課題整理
1) 今までの主なめっきリサイクル事例との違い(本事業の方向性)
金属回収については、回収する金属の単価が低い場合、経済性が成り立たちにくい。山元
還元法では、不純物質の除去や金属含有率の向上など、精錬所の受入条件に適合させるため
の処理コストや運搬コストが高く、受入金額も低いため経済性が成り立ちにくいようである。
本事業は亜鉛回収の他、比較的単価の高い薬品(光沢剤)・亜鉛を含むめっき液と水を回
収し、同工程内でリサイクルするため、金属回収のみに比べ経済性を追求できる事業である。
2) 亜鉛めっきリサイクル・クローズド化の課題
【システム全般の課題】
• めっきシステム全体での水(収支)容量を一定にしなければならない。
• システム全体の水容量を減少させる目的のため減圧濃縮装置を用いる。
• リサイクル・クローズド化の実現に一番問題となるのが、水洗水確保のためのめっき
液濃縮化技術、つまり高浴温めっき技術である。
• 可能な限りめっき浴組成は単純な組成であることが望まれる。
• システムを連続的に稼動させるためには、めっき浴の管理、とりわけ添加剤の管理を
行う必要がある。
• システムによって得られる亜鉛めっきが従来の亜鉛めっきと同等以上の特性を有する
必要がある。
(亜鉛めっき被膜の外観、耐食性評価、亜鉛めっき被膜の硬度)
• 分離した水の亜鉛イオン濃度を知ることは、水の再利用を図る上で重要。
【濃縮技術の課題】
• 実用的な濃縮化技術が見られず実用化に至っていない。
• めっき浴を減圧濃縮する際、スラッジの発生や発泡性の有無が重要。
(濃縮装置故障の
原因)
【添加剤の課題】
• めっき浴の循環再利用を考慮すると多くの種類の市販添加剤を加えためっき浴を循環
再利用することは組成が不明なため困難。
• めっき操業の稼働とともに有機添加剤の電気分解生成物が生成・蓄積し、めっき性能
に障害を生ずる。多くの場合、短期間においてめっき液を更新する必要が生じた。
• 有機添加剤が高浴温に耐えられず、光沢性、付き回り性等のめっき性能が大きく低下
する。
• 減圧濃縮を行ってもスラッジの発生や発泡性の問題が生じない添加剤の選定が重要。
【蓄積による課題】
• めっき液の汲出しが無いため亜鉛濃度が上昇し続け、液管理が困難となる。
• 炭酸根が蓄積し続け、通電性の低下、槽底析出、さらには処理物上への付着等の問題
を生ずる。
資料-9
2.ヒアリング調査
(1) 目 的
本事業の検討の参考とするため、既存資料調査より本検討の参考となる研究をしている企
業・研究機関を抽出してヒアリングを実施し、めっきリサイクル・クローズド化の課題やポ
イントなどを詳細に把握した。
(2) ヒアリング実施箇所及び実施日
ヒアリングは、既存資料調査から特に本事業検討の参考になると考えた下表の企業に対し
て実施した。
ヒアリング実施箇所
実施日
所在地
抽 出
区 分
抽出ポイント
亜鉛めっきの無廃水処理システムについて研究
されている。
名古屋市工業研究所
平成 18 年
11 月 13 日(月)
愛知県
名古屋市
文 献
めっきシステム全体での水(収支)容量を一定
にするため、システム全体の水容量減少させる
目的で減圧濃縮装置を用いられており、本検討
の参考になると考えた。
電気亜鉛めっきのリサイクル・クローズド化シ
ステムの特許を出願。
ユケン工業株式会社
(薬品メーカー)
平成 18 年
11 月 14 日(火)
特許ではめっき浴でのクローズド化に関する問
愛知県
刈谷市
特 許
題点が整理されており、硫酸亜鉛めっき浴で有
機添加剤を用いることなくパルス電流を用いた
新たな電気亜鉛めっき法によるクローズドシス
テムを提案されている。
以上より本検討の参考になると考えた。
「めっき浴液の蒸発濃縮並びに蒸発水回収装
株式会社中央製作所
(めっき設備メーカー)
平成 18 年
11 月 14 日(火)
置」で特許申請されている。クロムめっき浴か
愛知県
名古屋市
特 許
文 献
らの水蒸気・ミストを回収・濃縮し、めっき浴
に戻すシステムであり、本検討におけるクロー
ズドシステムの考え方・ポイントが調査できる
と考えた。
資料-10
