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第12期東京都住宅防火対策推進協議会報告書 協議テーマ 「住宅火災

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第12期東京都住宅防火対策推進協議会報告書 協議テーマ 「住宅火災
第12期東京都住宅防火対策推進協議会報告書
協議テーマ
「住宅火災における高齢者の被害低減対策について」
第1章
テーマ設定の背景と提言へ向けたイメージ
住宅火災による死者は減少傾向にあるが、死者に占める高齢者の割合は、平成24年以
降約7割で、年々高くなる傾向にあり、高齢化の進展に伴い益々高まることが予想され
る。このため、高齢者の被害実態や生活環境、地域特性の違いを踏まえ、住宅火災による
死者低減対策を効果的に推進する必要がある。(資料1、資料6-1)
これらの背景から、「住宅火災における高齢者の被害低減対策について」をテーマとし
て、以下の課題について検討・分析することとした。
1
課題
⑴
高齢者の様態分析
高齢者の心理面、身体面、行動パターン等の特徴、高齢化と防火対策の相関を整理
し、総合的な防火防災診断による危険度の判定結果に基づき、出火危険への対応策と
火災発生時に迅速な避難行動ができないなどの対応困難な状況への対策を導き出す。
⑵
地域特性の比較分析
住宅火災による死者が少ない地域と多い地域の比較、住宅火災による死者の町会・
自治会加入者と未加入者の比較、更には死者と地域との関わりに関する分析結果か
ら、効果的な見守りによる死者低減対策を導き出す。
⑶
総合的な防火防災診断の効果的な取組
総合的な防火防災診断の分析結果から、不備・欠陥事項の改善方策、高齢者や地域
への関わり方等、高齢者の被害を低減する効果的な取組を抽出する。
1
⑷
モデル署における検証結果等を踏まえた取組の方向性
住警器及び防炎品の普及による効果、福祉関係者等に対する住宅防火に関する講習
会による効果、小・中・高校生を対象とした総合防災教育による効果を検証し、取組
の方向性を示す。
⑸
報道機関、関係機関等と連携した効果的な広報手法の検討
報道機関、関係機関等と連携した広報の在り方や高齢者世帯に伝わる広報媒体等に
ついて検討し、実効性の高い広報手法を示す。
2
検討体制
東京消防庁防災安全業務に関する規程(平成27年9月東京消防庁訓令第45号)第
31条により、次のとおり設置した。
⑴
名
称:第12期東京都住宅防火対策推進協議会
⑵
設置期間:平成26年7月28日から平成28年3月31日まで
⑶
会
議:第1回協議会・幹事会(合同)
平成26年
7月28日(月)
第2回幹事会
平成26年
9月10日(水)
第3回幹事会
平成26年12月16日(火)
第2回協議会
平成27年
2月17日(火)
第3回協議会
平成27年
6月23日(火)
第4回協議会
平成27年10月30日(金)
第5回協議会・第4回幹事会(合同)
平成28年
2
1月25日(月)
⑷
委員・幹事:次のとおり
第12期東京都住宅防火対策推進協議会委員名簿
(会長・委員50音順)
氏
会長
委員
委員
委員
委員
委員
委員
委員
委員
委員
委員
委員
委員
名
職名等
関澤
愛 東京理科大学大学院国際火災科学研究科教授
池上 三喜子 公益財団法人市民防災研究所 理事
磯谷 泰江 東京都民生児童委員連合会 常任協議員
伊藤 厚朗 一般社団法人 日本たばこ協会 事務局長
一般社団法人東京防災設備保守協会
小川 勉
保守営業部 営業企画担当部長
荻原 光司 公益財団法人東京連合防火協会 専務理事
川上 克巳 一般社団法人日本火災報知機工業会 事務理事
坂田 早苗 東京都福祉保健局 高齢社会対策部在宅支援課長
鷺坂 長美 公益財団法人 日本防炎協会 常務理事
三本木 初榮 立川女性防火の会 会長
鈴木 孝雄 東京都町会連合会副会長(板橋区町会連合会会長)
関
政彦 東京消防庁 防災部長
東京消防庁 参事兼防災部防災安全課長
田島 松一
平成 26 年 7 月 28 日~平成 27 年 3 月 31 日
門倉
徹
東京消防庁 参事兼防災部防災安全課長
平成 27 年 4 月 1 日~平成 28 年 3 月 31 日
公益社団法人東京都医師会 理事
平成 26 年 7 月 28 日~平成 27 年 10 月 29 日
公益社団法人東京都医師会 理事
安藤 高夫
平成 27 年 10 月 30 日~平成 28 年 3 月 31 日
永井 愛子 小石川防火女性の会 会長
中田 浩靖 東京消防庁 予防部調査課長
西脇 誠一郎 東京都福祉保健局 障害者施策推進部 自立生活支援課長
東京都生活文化局 消費生活部 生活安全課長
樋口
桂
平成 26 年 7 月 28 日~平成 27 年 3 月 31 日
東京都生活文化局 消費生活部 生活安全課長
宮永 浩美
平成 27 年 4 月 1 日~平成 28 年 3 月 31 日
平田 京子 日本女子大学 家政学部 住居学科 教授
東京消防庁 防災部副参事(地域防災担当)
福永 輝繁
平成 26 年 7 月 28 日~平成 27 年 3 月 31 日
東京消防庁 防災部副参事(地域防災担当)
山本
登
平成 27 年 4 月 1 日~平成 28 年 3 月 31 日
内藤
誠二
委員
松田
京子
社会福祉法人
委員
森田
耕次
株式会社
委員
委員
委員
委員
委員
委員
委員
東京都社会福祉協議会
ニッポン放送
3
編成局
地域福祉部長
報道部
解説委員
第12期東京都住宅防火対策推進協議会幹事会名簿
(座長・幹事50音順)
氏
幹事
幹事
幹事
幹事
幹事
幹事
幹事
幹事
幹事
幹事
幹事
幹事
幹事
職名等
東京消防庁 参事兼防災部防災安全課長
平成 26 年 7 月 28 日~平成 27 年 3 月 31 日
東京消防庁 参事兼防災部防災安全課長
門倉
徹
平成 27 年 4 月 1 日~平成 28 年 3 月 31 日
石黒 俊之 杉並区 宮前三丁目会 町会長
伊東 浩一 東京消防庁 予防部調査課資料係長
牛久 和江 豊島区 南長崎三丁目南部町会 防災副部長
佐藤 憲弘 台東区 浅草町二町会 町会長
下村
忠 北区 堀船一丁目町会 防災部長
東京消防庁 防災部防災福祉係長
袖山 みゆき
平成 26 年 7 月 28 日~平成 27 年 3 月 31 日
東京消防庁 防災部防災福祉係長
田中 智子
平成 27 年 4 月 1 日~平成 28 年 3 月 31 日
田中 富也 東京消防庁 防災部生活安全担当係長
對馬 光範 東京消防庁 池袋消防署 地域防災担当係長
東京消防庁 荻窪消防署 防災安全係長
飛永 孝志
平成 26 年 7 月 28 日~平成 26 年 9 月 30 日
東京消防庁 荻窪消防署 住宅防火担当係長
前田 貞樹
平成 26 年 10 月1日~平成 28 年 3 月 31 日
平田 京子 日本女子大学 家政学部 住居学科 教授
東京消防庁 防災部副参事(地域防災担当)
福永 輝繁
平成 26 年 7 月 28 日~平成 27 年 3 月 31 日
東京消防庁 防災部副参事(地域防災担当)
山本
登
平成 27 年 4 月 1 日~平成 28 年 3 月 31 日
茂木 伸二 東京消防庁 日本堤消防署 地域防災担当係長
東京消防庁 王子消防署 地域防災担当係長
門前 昭広
平成 26 年 7 月 28 日~平成 27 年 3 月 31 日
東京消防庁 王子消防署 地域防災担当係長
佐藤
平成 27 年 4 月 1 日~平成 28 年 3 月 31 日
田島
座長
名
松一
4
第2章
1
地域特性に関するアンケート等、各種調査結果について
地域特性に関するアンケート調査と目的
過去5年間(平成21年~平成25年)住宅火災による死者の発生状況から住宅火
災の死者が多く発生している地域と木造住宅密集地域に属しながらも住宅火災による
死者が少ない地域を抽出してアンケートを実施した。
地域特性の違いを比較分析することで、住宅火災への脆弱性が高い要素・要因、住
宅火災を防いでいる要素・要因を明らかにし、死者低減対策へ反映させる。
1-1
調査の概要
アンケートでは、地域の住宅防火対策に資することを目的として、地域特性につい
て防火防災からの視点のみでなく、多様な視点からの設問による調査を行い、幅広い
世代からの回答を得ることで、住宅火災への脆弱性が高い要素・要因、住宅火災を防
いでいる要素や要因を抽出・分析した。
地域特性に関するアンケート配付条件は、以下の表のとおり設定した。
表1 配付対象者についての条件
おおむね
おおむね
おおむね65歳以上
10代~30代
40代~65歳
いずれの年代も配付数全体のおおむね2割以上5割未満
男性
女性
性別
おおむね5割
おおむね5割
町会員
非町会員
町会
おおむね5割~7割
おおむね3割~5割
木造又は防火造の
耐火造の
一戸建住宅
共同住宅
共同住宅
住宅区分
(2階建て以下)
(3階建て以上)
いずれの住宅区分も配付数全体のおおむね2割以上5割未満
※ 10代は15歳以上とすること。
※ 1世帯あたり配付対象者は、2人までとすること。
※ 配付対象者の居住地が、町会内において偏らないようにすること。
※ 非町会員に対する配付方法については、幹事の方と幹事消防署で協議の上、決定するこ
と。
年齢
集計結果は、表2のとおりであった。
5
表2 地域特性に関するアンケート集計結果
町会・自
治会加入
町会・自治
会未加入
加入状況
不明
総計
回収率
住宅火災によ
る死者が多い
612
86
47
745
88.7%
地域(※1)
住宅火災による
死者が少ない地
406
53
21
480
85.7%
域(※2)
総計
1018
139
68
1225 87.5%
※1 住宅火災による死者が多い地域
過去5年間に多くの死者が発生している6消防署の地域(管轄区域)
(板橋消防署、練馬消防署、西新井消防署、城東消防署、江戸川消防署、調布消防署)
※2 住宅火災による死者が少ない地域
木造住宅密集地域に属しながらも住宅火災による死者が少ない町会
(荻窪消防署、池袋消防署、王子消防署、日本堤消防署)
多い地域
N=745
少ない地域
N=480
0%
20%
40%
加入
未加入
60%
80%
100%
不明
図1 地域特性に関するアンケート集計結果
1-2
アンケート内容
アンケートは、町会・自治会の加入状況を確認し、次に「まちの地域体制につい
て」、「まちの地域特性について」、「まちの環境等について」、「回答者の属性につい
て」の4区分、合計52の質問を設けた。
構成の詳細は表3のとおりである。
6
表3 アンケートの構成
防火・防犯
行政による支援
行政・地域への信頼度
町会・自治会の取組
住民の意識
地域の繋がり
消防団活動への理解
学校行事・PTA活動
街区の特徴
回答者の属性
まちの地域体制について
町会・自治会
加入状況
まちの地域特性について
まちの環境等について
回答者の属性について
1-3
アンケート調査結果「住宅火災による死者の多い地域と少ない地域の比較」
住宅火災による死者が少ない地域が、多い地域と比較して優位な数値を示した回答
について示す。
⑴
まちの地域体制について
① 行政や地域が発信する防災に関する情報に接する機会が多い。
② 消防職員が火災予防の呼びかけで訪問してきたことがある。
③ 消防職員の訪問時に危険個所の指摘が少なかった。
④ 消防職員への信頼度が高かった。
多い地域・加入
⑤ 町会・自治会への信頼感が強い。
多い地域・未加入
⑥ 近所に対する信頼感が強い。
少ない地域・加入
⑦ 町会・自治会が行っている高齢者に対する見守り活動について知っている。
少ない地域・未加入
⑧ 防火防災訓練等、自主防災組織の活動について知っている。
0%
防災訓練等、自主防災組織の活動についてどの程度知っていますか。
多い地域
よく知っている。
ある程度知っている。
あまり知らない。
知らない。
無回答
少ない地域
0%
20%
40%
60%
80%
100%
図2 まちの地域体制についての質問に対する回答(抜粋)
7
50%
⑵
まちの地域特性について
① 昔から住んでいる住民の割合が高い。
多い地域・加入
② 外国人等が同じ地域に住む場合、声をかける等、異文化への寛容性が高い。
多い地域・未加入
③ 災害時に近所で声を掛け合うなど、近隣の信頼関係ができている。
少ない地域・加入
④ 近隣同士の挨拶が行われており、信頼関係ができている。
少ない地域・未加入
災害時に近所で声を掛け合う関係はできていますか。
0%
多い地域
できている。
できていない。
無回答
少ない地域
0%
20%
40%
60%
80%
100%
図3 まちの地域特性についての質問に対する回答(抜粋)
「まちの地域体制について」、「まちの地域特性について」を総合的に考察すると、
住宅火災による死者の少ない地域の方が、消防等行政からの情報に接する機会が多
く、また町会・自治会への理解度、信頼関係ができており、行政からの地域への積極
的な働きかけが、住宅防火対策に効果を発揮していると言える。
⑶
まちの環境等について
① 自分はゴミ出しルールを守っている。
② 地域のゴミ出しのルールが守られていないと感じている。
8
50%
少ない地域・加入
少ない地域・未加入
0%
50%
ご自身のゴミ出しルールはどの程度守っていますか。
