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神経細胞産生を調節する神経細胞と 非神経細胞間の
A02-6 公募 グリア−ニューロン相互認識による機能分子発現機構に関する研究 神経細胞産生を調節する神経細胞と 非神経細胞間のクロストーク 玉巻伸章 熊本大学大学院・医学薬学研究部・脳回路構造学 脊椎動物の成体大脳皮質では、終生神経細胞の産生が脳室 下帯で続いていると考えられている。そして多様な GABA 神 経細胞を嗅球に供給している前駆細胞は、脳室下帯に見られ 二つに、GFAP 陽性で Emx1 陽性(NEX 陽性)の細胞がある。 る GFAP 陽性であると考えられている。しかし、脳室下帯に 我々は大脳皮質の錐体細胞の細胞系譜をウイルスにより追跡 見られる細胞の全てが GFAP 陽性であるわけでない。上記の して、錐体細胞が神経幹細胞である放射状グリアから直接生 細胞以外に少なくとも 2 種類の神経系細胞を生み出す前駆細 み出される場合と、放射状グリアから生み出された中間的な 胞が脳室下帯を構成していると考える。 前駆細胞が脳室下帯で対称、非対称分裂を盛んに繰り返して 一つに、GFAP 陰性で Emx1 陰性の細胞がある。マウスで 増殖し、より多くの錐体細胞を生み出している場合があるこ GABA 神経細胞の発生を調べる目的で、Cre によって GFP を とを明らかにした。錐体細胞の場合も GABA 神経細胞の場合 発現しなくなる組み替えアデノウイルスを、大脳皮質特異的 と同様に、対称、非対称分裂を盛んに繰り返して増殖してい に Cre を 発 現 す る Emx1-Cre knock-in マ ウ ス の 胎 児 期 た脳室下帯の前駆細胞は生後まで残存していた(図 2)。 E13 − 15 に脳室内に注入して感染させる実験を行った。出 産後に多くの Emx1 陰性 GFP 陽性細胞が大脳皮質内に観察さ れた。GFP 陽性細胞の形態と免疫組織化学により確認された 細胞には、大脳皮質の GABA 神経細胞と、GFAP 陰性 Emx1 陰性 GABA 陽性の脳室下帯のグリア様細胞があった。同 GFAP 陰性 Emx1 陰性 GABA 陽性の脳室下帯グリア様細胞に 対応する細胞は、 GAD67-GFP knock-in マウスの大脳皮質 脳室下帯に GFP 陽性の細胞塊として見つけることができる。 94 り、BrdU を取り込むので GABA 神経細胞を産生すると考え られた(図 1)。 脳室下帯に見られる上記 3 種の細胞の違いを考察する目的 で、我々は single-cell microarray analysis 法を独自で開発 した。同方法を用いて、出産時の GAD67-GFP knock-in マ ウス大脳皮質脳室下帯の GFP 陽性細胞の発現遺伝子プロファ イ ル を 調 べ た 。 同 細 胞 は 全 て single-cell RT-PCR に よ り 同細胞塊は、大脳皮質に癲癇発作を惹起する物質の投与によ GAD67 陽性であることは確かめられていたが、さらに免疫 細 胞 科 学 を 用 い て GABA, MAP2, Tuj1, double-cortin, NCAM であることも確かめた。しかし同時に細胞増殖マー カーである Ki-67 陽性で、BrdU を取り込み DNA 合成期にあ 図1:GABA 神経細胞の細胞系譜系譜。 図 2:大脳皮質錐体細胞の細胞系譜 最終研究成果報告書 る細胞も存在することが明らかとなった。これらの増殖マー カーを発現する GFP 陽性細胞は、神経細胞を生み出す中間的 な神経前駆細胞であると考えられた。しかし同時に、このよ うな神経前駆細胞はオリゴデンドロサイトのマーカーとされ る MBP, PLP,Cspg-2(NG2)も発現していることを示唆する 数値が出ていた。そこで GABA 神経前駆細胞と思われる細胞 を蛋白分解酵素処理により分散し、スライドグラス上に塗布 してオリゴデンドロサイトマーカーの有無を確かめたとこ ろ、有意な数の GFP 陽性細胞が MBP, PLP,Cspg-2(NG2)陽 性となった。MBP に関してはスプライスバリアントである Golli の発現の可能性があるので、 Golli 特異的エクソンと MBP 特異的エクソンの single-cell RT-PCR を行った結果、 Golli ではなく MBP の発現を確認することができた。また、 PLP についても神経細胞タイプのスプライスバリアントは検 出することはできていないが、免疫細胞科学で PLP が検出で きるので、オリゴデンドロサイトマーカーとなる PLP が検出 できていると考えられる。このようなことから、GABA 神経 細胞とオリゴデンドロサイトは出産後まで前駆細胞を共有し ている可能性を考えている(図 3)。 【文献】 別 項 1 1) Xu Y, Tamamaki N, Noda T, Kimura K, Itokazu Y, Matsumoto N, Dezawa M, Ide C Neurogenesis in the ependymal layer of the adult rat 3rd ventricle Exp Neurol. 192(2):251-264 (2005). 