(3) ヒアリング結果
1) 名古屋市工業研究所
(名古屋市工業研究所)No.1
項 目
ヒアリング内容
めっきクローズ
• 名古屋は自動車産業が盛んで、めっき業のうち亜鉛めっきが 60~70%を占め
ドの取り組み
ている。亜鉛めっきのクローズド化については、愛知県周辺でめっき組合等と
共同で 10 数年前から検討している。
• 15・16 年度に補助事業、17 年度は単独事業により、パルス波によるめっきク
ローズドシステムを検討している。
• 今年度から 3 年間、地域コンソーシアムで「無排水処理」を継続研究する予定。
主としてめっき業者 5~6 社、電源・プラント・薬品メーカーが連携し、全鍍
連も参画している。
• 亜鉛の排水基準が強化されたが、めっき業者が対応できないと成立しない。
めっき浴
• 現在はジンケート浴が主流。
• ジンケート浴と酸性浴は 3 価クロメートの付きがよい。
(シアン浴はうまくつかない)
濃縮方法
• 濃縮には大きく次の二つがある。
① 減圧濃縮
② 大気濃縮(めっき温度が高い場合に適している。めっき液の温度を上げて
網目を伝って液を落下させ、そこに風を送りつけて濃縮する。時間がかか
るがコストは安い。
)
資料-11
(名古屋市工業研究所)No.2
項 目
次世代亜鉛
めっきシステム
ヒアリング内容
【システムのポイント】
• 普及性を考えてシステム構築する必要がある。
・液組成をシンプルにし、リサイクル時の管理を容易にする。
(添加剤の入っていない薬剤を使用(開発)。市販のものでは難しい)
・添加剤を使わずめっき品質を確保するためのめっき方法を工夫する。
(パルスめっき)
・減圧濃縮により、容量の収支を調整する。
【システム概要】
• 液組成を簡単にするため市販の液を使用していない。添加剤としてはポリエチ
レングルコール及び安息香酸カリウムを添加。
• 亜鉛めっき液と水洗槽のオーバーフロー分を循環槽に貯め、それを減圧濃縮し
蒸気を復水させ、再び水洗水として再利用する。
• 減圧濃縮された濃縮液は循環槽に移す。循環槽は常時めっき浴と同濃度に保
ち、不純物をフィルターろ過しめっき浴に戻して再利用する。
• 時間供給量と処理量を同じにする必要がある。
• 冷凍機は、減圧濃縮すると液の温度が上がるため、それを下げるためと減圧濃
縮水をつくるためのもの。
資料-12
(名古屋市工業研究所)No.3
項 目
ヒアリング内容
クローズドシス 【コストの問題】
テムの課題
• 現段階においてクローズドシステムはできるが、経済性が成り立たないため、
比較的規模の小さい企業が多いめっき業者への導入は未だない。事業資金に
余力がないと導入困難(補助金の検討も必要となる)
。設置場所の確保の問題
もある。
• スケールメリットを活かして経済性が追求でき、事業資金に余裕のある、あ
る程度の規模以上の業者でないと導入は難しい。
• クローズド化を導入するためには、既存のラインに濃縮装置をつけて配管工
事をする程度の最小限の投資に抑える必要がある。現状、中小めっき業者で
も 1,000 万円以上の投資は難しいと考える。
• 濃縮装置のイニシャルコストは、規模(処理能力)により大きく変わらない。
(処理量が倍になっても設備金額は 1.2~1.5 倍程度)
• イニシャルコストは普及性によって異なる。
(普及性が高ければ(販売量が見
込めれば)イニシャルコストは下がる。
)
• 近年亜鉛の価格が上昇していることはめっき亜鉛業のクローズド化を推進す
る後押しとなる。
【クローズド化による不純物の蓄積】
• 亜鉛濃度を一定に保つ必要があるが、亜鉛の溶出量を調整するのは難しい。
電気的に取り除くか、液をある程度交換する方法がある。
【品質の確保】
• クローズド化により亜鉛めっきの品質を落としてはいけない。
• 市販の添加剤はめっき工程で分解物が生成するため、添加剤の分解を防ぐか
分解物を取り除く必要がある。
• めっき業界にクローズド化を普及(水平展開)させるには、システムにあっ
た組成のシンプルなめっき液をつくる必要がある。究極は添加剤無使用を目
指す。
資料-13
(名古屋市工業研究所)No.4
項 目
本システムに