多い地域
必ず守っている。
多い地域・加入
守れない場合がある。
無回答
多い地域・未加入
少ない地域
少ない地域・加入
0%
20%
40%
60%
80%
100%
少ない地域・未加入
地域のゴミ出しルールは守られていますか。
0%
50%
多い地域
よく守られている。
あまり守られていない。
無回答
少ない地域
0%
20%
40%
60%
80%
100%
図4 まちの環境等についての質問に対する回答(抜粋)
住宅火災による死者の少ない地域の方が、地域のゴミ出しルールが守られていない
と感じているのは、日頃から地域に関心をもって見ているからと言える。
⑷
回答者の属性について
① 自宅から火事を出さないという意識が強い。
② 防炎品を知っており、火災予防意識が高い。
③ 火事になりそうなヒヤッとした経験が多い。
9
多い地域・未加入
少ない地域・加入
少ない地域・未加入
自宅から火事を出さないという意識はどの程度ありますか。
0%
多い地域
強いほうだと思う。
強いほうではない。
無回答
少ない地域
0%
20%
40%
60%
80%
100%
図5 回答者の属性についての質問に対する回答(抜粋)
「まちの環境等について」、「回答者の属性について」を総合的に考察すると、少な
い地域の住民ほど一人一人の火災予防意識やルールを守る意識が強く、周囲の環境や
他人の行動に厳しい目を向けていると考えられる。
1-4
⑴
アンケート調査結果「町会・自治会加入者と未加入者の比較」
町会加入者・未加入者の違い
① 加入者ほど行政や地域が発信する防災に関する情報に接している。
② 加入者ほど火災予防の呼びかけなどで消防職員の訪問を受けた経験がある。
③ 加入者ほど消防職員の訪問を受けた際、危険箇所の指摘がなかった。
④ 加入者ほど町会・自治会を信頼している。
⑤ 加入者ほど隣近所を信頼している。
⑥ 加入者ほど地域の歴史や文化などに誇りを感じている。
⑦ 加入者ほど地域の繋がりや連帯感などの絆を感じている。
⑧ 加入者ほど震災時に近所で声を掛け合う関係ができていると感じている。
⑨ 加入者ほど隣近所で挨拶ができていると感じている。
⑩ 加入者ほど地域のお祭りや防火防災訓練等、行事に参加している。
10
50%
多い地域・未加入
少ない地域・加入
少ない地域・未加入
近所に対する信頼感はどれくらいですか。
0%
加入・多い地域
多い地域・加入
頼りになる。
やや頼りになる。
多い地域・未加入
あまり頼りにならない。
頼りにならない。
無回答
加入・少ない地域
未加入・多い地域
少ない地域・加入
未加入・少ない地域
0%
50%
20%
40%
60%
80%
100%
少ない地域・未加入
頼りになる。
やや頼りになる。
あまり頼りにならない。 頼りにならない。
地域のつながり、連帯感、絆はどの程度だと感じますか。
無回答
0%
加入・多い地域
強い。
どちらかといえば、強い。
どちらかといえば、弱い。
弱い。
無回答
加入・少ない地域
未加入・多い地域
未加入・少ない地域
0%
20%
40%
60%
80%
100%
強い。
どちらかといえば、強い。
どちらかといえば、弱い。 弱い。
無回答
図6 町会・自治会加入と未加入の比較
以上の結果から、町会・自治会未加入者や町会・自治会未結成地域への消防等行政
の働きかけを強化し、防火防災に対する関心、防火防災訓練への参加意欲を高める仕組
みや環境作りを進める必要があり、東京消防庁で実施している都民防災指導員制度を活
用した防火防災講話、まちかど防災訓練及び消防署と地域、福祉関係者等が一体となっ
て実施する総合的な防火防災診断等は、高齢者を火災等から守る取組として有効な取組
である。
2
住宅火災による死者と地域との関わり等に関する分析
住宅火災による死者と町会・自治会への加入状況、地域との関わり、出火室の状況
の相関関係を明らかにすることを目的として、平成26年中の死者71人、平成27年
中の死者69人、計140人について調査・分析した結果は、以下のとおりである。
⑴
全死者の状況(平成26年~平成27年140人)
11
50%
① 死者に占める町会・自治会加入者の割合は、約5割である。
平成26年~平成 27 年
不明
24人
17%
未加入
47人
34%
加入
69人
49%
N=140
図7 住宅火災による死者の町会・自治会の加入状況
② 地域との関わりがない人が、死者の5割以上を占めている。
平成26年~平成 27 年
不明
24人
17%
あり
43人
31%
なし
73人
52%
N=140
図8 住宅火災による死者の地域との関わり状況
③ 収容物が部屋に散乱・堆積し整理整頓されていない死者が約5割いる。
平成26年~平成 27 年
不明
7人
5%
整理整頓さ
れていない
64人
46%
整理整頓さ
れている
69人
49%
N=140
図9 死者の発生した住宅火災の出火室の状況
12
⑵
高齢者の死者の状況(平成26年~平成27年108人)
① 高齢者の死者に占める町会・自治会加入者の割合は、5割以上である。
平成26年~平成27年
不明
20人
18%
未加入
29人
27%
加入
59人
55%
N=108
図10 住宅火災による死者(高齢者)の町会・自治会の加入状況
② 地域との関わりがない人が、高齢者の死者の約5割を占めている。
平成26年~平成27年
不明
19人
18%
あり
39人
36%
なし
50人
46%
N=108
図11 住宅火災による死者(高齢者)の地域との関わり状況
③ 高齢者は室内が整理整頓されていても亡くなっている人が5割以上を占めてい
る。
平成26年~平成27年
不明
5人
5%
整理整頓さ
れていない
46人
42%
整理整頓さ
れている
57人
53%
N=108
図12 死者(高齢者)の発生した住宅火災の出火室の状況
13
⑶
地域の関わり状況と出火室の状況の関係
① 地域との関わりのある死者は、室内が整理整頓されている割合が高い傾向にあ
る。
② 地域との関わりがあり、かつ室内が整理整頓されているにも関わらず住宅火災で
亡くなっている方は、全員高齢者である。
平成26年~平成27年(全死者)
45
40
40
35
30
30
30
25
20
13
15
9
10
11
4
3
5
0
地域との
関わりあり
地域との
関わりなし
整理整頓されている
不明
整理整頓されていない
不明
平成26年~平成27年(高齢者死者)
35
30
28
30
25
20
20
15
10
9
7
5
9
3
2
0
地域との
関わりあり
整理整頓されている
地域との
関わりなし
整理整頓されていない
不明
不明
図13 地域との関わりの状況と出火室の状況の関係
14
⑷ 死者の性別と出火室の状況の関係
出火室が整理整頓されていない死者は、男性が圧倒的に多い。
平成26年~平成27年(全死者)
45
42
40
35
34
35
30
25
22
20
15
10
5
5
2
0
男性
女性
整理整頓されている
整理整頓されていない
不明
図14 死者の性別と出火室の状況の関係
⑸ 着火物と出火室の状況の関係
ごみくず等や本、新聞紙、紙製品等が着火物の火災は、出火室が整理整頓されてい
ないことが多い。
平成26年~平成27年
0%
20%
布団等
ごみくず等
本、新聞紙、紙製品等
40%
60%
80%
18
100%
16
7
2
1
9
5
衣類、繊維製品
7
3
着衣
11
4
その他
11
4
不明
16
整理整頓されている
20
整理整頓されていない
2
不明
図15 着火物と出火室の状況の関係
3
消防職員・消防団員及びその家族と一般的な都民の住宅防火に関する意識調査
3-1
アンケートの目的
普段から火災予防に注意をしている消防職員及び消防団員が行っている出火防止の取
15
組を整理し、有効な取組について広く普及していくことを目的として、消防職員・消防
団員及びその家族と一般的な都民の住宅防火に関する意識の違いについて調査を実施し
た。
3-2
⑴
アンケート調査結果
設問について
防火意識、出火防止対策等について具体的な回答を求めるため、消防職員・消防団
員及びその家族と一般的な都民に共通する6問の記述式設問を設定した。
⑵
アンケートの質問事項
① 喫煙習慣はありますか。
② たばこに起因する火災を防ぐために実施している具体的な対策はありますか。
③ ストーブに起因する火災を防ぐために実施している具体的な対策はありますか。
④ こんろに起因する火災を防ぐために実施している具体的な対策はありますか。
⑤ 電気に起因する火災を防ぐために実施している具体的な対策はありますか。
⑥ その他に火災を防ぐために実施している具体的な対策はありますか。
⑶
結果
①
消防職員・消防団員は、自らが都民に対して広報している出火防止の取組を強く
意識し実践している。
②
消防職員・消防団員は、消防活動を通して火災の被害の悲惨さを身近に感じてお
り、火災予防に対する知識もあることから、家の中の出火防止対策を適切に実施し
ている。また、家族に対しても積極的に注意喚起を行い、火災を起こしにくい環境
を作っている。
③
一般的な都民は、消防職員・消防団員と比べて出火防止対策をしていない。
④
一般的な都民の中には、火災の実態を知らないため、適切な出火防止対策をとれ
ていない人がいる。
例:ストーブ火災の約7割が電気ストーブ火災(カーボンヒーター、ハロゲンヒー
ター含む)であるが、一般的な都民はストーブ火災を防ぐための取組として電
16
気ストーブを使用すると答えている。
⑤ 消防職員・消防団員の取組は具体的であるが、一般的な都民の取組の中には「火
の取り扱いに気を付ける」等の抽象的なものがある。
その他に火災を防ぐために実施している
具体的な対策はありますか。
ストーブ火災を防ぐために実施している
具体的な対策はありますか。
0
20
40
60
80
0
100
50
家の周りに燃えやすいものを置かない
ストーブは使用していない
93
周りに燃えやすいものを置かない
火の元の確認を徹底する
離れるときは消す
12
家族への注意喚起
11
13
消火器を備える
消火確認の徹底
4
消火器を備える
3
職員・団員
0
3
ライター等の管理の徹底
2
20
40
60
ストーブは使用していない
80
0
100
95
火を使うときは離れない
5
3
石油ストーブを使用しない
3
電気ストーブを使用する
3
一般的な都民
31
100
150
28
火遊びを予防する
11
子供に触らせない
50
火の元の確認を徹底する
50
離れるときは消す
職員・団員
90
その他 : 防炎品の使用
子供への防火教育
安全機能付きの電化製品を使う
周りに燃えやすいものを置かない
なし
住宅用火災警報器の設置
17
その他 : 消してから給油する
タイマー機能を活用する
換気をする
7
なし
なし
150
22
室内の整理整頓
72
100
29
9
6
火の取扱いに気を付ける
5
消火器を備える
4
なし
124
一般的な都民
その他 : 住宅用火災警報器の設置
水を入れたペットボトルを備える
外出時、「ガス、火の元」を合言葉にしている
線香は半分に折って使用する
冬場に加湿器を使用する
その他 : 消火確認の徹底
定期的に掃除する
図16 消防職員・消防団員と一般的な都民の回答(抜粋)の比較
⑷
考察
① 高齢者に対する総合的な防火防災診断や、高齢者と接する機会の多い介護事業
者等に対する講習会等を通じて、高齢者自身及び介護事業者等の火災予防に対す
る知識・意識の向上を図り、高齢者世帯の出火危険を高齢者自ら、若しくは介護
事業者等が排除できるようにすることで、火災による死者低減を図ることができ
る。
② 小・中・高校生に対する総合防災教育や地域住民への住宅防火に関する講習会
の実施により、家庭や地域の火災予防の知識・意識の向上を図ることで、高齢者
の被害低減につなげることができる。
③ 一般的な都民に対しては、出火防止対策を羅列して伝えるだけでなく、どのよ
うにして火災が発生しているのかを理解してもらうために、出火の原因、延焼の
経過等とともに具体的な対策を広報することが重要である。
17
⑸
消防職員・消防団員が実践している出火防止ポイント
① たばこ火災
・
灰皿に吸い殻を貯めない。
・
吸い殻は水をかけて、先ず流し台の生ごみの袋の中に捨てる。
・
灰皿に必ず水を張っておく。
・
冬などの乾燥期には、たばこの火種が落下しやすいので特に気を付ける。
・
火のついたたばこを持って、室内を移動しない。
・
灰皿は、火のついたたばこを固定できる溝のあるものを使用し、固定すると
きはフィルター部分を挟む。
・
開封したたばこは、日が経つと乾燥し、火種が落下しやすくなるから特に気
を付ける。
・
布団に落ちた火種は消火不可能と判断し、一昼夜以上徹底して浴槽の水の中
に浸けてから廃棄する。
・
寝たばこ、布団の上での喫煙は絶対にしない。
・
灰皿に火のついたたばこを置かない。
・
風のある場所(扇風機など)で喫煙しない。
・
灰皿のある場所でのみ喫煙する。
・
喫煙場所を決めて、そこ以外では吸わない。
② ストーブ火災
・
ストーブの周囲1mは物を置かない。
・
布団やカーテンの近くには置かない。
・
寝るとき、外出するときは、必ずスイッチを切り、コンセントも抜く。
・
洗濯物を乾かすときは、ストーブから十分離して干す。
・
