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2.エネルギー
2.エネルギー
エネルギー供給の現状
I 特徴
(1) 一次エネルギーの供給構成
一次エネルギー供給の54%を石炭に依存(特に、電力の約85%を石炭火力発電に依存)。天然ガス
(14%)の割合が比較的小さく、原子力発電は未だ導入されていない(現在、建設計画が進められている(後
述))。再生可能エネルギーの割合は9%。
(2) エネルギーの国外依存の状況
石炭は、国内に豊富な埋蔵量を有しており、自給率は高い。他方、原油は殆ど(95%)を輸入に依存してお
り、天然ガスについても78%を輸入するなど、輸入依存度が高い。特に、原油、天然ガスともロシアへの依存
度が高い(輸入に占めるロシアの割合は原油96%、天然ガス80%)。また、石炭については輸入6割以上をロ
シア産石炭が占めている。
■一次エネルギー供給構成(2013年)
石炭
原 油 ・石 油 製 品
天 然 ガス
再 生 可 能 エネルギー
54%
23%
14%
9.1%
(出所:IEA)
■最終消費セクター別構成(2013年)
産業
運輸
家庭
商 業 ・公 共
農水産業
非 エネルギー消 費
22%
23%
30%
12%
5%
8%
(出所:IEA)
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■石炭
 国内総需要の約88%を国内で生産する一方、同12%を輸入(最大の輸入元はロシア(65%))。量は多くな
いが輸出も行っている。
石炭需給構造(2013年)
(単位:千トン)
生産
79,153
輸入
10,516
在庫増
2,097
総供給
89,669
国内消費
77,610
輸出
10,847
損 失 ・統 計 誤 差
1,212
総需要
89,669
※無煙炭及び褐炭。コークス等を含まない。
(出所:GUS)
石炭確認可採埋蔵量 51 億トン 世界 12 位
(2014 年末)
(出所:PIG、EIA統計)
■原油
 国内生産は年間126万トンで、国内総供給量の5%程度に過ぎず、95%を輸入に依存している。
 輸入の殆ど(96%)はロシアからの供給によって占められており、「友好パイプライン(Przyjazn Pipeline、ド
ルジバパイプライン)」を通じて輸入されている。ノルウェー等からの輸入は、グダンスク港を通じて行ってい
る。
 原油の国家備蓄能力は1,150万㎥で、法律に基づき原油90日分、LPG30日分の備蓄を行うこととしてい
る。
原油需給構造(2013年)
(単位:千トン)
生産
輸入
在庫増
総供給
国内消費
輸出
損 失 ・統 計 誤 差
総需要
(出所:GUS)
1,258
23,347
297
24,605
24,202
403
0
24,605
原油埋蔵量 2,353 万トン(2014 年)
(出所:State Geological Institute)
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■天然ガス
 2011年の国内生産は33.4億㎥、輸入は118.2億㎥で、輸入依存度は78%。最大の輸入元国はロシアで、
全供給量の約80%を占めている。この他ドイツ及びチェコからも輸入している。
 天然ガスの39%を主として化学肥料工場、鉄鋼所、ガラス工場等の産業用に供給(非エネルギー利用含
む)しており、一般家庭向けは25%。
 2007年3月、2012年までに30日分のガス備蓄を目標とする国内法が成立。ポーランド石油ガス公社
(PGNiG)は、現時点で18.3億㎥(45日分)の備蓄能力を有している。
天然ガス需給構造(2013年)
(単位:百万m3)
生産
3,340
輸入
11,825
総供給
15,165
国内消費
14,709
輸出
89
在庫変動
314
損 失 ・統 計 誤 差
53
総需要
15,165
(出所:GUS)
天然ガス埋蔵量 1,270 億㎥ (2014 年)
(出所:State Geological Institute)
■電力
 国内電力の86%を石炭(無煙炭及び褐炭)で供給しており、発電に占める天然ガスの割合は小さい(2%
弱)。
 再生可能エネルギーの比率は10%強。うちバイオマス・バイオガスが半分以上、風力、水力の順となってい
る。
 最終電力消費の36%が業務部門、36%が産業部門、23%が家庭部門となっている。
 国際連系線を通じて電力の輸出入を行っており、チェコ、スロバキア、スウェーデン、ベラルーシ、ドイツ、リ
トアニア及びウクライナと接続している。
 発電では、国営企業4社(PGE、タウロン、エネア、エネルガ)で発電量の6割以上を占めている。また、こ
れら4社で配電量の約9割を占めている。
電力生産量 164,557GWh(2013 年)※水力、風力等再生可能エネルギー分を含む。
電力消費量 149,789GWh(2013 年)※最終消費。発電所消費、送電ロス等を除く。
電力輸出量 12,322GWh(2013 年)
電力輸入量
7,801GWh(2013 年)
(出所:GUS)
(出所:PSE,IEA)