2) Tomioka R, Okamoto K, Furuta T, Fujiyama F, Iwasato T, Yanagawa Y, Obata K, Kaneko T, Tamamaki N Demonstration of long-range GABAergic connections distributed throughout the mouse neocortex Eur J Neurosci. 21(6):1587-1600 (2005) 3) Acuna-Goycolea C, Tamamaki N, Yanagawa Y, Obata K, van den Pol AN Mechanisms of neuropeptide Y, peptide YY, and pancreatic polypeptide inhibition of identified green fluorescent protein-expressing GABA neurons in the hypothalamic neuroendocrine arcuate nucleus J Neurosci. 25(32):7406-7419 (2005) 4) Osada T, Tamamaki N, Song SY, Kakazu N, Yamazaki Y, Makino H, Sasaki A, Hirayama T, Hamada S, Nave KA, Yanagimachi R, Yagi T Developmental pluripotency of the nuclei of neurons in the cerebral cortex of juvenile mice J Neurosci. 25(37):8368-8374 (2005). 5) Wu SX, Goebbels S, Nakamura K, Nakamura K, Kometani K, Minato N, Kaneko T, Nave KA, Tamamaki N Pyramidal neurons of upper cortical layers generated by NEX-positive progenitor cells in the subventricular zone Proc Natl Acad Sci U S A. 102(47):17172-17177 (2005) 6) Nakamura K, Yamashita Y, Tamamaki N, Katoh H, Kaneko T, Negishi M In vivo function of Rnd2 in the development of neocortical pyramidal neurons Neurosci Res. 54(2):149-153 (2006) 7) Watanabe K, Tamamaki N, Furuta T, Ackerman SL, Ikenaka K, Ono K Dorsally derived netrin 1 provides an inhibitory cue and elaborates the 'waiting period' for primary sensory axons in the developing spinal cord Development. 133(7):1379-1387 (2006) 8) Higo S, Udaka N, Tamamaki N Long-range GABAergic projection neurons in the cat neocortex .J. Comp Neurol. 503(3):421-431 (2007) 9) Esumi S, Wu SX, Yanagawa Y, Obata K, Sugimoto Y, Tamamaki N. Method for single-cell microarray analysis and application to geneexpression profiling of GABAergic neuron progenitors Neurosci Res. 60(4):439-451(2008) 10) Basu K, Gravel C, Tomioka R, Kaneko T, Tamamaki N, Sík A. Novel strategy to selectively label excitatory and inhibitory neurons in the cerebral cortex of mice J Neurosci Methods. 170(2):212-219(2008) 11) Huang J, Wang YY, Wang W, Li YQ, Tamamaki N, Wu SX 5-HT(3A) receptor subunit is expressed in a subpopulation of GABAergic and enkephalinergic neurons in the mouse dorsal spinal cord Neurosci Lett.;441(1):1-6.(2008) 別 項 2 別 項 3 別 項 4 別 項 5 別 項 6 別 項 7 別 項 8 別 項 9 別 項 10 図3上は既に出されている説、下は我々の説。 95