給油するときは必ず火を消し、油をこぼさないよう十分注意する。
・
人が歩く場所にストーブを置かない。
・
火のついたストーブを持って移動しない。
・
小さい子供がいる場合は、周りに柵をするなど近づけないようにする。
18
③ こんろ火災
・
ガス台で調理するときは、冬でも必ず袖を肘までたくし上げる。
・
鍋底から炎がはみ出さないように火力を調節する。
・
こんろの上や奥の物をとるときは、必ず火を消す。
・
調理中にほんの少しの時間でも離れるときは、必ず火を消す。
・
魚グリル、換気扇、壁等は、定期的に掃除をする。
・
火をつけていないときも、布巾やボール等の燃えやすいものはこんろの近く
に置かない。
・
IHクッキングヒーターでは、必ず専用の鍋を使用する。
・
火を使わないときは、常にスイッチにロックをかける。
④ 電気コード等火災
・
過電流防止ブレーカー付のテーブルタップを使用する。
・
使用していないプラグはコンセントからこまめに抜く。
・
古い家電製品や電気コードは使用しない。
・
コンセントが家具の裏に隠れないよう、家具の配置に配慮する。
・
隠れているコンセント、テーブルタップは定期的に掃除する。
・
使用しないコンセントは塞いでおく。
・
差し込みプラグを抜くときは、電気コードではなくプラグ本体を持って抜
く。
・
電気コードは、束ねないで、ケーブルボックス等に入れて整理する。
⑤ 放火火災
・
放火されないよう、家の周囲の整理と清掃はこまめに行う。
・
ごみは必ず収集日の朝に出す。
・
指定日以外に出されて放置された可燃性のごみは、指定日まで自宅の物置の
中に入れておく。
・
車庫や物置などにはカギをかける。
・
屋外に人感センサー付照明を取り付ける。
19
第3章
課題解決1「高齢者自身が火災を起こさない知識や行動力を身につ
けるための方策」(自助)
1
高齢者の特徴と出火危険への対応策等(資料2)
高齢者の心理面、身体面、行動パターン等の特徴を示す※。
1-1
心理面での特徴
⑴
みずみずしい感性が失われる。未知なるものへの探求心や冒険心が衰える。
⑵
新しい環境になじむことが困難となる等、環境への順応力が喪失する。風景や近隣の
人が変わると混乱したり、せん妄を引き起こしたりする。
⑶
収入の減少、職を離れること等により経済力が喪失し、様々なことに不安を抱く。
⑷
家族や社会とのつながりが薄れ(子供の独立、配偶者・兄弟・友人との死別、定年退
職等)、孤立感が増す。
⑸
生きる目的を失う。特に仕事を生きがいとしてきた男性に多い。
⑹
自己存在の意味を見失う。
⑺
これらの喪失に対する抵抗感が強い人と、そうでない人の個人差が大きい。アクティ
ブな高齢者と年齢よりはるかに老けこんだ無気力な高齢者がいる。
⑻
意識と能力のギャップが大きい。(以前は出来た、出来るはず等)。
⑼
頑固になる、自己中心的、自分勝手になる。
⑽
ひがむ、嫉妬する、邪推する。
⑾
保守的、内向的になる。
⑿
面倒くさがる、涙もろくなる、愚痴っぽくなる。
⒀
話がくどくなる、甘える、出しゃばる、自慢する。
⒁
ケチになる。諦めが早い、円熟する、感情をあらわにしない。
⒂
今までの人生に対する自信、豊富な人生経験からくる的確な判断力、豊富な知識、人
情の機微等についての自負心を持っている。
20
1-2
⑴
身体面での特徴
視覚
・視力が落ちる。
(近方視力の低下=40~50代、遠方視力の低下=60歳以降、急激に低下)
・黄色く見える(青と緑色の区別ができない、明度や彩度の低い色は区別しにくい。)
・明るくしないと見えない。
・老人性白内障が進行し、視力が低下する。
・動体視力、夜間視力が落ちる。
・視野が狭小化する。(視野角度がせまくなる)。暗順応が低下する。
・知的情報が少なくなり意欲が低下する。いら立ち、怒りっぽくなる。
⑵
聴覚
・小さい音と高い音が聞こえなくなる。
・話し言葉が早いと聞き取りがむずかしい。
・猜疑心を抱きやすくなる。ひがむ、邪推する。
⑶
味覚
・甘い、酸っぱい、辛い、苦いの感覚が鈍化する。
・なかなか味を感じなくなり濃い味を好むようになる。
⑷
嗅覚
・ガス漏れや腐った食物がわからない等、識別力が衰えていく。
⑸
皮膚感覚(温度覚、冷覚、痛覚、触覚)
・温かいと感じる最初の値が高くなり、温度感覚が鈍くなる。特に足の感覚が鈍る。
⑹
平衡感覚
・姿勢を維持する能力が低下する。(特に男性)
⑺
知能
・身体機能面に低下がある者(視力、聴力、四肢)は、健康な高齢者に比べて知能の低
下がみられる。
⑻
記憶力
21
・記憶力の低下がみられる。
1-3
行動パターンの特徴
⑴
補聴器使用者の9割以上が就寝時には補聴器を外している。
⑵
喫煙者は全体の約2割である。
⑶
喫煙者の飲酒の割合は、吸わない人の飲酒の割合の約1.75倍である。
⑷
寝たばこ経験のある人は喫煙者の約15%である。
⑸
ほぼ9割の人が毎日こんろを使用している。
⑹
約4割の人が仏壇でろうそくを使用している。
⑺
暖房をつけたまま寝ることがあると回答した人は約1割である。
⑻
延長コード式タップを使用している人が9割以上いる。
⑼
エアコン、電気カーペット、電気こたつ等、火災発生危険の低い暖房器具を使用して
いる人が大半であるが、電気・石油・ガスストーブ等の使用者も一定数いる。
⑽
洗濯物や衣類を暖房器具の上に干したりしたことがある人は約1割である。
⑾
普段の情報取得手段は、9割以上がテレビ、次いで約7割が新聞となっている。
⑿
近隣との関係がない、あまりないは約3割である。
※
参考文献
○
「よくわかる 高齢者の心理 改訂版」(近藤 勉著 株式会社ナカニシヤ出版
○
「高齢者の防火意識等の実態調査研究におけるアンケート結果:都内65歳以上の方がいる 4,000 世帯で実施」
(平成21年東京
2011年8月10日)
消防庁予防部)
1-4
高齢化と防火対策との相関
高齢化による心理面、身体面、行動パターンの特徴から高齢化と防火対策との相関を
整理する。
⑴
判断力の低下から危険予測が困難になる。また、コミュニケーション能力の低下に
より、地域との交流が困難になる。
⑵
認知能力の低下により、火災に対する危険性の認知が困難になる。
⑶
運動能力の低下により、初期消火等の初動対応や自力避難行動が困難になる。
22
このため、これら高齢者の困難性を理解し、総合的な防火防災診断により各世帯の危
険度を判定し、環境面や意識の改善を図ることで、リスクの低減を図っていく必要があ
る。
○ 出火危険への対応策例
①電磁調理器等…裸火の使用をさけるため、IHクッキングヒーターにする。
②安全装置付き器具…過熱による出火を防止するため、Siセンサー付きこんろを
使用する。
③離隔距離確保…周囲の可燃物への着火を防止するため、離隔距離を確保する。
④火気の自動消火…ストーブの転倒による出火を防止するため、転倒時自動消火機
能付きのストーブを使用する。
○ 火災発生時の対応策例
①防炎品…着衣着火等を防止するため、防炎性寝具類、エプロン、アームカバー等
を使用する。
②住宅用火災警報器…火災の早期発見と早期対応による被害低減のため、すべての
居室、台所、階段に設置する。
③火災安全システム…火災の早期発見と迅速な通報による被害低減のため、住警器
が作動すると直接通報されるシステムを利用する。
④消火器…初期消火による被害低減のため、高齢者でも使用しやすい住宅用消火器
等を備える。
⑤住宅用スプリンクラー…避難行動が困難な高齢者等を火災から守るため、煙や熱
を感知して自動に消火する設備を設置する。
⑥避難体制等…高齢者等の避難行動を容易にするため、高齢者の寝室は、1階の避
難しやすい場所にする。等
2
総合的な防火防災診断実施結果における危険度判定の分析結果
平成25年度及び平成26年度に東京消防庁の各消防署で実施された要配慮者を対象
とした総合的な防火防災診断の実施件数は、15,849件で、危険度判定ツールに入
23
力し危険度判定を行ったものは、9,799件であった。
危険度判定とは、災害種別を「火災」、「震災」、「家庭内事故」の3種別に区分し、発
生危険度と対応困難度の危険度カテゴリに属する27の診断種目をチェックし、C(危
険)、B(普通)、A(安全)の総合判定結果をもとに、要配慮者の被災リスクの低減を
図るアドバイス等を行うものである。
本報告書では、平成26年度に行った6,187件の危険度判定結果を総括する。
表4 診断種目の分類一覧
災害種別
危険度
カテゴリ
発生危険度
火災
対応困難度
発生危険度
震災
対応困難度
家庭内
事故
発生危険度
対応困難度
診断種目
1-たばこ、2-ストーブ類、3-こんろ、4-電気製品、5-コンセン
ト、6-電気配線、7-裸火の使用、8-放火危険、9-防炎品の使用
10-消火器具、11-初期消火の能力、12-通報手段、13-住警器の設
置、14-避難障害、27-支援者
1-たばこ、2-ストーブ類、3-こんろ、7-裸火の使用、15-家具類の
転倒・落下・移動、16-ガラス飛散、17-建物の倒壊、18-地震時の
行動(身の安全)
11-初期消火の能力、13-住警器の設置、14-避難障害、19-地震直
後の行動(ケガ防止、支援要請等)
、20-地震後の行動(避難)、
21-非常時持出し用品、27-支援者
22-階段での転倒、23-居室での転倒、24-入浴に係る事故、25 熱中
症、26-一酸化炭素中毒事故
12-通報手段、27-支援者
危険度指数の合計の尺度を整えるため、災害種別及び危険度カテゴリごとに設定され
た標準化係数を掛け、災害種別ごとの危険度・困難度の最大値が100点となるように
している。
危険度判定とは、総合的な防火防災診断を実施した際に、危険度チェック表に基づ
き、27の診断種目についてチェックを行い、それぞれの診断種目の「重み」により、
危険度指数を算定するものである。「重み」とは、例えば診断種目の「たばこ」と「電気
配線」を比べると、「たばこ」に関する出火危険の方が高いので、「たばこ」の方に「重
み」があり、配点が高く設定されている。これらの点数を、火災・震災・家庭内事故の
発生危険度・対応困難度別に合計し、総合的に判定したものが総合判定である。
総合判定はC(危険)、B(普通)、A(安全)の3つのランクとなっている。また、
チェック項目をすべて入力しないと点数が0点となりAランクと判定されてしまうた
24
め、玄関先で聞き取りのみ実施した場合は判定不能としている。
表5 総合判定基準
2-1
総合判定
危険性
Cランク
危険
Bランク
普通
Aランク
安全
判定基準
①火災の発生危険度が40以上
②全災害種別の発生危険度の平均が50以上
③全災害種別の対応困難度の平均が50以上
①火災の発生危険度が30以上
②全災害種別の発生危険度の平均が40以上
③全災害種別の対応困難度の平均が40以上
上記以外
平成26年度中の総合的な防火防災診断実施概況
平成26年度中に各署で実施された要配慮者を対象とした総合的な防火防災診断の実
施件数は7,709件で、危険度判定ツールに入力し危険度判定を行ったもの(以下
「総計」という。)は6,187件だった。
総計6,187件中、危険度判定の結果、総合判定でAランクと判定されたものは
4,177件(67.5%)、Bランクが206件(3.3%)、Cランクが220件
(3.6%)、玄関先で聞き取りのみ実施のため、判定不能となったものが1,584件
(25.6%)だった。(図1参照)
判定不能
1584
25.6%
Cランク
220
3.6%
総計 6,187 件
Aランク
4177
67.5%
Bランク
206
3.3%
図17 危険度判定ランク別件数
⑴ 性別・年齢別件数
男女では、男性が2,080件(33.6%)、女性が4,107件(66.
4%)と女性の方が倍近く多く、年齢別にみると、75歳から84歳が3,044
25
件(49.2%)と最も多く、64歳以下が138件(2.2%)と最も少ない結
果となった。
表6 性別・年齢別件数
性別
年齢
男性
女性
64 歳以下
65~74 歳
75~84 歳
85 歳以上
不明
2,080 件
4,107 件
138 件
1,279 件
3,044 件
1,689 件
37 件
(33.6%)
(66.4%)
(2.2%)
(20.7%)
(49.2%)
(27.3%)
(0.6%)
※不明は入力がなかったもの。以下同じ
⑵ 身体状況別件数
身体状況では、移動(歩行)に支障のある方が1,768件(28.6%)と最
も多く、最も少ないのは認知(日常の意思決定)に支障のある方で、333件
5.4%)だった。
表7 身体状況別件数
視力に支障あり
聴力に支障あり
移動に支障あり
339 件
(5.5%)
848 件
(12.1%)
1,768 件
(28.6%)
日常生活動作
認知
(支援・介護の
(日常の意思決
必要性)に支障
定)に支障あり
あり
1,095 件
333 件
(17.7%)
(5.4%)
⑶ 生活環境別件数
生活環境では、建物構造が防火造(木造)は2,866件(46.3%)で、建
物用途が長屋又は共同住宅は2,668件(43.1%)だった。
表8 生活環境別件数
建物用途が長
建物構造が防
屋又は共同住
火造(木造)
宅
2,866 件
(46.3%)
2,668 件
(43.1%)
避難経路
(廊下)が
内廊下
木造密
集地域
に
居住
548 件
(8.9%)
470 件
(7.6%)
洪水ハザード
マップで0.