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II ポーランドのエネルギー政策上の主な課題と対応
(1)エネルギー安全保障
ポーランドはエネルギーの大部分をロシアに依存しており、ポーランド政府はロシアへの依存度を引き下げ
ることをエネルギー政策上の重要課題としている。このため、中東諸国からの原油及び天然ガス輸入を実現
するためのパイプライン網の構築及びLNGターミナルの建設、ドイツ等近隣諸国との送電網、パイプライン網
の接続強化、シェールガス開発、原子力発電の導入などの、エネルギー供給源及び供給方法の多様化に取
り組んでいる。
(2)気候変動対策を考慮に入れた電力の供給見通しとエネルギー・ミックス
ポーランドの電力消費は、経済成長に伴う増加が見込まれているが、他方、ポーランドの石炭火力発電所
は建設後30年以上経過したものが半数近くに上り、既存発電所の更新投資や、新規発電所の建設投資が
必要となっている。計画通りにこれらの投資が進まない場合、2016年~2017年頃に電力不足に陥ること
が懸念されている。
また、ポーランドは一次エネルギー供給の約5割、電力の約9割を石炭に依存している。EUの気候変動エ
ネルギー政策・パッケージに従い、温室効果ガス排出量の削減、再生可能エネルギーの導入拡大、エネルギ
ー効率の向上への取り組みが求められている。
(3)自由化、民営化
ポーランド政府は、企業の競争力強化、財政赤字削減の観点から、国営企業の民営化を進めてきたが、エ
ネルギー部門については、エネルギー安全保障等の観点から、政府が引き続き支配権を有することを確保
する等、戦略的に民営化が進められている。
自由化の観点では、EU政策パッケージに基づき域内の電力・ガス市場の自由化政策が進められている
が、ポーランドでは、PGNiG社(国有ガス会社)がガス市場で独占的な地位を維持していること等がEUから
問題を指摘されており、ポーランド政府はガス市場自由化の動きを進めている。
ポーランド政府の主要エネルギー政策
【全般】
1 長期エネルギー戦略
ポーランド政府は、2009年11月に「2030年までのエネルギー戦略」を発表。この中で、6つの優先事項と
して、①エネルギー効率の改善、②燃料・電力供給の安全保障強化、③発電構造の多様化(原子力発電の導
入)、④再生可能エネルギーの活用、⑤燃料・電力市場における競争力強化、⑥環境への配慮が挙げられ
た。ポーランド政府では、これを改訂した「2050年までのエネルギー政策」の作成を進めており、2014年に
第一次ドラフト、2015年夏に第二次ドラフトが公表されたが、まだ完成していない。
2 国有企業の更なる民営化
ポーランドでは、1989年の体制転換以来国営企業の民営化が進められてきたが、戦略的に重要なエネル
ギー企業については、一定割合までは政府保有株式の売却を進めていくものの、政府が支配権・影響力を保
持する方針であり、電力(PGE社、タウロン社、エネア社、エネルガ社)、石炭(KW社、KHW社、JSW社)、石
油・ガス(PKNオルレン社、ロトス社、PGNiG社)等のセクターに大手国有企業が存在する。
【各論】
(1)原油
アゼルバイジャン産のカスピ海原油を黒海沿岸のジョージア経由でタンカーによりウクライナのオデッサに
運び、グダンスクまで輸送するパイプライン計画。現在、ウクライナのオデッサ-ブロディ間のパイプラインは
あるものの、ブロディとポーランド側の接続地点であるプウォツクを結ぶパイプラインの建設が進展していな
い。本プロジェクトは、EU基金との協調融資案件リストにも含まれているが、一方で十分な量のカスピ海原油
の確保、原油供給者と需要家との間の長期契約、プロジェクト実施のための政府間合意などの課題のほか、
経済性に対する疑問を指摘する声もある。
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(2)天然ガス
① シェールガス開発
ポーランドの年間ガス需要の約300年分(5.3兆m3)に相当するシェールガスの推定埋蔵量が米国エネル
ギー情報局によって報告され、欧州における天然ガスを巡る勢力図を塗り替えるものとして、関係者等から非
常に高い関心と期待が寄せられた。発表後、米国、カナダ等の大手ガス企業、ポーランドからはPGNiG社等
が開発に参入。政府による多くの探査権益が付与されたほか、法的な整備も進められた。しかし、埋蔵量の推
定値も下方修正され、また、実際の採掘に当たっては米国と異なる地質条件のため掘削は進まず、大手各社
は相次いで撤退を表明した。規模は縮小したものの、現在PGNiG社を始めとして、引き続き開発が進められ
ている。
②LNG(液化天然ガス)の輸入
政府は、ポーランド北西部にあるシフィノウィシチェにLNG基地を建設・稼動する計画を進めており、当初予
定の2014年より遅れたものの、2015年12月にタンカーによる第一回目の輸送を行った。LNGはカタールと
の間で20年間にわたる供給契約を締結している。
③ドイツ、チェコのガス供給網との接続強化
ポーランド・ドイツ間(年15億m3)及びポーランド・チェコ間(年5億m3)で、逆送可能なパイプラインを建設。