ついて
ヒアリング内容
【システムの問題】
• めっき業者毎で使用する薬剤・添加剤の種類が違うため、水平展開できない
可能性がある。
• 現実的に、品質を確保し実際に商品として販売していくことが重要。
• 試験はある程度の規模(プラントレベル)で実施しないと、事業性を正確に
実証できない。
クロメートに
• 三価クロメートのリサイクルは非常に難しく、取り組もうとしたことがない。
ついて
• クロメート液は各メーカーで異なり、めっきの薬品との相性が合わない場合
もある。(主成分は同じでも細かいところが違うため取扱いが困難)
• クロメート液の流れとして、現在、従来使用されてきた六価クロムから三価
クロムに変化してきたが、浴管理が厳しく不純金属の品質への影響が大きい
うえに、コバルトや三価クロムが主成分であるため薬品代も高い。めっき業
者も三価クロメートを嫌っており、一時的な傾向と考える。将来的にはクロ
ムの入っていないクロメートフリーを目指す流れがある。
• クローズドシステムでは蓄積する不純物を取り除く必要がある。
• 神奈川県の研究所では、耐久性の長い添加剤の開発を行っている。それには
不純物の影響を鈍化させるものが入っており耐食性の遜色はない。
資料-14
2) 株式会社中央製作所
(株式会社中央製作所)No.1
項 目
クローズドの
ポイント
ヒアリング内容
クローズドのポイントは次のとおりである。
① 汲出量を減少させること
② 本槽の蒸発が可能なこと(本槽の容量収支)
「蒸発量=給水量」であれば、蒸発濃縮は必要ない
③ 本槽濃縮で液の品質が保たれること(液組成のバランス、不純物の蓄積)
クロムめっきの
クローズド化の
確立
• 現在、クロムめっきではほとんどクローズド化されている。クローズド化が進
んでいる主な理由は次のとおり。
・ めっき液組成がシンプル(クロム酸CrO3と硫酸H2SO4。添加剤はごくわずか)
であるため、濃縮により液組成バランスがくずれにくい。
・ 酸性浴は蒸発させやすく、大気濃縮が活用できる。
(アルカリ浴で大気濃縮
をする場合、カセイソーダが空気中の炭酸ガスを吸い炭酸ソーダとなって、
めっき液として使えなくなる。)
亜鉛めっきの
クローズド化
• 亜鉛めっきのクローズド化の取り組みはバブル以前に盛り上がったが、バブル
崩壊後、生産重視になって減速した。
• 亜鉛めっきを対象としたクローズドシステムは、現状は難しいことが分かって
いるためあまり取り組まれていない。
• クローズドシステムの構築については、コスト面のクリアが必要となる。現状
のスラッジ処理費があがるとコスト面で有利になり、システム化が促進される
と考える。
資料-15
(株式会社中央製作所)No.2
項 目
めっき浴に
ついて
ヒアリング内容
• 現在のめっき浴の主流はジンケート(アルカリ浴)となっており、その他酸性
浴が少しで、シアン浴はほとんどない。
• 酸性浴は、電流効率がよいため省エネのメリットがあるが、塩酸により設備が
錆び易いというデメリットもある。
(溶接部品も溶接の間にしみこむと錆び易い)
• そのため、めっき業界では 15 年前くらいは酸性浴を使用する流れがあったが、
現在は少なくなっている。
• めっき浴が低温浴の場合、夏場は気温のほうが高くなり空気中の水分を吸収し
て、めっき浴の液量が増量することがある。
〔モデル企業について〕
• めっき浴は、めっき素材が鋳物であるため酸性浴(酸性浴でも塩化カリと塩化
アンモンの折衷浴)としている。
(ジンケートはめっきがつきにくい)
• 塩化アンモン浴にできると品質面においてベストであるが、塩化アンモンは単
価が高く、窒素の排出規制の問題もあるため、塩化カリとの折衷浴としている。
• 塩化カリのみの酸性浴にすると品質面で問題がある。
汲出量について
• 汲出量は、プレスの板上のもので 1~1.5ml(cc)/dm2、プリント盤(単純な板
状)のようなもので 0.6~0.75ml(cc)/dm2程度である。
• 実際の汲出量は、第 1 水洗槽(回収槽)の水洗水を新しい状態にし、加工前後
のめっき浴濃度と水洗水濃度を測定することで把握できる。
本検討における