5m以上の浸
水域内に居住
735 件
(11.9%)
地震に関す
る地域危険
度測定調査
の総合危険
度ランク4
以上の地域
に居住
336 件
(5.4%)
⑷ 世帯構成別件数
世帯構成別に見ると、一人暮らし世帯が3,539件(57.2%)と最も多
26
く、最も少ないのは高齢の親と障害のある子供の世帯で、33件(0.5%)だっ
た。
表9 世帯構成別件数
一人暮ら
し
3,539 件
(57.2%)
高齢者の
み
1,372 件
(22.2%)
障害者
高齢の親
と障害の
ある子供
71 件
(1.1%)
33 件
(0.5%)
日中独居
156 件
(2.5%)
その他
不明
713 件
(11.5%)
303 件
(4.9%)
⑸ 寝室の位置別件数
寝室の位置別にみると、1階が2,045件(33.1%)と最も多くなってい
た。
表10 寝室の位置別件数
4階以上
1,471 件
(23.8%)
2-2
⑴
3階
495 件
(8.0%)
2階
1,747 件
(28.2%)
1階
2,045 件
(33.1%)
地階
3件
(0.0%)
不明
426 件
(6.9%)
火災・震災・家庭内事故の発生危険度・対応困難度
総計
総計の火災・震災・家庭内事故の発生危険度・対応困難度の平均点を比較する
と、火災の対応困難度の点数が最も高く、家庭内事故の対応困難度の点数が最も低
くなっている。また、震災では、発生危険度、対応困難度ともに、他に比べて点数
が高くなっている。
図18 統計 発生危険・対応困難度
27
⑵ 年齢別
火災・震災・家庭内事故の発生危険度・対応困難度の平均点を年齢別に比較する
と、発生危険度ではほとんど差がないが、対応困難度は年齢が上がるにつれて点数
が高くなっていく傾向がある。
家庭内事故
対応困難度
火災
発生危険度
25
20
15
10
5
0
-5
-10
家庭内事故
発生危険度
火災
対応困難度
64歳
以下
6574歳
震災
発生危険度
7584歳
85歳
以上
震災
対応困難度
図19 年齢別 発生危険・対応困難度
表11 年齢別 発生危険・対応困難度
64 歳以下
65-74 歳
75-84 歳
85 歳以上
総計(平均)
火災
発生危険度
10.2
9.2
9.3
8.9
9.1
火災
対応困難度
17
21.8
20.9
22.1
21.3
震災
発生危険度
17.1
18.3
19.0
18.9
18.8
震災
対応困難度
15
18.6
18.8
21.4
19.4
家庭内事故
発生危険度
15.2
15.4
15.7
15
15.4
家庭内事故
対応困難度
-6.6
-0.5
-2.2
-2.6
-2
※網掛けはグラフ未記載。以下同じ。
⑶
身体の支障別
火災・震災・家庭内事故の発生危険度・対応困難度の平均点を身体の支障別に比較
すると、すべての項目でほとんど差が見られなかった。
28
火災
発生危険度
25
20
15
10
5
0
-5
-10
家庭内事故
対応困難度
家庭内事故
発生危険度
視力
火災
対応困難度
聴力
移動
震災
発生危険度
日常生
活動作
認知
震災
対応困難度
図20 身体の支障別 発生危険・対応困難度
表12 身体の支障別 発生危険・対応困難度
視力
聴力
移動
日常生活
動作
認知
総計(平均)
⑷
火災
発生危険度
9.9
9.5
9.5
火災
対応困難度
24.4
23.1
23.7
震災
発生危険度
20.5
19.5
20.2
震災
対応困難度
23.4
22.3
23.4
家庭内事故
発生危険度
15.8
16
15.4
家庭内事故
対応困難度
-6.6
-4.4
-2.8
8.9
23.5
19.2
22.4
14.6
-5.2
10.5
9.1
21.9
21.3
20
18.8
21.4
19.4
14.2
15.4
-6.5
-2
世帯構成別
火災・震災・家庭内事故の発生危険度・対応困難度の平均点を世帯構成別に比較す
ると、発生危険度ではあまり差がないが、一人暮らし世帯ではすべての対応困難度の
点数が高くなっており、日中独居世帯では火災と震災の対応困難度の点数が高くなっ
ている。
29
「電気製品」の種目では、1,751件(28.3%)で製造後10年以上経つ古
い家電製品を使用しており、そのうちの138件(7.9%)で家電製品本体にほ
こりが付着していた。
⑶
消火器具
「消火器具」の種目では、2,747件(44.4%)で消火器具を設置しておら
ず、消火器具の設置あり2,697件(43.6%)中、284件(13.4%)
で使用期限が切れていた。
⑷
初期消火能力
「初期消火能力」の種目では、2,703件(43.7%)で消火訓練の経験がな
かった。
⑸
住警器の設置
「住警器の設置」の種目では、条例どおり設置が2,601件(42.0%)、一部
設置が1,765件(28.5%)、設置なしが628件(10.2%)だった。
⑹
家具類の転倒・落下・移動防止対策
「家具類の転倒・落下・移動防止対策」の種目では、大型家具類あり3,896件
(63.0%)中、1,973件(50.6%)で家具類の固定が未実施だった。
⑺
ガラス飛散
「ガラス飛散」の種目では、ガラス飛散防止が必要な家具類(食器棚等)あり2,
517件(40.7%)中、1,662件(66.0%)で全箇所に飛散防止対策
がされてなかった。
⑻
地震時の行動
「地震時の行動」の種目では、地震時に身を守れる空間(テーブル下等)なしが9
41件(15.2%)だった。
⑼
地震直後の行動
「地震直後の行動」の種目では、備えなしが1,566件(25.3%)だった。
⑽
地震後の行動
「地震後の行動」の種目では、一時集合場所を知らないが1,229件(19.
31
9%)で、一時集合場所を知っている3,794件(61.3%)中、586件(1
5.4%)の方が一時集合場所へ行ったことがなかった。
⑾
非常時持出し用品
「非常時持出し用品」の種目では、2,579件(41.7%)で準備をしてなか
った。
⑿
熱中症
「熱中症」の種目では、エアコンあり4,925件(79.6%)中、ほとんど使
用しない人が1,711件(34.7%)だった。
⒀
支援者
「支援者」の種目では、支援者がいない人が529件(8.6%)だった。
2-4
Cランクの特徴
Cランクと判定された方は他のランクに比べて指摘件数が多くなっているが、その中
でも特に指摘が多い種目は以下のとおりである。
表14 Cランクで多く指摘されている種目
診断種目
たばこ
ストーブ
こんろ
電気配線
裸火の使用
放火危険
通報手段
避難
居室転倒
熱中症
支援者
指摘事項
C
2.27
6.82
2.27
2.73
3.18
3.64
8.18
7.73
5.45
3.18
83.63
吸殻の廃棄状況不適
周囲に可燃物あり
油かすの大量付着
被覆に劣化損傷あり・家具等による圧迫あり
周囲に可燃物あり
建物外周部に可燃物あり
通報手段なし
避難経路に大量の物件あり
足を取られそうなコード類あり
窓の遮光対策なし
支援者なし
※
指摘率(%)
B
1.94
8.74
3.40
0.49
0.97
2.43
3.40
5.34
5.83
2.43
45.63
A
0.41
1.75
0.74
0.79
1.17
0.57
0.38
1.75
1.53
1.01
2.78
指摘率=指摘件数/該当ランク件数
また、支援者の種目では、Aランクの4,177人のうち支援者なしが116件に対
し、Cランクでは220人のうち支援者なしが184件だった。
32
表15 ランク別支援者の有無の件数
親しい隣人
あり
Aランク
Bランク
Cランク
判定不能
合計
2-5
近隣に住む
近隣に住む
知り合いあ
親族あり
り
1,129 件
4件
2件
254 件
1,389 件
1,005 件
14 件
4件
246 件
1,269 件
町会・自治
会付き合い
あり
その他
支援者あり
926 件
10 件
2件
165 件
1,103 件
859 件
30 件
5件
172 件
1,066 件
935 件
26 件
8件
208 件
1,177 件
支援者
なし
116 件
94 件
184 件
135 件
529 件
考察
平成26年度中の総合的な防火防災診断の危険度判定結果のうち、住宅防火の状況に注
目すると、火災発生危険度は低いが、火災対応困難度が高くなっている。
⑴
生活環境・身体状況別の傾向
・火災の発生危険度は、どの項目においてもほとんど差がない。
・年齢が上がるにつれて火災の対応困難度が高くなる。
・視力と認知(日常の意思決定)に支障がある方はCランクが多い。
・一人暮らし世帯は火災の対応困難度が高く、Cランクが多い。
⑵
指摘の多い診断種目
・消火器具の未設置
・消火訓練の経験なし
・住宅用火災警報器を一部のみ設置または設置なし
・支援者なし
⑶
Cランクの特徴
危険度判定がCランクの方に多い指摘種目を見ると、「設備等の所有・使用の有無」の
種目よりも、「どのように使用しているか」という種目での指摘が多い傾向があった。設
備をどのように使うか、という使用方法の問題が危険度の上昇に大きく関係している。
また、「支援者」の種目では、Cランクの方のほとんどが支援者なしと回答している。
以上のことから、今後は次の項目を優先事項として高齢者の住宅防火対策を推進してい
33
く必要があるが、併せて対象者の身体状況等に考慮した対応も必要であると考えられる。
①消火器具、住警器の設置促進、防炎品の活用
②防火防災訓練への参加促進
③生活環境に関する改善の指導
④災害時に要配慮者を支援する体制の確立
2-6
今後の課題
第20期火災予防審議会地震対策部会の答申を踏まえ、平成25年度から東京消防庁が
実施している総合的な防火防災診断は、高齢者の安全対策を進める上で有効な手法であ
り、高齢社会の進展とともに益々重要性が高まる一方で、効果的な推進に係る課題も見え
てきている。
現行では、都民は総合的な防火防災診断を任意で受けており、東京消防庁では火災予防
条例第55条の5の2第1項第2号「高齢者等の人命の安全確保に関すること。」を根拠
に、内部規程である東京消防庁防災安全に関する規程(東京消防庁訓令第45号)に計画
等の細部を定めて実施している。
将来的に、より多くの都民に対して実施できる体制を整備していくためには、火災予防
条例に明確に位置付けるなどの対応が考えられるが、現状における総合的な防火防災診断
の義務化については、消防法第4条に定める消防職員の立入検査との関係から困難であ
る。今後、住宅火災による高齢者の死者の動向を見据え、必要な対応について考慮してい
く。そのためにも総合的な防火防災診断の実績を積むとともに、対象者の範囲、実施頻度
等、継続的な検証を行っていく必要がある。
また、総合的な防火防災診断の対象者の増加を踏まえ、避難行動要支援者名簿の活用、
福祉関係者等との緊密な連携体制の確保、対象者に優先順位をつけた実施体制の整備等に
ついて検討を進めていく必要がある。
更には、高齢者世帯を訪問する機会のある医師、薬剤師及びケアマネージャー等の方々
に、高齢者世帯の住宅における出火防止等について学ぶ防火防災講習会を実施していくな
ど、多職種の連携による見守り活動の実現性と有効性について検討していく。
34
健康年齢が上昇傾向にある中、高齢者の防災行動力を向上させるための防火防災訓練
は、元気な高齢者が災害に弱い高齢者を支えることも目的として、今後も進めていく必要
がある。
3
高齢者の防災行動力を向上させるための訓練資器材の充実
高齢者自身の防災行動力や住宅防火に関する知識を高めるために、積極的な防火防災訓
練等への参加を促していく必要がる。
高齢者の防災行動力を高める上で、映像や音響を活用して災害を疑似体験できる防災
館※での訓練は大きな効果があるが、防災館まで行って体験することが困難な高齢者が多い
のが現実である。
こうした問題を解決する方策として、防災館と同様の機能を有する「移動防災教室車(仮
称)」の導入が効果的である。
移動防災教室車とともに消防職員等がいつでもどこでも出向いて行って、高齢者の住ま
いの近くで訓練を実施することで、防災館に行くことができない高齢者も防災館と同様の
映像や音響を使った分かりやすい訓練を体験することができる。
活用例1
防災シアター
※防災館
⇒災害の恐ろしさや
備えの重要性を伝え
る。他の訓練の学習
効果を高める役割も
果たす。
池袋防災館
東京都豊島区池袋 2-37-8
本所防災館
東京都墨田区横川 4-6-6
活用例2
バーチャル消火
立川防災館
⇒初期消火の一連の流
れを映像・音響ととも
に疑似体験し、火災に
対する備え等について
楽しく学ぶ。
東京都立川市泉町 1156-1
図22 移動防災教室車のイメージ
35
第4章
課題解決2「行政と地域が一体となった見守りによる死者低減に向
けた取組を具現化する方策」
(共助・公助)
1
モデル署における検証結果と方向性(資料3)
「高齢者が火災を起こさないための対策」と「地域の力で住宅火災による高齢者の死
者を低減するための対策」について具体的な提言を導き出すため、モデル署を指定して