それぞれEUの「経済回復計画」から資金提供を受け、ポーランド・チェコ間については2011年9月に完成。ポ
ーランド・ドイツ間についても2012年1月に完成。
④ヤマル・ガスパイプライン、ノルド・ストリームを巡る関係
これまで、ドイツ向けロシア産天然ガスは、ロシアのヤマル半島からベラルーシ、ポーランドを経由するヤマ
ル・パイプラインによって輸送されてきた。しかし、ロシアとドイツをバルト海経由で直接結ぶノルド・ストリーム・
ガスパイプライン(以下、ノルド・ストリーム)が2011年末に開通し、同規模の第二ライン建設計画も検討され
ている。ポーランドを含む東欧各国は、度々ロシア側とトラブルにより供給途絶リスクのあったウクライナ経由
でのガス供給がノルド・ストリームによる輸送が拡大することにより、地域の安定供給への懸念が生じるとして
第二ライン建設に否定的な態度を表明している。
⑤ バルト海ガスパイプライン、南北回廊計画
デンマークとポーランド間をバルト海を経由してパイプラインで接続する計画やシフィノウィシチェのLNG基
地、バルト海パイプラインの接続点、チェコ、スロバキア、アドリア海のLNG基地等結ぶ南北回廊実現に向け
検討が行われている。
⑥ ガス市場の自由化
ポーランドでは、国有石油・ガス会社PGNiG社による独占的市場形成が行われていたが、EUにおけるエネ
ルギー市場自由化の方針の下、2013年よりPGNiG社の保有するガスの一部を市場に売却する義務を課す
ことやガス市場価格を卸売市場において決定する等の自由化に向けた取組が始まった。
(3)電力
①石炭火力発電所の新設投資、クリーン・コール・テクノロジーの導入
ポーランド政府は、原子力発電や再生可能エネルギーを導入・推進しつつも、引き続き、石炭火力を中心とし
た電力供給構成とする方針。このため、クリーンで高効率な石炭利用技術の導入が必要。
ポーランドの電力需要は、経済成長に伴い年率1.5~2%程度の割合で増加していくと見られる一方、既
存の火力発電所は1970年~80年代に建てられたものが多く、今後老朽化した火力発電所の更新や新規火
力発電所の建設のための投資が必要な状況。これらの投資が順調に行われない場合、大規模な電力不足が
発生することが懸念されていたが、2015年8月、猛暑による冷却水に用いていた河川水位が低下したことや
国内最大級のベルハトゥフ火力発電所のトラブルにより一時的に電力供給能力が急減してしまい、数日間工
場や大規模小売店に対し電力供給制限を行う事態が発生した。
新設・更新について、我が国企業も参画を進めており、現在進行中のコジェニツェ火力発電所及びトゥルフ
火力発電所の新規ユニット建設には、三菱日立パワーシステムズ社が国際コンソーシアムを組んで参画して
いる。
②原子力発電の導入
ポーランド政府は2009年1月に発表した「ガス及び原子力エネルギー分野におけるエネルギー安全保障の
ための政府の行動計画」に従い、「最低2箇所に原子力発電所を建設し、うち1箇所は2020年までに稼働さ
せる」ことを決定。同計画を受け、2014年1月に「原子力エネルギー・プログラム」を策定するとともに、関連法
令を制定した。
PGEの原子力発電事業子会社PGE EJ1社が入札等を行うが、PGE社長の交代等によりスケジュールが
後ろ倒しとなり、2016年に入札を行うこととなっている。また、稼働時期についても2024年に延期されている
が、候補地選定のために豪企業に発注した環境影響調査が十分に行われず、PGE-EJ1社が自社で再調
査を行うことになる等の事情から、稼働時期も再度延期されるのではないかという報道も出ている。
日本を含む米仏韓加の企業コンソーシアムが入札に関心を有していると報道されている。
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(4)再生可能エネルギー、省エネルギー等
①再生可能エネルギーの推進とスマート・グリッドの構築
ポーランドは、EUの「エネルギー・気候変動パッケージ」において、再生可能エネルギーの利用割合を2020
年までに15%とする拘束力のある目標に合意しており、2015年には制度的に支援するために再生可能エネ
ルギー法が制定された。この法律によりオークションによる再生可能エネルギー電力価格の設定が2016年
より導入される。(なお、当初運用されていたグリーン証書制度も2015年以前に参入した事業者に対しては
選択制として適用される)
また、風力発電等再生可能エネルギーによる発電の増大に伴う供給変動の制御や、電力不足に対処すべく
電力の需給調整を適切に行う必要から、電力網の拡充、スマート・グリッドの構築などが検討されており、201
5年よりNEDOによる実証試験が行われている。
②省エネルギーの推進
ポーランド政府は、2011年に省エネルギー法を施行。2016年までのエネルギー効率化目標(9%削減)
や、公共建物における省エネ診断・省エネ対策実施義務化、省エネルギー証書(ホワイト・サーティフィケート)
制度の導入等を実施している。また、2011年に採択された欧州2020戦略の達成に向けた取組を行ってい
る。
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