クローズド化の
ポイント(1)
① 目的を明確にする
• 無排水化(亜鉛の排水規制の強化:5mg/L → 2mg/L)
• 有価物(めっき液・亜鉛)の回収
(濃縮により水だけを再利用し、減容化させた濃縮液は処分する方法もある。
)
② 汲出量を減少させる方法
• 槽上での液切り停止時間の増加
モデル企業では以前、生回収槽を設置し液切りを試みたが、停止時間が長い
とめっきが空気にふれる時間が長くなりめっき表面が変色しやすくなるな
ど、品質上の問題が生じたため、現在は行われていない。
• 槽上でのショック振動
亜鉛めっきの場合、ラックに部品を簡単にひっかけるだけであるため、振動
による部品の落下が懸念される。中央製作所でも振動装置はあるが、あまり
利用されていない。
• シャワー洗浄
モデルでは、本事業の対象めっきラインの各工程でシャワー洗浄をすでに導
入し、給水量を減少させている。
資料-16
(株式会社中央製作所)No.3
項 目
ヒアリング内容
本検討における ③ 本槽での濃縮(装置)について
本槽の液量を減少させ給水量とのバランスを保つためには、次のような濃縮装
クローズド化の
ポイント(2)
置の導入が考えられる。
○ 密閉型大気濃縮
○ 真空減圧濃縮(コストUP)
• 液性を壊さない蒸発方法が必要である。
• めっき液には光沢剤(有機物)が多く入っており、濃縮方法で膜を使用した
場合、膜に有機物の分解物がつまり再生不可能となる。今回の濃縮方法は蒸
発が適している。
• 1 リットルの水を蒸発させるために、約 560kcal 必要となる。(電気 1kw で
860kcal)
• 大気濃縮は、加熱した液を充填物にシャワーし、そこに空気をあてることで
水分が蒸発し、蒸発熱で液が冷えて濃縮される仕組みである。
(蒸発した水分
は後の工程で冷却され、凝縮水として再利用可能)
• 本検討でのめっき浴は、塩化アンモンと塩化カリの折衷浴で、濃縮の際にア
ンモニアが揮発する可能性があるため、装置を密閉式にしアンモニアを循環
させる必要がある。
(組成バランスをくずさない)
• めっき液に塩酸が含まれているため、装置の材質に留意する必要がある。
④ 濃縮による液の品質について
• 塩化カリの単一浴にすることで、濃縮(加熱)時に液組成はくずれにくくなる
が、納品先の品質に関する了解などが必要となるなど、現状ではハードルが高
い。
• めっき液に入っている光沢剤は、めっき中の電解により分解され、クローズド
化した場合それが蓄積される。
資料-17
(株式会社中央製作所)No.4
項 目
本検討に対する
助言
ヒアリング内容
• 実績のある蒸発分離メーカーが数社ある。
• 中央製作所は、単体機械メーカーと連携したシステムづくりを実施している。
• 真空蒸発で 50℃程度の液温で蒸発させているのは、完全真空にして常温蒸発
させるのが難しい(コストがかかる)ためと推測できる。
めっき業界では、プラントメーカー・薬品メーカー等複数の業種が関係してお
り、それぞれの役割分担がある。クローズドシステムの構築においてはめっき
の品質保証が必要となり、プラントメーカーが薬品に関する改良などの提案を
するのは難しい。(品質責任は薬品メーカー。品質保証はめっきとクロメート
の兼ね合いもある。
)
クロメートに
• クロメート液は六価クロムの有害性から、六価から三価へ変化した。
ついて
• 三価クロムは液管理がシビアであり、不純物(亜鉛)の蓄積やpHの変化(硝
酸の揮発等による)により、被膜がつかない・色むらができるなど品質に大き
く影響を与える。
• クロメート液で亜鉛を溶かして被膜を作るため、クロメート工程では亜鉛濃度
が上昇する。クロ-ズドにした場合亜鉛濃度が上昇し続けるため、適当な周期
で入れ替えが必要となる。
• また、亜鉛濃度が上がるとpHが上がるため、硝酸によりpHを下げる必要が
ある。
• 品質管理がシビアであるため、クロメート工程については、排水のクローズド
を目的とすることが現実的(水のみ再利用し、濃縮液は処分)
• 現在、新しい被膜の開発やクロメートレスの動きがある。
資料-18
3) ユケン工業株式会社
(ユケン工業株式会社)No.1