3つのカテゴリについて検証を行った。
1-1
⑴
住警器、防炎品の普及による効果
モデル署
板橋消防署、西新井消防署
⑵
検証項目
①
総合的な防火防災診断、署住宅防火防災対策推進協議会等を通じて、住宅防火用
品等の給付助成事業の利用促進及び拡充を働きかける。
②
⑶
関係機関・関係業界、地域等と連携して住警器の設置促進、防炎品の普及を図る。
具体的な検証事例(抜粋)
【署で指定したモデル町会等に対して、住警器及び防炎品を配布し検証を実施】
概
要
署で指定したモデル町会や総合的な防火防災診断実施時に把握し
た高齢者世帯等に、住警器及び防炎品を配布し、その効果を検証し
た。
モデル町会に対して、防火防災座談
会を定期的に開催し、協力体制の構築
を図り、町会員自身に高齢者等の実態
を把握しながら、住警器及び防炎品を
配布してもらった。
関係機関等
モデル町会は、過去5年間において、住宅火災による死者が1人発
に対する働
生している町会を指定した。
きかけ等
□ モデル町会においては、町会員自ら配布したことにより、高齢者
等の実態を把握でき、地域の防火防災力向上に効果があった。
成果、検討
□ 総合的な防火防災診断時に把握した、住警器が未設置又は一部
事項等
設置の世帯や喫煙習慣のある世帯等に対して、住警器及び防炎品
を配布したことで、より真剣に診断を受けている様子が感じられ
36
た。
□ 住警器の給付助成事業については、助成をうけても、市販の販売
価格の方が安価な場合があり、助成事業の利用につなげるのは困
難であった。
⑷
検証結果
① 給付助成事業の働きかけ
署住宅防火防災対策推進協議会において区福祉関係者に給付助成事業の利用促進
を依頼したほか、個別に高齢者・障害者福祉関係部課へ働きかけた。
② 火災安全システム等の利用促進
住警器は、助成事業よりもホームセンター等で安価に購入できることから、積極
的に事業を進められない。したがって、住警器単独の助成事業ではなく、火災安全
システム等の助成事業の利用をより一層強く働きかける必要があることが分かっ
た。
③ 防炎品の関係業界等への働きかけ
・ 効果等について直接住民に説明し、実際の防炎製品(寝具カバー、枕カバー、
シーツ)を使用してもらうことで、その有効性や必要性が都民に十分伝わり、理
解された。
・
現状では、広く一般の都民や給付助成事業を行う区市等の防炎品に対する理
解は十分ではなく、引き続き都民に対する有効性の周知と区市等の給付助成事
業導入への働きかけを行っていく必要があることが分かった。
・ 防炎品の販売店や流通の拡大を図る必要がある。
④ 高齢者の意識の向上
総合的な防火防災診断を通じて、住警器や防炎品等の必要性が十分伝えられた
とともに、高齢者の住宅防火に対する意識が向上した。
⑤ 見守り体制の構築
町会が積極的に高齢者の実態把握をすることにより、地域全体で高齢者を見守
る体制が構築され、地域全体の防火防災力の向上につながった。
⑸
今後の方向性
37
給付助成事業の拡充等、モデル期間中に十分な効果を得ることができなかった以
下の検証項目については、引き続き主管課等において検討、推進していく。
① 火災安全システム等の利用促進
住警器については、義務化以降、住警器単独での給付・助成を行っている自治体
が少ない。火災安全システム等の利用を働きかける。
② 防炎品普及に向けた関係業界等への働きかけ
防炎品については、販売店や流通の拡大を関係業界等へ働きかけ、購入しやすい
環境を整えていく。
1-2
⑴
福祉関係者等に対する住宅防火に関する講習会による効果
モデル署
練馬消防署、城東消防署
⑵
検証項目
福祉関係者、デイサービス事業者、見守りサポーター等の地域住民等(以下「福祉
関係者等」という。)、日頃高齢者を支援する側の方々に対して火災危険等を認識でき
る判断力等を高めるための住宅防火に関する講習会を実施する。
⑶
具体的な検証事例(抜粋)
【介護事業者に対する防火防災講習会】
概
要
江東区介護事業者連絡会に登録しているケアマネージャー等54
名に対して、総合的な防火防災診断
の説明を含む防火防災講習会を実施
した。
□ 江東区介護保険課に対して、モデル事業についての説明を行っ
関係機関等
た結果、介護事業者連絡会の紹介を受けた。
に対する働
□ 防火防災講習会を実施する前に、介護事業者連絡会に対して、総
きかけ等
合的な防火防災診断についてDⅤDを活用して説明を実施した。
成果、検討
事項等
□ 講習会実施後、出席者に対してアンケートをとった結果、
「今後、
高齢者宅に訪問するときは、住警器があるか注意して見たい。」等、
介護事業者の防火防災についての意識の高まりがみられた。また、
38
講習会実施後、介護事業者を通して、総合的な防火防災診断の申し
込みが6件あった。
□ 講習会の実施時間帯について、パート勤務の方も参加できるよ
うに日中に実施してほしいという要望があった。(当講習会は、
18:30から開催した。)
⑷
検証結果
① 福祉関係者等に対する住宅防火に関する講習会の効果
ⅰ 福祉関係者等の防火知識の向上
日頃、高齢者と接する機会が多い福祉関係者等が講習会等で防火知識を高める
ことにより、高齢者宅の出火危険の未然防止に大きな効果があった。
ⅱ 消防署と高齢者の橋渡し
消防職員だけでは訪問が困難な高齢者世帯等へのアプローチが可能になる場
合があった。福祉関係者等が総合的な防火防災診断について高齢者等に説明する
ことで理解を得やすくなった。
ⅲ 高齢者情報
福祉関係者等の防火意識が向上することにより、総合的な防火防災診断が必
要な高齢者情報等を入手できる体制ができ、管轄する消防署と福祉関係者等の連
携が緊密になった。
ⅳ 福祉関係者等と連携しやすい環境作り
講習会等の実施を通じて、消防署と福祉関係者等の相互理解が深まり、総合的
な防火防災診断等、福祉関係者等と連携した取組が行いやすい環境が整った。
② 障害者に対する防火防災講習会の効果
障害者支援団体と協力して聴覚障害者に対する防火防災講習会を実施したとこ
ろ、障害者も防火防災への関心が非常に高いこと、また健常者と同じニーズがあり、
同じ内容でできる部分と障害の状況による個別の対応が必要な部分等について整理
することができた。
⑸
今後の方向性
検証結果から福祉関係者等への防火防災講習会は、総合的な防火防災診断の実施を
はじめ、福祉関係者等と連携した取組につなげていく効果が期待できるものであるこ
39
とから、テキスト「地域で高齢者等を支援し見守るみなさまのための
防火防災のてび
き」
(資料4)を活用して、各消防署の防火防災講習会の内容やレベルを統一し、広く
福祉関係者等に対して実施していくことで成果をあげていく必要がある。
1-3
⑴
小・中・高校生を対象とした総合防災教育による効果
モデル署
江戸川消防署、調布消防署
⑵
検証項目
小・中・高校生を対象とした総合防災教育の中で住宅防火に関する教育を強化し、
出火防止への啓発を行う。
⑶
具体的な検証事例(抜粋)
【児童・生徒作成のポスター等を活用した広報活動】
モデル校に指定した小・中学校の児童・生徒が住宅防火について
のポスターや啓発グッズを作成した。地域の行事や駅前等におい
て、児童・生徒自身が啓発グッズを配布しながら、注意喚起を呼び
かける等の広報活動を実施した。
概
要
□
署で指定したモデル校に対して、モデル事業による検証につい
て協力を依頼した。
関係機関等
□ 市教育委員会に対して、モデル事業について説明し、市教育委員
に対する働
会指導室長からも、モデル校に対して協力の依頼連絡を行った。
きかけ等
□ 夏休みの課題として、モデル校の小学校にはポスターを、中学校
には、広報用絆創膏のイラストデザインを依頼した。
□
自らデザインしたポスターや広報用絆創膏を掲示、配布したた
め、広報を積極的に行うなど、児童・生徒自身の意識の向上がみ
成果、検討
られた。
事項等
□ 児童・生徒が広報活動を行ったため、地域住民の関心度が高か
った。
40
□ 「住宅火災を減らすには」というテーマで、ポスター等の作成
を依頼したが、もっと具体的なテーマの方が、児童・生徒は取組
みやすかったと考えられる。
⑷
検証結果
①
体験型学習による教育効果の拡大
児童・生徒には、住宅防火意識を普及するための学習内容として、体験を伴う出
火防止・避難訓練等、実際に見て聞いて知る実演、地元住民などによる地域の歴史
や経験を踏まえた講演等がよく伝わることが分かった。
②
小学生に対する防災教育の効果
児童・生徒に対するアンケートによると、幼少期からの防火防災教育が大変有効
であるという結果が得られた。特に、小学生は家族や周囲の大人に体験したことを
直接伝える傾向にあるため、波及効果が高い傾向が見られた。本人の防火意識の向
上のみだけでなく、家庭や地域の関心も高まり、防火防災行動力の向上につながっ
た。
③
児童・生徒の主体的な取組効果
児童・生徒が自発的に行う広報活動等は、地域の大人等、関心を示す人が多いた
め広報効果が高く、地域への影響力が大きい。
④
子供たちと高齢者をつなぐ取組による高齢者被害の低減
若い世代から高齢者に伝われば、高齢者は高齢者同士のコミュニティで情報が
伝わりやすい。総合防災教育を通じた若い世代と高齢者世代をつなぐ取組を進める
ことで高齢者被害の低減につなげることができる。
⑤
子育て世代等への防火防災思想の普及
児童・生徒等への総合防災教育を通じて、子育て世代や働き盛り世代に対する防
火防災思想の普及等への取組を進めることは、地域防災力を向上させるうえで大き
な効果が期待できる。
⑸
今後の方向性
① 総合防災教育を通じた住宅防火意識の普及
児童・生徒に対する総合防災教育の機会に住宅防火に関する教育を効果的に実施
41
することにより、出火防止等の理解を深めていく。
② 小学生への総合防災教育を通じた地域への防火防災意識の波及
発達段階に応じた総合防災教育を実施することで、児童・生徒等の防火防災知識
や行動力の向上のみにとどまらず、子育て世代や働き盛り世代、高齢者世帯など家
庭及び地域への波及効果が期待できる。特に小学生に対する教育は、周囲の大人へ
の影響が大きいことから、小学生に対する住宅防火に関する教育内容の充実を図っ
ていく。
③ 地域が一体となった取組
児童・生徒への防火防災意識の向上と併せ、家庭さらには地域へと波及される効
果を高めるため、地元住民が児童・生徒への防火防災教育に参加するなどの協力を
得て、地域が一体となった取組をすすめていく。
2
地域の防火防災への良好な取組事例の推奨(資料5)
東京消防庁が主催する「地域の防火防災功労賞」は、阪神・淡路大震災から10年目
の節目にあたる平成16年6月に、地域防災力の向上を図ることを目的として創設され、
過去11回で267事例が受賞している。
また、東日本大震災を契機として東京都が認定を始めた「東京防災隣組」は、平成2
4年4月から過去4回、東京を世界一安全・安心な都市にするために、地域において意欲
的な防災活動を行う182団体を認定している。
これらの町会・自治会、企業、学校など地域における防火防災への良好な取組を分類・
整理する。
2-1
事例数と区分
分類は、
「1・主に訓練を主体とした地域の防災行動力向上への取組」、
「2・主に地域
の協力体制づくりに向けた取組、
「3・主に要配慮者支援対策に関する取組」、
「4・主に
幼・小・中・高校生を対象とした総合防災教育への取組」、
「5・主に事業所や大学生等が
主体となった防災への取組」の5区分に分類した。更に「2・主に地域の協力体制作りに
向けた取組」については、
「協定締結や防災マップの作成等体制作りを主体とした取組」、
42
「地域の絆や共助を深めるための創意工夫がみられる取組」、「資機材や装備、施設、環
境等の充実を図る取組」、「住警器の普及促進から地域の連携へとつなげた取組」、「地域
や企業等が連携した帰宅困難者対策を主体とした取組」の 5 区分に小分類した。
⑴ 地域の防火防災功労賞(受賞年:平成17年~平成27年)
表16 「地域の防火防災功労賞」の事例分類
番号
1
2
3
4
5
区分
地域の防災行動力向上(訓練)
協定締結、行動マニュアル、防災マップ作成等
絆や共助を深める工夫
地域の協力体制
資機材、施設、環境改善
作り
住警器普及促進から防災への取組
地域、企業等が連携した帰宅困難者対策
要配慮者支援対策
幼・小・中・高校生を対象とした総合防災教育
事業所や大学生等による取組
事
例
総
数
事例数
78
19
29
15
91
26
2
34
42
22
267
⑵ 東京防災隣組(受賞年:平成24年~平成27年)
表17 「東京防災隣組」の事例分類
番号
1
2
区分
事例数
地域の防災行動力向上(訓練)
地域の協力体制
作り
43
協定締結、行動マニュアル、防災マップ作成等
27
絆や共助を深める工夫
29
資機材、施設、環境改善
14
住警器普及促進から防災への取組
1
地域、企業等が連携した帰宅困難者対策
5
76
3
要配慮者支援対策
36
4
幼・小・中・高校生を対象とした総合防災教育