項 目
ヒアリング内容
亜鉛めっき無排
• 亜鉛めっきの無排水システムについて、名古屋市工業研究所、中央製作所、白
水処理エコプレ
ーティングにつ
いて
金めっきなどと共同研究している。
• システムは、硫酸亜鉛浴で分解しても悪影響を及ぼさない添加剤を選択し、パ
ルスめっきにより光沢をだし品質を確保する方法である。
• 今までにシステム(ライン)を製作して、実証実験を行った。
• 納品先の評価では、不純物の量も少なく、純亜鉛に近い状態で耐食性も良かっ
たが、光沢が足りない、複雑な形状のものにめっきがつかない、脱脂が難しい
などの問題があり、基本的システムは完成したものの市場化(実用化)までは
至っていない。
• 研究当時(98 年度)は、無排水の要望も少なかった。
• システム全体がユケン工業、単槽向流多段水洗が三進製作所の特許である。
無排水処理の
ポイント
本槽の液をいかに蒸発できるか
① 汲出量の削減
② 使用水量の削減
③ 不純物の蓄積回避
めっき浴
• めっき浴の液組成は、めっきの方法(バレル、ラック)や品物の大きさ、形状
により、薬品メーカーがアドバイス(条件を推奨)する。
• めっき浴(酸性浴)の変遷
・昔はアンモン浴が主流であったが窒素規制が厳しくなり、アンモン・カリ折
衷浴に移行
・カリ浴への移行は、物性(光沢剤)の問題がある。
• 近年は酸性浴を 40℃くらいの高温で使用し、めっき液を廃棄する量を減らす
工夫がされている。
資料-19
(ユケン工業株式会社)No.2
項 目
めっき浴中の
ヒアリング内容
① 一定期間の亜鉛盤購入量を整理
未利用亜鉛量の
② 一定期間のめっき加工量(めっき表面積)を整理
算定方法
③ 平均膜圧を整理
④ 品物についためっき量を算定(②×③)
⑤ めっき液中の未使用亜鉛量を算定(①-④)
※ ただし、複雑な形状のめっきでは適用不可能(場所によって膜圧が異なる)
システムの
① めっき液中の亜鉛量の蓄積回避
ポイント
• 一般的に酸性浴の電気効率 90~95%、亜鉛溶出率 98~100%より、5~10%の
亜鉛が蓄積されていく。
• 現在のめっきラインでは汲出しがあるため、亜鉛や不純物は一定に保たれる。
• クローズドにすると、亜鉛や不純物もめっき浴に返還されるため、これらの濃
度があがり続ける。これについては、陽極に亜鉛陽極と不溶性陽極を併用する
ことで亜鉛イオンの蓄積を回避することが考えられる。
② 濃縮装置
【高濃度濃縮が可能な装置を選定】
• 本槽の蒸発量と濃縮液量のバランスをあわす必要がある。(いかに蒸発させ、
いかに濃縮させるか)
• 濃縮は、本槽のめっき液を濃縮する方法と水洗水を濃縮方法の 2 通りがある。
水洗水を濃縮する場合、本槽の蒸発量を多くし、かつ夏場でも蒸発させるため
に高温浴に変更する必要がある。
• 高温浴の温度は 40℃程度が望ましい。
(夏場でも蒸発する温度が 38℃くらい。
現在のめっき浴は 30℃。
)
• 高温浴にする場合、現状の光沢剤の変更が必要となる。(バランスの調整、も
しくは高温浴に適した別の光沢剤に変える。)
【濃縮機械の材質に留意】
• 塩素が入っているため、腐食に耐えられる素材の装置とする必要がある。
③ 光沢剤分解物の蓄積回避
• 分解物が蓄積するとハルセル試験でもしみだらけになる。
• 現状の市販の光沢剤は、めっき浴の性状にかかわらず分解物が発生する。
• 分解物をめっき本槽に返還しない方法、除去する方法の検討が重要な課題であ
る。(薬品の改良のみで解決するのは困難。薬品の改良と装置による除去を目
指す必要がある。)
資料-20
4)ヒアリング結果の整理
① めっきリサイクルの成功事例
• 廃液の減容化による産廃処理量の削減、または凝縮水の再利用を目的とした事例が多い。
• クロムめっきでクローズド化が進んでいる主な理由は次のとおり。
・めっき液組成がシンプル(クロム酸CrO3と硫酸H2SO4。添加剤はごくわずか。)
・そのため、濃縮(加熱)により液組成バランスが崩れにくい。
・酸性浴は蒸発させやすく大気濃縮が活用できる。
② 亜鉛めっきのリサイクル事例
• 名古屋は自動車産業が盛んなため、めっき業のうち亜鉛めっきが 60~70%を占めてお