16
5
事業所や大学生等による取組
11
事
例
総
43
数
182
地域の防火防災功労賞(平成17年~平成27年)
訓練を主体とした取組
79
協定締結や防災マップ作成など体制作り
19
絆を深めるための創意工夫
29
資機材、環境等の充実
15
住警器の設置促進等から防災力向上
25
帰宅困難者対策を主体
2
要配慮者支援対策
34
総合防災教育
42
事業者や大学生等による防災への取組
N=267
22
0
20
40
60
80
100
図23 地域の防火防災功労賞分類
東京防災隣組(平成24年から平成27年)
訓練を主体とした取組
43
協定締結や防災マップ作成など体制作り
27
絆を深めるための創意工夫
29
資機材、環境等の充実
14
住警器の設置促進等から防災力向上
1
帰宅困難者対策を主体
5
要配慮者支援対策
36
総合防災教育
16
事業者や大学生等による防災への取組
N=182
11
0
10
20
図24 東京防災隣組分類
44
30
40
50
地域の防火防災功労賞
(件)
事業所や大学生
22件
8%
要配慮者支援対策
34件
13%
地域の防火防災功労賞
地域の協力体制作り
100
2
80
地域の協力体制作り
91件
34%
60
総合防災教育
42件
16%訓練を主体とした取組
40
78件
29%
帰宅困難者対策
15
19
26
資機材・環境等の充実
協定締結・防災マップ
住警器設置対策
20
N=267
29
地域の絆を深める創意工夫
0
図25 地域の防火防災功労賞分類(協力体制作り)
東京防災隣組
(件)
事業所や大学
生
11件
6%
総合防災教育
16件
9%
要配慮者支援対策
36件
20%
N=182
東京防災隣組
地域の協力体制作り
100
帰宅困難者対策
80
地域の協力体制作り
76件
42%
60
40
1
5
14
27
資機材・環境等の充実
協定締結・防災マップ
住警器設置対策
訓練を主体とした取組
43件
23%
20
29
地域の絆を深める創意工夫
0
図26 東京防災隣組分類(協力体制作り)
2-2
○
⑴
区分による分類結果
地域の防火防災功労賞
地域の防災行動力向上(訓練)
① 平成17年から平成25年にかけて、区主催の訓練や地域の訓練に新たな要素
を取り入れる試みとして、集合型訓練に加えて発災対応型訓練を導入する地域が
多い傾向がみられる。
② 平成26年から平成27年にかけては、それまでの取組に加えて、普段訓練に
参加できない世代を新たに取り込む取組として「まちかど防災訓練」等の手軽に
45
参加できる訓練や訓練実施時期、時間帯等を工夫して参加者を増やす試みが行わ
れている。
③ 地域のイベント(例:環境美化運動、夏休みの子供行事)などと組み合わせる
ことで、住民を訓練に取り込んでいる取組がある。
④ 消火主体の訓練から応急救護、避難所運営訓練等、幅広い取組へと進化してい
る。
⑤ 女性と子供の訓練参加を増やす工夫が地域防災力向上のキーポイントである。
女性や子供が参加することで、若い男性や子供の親世代等の働き盛りの訓練参加
を見込むことができる。
⑥ 木造住宅密集地域、水害発生危険地域、山岳救助地域等、地域特性を踏まえた
訓練が行われているが、一方で多くの地域が一つの地域特性に集約されるわけで
はなく、地域性は複合的で多面的である。そのため、一部の地域を除いて、多く
の地域では共通の取組や複数の取組が行われている。地域のニーズに合わせて工
夫することで、他の地域で行われた良好な取組事例を活用・導入することが可能
である。
⑵
地域の協力体制作り
① 地域の協力体制作りは、更に5つの分類に分けることができる。
② 平成17年から平成22年にかけて、住警器の法令義務化に伴い、住警器の集
団購入等、設置促進に向けた取組から地域防災力向上の取組へと発展させた地域
が多くあった。
③ 災害時応援協定締結や防災マップ作り、地域の防災協議会等の開催を通じた地
域と企業、地域と行政等、幅広い協力支援体制作りに取り組んでいる地域が多
い。
④ 地域の小・中学校を活動拠点として、地域と学校、PTA、おやじの会等が連
携し、児童・生徒の防災力への活用も含めた体制作りは、地域防災力の向上に大
きな効果がある。
⑤ 大規模災害時には一つの町では対応できないという認識のもと、より広域に複
46
数の地域が連携し、地元企業等も巻き込んでそれぞれの得意分野で協力し合う体
制作りに取組む事例が増えている。
⑥ 職業や特殊技能、資格等を活かす支援体制作りや、東京都や区市町村の助成事
業を活用した防災資機材の充実を図る取組が行われている。
⑦ 地元を最もよく知り、消防・防災のプロとしての消防団員が、大きな役割を果
たしている。
⑶
要配慮者支援対策
① 要配慮者への支援の取組は、平成18年の高齢者のみ世帯や一人暮らし高齢者
世帯等への優先的な住警器設置の取組から始まっている。
② 平成19年以降、高齢者等の要配慮者への災害時支援の取組が多く取り上げら
れており、次第に元気な高齢者は、支援される側から支援する側として訓練に参
加する取組へと変化している。
③ 要配慮者支援対策として要配慮者名簿の作成、情報の共有化、要配慮者の支援
や防災行動力を高めるための訓練の導入等、幅広い要配慮者支援対策の取組は、
平成24年以降、多くの地域で取組が進んでいる。
④ 高齢者等の要配慮者支援対策は、地域での見守り体制作りを通じた顔の見える
関係作りが大切である。
⑤ 高齢者施設(特別養護老人ホームやグループホーム等)との応援協定締結や地
域の中学生等の協力を得た高齢者支援の取組も要配慮者の安全対策を進める上で
のキーワードである。
⑷
幼・小・中・高校生を対象とした総合防災教育
① 阪神淡路大震災以降、地域の大人が不足する中、地域防災の担い手としての
中・高生の力が見直されている。
② 当初は地元中学生等による避難所運営の支援から始まったが、地域におけるD
級可搬ポンプを使用した初期消火活動や応急手当、高齢者等の要配慮者の避難支
援等、幅広い分野での訓練が進み、大規模災害が発生した時の貴重な防災力とし
て広く認知されつつある。
47
③ 中学生をはじめとした児童、生徒への総合防災教育の取組が、子供達を中心と
した地域のつながりや連帯意識を強め、自分たちのまちは自分たちで守るという
世代を超えた取組の強化につながっている。
④ 学校を中心としたコミュニティは、PTA、おやじの会、母親や父親の保護者
などがつながり、学校を通じた地域のイベント参加等を通じて子育て世代や働き
盛り世代の防災訓練への参加を促進するなど、従来の町会・自治会の枠をこえて
地域防災力を向上する大きな可能性を秘めている。
⑤ 地域の大人の最大の関心事は、子供との関わりであり、学校を通じて教育環境
を充実させ、児童・生徒等を健全に育成することにある。総合防災教育の充実は
地域の防災力向上にとって最も重要なテーマである。
⑸
事業所や大学生等による取組
① 地域に根差した企業や大学は、様々な専門的知識や技術が集積されており、震
災時に大きな力を発揮する可能性を秘めているが、現段階では一部の企業や大学
生の取組に限られている。
② 学生によるレスキューチームを結成し、地域への支援に取組む大学や、全従業
員が普通救命講習を受講し、災害時支援ボランティアに登録するなどの取組を行
っている企業がある。
③ 企業としての社会貢献ととらえて、地域と協力した発災対応型訓練や帰宅困難
者受入等に取組んでいる企業もある。
④ 企業、大学、自治体、消防署等で災害時応援協定を締結し、それぞれの強みを
活かした災害時支援体制の構築に取組んでいる地域がある。
⑤ 一部に大学として授業科目に「防災リーダー養成論」を導入する等の動きもみ
られる。
⑥ 企業や大学、学生の主体的な防災への取組は、今後大きく発展していくことが
望まれる。防火防災の協力体制作りが、地域と大学、学生や企業双方にメリット
がある取組として認知されるように社会全体で機運を高めていく必要がある。
48
○
東京防災隣組認定団体活動事例
⑴
東京防災隣組認定団体活動事例も地域の防火防災功労賞の区分による分類結果と同
様の傾向である。
⑵
182事例のうち73事例の地域は、地域の防火防災功労賞でも受賞している地域
であり、同一事例で取り上げられている場合が多いが、異なる事例で取り上げられて
いる地域もあった。
⑶
東京防災隣組認定制度では、地域の防火防災功労賞と比較して年によって取り上げ
られる事例の偏りや特徴は少なく、平成24年の制度開始以来、比較的幅広い事例を
認定している。
2-3
⑴
考察
各取組は、複合的な取組として進化
地域の防火防災功労賞 268 事例、東京防災隣組認定 182 事例は、複数の区分を含ん
だ取組が多く、5 つの区分全ての要素を含んだ取組もある。
⑵
先駆的・効果的な取組は、どの地域でも実施可能
特別な地域(水害多発地域、山岳地域など)の取組を除き、地域住民の意欲と創意
工夫、行政側の支援が整えば、どの事例も各地域で導入が可能である。
⑶
各区分とも高齢者をはじめとする要配慮者対策の推進が重要な課題
要配慮者支援対策に関する取組の区分だけではなく、その他の区分でも訓練、災害
時応援協定締結等の体制作り、総合防災教育を通じた地域への波及効果等、高齢者等
の要配慮者対策の推進が重要な課題となっている。
⑷
高齢者の安全対策の効果的な推進には地域一体の取組が必要不可欠
地域による高齢者見守り等の取組に対し、行政側が地元企業や学校等も巻き込みな
がら積極的な支援を行い、地域全体で高齢者を守っていく体制を構築していく必要が
ある。
⑸
住宅火災における高齢者の被害低減対策に関する取組事例を共有化
49
「住宅火災における高齢者の被害低減対策」を「地域の防火防災功労賞募集要項」
の別紙1「募集テーマ具体例」に明記することで、住宅火災から高齢者を守る取組を
奨励するとともに、事例を収集し、共有化していく必要がある。
50
第5章
課題解決3「住宅用防災機器の普及促進等、ハード面からの安全対
策の推進方策」
(自助・公助)
1
住警器の設置促進と維持管理及び火災安全システム等の普及促進に関する現状と課題
高齢者の死者低減を実現するには、総合的な防火防災診断等を通じた自助・共助の取
組のほか、消火器や住宅用スプリンクラーなどの住宅用防災機器等の普及促進などハー
ド面での対策が必要不可欠である。
1-1
⑴
住警器の現状
設置率
東京消防庁では、総務省消防庁の通知に基づき、平成27年春の火災予防運動期
間に伴う防火防災診断及び総合的な防火防災診断に併せ、住警器の設置状況等につ
いて聞き取り調査を実施した。聞き取り対象総世帯数38,947世帯のうち、条
例どおりに設置されていたのは28,142世帯72.3%(条例適合率)であ
り、一部設置16.4%とあわせると設置率は88.7%であった。
また、平成27年消防に関する世論調査の実施結果でも、設置率は87.3%
(条例適合率61.7%、一部設置23.3%、自火報又はスプリンクラー設備設
置2.3%、未設置10.3%、無回答2.4%)であった。
⑵
住宅区分別の設置状況
一戸建て住宅、共同住宅等(所有)、共同住宅等(賃貸)別の設置状況は、一戸建
て住宅の設置率が低い結果となった。
表18 居住区分別 住警器設置状況
住居区分
条例基準通り
①
一部設置
②
設置率
(①+②)
一戸建て
24,134 世帯
70・7%
5,925 世帯
17.4%
30,059 世帯
88.1%
4,059 世帯
11.9%
34,118 世帯
共同住宅等
(所有)
692 世帯
78.4%
126 世帯
14.3%
818 世帯
92.7%
64 世帯
7.3%
882 世帯
共同住宅等
(賃貸)
3,316 世帯
84.0%
357 世帯
9.1%
3,673 世帯
93.1%
274 世帯
6.9%
3,947 世帯
51
未設置
総数
合
⑶
計
28,142 世帯
72.2%
6,408 世帯
16.5%
34,550 世帯
88.7%
4,397 世帯
11.3%
38,947 世帯
不明
31世帯
0.1%
作動確認
住警器未設置4,397世帯と自火報設置29
世帯を除く住警器設置世帯34,521世帯のう
実施していない 実施している
14,091世帯
20,399世帯
40.8%
59.1%
ち、20,399世帯59.1%が作動確認を行
っているとの結果であった。
N=34,521
(未設置 4,397世帯
自火報設置 29世帯
を除く)
図27 作動確認実施状況
また、住警器設置世帯34,521世帯にお
作動確認結果
ける作動確認結果は、異常なしが23,894
不明
10,412世帯
30.2%
世帯69.2%、不明が10,412世帯
異常なし
23,894世帯
69.2%
30.2%、電池切れ・故障が215世帯
0.6%であった。
電池切れ・故障
215世帯
0.6%
N=34,521
(未設置 4,397世帯
自火報設置 29世帯
を除く)
図28 作動確認結果
1-2
関係業界・関係機関への働きかけ
東京消防庁では、平成26年11月から平成
27年5月にかけて関係業界や関係機関に対し、
住警器の条例どおりの設置促進に向けた取組への
協力と交換時期等を踏まえた適正な維持管理に関
する協力を依頼した。
多くの関係業界が、住警器の設置と維持管理の
表19 協力依頼業界
働きかけ先
団体数
不動産業界
4
リフォーム業界
4
損害保険業界
1
その他
2
区市町村課長会等
6
必要性を理解し、協力を得られた。
各業界の主な対応内容は以下のとおりである。
・ 会員に対し、会報を通じた周知、会報と一緒に資料をメール送信、総会でリー
フレット配付
52
・ 建物のオーナー、消費者、会員等を対象とし、定期的に開催しているセミナー
において、資料を配布
・ リフォーム業界では、「検査ガイドブック」を作成し、命に関わる最低限の基準
を設けていて、住警器の設置について確認している。
また、平成27年4月から7月にかけて、区市町村の高齢福祉課長会や防災担当部課
長会等、計6回、普及促進と維持管理の周知の状況について情報提供を行った。
1-3
火災安全システムの利用状況について
住警器により火災を発見し、専用通報機から自動的に東京消防庁へ通報される「火災
安全システム」は、火災の早期発見に加え、消火・救助活動の早期対応に高い効果があ
る。火災安全システムは現在、11区12市2町で利用され、登録者は266世帯28
9人※で、利用者数は減少傾向にあるが、高齢者世帯や障害者世帯における利用を促進
していく必要がある。
※平成27年12月末現在の数値
⑴
奏功事例
【事例1】
火災安全システム利用者のEさん(90代女性)は、やかんでお湯を沸かそうと
こんろに火をつけたところ、こんろ上のキッチンペーパーに火が燃え移った。発生
した煙を感知して火災安全システムが作動したため、ぼやで済んだ。
【事例2】
火災安全システム利用者のGさん(80代男性)は、台所のガスこんろに鍋をか
けたまま台所を離れてしまい、過熱した鍋の内容物が焦げて煙があがった。火災安
全システムが作動したため、火災には至らなかった。
⑵
問題点
火災安全システムに登録するために必要な居住管理協力者の確保が難しく、利用し
たくても利用できない人がいる。
53
⑶
今後の対応方策について
火災安全システム利用者が居住管理協力者を設置することが困難な場合、次の全て
の要件を満たす場合は、居住管理協力者の設置を緩和することができるものとする。
(平成28年4月予定)
・ 緊急通報システムを併用しない火災安全システムの単独利用者
・ 火災の事実を確認するために必要な場合、消防隊が住宅等の一部を破壊するこ
とを承諾する者
・ 利用者以外に確実に連絡がとれる緊急連絡先がある者
1-4
今後の課題
各メーカーでは、電子部品の劣化等の理由から住警器本体の寿命を、設置後約10
年としている。
総務省消防庁から、平成27年11月12日に「住宅用火災警報器設置対策基本方
針の改正について」が通知されたので、改正概要の一部を以下に示す。
「住警器の維持管理に関する広報の強化」
住警器の設置の定着を図ることに加え、火災時における住警器の適正な作動
を確保する観点から、住警器の適正な維持管理の方法について広報の強化を図
る。
具体的には、1)定期的な作動確認、2)機器の異常が判明した場合等にお
ける本体の交換、3)電池切れの場合における電池の交換(設置から10年以
上が経過している場合は本体の交換を推奨)等を周知する。
今後、設置後10年を経過する住警器が増えることから、住警器の適正な維持管理
と交換時期の周知が重要な課題となる。
住警器の設置促進と維持管理及び火災安全システム等の普及については、以下の項
目について消防・自治体等の関係機関と関係業界等が官民一体となった取組を進めて
いく必要がある。
54
⑴
比較的設置率の低い一戸建てをはじめとした未設置及び一部設置住宅に対し、条例
どおりの設置にむけた指導を粘り強く行っていく必要がある。
⑵
今後、住宅メーカー、大手家電量販店、ホームセンター等の業界にも働きかけ、関
係業界や関係機関と連携し、より効果的な広報等の取組を推進していく必要がある。
⑶
設置後10年を経過した機器本体の交換について、総務省消防庁が示した基本指針
を踏まえ、より効果的なPRを展開していく必要がある。
⑷
住警器の設置義務化以降、区市町村が給付助成事業を行うのが難しくなっている。
より安全な火災安全システム等の利用促進について、関係機関への働きかけや福祉関
係者等と連携して高齢者へ設置を促すなど、設置に係るしくみ作りを進めていく必要
がある。
2
住宅用防災機器等の普及効果の確認
火災の初期消火と拡大防止には、住宅用火災警報器の他にも防炎品の使用や住宅用ス
プリンクラーの設置等が効果的である。
防炎品や住宅用スプリンクラーの有効性や必要性を周知させ、普及促進を図ることに
より、住宅用火災警報器だけでは火災から守ることが困難な高齢者の被害を軽減させる
ことができる。
2-1
(%)
住宅用防災機器等の普及状況
消火器
防炎品
住宅用スプリンクラー
エアゾール式簡易消火具
簡易型自動消火装置
60
50
「消防に関する世論調査」によると、消
火器は約半数の家庭で備えているのに対
46.1
40
30
20
し、防炎品の使用や自動消火装置、住宅用
スプリンクラーの設置は毎年数パーセント
16.5
10
0
H18 H19 H20 H21 H22 H24
H25
H26
H27
6.5
2.8
2.3
図29 住宅用防災機器等の普及率
【平成 18 年~平成 27 年】
(「消防に関する世論調査」より
平成 23 年は調査未実施)
に留まっている。
火災に備えた準備を特に何もしていない家庭は14.7%あり、その理由は「火事を
出さないようにしている」「何をして良いかわからない」「どれも値段が高い」「どこで
売っているかわからない」「近くに販売店がない」の順に多くなっている。
55
2-2
⑴
防炎品の効果
防炎品の定義
防炎物品と防炎製品を総称して防炎品という。
○ 防炎物品
消防法に定められ、規定により防炎性能基準を満たしたものである。不特定多数
の人が出入りする施設や建築物等で使用されるカーテンやじゅうたん等は防炎性能
を持つ防炎物品の使用が義務付けられている。
○ 防炎製品
消防法に基づく防炎規制以外のもので、「防炎製品認定委員会」が定めた防炎性
能基準等に防炎協会が認定したもので、一般家庭等で使用される寝具類、衣類等が
ある。
⑵
防炎品を使用していれば被害が軽減できたと思われる事例
【事例1】
女性(60代)は、台所において3口こんろの右側手前にて調理中、右奥にある
やかんを取ろうと手を伸ばしたところ、右脇腹部分の服に着火したもの。
右側胸部熱傷(中等症)
【事例2】
女性(80代)は、台所においてお湯を沸かすためにやかんをこんろにのせ火を
点けた。その後、こんろの上部にある換気扇のスイッチを入れようと左手を伸ばし
た際、やかんからの漏れ火に左脇部分の服が触れて着火したもの。
熱傷(浅達性Ⅱ度熱傷20%)(中等症)
【事例3】
男性(60代)は、寝室の布団の上で喫煙し、たばこの火種が敷布団の上に落下
したことに気付かず寝てしまったため、時間の経過とともに敷布団から出火したも
の。
部分焼 死者2名
【事例4】
56
女性(60代)は、ベッドの脇の電気ストーブを点けたまま寝ていた。電気スト
ーブに布団が接触したことから出火したもの。
全焼 死者1名
⑶
防炎品(寝具類、エプロン、アームカバー等)普及促進の問題点
表20 防炎製品の普及課題
問
2-3
⑴
題
点
防
炎
製
品
敷布団カバー
約 6,000 円掛布団カバー
約
8,500 円
エプロン
約 5,000 円
アームカバー 約 1,500 円
1
価格が高い
2
販売店舗が少ない、知られて 寝具類、エプロン、アームカバー等の取扱店舗は
いない
都内数店舗しかない。
3
種類が少なく、選択肢がない
衣類・寝具類等を扱っているメーカーは数社
住宅用スプリンクラーの効果
システムの概要
水道直結型スプリンクラー設備(乾式)は、平常時にはスプリンクラー配管(電動
弁2次側)内は空(大気圧)で、火災発生時に通水する方式である。
システム作動時、家庭の生活用水を自動的に遮断し、自動的に出火室のみ放水す
る。
図30 住宅用スプリンクラーの構成例
57
⑵
設置効果
火災に気付くのが遅れたり、自力避難が困難な高齢者や障害者等は、住警器のみで
は火災から生命を守ることは難しい場合がある。
住宅用スプリンクラーや簡易自動消火装置等は、万が一逃げ遅れても、火災を感知
して自動的に放水するため、火災から高齢者等の命を守るためには特に効果が高いと
いえ、高齢者一人暮らし世帯や高齢者のみの世帯への普及が望まれる。
⑶
住宅用スプリンクラー普及促進の問題点
表21 住宅用スプリンクラーの普及課題
問
題
点
住
宅
用
ス
プ
リ
ン
ク
ラ
1
価格が高い
一戸建て(SP ヘッド6個)
2
販売店舗が少ない、知られて
いない
限られた防災設備業者のみが扱っている。
3
種類が少なく、選択肢がない
国内メーカー3社
4
既存住宅では工事が必要
工事期間:3~4日間
点検口の設置
5
維持管理が必要
1年1回のテストが必要。
ー
約 60 万円~
2-4 普及方策
⑴
高齢者を重点としたより強力な広報活動の推進
① 座談会、防火防災訓練等の機会を通じて、防炎品や住宅用スプリンクラー等の自
動消火装置の有効性及び必要性を、これらが必要と思われる高齢者にわかりやすく
説明し、普及へつなげていく。
② 防火講習会等の機会を活用して、福祉関係者等の理解を深める。
⑵
関係業界・関係機関への働きかけ
関係業界や自治体等の関係機関に対して、以下の項目について粘り強く働きかけて
いくことで、普及促進を図っていく。
① 防炎品、住宅用スプリンクラー等を取扱う店舗数の増加
② 購入しやすい価格設定
③ 種類を豊富に取りそろえ、デザイン性を高め、購入時の選択肢を増加
④ 福祉用品を扱う店舗での、防炎品の積極的な販売を依頼
⑤ 区市町村における給付助成事業の拡充
58
等
第6章
住宅火災による死者の現状と低減対策について
過去10年間(平成18年~平成27年※)の住宅火災と死者の発生状況をさらに分析
し、高齢者の死者低減対策の課題と今後の方策について示す。
※平成27年の数値は速報値
1
背景
建物の防火性能の向上、住警器の普及及び暖房器具やこんろなどの製品の安全性向
上などにより、火災件数及び火災による死者数は減少傾向にある。
一方で高齢人口の増加に伴い、今後も引き続き高齢者の火災による死者の増加が懸
念される。
2
現状
⑴
住宅火災による死者は69人で、過去10年間で最も多かった平成19年の107
人から38人減少した※。(資料6-1
図1)
※住宅火災による死者は自損を除く
⑵
過去10年間の住宅火災件数と住宅火災による死者数は減少傾向で推移している
が、住宅火災件数の減少に比べて死者数の減少が緩やかである。(資料6-1
図
1、図6)
⑶
高齢者以外の死者は大幅に減少している。なお、人口の高齢化率が高まっている
が、高齢者の死者はほぼ横ばいで推移している。(資料6-1
図1、図2、図3)
人口の高齢化率が高まっている中で死者が横ばいで推移していることについては、
今後、分析が必要である。
⑷
過去10年間の出火原因別死者数811人のうち、たばこが250人(31%)で
最も多く、電気コード等※が98人(12%)、ストーブが90人(11%)、こんろ
が82人(10%)である。(資料6-1
図5)
※電気コード等98人のうち3人はストーブ火災(電気ストーブ)
59
3
現状における住宅火災による死者低減に効果のある施策
⑴
住宅火災件数は、平成21年は2,099件であったが、住警器の設置率が約8割
となった平成22年は1,869件と230件減少し、平成27年は1,683件に
まで減少している。(資料6-1
図1)
このことから住警器の普及(平成27年消防に関する世論調査の実施結果、設置率
87.3%)が、住宅火災の被害軽減に寄与していることは明らかである。(資料6-
1 図1、図4)
⑵
ストーブ及びこんろについては、安全装置の設置(転倒時消火装置、Siセンサー
等)が義務となっており、これらの効果により、過去10年間(平成18年以降)
の火災件数・死者数ともに減少している。(資料6-2
⑶
図2-1、図3-1)
総合的な防火防災診断を通じて、平成27年度(12月末現在)72件の改善を図
ることができた。
このうち、13件については、まさに火災に至る直前で未然防止できた奏功事例で
あり、高齢者の火災による死者を低減させる大きな要因となっている。
※ 平成26年中の総合的な防火防災診断実施件数7,709件、危険度判定件数6,187件
※ 防火防災診断実施件数は、総合的な防火防災診断の開始とともに実施件数が減少したが、年
間約17万件から20万件を実施している。
平成24年:245,913件
平成25年:199,356件
平成26年:167,625件
平成27年:183,672件