り、亜鉛めっきクローズド化についてはめっき組合等と共同で 10 数年前から検討して
いる。
• 平成 15 年度から 17 年度にかけて、パルス波によるめっきクローズドシステムを検討。
• 継続して平成 18 年度から 3 年間の予定で、主としてめっき業者 5~6 社、電源・プラン
ト・薬品メーカー、全鍍連が連携し「無排水処理」を研究。
• クローズドシステムの構築については、コスト面のクリア(経済性)が重要となるが、
現状のスラッジ処理費があがるとコスト面で有利になり、システム化促進が期待できる。
③ めっき浴について
• めっき業界では 15 年前くらいに酸性浴を使用する流れがあったが、現在はジンケート
浴(アルカリ浴)が主流。
• 酸性浴は、電流効率がよいため省エネであるメリットがあるが、塩酸により設備がさび
やすい(溶接部品も溶接の間にしみこむとさびやすい)というデメリットがあり、現在
は少なくなっている。
• モデル企業では、めっき素材が鋳物であるため酸性浴を使用(ジンケートではめっきが
つきにくい)
• めっき浴の液組成は、めっきの方法(バレル、ラック)や品物の大きさ、形状により、
薬品メーカーがアドバイス(条件を推奨)する。
• 近年は酸性浴を 40℃くらいの高温で使用し、めっき液を廃棄する量を減らす工夫がさ
れている。
④めっきクローズドシステムのポイント
• 汲出量を減少させること
• 本槽の蒸発が可能なこと
• 使用水量の削減
• 本槽の濃縮で液の品質が保たれること
(液組成のバランス、不純物の蓄積回避)
資料-21
⑤ 汲出量減少の工夫
• 槽上での液切り停止時間の増加
• 槽上でのショック振動
• シャワー洗浄の導入
⑥ 濃縮方法の工夫
• 本槽の蒸発量と本槽に戻す濃縮液量のバランスをあわす必要がある。
• 濃縮は本槽のめっき液を濃縮する方法と水洗水を濃縮方法の 2 通りがある。水洗水を濃
縮する場合、高温浴(40℃程度)に変更する等、本槽の蒸発量を増加させる必要がある。
• 高温浴では、現状の光沢剤バランスの調整、もしくは高温浴に適した別の光沢剤に変え
る必要がある。
• 本検討でのめっき浴は、塩化アンモンと塩化カリの折衷浴であり、濃縮の際にアンモニ
アが揮発する可能性があるため、装置を密閉式にしアンモニアを循環させる(組成バラ
ンスを崩さない)必要がある。
• めっき液が酸性であるため装置の材質に留意する必要がある。
⑦ 濃縮による不純物の蓄積回避
【亜鉛】
• 一般的に酸性浴の電気効率は 90~95%、亜鉛溶出率は 98~100%より、5~10%の亜鉛
が蓄積されていく。このためクローズドシステムでは亜鉛や不純物濃度が上昇し続ける。
• 回避方法として亜鉛陽極と不溶性陽極の併用、電気的な除去、定期的な液交換等がある。
【不純金属/添加剤分解物】
• 現状の市販の光沢剤は、めっき浴の性状にかかわらずめっき加工時の電解により分解さ
れ、クローズド化した場合それが蓄積される。
• 分解物が蓄積するとめっき品質が悪化するため、分解物を戻さない方法、除去する方法
の検討が重要な課題である。
⑧ システム構築に関する経済性
• スケールメリットを活かして経済性が追求でき事業資金に余裕のある、ある程度の規模
以上の業者でないとシステム導入は難しい。
• めっき業者は比較的規模の小さい企業が多いため、設備投資を最小限に抑える必要があ
る。
• 近年の亜鉛価格の上昇が亜鉛めっき業のクローズド化推進の後押しとなる。
⑨ クロメート工程
• 三価クロメートは浴管理が厳しく、不純物(Zn)の蓄積やpHの変化(硝酸の揮発等
による)により、被膜がつかない、色むらができるなど品質に大きく影響を与えるため、
リサイクルは非常に難しくほとんど取り組まれていない。
資料-22
3.亜鉛めっきリサイクル・クローズドシステムのポイント
【システム面】
① めっき本槽の液量減少
② 水洗水供給量の減少
③ 濃縮液の品質確保(不純物の蓄積回避、液組成のバランスの保持)
資料-23
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