60
平成27年度(12月末時点)主な奏功事例
内
容
件数
○ストーブに接続されたホースから経年劣化によるガス漏
れがあり、東京ガスと協力してその場でホースを交換し
た。
○漏電の危険があったため、電力会社と協力して応急的に
ケーブルを抜く作業を実施した。
○ねずみにかじられたような跡のある配線を発見し、その
場で改修した。
○内部配線の緩みにより発熱したコンセントを発見、修理
出火危険が切
して出火危険を回避した。
迫していた状
○喫煙場所が寝室となっていることから、台所等での喫煙
況を火災直前
を指導し、後日ケアマネージャーと改善状況を確認し
で改善した事
た。
例
13件
○寝室の布団と電気ストーブの距離が近かったため、出火
危険を説明して改善した。
○たこ足配線から更にたこ足配線で使用しているコンセン
トを発見したため、スイッチ式コンセントに交換した。
○コンセントに差し込まれているプラグに埃がたまってい
たため職員が清掃を行い、出火防止を図った。
○屋内分電盤の配線部分にねずみがかじった跡を発見した
ため、東京電力の職員と協力し、その場で即時改修を実
施した。
等
放置すればや
・住警器の設置(8件)
がて火災に至
・聴覚障害者用住警器の設置(1件)
る可能性のあ
・消火器の適切な場所への配置(1件)
61
24件
る状況を改善
・放火危険の排除(2件)
した事例
・たこ足配線の改善(2件)
・期限切れガス漏れ警報器の交換指導(1件)
等
・古い電気・ガス機器や使用していない機器に対する指導
改善指導等を
(3件)
17件
行った事例
・消火器の使用方法の指導(1件)
等
・家具の転倒、落下、異動防止対策指導(15件)
その他の指導
・緊急通報システム登録促進(1件)
・熱中症予防指導(1件)
合
4
18件
等
計
72件
課題
⑴
たばこ火災は、件数及び高齢者以外の死者は減少しており、特に平成24年以
降、高齢者以外の死者が大幅に減少したが、高齢者の死者数が高い数値で推移して
いる。また他の原因と比べて、たばこ火災は3㎡以下の焼損面積でも多く死者が発
生しているのが特徴であり、住警器の設置のみでは防ぐことが困難なため、高齢者
の喫煙に対して更なる対策が必要である。(資料6-2
⑵
図1-1、図1-3)
電気コード等火災については、古い電気器具の使用、普段目につかない場所のコ
ンセントの劣化、電気コードのある場所での家具の移動等による踏みつけなどによ
って起こる火災により死者が出ていることから、出火危険を意識しない箇所からの
出火防止対策を周知する必要がある。
5
対策
住宅火災による死者の7割以上を占める高齢者の死者低減を図るため、以下の対策
を重点的に実施していく。
⑴
たばこ火災による高齢者の死者低減対策
たばこ関係業界等と連携し、出火防止キャンペーン等の広報及び被害を低減するた
めのハード面の対策等を推進する。
62
⑵
電気コード等火災の防止対策
トラッキングや短絡による出火防止のための定期的な清掃や点検、古い電気コード
の交換等の周知と火災予防の知識を普及するため、映像を活用するなど効果的な広
報を推進する。
⑶
住警器の条例どおりの設置促進
あらゆる広報媒体を活用、関係業界・関係機関と連携した対策等により、未設置及
び一部設置住宅に対する条例どおりの設置を促進する。
63
第7章
提言
「住宅火災における高齢者の被害低減対策について」
火災予防条例(昭和37年東京都条例第65号)では、住宅火災における高齢者の被
害を低減するため、「住宅防火対策の推進(第55条の5の2)」において、「高齢者等の
人命の安全確保に関すること」が消防総監の努力義務の一つに掲げられており、高齢社会
の進展に伴い益々増加することが予想される高齢者の被害実態や生活環境、地域特性の違
いを踏まえた具体的な対策について検討を進めてきたものである。2年間にわたる東京都
住宅防火対策推進協議会の協議内容を踏まえて、高齢者の被害低減対策に関する提言を示
す。
1
高齢者が火災を起こさないための環境作りに必要な支援
⑴
高齢者の心理面、身体面、行動パターンの特徴を理解し、高齢者に直接働きかけて
注意喚起を促し、火災発生の環境リスクを具体的に改善することが、高齢者の被害を
低減する根幹である。そのための手段として東京消防庁が平成25年から導入してい
る「総合的な防火防災診断」が有効である。
しかしながら、今後、高齢社会が益々進展することから、危険度の高い対象者を抽
出して優先的に実施、福祉関係者等による再訪問の体制構築など、新たに検討すべき
課題も多い。
こうした課題を踏まえて、総合的な防火防災診断をより積極的に実施し、高齢者が
火災を起こさない環境作りに必要な支援を推進していくため、関係機関や地域等が一
体となった連携体制を強化していく必要がある。
将来的に総合的な防火防災診断を制度として定着させていくには、広く都民に周知
していく広報と火災発生危険の高い高齢者世帯に対して、消防職員や福祉関係者等が
より積極的に総合的な防火防災診断を働きかけることができる体制を整えていく必要
がある。
64
⑵
高齢者の被害低減を図るためには、普段から高齢者等の要配慮者に接している民
生・児童委員やケアマネージャー、高齢者を支える見守り活動に携わる地域住民な
ど、福祉関係者等の防火防災に関する知識と行動力を高めることにより間接的な効果
が期待できる。
このことから高齢者世帯の住宅の出火危険箇所等を判断する際の着眼点を学ぶ防火
防災講習会を広く実施していく必要がある。その際、「地域で高齢者等を支援し見守
るみなさまのための
防火防災のてびき(資料4)」を活用するなど、防火防災講習
会の内容とレベルを統一することで、行政サービスの公平性を確保する必要がある。
また、防火防災講習会を通じて消防職員・消防団員から住宅防火対策等の視点を学
び、福祉関係者等が自ら高齢者等の要配慮者に具体的な出火危険箇所の改善などをア
ドバイスすることで、再訪問も含めて継続的かつ機動的な見守り体制を強化していく
ことができる。さらに、福祉関係者等から消防署へ総合的な防火防災診断を適時要請
するなど、消防署と緊密に連携を図っていくことで、高齢者の住環境の出火危険を大
きく改善できるものと考えられる。
2
⑴
行政と地域が一体となった見守り体制の確立
東京消防庁では、地域力向上方策(地域防災力の向上)モデル事業を実施したとこ
ろ、幼児期からの防火防災教育の推進が各種災害に対する自らの防災行動力を高め、
家庭や地域の防災行動力の向上及び将来における防災活動の担い手の確保に結びつく
との結論に達し、「幼児期から社会人に至るまでの総合防災教育」に平成20年度か
ら取り組んでいる。
本教育については、幼児期から大学生までの総合防災教育体系を明確にし、発達段
階に応じた到達目標及び具体的方策が示されている。児童・生徒等が地域住民との連
携による総合的な防火防災診断などの高齢者支援の実践活動を積み重ね、火災等から
高齢者等の要配慮者を守る防火防災の視点を養うことが、数十年の経過を経て、高齢
者の被害低減につながるものと考える。
65
なお、小・中・高校生に対する総合防災教育は、モデル署での検証結果からも、直
ちに家族等の周囲の大人へ波及する効果が高い一方で、教育として根付かせていくに
は時間がかかる取組でもある。教育による即効性について十分に認識しつつ、実施体
制も含めて長期的視点に立ってPDCAサイクルによる検証と見直しを行い、実施し
ていく。
⑵
地域の力で住宅火災など災害から高齢者を守るための行政や地域等が連携した見守
り体制を強化していく上で、地域の防火防災功労賞や東京防災隣組認定制度の事例が
大いに参考になる。地域の防火防災功労賞の募集要項に「住宅火災による高齢者の被
害低減対策」を新たに設け、住宅火災から高齢者を守る取組事例を収集し、広く周知
することで見守り体制の強化につなげることができる。
3
住宅用防災機器等の普及によるハード面の対策の強化
住警器、防炎品、消火器(住宅用消火器等を含む)、住宅用スプリンクラー等の住宅
用防災機器等や火災安全システム等のハード面の対策は、住宅火災による高齢者の被害
低減に高い効果が期待できる。しかしながら、現段階では住警器の適正な維持管理の必
要性と機器本体の交換時期(設置後10年が目安)については、十分に周知されていな
い状況であり、今後、いかに周知徹底を図っていくかが課題である。また、防炎品につ
いては、火種に接しても容易に着火しない、一度着火しても燃え広がらないという性質
から火災の被害軽減には大変有効であるが、その認知度は低く、高コストで、一般の住
宅への普及は不十分と言わざるを得ない。住宅用防災機器等のハード面の対策を強化す
るため、総合的な防火防災診断や高齢者の集まる機会などを捉えて、直接高齢者に分か
りやすく効果を伝え必要性を認識してもらう、防火防災講習会等を通じて福祉関係者等
の住宅用防災機器等への理解を深め、自治体の給付助成事業の利用を促す、業界団体が
販路拡大や魅力的な商品を開発するなどの販売促進に向けた取組を強化するなど総合的
な対策が必要である。
更に、住警器による火災の発見から専用通報機によって自動的に通報される火災安全
システムは、消防隊の活動開始までの時間を短縮することで、高齢者の死者低減に効果
66
があるため、利用促進を図るとともに、住宅火災に関する民間事業者による迅速な通報
についても効果が期待されることから、今後、迅速な火災通報の在り方についても検討
していく必要がある。
4
火災から高齢者を守るための広報の在り方
新聞、ラジオ、テレビ、広報紙等の広報媒体は多くの高齢者が利用しており、一定の
効果が期待できる。最近では、インターネット等の情報通信を利用する高齢者も増加し
てきたことから、自己点検アプリなど最適な広報媒体をその都度導入し、多様な広報展
開を検討していく必要がある。
しかし、高齢者へのメッセージだけでは高齢者以外の多くの人は身近に感じないた
め、多くの都民が不安に感じている震災対策から住宅防火の注意喚起へつなげていくこ
とで、高齢者等の要配慮者対策に関心をもってもらうことも有効な方法である。
具体的な広報手段としては、判断力や認知力等が低下する高齢者に住宅防火のポイン
トを分かりやすく伝える映像ソフトの作成や、屋外でも映像等により効果的に学ぶこと
ができる移動防災教室車の整備も必要である。
また、地域サロン等の高齢者が集まる場所での防火防災講話等の機会を捉え、福祉関
係者や地域住民と緊密に連携して、死者が多く発生しているたばこ火災、電気コード等
火災の防止など、出火原因別に直接かつ繰り返し高齢者に伝えていく広報活動が最も効
果があるものと考える。
さらには、福祉関係者等や児童・生徒の防火防災の視点を高める映像ソフト(福祉関
係者用、児童・生徒用)」を作成し、広く見守り支援に対する意識の向上を図っていく
ことも有効である。
67
第8章
まとめ
高齢社会の進展に伴い、住宅火災による死者に占める高齢者の割合が年々高まっていく
状況に危機感を持ち、住宅火災から高齢者を守る具体的な取組を導き出すべく「住宅火災
における高齢者の被害低減対策」をテーマに2年間協議を行った。
この間、住宅火災による死者が多く発生している地域と木造住宅密集地域であるにもか
かわらず死者の発生が少ない地域の特性の違い、町会・自治会加入者と未加入者の地域と
の関わりの違い等の比較、消防職員・消防団員及びその家族と一般的な都民の住宅防火意
識の違い、高齢者の特徴と住宅火災の因果関係等、様々な角度から調査と分析を進め、4
つの提言を取りまとめた。
提言は、高齢者の被害を低減するうえで極めて重要な5つのポイントを示している。一
つ目は、高齢者の特徴を理解し、関係機関等と連携して直接高齢者等の要配慮者に働きか
け、具体的に住環境の危険要因を改善する総合的な防火防災診断が有効であること、二つ
目は、防火防災講習会を通じて福祉関係者等の防火防災の視点や行動力を養い、効果的に
消防署等と連携した総合的な防火防災診断につなげること、三つ目は、総合防災教育を通
じて地域への防火防災思想の普及を図り、見守り活動へと発展させること、四つ目は、ハ
ード面の対策として行政、地域、関係業界等がそれぞれの役割を果たしつつ連携して住宅
用防災機器等の普及促進に取組むこと、そして五つ目は、直接個々の高齢者に必要な情報
を繰り返し伝える地道な広報を展開することである。
この5つのポイントに共通することは、全ての関係者が効果的に連携しつつ、地道にか
つ繰り返し直接高齢者に働きかけることで高齢者の住宅火災における被害を低減すること
ができるということである。
また、今後の課題として住宅の火災に関する迅速な火災通報の在り方について検討して
いく必要がある。
この報告書で示した提言が各地域の実情に合わせて活用され、「直接」「繰り返し」「連
携」をキーワードとした取組とし実践されることで、住宅火災における高齢者の被害低減
効果が現れるものと考える。
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